IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】読取装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/04 20060101AFI20241111BHJP
   H04N 1/401 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
H04N1/12 Z
H04N1/04 106A
H04N1/401
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021016512
(22)【出願日】2021-02-04
(65)【公開番号】P2022119421
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】三上 亮
(72)【発明者】
【氏名】関 広高
(72)【発明者】
【氏名】須田 健之
(72)【発明者】
【氏名】磯▲崎▼ 慎一
【審査官】松永 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-023226(JP,A)
【文献】特開平10-112799(JP,A)
【文献】特開2009-010837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04
H04N 1/401
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像が印刷された記録材を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される前記記録材へ向けて光を発する発光手段と、
前記発光手段から発せられ、前記記録材によって反射された光を透過する透過部材と、
前記搬送手段により前記記録材が搬送される搬送方向と交差する交差方向に並んだ複数の画素から構成された受光部であって、前記透過部材を透過した光を受光する前記受光部を有し、前記搬送手段による前記記録材の搬送中に前記記録材上の前記画像を読み取る読取手段と、
前記読取手段により読み取られた前記画像の読取データを、前記搬送手段により搬送された前記記録材上の前記画像が通過する範囲と前記交差方向において重なる前記複数の画素の中の注目画素の受光結果に基づく出力値と、前記交差方向において前記範囲と重ならない前記複数の画素の中の周辺画素の受光結果に基づく出力値と、前記注目画素から前記周辺画素までの距離に応じた補正条件とに基づき決定する決定手段と、を有することを特徴とする読取装置。
【請求項2】
前記補正条件は前記距離に対応する補正値であり、
前記決定手段は、前記周辺画素の受光結果に基づく前記出力値を前記距離に応じた補正値に基づき補正し、前記注目画素の受光結果に基づく前記出力値と前記周辺画素の受光結果に基づく前記補正された出力値とから、前記画像の前記読取データを決定することを特徴とする請求項1に記載の読取装置。
【請求項3】
前記周辺画素は、前記交差方向において前記注目画素から第1の距離離れた第1周辺画素と、前記交差方向において前記注目画素から前記第1の距離よりもさらに長い第2の距離離れた第2周辺画素とを含み、
前記補正値は、前記第1の距離に対応する第1の係数と、前記第2の距離に対応する第2の係数とを含むことを特徴とする請求項2に記載の読取装置。
【請求項4】
前記第1の係数は前記第2の係数よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の読取装置。
【請求項5】
画像形成条件に基づき、記録材に画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段によりパターン画像が形成された前記記録材を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される前記記録材へ向けて光を発する発光手段と、
前記発光手段から発せられ、前記記録材によって反射された光を透過する透過部材と、
前記搬送手段により前記記録材が搬送される搬送方向と交差する交差方向に並んだ複数の画素から構成された受光部であって、前記透過部材を透過した光を受光する前記受光部を有し、前記搬送手段による前記記録材の搬送中に前記記録材上の前記パターン画像を読み取る読取手段と、
前記読取手段により読み取られた前記パターン画像の読取データを、前記搬送手段により搬送された前記記録材上の前記パターン画像が通過する範囲と前記交差方向において重なる前記複数の画素の中の注目画素の受光結果に基づく出力値と、前記交差方向において前記範囲と重ならない前記複数の画素の中の周辺画素の受光結果に基づく出力値と、前記注目画素から前記周辺画素までの距離に応じた補正条件とに基づき決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された前記パターン画像の前記読取データに基づき、前記画像形成条件を生成する生成手段と、を有する画像形成装置。
【請求項6】
前記補正条件は前記距離に対応する補正値であり、
前記決定手段は、前記周辺画素の受光結果に基づく前記出力値を前記距離に応じた補正値に基づき補正し、前記注目画素の受光結果に基づく前記出力値と前記周辺画素の受光結果に基づく前記補正された出力値とから、前記パターン画像の前記読取データを決定することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記周辺画素は、前記交差方向において前記注目画素から第1の距離離れた第1周辺画素と、前記交差方向において前記注目画素から前記第1の距離よりもさらに長い第2の距離離れた第2周辺画素とを含み、
前記補正値は、前記第1の距離に対応する第1の係数と、前記第2の距離に対応する第2の係数とを含むことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1の係数は前記第2の係数よりも大きいことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記画像形成手段により前記画像が形成された前記記録材が排紙される排紙手段をさらに有し、
前記読取手段は、前記搬送手段により前記画像形成手段から前記排紙手段へ前記記録材が搬送される間に、前記記録材上の前記パターン画像を読み取ることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記パターン画像は、前記記録材の端部領域に形成されることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はユーザー画像と共にシートに形成されたテスト画像を読み取る読取装置の読取精度を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを用いて画像形成を行う画像形成装置では、経時変化や環境変化によって、帯電、現像、転写プロセスの特性が変わり、出力画像の濃度が変化してしまう課題がある。
【0003】
上記課題を解決するために、一般的に画像形成装置では画像安定化制御と呼ばれる制御が行われている。画像安定化制御は、感光ドラムもしくは中間転写ベルト上などにパターン画像を形成し、その画像を光学センサにより検知し、その検知結果を元に出力画像が適切な濃度になるように画像形成プロセス条件を調整する制御である。画像形成プロセス条件とは、像担持体の帯電量やレーザの発光エネルギー量などのことである。
【0004】
しかし、このような画像安定化制御は、トナー像を記録材上に転写させる前の濃度情報を用いた制御であるため、転写以降に生じる濃度への影響に関しては制御できない。例えば、環境変動の影響による感光ドラムや中間転写ベルトから記録材へトナー像を転写する際の転写効率の変動である。この課題が残るため、最終的に出力される画像の濃度がばらついてしまう。
【0005】
