(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】シート搬送装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/06 20060101AFI20241111BHJP
【FI】
B65H5/06 L
B65H5/06 M
(21)【出願番号】P 2021023691
(22)【出願日】2021-02-17
【審査請求日】2024-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 智司
(72)【発明者】
【氏名】矢野 崇史
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-132505(JP,A)
【文献】国際公開第2016/163203(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する第一搬送ローラと、
前記シートの搬送方向において前記第一搬送ローラよりも下流側に配置された第二搬送ローラと、
モーターにより生成される駆動力を前記第二搬送ローラに伝達する第一伝達手段と、
前記第一伝達手段に対して並列に設けられ、前記駆動力を前記第一搬送ローラに伝達する第二伝達手段と、
前記第二伝達手段を介して伝達される前記駆動力を前記第二搬送ローラに伝達するが、前記第一伝達手段を介して伝達される前記駆動力を前記第一搬送ローラに伝達しない第三伝達手段と、を有し、
前記第一伝達手段が前記駆動力
を前記第二搬送ローラに伝達
することで前記第二搬送ローラが第一速度で回転する場合に、
前記第二伝達手段と前記第三伝達手段は前記駆動力を前記第一搬送ローラに伝達せず、前記第一搬送ローラは従動回転し、
前記第三伝達手段が前記第二伝達手段を介して伝達される前記駆動力
を前記第二搬送ローラに伝達
することで前記第二搬送ローラが前記第一速度よりも速い第二速度で回転する場合に、
前記第二伝達手段が前記駆動力を前記第一搬送ローラに伝達することで前記第一搬送ローラは前記第二速度で回転する、ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記第二伝達手段は、前記駆動力を伝達する伝達状態と前記駆動力を遮断する遮断状態とを有する第一クラッチを有し、
前記第一クラッチは、前記第二搬送ローラを前記第一速度で回転させる場合に前記遮断状態に制御され、前記第二搬送ローラを前記第二速度で回転させる場合に前記伝達状態に制御されることを特徴とする請求項
1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記第一クラッチは、電磁クラッチであり、
前記電磁クラッチがオンになると、前記第一クラッチは前記伝達状態になり、
前記電磁クラッチがオフになると、前記第一クラッチは前記遮断状態になることを特徴とする請求項
2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記第一クラッチは、端面カムと、前記端面カムの位相を第一位相または第二位相に切り替えるレバーと、を有し、
前記第一クラッチは、前記端面カムの位相が前記第一位相に制御されると前記伝達状態になり、前記端面カムの位相が前記第二位相に制御されると前記遮断状態になることを特徴とする請求項
2に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
シートを検知する検知手段と、
前記検知手段による検知結果に応じて前記第一クラッチを制御する制御手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項
2ないし
4のいずれか一項に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記制御手段は、先行するシートの後端から後続のシートの先端までの距離が目標距離になるよう、前記検知手段により前記後続のシートの先端が検知されたタイミングに応じて前記第一クラッチを前記伝達状態から前記遮断状態に切り替えるタイミングを決定することを特徴とする請求項
5に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記第一搬送ローラは、前記第二搬送ローラにより前記第一速度で搬送されるシートを介して、前記第二搬送ローラに対して従動して前記第一速度で回転することを特徴とする請求項
1ないし
6のいずれか一項に記載のシート搬送装置。
【請求項8】
