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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241111BHJP
【FI】
H02M7/48 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021001688
(22)【出願日】2021-01-07
(65)【公開番号】P2022106582
(43)【公開日】2022-07-20
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】小林 賢太
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-170374(JP,A)
【文献】特開平10-202365(JP,A)
【文献】特開2005-086921(JP,A)
【文献】特開2017-028970(JP,A)
【文献】特開2013-162671(JP,A)
【文献】特開昭57-046676(JP,A)
【文献】特開2000-295841(JP,A)
【文献】実開昭56-017893(JP,U)
【文献】国際公開第2020/070815(WO,A1)
【文献】特公昭50-000410(JP,B1)
【文献】特開2015-033179(JP,A)
【文献】米国特許第06021035(US,A)
【文献】特開平10-180443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流の電気信号を交流の電気信号に変換するインバータと、
一次巻線、二次巻線、及び三次巻線を備え、前記交流の電気信号が入力された前記一次巻線の端子間の電圧である一次電圧を前記二次巻線の端子間の電圧である二次電圧、及び、前記三次巻線の端子間の電圧である三次電圧へ変換する変圧器と、
前記二次巻線から出力される電気信号の電流である二次電流と、前記三次巻線の前記三次電圧とに基づき前記インバータの動作を制御するゲート信号を生成する制御回路と、
を備え
前記制御回路は、
前記三次電圧から推定される前記二次電圧の推定値を、前記二次電流の増大に応じて増加させて補正し、
前記補正された推定値を前記二次電圧の指令値に近づけるための前記ゲート信号を生成する、
電力変換装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記二次巻線の巻数と前記三次巻線の巻数との比に基づき前記三次電圧から推定される前記二次電圧の推定値を、前記二次電流の増大に応じて増加させて補正する、請求項に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記二次巻線から出力される前記二次電流の電流値を検出する電流検出器を更に備え、
前記制御回路は、前記電流検出器により検出された前記二次電流の電流値に基づき、前記ゲート信号を生成する、
請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記一次巻線を流れる電気信号の電流である一次電流の電流値を検出する電流検出器を更に備え、
前記制御回路は、前記電流検出器により検出された前記一次電流の電流値から推定される前記二次電流の電流値に基づき、前記ゲート信号を生成する、
請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記インバータは、前記直流の電気信号を三相交流の電気信号に変換し、
前記変圧器は、前記三相交流の電気信号を入力して、当該三相交流の電気信号の各々の相について、前記一次電圧を前記二次電圧及び前記三次電圧へ変換する、
請求項1からのいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記インバータは、前記直流の電気信号が入力される第1の端子及び第2の端子の間で直列に接続された第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子をそれぞれ有する第1から第3のレグを備え、
前記制御回路は、前記第1から第3のレグの各々の前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子の導通を切り替えるための信号を前記ゲート信号として生成する、