そこで、この課題を解決するために、記録材の断裁位置より外側にパターン画像を形成し、定着装置の下流に設けた光学センサによってパターン画像を検出し、その検出結果を元に画像形成プロセス条件を調整する制御が行われている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5423620号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、発明者の実験によれば、特許文献1の構成においては、ユーザー画像とパターン画像とが形成される場合、パターン画像の検出結果に誤差が生じてしまうことがわかった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、画像の高精度な読取データを取得することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の読取装置は、像が印刷された記録材を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される前記記録材へ向けて光を発する発光手段と、前記発光手段から発せられ、前記記録材によって反射された光を透過する透過部材と、前記搬送手段により前記記録材が搬送される搬送方向と交差する交差方向に並んだ複数の画素から構成された受光部であって、前記透過部材を透過した光を受光する前記受光部を有し、前記搬送手段による前記記録材の搬送中に前記記録材上の前記画像を読み取る読取手段と、前記読取手段により読み取られた前記画像の読取データを、前記搬送手段により搬送された前記記録材上の前記画像が通過する範囲と前記交差方向において重なる前記複数の画素の中の注目画素の受光結果に基づく出力値と、前記交差方向において前記範囲と重ならない前記複数の画素の中の周辺画素の受光結果に基づく出力値と、前記注目画素から前記周辺画素までの距離に応じた補正条件とに基づき決定する決定手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像の高精度な読取データを取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】読取装置を有する画像形成装置の制御ブロック図
図2】画像形成装置の概略断面図
図3】読取装置の制御ブロック図
図4】ラインセンサの模式図
図5】濃度検出制御を含む画像形成処理のフローチャート図
図6】濃度調整チャートの模式図
図7】濃度検出処理部の機能ブロック図
図8】記録領域の模式図
図9】遮光量検知を説明するための図
図10】補正テーブルの例示図
図11】メモリに格納された読取データの説明図
図12】ラインセンサの画素が読み取った領域を示す模式図
図13】ラインセンサが濃度調整チャートを読み取った様子を示す図
図14】読取対象からの反射光を説明する模式図
図15】読取対象からの反射光を説明する模式図
図16】照り返しの距離特性を示すグラフ
図17】画素毎の係数の例示図
図18】濃度検出処理のサブシーケンスを示すフローチャート図
図19】メモリに格納される領域を説明するための図
図20】濃度検出処理の他のサブシーケンスを示すフローチャート図
図21】ラインセンサの画素から読み出される様子を説明するための図
図22】輝度濃度特性を示すグラフ
図23】輝度低下率を導くためのテストチャートの模式図
図24】照り返しの距離特性を示すグラフ
図25】距離係数、距離面積係数の例示図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
図1は、画像形成装置100を有する印刷システムの全体構成図である。印刷システムは、画像形成装置100及びホストコンピュータ101を備える。画像形成装置100とホストコンピュータ101とは、ネットワーク105を介して通信可能に接続される。ネットワーク105は、例えばLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信回線である。なお、画像形成装置100及びホストコンピュータ101は、ネットワーク105にそれぞれ複数接続されていてもよい。
【0013】
ホストコンピュータ101は、例えばサーバであり、ネットワーク105を介して、画像形成装置100へ印刷ジョブを送信する。印刷ジョブには、画像データ、印刷に使用される記録材の種類、印刷枚数、両面又は片面印刷の指示等の、印刷に必要な各種の情報が含まれる。
【0014】
画像形成装置100は、コントローラ110、操作パネル120、給紙装置140、プリンタ150、及び読取装置160を備える。画像形成装置100は、ホストコンピュータ101から取得された印刷ジョブに基づいて、記録材に画像を形成する。コントローラ110、操作パネル120、給紙装置140、プリンタ150、及び読取装置160は、システムバス116を介して相互に通信可能に接続される。
【0015】
コントローラ110は画像形成装置100の各ユニットを制御する。操作パネル120は、ユーザインタフェースであり、操作ボタン、テンキー、LCD(Liquid Crystal Display)を備える。オペレータは、操作パネル120により画像形成装置100に印刷ジョブ、コマンド、及び印刷設定等を入力することができる。操作パネル120は、設定画面や画像形成装置100の状態をLCDに表示する。
【0016】
給紙装置140は記録材を収容する複数の給紙段を備える。給紙装置140は、給紙段に積載された記録材束の最も上の記録材から1枚ずつ順番に給紙する。給紙装置140は、給紙段から給紙した記録材をプリンタ150へ搬送する。
【0017】
プリンタ150は、画像データに基づいて、給紙装置140から供給された記録材に画像を形成する。プリンタ150の具体的な構成については図2を用いて後述する。
【0018】
読取装置160は、プリンタ150によって生成された印刷物を読み取って、読取り結果をコントローラ110に転送する。
【0019】
コントローラ110の構成について説明する。コントローラ110は、ROM(Read Only Memory)112、RAM(Random Access Memory)113、及びCPU(Central Processing Unit )114を備える。さらに、コントローラ110は、I/O制御部111、及びHDD(Hard Disk Drive)115を備える。
【0020】
I/O制御部111は、ネットワーク105を介して、ホストコンピュータ101及び他の装置との通信制御を行うインタフェースである。ROM112は、各種制御プログラムを記憶する記憶装置である。RAM113はROM112に記憶された制御プログラムを読み出して記憶するシステムワークメモリとして機能する。CPU114は、RAM113に読み出された制御プログラムを実行して、画像形成装置100を統括的に制御する。HDD115は大容量記憶装置である。HDD115は、制御プログラムや画像形成処理(印刷処理)に用いる画像データ等の各種データを格納する。各モジュールはシステムバス116を介して互いに接続される。
【0021】
図2は、画像形成装置100の概略断面図である。画像形成装置100は給紙装置140、プリンタ150、読取装置160、及びフィニッシャ190を備える。ここで、フィニッシャ190は、プリンタ150の印刷物に後処理を行う後処理装置である。フィニッシャ190は、例えば、複数枚の印刷物にステイプル処理を行ったり、印刷物にソート処理を行う。
【0022】
図1に示すように、プリンタ150は4つの画像形成ユニットを備える。複数の画像形成ユニットは、イエローの画像を形成する画像形成ユニット、マゼンタの画像を形成する画像形成ユニット、シアンの画像を形成する画像形成ユニット、及びブラックの画像を形成する画像形成ユニットを含む。各画像形成ユニットの構成はほぼ共通である。
【0023】
画像形成ユニットは、感光ドラム153、帯電器220、露光装置223、現像器152を備える。感光ドラム153はモータ(不図示)によって矢印R1方向に回転する。帯電器220は感光ドラム153の表面を帯電する。露光装置223は感光ドラム153へ露光する。これによって、感光ドラム153には静電潜像が形成される。現像器152は現像剤(トナー)を用いて静電潜像を現像する。これによって、感光ドラム153上の静電潜像が顕像化されて、感光ドラム153には画像が形成される。
【0024】
プリンタ150は画像形成ユニットにより形成された画像が転写される中間転写ベルト154と、給紙装置140とを備える。給紙装置140は記録材を収容する給紙段140a、140b、140c、140d、及び140eを含む。プリンタ150は、画像形成ユニットにより形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの画像が中間転写ベルト154に重なるように転写される。これによって、中間転写ベルト154にはフルカラーの画像が形成される。中間転写ベルト154上の画像は矢印R2方向へ搬送される。そして、中間転写ベルト154に形成された画像は、中間転写ベルト154と転写ローラ221とのニップ部において、給紙装置140から搬送された記録材に転写される。
【0025】