前記第一伝達手段は、前記駆動力により回転する第一ギアと、前記第一ギアと前記第二搬送ローラの回転軸との間に設けられた第一ワンウエイクラッチと、を有し、
前記第一ワンウエイクラッチは、
前記第二搬送ローラが前記第一速度で回転する場合に、前記第一ギアに入力された駆動力を前記第二搬送ローラの回転軸に伝達させて、前記第二搬送ローラを前記第一速度で回転させ、
前記第二搬送ローラが前記第二速度で回転する場合に、前記第一ギアを前記第二搬送ローラの回転軸に対して空転させることを特徴とする請求項
7に記載のシート搬送装置。
【請求項9】
前記第三伝達手段は、
前記第二搬送ローラに取り付けられた第二ワンウエイクラッチを有し、
前記第二ワンウエイクラッチは、
前記第一伝達手段を介して伝達されてきた駆動力を前記第一搬送ローラに伝達せず、前記第二伝達手段を介して伝達されてきた駆動力を前記第二搬送ローラに伝達することを特徴とする請求項
8に記載のシート搬送装置。
【請求項10】
前記シートの搬送方向において前記第二搬送ローラよりも下流側に配置された第三搬送ローラと、
前記駆動力を前記第三搬送ローラに伝達する第四伝達手段と、
前記第四伝達手段に対して並列に設けられ、前記駆動力を前記第三搬送ローラに伝達する第五伝達手段と、をさらに有し、
前記第三搬送ローラは、前記第一速度で回転する場合に前記第四伝達手段を介して伝達される駆動力によって前記第一速度で回転し、
前記第三搬送ローラは、前記第二速度で回転する場合に前記第五伝達手段を介して伝達される駆動力によって前記第二速度で回転する、ことを特徴とする請求項
1ないし
9のいずれか一項に記載のシート搬送装置。
【請求項11】
前記第五伝達手段は、前記駆動力を伝達する伝達状態と前記駆動力を遮断する遮断状態とを有する第二クラッチを有し、
前記第二クラッチは、前記第三搬送ローラを前記第一速度で回転させる場合に前記遮断状態に制御され、前記第三搬送ローラを前記第二速度で回転させる場合に前記伝達状態に制御されることを特徴とする請求項
10に記載のシート搬送装置。
【請求項12】
前記第四伝達手段は、前記駆動力により回転する第二ギアと、前記第二ギアと前記第三搬送ローラの回転軸との間に設けられた第三ワンウエイクラッチと、を有し、
前記第三ワンウエイクラッチは、
前記第三搬送ローラが前記第一速度で回転する場合に、前記第二ギアに入力された駆動力を前記第三搬送ローラの回転軸に伝達させて、前記第三搬送ローラを前記第一速度で回転させ、
前記第三搬送ローラが前記第二速度で回転する場合に、前記第二ギアを前記第三搬送ローラの回転軸に対して空転させることを特徴とする請求項
11に記載のシート搬送装置。
【請求項13】
前記シート搬送装置は、画像形成装置に内蔵されていることを特徴とする請求項1ないし
12のいずれか一項に記載のシート搬送装置。
【請求項14】
前記シート搬送装置は、画像形成装置の外部に取り付けられる着脱可能なシート搬送装置であり、前記モーターは前記画像形成装置に設けられていることを特徴とする請求項
1ないし
12のいずれか一項に記載のシート搬送装置。
【請求項15】
シートを搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される前記シートに画像を形成する画像形成手段と、を有し、
前記搬送手段は、請求項1ないし
14のいずれか一項に記載のシート搬送装置を含む、ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシート搬送装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、シート搬送装置により搬送されるシートに対してトナーまたはインクなどを用いて画像を形成する。複数のシートに対して連続して効率的に画像を形成するために、先行するシートと後続のシートとの間の距離を一定に維持することが求められる。特許文献1によれば、後続のシートの搬送速度を調整することで、先行するシートと後続のシートとの間の距離を一定に維持することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では二つのローラの回転速度を切り替えるために二つの電磁クラッチが必要であるため、シート搬送装置の製造コストが上昇していた。そこで、本発明は従来よりも低コストで複数のローラの速度を切り替え可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、たとえば、
シートを搬送する第一搬送ローラと、
前記シートの搬送方向において前記第一搬送ローラよりも下流側に配置された第二搬送ローラと、
モーターにより生成される駆動力を前記第二搬送ローラに伝達する第一伝達手段と、
