(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】レンズ装置および撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/08 20210101AFI20241111BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20241111BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20241111BHJP
H04N 23/65 20230101ALI20241111BHJP
【FI】
G02B7/08 B
G03B17/02
G02B7/02 E
H04N23/65 100
(21)【出願番号】P 2020209312
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】笹木 亮平
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-149525(JP,A)
【文献】特開平09-304680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
G02B 7/28-7/40
G03B 13/30-13/36
G03B 21/53
G03B 17/02-17/17
G03B 17/22
G03B 17/56-17/58
H04N 5/222
H04N 5/253-5/257
H04N 23/00
H04N 23/40-23/76
H04N 23/90-23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光学部材と、前記第1の光学部材を駆動する第1の駆動部と、第2の光学部材と、前記第2の光学部材を駆動する第2の駆動部とを有するレンズ装置であって、
外部電源からの電圧を前記第1の駆動部への駆動電圧に変換する第1の変換部と、
前記外部電源からの電圧を前記第2の駆動部への駆動電圧に変換する第2の変換部と、
前記第2の駆動部への駆動電流を制限する制限部と、
前記第1の駆動部で消費する電力としての第1の電力と前記第2の駆動部で消費する電力としての第2の電力との和が閾値未満となるように、前記第1の変換部により得られる前記第1の駆動部への駆動電圧を制御する制御部と
、を備え、
前記制御部は、前記第2の駆動部における駆動電流に基づいて、前記第1の変換部により得られる前記第1の駆動部への駆動電圧と、前記制限部により得られる前記第2の駆動部への駆動電流とを制御することを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
第1の光学部材と、前記第1の光学部材を駆動する第1の駆動部と、第2の光学部材と、前記第2の光学部材を駆動する第2の駆動部とを有するレンズ装置であって、
外部電源からの電圧を前記第1の駆動部への駆動電圧に変換する第1の変換部と、
前記外部電源からの電圧を前記第2の駆動部への駆動電圧に変換する第2の変換部と、
前記第2の駆動部への駆動電流を制限する制限部と、
前記第1の駆動部で消費する電力としての第1の電力と前記第2の駆動部で消費する電力としての第2の電力との和が閾値未満となるように、前記第1の変換部により得られる前記第1の駆動部への駆動電圧を制御する制御部と
、を備え、
前記制御部は、前記第1の駆動部のための指令に基づいて、前記第1の変換部により得られる前記第1の駆動部への駆動電圧と、前記制限部により得られる前記第2の駆動部への駆動電流とを制御することを特徴とするレンズ装置。
【請求項3】
第1の光学部材と、前記第1の光学部材を駆動する第1の駆動部と、第2の光学部材と、前記第2の光学部材を駆動する第2の駆動部とを有するレンズ装置であって、
外部電源からの電圧を前記第1の駆動部への駆動電圧に変換する第1の変換部と、
前記外部電源からの電圧を前記第2の駆動部への駆動電圧に変換する第2の変換部と、
前記第2の駆動部への駆動電流を制限する制限部と、
前記第1の駆動部で消費する電力としての第1の電力と前記第2の駆動部で消費する電力としての第2の電力との和が閾値未満となるように、前記第1の変換部により得られる前記第1の駆動部への駆動電圧を制御する制御部と
、を備え、
前記制御部は、前記第1の駆動部のための指令に基づいて、前記第1の変換部により得られる前記第1の駆動部への駆動電圧と、前記第2の変換部により得られる前記第2の駆動部への駆動電圧とを制御することを特徴とするレンズ装置。