プリンタ150は、記録材に転写された画像を加熱および加圧して、記録材に画像を定着させる第1定着器155および第2定着器156を有する。第1定着器155は内部にヒータを有する定着ローラと、記録材を定着ローラに圧接させるための加圧ベルトとを備える。これらローラは不図示のモータにより駆動されて記録材を搬送する。第2定着器156は記録材の搬送方向において第1定着器よりも下流に配置される。第2定着器156は第1定着器155を通過した記録材上の画像に対してグロスを増加させたり、定着性を担保する。第2定着器156は内部にヒータを有する定着ローラと、内部にヒータを有する加圧ローラとを備える。記録材の種類によっては第2定着器156を使用する必要がない。この場合、第2定着器156を経由せずに記録材は搬送経路130へ搬送される。フラッパ131は記録材を搬送経路130へ誘導するか、第2定着器156へ誘導するかを切りかえる。
【0026】
フラッパ132は、記録材を搬送経路135へ誘導するか、排出経路139へ誘導するかを切りかえる。フラッパ132は、例えば、両面印刷モードにおいて、第1面に画像が形成された記録材を搬送経路135へ誘導する。フラッパ132は、例えば、フェイスアップ排紙モードにおいて、第1面に画像が形成された記録材を排出経路139へ誘導する。フラッパ132は、例えば、フェイスダウン排紙モードにおいて、第1面に画像が形成された記録材を搬送経路135へ誘導する。また、フラッパ132は、記録材の第1面に画像が印刷された後、記録材の第2面に画像を印刷するために記録材を搬送経路135へ誘導する。
【0027】
搬送経路135へ搬送された記録材は反転部136へ搬送される。反転部136に搬送された記録材は、搬送動作が一旦停止した後、記録材の搬送方向を反転するためにスイッチバックする。次に、フラッパ133が記録材を搬送経路138へ誘導するか搬送経路135へ誘導するかを切り替える。フラッパ133は、例えば、両面印刷モードにおいて、スイッチバックした記録材を搬送経路138へ誘導する。フラッパ133は、例えば、フェイスダウン排紙モードにおいて、スイッチバックした記録材を搬送経路135へ誘導する。フラッパ133により搬送経路135へ搬送された記録材はフラッパ134によって排出経路139へ誘導される。また、フラッパ133は、記録材の第2面に画像を印刷するために、スイッチバックした記録材を搬送経路138へ誘導する。
【0028】
フラッパ133により搬送経路138へ搬送された記録材は、中間転写ベルト154と転写ローラ221とのニップ部へ向けて搬送される。これによって、ニップ部を通過するときの記録材の表裏が反転される。
【0029】
記録材の搬送方向においてプリンタ150の下流には、記録材上のユーザー画像領域外に印字された濃度パッチを読み取る読取装置160が接続されている。プリンタ150から読取装置160へ供給された記録材は搬送経路313に沿って搬送される。読取装置160は、さらに、原稿検知センサ311とラインセンサユニット312a、及び312bとを備える。読取装置160は、プリンタ150により濃度パッチが印刷された記録材を、搬送経路313に沿って搬送しながら、ラインセンサユニット312a及び312bによって読み取る。濃度パッチが印刷された記録材の詳細は図6を用いて後述する。
【0030】
原稿検知センサ311は、例えば、発光素子と受光素子とを有する光学センサである。原稿検知センサ311は、搬送経路313に沿って搬送されるテストシートの、搬送方向における先端を検出する。なお、コントローラ110は、原稿検知センサ311による記録材先端の検出タイミングに基づいて読取装置の読取動作を開始する。
【0031】
ラインセンサユニット312a、及び312bは記録材上の濃度パッチを読取る。濃度パッチは、搬送経路313を搬送される記録材の第1面、又は第2面に印刷される。ラインセンサユニット312a、及び312bは、濃度パッチの両面を読取るため、搬送経路313を挟むような位置に設けられる。印刷濃度調整が実行された場合、画像形成装置100はラインセンサユニット312a、及び312bによる濃度パッチを読み取り、表面、裏面のテストチャートの濃度を検知する。そして、コントローラ110は、出力する印刷画像が適切な濃度になるように、濃度検知結果に基づいて画像形成処理を制御する。
【0032】
(読取装置のシステム構成)
図3は、読取装置160のシステム構成図である。
【0033】
ラインセンサユニット(312a、312b)は、ラインセンサ(301a、301c)とメモリ(300a,300b)とADコンバータ(302a、302c)で構成される。ラインセンサ(301a、301c)は、例えばCIS(Contact Image Sensor)である。メモリ(300a,300b)には、各ラインセンサ(301a、301c)のチップ間光量ばらつき、チップ間段差、チップ間距離などの補正情報が格納されている。ADコンバータ(302a、302c)は、ラインセンサ(301a、301c)が出力するアナログ信号をデジタル信号へ変換し、濃度検出処理部305にRGBの読取データを出力する。濃度検出処理部305は、RGBの読取データから濃度パッチ部分のRGBの平均輝度値をCPU114へと出力する。濃度検出処理部305は、FPGA、ASICなどで構成される。また、ラインセンサユニット(312a,312b)、画像メモリ303、濃度検出処理部305、原稿検知センサ311はCPU114と接続されており、CPU114によって各装置の制御が行われる。画像メモリ303はCPU114における画像処理に必要なデータを記憶する装置として使われる。
【0034】
(ラインセンサの構成)
図4は、ラインセンサ(301a、301c)の構成図である。
【0035】
ラインセンサ(301a、301c)は、LED(400a、400b)、導光体402a、レンズアレイ403a、センサチップ群401aで構成される。
【0036】
400a、400bは光源であるLEDであり、白色発光するLEDで構成されている。402aは原稿照射手段である導光体である。LED400a、400bは導光体402aのそれぞれの端部に配置されている。403aはレンズアレイ、401aはセンサチップ群である。センサチップ群401aは、RGBのカラーフィルタが塗布された3ライン構成である。
【0037】
LED400a、400bが発した光は導光体402a内部をLEDが装着されていない側まで拡散していくとともに、曲率を有した箇所から出射され、原稿の主走査全域を照明するしくみになっている。ラインセンサ301a、及び301cは、レンズアレイ403aの位置、すなわち原稿読取りラインに対して副走査スキャン方向の先頭側、および後端側の2つの方向から光を照射することが可能な”両側照明構成”になっている。導光体402aから出射された光は原稿に照射され、原稿面上で拡散した光はレンズアレイ403aによりセンサチップ群401aに結像される。
【0038】
(濃度検出制御)
図5は、濃度検出制御を含む画像形成処理を示すフローチャート図であり、CPU114の指示によって実行される。
【0039】
ステップS500において、ユーザーが操作パネル120上で原稿サイズや印刷モードなどの指示をすると、CPU114を介して画像形成の指示と画像データとを含む印刷ジョブに必要な情報が各装置へ設定される。
【0040】
ステップS501において、CPU114は、ホストコンピュータから印刷ジョブの画像形成の指示に応じて印刷処理を開始する。ステップS502において、CPU114はページカウント値を初期化(P=0)する。ステップS503において、CPU114は、濃度パッチが付与されたユーザー画像をプリントするために画像データを生成する。詳細は後述する。
【0041】
ステップS504において、CPU114は、原稿検知センサ311によりテストシートの先端を検出する。原稿検知センサ311は、テストシートの先端を検知すると0→1へ値が変化するものである。CPU114は0→1への変化が入力される毎にページカウント値Pを1インクリメントする(ページカウント値:P=P+1)。
【0042】
ステップS505において、CPU114は、ラインセンサユニット312a、312bにより記録材の端部を検知する。詳細な処理は、後述する。
【0043】
ステップS506において、CPU114は、ラインセンサユニット312a、312b、濃度検出処理部305により、記録材面上の濃度パッチの濃度を検出する。なお、ここでは濃度と記載したが輝度でも良い。詳細な処理は後述する。
【0044】
