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特許7585074画像処理装置、印刷装置、画像処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】画像処理装置、印刷装置、画像処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/21 20060101AFI20241111BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
B41J2/21
B41J2/01 451
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021019362
(22)【出願日】2021-02-09
(65)【公開番号】P2022122194
(43)【公開日】2022-08-22
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 聖二
(72)【発明者】
【氏名】馬場 直子
(72)【発明者】
【氏名】村澤 孝大
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕充
(72)【発明者】
【氏名】栗山 恵司
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】森 浩
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/084532(WO,A1)
【文献】特開2014-225845(JP,A)
【文献】特開2014-136413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
2/165-2/20
2/21-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光インクと前記蛍光インクの励起波長における反射率が前記蛍光インクの発光波長における反射率よりも高い減法混色インクとを用いて第1パッチ画像を印刷し、前記減法混色インクを用いて第2パッチ画像を印刷するように印刷手段を制御する印刷制御手段と、
前記第1パッチ画像を測定して得られる測定値に基づいて、前記蛍光インクのためのキャリブレーション処理を実行し、前記第2パッチ画像を測定して得られる測定値に基づいて、前記減法混色インクのためのキャリブレーション処理を実行する実行手段を有する、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記キャリブレーション処理は、前記印刷手段が入力色値に対して出力する濃度を補正する処理である、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記印刷制御手段は、前記第1パッチ画像において、前記減法混色インクの少なくとも1つのドットが、前記蛍光インクのドットを被覆するように、前記印刷手段を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
1または複数の光源と、受光素子とを備え、前記第1パッチ画像及び前記第2パッチ画像を測定する測定手段を制御する測定制御手段を更に有する、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記1または複数の光源はそれぞれ、所定波長のバンド幅を持つ、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記測定手段において、前記蛍光インクの励起波長を含む波長域に分光分布が存在する光源の光が、前記第1パッチ画像に当てられる、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
第1パッチ画像は、一定量の前記減法混色インクが打ち込まれ、かつ、前記蛍光インクの打ち込み量が所定値刻みで変調されたパッチ画像である、
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記減法混色インクは、前記蛍光インクの分光反射率が紙白の分光反射率と交わる点における波長を基準波長と定義した場合に、当該基準波長より長波長側の反射率が短波長側の反射率より相対的に低いインクである、
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記減法混色インクの紙面上の被覆率が一定以上である、
ことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記実行手段は、前記測定値を用いて算出される前記蛍光インクの濃度特性に基づいて、前記蛍光インクのためのキャリブレーション処理を実行する、
ことを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の画像処理装置を有する印刷装置。
【請求項12】
蛍光インクと前記蛍光インクの励起波長における反射率が前記蛍光インクの発光波長における反射率よりも高い減法混色インクとを用いて第1パッチ画像を印刷し、前記減法混色インクを用いて第2パッチ画像を印刷するように印刷手段を制御するステップと、
前記第1パッチ画像を測定して得られる測定値に基づいて、前記蛍光インクのためのキャリブレーション処理を実行し、前記第2パッチ画像を測定して得られる測定値に基づいて、前記減法混色インクのためのキャリブレーション処理を実行するステップを有する、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項13】
コンピュータに請求項12に記載の方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の印刷装置を有するシステムにおいて、印刷装置間の印刷色調を統一する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から印刷した階調パッチを測定器で読み取り、吐出するインク量を変えて印刷装置の色の濃度を機体間で合わせるカラーキャリブレーションが知られている。
【0003】
測定器に回折格子フィルタを使って色の濃度や色彩値(例えば、CIE L*a*b*、三刺激値XYZなど)を得ようとすると測定器が高価になる。一方、所定波長にバンド幅をもった光源(例えば、LEDなど)と、受光素子(例えば、フォトダイオードなど)とを用いて反射係数を得ることによって濃度特性を取得すると、蛍光インクを測定する場合に不具合が発生する可能性がある。この理由は、入射された光の波長域よりも長波長側の光を発光する特性により、階調パッチ間の反射係数差が小さくなってしまうからである。
【0004】
従って、複数の印刷装置を有する印刷システムで高精度なキャリブレーションによる色管理を導入するには、受光する光の波長域を細かく分離できる高価な測定器を使用しなければならず、印刷システムの導入コストアップとなってしまう。
【0005】
特許文献1は、蛍光インクのカラーキャリブレーションに関連する技術として、インクの蛍光情報に応じて光学センサが検出した実測濃度を補正し、視覚に準じた濃度特性に基づいて色ずれ補正用のテーブルを作成する方法を開示している。具体的には、実測濃度に対して視覚に準じた重みづけをする補正を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-136413号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】日本画像学会誌、2018年、第57巻、第2号、p.207-213
