(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】活性成分を含む変性多重層水酸化物構造体を含む金属水酸化物複合体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 9/02 20060101AFI20241111BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20241111BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20241111BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241111BHJP
C07D 307/62 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
C01G9/02
A61K8/67
A61K8/27
A61Q19/00
C07D307/62
(21)【出願番号】P 2020544662
(86)(22)【出願日】2019-09-23
(86)【国際出願番号】 KR2019012331
(87)【国際公開番号】W WO2020075987
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2018-0120027
(32)【優先日】2018-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520315073
【氏名又は名称】シーエヌファーム カンパニー,リミティド
(73)【特許権者】
【識別番号】520315084
【氏名又は名称】ヒュンダイ バイオサイエンス カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】キム ホ-チュン
(72)【発明者】
【氏名】キム キ-ヨク
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第0998354(KR,B1)
【文献】特表2004-538296(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1082391(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2003-0012641(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0125280(KR,A)
【文献】特開2017-114747(JP,A)
【文献】特開2004-091421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 9/02
C07D 307/62
A61K 8/67
A61K 8/27
A61Q 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基底層、表面層、および活性成分を含む金属水酸化物複合体であって、下記化学式1の変性した多重層水酸化物構造体を含む金属水酸化物複合体:
【化1】
前記式中、[M
x(OH)
z]
Bは変性した多重層水酸化物構造体の基底層に対応するものであり、[M
y(OH)
w]
Sは変性した多重層水酸化物構造体の表面層を示すものであり、
前記MはZn
2+であり、
xは0.6~3であり、
yは0より大きく2以下であり、
zは1~5であり、
wは0より大きく4以下であり、
z+wは1
より大きく9
以下であり、
qは1~4であり、
mは0.1~10であり、
nはAの電荷数であり、
前記活性成分はAで表され、前記AはpKaに応じて静電的引力を有する官能基(functional group)として、アスコルビン酸を含む陰イオン性化合物であり、
前記金属水酸化物複合体は、非対称積層構造を含み、前記変性した多重層水酸化物構造体は、粉末-X線回折パターンが回折角(2θ)=5.96±1゜、33.46±1゜、および59.3±1゜のピーク値を有するものである。
【請求項2】
前記多重層水酸化物構造体は、2層以上5層以下の層である、請求項1に記載の金属水酸化物複合体。
【請求項3】
基底層、表面層、および活性成分を含む金属水酸化物複合体であって、下記化学式1の変性した多重層水酸化物構造体を含む金属水酸化物複合体:
【化2】
前記式中、[M
x(OH)
z]
Bは変性した多重層水酸化物構造体の基底層に対応するものであり、[M
y(OH)
w]
Sは変性した多重層水酸化物構造体の表面層を示すものであり、
前記MはZn
2+であり、
xは0.6~3であり、
yは0より大きく2以下であり、
zは1~5であり、
wは0より大きく4以下であり、
z+wは1
より大きく9
以下であり、
qは1~4であり、
mは0.1~10であり、
nはAの電荷数であり、
前記活性成分はAで表され、前記AはpKaに応じて静電的引力を有する官能基(functional group)として、アスコルビン酸を含む陰イオン性化合物であり、
前記変性した多重層水酸化物構造体は、粉末-X線回折パターンが回折角(2θ)=5.96±1゜、8.5±1゜、10.36±1゜、13.36±1゜、19±1゜、20.84±1゜、21.7±1゜、26.34±1゜、37.68±1゜、31.48±1゜、33.78±1゜、34.88±1゜、および59.3±1゜のピーク値を有するものである。
【請求項4】
基底層、表面層、および活性成分を含む金属水酸化物複合体であって、下記化学式1の変性した多重層水酸化物構造体を含む金属水酸化物複合体:
【化3】
前記式中、[M
x(OH)
z]
Bは変性した多重層水酸化物構造体の基底層に対応するものであり、[M
y(OH)
w]
Sは変性した多重層水酸化物構造体の表面層を示すものであり、
前記MはZn
2+であり、
xは0.6~3であり、
yは0より大きく2以下であり、
zは1~5であり、
wは0より大きく4以下であり、
z+wは1
より大きく9
以下であり、
qは1~4であり、
mは0.1~10であり、
nはAの電荷数であり、
前記活性成分はAで表され、前記AはpKaに応じて静電的引力を有する官能基(functional group)として、アスコルビン酸を含む陰イオン性化合物であり、
前記変性した多重層水酸化物構造体は、粉末-X線回折パターンが回折角(2θ)=6.28±1゜、8.88±1゜、10.32±1゜、13.42±1゜、21.04±1゜、28.14±1゜、33.5±1゜、59.16±1゜のピーク値を有するものである。
【請求項5】
活性成分および金属水酸化物構造体の前駆体を、アルコールおよび水を用いて沈殿反応により共沈させるステップを含む、基底層、表面層、および活性成分を含む金属水酸化物複合体であって、下記化学式1の変性した多重層水酸化物構造体を含む金属水酸化物複合体の製造方法:
【化4】
前記式中、[M
x(OH)
z]
Bは変性した多重層水酸化物構造体の基底層に対応するものであり、[M
y(OH)
w]
Sは変性した多重層水酸化物構造体の表面層を示すものであり、
前記MはZn
2+であり、
xは0.6~3であり、
yは0より大きく2以下であり、
zは1~5であり、
wは0より大きく4以下であり、
z+wは1
より大きく9
以下であり、
qは1~4であり、
mは0.1~10であり、
nはAの電荷数であり、
前記活性成分はAで表され、前記AはpKaに応じて静電的引力を有する官能基(functional group)として、アスコルビン酸を含む陰イオン性化合物であり、
前記変性した多重層水酸化物構造体は、粉末-X線回折パターンが回折角(2θ)=5.96±1゜、33.46±1゜、および59.3±1゜のピーク値を有するものである。
【請求項6】
前記アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノールからなる群より選択される1種以上である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記共沈させるステップにおいて、アルコールおよび水の体積比は、1:9~9:1である、請求項5に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基底層、表面層、および活性成分を含む金属水酸化物複合体であって、変性多重層水酸化物構造体を含む金属水酸化物複合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚内に投与されて直接的に効果を奏し得る化粧品用活性成分はビタミン(Vitamins)などが挙げられる。ビタミンは、生体の新陳代謝促進、抗酸化効果、細胞壁保護、免疫力増進、感染抵抗力上昇などの機能を有する生体内必須物質であって、大部分の霊長類の場合、生合成が不可能で飲食物を通した摂取が必須であり、不足した場合、多様な欠乏症を起こす原因になる。また、皮膚美容および治療においては、色素沈着防止、コラーゲン合成促進、紫外線遮断、皮膚の乾燥と角化の防止、しわ防止、皮膚保湿など、健康な皮膚を保つうえで非常に重要な役割を果たす物質である。ビタミンには、例えば、レチノール(Retinol、ビタミンA)、アスコルビン酸(Ascorbic acid、ビタミンC)、トコフェロール(Tocopherol、ビタミンE)、およびこれらの誘導体などが含まれる。
【0003】
ビタミンのほか、化粧品用活性成分は、皮膚の角質層を除去して皮膚の新陳代謝を促進する機能を有するα-ヒドロキシ酸(AHA)、例えば、乳酸、クエン酸、およびサリチル酸;メラニン生合成の抑制による皮膚美白機能をするコウジ酸(5-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-4H-ピラン-4-オン);線維芽細胞増殖活動の促進によるしわ防止機能をするインドール-3-酢酸(C10H9NO2);および抗酸化およびニキビ治療の機能をするサリチル酸(2-ヒドロキシ安息香酸、C7H6O3)などがあり、その他にも多様な化粧品原料用物質が知られている。
【0004】