【請求項4】
前記第1の光学部材
はズームレンズ群を含み、前記第2の光学部材
はフォーカスレンズ群を含むことを特徴とする請求項1から
3のうちいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項5】
開口絞りを有し、
前記制御部は、前記レンズ装置の焦点深度が深いほど前記第1の電力が大きくなるように、前記第1の変換部により得られる前記第1の駆動部への駆動電圧を制御することを特徴とする請求項
4に記載のレンズ装置。
【請求項6】
開口絞りと、第1の光学部材と、前記第1の光学部材を駆動する第1の駆動部と、第2の光学部材と、前記第2の光学部材を駆動する第2の駆動部とを有するレンズ装置であって、
外部電源からの電圧を前記第1の駆動部への駆動電圧に変換する第1の変換部と、
前記第1の駆動部で消費する電力としての第1の電力と前記第2の駆動部で消費する電力としての第2の電力との和が閾値未満となるように、前記第1の変換部により得られる前記第1の駆動部への駆動電圧を制御する制御部と、を備え、
前記第1の光学部材はズームレンズ群を含み、前記第2の光学部材はフォーカスレンズ群を含み、
前記制御部は、前記レンズ装置の焦点深度が深いほど前記第1の電力が大きくなるように、前記第1の変換部により得られる前記第1の駆動部への駆動電圧を制御することを特徴とするレンズ装置。
【請求項7】
前記第1の光学部材はフォーカスレンズ群を含み、前記第2の光学部材はズームレンズ群を含むことを特徴とする請求項1から
6のうちのいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項8】
請求項1から
7のうちいずれか一項に記載のレンズ装置と、前記レンズ装置により形成された像を撮る撮像素子と、を有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ装置および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放送用途の撮像装置は、レンズ装置とカメラ装置とを接続して構成され、レンズ装置は、接続されたカメラ装置から電源の供給を受けている。このようなレンズ装置では、駆動トルクの大きさや制御の容易性のメリットから、光学部材駆動用のアクチュエータとして直流モータを使用する場合が多い。直流モータを使用する場合、カメラ装置から供給される電源電圧によって光学部材の駆動速度が制約されるところ、ズームは、さらなる高速化が要望されている。
【0003】
特許文献1には、カメラ装置から供給される電源電圧を昇圧することにより、レンズユニットの高速駆動を可能とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のレンズ装置では、電源電圧を昇圧した分だけ消費電力が増加してしまう。本発明は、例えば、光学部材の高速駆動および消費電力の点で有利なレンズ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の背景において、本発明の一の態様は、第1の光学部材と、前記第1の光学部材を駆動する第1の駆動部と、第2の光学部材と、前記第2の光学部材を駆動する第2の駆動部とを有するレンズ装置であって、外部電源からの電圧を前記第1の駆動部への駆動電圧に変換する第1の変換部と、前記第1の駆動部で消費する電力としての第1の電力と前記第2の駆動部で消費する電力としての第2の電力との和が閾値未満となるように、前記第1の変換部により得られる前記第1の駆動部への駆動電圧を制御する制御部と、を有するレンズ装置である。
【0007】
本発明の他の態様は、第1の光学部材と、前記第1の光学部材を駆動する第1の駆動部と、第2の光学部材と、前記第2の光学部材を駆動する第2の駆動部とを有するレンズ装置であって、外部電源からの電圧を前記第1の駆動部への駆動電圧に変換する第1の変換部と、前記第1の駆動部で消費する電力としての第1の電力と前記第2の駆動部で消費する電力としての第2の電力との和が閾値未満となるように、前記第1の変換部により得られる前記第1の駆動部への駆動電圧を制御する制御部と、を有するレンズ装置と、前記レンズ装置により形成された像を撮る撮像素子とを備える撮像装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、光学部材の高速駆動および消費電力の点で有利なレンズ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例1および実施例2のレンズ装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施例1のズーム電源生成部の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施例1のフォーカス電流制限回路の構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施例1のフォーカス電流制限回路の電流制限を説明する図である。
