(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 29/13 20060101AFI20241111BHJP
B41J 3/36 20060101ALI20241111BHJP
B41J 2/32 20060101ALI20241111BHJP
B41J 15/04 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
B41J29/13
B41J3/36 Z
B41J2/32 Z
B41J15/04
(21)【出願番号】P 2020191624
(22)【出願日】2020-11-18
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】陣内 孝賢
(72)【発明者】
【氏名】藤田 聡
【審査官】大関 朋子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-214048(JP,A)
【文献】特開2013-220871(JP,A)
【文献】米国特許第06530705(US,B1)
【文献】特開2017-080982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/13
B41J 3/36
B41J 2/32
B41J 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台紙に剥離可能に貼付されたラベルを有する印字媒体の前記台紙から前記ラベルを剥離して発行する剥離発行と、前記台紙から前記ラベルを剥離することなく発行する連続発行との切り替えが可能なプリンタであって、
前記印字媒体を収容する収容部と、
前記収容部を開放する開放位置と、前記収容部を閉鎖する閉鎖位置と、の間で揺動可能なプリンタカバーと、
前記印字媒体を前記収容部から搬送する搬送ローラと、
剥離発行時に前記搬送ローラとともに前記台紙を挟持する剥離ローラを有する剥離ユニットと、
を備え、
前記剥離ユニットは、両側に突出した一対の突起を有し、
前記プリンタカバーは、一対の溝を有し、
前記プリンタカバーは、前記プリンタカバーの前記開放位置から前記閉鎖位置への移動に応じて
前記一対の溝の各々が前記突起を案内して前記剥離ユニットと係合することで、前記剥離ローラを前記搬送ローラに対向する位置に移動させ、
前記プリンタカバーは、前記閉鎖位置であるときに前記剥離ローラを前記搬送ローラに向けて押圧するローラ押圧機構を有する、
プリンタ。
【請求項2】
前記ローラ押圧機構は、前記プリンタカバーが前記閉鎖位置のときに前記一対の突起の各々と当接する一対の当接部を有し、
前記一対の当接部の各々は、前記溝内に設けられている、
請求項1に記載されたプリンタ。
【請求項3】
前記ローラ押圧機構は、
前記プリンタカバーが前記閉鎖位置のときに前記一対の突起の各々と当接する一対の当接
部と、
前記
一対の当接部
の各々を、前記プリンタカバーの前方に付勢する一対の付勢部材と、を有する、
請求項
1に記載されたプリンタ。
【請求項4】
前記一対の溝は、前記プリンタカバーの前端から後端に向かう方向に沿って形成され、前記プリンタカバーの前記開放位置から前記閉鎖位置への移動に応じて前記一対の突起を受け入れる、
請求項1に記載されたプリンタ。
【請求項5】
前記剥離ユニットは、第1軸の回りに揺動可能であって、
前記一対の突起の各々は、前記剥離ユニットの側面から外側に突出し、
前記剥離ユニットを側面視で見たときに、前記一対の突起の各々は、前記側面において前記第1軸と前記剥離ユニットの揺動端の間に設けられている、
請求項1に記載されたプリンタ。
【請求項6】
前記プリンタカバーが前記開放位置から前記閉鎖位置に移動する際に、前記ローラ押圧機構は、前記プリンタカバーが前記閉鎖位置に達したときには前記剥離ローラを前記搬送ローラに向けて押圧しているように構成される、
請求項1に記載されたプリンタ。
【請求項7】
前記剥離ユニットは、前記剥離ローラを収容する収容状態と前記剥離ローラを突出させる突出状態のいずれかの状態をとる、
請求項1から
6のいずれか一項に記載されたプリンタ。
【請求項8】
前記剥離ユニットは、前記剥離ローラと同軸で、かつ前記剥離ローラの両側に設けられた一対の補助ローラを有し、各補助ローラの径は、前記剥離ローラの径よりも小さい、
請求項1から
7のいずれか一項に記載されたプリンタ。
【請求項9】
前記プリンタカバーを閉鎖位置にロックするロック位置と、前記プリンタカバーの閉鎖位置におけるロックを解除するロック解除位置と、の間で揺動可能なロック部材と、
前記剥離ユニットを開放位置と閉鎖位置の間で移動させるように揺動する揺動部材と、
を備え、
前記ロック部材と前記揺動部材は、単一の揺動軸を共有する、
請求項1から
8のいずれか一項に記載されたプリンタ。
【請求項10】
前記剥離ユニットは、第1軸の回りに揺動可能であって、
前記第1軸を収容し、長孔が形成されたプリンタ本体を備えた、
請求項
1に記載されたプリンタ。
【請求項11】
前記搬送ローラと前記印字媒体を挟持して前記ラベル上に情報を印字する印字ヘッドと、
上方に突出する突部を有するプリンタ本体と、を備え、
前記剥離ユニットは、剥離ローラカバーを有し、
前記剥離ローラカバーは、閉鎖位置のときに前記突部に当接する当接部を有し、
前記剥離ローラカバーが閉鎖位置のときに、前記剥離ユニットと前記印字ヘッドの間に隙間が設けられている、
請求項1から
10のいずれか一項に記載されたプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ラベルプリンタは、帯状の台紙に複数枚のラベルが仮着された連続紙をサーマルヘッドとプラテンローラとの間に挟み込んだ状態でプラテンローラを回転させることにより連続紙を搬送しながらラベル上に所望の情報を印字するように構成されている。
従来、連続発行と剥離発行との2種類の発行方式を切り替え可能なラベルプリンタが知られている(例えば、特許文献1)。連続発行方式は、ラベルを台紙に仮着したまま発行する方式であり、剥離発行方式はラベルを台紙から剥がして発行する方式である。
特許文献1に記載されたプリンタでは、剥離機構を操作者が操作することによって、連続発行と剥離発行を切り替えるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載された連続発行と剥離発行の切り替え方式では、操作者が切り替え作業に手間が掛かるという課題がある。すなわち、例えば連続発行から剥離発行に切り替える場合、操作者は、剥離機構を後方に移動させ、剥離機構の支持部に力を加えて引き出し、剥離機構の後端を下側に揺動させつつ剥離機構の支持部を、支持部の被係合爪を蓋部の係合孔に係合させる(つまり、ロックする)まで下側に押し込む操作を必要とする。
【0005】
そこで、本発明は、連続発行と剥離発行の切り替え可能なプリンタにおいて、連続発行と剥離発行の間の切り替え作業の操作性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、台紙に剥離可能に貼付されたラベルを有する印字媒体の前記台紙から前記ラベルを剥離して発行する剥離発行と、前記台紙から前記ラベルを剥離することなく発行する連続発行との切り替えが可能なプリンタであって、前記印字媒体を収容する収容部と、前記収容部を開放する開放位置と、前記収容部を閉鎖する閉鎖位置と、の間で揺動可能なプリンタカバーと、前記印字媒体を前記収容部から搬送する搬送ローラと、剥離発行時に前記搬送ローラとともに前記台紙を挟持する剥離ローラを有する剥離ユニットと、を備え、前記剥離ユニットは、両側に突出した一対の突起を有し、前記プリンタカバーは、一対の溝を有し、前記プリンタカバーは、前記プリンタカバーの前記開放位置から前記閉鎖位置への移動に応じて前記一対の溝の各々が前記突起を案内して前記剥離ユニットと係合することで、前記剥離ローラを前記搬送ローラに対向する位置に移動させ、前記プリンタカバーは、前記閉鎖位置であるときに前記剥離ローラを前記搬送ローラに向けて押圧するローラ押圧機構を有する、プリンタである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のある態様によれば、連続発行と剥離発行の切り替え可能なプリンタにおいて、連続発行と剥離発行の間の切り替え作業の操作性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1Aは、実施形態に係るプリンタについてプリンタカバーが閉鎖状態である場合の斜視図であり、
図1Bは、実施形態に係るプリンタについてプリンタカバーが開放状態である場合の斜視図である。
【
図2】実施形態のプリンタについて、プリンタカバーが開放状態であり、剥離ユニットが開放状態であり、ロール紙が収容されていない状態の斜視図である。
【
図3】実施形態のプリンタにおいて連続発行と剥離発行を説明するための部分的な断面図である。
【
図4】カバー開放用ボタンによってプリンタカバーが開放状態となる機構を説明する図である。
【
図5】プラテン保持ブラケットとレバー群の位置関係を示す図である。
【
図6】開放時と閉鎖時における剥離ユニットの斜視図である。
【
図7】開放時の剥離ユニットについて、
図6とは別の視点から見た斜視図である。
【
図8】連続発行時と剥離ユニット開放用ボタン操作時において、剥離ユニット開放用レバーと剥離ユニットの関係を説明する図である。
【
図9】連続発行時と剥離ユニット開放用ボタン操作時において、剥離ユニット開放用レバーと剥離ユニットの関係を説明する図である。
【
図11】剥離発行時において剥離ローラ近傍の部分拡大断面図である。
【
図12】剥離ユニットを折り畳むときの動作を説明する図である。
【
図13】剥離ユニットを折り畳むときの動作を説明する図である。
【
図14】実施形態のプリンタを連続発行から剥離発行に切り替えるときの動作を順に示す図である。
【
図15】実施形態のプリンタを連続発行から剥離発行に切り替えるときの動作を順に示す図である。
【
図17】
図16Aの断面A-A及び断面B-Bを拡大して示す断面図である。
【
図18】サーマルヘッドに対する軸受入溝を含むプリンタの部分断面図である。
【
図19】サーマルヘッドの交換方法を説明する図である。
【
図20】内部フレームに設けられ、サーマルヘッドを支持する凸部を示す図である。
【
図21】実施形態のプリンタにおいてサーマルヘッドに作用する力を説明する図であり、
図20Aは上下方向に直交する平面での断面を示し、
図20Bは左右方向に直交する平面での断面を示す。
【
図22】
図22Aは別の実施形態のサーマルヘッドを前方から見た斜視図であり、
図22Bは別の実施形態のサーマルヘッドを後方から見た斜視図である。
【
図23】別の実施形態のサーマルヘッドに含まれる板状部材の斜視図である。
【
図24】別の実施形態のサーマルヘッドについて
図22とは別の視点から見たときの斜視図である。
【
図25】別の実施形態のサーマルヘッドとプラテン保持ブラケットの位置関係を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[プリンタ1の概略構成]
