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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】電極用ケーブル及びケーブル付き電極
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/273 20210101AFI20241111BHJP
【FI】
A61B5/273
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020219077
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022104082
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 拓也
【審査官】外山 未琴
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-512864(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0249922(US,A1)
【文献】登録実用新案第3188660(JP,U)
【文献】特表2004-501736(JP,A)
【文献】実開昭60-023009(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05-5/0538
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の体表面上で上下左右及び中央にそれぞれ装着される四肢誘導用及び胸部誘導用の複数の生体情報用電極にそれぞれ接続される複数の電極接続部と、
装置本体に一箇所で接続される基部から別々に延出され、前記四肢誘導用の電極接続部のうち左右の上側の一方の電極接続部と前記左右の上側の他方の電極接続部がそれぞれ繋がっているそれぞれ線状の第1主幹ケーブル及び第2主幹ケーブルと、を有し、
前記第1主幹ケーブルは、前記左右の上側の一方の電極接続部に繋がるリードを分岐させ、且つ、前記左右の上側の一方の電極接続部に繋がるリードの分岐位置から、前記胸部誘導用の電極接続部のすべてが繋がるように延伸してなり、
前記第1主幹ケーブルのうち前記分岐位置から延伸する部位は、先端に、前記胸部誘導用の電極接続部のうちの一つを有し、前記分岐位置と前記先端との間で、残余の前記胸部誘導用の電極接続部に夫々繋がるリードが順次分岐した一本のケーブルで構成される
電極用ケーブル。
【請求項2】
前記第2主幹ケーブルは、先端に、前記左右の上側の他方の電極接続部を有する、
請求項記載の電極用ケーブル。
【請求項3】
前記第1主幹ケーブルは、前記基部と前記分岐位置との間で、前記四肢誘導用の左右の下側の一方の電極接続部に繋がるリードを分岐させる、
請求項1または2記載の電極用ケーブル。
【請求項4】
前記第2主幹ケーブルは、前記基部と前記先端との間で、前記四肢誘導用の左右の下側の他方の電極接続部に繋がるリードを分岐させる、
請求項1から3のいずれか一項に記載の電極用ケーブル。
【請求項5】
前記第1主幹ケーブルの主幹は、先端に前記電極接続部が接続された長さの異なる複数のリードを束ねた束の部分で構成される、
請求項1から4のいずれか一項に記載の電極用ケーブル。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の電極用ケーブルと、
前記電極接続部に各々接続される生体情報用電極と、
を一体に有する、
ケーブル付き電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者に装着して心電図などの生体情報を測定する生体情報測定用電極の電極用ケーブル及びケーブル付き電極に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不整脈や虚血性心疾患などの心電図異常を調べるための心電図検査では、被検者の体表面に生体情報用電極を装着し、これら生体情報用電極から心臓の活動電位に対応する心電図信号(心電図)を検出して解析し、測定、記録することにより行われる。
【0003】
例えば、標準12誘導波形を取得する場合、電極を、被検者の両手首、足首、胸部、具体的には、四肢誘導のための4か所と、胸部誘導のための胸部6か所に装着して、測定、記録される。
【0004】
これら複数の生体情報用電極は、例えば、特許文献1では、生体情報用電極ごとにリードの先端が接続され、各リードの基端は、心電計に接続された中継部にそれぞれ接続されている。つまり、リードは、一つの中継部から全て分岐して延在し、全ての生体情報用電極のそれぞれに接続するように設けられている。