【
図5】本発明の実施例1における制御部の処理を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施例2におけるズーム電源生成部による電源電圧制御を説明する図である。
【
図7】本発明の実施例2における制御部の処理を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施例3におけるレンズ装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】本発明の実施例3における制御部の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
以下、
図1から
図5を参照して、本発明の実施例1のレンズ装置10と、カメラ装置200について説明する。
図1はレンズ装置10の構成を示すブロック図である。
図2はズーム電源生成部の構成を示す。
図3はフォーカス電流制限回路の構成を示す。
図4はフォーカス電流制限回路の電流制限の原理を示す。
図5は制御部110の処理のフローチャートを示す。レンズ装置10はレンズ装置として単体として構成することもできるが、レンズ装置10と、レンズ装置10により形成された像を撮る撮像素子(不図示)とを備える撮像装置として構成することもできる。撮像素子はたとえばカメラ装置200の中に配置することもできる。
【0012】
レンズ装置10は、少なくとも第1の光学部材(不図示)と第2の光学部材(不図示)とを備える光学部材を制御駆動する装置である。この光学部材はレンズ装置10の外部装置としてもよく、一方レンズ装置10が光学部材を備えるように構成してもよい。第1の光学部材はズームレンズ群(不図示)を含み、第2の光学部材はフォーカスレンズ群(不図示)を含む。すなわち、代表的には、第1の光学部材はズームレンズ群であり、第2の光学部材はフォーカスレンズ群である。以下、第1の光学部材をズームレンズ群と、第2の光学部材をフォーカスレンズ群として説明する。しかし、逆に、第1の光学部材はフォーカスレンズ群(不図示)として、第2の光学部材はズームレンズ群(不図示)としてもよく、この場合には第1の光学部材はフォーカスレンズ群に、第2の光学部材はズームレンズ群に、それぞれ置き換えられる。
【0013】
レンズ装置10は、さらに、制御手段たる制御部110と、第1の光学部材の駆動制御系と、第2の光学部材の駆動制御系と、操作部材120と、を備えている。第1の光学部材制御系は、第1の変換部と、指令値入力手段と、第1の光学部材を駆動する第1の駆動部と、を備えている。第2の光学部材制御系は、第2の変換部と、電流制限手段と、電流取得手段と、第2の光学部材を駆動する第2の駆動部と、を備えている。
【0014】
レンズ装置10には、たとえばカメラ装置200の電源などの外部電源から電力が供給される。第1の変換部は、外部電源から入力された電力の電圧を第1の駆動部を駆動するための駆動電圧に変換する。第1の変換部で変換された駆動電圧は第1の駆動部に供給される。第2の変換部は外部電源から入力された電力の電圧を第2の駆動部を駆動するための駆動電圧に変換する。第2の変換部で変換された駆動電圧は第2の駆動部に供給される。第1の駆動部と第2の駆動部とは、それぞれ、回転駆動することで、第1の光学部材と第2の駆動部材とを光軸方向に駆動するアクチュエータである。
【0015】
第1の光学部材制御系は、たとえば、第1の変換部をズーム電源生成部101と、指令値入力手段をズーム駆動回路102と、第1の駆動部をズームモータ104と、して構成することができる。ズームモータ104はズーム電流制限回路103を介してズーム駆動回路102に接続される。
【0016】
第2の光学部材制御系は、第2の変換部をフォーカス電源生成部105と、制限部たるフォーカス電流制限回路107と、第2の駆動部をフォーカスモータ108と、電流取得手段をフォーカス電流検出部109と、して構成できる。制限部たるフォーカス電流制限回路107は、フォーカス駆動回路106を介して、フォーカス電源生成部105に接続されていて、第2の駆動部をフォーカスモータ108への駆動電流を制限する。
