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特許7585015核酸構築物のセット、キット、検出方法及び薬剤効果予測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】核酸構築物のセット、キット、検出方法及び薬剤効果予測方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6897 20180101AFI20241111BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20241111BHJP
   C12N 15/61 20060101ALN20241111BHJP
【FI】
C12Q1/6897 Z ZNA
C12Q1/04
C12N15/61
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020201985
(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公開番号】P2022089532
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川田 滋久
(72)【発明者】
【氏名】石原 美津子
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0037892(US,A1)
【文献】Laboratory Investigation,2020年09月05日,Vol.101,pp125-135
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/6897
C12Q 1/04
C12N 15/61
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1プロモーター配列と、前記第1プロモーター配列の下流及び上流にそれぞれ連結された、分断されたCre遺伝子とを含む第1核酸構築物と、
第2プロモーター配列と、前記第2プロモーター配列の下流に連結された第1loxP配列と、前記第1loxP配列の下流に連結されたレポーター遺伝子と、前記レポーター遺伝子の下流に連結された第2loxP配列を含む第2核酸構築物と
を含み、
前記分断されたCre遺伝子は、不活性化されるようにCre遺伝子の塩基配列を欠失なしに2つに切断してなる、2つのCre遺伝子断片で構成され、
前記2つのCre遺伝子断片のうち、前記第1プロモーター配列の下流に連結されたCre遺伝子断片は前記Cre遺伝子の上流側の遺伝子断片であり、かつ、前記第1プロモーター配列の上流に連結されたCre遺伝子断片は前記Cre遺伝子の下流側の遺伝子断片であり、
前記第1プロモーター配列の上流に連結された前記Cre遺伝子断片の5’末端には、前記第1プロモーター配列の下流に連結された前記Cre遺伝子断片の3’末端の一部である第1配列と相同な塩基配列を有する第2配列が連結されている、
DNA相同性組換え機能の不全を検出する核酸構築物のセット。
【請求項2】
前記第1配列及び前記第2配列の塩基長は、3塩基~120塩基である、請求項1に記載のセット。
【請求項3】
前記第1配列及び前記第2配列は、配列番号2、5、6の何れかの塩基配列から選択される、請求項1又は2に記載のセット。
【請求項4】
前記レポーター遺伝子が、蛍光タンパク質遺伝子、発光タンパク質遺伝子、活性酸素産生遺伝子又は薬剤耐性遺伝子である、請求項1~3の何れか1項に記載のセット。
【請求項5】
前記第1プロモーター配列及び前記第2プロモーター配列が、ウイルス由来プロモーター又は乳線組織特異的プロモーターである、請求項1~4の何れか1項に記載のセット。
【請求項6】
脂質粒子と、
前記脂質粒子に封入され、第1プロモーター配列と、前記第1プロモーター配列の下流及び上流にそれぞれ連結された、分断されたCre遺伝子とを含む第1核酸構築物と、
前記脂質粒子に封入され、第2プロモーター配列と、前記第2プロモーター配列の下流に連結された第1loxP配列と、前記第1loxP配列の下流に連結されたレポーター遺伝子と、前記レポーター遺伝子の下流に連結された第2loxP配列を含む第2核酸構築物と、
を含むDNA相同性組換え機能の不全を検出するためのキットであって、
前記分断されたCre遺伝子は、不活性化されるようにCre遺伝子の塩基配列を欠失なしに2つに切断してなる、2つのCre遺伝子断片で構成され、
前記2つのCre遺伝子断片のうち、前記第1プロモーター配列の下流に連結されたCre遺伝子断片は前記Cre遺伝子の上流側の遺伝子断片であり、かつ、前記第1プロモーター配列の上流に連結されたCre遺伝子断片は前記Cre遺伝子の下流側の遺伝子断片であり、
前記第1プロモーター配列の上流に連結された前記Cre遺伝子断片の5’末端には、前記第1プロモーター配列の下流に連結された前記Cre遺伝子断片の3’末端の一部である第1配列と相同な塩基配列を有する第2配列が連結されている、キット。
【請求項7】
前記第1配列及び前記第2配列の塩基長は、3塩基~120塩基である、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
前記脂質粒子は、その材料として下記式(1-01)の化合物、式(1-02)の化合物及び/又は式(2-01)の化合物
【化1】
を含む、請求項6又は7に記載のキット。
【請求項9】
前記レポーター遺伝子の発現を検出するための試薬を更に含む請求項6~8の何れか1項に記載のキット。
【請求項10】
第1プロモーター配列と、前記第1プロモーター配列の下流及び上流にそれぞれ連結された、分断されたCre遺伝子とを含む、第1核酸構築物、及び第2プロモーター配列と、前記第2プロモーター配列の下流に連結された第1loxP配列と、前記第1loxP配列の下流に連結されたレポーター遺伝子と、前記レポーター遺伝子の下流に連結された第2loxP配列を含む第2核酸構築物を被検細胞に導入すること、
前記被検細胞を培養すること、及び
前記レポーター遺伝子から発現したタンパク質の活性を検出すること
を含み、
前記分断されたCre遺伝子は、不活性化されるようにCre遺伝子の塩基配列を欠失なしに2つに切断してなる、2つのCre遺伝子断片で構成され、
前記2つのCre遺伝子断片のうち、前記第1プロモーター配列の下流に連結されたCre遺伝子断片は前記Cre遺伝子の上流側の遺伝子断片であり、かつ、前記第1プロモーター配列の上流に連結されたCre遺伝子断片は前記Cre遺伝子の下流側の遺伝子断片であり、
前記第1プロモーター配列の上流に連結された前記Cre遺伝子断片の5’末端には、前記第1プロモーター配列の下流に連結された前記Cre遺伝子断片の3’末端の一部である第1配列と相同な塩基配列を有する第2配列が連結されている、DNA相同性組換え機能不全の細胞を検出する方法。
【請求項11】
前記導入は、前記第1核酸構築物及び前記第2核酸構築物を封入した脂質粒子を前記被検細胞に接触させることにより行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記被検細胞のうちDNA相同性組換え機能不全の細胞において、前記レポータータンパク質の前記活性が高い、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記培養と前記検出とは、CMOSイメージセンサ上で行う、請求項10~12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
