(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】非ラセミ体のベータ-ヒドロキシブチレート化合物及びR-エナンチオマー富化組成物並びに使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/19 20060101AFI20241111BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20241111BHJP
A61K 31/215 20060101ALI20241111BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20241111BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20241111BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20241111BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
A61K31/19
A23L33/10
A61K31/215
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2020546288
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(86)【国際出願番号】 US2018062093
(87)【国際公開番号】W WO2019104082
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2020-08-25
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-26
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520178065
【氏名又は名称】アクセス・グローバル・サイエンシーズ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】AXCESS GLOBAL SCIENCES, LLC
【住所又は居所原語表記】2157 LINCOLN STREET, SALT LAKE CITY, UTAH 84106, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ミレット,ゲーリー
【合議体】
【審判長】淺野 美奈
【審判官】磯貝 香苗
【審判官】松本 陶子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0296501(US,A1)
【文献】特開2017-46688(JP,A)
【文献】特表2016-514725(JP,A)
【文献】特表2015-514104(JP,A)
【文献】Life Sciences,2006年,78,1385-1391
【文献】Frontiers in Physiology,2017,8,848
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
CAplus/RESIGTRY/BIOSIS/EMBASE/FSTA/MEDLINE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食欲抑制、体重減少、脂肪消失、血中グルコース値の減少、精神的敏しょう性の改善、身体的エネルギーの増加、認知機能の改善、外傷性脳損傷の減少、糖尿病の影響の減少、神経学的障害の改善、癌の減少、炎症の減少、老化防止、抗糖化、てんかん性発作の減少、気分の改善、体力の増強、筋肉量の増加、及び、身体組成の改善のうちの少なくとも1つをもたらすために、対象における血中のケトン体レベルの増加に使用するための組成物であり、
粉末、錠剤、カプセル、食品、食品添加物、飲料、飲料添加物、及び、栄養補助食品から選択される経口投与用の食物的に又は医薬的に許容できる担体、及び、
R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物、を含む組成物であって、
前記非ラセミ混合物が、エナンチオマー相当量で55%~89%のR-ベータ-ヒドロキシブチレート及びエナンチオマー相当量で45%~11%のS-ベータ-ヒドロキシブチレートを含有する、組成物。
【請求項2】
前記非ラセミ混合物が、エナンチオマー相当量で55%~87%のR-ベータ-ヒドロキシブチレート及びエナンチオマー相当量で45%~5%のS-ベータ-ヒドロキシブチレートを含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記非ラセミ混合物が、エナンチオマー相当量で55%~85%のR-ベータ-ヒドロキシブチレート及びエナンチオマー相当量で45%~11%のS-ベータ-ヒドロキシブチレートを含有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記非ラセミ混合物が、エナンチオマー相当量で57%~87%のR-ベータ-ヒドロキシブチレート及びエナンチオマー相当量で43%~13%のS-ベータ-ヒドロキシブチレートを含有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記非ラセミ混合物が、エナンチオマー相当量で59%~85%のR-ベータ-ヒドロキシブチレート及びエナンチオマー相当量で41%~15%のS-ベータ-ヒドロキシブチレートを含有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記非ラセミ混合物が、エナンチオマー相当量で60%~80%のR-ベータ-ヒドロキシブチレート及びエナンチオマー相当量で40%~20%のS-ベータ-ヒドロキシブチレートを含有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、R-ベータ-ヒドロキシブチレートの1つ以上の塩を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記R-ベータ-ヒドロキシブチレートの1つ以上の塩が、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、遷移金属塩、又はアミノ酸塩のうちの少なくとも1つを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記アミノ酸塩が、アルギニン、リジン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジン、オルニチン、シトルリン、グルタミン、若しくはクレアチンから選択される少なくとも1つのアミノ酸又はアミノ酸代謝物を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記非ラセミ混合物がエナンチオマー相当量で88%
を超える(3R)-ヒドロキシブチル(3R)-ヒドロキシブチレートモノエステルを含有
しないことを条件に、前記非ラセミ混合物が、少なくとも1つのR-ベータ-ヒドロキシブチレートエステルを含有する、請求項1から9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記R-ベータ-ヒドロキシブチレートエステルが、ジオールとR-ベータ-ヒドロキシブチレートとのジエステルである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記R-ベータ-ヒドロキシブチレートエステルが、エタノールのモノエステル、1-プロパノールのモノエステル、1,3-プロパンジオールのモノエステル、1,3-プロパンジオールのジエステル、S-1,3-ブタンジオールのモノ若しくはジエステル、R-1,3-ブタンジオールのモノ若しくはジエステル、S-R-1,3-ブタンジオールのモノ若しくはジエステル、又はグリセリンのモノ、ジ若しくはトリエステルのうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記非ラセミ混合物が、固体である、請求項1から12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記非ラセミ混合物が、粉末又は結晶性材料である請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記担体が、食物的に許容可能な粉末、
