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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】レナリドミドを含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/454 20060101AFI20241111BHJP
   A61K 9/36 20060101ALI20241111BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20241111BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241111BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
A61K31/454
A61K9/36
A61K47/12
A61K47/26
A61P35/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020556277
(86)(22)【出願日】2019-04-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 KR2019004474
(87)【国際公開番号】W WO2019199134
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-11-18
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-04
(31)【優先権主張番号】10-2018-0043594
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521274533
【氏名又は名称】サムヤン ホールディングス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】SAMYANG HOLDINGS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】31,Jong-ro 33-gil,Jongno-gu,Seoul,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク,サンヨブ
(72)【発明者】
【氏名】リム,ヘジョン
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ミンヒョ
(72)【発明者】
【氏名】リ,サウォン
【合議体】
【審判長】原田 隆興
【審判官】田中 耕一郎
【審判官】岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106309403(CN,A)
【文献】特開平8-245389(JP,A)
【文献】特表2018-503672(JP,A)
【文献】国際公開第2006/126681(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/454
CAPLUS/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レナリドミドを含む経口投与用固形製剤であって、
レナリドミド、希釈剤、崩壊剤及び潤滑剤を含む素錠と、前記素錠の表面にコーティングを有し、
前記レナリドミドのD10が1.5μm~3.5μmであり、D50が10μm~30μmであり、D90が35μm~75μmであり、D[4,3]が10μm30μmであり、
前記レナリドミド1重量部に対して、前記希釈剤の含量が4~20重量部であり、前記崩壊剤の含量が0.2~1重量部であり、前記潤滑剤の含量が0.1~0.35重量部であり、
前記希釈剤が、無水ラクトース及び微結晶セルロースの混合物であり、
前記崩壊剤が、クロスカルメロースナトリウムであり、
前記潤滑剤が、ステアリン酸マグネシウムであり、
前記コーティングに含まれるコーティング基剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びその塩、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、マクロゴールポリビニルアルコールグラフト共重合体、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれるものであり、
前記コーティング基剤は、素錠100重量部に対して、4~15重量部で使用される、経口投与用固形製剤。
【請求項2】
レナリドミドを含む経口投与用固形製剤を製造するための方法であって、
レナリドミド、希釈剤、崩壊剤及び潤滑剤を含む混合物を打錠して素錠を製造し、前記素錠をコーティング基剤でコーティングする工程を含み、