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、蛍光の発光により、濃度差に対するセンサの読み取り信号値の差が小さくなると、センサの読み取り誤差(センサのS/N比)の影響が大きくなってしまう。その結果、特許文献1のようにセンサの読み取り値に対して視覚特性に準じた重みをつけたとしても、センサの読み取り精度を上げることはできず、キャリブレーションの補正精度が下がってしまうという問題があった。また、センサのS/N比を上げるためには高感度なセンサを用意する必要があり、センサ装置のコストアップとなってしまう。
【0009】
そこで、本発明の一実施形態は、上記の課題に鑑み、蛍光インクを用いて印刷する印刷装置における高精度なカラーキャリブレーションを、低コストで実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態は、蛍光インクと前記蛍光インクの励起波長における反射率が前記蛍光インクの発光波長における反射率よりも高い減法混色インクとを用いて第1パッチ画像を印刷し、前記減法混色インクを用いて第2パッチ画像を印刷するように印刷手段を制御する印刷制御手段と、前記第1パッチ画像を測定して得られる測定値に基づいて、前記蛍光インクのためのキャリブレーション処理を実行し、前記第2パッチ画像を測定して得られる測定値に基づいて、前記減法混色インクのためのキャリブレーション処理を実行する実行手段を有する、ことを特徴とする画像処理装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、蛍光インクを用いて印刷する印刷装置における高精度なカラーキャリブレーションを、低コストで実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】画像処理部のうち色変換処理に関わる構成を示すブロック図
図2】パッチチャートを示す図
図3】1D-LUTデータを説明する図
図4】印刷システムの構成図
図5】センサ部によるパッチチャートの読み取りを示す図
図6】センサ部を説明する図
図7】蛍光インクの励起波長および発光波長、並びに、減法混色インクの分光反射率の図
図8】分光反射率の図
図9】カラーセンサでキャリブレーション用の階調パッチを測定した結果を示す図
図10】用紙に印刷したインクをカラーセンサで測定する際の、反射光と、蛍光による発光との関係を模式的に示した図
図11】用紙に印刷した蛍光ピンクインクを、光学的フィルタ(グリーンフィルタ)を設置したカラーセンサで測定する際の、反射光と、蛍光による発光との関係を模式的に示した図
図12】キャリブレーション処理のフローチャート
図13】パッチチャートを示す図
図14】分光反射率の図
図15】打ち込み量80%のグリーンインクに対し、蛍光ピンクインクの打ち込み量を変えて混ぜて印刷したパッチの濃度特性
図16】1D-LUTデータの生成に用いられる蛍光ピンクパッチの測定値を選択的に採用する処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
[第1実施形態]
【0014】
<印刷装置の画像処理部>
以下、本実施形態における画像処理部を有する印刷装置を説明する。印刷装置として具体的には、インクジェットプリンタ(以下、単に「プリンタ」とも称する)を想定する。プリンタはその内部に、印刷したパッチチャートを測定するためのRGBのLED光源と、フォトダイオードの受光素子とで構成されたカラーセンサを具備している。プリンタは、任意のパッチチャートを印刷し、該印刷したパッチチャートをこのカラーセンサにより測定できる。また、プリンタは、単に印刷装置として機能し、種々のソフトウェアによって処理された文書、画像等の印刷対象データに基づく印刷処理を実行することもできる。
【0015】
プリンタは、色材として、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)、FP(蛍光ピンク)、及びG(グリーン)の6色インクを有する。尚、インクの組合せはこれに限られるものではない。例えば、R(レッド)、Or(オレンジ)、B(ブルー)と、Gy(グレー)等の特色インクとの組み合わせでもよいし、C(シアン)を希釈したLc(ライトシアン)と、M(マゼンタ)を希釈したLm(ライトマゼンタ)とを有していてもよい。また、FP(蛍光ピンク)の代わりに、FB(蛍光ブルー)、FY(蛍光イエロー)を用いてもよい。
【0016】
<色変換処理に関わる構成について>
図1は、本実施形態における画像処理部のうち色変換処理に関わる構成を示すブロック図である。尚、本実施形態におけるプリンタは、RGB信号入力のRGBプリンタの機能と、CMYK信号入力のCMYKプリンタの機能とを有するものとする。また、説明の便宜上、画像データは各色8ビットの信号値として処理されるものとする。但し、画像データの各画素の画素値が、10ビット表現、12ビット表現、または16ビット表現でも同様の効果が得られるのは、言うまでもない。
【0017】
画像信号I/F101は、入力画像データのI/F部であり、本実施形態では、RGB信号の画像データと、CMYK信号の画像データとが入力される。RGB信号の画像データに対して、デバイス非依存空間のカラーデータをデバイス依存空間のカラーデータに変換するカラーマッチング処理部102による変換処理が行われる。同様に、CMYK信号の画像データに対して、デバイス非依存空間のカラーデータをデバイス依存空間のカラーデータに変換するカラーマッチング処理部103による変換処理が行われる。
【0018】
カラーマッチング処理部102から出力された画像データに対して、色分解処理部104によって、デバイス依存空間のカラーデータを色材色データに変換する色分解処理が行われる。同様に、カラーマッチング処理部103から出力された画像データに対して、色分解処理部105によって、デバイス依存空間のカラーデータを色材色データに変換する色分解処理が行われる。
【0019】
色分解処理部104、105から出力された色材色データに対して、階調補正処理部106によって、色材色データをプリンタの出力特性に合わせるための階調補正処理が行われる。
【0020】
カラ―マッチング処理部102、103及び色分解処理部104、105は夫々、専用のルックアップテーブル(以下、LUTと記載する)をセットすることで、入力された画像データに所望の色変換を実行することができる。ここで用いられるLUTは、記録媒体毎、及び、高速印刷、低速高画質印刷等の印刷モード毎に設けられ、管理されている。
【0021】
前述の処理部について、カラーマッチング処理部102と色分解処理部104とは夫々、3D-LUT用いて色変換処理を行う。カラーマッチング処理部103と色分解処理部105とは夫々、4D-LUTを用いて色変換処理を行う。階調補正処理部106は、1D-LUTを用いて色変換処理を行う。カラーマッチング処理部102と色分解処理部104とで用いられる3D-LUTとは具体的に、各色17カウント間隔の16格子から成り、16x16x16=4096格子から成る3D-LUTである。
【0022】
図1に示すように、画像処理部は、キャリブレーション処理部107を有する。キャリブレーション処理部107は、プリンタを構成するデバイス、記録媒体、及び色材等の個体差、並びに、当該デバイスの経時変化に起因する吐出量変動等によって引き起こされる印刷結果の色味変動を補正する。具体的には、キャリブレーション処理部107は、色材色信号毎に1D-LUTを用いた処理を行う。この処理を行う理由は、実機印刷機の入力データ値に対する印刷部の濃度値を、基準機の入力値に対する印刷部の濃度値であるキャリブレーション目標値に合わせるためである。
【0023】