第1プロモーター配列と、前記第1プロモーター配列の下流及び上流にそれぞれ連結された、分断されたCre遺伝子とを含む第1核酸構築物及び第2プロモーター配列と、前記第2プロモーター配列の下流に連結された第1loxP配列と、前記第1loxP配列の下流に連結されたレポーター遺伝子と、前記レポーター遺伝子の下流に連結された第2loxP配列を含む第2核酸構築物を対象由来の被検細胞に導入すること、
前記被検細胞を培養すること、
前記レポーター遺伝子から発現したタンパク質からの信号を検出すること
前記検出の結果に基づいて前記被検細胞に含まれるDNA相同性組換え機能不全の細胞の存在率を算出すること、及び
前記存在率に基づいて前記対象のがんにおける、DNA相同組換え機能不全のがんに効果を奏する薬剤効果を予測すること
を含む、薬剤効果予測方法であって、
前記分断されたCre遺伝子は、不活性化されるようにCre遺伝子の塩基配列を欠失なしに2つに切断してなる、2つのCre遺伝子断片で構成され、
前記2つのCre遺伝子断片のうち、前記第1プロモーター配列の下流に連結されたCre遺伝子断片は前記Cre遺伝子の上流側の遺伝子断片であり、かつ、前記第1プロモーター配列の上流に連結されたCre遺伝子断片は前記Cre遺伝子の下流側の遺伝子断片であり、
前記第1プロモーター配列の上流に連結された前記Cre遺伝子断片の5’末端には、前記第1プロモーター配列の下流に連結された前記Cre遺伝子断片の3’末端の一部である第1配列と相同な塩基配列を有する第2配列が連結されている、方法。
【請求項15】
前記導入は、前記第1核酸構築物及び前記第2核酸構築物を封入した脂質粒子を前記被検細胞に接触させることにより行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記培養と前記検出とは、CMOSイメージセンサ上で行う、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記検出の結果から、前記被検細胞のうち前記レポータータンパク質の活性が高い細胞をDNA相同性組換え機能不全の細胞とし、
前記DNA相同性組換え機能不全の細胞の存在率は、次の式(I)
存在率=DNA相同性組換え機能不全の細胞数/被検細胞数…式(I)
によって算出される、請求項14~16の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記予測において、前記存在率が高いほど前記薬剤の効果が高いと判定する、請求項14~17の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、核酸構築物のセット、キット、検出方法及び薬剤効果予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DNA相同組換えは、損傷を受けたDNAを修復する重要な機能である。多くのがんにおいてDNA相同組換え機能の低下が生じていることが知られている。例えば、DNA相同組換え機能不全の乳がんはトリプルネガティブタイプに分類される難治性のがんである。このような疾患の早期発見及び有効な治療のために、DNA相同組換え機能不全の細胞を効率的に検出する方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2019/131961号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、DNA相同組換え機能不全の細胞を効率よく検出することができる核酸構築物のセット、キット、検出方法及び薬剤効果予測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に従うDNA相同性組換え機能の不全を検出する核酸構築物のセットは、第1核酸構築物と第2核酸構築物とを含む。第1核酸構築物は、第1プロモーター配列と、第1プロモーター配列の下流に連結された、切断されたCre遺伝子とを含む。第2核酸構築物は、第2プロモーター配列と、第2プロモーター配列の下流に連結された第1loxP配列と、第1loxP配列の下流に連結されたレポーター遺伝子と、レポーター遺伝子の下流に連結された第2loxP配列を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態に従う核酸構築物のセットの一例を示す図である。
図2図2は、実施形態に従う検出方法の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、DNA相同組換え機能を有する細胞における実施形態の核酸構築物の挙動の一例を示す図である。
図4図4は、DNA相同組換え機能不全の細胞における実施形態の核酸構築物の挙動の一例を示す図である。
図5図5は、実施形態のCMOSイメージセンサの一例を示す平面図及び断面図である。
図6図6は、実施形態の薬剤効果予測方法の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、実施形態の核酸構築物を内包する脂質粒子の断面図である。
図8図8は、例1において作成したベクター1-10、ベクター1-20、ベクター1-30を示す図である。
図9図9は、例2において作成したベクター2を示す図である。
図10図10は、例4における実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態について、添付の図面を参照して説明する。なお、各実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、その説明を一部省略する場合がある。図面は模式的なものであり、各部の厚さと平面寸法との関係、各部の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。
【0008】
・核酸構築物のセット
実施形態によれば、DNA相同組換え(Homologous recombination:HR)の機能不全の細胞を検出するために用いられる核酸構築物のセットが提供される。セットは第1核酸構築物と第2核酸構築物とを含む。詳細は後述するが、本核酸構築物のセットを検査対象の細胞(被検細胞)に導入することにより当該細胞がDNA相同組換え機能不全か否かを検出することができる。
【0009】
図1の(a)に示すように、第1核酸構築物1は、第1プロモーター配列P1と、第1プロモーター配列P1の下流に連結された、切断されたCre遺伝子2とを含む。第1核酸構築物1は二本鎖DNAであり得る。
【0010】
図1の(b)に示すように、第2核酸構築物10は、第2プロモーター配列P2と、第2プロモーター配列P2の下流に連結された第1loxP配列11と、第1loxP配列11の下流に連結されたレポーター遺伝子12と、レポーター遺伝子12の下流に連結された第2loxP配列13とを含む。第2核酸構築物10は二本鎖DNAであり得る。
【0011】
本明細書において連結とは、2つの配列の間に他の配列を含むことなく連結されている場合、及び2つの配列の間に任意の配列が含まれて連結されている場合を含む。任意の配列は例えばスペーサー配列である。スペーサー配列は、上記の各配列及びそれらの相補配列の配列とは異なり、且つこれらの配列の活性に影響を与える可能性が低い核酸配列である。上記配列は、各々の機能が作動できるように連結されている。