ステップS507においてページカウント値Pが所定枚数P1以上となると(Yes)、CPU114は処理をステップS508へ進める。またページカウント値Pが所定枚数P1未満の場合(No)、CPU114はステップS503~S507の処理を繰り返し実行する。なお、所定枚数P1は予め決められた値である。
【0045】
ステップS508において、CPU114は、ステップS505で検知された記録材の端部及び余白量を算出する。算出した結果を用いて、ステップS506で検出された濃度パッチの濃度値からユーザー画像の濃度ズレを補正するための補正値を算出する。例えば、補正値は、リファレンスの濃度値に対する検出読取値の差分を求めることで得られる。
【0046】
(濃度調整チャート)
ステップS503で形成されるユーザー画像に対して濃度パッチが付加された濃度調整チャートの一例を、図6を用いて説明する。
【0047】
斜線部はユーザーが画像を印字する領域である。濃度調整用の濃度パッチは、図6に示すように印字され、記録材の両側に2つずつ濃度パッチを形成する。記録材の両側に印字される濃度は、YMCKどれでもよく、限定されない。ここでYMCKそれぞれの濃度パッチが、ユーザー画像と重なる場合はYMCKそれぞれの濃度パッチがユーザー画像よりも優先される。YMCKの濃度パッチは、濃度を段階的に変化させたものである。また、濃度パッチの最初は濃度の濃い濃度パッチとなっている。つまり、イエローの濃度パッチは搬送方向の先頭のパッチが、当該パッチの後続のパッチよりも高濃度のパッチとなっている。マゼンタ、シアン、ブラックも同様である。濃度パッチが形成された領域は、最終的には断裁され破棄される断裁しろ領域であるため、ユーザーの最終成果物としては問題とならない。濃度パッチの周辺は所定範囲の白地となっており、副走査方向の白地は、ユーザー画像からの照り返しの影響を一定とするため、ユーザー画像から距離が取れるように広めにしている。照り返しについては次に詳細に説明する。なお、濃度パッチを形成する位置はこれに限るものではない。
【0048】
(紙端部検出処理)
ステップS505の紙端部検出処理について、図7にて説明する。図7は濃度検出処理部305のブロック図である。以下、表面,裏面での紙端部検出処理及び濃度検知処理は共通のため、表面のみを説明する。なお表面,裏面とは、記録材の表面およびその逆面を示す。
【0049】
濃度検知処理部305は、輝度値記憶部305a、斜行量検出部305b、輝度値読出部305c、平均輝度値算出部305dから構成される。
【0050】
輝度値記憶部305aは、ラインセンサ(301a、301c)が出力する読取データを内部のメモリ305a5に記憶する。輝度値記憶部305aは、色選択部305a1、濃度パッチ左端座標検知部305a2、輝度値記憶領域決定部305a3、輝度値書込部305a4、メモリ305a5、及び原稿端部検知部305a6を備える。
【0051】
色選択部305a1は、ラインセンサ(301a、301c)が出力するRGBの読取データのうちの1色の読取データを選択する。選択する色はどの色でも構わないが、左端座標検知の精度を上げるためには紙の色によって選択するのが望ましい。
【0052】
濃度パッチ左端座標検知部305a2は、色選択部305a1が出力する1色の読取データで濃度パッチの左端を検知する。左端検知は、取得したRGBの読取データのうちの1色の読取データを用い、その読取データを主走査方向の1画素目から順番に閾値判定をすることで検出する。記録材上は輝度が高く、濃度パッチは輝度が低くなるので、輝度値が立下りを検知することで左端検知を行う。左端座標の検知精度が悪い場合は、複数の副走査ラインの輝度値の立下り検出を行い、複数のデータから座標を検知する構成でも良い。濃度パッチ左端を検知したときに、後述する原稿端部検知部305a6に濃度パッチ左端検知信号を出力する。
【0053】
輝度値記憶領域決定部305a3は、濃度パッチ左端座標検知部305a2が出力する濃度パッチの最初の左端座標に基づいて読取データを記憶する主走査、副走査の範囲を決定する。輝度値記憶領域決定部305a3は、濃度パッチの左上の角の座標と濃度パッチのサイズを元にラインセンサユニット(312a,312b)からの読取データを記憶する主走査、副走査の範囲を決定する。
【0054】
図8は読取データの記憶領域の説明図である。図8(a)の網線部は、平均輝度値の算出を行う領域である。周囲画像によるフレアの影響をなくすために、図8(a)のように濃度パッチの濃度毎の中心部分の輝度値のみで平均値を算出する。図8(b)の斜線部は、輝度値記憶領域決定部305a3が決定した記憶領域である。この記憶領域は、平均輝度値の算出を行う領域を主走査方向に領域を拡大したものである。記憶する領域が輝度値の平均値を算出する領域より拡大している理由は、濃度パッチのCISに対する斜行量を元に輝度値の平均値の算出に用いる領域を調整するためである。副走査方向に領域を拡大していない理由は、副走査方向は斜行量による影響が小さく無視できるためである。しかしながら、記憶する領域は、主走査方向に拡大したものに限らず、主走査、副走査ともに拡大しても良い。
【0055】
このように輝度値記憶領域決定部305a3が、濃度パッチの全画像領域の輝度値を記憶せずに、斜行量を考慮した領域のみの輝度値を記憶することで、使用するメモリの容量を最小化することができる。
【0056】
輝度値書込部305a4は、輝度値記憶領域決定部305a3が決定した主走査、副走査の領域内のラインセンサユニット(312a,312b)からのRGBの読取データをメモリ305a5に書き込む。
【0057】
原稿端部検知部305a6は、色選択部305a1が出力する1色の読取データで原稿端部を検知する。原稿端部検知は、取得したRGBの読取データのうち1色の読取データを用い、その読取データを主走査方向の1画素目から順番に閾値判定を行う事で記録材の左端側を検出する。一方記録材の右端側は、読取データの主走査方向の最終画素から-1画素毎に閾値判定を行う事で記録材の右端側を検出する。記録材の背面は輝度値が低く、記録材は輝度値が高いため、輝度値の立上りを検出することで記録材の左端, 右端それぞれの端部検知を行う。記録材の端部検知精度が悪い場合は、複数の副走査ラインの輝度値の立下り検知を行い、複数のデータから座標を検知する構成でも良く、記録材の端部が検知可能であれば、上述する方法に限定されない。濃度パッチ左端座標検知部305a2が出力する濃度パッチ検知信号が入力された際に、原稿端部検知結果、つまり濃度パッチを検知したときの原稿端部の座標を検知結果書込部305b2に出力する。
【0058】
斜行量検知部305bは、左端座標記憶領域決定部305b1、左端座標書込部305b2、メモリ305b3、余白用算出部305b4で構成される。
【0059】
左端座標記憶領域決定部305b1は、左端座標検知部305a2が出力する最初の左端座標、つまり濃度パッチの左上の角の座標と濃度パッチのサイズを元に左端座標をメモリに記憶する副走査の範囲を決定する。左端座標記憶部305b2で記憶する左端座標は、濃度パッチのラインセンサユニット(312a,312b)に対する斜行量を検出するために用いる。図9は斜行量検知の説明図である。図9に示すように斜行量の検出のためには、少なくとも2か所の左端座標が必要である。2か所の左端座標は、左端座標を高い精度で検出可能な最初と最後の濃度の濃い濃度パッチ部分のものを用いる。左端座標を記憶する領域は、最初の濃度パッチの副走査1ラインと最後の濃度パッチの副走査1ラインの合計副走査2ライン分となる。図9では副走査座標Y1、Y2である。なお、記憶領域は上記領域に限るものではなく、連続する複数の副走査ラインとしてもよい。連続する複数の副走査ラインの左端座標の平均座標を出すことで、左端座標の検出精度がアップし、その結果斜行量の検出精度も良いものとなる。
【0060】
左端座標書込部305b2は、左端座標記憶領域決定部305b1が決定した副走査の領域内の濃度パッチ左端座標検知部305a2からの濃度パッチの左端座標値、および原稿端部検知部305a6からの原稿端部座標をメモリ305b3に書き込む。
【0061】
余白用算出部305b4は、メモリ305b3から2つの濃度パッチ左端座標、および原稿端部座標を読出し、記録材上の濃度パッチのラインセンサユニット(312a、312b)に対する斜行量の算出及び原稿端部の一次式算出を行う。濃度パッチの斜行量は、図9に示すように濃度の濃い第一パッチのある副走査1ラインの左端座標(X1、Y1)と、最終濃度パッチのある副走査1ラインの左端座標(X2、Y2)の2つの座標から算出する。斜行量θskewは、式1より算出される。
θskew=(Y1-Y2)/(X1-X2) (式1)