しかし、前記化粧品原料用物質の大部分は、物質自体の安定性、皮膚刺激および毒性、徐放性、分散性などの問題のため、実際の使用において多くの制約があり、これによってその機能や効能を十分に発揮することができなかった。例えば、ビタミンの場合、物理化学的に非常に不安定で熱、光、湿気、酸素、アルカリなどによって破壊されやすくて、その機能および効能が低下したり、変色または変臭が発生する問題点がある。また、乳酸のようなα-ヒドロキシ酸は皮膚刺激を起こす問題がある。コウジ酸の場合、皮膚の基底層まで浸透する特性によって、メラニン色素やメラニン細胞を変性させることから、高濃度で使用すれば、皮膚炎、皮膚癌などの様々な皮膚疾患を誘発し、光と高温で酸化して変色が発生する問題点がある。インドール-3-酢酸の場合も、外部環境、熱、光、湿気、酸素などに不安定であり、特に、光に敏感で変色、変臭が発生する問題がある。
【0005】
したがって、前記活性物質を安定化、皮膚刺激または毒性軽減などの効果を得るために、多くの研究が行われてきた。具体的には、韓国特許第115076号は、ビタミンおよび多様な活性成分を内相(inner phase)微小球体に含浸および封入し、これを再び二重層脂質膜および水分散高分子などを用いて二重安定化させてビタミンナノカプセルを製造する方法を開示する。また、韓国特許公開第2000-0048451号は、親脂性活性成分の小球体の中心を水に対して不溶性の合成および天然水分散性陰イオン重合体でカプセル化する方法などを提示する。
【0006】
ただし、前記のような方法は、活性物質を処理する方法、工程などが複雑で時間が多くかかり、経済的でない面があり、また、活性成分をコーティングするステップを追加的に含むことから、活性成分自体の効果を低減させ、活性物質が複合体内に過剰に含まれない問題などがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国特許第115076号
【文献】韓国特許第2000-0048451号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するために、本発明は、基底層、表面層、および活性成分を含む金属水酸化物複合体であって、多重層水酸化物構造体を含む金属水酸化物複合体を提供し、活性成分自体を金属水酸化物複合体の内部に安定的で過剰含有可能で、活性成分効果を極大化させることができる効果を提供し、これを提供する工程でより安定的かつ効果的に活性成分を含有できるようにして、工程が短縮して経済的な方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基底層、表面層、および活性成分を含む金属水酸化物複合体であって、下記化学式1の変性した多重層水酸化物構造体を含む金属水酸化物複合体を提供する。
【化1】
上記中、[M
x(OH)
z]
Bは多重層水酸化物構造体の基底層を示すものであり、[M
y(OH)
w]
Sは多重層水酸化物構造体の表面層を示すものであり、
【0010】
前記MはCa2+、Mg2+、Cu2+、Zn2+、Ni2+、Co2+、およびFe2+からなる群より選択された1種の2価の金属陽イオンであり、
xは0.6~3、
yは0~2であり、
zは1~5であり、
wは0~4であり、
z+wは1~9であり、
qは1~4であり、
mは0.1~10であり、
nはAの電荷数であり、
前記活性成分はAで表され、前記AはpKaに応じて静電的引力を有する官能基(functional group)として、ヒドロキシ基(-OH)、カルボニル基(-CO-)、ホルミル基(-CHO)、カルボキシ基(-COOH)、スルフェート基(-SO3
2-)、ジハイドロジェンホスフェート基(-H2PO4
2-)、およびホスフェート基(-PO4
3-)からなる群より選択される1種以上を含む陰イオン性化合物である。
【0011】
本発明は、活性成分および金属水酸化物を、アルコールおよび水を用いて沈殿反応により共沈させるステップを含む方法で製造された金属水酸化物複合体を提供する。
【0012】
本発明は、活性成分および金属水酸化物を、アルコールおよび水を用いて沈殿反応により共沈させるステップを含む金属水酸化物複合体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、活性成分が多重層水酸化物構造体により過剰含有可能であり、優れた徐放性能を有し、活性成分を金属水酸化物複合体に安定した状態で高含有量含むことにより、伝達される活性成分の効果を改善させる効果を有する。
また、不安定な状態の活性成分を安定して含むことにより、活性成分を長時間保管可能な効果を有し、皮膚への伝達時にも刺激を最小化可能で非刺激性効果を有する。
さらに、本発明は、活性成分を含む多重層水酸化物構造体に含むことにより、優れたコラーゲン発現効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】表1の各物質に対するXRDグラフに関するものであり、(a)はMZLAについてのグラフ、(b)はreference、(c)はzinc basic saltについてのグラフである。
【
図2】エタノール:水溶媒の比率に応じた金属水酸化物のXRDグラフに関するものであり、EtOHおよびH
2Oの重量比の総和を10とする時、(a)はEtOH1.0:H
2O9.0、(b)EtOH4.6:H
2O5.4、(c)EtOH6.4:H
2O3.6、(d)EtOH8.5:H
2O1.5についてのグラフである。
【
図3】XRDグラフに関するものであり、(a)および(b)はエタノール:水の混合溶媒による金属水酸化物((a)EtOH:H
2O=85:15、(b)EtOH4.6:H
2O5.4)、(c)は溶媒として水のみを用いた金属水酸化物、および(d)ZBS-NO
3に対するXRDグラフに関するものである。
【
図4】メタノール:水溶媒の比率に応じた金属水酸化物のXRDグラフに関するものである。
【
図5】エタノール:水溶媒の比率に応じた金属水酸化物のXRDグラフに関するものである。
【
図6】プロパノール:水溶媒の比率に応じた金属水酸化物のXRDグラフに関するものである。
【
図7】ブタノール:水溶媒の比率に応じた金属水酸化物のXRDグラフに関するものである。
【
図8】エタノール:水溶媒の比率に応じた金属水酸化物のSEM写真に関するものであり、単一粒子の一部面を拡大した拡大図である。
【
図9】エタノール:水溶媒の比率に応じた金属水酸化物のSEM写真に関するものである。
【
図10】エタノール:水溶媒の比率に応じた金属水酸化物のSEM写真に関するものである。
【
図11】本発明の金属水酸化物複合体の具体的な構造として、[M
x(OH)
z]
Bは基底層、[M
y(OH)
w]
Sは表面層をそれぞれ示す。
【
図12】本発明の金属水酸化物複合体が処理されたヒト真皮線維芽細胞の細胞生存率の測定結果であり、横軸は処理した試料物質の濃度、縦軸は細胞生存度を示す。
【
図13】本発明の金属水酸化物複合体が処理されたヒト真皮線維芽細胞のタイプ1のコラーゲン遺伝子(COL1A1)の発現変化に関するものであり、横軸は処理した試料物質の濃度、縦軸はCOL1A1 mRNAの発現量を示す。
【
図14】本発明の金属水酸化物複合体が処理されたヒト真皮線維芽細胞のタイプ3のコラーゲン遺伝子(COL3A1)の発現変化に関するものであり、横軸は処理した試料物質の濃度、縦軸はCOL3A1 mRNAの発現量を示す。
【
図16】Zinc hydroxide solubility curve diagramに関する図である。
【
図17】Zinc hydroxideの溶解度に関するものであり、*Sは水kgあたりの亜鉛のモルで表現される溶解度を示す。
【
図18】エタノール:水溶媒の比率に応じた金属水酸化物のXRDグラフに関するものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、基底層、表面層、および活性成分を含む金属水酸化物複合体であって、下記化学式1の変性した多重層水酸化物構造体を含む金属水酸化物複合体を提供する。
【化2】
【0016】
上記中、[Mx(OH)z]Bは多重層水酸化物構造体の基底層を示すものであり、[My(OH)w]Sは多重層水酸化物構造体の表面層を示すものであり、
前記MはCa2+、Mg2+、Cu2+、Zn2+、Ni2+、Co2+、およびFe2+からなる群より選択された1種の2価の金属陽イオンであり、
xは0.6~3、
yは0~2であり、
zは1~5であり、
wは0~4であり、
z+wは1~9であり、
qは1~4であり、
mは0.1~10であり、
nはAの電荷数であり、
前記活性成分はAで表され、前記AはpKaに応じて静電的引力を有する官能基(functional group)として、ヒドロキシ基(-OH)、カルボニル基(-CO-)、ホルミル基(-CHO)、カルボキシ基(-COOH)、スルフェート基(-SO3
2-)、ジハイドロジェンホスフェート基(-H2PO4
2-)、およびホスフェート基(-PO4
3-)からなる群より選択される1種以上を含む陰イオン性化合物である。
【0017】
前記Aで表される活性成分はヒドロキシ基(-OH)、カルボニル基(-CO-)、ホルミル基(-CHO)、カルボキシ基(-COOH)、スルフェート基(-SO3
2-)、ジハイドロジェンホスフェート基(-H2PO4
2-)、および/またはホスフェート基(-PO4
3-)からなる群より選択される1種以上の官能基を含むものであってもよい。
【0018】
前記化学式1は、より具体的には、{[Zn3(OH)4]B[Zn2(OH)3]S}{(ascorbic acid)2}・2(H2O)、{[Zn3(OH)4]B[Zn1(OH)2]S}{(ascorbic acid)2}・3(H2O)、{[Zn3(OH)4]B[Zn1(OH)1]S}{(ascorbic acid)2}・3(H2O)、および{[Zn3(OH)3]B[Zn1(OH)1]S}{(ascorbic acid)2}・2(H2O)などで表されるものであってもよい。
【0019】
