(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】流体圧送システム、電力変換システム、電力変換装置及び流体圧送方法
(51)【国際特許分類】
F04B 49/06 20060101AFI20241111BHJP
F04D 15/00 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
F04B49/06 321B
F04D15/00 D
(21)【出願番号】P 2020562292
(86)(22)【出願日】2018-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2018048569
(87)【国際公開番号】W WO2020136897
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-07-19
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【氏名又は名称】和田 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100223376
【氏名又は名称】小林 紀史
(72)【発明者】
【氏名】池 英昭
【合議体】
【審判長】柿崎 拓
【審判官】関口 哲生
【審判官】長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-160803(JP,A)
【文献】特開2010-288352(JP,A)
【文献】特開2006-144612(JP,A)
【文献】特開平4-194396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B49/06
F04D15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と、前記電動機により駆動されて流体を圧送するポンプとをそれぞれが有する複数の圧送装置に
交流の駆動電流をそれぞれ出力する複数の電力変換部と、
前記複数の電力変換部のいずれか一つが圧送装置に出力する
前記駆動電流に基づいて、前記電動機が発生する駆動力の振動の大きさを表す情報を取得し、取得した情報に基づいて
前記電動機から前記ポンプへの動力伝達系統の劣化レベルを推定する劣化レベル推定部と、
前記劣化レベル推定部が推定する劣化レベルに基づいて、前記複数の圧送装置から少なくとも一つの圧送装置を選択する選択部と、
前記選択部により選択された前記少なくとも一つの圧送装置により流体を圧送させるように、電力変換部から当該圧送装置に
前記駆動電流を出力させる圧送制御部と、を備える電力変換システム。
【請求項2】
前記選択部は、予め設定された選択基準と、前記劣化レベル推定部が推定した劣化レベルとに基づいて前記少なくとも一つの圧送装置を選択する、請求項1記載の
電力変換システム。
【請求項3】
前記選択部は、累積運転期間の短い前記圧送装置を累積運転期間の長い前記圧送装置に優先して選択するように定められた前記選択基準と、前記劣化レベルとに基づいて前記少なくとも一つの圧送装置を選択する、請求項2記載の
電力変換システム。
【請求項4】
前記選択部は、前記選択基準に基づいて前記少なくとも一つの圧送装置を選択し、前記複数の圧送装置のいずれかの前記劣化レベルが所定の閾値を超えた場合には前記劣化レベルに基づいて前記少なくとも一つの圧送装置を選択する、請求項2記載の
電力変換システム。
【請求項5】
前記選択部は、前記劣化レベルの高い圧送装置の運転期間が、前記劣化レベルの低い圧送装置の運転期間に比較して短くなるように前記少なくとも一つの圧送装置を選択する、請求項1~4のいずれか一項記載の
電力変換システム。
【請求項6】
前記選択部により選択された圧送装置における二次側圧力が不足する場合に、前記選択部により選択されてない少なくとも一つの圧送装置を前記複数の圧送装置から選択する追加選択部を更に備え、
前記圧送制御部は、前記選択部により選択された圧送装置に流体を圧送させている期間に、前記追加選択部により選択された圧送装置にも流体を圧送させる、請求項1~5のいずれか一項記載の
電力変換システム。
【請求項7】
前記追加選択部は、前記選択部により選択された圧送装置に比較して前記劣化レベルが高い前記圧送装置を選択する、請求項6記載の
電力変換システム。
【請求項8】
前記選択部は、前記劣化レベルが所定の閾値を超えた前記圧送装置を選択せず、
前記追加選択部は、前記劣化レベルが前記閾値を超えた前記圧送装置も選択する、請求項7記載の
電力変換システム。
【請求項9】
前記劣化レベルが所定の閾値を超えたことをユーザに報知する劣化報知部を更に備える、請求項1~8のいずれか一項記載の
電力変換システム。
【請求項10】
前記劣化報知部は、いずれの前記圧送装置において前記劣化レベルが前記閾値を超えたかを更に報知する、請求項9記載の
電力変換システム。
【請求項11】
電動式の機械装置
において駆動対象を駆動する電動機に
交流の駆動電流を出力する電力変換部と、
前記電力変換部が出力する
前記駆動電流に基づいて、前記電動機が発生する駆動力の振動の大きさを表す情報を取得し、取得した情報に基づいて
前記電動機から前記駆動対象への動力伝達系統の劣化レベルを推定する劣化レベル推定部と、
前記劣化レベル推定部が推定した劣化レベルに基づいて複数の機械装置から前記機械装置が選択された場合に、前記機械装置を動作させるように前記電力変換部から前記電動機に
