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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】ガス検知器
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/16 20060101AFI20241111BHJP
   G01N 27/12 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
G01N27/16 A
G01N27/12 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021005694
(22)【出願日】2021-01-18
(65)【公開番号】P2022110355
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【弁理士】
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】舩橋 祐一
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-119061(JP,A)
【文献】特開2003-290630(JP,A)
【文献】国際公開第2019/022081(WO,A1)
【文献】特開2010-271048(JP,A)
【文献】特開2007-10326(JP,A)
【文献】特表平7-501891(JP,A)
【文献】特開2013-083573(JP,A)
【文献】特開2014-62909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00
G01N 1/22 - G01N 1/26
G01N 27/00 - G01N 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス導入管が接続されるガス吸引口と、空気吸引口と、排気口と、が形成された筐体と、
前記筐体内に設けられ、前記ガス吸引口から被検知ガスを吸引し、前記空気吸引口から外部空気を吸引し、前記排気口へ送りだすポンプと、
前記筐体内に設けられ、外部空気により希釈された被検知ガスを検知するガス検知部と、を備え、
前記空気吸引口は、平面視で、前記筐体において前記排気口とは異なる方向を向いて開口し、前記排気口に対して前記筐体の中心線より反対側の位置に形成され、
前記ガス吸引口は、平面視で、前記筐体において前記空気吸引口と反対側を向いて開口している、ガス検知器。
【請求項2】
前記空気吸引口は、平面視で、前記ガス吸引口に対して前記筐体の中心線より反対側の位置に形成されている、請求項1に記載のガス検知器。
【請求項3】
前記ガス吸引口および前記排気口は、前記筐体において同じ側を向いて開口している、請求項1または2に記載のガス検知器。
【請求項4】
前記筐体は、上面、下面、および前後左右の各側面を含み、
前記ガス吸引口は、前記筐体の前記側面よりも前記筐体の中央側へ引退した位置に形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のガス検知器。
【請求項5】
前記筐体は、前記上面と前側の前記側面とが交わる角部において切欠状に形成された凹部を有し、
前記ガス吸引口は、前記凹部に形成されている、請求項4に記載のガス検知器。
【請求項6】
前記凹部は、前記上面と前側の前記側面とが交わる2つの角部にそれぞれ形成され、
前記ガス吸引口は、前記排気口が配置された一方側の前記凹部に形成され、
前記空気吸引口が、他方側の前記凹部に形成されている、請求項5に記載のガス検知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス検知器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス吸引口、空気吸引口および排気口が設けられたガス検知器が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、吸気パイプやチューブが接続され被測定ガスを導入するガス吸気管と、空気吸気管と、排気管と、が設けられた本体を備える可燃性ガス濃度測定装置が開示されている。本体内には、混合部、吸気ポンプ、ガスセンサが設けられている。吸気ポンプによりガスを吸引することにより、被測定ガスと空気とが混合部で混合され、混合された被測定ガスがガスセンサに供給される。ガスセンサを通過した被測定ガスが、吸気ポンプを通過して排気管から排気される。ガス吸気管と、空気吸気管とは、本体の左上隅部に設けられている。ガス吸気管は本体の左上隅部から上方に向けて設けられ、空気吸気管は本体の左上隅部から左方に向けて設けられている。排気管は、本体の右側面中央部から右方に向けて設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-119061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地中埋設管のガス漏洩検査などでは、ガス吸気管を検査箇所に向けることでガス吸引を行うが、ガスが漏洩している場合、検査箇所や検査箇所付近の地面から被検知ガスが周辺大気へ漏出する。上記特許文献1では、空気吸気管の開口が、ガス吸気管の近傍で、ガス吸気管の開口に対して横向きに設けられているため、ガス吸気管を検査箇所に向けた時に空気吸気管も検査箇所に近い位置の周辺空気を吸引することになる。その結果、大気中に漏出した被検知ガスを空気吸気管から吸引してしまうおそれがある。空気吸気管から吸引される空気が、被検知ガスを極力含まないことが、検知精度の観点で望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、大気中に漏出した被検知ガスを空気吸引口から吸引するのを抑制可能なガス検知器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一の局面によるガス検知器は、ガス導入管が接続されるガス吸引口と、空気吸引口と、排気口と、が形成された筐体と、筐体内に設けられ、ガス吸引口から被検知ガスを吸引し、空気吸引口から外部空気を吸引し、排気口へ送りだすポンプと、筐体内に設けられ、外部空気により希釈された被検知ガスを検知するガス検知部と、を備え、空気吸引口は、平面視で、筐体において排気口とは異なる方向を向いて開口し、排気口に対して筐体の中心線より反対側の位置に形成され、ガス吸引口は、平面視で、筐体において空気吸引口と反対側を向いて開口している。
【0008】
この発明の一の局面によるガス検知器では、上記のように、ガス吸引口は、平面視で、筐体において空気吸引口と反対側を向いて開口している。これにより、ユーザがガス導入管を検査箇所に近づけ易いように、筐体のガス吸引口を検査箇所に向けた時、空気吸引口が、検査箇所から離れる方向側に向けて開口することになる。そのため、空気吸引口が検査箇所から離れた側から周辺大気を吸引できる。大気中の被検知ガス濃度は、検査箇所に近付く程上昇すると考えられるので、上記構成により、大気中に漏出した被検知ガスを空気吸引口から吸引するのを抑制できる。さらに、空気吸引口が、排気口に対して筐体の中心線より反対側の位置に、排気口とは異なる方向を向いて形成されるので、排気口から大気中へ排出された被検知ガスを空気吸引口から吸引することも抑制できる。
