(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20241111BHJP
G09F 9/33 20060101ALI20241111BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20241111BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20241111BHJP
H01L 33/62 20100101ALI20241111BHJP
H01L 33/54 20100101ALI20241111BHJP
【FI】
G09F9/00 338
G09F9/33
G09F9/30 308Z
H01L33/00 L
H01L33/62
H01L33/54
(21)【出願番号】P 2021000443
(22)【出願日】2021-01-05
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅田 圭介
【審査官】小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-165779(JP,A)
【文献】特開2010-262295(JP,A)
【文献】特開2018-066773(JP,A)
【文献】特表2020-527528(JP,A)
【文献】国際公開第2020/189047(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0134264(KR,A)
【文献】米国特許第10847083(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00-9/46
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上に形成された多数のフレキシブルバックプレーンを含む二つのバックプレーンを、前記多数の
フレキシブルバックプレーンが互いに向き合うように貼り合わせる工程と、
前記二つのバックプレーンのガラス基板部分を削る工程と、
前記二つのバックプレーンから前記多数のフレキシブルバックプレーンを切り出す工程と、
前記切り出されたフレキシブルバックプレーンを用いてLEDチップを備える表示装置を構成する工程と、
を具備する、表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記表示装置を構成する工程は、
前記フレキシブルバックプレーンに複数のLEDチップを実装する工程と、
前記複数のLEDチップが実装されたフレキシブルバックプレーンにカバー部材を接着する工程と、
前記フレキシブルバックプレーンのうち、前記複数のLEDチップおよび前記カバー部材と平面視において重畳しない領域に、回路基板を実装する工程と、
前記カバー部材の側面と前記回路基板の表面とを樹脂部材により接続する工程と、
前記フレキシブルバックプレーンから前記ガラス基板を剥離し、代わりに支持フィルムを貼付する工程と、
を含む、請求項
1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記表示装置を構成する工程は、
前記カバー部材を接着する前に、前記フレキシブルバックプレーンの外形を整えるチャンファリングを行う工程をさらに含む、
請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記表示装置を構成する工程は、
前記支持フィルムを貼付した後に、前記フレキシブルバックプレーンおよび前記カバー部材の外形を整えるチャンファリングを行う工程をさらに含む、
請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記複数のLEDチップは、発光層の一方の面にアノード端子およびカソード端子の両方が並んで配置されたマイクロLEDである、
請求項2~請求項4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記複数のLEDチップは、発光層を挟んでアノード端子およびカソード端子が対向して配置されるマイクロLEDである、
請求項2~請求項4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記表示装置を構成する工程は、
前記複数の
LEDチップを実装した後に、前記複数のLEDチップの間に平坦化膜を充填し、前記平坦化膜の上に前記複数のLEDチップに亘るカソード電極を実装する工程をさらに含む、
請求項6に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自発光素子である発光ダイオード(LED: Light Emitting Diode)を用いたLEDディスプレイが知られているが、近年では、より高精細化した表示装置として、マイクロLEDと称される微小なダイオード素子を用いた表示装置(以下では、マイクロLEDディスプレイと表記する)が開発されている。