前記レナリドミドのD10が1.5μm~3.5μmであり、D50が10μm~30μmであり、D90が35μm~75μmであり、D[4,3]が10μm30μmであり、
前記レナリドミド1重量部に対して、前記希釈剤の含量が4~20重量部であり、前記崩壊剤の含量が0.2~1重量部であり、前記潤滑剤の含量が0.1~0.35重量部であり、
前記希釈剤が、無水ラクトース及び微結晶セルロースの混合物であり、
前記崩壊剤が、クロスカルメロースナトリウムであり、
前記潤滑剤が、ステアリン酸マグネシウムであり、
前記コーティング基剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びその塩、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、マクロゴールポリビニルアルコールグラフト共重合体、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれるものであり、
前記コーティング基剤は、素錠100重量部に対して、4~15重量部で使用される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レナリドミドの製剤に関するものである。具体的に、レナリドミドの経口投与用固形製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レナリドミド(一般式:3-(4’-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)ピペリジン-2,6-ジオン)は、特許文献1に開示された化合物であり、多発性骨髄種の治療剤として使用されている。レナリドミドは、新しい免疫調節剤群に属するIMiDs(Immunomodulatory imide drugs)化合物であり、構造はサリドマイドと類似しているが、生物学的活性度がさらに強いことから効果がより優れている。しかも、サリドマイドよりも副作用をさらに下げたと評価された。
【0003】
従来のレナリドミドは、カプセル剤として登場した。商用化された製品としては、セルジーン社のレブラミドカプセルの硬質カプセル剤があり、2.5mg、5mg、7.5mg、10mg、15mg、20mg、25mgの用量で許可された。
【0004】
レブラミドカプセルは、10mg、15mg、20mg、25mgの製剤の用量の全ての場合において0号カプセルに充填されており、長軸が約2.17cmとかなり長くて、嵩張っている。そのため、高齢の患者は服用が不便であるという短所があった。
更に、水で服用した場合でも、カプセルは嚥下中に喉や食道に張り付くことがある。
【0005】
しかし、錠剤は0号など決められたサイズのカプセルを使用する必要がないことから体積をさらに減らすことができ、カプセルよりは水と共に服用するときに首や食道にくっつく傾向が減る。
【0006】
ただ、カプセル剤は、顆粒をカプセル内に充填して製造しているため、錠剤は、カプセル剤に比べて含量均一性が劣る問題があった。
【0007】
そこで、本発明者らは、前記錠剤の利点を活用するために、薬物の含量均一性に優れ、従来のカプセル剤と溶出パターンが類似して、生物学的に薬効が同等なレナリドミドの錠剤を開発しようとした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国特許第534498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、市販の硬質カプセル剤のレナリドミド製剤の剤型を錠剤に変更し、長さが短くて、嵩高くなく、服用が容易な錠剤組成物を提供することにある。
【0010】
また、本発明の別の目的は、前記錠剤における溶出パターンがカプセル中のものと同等であり、比較溶出試験において理化学的同等性を示すだけでなく、実験動物及び生物学的同等性試験のインビボ試験においても同等性を示す錠剤組成物を提供することにある。
【0011】
したがって、本発明は、市販中のカプセル製剤と同様の薬理学的効能と効果を有しており、更に発展して、外観、及び服用容易性などが向上した錠剤組成物及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明は、レナリドミドを含む経口投与用錠剤組成物を提供する。
本発明の錠剤組成物は、D50が2μm超であるレナリドミドを打錠して製造することができる。
本発明において、レナリドミドのD[4,3]は、3~70μmであることが好ましい。
また、本発明において、レナリドミドのD90は、8~180μmであることが好ましい。
さらに、本発明において、レナリドミドのD10は、0.5~10μmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