前記Aは活性成分として陰イオン性でもよいし、pKaに応じて静電的引力を有する官能基(functional group)、詳細には、ヒドロキシ基(-OH)を含む活性成分としては、アスコルビン酸(ascorbic acid)、4-n-ブチルレゾルシノール(4-n-butylresorcinol)、トコフェロール(tocopherol)、バクチオール(bakuchiol)、(+)-カテキン((+)-catechin)、クルクミン(curcumin)、ヒドロキシチロソール(hydroxytyrosol)、フィトール(phytol)、レゾルシノール(resorcinol)、カルタミン(carthamine)、ルテオリン(luteolin)、コリラギン(corilagin)、レスベラトロール(resveratrol)、レチノール(retinol)、ルチン(rutin)、ヒドロキノン(hydroquinone)、アシアチコサイド(asiaticoside)、マデカソサイド(madecassoside)、ギンセノシド(ginsenoside)、ボルネオール(borneol)、ジオスメチン(diosmetin)、アスパラチン(aspalathin)、オイゲノール(eugenol)、マンゴスチン(mangostin)、ペラルゴニジン(pelargonidin)、シアニジン(cyaniding)、デルフィニジン(delphinidin)、ペオニジン(peonidin)、ペツニジン(petunidin)、マルビジン(malvidin)、ルテイン(lutein)、クェルセチン(quercetin)、アデノシン(adenosine)、パルミチン酸アスコルビル(ascorbyl palmitate)、アスコルビルグルコシド(ascorbyl glucoside)、ピリドキシン(pyridoxine)、チアミン(thiamine)、サポニン(saponin)、セコイソラリシレシノール(secoisolariciresinol)、マタイレシノール(matairesinol)、ピノレジノール(pinoresinol)、メジオレシノール(medioresinol)、ラリシレシノール(lariciresinol)、シリンガレシノール(syringaresinol)、アルクチゲニン(artigenin)、エンテロラクトン(enterolactone)、エンテロジオール(enterodiol)、
【0020】
カルボキシ基(-COOH)が含まれた活性成分として、アラキドン酸(arachidonic acid)、アビエチン酸(abietic acid)、アブシシン酸(abscisic acid)、アルファリポ酸(α-lipoic acid)、アゼライン酸(azelaic acid)、コーヒー酸(caffeic acid)、ヒドロキシ安息香酸(hydroxybenzoic acid)、プロトカテク酸(protocatechuic acid)、エラグ酸(ellagic Acid)、フェルラ酸(ferulic acid)、フルボ酸(fulvic acid)、オレアノリン酸(oleanolic acid)、フェノール酸(phenolic acid)、ヒドロキシケイ皮酸(hydroxycinnamic acid)、バニリン酸(vanillic acid)、プロトカテク酸(protocatechuic acid)、サルビアン酸(salvianic acid)、シナピン酸(sinapic acid)、トラネキサム酸(tranexamic acid)、吉草酸(valeric acid)、ベラトリル酸(Veratric Acid)、クロロゲン酸(chlorogenic acid)、アジアティック酸(asiatic acid)、マデカシン酸(madecasic acid)、スベリン酸(suberic acid)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、ウルソール酸(ursolic acid)、アスコルビン酸(ascorbic acid)、サルビアノリン酸B(salvianolic acid B)、ピリジン-3-カルボン酸(pyridine-3-carboxylic acid)、アスコルビルパルミテート(ascorbyl palmitate)、アスコルビルグルコシド(ascorbyl glucoside)、カルニチン(carnitine)、パントテン酸(pantothenic acid)、ビオチン(biotin)、葉酸(folic acid)、アリイン(alliin)、グルタチオン(glutathione)、セリン(serine)、グリシン(glycine)、アラニン(alanine)、アベナンスラミド(avenanthramide)、トレオニン(threonine)、システイン(cysteine)、バリン(valine)、ロイシン(leucine)、メチオニン(methionine)、プロリン(proline)、フェニルアラニン(phenylalanine)、チロシン(tyrosine)、トリプトファン(tryptophan)、アスパルト酸(aspartic acid)、グルタミン酸(glutamic acid)、アスパラギン(asparagine)、グルタミン(glutamine)、ヒスチジン(histidine)、リシン(lysine)、アルギニン(arginine)などが挙げられる。
【0021】
ホルミル基(-CHO)が含まれた活性成分としては、デカナール(decanal)、レチナールデヒド(retinaldehyde)、シンナムアルデヒド(cinnamaldehyde)、カテキン-アルデヒド(catechin-aldehyde)、コニフェリルアルデヒド(coniferyl aldehyde)、シリングアルデヒド(syringaldehyde)、バニリン(vanillin)などが挙げられる。
【0022】
カルボニル基(-CO-)が含まれた活性成分としては、エダラボン(edaravone)、イデベノン(idebenone)、コエンザイムキュー10(coenzyme Q10)、ユビキノン(ubiquinone)、ミトキュー(mitoQ)、アスタキサンチン(astaxanthin)、カフェイン(caffeine)、パラキサンチン(paraxanthine)、テオフィリン(theophylline)、マタイレシノール(matairesinol)、フィシオン(physcion)、プロパフェノン(propafenone)、クマリン(coumarin)、ゲニステイン(genistein)、カルコン(chalcone)、ナリンゲニン(naringenin)、ベルゲニン(bergenin)、アメントフラボン(amentoflavone)、ビオカニンA(Biochanin A)、リボフラビン(riboflavin)、セサミン(Sesamin)などが挙げられる。
【0023】
スルフェート基(-SO3
2-)が含まれた陰イオン性活性成分としては、デキストラン硫酸(dextran sulfate)、硫酸鉄(ferrous sulfate)、フェルラ酸-4-O-スルフェート(ferulic acid-4-O-sulfate)、アスコルビルスルフェート(ascorbyl sulfate)などが挙げられる。
【0024】
ジハイドロジェンホスフェート基(-H2PO4
2-)が含まれたアデノシンモノホスフェート(adenosine monophosphate)、レチノールホスフェート(retinol phosphate)、アスコルビルパルミテートホスフェート(ascorbyl palmitate phosphate)などが挙げられる。
【0025】
ホスフェート基(-PO4
3-)が含まれたアデノシンジホスフェート(adenosine diphosphate)、アデノシントリホスフェート(adenosine triphosphate)、アスコルビルホスフェート(ascorbyl phosphate)などが挙げられる。
【0026】
前記活性成分は、より具体的には、アスコルビン酸(ascorbic acid)、システイン(cysteine)、サリチル酸(salicylic acid)、アブシシン酸(abscisic acid)、セリン(serine)、アラニン(alanine)、グリシン(glycine)、カルニチン(carnitine)、イソロイシン(isoleucine)、ロイシン(leucine)、スベリン酸(suberic acid)、プロリン(proline)、バリン(valine)、アゼライン酸(azelaic acid)、フェニルアラニン(phenylalanine)、コーヒー酸(caffeic acid)、トリプトファン(tryptophan)、クマリン(coumarin)、チロシン(tyrosine)、アスパルト酸(aspartic acid)、フェルラ酸(ferulic acid)、グルタミン酸(glutamic acid)、アルギニン(arginine)、ピリジン-3-カルボン酸(pyridine-3-carboxylic acid)、ヒスチジン(histidine)、リシン(lysine)、アスコルビルスルフェート(ascorbyl sulfate)、トレオニン(threonine)、プロトカテク酸(protocatechuic acid)、アスコルビルホスフェート(ascorbyl phosphate)、メチオニン(methionine)、吉草酸(valeric acid)、アスパラギン(asparagine)、グルタミン(glutamine)、バニリン酸(vanillic acid)、ヒドロキシ安息香酸(hydroxybenzoic acid)、ヒドロキシケイ皮酸(hydroxycinnamic acid)、シンナムアルデヒド(cinnamaldehyde)、パントテン酸(pantothenic acid)、ビオチン(biotin)、レチノール(retinol)、アルファリポ酸(α-lipoic acid)、レスベラトロール(resveratrol)、4-n-ブチルレゾルシノール(4-n-butylresorcinol)、ヒドロキシチロソール(hydroxytyrosol)、ピリドキシン(pyridoxine)、シナピン酸(sinapic acid)、コニフェリルアルデヒド(coniferyl aldehyde)、シリンガアルデヒド(syringaldehyde)、およびテオフィリン(theophylline)などから選択される1種以上を含むのが、より優れて粉末-X線回折パターンが回折角(2θ)=5.96±1゜、33.46±1゜、および59.3±1゜のピーク値を有し得るという点から好ましい。