前記第一伝達手段に対して並列に設けられ、前記駆動力を前記第一搬送ローラに伝達する第二伝達手段と、
前記第二伝達手段を介して伝達される前記駆動力を前記第二搬送ローラに伝達するが、前記第一伝達手段を介して伝達される前記駆動力を前記第一搬送ローラに伝達しない第三伝達手段と、を有し、
前記第一伝達手段が前記駆動力を前記第二搬送ローラに伝達することで前記第二搬送ローラが第一速度で回転する場合に、前記第二伝達手段と前記第三伝達手段は前記駆動力を前記第一搬送ローラに伝達せず、前記第一搬送ローラは従動回転し、
前記第三伝達手段が前記第二伝達手段を介して伝達される前記駆動力を前記第二搬送ローラに伝達することで前記第二搬送ローラが前記第一速度よりも速い第二速度で回転する場合に、前記第二伝達手段が前記駆動力を前記第一搬送ローラに伝達することで前記第一搬送ローラは前記第二速度で回転する、ことを特徴とするシート搬送装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来よりも低コストで複数のローラの速度を切り替えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図5】給紙クラッチの状態と速度との関係を説明する表
【
図6】給紙クラッチの状態と速度との関係を説明する図
【
図7】給紙クラッチをオフにするタイミングを説明する図
【
図9】クラッチの制御方法を説明するフローチャート
【
図12】給紙クラッチの状態と速度との関係を説明する図
【
図13】給紙クラッチをオフにするタイミングを説明する図
【
図14】クラッチ機構の状態と速度との関係を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。同一または類似した複数の構成要素を区別する際には、参照符号の末尾に小文字のアルファベットが付与されることがあるが、複数の構成要素に共通する事項が説明される際には、アルファベットは省略されることがある。
【0009】
<実施例1>
●画像形成装置
図1は電子写真方式の画像形成装置1を示している。電子写真方式は、感光体の帯電、静電潜像の形成、静電潜像の現像、トナー画像の転写、トナー画像の定着を含む画像形成方式である。電子写真方式に代えて、インクジェット記録方式などの他の画像形成方式が採用されてもよい。
【0010】
シートカセット2aは複数のシートPを収容する収容庫である。給紙ローラ群20aは、シートカセット2aに収容されているシートPをピックアップし、シートPを搬送路へ給送する複数のローラを含む。シートPの搬送方向において、給紙ローラ群20aの下流側には中間搬送ローラ対30が設けられている。中間搬送ローラ対30は、給紙ローラ群20aまたはオプション給紙装置10から給送されてきたシートPをさらに下流へ搬送する。搬送方向において中間搬送ローラ対30の下流側には、レジストローラ対40が設けられている。レジストとはレジストレーションの略称である。レジストローラ対40はシートPを転写部に搬送する搬送ローラ対である。なお、搬送路において中間搬送ローラ対30とレジストローラ対40との間にはシートセンサ3aが設けられている。シートセンサ3aがシートPの先端を検知したタイミングは、シートPの搬送速度の変速制御に利用される。たとえば、これは、第二搬送速度から第一搬送速度に減速するタイミングを決定するために利用されてもよい。搬送路においてレジストローラ対40と転写ローラ52との間には別のシートセンサ3bが設けられている。シートセンサ3bがシートPの先端を検知したタイミングは、画像形成部50における感光体ドラム51への画像書き出しタイミングとして利用される。これにより、シートP上の理想的な位置にトナー画像が転写される。
【0011】
レーザースキャナ53は、画像書き出しタイミングに応答して、画像信号に対応したレーザ光を感光体ドラム51に照射して静電潜像を形成する光走査装置または露光装置である。画像形成部50は、感光体ドラム51上の静電潜像をトナーで現像してトナー画像を形成する。感光体ドラム51は回転することで、トナー画像を転写部へ搬送する。転写部において転写ローラ52はトナー画像を感光体ドラム51からシートPへ転写する。定着装置6はシートPおよびトナー画像に対して熱と圧力を加えて、トナー画像をシートP上に定着させる。排紙ローラ8は、シートPを排出部9に排出する。
【0012】
●オプション給紙装置