【0005】
また、個別に絶縁被覆された複数のリードを例えば管状の外装部材に収容する等してケーブルとし、このケーブルにおいて各リード端部に生体情報用電極を設けた構成として、両手首、足首等に装着される四肢誘導用の生体情報用電極が接続されたリード端部が分岐する主幹ケーブルと、胸部に装着され、胸部誘導用の生体情報用電極が接続されたリード端部が分岐する主幹ケーブルとを有する構成が知られている。
【0006】
さらに、図1に示すように、生体情報用電極2が接続されたリード端部をほとんど分岐させることなく一本の主幹ケーブル3に長手方向で順に直列で繋げた誘導コード1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実用新案登録第3081539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1では、複数のリードは、心電図装置に接続される中継部から全て導出されており、生体情報用電極毎に一斉にリードが分岐するように配線されている。これらリードは長い上に、本数も多いので、被検者に装着された生体情報用電極に、リードを接続する場合、リード同士が絡まり易く作業の手間がかかる。
【0009】
これは、四肢誘導用の生体情報用電極が接続される主幹ケーブルと、胸部誘導用の生体情報用電極が接続される主幹ケーブルとを用いる構成でも、同様に生じることであり、生体情報用電極へのケーブルの取り付けに手間がかかる。
【0010】
心電図検査として、24時間等の一定期間に亘って、被検者の心電図を継続的に記録するホルタ心電図検査が知られている。この検査では、四肢誘導の生体情報用電極の取り付け位置は、上半身において四肢に対応した四肢に近い位置となる。このため、特許文献1や四肢誘導及び胸部誘導毎に主幹ケーブルを有する構成では、上半身上の限られた領域で複数の生体情報用電極を装着するので、一層、ケーブルが絡まりやすくなる。また、検査では、電極やリード等を長時間装着することにより、配線が絡み合う場合等において、被検者に対して不快な装着感を与えてしまうという問題がある。
【0011】
これに対し、図1に示すように、標準12誘導用の生体情報用電極を1本のケーブルで繋いだ構成では、特許文献1のように長く複数のリードを有する構成と比較して、個別に分岐するリード自体の割合が小さいので、絡まりにくくなっている。
【0012】
検査時間の長いホルタ心電検査では、生体情報用電極が装着された被検者に対して、特に、脇の下近傍等の腕の付け根周りに配線されたリード又はケーブルが、腕を動かす際に、衣服、腕等と接触する。
【0013】
特に、図1に示すケーブルのように、脇の下近傍等を含む左上腕から左胸横付近の部分(腕回り部分X)に、電極V6と電極Lとを繋ぐように配線されている場合、腕を動かす度に腕或いは衣類がリード又はケーブルに接触する。
【0014】
このように、腕がリード又はケーブルに接触すると、電極V6と電極L間のケーブルにノイズ(例えば静電気)が発生し、電極Nから電極Lの心電図信号にノイズがのってしまうため正確な測定データを検出しにくくなるという問題がある。
【0015】
また、リード又はケーブルが、腕を動かす際に、衣服、腕等と接触すると不快感の原因となることも知られている。例えば、左上腕から左胸横に配線される部分(腕回り部分X)も被検者に不快感を与えてしまう部位として知られている。よって、図1のケーブルのように、腕回り部分Xに、ケーブルが電極V6と電極Lとを繋ぐように配線されていると、被検者に不快感を生じさせてしまうという問題がある。
【0016】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、簡単に装着でき、被検者に装着時の不快感を与えにくく、好適に検査を行うことができる電極用ケーブル及びケーブル付き電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の電極用ケーブルは、
被検者の体表面上で上下左右及び中央にそれぞれ装着される四肢誘導用及び胸部誘導用の複数の生体情報用電極にそれぞれ接続される複数の電極接続部と、
装置本体に一箇所で接続される基部から別々に延出され、前記四肢誘導用の電極接続部のうち左右の上側の一方の電極接続部と前記左右の上側の他方の電極接続部がそれぞれ繋がっているそれぞれ線状の第1主幹ケーブル及び第2主幹ケーブルと、を有し、
前記第1主幹ケーブルは、前記左右の上側の一方の電極接続部に繋がるリードを分岐させ、且つ、前記左右の上側の一方の電極接続部に繋がるリードの分岐位置から、前記胸部誘導用の電極接続部のすべてが繋がるように延伸してなり、