【0027】
本発明において、前記多重層構造とは、一般的に形成される金属水酸化物の構造形態において基底層および/または表面層が変性できることを意味し、より具体的には、金属水酸化物構造体において基底層および表面層のうち表面層の金属水酸化物の構造形態がより可変的であり得る。具体的には、基底層と表面層は
図11に開示されている。すなわち、多重層構造は、従来一定の金属水酸化物構造体が二重層構造を形成して一定の配列を有するものを含むことで、次第に非対称積層構造を形成することにより、二重層構造の変性が誘導された変性した多重層構造を含むことができ、表面層の構造が変性して各金属水酸化物構造体が異なる大きさを形成して、これらそれぞれの構造が積層された多重層構造を形成できることを意味する。前記多重層構造は、2層以上5層以下でもよいし、3層形態がより好ましい。
【0028】
本発明において、前記多重層水酸化物構造体は、粉末-X線回折パターンが回折角(2θ)=5.96±1゜、33.46±1゜、および59.3±1゜のピーク値を有するものであってもよいし、この場合、多重層水酸化物構造体として、非対称および/または変性した積層構造を含むことができる。より好ましくは、(2θ)=5.96±0.5゜、33.46±0.5゜、および59.3±0.5゜のピーク値を有することができ、前記ピーク値を満足する場合の金属水酸化物複合体は、(2層以上5層以下の)非対称および/または変性した積層構造を形成するものであってもよい。
【0029】
本発明において、前記多重層水酸化物構造体は、粉末-X線回折パターンが回折角(2θ)=5.96±1゜、8.5±1゜、10.36±1゜、13.36±1゜、19±1゜、20.84±1゜、21.7±1゜、26.34±1゜、37.68±1゜、31.48±1゜、33.78±1゜、34.88±1゜、および59.3±1゜のピーク値を有することができ、前記ピーク値を満足する場合の金属水酸化物複合体は、積層構造を形成するものであってもよいし、前記積層構造は、変性した形態の非対称積層構造を含むことができる。前記積層構造は、より具体的には、溶剤としてエタノールおよび/または水を用いて形成されるものであってもよい。前記溶媒の比率を調節することにより、非対称積層構造および/または変性した積層構造を形成することができ、形成された非対称積層構造および/または変性した積層構造は、複数の層を有する積層構造であってもよいし、2層以上5層以下であってもよい。
【0030】
本発明において、前記多重層水酸化物構造体は、粉末-X線回折パターンが回折角(2θ)=6.28±1゜、8.88±1゜、10.32±1゜、13.42±1゜、21.04±1゜、28.14±1゜、33.5±1゜、59.16±1゜のピーク値を有することができ、前記ピーク値を満足する場合の金属水酸化物複合体は、積層構造を形成するものであってもよいし、前記積層構造は、変性した形態の非対称積層構造を含むことができる。前記積層構造は、より具体的には、溶剤としてメタノールおよび/または水を用いて形成されるものであってもよい。前記溶媒の比率を調節することにより、非対称積層構造および/または変性した積層構造を形成することができ、形成された非対称積層構造および/または変性した積層構造は、複数の層を有する積層構造であってもよいし、2層以上5層以下であってもよい。
【0031】
本発明において、前記多重層水酸化物構造体は、粉末-X線回折パターンが回折角(2θ)=6.02±1゜、8.5±1゜、10.4±1゜、13.38±1゜、21.02±1゜、26.42±1゜、27.88±1゜、33.52±1゜、および59.1±1゜のピーク値を有することができ、前記ピーク値を満足する場合の金属水酸化物複合体は、積層構造を形成するものであってもよいし、前記積層構造は、変性した形態の非対称積層構造を含むことができる。前記積層構造は、より具体的には、溶剤としてプロパノールおよび/または水を用いて形成されるものであってもよい。前記プロパノールは、好ましくは、n-プロパノールであってもよい。
【0032】
本発明において、前記多重層水酸化物構造体は、粉末-X線回折パターンが回折角(2θ)=6.22±1゜、10.5±1゜、および13.36±1゜、20.94±1゜、33.46±1゜、および59.28±1゜のピーク値を有することができ、前記ピーク値を満足する場合の金属水酸化物複合体は、積層構造を形成するものであってもよいし、前記積層構造は、変性した形態の非対称積層構造を含むことができる。前記積層構造は、より具体的には、溶剤としてブタノールおよび/または水を用いて形成されるものであってもよい。前記ブタノールは、好ましくは、n-ブタノールであってもよい。
【0033】
より具体的には、本発明において、前記多重層水酸化物構造体は、粉末-X線回折パターンが回折角(2θ)=5.96±0.5゜、8.5±0.5゜、10.36±0.5゜、13.36±0.5゜、19±0.5゜、20.84±0.5゜、21.7±0.5゜、26.34±0.5゜、37.68±0.5゜、31.48±0.5゜、33.78±0.5゜、34.88±0.5゜、および59.3±0.5゜のピーク値を有することができ、前記ピーク値を満足する場合の金属水酸化物複合体は、積層構造を形成するものであってもよいし、前記積層構造は、変性した形態の非対称および/または変性した積層構造を含むことができる。前記積層構造は、より具体的には、溶剤としてエタノールおよび/または水を用いて形成されるものであってもよい。
【0034】
本発明において、前記多重層水酸化物構造体は、粉末-X線回折パターンが回折角(2θ)=6.28±0.5゜、8.88±0.5゜、10.32±0.5゜、13.42±0.5゜、21.04±0.5゜、28.14±0.5゜、33.5±0.5゜、59.16±0.5゜のピーク値を有することができ、前記ピーク値を満足する場合の金属水酸化物複合体は、積層構造を形成するものであってもよいし、前記積層構造は、変性した形態の非対称および/または変性した積層構造を含むことができる。前記積層構造は、より具体的には、溶剤としてメタノールおよび/または水を用いて形成されるものであってもよい。
【0035】
本発明において、前記多重層水酸化物構造体は、粉末-X線回折パターンが回折角(2θ)=6.02±0.5゜、8.5±0.5゜、10.4±0.5゜、13.38±0.5゜、21.02±0.5゜、26.42±0.5゜、27.88±0.5゜、33.52±0.5゜および59.1±0.5゜のピーク値を有することができ、前記ピーク値を満足する場合の金属水酸化物複合体は、積層構造を形成するものであってもよいし、前記積層構造は、変性した形態の非対称および/または変性した積層構造を含むことができる。前記積層構造は、より具体的には、溶剤としてプロパノールおよび/または水を用いて形成されるものであってもよい。前記プロパノールは、好ましくは、n-プロパノールであってもよい。
【0036】
本発明において、前記多重層水酸化物構造体は、粉末-X線回折パターンが回折角(2θ)=6.22±0.5゜、10.5±0.5゜、13.36±0.5゜、20.94±0.5゜、33.46±0.5゜、および59.28±0.5゜のピーク値を有することができ、前記ピーク値を満足する場合の金属水酸化物複合体は、積層構造を形成するものであってもよいし、前記積層構造は、変性した形態の非対称および/または変性した積層構造を含むことができる。前記積層構造は、より具体的には、溶剤としてブタノールおよび/または水を用いて形成されるものであってもよい。前記ブタノールは、好ましくは、n-ブタノールであってもよい。
【0037】
本発明は、活性成分および金属水酸化物構造体の前駆体を、アルコールおよび水を用いて沈殿反応により共沈させるステップを含む金属水酸化物複合体を提供する。
【0038】
本発明の金属水酸化物構造体は、より具体的には、前駆体を用いて沈殿反応を起こすことができる。
【0039】
本発明において、前記沈殿反応を起こし得る金属水酸化物構造体の前駆体は、具体的には、ZnO、ZnSO4、ZnCl2、ZnCO3、Zn(NO3)26H2O、Zn(CH3COO)2、CaO、CaCl2、Ca(NO3)26H2O、CaSO4、CaCO3、Ca(OH)2、MgO、MgCl2、MgSO4、Mg(NO3)26H2O、CuO、Cu(NO3)26H2O、CuCl2、CuSO4、Co(NO3)2、CoCO3、CoCl2、Co(OH)2、CoSO4、Co(CH3COO)2、NiO、NiCl2、Ni(NO3)2、NiSO4、NiCO3、Ni(OH)2、FeO、FeCl3、Fe(NO3)3、FeSO4、FeCO3、Fe(OH)2であってもよいし、ZnO、ZnSO4、ZnCl2、ZnCO3、Zn(NO3)26H2O、Zn(CH3COO)2がより好ましい。
【0040】
前記アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノールからなる群より選択される1種以上であってもよい。前記プロパノールおよび/またはブタノールは、n-プロパノールおよび/またはn-ブタノールであってもよい。前記共沈させるステップにおいて、アルコールおよび水の比率は、1:9~9:1であってもよいし、2.4:7.6~6.2:3.8がより好ましい。アルコールおよび水の比率が前記範囲を満足する場合、変性した多重層構造が形成されるという点から好ましい。
【0041】
本発明は、活性成分および金属水酸化物構造体を、アルコールおよび水を用いて沈殿反応により共沈させるステップを含む金属水酸化物複合体の製造方法を提供する。前記アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノールからなる群より選択される1種以上であってもよいし、前記プロパノールは、n-プロパノール、前記ブタノールは、n-ブタノールがより好ましい。
【0042】
