(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】歪みセンサ
(51)【国際特許分類】
G01B 7/16 20060101AFI20241111BHJP
【FI】
G01B7/16 R
(21)【出願番号】P 2021011811
(22)【出願日】2021-01-28
【審査請求日】2023-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小野 位
(72)【発明者】
【氏名】北爪 誠
(72)【発明者】
【氏名】小野 彩
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-35808(JP,A)
【文献】特開2005-114443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基板と、
前記フィルム基板の上面に形成された歪み検出素子と、
平面視、前記歪み検出素子と離間して前記歪み検出素子の周辺を囲うシールド膜と、を有する、歪みセンサ。
【請求項2】
前記シールド膜は、前記歪み検出素子と同一の材料で形成されている、請求項1に記載の歪みセンサ。
【請求項3】
前記シールド膜は、前記歪み検出素子よりもインピーダンスの低い材料で形成されている、請求項1に記載の歪みセンサ。
【請求項4】
前記シールド膜は、
第1金属膜と
前記第1金属膜の上面に形成された、前記第1金属膜よりもインピーダンスの低い材料で形成された第2金属膜と、を有する、請求項1に記載の歪みセンサ。
【請求項5】
前記歪み検出素子は、Crを含む金属膜であり、
前記シールド膜は、Cuを含む金属膜を有する、請求項1、3、又は4に記載の歪みセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歪みセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性を有する基材上に抵抗体を備え、測定対象物に貼り付けて、測定対象物の特性を検出する歪みセンサが知られている。例えば、絶縁性の材料によって形成されたベース部と、このベース部の一面側に設けられた抵抗体からなるパターン部とを備えた受感部と、絶縁体層と、この絶縁体層の一面側に設けられるとともに、受感部におけるベース部の他面側と対向して配設される導電体で形成されたシールド層とを備えた薄膜状の中間部材とを備えた、歪みセンサが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の歪みセンサは、外乱ノイズの影響を低減できるものの、構造が複雑であるため製造工程が増加すると共に、歪みセンサ全体が厚くなる。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、厚さの増加を抑えつつ外乱ノイズの影響を低減可能な歪みセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本歪みセンサ(1)は、フィルム基板(10)と、前記フィルム基板(10)の上面(10a)に形成された歪み検出素子(20)と、平面視、前記歪み検出素子(20)と離間して前記歪み検出素子(20)の周辺を囲うシールド膜(30)と、を有する。
【0007】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、厚さの増加を抑えつつ外乱ノイズの影響を低減可能な歪みセンサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る歪みセンサを例示する平面図である。
【
図2】第1実施形態に係る歪みセンサを例示する断面図(その1)である。
【
図3】第1実施形態に係る歪みセンサを例示する断面図(その2)である。
【
図4】第1実施形態に係る歪みセンサの使用例を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る歪みセンサの接続例を示す図である。
【
図6】比較例に係る歪みセンサを例示する断面図である。
【
図7】比較例に係る歪みセンサの接続例を示す図である。
【
図8】比較例に係る歪みセンサの出力電圧の測定例を示す図である。
【
図9】第1実施形態に係る歪みセンサの出力電圧の測定例を示す図である。
【
図10】第1実施形態の変形例1に係る歪みセンサを例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
〈第1実施形態〉
[歪みセンサの構造]
図1は、第1実施形態に係る歪みセンサを例示する平面図である。
図2は、第1実施形態に係る歪みセンサを例示する断面図であり、
図1のA-A線に沿う断面を示している。