本発明の一実施形態に係るプリンタ1は、連続発行と剥離発行を切り替え可能に構成されたラベルプリンタである。以下、プリンタ1について、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、各図では、例えば
図1A及び
図1Bの斜視図に示すように、上(UP)、下(DN)、左(LH)、右(RH)、前(FR)、後(RR)の方向を定義しているが、この方向の定義は、専ら図面の説明の便宜のためであり、本発明のプリンタの使用時の姿勢を限定する意図はない。
この方向の定義では、「プリンタ前後方向」とは、プリンタ1の前後の方向を意味する。「プリンタ幅方向」とは、プリンタ1の左右の方向、あるいは横方向を意味する。
【0010】
図1A、
図1B及び
図2は、それぞれ実施形態のプリンタ1の斜視図である。
図1Aは、プリンタカバー3が閉鎖状態の場合を示し、
図1B及び
図2は、プリンタカバー3が開放状態の場合を示している。
図1Bは、ロール紙Rがセットされた状態を示し、
図2は、ロール紙R、及び、ロール紙Rがセットされる前のプリンタ1の状態を示している。
【0011】
図1Aに示すように、プリンタ1は、本体ケース2とプリンタカバー3によって内部の機能部品が保護されている。プリンタ1の上面には、ラベルを排出する排出部20が設けられている。
なお、プリンタ1は、排出部20側を上に向けた状態(横置き)で使用することも可能であるが、プリンタ1の底面に設けられたベルトフック(図示せず)を操作者のベルトに引っかけたり、ショルダーベルト(図示せず)を装着して操作者の肩に掛けたりすることにより排出部20側を横に向けた状態(縦保持)で使用することも可能である。
本体ケース2において排出部20よりも前方には、表示パネル15が設けられている。表示パネル15は、操作者による操作入力を受け付けるタッチパネル入力機構を備えてもよい。表示パネル15は、プリンタ1の内部の回路基板に接続されており、回路基板から供給される表示信号に基づいて、例えばプリンタ1の動作状態やプリンタ1の操作に関するユーザインタフェースを示す画像を出力する。
【0012】
図示しないが、本体ケース2とプリンタカバー3によって包囲されているプリンタ1の内部には、様々な機能部品を支持又は保持するための内部フレームが配置されている。この内部フレームと、本体ケース2及びプリンタカバー3とは、プリンタ本体に相当する。
【0013】
プリンタカバー3は、プリンタ1の内部を開放する開放位置と、プリンタ1の内部を閉鎖する閉鎖位置と、の間で揺動可能に構成される。
本体ケース2に設けられたカバー開放用ボタン51bを操作すると、
図1Bに示すように、プリンタカバー3が開放する。プリンタカバー3を開放することで、ロール紙収容室9が露出する。ロール紙収容室9は、ロール紙R(ロール体の一例)を収容する空間である。
【0014】
図2に示すように、ロール紙Rは、帯状の連続紙Pがロール状に巻回されたものである。連続紙Pは、帯状の台紙PMと、台紙PM上に予め決められた間隔毎に仮着された複数枚のラベルPLとを有している。台紙PMのラベル貼付面には、ラベルPLを容易に剥離することが可能なようにシリコーン等のような剥離剤が被覆されている。また、台紙PMのラベル貼付面の裏面には、予め決められた間隔毎にラベルPLの基準位置を示す位置検出マークMが形成されている。
ラベルPLの表側は情報が印字される印字面であり、予め決められた温度領域に達すると特定の色に発色する感熱発色層が形成されている。印字面の裏側は接着剤によって被覆された接着面であり、当該接着面が台紙PMのラベル貼付面に貼り付けられることでラベルPLが台紙PMに仮着されている。
【0015】
ロール紙収容室9には、一対のロール紙ガイド6aが設置されている。一対のロール紙ガイド6aは、ロール紙Rの両側面に接触した状態でロール紙Rを回転自在の状態で支持してロール紙Rから引き出される連続紙の搬送をガイドする部材であり、ロール紙Rの幅に応じて位置を変えられるようにロール紙Rの幅方向に沿って移動可能であることが好ましい。
【0016】
図2に示すように、プリンタカバー3が開放位置と閉鎖位置の間で本体ケース2に対して揺動可能となるように、プリンタカバー3が本体ケース2に対してヒンジ8で軸支されている。ヒンジ8はヒンジ軸81を有し、ヒンジ軸81には、プリンタカバー3を閉鎖位置から開放位置に向けて付勢する捩りばね(図示せず)が設けられている。
【0017】
図2に示すように、プリンタカバー3の先端には、プラテンローラ10(搬送ローラの一例)が正逆方向に回動自在の状態で軸支されている。プラテンローラ10は、ロール紙Rから引き出される連続紙Pを搬送する搬送手段であり、連続紙Pの幅方向に沿って延在した状態で形成されている。このプラテンローラ10のプラテン軸10aの一端には、ギア10bが連結されている。このギア10bは、プリンタカバー3が閉鎖位置のときに本体ケース2内に配置されるギア22bと係合し、ギア22bを介してローラ駆動用のステッピングモータ(図示せず)等に機械的に接続されるようになっている。
【0018】
図2に示すように、プリンタカバー3には、プラテンローラ10の近傍において剥離バー12がプラテンローラ10に沿って設置されている。この剥離バー12は、台紙PMからラベルPLを剥離する剥離部材であり、その両端はプリンタカバー3の両側壁に固定されている。なお、剥離バー12は、プラテン軸10aの両端に固定してもよい。
一実施形態では、剥離バー12の断面は実質的に三角形状であるが、その限りではなく、球状や楕円形状であってもよい。
【0019】
本体ケース2内には、プリンタカバー3を閉鎖したときにプラテンローラ10のプラテン軸10aを保持するプラテン保持ブラケット27が設けられる。プラテン保持ブラケット27の前方には、サーマルヘッド28が配置される。
【0020】
サーマルヘッド28(印字ヘッドの一例)は、例えば、文字、記号、図形またはバーコード等の情報を、ロール紙Rから搬送される台紙PMに仮着されているラベルPLに印字する印字手段である。サーマルヘッド28は、プリンタカバー3が閉鎖状態のときにプラテンローラ10に対向するように設けられている。
後述するが、サーマルヘッド28には、回路基板(図示せず)に接続するフレキシブルケーブルが着脱可能に取り付けられている。サーマルヘッド28は、連続紙Pの幅方向に沿って配列される複数の発熱素子(発熱抵抗体)を備え、回路基板から送信される信号に基づいて複数の発熱素子を選択的に通電することで印字を行う。
【0021】
図2に示すように、サーマルヘッド28の前方には、コイルばね55が配置される。コイルばね55の後方の一端はサーマルヘッド28に当接し、コイルばね55の前方の他端は内部フレームに当接している(
図19も参照)。コイルばね55は、印字時にサーマルヘッド28をプラテンローラ10に向けて付勢し、それによってサーマルヘッド28が印字に最適な圧力でプラテンローラ10に押圧される。
【0022】
プリンタ1は、剥離ユニット4を有し、剥離ユニット4を連続発行位置と剥離発行位置の間で移動させることによって、連続発行及び剥離発行を行う。
図1Bに示すように、プリンタカバー3が開放位置にあるときには剥離ユニット開放用ボタン52bが露出する。剥離ユニット開放用ボタン52bを操作することで、剥離ユニット4を動作させることができる。
図2は、剥離ユニット開放用ボタン52bを操作したときの剥離ユニット4の状態を示している。
後述するが、剥離ユニット開放用ボタン52bは、連続発行から剥離発行に切り替えるときに操作者によって操作される。
【0023】
図2に示すように、剥離ユニット4は、剥離ローラカバー41と、剥離ローラ45を保持する剥離ローラ保持部42と、を有する。剥離ローラカバー41は、連続発行時に剥離ローラ保持部42を覆うように構成されている。剥離ローラカバー41は、本体ケース2内の内部フレームに軸支されており、剥離ユニット開放用ボタン52bの操作に応じて閉鎖位置から開放位置(
図2に示す状態)まで揺動する。
剥離ローラ保持部42は、剥離ローラカバー41に軸支されている。連続発行時には、剥離ローラ保持部42は、剥離ローラカバー41の裏面の下に折り畳まれるようにして収容される。
剥離ユニット4については、後に詳述する。
【0024】
プリンタカバー3には、センサ35が設けられている。センサ35は、プリンタカバー3の閉鎖時において、ロール紙Rから引き出された連続紙Pがプラテンローラ10に達するまでの間の通紙ルートに配置され、ラベルPLの位置を検出する。このセンサ35の検出結果に基づいて、連続紙Pの搬送量を制御することが好ましい。
【0025】
図示しないが、連続発行後の連続紙Pの台紙PMを切断するカッタを設けるとよい。カッタを設ける場合、カッタは、排出部20において連続紙Pの幅方向に沿って延在した状態で設置される。また、剥離バー12をカッタとして機能させてもよい。
【0026】
[連続発行及び剥離発行]
次に、プリンタ1の連続発行及び剥離発行について、
図3を参照して説明する。
プリンタ1は、連続紙の台紙からラベルを剥離して発行する剥離発行と、台紙からラベルを剥離することなく発行する連続発行との切り替えが可能に構成されている。
【0027】
連続発行の場合は、必要枚数のラベルが貼られた台紙を用意しておき、現場でラベルを台紙から剥がして貼り付けることができるので、ラベルを貼り付ける対象物がプリンタ1から離れた場所にある場合に適している。連続発行に際しては、プリンタ1に装着された剥離ユニット4を連続発行位置にセットする。
【0028】
一方、剥離発行の場合は、ラベルが1枚ずつ台紙から剥がれた状態で排出されるのでラベルを貼り付ける対象物が操作者の近くにある場合に適している。剥離発行に際しては、プリンタ1に装着された剥離ユニット4を剥離発行位置にセットする。これにより、印字のためにプラテンローラ10を回転させ連続紙を搬送すると、台紙は剥離ローラ45とプラテンローラ10とに挟まれた状態で搬送される一方、印字後のラベルは1枚毎に台紙から剥がされてプリンタ1の外部に排出される。
【0029】
図3は、連続発行及び剥離発行のときの、剥離ユニット4、プラテンローラ10、剥離バー12、及び、サーマルヘッド28の位置関係を示す概略の部分断面図である。
図3では、剥離ユニット4の剥離ローラカバー41及び剥離ローラ保持部42について、外形線のみで表している。剥離ローラカバー41の外形線については点線で示している。
また、連続発行と剥離発行とでは剥離ローラ保持部42の位置が異なるため、剥離ローラ保持部42にのみ斜線を付している。
連続発行のときの剥離ユニット4の位置は連続発行位置に相当し、剥離発行のときの剥離ユニット4の位置は剥離発行位置に相当する。
【0030】
図3に示すように、連続発行の際には、剥離ローラ保持部42は剥離ローラカバー41の下に収容されており、それによって剥離ローラ45は、プラテンローラ10から離間した位置にあり、連続紙Pの排出を妨げない。ロール紙Rから引き出された連続紙Pがプラテンローラ10とサーマルヘッド28によって挟持され、連続紙P上のラベルに印字される。
【0031】
連続発行から剥離発行に切り替える際には、剥離ローラ保持部42は、軸42aを中心として
図3の揺動した位置に移動させる。