前記駆動電流を出力させる制御部と、を備える電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体圧送システム、電力変換システム、電力変換装置及び流体圧送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1のポンプの運転速度が許容最大運転速度を所定時間以上継続した場合に、第2のポンプを追加投入することと、第2のポンプの吐出水量が小さい状態が所定時間以上継続した場合に、第2のポンプの運転を停止させることとを含む可変速給水ポンプの運転方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、メンテナンス頻度の低減に有効な流体圧送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る流体圧送システムは、流体を圧送するための複数の圧送装置と、複数の圧送装置のいずれか一つの駆動力に関する情報に基づいて、当該一つの圧送装置の劣化レベルを推定する劣化レベル推定部と、劣化レベル推定部が推定した劣化レベルに基づいて、複数の圧送装置から少なくとも一つの圧送装置を選択する選択部と、選択部により選択された圧送装置により流体を圧送させる圧送制御部と、を備える。
【0006】
本開示の他の側面に係る電力変換システムは、電動式の複数の圧送装置に駆動電流をそれぞれ出力する複数の電力変換部と、複数の電力変換部のいずれか一つが圧送装置に出力する駆動電流に基づいて当該圧送装置の劣化レベルを推定する劣化レベル推定部と、劣化レベル推定部が推定する劣化レベルに基づいて、複数の圧送装置から少なくとも一つの圧送装置を選択する選択部と、選択部により選択された少なくとも一つの圧送装置により流体を圧送させるように、電力変換部から当該圧送装置に駆動電流を出力させる圧送制御部と、を備える。
【0007】
本開示の更に他の側面に係る電力変換装置は、電動式の機械装置の電動機に電流を出力する電力変換部と、電力変換部が出力する電流に基づいて機械装置の劣化レベルを推定する劣化レベル推定部と、劣化レベル推定部が推定した劣化レベルに基づいて複数の機械装置から機械装置が選択された場合に、機械装置を動作させるように電力変換部から電動機に駆動電流を出力させる制御部と、を備える。
【0008】
本開示の更に他の側面に係る流体圧送方法は、複数の圧送装置のいずれか一つの駆動力に関する情報に基づいて、当該一つの圧送装置の劣化レベルを推定することと、推定した劣化レベルに基づいて、複数の圧送装置から少なくとも一つの圧送装置を選択することと、選択した少なくとも一つの圧送装置により流体を圧送させることと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、メンテナンス頻度の低減に有効な流体圧送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】流体圧送システムの概略構成を例示する模式図である。
【
図2】電力変換システムの機能的な構成を例示するブロック図である。
【
図3】電力変換システムのハードウェア構成を例示するブロック図である。
【
図4】流体圧送システムの変形例を示す模式図である。
【
図5】流体圧送システムの他の変形例を示す模式図である。
【
図6】複数の圧送装置の制御手順を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
〔流体圧送システム〕
図1に示す流体圧送システム1は、蛇口又はシャワーヘッド等の水道需要家設備への給水管路を増圧するための圧送システムである。流体圧送システム1は、電動式の複数の圧送装置10と、複数の逆止弁40と、圧力センサ30と、電力変換システム20とを備える。
【0013】
圧送装置10(電動式の機械装置)は電力により水(流体)を圧送する。例えば圧送装置10は、ポンプ11とモータ12とを有する。ポンプ11は、一次側給水管91に接続される吸引口11aと、二次側給水管92に接続される吐出口11bとを有する。「一次側」は流体圧送システム1の上流側を意味し、「二次側」は流体圧送システム1の下流側を意味する。ポンプ11は、インペラ等の回転型圧送体、又はダイヤフラム等の往復型圧送体を内蔵しており、回転型圧送体の回転又は往復型圧送体の往復により吸引口11aから吐出口11bに水を圧送する。これにより、一次側給水管91から二次側給水管92に水が圧送される。
【0014】
モータ12(電動機)は電力を動力に変換してポンプ11を駆動する。例えばモータ12は、交流電力を回転トルクに変換する同期モータ又は誘導モータである。なお、圧送装置10による圧送対象は、水以外の液体であってもよい。また、圧送装置10による圧送対象は、必ずしも液体に限られない。例えば圧送装置10は、液体圧送用のポンプ11に代えて、気体を圧送する送風機(例えばファン又はブロワ)を有してもよい。
図1においては、便宜上二つの圧送装置10が示されているが、圧送装置10の数はこれに限られない。流体圧送システム1は三つ以上の圧送装置10を備えていてもよい。
【0015】
複数の逆止弁40は、複数の吸引口11aと二次側給水管92との間にそれぞれ介在し、二次側給水管92から一次側給水管91への水の逆流を防ぐ。圧力センサ30は、流体圧送システム1の二次側圧力を検出する。例えば圧力センサ30は、複数の逆止弁40よりも下流側において二次側給水管92に接続されている。
【0016】