請求項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記インバータから出力される前記交流の電気信号から、予め定められた周波数帯の電気信号を通過させるフィルタを更に備え、
前記変圧器の前記一次巻線は、前記フィルタから出力された前記予め定められた周波数帯の電気信号を入力する、
請求項1からのいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次側の負荷の電圧を監視しつつ、入力された電気信号を主回路変圧器により変圧する電力変換システムでは、二次側の交流電圧を制御部において検出可能な低い電圧に変換する必要がある。二次側の交流電圧を変換する方式として、一般的には計器用変成器(Voltage Transformer、以下「VT」と称する。)が用いられている。
【0003】
図5は、VTを用いた電力変換装置9の構成を示す図である。電力変換装置9は、直流電源91、インバータ92、フィルタ93、主回路変圧器94、電流検出器95(95u,95v,95w)、VT98、及び制御回路80を備える。電力変換装置9において、インバータ92は、直流電源91の電気信号をU相、V相、及びW相の三相交流の電気信号に変換して、フィルタ93へ出力する。フィルタ93は、入力された三相交流の電気信号から特定の周波数帯の電気信号を通過させる。主回路変圧器94は、フィルタ93を通過した三相交流の電気信号の変圧を行う。電流検出器95(95u,95v,95w)は、主回路変圧器94において変圧された各相の電気信号について電流を検出し、検出した電流を制御回路80へ通知する。主回路変圧器94において変圧された各相の電気信号は、端子96(96u,96v,96w)を介してVT98へ出力される。VT98は、入力された各相の電気信号を変圧し、制御回路80へ出力する。制御回路80は、VT98から入力された電気信号に基づき、インバータ92における各相のゲート信号を生成し、インバータ92へ出力する。
【0004】
図6は、電力変換装置9に含まれる制御回路80の構成を示す図である。制御回路80は、減算器83、加算器85、及びゲート信号生成部87を備える。減算器83には、二次電圧の指令値が予め設定されている。減算器83は、VT98から入力された電気信号の電圧(二次電圧)の検出値を二次電圧の指令値から減算する。二次電圧の指令値は端子81を介して加算器85へも出力される。加算器85は、減算器83における減算結果に二次電圧の指令値を加算し、ゲート信号生成部87へ出力する。ゲート信号生成部87は、入力された信号に基づきゲート信号を生成し、インバータ92へ出力する。
【0005】
一方、VTを用いずに一次巻線、二次巻線、及び三次巻線を有するトランスを備えたDC-DCコンバータが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-61352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、図6の構成のように、主回路変圧器とは別にVTを用いて二次側の電圧検出を行う構成においては、主回路変圧器とVTの2つの変圧器を使用することになり、装置構成が大型化してしまうという課題があった。
【0008】
また、特許文献1の構成は、負荷に印加される二次側の電圧を検出しないため、二次側の電圧を高精度に制御することが困難であった。
【0009】
本開示の目的は、電力変換システムにおいて、小さな構成により高精度に二次電圧を制御することが可能な電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、電力変換装置は、直流の電気信号を交流の電気信号に変換するインバータと、一次巻線、二次巻線、及び三次巻線を備え、前記交流の電気信号が入力された前記一次巻線の端子間の電圧である一次電圧を前記二次巻線の端子間の電圧である二次電圧、及び、前記三次巻線の端子間の電圧である三次電圧へ変換する変圧器と、前記二次巻線から出力される電気信号の電流である二次電流と、前記三次巻線の前記三次電圧とに基づき前記インバータの動作を制御するゲート信号を生成する制御回路と、を備え、前記制御回路は、前記三次電圧から推定される前記二次電圧の推定値を、前記二次電流の増大に応じて増加させて補正し、前記補正された推定値を前記二次電圧の指令値に近づけるための前記ゲート信号を生成する。
【0012】