尚、本実施形態では、印刷装置が画像処理部を有する構成を示すが、画像処理部は印刷装置と別個に設けてよく、例えば、パーソナルコンピュータなどの情報処理装置が、画像処理部の機能を果たしてもよい。
【0024】
<パッチチャートについて>
図2は、キャリブレーション実行時に用いられる実機印刷装置の印刷結果として、所定の入力データ値に対する実際の印刷時の濃度値を測定するためのパッチチャートを示す。このパッチチャートは、インクごとの複数のパッチを有する。
【0025】
シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、グリーンのパッチにおいては、各色材のインクに対して、20%刻みで色材色の入力信号を変化させており、印刷したパッチチャートを測色することで、プリンタにおける各色材に対応する吐出量を推定することができる。例えば、シアンのパッチP20は、シアンインクのみで印刷され、パッチP201はシアン0%、パッチP202はシアン20%、パッチP203はシアン120%の打ち込み量で印刷する。
【0026】
これに対し、蛍光ピンクのパッチにおいては、20%刻みで入力信号を変化させた蛍光ピンクの色材と、一定量80%の入力信号に固定したグリーンの色材とで印刷する。つまり、図2に示す蛍光ピンクのパッチP21は、蛍光ピンクと、グリーンインクとで印刷される。具体的には、パッチP211は蛍光ピンク0%とグリーン80%、パッチP212は蛍光ピンク20%とグリーン80%、パッチP213は蛍光ピンク120%とグリーン80%の打ち込み量で印刷する。
【0027】
<キャリブレーションの実行について>
図3(a)は、図1のキャリブレーション処理部107で用いられる1D-LUTデータを説明するための図である。図3(a)では、あるメディアの1つのインク種での例を示しており、縦軸は、センサによって読み取られた印刷部の印刷濃度値を示し、横軸は、パッチを印刷するときの打ち込み量(%)を示す。
【0028】
打ち込み量とは、紙面上に印刷するインクドット数の割合のことを示す。ここでは、印刷装置として、1200dpi×1200dpiの解像度のインクジェットプリンタを例に挙げて説明する。1200dpi×1200dpiの1ドットが印刷されるエリアを1格子と定義した場合に、100%とは、複数あるすべての格子に1ドット印刷されている状態のことを示す。また、200%とは、1200dpi×1200dpiの全ての格子について、各格子に2ドット印刷されている状態(100%に対して2倍のドット数が印刷されている状態)のことを示す。尚、ドットが印刷される位置は必ずしも格子の中心でなくてもよく、格子と格子との間にドットが印刷されても構わない。
【0029】
打ち込み量がX%のときの濃度値は、センサが出力する反射係数をP(X)とすると
D(X)=-log(P(X)/P(0))・・・式1
と定義できる。ここでP(0)は、紙白領域のパッチの反射係数である。
【0030】
また、ある一定の打ち込み量C%のインクと混ぜて印字されている場合には
D(X)=-log(P(X)/P(C))・・・式2
と定義できる。ここでP(C)は、ある一定の打ち込み量C%のインクの反射係数である。
【0031】
図3(b)等に破線301で示す曲線は、入力データ値に対する基準機での色材の印刷濃度値であり、キャリブレーション目標値を示している。基準機とは、基準となるプリンタであり、その吐出量が実機の吐出量のばらつきの中心となるプリンタを指す。このようなキャリブレーション目標値に関する情報は、システム内の各プリンタの記憶手段に予め記憶されている。
【0032】
また実線302で示す曲線は、実機での色材の印刷濃度値を示している。実機とは、キャリブレーションを実施するプリンタである。この情報は、図2のパッチチャートを印刷し、該印刷したパッチチャートをセンサで読み取ることによって得られる。D0~D6は、パッチチャートの0%から120%の20%刻みの各パッチに対応した濃度(式1で算出)を示している。実線302は、D0~D6の測定値に基づいて、補間処理や近似曲線等を用いて導出したものである。
【0033】
図3(a)の実機の印刷状態に示すように、総じて実機は基準機に対して色材吐出量が多く、特に中間濃度域で基準機より濃く印刷されている。キャリブレーション処理部107での補正は、基準機の印刷濃度となるように色材色別のコントーン色在信号を変換補正することであり、キャリブレーション処理部107は、補正パラメータを用いて補正処理をする。この補正パラメータ算出について、図3(b)を用いて説明する。
【0034】
図3(b)のプロット点D2は、図2のパッチチャートにおける打ち込み量40%のパッチを実機で印刷した場合の濃度値を示す。この値は、同じ打ち込み量に対応する、プロット点T2が示すターゲット濃度値より高い。従って、打ち込み量を減らすことで、実機の濃度値をターゲット濃度値と合わせる必要がある。具体的には、T2の濃度値が実機のどの打ち込み量に対応するかを、実線302上を探索し点DYを見つけることで求める。つまり、実機を用いる際には、点DYが示す打ち込み量303で印刷した場合に、印刷濃度値はターゲット濃度値と概ね等しくなる。
【0035】
前述したプロット点D2に対する処理を全てのプロット点D0~D6に実施した上で、補間処理や近似曲線等を用いる。これにより、図3(c)に示すような、入力の打ち込み量(%)に対する出力の打ち込み量(%)の関係である1D-LUTデータを生成することができる。1D-LUTは、256点または1024点等の離散的な値や、曲線で定義できる数式等の補正パラメータである。
【0036】
<印刷システムの構成について>
図4は、本実施形態における印刷システムの構成を示すブロック図である。印刷システムは、情報処理装置としてのパーソナルコンピュータ(以下、単に「PC」とも称する)401と、印刷装置としてのプリンタ407とを有する。PC401とプリンタ407とは、ネットワーク、並びに、USB及びローカルバス等のインターフェースを介して接続されている。
【0037】
PC401は、種々のソフトウェアプログラムに従って、以下で説明するようなプリンタ407の制御に関する処理を行う。記憶手段405には、システムプログラム、アプリケーションソフトプログラム、印刷動作に必要なソフトウェアプログラム、及び以下で説明する処理に必要なソフトウェアプログラムが記憶されている。また、記憶手段405には、各種画像処理パラメータ、メカパラメータ、プリンタ制御データ、及びセンサ部制御データ、並びに、必要なプログラム、各種データ、及びPC401上で作成された印刷対象データが記憶されている。記憶手段405は、ハードディスクやフラッシュROMに代表されるものである。CPU403は、記憶手段405に記憶された各種プログラム、各種データに従って、作業メモリ404のワークエリアを使用して所定の処理を実行する。
【0038】
データ入出力手段406は、CD、DVD、USBメモリ等に代表される可搬性のある記憶装置、又は、LANカードに代表されるようなデータ通信用デバイスであって、外部とのインターフェースとして使用される。
【0039】
ユーザのための操作手段であるユーザーインターフェース(以下、「UI」とも称する)手段402は、ユーザによる入力と、ユーザに対する出力(表示等)とに関する処理を行い、キーボードやマウス等の入力機器と、ディスプレイ等の表示機器とを含む。
【0040】