【0003】
このマイクロLEDディスプレイは、従来の液晶表示ディスプレイや有機ELディスプレイとは異なり、表示領域にチップ状の多数のマイクロLEDが実装されて形成されるため、高精細化と大型化の両立が容易であり、次世代ディスプレイとして注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的の一つは、生産性を向上させ得るマイクロLEDディスプレイ(表示装置)の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る表示装置の製造方法は、ガラス基板上に形成された多数のフレキシブルバックプレーンを含むバックプレーンの表面に保護フィルムを貼付する工程と、前記保護フィルムが貼付された状態のバックプレーンから前記多数のフレキシブルバックプレーンを切り出す工程と、前記各フレキシブルバックプレーンから前記保護フィルムを剥がす工程と、前記保護フィルムが剥がされた状態のフレキシブルバックプレーンを用いてLEDチップを備える表示装置を構成する工程と、を備える。
【0007】
一実施形態に係る表示装置の製造方法は、ガラス基板上に形成された多数のフレキシブルバックプレーンを含む二つのバックプレーンを、前記多数のフレキシブルバックプレーンが互いに向き合うように貼り合わせる工程と、前記二つのバックプレーンのガラス基板部分を削る工程と、前記二つのバックプレーンから前記多数のフレキシブルバックプレーンを切り出す工程と、前記切り出されたフレキシブルバックプレーンを用いてLEDチップを備える表示装置を構成する工程と、を備える。
【0008】
一実施形態に係る表示装置は、フレキシブルバックプレーンと、前記フレキシブルバックプレーンの上に実装された複数のLEDチップと、前記複数のLEDチップの上に配置されたカバー部材と、前記フレキシブルバックプレーンのうち、前記複数のLEDチップおよび前記カバー部材と平面視において重畳しない領域に実装された回路基板と、前記カバー部材の側面と前記回路基板の表面とを接続する樹脂部材と、前記フレキシブルバックプレーンの下に配置された支持フィルムと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る表示装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る表示装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための平面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図13】
図13は、実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための平面図である。
【
図14】
図14は、実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図15】
図15は、実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図16】
図16は、実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図17】
図17は、実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図18】
図18は、実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図19】
図19は、実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図20】
図20は、実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図21】
図21は、実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図22】
図22は、実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
いくつかの実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の趣旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実施の態様に比べて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を省略することがある。
【0011】
図1は、一実施形態に係る表示装置1の構成を概略的に示す斜視図である。
図1は、第1方向Xと、第1方向Xに垂直な第2方向Yと、第1方向Xおよび第2方向Yに垂直な第3方向Zによって規定される三次元空間を示している。なお、第1方向Xおよび第2方向Yは、互いに直交しているが、90度以外の角度で交差していてもよい。本明細書においては、表示装置1を第3方向Zと平行な方向から見ることを平面視と呼ぶ。
【0012】