【0009】
上記一の局面によるガス検知器において、好ましくは、空気吸引口は、平面視で、ガス吸引口に対して筐体の中心線より反対側の位置に形成されている。このように構成すれば、筐体のガス吸引口が検査箇所に向けられた場合に、空気吸引口が、筐体のうちで検査箇所とは反対側の位置に配置される。そのため、ガス検知器の使用時に空気吸引口を検査箇所から離れた位置に位置付けることができるので、大気中に漏出した被検知ガスを空気吸引口から吸引するのを効果的に抑制できる。
【0010】
上記一の局面によるガス検知器において、好ましくは、ガス吸引口および排気口は、筐体において同じ側を向いて開口している。このように構成すれば、筐体のガス吸引口が検査箇所に向けられた場合に、排気口も検査箇所を向いて配置されるため、排気口から検査箇所側へ向けてガスを排出できる。そして、空気吸引口が、ガス吸引口および排気口の両方に対して反対側を向くので、大気中に漏出した被検知ガスおよび排気口から排出された被検知ガスの両方を、空気吸引口から吸引することを効果的に抑制できる。さらに、ガス検知器のガス検知部の校正作業時および点検作業時に、ガス吸引口と排気口とを、既知濃度の被検知ガスを収容したガスチャンバに接続し、その被検知ガスをガス検知器とガスチャンバとの間で循環させることがある。この場合に、ガス吸引口と排気口との両方が同じ側を向いているので、ガスチャンバとの接続を容易に行える。
【0011】
上記一の局面によるガス検知器において、好ましくは、筐体は、上面、下面、および前後左右の各側面を含み、ガス吸引口は、筐体の側面よりも筐体の中央側へ引退した位置に形成されている。なお、「引退した位置」とは、他の部位よりも筐体の中央側へオフセットした位置の意味であり、ガス吸引口が設けられている部分が、筐体の側面から突出しておらず、凹んだ形態になっていることを意味する。このように構成すれば、ガス導入管が接続されるガス吸引口が筐体の側面から突出しないので、ガス検知器の運搬時などにガス吸引口が障害物と接触しないように保護できる。接触等によりガス吸引口が歪み、歪んだ部分から筐体付近の空気が吸引されて被検知ガス中に混入してしまうことが抑制できるので、ガス濃度の検知精度を維持する観点で有効である。
【0012】
この場合、好ましくは、筐体は、上面と前側の側面とが交わる角部において切欠状に形成された凹部を有し、ガス吸引口は、凹部に形成されている。このように構成すれば、たとえば筐体の側面に凹部を設け、凹部の底の部分にガス吸引口を設けるような構成と異なり、ガス吸引口の周囲を筐体の表面で囲まれることなく、ガス吸引口を筐体の中央側へ引退した位置に配置できる。ガス吸引口が筐体の表面で囲まれないので、ガス導入管の接続作業を容易化できる。さらに、上面と前側の側面とが交わる角部に形成された凹部にガス吸引口が形成されるので、ユーザが、筐体の前側面と正対した状態のまま、筐体の他の側面をのぞき込んだりすることなく、ガス吸引口にアクセスできる。そのため、夜間、暗所などであってもガス導入管の接続やガス吸引口の点検などの作業を極めて容易に行える。
【0013】
上記筐体が上面と前側の側面とが交わる角部において切欠状に形成された凹部を有する構成において、好ましくは、凹部は、上面と前側の側面とが交わる2つの角部にそれぞれ形成され、ガス吸引口は、排気口が配置された一方側の凹部に形成され、空気吸引口が、他方側の凹部に形成されている。このように構成すれば、ガス吸引口のみならず、空気吸引口も、筐体の中央側へ引退した位置に形成できる。そのため、ユーザが、筐体の前側面と正対した状態のまま、ガス吸引口および空気吸引口の両方にアクセスできる。排気口と異なり、ガスが流入する吸引口は異物を除去しにくいため、両方の吸引口に前側面側からアクセスできることで、点検、使用時のユーザの利便性を向上できる。これにより、ガス吸引口と空気吸引口とを反対側に向けて空気吸引口からの被検知ガス吸引を抑制可能にしながら、ユーザの利便性を向上させることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記のように、大気中に漏出した被検知ガスを空気吸引口から吸引するのを抑制可能なガス検知器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ガス検知器の外観を示す斜視図である。
図2】ガス検知器のガス流路の構成を示す模式図である。
図3】ガス検知器の制御に関わる構成を示すブロック図である。
図4】ガス検知器の上面を示した平面図である。
図5】ガス検知器の前側面を示した図である。
図6】ガス検知器の右側面を示した図である。
図7】筐体の凹部を説明するための模式的な斜視図である。
図8】ガス検知器の使用時の作用を説明するための模式図である。
図9】ガス検知器の校正時および点検時の作用を説明するための模式図である。
図10】ガス吸引口および空気吸引口の開口方向の変形例を説明するためのガス検知器の模式的な平面図(上面図)である。
図11】ガス吸引口および空気吸引口の形成位置の変形例を説明するためのガス検知器の模式的な平面図(上面図)である。
図12】凹部の変形例を示したガス検知器の模式的な斜視図である。
図13】ガス導入部および空気導入部の変形例を示したガス検知器の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1図7を参照して、一実施形態によるガス検知器100の構成について説明する。
【0018】
(ガス検知器の全体構成)
ガス検知器100は、図1に示すように、ガス吸引口6から流入した被検知ガス1を検知するガス検知器である。ガス検知器100は、検査箇所に存在する被検知ガス1をガス吸引口6から取得して、取得した被検知ガス1の濃度を検出する。被検知ガスとは、ガス検知器100が検知すべきガスである。
【0019】
ガス検知器100は、ガス導入管40が接続されるガス吸引口6と、空気吸引口7と、排気口12、13と、が形成された筐体5を備える。ガス検知器100は、図2に示すように、筐体5内に設けられたポンプ(第1ポンプ16、第2ポンプ17)と、ガス検知部21~24と、を備えている。第1ポンプ16、第2ポンプ17は、特許請求の範囲の「ポンプ」の一例である。
【0020】
図1に示すように、筐体5は、ガス検知器100の外装である。筐体5は、箱状形状を有する。図1の構成例では、筐体5は、概略で直方体形状を有する。筐体5は、上面5a、下面5b、および前後左右の各側面(5c~5f)を含む。各側面とは、前側面5c、後側面5d、右側面5e、左側面5fの4つの側面である。図1の構成例では、筐体5には、1つのガス吸引口6と、1つの空気吸引口7と、2つの排気口12、13と、が設けられている。
【0021】