レナリドミドは、2.5mgのように低用量の医薬品も存在し、薬物の含量均一性に非常に敏感であるが、本発明は、錠剤にしたにもかかわらず、薬物の含量均一性に優れている。
【0014】
また、本発明の一実施形態は、錠剤に実現したため、硬質カプセル剤が有する短所である嵩高いという点と、水で服用した場合でも、嚥下中に喉や食道に張り付く傾向があるという点を克服した。
【0015】
さらに、本発明は、従来市販中の硬質カプセル剤と比べたとき、生物学的同等性を備えており、本発明の一実施形態は、コーティングすることで、薬物の苦味と薬物の流出による弊害も遮断した。具体的に、本発明は、対照薬であるレブラミドカプセルと溶出結果が同等であり、これにより、生物学的同等性試験において、AUCとCmaxの値が従来のカプセル剤に比べて、80~125%以内であり、好ましくは、90~110%以内であり、最も好ましくは95~105%を満たしている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】pH1.2溶液における対照薬のRevlimid(登録商標)カプセルと実施例1の錠剤との溶出比較試験結果を示したグラフである。
図2】pH1.2溶液における対照薬のRevlimid(登録商標)カプセルと比較例1の錠剤との溶出比較試験結果を示したグラフである。
図3】pH1.2溶液における対照薬のRevlimid(登録商標)カプセルと比較例2の錠剤との溶出比較試験結果を示したグラフである。
図4】レナリドミドのD10 3μm、D50 13μm、D90 44μm、D[4,3] 19μmに対応する微粉化された原料の走査電子顕微鏡写真である。
図5】レナリドミドのD10 4μm、D50 51μm、D90 219μm、D[4,3] 84μmに対応する微粉化された原料の走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において、レナリドミドとは、有効成分がレナリドミドである主成分原料を意味する。例えば、レナリドミド又はその薬学的に許容しうる塩、異性体、結晶形、無水物、水和物、溶媒和物又はこれらの2つ以上の混合物などを含む。
【0018】
本明細書において、添加剤とは、医薬品添加物(pharmaceutical excipients)のように、公知の薬学的に添加可能な不活性成分を意味する。例えば、希釈剤、崩壊剤、潤滑剤、コーティング基剤などを意味し、これらはすべて使用可能な成分が公知されている。本明細書で別途の説明がなければ、通常の技術者が適宜採択可能な成分のいずれか一つとして理解してもよい。
【0019】
本発明は、従来市販の硬質カプセル剤を代替することができる錠剤を開発するためのものである。
【0020】
レナリドミドは、2.5mgの低用量の製剤が求められる。低用量の製剤は、薬物の少量の消失だけでも目的とする薬効を期待することができなくなる。そこで、製造過程での薬物の含量均一性が非常に重要である。
【0021】
しかし、薬物とその他薬学的添加剤を混合した後、その顆粒をカプセルに充填する過程が全部である硬質カプセル剤とは違って、錠剤は、打錠工程が伴われており、打錠から発生する熱や打錠機での工程障害により、薬物の消失可能性がある。したがって、レナリドミドは、硬質カプセル剤の製剤を市販するしかない限界があった。
【0022】
しかし、硬質カプセル剤は、定められた規格のカプセルを使用しなければならず、そのサイズが服薬便宜性を阻害するほど嵩高いものがある。また、硬質カプセル剤は、水と共に服用するとき、ゼラチンのカプセル表面に接着力が生じ、嚥下中に喉や食道に張り付くことがある。そのことから、レナリドミド錠剤を開発する必要性があった。
【0023】
本発明者らは、錠剤に開発できなかった従来の限界であった薬物の含量均一性の担保と、カプセル剤と生物学的に同等な薬効を発現するためにカプセル剤と溶出パターンが同等であることを達成するために、鋭意研究を重ねてきた。
【0024】
本発明者らは、驚くべきことに、レナリドミドの粒度を調節する場合、薬物の含量均一性を担保することができ、対照薬であるレブラミドカプセルと溶出パターンを同等に達成できる可能性があることを見出し、発明の完成に至った。
【0025】
特に、カプセル剤は、硬質カプセル剤が溶解しながらカプセル内の内容物が放出され、薬物が溶出されている。一方、錠剤は、素錠が崩壊しながら薬物が溶出されるため、溶出機序が互いに異なる。特に、硬質カプセル剤は、カプセル内の内容物が、表面積の大きな微粒子の粉からなっているため、カプセル剤のみ溶解されれば、ある程度の溶出速度が担保されるが、錠剤は、素錠が一定サイズを有し、表面積が小さいため、所望の溶出速度を担保することが容易ではない。したがって、錠剤を開発するとき、カプセル剤と薬物の溶出パターンを同等に調節することは極めて難しい。しかし、驚くべきことに、粒度調節により薬物の溶出パターンを調節可能であることを見出した。