前記第1主幹ケーブルのうち前記分岐位置から延伸する部位は、先端に、前記胸部誘導用の電極接続部のうちの一つを有し、前記分岐位置と前記先端との間で、残余の前記胸部誘導用の電極接続部に夫々繋がるリードが順次分岐した一本のケーブルで構成される構成を採る。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡単に装着でき、被検者に装着時の不快感を与えにくく、好適に検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】複数の電極を1本で繋いだ電極用ケーブルの一例を示す図である。
図2】本発明の一実施の形態の電極用ケーブルを示す図である。
図3】本発明の一実施の形態の電極用ケーブルを装着した一例を示す図である。
図4】本発明の一実施の形態の電極用ケーブルの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図2は、本発明の一実施の形態の電極用ケーブル10を示す図である。図3は、本実施の形態の電極用ケーブル10の装着状態を示す図である。
【0022】
電極用ケーブル10は、例えば、心電計等の生体情報処理装置と生体情報用電極(以下、「電極」とも称する)20とを接続する誘導コードであり、電極20で検出した心電図を心電計(例えば装置本体7)に伝達する。
【0023】
電極用ケーブル10は、複数の生体情報用電極20に接続される電極接続部30と、電極接続部30に接続されるリードを含む主幹ケーブル50、60と、装置(ここでは心電計)に接続される基部40とを有する。
【0024】
電極用ケーブル10は、標準12誘導心電図を測定するためのものであるが、18誘導心電図、ホルタ心電図を測定するためのものとしてもよい。
【0025】
電極20は、被検者の体表面上で上下左右及び中央にそれぞれ装着されて、被検者の生体情報を検出する。上下左右は、主に、被検者の上半身において被検者側から見た上下左右であり、上は頭部側、下は、胸部より下側を意味する。また、中央部は、例えば鳩尾上部付近であり、被検者に対する電極20の装着位置、つまり、誘導部位は、予め決められている。
【0026】
電極20は、例えば、被検者の体表面に吸着可能な吸着部を有しても良いし、貼着により、体表面に取り付けられるタイプでもよい。本実施の形態では、長時間の検査を好適に行うため、電極30の取付面に粘着シート等を設けて貼着により取り付ける構成としている。
【0027】
電極20は、例えば、標準12誘導用の電極である。具体的には、電極20は、図3に示すように、一般的な四肢誘導のためにR、L、(N)、Fの位置に取り付けられる4つの電極と、一般的な胸部誘導のためにV1、V2、V3、V4、V5、V6の位置に取り付けられる6つの電極である。
【0028】
なお、以下の説明では、便宜上、R、L、V1、V2、V3、V4、V5、V6、N、Fの位置に設けられた電極20のことを、電極R、L、V1、V2、V3、V4、V5、V6、N、Fと呼ぶことにする。これら四肢誘導の電極R、L、Fは、関電極であり、Nは不関電極(基準電極)である。四肢誘導の電極20は、通常、手首、足首に設けられるが、上半身の体表面に取り付けられる場合、手首、足首に代わる位置に装着される。
【0029】
電極20のうち電極Rは、右腕に対応し、右腕の付け根近傍、つまり、右鎖骨の下の上胸部あたりに配置され、例えば、赤のカラーコードで視認可能である。電極Lは、左腕に対応し、左鎖骨下あたりに配置され、黄のカラーコードで視認可能である。電極Fは、左足に対応し、左前腸骨棘あるいは左肋骨弓の下端部あたりに配置され、緑のカラーコードで視認可能である。電極Nは、右前腸骨棘あるいは右肋骨弓の下端部あたりに配置され、黒のカラーコードで視認可能である。
【0030】
各電極V1~V6は一般的な胸部誘導の位置(測定位置)に配置される。また、電極V1~V6は、胸部誘導の位置に対応する色を有するようにしてもよい。例えば、電極V1は、第四肋間胸骨右縁に配置され、白/赤のカラーコードを有し、電極V2は、第四肋間胸骨左縁に配置され、白/黄のカラーコードを有し、電極V3は、V2とV4を結ぶ線上の中点に配置され、白/緑のカラーコードを有する。電極V4は、第五肋間と左鎖骨中線の交点に配置され、白/茶のカラーコードを有する。電極V5は、左前腋窩線上の電極V4と同じ高さに配置され、白/黒のカラーコードを有する。電極V6は、左中腋窩線上のV4と同じ高さに配置され、白/紫のカラーコードを有する。
【0031】