液体、錠剤、カプセル、食品、食品添加物、飲料、飲料添加物、又は栄養補助食品を含む、請求項1から14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
5μg~200μg、若しくは10μg~100μg、若しくは15μg~75μgの量で、又は、200IU~8000IU、若しくは400IU~4000IU、若しくは600IU~3000IUの量でビタミンD
3を更に含む、請求項1から15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
少なくとも1つの中鎖脂肪酸、又は、少なくとも1つの前記中鎖脂肪酸のモノ、ジ、若しくはトリグリセリドを更に含む、請求項1から16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1つの中鎖脂肪酸が、6~12個の炭素、又は8~10個の炭素を有する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
6個未満の炭素を有する短鎖脂肪酸又は少なくとも1つの前記短鎖脂肪酸のモノ、ジ若しくはトリグリセリドを更に含む、請求項1から18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
12個を超える炭素を有する長鎖脂肪酸又は少なくとも1つの前記長鎖脂肪酸のモノ、ジ若しくはトリグリセリドを更に含む、請求項1から19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
食欲抑制、体重減少、脂肪消失、血中グルコース値の減少、精神的敏しょう性の改善、身体的エネルギーの増加、認知機能の改善、外傷性脳損傷の減少、糖尿病の影響の減少、神経学的障害の改善、癌の減少、炎症の減少、老化防止、抗糖化、てんかん性発作の減少、気分の改善、体力の増強、筋肉量の増加、及び、身体組成の改善のうちの少なくとも1つをもたらすために、対象における血中のケトン体レベルの増加に使用するための組成物であり、
R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物、を含む組成物であって、
前記非ラセミ混合物がエナンチオマー相当量で85%
を超えるR-1,3-ブタンジオールとR-ベータ-ヒドロキシブチレートとのモノエステルを含有
しないことを条件に、前記非ラセミ混合物が、エナンチオマー相当量で55%~89%のR-ベータ-ヒドロキシブチレート及びエナンチオマー相当量で45%~11%のS-ベータ-ヒドロキシブチレートを含有し、
ここで、前記組成物は、経口投与によって送達される栄養補助食品である、組成物。
【請求項22】
食欲抑制、体重減少、脂肪消失、血中グルコースレベルの減少、精神的敏しょう性の改善、身体的エネルギーの増加、認知機能の改善、外傷性脳損傷の減少、糖尿病の影響の減少、神経学的障害の改善、癌の減少、炎症の減少、老化防止、抗糖化、てんかん性発作の減少、気分の改善、体力の増強、筋肉量の増加、及び、身体組成の改善のうちの少なくとも1つをもたらすために、対象における血中のケトン体レベルを増加させるための薬剤の製造における請求項1~21のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項23】
前記薬剤が、結果として、食欲抑制、体重減少、脂肪消失、及び、血中グルコースレベルの減少のうちの1つ以上をもたらす、請求項22に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
非ラセミ体のベータ-ヒドロキシブチレート化合物、塩、エステル、及びベータ-ヒドロキシブチレートのRエナンチオマーを富化した組成物を混合したもの、並びに対象におけるケトン体の血中レベルの上昇を生み出す方法が、ここに開示される。
【背景技術】
【0002】
絶食、激しい運動及び/又は低炭水化物消費の期間には、体内のグルコース及びグリコーゲンの貯蔵が急激に使用され、急速に枯渇する可能性がある。それらの枯渇に伴ってグルコース貯蔵の補充に失敗すると、体が代謝的に、エネルギーのためにケトン体を作り出して使用することに移行するようになる(「ケトーシス」)。ケトン体は、脳及び心臓を含む体にとってのエネルギーの必要性を満たす燃料として、体の細胞により使用され得る。長期の絶食中に、例えば、血中のケトンレベルは、2~3mmol/L以上に増加する可能性がある。血中のケトンが0.5mmol/Lを超えて上昇すると、心臓、脳及び抹消組織が、主要燃料源としてケトン体(例えば、ベータ-ヒドロキシブチレート及びアセトアセテート)を使用していることが従来から理解されている。この状態をケトーシスと称する。1mmol/Lから3.0mmol/Lの間の状態を、「栄養学的ケトーシス」と呼ぶ。
【0003】
ケトーシスに移行すると、言い換えれば肝臓におけるケトジェニック代謝の間、体は、食物の及び身体の脂肪を主要燃料源として使用する。その結果、ケトーシスになれば、食事による脂肪摂取を制御して、ケトーシスを持続させるため低炭水化物の摂取及び血中レベルを維持することにより、体の脂肪の減少を誘導する。
【0004】
ケトーシス中は、体はケトン生成状態になり、主要燃料源として脂肪を本質的に燃焼させている。体が脂肪を脂肪酸及びグリセロールへと分解し、脂肪酸をアセチルCoA分子へと変換し、アセチルCoA分子は、次いでケトン生成を経て肝臓中で水溶性ケトン体ベータ-ヒドロキシブチレート(「β-ヒドロキシブチレート」又は「BHB」)、アセトアセテート(アセチルアセトネートとしても公知)及びアセトンへと最終的に変換される。ベータ-ヒドロキシブチレート及びアセトアセテートは、エネルギー用に体で使用されるケトン体である一方、アセトンはケトン生成の副産物として除去され放出される。
【0005】
ケトン体の代謝は、抗痙攣効果、脳の代謝の促進、神経防護作用、筋肉温存特性、並びに認識能力及び身体能力の改善を含むいくつかの有益な効果と関連がある。ケトン補充により管理される、細胞代謝の効率性における科学に基づく改善は、身体的、認知的健康、及び心理的健康に対して有益な影響を及ぼし、肥満、循環器疾患、神経変性疾患、糖尿病及び癌などの一般的な回避できる疾患に関する健康に対して長期的な影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
ケトジェニックダイエット又はライフスタイルを追求し栄養学的ケトーシスの状態を維持することには、健康に多数の利点があるが、栄養学的ケトーシスの状態を追求し維持するのには、深刻な障壁が残っている。その障壁の1つは、ケトジェニック状態への移行の難しさである。体内におけるグルコースの貯蔵の枯渇を経てケトーシスに入る最速の内因的方法は、運動を組み合わせた絶食によるものである。これは、身体的及び精神的要求が厳しく、最もやる気があり規律がある人々にとっても大変厳しいことである。
【0007】
また、ケトーシスへの移行にはしばしば低血糖を伴い、これにより多くの場合で無気力及び立ち眩みが起こる可能性があり、結果として、一般に「低糖質風邪」と呼ばれる不快な身体的及び精神的状態に陥る。また、体が自然に「省エネルギー」モードになるので、多くの人々は、代謝におけるダウンレギュレーションを経験する。これらの一時的症状は2~3週間もの期間続く可能性があるという意見もある。この移行期間の間、もし対象が制限量を超える炭水化物を含有する食事又は軽食を摂取すると、即座にケトン生成が終了し、体がケトーシスの状態から脱却し、体が主要燃料としてグルコースを利用する状態へと戻りケトーシスへの移行は改めて開始しないといけない。
【0008】