図3に示すように剥離発行の際には、剥離ローラ45は、プラテンローラ10に対向する位置に配置される。剥離発行においても、ロール紙Rから引き出された連続紙Pがプラテンローラ10とサーマルヘッド28によって挟持され、連続紙P上のラベルに印字される点は、連続発行と同じである。剥離発行では、ロール紙Rから引き出された連続紙Pの台紙PMは、剥離バー12において急旋回させられ、プラテンローラ10と剥離ローラ45に挟持されて排出される。剥離バー12での台紙PMの急旋回に伴って、ラベルPLは、台紙PMから剥離されて排出される。
【0032】
[プリンタカバー3の開放動作]
次に、
図4及び
図5を参照して、プリンタカバー3の開放動作について説明する。併せて、カバー開放用レバー51及び剥離ユニット開放用レバー52についても説明する。
【0033】
図4は、プリンタカバー閉鎖時とカバー開放用ボタン操作時のカバー開放用レバー51、剥離ユニット開放用レバー52(揺動部材の一例)、プラテン保持ブラケット27(ロック部材の一例)、及び、剥離ユニット4の側面図である。なお、
図4では、一例として、剥離ユニット4が連続発行位置にある場合を示している。
図4に示すように、側面視で見たときに、カバー開放用レバー51と剥離ユニット開放用レバー52は、前後方向に対向配置される一方で、異なる高さで前後方向に延びており、スペース効率に優れた配置となっている。
【0034】
図5は、プリンタカバー閉鎖時のカバー開放用レバー51、剥離ユニット開放用レバー52、プラテン保持ブラケット27、及び、剥離ユニット4を後方の視点から見たときの斜視図である。
図5では、剥離ユニット4は図示を省略している。
【0035】
カバー開放用レバー51は、
図1Aに示したように外部に露出するカバー開放用ボタン51bを有する。カバー開放用レバー51には軸挿入孔51aが形成され、この軸挿入孔51aが内部フレームに設けられた軸部56(
図5には不図示)に挿入されている。それによって、カバー開放用レバー51は、軸部56の回りを揺動可能に構成される。
図5に示すように、カバー開放用レバー51は、内側に突出した突部51cを有する。
【0036】
図5に示すように、プラテン保持ブラケット27は軸27aを有する。軸27aの一端は、剥離ユニット開放用レバー52に設けられたボス52aに挿入され、軸27aの他端は、図示しない内部フレームに設けられたボスに挿入される。それによって、プラテン保持ブラケット27は、軸27aの回りを揺動可能に構成される。
なお、
図5では見えないが、剥離ユニット開放用レバー52は、内側に突出する係合突部523(
図4参照)を有する。後述するが、係合突部523は、剥離ユニット4の剥離ローラカバー41と係合している。
【0037】
プラテン保持ブラケット27の側壁には孔27cが形成され、孔27cにはカバー開放用レバー51の突部51cが挿入される。ここで、孔27cは、側面視において突部51cよりも大きく形成されている(つまり、孔27cには遊びがある)ため、プラテン保持ブラケット27が揺動可能である。プラテン保持ブラケット27は軸27aの回りを揺動し、カバー開放用レバー51は軸部56(
図4参照)の回りを揺動するため、両者で揺動軸が異なる。そこで、孔27cに遊びを設けることで、揺動軸の違いによる孔27cと突部51cの軌跡の違いを吸収するように構成されている。
【0038】
剥離ユニット開放用レバー52は、ボス52aに挿入された軸27aの回りを回動(又は揺動)可能に構成される。すなわち、プラテン保持ブラケット27と剥離ユニット開放用レバー52は、単一の揺動軸である軸27aを共有するため、剥離ユニット開放用レバー52のための別個の揺動軸を設ける必要がなく、省スペース及び低コストに寄与する。なお、その限りではなく、別の実施形態では、プラテン保持ブラケット27と剥離ユニット開放用レバー52とでそれぞれ個別の揺動軸を設定してもよい。
【0039】
剥離ユニット開放用ボタン52bの直下の位置において、剥離ユニット開放用レバー52と内部フレーム(不図示)の間にコイルばね53(付勢部材の一例)が配置される。コイルばね53の復元力に抗して剥離ユニット開放用レバー52が下向きに押下(操作)された場合に、剥離ユニット開放用レバー52は軸27aの回りを揺動(
図4の時計回りに揺動)する。後述するが、剥離ユニット開放用レバー52の揺動に伴って、係合突部523を介して剥離ユニット4が揺動し、閉鎖位置から開放位置に移動する。
剥離ユニット開放用ボタン52bの下向きの押下力を解除すると、剥離ユニット開放用レバー52は、コイルばね53の復元力により押下前の位置に戻る(揺動する)。
【0040】
プラテン保持ブラケット27は、一対のコイルばね29により付勢されている。
図5において、各コイルばね29の一端はプラテン保持ブラケット27に接続され、各コイルばね29の他端は内部フレーム(不図示)に接続される。
プラテン保持ブラケット27に外力が加わらない場合には、プラテン保持ブラケット27は、
図4に示すプリンタカバー閉鎖時の位置にあり、溝27bにおいてプラテン軸10aを保持している。この位置は、プラテン軸10aが連結されたプリンタカバー3を閉鎖位置にロックするロック位置である。
【0041】
ここで、カバー開放用ボタン51bが押下(操作)された場合、カバー開放用レバー51は、軸部56の回りを揺動(
図4で反時計回りに揺動)する。カバー開放用レバー51の揺動に伴って、突部51cがプラテン保持ブラケット27の孔27cの周縁を押圧し、コイルばね29の復元力に抗してプラテン保持ブラケット27を軸27aの回り(
図4の時計回り)に揺動させる。
上述したように、プラテン軸10aが取り付けられているプリンタカバー3は、閉鎖位置から開放位置に向けて付勢されているため、プラテン保持ブラケット27の揺動によりプラテン軸10aが溝27bから外れると開放位置に移動する。このときのプラテン保持ブラケット27の位置は、プリンタカバー3の閉鎖位置におけるロックを解除するロック解除位置である。
【0042】
逆に、プリンタカバー3を閉じるときには、プリンタカバー3を閉じる操作者の押下力により、コイルばね29の復元力に抗して、プリンタカバー3に取り付けられたプラテン軸10aがプラテン保持ブラケット27の傾斜した頂部を押下する。それによって、プラテン保持ブラケット27が
図4の時計回りに揺動させ、プラテン軸10aがプラテン保持ブラケット27の溝27bに挿入される。プラテン軸10aが溝27bに挿入された状態では、プラテン保持ブラケット27は、コイルばね29の復元力により、
図4に示すプリンタカバー閉鎖時のロック位置に戻る。
【0043】
[剥離ユニット4]
次に、剥離ユニット4について、
図6~
図9を参照して説明する。
【0044】
図6は、開放時と閉鎖時における剥離ユニット4の斜視図である。なお、
図6の閉鎖時における剥離ユニット4は、連続発行位置にある場合を示している。
剥離ユニット4の開放位置とは、剥離ユニット開放用ボタン52bの操作に伴って剥離ローラカバー41が開放した位置である。つまり、剥離ユニット4の開放位置は、剥離ローラカバー41の開放位置に相当する。
【0045】
剥離ローラカバー41の開放位置とは、
図2に示すように、プリンタ1の内部の少なくとも一部、言い換えれば、本体ケース2の内部の少なくとも一部を開放する位置である。例えば、
図2に示したように、剥離ローラカバー41が開放位置にあるときには、本体ケース2の内部にあるコイルばね55やサーマルヘッド28に接続されるフレキシブルケーブル57(
図21参照)等が開放状態となる。別の観点では、剥離ローラカバー41の開放位置とは、本体ケース2の内部にあるサーマルヘッド28を開放する位置であるともいえる。さらに別の観点では、剥離ローラカバー41の開放位置とは、剥離ローラ保持部42が剥離ローラカバー41の裏面に対向する位置にある場合に、当該位置にある剥離ローラカバー41を開放可能とする位置であるともいえる。
図6に示すように、剥離ローラカバー41が開放位置にあるとき(開放時)には、剥離ローラ保持部42が上方に突出した状態(突出状態)となる。
【0046】
剥離ユニット4の閉鎖位置とは、剥離ローラカバー41が閉鎖した位置である。つまり、剥離ユニット4の閉鎖位置は、剥離ローラカバー41の閉鎖位置に相当する。
剥離ローラカバー41の閉鎖位置とは、開放位置のときに開放されるプリンタ1の内部の少なくとも一部、言い換えれば、開放位置のときに開放される本体ケース2の内部の少なくとも一部を閉鎖する位置である。例えば、
図1に示したように、剥離ローラカバー41が閉鎖位置にあるときいは、コイルばね55やフレキシブルケーブル57等が外から見えず閉鎖状態となっている。別の観点では、剥離ローラカバー41の閉鎖位置とは、本体ケース2の内部にあるサーマルヘッド28の少なくとも一部を閉鎖する位置であるともいえる。さらに、別の観点では、剥離ローラカバー41の閉鎖位置とは、剥離ローラ保持部42が剥離ローラカバー41の裏面に対向する位置にある場合に、剥離ローラカバー41を開放させずに当該位置に留める位置であるともいえる。剥離ローラカバー41が閉鎖位置にあるとき、連続発行の場合と剥離発行の場合とで剥離ローラ保持部42の位置が異なる。
図6に示すように、連続発行時において剥離ローラカバー41が閉鎖位置にあるとき(閉鎖時)には、剥離ローラ保持部42は、剥離ローラカバー41の下に収容された状態(収容状態)となっている。
【0047】
図6を参照すると、剥離ローラカバー41は一対の軸41a(第1軸の一例)を有し、軸41aの回りを揺動可能に構成された揺動部材である。軸41aは断面円形であり、内部フレームに設けられた図示しない筒状部に挿入され、回動可能に構成される。筒状部には、軸41aが内部で、例えば、プリンタ前後方向に僅かに変位可能となるように、プリンタ前後方向で長孔が形成されていることが好ましい。それによって、軸41aが筒状部に挿入されたときに、プリンタ前後方向で遊びを設けることができ、プリンタ1の落下等に対する耐衝撃性を向上させることができる。
なお、筒状部に形成される長孔の方向は、プリンタ前後方向に限られず、例えばプリンタ1の上下方向等、プリンタ1の左右方向に直交する面内の任意の方向に設定することができる。
【0048】
剥離ローラカバー41は、プラテンローラ10が延在する方向と同じ方向に延在している。剥離ローラカバー41は、表面411と裏面412を有する。表面411は、剥離ローラカバー41が閉鎖位置にあるときに露出する面である。裏面412は、剥離ローラ保持部42が収容可能となるように凹みが形成されている。逆に表面411は、前後方向で中央が膨らんだ形状となっており、排出部20にカッタを設ける場合、台紙を切断する場合に都合が良い。
剥離ローラカバー41には、軸41aの近傍に係合孔415が形成されている。後述するように、係合孔415には、剥離ユニット開放用レバー52の係合突部523が挿入される。
【0049】
剥離ローラカバー41の側部には、一対のU字溝413(当接部の一例)が設けられてもよい。U字溝413は、軸41aが閉鎖位置にあるときに、内部フレームに形成された突部26(
図18参照)と当接する。U字溝413は、突部26に当接することで、剥離ユニット4の上下方向の位置決めとして機能する。U字溝413が突部26と当接した状態では、剥離ユニット4とサーマルヘッド28の間に所定の隙間が設けられるように構成される。そのため、剥離ユニット4とサーマルヘッド28が干渉することを確実に防止することができる。