また、前記制御回路は、前記二次巻線の巻数と前記三次巻線の巻数との比に基づき前記三次電圧から推定される前記二次電圧の推定値を、前記二次電流の増大に応じて増加させて補正する。
【0013】
また、前記二次巻線から出力される前記二次電流の電流値を検出する電流検出器を更に備え、前記制御回路は、前記電流検出器により検出された前記二次電流の電流値に基づき、前記ゲート信号を生成する。
【0014】
また、前記一次巻線を流れる電気信号の電流である一次電流の電流値を検出する電流検出器を更に備え、前記制御回路は、前記電流検出器により検出された前記一次電流の電流値から推定される前記二次電流の電流値に基づき、前記ゲート信号を生成する。
【0015】
また、前記インバータは、前記直流の電気信号を三相交流の電気信号に変換し、前記変圧器は、前記三相交流の電気信号を入力して、当該三相交流の電気信号の各々の相について、前記一次電圧を前記二次電圧及び前記三次電圧へ変換する。
【0016】
また、前記インバータは、前記直流の電気信号が入力される第1の端子及び第2の端子の間で直列に接続された第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子をそれぞれ有する第1から第3のレグを備え、前記制御回路は、前記第1から第3のレグの各々の前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子の導通を切り替えるための信号を前記ゲート信号として生成する。
【0017】
また、前記インバータから出力される前記交流の電気信号から、予め定められた周波数帯の電気信号を通過させるフィルタを更に備え、前記変圧器の前記一次巻線は、前記フィルタから出力された前記予め定められた周波数帯の電気信号を入力する。
【発明の効果】
【0018】
本開示の一実施形態によれば、電力変換システムにおいて、小さな構成により高精度に二次電圧を制御することが可能な電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の一実施形態に係る電力変換装置の構成を示す図である。
図2図1の電力変換装置に含まれるインバータの構成を示す図である。
図3図1の電力変換装置に含まれる制御回路の構成を示す図である。
図4】検出電圧の補正を模式的に示す図である。
図5】従来の電力変換装置の構成を示す図である。
図6図5の電力変換装置に含まれる制御回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。各図面中、同一又は相当する部分には、同一符号を付している。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0021】
図1は、本開示の一実施形態に係る電力変換装置1の構成を示す図である。電力変換装置1は、直流電源10、インバータ20、フィルタ30、主回路変圧器40、電流検出器50(50u,50v,50w)、及び制御回路60を備える。主回路変圧器40は、一次巻線42(42u,42v,42w)、鉄心43、二次巻線45(45u,45v,45w)、及び三次巻線47(47u,47v,47w)を備える。本実施形態に係る電力変換装置1は、VTを用いずに、主回路変圧器40において三次巻線付きの三巻線変圧器を使用するため、一定の空間を占める変圧器は1つしか備えない。したがって、本実施形態の電力変換装置1によれば、小さな構成により二次電圧を変圧することが可能である。また、電力変換装置1は、制御回路60において、二次巻線45から出力される電気信号の電流である二次電流と、三次巻線47の三次電圧とに基づきインバータ20の動作を制御するゲート信号を生成する。したがって、本実施形態の電力変換装置1によれば、二次電圧を高精度に制御することが可能である。
【0022】
電力変換装置1において、直流電源10は、第1の端子11及び第2の端子12を介して、インバータ20へ直流の電気信号を出力する。図1の例では、第1の端子11及び第2の端子12の間に直流の電圧信号が入力される。
【0023】