図1に示すガス検知器100は、ハンディ型ではなく、可搬型、簡易定置式のガス検知器である。簡易定置式のガス検知器100は、ストラップベルト(図示せず)などによりユーザが搬送して検査箇所付近に設置し、ガス導入管40を検査箇所まで引き延ばしてガス検査を行うことが可能に構成されている。検査箇所は、たとえば地中埋設管(ガス管)である。なお、ハンディ型とは、ユーザがガス検知器を手で把持した状態(衣服等に取り付けてもよい)で使用可能なサイズの小型ガス検知器である。
【0022】
図2に示すように、ガス検知器100は、筐体5内に、ガス流路10、第1ポンプ16、第2ポンプ17、ガス検知部21~24、希釈部25、制御部30を備えている。
【0023】
ガス流路10は、ガス吸引口6と、2つの排気口12、13とを接続している。ガス流路10は、ガスを流通させるための管部材(ガスチューブなど)の組み合わせにより構成されている。ガス流路10は、一端(上流端)がガス吸引口6と接続し、他端(下流端)が排気口12、13と接続している。ガス吸引口6は、筐体5の外部に開口している。排気口12、13は、筐体5の外部に開口している。
【0024】
ガス流路10は、分岐部15において、低濃度検知流路10aと高濃度検知流路10bとの2つの流路に分岐している。このため、ガス流路10は、上流端でガス吸引口6と接続し、低濃度検知流路10aおよび高濃度検知流路10bの各下流端でそれぞれ別々の排気口12および排気口13と接続している。低濃度検知流路10aは、相対的に低濃度の被検知ガス1を検知するための流路である。高濃度検知流路10bは、相対的に高濃度の被検知ガス1を検知するための流路である。
【0025】
ガス吸引口6と分岐部15との間に、第1ポンプ16が配置されている。第1ポンプ16は、ガス吸引口6からガス流路10内に被検知ガス1を吸引して、下流側の低濃度検知流路10aおよび高濃度検知流路10bへ送り出すように構成されている。
【0026】
低濃度検知流路10aは、分岐部15と排気口12とを接続する。低濃度検知流路10aには、ガス検知部21およびガス検知部22が設けられている。高濃度検知流路10bは、分岐部15と排気口13とを接続する。高濃度検知流路10bには、希釈部25、ガス検知部23、ガス検知部24、および第2ポンプ17が設けられている。高濃度検知流路10bは、希釈部25において空気吸引口7と接続している。空気吸引口7は、筐体5の外部に開口している。
【0027】
第2ポンプ17は、筐体5内に設けられ、ガス吸引口6から被検知ガス1を吸引し、空気吸引口7から外部空気2を吸引し、排気口13へ送りだすように構成されている。
【0028】
ガス検知部21~24は、筐体5内に設けられ、被検知ガス1を検知するように構成されている。後述するが、低濃度検知流路10aに設けられたガス検知部21および22は、外部空気2により希釈されていない被検知ガス1を、検知するように構成されている。高濃度検知流路10bに設けられたガス検知部23および24は、外部空気2により希釈された被検知ガス1を検知するように構成されている。
【0029】
〈低濃度検知流路〉
ガス検知部21およびガス検知部22は、いずれも、ガス検知素子により構成されている。ガス検知素子は、被検知ガス1との接触により、被検知ガス1の濃度に応じた信号を出力する。ガス検知素子は、特に限定されないが、本実施形態では接触燃焼式ガス検知素子である。接触燃焼式ガス検知素子は、ヒータ電極を構成する貴金属線コイルに、燃焼触媒を担持させた金属酸化物からなる感応層が設けられた構造を有する。接触燃焼式ガス検知素子は、通電発熱により動作温度まで加熱された感応層が被検知ガス1に接触すると、触媒作用により被検知ガス1の接触燃焼を生じ、接触燃焼に伴う温度変化に起因して素子の電気抵抗値が変化する。この電気抵抗値の変化が、図示しない検出回路を介して、ガス濃度に応じた出力信号として制御部30により取得される。
【0030】
ガス検知部21とガス検知部22とは、複数の検知対象成分に対して感度を有するとともに、検知対象成分に対する感度特性が異なる。本実施形態では、ガス検知部21およびガス検知部22の両方の出力に基づいて、被検知ガス1に含まれるガス種が検知(識別)される。そして、ガス検知部21の出力に基づいて、識別されたガス種の濃度が検知される。このように、本実施形態のガス検知器100は、複数種類の被検知ガス1(ガス種)を区別して、被検知ガス1の濃度を検知可能に構成されている。
【0031】
低濃度検知流路10aでは、上流側から下流側へ向けて、分岐部15、ガス検知部21、ガス検知部22、排気口12が、この順で配置されている。低濃度検知流路10aでは、第1ポンプ16から送り出された被検知ガス1が、ガス検知部21、ガス検知部22を通過して、排気口12へ送り出される。
【0032】
〈高濃度検知流路〉
高濃度検知流路10bでは、上流側から下流側へ向けて、希釈部25、ガス検知部24、ガス検知部23、第2ポンプ17、排気口13が、この順で配置されている。
【0033】
希釈部25は、高濃度検知流路10bに流入する被検知ガス1を外部空気2と混合することによって希釈するように構成されている。希釈部25は、空気吸引口7に接続された空気経路25aと、絞り弁25bと、を含む。空気経路25aは、空気吸引口7と高濃度検知流路10bとを接続する管路である。絞り弁25bは、空気経路25aと分岐部15との間に設けられ、開度調整可能に構成されている。絞り弁25bの開度調整により、分岐部15からの被検知ガス1と、空気吸引口7からの外部空気2との混合比率(つまり、被検知ガスの希釈割合)が調整できる。希釈部25は、たとえば、高濃度検知流路10bに流入する被検知ガス1を外部空気2により25倍に希釈する。
【0034】
ガス検知部24、ガス検知部23は、ガス検知部21およびガス検知部22よりも高濃度の被検知ガス1を検知するように構成されている。
【0035】
ガス検知部23およびガス検知部24は、それぞれ、ガス検知素子により構成されている。本実施形態では、ガス検知部23は、ガス検知部21と同じガス検知素子により構成されている。ガス検知部24は、ガス検知部22と同じガス検知素子により構成されている。したがって、ガス検知部23とガス検知部24とは、検知対象成分に対する感度特性が異なる。そして、ガス検知部23およびガス検知部24の両方の出力に基づいて、被検知ガス1に含まれるガス種が検知(識別)される。そして、ガス検知部23の出力に基づいて、識別されたガス種の濃度が検知される。
【0036】
ガス検知部24、ガス検知部23は、希釈部25により所定倍率(25倍)に希釈された被検知ガス1に対して信号出力を行う。ガス検知部24、ガス検知部23の出力に基づき、制御部30において、希釈倍率を考慮した実際の(希釈前の)被検知ガス1の濃度値が取得される。これにより、ガス検知部24、ガス検知部23では、ガス検知部21およびガス検知部22による測定濃度範囲よりも高い上限濃度値の濃度範囲における被検知ガス1が検知可能となっている。
【0037】