前述したように、剥離ユニット4の軸41aは、好ましくは、内部フレームの筒状部に形成された、プリンタ前後方向において長孔に挿入され、それによってプリンタ前後方向に遊びが設けられる。このとき、U字溝413は、突部26(
図18参照)と当接して係合することで、長孔に挿入された軸41aの遊びに起因する剥離ユニット4(剥離ローラカバー41)のプリンタ前後方向の位置ブレを防止する(つまり、剥離ユニット4のプリンタ前後方向の位置決めとして機能する)。
【0050】
なお、U字溝413及び突部26を設けることは必須ではない。剥離ユニット4の一部と内部フレームとが、剥離ユニット4とサーマルヘッド28の間に隙間を確保した状態で当接できればよく、当接部分の形状は適宜形成できる。また、このような当接構造に代えて、例えば、剥離ローラカバー41の軸41aの可動範囲を規制することで、剥離ユニット4の上下方向の位置決めを行うこともできる。
【0051】
剥離ローラカバー41の表面411には、剥離センサ47が配置される。剥離センサ47は、剥離発行時に剥離されたラベルの有無を検出する光反射型センサである。
図3において剥離バー12によって剥離されたラベルPLは、搬送方向上流側の一部が剥離バー12付近に止まるように搬送制御され、それによって剥離されたラベルPLは、その粘着力によって剥離バー12に留まるが、このラベルPLの有無が剥離センサ47によって検出される。剥離されたラベルを操作者が取り出すと、剥離センサ47によってラベルPLが無いことが検出され、次のラベルを発行するように制御される。
【0052】
図6を参照すると、剥離ローラ保持部42は、剥離ローラ45を保持する部材である。
剥離ローラ保持部42は、剥離ローラカバー41と同様に、プラテンローラ10が延在する方向と同じ方向に延在している。剥離ローラ保持部42は、剥離ローラカバー41の裏面412の下に収容可能となるように、一対の軸42aが剥離ローラカバー41の一対の軸41aよりも内側に配置され、剥離ローラ保持部42の幅が剥離ローラカバー41の幅より狭くなっている。
【0053】
剥離ローラ保持部42は、一対の軸42a(第2軸の一例)を有し、軸42aの回りを揺動可能に構成された揺動部材である。一対の軸42aは、軸41aから離間した位置において剥離ローラカバー41に軸支されている。軸42aから延びるアーム421の先に剥離ローラ45が配置されている。そのため、
図6に示すように、剥離ユニット4の開放時には、軸41aを基準として、剥離ローラ45は上方に大きく突出する。
【0054】
すなわち、剥離ローラ保持部42は、剥離ローラ45が剥離ローラカバー41の下に収容される被収容位置(剥離ローラ保持部の第1位置の一例)と、剥離ローラ45が剥離ローラカバー41に覆われない突出位置(剥離ローラ保持部の第2位置の一例;
図6の開放時の位置)との間で揺動可能である。剥離ローラ保持部42の被収容位置は、剥離ローラカバー41の裏面412に対向する位置でもあり、剥離ローラカバー41に覆われる位置でもある。
剥離ローラ保持部42を収容するときには、剥離ローラ保持部42を軸42aの回りに剥離ローラカバー41の裏面412まで揺動させ、さらに剥離ローラカバー41及び剥離ローラ保持部42の全体を軸41aの回りに揺動させる。それによって、剥離ローラ保持部42は、折り畳むようにして剥離ローラカバー41の下にコンパクトに収容される。
【0055】
他方、剥離ローラカバー41が開放位置に位置する場合、剥離ローラ保持部42は、被収容位置と突出位置との間で揺動可能である。また、剥離ローラ保持部42は、後述するように、コイルばね43によって被収容位置から突出位置に向けて付勢されているため、剥離ローラカバー41が閉鎖位置から開放位置に移動すると直ちに、剥離ローラ保持部42は、被収容位置から突出位置に向けて飛び出すように移動する。それによって、操作者は、直ちに連続発行から剥離発行に切り替えることができる。
また、剥離ローラ保持部42が突出位置にあるときには、剥離ローラ45が高く突出し、それによって剥離ユニット4を剥離発行位置にセットするときに剥離ローラ45を遠くに移動させることができる。
【0056】
一対の軸42aを起点として一対のアーム421が延びている。一対のアーム421の先端には、剥離ローラ45及び補助ローラ46を自転させる軸45aが配置される。各補助ローラ46の径は、剥離ローラ45の径よりも小さい。剥離ローラ45の両側に補助ローラ46を設けることで、幅広のラベルを剥離発行する際に幅広の台紙を円滑に排出させることができる。つまり、補助ローラ46がないとしたならば幅広の台紙が幅方向(左右方向)に動いてしまうが、補助ローラ46を設けることで幅広の台紙の安定した搬送を可能とする。
なお、補助ローラ46を設けることは必須ではない。補助ローラ46がない場合でも剥離ローラ45がある限り、剥離発行を実行することができる。
各アーム421には、外側に突出した突起422が形成される。後述するが、突起422は、剥離発行時に、剥離ユニット4をプリンタカバー3と係合させるために設けられている。
【0057】
図6に示すように、剥離ローラ保持部42の一対の軸42aの近傍には、一対のコイルばね43(付勢部材の一例)が設けられる。図示しないが、コイルばね43は、一端が剥離ローラ保持部42に連結され、他端が剥離ローラカバー41に連結されており、それによって、剥離ローラ保持部42を被収容位置から突出位置まで揺動する方向に付勢している。そのため、剥離ローラカバー41が開放位置にある場合(つまり、剥離ユニット4が開放位置にある場合)、剥離ローラ保持部42は常に突出位置にある状態となっている。
【0058】
図7は、開放時の剥離ユニット4について、
図6とは別の視点から見た斜視図である。剥離ローラ保持部42が突出位置に位置するときには、剥離ローラ保持部42のアーム421の一部が剥離ローラカバー41の表面411に当接する。すなわち、剥離ローラカバー41の表面411は、コイルばね43によって揺動する剥離ローラ保持部42のストッパとして機能する。
【0059】
次に、連続発行時から剥離ユニット4を開放位置にするときの動作について、
図8及び
図9を参照して説明する。
図8及び
図9は、剥離ユニット開放用レバー52及び剥離ユニット4の側面図であり、状態S1~S3は当該側面図を時系列で順に示したものとなっている。
状態S1は連続発行においてプリンタカバー3の開放時の状態、状態S2は剥離ユニット開放用ボタン操作継続時の状態、状態S3は剥離ユニット開放用ボタン操作解除時の状態をそれぞれ示している。
【0060】
剥離ユニット開放用レバー52と剥離ユニット4は、剥離ローラカバー41の係合孔415に対して内側から剥離ユニット開放用レバー52の係合突部523が挿入されることで係合している。剥離ユニット開放用レバー52は、剥離ローラカバー41を閉鎖位置と開放位置の間で移動させるように揺動する。
係合孔415は例えばハート形状をなしており、係合孔415内を係合突部523が移動可能となっている。
図8の状態S1に示すように、連続発行においてプリンタカバー3の開放時には、係合突部523は、係合孔415の下側に位置する。このとき、剥離ローラ保持部42は、剥離ローラカバー41の裏面412(
図6参照)の下の被収容位置にある。
【0061】
ここで、剥離ユニット開放用ボタン52bが押下(操作)された場合、剥離ユニット開放用レバー52は、軸27aの回りを
図8において時計回りに揺動する。それによって、剥離ユニット開放用レバー52の係合突部523は、係合孔415内を上方に移動し、係合孔415の上側の縁において剥離ローラカバー41を上方に押圧する。それによって、剥離ローラカバー41は、軸41aの回りを
図8の反時計回りに開放位置に向かって揺動する。前述したように、剥離ローラ保持部42には、コイルばね43(
図6参照)によって被収容位置から突出位置に向かう揺動方向に付勢されている。そのため、剥離ローラカバー41が開放位置に向かって揺動すると、後述の第2ストッパ522による剥離ローラ保持部42の位置規制が解除されて、剥離ローラ保持部42が揺動可能な空間が形成されるため、剥離ローラ保持部42は、
図8の状態S2に示すように突出位置まで揺動する。
【0062】
図8の状態S2に示すように、剥離ローラカバー41が開放位置のときには、閉鎖位置のときよりも軸42aが高い位置にある。また、上述したように、プリンタ1には、剥離ローラカバー41が開放位置のときに、剥離ローラ保持部42が被収容位置から突出位置まで揺動可能な空間が形成されている。そのため、コイルばね43の付勢力によって剥離ローラ保持部42が勢いよく上方に突出することができる。
【0063】
状態S2に示す状態から剥離ユニット開放用ボタン52bの押下を解除した場合、コイルばね53の復元力によって剥離ユニット開放用レバー52は、軸27aの回りに
図8において反時計回りに揺動する。それによって、剥離ユニット開放用レバー52及び剥離ローラカバー41は、状態S1の位置に戻る。しかし、一旦突出位置まで揺動した剥離ローラ保持部42は、被収容位置に戻ることはなく突出位置のままである。その結果、剥離ユニット4は、
図9の状態S3に示す形態となる。
【0064】
[剥離ユニット4とプリンタカバー3の係合]
プリンタ1では、
図9の状態S3のときにプリンタカバー3を開放位置から閉鎖位置に揺動させることで、プリンタカバー3と剥離ユニット4が係合しながら、剥離ユニット4を剥離発行位置にセットすることができる。
そこで、以下では、
図10及び
図11を参照して、剥離発行のときの剥離ユニット4とプリンタカバー3の係合について説明する。
先ず、剥離ユニット4と係合するためのプリンタカバー3の構造について、
図10を参照して説明する。
図10Aはプリンタカバー3の平面図であり、
図10Bは
図10AのA-A拡大断面図である。
【0065】
図10Aに示すように、プリンタカバー3は、前端に一対の剥離ユニット受入部31を有する。剥離ユニット受入部31は、プラテンローラ10及び剥離バー12が支持されている位置の近傍に設けられている。
図10Bに示すように、剥離ユニット受入部31には、前方が開放したガイド溝31pが形成されている。ガイド溝31pは、プリンタカバー3の前端から後端に向かう方向に沿って内側のみが開放する溝である。ガイド溝31pは、プリンタカバー3が閉じる過程で前方に位置する剥離ユニット4の突起422(
図9参照)を受け入れる。
【0066】
ガイド溝31p内には、ローラ押圧機構37が設けられている。後述するように、ローラ押圧機構37は、プリンタカバー3が閉鎖位置にあるときに剥離ローラ45をプラテンローラ10に向けて押圧し、それによって剥離ローラ45とプラテンローラ10で台紙を挟持するときのニップ圧を発生させることができる。
ローラ押圧機構37は、ガイド溝31p内に配置される当接部32と、当接部32の後方に配置されるコイルばね33(付勢部材の一例)と、を備える。プリンタカバー3の閉鎖位置への移動に伴って、剥離ユニット4の突起422は、当接部32まで案内される。
【0067】
図9の状態S3のときにプリンタカバー3を開放位置から閉鎖位置に移動させる操作を行うと、プリンタカバー3の移動過程で、剥離ユニット受入部31のガイド溝31pに剥離ユニット4の突起422が進入する。プリンタカバー3が閉鎖位置に揺動するにつれて、突起422がガイド溝31pに沿ってプリンタカバー3の後方に進行し、当接部32に当接する。このようにして、プリンタカバー3が剥離ユニット4と係合する。プリンタカバー3が閉鎖位置に達すると、プリンタカバー3に係合している剥離ユニット4の剥離ローラ45は、プラテンローラ10に対向する位置にある。