前記反応は、より具体的には、前駆体を用いて金属水酸化物構造体の前駆体を形成するステップと、活性成分をアルコールおよび水を用いて溶解させて活性成分溶液を製造するステップと、前記金属水酸化物構造体の前駆体および活性成分溶液を沈殿反応させるステップとを含む製造方法を提供する。
【0043】
本発明において、活性成分および金属水酸化物を、アルコールおよび水を用いて沈殿させることにより、別途の工程および/またはステップを要することなく活性成分自体を金属水酸化物構造体の内部に導入可能で活性成分を安定化させることが可能である。また、アルコールおよび水を溶媒として用いる場合、工程ステップが短縮される効果を有することができ、本発明が製造しようとする金属水酸化物複合体の総工程時間が3時間~5時間、より好ましくは3時間30分から4時間30分に短縮されて、同じ物質を製造するための従来の工程方法の場合、10時間~12時間かかるもので、その工程時間を著しく短縮させる効果を提供することが可能である。また、金属水酸化物複合体の内部に活性成分が示性式基準の従来の含有量対比5~15%以上追加添加される効果を達成可能である。前記工程におけるアルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノールからなる群より選択される1種以上であってもよいし、エタノールが金属水酸化物複合体内の活性成分を最も優れて過剰含有させることができるという面から好ましい。
【0044】
より具体的には、合成工程内のアルコールの使用により活性物質の変性(酸化、褐変など)防止効果、合成後に得られたスラリー(Slurry)の洗浄のために使用されるUF(Ultra filtration)フィルタの詰まり防止効果、3回のUF洗浄工程中における物質の変性防止効果、洗浄後の噴霧乾燥機(Spray Dryer)を用いた乾燥時、水のみを用いて乾燥する条件より乾燥時間が短縮され、65~75℃、好ましくは、70℃で乾燥して(水使用時の乾燥温度95℃以上)、活性物質の変性防止効果が達成可能である。特に、前記工程効果を最も優れて達成できるという点から、アルコールは、エタノールがより好ましい。
【実施例】
【0045】
本発明において、金属水酸化物の合成基本原理は、沈殿反応(precipitation method)に相当する。沈殿反応は、下記式1に基づいて判断することができ、下記式1の溶解度積と関係がある。沈殿物生成のためには、イオンの濃度積が沈殿物の溶解度積と等しくなった時、飽和溶液になり、イオンの濃度積が溶解度積を超えた時、飽和濃度を超えて沈殿する。沈殿物の必要なイオンの濃度積が沈殿物の溶解度積より小さい時には、不飽和溶液になって沈殿しなくなる。したがって、沈殿物を形成させるためには、溶解度積を超えるように一定量以上の前駆体を用いなければならない。しかし、過度に多量の前駆体を用いれば、対イオンの影響または錯化合物の形成によって沈殿物が再び溶解する問題が発生しうるので、注意しなければならない。本願発明に関連する沈殿反応の具体的な内容は、下記の
図15~17に具体的に記載した。
【数1】
溶解度積は、Zn
2+(aq)、Zn(OH)
+(aq)、Zn(OH)
2(aq)、Zn(OH)
3
-(aq)、およびZn(OH)
4
2-(aq)で表現されてもよいし、
図15に表現される平衡および平衡定数により溶解度データに関連づけるものおよび挙げられた種を他の種に関連づけることが便利である。
【0046】
合成例1:層状金属塩の層間にビタミンC(ascorbic acid)が挿入された多重層金属水酸化物結晶の製造1
主タンクに、ZnO30gとカーボネートイオン(CO3
2-)が除去された3次蒸留水1197mLを常温の窒素雰囲気下で撹拌(400rpm)し、conc.HCl溶液をゆっくり滴加してpH0.5~1に滴定する。補助タンク1に、ビタミンC26gを3次蒸留水230mL、エタノール175mLに溶解させた後、補助タンク1のビタミンC溶液を主タンクに添加し、窒素雰囲気下で30分間撹拌する。主タンクの撹拌速度(700rpm)を維持しながら、補助タンク2の5M水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを6.5~7.5程度に滴定した後、3時間撹拌(700rpm)しながら沈殿反応を誘導する。反応後のpHは6.5~7.0と測定され、反応終了後、白色スラリー形態の沈殿物を得た。前記沈殿物をエタノール(50%)を用いて遠心分離機で分離、洗浄過程を3回繰り返すことで未反応塩とビタミンCを除去し、遠心分離後に上澄液が除去された沈殿物をエタノール(95%)を用いて熱風式乾燥機(Inlet70℃)で乾燥させて、淡いベージュ色のビタミンC-亜鉛水酸化物35.4g(収率58.8%、アスコルビン酸含有量42.24%)を作った。{[Zn3(OH)4]B[Zn2(OH)3]S}{(ascorbic acid)2}・2(H2O)
【0047】
合成例2:層状金属塩の層間にビタミンCが挿入された多重層金属水酸化物結晶の製造2
主タンクに、ZnO30gとカーボネートイオン(CO3
2-)が除去された3次蒸留水549mL、エタノール(>98%)628mLを常温の窒素雰囲気下で撹拌(400rpm)し、conc.HCl溶液をゆっくり滴加してpH0.5~1に滴定する。補助タンク1に、ビタミンC26gを3次蒸留水230mL、エタノール175mLに溶解させた後、補助タンク1のビタミンC溶液を主タンクに添加し、窒素雰囲気下で30分間撹拌する。主タンクの撹拌速度(700rpm)を維持しながら、補助タンク2の5M水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを6.5~7.5程度に滴定した後、3時間撹拌(700rpm)しながら沈殿反応を誘導する。反応後のpHは6.5~7.0と測定され、反応終了後、白色スラリー形態の沈殿物を得た。前記沈殿物をエタノール(50%)を用いて遠心分離機で分離、洗浄過程を3回繰り返すことで未反応塩とビタミンCを除去し、遠心分離後に上澄液が除去された沈殿物をエタノール(95%)を用いて熱風式乾燥機(Inlet70℃)で乾燥させて、白色に近い淡いアイボリー色のビタミンC-亜鉛水酸化物37.6g(収率62.4%、アスコルビン酸含有量45.19%)を得た。
{[Zn3(OH)4]B[Zn1(OH)2]S}{(ascorbic acid)2}・3(H2O)
【0048】
合成例3:層状金属塩の層間にビタミンCが挿入された多重層金属水酸化物結晶の製造3
主タンクに、ZnO30gとカーボネートイオン(CO3
2-)が除去された3次蒸留水254mL、エタノール(>98%)943mLを常温の窒素雰囲気下で撹拌(400rpm)し、conc.HCl溶液をゆっくり滴加してpH0.5~1に滴定する。補助タンク1に、ビタミンC26gを3次蒸留水230mL、エタノール175mLに溶解させた後、ビタミンC溶液を主タンクに添加し、窒素雰囲気下で30分間撹拌する。主タンクの撹拌速度(700rpm)を維持しながら、補助タンク2の5M水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを6.5~7.5程度に滴定した後、3時間撹拌(700rpm)しながら沈殿反応を誘導する。反応後のpHは6.5~7.0と測定され、反応終了後、白色スラリー形態の沈殿物を得た。前記沈殿物をエタノール(50%)を用いて遠心分離機で分離、洗浄過程を3回繰り返すことで未反応塩とビタミンCを除去し、遠心分離後に上澄液が除去された沈殿物をエタノール(95%)を用いて熱風式乾燥機(Inlet70℃)で乾燥させて、白色に近い淡いアイボリー色の39.5g(収率65.6%、アスコルビン酸含有量46.35%)を得た。{[Zn3(OH)4]B[Zn1(OH)1]S}{(ascorbic acid)2}・3(H2O)
【0049】
合成例4:層状金属塩の層間にビタミンCが挿入された多重層金属水酸化物結晶の製造4
主タンクに、ZnO30gとカーボネートイオン(CO3
2-)が除去された3次蒸留水68mL、エタノール(>98%)1129mLを常温の窒素雰囲気下で撹拌(400rpm)し、conc.HCl溶液をゆっくり滴加してpH0.5~1に滴定する。補助タンク1に、ビタミンC26gを3次蒸留水50mL、エタノール355mLに溶解させた後、ビタミンC溶液を主タンクに添加し、窒素雰囲気下で30分間撹拌する。主タンクの撹拌速度(700rpm)を維持しながら、補助タンク2の5M水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを6.5~7.5程度に滴定した後、3時間撹拌(700rpm)しながら沈殿反応を誘導する。反応後のpHは6.5~7.0と測定され、反応終了後、白色スラリー形態の沈殿物を得た。前記沈殿物をエタノール(50%)を用いて遠心分離機で分離、洗浄過程を3回繰り返すことで未反応塩とビタミンCを除去し、遠心分離後に上澄液が除去された沈殿物をエタノール(95%)を用いて熱風式乾燥機(Inlet70℃)で乾燥させて、白色に近い淡いアイボリー色の40.9g(収率67.8%、アスコルビン酸含有量48.84%)を得た。{[Zn3(OH)3]B[Zn1(OH)1]S}{(ascorbic acid)2}・2(H2O)
【0050】
分析方法および評価基準
多重層構造の金属水酸化物の構造を確認するために、次の分析機器で分析を実施した。
分析方法1:粉末-X線回折パターン
-機器:Powder X-ray Diffraction(PXRD)
X-ray diffractometer(D/MAXPRINT 2200-Ultima、Rigaku、Japan)
Cu-Kα radiation(λ=1.5418Å)
チューブ電圧(tube voltage)40kV、電流30mA
X-ray diffractometerはRigaku(Japan)社のD/MAXPRINT 2200-Ultimaを用いて測定した。X線を発生させる陰極はCu金属を用い、Kα線(λ=1.5418Å)での測定範囲は2θ=3~70゜、scanning speed:0.02゜/0.2sec、divergence slit、scattering slit、そしてreceiving slitはそれぞれ0.1、1、そして1mmと測定した。チューブ電圧(tube voltage)は40kV、電流30mAをかけた。