【0026】
図4及び5に示されるように、レナリドミドは、原料そのものが様々な粒径を有している。薬物の粒度が小さいほど溶出速度が向上するという認識はあるが、これは難溶性薬物に該当する理論であり、レナリドミドは、前記環境のような酸性溶液で溶解度が悪くないため、薬物の粒子を調節しても生体利用率に影響を及ぼすほど溶出速度が克明に変更され得るという認識はなかった。したがって、薬物の溶出速度が不十分な場合、レナリドミドの粒度を調節しようとする試みは一般的に行われてこなかった。しかし、驚くべきことに、図1図3に示されるように、レナリドミドの粒子径に応じて溶出パターンが全く異なるように示された。
【0027】
本発明において、レナリドミドは、微粉化された形態で使用することができる。微粉化されたレナリドミドの粒度は、D10、D50、D90等を利用して示すことができる。その他にも、D[4,3]などを利用して平均的に示すことができる。D10は、体積分布を調べるとき、下位10%に該当する粒子の直径を意味する。D50とD90は、それぞれ50%、90%に該当する粒子の直径を意味する。D[4,3]は、体積平均直径を意味する。これは、例えば、光回折粒度測定器を利用して測定することができる。
【0028】
本発明は、D50が2μm超であるレナリドミドを採択することを特徴とする。レナリドミドを打錠により錠剤に製剤化するとき、含量の均一性と目的とする溶出パターンの確保のために、粒度が前記条件を満たす原料を使用しなければならず、従来のカプセル剤との生物学的同等性を備えることができる。また、前記範囲よりも小さいとき、打錠時に工程障害を誘発することがある。レナリドミドは、D50が2.5~50μm、より好ましくは3~40μm、さらに好ましくは5~30μm、さらに一層好ましくは7~20μm、最も好ましくは10~15μmである。
【0029】
レナリドミドは、D[4,3]が3~70μmであることが好ましい。より好ましくはD[4,3]が5~60μm、より好ましくは8~45μm、さらに好ましくは10~30、最も好ましくは15~25μmである。
【0030】
レナリドミドは、D90が8~180μmであることが好ましい。より好ましくはD90が12~140μm、より好ましくは15~100μm、さらに好ましくは25~75μm、最も好ましくは35~55μmである。
【0031】
レナリドミドは、D10が0.5~10μmであることが好ましい。より好ましくはD10が0.7~8μm、より好ましくは1~6μm、さらに好ましくは1.2~4.5μm、最も好ましくは1.5~3.5μmである。
【0032】
本発明は、D50が2.5~50μmのレナリドミドを薬学的に許容される添加剤と混合し、打錠することによって錠剤に具現することができる。
【0033】
このとき、添加剤としては、希釈剤、崩壊剤、潤滑剤を含むことができる。
【0034】
希釈剤は、糖、糖アルコール、セルロース、デンプン、無機塩及びそれらの混合物よりなる群から選ぶことができる。非制限的な例として、ラクトース(無水物又は水和物、例えば、一水和物)、セルロース粉末、微晶質セルロース、ケイ化微晶質セルロース、デンプン、糊化デンプン、炭酸カルシウム、シクロデキストリン、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、三ケイ酸マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素カルシウム二水和物、リン酸三カルシウム、カオリン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マンニトール、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、ラクトース、デキストロース、マルトース、スクロース、グルコース、フルクトース、マルトデキストリン、デキストレート、デキストリン、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれた1種以上であってもよい。好ましくは、ラクトースや微晶質セルロースを選んでもよい。
【0035】
前記希釈剤は、結合剤としても作用し得る。
【0036】
希釈剤は、レナリドミド1重量部に対して、0.5~200重量部、好ましくは1~100重量部、より好ましくは2~50重量部、さらに好ましくは3~30重量部、さらに一層好ましくは4~20重量部の量で使用することができる。錠剤に製造するとき、前記含量範囲が適している。
【0037】