各電極20が着色されたり、色マークされたり、異なる色で表示されていれば、例えば、医療従事者等のように、電極を被検者に装着する者が、どの位置にどの電極を取り付けるか、または取り付けた後、各電極の測定箇所を容易に視認できる。
【0032】
電極接続部30は、主幹ケーブル50、60に設けられている。電極接続部30は、主幹ケーブル50、60においてそれぞれ基部40側から長手方向で、順次、短く分岐したリード44の先端に設けられている。電極接続部30は、所定の位置に配置されるように形成されていることが好ましい。所定の位置とは、対応する電極20が装着される12誘導の装着部位に相当する位置である。電極接続部30は、それぞれ所定の位置に配置される電極に対応する位置に設けられている。
【0033】
電極接続部30は、電極20に電気的に接続されるものであれば、どのように構成されてもよい。例えば、電極接続部30は、電極に設けられた突起状の接続部を挟むワニ口クリップ等のクリップ式や、シート状の電極の外面の突起の頭部に外嵌するホック式のものであってもよい。
【0034】
電極接続部30は、例えば、電極20に対応する各色に対応した色が施されていることが好ましい。色が施されていれば、電極20に取り付ける際に、対応する電極20への着け間違えを減少させることができる。例えば、電極接続部30が、四肢誘導用の電極20に対応するものであれば、主幹ケーブル50では基部40側から黒(N)、赤(R)を有する電極接続部となり、主幹ケーブル60では、基部40側から、緑(F)、黄(L)を有する電極接続部30とすることが好ましい。また、電極接続部30が、胸部誘導の電極20に対応する場合、右側から赤(V1)、黄(V2)、緑(V3)、茶(V4)、黒(V5)、紫(V6)を有する電極接続部30とすることが好ましい。
【0035】
電極接続部30は、装着時において被検者に不快感を与えにくいように2本の主幹ケーブル50、60に振り分けて設けられている。
【0036】
電極接続部30のうち、四肢誘導用の電極接続部30のうち左右の上側の一方の電極接続部と左右の上側の他方の電極接続部が、それぞれ主幹ケーブル50及び主幹ケーブル60に繋がっている。
【0037】
本実施の形態では、電極接続部30を介して、電極20は、主幹ケーブル50において、四肢の左右の上腕のうちの一方の電極から、その一方の電極に最も近い電極に繋がれ、次いで、その一方の電極から他方側に離れていく順に繋がれている。もう一本の主幹ケーブル60は、電極接続部30を介して、少なくとも四肢の左右の上腕のうちの他方の電極(例えばL)を先端部に有する。
【0038】
これにより、電極用ケーブル10に、すべての電極20を装着した状態において、被検者の左右の片側の上腕とこれに最も近い胸部誘導のうちの脇腹近傍とを繋ぐリードが不要となる。
【0039】
主幹ケーブル50及び主幹ケーブル60は基部40から別々に延出される。主幹ケーブル(第1主幹ケーブル)50には、四肢誘導用の電極接続部30のうち左右の上側の一方の電極接続部(本実施の形態では、図3に示す電極接続部32)が繋がっている。また、主幹ケーブル(第2主幹ケーブル)60には、四肢誘導用の電極接続部30のうち左右の上側の他方の電極接続部(本実施の形態では、図3に示す電極接続部34)が繋がっている。
【0040】
主幹ケーブル50は、右の上側の電極接続部32に繋がるリードを分岐させ、且つ、右の上側の電極接続部32に繋がるリードの分岐位置42aから、胸部誘導用の電極接続部(電極V1~V6に接続する電極接続部30)のすべてが繋がるように延伸している。
【0041】
本実施の形態では、主幹ケーブル50の先端に、胸部誘導用の電極接続部36を有し、分岐位置42aと、先端(電極接続部36)との間で、胸部誘導用の電極接続部に繋がる分岐リード44aを順次分岐させている。
【0042】
主幹ケーブル50は、基部40と分岐位置42aとの間で、四肢誘導用の右の下側の電極接続部38に繋がるリード44を分岐させる。一方、主幹ケーブル60は、基部40と先端(電極接続部34との接続位置)との間で、四肢誘導用の左の下側の電極接続部39に繋がるリード44cを分岐させる。
【0043】
主幹ケーブル50、60は、先端部に電極接続部30を有するリードを線状に束ねるものである。主幹ケーブル50、60は、装置本体7に接続される基部40から大きく分岐するように設けられている。主幹ケーブル50、60は、各電極接続部30に接続される電極20で取得した心電図情報を装置(装置本体7)に伝達する。なお、装置本体7では、電極で検出する心電図情報を心電計等の装置本体7で記録、分析できる。
【0044】