以下、本実施形態においては、表示装置1が自発光素子であるマイクロLEDを用いたマイクロLEDディスプレイである場合について主に説明する。
なお、マイクロLEDは単に発光素子、または、LEDチップと呼称されてもよい。
図1に示すように、表示装置1は、表示パネル2、第1回路基板3および第2回路基板4、などを備える。
【0013】
表示パネル2は、一例では矩形状である。図示した例では、表示パネル2の短辺EXは第1方向Xと平行であり、表示パネル2の長辺EYは第2方向Yと平行である。第3方向Zは、表示パネル2の厚さ方向に相当する。第1方向Xは表示装置1の短辺と平行な方向と読み替えられ、第2方向Yは表示装置1の長辺と平行な方向と読み替えられ、第3方向Zは表示装置1の厚さ方向と読み替えられてもよい。表示パネル2の主面は、第1方向Xと第2方向Yとにより規定されるX-Y平面に平行である。表示パネル2は、表示領域DA(表示部)と、当該表示領域DAの外側の非表示領域NDA(非表示部)とを有している。非表示領域NDAは、端子領域MTを有している。図示した例では、非表示領域NDAは、表示領域DAを囲んでいる。
【0014】
表示領域DAは、画像を表示する領域であり、例えばマトリクス状に配置された複数の画素PXを備えている。画素PXは、LEDチップ(発光素子、マイクロLED)および当該発光素子を駆動するためのスイッチング素子(駆動トランジスタ)などを含む。
【0015】
端子領域MTは、表示パネル2の短辺EXに沿って設けられ、表示パネル2を外部装置などと電気的に接続するための端子を含んでいる。
【0016】
第1回路基板3は、端子領域MTの上に実装され、表示パネル2と電気的に接続されている。第1回路基板3は、例えばフレキシブルプリント回路基板(Flexible Printed Circuit Board)である。第1回路基板3は、表示パネル2を駆動する駆動ICチップ(以下では、パネルドライバと表記する)5などを備えている。なお、図示した例では、パネルドライバ5は、第1回路基板3の上に配置されているが、第1回路基板3の下に配置されてもよい。あるいは、パネルドライバ5は、第1回路基板3以外に実装されてもよい。この場合、パネルドライバ5は、表示パネル2の非表示領域NDAに実装されてもよいし、第2回路基板4に実装されてもよい。第2回路基板4は、例えばリジットプリント回路基板である。第2回路基板4は、例えば第1回路基板3の下方において当該第1回路基板3と接続されている。
【0017】
パネルドライバ5は、例えば第2回路基板4を介して図示しない制御基板と接続されている。パネルドライバ5は、例えば制御基板から出力される映像信号に基づいて複数の画素PXを駆動することによって表示パネル2に画像を表示する制御を実行する。
【0018】
なお、表示パネル2は、斜線を付して示す折り曲げ領域BAを有していてもよい。折り曲げ領域BAは、表示装置1が電子機器などの筐体に収容される際に折り曲げられる領域である。折り曲げ領域BAは、非表示領域NDAのうちの端子領域MT側に位置している。折り曲げ領域BAが折り曲げられた状態において、第1回路基板3および第2回路基板4は、表示パネル2と対向するように配置される。
【0019】
本実施形態では、上記した表示装置1の製造方法について説明する。以下では、まず、
図2を参照して、断面視における表示装置1の概略的な構成について説明する。
【0020】
図2は、表示装置1の構成を概略的に示す断面図である。
図2に示すように、表示装置1は、表示パネル2と、第1回路基板3と、パネルドライバ5と、樹脂部材6と、を備えている。なお、
図2では、第2回路基板4の図示を省略しているが、実際には、
図1に示したように、表示装置1は、第1回路基板3に接続される第2回路基板4を備えている。
【0021】
表示パネル2は、バックプレーンbpと、複数の発光素子LEDと、カバー部材CGと、接着層OCAと、支持フィルムF1と、を備えている。
【0022】
バックプレーンbpは、第1主面bpAと、第1主面bpAの反対側に位置する第2主面bpBとを含む。図示した例では省略しているが、バックプレーンbpには、発光素子LEDを駆動するためのスイッチング素子や各種配線パターンが形成されている。バックプレーンbpは可撓性に優れており、例えば、ポリイミド樹脂などにより形成される。バックプレーンbpはフレキシブルバックプレーンまたはアレイ基板と称されてもよい。
【0023】
複数の発光素子LEDは、バックプレーンbpの第2主面bpBの上に設けられている。複数の発光素子LEDには、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の発光色を有するものが含まれている。発光素子LEDは、発光層LIと、アノード端子ANと、カソード端子CNとを含む。発光層LIは、R、G、Bの光を放出する。アノード端子ANおよびカソード端子CNは、バックプレーンbpに形成されるスイッチング素子や各種配線パターンと電気的に接続される。なお、
図2では、発光素子LEDが、発光層LIの一方の面にアノード端子ANとカソード端子CNとの両方が並んで配置されるタイプのマイクロLEDである場合を想定している。