電力変換システム20は、圧力センサ30が検出する圧力が低下するのに応じて、複数の圧送装置10の少なくとも一つにより一次側給水管91側から二次側給水管92側に水を圧送させる。電力変換システム20は、複数の圧送装置10のいずれか一つの駆動力に関する情報に基づいて、当該一つの圧送装置10の劣化レベルを推定することと、推定した劣化レベルに基づいて、複数の圧送装置10から少なくとも一つの圧送装置10を選択することと、選択した少なくとも一つの圧送装置10により水を圧送させることとを実行するように構成されている。
【0017】
例えば電力変換システム20は、複数の電力変換装置100と、コントローラ200とを有する。複数の電力変換装置100は、電源(例えば電力系統又はバッテリー)の電力を駆動用の電力(例えば交流電力)に変換して複数の圧送装置10にそれぞれ供給する。以下、個々の電力変換装置100の説明においては、電力変換装置100による電力の供給対象である圧送装置10を「対応圧送装置10」という。
【0018】
電力変換装置100は、少なくとも一つの圧送装置10の劣化レベルに基づいて、複数の圧送装置10から対応圧送装置10が選択された場合に、対応圧送装置10を動作させるように対応圧送装置10のモータ12に駆動電流を出力することと、対応圧送装置10の駆動力(例えばモータ12がポンプ11に付与する駆動力)に関する情報に基づいて対応圧送装置10の劣化レベルを推定することとを実行するように構成されている。
【0019】
コントローラ200は、圧力センサ30が検出する圧力が低下するのに応じて複数の圧送装置10から少なくとも一つの圧送装置10を選択し、選択した少なくとも一つの圧送装置10により水を圧送させるように、当該少なくとも一つの圧送装置10に対応する電力変換装置100からモータ12に駆動電流を出力させる。コントローラ200は、少なくとも一つの電力変換装置100が推定した劣化レベルに基づいて、複数の圧送装置10から上記少なくとも一つの圧送装置10を選択する。
【0020】
図2は、電力変換システム20の機能的な構成を例示するブロック図である。電力変換装置100は、機能上の構成(以下、「機能モジュール」という。)として、電力変換部113と、速度制御部111と、電流制御部112と、電流検出部114と、劣化レベル推定部115と、圧送制御部116と、力データ取得部117と、力データ保持部118とを有する。
【0021】
電力変換部113は、モータ12に駆動電力を出力する。例えば電力変換部113は、電圧指令に応じた電圧振幅にて、モータ12の動作速度に応じた周波数の交流電圧をモータ12に出力する。例えば電力変換部113は、PWM(Pulse Width Modulation)方式により上記交流電圧を生成する。電力変換部113は、直流母線の直流電力を交流電力に変換して駆動電力を生成するインバータであってもよいし、交流電源側の交流電力とモータ12側の交流電力との間で双方向の電力変換を行うマトリクスコンバータであってもよい。
【0022】
速度制御部111は、モータ12の動作速度が目標速度に追従するように、速度制御部111からモータ12に交流電圧を出力させる。例えば速度制御部111は、目標速度と、モータ12の動作速度との偏差を縮小するための電流指令(トルク指令)を算出する。
【0023】
電流制御部112は、速度制御部111により算出された電流指令と、モータ12に出力中の駆動電流との偏差を縮小するための電圧指令を算出し、電力変換部113に出力する。これにより、電力変換部113は、モータ12の動作速度を目標速度に追従させる交流電圧をモータ12に出力する。
【0024】
電流検出部114は、電力変換部113がモータ12に出力する駆動電流を検出して電流制御部112にフィードバックする。速度制御部111、電流制御部112、電力変換部113及び電流検出部114は、上述の処理を所定の制御周期で繰り返す。
【0025】
力データ取得部117は、制御周期ごとに、対応圧送装置10の駆動力に関する情報(以下、「力データ」という。)を取得する。駆動力に関する情報(以下、「力データ」という。)は、当該情報に基づき駆動力の大きさを把握可能な程度に駆動力に相関している限り、いかなる情報であってもよい。例えば、上記駆動電流の大きさは駆動力の大きさに相関(略比例)するので、駆動電流の大きさは力データに該当する。そこで力データ取得部117は、一例として、電流検出部114が検出する駆動電流の大きさを力データとして取得する。なお、力データ取得部117は、速度制御部111が算出する電流指令の大きさを力データとして取得してもよい。また、圧送装置10が駆動力のセンサ(例えばトルクセンサ)を有する場合、力データ取得部117はトルクセンサの検出値を力データとして取得してもよい。力データ保持部118は、力データ取得部117が取得した力データを時系列で記憶する。
【0026】
劣化レベル推定部115は、力データに基づいて、対応圧送装置10の劣化レベルを推定する。劣化レベル推定部115は、劣化レベルを推定することの一例として、力データの振動成分の振幅に対応する振幅指標値を算出する。ここでの「対応」は、振幅の増減に応じて振幅指標値が増減する相関関係を意味する。振幅指標値は、振幅に「対応」する限りいかなる値であってもよい。
【0027】
圧送装置10においては、モータ12からポンプ11への動力伝達系統の劣化レベルが高くなるのに応じて、力データの振動成分の振幅が大きくなる傾向がある。このため、振幅指標値を算出することは、圧送装置10の劣化レベルを推定することに該当する。上記動力伝達系統の劣化の具体例としては、トルク伝達軸の軸受けの劣化が挙げられる。
【0028】