【0012】
以下、核酸構築物に含まれる配列について詳細に説明する。
【0013】
第1プロモーター配列P1及び第2プロモーター配列P2は、ウイルス由来プロモーター又は組織特異的プロモーターから選択されることが好ましい。ウイルス由来プロモーターは、例えばサイトメガロウィルス(CMV)プロモーター又はシミアンウィルス40(SV40)プロモーター又はチミジンキナーゼ(TK)プロモーター等である。組織特異的プロモーターは、被検細胞の由来の組織において特異的に使用されているプロモーターである。したがって組織特異的プロモーターは被検細胞の種類に従って選択される。例えば、被検細胞が乳がん細胞である場合、乳腺組織特異的プロモーター、例えば、エストロゲンプロモーター又はエストロゲンレセプタープロモーターを用いることが好ましい。しかしながら第1プロモーター配列P1及び第2プロモーター配列P2は、プロモーター配列の機能を有する限りにおいて上で列挙したものに限定されるものではなく、また上記プロモーター配列の塩基配列のうち任意の塩基を置換、或いは欠失させたものであってもよい。
【0014】
第1プロモーター配列P1及び第2プロモーター配列P2は、互に同じものを用いてもよいし、互に異なるものを用いてもよい。
【0015】
切断されたCre遺伝子2は、例えば1箇所で切断されたCre遺伝子である。ここで、Cre遺伝子は、バクテリオファージP1由来の遺伝子組換え反応系であるCre/loxPシステムで用いられるものである。Cre遺伝子は、Creタンパク質をコードする遺伝子であり、例えば表1の配列番号1の配列を有する。
【0016】
【表1】
【0017】
切断されたCre遺伝子2の切断部3は、DNA相同組換え機能により修復されることでCreタンパク質を発現できる構成を有する。
【0018】
例えば、切断部3の5’末端には、切断部3の3’側末端の一部の塩基配列である第1配列4と相同な塩基配列を有する第2配列5が配置されている。第1配列4と第2配列5とは同じ向きで配置されている。第1配列4及び第2配列5の塩基長は、例えば3塩基~120塩基、好ましくは10塩基~30塩基である。
【0019】
表2を用いて第1配列4及び第2配列5の具体例を説明する。Cre遺伝子(配列番号1)の中のTTATGCGGCG(配列番号2、下線部)を第1配列4として選択した場合、切断されたCre遺伝子2の5’側断片6の塩基配列は、表2の配列番号3の塩基配列となり得る(下線部が第1配列4)。また3’側断片7の塩基配列は、表2の配列番号4の塩基配列となり得る(下線部が第2配列5)。
【0020】
【表2】
【0021】
表1は、第1配列4及び第2配列5の塩基長が10塩基である例を示したが、塩基長を20塩基とする場合、例えば第1配列4及び第2配列5としてTTATGCGGCGGATCCGAAAA(配列番号5)の配列が選択され得る。塩基長を30塩基とする場合、例えばTTATGCGGCGGATCCGAAAAGAAAACGTTG(配列番号6)の配列が選択され得る。切断部3の位置並びに第1配列4及び第2配列5として選択される配列は上記の例に限定されるものではなく、切断されていることによりCre遺伝子が不活性化されており、このままの状態ではCreタンパク質を発現しないように選択されればCre遺伝子中の何れの位置及び配列が選択されてもよい。
【0022】
上記のように切断部3が相同な配列、第1配列4及び第2配列5を有することによりDNA相同組換え修復によりCre遺伝子が形成し発現され得る。
【0023】
第1配列4及び第2配列5の切断部3側の末端は、更なる塩基配列を含んでもよい。例えば、切断されたCre遺伝子2を合成する際に残留した塩基配列、例えば制限酵素サイトの突出末端等が存在していてもよい。これらはDNA修復の際に除去され得る。
【0024】
第1loxP配列11及び第2loxP配列13は、Cre/loxPシステムにおいてCreタンパク質が認識してそこにおいて組換えを行うための配列である。第1loxP配列11及び第2loxP配列13は、例えばともに下記表2の塩基配列を含み得るが、loxP配列の上記機能を有する限りにおいて塩基配列を改変したものを用いてもよい。
【0025】
【表3】
【0026】
第1loxP配列11及び第2loxP配列13は、第2核酸構築物10内で同じ向きで配置されることが好ましいが、互に逆の向きで配置されてもよい。
【0027】
レポーター遺伝子12は、例えば蛍光タンパク質遺伝子、発光タンパク質遺伝子、活性酸素産生遺伝子又は薬剤耐性遺伝子等である。例えば、青色蛍光タンパク質遺伝子、緑色蛍光タンパク質遺伝子又は赤色蛍光タンパク質遺伝子等の蛍光タンパク質の遺伝子;ホタルルシフェラーゼ遺伝子、ウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子又はNanoLuc(登録商標)ルシフェラーゼ遺伝子等の発光酵素タンパク質の遺伝子;キサンチンオキシダーゼ遺伝子又は一酸化窒素合成酵素遺伝子等の活性酸素生成酵素の遺伝子;βアンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、ストレプトマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子;或いは重金属結合タンパク質遺伝子等を用いることができる。
【0028】
しかしながらレポーター遺伝子12は、上で列挙したレポーター遺伝子に限定されるものではなく、レポーターとしての機能を有する限りにおいては他のレポーター遺伝子、又は上記のレポーター遺伝子の塩基配列の任意の塩基を置換、或いは欠失させたものであってもよい。
【0029】
レポーター遺伝子12は、例えばルシフェラーゼであるNanoluc(登録商標)ルシフェラーゼをコードする遺伝子であることが好ましい。その塩基配列の例を表2に示す。
【0030】
【表4】
【0031】
第1核酸構築物1の切断されたCre遺伝子2の下流、及び第2核酸構築物10のレポーター遺伝子12の下流には、転写終結配列が更に連結されていてもよい。転写終結配列は、例えば、シミアンウィルス40(SV40)のポリ(A)付加シグナル配列、ウシ成長ホルモン遺伝子のポリ(A)付加シグナル配列又は人工的に合成されたポリ(A)付加シグナル配列等である。ただし、転写終結配列はこれらに限定されるものではなく、転写終結配列としての機能を有する限りにおいては、他の配列、又は上記した転写終結配列の塩基配列を改変したもの等を用いてもよい。
【0032】
第1核酸構築物1及び第2核酸構築物10は、ベクターであってもよい。例えば、プラスミドベクター又はウイルスベクターを基礎としたベクターであってもよい。
【0033】
第1核酸構築物1の切断されたCre遺伝子2の部分は、例えば次のように作製することができる。まず、切断されたCre遺伝子2の5’側断片6、第1制限酵素サイト、任意の配列、第2制限酵素サイト及び切断されたCre遺伝子2の3’断片7を含む配列を合成する。次に、第1プロモーター配列P1を含む、第1核酸構築物1の基礎となるベクターを用意し、上記のようにして得られた合成DNAを基礎となるベクターの第1プロモーター配列P1の下流に導入する。次いで、第1制限酵素サイト及び第2制限酵サイトを制限酵素で切断することで、切断されたCre遺伝子2を有する第1核酸構築物が得られる。
【0034】