一例として、本実施形態では、被検知ガス1は、燃料ガスである。ガス検知器100は、燃料ガスのうち、都市ガス、LPガス、メタンガスの3種のガス種および濃度が検知可能である。低濃度検知流路10aのガス検知部21およびガス検知部22では、測定濃度範囲として、0%LEL~100%LELまでのLEL濃度値が検知される。高濃度検知流路10bのガス検知部24およびガス検知部23では、測定濃度範囲として、0%VOL~100%VOLまでのVOL濃度値が検知される。LELは、爆発下限界(Lower Explosive Limit)の略語であり、100%LELがそのガス種における爆発下限界濃度値である。VOL濃度値は、単位体積当たりの被検知ガス1の割合(体積比)を百分率で示した値である。ガス種によるが、100%LELは、数%VOL程度である。
【0038】
第2ポンプ17は、高濃度検知流路10bのガス検知部23と排気口13との間に配置されている。第2ポンプ17は、空気吸引口7から高濃度検知流路10b内に外部空気2を吸引するとともに、絞り弁25bから被検知ガス1を高濃度検知流路10b内に吸引して、被検知ガス1を希釈させる。第2ポンプ17は、希釈された被検知ガス1を排気口13まで送り出す。
【0039】
〈制御系〉
ガス検知器100は、図3に示すように、上記した制御部30に加えて、記憶部31、電源部32、スピーカ33、表示操作部34を備えている。
【0040】
制御部30は、CPUなどのプロセッサを含んでいる。記憶部31は、半導体記憶素子などにより構成されている。制御部30(プロセッサ)は、記憶部31に記憶された動作プログラムを実行することにより、ガス検知器100の全体を制御する制御部として機能する。制御部30は、第1ポンプ16および第2ポンプ17の動作を制御する。制御部30は、ガス検知部21、ガス検知部22、ガス検知部23、およびガス検知部24の各々に対する検知動作の制御を行う。すなわち、制御部30は、ガス検知タイミングで、ガス検知部21~24の各々に通電することにより、ガス検知部を活性化する制御を行う。そして、制御部30は、活性化状態におけるガス検知部の電気抵抗値を、そのガス検知部の出力(ガス検知結果)として取得する。また、制御部30は、ガス検知タイミング以外では、ガス検知部21~24の各々に通電しないことにより、ガス検知部を不活性化する制御を行う。
【0041】
電源部32は、ガス検知器100の各部(制御部30、記憶部31、スピーカ33、表示操作部34、第1ポンプ16、第2ポンプ17、各ガス検知部21~24)への電力供給を行う。本実施形態のガス検知器100は、バッテリ式であり、電源部32は、電池および電力供給用の回路により構成されている。電源部32は、外部の商用電源に接続可能であってもよい。
【0042】
スピーカ33は、制御部30の制御の下、各種の報知音を出力するように構成されている。報知音は、特に限定されず、たとえばブザー音(ビープ音)、メロディ、ブザー音以外の効果音、音声メッセージのいずれか1つまたは複数の組み合わせを含み得る。表示操作部34は、たとえば液晶モニタなどの表示装置と、機械式ボタンまたはタッチパネルなどの入力装置とを含んで構成される。制御部30は、検知結果、ガス検知器100の状態(バッテリ残量やエラーの有無)などの各種情報を表示操作部34に表示させる。制御部30は、表示操作部34を介して検知動作の開始指示などの入力操作を受け付ける。検知結果は、被検知ガス1のガス種を示す情報、および、検知されたガス種の濃度情報を含む。制御部30は、たとえば検知したガス濃度値が、LEL範囲(0%LEL~100%LEL)内で表示可能であれば、濃度情報をLEL濃度値で表示させ、LEL範囲を越えた高濃度値の場合、濃度情報をVOL濃度値で表示させる。
【0043】
図1に示したように、表示操作部34は、筐体5の上面5aに設けられている。表示操作部34は、表示部34aと、4つの操作ボタン34b~34eとを含む。ユーザが操作ボタン34b~34eを操作することで、電源のオンオフ、モード切り替えなどの各種操作が制御部30に入力される。たとえば、制御部30は、電源のオン操作が受け付けられることにより各部への電力供給およびガス検知動作の制御を開始し、電源のオフ操作が受け付けられることによりガス検知動作および電力供給を停止する制御を行う。電源のオンオフの操作と、ガス検知動作の開始および停止の操作とが、別個に入力される構成であってもよい。
【0044】
〈ガス吸引口、空気吸引口、および排気口の詳細〉
次に、ガス吸引口6、空気吸引口7、および排気口12、13の詳細な構造および配置について説明する。
【0045】
図1に示した構成例では、ガス吸引口6は、筐体5から筐体5の外部に突出するガス導入部11に設けられている。ガス導入部11は、ガスを流通させる管部材であり、ガス導入管40を接続可能なコネクタを構成している。ガス吸引口6は、ガス導入管40の先端部に形成された開口である。ガス導入管40をガス導入部11に接続することにより、ガス吸引口6がガス導入管40の内部空間に連通する。これにより、ガス吸引口6から、ガス導入管40を介して、ガス検知器100から離れた検査箇所のガス(被検知ガス1)をガス流路10内に導入できる。
【0046】
ガス導入管40は、ガス吸引口6に接続される柔軟なチューブ部41と、チューブ部41の先端に接続される筒状のアタッチメント42とを含む。これにより、ガス導入管40は、筐体5から離隔した検査箇所へアタッチメント42の先端部を近づけることが可能に構成されている。
【0047】
空気吸引口7は、筐体5から筐体5の外部に突出する空気導入部14(図1および図4参照)に設けられている。空気導入部14は、空気を流通させる管部材である。空気吸引口7は、空気導入部14の先端部に形成された開口である。空気導入部14の先端の空気吸引口7から、ガス検知器100(筐体5)の周囲の外部空気2をガス流路10に導入できる。
【0048】
排気口12、13は、筐体5の表面に開口している。図1の構成例では、排気口12および13は、共に、筐体5の右側面5eに形成されている。
【0049】
ここで、筐体5の各側面について定義する。まず、上面5aには、表示操作部34の表示部34aに表示される情報以外にも、操作ボタン34b~34eの説明書きなどの情報(図示せず)が記載されるが、これらの情報の表示方向は、ユーザが前側面5c側から上面5aを見た場合に正しい向きとなるように設計されている。つまり、筐体5の各側面のうち、表示操作部34に表示される情報等が正しい向きで読み取れる方向の側面が、前側面5cである。上面5aを示した平面図である図4の場合、図4の下側の側面が、前側面5cであり、図4の上側の側面が後側面5dである。図5のように前側面5cを正面から見て右側の側面が、排気口12、13が形成された右側面5e(図6参照)であり、前側面5cを正面から見て左側の側面が、左側面5fである。
【0050】
本実施形態では、平面視(図4参照)で、筐体5(上面5a)の長手方向が筐体5の左右方向であり、筐体5(上面5a)の短手方向が筐体5の前後方向である。筐体5(上面5a)の中央から右側面5eに向かう方向をX1方向とし、筐体5(上面5a)の中央から左側面5fに向かう方向をX2方向とし、筐体5(上面5a)の中央から前側面5cに向かう方向をY2方向とし、筐体5(上面5a)の中央から後側面5dに向かう方向をY1方向、とする。また、図5に示すように、上下方向において、筐体5の中央(上面5aと下面5bとの中間)から上面5aに向かう方向をZ1方向とし、筐体5の中央から下面5bに向かう方向をZ2方向とする。