例えば劣化レベル推定部115は、力データの取得時よりも所定期間前から当該取得時までの間に取得された複数の力データに基づき、力データの振動成分の振幅を振幅指標値として導出する。振幅は、負側のピークから正側のピークまでの幅であってもよいし、負側のピークから正側のピークまでの幅の半分であってもよい。振動成分は、圧送装置10の定常運転における振動成分である。定常運転とは、水がポンプ11内に充填され、ポンプ11の駆動速度が目標速度に実質的に一致した運転状態を意味する。実質的に一致とは、駆動速度と目標速度との差異が無視可能な誤差範囲内であることを意味する。劣化レベル推定部115は、所定期間内における力データの最大値と最小値の差分を振幅として算出してもよいし、高速フーリエ変換(FFT)等により振幅を算出してもよい。劣化レベル推定部115は、FFTにより所定の周波数成分の振幅を算出してもよいし、所定帯域の周波数成分における振幅の平均値又は最大値等を算出してもよい。
【0029】
劣化レベル推定部115は、力データと、当該力データの取得時よりも所定期間前から当該取得時までの間に取得された過去の力データに基づく力データのトレンド値との差を振幅指標値として算出してもよい。例えば劣化レベル推定部115は、最新の力データに対して、過去の力データから必要に応じて直流成分を除去して、更にローパス型のフィルタリングを施してトレンド値を算出する。
【0030】
ローパス型のフィルタリングの具体例としては、有限インパルス応答方式のフィルタリングが挙げられる。有限インパルス応答方式の一次フィルタリングを用いる場合、トレンド値は次式により導出される。
Y=A・X[k]+(1-A)・X[k-1]・・・(1)
Y:トレンド値
X[k]:最新の力データ
X[k-1]:一つ前に取得された力データ
A:フィルタ係数
【0031】
有限インパルス応答方式の二次フィルタリングを用いる場合、トレンド値は次式により導出される。
Y=A・X[k]+B・X[k-1]+(1-A-B)・X[k-2]・・・(2)
Y:トレンド値
X[k]:最新の力データ
X[k-1]:一つ前に取得された力データ
X[k-2]:二つ前に取得された力データ
A,B:フィルタ係数
【0032】
なお、劣化レベル推定部115は、必ずしも最新の力データをトレンド値の算出に用いなくてもよく、過去の力データのみに基づいてトレンド値を算出してもよい。例えば、上記X[k]が、最新に対していくつか(例えば一つ)前に取得された力データであってもよい。
【0033】
圧送制御部116は、劣化レベル推定部115が推定した劣化レベルに基づいて複数の圧送装置10から対応圧送装置10が選択された場合に、対応圧送装置10を動作させるように電力変換部113からモータ12に駆動電流を出力させる。例えば圧送制御部116は、対応圧送装置10が選択された場合に、速度制御部111による制御(モータ12の動作速度を目標速度に追従させる制御)を開始させる。
【0034】
コントローラ200は、機能モジュールとして、劣化レベル情報取得部211と、劣化レベル情報保持部212と、運転履歴保持部213と、圧力情報取得部214と、選択部215と、圧送制御部216とを有する。劣化レベル情報取得部211は、各電力変換装置100の劣化レベル推定部115による劣化レベルの推定結果を取得する。劣化レベル情報保持部212は、劣化レベル情報取得部211が取得した劣化レベルの推定結果を電力変換装置100ごとに記憶する。運転履歴保持部213は、各圧送装置10の運転履歴情報を記憶する。運転履歴情報は、例えば圧送装置10による水の圧送開始時刻と圧送停止時刻とを含む。
【0035】
圧力情報取得部214は、複数の圧送装置10における二次側圧力の情報(例えば圧力センサ30による検出値)を取得する。選択部215は、二次側圧力が所定の下限値(以下、「圧力下限値」という。)を下回るのに応じて、複数の圧送装置10から少なくとも一つの圧送装置10を選択する。以下、選択部215が選択する圧送装置10を「通常運転対象の圧送装置10」という。)。
【0036】
選択部215は、劣化レベル情報保持部212が記憶する劣化レベルに基づいて通常運転対象の圧送装置10を選択する。例えば選択部215は、劣化レベルの高い圧送装置10の運転期間が、劣化レベルの低い圧送装置10の運転期間に比較して短くなるように通常運転対象の圧送装置10を選択する。一例として、選択部215は、劣化レベルの最も低い圧送装置10を複数の圧送装置10から選択する。
【0037】
選択部215は、予め設定された選択基準と、劣化レベル情報保持部212が記憶する劣化レベルとに基づいて通常運転対象の圧送装置10を選択してもよい。例えば選択部215は、劣化レベルに基づく第1選択基準と、第1選択基準とは別に予め設定された第2選択基準とに基づいて通常運転対象の圧送装置10を選択してもよい。一例として、第1選択基準は、劣化レベルの低い圧送装置10を劣化レベルの高い圧送装置10に優先して選択するように設定される。
【0038】
第2選択基準は、累積運転期間の短い圧送装置10を累積運転期間の長い圧送装置10に優先して選択するように設定される。なお、累積運転期間は、累積運転回数に概ね相関する。そこで、累積運転期間の短い圧送装置10を累積運転期間の長い圧送装置10に優先して選択することは、累積運転回数の少ない圧送装置10を累積運転回数の多い圧送装置10に優先して選択することを含む。
【0039】
例えば選択部215は、第1選択基準及び第2選択基準の両方に基づいて各圧送装置10の優先度を導出し、優先度が最も高い圧送装置10を選択する。例えば選択部215は、累積運転期間に差が無い場合には劣化レベルの低い圧送装置10の優先度が劣化レベルの高い圧送装置10の優先度よりも高くなり、劣化レベルに差が無い場合には累積運転期間の短い圧送装置10の優先度が累積運転期間の長い圧送装置10の優先度よりも高くなるように定められた関数またはテーブル等に基づいて優先度を導出する。