崩壊剤は、膨潤性崩壊剤、湿潤性崩壊剤、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれてもよい。非制限的な例としては、デンプン、セルロース、架橋高分子、ガム類、多糖類及びそれらの混合物よりなる群から選ばれてもよい。例えば、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、クロスポビドン、L-HPC、デンプン、カルボキシメチルデンプンナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天、キシラン、ジェランガム、キサンタンガム、部分加水分解されたデンプン、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれた1種以上であってもよい。好ましくは、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、L-HPC、デンプングリコール酸ナトリウムであってもよい。より好ましくは、クロスカルメロースナトリウムであってもよい。
【0038】
崩壊剤は、レナリドミド1重量部に対して、0.02~10重量部、好ましくは0.05~5重量部、より好ましくは0.1~2.5重量部、さらに好ましくは0.15~1.5重量部、さらに一層好ましくは0.2~1重量部を使用してもよい。崩壊剤の使用量が前記範囲より少ないと、崩壊速度の遅延により満足できる溶出速度を達成できない場合がある。一方、崩壊剤の使用量が前記範囲より多いと、圧縮不良又はコーティング不良などの生産性に問題が生じる可能性がある。
【0039】
潤滑剤は、可溶性潤滑剤、不溶性潤滑剤、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれてもよい。非制限的な例としては、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、デンプン、タルク、コロイド性シリカ、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ベヘン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、硬化植物油、硬質流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、モノステアリン酸ポリオキシエチレン、三酢酸グリセリル、スクロースモノラウラート、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれた1種以上であってもよい。前記潤滑剤は、好ましくはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、コロイド性シリカであってもよい。より好ましくはステアリン酸マグネシウムであってもよい。
【0040】
潤滑剤は、レナリドミド1重量部に対して、0.005~3.5重量部、好ましくは0.015~2.0重量部、より好ましくは0.03~0.75重量部、さらに好ましくは0.05~0.5重量部、さらに一層好ましくは0.1~0.35重量部の量で使用してもよい。潤滑剤の使用量が前記範囲より少ないと、圧縮不良など生産性に問題が生じる場合がある。一方、潤滑剤の使用量が前記範囲より多いと、溶出遅延や生産性に問題が生じる可能性がある。
【0041】
本発明は、レナリドミドと必要な添加剤を混合した後、打錠して素錠に製造することができる。必要に応じて、本発明は、打錠する前に、レナリドミドと添加剤を湿式又は乾式の方法により顆粒に造粒した後、この顆粒物を利用して打錠することもできる。このとき、湿式顆粒と乾式顆粒は、公示技術から必要に応じて通常の技術者が適宜採択することができる。
【0042】
特に、本発明は、顆粒を造粒せずに、単純混合して打錠するとき、添加剤を混合する順序が重要になることがある。
【0043】
本発明の素錠は、従来のレナリドミド硬質カプセル剤よりもサイズを小さく実現することができる。用量に応じてサイズはそれぞれであるが、最も高容量である25mg製剤の場合も、素錠の最長軸(円形の場合、直径)はNo.0号カプセルの長さ2.17cmより短いことが好ましい。例えば、2cm以下、好ましくは1.8cm以下、さらに好ましくは1.6cm以下であってもよい。
【0044】
本発明の素錠は、最大平均硬度300Nで、最小平均硬度10Nが好ましい。より好ましくは、最大平均硬度250N、最小平均硬度20Nである。さらに好ましくは、最大平均硬度230N、最小平均硬度30Nである。最も好ましくは、最大平均硬度210N、最小平均硬度40Nである。素錠の硬度が前記範囲より高い場合、崩壊遅延による薬物の放出が遅延する可能性がある。一方、素錠の硬度が前記範囲より低いと、錠剤が、コーティング中、輸送中、保管中、及び服用中に脆くなって割れることがある。
【0045】
本発明は、素錠を製造した後、表面をコーティング基剤でコーティングすることができる。
【0046】