【0017】
制御部110は、操作部材120により入力される操作量に応じて、ズームレンズ群を制御駆動するズームモータ104を駆動するための駆動指令値を生成する。同様に、制御部110は、操作部材120により入力される操作量に応じて、フォーカスレンズ群を駆動制御するフォーカスモータ108を駆動するための駆動指令値を生成する。また、制御部110は、位置検出部(不図示)によって検出されたズームレンズ群およびフォーカスレンズ群の位置に対応する位置信号を取得し、その位置信号に応じて、駆動指令値を生成することもできる。たとえば、絞りを調整する開口絞り(不図示)などを有する場合に、焦点深度は、開口絞りの状態とズームレンズ群およびフォーカスレンズ群の位置に対応する位置信号とに基づいて決定される。すなわち、制御部110は、焦点深度に応じて駆動指令値を生成する場合に、ズームレンズ群およびフォーカスレンズ群の位置に対応する位置信号を使用する。
【0018】
制御部110で生成された駆動指令値は指令値入力手段たるズーム駆動回路102に入力される。入力された駆動指令値はズーム駆動回路102を介してズームモータ104に伝達される。同様に、制御部110で生成された駆動指令値は指令値入力手段たるフォーカス駆動回路106に入力される。入力された駆動指令値はフォーカス駆動回路106を介してフォーカスモータ108に伝達される。
【0019】
ズーム電源生成部101とフォーカス電源生成部105とは、カメラ装置200からレンズ装置10へ供給される電力を、それぞれの駆動部で用いる駆動電圧に変換する。変換された駆動電圧は、それぞれズーム駆動回路102とフォーカス駆動回路106とへ供給する。ズーム電源生成部101は、
図2で示すように、昇圧回路となっており、カメラ装置200から供給される電源電圧を、制御部110が出力する電源制御信号のDUTY比を変える。これにより、各駆動回路へ供給する電源電圧を制御する。フォーカス電源生成部105も、ズーム電源生成部101と同様の回路で構成され、同様に機能する。
【0020】
制御部110は、後述する方法で、ズーム電源生成部101で変換されて出力されたズームモータ104へ供給する駆動電圧を制御する。実施例1のレンズ装置10では、フォーカス電源生成部105の出力電圧は、カメラ装置200から供給される電圧と同じ値を出力する。
【0021】
ズーム電流制限回路103およびフォーカス電流制限回路107は、ズームモータ104およびフォーカスモータ108へ出力する駆動電流を所定の値で制限をする。それとともに、制御部110が出力する電流制限値による制御信号に基づき、それぞれの電流制限値を変更する。制御部110は、フォーカス電流検出部109により取得するフォーカスモータ108における駆動電流に基づいて、フォーカス電流制限回路107により得られるフォーカスモータ108へ供給するフォーカスモータ108の駆動電流の制限値を決定する。そして、制御部110は、第1の変換部たるズーム電源生成部101により得られるズームモータ104へ供給するズームモータ104の駆動電圧を制御する。実施例1では、制御部110により、後述する方法でフォーカス電流制限回路107の電流制限値を決定して制御し、ズーム電流制限回路103の電流制限値は、固定値とする例について説明する。
【0022】
続いて、
図3および
図4を参照して、フォーカス電流制限回路107による電流制限について説明する。フォーカス電流制限回路107は、
図3で示すように、第2の駆動部たるフォーカスモータ108の駆動電流を所定の値に制限する。具体的には、フォーカス電流制限回路107は、制御部110からの電流制限値による制御信号によって、電流制限値Ilmf1と電流制限値Ilmf2との間で選択的に切り替え可能である。そして、選択された電流制限値で、フォーカスモータ108へ出力する駆動電流が制限される。また、
図4に示すように、制御部110は、フォーカス電流検出部109によって検出されるフォーカス駆動電流Imfが、閾値Imf1未満のときには電流制限値Ilmf1を選択する。
【0023】
フォーカス電流検出部109は、第2の駆動部たるフォーカスモータ108を駆動する際に、第2の駆動部たるフォーカスモータ108の駆動電流を取得する。具体的には、フォーカス電流検出部109は、フォーカス駆動回路106を流れるフォーカス駆動電流Imfを検出し、制御部110へ出力する。
【0024】