第2核酸構築物10は次のようにして得られる。まず、レポーター遺伝子12を用意し、その端に第1loxP配列11及び第2loxP配列13をそれぞれ付加する。例えば、loxP配列を含むプライマーを用いてレポーター遺伝子12を増幅することで第1loxP配列11、レポーター遺伝子12及び第2loxP配列13を含む配列を合成することができる。次に、第2プロモーター配列P2を含む、第2核酸構築物10の基礎となるベクターを用意し、上記のようにして得られた合成DNAを基礎となるベクターの第2プロモーター配列P2の下流に導入することで第2核酸構築物10が得られる。
【0035】
第1核酸構築物1及び第2核酸構築物10は、上記の配列の他にも任意の塩基配列を含んでもよい。このような塩基配列は、例えば特定の機能を有する塩基配列であってもよいし、機能を持たない配列であってもよい。機能を有する塩基配列は、例えば、更なるレポーター遺伝子発現ユニット、複製開始配列及び/又は複製開始タンパク質発現ユニット等である。
【0036】
更なる実施形態において、切断されたCre遺伝子2の切断部3は複数個所あってもよい。しかしながらその場合DNA修復の効率が下がるため、切断箇所は少ないことが好ましく、1箇所であることがより好ましい。
【0037】
・DNA相同組換え機能不全の検出方法
実施形態によれば、第1核酸構築物1及び第2核酸構築物10を用いたDNA相同性組換え機能不全の細胞の検出方法が提供される。
【0038】
本検出方法は、例えば図2に示す次の工程を含む。
【0039】
(S1)第1核酸構築物と第2核酸構築物とを被検細胞に導入する導入工程、
(S2)被検細胞を培養する培養工程、及び
(S3)レポーター遺伝子から発現したレポータータンパク質の活性を検出する検出工程。
【0040】
以下、各工程の手順の例について詳細に説明する。
【0041】
まず、被検細胞を用意する。被検細胞は例えば、ヒト、動物又は植物由来のもの、或いは細菌又は菌類等の微生物由来の細胞であり得る。被検細胞は、好ましくは動物細胞であり、より好ましくは哺乳類細胞であり、最も好ましくはヒト細胞である。被検細胞は、例えば生体外に取り出された細胞であり、例えば、血液等の体液、組織又はバイオプシー等から分離された細胞であってもよい。被検細胞は、例えばがん細胞である。がん細胞は、例えば乳がん、卵巣がん、前立腺がん及び/又は消化器のがんの原発巣から得られたもの、或いはそれらのがんが転移した病巣のがん細胞等であることが好ましい。被検細胞は、例えば、単離細胞、培養細胞又は株化された細胞であってもよい。或いは、細胞は、生体内の細胞であってもよい。
【0042】
次に、被検細胞に第1核酸構築物1及び第2核酸構築物10を細胞に導入する(導入工程S1)。導入工程S1は、例えば被検細胞が生体外に取り出された細胞である場合、リポソーム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム共沈殿法、カチオン性ポリマー法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法又はソノポレーション法等の公知の方法で行うことができる。
【0043】
特にリポソーム法を用いることが好ましい。リポソーム法は、第1核酸構築物1及び第2核酸構築物10をリポソーム(脂質粒子)に内包し、それを含む組成物等を細胞と接触させる。それにより、脂質粒子は例えばエンドサイトーシスにより細胞に取り込まれ、内包物を細胞内に放出する。脂質粒子の詳細については、後のキットの実施形態において説明する。
【0044】
被検細胞が生体内の細胞である場合、導入は、第1核酸構築物1及び第2核酸構築物10を含む組成物を生体へ注射又は点滴すること等によって行うことができる。組成物は、例えば第1核酸構築物1及び第2核酸構築物10を内包する上記脂質粒子を含んでもよい。
【0045】
次に、被検細胞を培養する(培養工程S2)。培養は、被検細胞の種類によって選択される、被検細胞の生存に適した公知の方法で行えばよい。例えば培養温度は約37℃、CO濃度は約5%であることが好ましい。また、培養は1日~3日間行われることが好ましい。培地は固体培地又は液体培地であり、被検細胞の生存に適した培地を用いることができる。
【0046】
導入工程S1後、DNA相同組換え機能を有する被検細胞における各核酸構築物の挙動について図3を用いて説明する。また、DNA相同組換え機能不全の細胞における挙動について図4を用いて説明する。
【0047】
図3に示すように、DNA相同組換え機能を有する被検細胞では、DNA相同組換え活性(HR)により第1核酸構築物1の切断されたCre遺伝子2の切断部が修復され、Cre遺伝子2aが形成され得る(図3の(a))。それにより、Cre遺伝子2aが発現してCreタンパク質8が合成され得る(図3の(b))。Creタンパク質8は、第2核酸構築物10の第1loxP配列11及び第2loxP配列13に結合し(図3の(c))、2つのloxP配列間で組換えを起こす。その結果、第2核酸構築物10が2つの環状核酸に分割され、第2プロモーター配列P2とレポーター遺伝子12とが分離される(図3の(d))。そのため、レポーター遺伝子12が不活性化し、その発現が減少するか、又は発現されない。
【0048】
一方、図4に示すように、DNA相同組換え機能不全の細胞では、第1核酸構築物1において切断されたCre遺伝子2が修復されない(図4の(a))。この場合、Cre遺伝子が発現しないため、第2核酸構築物10のレポーター遺伝子12が不活性化されず、レポーター遺伝子12が発現し、レポータータンパク質14が合成される(図4の(b))。レポータータンパク質14は、例えば信号15を生じる等、種類に応じた検出可能な活性を示す。
【0049】
上では第1loxP配列11と第2loxP配列13とが互いに同じ向きで配置されている場合の例を示したが、互に逆向きに配置した場合には図3の(c)でCreタンパク質8が結合した後、2つのloxP配列間で組換えによりレポーター遺伝子12の向きが反転する。それによりレポーター遺伝子12が不活性化される。
【0050】
次にレポータータンパク質14の活性を検出する(検出工程S3)。検出工程S3は、被検細胞からレポータータンパク質14を抽出して得られた抽出液又は被検細胞の培養液の上清において行ってもよい。又は生きたままの被検細胞において行うことも可能である。
【0051】
レポーター遺伝子12の活性は、レポータータンパク質14が信号15を生ずるものである場合、それを検出することにより検出可能である。信号15は、例えば蛍光、化学発光、生物発光、生物化学発光及び呈色等、或いはタンパク質等の分子の呈示である。信号15はレポータータンパク質14自体から発せられるか、又はレポータータンパク質14と特定の物質(以下、「第1物質」と記載する)との反応、例えば、酵素反応又は結合等により生じるもので有り得る。
【0052】
第1物質は、例えば、レポータータンパク質14が酵素である場合、その基質である。例えば、レポータータンパク質14がルシフェラーゼである場合、第1物質は、ルシフェリンである。或いは、信号15は、レポータータンパク質14と第1物質との反応により生じる物質の存在を検出するための更なる検出試薬(以下、「第2物質」と記載する)に由来する信号であってもよい。
【0053】
例えば、上記第1物質及び/又は第2物質を用いる場合、これらの物質は検出工程S3のはじめに被検細胞に添加され得る。これらの物質は、被検細胞の培養培地に添加してもよいし、細胞に導入してもよい。或いは、被検細胞から得られた抽出液又は上清に添加してもよい。