プリンタ407は、データ転送部408と、プリンタ制御部409と、画像処理部410と、印刷部411と、センサ部412とを有し、PC401から送られてきた印刷データに基づく印刷処理を行う。この印刷データには、センサ部412の制御データも含まれており、プリンタ407は、該制御データを用いて、印刷物の測定を行う。データ転送部408は、PC401から送られてきた印刷データから、画像データ及び画像処理パラメータを取り出して画像処理部410に送り、メカパラメータ、プリンタ制御データ、センサ部制御データを取り出してプリンタ制御部409に送る。また、データ転送部408は、プリンタ内の記憶手段に記憶されている印刷、センサ測定等の結果に関する情報を該記憶手段から読み取り、該読み取った情報をPC401に送る。プリンタ制御部409は、CPU、ROM、及びRAM等から構成され、データ転送部408から送られたプリンタ制御データに従ってプリンタ407の印刷動作を制御する。またプリンタ制御部409は、印刷動作の制御とともに、センサ部412による測定の制御を行う。
【0041】
<カラーセンサについて>
図5は、プリンタ407におけるセンサ部412の構成例を示す。キャリッジ503は、用紙501上を左右に走査しながらインクを吐出することで、パッチ画像502を形成する。キャリッジ503の脇にセンサ部材504が搭載されている。
【0042】
<カラーセンサの光源LEDについて>
図6(a)は、センサ部の概略構成を示す。センサ部は、赤色LED601と、緑色LED602と、青色LED603と、受光素子604とを有する。赤色LED601、緑色LED602、及び青色LED603から光が発せられ、印刷物605で反射した光を受光素子604で受光する。LEDの発光色としては、測定する色材によって濃度識別レンジの広い補色の色を選択する。つまり、シアン、グリーンには、赤色LEDを選択し、マゼンタ、蛍光ピンク、黒には、緑色LEDを選択し、黄には、青色LEDを選択して測定を行う。尚、赤色LEDをレッドLED、緑色LEDをグリーンLED、青色LEDをブルーLEDとも呼ぶ。
【0043】
図6(b)に各LEDの分光発光特性としての分光強度分布を示す。符号611は青色LEDの分光光度分布を示し、符号612は緑色LEDの分光光度分布を示し、符号613は赤色LEDの分光光度分布を示す。
【0044】
<蛍光インクの特性と、減法混色インクについて>
蛍光色材は、基底状態から励起波長の光を吸収し励起状態となり、発光波長の光を発光し基底状態に戻ることで発色している色材である。図7は、紙面上に蛍光ピンクインクで記録したときの励起701の強度と、発光702の強度とを表しており、横軸は光の波長、縦軸は反射率(強度)を示す。図7に示すグラフは、記録サンプルに当てる光の波長とサンプルから受光される光の波長とを、それぞれ変化させて検出したときの光の強度を示している。
【0045】
発光702は、励起する波長の光を記録サンプルに照射したときの、記録サンプルから受光された光の強度を波長ごとに表している。図7では、本実施形態における蛍光ピンクについて、480nmの光を記録サンプルに照射したときのグラフを示している。
【0046】
励起701は、受光する光の波長を固定して、記録サンプルに照射する光の波長を変化させたときの受光した光の強度を表している。図7では、本実施形態における蛍光ピンクについて、受光する光の波長を600nmに固定したときのグラフを示している。
【0047】
図7からも分かる通り、紙面上に記録された蛍光インクの励起する波長域は、発光する波長域と被りつつ短波長側となる。また、励起701は、波長毎に強弱があり、効率的に発光する波長とそうでない波長を持っている。また、蛍光色材は発光しているため、発光波長における反射率は1を超えることが多い。本実施形態では、上記のような特性を持つ色材を蛍光色材と定義する。
【0048】
上記では蛍光ピンクインクの励起と発光について説明したが、本実施形態において、他の波長を発光する蛍光インクを採用しても良い。このような蛍光インクとして、例えば、青領域(450nmから500nm)の光を発光する蛍光ブルー、緑領域(500nmから565nm)の光を発光する蛍光グリーンが挙げられる。また、黄色領域(565nmから590nm)の光を発光する蛍光イエロー、赤領域(590nmから780nm)の光を発光する蛍光オレンジまたは蛍光レッドなどを採用しても良い。さらに、前述の蛍光インクを組み合わせた蛍光インクを採用しても良い。さらに、励起する波長の強度が異なる蛍光インクを組み合わせて、色調を調整しても良い。例えば、青領域の励起が弱く緑領域の励起が強く、オレンジ領域を発光する蛍光ピンクなどが挙げられる。
【0049】
本実施形態では、減法混色インクとは、当てられた光のうち、特定波長の光を吸収し発光しない色材を含有するインクと定義する。例えば、シアン、マゼンタ、イエローのような基本色インクを指す。減法混色インクの分光反射率は、図7におけるシアン(C)703、マゼンタ(M)704、イエロー(Y)705のような分光反射率となる。減法混色インクは蛍光インクとは異なり、光を吸収するだけなので反射率が1を超えることはない。
【0050】
<蛍光インクについて>
次に、本実施形態で使用される蛍光インクについて説明する。本実施形態では、蛍光特性をもつ分散体と、溶剤と、活性材とを混ぜることで作成された蛍光インクを使用する。本実施形態に用いられる蛍光分散体は、蛍光特性をもつ分散体である。例えば、NKW-3207E(蛍光ピンク水分散体:日本蛍光化学)、NKW-3205E(蛍光イエロー水分散体:日本蛍光化学)等が挙げられるが、蛍光特性を持っている分散体であればよい。
【0051】
上記の蛍光分散体に既知の溶剤と活性剤を組み合わせて蛍光分散体を分散することでインク化する。蛍光分散体の分散方式は特に限定されない。例えば、界面活性剤により分散させた蛍光分散体、分散樹脂により分散させた樹脂分散蛍光分散体、などを用いることができる。勿論、分散方式の異なる蛍光分散体を組み合わせて使用することも可能である。界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、カチオン性、両イオン性活性剤を用いることができる。分散樹脂は、水溶性もしくは水分散性を有する樹脂であれば何れのものも用いることができるが、中でも特に、分散樹脂の重量平均分子量が1,000以上100,000以下、更には3,000以上50,000以下のものが好ましい。溶剤は、例えば水及び水溶性有機溶剤を含有する水性媒体を用いることが好ましい。
【0052】
<記録媒体について>
本実施形態において、インクが吐出される記録媒体(被記録媒体ともいう)は、基材と、少なくとも1層のインク受容層とを有している。尚、記録媒体として、インクジェット画像記録方法に用いるインクジェット用記録媒体であることが好ましい。
【0053】
(記録媒体の表面粗さ)
記録媒体の表面粗さは、記録媒体に求める光沢の度合いによって、適宜調整すればよい。尚、記録媒体の表面粗さを調整する方法としては、例えば、記録媒体の基材等の表面を特定の凹凸を有するロールで押し付けて凹凸を設け、該凹凸面上にインク受容層用塗工液を塗工する方法が挙げられる。また、インク受容層用塗工液を塗工してインク受容層を形成した後、該インク受容層表面を特定の凹凸を有するロールで押し付け、凹凸を設ける方法が挙げられる。さらに、インク受容層に含有させる無機粒子の粒径によって表面粗さを制御したり、インク受容層の表面にさらに無機粒子を含む層を設け、その層中の無機粒子の粒径や層の被覆率によって表面粗さを制御したりしてもよい。以下、代表的な記録媒体について、好ましい表面粗さを記載する。
【0054】
(1)光沢紙
記録媒体を光沢紙とする場合、記録媒体の表面のJIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さRaは、0.13μm以下であることが好ましい。Raは、0.05μm以上0.13μm以下であることがより好ましく、0.10μm以上0.13μm以下であることが特に好ましい。
【0055】
(2)マット紙
