(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】圧電発振器
(51)【国際特許分類】
H03B 5/32 20060101AFI20241111BHJP
【FI】
H03B5/32 J
(21)【出願番号】P 2021015676
(22)【出願日】2021-02-03
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390009667
【氏名又は名称】セイコーNPC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正敏
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-194806(JP,A)
【文献】実開昭52-101348(JP,U)
【文献】特開平7-147512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/30-5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子と発振アンプとを備える圧電発振器であって、
前記圧電発振器の異常発振を防止する異常発振防止部を備え、
前記異常発振防止部は、
前記圧電振動子の発振周波数より高い周波数でゲインを有
し、反転アンプ用インバータと、反転アンプ用帰還抵抗とを備える反転アンプ
と、
一方の端部が前記発振アンプの入力部に接続され、他方の端部が前記圧電振動子の一方の端部に接続される第1ACカップリング容量と、
一方の端部が前記発振アンプの入力部に接続され、他方の端部が前記反転アンプの出力部に接続される第2ACカップリング容量と、
一方の端部が前記反転アンプの入力部に接続され、他方の端部が前記圧電振動子の一方の端部に接続される第3ACカップリング容量とを備え、
前記発振アンプの入力部は、前記圧電振動子の一方の端部に接続されるとともに、前記反転アンプからの出力部に接続され、
前記発振アンプの出力部は、前記圧電振動子の他方の端部に接続され、
前記反転アンプの入力部は、前記圧電振動子の一方の端部に接続される
圧電発振器。
【請求項2】
前記反転アンプ
がゲインを有する
周波数の領域では、
前記反転アンプと前記発振アンプ
の直列回路が正転アンプになり、
前記圧電振動子の並列容量と前記圧電発振器の配線自己インダクタンスとのLC共振周波数では、前記圧電発振器の異常発振条件が成立しない、
請求項1に記載の圧電発振器。
【請求項3】
第1容量と、第2容量とを備え、
前記圧電振動子の一方の端部は、前記第1容量を介して接地され、
前記圧電振動子の他方の端部は、前記第2容量を介して接地され、
前記発振アンプの出力部は、前記圧電振動子の他方の端部に接続され、
前記発振アンプは、発振アンプ用インバータと、発振アンプ用帰還抵抗とを備える、
請求項1
または請求項2に記載の圧電発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水晶振動子と発振用増幅回路(発振部増幅用インバータおよび帰還抵抗)とを備える発振部が知られている(例えば特許文献1参照)。
近年の高周波化により500MHz付近の高周波発振回路の発振アンプで発振マージンを充分得ようとすると、GHz帯でもゲインを持つようになるため、水晶振動子の並列容量と、発振部のうちの発振アンプと水晶振動子との間の配線の自己インダクタンスとによるLC発振によって、発振部が異常発振してしまうおそれがある。詳細には、水晶振動子の並列容量と配線の自己インダクタンスとによる共振点が1GHz以上の領域に寄生的に発生してしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した問題点に鑑み、本発明は、圧電振動子の並列容量と圧電発振器の配線の寄生自己インダクタンスとによるLC発振で異常発振が生じてしまうおそれを抑制することができる圧電発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、鋭意研究において、圧電振動子の発振アンプの入力に、圧電振動子の発振周波数より高い周波数でゲインを持つ反転アンプの出力を足しこむことによって、圧電発振器の配線の寄生自己インダクタンスによる異常発振を抑制できることを見い出した。
【0006】