オプション給紙装置10は、画像形成装置1に対して着脱可能であり、より多くのシートPを収容できるシートカセット2bを有している。給紙ローラ群20bは、シートカセット2bに収容されているシートPをピックアップし、シートPを搬送路へ給送する複数のローラを含む。シートPの搬送方向において、給紙ローラ群20bの下流側には搬送ローラ対55が設けられている。搬送ローラ対55は、給紙ローラ群20bから給送されてきたシートPをさらに下流へ搬送する。搬送方向において搬送ローラ対55の下流側には、出口ローラ対56が設けられている。出口ローラ対56は、シートPを搬送し、シートPを中間搬送ローラ対30へ受け渡す搬送ローラ対である。搬送路において、搬送ローラ対55と出口ローラ対56との間にはシートセンサ3cが設けられている。シートセンサ3cがシートPの先端を検知したタイミングは、搬送速度の調整に利用されうる。
【0013】
<シート搬送装置>
図2が示すように、シート搬送装置100の給紙ローラ群20aは、ピックローラ21、フィードローラ22、および、分離ローラ23を有している。ピックローラ21は、シートカセット2aに収容されているシート束のうち最も上に位置しているシートPに接触して回転し、シートPを下流側へ給送する。フィードローラ22は、ピックローラ21から受け渡されたシートPをさらに下流へ搬送する。なお、ピックローラ21とフィードローラ22は駆動列を介して連結されている。モーター等の駆動源により生成された回転力(駆動力)は、駆動列によってフィードローラ22に入力される。さらに、フィードローラ22に入力された駆動力は駆動列によってピックローラ21に入力される。これにより、ピックローラ21とフィードローラ22とが連動して回転する。駆動列とは、複数のギア(歯車)、回転軸およびクラッチなどを有する、駆動力伝達機構である。分離ローラ23は、ピックローラ21により連れ出された複数のシートPのうち一枚のシートPと残りのシートPを分離する分離機構である。これにより、一枚のシートPのみが下流側へ搬送される。分離ローラ23は、たとえば、シートPの分離に役立つトルクリミッタを内蔵していてもよい。
【0014】
中間搬送ローラ対30は、駆動力を受けて回転する中間搬送ローラ31と、中間搬送ローラ31に対して従動して回転する中間搬送コロ32とを有している。中間搬送ローラ31の回転速度は、後述されるように、第一速度と第二速度とのどちらかに選択される。本明細書において、ローラの回転速度は、ローラ表面の移動速度であり、周速度または搬送速度とばれてもよい。たとえば、ローラの半径がr[m]であり、ローラの角速度がw[rad/sec]である場合、周速度v[m/sec]は半径rと角速度wとの積である。レジストローラ対40は、駆動力を受けて回転するレジストローラ41と、レジストローラ41に従動して回転するレジストコロ42とを有している。
【0015】
<駆動列>
図3および
図4はシート搬送装置100を駆動する駆動機構60を示している。入力ギア65は、不図示のモーターから駆動力(回転力)を入力されて回転する平歯車である。分岐ギア63は、半径の小さなギアと半径の大きなギアとから構成されたギアである。半径の小さなギアは入力ギア65に噛み合っており、入力ギア65から駆動力を伝達される。大きなギアは、アイドラギア64とレジアイドラギア69に噛み合っており、入力ギア65からの駆動力をアイドラギア64とレジアイドラギア69に伝達する。
【0016】
図3が示すように、レジアイドラギア69はレジローラギア70に噛み合っている。分岐ギア63はレジアイドラギア69を介してレジローラギア70に駆動力を伝達する。レジローラギア70はレジストローラ41の回転軸に固定されている。これにより、レジストローラ41が一定の速度(第一速度)で回転する。
【0017】
図3および
図4が示すように、アイドラギア64は、さらに、第一駆動ギア71に噛み合っている。
図4が示すように、第一駆動ギア71は中間搬送ローラ31の回転軸に駆動力を伝達するギアである。第一駆動ギア71が取り付けられた回転軸には第二駆動ギア72が取り付けられている。第二駆動ギア72はアイドラギア68に噛み合っている。アイドラギア68はさらにフィードギア67に噛み合っている。第二駆動ギア72は、第一駆動ギア71またはアイドラギア68を介して入力される駆動力によって回転する。
【0018】
第一駆動ギア71には第一ワンウエイクラッチ73が設けられている。第一ワンウエイクラッチ73は、一方向に回転するときにのみ駆動力を伝達するクラッチである。第二駆動ギア72には第二ワンウエイクラッチ74が設けられている。第二ワンウエイクラッチ74は、一方向に回転するときにのみ駆動力を伝達するクラッチである。第一ワンウエイクラッチ73および第二ワンウエイクラッチ74は逆方向に回転する際には回転軸に対して空転するため、駆動力を回転軸に伝達しない。