【0051】
図4に示すように、空気吸引口7は、平面視で、筐体5において排気口12、13とは異なる方向を向いて開口し、排気口12、13に対して筐体5の中心線CL1より反対側の位置に形成されている。空気吸引口7は、X2方向を向いて開口している。つまり、空気吸引口7は、筐体5に対してX2方向側の外部空気2(図1参照)を吸引する。一方、排気口12、13は、右側面5eにおいてX1方向を向いて開口している。つまり、排気口12、13は、筐体5からX1方向側へ、排気ガス3(図1参照)を排出する。なお、排気ガス3は、ガス流路10から排出される被検知ガス1のことである。
【0052】
また、本実施形態では、ガス吸引口6は、平面視で、筐体5において空気吸引口7と反対側を向いて開口している。ガス吸引口6は、X1方向を向いて開口している。つまり、ガス吸引口6は、筐体5に対してX1方向側から、被検知ガス1を吸引する。
【0053】
また、空気吸引口7は、平面視で、ガス吸引口6に対して筐体5の中心線より反対側の位置に形成されている。具体的には、筐体5の左右方向において、空気吸引口7がガス吸引口6に対して中心線CL1より反対側に配置されている。筐体5の左右方向において、空気吸引口7が中心線CL1よりX2方向側(左側面5f側)に配置されており、ガス吸引口6が中心線よりX1方向側(右側面5e側)に配置されている。
【0054】
なお、筐体5の前後方向では、空気吸引口7とガス吸引口6とは、筐体5の中心線CL2に対して同じ側に配置されている。すなわち、筐体5の前後方向において、空気吸引口7とガス吸引口6とは、共に、筐体5の中心線CL2よりもY2方向側(前側面5c側)に配置されている。図5に示すように、筐体5の上下方向では、空気吸引口7とガス吸引口6とは、筐体5の中心線に対して同じ側に配置されている。すなわち、筐体5の上下方向において、空気吸引口7とガス吸引口6とは、共に、筐体5の中心線CL3よりもZ1方向側(上面5a側)に配置されている。
【0055】
本実施形態では、ガス吸引口6は、筐体5の側面よりも筐体5の中央側へ引退した位置に形成されている。具体的には、図4および図5に示したように、筐体5の左右方向において、ガス吸引口6は、筐体5の右側面5eよりも、X2方向側へオフセットした位置に配置されている。ガス吸引口6が形成された管状のガス導入部11が、筐体5の表面(後述する切欠面51a)からX1方向に突出するものの、ガス導入部11の先端は、筐体5の右側面5eからX1方向へ突出しておらず、右側面5eよりもX2方向側に位置している。
【0056】
より具体的には、筐体5は、上面5aと前側の側面(前側面5c)とが交わる角部において切欠状に形成された凹部51を有し、ガス吸引口6は、凹部51に形成されている。ガス導入部11は、凹部51の中に収容されている。そのため、ガス導入部11に形成されたガス吸引口6が、右側面5eよりも筐体5の中央側(X2方向側)に引退した位置に配置されている。なお、これにより、ガス吸引口6は、前後方向において前側面5cよりも筐体5の中央側(Y1方向側)に引退して、かつ、上下方向において上面5aよりも筐体5の中央側(Z2方向側)に引退した位置に配置されている。
【0057】
図4に示すように、本実施形態では、凹部は、上面5aと前側の側面(前側面5c)とが交わる2つの角部にそれぞれ形成されている。つまり、凹部51が、上面5aと前側面5cと右側面5eとが交わる右側の角部に形成され、凹部52が、上面5aと前側面5cと左側面5fとが交わる左側の角部に形成されている。そして、ガス吸引口6は、排気口12、13が配置された側である一方側の凹部51に形成され、空気吸引口7が、他方側の凹部52に形成されている。このように、ガス吸引口6と空気吸引口7とは、共に、筐体5の上面5a側かつ前側面5c側の角部に相当する位置に設けられている。
【0058】
空気吸引口7が形成された空気導入部14は、凹部52の中に収容されている。そのため、空気導入部14に形成された空気吸引口7が、左側面5fよりも筐体5の中央側(X1方向側)に引退した位置に配置されている。なお、空気吸引口7は、ガス吸引口6と同様に、前後方向において前側面5cよりも筐体5の中央側(Y1方向側)に引退(図4参照)して、かつ、上下方向において上面5aよりも筐体5の中央側(Z2方向側)に引退(図5参照)した位置に配置されている。
【0059】
図7は、筐体5の形状を直方体に単純化して示した模式図である。筐体5の角部において、凹部51および凹部52によって切り欠かれた部分の稜線を仮想線(破線)で示している。凹部51、凹部52は、いずれも、直方体状の筐体5の角部を、より小さな直方体状の領域で切り欠くことにより形成されている。これにより、凹部51は、3つの切欠面51a、51b、51cを含んでいる。切欠面51aは、右側面5eと略平行で、右側面5eと同じ方向を向いている。切欠面51bは、前側面5cと略平行で、前側面5cと同じ方向を向いている。切欠面51cは、上面5aと略平行で、上面5aと同じ方向を向いている。同じ方向を向くとは、その面の法線方向(外向き法線ベクトル)が略一致することである。ガス導入部11は、右側面5eと略平行な切欠面51aからX1方向に突出するように設けられている。ガス導入部11の突出長さは、切欠面51bおよび51cのX1方向の長さよりも小さい。
【0060】
同様に、凹部52は、3つの切欠面52a、52b、52cを含んでいる。切欠面52aは、左側面5fと略平行で、左側面5fと同じ方向を向いている。切欠面52bは、前側面5cと略平行で、前側面5cと同じ方向を向いている。切欠面52cは、上面5aと略平行で、上面5aと同じ方向を向いている。空気導入部14は、左側面5fと略平行な切欠面52aからX2方向に突出するように設けられている。空気導入部14の突出長さは、切欠面52bおよび52cのX2方向の長さよりも小さい。
【0061】
図4および図5に示したように、凹部51と凹部52とは、左右方向において、略中心線対称(中心線CL1に対して略左右対称)の形状および位置関係となっている。そして、ガス吸引口6と空気吸引口7とは、左右方向に沿って直線状に並ぶように配置され、かつ、左右方向において互いに反対向きに開口している。
【0062】
また、図7に示したように、ガス吸引口6が形成されたガス導入部11は、凹部51内に配置されることによって、右側面5e側(X1方向側)、前側面5c側(Y2方向側)および上面5a側(Z1方向側)が筐体5のいずれかの面に囲まれることなく外部に開放されている。ガス導入部11は、切欠面51a、51bおよび51cによって、左側面5f側(X2方向側)、後側面5d側(Y1方向側)および下面5b側(Z2方向側)が囲まれている。同じく、空気吸引口7が形成された空気導入部14は、凹部52内に配置されることによって、左側面5f側(X2方向側)、前側面5c側(Y2方向側)および上面5a側(Z1方向側)が外部に開放されている。空気導入部14は、切欠面52a、52bおよび52cによって、右側面5e側(X1方向側)、後側面5d側(Y1方向側)および下面5b側(Z2方向側)が囲まれている。
【0063】