したがって、操作者は、プリンタカバー3を閉じる操作を行うのみで、プリンタカバー3を剥離ユニット4と係合させるとともに、剥離ユニット4を剥離発行位置に移動させることができる。
【0068】
図11は、プリンタカバー3が完全に閉じられ、剥離ユニット4が剥離発行位置にセットされたときのプラテンローラ10の近傍を示す拡大断面図である。
図11に示すように、プリンタカバー3が閉鎖位置にある場合、剥離ユニット4の剥離ローラ45がプラテンローラ10に対向する位置に配置される。剥離ユニット4の突起422が、プリンタカバー3の剥離ユニット受入部31の当接部32に当接し、当接部32の後方のコイルばね33が圧縮した状態となっている。コイルばね33の復元力が突起422を通して剥離ローラ45に作用するため、剥離ローラ45をプラテンローラ10に押圧させることにより、台紙を挟持するときのニップ圧を発生させることができる。これにより、剥離ローラ保持部42の軸42a回りの回転方向の力(
図11のF5c)を剥離ローラ45とプラテンローラ10のニップ圧に置き換えている。
【0069】
一実施形態では、
図11に示すように、側面視で見て、突起422が当接する当接部32の当接面の法線方向(F5bの示す方向)と、剥離ローラ45の中心からプラテンローラ10の中心に向かう方向とは、同一であってもよいが、突起422と当接部32の当たる角度によってF5の力の方向が変わるため、同一に限定するものではない。
図11に示すように、突起422に作用する当接部32の反力F5のうち当接面に対する法線成分の分力F5bにより、剥離ローラ45をプラテンローラ10に押圧させ、台紙を挟持するときのニップ圧をより効果的に発生させることができる。
【0070】
[剥離ローラ保持部42を収容する動作]
次に、
図12及び
図13を参照して、突出位置にある剥離ローラ保持部42を剥離ローラカバー41の下に収容して、剥離ユニット4を連続発行位置にセットするときの動作について説明する。
剥離発行から連続発行に切り替えるには、カバー開放用ボタン51bを押下してプリンタカバー3を開け、剥離ユニット開放用ボタン52bを押下する。すると、
図8の状態S2に示したように、剥離ローラカバー41が開放位置まで揺動するとともに、剥離ローラ保持部42が突出位置まで揺動する。この状態で、操作者が、剥離ローラ保持部42を折り畳んで剥離ローラカバー41の下に収容する操作(折り畳み操作)を行うことで、剥離ユニット4を連続発行位置にセットすることができる。
【0071】
図12及び
図13の状態S5~S9は、操作者が剥離ユニット4の折り畳み操作を行うときの剥離ユニット開放用レバー52と剥離ユニット4を時系列で示す斜視図である。
図12に示すように、剥離ユニット開放用レバー52は、内側に突出する第1ストッパ521(第1規制部の一例)及び第2ストッパ522(第2規制部の一例)を有する。第1ストッパ521及び第2ストッパ522は、前後に離間して配置され、剥離ローラ保持部42のアーム421に当接することで、アーム421の揺動を規制するために設けられている。
【0072】
図12の状態S5は、剥離ローラカバー41が開放位置に位置するとともに、剥離ローラ保持部42が突出位置に位置する状態であり、
図8の状態S2と同じである。この状態は、操作者が剥離ユニット開放用ボタン52bを押下し続けることで維持される。
【0073】
状態S5において操作者が、剥離ローラ保持部42を軸42aの回りに回動(又は揺動)させ、剥離ローラカバー41の裏面412の下の被収容位置まで移動させる操作を行うと、状態S6になる。このとき、操作力によって、アーム421のうち軸42aから最も遠い部分が第1ストッパ521を乗り越える。そのため、アーム421が第1ストッパ521と当接することで、コイルばね43(
図6参照)の復元力に抗して剥離ローラ保持部42の揺動が規制される。つまり、第1ストッパ521は、剥離ローラ保持部42が被収容位置に位置し、かつ剥離ローラカバー41が開放位置に位置する場合に、アーム421と当接することで剥離ローラ保持部42の揺動を規制する。
第1ストッパ521が剥離ローラ保持部42の揺動を規制することで、剥離ローラ保持部42を被収容位置に止めたまま剥離ローラカバー41を閉鎖位置まで移動させることが容易となる。第1ストッパ521がなかったとしたならば、操作者は、剥離ローラ保持部42が被収容位置から揺動しないように手で押さえながら、剥離ユニット開放用ボタン52bの押下を解除して剥離ローラカバー41を閉鎖位置に移動させる必要がある。すなわち、第1ストッパ521を設けることで操作性が良好になる。
【0074】
剥離ローラ保持部42を第1ストッパ521により被収容位置にロックした状態で、操作者が剥離ユニット開放用ボタン52bの押下を解除すると、剥離ローラカバー41が閉鎖位置に向かって移動を開始する。状態S7は、剥離ローラカバー41が閉鎖位置に向かう途中の状態を示している。
剥離ローラカバー41が閉鎖位置に向かう過程において、剥離ローラカバー41の揺動に伴って、第1ストッパ521によるアーム421の揺動規制が解除される。すなわち、剥離ローラカバー41の所定の角度まで閉じられたときにアーム421の揺動規制が解除されるように、アーム421の外縁が形成されている。
【0075】
図13の状態S8は、状態S7から操作者がさらに剥離ローラカバー41を閉じた時点の状態である。第1ストッパ521による揺動規制が解除された剥離ローラ保持部42はコイルばね43の復元力により揺動するが、第1ストッパ521よりも後方にある第2ストッパ522により再度揺動が規制される。つまり、第2ストッパ522は、剥離ローラ保持部42が開放位置から閉鎖位置に移動する間にアーム421と当接することで、被収容位置と突出位置の間の位置で剥離ローラ保持部42の揺動を規制する。状態S9は、剥離ローラカバー41が閉鎖位置にある状態であり、剥離ユニット4は連続発行位置にある。
第2ストッパ522を設けることで、剥離ローラカバー41が開放位置から閉鎖位置まで移動する間に剥離ローラ保持部42が揺動することを防止できる。さらに、第2ストッパ522は第1ストッパ521よりも後方に位置しているため、状態S9に示すように、剥離ユニット4が連続発行位置にある状態で剥離ユニット開放用ボタン52bを操作したときに、剥離ローラ保持部42を円滑に突出位置まで揺動させることができる。
【0076】
なお、第1ストッパ521及び第2ストッパ522を設けることは必ずしも必要ない。いずれかのストッパを設けるだけでも操作性の向上に寄与する。第1ストッパ521及び第2ストッパ522の両方が設けない場合であっても、剥離ユニット4の折り畳み操作を行うことは可能である。すなわち、操作者が剥離ローラ保持部42を手で被収容位置に止めつつ、剥離ローラカバー41を注意深く閉鎖位置まで移動させるようにすることで、剥離ローラ保持部42を剥離ローラカバー41の下に収容させることは可能である。
【0077】
[プリンタ1の連続発行と剥離発行の切り替え動作]
次に、プリンタ1の連続発行と剥離発行の切り替え動作について
図14及び
図15を参照して説明する。
図14及び
図15の状態S10~S15は、連続発行から剥離発行に切り替えるときのプリンタ1の要部の側面図を時系列で順に示したものである。なお、
図15では、プラテン保持ブラケット27の図示を省略してある。
【0078】
図14の状態S10は、連続発行時のプリンタ1の状態を示している。この状態では、プリンタカバー3に軸支されたプラテンローラ10のプラテン軸10aがプラテン保持ブラケット27の溝27bに嵌まり込むことによりプリンタカバー3が保持されている。状態S10では、剥離ユニット4が連続発行位置にセットされている。
【0079】
状態S10において操作者がカバー開放用ボタン51bを押下すると、プラテン保持ブラケット27によるプラテン軸10aの保持が解除されるため、状態S11に示すように、ヒンジ8(
図2参照)に設けられた捩りばねの付勢力によってプリンタカバー3が開放位置に向かって移動する。
次いで、操作者が剥離ユニット開放用ボタン52bを押下すると、状態S12に示すように、剥離ローラカバー41が閉鎖位置から開放位置まで揺動するとともに、剥離ローラ保持部42が被収容位置から突出位置まで揺動する。その後、操作者が剥離ユニット開放用ボタン52bの押下を解除すると、
図15の状態S13に示すように、剥離ローラカバー41は閉鎖位置に戻るが、剥離ローラ保持部42はコイルばね43(
図6参照)の付勢力により突出位置のままである。
【0080】
次いで、操作者がプリンタカバー3を閉じる操作を行うと、突出位置にある剥離ローラ保持部42の突起422がプリンタカバー3のガイド溝31p(
図10参照)に挿入され、ガイド溝31pに沿って案内されることで、状態S14に示すように、プリンタカバー3と剥離ユニット4が係合する。
【0081】
状態S15に示すように、プリンタカバー3が閉鎖位置になると、プラテンローラ10のプラテン軸10aがプラテン保持ブラケット27に保持されるとともに、剥離ユニット4が剥離発行位置にセットされる。すなわち、剥離ユニット4の剥離ローラ45がプラテンローラ10に対向する位置に配置され、プラテンローラ10とともに台紙PMを挟持する。この状態では、前述したように、プリンタカバー3に係合した突起422がコイルばね33に押圧されることで(
図11参照)、剥離ローラ45のプラテンローラ10に対する適切なニップ圧が発生する。
剥離発行では、サーマルヘッド28によって印字されたラベルPLは、剥離バー12によって台紙PMが急旋回させられることで台紙PMから剥離される。剥離ローラ45は、プラテンローラ10の回転に応じて従動回転し、台紙PMを排出する。
【0082】
剥離発行から連続発行に切り替えるときには、カバー開放用ボタン51bを押下してプリンタカバー3を開け、次いで、剥離ユニット開放用ボタン52bを押下する。それによって、剥離ユニット4の剥離ローラカバー41が開放位置まで揺動し、剥離ローラ保持部42が突出位置まで揺動する。その後、
図12及び
図13を参照して説明したように、剥離ユニット4の折り畳み操作を行うことで、剥離ユニット4が連続発行位置にセットされる。
【0083】
以上説明したように、一実施形態に係るプリンタ1は、連続発行位置と剥離発行位置との間で移動可能な剥離ユニット4を備え、剥離ユニット4が連続発行位置にあるときには、剥離ローラ45を保持する剥離ローラ保持部42を剥離ローラカバー41の裏面の下の被収容位置にコンパクトに収容することができる。
連続発行から剥離発行に切り替えるときには、プリンタカバー3を開け、剥離ユニット開放用ボタン52bを操作することで剥離ローラ保持部42を突出位置に移動させ、プリンタカバー3を閉じる操作で済む。つまり、簡単な3ステップの簡単なアクションで切り替えが可能であり、操作性に優れる。しかも、プリンタカバー3が閉鎖位置にあるときには、プリンタカバー3のローラ押圧機構37によって剥離ローラ45がプラテンローラ10に押圧され、適切なニップ圧を発生させることができる。