【0054】
信号15の検出は、その種類に応じて選択された何れかの公知の方法を用いて行えばよい。
【0055】
レポータータンパク質14が蛍光タンパク質である場合、細胞に励起光を照射することにより蛍光タンパク質から発生する蛍光として信号15が得られる。蛍光(信号15)は、目視、顕微鏡、フローサイトメーター、イメージ解析ソフト、又はフルオロメーター等により検出することができる。
【0056】
レポータータンパク質14がルシフェラーゼである場合、ルシフェリンを添加することにより化学発光として信号15が得られる。化学発光(信号15)は、目視、顕微鏡、フローサイトメーター、イメージ解析ソフト、又はルミノメーター等により検出することができる。
【0057】
レポータータンパク質14がβ-ガラクトシダーゼである場合、5-ブルモー4-クロロー3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド(X-Gal)又はo-ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシド(ONPG)等の基質を添加することにより、細胞溶液又は抽出液の吸光度として信号15が得られる。吸光度(信号15)は、吸光度計、分光光度計又は濁度計等で検出することができる。
【0058】
レポータータンパク質14が一酸化窒素合成酵素又はキサンチンオキシダーゼである場合、基質を添加し、発生する活性酸素が信号15として得られる。活性酸素(信号15)は電子スピン共鳴装置(ESR装置)等で検出することができる。
【0059】
レポータータンパク質14が重金属結合タンパク質である場合、測定可能な重金属を添加し、レポータータンパク質に結合した重金属が信号15として得られる。重金属は、磁気共鳴イメージング装置、核医学診断装置、MRI撮像装置、又はX線コンピュータ断層撮影装置により検出することができる。
【0060】
例えば信号15の強度はレポータータンパク質14の発現量と相関するため、信号15が得られた細胞、信号15の強度が閾値よりも高い細胞は、レポーター遺伝子12の活性が高く、DNA相同組換え機能不全の細胞と判断することができる。反対に信号15が得られない細胞、信号15の強度が閾値よりも低い細胞は、DNA相同組換え機能を有する細胞と判断することができる。
【0061】
閾値は、例えば、DNA相同組換え機能不全であることが既知である細胞を用いて実施形態の検出方法を実施した際に得られたレポータータンパク質14の発現量(信号15の強度)の値とすることができる。
【0062】
レポータータンパク質14が薬剤耐性遺伝子である場合、対応する薬剤を培地に添加して培養工程S2を行えばよい。この場合、DNA相同組換え機能不全の被検細胞は生存し、DNA相同組換え機能を有する被検細胞は死滅し得る。それによって生存した細胞についてはレポーター遺伝子12の活性が高く、DNA相同組換え機能不全の細胞と判断することができる。
【0063】
或いは検出工程S3は信号15の検出又は薬剤によるスクリーニング等を行うのではなく、レポータータンパク質14を直接検出又は定量してもよい。この場合、レポータータンパク質14が検出された細胞、定量値が閾値よりも高い細胞、定量値が増加した細胞又は定量値の増加量が閾値よりも大きい細胞は、レポーター遺伝子12の活性が高く、DNA相同組換え機能不全の細胞と判断することができる。
【0064】
このようにして、DNA相同性組換え機能不全の細胞を検出することができる。
【0065】
培養工程S2と前記検出工程S3は、CMOSイメージセンサ上で行ってもよい。図5は、CMOSイメージセンサ20の使用時の様子を示す。図5の(a)はCMOSイメージセンサ20の平面図であり、図5の(b)は(a)のB-B’に沿って切断した断面図である。CMOSイメージセンサ20は、二次元領域にマトリックス状に並んだ複数のセンシング部21と、これらの複数のセンシング部21上に設けられた試料収容部22とを備える。試料収容部22内で被検細胞23を培養できる。各センシング部21は光学センサであり、センシング部21上の被検細胞23の有無、及び被検細胞23又は培地から生じる信号15を二次元的に検出することが可能である。
【0066】
実施形態の検出方法によれば、短時間で効率的にDNA相同組換え機能不全細胞を可視化し、検出することが可能である。
【0067】
・薬剤効果予測方法
実施形態によれば、第1核酸構築物1及び第2核酸構築物10を用いて、対象のがんにおける薬剤効果を予測する方法が提供される。
【0068】
薬剤は、DNA相同組換え機能不全のがんに効果を奏する薬剤である。薬剤は、例えばDNA傷害性抗がん剤、例えばシスプラチン等の白金製剤又はトポイソメラーゼ阻害剤、或いはPoly(ADP-ribose)polymerase(PARP)阻害剤等である。
【0069】
本方法は、例えば図6に示す次の工程を含む。
【0070】
(S11)第1核酸構築物及び第2核酸構築物を被検細胞に導入する導入工程、
(S12)被検細胞を培養する培養工程、
(S13)レポーター遺伝子から発現したタンパク質からの信号を検出する検出工程
(S14)前記検出の結果に基づいて前記被検細胞に含まれるDNA相同性組換え機能不全の細胞の存在率を算出する算出工程、及び
(S15)前記存在率に基づいて前記対象のがんのDNA相同組換え機能不全のがんに効果を奏する薬剤の効果を予測する予測工程。
【0071】
以下、各工程の手順の例について詳細に説明する。
【0072】
まず、対象から被検細胞を採取する。対象は動物であり、好ましくはヒトである。被検細胞はがん細胞である。がん細胞は、例えば乳がん、卵巣がん、前立腺がん及び/又は消化器のがんの原発巣から得られたもの、或いはそれらのがんが転移した病巣のがん細胞等であることが好ましい。がん細胞は、対象のがん病巣から生検等により採取され得る。被検細胞は、採取後培養してもよい。
【0073】
導入工程S11~検出工程S13は、上記導入工程S1~検出工程S3と同様に行うことができる。
【0074】
次に、検出工程S12の結果に基づいてDNA相同性組換え機能不全の細胞の存在率を算出する(算出工程S14)。DNA相同組換え機能不全の細胞の存在率は、被検細胞の細胞数(A)とDNA相同組換え機能不全の細胞数(B)とを計測し、次の式(I)に代入することにより得られる。
【0075】
DNA相同性組換え機能不全の細胞の存在率=(B)/(A)…式(I)
細胞数の計測は、公知の方法により行われればよい。例えば顕微鏡観察を行い目視により計測してもよいし、顕微鏡画像から自動的に計測してもよい。又はフローサイトメトリーを用いてもよい。
【0076】
細胞数(B)は、検出工程S12においてレポーター遺伝子12の活性が高い細胞の数である。例えば、細胞数(B)は信号15が得られた細胞の数である。レポーター遺伝子12として薬剤耐性遺伝子を用いる場合は、細胞数(B)は生存した細胞の数である。
【0077】
被検細胞の細胞数(A)は、例えば被検細胞に散乱光を照射することで検出される細胞数である。薬剤耐性遺伝子を用いる場合、被検細胞の細胞数(A)は導入工程S11の前に計測しておけばよい。
【0078】
算出工程S14は、被検細胞の全てについて行う必要はなく、サンプリングした一部又は顕微鏡の視野内の一部の被検細胞において行い、その結果から被検細胞全体のDNA相同組換え機能不全の細胞の存在率を推定してもよい。
【0079】