【0062】
また原稿端部の一次式算出は、濃度の濃い第一パッチのある副走査1ラインの原稿左端座標(Xp1、Y1)と、最終パッチのある副走査1ラインの原稿左端座標(Xp2、Y2)の2つの座標から算出する。
【0063】
原稿端部の一次式は、式2より算出される。
y-Y2=(Y1-Y2)/(Xp1-Xp2)×(X-Xp2) (式2)
原稿端部座標と各濃度パッチにおける余白量を図9に示す。各濃度パッチに対応する原稿端部の座標は、式2を用いて算出し、それぞれX座標をXcN、Y座標をYcNとする(NはパッチNoを示す)。濃度パッチ左端座標検出部305a2で検出した濃度パッチ座標、及び余白用算出部305b4で算出した一次式より各濃度パッチの余白量を算出する。余白量PN(NはパッチNoを示す)は、各濃度パッチのX座標と原稿端部のX座標から算出される。
【0064】
なお、斜行量の検知方法は、原稿端部の2つの座標から一次式を算出する方法に限定されず、原稿端部から濃度パッチまでの距離を計測する方法でもよく、これに限定されない。
【0065】
読出部305cは、斜行量検知部305bで算出した濃度パッチの斜行量を元に読み出す読取データの範囲を決定し、決定した範囲を元にメモリから読取データを読み出す。事前に設定している主走査範囲から斜行量によるずれ量を加算した範囲が読み出す範囲となる。
【0066】
例えば、事前設定した所定領域Aの主走査方向の範囲をXA~XB、所定領域Dの主走査方向の範囲をXC~XDとし、斜行量によるずれ量をaとする。この場合、読み出す所定領域Aの主走査方向の範囲はXA+a~XB+a、所定領域Dの主走査方向の範囲はXC+a~XD+aとなる。また、斜行量によるずれ量aは、ステップS505で検出した左端座標の副走査座標をY1、濃度パッチの副走査座標をYC、斜行量をbとすると、a=b×(YC-Y1)となり、ずれ量分シフトして各所定領域の読み出しを行う。
【0067】
平均輝度算出部305dは、読出部305cが読み出したRGBの読取データそれぞれから濃度パッチの濃度毎の平均輝度値を算出する。図9のように濃度パッチが7パターンある場合は、RGBそれぞれで7個の平均値を算出し、合計21個の平均輝度値が算出される。また、余白量算出部304bで算出された余白量をもとに濃度パッチの濃度毎の平均輝度値の補正を行う。算出された余白量に応じて、濃度パッチの濃度毎の輝度平均値を、平均輝度値補正率を乗算することで補正し、最終的な濃度パッチの濃度毎の輝度平均値として出力する。補正率は余白量に応じたテーブルとして記憶されており、補正テーブルの一例は後述する。
【0068】
(平均輝度値補正)
図10に、余白用算出部305b4で算出した余白量に基づき、各濃度パッチに平均輝度値を補正する補正テーブルを示す。
【0069】
既定の余白量は例えば2.5mmとし、余白量のばらつきは例えば0.1mmずつとする。しかし、余白量とそのばらつきは上記数値に限定されない。また既定の余白量に対して、余白量が小さくなると平均輝度値補正率は高くなり、余白量が大きくなると平均輝度値補正率は低くなっている。しかしながら、平均輝度値補正率は一例であり、これに限定されない。
【0070】
(照り返しのメカニズム)
次に、照り返しのメカニズムについて説明する。
【0071】
図13は、読み取り位置に対する画像の配置を説明する図である。図13の上図は、搬送方向に対して上から見た断面図であり、下図は、搬送方向下流から上流用方向に見た断面図である。印刷物501は、濃度パッチ503および濃度パッチ周辺の白地領域504、ユーザー画像が任意に印字されるユーザー画像領域505とからなる。501aは印刷物の下面側であり、ユーザー画像領域505にはハーフトーンが均一に印字されている。印刷物501には均一な濃度のハーフトーン画像がユーザー画像領域505の全域に形成されているケースを記載しているが、実際にはジョブやページ毎に明暗さまざまな画像が印字される。Aは濃度パッチ503の中の所定領域、B、Cはユーザー画像領域505の中の所定領域であり、所定領域Bの方が、所定領域Aに近い。
【0072】
図13の下図はラインセンサユニット312aの読み取り位置Xに、印刷物501が達した時点での断面図であり、所定領域Aは白地、所定領域B、Cはハーフトーンとなっている。流し読みガラス314aは、記録材とラインセンサユニット312aとの間に位置する透過部材である。ラインセンサユニット312aは,流し読みガラス314aを介して、搬送経路313に搬送される記録材の第1面に形成された濃度パッチを読み取る。なお、ラインセンサ213bと記録材との間には流し読みガラス314bが設けられている。ラインセンサユニット312bは,流し読みガラス314bを介して、搬送経路313に搬送される記録材の第2面に形成された濃度パッチを読み取る。
【0073】
図14は、原稿反射光の光路を示した図である。A”は所定領域Aからの原稿反射光である。B’、C’はそれぞれ所定領域B、Cからの原稿反射光のうち、流し読みガラス314a内を反射する反射光である。流し読みガラス314aでの屈折条件は以下の式3で表される。
N1×sinθ1=N2×sinθ2 ・・・・(式3)
(ただしN1:空気の屈折率、N2:流し読みガラス314aの屈折率、θ1:空気からガラスへの入射角、θ2:ガラスから空気への入射角)
θ1の角度が大きいほど、ガラス内にて全反射する成分が大きくなるので、所定領域B,Cからの原稿反射光のうち、角度が大きい成分ほど、原稿反射光はより強く、遠くまで到達しやすい。B”、C”は、流し読みガラス314a内を反射する反射光B’,C’が、所定領域Aに照射されたことによる原稿反射光を示している。所定領域Aまでの距離を基準とすると、反射光C’は、反射光B‘よりも流し読みガラス314a内での反射回数が多く、光強度が減衰するため、原稿反射光B”>原稿反射光C”の関係がある。
【0074】
一方で、所定領域Cの原稿反射光が、流し読みガラス314aに入射される際に流し読みガラス314a上面で反射され印刷物501へと戻っていく反射光D’も存在する。しかしながら、反射光D’は流し読みガラス314aの上面での反射により、著しく光強度が減衰する。そのため、印刷物501へ再反射して再び流し読みガラス314aに入射していく成分や、印刷物501と流し読みガラス314a間の反射を繰り返しながら所定領域Aへ到達する成分は、無視できるほど小さい。また、反射光C‘が流し読みガラス314aの下面で全反射せずに透過していく反射光D”も存在する。しかしながら、センサユニット312aは、レンズアレイ403aを介して、センサチップ群401aが印刷物501に対してピントが合うように設計されているため、反射光D”はラインセンサ301aには結像されない。
【0075】
以上のメカニズムにより、所定領域Aの原稿反射光が結像されるラインセンサの所定領域301aAには、原稿反射光A”+B”+C”が結像される。原稿反射光B”,C”の光強度は、ユーザー画像領域505の画像パターンの明暗によって変わり、例えばユーザー画像が印字されず、最低濃度である紙の下地そのものである場合は最も原稿反射光B”,C”の光強度は強くなる。
【0076】
逆に、ユーザー画像領域505に高濃度の均一な黒が印字された場合について、図15にて説明する。Sは濃度パッチ503の中の所定領域、T、Uはユーザー画像領域505の中の所定領域であり、所定領域Tの方が、所定領域Sに近い。所定領域Sは白地、所定領域T、Uは均一な黒となっている。所定領域S、T、Uは便宜上図14とは異なる記号としたが、示す領域は同じであるものとする。T’、U’はそれぞれ所定領域T、Uからの原稿反射光のうち、流し読みガラス314a内を反射する反射光である。S”は、所定領域Sからの原稿反射光、T”、U”は、流し読みガラス314a内を反射する反射光T’,U’が、所定領域Sに照射されたことによる原稿反射光を示している。所定領域Sの原稿反射光が結像されるラインセンサの所定領域301aSには、原稿反射光S”+T”+U”が結像される。ユーザー画像領域の画像が、高濃度になるほど原稿反射強度が小さくなるので、原稿反射光T”<原稿反射光B”、 原稿反射光U”<原稿反射光C”の関係がある。さらに高濃度になり、画像形成部(150)が印字できる最高濃度で、ユーザー画像領域505が印字される場合、原稿反射光T”<<原稿反射光B”、原稿反射光U”<<原稿反射光C”となる。これにより、ラインセンサの所定領域301aSには、ほぼ原稿反射光S”(=A”)のみが結像される。これは、ラインセンサの所定領域301aSに結像される原稿反射光が、ユーザー画像領域505からの照り返しの影響を受けていないということを意味し、所定領域Sの読み取り輝度値を正しく読み取ることができる状態である。