逆に、剥離発行から連続発行に切り替えるときには、プリンタカバー3を開け、剥離ユニット開放用ボタン52bを操作することで剥離ローラ保持部42を突出位置に移動させ、剥離ローラ保持部42を被収容位置に移動させる折り畳み操作を行い、プリンタカバー3を閉じる。この場合も簡単な操作で済む。
【0084】
[サーマルヘッド28の着脱方法]
次に、プリンタ1のサーマルヘッド28のプリンタ1からの着脱方法について、
図16~
図19を参照して説明する。
図16Aは、サーマルヘッド28の両面のうちコイルばね55によって付勢されている前側(第1側の一例)を示す図であり、
図16Bは、サーマルヘッド28の後側(第2側の一例)を示す図である。サーマルヘッド28の後側は、プラテンローラ10に対向する。
図17は、
図16Aの断面A-A及び断面B-Bを拡大して示す断面図である。
【0085】
図16及び
図17に示すように、サーマルヘッド28は、平面視で実質的に矩形形状の放熱板281(基部の一例)に、基板282が取り付けられた構造となっている。放熱板281は、例えばアルミニウム等の熱伝導率の高い金属材料からなる。
図17のA-A断面でわかるように、放熱板281の表面281aから、表面281aの反対側の裏面281bの間に介在する第1端部281e1を経て、裏面281bまで延びるようにして、基板282(被覆層の一例)が放熱板281に取り付けられている。基板282は例えばセラミック基板である。
放熱板281において基板282が占める領域は被覆領域の一例である。表面281a(プリンタ1の後方を向く面)は第1面の一例であり、裏面281b(プリンタ1の前方を向く面)は第2面の一例である。
図16B及び
図17のB-B断面に示すように、サーマルヘッド28の表面281aの長手方向(横方向)において実質的な中央位置には、切欠部283c(開口部及び非被覆領域の一例)が設けられる。切欠部283cには、基板282が形成されておらず、放熱板281の表面281aが露出している。後述するが、切欠部283cには、サーマルヘッド28を揺動可能とするための凸部211(
図19参照)が当接される。
【0086】
図16A及び
図17のA-A断面に示すように、放熱板281の裏面281bに取り付けられた基板282には、限定するものではないが、例えばコネクタ285、EEPROM286(メモリチップの一例)、ダイオード287等の表面実装部品(SMD)が実装されている。サーマルヘッド28がプリンタ1に搭載された状態では、コネクタ285にフレキシブルケーブル57が接続される。フレキシブルケーブル57は、図示しないプリンタ1の回路基板からの信号をサーマルヘッド28に伝達する。
サーマルヘッド28がプリンタ1に取り付けられた状態では、放熱板281の裏面281bに実装された比較的背の高い表面実装部品(
図16Aのコネクタ285、EEPROM286、ダイオード287等)がプリンタ1の前方を向くため、サーマルヘッド28よりも後方にある排出部20から侵入し得る水分等から当該表面実装部品を保護することができる。排出部20を向くサーマルヘッド28の後側(放熱板281の表面281aのある側)には、発熱部284の近傍に駆動IC(図示せず)が実装されているが、駆動ICは背が低いことから駆動ICや配線は発熱部284とともに保護層又は被覆層により保護されているため、排出部20から侵入する水分が付着しても問題ない。
【0087】
図16Bに示したように、サーマルヘッド28の後側(発熱部284が配置されている側)は、コネクタ等の背の高い表面実装部品が配置されていないため、発熱部284に対するラベルPLの搬送角度を小さくする(つまり、側面視で見て発熱部284に対して鉛直に近い角度とする)ことができる(
図3参照)。そのため、以下の理由から、印字品質を良好にすることができる。
発熱部284は、一般に凸形状であるグレーズ層(部分グレーズ)を含むため、全体として凸形状をなしている。仮にサーマルヘッド28の後側に背の高い表面実装部品が配置されている場合には、当該表面実装部品を避けるために発熱部284に対するラベルPLの搬送角度が大きくなる。その場合、凸形状の発熱部284とラベルPLの剛性(こしの強さ)に起因して、発熱部284の位置ではラベルPLが発熱部284から浮き気味になるため、発熱部284とプラテンローラ10との間でラベルPLに最適な印字圧力を掛けることが難しい。それに対して、発熱部284に対するラベルPLの搬送角度が小さい場合には、発熱部284が凸形状であっても発熱部284の頂部近傍において、発熱部284がプラテンローラ10との間でラベルPLを適切な印字圧力で挟持することができるため、印字品質を良好にすることができる。
【0088】
放熱板281の両端面には、外側に延びる一対の軸28aが連結されている。後述するように、一対の軸28aは、サーマルヘッド28をプリンタ1の内部フレームに取り付けるために設けられている。
図16A及び
図16Bに示すように、軸28aは、放熱板281に接続される大径部分と、当該大径部分から外側に延びる小径部分と、を含むため、強度が高い構成となっている。軸28aの小径部分が後述する軸受入溝25に挿入される。
【0089】
図18は、剥離ユニット開放用ボタン52bを押下し続けることによって、剥離ローラカバー41を開放位置とし、かつ剥離ローラ保持部42を突出位置とした状態において、左右方向に直交する平面でのプリンタ1の部分断面を示す図である。
図17には、サーマルヘッド28の軸28aが挿入される軸受入溝25がよく見えるように、サーマルヘッド28及びコイルばね55を表示していない。
図18に示すように、プリンタ1の内部フレームには、実質的にL字状の軸受入溝25が形成されている。なお、
図18には、サーマルヘッド28の一対の軸28aのうち一方の軸28aを受け入れる軸受入溝25のみが記載されているが、他方の軸28aを受け入れる軸受入溝25についても同様に形成されている。
【0090】
図18において拡大して示すように、軸受入溝25は、第1溝251と第2溝252を有する。ここで、位置P1,P2は、それぞれ、軸受入溝25内で軸28aがとり得る位置を仮想的に示している。なお、本開示では、軸28aが位置P1,P2にある場合、それぞれサーマルヘッド28が位置P1,P2にある、と表記する場合がある。
【0091】
第1溝251は、位置P1(印字ヘッドの第1位置の一例)からサーマルヘッド28を着脱する方向に延びている。第2溝252は、位置P1から位置P2(印字ヘッドの第2位置の一例)まで、サーマルヘッド28の前方にあるコイルばね55がサーマルヘッド28を付勢する方向(つまり、後方向;第1方向の一例)に延びている。軸受入溝25を第1溝251と第2溝252からなるL字溝とすることで、比較的簡易な形状で、上方向に移動させることではサーマルヘッド28の取り外しができない位置(位置P2)と、上方向に移動させることでサーマルヘッド28が取り外し可能となる位置(位置P1)とを切り替えることが可能である。
【0092】
また、サーマルヘッド28は、コイルばね55がサーマルヘッド28を付勢する方向において位置P1と位置P2の間で変位可能である。そのため、サーマルヘッド28を取り付ける際には、第1溝251に沿って軸28aを位置P1まで挿入すれば、コイルばね55の付勢力によって容易に位置P2にセットすることが可能である。
【0093】
次に、
図19を参照して、サーマルヘッド28の交換方法について説明する。
図19は、サーマルヘッド28の交換方法を説明する図であり、交換対象のサーマルヘッド28の状態S20,S21の部分的な側面図を示している。
先ず、交換対象のサーマルヘッド28は、プリンタ1に取り付けられているときには、状態S20に示すように、軸受入溝25の位置P2に配置されている。この状態では、コイルばね55の付勢力により、サーマルヘッド28の全体がプラテンローラ10(
図19に図示せず)側に(つまり後方に)に付勢され、それによってサーマルヘッド28の軸28aが位置P2において安定的に位置する。
【0094】
ここで、交換対象のサーマルヘッド28を取り外すには、状態S21に示すように、交換対象のサーマルヘッド28を、位置P2から第1方向(つまり、コイルばね55がサーマルヘッド28を付勢する方向)とは反対の方向(前方)に、コイルばね55の付勢力に抗して位置P1まで移動させる。次いで、交換対象のサーマルヘッド28を位置P1から上方向(第2方向の一例)に移動させることで、交換対象のサーマルヘッド28の軸28aを軸受入溝25から離脱させ、交換対象のサーマルヘッド28を取り外す。この時点では、交換対象のサーマルヘッド28のコネクタ285にフレキシブルケーブル57が接続された状態(
図21B参照)であるため、交換対象のサーマルヘッド28のコネクタ285からフレキシブルケーブル57を分離する。
交換対象のサーマルヘッド28をフレキシブルケーブル57から分離した後、新しいサーマルヘッド28をプリンタ1に取り付けるには、取り外す場合と逆の手順を行う。
すなわち、先ず、新しいサーマルヘッド28のコネクタ285に、分離したフレキシブルケーブル57を接続させる(
図16A参照)。そして、新しいサーマルヘッド28を位置P1に挿入する操作を行うと、コイルばね55の付勢力によってサーマルヘッド28が位置P1から位置P2に移動する。つまり、新しいサーマルヘッド28を下方向(第2方向とは反対側の方向の一例)に移動させて、新しいサーマルヘッド28の軸28aを第1溝251(
図18参照)から軸受入溝25に挿入する。このとき、新しいサーマルヘッド28の裏面281b(プリンタ1の前方を向く面)で、コイルばね55の先端(コイルばね55の後方の一端)を前方(コイルばね55の付勢力に抗する方向)に押しながら挿入する。新しいサーマルヘッド28の軸28aが位置P1に達すると、コイルばね55の付勢力によって操作力を要さずに軸28aを位置P2まで移動させることができる。
以上説明したようにして、サーマルヘッド28の交換が行われる。
【0095】
図16Bに示したように、サーマルヘッド28の後側(発熱部284が配置されている側)には、コネクタ等の表面実装部品が配置されていないため、サーマルヘッド28の交換作業がし易いという利点がある。コイルばね55によってサーマルヘッド28が後方に付勢されていることも相俟って、仮にサーマルヘッド28の後側が平坦でないとサーマルヘッド28が後方の内部フレーム(例えば、壁面21等;
図20参照)と干渉して円滑にサーマルヘッド28を軸受入溝25に挿入し難くなる。それに対して、サーマルヘッド28の後側が平坦であるため、コイルばね55による付勢力が働く状況で円滑に新しいサーマルヘッド28を軸受入溝25に挿入することができる。
【0096】
サーマルヘッド28の着脱は、剥離ユニット4が開放位置にあるときに行われる。すなわち、剥離ユニット4が閉鎖位置にあるときには、サーマルヘッド28の少なくとも一部を覆う位置にあるのに対して、剥離ユニット4が開放位置にあるときには、
図2に示したように、サーマルヘッド28を覆わない位置にある。そして、サーマルヘッド28の着脱は、剥離ユニット4が開放位置にあるときに行われる。
剥離ユニット4が閉鎖位置にあるときには、剥離ユニット4とサーマルヘッド28の間には他の部材は存在せず、剥離ユニット4がサーマルヘッド28の少なくとも一部を直接覆うことになる。
【0097】
再度