次に算出工程S14で得られたDNA相同組換え機能不全の細胞の存在率から対象のがんの薬剤効果を予測する。DNA相同組換え機能不全の細胞の存在率が高いほど、薬剤の効果が高いと判定することができる。反対にDNA相同組換え機能不全の細胞の存在率が低いほど、薬剤の効果が低いと判定することができる。
【0080】
薬剤の効果の予測は存在率の閾値を基準に行ってもよい。例えば存在率の閾値は約40%であり、これより存在率が高い場合薬剤の効果があると判定することも可能である。閾値は、例えば文献等の過去の知見から決定してもよい。或いは、薬剤効果が既知である細胞群のDNA相同組換え機能不全の細胞の存在率を実施形態の方法を行って算出して決定してもよい。
【0081】
或いは、当該存在率から、本薬剤を用いた治療のスケジュールを決定することも可能である。例えば存在率に応じて薬剤の投与量又は投与頻度を変更してもよい。
【0082】
以上に説明したように、実施形態の薬剤効果予測方法によれば、短時間で効率よく対象のがんにおける薬剤効果を予測することができる。
【0083】
・キット
実施形態によれば、DNA相同組換え機能不全の細胞を検出するため又は対象のがんにおける薬剤効果を予測するために用いられる試薬キットが提供される。
【0084】
キットは、第1核酸構築物と第2核酸構築物とを含む核酸構築物のセットを含む。
【0085】
核酸構築物のセットは、例えば、溶媒に含まれた組成物として提供される。溶媒は、例えば、エンドトキシンフリー水、PBS、TEバッファー又はHEPESバッファー等を用いることができる。組成物は、更に賦形剤、安定剤、希釈剤及び/又は補助剤等を含んでもよい。
【0086】
核酸構築物のセットは、脂質粒子に内包された状態でキットに含まれていることが好ましい。脂質粒子について図7を用いて説明する。図6に示すように、脂質粒子30は中空の球状の脂質膜である。例えば、図7の(a)に示すように第1核酸構築物1と第2核酸構築物10とは一緒に脂質粒子30に内包されている。又は図7の(b)に示すように第1核酸構築物1と第2核酸構築物10とは別々に脂質粒子30に内包されている。
【0087】
脂質粒子30を構成する脂質膜は、単層、脂質二重層若しくは脂質三重層等の脂質膜である。また、脂質粒子30は脂質膜が更に複数の重なった多層構造であってもよい。
【0088】
脂質粒子30は、1種類の脂質材料からなってもよいが、好ましくは複数種類の脂質材料からなる。脂質材料は、例えば、下記に例示するベース脂質と、第1の脂質化合物と、第2の脂質化合物とを少なくとも含むことが好ましい。
【0089】
ベース脂質は、リン脂質又はスフィンゴ脂質、例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、ケファリン又はセレブロシド、或いはこれらの組み合わせ等であることが好ましい。ベース脂質は、例えば生体膜の主成分の脂質であってもよく、人工的に合成した脂質であってもよい。
【0090】
ベース脂質として、特にカチオン性脂質又は中性脂質の脂質を用いること好ましく、その含有量によって脂質粒子30の酸解離定数を調節することができる。カチオン性脂質として1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)を用いることが好ましく、中性脂質として1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を用いることが好ましい。
【0091】
ベース脂質は、脂質材料の全体に対して30%~約80%(モル比)含まれることが好ましい。或いは、100%近くがベース脂質から構成されていてもよい。
【0092】
第1の脂質化合物及び第2の脂質化合物は、生分解性脂質である。第1の脂質化合物はQ-CHRの式で表すことができる。
(式中、
Qは、3級窒素を2つ以上含み、酸素を含まない含窒素脂肪族基であり、
Rは、それぞれ独立に、C12~C24の脂肪族基であり、
少なくとも一つのRは、その主鎖中又は側鎖中に、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-S-C(=O)-、-C(=O)-S-、-C(=O)-NH-、及び-NHC(=O)-からなる群から選択される連結基LRを含む)。
【0093】
脂質粒子30が第1の脂質化合物を含む場合、脂質粒子30の表面が非カチオン性となるため、細胞導入における障害が低減され、内包物の導入効率が高まり得る。
【0094】
第1の脂質化合物として、例えば下記式で表される構造を有する脂質を用いれば導入効率がより優れているため好ましい。特に、下記式(1-01)の脂質化合物及び/又は式(1-02)の脂質化合物を用いることが好ましい。
【0095】
【化1】
【0096】
第2の脂質化合物は、P-[X-W-Y-W’-Z]の式で表すことができる。
(式中、
Pは、1つ以上のエーテル結合を主鎖に含むアルキレンオキシであり、
Xは、それぞれ独立に、三級アミン構造を含む2価連結基であり、
Wは、それぞれ独立に、C~Cアルキレンであり、
Yは、それぞれ独立に、単結合、エーテル結合、カルボン酸エステル結合、チオカルボン酸エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、カルバメート結合及び尿素結合からなる群から選ばれる2価連結基であり、
W’は、それぞれ独立に、単結合又はC~Cアルキレンであり、
Zは、それぞれ独立に、脂溶性ビタミン残基、ステロール残基、又はC12~C22脂肪族炭化水素基である)。
【0097】
第2の脂質化合物を含む場合、脂質粒子30への核酸構築物の内包量が多くなり得る。
【0098】
例えば、以下の構造を有する第2の脂質化合物を用いれば、核酸構築物の内包量がより優れているため好ましい。特に、下記式(2-01)の化合物を用いることが好ましい。
【0099】
【化2】
【0100】
以上に説明した第1及び第2の脂質化合物を含む脂質粒子30を用いた場合、核酸構築物の内包量を増加させ、且つ核酸構築物の被検細胞への導入効率を高めることが可能である。かつ導入した被検細胞の細胞死も低減することができる。
【0101】
第1及び第2の脂質化合物は、脂質材料の全体に対して約20%~約70%(モル比)で含まれることが好ましい。
【0102】
脂質材料は、脂質粒子30同士の凝集を防止する脂質、例えばポリエチレングリコール(PEG)ジミリストイルグリセロール(DMG-PEG)を含むこともまた好ましい。このような脂質は、脂質粒子30の脂質材料全体に対して約1%~約5%(モル比)で含まれることが好ましい。
【0103】
脂質材料は、毒性を調整するための相対的に毒性の低い脂質;脂質粒子30に配位子を結合させる官能基を有する脂質;ステロール、例えばコレステロール等の内包物の漏出を抑制するための脂質等の脂質を更に含んでもよい。特に、コレステロールを含ませることが好ましい。
【0104】
用いられる脂質の種類及び組成は、目的とする脂質粒子30の酸解離定数(pKa)若しくは脂質粒子30のサイズ、内包物の種類、或いは導入する被検細胞中での安定性等を考慮して適切に選択される。
【0105】
例えば、脂質粒子30は、式(1-01)若しくは式(1-02)の化合物及び/又は式(2-01)の化合物と、DOPE及び/又はDOTAPと、コレステロールと、DMG-PEGとを含むことが好ましい。
【0106】