図6に示すように、右側面5eに開口した排気口12および13は、いずれも、右側面5eにおいて、筐体5の下面5b側(Z2方向側)かつ前側面5c側(Y2方向側)に配置されている。排気口12および13は、上下方向の略同じ高さ位置で、前後方向に並ぶように配置されている。
【0064】
ガス吸引口6および排気口12および13は、筐体5において同じ側(X1方向側)を向いて開口している。したがって、X1方向を向くガス吸引口6および排気口12および13と、X2方向を向く空気吸引口7(図5参照)とは、互いに反対方向を向いて開口している。
【0065】
排気口12および13は、上下方向において、ガス吸引口6に対して、筐体5の中心線CL3よりも反対側に配置されている。一方、排気口12および13は、前後方向において、筐体5の中心線CL2に対してガス吸引口6と同じ前側面5c側に配置されている。
【0066】
このように、ガス吸引口6、空気吸引口7、排気口12および13は、いずれも、前後方向において、筐体5の中心線CL2よりも前側面5c側に配置されており、各開口への前側面5c側からのアクセスが容易になっている。
【0067】
また、ガス吸引口6と、空気吸引口7と、排気口12および13とは、いずれも、筐体5の上面5a以外の面に形成されている。上面5aに開口していないので、埃や異物が開口内に進入しにくい構造になっている。
【0068】
〈ガス検知器の作用〉
次に、本実施形態のガス検知器100の作用について説明する。図8に示すように、ガス検知器100の使用時には、ガス導入部11に接続したガス導入管40の先端部が検査箇所IPに到達可能な範囲に、ガス検知器100が設置される。ユーザは、ガス導入管40の先端部を検査箇所IPに位置付ける。この状態で、ガス検知動作を開始させるための操作入力が表示操作部34を介して制御部30により受け付けられることにより、ガス検知動作が開始される。ガス導入管40の先端部が検査箇所IPに向けられるので、筐体5は、ガス吸引口6の開口方向(X1方向)が検査箇所IPに向かうように配置される。つまり、筐体5の右側面5eが検査箇所IPに向き、左側面5fは検査箇所IPとは反対方向を向く。そのため、空気吸引口7の開口方向(X2方向)は、検査箇所IPから離れる方向となる。
【0069】
制御部30が第1ポンプ16および第2ポンプ17(図2参照)を駆動させることにより、ガス導入管40の先端部からガス吸引口6を介してガス流路10内(図2参照)に被検知ガス1が導入される。また、空気吸引口7を介してガス流路10内に外部空気2が導入される。空気吸引口7がX2方向に開口するため、ガス検知器100に対して検査箇所IPとは反対側の領域SAに存在する外部空気2が、空気吸引口7に吸引される。ここで、地中埋設管(ガス管)のガス漏れ検査などの場合、検査箇所IPそのものから被検知ガス1が漏出するのみならず、検査箇所IP付近の地中からの被検知ガス1が漏出する可能性がある。ガス漏れが発生しているケースでは、通常、検査箇所IPに近付く程、大気中に漏出した被検知ガス濃度が上昇する。このため、ガス漏れの可能性がある検査箇所IPから極力離れた領域SAから、被検知ガス1を含有する可能性の低い外部空気2がガス流路10内に取り込まれる。
【0070】
ガス流路10に導入された被検知ガス1のうち一部は、低濃度検知流路10a(図2参照)へ送られ、ガス検知部21、22により検知される。ガス検知部21、22を通過した排気ガス3は、排気口12から外部へ排出される。ガス流路10に導入された被検知ガスの残りは、高濃度検知流路10b(図2参照)へ送られ、空気吸引口7から取り込まれた外部空気2により希釈された上で、ガス検知部23、24により検知される。ガス検知部23、24を通過した排気ガス3は、排気口13から外部へ排出される。
【0071】
排気口12、13は、ガス吸引口6と同じX1方向に開口する。そのため、排気口12、13から排出される排気ガス3は、筐体5内から検査箇所IPへ向けて放出される。このため、第1ポンプ16および第2ポンプ17の駆動中、被検知ガス1が、空気吸込側であるX2方向側(領域SA側)へ排出されることが防止される。
【0072】
図9に示すように、ガス検知器100では、既知濃度の被検知ガス1を収容したガスチャンバ60を使用して各ガス検知部21、22、23、24の校正および点検が行われる。
【0073】
校正時には、ガス吸引口6が接続管61によりガスチャンバ60の出口に接続される。また、排気口12が接続管62によりガスチャンバ60の入口に接続される。そして、ガスチャンバ60内の既知濃度の被検知ガス1が、ガス吸引口6、ガス流路10、排気口12、ガスチャンバ60、ガス吸引口6、といった順序で循環される。既知濃度の被検知ガス1の循環状態で、各ガス検知部21、22、23、24の出力に対する濃度値が校正される。点検時には、校正時と同様にして、既知濃度の被検知ガス1の循環状態で各ガス検知部21、22、23、24の出力が正常であるか否かが確認される。
【0074】
本実施形態では、ガス吸引口6と、排気口12とが、いずれも同じ側(X1方向側)に開口するため、接続管61および62を容易に接続できる。
【0075】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0076】
本実施形態では、上記のように、ガス吸引口6は、平面視で、筐体5において空気吸引口7と反対側を向いて開口している。これにより、図8に示したように、ユーザがガス導入管40を検査箇所IPに近づけ易いように、筐体5のガス吸引口6を検査箇所IPに向けた時、空気吸引口7が、検査箇所IPから離れる方向側に向けて開口することになる。そのため、空気吸引口7が検査箇所IPから離れた側から周辺大気(外部空気2)を吸引できる。大気中の被検知ガス濃度は、検査箇所IPに近付く程上昇すると考えられるので、上記構成により、大気中に漏出した被検知ガス1を空気吸引口7から吸引するのを抑制できる。さらに、空気吸引口7が、排気口12、13に対して筐体5の中心線CL1より反対側の位置に、排気口12、13とは異なる方向を向いて形成されるので、排気口12、13から大気中へ排出された被検知ガス1を空気吸引口7から吸引することも抑制できる。
【0077】
また、本実施形態では、上記のように、空気吸引口7は、平面視で、ガス吸引口6に対して筐体5の中心線CL1より反対側の位置に形成されている。これにより、筐体5のガス吸引口6が検査箇所IPに向けられた場合に、空気吸引口7が、筐体5のうちで検査箇所IPとは反対側の位置に配置される。そのため、ガス検知器100の使用時に空気吸引口7を検査箇所IPから離れた位置に位置付けることができるので、大気中に漏出した被検知ガス1を空気吸引口7から吸引するのを効果的に抑制できる。
【0078】
また、本実施形態では、上記のように、ガス吸引口6および排気口12、13は、筐体5において同じ側(X1方向)を向いて開口している。これにより、筐体5のガス吸引口6が検査箇所IPに向けられた場合に、排気口12、13も検査箇所IPを向いて配置されるため、排気口12、13から検査箇所IP側へ向けて排気ガス3を排出できる。そして、空気吸引口7が、ガス吸引口6および排気口12、13の各々に対して反対側を向くので、大気中に漏出した被検知ガス1および排気口12、13から排出された被検知ガス1(排気ガス3)の両方を、空気吸引口7から吸引することを効果的に抑制できる。さらに、図9に示したように、ガス検知器100のガス検知部21~24の校正作業時および点検作業時に、ガス吸引口6と排気口12との両方が同じ側を向いているので、ガス吸引口6および排気口12の各々とガスチャンバ60との接続を容易に行える。