図18を参照すると、剥離ローラカバー41が開放位置にある(つまり、剥離ユニット4が開放位置にある)状態では、軸28aが位置P1に位置するサーマルヘッド28を着脱可能な空間が形成される。そのため、操作者がサーマルヘッド28をプリンタ1から取り外すときには、プリンタカバー3を開け、剥離ユニット開放用ボタン52bを押下し続けることで剥離ユニット4を
図18に示す状態としつつ、上述したように、コイルばね55の付勢力に抗してサーマルヘッド28の軸28aを位置P2から位置P1にスライドする操作を行った上でサーマルヘッド28を上方に引き抜くだけでよい。
しかも、実施形態のプリンタ1は、
図2に示したように、サーマルヘッド28の後側の少なくとも一部がロール紙収容室9に対して露出しているため、ロール紙Rを一旦取り除くことでサーマルヘッド28を取り外すときの作業スペースを確保でき、さらに容易にサーマルヘッド28を取り外すことができる。すなわち、サーマルヘッド28の軸28aを位置P2から位置P1にスライドする操作を行うときには、操作者は後方から前方に向けてサーマルヘッド28に操作力を加える必要があるが、サーマルヘッド28の後方にスペースがあるために操作力を加えやすい。また、操作者がサーマルヘッド28を上方に引き抜く操作を行うときに、サーマルヘッド28の後方にスペースがあるため、当該スペースに手を入れやすく引き抜き操作がしやすくなる。
【0098】
サーマルヘッド28をプリンタ1に取り付けるときは、サーマルヘッド28をプリンタ1から取り外すときの逆の操作となる。同様に、剥離ユニット4を
図18に示す状態とし、サーマルヘッド28の裏面281b(プリンタ1の前方を向く面)でコイルばね55の先端(コイルばね55の後方の一端)を前方(コイルばね55の付勢力に抗する方向)に押しながらサーマルヘッド28の軸28aを軸受入溝25の第1溝251から位置P1に挿入することで、コイルばね55の付勢力によってサーマルヘッド28は位置P2に移動する。
よって、サーマルヘッド28の交換を工具無しに容易に行うことができる。
【0099】
別の実施形態では、軸受入溝はL字状ではなく、別の形態であってもよい。軸受入溝は、例えば、位置P1からサーマルヘッド28を着脱可能であればよいため、位置P1から斜め前方又は斜め後方に向かう溝を有してもよい。また、多少着脱し難くはなるが、軸受入溝は、
図18の位置P1を起点に、前方に進み、少し下に進み、後方に進んだ位置に位置P2を設けるように、位置P1と位置P2の間の溝経路がU字状となるようにしてもよい。この場合、操作者がU字状の溝に沿って位置P2から位置P1にサーマルヘッド28の軸28aを移動させることで、軸28aを取り外すことができる。
【0100】
[サーマルヘッド28の支持構造]
次に、
図20及び
図21を参照して、サーマルヘッド28の支持構造について説明する。
先ず、
図20を参照して、サーマルヘッド28の後方の内部フレームの構造について説明する。
図20は、内部フレームの一部を内部フレームに取り付けられている部品とともに示す斜視図であり、一部を拡大して示してある。なお、
図20には、サーマルヘッド28を表示していない。
【0101】
図20に示すように、サーマルヘッド28が配置される領域の後方(ロール紙収容室9側)において内部フレームは、サーマルヘッド28の後面に対向する壁面21を有する。壁面21には、凸部211が形成されている。凸部211(当接部の一例)は、サーマルヘッド28が装着されたときにサーマルヘッド28の後面に当接する。
図20に示すように、好ましくは、凸部211の当接面は、サーマルヘッド28の後面に向かって凸面となるように湾曲している。
【0102】
図21A及び
図21Bは共に、実施形態のプリンタ1においてサーマルヘッド28に作用する力を説明する図であり、
図21Aは上下方向に直交する平面での断面を示し、
図21Bは左右方向に直交する平面での断面を示す。なお、
図21Aと
図21Bは縮尺が異なる。
図21Aに示すように、凸部211は、サーマルヘッド28を搭載したときにサーマルヘッド28の左右方向の実質的に中央に当接する位置に設けられている。また、凸部211は、サーマルヘッド28の後側において、左右方向で一対のコイルばね55の実質的に中央位置に当接する位置に設けられている。
【0103】
前述したように、サーマルヘッド28の左右方向のほぼ中央には切欠部283c(
図16B参照)が設けられており、凸部211は、切欠部283cにおいてサーマルヘッド28と当接する。切欠部283cは、基板282によって被覆されておらず、サーマルヘッド28の放熱板281が露出した部分であるため、より安定してサーマルヘッド28を支持することができる。
なお、切欠部283cを設けることは必須ではない。切欠部283cを設けずに基板282の領域において凸部211がサーマルヘッド28を支持してもよい。
【0104】
サーマルヘッド28の後面には、凸部211と当接する位置に、凸部211に対応する形状の凹部が設けられていることが好ましい。それによって、サーマルヘッドが凸部211と当接する位置がずれ難くなり、サーマルヘッド28をより安定して支持することができる。
なお、一実施形態では、内部フレームの壁面21に凹部を設け、サーマルヘッド28の後面において、壁面21の凹部に対応する形状の凸部を設けてもよい。この場合でも、サーマルヘッド28を揺動可能としつつ、安定してサーマルヘッド28を支持することができる。
図20に示す凸部211の形状は一例に過ぎず、サーマルヘッド28を揺動可能に支持できる限り、別の形態を採ることができる。例えば、
図20に示す形状に代えて、凸部211の外形は球面の一部であってもよい。
【0105】
図21Aに示すように、プリンタ1を平面視で見た場合、サーマルヘッド28の前側には後方に作用する一対のコイルばね55による復元力F1,F2が作用し、サーマルヘッド28の後側に当接する凸部211からの反力F3が作用する。ここで、凸部211は、プリンタ1を上から見てほぼ中央に位置するため、凸部211を支点として
図21Aの時計回り及び反時計回りにサーマルヘッド28が揺動可能な構成となっている。
【0106】
図21Bに示すように、プリンタ1を側面視で見た場合、サーマルヘッド28の前側には後方に作用する一対のコイルばね55による復元力F1,F2(
図21BではF2は不可視)が作用する。復元力F1,F2の作用点よりも上方においてプラテンローラ10からの反力F4がサーマルヘッド28の後側に作用し、復元力F1,F2の作用点よりも下方において凸部211からの反力F3がサーマルヘッド28の後側に作用する。そのため、凸部211を支点として
図21Bの時計回り及び反時計回りにサーマルヘッド28が揺動可能な構成となっている。
【0107】
しかも、プリンタ1の側面視で見て、コイルばね55の付勢力のサーマルヘッド28に対する作用点は、サーマルヘッド28がプラテンローラ10から反力を受ける位置と、凸部211がサーマルヘッド28の後側を支持する位置との間にある。そのため、コイルばね55の付勢力を上下で受ける構成であることから、サーマルヘッド28をバランス良く支持することができる。
【0108】
図21Bにおいて、サーマルヘッド28の後側において、凸部211が当接する面(つまり、切欠部283cによって放熱板281が露出している面)と発熱部284に対応する面とは、同一基準面上にあることが好ましい。それによって、サーマルヘッド28の発熱素子をプラテンローラ10に対して適切な角度で押圧させることができる。
【0109】
図21A及び
図21Bに示したように、サーマルヘッド28は、凸部211を支点としてプリンタ1を側面視から見たときの時計回り若しくは反時計回りの揺動方向、及び、凸部211を支点としてプリンタ1を平面視から見たときの時計回り若しくは反時計回りの揺動方向に揺動可能に構成されている。そのため、サーマルヘッド28は、印字時にプラテンローラ10に対して均一に圧力を掛けることができる。その理由は、以下の通りである。
【0110】
従来のサーマルヘッドを備えたプリンタでは、サーマルヘッドを、プリンタの内部フレーム又は筐体に対して、ねじやシャフト、あるいはブラケット等を用いて、例えば2点で固定することで取り付けていた。そうした場合、取り付け位置のずれに起因して、サーマルヘッドがプラテンローラに当接するときの圧力がプラテンローラの軸方向に均一でなくなる場合があり、印字品質が低下する虞があった。
それに対して、本実施形態では、プリンタ1の側面視及び平面視において、サーマルヘッド28が凸部211を支点として揺動可能であるため、例えばプラテンローラ10の取り付け誤差がある場合、プラテンローラ10の回転時の円周振れがある場合、あるいは、台紙に仮着されたラベルの凹凸がある場合等でもサーマルヘッド28が追従して、プラテンローラ10に対する圧力を均一に維持することができる。
しかも、サーマルヘッド28は、コイルばね55がサーマルヘッド28を付勢する方向において位置P1と位置P2(
図18参照)の間で変位可能であるため、凸部211を支点としたサーマルヘッド28の揺動が妨げられることがない。
【0111】
なお、従来のサーマルヘッドを備えたプリンタでは、サーマルヘッド下方に支点軸を設けてその軸をプリンタ本体に固定することでサーマルヘッドの側面視において揺動可能とするものはあったが、プリンタ1とは異なり、サーマルヘッドを工具無しで交換することはできなかった。それに対して、プリンタ1では、サーマルヘッド28を工具無しで交換可能としつつ、プリンタ1の側面視及び平面視において揺動可能である点で従来よりも優れている。
【0112】
別の実施形態では、
図20に示す壁面21において左右方向に離間した2箇所に凸部211を設けてもよい。その場合でも、プリンタ1の側面視において、凸部211を支点としてサーマルヘッド28を揺動可能とすることができる。プリンタ1の側面視のみにおいてサーマルヘッド28が揺動可能である場合であっても、印字品質の低下に寄与することができる。
別の実施形態では、
図20に示す壁面21において上下方向に離間した2箇所に凸部211を設けてもよい。その場合でも、プリンタ1の平面視において、凸部211を支点としてサーマルヘッド28を揺動可能とすることができる。プリンタ1の平面視のみにおいてサーマルヘッド28が揺動可能である場合であっても、印字品質の低下に寄与することができる。
【0113】
図16Aに示したように、サーマルヘッド28には、フレキシブルケーブル57が着脱可能に接続されている。
図21Bに示すように、このフレキシブルケーブル57は、サーマルヘッド28がプリンタ1に装着されたときにサーマルヘッド28のコネクタ285からプリンタ1の前方にある回路基板(図示せず)に接続されている。このとき、フレキシブルケーブル57は、サーマルヘッド28よりも前方にあるブラケット24の上面の固定位置24aにおいて、例えばねじ止めや接着剤等により固定される。
【0114】
サーマルヘッド28と回路基板の間には、フレキシブルケーブル57を収容するケーブル収容室59が形成されている。サーマルヘッド28のコネクタから固定位置24aの間には、比較的長いフレキシブルケーブル57をケーブル収容室59に収容させるように構成されている。そのため、サーマルヘッド28を取り外したときに固定位置24aを基準としてプリンタ1よりも十分に高い位置にサーマルヘッド28を移動させることができ、サーマルヘッド28のコネクタからフレキシブルケーブル57を取り外して新しいサーマルヘッド28に付け替える作業が容易となる。