【0051】
評価基準1
PXRD(Powder X-Ray Diffraction)のz軸に対するone-dimensional(1D)electron densityは次の方程式2によって計算される。
【数2】
【0052】
合成により得られたパウダーをXRD回折パターンを通して比較分析し、それによる層間距離をブラッグの方程式3(Bragg’s equation;下記の方程式3)により計算した。最も先に位置したpeakの場合、合成した金属水酸化物層と陰イオンが存在する層との距離を含む層間距離を示すもので、主要層間距離といえる。
【数3】
【0053】
分析方法2:HPLC分析
-機器:High performance Liquid Chromatography(HPLC)analysis
Agilent 1100 series(Agilent Technologies、USA)
UV検出器(λmax=240)
Zorbax C18 colum(4.6mmx150mm、5μm、Agilent Technologies、USA)
flow rate0.65mL/min
injection volume10μl
column temperature35℃
【0054】
HPLC分析のために、Agilent 1100 series(Agilent Technologies、USA)を用いた。λmaxは240nmで測定し、Zorbax C18 colum(4.6mmx150mm、5μm、Agilent Technologies、USA)で0.65mL/min、injection volume10μl、column temperature35゜の条件で測定した。
【0055】
移動相bufferはTrifluoroacetic acid(ReagentPlus(登録商標)、99%)0.1%を含み、acetonitrile(anhydrous、99.8%)と3次蒸留水との2:8の体積比率で作られた溶液を用いる。
【0056】
サンプル処理のために、buffer溶媒100mLにサンプル40mgを混合した後、10分間超音波処理後、10分間速やかに撹拌する。溶液をnylon syringe filter(pore size0.2μm)を用いてフィルタしてサンプルを測定した。
【0057】
実験例1
前記分析方法で分析したグラフは
図1および下記表1に記載した。
REFERENCE(Zn
5(OH)
8(ascorbic acid)
2・2H
2O)の製造方法
Zn(NO
3)
2・H
2O6gとビタミンC1.42gをカーボネートイオン(CO
3
2-)が除去された3次蒸留水に溶解させた後、0.2M NaOHを用いてpHを6~7程度に滴定した後、12時間反応を進行させてビタミンC-亜鉛塩基性塩沈殿物を得た。前記滴定された溶液を遠心分離機で上澄液を分離し、洗浄する過程を6回繰り返し実施することで未反応塩とビタミンCを除去して、2.9g(収率65%、ビタミンC含有量39%)を得た。
【0058】
MZLAの製造方法
{[Zn3(OH)4]B[Zn1(OH)2]S}{(ascorbic acid)2}・3(H2O)
【0059】
本発明のMZLAは合成例2により製造した。
Zinc basic saltの製造方法(Zn
5(OH)
8(NO
3)
2・2H
2O)
Zn(NO
3)
2・6H
2O5gをカーボネートイオン(CO
3
2-)が除去された3次蒸留水に溶解させた後、0.2M NaOHを用いてpHを6~7程度に滴定して亜鉛塩基性塩沈殿物を得た。前記滴定された溶液を遠心分離機で分離し、洗浄過程により未反応塩を除去して、白色の粉末形態2.6g(収率70%)を製造した。
【表1】
【0060】
図1のXRD patternを説明すれば、金属板状(metal sheet)内のmetal coordination siteの物理的構造の変化は、基底面の単位面積あたりの電荷(basal area unit charge)の変化で表され、層状内にメタル層と結合したアスコルベート(ascorbate)のsteric hindrance、electronic density、ion-dipole momentなどの物理的特徴によって、アスコルベートの数字、大きさ、結合強度、配列方向が決定されて層間高さが表される。
【0061】
本実験の金属水酸化物(MZLA)の層間距離は、5.96゜、8.5゜、10.36゜でそれぞれ14.82Å、10.4Å、8.53Åを示した。15゜以下に位置した3つのpeak positionのd-value値がそれぞれ異なり、c-axisに対する層間距離の方程式(Bragg’s equation)のstacking order比率を考慮すれば、それぞれ異なる形態の積層(stacking)が行われたことが分かる。これは、(0,0,l)reflectionに対して互いに異なる基底層(basal spacing)を有するものであり、それぞれのpeakはそれぞれ異なる構造から生成されたことが分かる。また、層の厚さ(brucite layer thickness、7.4Å)およびアスコルベートのイオン長さ(Ion length、4.9Å)を考慮すれば、8.5゜(10.394Å)付近のpeakは、5.96゜に比べて4.4Å程度さらに減少し、10.36゜(8.6419Å)付近のpeakは、6.29Åだけ距離が減少し、ZBSのNO3-イオンによる層間距離(9.82Å)よりも小さくなるが、これをまとめてみる時、金属層とアスコルベートとのなすmetal coordination siteが変化して層間距離が小くなったことが分かる。
【0062】
従来の水酸化物構造と比較する時、層状構造の間隔を示すpeakの結晶性が増加し、新しいpeakが生成された。従来の金属水酸化物の場合、層間間隔が14.67Åであったが、MZLA(modified zinc layer ascorbate)の場合、peakの新しい生成が現れ、それぞれ14.81Å、10.39Å、8.53Åの層間間隔で計算され、回折パターンの変化と結晶性が高くなった。
【0063】
実験例2:エタノールおよび水の含有量に応じたXRDグラフおよびビタミンCの含有量の測定
実施例1~4
下記表2の含有量により、実施例1は合成例1、実施例2は合成例2、実施例3は合成例3、および実施例4は合成例4の方法で合成した。
【0064】
【0065】
前記表2および
図2により、合成時、エタノールと蒸留水との比率に応じてpeakの結晶性が変化し、層間間隔が異なることを確認した。エタノールの比率が少ない時(実施例1、(a))には、5~6゜付近でアスコルベートの回折パターンがブロード(broad)に現れており、エタノールの比率が次第に増加するほどpeakの結晶性が高くなることにより、新しい回折パターンが現れて、8゜、10゜付近で鮮明なpeakが生成された。
【0066】
また、エタノールの比率が高くなることにより、金属水酸化物のアスコルベート含有量はそれぞれ44.24%、45.19%、48.84%と次第に増加し、パウダーの色も白色に近い淡いアイボリー色を呈した。
【0067】
実験例3:(1)EtOH:H2O=85:15のratio、(2)EtOH:H2O=10:90のratio、(3)H2O=100(reference)、(4)ZBS-NO3によるXRD変化分析
層状構造内のtetraheadral structureをなすZn siteは、正電荷の不安定な形態をなして、これに相応する電荷バランス(charge valance)を合わせるためにイオン性分子と反応するが、dipole momentによってZn siteと結合した水分子は、hydrogen bonding、ion-dipole interactionによる陰イオンとの結合で金属層(metal layer)を形成する。この時、一定比率以上のEtOHの使用時、類似するdipole momentを有する溶媒分子間の競争によりZn siteに結合する水分子の不安定性を促進して、ZBS層状内のtetraheadral構造をなすZnの構造的位置変化を起こす。ZBS-ascorbateのアスコルベートは、Znと結合した水分子とアスコルビン酸(dehydration形態)との結合で存在するが、エタノールによって生じた構造的不安定性は、水分子と結合したアスコルベートに影響を及ぼす。
【0068】
このような傾向性を
図3から確認し、前記のような理由から、一定比率のエタノールの使用時、構造的に安定した形態を維持するために、板状の(nanosheet)ねじれた非対称積層構造(turbostatic structure)を形成させて、33゜、58゜付近のpeakがbroadかつ大きく(hump)現れ((b))、エタノール量が増加するほど構造的により安定した形態を維持するように層状(layer sheet)内の陰イオンの位置変化が起きて、15゜以下の層状の距離を示すpeakの生成および変化が現れ、非対称現象が無くなることにより、33゜、58゜付近のpeakが無くなり、多重層形態の積層構造((a))を示す。
【0069】
30゜<θ<40゜、55゜<θ<65゜回折パターンの非対称積層構造(turbostatic structure)は、ZBS-NO
3((d))では発見されず、ZBSに他の陰イオンを含有した構造内でも発見される現象であるが、既存のZBS-ascorbic acidの場合、
図3の(c)のように現れないものの、このEtOHの比率調節で人為的に作り出した物理的現象であって、前記REFERENCEによって現れるXRD peakとは異なる形態の構造と形態を示す。
【0070】
実験例4:合成例2の金属水酸化物の走査電子顕微鏡分析
図8~10は、合成例2により製造された金属水酸化物の走査電子顕微鏡写真(Scanning Electron Microscope、SEM)である。平均粒子サイズは10~20μmであり、形態は球状である。REFERENCEとは大きさが異なるもので、REFERENCEは、およそ200~300nmまたは0.5μm以下の大きさを有することが知られている。
【0071】