脂質粒子30は、小分子を脂質粒子30に封入する際に用いられる公知の方法、例えば、バンガム法、有機溶媒抽出法、界面活性剤除去法又は凍結融解法等を用いて製造することができる。例えば、脂質粒子30の材料を所望の比率でアルコール等の有機溶媒に含ませて得られた脂質混合物と、ベクター等の内包するべき成分を含む水性緩衝液を用意し、脂質混合物に水性緩衝液を添加する。得られた混合物を撹拌して懸濁することによりベクター等を内包した脂質粒子30が形成される。
【0107】
また、キットは、レポータータンパク質14を検出するための試薬を更に含んでもよい。試薬は、例えば、検出工程S3において説明した第1物質及び/又は第2物質である。
【0108】
核酸構築物のセット及び試薬は、個別に又は何れかの成分が組み合わされて容器に含まれて提供される。
[例]
以下、実施形態の核酸構築物のセットを製造し、使用した例について説明する。
【0109】
例1.DNA相同組換え機能不全細胞を検出するベクター1の作製
アンピシリン耐性遺伝子配列、ColE1origin配列、SV40origin配列、SV40ポリA配列、CMVプロモーター配列、BGHポリA配列が連結されたベクターAを用意した。CMVプロモーター配列の下流にあるXhoIサイト及びXbaIサイトで制限酵素処理を行った後、0.8%アガロース電気泳動を行い、ゲルを切り出して切断されたベクターAを精製した。
【0110】
下記表5~7に示す3種の配列を合成した。これらの3種の配列は、Cre遺伝子切断部(制限酵素サイト)の両端に10塩基の相同配列を設けた配列、Cre遺伝子切断部の両端に20塩基の相同配列を設けた配列、及びCre遺伝子切断部の両端に30塩基の相同配列を設けた配列である。下線で示す相同配列の間に、制限酵素サイトGGGCCC(ApaI)及びGCTAGC(NheI)が設けられている。
【0111】
【表5】
【0112】
【表6】
【0113】
【表7】
【0114】
表5~7の3つの配列をテンプレートとして表8のプライマーを用いて表9の条件でPCRを行ってそれぞれ増幅した。
【0115】
【表8】
【0116】
【表9】
【0117】
増幅したDNAを0.8%アガロース電気泳動によって精製し、これらの配列をベクターAのXhoI/XbaIサイトにクローニングキット(In-Fusion(登録商標)、TaKaRa)を用いて連結した。その結果、図8の(a)、(b)、(c)に示すベクターがそれぞれ得られた。作製したベクターについてDNA配列解析を行い、ベクターAのXhoI/XbaIサイトに上記表5~7の塩基配列が挿入されている、意図した配列であることを確認した。
【0118】
次いで、表5~7の配列を挿入したベクターについてそれぞれApaI及びNheIで制限酵素処理を行った後、0.8%アガロース電気泳動を行い、切り出して精製した。その結果、表5の配列由来のベクター1-10、表6の配列由来のベクター1-20及び表7の配列由来のベクター1-30が得られた。
【0119】
例2.DNA相同組換え機能不全細胞を検出するベクター2の作製
アンピシリン耐性遺伝子配列、ColE1origin配列、SV40origin配列、SV40ポリA配列、CMVプロモーター配列、BGHポリA配列を連結したベクターAを用意した。CMVプロモーター配列の下流にあるXhoIサイト及びXbaIサイトで制限酵素処理を行った後、0.8%アガロース電気泳動を行い、ゲルを切り出して、切断されたベクターAを精製した。
【0120】
ルシフェラーゼであるNanoLuc(登録商標)の遺伝子の配列(配列番号8)をテンプレートとし、表10に示す、loxP配列(配列番号7、下線部)を含むプライマーを用いて、表9の条件でPCRを行って増幅した。
【0121】
【表10】
【0122】
増幅したDNAを0.8%アガロース電気泳動によって精製し、この配列をベクターAのXhoI/XbaIサイトにクローニングキット(In-Fusion(登録商標)、TaKaRa)を用いて連結した。その結果、図9に示すレポーターベクターが得られた。作製したベクターについてDNA配列解析を行い、ベクターAのXhoI/XbaIサイトに、loxP配列(配列番号7)に挟まれたレポーター遺伝子(配列番号8)が挿入されている、意図した配列であることを確認した。これをベクター2とした。
【0123】
例3.ベクター1及びベクター2を内包する脂質粒子の調製
例1で作製したベクター1-10、ベクター1-20及びベクター1-30、並びに例2で作製したベクター2をそれぞれ含むDNA溶液にカチオン性ペプチドを加え、DNA-ペプチド凝縮体を形成した。次いで、それをエタノール中に脂質(FFT10(前記式(1-01)の脂質化合物)/SST04(前記式(2-01)の脂質化合物)/DOTAP/DOPE/コレステロール/PEG-DMG=37/15/10.5/10.5/30/2mol)を溶解した溶液に添加した。得られた混合液に10mMのHEPES(pH7.3)を静かに添加した後、遠心式限外ろ過で洗浄及び濃縮して、ベクター1-10、ベクター1-20及びベクター1-30をそれぞれ内包する脂質粒子と、ベクター2を内包する脂質粒子とを得た。脂質粒子のDNA内包量をDNA定量キット(Quant-iTTMPicoGreenTMdsDNAAssayKit、サーモフィッシャー・サイエンティフィック製)で測定した。
【0124】
例4.ベクター1及びベクター2の細胞株への導入
・ヒト乳腺腫瘍由来細胞株への導入
ヒト乳腺腫瘍由来細胞株(MCF-7)をカルチャーフラスコ内で10%牛胎児血清(FBS)を添加した培地(MEM、GIBCO)を用いて37℃、5%CO雰囲気下で付着培養した。培養後、培地を取り除き、細胞をPBSで洗浄した後、0.25%Trypsin-EDTA処理により細胞を剥がした。次いで、10%FBSを添加した培地に細胞を懸濁し、Trypsinを不活性化した。遠心で細胞を回収した後、2.0×10細胞/mLとなるように10%FBSを添加した培地に細胞を懸濁した。96ウェル培養ディッシュ(サーモフィッシャー・サイエンティフィック製)に4.0×10細胞/ウェルとなるように細胞懸濁液を200μL加えた。
【0125】
次に、例3で作製した3種のベクター1を内包する脂質粒子をDNAが50ng/ウェルとなるように上記ウェルに添加した。同時に例3で作製したベクター2を内包する脂質粒子をDNAが1ng/ウェルとなるように上記ウェルに更に添加した。対照としてベクター2のみを添加するウェルも設けた。したがって、ベクター2のみを添加した試料、ベクター1-10及びベクター2を添加した試料、ベクター1-20及びベクター2を添加した試料、並びにベクター1-30及びベクター2を添加した試料を得た。添加後、細胞を37℃、5%CO雰囲気で培養した。
・NanoLuc(登録商標)発現量の測定(NanoLuc(登録商標)発光アッセイ)
脂質粒子を添加した48時間後、培養プレートをインキュベータから取り出し、培地を取り除いた。その後、細胞をPBSで洗浄し、GloLysisBuffer(プロメガ)を100μL/well加えて、得られた混合液を-80℃で30分凍結した。それを室温で融解させた後、1.5ml遠心チューブに回収した。細胞溶解液を15,000rpmで10分間で遠心分離し、細胞残渣を沈殿させ、上清25μLを96ウェルプレート(Black、Nunc)に分注した。分注した上清に、ルシフェラーゼアッセイシステム(Nano-Glo(登録商標)LuciferaseAssaySystem、プロメガ)に含まれるルシフェラーゼ基質溶液を25μL添加し、混合した。得られた混合液についてルミノメーター(MithrasLB940、Berthold)を用いて、0.1秒当たりの1ウェルの当たりの発光量を測定した。