詳細については後述するが、制御部110は、フォーカス電流検出部109でフォーカス駆動電流Imfを検出したのち、ズーム駆動電圧Vmzを決定する。適切なズーム駆動電圧Vmzを決めることで、最大消費電力を一定以内に抑えたまま、ズームの高速駆動を可能にすることができる。すなわち、制御部110は、ズームモータ104で消費する電力である第1の電力とフォーカスモータ108で消費する電力である第2の電力との和が所定の閾値未満となるように制御する。制御部110は、第1の電力と第2の電力の和が閾値未満になるようにズーム電源生成部101で変換されて出力されたズームモータ104へ供給する駆動電圧を制御する。
【0025】
ここで、レンズ装置10の最大消費電力を一定以内に抑えたまま、ズームの高速駆動を可能にするための処理の概要について説明する。レンズ装置10の最大消費電力Pmaxは、後述するズーム電力Plmzとフォーカス電力Plmfの和であり、式(1)で表すことができる。
Pmax = Plmz + Plmf ・・・(式1)
したがって、フォーカスで使用する最大電力となるフォーカス電力Plmfを小さくすることができれば、最大消費電力Pmaxを変えずに、ズームで使用する最大電力となるズーム電力Plmzを大きく取ることができる。
【0026】
ズーム電力Plmzは、ズーム駆動電圧Vmzとズーム電流制限値Ilmzの積であり、式2で表すことができる。
Plmz = Vmz × Ilmz ・・・(式2)
したがって、上述のように、ズーム電流制限回路103の電流制限値が一定値としたとき、ズーム電力Plmzを大きく取ることができるため、ズーム駆動電圧Vmzを大きくとることができる。すなわち、ズームを高速で駆動することが可能となる。
【0027】
次に、
図5のフローチャートを参照して、実施例1における、レンズ装置の最大消費電力を一定以内に抑えたまま、ズームの高速駆動を可能にするための処理について説明する。まず、制御部110は、フォーカス電流検出部109により、フォーカス駆動電流Imfを測定して取得する(S101)。続いて、フォーカス駆動電流Imfが、閾値Imf1未満か否かを判断する(S102)。ここで、閾値Imf1未満であるときにはフォーカス電流制限値Ilmfを電流制限値Ilmf1に設定し(S103)て、次のステップS105に進む。一方、フォーカス駆動電流Imfが、閾値Imf1以上であるときにはフォーカス電流制限値Ilmfを電流制限値Ilmf2に設定し(S104)て、次のステップS105に進む。
【0028】
このステップは、
図4に示すように、フォーカス駆動電流Imfが閾値Imf1以上か否かに応じて、フォーカス電流制限値Ilmfを、電流制限値Ilmf1に、または電流制限値Ilmf2に決定するステップである。電流制限値Ilmf2は電流制限値Ilmf1よりも大きい値であって、レンズ装置10として規定されるフォーカス駆動電流Imfの最大値である。レンズ装置10が使用される際に姿勢差がある、または低温環境である等、いかなる条件であっても、フォーカスモータ108を駆動することが可能な電流値である。一方、電流制限値Ilmf1は、レンズ装置10が、姿勢差がついていない状態である、または常温環境である等と、フォーカスモータ108を駆動するための電流が小さくて済む際に設定される。
【0029】
次に、ステップS105では、ステップS103またはS104で決定したフォーカス電流制限値Ilmfに基づき、フォーカスの駆動で使用可能な電力の最大値であるフォーカス電力Plmfを算出する(S105)。
【0030】
フォーカス電力Plmfは、フォーカス電流制限値Ilmfとフォーカス駆動電圧Vmfとの積で求めることができ、式3で表すことができる。
Plmf = Vmf × Ilmf ・・・(式3)
本実施例では、フォーカス駆動電圧Vmfは、カメラ装置200から供給される電源電圧と同じ値である。
【0031】
次に、ステップS106において、レンズ装置10の最大消費電力Pmaxと、ステップS105で算出したフォーカス電力Plmfに基づき、ズームの駆動で使用可能なズーム電力Plmzを求める(S106)。ズーム電力Plmzは式4で表すことができる。
Plmz = Pmax - Plmf ・・・(式4)
【0032】
次に、ステップS107に進み、ステップS106で算出したズーム電力Plmzに基づき、ズーム駆動電圧Vmzを算出し、ズームの駆動電圧として設定する(S107)。ズーム駆動電圧Vmzは、ズーム電力Plmzと、ズーム電流制限値Ilmzを用いて、式5で表すことができる。
Vmz = Plmz/Ilmz ・・・(式5)
制御部110は、ズーム電源生成部101に出力する電源制御信号のDUTY比を変えることで、ステップS107で決定したズーム駆動電圧Vmzを駆動回路へ供給する。