【0019】
図4が示すように、分岐ギア63は変速ギア66に噛み合っている。変速ギア66の回転軸は給紙クラッチ61に接続されている。給紙クラッチ61は、フィードギア67に噛み合っている。給紙クラッチ61は、変速ギア66からの駆動力をフィードギア67に伝達する伝達状態と、変速ギア66からの駆動力をフィードギア67に伝達しない遮断状態とを有している。給紙クラッチ61は、たとえば、電磁クラッチによって実現される。給紙クラッチ61がオフの場合、変速ギア66からフィードギア67へ至る駆動列は切断される。給紙クラッチ61がオンの場合、変速ギア66からフィードギア67へ至る駆動列が接続され、給紙クラッチ61を介してフィードギア67に駆動力が入力される。フィードギア67はフィードローラ22を駆動するとともに、アイドラギア68を介して中間搬送ローラ31を駆動する。
【0020】
図5は給紙クラッチ61の状態に応じた各ローラの回転速度(搬送速度)を示している。駆動機構60を構成する複数のギア間のギア比は、
図5に示された速度を満たすように、設定(設計)されている。第一速度は、画像形成部50におけるシートPの搬送速度と略等速の速度である。第二速度は、第一速度よりも速い速度である。第一速度に対する第二速度の関係は必要な加速度やモーターの出力によって決定される。
【0021】
給紙クラッチ61がオフに制御されている場合、駆動力は、分岐ギア63からアイドラギア64を介して第一駆動ギア71へ伝達される。これにより、第一駆動ギア71は第一速度で中間搬送ローラ31を駆動する。この駆動力は、第二ワンウエイクラッチ74の作用により第二駆動ギア72へ伝達されない。そのため、フィードローラ22は回転しない。
【0022】
給紙クラッチ61がオンの場合、駆動力は、分岐ギア63、変速ギア66、給紙クラッチ61、および、フィードギア67へ伝達される。その結果、フィードローラ22が第二速度で回転する。さらに、駆動力は、フィードギア67からアイドラギア68を介して第二駆動ギア72へ伝達される。その結果、第二駆動ギア72が中間搬送ローラ31を駆動し、中間搬送ローラ31が第二速度で回転する。このとき、第一駆動ギア71は第一速度で回転している。中間搬送ローラ31は第一速度よりも速い第二速度で回転している。そのため、第一ワンウエイクラッチ73の作用によって、第一駆動ギア71は、中間搬送ローラ31に対して空転する。
【0023】
このように、実施例1によれば、給紙クラッチ61をオン/オフすることにより、フィードローラ22に対する駆動力を伝達/遮断することと、中間搬送ローラ31の搬送速度を第一速度と第二速度との間で切り替えることとが実現される。その一方で、第一速度と第二速度とのいずれの場合も、モーターの回転速度は一定である。つまり、中間搬送ローラ31の搬送速度を第一速度と第二速度との間で切り替えるために、モーターの回転速度を変化させる必要はない。たとえば、一時的に給紙クラッチ61をオンに切り替えることで、後続のシートPの搬送速度を増加させ、先行するシートPと後続のシートPとの間の距離(紙間)を短くすることが可能となる。
【0024】
●搬送制御
図6(A)ないし
図6(D)は連続して搬送される二枚のシートP1、P2の搬送位置、各ローラの搬送速度、および、給紙クラッチ61の状態を示している。
図6(A)が示すタイミングでは、画像形成部50においてシートP1に対して画像が形成されている。このタイミングでは、シートP1の後端は中間搬送ローラ対30を通過していない。給紙クラッチ61はオフになっている。このとき、レジストローラ41および中間搬送ローラ31はそれぞれ第一速度で回転している。給紙クラッチ61がオフであるため、給紙ローラ群20へ駆動力が伝達されていない。シートP1が分離ニップを通過するまで、給紙ローラ群20は、シートP1に従動して回転する。シートP1の後端が分離ニップを通過すると、給紙ローラ群20は停止する。給紙ローラ群20が停止したときに、シートP2はシートカセット2内に位置している。分離ニップは、フィードローラ22と分離ローラ23とが圧接することで形成されている。
【0025】
図6(B)が示すように、シートP1の後端が中間搬送ローラ対30を通過したことがシートセンサ3aにより検知されると、給紙クラッチ61がオンになる。これにより、給紙ローラ群20は第二速度で回転し、ピックローラ21およびフィードローラ22がシートP2の搬送を開始する。このとき、シートP1はレジストローラ対40によりニップ(挟持)されている。そのため、シートP1は第一速度で搬送されている。
【0026】