【0040】
選択部215は、予め設定された選択基準に基づいて通常運転対象の圧送装置10を選択し、複数の圧送装置10のいずれかの劣化レベルが所定の閾値(以下、「基準切替閾値」という。)を超えた場合には劣化レベルに基づいて通常運転対象の圧送装置10を選択してもよい。例えば選択部215は、複数の圧送装置10における劣化レベルの最大値(以下、単に「劣化レベルの最大値」という。)が基準切替閾値を下回っている場合には上記第2選択基準に基づいて通常運転対象の圧送装置10を選択し、劣化レベルの最大値が基準切替閾値を超えている場合には上記第1選択基準に基づいて通常運転対象の圧送装置10を選択してもよい。
【0041】
選択部215は、劣化レベルが高くなるのに応じて第2選択基準に対する第1選択基準の重みを変更してもよい。例えば選択部215は、複数段階の基準切替閾値と劣化レベルの最大値との関係に基づいて第2選択基準に対する第1選択基準の重みを変更してもよい。一例として、選択部215は、劣化レベルの最大値が最小の基準切替閾値を下回っている場合には第2選択基準のみに基づいて通常運転対象の圧送装置10を選択し、劣化レベルの最大値が基準切替閾値を超えるたびに第2選択基準に対する第1選択基準の重みを大きくし、劣化レベルの最大値が最大の基準切替閾値を超えた場合には第1選択基準のみに基づいて通常運転対象の圧送装置10を選択してもよい。選択部215は、二次側圧力が所定の上限値(以下、「圧力上限値」という。)を上回るのに応じて、通常運転対象の圧送装置10の選択を解除する。
【0042】
圧送制御部216は、通常運転対象の圧送装置10が選択されると、通常運転対象の圧送装置10に対応する電力変換装置100に駆動開始指令を出力する。これに応じ、当該電力変換装置100の圧送制御部116は、通常運転対象の圧送装置10による水の圧送を開始させる。すなわち、圧送制御部216は、選択部215により選択された圧送装置10により水を圧送させる。
【0043】
圧送制御部216は、通常運転対象の圧送装置10の選択が解除されると、通常運転対象の圧送装置10に対応する電力変換装置100に駆動停止指令を出力する。これに応じ、当該電力変換装置100の圧送制御部116は、通常運転対象の圧送装置10による水の圧送を停止させる。
【0044】
コントローラ200は、通常運転対象の圧送装置10の二次側圧力(例えば圧力センサ30による検出値)が不足する場合に、選択部215により選択されていない少なくとも一つの圧送装置10にも水を圧送させるように構成されていてもよい。例えばコントローラ200は、追加選択部217を更に有する。
【0045】
追加選択部217は、通常運転対象の圧送装置10における二次側圧力が不足する場合に、選択部215により選択されてない少なくとも一つの圧送装置10を複数の圧送装置10から選択する。以下、追加選択部217が選択する圧送装置10を「追加運転対象の圧送装置10」という。例えば追加選択部217は、通常運転対象の圧送装置10が水を圧送しているにも関わらず、圧力センサ30による検出値が所定の閾値(以下、「追加閾値」という。)を下回る場合に、追加運転対象の圧送装置10を選択する。追加閾値は、上記圧力下限値以上であり、上記圧力上限値未満であればいかなる値であってもよい。追加選択部217は、二次側圧力が上記圧力上限値を上回るのに応じて、追加運転対象の圧送装置10の選択を解除する。
【0046】
追加選択部217が追加運転対象の圧送装置10を選択すると、圧送制御部216が、追加運転対象の圧送装置10に対応する電力変換装置100に駆動開始指令を出力する。これに応じ、当該電力変換装置100の圧送制御部116は、追加運転対象の圧送装置10による水の圧送を開始させる。すなわち、圧送制御部216は、通常運転用の圧送制御部116が通常運転対象の圧送装置10により水を圧送させている期間に、追加運転対象の圧送装置10にも水を圧送させる。圧送制御部216は、追加運転対象の圧送装置10の選択が解除されると、追加運転対象の圧送装置10に対応する電力変換装置100に駆動停止指令を出力する。これに応じ、当該電力変換装置100の圧送制御部116は、追加運転対象の圧送装置10による水の圧送を停止させる。
【0047】
追加選択部217は、通常運転対象の圧送装置10に比較して劣化レベルが高い圧送装置10を選択するように構成されていてもよい。例えば、劣化レベルが所定の閾値を超えた圧送装置10を選択部215が選択しない場合に、追加選択部217は、劣化レベルが当該閾値を超えた圧送装置10も選択するように構成されていてもよい。例えば追加選択部217は、劣化レベルが上記最大の基準切替閾値を超えた圧送装置10も選択するように構成されていてもよい。
【0048】
コントローラ200は、少なくとも一つの圧送装置10の劣化レベルをユーザに報知することを更に実行するように構成されていてもよい。例えばコントローラ200は、劣化報知部218を更に有する。劣化報知部218は、少なくとも一つの圧送装置10の劣化レベルが所定の閾値(以下、「アラート閾値」という。)を超えたことを表示デバイスによりユーザに報知する。換言すると、劣化報知部218は、上記劣化レベルの最大値がアラート閾値を超えたことを表示デバイスによりユーザに報知する。表示デバイスの具体例としては、液晶モニタ又は警報ランプ等が挙げられる。アラート閾値は、上述した基準切替閾値より高くてもよい。
【0049】