コーティング基剤は、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びその塩、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、マクロゴールポリビニルアルコールグラフト共重合体、アクリル酸及びその塩の重合体、ポリメタクリレート、ポリ(ブチルメタクリレート、2-ジメチルアミノエチルメタクリレート、メチルメタクリレート)共重合体、ビニルピロリドン-ビニルアセテート共重合体、ゼラチン、グァーガム、部分的に加水分解されたデンプン、アルギネート、キサンタン及びそれらの混合物よりなる群から選ばれてもよい。
【0047】
コーティング基剤は、素錠100重量部に対して、1~30重量部、好ましくは2~25重量部、より好ましくは3~20重量部、さらに好ましくは4~15重量部、さらに一層好ましくは5~15重量部、最も好ましくは6~15重量部の量で使用することができる。親水性高分子の使用量が前記範囲より少ないと、素錠全体がコーティング基剤で覆われないという問題がある。一方、親水性高分子の使用量が前記範囲より多いと、溶出速度が過度に遅れる可能性がある。
【0048】
コーティングは、薬物が消失されることを防ぐ目的とする。したがって、必要に応じて、1次コーティングした後、2次コーティングを行ってもよく、コーティングの膜厚も適宜選択することができる。ただし、前述したように、コーティングにより薬物の溶出遅延が生じてはならず、適切な範囲を選択する必要がある。
【0049】
コーティングに必要な他の成分や方法は、通常の技術者が適宜採択することができる。
【実施例
【0050】
以下の実施例によって本発明を更に詳細に説明する。ただし、これらの実施例は本発明を例示することのみを目的としており、本発明の範囲はこれらの実施例によって何等限定されるものではない。
【0051】
実施例1
<素錠の製造>
粒度分析結果D10 3μm、D50 13μm、D90 44μm、D[4,3]19μmであるレナリドミドを使用して錠剤を製造した。下記表1のような組成にして混合物を製造し、この混合物を1錠当たり400mg重量に対して、長方形パンチ(punch)で打錠した。
【0052】
【表1】
【0053】
<素錠のコーティング>
前記製造した素錠を、素錠全重量100%(w/w)に対して、合計7.5%(w/w)の量で二種類のコーティング剤で二重コーティングを行った。主成分としてHPMCを含有するオパドライ(登録商標)で1次コーティング(2.5%(w/w))した後、主成分としてPVAを含有するオパドライ(登録商標)で2次コーティング(5%(w/w))を行った。1次コーティング作業条件を下記表2に、2次コーティング作業条件を下記表3に示した。
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
比較例1
粒度分析の結果、D10 4μm、D50 51μm、D90 219μm、D[4,3] 84μmのレナリドミドを用いたことを除いては、実施例1と同じ方法で錠剤を製造した。
【0057】
比較例2
粒度分析の結果、D50 2μm、D90 5μmであるレナリドミドを用いたことを除いては、実施例1と同じ方法で錠剤を製造した。
【0058】
試験例1: 溶出試験
対照薬であるRevlimid(登録商標)カプセルと実施例1に対して、下記条件で溶出試験を行い(n=6)、その結果を図1に示した。
試験方法: 韓国薬局方溶出試験法のパドル法
溶出液: pH1.2溶液
回転速度: 50rpm
温度: 37℃
分析方法: HPLC分析法
HPLC分析条件
検出器: 紫外部吸光光度計(測定波長210nm)
カラム: 長さ250mm、直径4.6mm、5μmのC18カラム又は同等のカラム
流量: 1.0mL/分
注入量: 10μL
移動相: 下記表4に記載
【0059】
【表4】
【0060】
溶媒A: 1000mLの水に、1.36gのリン酸二水素カリウムを溶解し、オルトリン酸を用いて溶液のpHを3.5±0.05に調整した後、ろ過した溶液
溶媒B: メタノールとアセトニトリルを90:10(v/v)の割合で混合した後、ろ過した溶液
【0061】
試験例2: 比較溶出試験
対照薬であるRevlimid(登録商標)カプセルとそれぞれ比較例1及び2に対して、試験例1の条件で溶出試験を行い(n=t)、その結果を図2及び図3に示した。
図1図3に示されたように、レナリドミドの粒度を調節することが対照薬と溶出パターンを同等に調節するのに大きな役割を果たした。具体的に、レナリドミドの粒度D50が2μmを超えたとき、実施例1のように対照薬と溶出パターンが同等に示されており、D50が51μm以上の場合、比較例1のように溶出パターンが大いに異なった。また、D50が2μm又はそれ以下の場合、比較例2のように初期に急激な溶出パターンを示したため、急激なCmax値向上及びそれによる副作用が懸念された。
図1
図2
図3
図4
図5