もし対象がケトーシスの確立に成功すると、食事の際、脂肪に対する炭水化物及びタンパク質の比率を厳格に維持する必要があるので、ケトーシスを維持することは、それほど困難でないにしても、同様に困難である。それは更に、ケトジェニック状態に移行しその状態を維持する時によく起こる正常な電解質平衡の崩壊により複雑化される。肝臓及び筋肉におけるグリコーゲンの貯蔵の枯渇及び低下により、体が水分を保持する能力が低下し、より頻繁な排尿へとつながり、それにより電解質がより多量に消失する。更に、ケトーシスにより引き起こされるインスリン値の低下は、一定の電解質が腎臓により排出される速度に影響を及ぼし、更に体内の電解質レベルを低下させる。電解質不均衡のマイナス効果は、筋肉痛、痙攣、ひきつり及び脱力、落ち着きのなさ、不安、頻繁な頭痛、非常にのどが渇くこと、不眠症、発熱、心臓の動悸又は不整脈、消化器系の問題(急激な腹痛、便秘又は下痢など)、混乱及び集中することの困難、骨障害、関節痛、血圧の変化、食欲又は体重の変化、疲労(慢性疲労症候群を含む)、関節のしびれ、及び眩暈(特に急に起立したとき)を含む。
【0009】
哺乳類においてケトーシスを促進するのに使用されるいくつかの組成物には、ベータ-ヒドロキシブチレート(RS-ベータ-ヒドロキシブチレート又はDL-ベータ-ヒドロキシブチレート)のラセミ混合物が含まれる。米国特許出願公開第2017/0296501号(特許文献1)で開示されたLoweryらによるものなどの他の組成物は、ベータ-ヒドロキシブチレート又はR-ベータ-ヒドロキシブチレートの内因性形態のみを含み、非内因性エナンチオマー又はS-ベータ-ヒドロキシブチレートはどれも含まない。米国特許出願公開第2017/0296501(特許文献1)で開示されたClarkeらによるものなどの、その他の組成物は、単一のベータ-ヒドロキシブチレートエステル、(3R)-ヒドロキシブチル(3R)-ヒドロキシブチレートの大部分又は全部から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許出願公開第2017/0296501号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
(3R)-ヒドロキシブチル(3S)-ヒドロキシブチレート、(3S)-ヒドロキシブチル(3R)-ヒドロキシブチレート、及び(3S)-ヒドロキシブチル(3S)-ヒドロキシブチレートなどの他のエナンチオマーの大部分又は全部が除外される。ベータ-ヒドロキシブチレートの内因性形態ではないエナンチオマーの除外は、S-ベータ-ヒドロキシブチレート(別名(3S)-ヒドロキシブチレート)が無効で有害でさえあるという見解に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(概要)
対象においてケトン体レベルを増加させる、ケトジェニック組成物及び方法(対象においてケトーシスを促進する及び/又は維持することを含む)がここに開示される。例となる組成物には、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物が挙げられ、ここでR-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物は、エナンチオマー相当量(enantiometric equivalents)で55%~98%のR-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマー及びエナンチオマー相当量で45%~2%のS-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを含有する。
【0013】
ラセミ混合物と比べてより大きい及び/又はより速いケトジェニック効果を提供するために、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物は、S-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーより多く、哺乳類により産生される内因性形態であるR-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを含有する。R-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーは、ケトーシス中に哺乳類により内因的に産生されるので、R-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを対象に投与することにより、エネルギーを生成する(例えばグルコースの代替エネルギー源として)ためなど、身体で即座に利用可能な追加数量及び/又は血漿レベルの増加がもたらされる。
【0014】
意図的にS-ベータ-ヒドロキシブチレートを最小限に抑える又は取り除く組成物とは対照的に、非ラセミ混合物は、本明細書で述べる哺乳類における1つ以上の所望の効果を生み出すために、哺乳類により内因的に産生されないS-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーをかなりの量で含有する。
【0015】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される組成物は、対象においてケトン体レベルを増加させる方法(対象においてケトーシスを促進する及び/又は維持することを含む)において使用されてもよく、この方法は、栄養学的に又は医薬的に有効な量の本明細書で開示される1つ以上の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。対象においてケトン体レベルが増加することの有益な効果の例としては、食欲抑制、減量、脂肪消失、血中グルコースレベルの減少、精神的敏しょう性の改善、身体的エネルギーの増加、認知機能の改善、外傷性脳損傷の減少、糖尿病の影響の減少、神経学的障害の改善、癌の減少、炎症の減少、老化防止、抗糖化、てんかん性発作の減少、気分の改善、体力の増強、筋肉量の増加、又は身体組成の改善のうちの1つ以上が含まれる。
【0016】
いくつかの実施形態において、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物を、本明細書に記載のエナンチオマー比率又は割合での投与は、R-ベータ-ヒドロキシブチレート及びアセトアセテートの内因性産生の増加、S-ベータ-ヒドロキシブチレートからR-ベータ-ヒドロキシブチレート及びアセトアセテートのうちの1つ又は両方への内因性変換、S-ベータ-ヒドロキシブチレートから脂肪酸及びステロールへの内因性変換、ケトーシスの延長、R-ベータ-ヒドロキシブチレート及び/又はアセトアセテートへの変換とは独立したS-ベータ-ヒドロキシブチレートの代謝、胎児発達の増加、成長年(growth years)の増加、ケトーシス中のアセトンの内因性産生の減少、R-ベータ-ヒドロキシブチレート及びグルコースの代謝を調節するS-ベータ-ヒドロキシブチレートによるシグナル伝達、抗酸化活性、及びアセチルCoAの産生、の1つ以上を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態において、非ラセミ混合物は、粉末、結晶性材料、又は圧縮錠などの固体である。いくつかの実施形態において、当該組成物は、液体、ジェル、又は固体などの担体を含んでもよい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
更なる特徴及び利益を以下の記載における一部で説明し、一部は記載により明らかになるか、又は本明細書で開示される実施形態の実行により習得できるかもしれない。前述の短い概要及び以下の詳細な説明の両方は、具体例であって、例示だけを目的としており、本明細書に記載されている実施形態又は特許請求を限定するものではないことが理解されるべきである。
【0019】
(詳細な説明)
I.定義
本明細書で使用する「ベータ-ヒドロキシブチレート」は、β-ヒドロキシブチレート、βHB又はBHBとしても知られ、一般式CH
3CH
2OHCH
2COOH及び以下の化学構造を有する化合物を意味する。
【化1】