劣化報知部218は、複数段階のアラート閾値と劣化レベルの最大値との関係の変化をユーザに報知するように構成されていてもよい。例えば劣化報知部218は、上昇中の劣化レベルがアラート閾値を超える度に、劣化レベルの上昇をユーザに報知するように構成されていてもよい。劣化レベルの上昇は、液晶モニタへの表示内容の変化、又は警報ランプの色の変化等により報知可能である。
【0050】
劣化報知部は、いずれの圧送装置10において劣化レベルがアラート閾値を超えたかを更に報知するように構成されていてもよい。いずれの圧送装置10において劣化レベルがアラート閾値を超えたかは、例えばアラート閾値を超えた圧送装置10の識別情報を液晶モニタに表示することにより報知可能である。また、いずれの圧送装置10において劣化レベルがアラート閾値を超えたかは、圧送装置10ごとに設けられた警報ランプのいずれが点灯しているかにより報知可能である。
【0051】
図3は、電力変換システム20のハードウェア構成を例示するブロック図である。
図3に示すように、電力変換装置100は、スイッチング回路120と、電流センサ130と、制御回路140とを有する。
【0052】
スイッチング回路120は、制御回路140からの指令(例えば入出力ポート144からの電気信号)に従って動作し、上記電力変換部113として機能する。例えばスイッチング回路120は、入出力ポート144からの電気信号(例えばゲート信号)に従って複数のスイッチング素子のオン、オフを切り替えることにより、上記駆動電力をモータ12に出力する。スイッチング素子は、例えばパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等である。電流センサ130は、制御回路140からの指令(例えば入出力ポート144からの電気信号)に従って動作し、上述した電流検出部114として機能する。電流センサ130は、スイッチング回路120からモータ12への出力電流を検出する。
【0053】
制御回路140は、一つ又は複数のプロセッサ141と、メモリ142と、ストレージ143と、入出力ポート144とを含む。ストレージ143は、例えば不揮発性の半導体メモリ等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。ストレージ143は、圧送装置10の劣化レベルに基づいて、複数の圧送装置10から対応圧送装置10が選択された場合に、対応圧送装置10を動作させるように対応圧送装置10のモータ12に駆動電流を出力することと、対応圧送装置10の駆動力(例えばモータ12がポンプ11に付与する駆動力)に関する情報に基づいて対応圧送装置10の劣化レベルを推定することとを電力変換装置100に実行させるプログラムを記憶している。例えばストレージ143は、上述した電力変換装置100の機能モジュールを構成するためのプログラムを記憶している。
【0054】
メモリ142は、ストレージ143の記憶媒体からロードしたプログラム及びプロセッサ141による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ141は、メモリ142と協働して上記プログラムを実行することで、電力変換装置100の各機能モジュールを構成する。入出力ポート144は、入力電源の端子台があるほか、プロセッサ141からの指令に従って、スイッチング回路120、電流センサ130及びコントローラ200との間で電気信号の入出力を行う。
【0055】
コントローラ200は、回路220を有する。回路220は、一つ又は複数のプロセッサ221と、メモリ222と、ストレージ223と、表示デバイス224と、入出力ポート225とを含む。ストレージ223は、例えば不揮発性の半導体メモリ等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。ストレージ223は、少なくとも一つの電力変換装置100が推定した劣化レベルに基づいて、複数の圧送装置10から少なくとも一つの圧送装置10を選択することと、選択した少なくとも一つの圧送装置10により水を圧送させるように、当該少なくとも一つの圧送装置10に対応する電力変換装置100からモータ12に駆動電流を出力させることとをコントローラ200に実行させるプログラムを記憶している。例えばストレージ223は、上述したコントローラ200の機能モジュールを構成するためのプログラムを記憶している。
【0056】
なお、電力変換装置100のストレージ143及びコントローラ200のストレージ223は、電力変換システム20のストレージに相当し、このストレージは、複数の圧送装置10のいずれか一つの駆動力に関する情報に基づいて、当該一つの圧送装置10の劣化レベルを推定することと、推定した劣化レベルに基づいて、複数の圧送装置10から少なくとも一つの圧送装置10を選択することと、選択した少なくとも一つの圧送装置10により水を圧送させることとを電力変換システム20に実行させるプログラムを記憶している。
【0057】
メモリ222は、ストレージ223からロードしたプログラム及びプロセッサ221による演算結果等を一時的に記憶する。プロセッサ221は、メモリ222と協働して上記アプリケーションを実行する。表示デバイス224は、例えば液晶モニタ、警報ランプ等を含み、ユーザに対する情報表示に用いられる。入出力ポート225は、プロセッサ221からの指令に従って、圧力センサ30及び電力変換装置100との間で電気信号の入出力を行う。
【0058】
制御回路140及び回路220は、必ずしもプログラムにより各機能を構成するものに限られない。例えば制御回路140及び回路220は、専用の論理回路又はこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により少なくとも一部の機能を構成してもよい。