インバータ20は、第1の端子11及び第2の端子12を介して入力された直流の電気信号を交流の電気信号に変換する。図2は、インバータ20の構成を示す図である。インバータ20は、直流の電気信号を三相交流の電気信号に変換する三相のインバータ回路である。インバータ20は、直流の電気信号が入力される第1の端子11及び第2の端子12の間で直列に接続された第1のスイッチング素子24,26,28及び第2のスイッチング素子25,27,29をそれぞれ有する第1から第3のレグ21~23を備える。スイッチング素子24~29は、トランジスタ(例えば、IGBT又はMOSFET)とフリーホイールダイオードとを逆並列接続したものである。スイッチング素子24及び25は直列接続され、インバータ20のU相のレグ21を構成する。スイッチング素子26及び27は直列接続され、インバータ20のV相のレグ22を構成する。スイッチング素子28及び29は直列接続され、インバータ20のW相のレグ23を構成する。インバータ20は、各相の位相が互いに120度ずつずれるように、制御回路60によりスイッチング素子24~29の導通が切り替えられることにより、三相交流の電気信号を生成する。インバータ20により生成された三相交流の電気信号はフィルタ30へ出力される。
【0024】
フィルタ30は、インバータ20から出力された三相交流の電気信号から予め定められた周波数帯の電気信号を通過させる。フィルタ30は、例えば、ローパスフィルタ(LPF:Low Pass Filter)、ハイパスフィルタ(HPF:High Pass Filter)、又はバンドパスフィルタ(BPF:Band Pass Filter)とすることができる。ローパスフィルタ(LPF)は、直流及び低周波の信号を通過させ、高周波の信号をカットするフィルタ回路である。ハイパスフィルタ(HPF)は、直流及び低周波の信号をカットし、高周波の信号を通過させるフィルタ回路である。バンドパスフィルタ(BPF)は、特定の周波数の信号のみ通過させ、それ以外の周波数の信号をカットするフィルタ回路である。フィルタ30は、例えば、インダクタ(L)及びコンデンサ(C)を組み合わせたLCフィルタにより実現することができる。フィルタ30を通過したU相、V相、W相の電気信号は端子41(41u,41w,41w)へ出力される。フィルタ30を設けることにより、雑音が少ない性能のよい交流信号の生成が可能となる。
【0025】
主回路変圧器40は、フィルタ30を通過した三相交流の電気信号の変圧を行う。主回路変圧器40は、一次巻線42、二次巻線45、及び三次巻線47を備え、交流の電気信号が入力された一次巻線42の端子41間の電圧である一次電圧を二次巻線45の端子間の電圧である二次電圧、及び、三次巻線47の端子間の電圧である三次電圧へ変換する。一次巻線42uは端子41u及び41vの間に設けられ、一次巻線42vは端子41v及び41wの間に設けられ、一次巻線42wは端子41w及び41uの間に設けられる。一次巻線42(42u,42v,42w)の端子間の電圧である一次電圧は、鉄心43を介して、二次巻線45(45u,45v,45w)及び三次巻線47(47u,47v,47w)へ変圧される。一次巻線42(42u,42v,42w)の巻数である一次巻数はnであり、二次巻線45(45u,45v,45w)の巻数である二次巻数はnであり、三次巻線47(47u,47v,47w)の巻数である三次巻数はnである。一次巻線42(42u,42v,42w)の端子間の電圧である一次電圧(u,v,w)、二次巻線45(45u,45v,45w)の端子間の電圧である二次電圧(u,v,w)、及び三次巻線47(47u,47v,47w)の端子間の電圧である三次電圧(u,v,w)は、次のような関係にある。
(u,v,w)=(n/n)×(u,v,w
(u,v,w)=(n/n)×(u,v,w
(u,v,w)=(n/n)×(u,v,w
三次電圧(u,v,w)は制御回路60へ通知される。
【0026】
電流検出器50(50u,50v,50w)は、主回路変圧器40において変圧され、二次巻線45(45u,45v,45w)から出力された各相の電気信号の電流である二次電流の電流値(iu,iv,iw)を検出し、検出した電流値(iu,iv,iw)を制御回路60へ通知する。二次巻線45(45u,45v,45w)から出力された電気信号は、不図示の負荷へ出力される。
【0027】
制御回路60は、二次巻線45から出力される電気信号の電流である二次電流と、三次巻線47の三次電圧(u,v,w)とに基づきインバータ20の動作を制御するゲート信号を生成する。図3は、制御回路60の構成を示す図である。制御回路60は、換算器61、算出器63、加算器64、減算器66、加算器67、及びゲート信号生成部68を備える。
【0028】