(式中、Xは、水素、金属イオン、アミノ酸からなどのアミノカチオン、アルカニル、アルケニル又はアリールであってもよい)
【0020】
ベータ-ヒドロキシブチレートがR-又はS-エナンチオマーであるかは、平面カルボキシル基との関係における3-炭素(ベータ-炭素)上のヒドロキシル(又はエステルの場合、オキシ基)の四面体配向性による。
【0021】
内因性形態であるベータ-ヒドロキシブチレート(通常、R-ベータ-ヒドロキシブチレート)は、対象において低グルコースレベルの間、又は患者の体が使用可能な形態のベータ-ヒドロキシブチレートの補給を受ける場合、燃料源として患者の体によって利用される可能性がある。ベータ-ヒドロキシブチレートは一般的に、「ケトン体」と呼ばれる。
【0022】
本明細書で使用される「ケトジェニック組成物」は、ケトジェニック組成物が投与された対象において、ケトーシスなど、所望のレベルでケトン体が上昇している状態を誘発する及び/又は維持することを含む、対象においてケトン体レベルを上昇させるために製剤化される。
【0023】
本明細書で使用される「対象」又は「患者」は、これらに限定されないが、ヒト及び他の霊長類、げっ歯類、魚類、爬虫類、及び鳥類などの哺乳類を含む動物界のメンバーを指す。対象は、治療、処置、若しくは予防が必要な任意の動物、又は治療、処置、若しくは予防が必要と疑われる任意の動物であってもよい。予防は、高グルコース又は糖尿病が認められる場合などに起こるもしれない事象を防ぐために統制をとることを意味する。「患者」及び「対象」は、本明細書では互いに互換可能に使用される。
【0024】
本明細書で使用される「ケトーシス」は、対象において約0.5mmol/L~約16mmol/Lの範囲内の血中ケトンレベルを有する対象を指す。ケトーシスは、ミトコンドリア機能を改善し、活性酸素種の産生を減少させ、炎症を減らし、神経栄養因子の活性を増加させ得る。本明細書で使用される「ケト適応」は、維持された非病理性の「穏やかなケトーシス」又は「治療的ケトーシス」を得るために栄養学的ケトーシスを延長させる(>1週間)ことを指す。
【0025】
いくつかの場合、「上昇したケトン体レベル」は、対象が「臨床的ケトーシス」の状態にあることを意味しないかもしれないが、それにもかかわらずエネルギーの生成及び/又はケトン体の他の有益な作用を及ぼすためのケトンの供給の上昇を意味する。例えば、「ケト適応」された対象は、必ずしもケトン体血清レベルが上昇していないかもしれないが、「ケト適応」されていない対象と比較して、より急速に、利用可能なケトン体をむしろ利用できる。このような場合、「上昇したケトン体レベル」は、血漿レベル自体よりもむしろ、対象により利用されるケトン体の総量及び/又は割合を指してもよい。
【0026】
用語「中鎖トリグリセリド(MCT)」は、3つの中鎖脂肪酸が付いたグリセロール骨格を有する分子を指す。中鎖脂肪酸は、長さで6~12個の炭素原子の範囲であることができ、長さで8~10個の炭素原子の範囲であることができることが多い。脂肪酸の例は、オクタン酸としても知られる、8個の炭素分子を有するカプリル酸、及び、デカン酸としても知られる、10個の炭素分子を有するカプリン酸である。MCT、中鎖脂肪酸、並びにモノ及びジグリセリドは、ベータ-ヒドロキシブチレートとは無関係にケトン体の産生用の追加源を提供できるケトン体前駆体である。
【0027】
本明細書で使用される用語「投与」又は「投与する」は、開示された組成物を対象に送達する過程を示す。当該組成物を、数ある中で経口、胃内、及び非経口(静脈内及び動脈内、並びに他の適切な非経口経路を指す)を含む様々な方法で投与してもよい。
【0028】
II.非ラセミベータ-ヒドロキシブチレート組成物
ケトーシスを促進する及び/又は維持することを含む、対象におけるケトン体レベルを上昇させるための組成物は、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物を含有し、ここで非ラセミ混合物は、エナンチオマー相当量で55%~98%のR-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマー及びエナンチオマー相当量で45%~2%のS-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを含有する。
【0029】
いくつかの実施形態において、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物は、エナンチオマー相当量で55%~95%、55%~89%、57%~87%、又は60%~80%のR-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマー及びエナンチオマー相当量で45%~5%、45%~11%、43%~13%、41%~15%又は40%~20%のS-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを含有する。
【0030】
ラセミ混合物と比べてより大きい及び/又はより速いケトジェニック効果を提供するために、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物は、S-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーより多く、哺乳類により生成される内因性形態であるR-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを含有する。R-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーは、ケトーシス中に哺乳類により内因的に産生されるので、R-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを対象に投与することにより、エネルギーを生成する(例えば、グルコースに対する代替エネルギー源として)ためなど、体により即座に利用できる追加数量及び/又は血漿レベルの上昇がもたらされる。S‐エナンチオマーの存在により、この効果を調節及び拡張できる。
【0031】
S-ベータ-ヒドロキシブチレートを意図的に最小化する又は除去する組成物に反して、当該非ラセミ混合物は、哺乳類において1つ以上の所望の効果を生み出すために、哺乳類により内因的に産生されない有意量のS-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを含有する。例えば、R-ベータ-ヒドロキシブチレートと共にS-ベータ-ヒドロキシブチレートの投与は、(1)R-ベータ-ヒドロキシブチレート及びアセトアセテートの内因性産生の増加、(2)R-ベータ-ヒドロキシブチレート及びアセトアセテートの一つ又は両方へのS-ベータ-ヒドロキシブチレートの内因性変換、(3)脂肪酸及びステロールへのS-ベータ-ヒドロキシブチレートの内因性変換、(4)ケトーシスの延長、(5)R-ベータ-ヒドロキシブチレート及び/又はアセトアセテートへの変換とは無関係なS-ベータ-ヒドロキシブチレートの代謝、(6)胎児発達の増加、(7)成長年の増加、(8)ケトーシス中のアセトンの内因性産生の減少、(9)R-ベータ-ヒドロキシブチレート及びグルコースの代謝を調節するS-ベータ-ヒドロキシブチレートによるシグナル伝達、(10)抗酸化活性、及び(11)アセチルCoAの産生、のうち1つ以上の結果がもたらされる可能性がある。
【0032】
R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物を、これらに限定されないが、例えば、食欲抑制、減量、脂肪消失、血中グルコース値の減少、精神的敏しょう性の改善、身体的エネルギーの増加、認知機能の改善、外傷性脳損傷の減少、糖尿病の影響の減少、神経学的障害の改善、癌の減少、炎症の減少、老化防止、抗糖化、てんかん性発作の減少、気分の改善、体力の増強、筋肉量の増加、又は身体組成の改善を含む、対象における1つ以上の所望の効果を生み出すために使用することができる。
【0033】
いくつかの実施形態において、当該組成物は、担体を含んでもよい。
【0034】