図3は、第1実施形態に係る歪みセンサを例示する断面図であり、
図1のB-B線に沿う断面を示している。
図1~
図3を参照すると、歪みセンサ1は、フィルム基板10と、歪み検出素子20と、シールド膜30と、端子40A、40B、及び40Cと、カバー膜50とを有している。なお、
図1では、便宜上、カバー膜50の外縁のみを破線で示している。
【0012】
本実施形態では、便宜上、歪みセンサ1において、フィルム基板10の歪み検出素子20が設けられている側を上側又は一方の側、歪み検出素子20が設けられていない側を下側又は他方の側とする。又、各部位の歪み検出素子20が設けられている側の面を一方の面又は上面、歪み検出素子20が設けられていない側の面を他方の面又は下面とする。但し、歪みセンサ1は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置できる。又、平面視とは対象物をフィルム基板10の上面10aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物をフィルム基板10の上面10aの法線方向から視た形状を指すものとする。
【0013】
フィルム基板10は、歪み検出素子20等を形成するためのベース層となる部材であり、可撓性を有する。フィルム基板10の膜厚は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、25μm~50μm程度とすることができる。平面視でのフィルム基板10の縦の長さ及び横の長さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、それぞれ1mm~5mm程度とすることができる。
【0014】
フィルム基板10は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂等の絶縁樹脂から形成されている。フィルム基板10は、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂から形成されてもよい。
【0015】
歪み検出素子20は、フィルム基板10の上面10aに所定のパターンで形成された薄膜であり、歪みを受けて抵抗値変化を生じる受感部である。歪み検出素子20は、フィルム基板10の上面10aに直接形成されてもよいし、フィルム基板10の上面10aに他の層を介して形成されてもよい。なお、
図1では、便宜上、歪み検出素子20を梨地模様で示している。
【0016】
歪み検出素子20は、例えば、複数の細長状部が長手方向を同一方向(
図1のA-A線の方向)に向けて所定間隔で配置され、隣接する細長状部の端部が互い違いに連結されて、全体としてジグザグに折り返す構造である。複数の細長状部の長手方向がグリッド方向となり、グリッド方向と垂直な方向がグリッド幅方向となる。
【0017】
歪み検出素子20は、例えば、Cr及びCrNを含む導電性の金属膜である。歪み検出素子20の膜厚は、例えば、100nm~500nm程度とすることができる。歪み検出素子20の幅は、例えば、50μm~300μm程度とすることができる。
【0018】
シールド膜30は、フィルム基板10の上面10aに所定のパターンで形成された導電性の金属膜である。シールド膜30は、フィルム基板10の上面10aに直接形成されてもよいし、フィルム基板10の上面10aに他の層を介して形成されてもよい。シールド膜30は、平面視、歪み検出素子20と離間して歪み検出素子20の周辺を囲うように配置されている。シールド膜30は、歪み検出素子20とは電気的に接続されていない。なお、
図1では、便宜上、シールド膜30を、歪み検出素子20とは異なる梨地模様で示している。
【0019】
シールド膜30は、例えば、歪み検出素子20と同一の材料で形成されている。つまり、歪み検出素子20がCr及びCrNを含む導電性の金属膜であれば、シールド膜30もCr及びCrNを含む導電性の金属膜であり、厚さも歪み検出素子20と同一となる。この場合、シールド膜30を歪み検出素子20と同一工程で形成することにより、製造工程を簡略化できる。
【0020】
シールド膜30は、端子40Cを介してGNDに接続されることでシールド効果を生じて外乱ノイズを吸収し、歪み検出素子20に重畳される外乱ノイズを低減できる。シールド膜30は、歪み検出素子20よりもインピーダンスの低い材料で形成されてもよい。例えば、歪み検出素子20がCr及びCrNを含む導電性の金属膜であれば、シールド膜30をNi、Al、Cu等を含む導電性の金属膜とすることができる。シールド膜30を歪み検出素子20よりもインピーダンスの低い材料で形成することにより、歪み検出素子20に重畳される外乱ノイズを低減する効果を向上できる。
【0021】