【0079】
また、本実施形態では、上記のように、ガス吸引口6は、筐体5の側面(右側面5e)よりも筐体5の中央側へ引退した位置に形成されている。これにより、ガス導入管40が接続されるガス吸引口6が筐体5の側面(右側面5e)から突出しないので、ガス検知器100の運搬時などにガス吸引口6が障害物と接触しないように保護できる。接触等によりガス吸引口6が歪み、歪んだ部分から筐体付近の空気が吸引されて被検知ガス中に混入してしまうことが抑制できるので、ガス濃度の検知精度を維持する観点で有効である。
【0080】
また、本実施形態では、上記のように、筐体5は、上面5aと前側面5cとが交わる角部において切欠状に形成された凹部51を有し、ガス吸引口6は、凹部51に形成されている。これにより、たとえば筐体5の側面に凹部を設け、凹部の底の部分にガス吸引口6を設けるような構成(図12参照)と異なり、ガス吸引口6の周囲が筐体5の表面で囲まれることなく、ガス吸引口6を筐体5の中央側へ引退した位置に配置できる。ガス吸引口6が筐体5の表面で囲まれないので、ガス導入管40の接続作業を容易化できる。さらに、上面5aと前側面5cとが交わる角部に形成された凹部51にガス吸引口6が形成されるので、ユーザが、筐体5の前側面5cと正対した状態で、筐体5の右側面5eをのぞき込んだりすることなく、ガス吸引口6にアクセスできる。そのため、夜間、暗所などであってもガス導入管40の接続やガス吸引口6の点検などの作業を極めて容易に行える。
【0081】
また、本実施形態では、上記のように、凹部(51、52)は、上面5aと前側面5cとが交わる2つの角部にそれぞれ形成され、ガス吸引口6は、排気口12、13が配置された一方側(X1方向側)の凹部51に形成され、空気吸引口7が、他方側(X2方向側)の凹部52に形成されている。これにより、ガス吸引口6のみならず、空気吸引口7も、筐体5の中央側へ引退した位置に形成できる。そのため、ユーザが、筐体5の前側面5cと正対した状態のまま、ガス吸引口6および空気吸引口7の両方にアクセスできる。排気口12、13と異なり、ガスが流入する吸引口は異物を除去しにくいため、両方の吸引口に前側面5c側からアクセスできることで、点検、使用時のユーザの利便性を向上できる。これにより、ガス吸引口6と空気吸引口7とを反対側に向けて空気吸引口7からの被検知ガス吸引を抑制可能にしながら、ユーザの利便性を向上させることもできる。
【0082】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0083】
たとえば、上記実施形態では、空気吸引口7が、平面視で、ガス吸引口6に対して筐体5の中心線CL1より反対側の位置に形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、空気吸引口7が、平面視で、筐体5の中心線CL1に対してガス吸引口6と同じ側の位置に形成されていてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、ガス吸引口6および排気口12、13が、筐体5において同じ側(X1方向)を向いて開口している例を示したが、本発明はこれに限られない。ガス吸引口6および排気口12、13が異なる側を向いて開口していてもよい。たとえば図10に示す変形例では、ガス吸引口6がX1方向を向いて開口するのに対して、2つの排気口12、13がY2方向とY1方向とに向けてそれぞれ開口している。
【0085】
また、上記実施形態では、ガス吸引口6がX1方向に開口し、空気吸引口7がX2方向に開口することにより、ガス吸引口6と空気吸引口7とが互いに反対方向に開口する例を示したが、本発明はこれに限られない。ガス吸引口6と空気吸引口7とは、完全に反対方向を向いていなくてもよい。本明細書における「反対側を向く」とは、完全に反対方向を向いている場合に限定されない。たとえば図10に示すように、ガス吸引口6(二点鎖線参照)が、平面視で、筐体5(上面5a)の中心から右側面5e側の各角部に延ばした直線71aおよび71bのなす角度θ1の範囲内の任意方向に向いているとする。この場合、空気吸引口7(二点鎖線参照)が、筐体5(上面5a)の中心から左側面5f側の各角部に延ばした直線71cおよび71dのなす角度θ2の範囲内の任意方向に向いていれば、ガス吸引口6と空気吸引口7とが反対側を向いて開口しているものとする。同じように、たとえばガス吸引口6が直線71aと直線71cとのなす角度θ3の範囲内の任意方向に向いている場合、空気吸引口7が直線71bと直線71dとのなす角度θ4の範囲内の任意方向に向いていれば、ガス吸引口6と空気吸引口7とが反対側を向いて開口しているものとする。
【0086】
また、上記実施形態では、ガス吸引口6を凹部51に形成し、空気吸引口7を凹部52に形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ガス吸引口6および空気吸引口7の一方または両方を、凹部に形成しなくてもよい。ガス吸引口6のみを凹部51内に形成して、空気吸引口7はいずれかの側面(たとえば左側面5f)に形成してもよい。また、筐体5に凹部51、52を設けなくてもよい。たとえば、図10の例では、ガス吸引口6が右側面5eに形成され、空気吸引口7が左側面5fに形成されている。反対に、ガス吸引口6が左側面5fに形成され、空気吸引口7が右側面5eに形成されていてもよい。また、図11の例では、ガス吸引口6が後側面5dに形成され、空気吸引口7が前側面5cに形成されている。反対に、ガス吸引口6が前側面5cに形成され、空気吸引口7が後側面5dに形成されていてもよい。図11の例では、ガス吸引口6および空気吸引口7が筐体5の左右方向の中央に形成されているが、二点鎖線で示すように、X1方向側またはX2方向側のいずれかに寄った位置にガス吸引口6および空気吸引口7が形成されていてもよい。
【0087】
また、排気口12、13についても、図10に示すように、前側面5cまたは後側面5dに形成されていてもよいし、図11に示すように、右側面5eまたは左側面5f(二点鎖線参照)に形成されていてもよい。排気口12、13が上面5aまたは下面5bに形成されていてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、上面5aと前側面5cとが交わる角部において切欠状に形成された凹部51、52を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。いずれかの側面の面内に、凹状に窪んだ凹部を形成してもよい。たとえば図12に示す変形例では、右側面5eの中央部に、X2方向へ窪んだ凹部53が形成され、この凹部53内にガス吸引口6を有するガス導入部11が設けられている。このため、変形例では、ガス導入部11は、X1方向以外のX2方向、Y1方向、Y2方向、Z1方向およびZ2方向の各方向が、凹部53の内面によって囲まれている。この場合、ユーザがガス導入部11を前側面5c側から視認したりアクセスしたりできないため、ガス吸引口6の点検やガス導入管40の接続を行う場合に、右側面5eをユーザ側に向け直して作業を行う必要が生じる。そのため、この凹部53を設ける構成と比べると、図7のように切欠状の凹部51を設ける構成ではユーザビリティが向上する。