【0024】
カバー部材CGは、第1主面CGAと、第1主面CGAの反対側に位置する第2主面CGBとを含む。カバー部材CGの第1主面CGAは、バックプレーンbpの第2主面bpBと対向している。バックプレーンbpとカバー部材CGとは接着層OCAにより接着されている。カバー部材CGは、例えばガラス基材やプラスチック基板などで形成される。
【0025】
支持フィルムF1は、バックプレーンbpの第1主面bpA側に設けられ、可撓性に優れたバックプレーンbpを支持している。
【0026】
バックプレーンbpの第2主面bpBには、端子領域MTが設けられている。端子領域MTには、第1回路基板3が配置されている。第1回路基板3の上にはパネルドライバ5が配置されている。樹脂部材6は、表示パネル2と第1回路基板3とを一体化するために配置されている。これによれば、端子領域MT上に実装された第1回路基板3の強度を補強することができ、第1回路基板3が折れて破損してしまうことを防ぐことができる。
【0027】
以下では、
図3~
図12を参照して、
図2に示した表示装置1が製造されるまでの工程を順に説明する。
図3~
図12は、表示装置1の製造工程の一例を順に示す図である。
【0028】
まず、バックプレーンbpの切り出し工程(第1工程)が行われる。具体的には、
図3(a)および(b)に示すように、ガラス基板10の上に多数のバックプレーンbpが形成された大判のバックプレーンBPに対し、保護フィルムF2が第2主面bpB側に貼付される。保護フィルムF2は、バックプレーンbp毎に貼付されることが望ましいが、大判のバックプレーンBPの全面に亘って貼付されても構わない。保護フィルムF2は、バックプレーンbpの表面を保護するためのフィルムである。より詳しくは、保護フィルムF2は、バックプレーンbpの表面に形成されたスイッチング素子や各種配線パターンを保護するためのフィルムであり、保護フィルムF2が張りつけられている状態においては、発光素子LEDはバックプレーンbpに実装されていない。保護フィルムF2が貼付された後に、
図3(c)に示すように、大判のバックプレーンBPは個片にカットされ、多数のバックプレーンbpが形成される。なお、保護フィルムF2は、カット後に、バックプレーンbpの表面から剥がして、取り除かれる。
【0029】
第1工程に示すように、バックプレーンbpは、その表面に保護フィルムF2が貼付された状態で、バックプレーンBPが個片にカットされて、形成される。このため、バックプレーンBPに含まれるガラス基板10をカットした際に発生するガラスカレットから、バックプレーンbpの表面を保護することが可能であり、通常であれば必要な工程である、バックプレーンbpの表面(第2主面bpB)に付着したガラスカレットを除去するための研磨工程を省略することが可能である。
【0030】
続いて、発光素子LEDの実装工程(第2工程)が行われる。具体的には、
図4に示すように、LEDウエハのベース基板としてのサファイア基板20に配置された複数の発光素子LEDが、バックプレーンbp上に実装される。実装とは、発光素子LEDとバックプレーンbpとが接続・固定された接合の状態を指し、発光素子LEDとバックプレーンbpとの実装は、サファイア基板20からガラス基板10に向けたレーザ照射もしくはガラス基板10からサファイア基板20に向けたレーザ照射により、バックプレーンbpの第2表面bpBに設けられた電極と発光素子LEDの端子とが接合される。複数の発光素子LEDがバックプレーンbp上に実装されると、所定の波長帯のレーザ光がサファイア基板20側から複数の発光素子LEDに向けて照射される。これによれば、複数の発光素子LEDとサファイア基板20とを固着している図示しない剥離層がレーザアブレーションにより昇華し、
図5に示すように、サファイア基板20が複数の発光素子LEDから剥離される。サファイア基板20が剥離されると、表示パネル2の外形を整えるためのチャンファリングが行われる。これによれば、表示パネル2を円形などの異形にしたり、表示パネル2にノッチ(切り欠き)などを付加したりすることができる。
【0031】
上記した第2工程により、バックプレーンbpに複数の発光素子LEDが実装されると、発光素子LEDが正常に点灯するかどうかをチェックするための第1点灯検査が行われる。
【0032】
次に、発光素子LEDのリペア工程(第3工程)が行われる。具体的には、上記した第2工程において正常に実装できなかった箇所への発光素子LEDの補填、ならびに、上記した第1点灯検査において正常に点灯しなかった発光素子LEDの取替、などが行われる。
図6では、上記した第2工程において発光素子LEDが正常に実装されず、歯抜けになってしまっていた箇所に発光素子LEDを実装する場合が例示されている。
【0033】
以上説明した第1~第3工程は、纏めて、LEDチップトランスファ工程と称されてもよい。LEDチップトランスファ工程が完了すると、
図7に示すように、複数の発光素子LEDがバックプレーンbp上に実装されたアレイ基板が形成される。