【0077】
所定領域A(S)の読み取り輝度値は、ユーザー画像505が紙の下地であった場合が最大であり、A”(=S”)+B”+C”が入射されたときの輝度値であり、ユーザー画像505が最高濃度の黒であった場合が最小であり、A” (=S”)が入射された時の輝度値である。ユーザー画像505からの照り返しの総量Tは以下式4で定義する。
T=((A”+B”+C”)-A”)÷A”= (B”+C”)÷A” ・・・(式4)
【0078】
図16は、照り返しの距離特性を表すグラフである。横軸はユーザー画像領域505の注目領域から所定領域Aまでの距離、縦軸は照り返し量である。実線Vは、ユーザー画像領域505が紙の下地であった場合の距離特性、一点鎖線Wはユーザー画像領域505がハーフトーンであった場合の距離特性、点線Zは、ユーザー画像領域505が最高濃度の黒であった場合の距離特性である。所定領域Aまでの距離が近い、あるいは濃度が低いほど照り返し量は大きくなる。逆に、距離が離れるほど照り返し量は小さくなり、所定領域Aまでの距離がYになると照り返し量は0となる。ユーザー画像領域505が最高濃度の黒であった場合の照り返し量を基準とし、それとユーザー画像領域505が紙の白地であったときの照り返し量とを用いて、ユーザー画像領域505からの照り返し量を正規化することで照り返しの定量化が可能である。
【0079】
(照り返しの定量化)
図11はメモリ305a5に格納された読取データの説明図である。図中の網掛け領域がメモリ305a5に格納された読取データである。所定領域Dは、ユーザー画像領域505内の領域であって、所定領域Aまで照り返しが影響する位置Yまでを含む領域である。所定領域Aと所定領域Dの間には、濃度パッチ周辺の白地領域504の一部が含まれるが、一括で格納しておく。
【0080】
図11の1パッチ分の領域を詳細に記載したものが図12である。所定領域Aは主走査32画素、副走査61ラインである。所定領域Dは主走査384画素、副走査100ラインである。各座標をA(x,y)、D(x,y)とし、各画素のデータをAi、Djで定義する。i,jは図中左上を始点として図中左から右へ増加する整数である。例えば、A1であれば所定領域Aの1番目の読取データなので座標A(0,0)の読取データを示す。A33であれば座標A(0、1)の読取データ、A1952であれば座標A(31、60)の読取データである。Dに対しても同様である。ただしi=1~1952、j=1~38016である。
【0081】
ここで、所定領域Dは所定領域Aに対して副走査方向の上下に幅が広くなるよう画像をメモリに保存している。対象とする濃度パッチの読取値は、濃度パッチの周囲からの照り返しの影響を受けることが実験により分かった。つまり、所定領域D内の所定領域Aに近い部分においては斜め方向からの照り返しの影響も受ける。そのため、副走査方向において所定領域Dの幅は副走査方向において所定領域Aの幅よりも広い。
【0082】
このように所定領域Dのメモリを確保した結果、特に所定領域D内の左から48画素目かつ副走査方向の上下19ライン目までの範囲が、所定領域Aへの照り返しに大きく影響している。
【0083】
一方、左側から48画素以降の副走査方向の上下19ライン目までの領域(図中灰色部)は相対的に所定領域Aへの照り返しに対して影響の少ない部分である。この領域の画素値を用いて補正を行うと過補正となって精度が悪化することがある。そのため、この領域の画素値に対しては後述する補正アルゴリズムの中で過補正とならないような小さい係数を用いて処理するか、係数に0を用いて補正効果に影響を与えないようにする必要がある。
【0084】
格納された読取データを、CPU114が輝度値読出部305cを制御して、必要な画像領域を読み出し、処理することにより照り返しの定量化を行う。
【0085】
CPU114が、所定領域Aの読取データに対して行う演算を説明する。所定領域Aに対しては、すべての画素を読み出して平均値Aaveを算出する。後の照り返し補正の補正対象となるデータである。
【0086】
CPU114が、所定領域Dの読取データに対して行う演算を説明する。所定領域Dの読取データに対しては、D1から1画素ずつ順番によみ出して、後述する予め備えている画素毎の係数と乗算し、それらをすべて加算する。
【0087】
図17は、画素毎の係数の一例である。各画素に対して予め係数が決められている。画素毎の係数をKjで定義する。例えば、K1であれば所定領域Dの1番目の係数なので座標D(0,0)の読取データに対する係数を示す。K385であれば座標D(0、1)の係数であり、K38016であれば座標D(383、99)の係数である。係数Kjは、図16に記載の距離特性に基づいて作成されており、所定領域からの距離が最も近い座標D(0,50)の係数が最も高く、距離が遠くなるほど係数が小さくなる。
【0088】
また、前述のように所定領域Aに近い所定領域Dは斜めからの照り返しの影響があるので、これを補正するために座標D(0,0)の係数Kjは座標D(0,383)の係数Kjに比べて大きい。
【0089】
また、主走査方向に距離が離れるに従い斜め方向の照り返し影響は小さくなるので、所定領域Aから斜め方向に距離が離れるほど係数Kjの値も小さくなる。座標D(0,48)~座標D(19,383)の範囲の係数Kjは前述した過補正を抑制するために0となっている。これによって所定領域Aに近い領域では斜め方向からの照り返し影響も正しく補正され、かつ主走査方向に距離が離れた照り返し影響が極めて小さい領域の画素値を補正に用いないようにすることで過補正による精度低下を防止している。座標D(0,50)の係数K19201=1.000であり、座標D(0、383)の係数K384=0である。
【0090】
CPU114は、画素毎にDj*Kjを行い、加算する。加算値Pは式5に示すようにCPU114によって算出される。
【0091】
【数1】
【0092】
加算値Pの最大値Pmaxは所定領域Dが白地である場合で、全画素の輝度値が255(/255)であるとすると、Pmax=3409005(少数第一位で四捨五入)である。加算値Pの最小値Pminは所定領域Dが黒である場合であり、全画素の輝度値が10(/255)であるとすると、P=133686(少数第一位で四捨五入)である。Pmaxおよび、Pminは固定値である。任意のユーザー画像の場合の加算値Puは、133686~3409005のいずれかの数値となる。例えば、所定領域Dの読取データが均一なハーフトーンである場合の加算値Puhtは、全画素の輝度値が128(/255)であるとすると、Puht=1711187(少数第一位で四捨五入)である。
【0093】
(照り返しの補正率算出)
加算値Pと照り返し総量Tの紐づけを行い、照り返し補正率Qを以下式6によって算出する。
Q=1÷(T×((Pu-Pmin)/(Pmax-Pmin))+1) ・・・(式6)
【0094】
照り返し補正率Qは、前述した補正対象である所定領域Aの平均値Aaveに対して乗算する値である。具体的にPu=Pmaxであるときに最小となり、Qmin=0.954である。Pu=Pminであれば最大となりQmax=1.000である。Pu=Pmaxである場合、所定領域Aは照り返しの影響を最も受けている状態であるため、Qmin=0.954を乗算することで所定領域Aの平均値Aaveを低く補正するということを意味するスカラー量である。一方、Pu=Pminである場合は、そもそもユーザー画像から照り返しの影響を受けていないので、Qmax=1.000を乗算することで所定領域Aの平均値Aaveをそのまま何も補正しない、ということを意味するスカラー量である。Pu=Puhtであれば、Qu=0.978であり、ユーザー画像からほどほどの照り返しを受けている状態であるため、所定領域Aの平均値Aaveを適度に低く補正する、ということを意味するスカラー量である。
【0095】
(照り返しの補正)
以上の通り、照り返し補正がなされた後の所定領域Aの輝度平均値A”’aveの算出式を式7に示す。
A”’ave=Q×Aave ・・・(式7)
(ただし、A”’:照り返し補正後の所定領域Aの輝度平均値)
【0096】
具体的に、所定領域Dが白地であったときの所定領域Aの輝度平均値がAave=210(/255)であるとすると、照り返し補正後の所定領域Aの輝度平均値A”’=200である。これは、原稿反射光A”をラインセンサ301aAで受光した輝度値と等価であり、原稿反射光B”,C”の照り返しを精度良く検知して補正することが可能である。
【0097】
(照り返し補正のフローチャート)