記録媒体をマット紙とする場合、記録媒体の表面のJIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さRaは、1.0μm以上10.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以上5.0μm以下であることがより好ましい。また、記録媒体をマット紙とする場合、記録媒体の表面のJIS B 0601:2001で規定される粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔqが、0.3μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。
【0056】
<パッチ印刷と測定について>
本実施形態では、図6(a)に示したカラーセンサによるパッチの読み取りを実施する。
【0057】
初めに、マゼンタ階調パッチの読み取りの例について述べる。図8(a)は、紙面上に印刷したマゼンタパッチを分光測色機で測定することで取得されるインク分光反射率を示す。尚、図8(a)~図8(e)の各図において、横軸は波長λを示し、縦軸は反射率Referenceを示している。図8(a)の符号801は紙白の反射率を示し、符号802~807は打ち込み量を20%刻みで変調したキャリブレーションパッチの反射率を示す。
【0058】
前述したように、本実施形態のカラーセンサは、RGBの何れかのLEDを照射し、可視光域(400~700nm)の光を受光するが、マゼンタパッチを測定する際にはグリーンLEDを照射して測定を行う。マゼンタのインク量を変えた場合の反射率の変化は、540nm付近の反射率の変化が大きいため、照射するLEDとしてグリーンLEDを用いれば、効率よくセンサでインク量の変化を検出できる。図9(a)の符号905は、マゼンダインクで印刷された7個のパッチをカラーセンサで測定した結果の例を示している。
【0059】
図6(b)に示すように、各LEDは、所定波長のバンド幅を持つ。例えば、グリーンLEDは500~600nm付近の波長域に発光スペクトルを持ち、図6(a)に示すように、照射した光の反射光をセンサで受光する。減法混色インクであれば、インク量が増えれば、反射光は減少するので、センサの出力値(反射係数)は減少する。この減少量に基づいて、吐出量の変動を推定する。具体的には、ターゲットとなる濃度と、センサの出力値(反射係数)を用いて式1または式2で算出した実機の濃度とを比較する。そして、ターゲット濃度に対して実機の濃度が低ければ、実機の吐出量が基準機の吐出量に対して少ないと推定する。一方、ターゲット濃度に対して実機の濃度が高ければ、実機の吐出量が基準機の吐出量に対して多いと推定する。
【0060】
ここで図9(a)を参照する。図9(a)の符号905は、マゼンダインクの打ち込み量と、式1に従って算出した反射係数との関係を示している。符号905が示す関係では、カラーキャリブレーションで補正したい吐出量差902(=20%)に対し、反射係数の差907(=0.2)がセンサの読み取り誤差901(=0.1)より十分大きく、誤差を無視できる。従って、センサで補正したい吐出量差を精度よく検出できる。尚、厳密には、吐出量差と打ち込み量差とは異なるが、ここでは吐出量差を打ち込み量の差として近似しており、以下でも同様に扱うものとする。
【0061】
次に、蛍光ピンク階調パッチの読み取りの例について述べる。図8(b)は、蛍光ピンクインクのみで紙面上に印刷したパッチを分光測色機で測定することで取得されるインク分光反射率を示す。図8(b)の符号811は紙白の分光反射率を示し、符号812~817は打ち込み量を20%刻みで変調したキャリブレーションパッチの分光反射率を示す。
【0062】
カラーセンサで測定する際には、マゼンタと同様に540nm付近の反射率の変化が大きいため、グリーンLEDを照射する。しかし、蛍光ピンクインクに関しては、図8(b)に示すように、インク量が増えたときにλ=540nm付近の反射率が減少する一方でλ=600nm付近に蛍光による発光が生じる。そのため、蛍光による発光がない場合に比べて、センサで受光する光の量はインク量の増大に伴い増えてしまう。
【0063】
そのため、蛍光ピンクの7個のパッチをカラーセンサで測定した結果の例を図9(a)の符号904に示すが、蛍光ピンクインクの打ち込み量と、式1に従って算出した反射係数との関係の傾きは、マゼンタ(図9(a)の符号905)に比べて緩やかになる。その結果、カラーキャリブレーションで補正したい吐出量差902(=20%)に対応する反射係数差906(=0.05)に対し、カラーセンサの補正誤差901(=0.1)が大きくなり、吐出量差を精度よく検出できない。
【0064】
次に、蛍光ピンク階調パッチに打ち込み量80%のグリーンインク(図8(c)参照)を混ぜて印刷した場合について述べる。本実施形態における「混ぜて印刷」では、両インクは別々の吐出孔から吐出されるが、紙面上の同一領域で混在するように付与される。図8(d)は、グリーンインクの打ち込み量が80%のときの蛍光インク階調パッチの分光反射率の例を示している。図8(d)の符号831は、図8(c)の符号821と同様、打ち込み量80%のグリーンインクのキャリブレーションパッチの分光反射率を示す。また、符号832~837は、打ち込み量80%のグリーンインクに対し、蛍光ピンクインクの打ち込み量を20%刻みで変調したキャリブレーションパッチの分光反射率を示す。尚、グリーンインクの打ち込み量80%は、用紙に印字されたインクのにじみも踏まえて紙面上がインクに被覆される値の例であり、用紙やインクによってはこの限りではない。最適な打ち込み量は、後述の<パッチ印刷時の減法混色インクの選定について>で述べる条件式を用いて決定する。
【0065】
図10(a)及び図10(b)は、図6(a)に示すセンサ部による印刷物の測定を説明するための図である。詳しくは、図10(a)は、蛍光ピンクインクのみで印刷した場合を示し、図10(b)は、蛍光ピンクインクに減法混色インクであるグリーンインクを混ぜて印刷した場合を示す。
【0066】
図10(a)の場合を説明すると、前述したように、蛍光ピンクインク1004は、入射光に対して光を吸収し、吸収されなかった波長域の光を反射し(矢印1001で示す)、さらに蛍光ピンクインク1004の発光が加わる(矢印1002で示す)。
【0067】
一方、図10(b)に示すように、蛍光ピンクインクにグリーンインクを混ぜて印刷した場合、蛍光ピンクインク1004による発光(矢印1002で示す)がグリーンインク層1005を通る際に、グリーンインクに吸収される。その結果、放射される光の量が減る(矢印1003で示す)。その為、グリーンインクを混ぜないで印刷した場合(図9(b)の符号904)に比べて、グリーンインクを混ぜて印刷した場合は、図9(b)の符号909に示すように、打ち込み量と、式2で算出される反射係数との関係の傾きが急になる。
【0068】
その結果、カラーキャリブレーションで補正したい吐出量差902=20%に対応する反射係数差908(=0.2)がカラーセンサの補正誤差901(=0.1)よりも大きくなり、吐出量差を精度よく検出することができる。本実施形態では、グリーンインクを混ぜて印刷する際には、少なくとも1つのグリーンインクのドットが蛍光ピンクインクのドットを被覆している。例えば蛍光ピンクインクが付与された位置にグリーンインクを付与するように同一領域へ各インクを付与する順序を制御することで、グリーンインクのドットが蛍光ピンクインクのドットを被覆するようにすることができる。また、各インクの付与タイミングにおける付与量を調整し、所望の程度にグリーンインクのドットが蛍光ピンクインクのドットを被覆するようにすることができる。
【0069】