【0033】
以上、説明したように、本実施例によれば、使用環境におけるフォーカス駆動電流Imfに基づき、フォーカス電流制限値Ilmfを決定し、フォーカスの駆動に必要な電流値を確保したうえで、ズーム駆動電圧Vmzを決定するようにした。
【0034】
これにより、フォーカスの電流制限値を小さくすることで、フォーカスの駆動系において、最大で消費する電力を小さくすることができる。小さくした分、レンズ装置全体での最大消費電力に余力が生まれる。この余力を有効に活用することで、最大消費電力を一定以内に抑えたまま、ズームの高速駆動を可能にすることができる。
【実施例2】
【0035】
続いて、以下、
図1、
図6および
図7を参照して、実施例2のレンズ装置10について説明する。実施例1のレンズ装置10では、フォーカスの駆動電流を測定し、それに応じたフォーカスの電流制限値を決定した。これは、レンズ装置の最大消費電力の観点から、ズームの駆動電圧を決定することにより最大消費電力を一定以内に抑えたまま、ズームの高速駆動を可能にする実施例である。一方、実施例2のレンズ装置10は、ズームの駆動電圧を決定した後に、フォーカスの電流制限値を決定する実施例である。
【0036】
実施例1のレンズ装置10においても説明したが、レンズ装置10の最大消費電力Pmaxは、後述するズーム電力Plmzとフォーカス電力Plmfの和である。実施例2では、先にズームの駆動電圧を決定する。そして、ズームの最大電力であるズーム電力Plmzを確定した上で、最大消費電力Pmaxを変えないようにするため、フォーカスの最大電力であるフォーカス電力Plmfを設定する。
【0037】
実施例2のレンズ装置10の構成は、実施例1の構成と共通である。したがって、以下、実施例2の説明において、実施例1と共通な構成に関する説明は省略し、実施例1と異なる部分について説明する。
【0038】
制御部110は、操作部材120からズームモータ104を駆動するための駆動指令を取得する。駆動指令としては、たとえばズームモータ104を駆動するためのズームモータ104の駆動速度に関するズーム速度の指令値である。制御部110は、操作部材120から取得したズームモータ104を駆動するための駆動指令に基づき、ズーム電源生成部101により得られるズームモータ104へ供給するズームモータ104の駆動電圧を制御する。そして、フォーカス電流制限回路107により得られる、制限すべきフォーカスモータ108の駆動電流の制限値を決定する。たとえば、制御部110は、ズームモータ104が、ズーム速度指令値に応じたズームの駆動速度となるようなズーム駆動電圧に、ズーム電源生成部101に出力する電源制御信号のDUTY比を設定する。このDUTY比に基づく駆動電圧はフォーカス電流制限回路107において制限すべきフォーカスモータ108の駆動電流の電流制限値となる。
【0039】
続いて、制御部110において、
図6を参照して、操作部材120から駆動指令値を取得しズーム駆動電圧を決定する処理について説明する。
図6に示すように、制御部110は、操作部材120から取得する駆動指令値Cmzが、閾値Cmz1未満のときに電源電圧Vmz3を選択する。一方、閾値Cmz1以上のときに電源電圧Vmz4を選択する。ここで電源電圧Vmz3は、駆動指令値Cmzが閾値Cmz1より小さい駆動指令値であるときにズームモータ104の所望の駆動速度が達成できる電圧値である。
【0040】
次に、
図7のフローチャートを参照して、実施例2のレンズ装置10における、レンズ装置10の最大消費電力を一定以内に抑えたまま、ズームの高速駆動を可能にするための処理について説明する。まず、制御部110は、操作部材120から入力される駆動指令値Cmzを取得する(S201)。続いて、駆動指令値Cmzが閾値Cmz1未満か否かを判断する(S202)。ここで、駆動指令値Cmzが閾値Cmz1未満であるときにはズーム駆動電圧Vmzを電源電圧Vmz3に設定し(S203)て、次のステップS205に進む。一方、駆動指令値Cmzが閾値Cmz1以上であるときにはズーム駆動電圧Vmzを電源電圧Vmz4に設定し(S204)て、次のステップS205に進む。このステップは、
図6に示すように、駆動指令値Cmzが閾値Cmz1以上か否かに応じて、ズーム駆動電圧Vmzを電源電圧Vmz3に、または電源電圧Vmz4に、決定するステップである。
【0041】
ここで、電源電圧Vmz4は、電源電圧Vmz3よりも大きい値の電源電圧であって、ズーム電源生成部101で生成する高い方の電圧値であり、レンズ装置10の実力最高速度で駆動することができる電圧である。一方、電源電圧Vmz3は、レンズ装置10が、通常の速度で、ズームモータ104を駆動するための電圧値である。