R-ベータ-ヒドロキシブチレート及びS-ベータ-ヒドロキシブチレートは、塩及びエステルなどの様々な形態で提供されてもよい。R-ベータ-ヒドロキシブチレート及びS-ベータ-ヒドロキシブチレートそれぞれのエナンチオマー相当量の割合は、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの両方の総モル量で割ったR-ベータ-ヒドロキシブチレート又はS-ベータ-ヒドロキシブチレートのいずれかのモル量により定義される。塩を形成するいずれかのカチオン及び/又はエステルを形成するアルコールの量は除外し、R-ベータ-ヒドロキシブチレート及びS-ベータ-ヒドロキシブチレートのそれぞれのエナンチオマー相当量の割合を決定するのに計算に入れない。
【0035】
R-ベータ-ヒドロキシブチレートと、R-ベータ-ヒドロキシブチレートに容易に変換する大量の前駆体、すなわちR-1,3-ブタンジオールとR-ベータ-ヒドロキシブチレートとのモノエステル(例えば、(3R)-ヒドロキシブチル(3R)-ヒドロキシブチレートモノエステル)、とを有する化合物を過剰に含有しないように、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物は、エナンチオマー相当量で88%、又は87%、又は86%、又は85%を超える(3R)-ヒドロキシブチル(3R)-ヒドロキシブチレートモノエステルを含有してはならない。
【0036】
いくつかの実施形態において、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物は、食物的に(dietetically)又は医薬的に許容できる担体を含む組成物において提供される。例としては、粉末、液体、錠剤、カプセル、食品、食品添加物、飲料、飲料添加物、キャンディー、棒付きキャンディー、トローチ、栄養補助食品、スプレー、注射剤、及び座薬が挙げられる。
【0037】
いくつかの実施形態において、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アミノ酸、又はアミノ酸の代謝物のうちの1つ以上の塩などの塩として提供されてもよい。例としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、鉄塩(鉄(II)及び/又は鉄(III)として)、クロム塩、マンガン塩、コバルト塩、銅塩、モリブデン塩、セレニウム塩、アルギニン塩、リジン塩、ロイシン塩、イソロイシン塩、ヒスチジン塩、オルニチン塩、シトルリン塩、グルタミン塩及びクレアチン塩が挙げられる。
【0038】
いくつかの実施形態において、S-ベータ-ヒドロキシブチレートとR-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物は、モノ、ジ、トリ、オリゴ、及びポリエステルなどの1つ以上のエステルとして提供されてもよい。例としては、エタノールのモノエステル、1-プロパノールのモノエステル、1,2-プロパンジオールのモノエステル、1,2-プロパンジオールのジエステル、1,3-プロパンジオールのモノエステル、1,3-プロパンジオールのジエステル、S-、R-又はS-R-1,3-ブタンジオールのモノエステル、S-、R-又はS-R-1,3-ブタンジオールのジエステル、グリセリンのモノエステル、(3S)-ヒドロキシブチル(3S)-ヒドロキシブチレートモノエステル、(3R)-ヒドロキシブチル(3S)-ヒドロキシブチレートモノエステル、グリセリンのジエステル、グリセリンのトリエステル、アセトアセテートのエステル、ベータ-ヒドロキシブチレートの繰り返し単位を有する二量体、三量体、オリゴマー、及び、ポリエステル、並びに、ベータ-ヒドロキシブチレートと1つ以上の乳酸、クエン酸、アセト酢酸、キナ酸、シキミ酸、サリチル酸、酒石酸、及びリンゴ酸などの他のヒドロキシカルボン酸との、及び/又は、ベータ-ヒドロキシブチレートと(and or)1つ以上の1,3-プロパンジオール及び1,3-ブタンジオールなどのジオール、及び、1つ以上の酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、及びフマル酸などのポリ酸との、複雑なオリゴマー又はポリマーが挙げられる。(3R)-ヒドロキシブチル(3S)-ヒドロキシブチレートモノエステルが含まれ得る一方、それは組成物のエナンチオマー相当量で88%、又は87%、又は86%、又は85%を超えてはならない。
【0039】
いくつかの実施形態において、当該組成物は更に、少なくとも1つの中鎖脂肪酸、又は少なくとも1つの中鎖脂肪酸のモノ、ジ若しくはトリグリセリドを含んでもよく、ここで中鎖脂肪酸は、6~12個、好ましくは8~10個の炭素を有する。これより好ましくないが、当該組成物は、6個未満の炭素を有する少なくとも1つの短鎖脂肪酸又は少なくとも1つの短鎖脂肪酸のモノ、ジ若しくはトリグリセリド及び/又は12個を超える炭素を有する少なくとも1つの長鎖脂肪酸又は少なくとも1つの長鎖脂肪酸のモノ、ジ若しくはトリグリセリドを含んでもよい。
【0040】
中鎖脂肪酸、又は中鎖トリグリセリドなどのそのエステルの例及び源としては、ココナッツ油、ココナッツミルクパウダー、ヤシ油、パーム油、パーム核油、カプリル酸、カプリン酸、単離ヘキサン酸、単離オクタン酸、単離デカン酸などの単離中鎖脂肪酸、精製された又は天然の形態(ココナッツオイルなど)におけるいずれかの中鎖トリグリセリド、及び中鎖脂肪酸エトキシル化トリグリセリドのエステル誘導体、エノントリグリセリド誘導体、アルデヒドトリグリセリド誘導体、モノグリセリド誘導体、ジグリセリド誘導体、及びトリグリセリド誘導体、並びに中鎖トリグリセリドの塩を含む。エステル誘導体は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシルなどのアルキルエステル誘導体を任意に含む。
【0041】
R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物の投与は、ケトン体の血中レベルの上昇及び維持を結果としてもたらし、それにより維持されたケトーシスの代謝的及び生理的利益を活用する。血中のケトン体レベルを上昇させることにより、食事のみに基づきケトーシスを誘導及び維持することを目標とする方法(例えば、絶食及び/又は炭水化物の摂取を制限する)と比較して、対象がより柔軟に食事を選択できるようになる。例えば、適切な量のR-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物が投与された対象は、ケトジェニック状態を危うくすることなく及びグルコースに基づく代謝状態に戻ることなく、炭水化物又は糖に基づく食物を時々摂取することができる。更に、このような投与は、ケトーシスに入ることに通常関連する有害作用を低減させるか又は排除しながら、ケトジェニック状態に容易に移行することを促進する。
【0042】
いくつかの実施形態において、ケトジェニック組成物は、治療有効量のビタミンD3を更に含有する。ビタミンD3は、マグネシウム及びカルシウムと共に作用して骨の健康を促進し軟骨の望ましくない石灰化を防止すると考えられている。好ましい実施形態において、ケトジェニック組成物の平均一日量が、ビタミンD3を例えば約200IU(「国際単位」)~約8000IU、又は約400IU~約4000IU、又は約600IU~約3000IU含むような量で、ビタミンD3は含有される。いくつかの実施形態において、ケトジェニック組成物の平均一日量がビタミンD3を例えば約5μg~約200μg、又は約10μg~約100μg、又は約15μg~約75μg含むような量で、ビタミンD3は含有される。
【0043】
いくつかの実施形態はまた、1つ以上の追加のケトン前駆体又は補助製品を含む。これらの追加のケトン前駆体又は補助製品は、アセトアセテート、ケトンエステル、及び/又は、もっと多くの電解質を血流中に加えることなく血中ケトンレベルの上昇を引き起こす他の化合物を含んでもよい。その他の添加物は、効果を高めるか又はミトコンドリアへのケトン体の輸送を促進する代謝産物、カフェイン、テオブロミン、及び、L-アルファグリセリルホスホリルコリン(「アルファGPC」)などの向知性薬を含む。