【0059】
なお、以上に示した電力変換システム20の構成はあくまで一例であり、適宜変更可能である。例えば、上述の例においては、複数の電力変換装置100に対し一つのコントローラ200が設けられているがこれに限られず、複数の電力変換装置100に対し複数のコントローラ200がそれぞれ設けられていてもよい(
図4参照)。この場合、複数のコントローラ200の少なくとも一方によって、上述したコントローラ200の機能モジュールを構成することが可能である。また、コントローラ200の機能モジュールが、複数の電力変換装置100のいずれかによって構成されていてもよい。この場合、コントローラ200を省略することも可能である(
図5参照)。
【0060】
〔流体圧送方法〕
続いて、流体圧送方法の一例として、電力変換システム20が実行する複数の圧送装置10の制御手順を例示する。この制御手順は、複数の圧送装置10のいずれか一つの駆動力に関する情報に基づいて、当該一つの圧送装置10の劣化レベルを推定することと、推定した劣化レベルに基づいて、複数の圧送装置10から少なくとも一つの圧送装置10を選択することと、選択した少なくとも一つの圧送装置10により水を圧送させることとを含む。
【0061】
図6は、複数の圧送装置10の制御手順を例示するフローチャートである。
図6に示すように、電力変換システム20は、まずステップS01を実行する。ステップS01では、圧力情報取得部214が、上記二次側圧力の情報として圧力センサ30による検出値を取得し、当該検出値が上記圧力下限値を下回っているか否かを選択部215が確認する。圧力センサ30による検出値が圧力下限値を下回っていないと判定した場合、電力変換システム20は再度ステップS01を実行する。以後、圧力センサ30による検出値が圧力下限値を下回るまではステップS01が繰り返される。
【0062】
圧力センサ30による検出値が圧力下限値を下回っていると判定した場合、電力変換システム20は、ステップS02,S03,S04,S05を実行する。ステップS02では、劣化レベル情報保持部212が記憶する劣化レベルに基づいて、選択部215が上記通常運転対象の圧送装置10を選択する。ステップS03では、圧送制御部216が、通常運転対象の圧送装置10に対応する電力変換装置100(以下、「通常運転用の電力変換装置100」という。)に駆動開始指令を出力する。これに応じ、当該電力変換装置100の圧送制御部116が、通常運転対象の圧送装置10による水の圧送を開始させる。ステップS04では、通常運転用の電力変換装置100の力データ取得部117が、力データの取得を開始する。
【0063】
ステップS05では、圧力情報取得部214が、上記二次側圧力の情報として圧力センサ30による検出値を取得し、当該検出値が上記圧力上限値を超えているか否かを選択部215が確認する。ステップS05において検出値が圧力上限値を超えていないと判定した場合、電力変換システム20は、ステップS06を実行する。ステップS06では、圧力センサ30による検出値が上記追加閾値を下回っているか否かを追加選択部217が確認する。
【0064】
ステップS06において検出値が追加閾値を下回っていると判定した場合、電力変換システム20は、ステップS07,S08,S09を実行する。ステップS07では、追加選択部217が、複数の圧送装置10から上記追加運転対象の圧送装置10を選択する。ステップS08では、圧送制御部216が、追加運転対象の圧送装置10に対応する電力変換装置100(以下、「追加運転用の電力変換装置100」という。)に駆動開始指令を出力する。これに応じ、当該電力変換装置100の圧送制御部116が、追加運転対象の圧送装置10による水の圧送を開始させる。ステップS09では、追加運転用の電力変換装置100の力データ取得部117が、力データの取得を開始する。その後、電力変換システム20は処理をステップS05に戻す。
【0065】
ステップS06において検出値が追加閾値を下回っていないと判定した場合、電力変換システム20は、ステップS07,S08,S09を実行することなく処理をステップS05に戻す。以後、圧力センサ30による検出値が圧力上限値を超えるまでは、通常運転対象の圧送装置10による水の圧送が継続され、必要に応じ追加運転対象の圧送装置10による水の圧送も継続される。
【0066】
ステップS05において検出値が圧力上限値を超えていると判定した場合、電力変換システム20は、ステップS11を実行する。ステップS11では、選択部215が、通常運転対象の圧送装置10の選択を解除する。これに応じ、通常運転用の電力変換装置100の圧送制御部116が、通常運転対象の圧送装置10による水の圧送を停止させる。追加運転対象の圧送装置10が選択されている場合には、更に追加選択部217が、追加運転対象の圧送装置10の選択を解除する。これに応じ、追加運転用の電力変換装置100の圧送制御部116が、追加運転対象の圧送装置10による水の圧送を停止させる。
【0067】
次に、電力変換システム20は、ステップS12,S13を実行する。ステップS12では、通常運転用の電力変換装置100の力データ保持部118が記憶する力データに基づいて、当該電力変換装置100の劣化レベル推定部115が通常運転対象の圧送装置10の劣化レベルを推定する。追加運転対象の圧送装置10が選択されている場合には、追加運転用の電力変換装置100の力データ保持部118が記憶する力データに基づいて、更に追加運転用の電力変換装置100の劣化レベル推定部115が、追加運転対象の圧送装置10の劣化レベルを推定する。ステップS13では、劣化レベル情報取得部211が、通常運転用及び追加運転用の電力変換装置100の劣化レベル推定部115による劣化レベルの推定結果を取得し、劣化レベル情報保持部212に保存する。電力変換システム20は、以上の処理を繰り返す。