【0042】
次に、ステップS205において、ズーム駆動電圧Vmzに基づき、ズームの駆動で使用可能な電力の最大値であるズーム電力Plmzを算出し(S205)て、ステップS206に進む。ズーム電力Plmzは、ズーム駆動電圧Vmzとズーム電流制限値Ilmzとの積で求めることができ、式6で表すことができる。
Plmz = Vmz × Ilmz ・・・(式6)
実施例2では、ズーム電流制限値Ilmzは、ズーム電流制限回路103で制限され、固定値としている。
【0043】
次に、ステップS206において、レンズ装置10の最大消費電力Pmaxと、ステップS205で算出したズーム電力Plmzに基づき、フォーカスの駆動で使用可能なフォーカス電力Plmfを求める(S206)。フォーカス電力Plmfは式7で表すことができる。
Plmf = Pmax - Plmz ・・・(式7)
【0044】
次に、ステップS207に進み、ステップS206で算出したフォーカス電力Plmfに基づき、フォーカス電流制限値Ilmfを算出し、フォーカスの電流制限値として設定する。フォーカス電流制限値Ilmfは、フォーカス電力Plmfと、フォーカス駆動電圧Vmfを用いて、式8で表すことができる。実施例2では、フォーカス駆動電圧Vmfは、固定値としている。
Ilmf = Plmf/Vmf ・・・(式8)
【0045】
以上、説明したように、実施例2では、操作部材120による速度指令値に基づき、ズーム駆動電圧Vmzを決定し、ズームの駆動速度を優先させたうえで、フォーカス電流制限値Ilmfを決定するようにした。これにより、最大消費電力を一定以内に抑えたまま、ズームの高速駆動を可能にすることができる。
【実施例3】
【0046】
以下、
図8および
図9を参照して、実施例3のレンズ装置11について説明する。
図8は、本発明の実施形態にかかわるレンズ装置11の構成を示すブロック図である。実施例3のレンズ装置11は、実施例1のレンズ装置10とほぼ同じ構成であるが、制御部110がフォーカス電源生成部105を制御する制御ラインを有する点で異なっている。以下、ここでは、実施例3のレンズ装置11について、実施例1および実施例2と異なる構成および機能について説明し、実施例1および2と同じ部分は説明を省略する。
【0047】
実施例2では、ズームの速度指令値などの駆動指令値を取得し、それに応じたズームモータ104の駆動電圧を決定し、最大消費電力の観点から、フォーカスの電流制限値を決定する実施例である。この実施例では、最大消費電力を一定以内に抑えたまま、ズームの高速駆動を可能になる。これに対し、実施例3では、ズームモータ104の駆動電圧を決定したのちに、最大消費電力の観点から、フォーカスの駆動電圧を決定する実施例である。実施例3において、ズームモータ104の駆動電圧を決定するまでは実施例2と同じである。
【0048】
すなわち、制御部110は、まず操作部材120からズームモータ104を駆動するための駆動指令を取得する。その駆動指令に基づいて、実施例2と同様に、第1の変換部たるズーム電源生成部101により得られる、ズームモータ104へ供給するズームモータ104の駆動電圧を決定する。そして、制御部110は、第2の変換部たるフォーカス電源生成部105により得られる、フォーカスモータ108へ供給するフォーカスモータ108の駆動電圧を決定する。
【0049】
フォーカス電源生成部105は、カメラ装置200から供給される電源電圧を、そのまま使用するか、降圧して小さい電圧として使用するかを決定し、後段のフォーカス駆動回路106へ出力する。また、フォーカス電流制限回路107は、実施例1および実施例2のときとは異なり、制限される電流値は固定値を出力するものとする。
【0050】
次に、
図9のフローチャートを参照して、実施例3のレンズ装置11における、レンズ装置の最大消費電力を一定以内に抑えたまま、ズームの高速駆動を可能にするための処理について説明する。
【0051】
実施例3の
図9のステップS301からS306までは、実施例2で説明した
図7のステップS201からS206までの処理に対応し、全く同じであるので説明を省略する。実施例2と異なるステップS307について説明する。
【0052】
図9のステップS306で算出したフォーカス電力Plmfに基づき、フォーカス駆動電圧Vmfを算出し、フォーカスの駆動電圧として設定する(S307)。フォーカス駆動電圧Vmfは、フォーカス電力Plmfと、フォーカス電流制限値Ilmfを用いて、式9で表すことができる。