【0089】
また、上記実施形態では、ガス吸引口6を有するガス導入部11と空気吸引口7を有する空気導入部14とが互いに異なる面に形成されている例を示した。すなわち、ガス導入部11が切欠面51aに形成され、空気導入部14が切欠面52aに形成される例を示した。本発明はこれに限られず、ガス導入部11と空気導入部14とが同じ面に形成されていてもよい。たとえば図13に示すように、ガス導入部11と空気導入部14とが、同じ上面5aに形成されていてもよい。図13では、ガス導入部11と空気導入部14とがL字状に屈曲したエルボ型の管部材により構成されており、上面5aから上方(Z1方向)に突出した後、屈曲して互いに反対方向に延びている。これにより、ガス導入部11と空気導入部14とが同一面に形成されつつ、ガス導入部11のガス吸引口6と空気導入部14の空気吸引口7とが互いに反対側を向いて開口している。図13では、ガス吸引口6がX1方向に向いて開口し、空気吸引口7がX2方向に向いて開口している。
【0090】
したがって、図1のようにガス導入部11を凹部51内に形成する場合でも、ガス導入部11は切欠面51aに形成しなくてもよく、切欠面51bまたは切欠面51cにガス導入部11が設けられてもよい。空気導入部14を凹部52内に設ける場合でも同様である。
【0091】
また、上記実施形態では、ガス吸引口6をガス導入部11に形成し、空気吸引口7を空気導入部14に形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。ガス導入部11および空気導入部14を設けなくてもよい。この場合、ガス吸引口6および空気吸引口7の一方または両方を、排気口12、13と同様に、いずれかの側面(図10図11参照)に形成してもよい。ガス吸引口6および空気吸引口7の一方または両方を、凹部のいずれかの切欠面に直接形成してもよい。ガス吸引口6および空気吸引口7は、上面5aまたは下面5bに形成されてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、ガス流路10に低濃度検知流路10aと高濃度検知流路10bとを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、分岐なしの1本のガス流路10のみが設けられていてもよい。したがって、1つの排気口のみが設けられていてもよい。また、ガス流路10が3つ以上の検知流路を含んでいてもよい。このため、3つ以上の排気口が設けられていてもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、1つのガス流路10が低濃度検知流路10aと高濃度検知流路10bとの2つの流路に分岐する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、互いに独立した複数のガス流路が設けられていてもよい。なお、複数のガス流路10を設ける場合や、ガス流路10が複数の流路に分岐する場合においては、複数の流路のうち少なくとも1つにおいて、ガス吸引口6から導入された被検知ガス1を空気吸引口7から導入された外部空気2で希釈するように構成されていればよい。そのため、低濃度検知流路10aのように、外部空気2で希釈しない流路があってもよいし、その流路には空気吸引口7を設けなくてもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、1つのガス吸引口6と1つの空気吸引口7とが設けられた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ガス吸引口6が2つ以上設けられてもよい。また、空気吸引口7が2つ以上設けられてもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、4つのガス検知部21~24を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、1つ~3つまたは5つ以上のガス検知部が設けられていてもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、ガス検知部21およびガス検知部22の両方の出力に基づいて、被検知ガス1に含まれるガス種が識別され、ガス検知部23およびガス検知部24の両方の出力に基づいて、被検知ガス1に含まれるガス種が識別される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ガス種の識別を行わない構成でもよい。つまり、ガス種の識別を行うことなく、濃度検知のみを行う構成でもよい。この場合、ガス検知部は1つだけでよい。
【0097】
また、上記実施形態では、被検知ガス1が燃料ガスである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明において、被検知ガスの種類は、特に限定されない。
【0098】
また、上記実施形態では、ガス検知部22を含む各ガス検知部が、接触燃焼式ガス検知素子により構成される例を示したが、本発明はこれに限られない。各ガス検知部は、たとえば半導体式ガス検知素子など、接触燃焼式ガス検知素子以外の他の種類のガス検知素子により構成されていてもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、直方体状の筐体5を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、筐体5の形状は特に限定されない。筐体5の外形形状は、たとえば立方体、その他の多面体、円柱、球体などであってもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、第1ポンプ16と第2ポンプ17との2つのポンプを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、1つまたは3つ以上のポンプを設けてもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 被検知ガス
2 外部空気
5 筐体
5a 上面
5b 下面
5c 前側面(前側の側面)
5d 後側面
5e 右側面
5f 左側面
6 ガス吸引口
7 空気吸引口
12 排気口
13 排気口
16 第1ポンプ(ポンプ)
17 第2ポンプ(ポンプ)
21~24 ガス検知部
40 ガス導入管
51、52 凹部
100 ガス検知器
CL1~CL3 中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13