【0044】
当該組成物は、ベータ-ヒドロキシブチレート化合物の悪い食味を隠すのに役立つ香味料を含んでもよい。これらには、ペパーミントなどの精油、天然及び人工の甘味料、並びに当該技術で公知の他の香味料が含まれる。
【0045】
いくつかの実施形態において、ケトジェニック組成物は更に、組成物の吸湿性を低下させるように構成された1つ以上の追加の成分を含有してもよい。例えば、種々の固化防止剤、流動剤、及び/又は吸湿剤が、摂取するのに安全なタイプ及び量で含有されてもよい。このような追加の成分には、アルミノケイ酸塩、フェロシアン化物、炭酸塩又は重炭酸塩、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸ナトリウム又はケイ酸カルシウム)、リン酸塩(例えば、リン酸三カルシウム)、滑石、粉末セルロースなどの1つ以上が含まれてもよい。
【0046】
III.投与
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される組成物は、ケトーシスを促進する及び/又は維持することを含む、対象におけるケトン体レベルを増加させる方法において使用されてもよく、この方法は、栄養学的に又は医薬的に有効な量の本明細書で開示される1つ以上の組成物を、投与を必要とする対象に投与することを含む。対象におけるケトン体レベルを増加させること(ケトーシスを促進する及び/又は維持することを含む)の有益な効果の例としては、食欲抑制、減量、脂肪消失、血中グルコースレベルの減少、精神的敏しょう性の改善、身体的エネルギーの増加、認知機能の改善、外傷性脳損傷の減少、糖尿病の影響の減少、神経学的障害の改善、癌の減少、炎症の減少、老化防止、抗糖化、てんかん性発作の減少、気分の改善、体力の増強、筋肉量の増加、又は身体組成の改善のうちの1つ以上が挙げられる。
【0047】
いくつかの実施形態において、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物を、本明細書に記載のエナンチオマー比率又は割合での投与は、R-ベータ-ヒドロキシブチレート及びアセトアセテートの内因性産生の増加、S-ベータ-ヒドロキシブチレートからR-ベータ-ヒドロキシブチレート及びアセトアセテートのうちの1つ又は両方への内因性変換、S-ベータ-ヒドロキシブチレートから脂肪酸及びステロールへの内因性変換、ケトーシスの延長、R-ベータ-ヒドロキシブチレート及び/又はアセトアセテートへの変換とは独立したS-ベータ-ヒドロキシブチレートの代謝、胎児発達の増加、成長年の増加、ケトーシス中のアセトンの内因性産生の減少、R-ベータ-ヒドロキシブチレート及びグルコースの代謝を調節するS-ベータ-ヒドロキシブチレートによるシグナル伝達、抗酸化活性、及びアセチルCoAの産生、の1つ以上をもたらす。
【0048】
本明細書に記載されるケトジェニック組成物は、治療的に有効な投与量で、及び/又はケトーシスを誘導若しくは維持する頻度で、対象に投与されてもよい。いくつかの実施形態において、一回量は、約0.5グラム~約25グラム、又は約0.75グラム~約20グラム、又は約1グラム~約15グラム、又は約1.5グラム~約12グラムの範囲にある量のR-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物を含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、ケトジェニック組成物は、ビタミンD3、ビタミン類、ミネラル及び当該技術で公知のその他の栄養補助食品などの他の栄養補助食品を含んでもよい又は共に投与されてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態において、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物それ自体だけを使用する場合と比べて長期間ケトーシスを維持するために本明細書で述べたケトン体の追加源を提供する目的で、当該組成物は更に、1つ以上の中鎖脂肪酸、脂肪酸エステル、又は中鎖脂肪酸のモノ、ジ若しくはトリグリセリドを含んでもよい。いくつかの実施形態において、中鎖脂肪酸(又はそのエステル)に対するR-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物の比率が、約4:1~約1:4、又は約2:1~約1:2、又は約1.5:1~約1:1.5の範囲になるように、当該組成物は、好ましくは投与される。中鎖脂肪酸、脂肪酸エステル及びそのグリセリドに加えて又はその代わりに、これらより好ましくないが、短鎖脂肪酸、エステル及びそのグリセリドが、使用することができる。
【0051】
いくつかの実施形態において、対象は、当該組成物の投与期間中に炭水化物及びタンパク質の摂取を制限するケトジェニックダイエットに好ましくは従う。1つの例示的実施形態において、対象は、食事の摂取を約65%の脂肪、約25%のタンパク質、及び約10%の炭水化物の比率に制限してもよい。結果として得られる治療的ケトーシスは、広範囲な代謝異常に対する代謝治療としての急速で持続的なケト適応を提供し、治療的絶食、減量、及びパフォーマンス強化のための栄養サポートを提供する。これを踏まえ、当該組成物は通常、ケトーシス状態を促進及び/又は維持したいと望む対象に1日1回、1日2回、又は1日3回投与される。
【0052】
好ましい実施形態において、ケトジェニック組成物は、固体及び/又は粉末混合物(例えば、粉末充填ゼラチンカプセル)などの粉末形状、強くプレスされた錠剤、又は当該技術で公知の他の経口投与経路で経口投与されてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態において、当該組成物の複数回用量は、ある期間にわたって投与される。当該組成物の投与頻度は、前処置からの処置のタイミング、処置の目的などのいずれかの様々な要因によって変わる可能性がある。当該組成物の投与期間(例えば、薬物が投与される期間)は、対象の反応、処置の所望の効果などを含むいずれかの様々な要因によって変わる可能性がある。
【0054】
投与される組成物の量は、個体の感受性の程度、年齢、性別、及び個体の体重、個体の特異体質反応などの要因によって変わる可能性がある。「治療有効量」は、生体内で治療的に有効な結果(すなわち、治療的ケトーシス)を促進するのに必要な量である。本開示に従えば、適切な一回量のサイズは、適切な期間にわたって1回以上投与される場合の患者における症状を防止する又は緩和する(低減又は排除する)ことができる用量である。
【0055】
投与する組成物の量は、未使用のケトン体の効能、吸収、分布、代謝、及び排泄率、電解質、投与方法、処置されている特定の障害、並びに、当業者に公知のその他の要因によって決まる。緩和させる状態の重症度を考慮に入れ、用量は、特定の障害又は状態に対する治療反応又は予防反応などの所望の反応に影響を及ぼすのに十分であるものとする。当該化合物は、1回投与されるか、又は分割し時間をかけて投与されてもよい。投与は、個々の必要性、及び当該組成物の投与を投与する又は当該組成物の投与を監督する人の専門的な判断に従って調整され得ることが理解されるべきである。
【実施例】
【0056】
IV.実施例
以下に、例となるR-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレート組成物との非ラセミ混合物、及び、それを投与される対象におけるケトジェニック状態を誘導及び/又は維持することを含む、対象におけるケトンレベルを上昇させるのに有用な他のケトジェニック組成物が記載される。実施例で記載されるベータ-ヒドロキシブチレート化合物は、本明細書で述べる塩、エステル、二量体、三量体、オリゴマー及びポリマーの形態であってもよいことが認識されるべきである。実施例の観点から重要なことは、R-ベータ-ヒドロキシブチレート及びS-ベータ-ヒドロキシブチレートのエナンチオマー割合又は比率である。いくつかの場合において、当該組成物は、所望の電解質平衡及び/又はケトーシスの調節を提供する塩及びエステルの混合物であってもよい。当該組成物はまた、上昇したケトン体の所望のレベル及び他の作用を提供するために本明細書で開示された中鎖脂肪酸、エステル、グリセリド及び他の栄養補助食品と混ぜ合わされてもよい。