Vmf = Plmf/Ilmf ・・・(式9)
【0053】
制御部110は、フォーカス電源生成部105に出力する電源制御信号のDUTY比を変えることで、ステップS307で決定したフォーカス駆動電圧Vmfを駆動回路へ供給する。実施例3では、フォーカス電流制限値Ilmfは、固定値としている。
【0054】
以上、説明したように、実施例3によれば、操作部材120による速度指令値に基づき、ズーム駆動電圧Vmzを決定し、ズームモータ104の駆動速度を優先させたうえで、フォーカス駆動電圧Vmfを決定するようにした。これにより、最大消費電力を一定以内に抑えたまま、ズームの高速駆動を可能にすることができる。
【0055】
上述の実施例2および実施例3においては、ズームモータ104を高速で駆動しているときは、フォーカスの電流制限が小さい、または、フォーカスの駆動電圧が小さいという状況になる。しかし、ズームモータ104を高速で駆動しているため、焦点を合わせるためのフォーカスの駆動の追従性が最良の状態でなくとも問題はない。ユーザは違和感を抱くことなく、最大消費電力を一定以内に抑えたまま、ズームを高速で駆動するという効果を享受することができる。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。例えば、上述のフォーカス電流制限回路107では、2つの電流制限値を切り替えられる例について説明した。しかし、3つ以上の電流制限値を切り替えられるようにしても良い。このようにすることで、より細かく最大電力の振り分けができるようになる。
【0057】
また、たとえば、ズームレンズ群やフォーカスレンズ群およびレンズ装置10が有する開口絞り(不図示)をF値の光学的条件によって、制御部110が駆動電圧を制御してもよい。この場合、開口絞りの焦点深度の状態とズームレンズ群およびフォーカスレンズ群の位置とに基づいて決まる。レンズ装置の焦点深度が深い状態では、フォーカスの駆動によるピント移動が画として認識しづらい。したがって、制御部110は、レンズ装置10の焦点深度が深いほど第1の電力が大きくなるように、第1の変換部により得られる前記第1の駆動部への駆動電圧を制御する。すなわち、制御部110は、焦点深度が深いときには、焦点深度が浅いときに比べて、ズームモータ104で消費する電力である第1の電力がより大きくなるように、ズーム電源生成部101がズームモータ104へ供給する駆動電圧を制御する。これにより、フォーカスの電流制限値や駆動電圧をより小さくして、フォーカスの駆動によるピント移動によっても画を認識しやすいようにする。
【0058】
また、レンズ装置に温度センサを設け、温度センサで検出するレンズ装置の環境温度に応じて、フォーカスの電流制限値を制御するようにしても良い。低温環境では一般的に駆動トルクが大きくなる。特に、実施例1で、フォーカスの駆動電流を測定し、それに応じたフォーカスの電流制限値を決定する際に、検出する環境温度の情報も併せて用いることで、より適切に最大電力の振り分けができるようになる。
【0059】
実施例1から実施例3では、レンズ装置の最大消費電力を一定以内に抑えたまま、ズームの高速駆動を可能にするために、ズームで使用するズーム最大電力を大きく取り、フォーカス最大電力を小さくする例について説明した。しかし、フォーカスの高速駆動を優先させる場合は、ズームとフォーカスの関係を反対にして、本発明を適用することができる。
【0060】
この場合、上記実施例の説明において、「第1の光学部材」を「ズームレンズ群」と「第2の光学部材」を「フォーカスレンズ群」としていたところ、「第1の光学部材」を「フォーカスレンズ群」と、「第2の光学部材」を「ズームレンズ群」と、置き換える。また、「第1の変換部」を「フォーカス電源生成部105」と、「第1の駆動部」を「フォーカスモータ108」と、「第2の変換部」を「ズーム電源生成部101」と、「第2の駆動部」を「ズームモータ104」とする。そして、「指令値入力手段」を「フォーカス駆動回路106」と、「電流制限手段」を「ズーム電流制限回路103」とする。さらに、「電流取得手段」は「フォーカス電流検出部109」の呼称を「ズーム電流検出部」と読み替えればよい。
【符号の説明】
【0061】
10,11 レンズ装置
101 ズーム電源生成部
102 ズーム駆動回路
103 ズーム電流制限回路
104 ズームモータ
105 フォーカス電源生成部
106 フォーカス駆動回路
107 フォーカス電流制限回路
108 フォーカスモータ
109 フォーカス電流検出部
110 制御部
120 操作部材
200 カメラ装置