シートセンサ3aがシートP2の先端を検知すると、画像形成装置1は、シートP1の後端からシートP2の先端までの距離(紙間)Lを演算する。画像形成装置1は、給紙クラッチ61がオンになった時点からシートセンサ3aがシートP2の先端を検知した時点までの時間Tをタイマーまたはカウンタなどにより計時する。シートP1は第一速度V1で搬送されていることから、距離Lは、第一速度V1と時間Tとの積である。ここで目標距離がXであり、かつ、X<Lである場合、シートP2をさらに時間T0にわたり第二速度V2で搬送することで、シートP1の後端からシートP2の先端までの距離が目標距離Xになる。
T0=(L-X)/(V2-V1) ・・・(1)
画像形成装置1は、シートセンサ3aがシートP2の先端を検知した時点から所定時間T0が経過したタイミングに、給紙クラッチ61をオンからオフに切り替える。これにより、
図6(C)が示すように、シートP1の後端からシートP2の先端までの距離Lが目標距離Xに一致する。
【0027】
ところで、給紙クラッチ61がオンからオフに切り替えられるタイミングは、シートP2がレジストローラ対40に到達する前である必要がある。レジストローラ対40は第一速度V1で回転している。つまり、シートP2がレジストローラ対40に到達すると、シートP2の搬送速度が第二速度V2から第一速度V1に変化し、シートP2はシートP1に対する距離をもはや短縮できなくなる。また、シートP2に不要なたわみが生じないようにするために、シートP2がレジストローラ対40に到達する前に、給紙クラッチ61がオフに切り替えられる。
【0028】
図6(D)が示すように、レジストローラ対40がシートP2を挟持して搬送する。レジストローラ対40は第一速度V1で回転しているため、シートP1とシートP2との間の距離Lは目標距離Xに維持される。その後、シートP2はシートセンサ3bを通過し、画像形成部50に搬送される。
【0029】
ところで、給紙ローラ群20から中間搬送ローラ対30までシートPが移動するために必要となる時間Tにはばらつきが存在する。この原因は、シートカセット2におけるシートPの積載位置がばらつくこと、および、シートPの表面状態または給紙ローラ群20の表面状態がばらつくこと、などである。そのため、シートP2を第二速度V2で搬送する時間T0が調整される。
【0030】
図7は先行するシートP1の後端の搬送位置と後続のシートP2の先端の搬送位置を示すダイアグラムである。縦軸は搬送位置を示す。横軸は時間を示す。
【0031】
給紙ローラ群20から中間搬送ローラ対30までの搬送区間をシートPが搬送される時間Tにはばらつきが存在する。
図7において(i)は、時間Tが最も短いケースにおけるシートP2の先端の搬送位置を示している。これは、たとえば、シートカセット2内でシートPが分離ニップまですでに連れ出されているケースである。
【0032】
時刻t0に給紙クラッチ61がオンされると、シートP2は第二速度V2で搬送が開始される。時刻ta1で、シートセンサ3aがシートP2の先端を検知する。時刻ta1では、シートP1とシートPとの距離Lが既に目標距離Xに一致している。そのため、シートセンサ3aがシートP2を検知するとすぐに、画像形成装置1は、給紙クラッチ61をオンからオフに切り替える。その後、中間搬送ローラ対30とレジストローラ対40がシートP2を画像形成部50に搬送する。
【0033】
図7において(ii)が示すケースは、設計上で最も遅いタイミングでシートP2が給紙および搬送されるケースである。このケースは、給紙ローラ群20が耐久寿命末期を迎えていたり、シートPの表面が滑りやすかったりした場合に、生じうる。時刻t0で給紙クラッチ61がオンされ、時刻tb1でシートP2の先端がシートセンサ3aに到達する。その後、シートP1とシートP2との間の距離Lが目標距離Xになる時刻tb2で、給紙クラッチ61がオフになる。その後、シートP1に対する距離Lが目標距離Xを維持するように、シートP1とシートP2は第一速度V1で搬送される。
【0034】
図7が示すように、シートP2の給紙タイミングはシートP1の後端が中間搬送ローラ対30を抜けた後に設定されてもよい。しかし、これは一例に過ぎない。フィードギア67から中間搬送ローラ31の第二駆動ギア72までに存在する駆動列に、駆動力の伝達を遅延させる機構が挿入されてもよい。これにより、シートP1が中間搬送ローラ対30を抜ける前に、シートP2の給紙が開始されてもよい。
【0035】
●コントローラ