・プロモーター活性の比較結果
図10に、ベクター1及びベクター2内包脂質粒子によるNanoLuc(登録商標)発光強度(RLU)の測定結果を示す。ベクター2のみの場合、発光強度RLU値は約6.5×10であった。対して、ベクター1-10、ベクター1-20、又はベクター1-30を一緒に導入した場合では発光強度RLUは、それぞれ約2.9×10(ベクター2のみを1とした時の発光量比:0.45)、2.0×10(発光量比:0.31)、2.4×10(発光量比:0.37)であり、ベクター2のみと比較して減少した。
【0126】
この結果から、相同組換え活性を有する乳がん細胞株であるMCF7においては、ベクター1が存在する場合にベクター1が相同組換え活性により修復され、ベクター1でCre遺伝子が発現し、Creタンパク質がベクター2のloxP配列部分で組換えを行い、レポーターであるNanoLuc(登録商標)遺伝子の発現が抑制されたことが示唆される。このことから、相同組換え不全(HRD)の細胞では、ベクター1の修復が行われないことからNanoLuc(登録商標)発光強度(RLU)が維持されると予想することができ、相同組換え不全(HRD)細胞を検出できることは明らかである。
【0127】
DNA相同配列の長さが10塩基、20塩基及び30塩基の何れの場合でも同様に検出が可能であることが明らかとなった。
【0128】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
第1プロモーター配列と、前記第1プロモーター配列の下流に連結された、切断されたCre遺伝子とを含む第1核酸構築物と、
第2プロモーター配列と、前記第2プロモーター配列の下流に連結された第1loxP配列と、前記第1loxP配列の下流に連結されたレポーター遺伝子と、前記レポーター遺伝子の下流に連結された第2loxP配列を含む第2核酸構築物と
を含む、DNA相同性組換え機能の不全を検出する核酸構築物のセット。
[2]
前記切断部の5’末端には、前記切断部の3’末端の一部である第1配列と相同な塩基配列を有する第2配列が連結されている、[2]に記載のセット。
[3]
前記第1配列及び前記第2配列の塩基長は、3塩基~120塩基である、[2]
に記載のセット。
[4]
前記第1配列及び前記第2配列は、配列番号2、5、6の何れかの塩基配列から選択される、[2]又は[3]に記載のセット。
[5]
前記レポーター遺伝子が、蛍光タンパク質遺伝子、発光タンパク質遺伝子、活性酸素産生遺伝子又は薬剤耐性遺伝子である、[1]~[4]の何れか1つに記載のセット。
[6]
前記第1プロモーター配列及び前記第2プロモーター配列が、ウイルス由来プロモーター又は乳線組織特異的プロモーターである、[1]~[5]の何れか1つに記載のセット。
[7]
脂質粒子と、
前記脂質粒子に封入され、第1プロモーター配列と、前記第1プロモーター配列の下流に連結された、切断されたCre遺伝子とを含む記第1核酸構築物と、
前記脂質粒子に封入され、第2プロモーター配列と、前記第2プロモーター配列の下流に連結された第1loxP配列と、前記第1loxP配列の下流に連結されたレポーター遺伝子と、前記レポーター遺伝子の下流に連結された第2loxP配列を含む第2核酸構築物と、
を含むDNA相同性組換え機能の不全を検出するためのキット。
[8]
前記切断部の5’末端には、前記切断部の3’末端の一部である第1配列と相同な塩基配列を有する第2配列が連結されている、[7]に記載のキット。
[9]
前記第1配列及び前記第2配列の塩基長は、3塩基~120塩基である、[8]に記載のキット。
[10]
前記脂質粒子は、その材料として下記式(1-01)の化合物、式(1-02)の化合物及び/又は式(2-01)の化合物
【化3】
を含む、[7]~[9]の何れか1つに記載のキット。
[11]
前記レポーター遺伝子の発現を検出するための試薬を更に含む[7]~[10]の何れか1つに記載のキット。
[12]
第1プロモーター配列と、前記第1プロモーター配列の下流に連結された、切断されたCre遺伝子とを含む、第1核酸構築物、及び第2プロモーター配列と、前記第2プロモーター配列の下流に連結された第1loxP配列と、前記第1loxP配列の下流に連結されたレポーター遺伝子と、前記レポーター遺伝子の下流に連結された第2loxP配列を含む第2核酸構築物を被検細胞に導入すること、
前記被検細胞を培養すること、及び
前記レポーター遺伝子から発現したタンパク質の活性を検出すること
を含むDNA相同性組換え機能不全の細胞を検出する方法。
[13]
前記導入は、前記第1核酸構築物及び前記第2核酸構築物を封入した脂質粒子を前記被検細胞に接触させることにより行われる、[12]に記載の方法。
[14]
前記被検細胞のうちDNA相同性組換え機能不全の細胞において、前記レポータータンパク質の前記活性が高い、[12]又は[13]に記載の方法。
[15]
前記培養と前記検出とは、CMOSイメージセンサ上で行う、[12]~[14]の何れか1つに記載の方法。
[16]
第1プロモーター配列と、前記第1プロモーター配列の下流に連結された、切断されたCre遺伝子とを含む第1核酸構築物及び第2プロモーター配列と、前記第2プロモーター配列の下流に連結された第1loxP配列と、前記第1loxP配列の下流に連結されたレポーター遺伝子と、前記レポーター遺伝子の下流に連結された第2loxP配列を含む第2核酸構築物を対象由来の被検細胞に導入すること、
前記被検細胞を培養すること、
前記レポーター遺伝子から発現したタンパク質からの信号を検出すること
前記検出の結果に基づいて前記被検細胞に含まれるDNA相同性組換え機能不全の細胞の存在率を算出すること、及び
前記存在率に基づいて前記対象のがんにおける、DNA相同組換え機能不全のがんに効果を奏する薬剤効果を予測すること
を含む、薬剤効果予測方法。
[17]
前記導入は、前記第1核酸構築物及び前記第2核酸構築物を封入した脂質粒子を前記被検細胞に接触させることにより行われる、[16]に記載の方法。
[18]
前記培養と前記検出とは、CMOSイメージセンサ上で行う、[16]又は[17]に記載の方法。
[19]
前記検出の結果から、前記被検細胞のうち前記レポータータンパク質の前記活性が高い細胞をDNA相同性組換え機能不全の細胞とし、
前記DNA相同性組換え機能不全の細胞の存在率は、次の式(I)
存在率=DNA相同性組換え機能不全の細胞数/被検細胞数…式(I)
によって算出される、[16]~[18]の何れか1つに記載の方法。
[20]
前記予測において、前記存在率が高いほど前記薬剤の効果が高いと判定する、[16]~[19]の何れか1つに記載の方法。
【符号の説明】
【0129】
1…第1核酸構築物、2…切断されたCre遺伝子、2a…Cre遺伝子、
3…切断部、4…第1配列、5…第2配列、
6…切断されたCre遺伝子の5’側断片、
7…切断されたCre遺伝子の3’側断片、
8…Creタンパク質、10…第2核酸構築物、
11…第1loxP配列、12…レポーター遺伝子、13…第2loxP配列、
14…レポータータンパク質、15…信号、
20…CMOSイメージセンサ、23…被検細胞、
30…脂質粒子、
P1…第1プロモーター配列、P2…第2プロモーター配列。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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