また、前述したように、励起波長の光を吸収させるために、グリーンインクは、紙面上の被覆率が一定以上(本例では80%)となるまで打ち込む必要がある。さらに、グリーンインクの吐出量ばらつきによる影響を避けるため、式2に従って算出する際は、各々の実機で印刷したグリーン80%のみのパッチの読み取り値を、P(C)として扱う方がよい。
【0070】
次に、グリーンインクの代わりにイエローインクを混ぜて印刷した場合の例について述べる。図8(e)は、蛍光ピンクインクにイエローインクを混ぜて印刷した場合の分光反射率を示す。図8(e)の符号841は、打ち込み量80%のイエローインクのキャリブレーションパッチの分光反射率を示す。また、符号842~847は、打ち込み量80%のイエローインクに対し、蛍光ピンクインクの打ち込み量を20%刻みで変調したキャリブレーションパッチの分光反射率を示す。
【0071】
図8(e)に示すように、イエローインクに関しては、励起波長を吸収する効果はあるが、発光波長を吸収することができない。具体的には、600nm付近の発光による反射光を抑制することができておらず、イエローインクでは効果が不十分となる。
【0072】
以上より、蛍光インクに混ぜて印刷する減法混色インクは、蛍光インクの分光反射率と紙白の分光反射率とが交わる点における波長を「基準波長」と定義した場合に、基準波長より長波長側の反射率が、短波長側の反射率より相対的に低いことを特徴とする。尚、前述の説明では、混ぜて印刷するインクとしてグリーンインクを用いたが、この特徴を満たすインクであれば、シアン等の別のインクを用いてもよい。
【0073】
<パッチ印刷時の減法混色インクの選定について>
以下、本実施形態における減法混色インクが満たすべき条件について説明する。
【0074】
蛍光インクにおけるある波長(λとする)での光の強度Yは、反射スペクトルをS(λ)、発光スペクトルをα(λ)、励起スペクトルをβ(λ)、光源スペクトルをE(λ)としたときに、以下の式3のように定義できる。
【0075】
【数1】
【0076】
但し、式3において、λは400nm~700nmである。また、λ励起は蛍光インクの励起波長であり、本実施形態で用いる蛍光ピンクインクでは400nm~630nmである。
【0077】
一方、減法混色インクにおけるある波長λでの光の強度は、蛍光による発光がないので以下の式4のように定義できる。
【0078】
【数2】
【0079】
そして、吐出量(Vdとする)が小さい蛍光インクの光の強度をY(λ)蛍光Vd小、吐出量Vdが大きい蛍光インクの光の強度をY(λ)蛍光Vd大とする。その上で、蛍光インクと減法混色インクとの2次色の光の量を
と仮定したとする。
【0080】
すると、センサが受光する光の強度は、Σのnをλの400~700の10刻みとした場合、以下の式5のように定義できる。
【0081】
【数3】
【0082】
このため、前述のようにキャリブレーションで補正したい吐出量差であるVd大-Vd小(=20%)に対し、以下の条件、式6を満たす減法混色インクである必要がある。
【0083】
【数4】
【0084】
以上の条件を満たすようにプリンタに搭載されている減法混色インクの中から最適なインク種を選定し、選定したインク種の打ち込み量を変えて最適な打ち込み量を求める。
【0085】
<キャリブレーション処理の工程について>
以下、本実施形態におけるキャリブレーション処理の工程について、図12を用いて説明する。キャリブレーション処理の各処理は、記憶手段405(図4参照)に記憶されているキャリブレーション処理プログラムに従い、CPU403等により実行される。尚、キャリブレーション処理で必要なパラメータは、ユーザによってUI手段402を介して入力される。
【0086】
まず、図2に示すキャリブレーションパッチチャートを印刷する工程(ステップS1201~ステップS1205)について説明する。はじめに、ステップS1201にて、CPU403は、作成対象パッチが蛍光インクのパッチであるかを判定する。本ステップの判定結果が真の場合、ステップS1202に進む。一方、本ステップの判定結果が偽の場合、ステップS1203に進む。尚、以降では、「ステップS~」を「S~」と略記する。
【0087】
S1202にて、CPU403は、蛍光インクの励起波長の反射率が高く、蛍光インクの発光波長域の反射率が低い減法混色インクを混ぜた吐出量推定用のパッチ画像データを作成する。具体的には、前述の<パッチ印刷時の減法混色インクの選定について>で述べたやり方で蛍光インクに混ぜて印刷する減法混色インクを選定する。
【0088】
S1203にて、CPU403は、打ち込み量を0%から120%まで20%刻みで変調させた吐出量推定用のパッチ画像データを作成する。尚、本実施形態では、インクの打ち込み量を0%から120%まで20%刻みで変調させたパッチを用いているが、それ以外の所定値刻みでよい。また、最小打ち込み量が0%以外でもあってもよいし、最大打ち込み量が120%以外であってもよい。
【0089】
S1204にて、CPU403は、作成対象の全インク色のパッチチャートの画像データ(例えば、図2に示すパッチチャートの画像データ)の作成が完了したかを判定する。本ステップの判定結果が真の場合、作成したパッチチャートの画像データを、記憶手段405に記憶した上で、S1205に進む。一方、本ステップの判定結果が偽の場合、S1201に戻る。
【0090】
S1205にて、CPU403は、記録媒体の印刷に関わる情報を記憶手段405から読み出し、プリンタ407に送信する。また、CPU403は、パッチチャートデータ(図2に示すパッチチャートの画像データ)も同様に記憶手段405から読み出し、プリンタ407に送信する。このパッチチャートデータは、プリンタ407の画像信号I/F101(図1参照)を介して、キャリブレーション処理部107の次のハーフトーニング処理部(図示せず)に入力され、当該パッチチャートデータに対するハーフトーニング処理が直接行われる。その後、印刷部411は、ハーフトーニング処理が行われたパッチチャートデータに基づく印刷処理を実行する。
【0091】
尚、本実施形態では、キャリブレーション処理の流れの中でキャリブレーションパッチチャートの画像データを作成しているが、当該画像データをキャリブレーション処理の流れの中で作成しないでも良い。例えば、予め作成されたパッチチャートデータを記憶手段405に記憶し、キャリブレーション処理を実行したときに当該パッチチャートデータを読み出して用いてもよい。
【0092】
次に、印刷したパッチチャートに含まれる各パッチを測定する工程(S1206~S1209)について説明する。はじめに、S1206にて、プリンタ制御部409は、測定対象パッチが蛍光インクのパッチであるかを判定する。本ステップの判定結果が真の場合、S1207に進む。一方、本ステップの判定結果が偽の場合、ステップS1208に進む。
【0093】
S1207にて、プリンタ制御部409は、センサ部412により、インクの励起波長を含む波長域に分光分布が存在する光をパッチに当て、反射強度を読み取る。具体的には、前述の<パッチ印刷と測定について>で述べたやり方でパッチの反射強度を読み取る。
【0094】
S1208にて、プリンタ制御部409は、センサ部412により、吐出量変化に応じたインクの分光反射率の変化が大きい波長域に分光分布が存在する光をパッチに当て、反射強度を読み取る。
【0095】
尚、本実施形態では、キャリブレーション処理の流れの中でキャリブレーションパッチを測定する際に照射する光を選定しているが、記憶手段405に予め保持された照射光に関する条件を用いて、測定を実施してもよい。
【0096】
S1209にて、プリンタ制御部409は、測定対象の全インク色のパッチの測定が完了したかを判定する。本ステップの判定結果が真の場合、キャリブレーションを実行するため、S1210に進む。一方、本ステップの判定結果が偽の場合、S1206に戻る。
【0097】