換算器61は、三次巻線47から通知された三次電圧(u,v,w)を、二次巻線45の巻数n及び三次巻線47の巻数nに基づき、二次電圧の推定値に換算する。すなわち、換算器61は、三次電圧(u,v,w)に対して(n/n)を乗じることにより、三次電圧(u,v,w)を二次電圧の推定値(n/n)×(u,v,w)に換算する。本実施形態では、算出器63及び加算器64を含む補正部62により、三次電圧から換算して推定された二次電圧の測定値が補正され、補正済みの二次電圧に基づきインバータ20の動作を制御するためのゲート信号が生成される。
【0029】
制御回路60は、換算器61により換算された二次電圧の推定値(n/n)×(u,v,w)に基づきインバータ20の動作を制御するためのゲート信号を生成する。しかし、一般に変圧器は負荷電流が増加すると負荷側の電圧が降下するという性質を有する。特に、主回路変圧器40のような三巻線変圧器においては、三次巻線が測定機器等のように高インピーダンスで一定の負荷に接続されている場合であっても、二次巻線の負荷増加に応じて三次巻線の電圧が降下することが知られている。そのため、単に三次電圧を二次巻線の巻数及び三次巻線の巻数に基づき換算するだけでは、検出したい二次巻線の電圧に相当する電圧を得ることができず、高精度に二次電圧を制御することができない。そこで、本実施形態に係る制御回路60は、電流検出器50で検出した二次側の主回路電流(iu,iv,iw)の大きさに応じて、三次電圧(u,v,w)を換算して取得された値(n/n)×(u,v,w)を補正し、二次電圧の推定値とする。したがって、制御回路60は、二次電圧の正確な推定値を取得することができ、この正確な推定値に基づきゲート信号を生成するため、高精度に二次電圧を制御することが可能である。
【0030】
算出器63は、電流検出器50から通知された二次電流の電流値(iu,iv,iw)の増大に応じて増加する値G(iu,iv,iw)を出力する。Gは、二次電流の電流値(iu,iv,iw)の増大に応じて増加する増加関数である。例えば、算出器63は、電流値(iu,iv,iw)に対して値a(>1)を乗じる乗算器としてもよい。すなわち、G(iu,iv,iw)=a×(iu,iv,iw)としてもよい。Gは、変圧器の特性を実験により測定し、そのような特性に応じて決定することができる。
【0031】
加算器64は、換算器61から出力される二次電圧の推定値(n/n)×(u,v,w)に算出器63の出力G(iu,iv,iw)を加算する。加算器64の出力(n/n)×(u,v,w)+G(iu,iv,iw)は、二次電圧の補正値となる。G(iu,iv,iw)=a×(iu,iv,iw)の場合、二次電圧の補正値は、(n/n)×(u,v,w)+a×(iu,iv,iw)である。例えば、n/n=100、三次電圧(検出値)4V、二次側負荷電流100A、a=0.4のとき、二次電圧(補正値)uは、
=100×4+0.4×100
=440[V]
となる。
【0032】
制御回路60は二次電圧の目標値である指令値(ju,jv,jw)を生成する。二次電圧の指令値(ju,jv,jw)は、分岐65を介して減算器66及び加算器67へ出力される。減算器66は、二次電圧の指令値(ju,jv,jw)から、加算器64の出力(n/n)×(u,v,w)+G(iu,iv,iw)を減算して、減算の結果(ju,jv,jw)-(n/n)×(u,v,w)-G(iu,iv,iw)を出力する。加算器67は、二次電圧の指令値(ju,jv,jw)と、減算器66の出力(ju,jv,jw)-(n/n)×(u,v,w)-G(iu,iv,iw)とを加算し、加算の結果2×(ju,jv,jw)-(n/n)×(u,v,w)-G(iu,iv,iw)を出力する。
【0033】
ゲート信号生成部68は、加算器67の出力に基づき、加算器64から出力される二次電圧の補正済みの推定値(n/n)×(u,v,w)+G(iu,iv,iw)を、二次電圧の指令値(ju,jv,jw)に近づけるためのゲート信号Gsup,Gsun,Gsvp,Gsvn,Gswp,Gswnを生成する。ゲート信号生成部68は、三相変調又は二相変調によりこのようなゲート信号を生成することができる。
【0034】
図4は、検出電圧の補正を模式的に示す図である。図4において、(a)は、二次巻線45(45u,45v,45w)を流れる二次電流の実効値を示す。(b)は、二次電圧の実効値を示す。(c)は、換算器61において三次電圧を巻数比(n/n)に基づき換算して算出された、二次電圧の推定値(n/n)×(u,v,w)を示す。(d)は、補正部62において(c)の推定値を二次電流の増大に応じて増加する補正値により補正した、二次電圧の推定値(n/n)×(u,v,w)+G(iu,iv,iw)を示す。