実験例5:エタノールおよび水の含有量に応じたXRDグラフおよびビタミンCの含有量の測定
実施例5~7
下記表3の含有量により、各実施例5は合成例2、実施例6は合成例3、実施例7は合成例4の方法で実施され、含有量が表3の含有量で行われたことを除けば、同様の方法で合成された。
【0072】
前記実施例5~7の具体的なXRD値は
図4に示した。
【表3】
【0073】
実験例6:メタノールおよび水の含有量に応じたXRDグラフおよびビタミンCの含有量の測定
実施例8~10
下記表4の含有量により、各実施例8は合成例2、実施例9は合成例3、実施例10は合成例4の方法で実施され、エタノールがメタノールに変更されて実施され、その含有量が表4の含有量で行われたことを除けば、同様の方法で合成された。
【0074】
前記実施例8~10の具体的なXRD値は
図5および表5に示した。
【表4】
【表5】
【0075】
実験例7:プロパノールおよび水の含有量に応じたXRDグラフおよびビタミンCの含有量の測定
実施例11~13
下記表5の含有量により、各実施例11は合成例2、実施例12は合成例3、実施例13は合成例4の方法で実施され、エタノールがn-プロパノールに変更されて実施され、その含有量が表6の含有量で行われたことを除けば、同様の方法で合成された。
【0076】
前記実施例11~13の具体的なXRD値は
図6に示した。
【表6】
【表7】
【0077】
実験例8:ブタノールおよび水の含有量に応じたXRDグラフおよびビタミンCの含有量の測定
実施例14~17
下記表8の含有量により、各実施例14は合成例2、実施例15は合成例3、実施例16は合成例4の方法で実施され、エタノールがn-ブタノールに変更されて実施され、その含有量が表8の含有量で行われたことを除けば、同様の方法で合成された。
【0078】
前記実施例14~16の具体的なXRD値は
図7に示した。
【表8】
【表9】
【0079】
実験例9:実施例3のコラーゲン発現効果
-実験方法
実施例3(以下、「JL-101パウダー」という)のin vitroコラーゲン生成増加試験のために、ヒト真皮線維芽細胞(normal human dermal fibroblasts、HDFs)を使用した。試料の検液濃度設定のために、試料物質をヒト真皮線維芽細胞に24時間処理して細胞毒性が観察されない濃度区間を細胞毒性試験(cytotoxicity test)を通して確認した。設定された検液濃度で「JL-101パウダー」をヒト真皮線維芽細胞に同様の方法で処理して、コラーゲン遺伝子であるCOL1A1とCOL3A1 mRNAの発現量をReal Time-PCR(RT-PCR)法により比較および分析した。
【0080】
-細胞株選択および細胞培養
本試験のために、ヒト真皮線維芽細胞(normal human dermal fibroblasts、nHDFs;Lonza、Basel、Switzerland)を使用した。本細胞はfibroblast basal medium(cc-3181、Lonza、Walkersvile、MD、USA)にFGMTM-2 singleQuotsTM(hGFG、insulin、FBS and gentamicin/amphotericin-B;cc-4126、Lonza、Walkersvile、MD、USA)を含有した培地を用いて、5%CO2細胞培養器内で37℃の温度条件下で培養した。
【0081】
-試験物質
試験物質である「JL-101」はパウダー形態で提供され、当該物質をphosphate buffered saline(PBS;Biosesang、Seongnam、Korea)に溶かして細胞処理に使用した。陽性対照群のtransforming growth factor beta(TGF-β;T7039、sigma-Aldrich、MO、USA)はPBSに溶かして細胞処理に使用した。
【0082】
-試験物質濃度の設定
ヒト真皮線維芽細胞を96-well plateに4×103cells/wellで分注し、24時間培養後、試験物質を適正濃度で処理して、再び24時間培養した。その後、WST-1 assay solutionを培地量の10%ずつ処理して、追加的に0.5~1時間、37℃で反応させた後、iMark microplate reader(Bio-Rad、Hercules、CA、USA)を用いて、450nmにおける吸光度を測定した。referenceの吸光度は650nmで測定して結果値を補正した。結果値は3回の独立した実験から平均値±標準偏差で表した。P<.05はStudent’s t-testにより検証し、結果値の有意性を示した。結果値から、試験物質の処理による細胞生存率が対照群対比減少しない濃度区間を、後の実験の検液濃度に設定した。
【0083】
-コラーゲン遺伝子の発現量の測定
【0084】
コラーゲン遺伝子の発現量の測定は、type1 collagenの代表的構成要素であるCOL1A1遺伝子と、type3 collagenの代表的構成要素であるCOL3A1遺伝子の発現水準をquantitative real-time PCR(qRT-PCR)分析法により確認することにより進行させた(Peter、2008)。ヒト真皮線維芽細胞を6well culture plateに2×105cells/wellで分注して24時間培養した。その後、一定濃度の試験物質を処理して24時間追加培養した。培養された細胞を収穫した後、1mlTRIzol reagent(Life Technologies)を添加して、細胞溶解およびtotal mRNA抽出を行った。Total mRNAの濃度および純度(A260/A280 and A260/A230 ratio)は、MaestroNano(r)microvolume spectrophotometer(Maestrogen、Las Vegas、NV、USA)を用いて検証し、2.0以上の純度が高いtotal mRNAのみを選別した。
【0085】
Total mRNAは、M-MLV reverse transcriptase(Life Technologies)を用いてcDNAに置換してqRT-PCRに使用した。qRT-PCRはHOT FIREPol EvaGreen PCR Mix Plus(Solis BioDyne、Estonia)を用いて行い、Line-Gene K software(Bioer Technology Co.Ltd.、Hangzhou、China)を用いて当該遺伝子の発現を分析した。コラーゲンおよびコラゲナーゼmRNA量確認試験の陽性対照群としてはTGF-β(Chung et al.、1997)を使用した。PCR反応条件は、94℃で5分間denaturationさせた後、denaturation(94℃、30秒)、annealing(60℃、30秒)、polymerization(72℃、30秒)過程を40cycleの間進行させた。遺伝子発現の変化は、β-ACTIN対照群遺伝子の発現量と比較して測定した。COL1A1およびCOL3A1のCт値をβ-ACTINのCт値で正規化(normalization)し、2-ΔΔCt法によりCOL1A1とCOL3A1の相対的な発現程度を計算した。結果値は3回の独立した実験から平均値±標準偏差で表した。P<.05はStudent’s t-testにより検証し、結果値の有意性を示した。qRT-PCR試験に用いられたprimer情報は表10の通りである。
【表10】
【0086】
-試験物質検液濃度の設定
試験物質である「JL-101パウダー」の検液濃度の設定はWST-1 assayを用いて実施した。「JL-101パウダー」物質を0から500μg/mlの濃度でヒト真皮線維芽細胞に24時間処理した後、WST-1 assayを実施して現れる細胞生存率を確認した結果は
図12の通りである。細胞に処理した「JL-101パウダー」物質の濃度が100μg/ml以下(10、20、50、100μg/ml)の場合の細胞生存率は、陰性対照群と比較する時、有意な差を示さなかった。しかし、200μg/ml以上(200、300、400、500μg/ml)の場合では、陰性対照群対比5%以上の細胞生存率が減少した結果を示した。したがって、後の効力試験では濃度100μg/ml以下の「JL-101パウダー」を検液濃度に設定した(
図12参照)。
【0087】
-タイプ1のコラーゲンmRNAの発現量の測定
ヒト真皮線維芽細胞において試験物質である「JL-101パウダー」の処理によるコラーゲン発現の増減の有無は、皮膚に主に存在するタイプ1のコラーゲンとタイプ3のコラーゲン遺伝子であるCOL1A1 mRNAとCOL3A1 mRNAの発現量の変化を測定して確認し、まず、「JL-101パウダー」処理によるCOL1A1 mRNAの発現程度を把握した。試験物質である「JL-101パウダー」を前記細胞毒性試験により設定された最高検液濃度である100μg/ml以下(10、20、50、100μg/ml)をヒト真皮線維芽細胞に処理して24時間培養した後、total RNAを抽出してcDNAを合成した。この後、表11に提示されたCOL1A1primer setおよびβ-ACTINprimer setを用いてqRT-PCR試験法によりCOL1A1 mRNAの発現量を測定した。試験結果の信頼度向上のために、TGF-βを陽性対照物質として使用した。
図13のように、100μg/ml以下の「JL-101パウダー」を処理時、COL1A1 mRNAの発現が濃度依存的に増加することを確認した。特に、100μg/ml処理時、COL1A1 mRNAの発現は、陰性対照群対比45.88±6.79%増加することが確認された。陽性対照群であるTGF-β(5.0ng/ml)を処理した結果、COL1A1 mRNAの発現は、陰性対照群対比219.65±7.25%増加した(
図13参照)。
【0088】
-タイプ3のコラーゲンmRNAの発現量の測定