本発明の一態様は、圧電振動子と発振アンプとを備える圧電発振器であって、前記圧電発振器の異常発振を防止する異常発振防止部を備え、前記異常発振防止部は、前記圧電振動子の発振周波数より高い周波数でゲインを有し、反転アンプ用インバータと、反転アンプ用帰還抵抗とを備える反転アンプと、一方の端部が前記発振アンプの入力部に接続され、他方の端部が前記圧電振動子の一方の端部に接続される第1ACカップリング容量と、一方の端部が前記発振アンプの入力部に接続され、他方の端部が前記反転アンプの出力部に接続される第2ACカップリング容量と、一方の端部が前記反転アンプの入力部に接続され、他方の端部が前記圧電振動子の一方の端部に接続される第3ACカップリング容量とを備え、前記発振アンプの入力部は、前記圧電振動子の一方の端部に接続されるとともに、前記反転アンプからの出力部に接続され、前記発振アンプの出力部は、前記圧電振動子の他方の端部に接続され、前記反転アンプの入力部は、前記圧電振動子の一方の端部に接続される圧電発振器である。
【0007】
本発明の一態様の圧電発振器では、前記反転アンプがゲインを有する周波数の領域では、前記反転アンプと前記発振アンプの直列回路が正転アンプになり、前記圧電振動子の並列容量と前記圧電発振器の配線自己インダクタンスとのLC共振周波数では、前記圧電発振器の異常発振条件が成立しなくてもよい。
【0008】
本発明の一態様の圧電発振器では、前記異常発振防止部は、ACカップリング容量を備
え、前記ACカップリング容量の一方の端部は、前記発振アンプの入力部に接続され、前
記反転アンプからの出力が、前記ACカップリング容量の一方の端部と前記発振アンプの
入力部との間に入力されてもよい。
【0010】
本発明の一態様の圧電発振器は、第1容量と、第2容量とを備え、前記圧電振動子の一方の端部は、前記第1容量を介して接地され、前記圧電振動子の他方の端部は、前記第2容量を介して接地され、前記発振アンプの出力部は、前記圧電振動子の他方の端部に接続され、前記発振アンプは、発振アンプ用インバータと、発振アンプ用帰還抵抗とを備えてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、圧電振動子の並列容量と圧電発振器の配線の寄生自己インダクタンスとによるLC発振で異常発振が生じてしまうおそれを抑制することができる圧電発振器を提供することができる。
詳細には、本発明によれば、高周波における発振マージンの確保と、圧電振動子の並列容量と圧電発振器の配線の寄生自己インダクタンスとによる寄生発振の防止とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態の圧電発振器の一例を示す回路図である。
【
図3】特許文献1の発振部に相当する圧電発振器の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の圧電発振器の実施形態を説明する前に、特許文献1の発振部に相当する圧電発振器について説明する。
図3は特許文献1の発振部に相当する圧電発振器の回路図である。
図3に示すように、特許文献1の発振部に相当する圧電発振器には、圧電振動子Pと、発振アンプAと、容量C3、C4とが含まれる。発振アンプAには、発振アンプ用インバータX1と、発振アンプ用帰還抵抗R3とが含まれる。
上述したように、近年の高周波化により、500MHz付近の高周波発振回路(圧電発振器)の発振アンプAで発振マージンを充分得ようとすると、GHz帯でもゲインを持つようになるため、圧電振動子P(水晶振動子)の並列容量と、発振アンプAと圧電振動子P(水晶振動子)との間の配線の自己インダクタンスとによるLC発振によって、圧電発振器が異常発振してしまうおそれがある。
そこで、第1実施形態の圧電発振器1では、後述するような対策が施されている。
【0014】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態の圧電発振器1の一例を示す回路図である。
図2は
図1に示す圧電振動子11の等価回路図である。
図1および
図2に示す例では、圧電発振器1が、圧電振動子11と、発振アンプ12と、容量C8と、容量C9と、異常発振防止部13とを備えている。
図1および
図2に示す例では、圧電振動子11が、水晶振動子である。
図2に等価回路図で示すように、圧電振動子11は、並列容量C0と、直列容量C1と、直列抵抗R1と、直列インダクタンスL1とによって等価的に表される。
発振アンプ12は、圧電振動子11の出力信号を増幅する。発振アンプ12は、発振アンプ用インバータX2と、発振アンプ用帰還抵抗R4とを備えている。発振アンプ用インバータX2は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)インバータである。
圧電振動子11の一方の端部(