シールド膜30と歪み検出素子20との間隔dは、加工精度の観点から5μm以上であることが好ましい。また、間隔dが5μm未満であると、シールド膜30と歪み検出素子20との間の線間容量が大きくなり、容量結合短絡によりシールド膜30が吸収したノイズを歪み検出素子20に伝搬し易くなるため好ましくない。また、シールド膜30と歪み検出素子20との間隔dは、シールド膜30が外乱ノイズを吸収して十分なシールド効果を得る観点から、20μm以下であることが好ましい。シールド膜30と歪み検出素子20との間隔dが10μm以下であると、さらに大きなシールド効果を得られる点でより好ましい。
【0022】
端子40A及び40Bは、歪み検出素子20の両端部から延在しており、平面視において、歪み検出素子20よりも拡幅して略矩形状に形成されている。端子40A及び40Bは、歪みにより生じる歪み検出素子20の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極であり、例えば、外部接続用のリード線等(例えば、撚線)が接合される。
【0023】
端子40A及び40Bは、例えば、複数の金属膜が積層された積層構造である。具体的には、
図1及び
図2の例では、端子40Aは、歪み検出素子20の両端部から延在する金属膜41と、金属膜41の上面に形成された金属膜45とを有している。なお、金属膜41は、歪み検出素子20とは便宜上別符号としているが、歪み検出素子20と同一工程において同一材料により一体に形成される。
【0024】
金属膜45は、例えば、金属膜41よりもはんだ付け性が良好な金属から形成できる。金属膜42の材料は、例えば、Cu、Cu合金、Ni、又はNi合金である。金属膜42の厚さは、例えば、4μm以上30μm以下である。
【0025】
金属膜45の上面に、金属膜45よりもさらにはんだ濡れ性の良好な材料を積層してもよい。例えば、金属膜42の材料がCu、Cu合金、Ni、又はNi合金であれば、積層する金属膜の材料としてAu(金)を用いることができる。Cu、Cu合金、Ni、又はNi合金の表面をAuで被覆することにより、Cu、Cu合金、Ni、又はNi合金の酸化及び腐食を防止できると共に、良好なはんだ濡れ性を得ることができる。
【0026】
端子40Cは、シールド膜30と電気的に接続されている。端子40Cは、シールド膜30を歪みセンサ1の外部にあるGNDに接続するための電極であり、例えば、外部接続用のリード線(例えば、撚線)等が接合される。
図1では、端子40Cは、平面視で、端子40Aと端子40Bに挟まれた位置に配置されているが、端子40Cは任意の位置に配置してかまわない。また、シールド膜30と電気的に接続された端子は、複数個配置されてもかまわない。
【0027】
端子40Cは、例えば、複数の金属膜が積層された積層構造である。具体的には、
図1及び
図3の例では、端子40Cは、シールド膜30から延在する金属膜42と、金属膜42の上面に形成された金属膜45とを有している。なお、金属膜42は、シールド膜30とは便宜上別符号としているが、シールド膜30と同一工程において同一材料により一体に形成される。言い換えれば、金属膜45の下方に位置するシールド膜30を、便宜上金属膜42と称している。金属膜45については、端子40A及び40Bで説明した通りである。
【0028】
カバー膜50は、歪み検出素子20及びシールド膜30を被覆し、端子40A、40B、及び40Cの各々の上面の少なくとも一部を露出するように設けられている保護膜である。カバー膜50の開口部50Aから端子40Aの上面の少なくとも一部が露出し、カバー膜50の開口部50Bから端子40Bの上面の少なくとも一部が露出し、カバー膜50の開口部50Cから端子40Cの上面の少なくとも一部が露出している。
【0029】
カバー膜50は、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂(有機膜)から形成できる。カバー膜50は、シリコン酸化膜(SiO2)、ガラス膜、シリコン窒化膜(SiN)等の無機膜から形成してもよい。
【0030】
カバー膜50を設けることで、歪み検出素子20及びシールド膜30に機械的な損傷等が生じることを防止できる。又、カバー膜50を設けることで、歪み検出素子20及びシールド膜30を湿気等から保護できる。
【0031】
[歪みセンサの製造方法]
ここでは、歪み検出素子20及びシールド膜30を同一の材料で形成する例を示す。歪みセンサ1を製造するためには、まず、フィルム基板10を準備し、フィルム基板10の上面10aの全体に金属膜(便宜上、金属膜Aとする)を形成する。金属膜Aは、最終的にパターニングされて歪み検出素子20及びシールド膜30(金属膜41及び42も含む)となる膜である。従って、金属膜Aの材料や厚さは、前述の歪み検出素子20及びシールド膜30の材料や厚さと同様である。金属膜Aは、例えば、スパッタリング法により成膜できる。