【0035】
(a)において、二次電流は、時刻t3において増大し、時刻t4において更に増大している。そのため、時刻t4において、巻数比に基づく二次電圧の推定値の下落幅72は、二次電圧の実効値の下落幅71よりも大きくなっている((b)、(c))。これに対して、補正部62により補正された二次電圧の推定値の下落幅73は、二次電圧の実効値の下落幅71とほぼ同じである((d))。このように、本実施形態によれば、制御回路60は、二次電圧の実効値に近い二次電圧の推定値を取得することができる。したがって、電力変換装置1は、二次電圧の実効値に近い二次電圧の推定値に基づき変圧をすることができるため、高精度に二次電圧を制御することが可能である。
【0036】
以上のように、本実施形態に係る電力変換装置1は、VTを用いないため、小さな構成により実現することが可能である。また、電力変換装置1は二次電流と三次電圧に基づきゲート信号を生成するため、高精度な二次電圧の制御が可能である。具体的には、電力変換装置1の制御回路60は、三次電圧から推定される二次電圧の推定値を、二次電流の増大に応じて増加させて補正し、補正された二次電圧の推定値を二次電圧の指令値に近づけるためのゲート信号を生成する。ここで、二次電圧の推定値は、二次巻線45の巻数nと三次巻線47の巻数nとの比に基づき三次電圧から推定される。したがって、二次電流の増大に応じて三次電圧が大きく低下し、三次電圧を換算して取得される二次電圧の推定値が二次電圧の実効値から乖離したとしても、制御回路60は、二次電流に応じて二次電圧の推定値を補正することで、二次電圧の実効値に近い値を取得する。そのため、制御回路60は、二次電圧の実効値に近い値に基づき高精度な二次電圧の制御を行うことが可能である。
【0037】
なお、上記の実施形態例では、主回路変圧器40は、一次巻線42、二次巻線45、及び三次巻線47の3つの巻線を備え、そのうち2つの巻線が出力巻線として機能するが、主回路変圧器40は、3つ以上の出力巻線を有してもよい。また、上記の実施形態例では、直流の電気信号を三相交流の電気信号に変換し、主回路変圧器40は、その三相交流の電気信号の各々の相について、一次電圧を二次電圧及び三次電圧へ変換する例を説明したが、変圧の対象は三相の電気信号に限られない。例えば、電力変換装置1は、単相又は二相の電気信号を変圧してもよい。したがって、同時に送出される交流信号の数にかかわらず、高精度な二次電圧の制御が可能である。また、電力変換装置1は、変圧器の結線方式によらずに適用することが可能である。
【0038】
また、上記の実施形態例では、二次巻線45に接続された回線に電流検出器50を設けて二次電流の電流値を検出したが、電流検出器を一次側に配置し、一次巻線42を流れる電気信号である一次電流を二次電流に換算して二次電流の電流値を検出してもよい。すなわち、電力変換装置1は、一次巻線42を流れる一次電流の電流値を検出する電流検出器を更に備え、制御回路60は、検出された一次電流の電流値から推定される二次電流の電流値に基づき、ゲート信号を生成してもよい。この場合、二次電流は、一次電流の電流値に変圧比(n/n)を乗じることにより推定することができる。
【0039】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、ブロック図に記載の複数のブロックは統合されてもよいし、又は1つのブロックは分割されてもよい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、産業システム及び送配電システム全般において適用することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 電力変換装置
9 VTを用いた電力変換装置
10 直流電源
11,12 端子
20 インバータ
21~23 レグ
24~29 スイッチング素子
30 フィルタ
40 主回路変圧器
41 端子
42 一次巻線
43 鉄心
45 二次巻線
47 三次巻線
50 電流検出器
60 制御回路
61 換算器
62 補正部
63 算出器
64,67 加算器
66 減算器
68 ゲート信号生成部
80 制御回路
83 減算器
85 加算器
87 ゲート信号生成部
91 直流電源
92 インバータ
93 フィルタ
94 主回路変圧器
95 電流検出器
98 VT
図1
図2
図3
図4
図5
図6