図1の左側の端部)は、容量C8を介して接地されている。圧電振動子11の他方の端部(
図1の右側の端部)は、容量C9を介して接地されている。発振アンプ12の出力部は、圧電振動子11の他方の端部(
図1の右側の端部)に接続されている。
【0015】
異常発振防止部13は、圧電発振器1の異常発振を防止する。異常発振防止部13は、反転アンプ13Aと、ACカップリング容量C5、C6、C7とを備えている。
反転アンプ13Aは、反転アンプ用インバータX3と、反転アンプ用帰還抵抗R5とを備えている。反転アンプ用インバータX3は、例えばCMOSインバータである。反転アンプ13Aは、圧電振動子11の発振周波数より高い周波数でゲインを有する。
ACカップリング容量C5の一方の端部(
図1の右側の端部)は、発振アンプ12の入力部に接続されている。ACカップリング容量C5の他方の端部(
図1の左側の端部)は、圧電振動子11の一方の端部(
図1の左側の端部)に接続されている。そのため、圧電振動子11の出力信号は、ACカップリング容量C5によって直流成分が除去されて、発振アンプ12に入力される。
ACカップリング容量C6の一方の端部(
図1の右側の端部)は、反転アンプ13Aの入力部に接続されている。ACカップリング容量C6の他方の端部(
図1の左側の端部)は、圧電振動子11の一方の端部(
図1の左側の端部)に接続されている。そのため、圧電振動子11の出力信号は、ACカップリング容量C6によって直流成分が除去されて、反転アンプ13Aに入力される。
【0016】
ACカップリング容量C7の一方の端部(
図1の下側の端部)は、発振アンプ12の入力部に接続されている。ACカップリング容量C7の他方の端部(
図1の上側の端部)は、反転アンプ13Aの出力部に接続されている。
反転アンプ13Aからの出力は、ACカップリング容量C7を介して、ACカップリング容量C5の一方の端部(
図1の右側の端部)と発振アンプ12の入力部との間に入力される。すなわち、反転アンプ13Aからの出力は、ACカップリング容量C7を介して(つまり、ACカップリング容量C7によって直流成分が除去されて)発振アンプ12に入力される。
【0017】
上述したように、反転アンプ13Aは、圧電振動子11の発振周波数より高い周波数でゲインを有する。そのため、反転アンプ13Aからの出力がゲインを有する周波数領域では、発振アンプ12の出力が正転アンプになる。その結果、圧電振動子11の並列容量C0(
図2参照)と圧電発振器1の配線(圧電振動子11の
図1の左側の端部と異常発振防止部13との間の配線、および、圧電振動子11の
図1の右側の端部と発振アンプ12との間の配線)の自己インダクタンスとのLC共振周波数では、圧電発振器1の異常発振条件が成立しない。これにより、
図1および
図2に示す例では、圧電振動子11の並列容量C0と圧電発振器1の配線の寄生自己インダクタンスとによるLC発振で圧電発振器1の異常発振が生じてしまうおそれを抑制することができる。
低周波数領域(つまり、圧電発振器1の異常発振が生じるおそれが無い周波数領域)では、反転アンプ13Aからの出力がゲインを有さず、第1実施形態の圧電発振器1は、
図3に示す圧電発振器と同様に動作する。
【0018】
<第2実施形態>
以下、本発明の圧電発振器の第2実施形態について説明する。
第2実施形態の圧電発振器1は、後述する点を除き、上述した第1実施形態の圧電発振器1と同様に構成されている。従って、第2実施形態の圧電発振器1によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態の圧電発振器1と同様の効果を奏することができる。
【0019】
上述した第1実施形態の圧電発振器1では、圧電振動子11が水晶振動子である。一方、第2実施形態の圧電発振器1では、圧電振動子11が、水晶振動子以外の圧電振動子(例えば表面弾性波振動子など)である。
【0020】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。上述した各実施形態および各例に記載の構成を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0021】
1…圧電発振器
11…圧電振動子
C0…並列容量
C1…直列容量
R1…直列抵抗
L1…直列インダクタンス
12…発振アンプ
X2…発振アンプ用インバータ
R4…発振アンプ用帰還抵抗
C8、C9…容量
13…異常発振防止部
13A…反転アンプ
X3…反転アンプ用インバータ
R5…反転アンプ用帰還抵抗
C5、C6、C7…ACカップリング容量