最後にCPU114が行う濃度検出処理ステップS506のフローの詳細を図18を用いて説明する。
【0098】
ステップS101において、CPU114は、濃度パッチのカウント数を0に初期化する。濃度パッチのカウント数は記録材1枚内にある濃度パッチの数を把握するために用いる。カウント数が記録材1枚内の濃度パッチの数に到達したら検知完了となる。
【0099】
ステップS102において、CPU114は、副走査のラインカウント数を0に初期化する。ステップS103においてCPU114は、主走査画素カウント数を0に初期化する。ステップS104において、CPU114は、輝度値読出部305cにアクセスし、輝度値Djを読み出す。ステップS105において、CPU114は、ステップS104において読み出した輝度値Djに対して、予め備えられている画素毎の係数Kjを乗算し、結果を保持しておく。ステップS106において、CPU114は、主走査画素カウント数をインクリメントする。ステップS107において、CPU114は、主走査画素カウント数が384以上であればステップS108へ処理を移行させ、そうでなければステップS104へ処理を移行させる。
【0100】
ステップS108において、CPU114は、副走査のラインカウント数をインクリメントする。ステップS109において、CPU114は、副走査方向のラインカウント数が99以上であればステップS110へ処理を移行させ、99未満ならばステップS103へ処理を移行させる。
【0101】
ステップS110において、CPU114は、ステップS105にて保持した値をすべて加算し、加算値Pを算出する。ステップS111において、CPU114は、ステップS110において求めた加算値Pを用いて照り返し補正率Qを求める。ステップS112において、CPU114は、輝度値読出部305cにアクセスし、所定領域Aの輝度平均値Aaveを算出する。ステップS113において、CPU114は、ステップS111とステップS112において求めた照り返し補正率Qと、所定領域Aの輝度平均値Aaveを乗算する。ステップS114において、CPU114は、濃度パッチのカウント数をインクリメントする。ステップS115において、CPU114は、濃度パッチのカウント数が7以上であれば処理を終了させ、ステップS507へ移行する。そうでなければ、CPU114は、ステップS102へ処理を移行する。以上の処理をチャートに配置されたパッチ毎に行う。
【0102】
以上により、濃度パッチの近傍のユーザー画像からの照り返し影響を精度良く検知し、照り返しのない輝度値へと補正することが可能となる。
【0103】
以上により、濃度パッチの近傍のユーザー画像からの照り返し影響を精度良く検知し、照り返しのない輝度値へと補正することが可能となる。
【0104】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様である部分は説明を省略する。
【0105】
第1実施形態の画像形成装置100(読取装置160)は、濃度パッチに対して斜め方向からの照り返し影響も補正し、かつ過補正とならないように、所定領域Aに対して所定領域D全域を副走査方向上下に幅が広くなるように設定していた。
【0106】
しかし、所定領域Aからの距離が遠く、Kjの値が0となっているところでは結果的に0をかけているだけである。そのため、例えばその領域の画素値をメモリに保存せず乗算も行わないようにすればメモリの使用領域を節約でき、かつ不要な乗算も行わないので処理装置をより簡素化することができる。
【0107】
以下に、所定領域Dの領域設定の仕方を工夫して、斜めからの照り返し影響を軽減し、かつ過補正を抑制できる例を示す。
【0108】
第1実施形態の係数が0に設定されていた部分はメモリとして確保せず、第1実施形態では長方形に確保していたメモリ及び係数列を、図19中に記載の形状に合うように確保する。この例では第1実施形態に対し所定領域D内の黒塗りの部分はメモリとして確保しないようにしており、各画素のデータをDj、画素毎の係数をKjで定義する際に下記のように定義している。
【0109】
K1であれば所定領域Dの1番目の係数なので座標D(0,0)の読取データに対する係数を示し、K48であれば座標D(47,0)を示している。
【0110】
黒塗り部分はメモリを用意しないため、係数Kjも用意しない。よってK49は座標D(0,1)に対応するよう用意される。このように図19中に示したように照り返しに対して影響がない部分はメモリ及び係数を用意せず、必要な場所にだけメモリや係数を配置することで、メモリ及び演算量を節約することができる。
【0111】
以上の動作を図20のフローチャートを用いて説明する。なお、第1実施形態と同様の部分は説明を省略する。
【0112】
画像形成装置100(読取装置160)は、上述したように黒塗り部分をメモリに格納しないために画像を読み取る際の読み取り動作及びラインカウント動作が第1実施形態と異なっている。
【0113】
ステップ103-2及びステップ103-3では現在読み込んでいる副走査ラインが全体のうちの何ライン目であるかを判断している。初めの19ラインまでであればステップ104-1へ、真ん中の61分であればステップ104-2へ、最後の19ライン分であればステップ104-3へ分岐して主走査方向に取り込む長さを変えている。
【0114】
ステップ104-1からステップ107-1までの動作では、主走査方向に48画素分を取り込んで重みづけ計算を行っている。
【0115】
ステップ104-2からステップ107-2までの動作では、主走査方向に384画素分を取り込んで重みづけ計算を行っている。
【0116】
ステップ104-3からステップ107-3までの動作では、主走査方向に48画素分を取り込んで重みづけ計算を行っている。
【0117】
第2実施形態においては図19に示した形にメモリを配置したが、照り返しの影響が少ない部分にメモリ及び係数を用意しないという考え方に沿ったものであればいかなる形であっても同様の効果が得られる。例えば図中の黒塗り領域が主走査方向右側に行くにしたがって副走査方向に段階的に拡大していくような形であっても良い。
【0118】
計算自体は第1実施形態で示した式と同様に計算が可能であり、結果的に不要な計算(0による乗算)を行わずに済み、なおかつメモリ容量も第1実施形態に対して節約可能な構成となる。
【0119】
(第3実施形態)
照り返しの定量化の他の方法について詳細に説明する。本方法はステップ1~ステップ4までの4つの工程から構成される。
【0120】
(ステップ1 輝度値の取得)
図21は、CPU114が輝度値読出部305cによりメモリ305a5から読み出して処理する読取データである。所定領域Aは主走査32画素、副走査64ラインである。所定領域Dは主走査288画素、副走査64ラインである。各画素の輝度値をA(x,y)、D(x,y)とし、xは主走査画素、yは副走査ラインである。
【0121】
CPU114が、輝度値読出部305c、および平均輝度算出部305dを制御して所定領域Aの読取データに対して行う演算を説明する。所定領域Aに対しては、輝度値読出部305cを制御してすべての画素を読み出し、平均輝度算出部305dによる平均輝度値算出結果Aaveを読み出す。後の照り返し補正の補正対象となるデータである。
【0122】
CPU114が、輝度値読出部305c、および平均輝度算出部305dを制御して所定領域Dの読取データに対して行う演算を説明する。所定領域Dの読取データに対しては、まず輝度値読出部305cを制御して、分割領域1に相当するD(0、0)~D(7、63)までの読取データを読み出して、平均輝度算出部305dによる平均輝度値算出結果を読み出す。平均輝度値算出結果に対して行う処理については後述する。その後、分割領域2に相当する領域の平均輝度値算出結果を読み出し、同様に処理する。そして、予め定めている分割領域毎に順番に同様の処理を繰り返す。前述したように、照り返しは所定領域Aからの距離が遠くなるほど影響が小さくなるため、照り返し補正精度と、読み出し回路規模の最適化を考慮し、所定領域Aからの距離が遠くなるに伴い、分割領域の幅を広げるようにしている。具体的には分割領域7からは主走査の画素幅を16としており、分割領域12からは主走査の画素幅を32としている。所定領域Dの画素幅、分割領域幅はこの実施形に限ったものではない。例えば分割領域幅はすべて同じであっても構わない。
【0123】
(ステップ2 輝度濃度変換)