主幹ケーブル50は、先端に、左右の上側の一方の電極接続部30を有するとともに、四肢誘導用の左右の下側の一方の電極接続部30を有する。一方、主幹ケーブル60は、先端に、左右の上側の他方の電極接続部30を有するとともに、四肢誘導用の左右の下側の他方の電極接続部30を有する。これにより、誘導位置に装着された電極に対応して、電極接続部30を接続する際に、付け間違えることを防止して、その取付作業時間を短縮することができる。
【0045】
本実施の形態では、電極接続部30は、身体の左側に配線される主幹ケーブル60からリード(例えば、分岐リード44c)を分岐させて、左脚、左腕に対応する電極F、Lに対応する電極接続部39、34を繋げるように設けられている。
【0046】
また、主幹ケーブル50には、下から順に、つまり、基部40側から順に、右脚、右腕、胸部誘導部位に装着される電極N、R、V1~V6に対応する電極接続部がそれぞれ繋がる分岐リードを順次分岐させた状態で繋がっている。
【0047】
装置本体7は、心電計であり、特に、長時間(24時間以上、ここでは、48時間)に亘って継続的に携帯して記録可能なホルタ心電計であると好適である。ホルタ心電計は、被検者に本体となる記録装置を携帯させて、一定期間(例えば48時間)に亘って継続的に記録を継続するものであり、電極は、すべて上半身に装着されることが多い。
【0048】
本実施の形態では、主幹ケーブル50、60にそれぞれ繋がる電極接続部30は、短いリードを介して、主幹ケーブル50、60から分岐部42を用いて、それぞれの主幹ケーブル50、60に繋がれている。なお、主幹ケーブル50、60の具体的な構成は、それぞれ先端に電極接続部30が接続された長さの異なるリードを束ねて束の部分を主幹とすると、リード毎の長さが異なることにより、主幹では、主幹の延在方向に沿って、順次、先端に電極接続部30を有する短いリードが枝分かれする構成となっている。これにより極力リードを短くして、生体情報用電極20への取り付けの際に、絡まることなく容易にその取付作業を行うことができる。また、主幹ケーブル60,50の外皮に可撓性を有する部材が適用されている場合等、身体に装着し易いように分岐部42の向きを、適宜変更して設けてもよい。
【0049】
本実施の形態の電極用ケーブル10では、主幹ケーブル(第1主幹ケーブル、第2主幹ケーブル)50、60は、被検者の体表面、具体的には上半身の上下左右、中央にそれぞれ装着される複数の生体情報用電極20に対応して接続される、複数の電極接続部30をそれぞれ有する。主幹ケーブル(第1主幹ケーブル)50では、基部40側から、四肢誘導の測定箇所を識別する黒、赤色が施された電極接続部30と、胸部誘導の測定箇所を識別する赤、黄、緑、茶、黒、紫色が施された電極接続部30とが、それぞれ、対応する生体情報用電極20と接続可能に、主幹ケーブル50、60の延伸方向で順次分岐して配置されている。また、主幹ケーブル(第2主幹ケーブル)60には、主幹ケーブルの基部側から四肢誘導の緑、黄色が施された電極接続部が、それぞれ、対応する生体情報用電極20と接続可能に、延伸方向で順次分岐して配置されている。
【0050】
本実施の形態の電極用ケーブル10を用いることにより、電極20を複数装着した被検者において、下方(例えば、腹部側)にリードを配置することで、身体の上側(例えば、上腕側にリードが配線されることが少なくなる。
【0051】
これにより、上腕を動かす際に腕や衣服等がリード及びケーブルに接触することが少なくなり、ノイズの発生を減少させることができる。また、身体の上側でのリードの配線を少なくして、検査における電極、ケーブルを装着した際の不快感を与えにくくすることができる。
【0052】
特に、腕の可動領域(腕を動かす際に腕が接近する体表面部分に相当)である、左右の脇腹上のうちの一方の部分Xまわり部分に、リードが配線されることがない。
【0053】
これに対し、本実施の形態の電極用ケーブル10は、四肢誘導の左腕に対応する電極Lと、この電極Lに最も近い胸部誘導の電極V6との間を繋ぐリードを不要としているので、電極(生体情報用電極)、特に、胸部誘導用の電極が測定する測定データに、腕がリード或いはケーブルに接触する際に発生するノイズが載りにくい。また、腕の動きに伴う衣服の移動により、衣服の材料に静電気が発生する場合でもノイズとして、電極20の検出する心電図信号に乗ることがない。
【0054】
また、部分Xは、異物があると最も気になる個所であるが、本実施の形態の電極用ケーブル10は、四肢誘導の左腕に対応する電極Lと、この電極Lに最も近い胸部誘導の電極V6との間を接続するリードを有していないため、被検者に大きな不快感を与えることがなく、よい着け心地にさせることができる。
【0055】
また、電極用ケーブル10において、主幹ケーブル50、60にそれぞれ設けられた電極接続部30は、下方(基部40側)の電極接続部30から取り付けることで、その取付作業の際のリードの取り回しも容易となる。