次に、実際にキャリブレーションを実行する工程(S1210~S1212)について説明する。はじめに、S1210にて、プリンタ制御部409は、パッチ測定で読み取った反射強度に基づいて、吐出量を推定する。
【0098】
S1211にて、プリンタ制御部409は、S1210の推定結果に基づいて、インクの打ち込み量を補正する。具体的には、前述の<キャリブレーションの実行について>で述べたやり方で実行し、キャリブレーション処理部107に記憶された1D-LUTを使って補正処理を実施する。尚、パッチ測定で読み取った反射強度から吐出量を推定することなく(つまり、S1210を実行することなく)、読み取った反射強度から算出した濃度値と、ターゲット濃度値とに基づく補正処理を実施してもよい。
【0099】
S1212にて、プリンタ制御部409は、全インク色に対するキャリブレーションの実行が完了したかを判定する。本ステップの判定結果が真の場合、一連の処理は終了する。一方、本ステップの判定結果が偽の場合、S1210に戻る。
【0100】
尚、本実施形態では、階調補正処理部106は、キャリブレーション処理部107が使う1D-LUTとは別の1D-LUTを使って処理を実施している。しかし、階調補正処理部106及びキャリブレーション処理部107が、これらの1D-LUTを合成した1つの1D-LUTを用いて処理を実施してもよい。また、1D-LUTデータは、図1に示す画像処理工程の中で生成してもよい。
【0101】
<本実施形態の効果>
本実施形態によれば、蛍光インクを用いて印刷する印刷装置における高精度なカラーキャリブレーションを、低コストで実現することが可能である。
【0102】
[第2実施形態]
第1実施形態では、蛍光インクと減法混色インクとを混ぜてキャリブレーションパッチチャートを印刷する形態について説明した。本実施形態では、補正に使用するパッチの蛍光インクと減法混色インクとの印刷順序を記録媒体によって替える。この理由は、記録媒体によっては、蛍光インクの発光吸収効率が、印刷順序によって異なる場合があるからである。
【0103】
パッチを印刷する記録媒体には主に、表面粗さが大きい(つまり粗い)マット紙と、表面粗さが小さい(つまり平滑な)光沢紙がある。
【0104】
図14(a)及び図14(b)は、マット紙に対して階調パッチを印刷した場合を示している。
【0105】
図14(a)は、蛍光ピンク階調パッチに打ち込み量80%のグリーンインクを混ぜてマット紙に印刷する際、グリーンインクを蛍光ピンクインクより後に印刷しない場合の分光反射率の例を示す。詳しくは、図14(a)の符号1401は、打ち込み量80%のグリーンインクのキャリブレーションパッチの分光反射率を示す。また、符号1402~1407は、打ち込み量80%のグリーンインクに対し、蛍光ピンクインクの打ち込み量を20%刻みで変調したキャリブレーションパッチの分光反射率を示す。
【0106】
図14(a)に対し、図14(b)は、蛍光ピンク階調パッチに打ち込み量80%のグリーンインクを混ぜてマット紙に印刷する際、グリーンインクを蛍光ピンクインクより後に印刷する場合の分光反射率の例を示す。詳しくは、図14(b)の符号1411は、打ち込み量80%のグリーンインクのキャリブレーションパッチの分光反射率を示す。また、符号1412~1417は、打ち込み量80%のグリーンインクに対し、蛍光ピンクインクの打ち込み量を20%刻みで変調したキャリブレーションパッチの分光反射率を示す。
【0107】
一方、図14(c)及び図14(d)は、光沢紙に対して階調パッチを印刷した場合を示している。
【0108】
図14(c)は、蛍光ピンク階調パッチに打ち込み量80%のグリーンインクを混ぜて光沢紙に印刷する際、グリーンインクを蛍光ピンクインクより後に印刷しない場合の分光反射率の例を示す。詳しくは、図14(c)の符号1421は、打ち込み量80%のグリーンインクのキャリブレーションパッチの分光反射率を示す。また、符号1422~1427は、打ち込み量80%のグリーンインクに対し、蛍光ピンクインクの打ち込み量を20%刻みで変調したキャリブレーションパッチの分光反射率を示す。
【0109】
図14(c)に対し、図14(d)は、蛍光ピンク階調パッチに打ち込み量80%のグリーンインクを混ぜて光沢紙に印刷する際、グリーンインクを蛍光ピンクインクより後に印刷する場合の分光反射率の例を示す。詳しくは、図14(d)の符号1431は、打ち込み量80%のグリーンインクのキャリブレーションパッチの分光反射率を示す。また、符号1432~1437は、打ち込み量80%のグリーンインクに対し、蛍光ピンクインクの打ち込み量を20%刻みで変調したキャリブレーションパッチの分光反射率を示す。
【0110】
図15(a)及び図15(b)は、蛍光ピンクインクの階調パッチの測定値を用いて算出される濃度特性を示す図である。
【0111】
図15(a)は、マット紙に対して、蛍光ピンク階調パッチにグリーンインクを混ぜて印刷したパッチの測定値を用いて、式2に従って濃度値を算出した例を示す。図15(a)中の実線1501は、グリーンインクを蛍光ピンクインクより後に印刷しない場合のパッチの測定値に基づいて算出した濃度値を示す。これに対し、破線1502は、グリーンインクを蛍光ピンクインクより後に印刷した場合のパッチの測定値に基づいて算出した濃度値を示す。
【0112】
図15(b)は、光沢紙に対して、蛍光ピンク階調パッチにグリーンインクを混ぜて印刷したパッチの測定値を用いて、式2に従って濃度値を算出した例を示す。図15(b)中の実線1511は、グリーンインクを蛍光ピンクインクより後に印刷しない場合のパッチの測定値に基づいて算出した濃度値を示す。これに対し、破線1512は、グリーンインクを蛍光ピンクインクより後に印刷した場合のパッチの測定値に基づいて算出した濃度値を示す。
【0113】
マット紙に関しては、図14(a)及び図14(b)に示すように、λ=600nm付近の分光反射率を見ると、グリーンインクを蛍光ピンクインクより後に印刷する場合よりも、後に印刷しない場合の方が、蛍光ピンクの発光波長が吸収されていることが分かる。
【0114】
一方、光沢紙に関しては、図14(c)及び図14(d)に示すように、λ=600nm付近の分光反射率を見ると、発光波長の吸収効率が同じように見えるが、図15(a)及び図15(b)に示すように、濃度値が異なる。つまり、光沢紙の場合、グリーンインクを蛍光ピンクインクより後に印刷しない場合よりも、後に印刷した場合の方が、蛍光ピンクの発光波長が吸収されていることが分かる。
【0115】
従って、マット紙にパッチを印刷する際は、グリーンインクを蛍光ピンクインクより後に印刷しない方が、センサのS/N比が上がると判断できる。また、光沢紙にパッチを印刷する際は、グリーンインクを蛍光ピンクインクより後に印刷した方が、センサのS/N比が上がると判断できる。
【0116】
<パッチチャートについて>
図13は、本実施形態におけるパッチチャートの例を示す。本実施形態では、蛍光ピンクのパッチは、20%刻みで入力信号を変化させた蛍光ピンクの色材と、一定の打ち込み量80%の入力信号に固定したグリーンの色材とで印刷する。
【0117】
図13中の蛍光ピンク1のパッチ群P22は、グリーンインクを蛍光ピンクインクより後に印刷しないパッチ群である。P221は蛍光ピンク0%とグリーン80%、P222は蛍光ピンク20%とグリーン80%、P223は蛍光ピンク120%とグリーン80%の打ち込み量で印刷する。
【0118】
これに対し、蛍光ピンク2のパッチ群P23は、グリーンインクを蛍光ピンクインクより後に印刷するパッチ群である。P231は蛍光ピンク0%とグリーン80%、P232は蛍光ピンク20%とグリーン80%、P233は蛍光ピンク120%とグリーン80%の打ち込み量で印刷する。
【0119】