【0034】
なお、上記した第3工程による発光素子LEDのリペアが完了した後であって、上記したLEDチップトランスファ工程が完了する前に、第1点灯検査に相当する点灯検査が再度行われてもよい。この点灯検査において、発光素子LEDが正常に実装されていない箇所や、正常に点灯しない発光素子LEDが見つかった場合、上記した第3工程が再度行われてもよい。
【0035】
続いて、LEDチップトランスファ工程が完了すると、発光素子LEDが正常に点灯するかどうかをチェックするための第2点灯検査が行われる。
【0036】
その後、対向基板の実装工程(第4工程)が行われる。具体的には、まず、カバー部材CGの第1主面CGAに接着層OCAが貼付される。その後、
図8に示すように、カバー部材CGと接着層OCAとを含む対向基板が、発光素子LEDの上に圧着される。これによれば、バックプレーンbpとカバー部材CGとが接着層OCAにより接着される。但し、この時点では、接着層OCAには上記した圧着の際に発生した気泡が存在し、バックプレーンbpとカバー部材CGとを十分に接着することができていない状態にある。特に、
図9に示すように、隣接する発光素子LEDの間には接着層OCAを充満させることが難しく、発光素子LEDの高さに起因した気泡(隙間)が発生してしまう。
【0037】
このため、接着層OCA部分を高圧力にするオートクレーブが行われる。これによれば、
図10に示すように、発光素子LEDの高さに起因した気泡がなくなり、隣接する発光素子LEDの間を接着層OCAで満たすことができる。
【0038】
以上説明した第1~第4工程により、表示パネル2が構成される。表示パネル2が構成されると、その外観に問題がないかどうかをチェックするための外観検査が行われる。
【0039】
次に、各種回路基板の実装工程(第5工程)が行われる。具体的には、
図10に示すように、第1回路基板3がFOG(Film On Glass)により表示パネル2の端子領域MT上に実装される。また、パネルドライバ5がCOF(Chip On Film)により第1回路基板3上に実装される。
また、上述のようにパネルドライバ5は表示パネル2に設けられるものであっても良い。パネルドライバ5が表示パネル2に実装される場合も同様に、第4工程にてカバー部材CGが表示パネル2に貼り付けられた後、第5工程にてパネルドライバ5が表示パネル2のカバー部材CGから露出した端子領域MT上に実装され、さらに第1回路基板3が表示パネル2の端子領域MTに実装されることになる。この場合、表示パネル2に実装されたパネルドライバ5は、カバー部材CGと重ならない。
なお、第4工程と第5工程はその順序を入れ替えて行うとしてもよい。その場合、第5工程の前に、バックプレーンbpおよび発光素子LEDの上に保護フィルムが配置される方が望ましい。これによれば、第5工程時に、バックプレーンbpに汚れなどが付着してしまうことを防ぐことができる。なお、この保護フィルムは、第4工程前に剥がして、取り除けばよい。
【0040】
続いて、樹脂部材6の実装工程(第6工程)が行われる。具体的には、
図11に示すように、表示パネル2のカバー部材CGの端子領域MT側の側面と、第1回路基板3のうちの端子領域MTと平面視において重畳する部分とを接続するように、樹脂部材6が塗布され、表示パネル2と第1回路基板3とが一体化される。これによれば、端子領域MT上に実装された第1回路基板3の強度を補強することができ、第1回路基板3が折れて破損してしまうことを防ぐことができる。
【0041】
上記した第6工程の後に、発光素子LEDが正常に点灯するかどうかをチェックするための第3点灯検査が行われる。
しかる後、支持フィルムF1の貼付工程(第7工程)が行われる。具体的には、まず、所定の周波数帯のレーザ光がガラス基板10側からバックプレーンbpに向けて照射される。これによれば、バックプレーンbpとガラス基板10とを固着している図示しない剥離層がレーザアブレーションにより昇華し、
図12に示すように、ガラス基板10がバックプレーンbpから剥離される。その後、バックプレーンbpの第1主面bpAに支持フィルムF1が貼付される。これによれば、バックプレーンbpが有する可撓性を維持しつつも、バックプレーンbpの強度を補強することができ、表示装置1自体が折れて破損してしまうことを防ぐことができる。
【0042】
以上説明した一連の第1~第7工程が行われることにより、
図2に示した表示装置1が製造される。
【0043】
以下では、一般的な表示装置の製造方法を比較例にして、本実施形態に係る表示装置1の製造方法の効果について説明する。なお、比較例は、本実施形態に係る表示装置1の製造方法が奏し得る効果の一部を説明するためのものであって、比較例と本実施形態とで共通する構成や効果を本願発明の範囲から除外するものではない。
【0044】
一般的な表示装置の製造方法では、バックプレーンbpの切り出し工程において発生するガラスカレットを除去するための研磨工程が必要である。しかしながら、本実施形態に係る表示装置1のバックプレーンbpのようなポリイミド基板においては、基板上に形成される各種配線パターンが脆く、上記した研磨工程に耐えることができずに破損してしまう恐れがある。