なお、ケーブル収容室59を形成することは必須ではない。サーマルヘッド28のコネクタ285から固定位置24aまでのケーブル長が短くなるが、その場合でもコネクタ285からフレキシブルケーブル57を取り外し、サーマルヘッド28の交換を行うことは可能である。
【0115】
図21A及び
図21Bに示すように、ケーブル収容室59は、プラテン保持ブラケット27とサーマルヘッド28に挟まれた空間に形成されている。そのため、平面視でU字状のプラテン保持ブラケット27によって形成される空間を効率良く利用できる。
なお、ケーブル収容室59は、プラテン保持ブラケット27とサーマルヘッド28に挟まれた空間に形成しなくてもよい。例えば、サーマルヘッド28のコネクタから延びるフレキシブルケーブル57をプラテン保持ブラケット27の下を通し、プラテン保持ブラケット27よりも前方に収容室を設けることもできる。
【0116】
以上説明したように、上述したプリンタ1では、サーマルヘッド28の後側の面に表面実装部品が実装されないため、排出部20から侵入し得る水分等から表面実装部品を保護することができる。
上述したプリンタ1では、剥離ユニット4がサーマルヘッド28を覆わない開放位置にあるときにサーマルヘッド28が着脱可能な空間が形成されるため、サーマルヘッド28の交換作業性を高めることができる。しかも、サーマルヘッド28は、後方(プラテンローラ10に向かう方向)に付勢されており、この方向に沿って、サーマルヘッド28を着脱可能な第1位置と、サーマルヘッド28の着脱が規制される第2位置と、の間で変位可能に構成されている。そのため、サーマルヘッド28を取り外すにはサーマルヘッド28を第2位置から第1位置に移動させるだけで済み、工具等は必要ない。
【0117】
上述したプリンタ1において、サーマルヘッド28は、凸部211を支点としてプリンタ1を側面視から見たときの時計回り若しくは反時計回りの揺動方向、及び、凸部211を支点としてプリンタ1を平面視から見たときの時計回り若しくは反時計回りの揺動方向に揺動可能に構成されている。そのため、サーマルヘッド28は、印字時にプラテンローラ10に対して均一に圧力を掛けることができ、サーマルヘッドの取り付け方法に起因した印字品質の低下を防止することができる。
【0118】
[サーマルヘッドの別の実施形態]
次に、
図22~
図25を参照して、別の実施形態に係るサーマルヘッド28Aについて説明する。
図22Aはサーマルヘッド28Aを前方から見た斜視図であり、
図22Bはサーマルヘッド28Aを後方から見た斜視図である。
図23は、サーマルヘッド28Aに含まれる板状部材の斜視図である。
図24は、サーマルヘッド28Aについて
図22とは別の視点から見たときの斜視図である。
【0119】
図22A及び
図22Bを
図16A及び
図16Bと比較してわかるように、サーマルヘッド28Aは、板状部材7を備える点でサーマルヘッド28とは異なる。
板状部材7は、ステンレス等の金属材料で成形された部材であり、放熱板281に対してねじによって締結される。
図23に示すように、板状部材7は、基部71と、突出片72L,72Rと、突出板73と、を有する。
【0120】
突出片72L,72Rはそれぞれ、基部71の両端から基部71の主面と直交する方向(つまり、放熱板281に取り付けられたときに表面281aと直交する方向)に突出する。板状部材7が放熱板281に取り付けられた状態では、
図24に示すように、突出片72L,72Rは、発熱部284が実装された側において突出した状態となる。突出片72L,72Rの先端には、先端部721L,721Rを有する。
突出片72Lには孔72aが形成され、突出片72RにはU字溝72bが形成されている。
図22A及び
図28Bに示すように、孔72aには一対の軸28aのうち一方の軸28aが挿入され、U字溝72bには他方の軸28aが挿入される。先端部721L,721Rのうち一方に孔が形成され、他方にU字溝が形成されているため、板状部材7の放熱板281に対する取り付けが容易になる。
板状部材7が放熱板281に取り付けられた状態では、
図22Aに示すように、突出板73は、比較的背の高い表面実装部品(例えばコネクタ285、EEPROM286、ダイオード287等)が実装された側において突出した状態となる。
【0121】
突出板73は、基部71の長手方向に亘って突出片72L,72Rの間に設けられており、基部71から突出片72L,72Rとは反対方向に突出する。
基部71には、板状部材7を放熱板281に取り付けるときにねじを挿通させるための2箇所の孔71aが形成される。基部71は、2箇所の突起711を有する。
図22Aに示すように、突起711は、板状部材7が放熱板281に取り付けられたときに表面実装部品と干渉しないように配置される。
【0122】
以下、板状部材7を備えたサーマルヘッド28Aの効果について、
図25を参照して説明する。
図25は、サーマルヘッド28Aとプラテン保持ブラケット27の位置関係を示す側面図である。
【0123】
前述したように、プリンタカバー3が閉鎖位置にあるときには、プリンタカバー3に取り付けられているプラテンローラ10のプラテン軸10aが、プラテン保持ブラケット27の溝27bに嵌まり込むことによりプリンタカバー3が保持されている。このとき、板状部材7を備えていないサーマルヘッド28の場合、プリンタカバー3を閉める操作を行う場合等、操作者がプリンタカバー3を上から押す場合にプラテンローラ10が、プラテンローラ10とサーマルヘッド28とが接する設計上の位置から下にずれてしまう。このことに起因して、印字濃度の変動が生ずる。また、サーマルヘッド28は内部フレームに設けられた軸受入溝25(
図18参照)に取り付けられ、プラテン保持ブラケット27の軸27aの一端は剥離ユニット開放用レバー52のボス52aに挿入され、軸27aの他端は内部フレームに設けられたボスに挿入される(
図5参照)。そのため、プラテンローラ10とサーマルヘッド28とが接する位置は、各部の組付け上の累積誤差の影響を受けやすく、上記設計上の位置からずれやすい構成となっている。
【0124】
上述したサーマルヘッド28の不都合がサーマルヘッド28Aによって解消される。
図25に拡大して示すように、サーマルヘッド28に代えてサーマルヘッド28Aをプリンタ1に搭載した場合、サーマルヘッド28Aの板状部材7の先端部721L,721Rの上端が、プラテン保持ブラケット27の溝27bを形成する縁よりも高い位置に配置される。そのため、プラテン保持ブラケット27に嵌まり込むプラテン軸10aは、溝27b内で先端部721L,721Rに当接する。それによって、操作者がプリンタカバー3を上から押す場合であっても、プラテンローラ10が、プラテンローラ10とサーマルヘッド28とが接する設計上の位置から下にずれ難くなる。これは、板状部材7が、発熱部284が実装される放熱板281と一体的な構造であるため、プラテン軸10aが先端部721L,721Rを押し下げたとしても、プラテンローラ10と発熱部284の相対的な位置関係は影響を受け難いためである。
【0125】
図25を再度参照すると、サーマルヘッド28Aをプリンタ1に搭載した場合、板状部材7の突出板73がプリンタ1の前方に向かって突出する。そのため、サーマルヘッド28Aの前方に形成されているケーブル収容室59の上方が突出板73によって覆われることから、プリンタ1内に外部から粉塵が入ることを防止でき、サーマルヘッド28Aの前側に配置される表面実装部品の上面部に埃が付着することを防止できる。つまり、突出板73は庇として機能する。特に、
図2に示したように、ロール紙Rの交換は、プリンタカバー3を開放位置にしたまま行われるため、粉塵がプリンタ1内に入りやすいが、その際にもサーマルヘッド28Aの表面実装部品を粉塵から保護することができる。
また、別の観点では、突出板73を設けることで板状部材7の強度を高くできるという利点がある。
【0126】
以上、本発明のプリンタの実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。例えば、上述した実施形態に記載した個々の技術的特徴は、技術的矛盾がない限り、適宜組み合わせることが可能である。
【0127】
例えば、サーマルヘッド28,28Aの構造及び着脱方法は、剥離ユニット4の構造や発行方式の切り替え方法と技術的に関連しないから、剥離ユニット4を備えていないプリンタに適用してもよい。逆に、剥離ユニット4の構造や発行方式の切り替え方法は、上述したサーマルヘッド28,28Aの構造及び着脱方法とは異なるものを採用するプリンタに適用してもよい。
【0128】
プリンタ1の内部の部品の一部(例えば、軸、ばねの一端等)が内部フレームに連結されている場合について説明したが、その限りではなく、本体ケース2に連結されていてもよい。
【0129】
上述した実施形態においては、印字媒体としての複数枚のラベルを台紙に仮着した連続紙を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではない。連続発行で使用する場合、あるいは、剥離ユニットを設けないプリンタの場合には、例えば、一方面に接着面を有する連続状のラベル(台紙無しラベル)、接着面を有しない連続状のシート(連続シート)あるいは紙類に限らずサーマルヘッドによって印字可能なフィルム等を印字媒体として使用することもできる。また、接着剤が露出する台紙無しラベルなどを搬送する場合には、搬送路を非接着剤で被覆するとともにシリコーンなど含有した非接着ローラをプラテンローラとして設けることができる。
【符号の説明】
【0130】
1…プリンタ
2…本体ケース
21…壁面
211…凸部
24…ブラケット
3…プリンタカバー
31…剥離ユニット受入部
31p…ガイド溝
37…ローラ押圧機構
32…当接部
33…コイルばね
35…センサ
4…剥離ユニット
41…剥離ローラカバー
41a…軸
411…表面
412…裏面
413…U字溝
415…係合孔
42…剥離ローラ保持部
42a…軸
421…アーム
422…突起
43…コイルばね
45…剥離ローラ
45a…軸
46…補助ローラ
47…剥離センサ
6a…ロール紙ガイド
7…板状部材
71…基部
71a…孔
711…突起
72L,72R…突出片
72a…孔
72b…U字溝
721L,721R…先端部
73…突出板
8…ヒンジ
81…ヒンジ軸
9…ロール紙収容室
10…プラテンローラ
10a…プラテン軸
10b…ギア
12…剥離バー
15…表示パネル
20…排出部
22b…ギア
25…軸受入溝
251…第1溝
252…第2溝
26…突部
27…プラテン保持ブラケット
27a…軸
27b…溝
27c…孔
28,28A…サーマルヘッド
28a…軸
281…放熱板
281a…表面
281b…裏面
282…基板
283c…切欠部
284…発熱部
285…コネクタ
29…コイルばね
51…カバー開放用レバー
51a…軸挿入孔
51b…カバー開放用ボタン
51c…突部
52…剥離ユニット開放用レバー
52a…ボス
52b…剥離ユニット開放用ボタン
521…第1ストッパ
522…第2ストッパ
523…係合突部
53,55…コイルばね
56…軸部
57…フレキシブルケーブル
59…ケーブル収容室
P…連続紙
PM…台紙
PL…ラベル
R…ロール紙