図22は、輝度濃度特性を示す。横軸は所定のパッチをXliteなどの測色器で読み取った濃度、縦軸は同パッチを読み取り部312a、312bの補色に相当するラインセンサで読み取った読み取り輝度である。図22は一例としてマゼンタパッチの濃度と、読み取り部312a、312bのGのラインセンサで読み取った輝度値との特性を図示しているが、実際にはパッチ色(Y、M、C、K)毎に特性があり、濃度補正を実施したいパッチ色に応じて切り替える。例えば濃度補正をするパッチ色がCであればC-Rの輝度濃度特性を、同様にM であればM-Gの輝度濃度特性を、同様にY であればY-Bの輝度濃度特性を、同様にK であればK-Gの輝度濃度特性を用いる。本特性は、パッチの測色器濃度と、同パッチの読み取り輝度を紐づける特性であり、開発時のデータに基づいて製品プログラムとしてROM112に格納されている既知の特性である。実際にはテーブル化されており、CPU114は、入力された読み取り輝度を、測色器相当の濃度に変換する。前述の平均輝度算出部305dによる平均輝度値算出結果は、照り返し補正の基準を測色器基準とするために、一旦濃度に変換される。平均輝度値算出結果がHであれば、濃度H’に変換される。平均輝度値算出結果がI(<H)であれば、濃度I’(>H’)に変換される。
【0124】
(ステップ3 濃度-輝度低下率変換)
次のステップとして、変換された濃度を輝度低下率へ変換するための処理について説明する。輝度低下率とは、「着目した領域の読み取り輝度が、周辺の画像濃度によってどの程度低下するか」を示すスカラー量のことである。
【0125】
図23(a)は、輝度低下率を導くための特性を作成するテストチャートの一例である。503’は濃度パッチを示す。パッチは計7個あり、すべて紙白である。上から順にM0~M6とする。504’はパッチ周辺の白地領域を示す。505’はユーザー画像に相当する領域を示す。所定領域A’は濃度パッチ内の所定領域を示す。所定領域D’は、ユーザー画像内の所定領域を示す。503‘、504’および、所定領域A’のそれぞれの位置関係は、503,504、所定領域Aと全く同じある。所定領域D’には、パッチごとに濃度の異なるベタパターンが印字されている。上から順にM0’~M6’である。M1’は紙白であるためM1と同一濃度である。輝度低下率を正しく導くためには、M6’について、画像形成装置100で出力される濃度の中で、最高濃度で印字されていることが望ましい。またM2’~M5’は、4階調に限るものでなく、M1’~M6’内の濃度であって、できる限り階調が多く印字されている方が望ましい。M0’~M6‘は予め、Xliteなどの測色器で濃度測定されており、既知である。所定領域D’の幅は、照り返しの影響範囲以上とするのが望ましく本実施形態では288画素としている。
【0126】
開発段階において、本チャートを読み取った輝度値から、以下演算式により、各パッチ毎に輝度低下率を求める。
輝度低下率=Mnの輝度値÷M1の輝度値 ・・・(式3)
(ただし、n=2~6、M1パッチの輝度低下率は1.000固定)
【0127】
具体的には、M1=210(/255)であった場合、M2の輝度値が207であるとすると、輝度低下率=0.986(小数点第三位)、M6の輝度値が200であるとすると、輝度低下率=0.952(小数点第三位)となる。
【0128】
図23(b)は、濃度-輝度低下率特性である。前述の通り求めたM0’~M6’の測色器濃度および、輝度低下率をプロットすることにより作成される特性である。横軸は、M1’~M6’の測色器濃度、縦軸は各パッチ毎に算出した輝度低下率である。実際には、間のデータを近似式演算や、線形補間などでつなぐことにより、補正テーブルとして作成され、製品プログラムとしてROM112に格納されている。なお、M1’は紙白であるため、横軸がM1’の測色器濃度のときに輝度低下率は1.000であり、紙白濃度以下の濃度はすべて輝度低下率1.000でクリップする。濃度-輝度低下率特性は、輝度濃度変換特性と同様に、パッチ色(Y、M、C、K)毎に特性があり、CPU114は、濃度補正を実施したいパッチ色に応じて切り替える。具体的には、前述した輝度濃度変換後のH‘は、マゼンタの濃度-輝度低下率特性に基づいて、輝度低下率H”に変換される。同様に、輝度濃度変換後のI’は、輝度低下率I”に変換される。後の説明のため、分割領域毎の輝度低下率をEnと定義する。(ただし、n=1~16)
本特性を求めることは、前述した照り返し総量Oを定量的なスカラー量で正規化していることと同義である。すなわち、最も照り返しの多い条件であるユーザー画像領域が紙白である場合に対して、最も照り返しの少ない条件であるユーザー画像領域が画像形成装置100の最高濃度である場合は、比率にして0.952~1.000までの範囲がある。これは、ユーザー画像濃度に応じて、0.952~1.000の輝度低下率を取りうるということである。
【0129】
(ステップ4 距離係数および距離面積係数の乗算)
次に、所定領域Aからの距離に応じた重み付けを行う。
【0130】
図24は、照り返しの距離係数特性である。横軸は所定領域Aからの距離であり、縦軸は距離係数とする。実線Vは図16と同様に、ユーザー画像領域505が紙の白地であった場合の距離係数を示しており、距離係数とは、図16の縦軸の「照り返し影響」を1.000で正規化した特性のことである。Yは照り返し影響範囲であり、本実施形態では288画素である。Vn(n=1~16)は各分割領域の先頭画素の距離係数であり、V1=1.000、Y=288画素に相当する位置では0.000である。V2~16は、開発時でのデータにより、図13で示した照り返し量の距離特性が既知であるため、V1=1.000とする正規化を実施することで自然と求まる。本実施形態では、分割領域毎に照り返し量を処理していくため、分割領域毎の距離係数Jnを以下の演算式に従って求める。
分割領域毎の距離係数Jn=(Vn+Vn+1)÷2 ・・・・(式8)
(ただしn=1~16)
【0131】
簡易的に、各分割領域の先頭画素と次の分割領域の先頭画素に相当する距離係数の平均値を分割領域の距離係数としているが、各分割領域の平均値は、先頭画素と終了画素の距離係数の平均値で求めるようにしても良い。
【0132】
さらに、分割領域毎に主走査幅が異なるため、分割領域毎の照り返しの影響度を考慮して、以下演算式により、分割領域毎に距離面積係数Knを求める。
分割領域毎の距離面積係数Kn=Jn*分割領域画素幅 ・・・・(式9)
(ただしn=1~16)
【0133】
図25は、前述の通り求めた、距離係数、距離面積係数の一例である。本係数は製品プログラムとしてROM112に格納されている。CPU114は、前述した分割領域毎の輝度低下率Enに対して、距離面積係数Knを乗算することにより、所定領域Aからの距離に応じた重み付けを行う。
重み付け後の輝度低下率Pn=分割領域毎の輝度低下率En*距離面積係数Kn・・・(式10)
(ただしn=1~16)
最後に、重み付け後の輝度低下率Pnをすべて加算し、照り返し量Ptotalを定量化する。
【0134】
【数2】
【0135】
次に照り返し補正率の算出方法について説明される。CPU114は、重み付け後の輝度低下率Pnの加算値Ptotalにより、照り返し補正率Qを式12によって算出する。
Q= Pmin ÷Ptotal ・・・(式12)
【0136】
ここで、ユーザー画像領域が最高濃度時の、重み付け後の輝度低下率Pnの加算値Pminは、以上説明してきた演算をユーザー画像領域が最高濃度であるケースにおいて予め演算しておいた固定値となっている。照り返し補正率Qは、前述した補正対象である所定領域Aの平均値Aaveに対して乗算する値である。具体的には、Ptotalが最大であるとき、すなわちユーザー画像領域が白地のみである場合に最小となり、Qmin=0.952である。逆に、Ptotalが最小である場合、すなわちユーザー画像領域が最高濃度である場合に最大で、Qmax=1.000である。Ptotalが最大である場合、所定領域Aは照り返しの影響を最も受けている状態であるため、Qmin=0.954を乗算することで所定領域Aの平均値Aaveを低く補正するということを意味するスカラー量である。一方、Ptotalが最小である場合は、そもそもユーザー画像から照り返しの影響を受けていないので、Qmax=1.000を乗算することで所定領域Aの平均値Aaveをそのまま何も補正しない、ということを意味するスカラー量である。そして、照り返し補正がなされた後の所定領域Aの輝度平均値A”’aveは式7に基づいて演算される。
【符号の説明】
【0137】
313 搬送経路
301a、301c ラインセンサ
305 濃度検出処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25