【0045】
これに対し、本実施形態に係る表示装置1の製造方法では、バックプレーンbpの表面に保護フィルムF2を貼付した上で、バックプレーンbpの切り出しが行われるため、バックプレーンbpの表面にガラスカレットが付着してしまうことを防ぐことができ、上記した研磨工程を省略することが可能である。このため、バックプレーンbpに形成されるスイッチング素子や各種配線パターンが上記した研磨工程により破損してしまうことを防ぐことができる。
【0046】
また、本実施形態に係る表示装置1は、樹脂部材6により表示パネル2と第1回路基板3とが一体化されているため、表示装置1が製造されるまでの過程で、第1回路基板3が折れて破損してしまうことを防ぐことができる。
【0047】
なお、本実施形態では、バックプレーンbpの表面にガラスカレットが付着してしまうことを防ぐために、バックプレーンbpの表面に保護フィルムF2を貼付した上で、バックプレーンbpの切り出しを行うとしたが、バックプレーンbpの表面にガラスカレットが付着してしまうことを防ぐ方法はこれに限定されない。以下では、
図13を参照して、バックプレーンbpの表面にガラスカレットが付着してしまうことを防ぐことが可能な別の方法について説明する。
【0048】
図13(a)および(b)に示すように、発光素子LEDが実装される前のガラス基板10の上に多数のバックプレーンbpが形成された大判のバックプレーンBPが二つ用意され、これら二つのバックプレーンBPに含まれる多数のバックプレーンbpが互いに向き合うように、二つのバックプレーンBPが貼り合わされる。その後、
図13(c)に示すように、二つのバックプレーンBPに含まれるガラス基板10がスリミングにより薄く削られた後に、
図13(d)に示すように、二つのバックプレーンBPは個片にカットされ、多数のバックプレーンbpが形成される。
【0049】
この場合、一方のバックプレーンBPに含まれるバックプレーンbpの表面は、他方のバックプレーンBPに含まれるバックプレーンbpにより覆われているため、その表面にガラスカレットが付着してしまうことを防ぐことが可能である。また、
図13に示した方法によれば、
図3に示した方法に比べて2倍のバックプレーンbpを一度に形成することが可能であるため、ガラスカレットが付着することを防ぐことに加えて、より生産性を向上させることが可能である。
【0050】
以上説明した本実施形態では、表示装置1(表示パネル2)に実装される発光素子LEDが、発光層LIの一方の面にアノード端子ANとカソード端子CNとの両方が並んで配置されるタイプのマイクロLEDである場合について説明したが、これに限定されず、発光素子LEDは、発光層LIを挟んでアノード端子ANとカソード端子CNとが対向して配置されるタイプのマイクロLEDであっても構わない。以下では、
図14~
図22を参照して、発光素子LEDが発光層LIを挟んでアノード端子ANとカソード端子CNとが対向して配置されるタイプのマイクロLEDである場合の表示装置1の製造方法について説明する。
【0051】
まず、
図3および
図13に示した切り出し工程のどちらかによりバックプレーンbpが形成されると、発光素子LEDの実装工程が行われる。具体的には、
図14に示すように、LEDウエハのベース基板であるサファイア基板20に配置された複数の発光素子LEDが、バックプレーンbp上に実装される。この時点では、発光素子LEDは、発光層LIとアノード端子AN、カソード端子CNとにより構成されるが、バックプレーンbp上に実装されるのは、アノード端子ANもしくはカソード端子CNの一方であり、本説明においては、バックプレーンbpに実装されるのはアノード端子ANとする。複数の発光素子LEDがバックプレーンbp上に実装されると、所定の波長帯のレーザ光がサファイア基板20側から複数の発光素子LEDに向けて照射され、
図15に示すように、サファイア基板20が複数の発光素子LEDから剥離され、発光素子LEDのカソード端子CNが露出される。サファイア基板20が剥離されると、表示パネル2の外形を整えるためのチャンファリングが行われる。
【0052】
バックプレーンbpに複数の発光素子LEDが実装されると、発光素子LEDが正常に点灯するかどうかをチェックするための第1点灯検査が行われる。なお、上記したように、この時点では、複数の発光素子LEDには、カソード端子CNがバックプレーンbpに備える後述するカソード電極CAに接続されていないため、カソード端子CNの上にカソード検査基板を一時的に接続させることで、上記した第1点灯検査が行われる。カソード検査基板は、バックプレーン基板bpとは異なる外部基板であって、カソード電位に相当する電位を共有する検査用カソード電極を備えている。このカソード検査基板を複数のカソード端子CNに押し当てることで、第1点灯検査を行っている。
【0053】
次に、発光素子LEDのリペア工程が行われる。具体的には、