【0057】
実施例1
1つ以上のR-ベータ-ヒドロキシブチレート化合物と、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとのラセミ混合物とを混ぜることによって、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物を調製し、エナンチオマー相当量で55%のR-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマー及びエナンチオマー相当量で45%のS-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを提供する。この非ラセミ混合物は、R-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーをより多く含有するので、所定の投与量で、ラセミ混合物の同投与量と比べてケトーシスの発生が早まる。一方、S-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを含有することにより、より長期のケトーシス状態及び/又は本明細書で開示される他の利益がもたらされる。
【0058】
当該非ラセミ混合物は、食品又は飲料と混ぜられる栄養補助食品として粉体形状で、1つ以上のカプセル若しくは錠剤の形状で、又はマウススプレーなどの液体形状などで、ケトジェニック組成物として容易に投与される。
【0059】
実施例2
1つ以上のR-ベータ-ヒドロキシブチレート化合物と、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとのラセミ混合物とを混ぜることによって、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物を調製し、エナンチオマー相当量で57%のR-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマー及びエナンチオマー相当量で43%のS-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを提供する。この非ラセミ混合物は、R-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーをより多く含有するので、所定の投与量で、ラセミ混合物又は実施例1の非ラセミ混合物の同投与量と比べてケトーシスの発生が早まる。一方、S-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを含有することにより、エナンチオマー相当量で90~100%のR-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを含有する組成物と比べて、より長期のケトーシス状態及び/又は本明細書で開示される他の利益がもたらされる。
【0060】
実施例3
1つ以上のR-ベータ-ヒドロキシブチレート化合物と、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとのラセミ混合物とを混ぜることによって、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物を調製し、エナンチオマー相当量で59%のR-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマー及びエナンチオマー相当量で41%のS-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを提供する。この非ラセミ混合物は、R-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーをより多く含有するので、所定の投与量で、ラセミ混合物又は実施例1及び実施例2の非ラセミ混合物の同投与量と比べてケトーシスの発生が早まる。一方、S-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを含有することにより、エナンチオマー相当量で90~100%のR-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを含有する組成物と比べて、より長期のケトーシス状態及び/又は本明細書で開示される他の利益がもたらされる。
【0061】
実施例4
1つ以上のR-ベータ-ヒドロキシブチレート化合物と、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとのラセミ混合物とを混ぜることによって、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物を調製し、エナンチオマー相当量で65%のR-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマー及びエナンチオマー相当量で35%のS-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを提供する。この非ラセミ混合物は、R-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーをより多く含有するので、所定の投与量で、ラセミ混合物又は実施例1~実施例3の非ラセミ混合物の同投与量と比べてケトーシスの発生が早まる。一方、S-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを含有することにより、エナンチオマー相当量で90~100%のR-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを含有する組成物と比べて、より長期のケトーシス状態及び/又は本明細書で開示される他の利益がもたらされる。
【0062】
実施例5
1つ以上のR-ベータ-ヒドロキシブチレート化合物と、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとのラセミ混合物とを混ぜることによって、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物を調製し、エナンチオマー相当量で70%のR-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマー及びエナンチオマー相当量で30%のS-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを提供する。この非ラセミ混合物は、R-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーをより多く含有するので、所定の投与量で、ラセミ混合物又は実施例1~実施例4の非ラセミ混合物の同投与量と比べてケトーシスの発生が早まる。一方、S-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを含有することにより、エナンチオマー相当量で90~100%のR-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを含有する組成物と比べて、より長期のケトーシス状態及び/又は本明細書で開示される他の利益がもたらされる。
【0063】
実施例6