【0068】
なお、上述した手順では、圧送装置10の運転を停止した後に劣化レベルが一度推定されるが、劣化レベルの推定タイミングは必ずしもこれに限られない。例えば、運転中にも劣化レベルの推定を繰り返してもよい。この場合、劣化レベルの上昇に応じて、運転対象の圧送装置10を運転中に切り替えてもよい。
【0069】
〔本実施形態の効果〕
以上に説明したように、流体圧送システム1は、水を圧送するための複数の圧送装置10と、複数の圧送装置10のいずれか一つの駆動力に関する情報に基づいて、当該一つの圧送装置10の劣化レベルを推定する劣化レベル推定部115と、劣化レベル推定部115が推定した劣化レベルに基づいて、複数の圧送装置10から少なくとも一つの圧送装置10を選択する選択部215と、選択部215により選択された圧送装置10により水を圧送させる圧送制御部216と、を備える。
【0070】
この流体圧送システム1によれば、劣化レベルに基づいて選択基準が自動変更されるので、劣化レベルの低い圧送装置10を優先的に運転すること等が可能である。これにより、劣化レベルの高い圧送装置10の劣化進行を抑制することができる。従って、メンテナンス頻度の低減に有効である。また、劣化レベルの高い圧送装置10の劣化進行を抑制することは、運転効率の改善、振動抑制、及び騒音抑制等にも寄与し得る。
【0071】
選択部215は、予め設定された選択基準と、劣化レベル推定部115が推定した劣化レベルとに基づいて少なくとも一つの圧送装置10を選択してもよい。この場合、いずれの圧送装置10の劣化も進行していない段階では、選択基準の設定により所望の条件に従って複数の圧送装置10を使い分けることができる。
【0072】
選択部215は、累積運転期間の短い圧送装置10を累積運転期間の長い圧送装置10に優先して選択するように定められた選択基準と、劣化レベルとに基づいて少なくとも一つの圧送装置10を選択してもよい。
【0073】
選択部215は、選択基準に基づいて少なくとも一つの圧送装置10を選択し、複数の圧送装置10のいずれかの劣化レベルが所定の閾値を超えた場合には劣化レベルに基づいて少なくとも一つの圧送装置10を選択してもよい。
【0074】
選択部215は、劣化レベルの高い圧送装置10の運転期間が、劣化レベルの低い圧送装置10の運転期間に比較して短くなるように少なくとも一つの圧送装置10を選択してもよい。この場合、劣化レベルの低い圧送装置10の運転をより確実に優先させることができる。
【0075】
流体圧送システム1は、選択部215により選択された圧送装置10における二次側圧力が不足する場合に、選択部215により選択されてない少なくとも一つの圧送装置10を複数の圧送装置10から選択する追加選択部217を更に備え、圧送制御部216は、選択部215により選択された圧送装置10に水を圧送させている期間に、追加選択部217により選択された圧送装置10にも水を圧送させてもよい。この場合、劣化レベルが高い圧送装置10における劣化進行を抑制しておくことで、当該圧送装置10の追加運転対象としての利用可能期間を延長することができる。従って、追加運転対象を用いない運転モード(以下、「通常運転モード」という。)と、追加運転対象を用いる運転モード(以下、「並列運転モード」という。)とを切り替える構成においては、劣化レベルが高い圧送装置10の劣化進行を抑制することがより有効である。
【0076】
追加選択部217は、選択部215により選択された圧送装置10に比較して劣化レベルが高い圧送装置10を選択してもよい。追加運転対象の圧送装置10の運転期間は、運転対象の圧送装置10の運転期間に比較して短い。このため、劣化レベルが高い圧送装置10を追加運転対象に割り当てることで、劣化レベルの高い圧送装置10の劣化進行を抑制しつつ、当該圧送装置10を有効活用することができる。
【0077】
選択部215は、劣化レベルが所定の閾値を超えた圧送装置10を選択せず、追加選択部217は、劣化レベルが閾値を超えた圧送装置10も選択してもよい。この場合、劣化レベルが高い圧送装置10の劣化進行の抑制と、当該圧送装置10の追加運転対象としての有効活用とをより確実に図ることができる。
【0078】
流体圧送システム1は、劣化レベルが所定の閾値を超えたことをユーザに報知する劣化報知部218を更に備えていてもよい。この場合、メンテナンスタイミングの適正化をより確実に図ることができる。
【0079】
劣化報知部218は、いずれの圧送装置10において劣化レベルが閾値を超えたかを更に報知してもよい。この場合、メンテナンス作業の効率化に有効である。
【0080】
圧送装置10は電動式であり、劣化レベル推定部115は、圧送装置10の駆動電流に基づいて圧送装置10の劣化レベルを推定してもよい。
【0081】
以上、実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。電力変換システム20の適用対象は、必ずしも流体圧送システムに限られない。電力変換システム20は、複数の機械装置を選択的に動作させる機械システムである限り、いかなる機械システムにも適用可能である。
【符号の説明】
【0082】
1…流体圧送システム、10…圧送装置(電動式の機械装置)、12…モータ(電動機)、20…電力変換システム、100…電力変換装置、113…電力変換部、115…劣化レベル推定部、215…選択部、216…圧送制御部、217…追加選択部、218…劣化報知部。