図14のように、「JL-101パウダー」処理によるCOL1A1 mRNAの発現分析と連携して、「JL-101パウダー」処理によるCOL3A1 mRNAの発現分析を把握した。試験物質である「JL-101パウダー」を前記タイプ1のコラーゲンmRNAの発現量測定試験と同様に設定された検液濃度帯(10、20、50、100μg/ml)でヒト真皮線維芽細胞に処理して24時間培養した後、total RNAを抽出してcDNAを合成し、表1に提示されたCOL3A1primer setおよびβ-ACTINprimer setを用いてqRT-PCR試験法によりCOL3A1 mRNAの発現量を測定した。試験結果の信頼度向上のために、TGF-βを陽性対照物質として使用した。
図14のように、0~100μg/mlの「JL-101パウダー」処理時、濃度依存的にCOL3A1 mRNAの発現が増加することを示した。特に、100μg/mlの「JL-101パウダー」処理時、COL3A1 mRNAの発現は、陰性対照群対比100.98±5.49%増加することを示した。陽性対照群であるTGF-β(5.0ng/ml)を処理した結果、COL3A1 mRNAの発現は、陰性対照群対比22.93±6.21%増加した。
【0089】
-測定結果
韓国皮膚科学研究院では、シエンファームの依頼を受けて、試験物質である「JL-101パウダー」のヒト真皮線維芽細胞コラーゲン生成の増加に対する効力試験を進行させた。
【0090】
シエンファームによって提供された試験物質である「JL-101パウダー」のヒト真皮線維芽細胞に対する生存率を分析した結果、「JL-101パウダー」の陰性対照群と比較して100μg/ml以下(10、20、50、100μg/ml)の濃度で処理して24時間培養した条件では細胞生存率が減少しなかった。コラーゲン発現増加効力試験では、20、50、100μg/mlの「JL-101パウダー」処理時、COL1A1 mRNAの発現が陰性対照群に比べて有意に増加することを示した。特に、100μg/mlの「JL-101パウダー」処理時、COL1A1 mRNAの発現は、処理していない陰性対照対比最大45.88±6.79%増加することが明らかになった。陽性対照群であるTGF-βを5.0ng/mlの濃度でヒト真皮線維芽細胞に処理した結果、COL1A1 mRNAの発現は、陰性対照群対比219.65±7.25%増加した。COL3A1 mRNAの発現は、100μg/ml以下の「JL-101パウダー」処理時、濃度依存的にCOL3A1 mRNAの発現が増加することを示した。特に、100μg/mlの「JL-101パウダー」処理時、COL3A1 mRNAの発現は、処理していない陰性対照群対比最大100.98±5.49%増加することが明らかになった。陽性対照群であるTGF-βを5.0ng/mlの濃度でヒト真皮線維芽細胞に処理した結果、COL3A1 mRNAの発現は、陰性対照群対比22.93±6.21%増加した。
【0091】
したがって、シエンファームで依頼した試験物質は、ヒト真皮線維芽細胞に処理時、陰性対照群対比、COL1A1 mRNAは最大45.88±6.79%増加し、COL3A1 mRNAは100.98±5.49%増加した。各コラーゲンの発現程度は、陽性対照群(TGF-β)によるコラーゲン発現量の45.64%および163.50%水準である。これによって、「JL-101パウダー」は、ヒト真皮線維芽細胞内のコラーゲンの発現を増加させると判断される。
【0092】
参照例1および2
参照例1の製造方法
(a)EtOH0.5:H2O9.5
主タンクに、ZnO3gとカーボネートイオン(CO3
2-)が除去された3次蒸留水148.3mLを常温の窒素雰囲気下で撹拌(400rpm)し、conc.HCl溶液をゆっくり滴加してpH0.5~1に滴定する。補助タンク1に、ビタミンC(ascorbic acid)2.6gを3次蒸留水10mL、エタノール8.69mLに溶解させた後、補助タンク1のビタミンC溶液を主タンクに添加し、窒素雰囲気下で30分間撹拌する。主タンクの撹拌速度(700rpm)を維持しながら、補助タンク2の1.6M水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを6.5~7.5程度に滴定した後、3時間撹拌(700rpm)しながら沈殿反応を誘導する。反応後のpHは6.5~7.0と測定され、反応終了後、白色スラリー形態の沈殿物を得た。前記沈殿物を遠心分離機で分離、洗浄過程を3回繰り返すことで未反応塩とビタミンCを除去し、遠心分離後に上澄液が除去された沈殿物を液体窒素で冷却後、凍結乾燥させて、淡いベージュ色のビタミンC-亜鉛水酸化物3.5g(収率58.1%、アスコルビン酸含有量38.66%)を作った。
【0093】
参照例2の製造方法
(b)EtOH9.5:H2O0.5
【0094】
主タンクに、ZnO3gとカーボネートイオン(CO3
2-)が除去されたエタノール125.15mLを常温の窒素雰囲気下で撹拌(400rpm)し、conc.HCl溶液をゆっくり滴加してpH0.5~1に滴定する。補助タンク1に、ビタミンC2.6gを3次蒸留水1.84mL、エタノール40mLに溶解させた後、補助タンク1のビタミンC溶液を主タンクに添加し、窒素雰囲気下で30分間撹拌する。主タンクの撹拌速度(700rpm)を維持しながら補助タンク2の1.6M水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを6.5~7.5程度に滴定した後、3時間撹拌(700rpm)しながら沈殿反応を誘導する。反応後のpHは6.5~7.0と測定され、反応終了後、白色スラリー形態の沈殿物を得た。前記沈殿物を遠心分離機で分離、洗浄過程を3回繰り返すことで未反応塩とビタミンCを除去し、遠心分離後に上澄液が除去された沈殿物を液体窒素で冷却後、凍結乾燥させて、淡いベージュ色のビタミンC-亜鉛水酸化物3.41g(収率56.6%、アスコルビン酸含有量34.24%)を作った。
【0095】
前記製造方法で製造された参照例1および2は、具体的には、下記表11の通りであり、前記参照例1および2の具体的なXRD値は
図18に示した。
【表11】
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、活性成分を変性多重層水酸化物構造体に含むことにより、優れた徐放性能を有し、活性成分を金属水酸化物複合体に安定した状態で高含有量含むことにより、伝達される活性成分の効果を改善可能な金属水酸化物複合体を提供可能である。また、前記複合体は、不安定な状態の活性成分を安定して含むことにより、活性成分を長時間保管可能な効果を有し、皮膚への伝達時にも刺激を最小化可能で非刺激性効果を提供可能であり、優れたコラーゲン発現効果を提供可能である。
また、本発明は、上記のような優れた特性を有する金属水酸化物複合体を製造する方法を提供する。
本発明の態様の一部を以下に記載する。
1.基底層、表面層、および活性成分を含む金属水酸化物複合体であって、下記化学式1の多重層水酸化物構造体を含む金属水酸化物複合体:
【化1】
上記中、[M
x(OH)
z]
Bは多重層水酸化物構造体の基底層に対応するものであり、[M
y(OH)
w]
Sは多重層水酸化物構造体の表面層を示すものであり、
前記MはCa
2+、Mg
2+、Cu
2+、Zn
2+、Ni
2+、Co
2+、およびFe
2+からなる群より選択された1種の2価の金属陽イオンであり、
xは0.6~3、
yは0~2であり、
zは1~5であり、
wは0~4であり、
z+wは1~9であり、
qは1~4であり、
mは0.1~10であり、
nはAの電荷数であり、
前記活性成分はAで表され、前記AはpKaに応じて静電的引力を有する官能基(functional group)として、ヒドロキシ基(-OH)、カルボニル基(-CO-)、ホルミル基(-CHO)、カルボキシ基(-COOH)、スルフェート基(-SO
3
2-)、ジハイドロジェンホスフェート基(-H
2PO
4
2-)、およびホスフェート基(-PO
4
3-)からなる群より選択される1種以上を含む陰イオン性化合物である。
2.前記多重層水酸化物構造体は、2層以上5層以下の層である、項目1に記載の金属水酸化物複合体。
3.前記多重層水酸化物構造体は、粉末-X線回折パターンが回折角(2θ)=5.96±1゜、33.46±1゜、および59.3±1゜のピーク値を有するものである、項目1に記載の金属水酸化物複合体。
4.前記多重層水酸化物構造体は、粉末-X線回折パターンが回折角(2θ)=5.96±1゜、8.5±1゜、10.36±1゜、13.36±1゜、19±1゜、20.84±1゜、21.7±1゜、26.34±1゜、37.68±1゜、31.48±1゜、33.78±1゜、34.88±1゜、および59.3±1゜のピーク値を有するものである、項目1に記載の金属水酸化物複合体。
5.前記多重層水酸化物構造体は、粉末-X線回折パターンが回折角(2θ)=6.28±1゜、8.88±1゜、10.32±1゜、13.42±1゜、21.04±1゜、28.14±1゜、33.5±1゜、59.16±1゜のピーク値を有するものである、項目1に記載の金属水酸化物複合体。
6.前記多重層水酸化物構造体は、アルコールおよび水を溶媒として含む沈殿反応により共沈して製造されるものである、項目3に記載の金属水酸化物複合体。
7.前記アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノールからなる群より選択される1種以上である、項目6に記載の金属水酸化物複合体。
8.活性成分および金属水酸化物構造体の前駆体を、アルコールおよび水を用いて沈殿反応により共沈させるステップによって製造される、金属水酸化物複合体。
9.前記アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノールからなる群より選択される1種以上である、項目8に記載の金属水酸化物複合体。
10.前記共沈させるステップにおいて、アルコールおよび水の比率は、1:9~9:1である、項目8に記載の金属水酸化物複合体。
11.活性成分および金属水酸化物構造体の前駆体を、アルコールおよび水を用いて沈殿反応により共沈させるステップを含む金属水酸化物複合体の製造方法。
12.前記アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノールからなる群より選択される1種以上である、項目1に記載の金属水酸化物複合体の製造方法。