【0032】
次に、フォトリソグラフィによって金属膜Aをパターニングし、
図1に示す平面形状の歪み検出素子20及びシールド膜30(金属膜41及び42も含む)を形成する。具体的には、金属膜A上にレジストを塗布し、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、歪み検出素子20及びシールド膜30(金属膜41及び42も含む)をパターニングする。パターニングが終了後、レジストを剥離する。
【0033】
次に、パターニングされた歪み検出素子20及びシールド膜30(金属膜41及び42も含む)を被覆するように、フィルム基板10の上面10aの全体にレジストを塗布する。そして、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、レジストをパターニングし、端子40A、40B、及び40Cとなる部分を露出するように開口部を形成する。そして、電解めっき法や無電解めっき法等により、各開口部内に金属膜45を成膜して端子40A、40B、及び40Cを形成する。端子40A、40B、及び40Cを形成後、レジストを剥離する。
【0034】
次に、パターニングされた歪み検出素子20及びシールド膜30(端子40A、40B、及び40Cも含む)を被覆するように、フィルム基板10の上面10aの全体にカバー膜50を形成し、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、開口部50A、50B、及び50Cを形成する。開口部50Aから端子40Aの上面の少なくとも一部が露出し、カバー膜50の開口部50Bから端子40Bの上面の少なくとも一部が露出し、カバー膜50の開口部50Cから端子40Cの上面の少なくとも一部が露出する。以上の工程により、歪みセンサ1が完成する。
【0035】
[歪みセンサの使用例]
図4は、第1実施形態に係る歪みセンサの使用例を示す図である。
図4の例では、歪みセンサ1は、接着層110を介して起歪体120と接着されている。具体的には、歪みセンサ1のフィルム基板10の下面が、接着層110を介して起歪体120の上面と接着されている。
【0036】
接着層110は、歪みセンサ1と起歪体120とを接着する機能を有する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、変性ウレタン樹脂等を用いることができる。
【0037】
起歪体120は、例えば、Fe、SUS(ステンレス鋼)、Al等の金属やPEEK等の樹脂から形成され、印加される力に応じて変形する(歪みを生じる)物体である。歪みセンサ1は、起歪体120に生じる歪みを歪み検出素子20の抵抗値変化として検出することができる。
【0038】
カバー膜50から露出する端子40A、40B、及び40Cの各々の上面は、接合材130を介して接続部材140と電気的に接続されている。接合材130は、例えば、はんだや導電性ペーストである。接続部材140は、例えば、リード線やフレキシブルプリント配線板等である。なお、歪みセンサ1に接合材130及び接続部材140を取り付けた状態で、市場に流通させてもよい。
【0039】
図5は、第1実施形態に係る歪みセンサの接続例を示す図である。
図5の例では、歪みセンサ1は、接続部材140を介して、歪みセンサ1の外部に配置された測定部200に接続されている。
【0040】
測定部200は、ブリッジ回路を有している。ブリッジ回路は、3辺が固定抵抗R1、R2、及びR3で構成され、他の1辺が接続部材140並びに端子40A及び40Bを介して歪み検出素子20に接続されている。又、ブリッジ回路の一対の対角点間には、直流電圧VDDが印加されている。ブリッジ回路のGNDは、接続部材140及び端子40Cを介してシールド膜30に接続されている。
【0041】
この構成により、ブリッジ回路の他の一対の対角点間は、歪み検出素子20のひずみに応じたアナログの電圧V1及びV2が出力される。シールド膜30は、ブリッジ回路のGNDに接続されることでシールド効果を生じて外乱ノイズを吸収し、歪み検出素子20に重畳される外乱ノイズを低減できる。そのため、ノイズの少ない電圧V1及びV2が得られる。
【0042】
図6は、比較例に係る歪みセンサを例示する断面図であり、
図1のA-A線に相当する断面を示している。
図6に示す歪みセンサ1Xは、シールド膜30及び端子40Cを有していない点が、歪みセンサ1と相違する。
【0043】
図6において、歪みセンサ1Xは、
図4と同様に、接着層110を介して起歪体120と接着されている。また、
図6に示す歪みセンサ1Xは、