インクの印刷順序を制御する方法としては、任意の方法を採用してよい。インクを吐出する記録ヘッドを記録媒体に対して交差する方向に走査させて印刷する所謂シリアルインクジェットプリンタにおいて印刷順序を制御する方法として、以下の方法がある。
【0120】
例えば、記録ヘッドを16回走査させて印刷が完了する場合、最初の8回の走査時に蛍光ピンクインクを吐出し、その後の8回の走査時にグリーンインクを吐出することで、グリーンインクを蛍光ピンクインクより後に印刷することができる。また、蛍光ピンクインクとグリーンインクとを共に16回の走査時に吐出することで、グリーンインクを蛍光ピンクインクより後に印刷しないことができる。尚、走査回数はここで挙げた8、16等に限定されず、他の回数であってもよい。
【0121】
尚、グリーンインクを蛍光ピンクインクより後に印刷する場合でも、グリーンインクと蛍光ピンクインクとを共に印刷する走査があっても構わない。また、グリーンインクを蛍光ピンクインクより後に印刷しない場合でも、グリーンインクと蛍光ピンクインクとを共に印刷しない走査があっても構わない。
【0122】
インクの印刷順序は、記録ヘッドにおける蛍光ピンクインクの吐出孔と、グリーンインクの吐出孔との位置を変えることで制御しても良いし、インクの吐出によって記録媒体の位置を変えることで制御しても良い。また、所謂マルチパスマスクを使用して、印刷順序を制御しても構わない。
【0123】
図16は、キャリブレーション処理部107で使用する1D-LUTデータの生成に用いられる蛍光ピンクパッチの測定値を選択的に採用する処理のフローチャートである。尚、図16に示す各処理は、PC401のCPU403が実行しても良いし、プリンタ407のプリンタ制御部409が実行しても良い。
【0124】
まず、S1601にて、パッチを印刷する記録媒体の情報を取得する。
【0125】
S1602にて、S1601で取得した情報を用いて、パッチを印刷する記録媒体がマット紙か、光沢紙かを判定する。本ステップの判定の結果、マット紙と判定された場合、S1603に進む一方、光沢紙と判定された場合、S1604に進む。
【0126】
S1603にて、グリーンインクを蛍光ピンクインクより後に印刷しないパッチの測定値を採用する。
【0127】
S1604にて、グリーンインクを蛍光ピンクインクより後に印刷するパッチの測定値を採用する。
【0128】
尚、本実施形態では、グリーンインクを蛍光ピンクインクより後に印刷しないパッチ群と、グリーンインクを蛍光ピンクインクより後に印刷するパッチ群との両方を印刷するパッチパターン例(図13参照)を示した。しかし、必ずしもこれら両方のパッチ群を印刷する必要はなく、パッチを印刷する記録媒体の種類に応じて、1D-LUTデータ生成に用いるパッチ群のみを印刷し、当該印刷したパッチ群を測定しても構わない。
【0129】
また、記録媒体の種類は光沢紙とマット紙に限られず、他の種類の記録媒体を用いて良い。
【0130】
さらに、印刷する記録媒体の表面粗さを測定し、該測定した表面粗さに基づいて、印刷された複数のパッチ群のうち何れのパッチ群の測定値を採用するかを判定したり、複数のパッチ群の中から何れのパッチ群を印刷するかを決定したりしてもよい。例えば、測定した表面粗さが所定の閾値より大きい場合、蛍光ピンク1のパッチ群P22の測定値を採用し、当該表面粗さが当該所定の閾値以下の場合、蛍光ピンク2のパッチ群P23の測定値を採用することが考えられる。
【0131】
さらに、記録媒体の種類は、表面粗さによって設定されるとも限られない。例えば、記録媒体の種類は、センサのS/N比等によって予め設定されていても構わない。
【0132】
<本実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態では、キャリブレーションに使用する1D-LUT生成データに用いるパッチを印刷する際の、蛍光インクと減法混色インクとの印刷順序を記録媒体によって替える。これにより、センサのS/N比が上がり、補正精度を向上できる。
【0133】
[第3実施形態]
第1実施形態では、蛍光ピンクにグリーンインクを混ぜて印刷する形態について説明した。これに対し、本実施形態では、減法混色インクであるグリーンインクを混ぜて印刷する代わりに、センサの受光側に光学的フィルタを設置する。
【0134】
具体的には、図11(a)に示すように、LEDで印刷面に照射した光をセンサで受光する位置に光学フィルタ1102を設置する。蛍光ピンクインク1101の場合、光学的フィルタの候補としては、第1実施形態におけるグリーンインクと同様、グリーンフィルタを挙げることができる。グリーンフィルタを用いて、蛍光による発光(矢印1104で示す)を一部カット(矢印1105で示す)し、反射光(矢印1103で示す)量の変化を分離して検出する。そして、検出した反射光量の変化に基づき吐出量を推定してキャリブレーションをすることができる。つまり、本例では、吐出量の変化に伴う反射光量の変化の検出に都合が悪かったλ=600nm付近の発光量の変化(図8(b)参照)を、光学フィルタで抑制する。
【0135】
また、光学フィルタを用いる場合、発光量を抑制して反射光量の変化を検出するだけでなく、反射光量の変化を抑制して発光量の変化を検出することもできる。図11(b)に示すように、光学フィルタ1102にレッドフィルタ用いて励起波長域の反射光(矢印1103で示す)を一部カット(矢印1106で示す)し、発光(矢印1102で示す)量の変化を分離して検出することもできる。そして、検出した発光量の変化に基づき吐出量を推定してキャリブレーションをすることができる。つまり、本例では、吐出量の変化に伴う発光量の変化の検出に都合が悪かったλ=540nm付近の反射光量の変化(図8(b)参照)を、光学フィルタで抑制する。
【0136】
<本実施形態の効果>
本実施形態によれば、蛍光インクを用いて印刷する印刷装置における高精度なカラーキャリブレーションを、低コストで実現することが可能である。
【0137】
[その他の実施形態]
前述の実施形態では、印刷装置の印刷方式をインクジェット方式としているが、印刷装置の印刷方式はインクジェット方式に限られず、電子写真方式または熱転写方式等のその他の印刷方式でも良い。
【0138】
また、センサの測定値の説明に反射係数を用いたが、反射係数に基づいて算出される濃度または色彩値(CIE L*a*b*、三刺激値XYZなど)を用いても良い。
【0139】
前述の実施形態では、キャリブレーション用のパッチチャートが階調パッチであるものとして説明したが、ある特定の階調吐出量を推定して補正テーブルを生成してもよい。
【0140】
前述の実施形態では、カラーセンサの受光素子はフォトダイオードであるものとして説明した。しかし、カラーセンサの受光素子がフォトトランジスタ等の構成を有しても良い。
【0141】
前述の実施形態では、カラーセンサがキャリッジの脇に搭載されている構成について説明した(図5参照)。しかし、カラーセンサがそれ以外の箇所に搭載されている構成であっても良いし、パッチを手動で測定できる構成であっても良い。
【0142】
前述の実施形態では、カラーセンサがRGBのLEDを有する構成について説明した(図6参照)。しかし、カラーセンサのLEDはRGB以外の色のLEDであっても良く、3色以上または3色以下のLEDを有していても良い。
【0143】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。尚、前述の実施形態の内容を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0144】
107 キャリブレーション処理部
407 プリンタ
410 画像処理部
図1
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図16