1つ以上のR-ベータ-ヒドロキシブチレート化合物と、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとのラセミ混合物とを混ぜることによって、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物を調製し、エナンチオマー相当量で75%のR-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマー及びエナンチオマー相当量で25%のS-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを提供する。この非ラセミ混合物は、R-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーをより多く含有するので、所定の投与量で、ラセミ混合物又は実施例1~実施例5の非ラセミ混合物の同投与量と比べてケトーシスの発生が早まる。一方、S-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを含有することにより、エナンチオマー相当量で90~100%のR-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを含有する組成物と比べて、より長期のケトーシス状態及び/又は本明細書で開示される他の利益がもたらされる。
【0064】
実施例7
1つ以上のR-ベータ-ヒドロキシブチレート化合物と、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとのラセミ混合物とを混ぜることによって、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物を調製し、エナンチオマー相当量で80%のR-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマー及びエナンチオマー相当量で20%のS-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを提供する。この非ラセミ混合物は、R-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーをより多く含有するので、所定の投与量で、ラセミ混合物又は実施例1~実施例6の非ラセミ混合物の同投与量と比べてケトーシスの発生が早まる。一方、S-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを含有することにより、エナンチオマー相当量で90~100%のR-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを含有する組成物と比べて、より長期のケトーシス状態及び/又は本明細書で開示される他の利益がもたらされる。
【0065】
実施例8
1つ以上のR-ベータ-ヒドロキシブチレート化合物と、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとのラセミ混合物とを混ぜることによって、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物を調製し、エナンチオマー相当量で85%のR-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマー及びエナンチオマー相当量で15%のS-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを提供する。この非ラセミ混合物は、R-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーをより多く含有するので、所定の投与量で、ラセミ混合物又は実施例1~実施例7の非ラセミ混合物の同投与量と比べてケトーシスの発生が早まる。一方、S-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを含有することにより、エナンチオマー相当量で90~100%のR-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを含有する組成物と比べて、より長期のケトーシス状態及び/又は本明細書で開示される他の利益がもたらされる。
【0066】
実施例9
1つ以上のR-ベータ-ヒドロキシブチレート化合物と、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとのラセミ混合物とを混ぜることによって、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物を調製し、エナンチオマー相当量で89%のR-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマー及びエナンチオマー相当量で11%のS-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを提供する。この非ラセミ混合物は、R-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーをより多く含有するので、所定の投与量で、ラセミ混合物又は実施例1~実施例8の非ラセミ混合物の同投与量と比べてケトーシスの発生が早まる。一方、S-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを含有することにより、エナンチオマー相当量で90~100%のR-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを含有する組成物と比べて、より長期のケトーシス状態及び/又は本明細書で開示される他の利益がもたらされる。
【0067】
実施例10
1つ以上のR-ベータ-ヒドロキシブチレート化合物と、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレート組成物とのラセミ混合物とを混ぜることによって、R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物を調製し、非ラセミ混合物がエナンチオマー相当量で88%、又は87%、又は86%、又は85%を超える(3R)-ヒドロキシブチル(3R)-ヒドロキシブチレートモノエステル(すなわち、R-1,3-ブタンジオールとR-ベータ-ヒドロキシブチレートとのモノエステル)を含有しないことを条件に、エナンチオマー相当量で90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、又は98%のR-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマー及びエナンチオマー相当量で10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、又は2%のS-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーを提供する。この非ラセミ混合物は、R-ベータ-ヒドロキシブチレートエナンチオマーをより多く含有するので、所定の投与量で、ラセミ混合物又は実施例1~実施例9の非ラセミ混合物の同投与量と比べてケトーシスの発生が早まる。
【0068】
実施例11
R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物を、食物的に又は医薬的に許容できる担体と併用することにより、前述の実施例のいずれかは、変更される。
【0069】
実施例12
R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物を1つ以上の中鎖トリグリセリド及び/又は1つ以上の中鎖脂肪酸及び/又は1つ以上のモノ若しくはジグリセリド中鎖脂肪酸と混ぜ合わせることにより、前述の実施例のいずれかは、変更される。
【0070】
実施例13
R-ベータ-ヒドロキシブチレートとS-ベータ-ヒドロキシブチレートとの非ラセミ混合物をビタミンD3、ビタミン類、ミネラル及び当該技術で公知のその他の栄養補助食品などの1つ以上の栄養補助食品と混ぜ合わせることにより、前述の実施例のいずれかは、変更される。
【0071】
本発明は、その精神又は本質的特徴から逸脱することなく他の具体的な形態により具体化され得る。記載された実施形態は、全ての態様において例示のみ行い、限定されないとされるべきである。従って、本発明の範囲は、前述の記載よりむしろ添付の特許請求の範囲により指し示される。特許請求の範囲の均等の意味及び範囲に入る全ての変更は、それらの範囲内に包含されるべきである。