図16に示すように、上記した発光素子LEDの実装工程において正常に実装できなかった箇所への発光素子LEDの補填、ならびに、上記した第1点灯検査において正常に点灯しなかった発光素子LEDの取替、などが行われる。なお、発光素子LEDのリペア工程の後に、第1点灯検査に相当する点灯検査が再度行われ、当該点灯検査において、発光素子LEDが正常に実装されていない箇所や、正常に点灯しない発光素子LEDが見つかった場合、発光素子LEDのリペア工程が再度行われてもよい。
【0054】
続いて、平坦化膜(封止膜)およびカソード電極CAの実装工程が行われる。具体的には、まず、バックプレーンbpの上に、平坦化膜30が形成される。なお、平坦化膜30は、隣接する発光素子LEDの間にも充填される。平坦化膜30が形成されると、
図17に示すように、その上に発光素子LEDのカソード端子CN同士を接続するためのカソード電極CAが実装される。カソード電極CAは、複数の発光素子LEDに亘って配置され、バックプレーンbpの周辺領域NDAにてカソード電位に接続される。
【0055】
発光素子LEDが、発光層LIを挟んでアノード端子ANとカソード端子CNとが対向して配置されるタイプのマイクロLEDである場合、ここまでの工程がLEDチップトランスファ工程に相当する。
【0056】
LEDチップトランスファ工程が完了すると、発光素子LEDが正常に点灯するかどうかをチェックするための第2点灯検査が行われる。
【0057】
その後、対向基板の実装工程が行われる。具体的には、まず、カバー部材CGの第1主面CGAに接着層OCAが貼付される。そして、カバー部材CGと接着層OCAとを含む対向基板が、カソード電極CAの上に圧着される。その後、接着層OCA部分を高圧力にするオートクレーブが行われ、
図18に示す表示パネル2が構成される。
【0058】
次に、各種回路基板の実装工程が行われる。具体的には、
図19に示すように、第1回路基板3がFOGにより表示パネル2の端子領域MT上に実装される。また、パネルドライバ5がCOFにより第1回路基板3上に実装される。
また、上述のようにパネルドライバ5は表示パネル2に設けられるものであってもよい。パネルドライバ5が表示パネル2に実装される場合も同様に、カバー部材CGが表示パネル2に貼り付けられた後、パネルドライバ5が表示パネル2のカバー部材CGから露出した端子領域MT上に実装され、さらに第1回路基板3が表示パネル2の端子領域MTに実装されることになる。この場合、表示パネル2に実装されたパネルドライバ5は、カバー部材CGと重ならない。
【0059】
続いて、樹脂部材6の実装工程が行われる。具体的には、
図20に示すように、表示パネル2のカバー部材CGの端子領域MT側の側面と、第1回路基板3のうちの端子領域MTと平面視において重畳する部分とを接続するように、樹脂部材6が塗布され、表示パネル2と第1回路基板3とが一体化される。
【0060】
樹脂部材6の実装工程の後に、発光素子LEDが正常に点灯するかどうかをチェックするための第3点灯検査が行われる。
しかる後、支持フィルムF1の貼付工程が行われる。具体的には、所定の周波数帯のレーザ光がガラス基板10側からバックプレーンbpに向けて照射され、
図21に示すように、ガラス基板10がバックプレーンbpから剥離された後に、
図22に示すように、バックプレーンbpの第1主面bpAに支持フィルムF1が貼付されて、表示装置1が構成される。
【0061】
以上のように、
図14~
図22を参照して説明した一連の製造方法であっても、バックプレーンbpの切り出し工程、ならびに、樹脂部材6の実装工程は、
図2~
図13を参照して説明した製造方法と変わりないため、既に説明した効果と同様な効果を得ることが可能である。
【0062】
なお、以上説明した製造方法では、サファイア基板20が複数の発光素子LEDから剥離された後に、表示パネル2の外形を整えるチャンファリングが行われるとしたが、チャンファリングを行うタイミングはこれに限定されず、例えば、支持フィルムF1を貼付した後にチャンファリングが行われるとしてもよい。これによれば、カバー部材CGも含めてチャンファリングを行うことが可能なため、外形公差を考慮した裕度をカバー部材CGに持たせる必要がなく、カバー部材CGを実装する前にチャンファリングを行う場合に比べて、狭額縁化を実現することが可能である。
【0063】
以上説明した一実施形態によれば、通常であれば必要な研磨工程を省略可能であり、かつ、製造工程途中で破損し辛い表示装置1の製造方法が実現され得る。つまり、本実施形態によれば、生産性を向上させ得る(生産性の高い)マイクロLEDディスプレイの製造方法およびマイクロLEDディスプレイを提供することが可能である。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1…表示装置、2…表示パネル、3…第1回路基板、4…第2回路基板、5…パネルドライバ、6…樹脂部材、10…ガラス基板、20…サファイア基板、30…平坦化膜、bp…バックプレーン、LED…発光素子、LI…発光層、AN…アノード端子、CN…カソード端子、OCA…接着層、CG…カバー部材。