【0056】
具体的には、右側の生体情報用電極との接続であれば、電極N、Rの順に、主幹ケーブル50の基部40側から、それぞれ対応する電極接続部30を取り付ける。次いで、電極V1、V2、V3、V4、V5、V6の順に、それぞれ、主幹ケーブル50の基部40側から、それぞれ対応する電極接続部30を取り付けることで、その作業を間違えることなく容易に行うことができる。左側の生体情報用電極との接続であれば、電極Fへ、主幹ケーブル60の基部40側から対応する電極接続部30を取り付け、電極Lへ対応する電極接続部30を取り付けることで、その作業を間違えることなく容易に行うことができる。
【0057】
本実施の形態に係る電極用ケーブル10によれば、簡単に装着でき、被検者に装着時の不快感を与えにくく、ノイズの少ない正確な心電図信号を用いて好適に検査を行うことができる。
【0058】
また、本実施に係るため電極用ケーブル10は、ホルタ心電計とともに用いられる他、必要に応じて四肢誘導、胸部誘導での電極の装着位置を変更してトレッドミル或いはエルゴメータ等を用いた被検者の運動時におけるストレステストに用いられてもよい。
【0059】
また、電極用ケーブル10について、標準12誘導心電図を測定する場合について説明したが、右側誘導(V3R、V4R、V5R)や、背部誘導(V7、V8、V9)を実測する場合でも、同様の効果を有することができる。すなわち、いずれかを実測する場合でも、被検者に、電極用ケーブル10が接続された電極20を装着しても、不快となる部分(脇回り部分X)にリードが配線されることがない。
【0060】
特に、背部誘導のように、電極V4~V6を付け替えて、誘導部位となる左脇腹の部位、或いは背中等に配置させる場合でも、主幹ケーブル50における電極V4~V6を用いて容易に対応し、不快感を生じさせることがない。
【0061】
また、更に多くの電極を有する場合、増加する電極を胸部誘導の電極(例えばV6)に対応する電極接続部の分岐位置から延伸する主幹ケーブル(例えば、主幹ケーブル50)から順次、分岐して更に多くの電極に対応する電極接続部を繋ぐようにしてもよい。
これにより、分岐リードも最短のものとすればよく、その取り回しも容易となることにより、電極への取り付け作業も容易となり、被検者への装着時間を短縮できる。
【0062】
図4は、本実施の形態の電極用ケーブル10Aの変形例の装着状態を示す図である。
図4に示す変形例としての電極用ケーブル10Aは、複数の電極接続部30Aをそれぞれ有する主幹ケーブル60A、50Aを有する。主幹ケーブル60Aには、下方から、順次、四肢誘導の左側の電極F、Lに接続される電極接続部301、302に繋がるリードを分岐させており、電極接続部302が繋がる分岐リード44fの分岐位置から延伸する主幹ケーブル60Aに、胸部誘導の電極V6に繋がる分岐リード44gが分岐して設けられている。主幹ケーブル60Aでは、電極V6に続いて、胸部誘導の電極がV6からV1に順に繋がっている。主幹ケーブル50Aは、主幹ケーブル60Aとは別に基部40Aから延伸され、右半身側に延びる主幹ケーブル50Aには、電極接続部を介して、下方から順に、電極N、電極Rが繋がった状態となっている。
【0063】
被検者の上半身において、右上腕の電極Rに接続される電極接続部303(30A)と、この電極接続部303に最も近い胸部誘導の電極V1とが繋がっていない。これにより、右上腕と第四肋間胸骨右縁との間隔を空けて装着の不快感を除くことができる。
【0064】
また、電極用ケーブル10、10Aと、電極接続部30に各々接続される生体情報用電極20と、を一体に有したケーブル付き電極としてもよい。これにより、電極を装着した後で、電極接続部を電極に接続する手間を省くことができ、特に、ディスポ電極として取付作業が容易で、正確な心電図を検出可能にすることできる電極として有効である。
【0065】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る電極用ケーブルは、心電図検査に用いられて、簡単に装着でき、被検者に装着時の不快感を与えにくく、好適に検査を行うことができるものとして有用である。
【符号の説明】
【0067】
10 電極用ケーブル
20 電極(生体情報用電極)
30、30A 電極接続部
32、34、36、38、39、301、302、303 電極接続部
40、40A 基部
42 分岐部
42a 分岐位置
44 リード
44a、44c、44f、44g 分岐リード
50、50A 主幹ケーブル(第1主幹ケーブル)
60、60A 主幹ケーブル(第2主幹ケーブル)
図1
図2
図3
図4