図4と同様に、カバー膜50から露出する端子40A及び40Bの各々の上面が、接合材130を介して接続部材140と電気的に接続されている。また、
図7に示すように、歪みセンサ1Xは、接続部材140を介して、歪みセンサ1Xの外部に配置された測定部200に接続されている。
【0044】
図8は、比較例に係る歪みセンサの出力電圧の測定例を示す図である。ここで、歪みセンサ1Xの出力電圧とは、
図7のV1とV2との間の電圧を増幅したものである。一方、
図9は、第1実施形態に係る歪みセンサの出力電圧の測定例を示す図である。ここで、歪みセンサ1の出力電圧とは、
図5のV1とV2との間の電圧を増幅したものである。
図8と
図9とは、同一の条件(同一の環境)で測定されている。
図8のX軸(測定時間)、Y軸(出力電圧)のスケールは、
図9のX軸(測定時間)、Y軸(出力電圧)のスケールと合わせている。
図8と
図9とを比較するとわかるように、歪みセンサ1では、比較例に係る歪みセンサ1Xよりも出力電圧に重畳される外乱ノイズが大幅に低減されている。
【0045】
このように、平面視で歪み検出素子20と離間して歪み検出素子20の周辺を囲うシールド膜30を設け、シールド膜30をブリッジ回路のGNDに接続することで、シールド膜30が外乱ノイズを吸収し、歪み検出素子20に重畳される外乱ノイズを低減できる。その結果、S/N比が改善されてノイズの少ない出力電圧が得られるため、歪みセンサ1の検出感度が向上する。
【0046】
また、歪み検出素子20が外乱ノイズの影響を受けにくいため、歪みセンサ1の検出感度が安定する。また、歪み検出素子20が外乱ノイズの影響を受けにくいため、端子40A及び40Bとブリッジ回路との距離を増長することができ、歪みセンサ1及び/又はブリッジ回路の配置の自由度が向上する。
【0047】
また、歪みセンサ1では、シールド膜30を歪み検出素子20と同様にフィルム基板10の上面10aに形成するため、歪みセンサ1の厚さの増加を抑えることができる。すなわち、歪みセンサ1は、厚さの増加を抑えつつ外乱ノイズの影響を低減可能である。
【0048】
〈第1実施形態の変形例1〉
第1実施形態の変形例1では、シールド膜が積層構造である例を示す。なお、第1実施形態の変形例1において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0049】
図10は、第1実施形態の変形例1に係る歪みセンサを例示する断面図であり、
図1のA-A線に相当する断面を示している。
図10に示すように、歪みセンサ1Aは、シールド膜30がシールド膜30Aに置換された点が、歪みセンサ1(
図2等参照)と相違する。
【0050】
シールド膜30Aは、金属膜31と、金属膜31の上面に形成された金属膜35とを有している。金属膜31は、便宜上別符号としているが、歪みセンサ1のシールド膜30と同一の層である。金属膜35は、金属膜31よりもインピーダンスの低い材料で形成されている。金属膜35は、例えば、金属膜45と同一工程において同一材料により一体に形成できる。例えば、金属膜31はCrを含む金属膜であり、金属膜35はCuを含む金属膜である。
【0051】
シールド膜30Aは、例えば、次のようにして形成する。第1実施形態における端子40A、40B、及び40Cとなる部分を露出するように開口部を形成する工程で、金属膜31を露出する第2開口部も同時に形成する。そして、電解めっき法や無電解めっき法等により、各開口部内に金属膜45を成膜して端子40A、40B、及び40Cを形成する際に、同時に第2開口部内に露出する金属膜31上に金属膜35を成膜してシールド膜30Aを形成する。
【0052】
このように、シールド膜30Aを2層構造とし、金属膜35を金属膜31よりもインピーダンスの低い材料で形成することで、シールド膜30Aの外乱ノイズの吸収性を向上させることができる。例えば、歪み検出素子20がCr及びCrNを含む導電性の金属膜である場合、比較的インピーダンスが高い。そこで、金属膜31上に、金属膜31よりもインピーダンスの低いCu等により形成された金属膜35を積層することで、シールド膜30Aのインピーダンスが低下し、シールド膜30Aの外乱ノイズの吸収性が向上する。
【0053】
また、金属膜35を金属膜45と同一工程において同一材料により一体に形成することで、新たな工程を追加することなく、外乱ノイズの吸収性に優れたシールド膜30Aを形成できる。
【0054】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0055】
1,1A 歪みセンサ、10 フィルム基板、10a 上面、20 歪み検出素子、30,30A シールド膜、31,35,41,42,45 金属膜、40A,40B,40C 端子、50 カバー膜、50A,50B,50C 開口部