図8はシート搬送装置100のコントローラを示している。CPU800はメモリ810に記憶されている制御プログラム811を実行することで様々な機能を実現する。これらの機能の一部またはすべてがASIC(特定用途集積回路)またはFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)などのハードウエア回路により実現されてもよい。タイマー801は様々な時間を計時する。たとえば、タイマー801は、給紙クラッチ61がオンとなるタイミングからシートセンサ3aが先端を検知するタイミングまでの時間Tを計測する。演算部802は、タイマー801により計時された時間Tから時間T0を演算する。演算部802は時刻t0に時間T0を加算して時刻tb2を演算してもよい。監視部803は時刻t0から時間T0が経過したかどうかを監視または判定する。監視部803は時刻tb2が到来したかどうかを監視してもよい。時刻tb2が到来すると、監視部803はトリガー信号を切替部804に出力する。切替部804は、監視部803から出力されるトリガー信号に応答して駆動回路812bに給紙クラッチ61をオフからオンに切り替えるよう命令する。CPU800は、駆動回路812aにモーター820を駆動するよう命令する。モーター820は駆動力を発生して入力ギア65に供給する。駆動回路812bには、実施例2で説明されるレジクラッチ62が接続されていてもよい。駆動回路812bには、実施例3で説明されるソレノイド57が接続されていてもよい。
【0036】
●フローチャート
図9はCPU800が制御プログラム811にしたがって実行する給紙クラッチ61の制御方法を示している。S901でCPU800は給紙開始条件が満たされたかどうかを判定する。給紙開始条件とは、後続するシートP2の給紙を開始することを許可する条件である。給紙開始条件は、たとえば、先行するシートP1の後端がシートセンサ3aを抜けたことであってもよい。給紙開始条件が満たされると、CPU800はS902に進む。
【0037】
S902でCPU800は、給紙クラッチ61をオンに切り替える。たとえば、CPU800は、駆動回路812bにオン命令を出力することで、駆動回路812bが給紙クラッチ61をオフからオンに切り替える。給紙クラッチ61をオンになると、駆動力が給紙クラッチ61を介して給紙ローラ群20に伝達する。これにより、給紙ローラ群20および中間搬送ローラ31が第二速度V2で回転を開始し、シートP2が第二速度V2で搬送される。シートP1はレジストローラ対40により第一速度V1で継続して搬送される。
【0038】
S903でCPU800は、タイマー801をスタートさせる。つまり、タイマー801は時間Tの計測を開始する。S904でCPU800はシートセンサ3aによりシートP2の先端が検知されたかどうかを判定する。シートP2の先端が検知されると、CPU800はS905に進む。
【0039】
S905でCPU800はタイマー801から時間Tを取得する。S906でCPU800は時間Tに基づき給紙クラッチ61のオフタイミングである時刻tb2を演算する。CPU800は、時間Tから時間T0を求め、時刻t0に時間T0を加算することで時刻tb2を演算する。
【0040】
S907でCPU800はタイマー801のタイマー値に基づきオフタイミングが到来したかどうかを判定する。オフタイミングである時刻tb2が到来すると、CPU800はS908に進む。S908でCPU800は、給紙クラッチ61をオンからオフに切り替える。たとえば、CPU800は、駆動回路812bにオフ命令を出力することで、駆動回路812bが給紙クラッチ61をオンからオフに切り替える。
【0041】
実施例1によれば、シート搬送装置100は、給紙ローラ群20の駆動を制御する給紙クラッチ61のオン/オフによって中間搬送ローラ31の速度を変速する。給紙クラッチ61がオンになると、中間搬送ローラ31の回転速度が第一速度から第二速度へ増速される。つまり、給紙ローラ群20に給紙クラッチ61を介して駆動力が伝達されている期間において給紙ローラ群20は第二速度で回転する。これにより、中間搬送ローラ31の変速のための特別なクラッチが不要となり、低コスト化が図られる。
【0042】
<実施例2>
実施例1では給紙クラッチ61で中間搬送ローラ31を加速させることでシートP1とシートP2との間の距離を縮めている。実施例2では実施例1に加えて、レジストローラ41の変速機構が追加される。実施例2において、実施例1と共通する事項には同一の参照符号が付与されており、その説明は援用される。
【0043】
図10は実施例2の駆動機構60を示している。
図3に示されたレジアイドラギア69およびレジローラギア70が、
図10では、レジクラッチ62、変速ギア79、第一駆動ギア81、ワンウエイクラッチ83および第二駆動ギア82に置換されている。
【0044】
図11が示すように、分岐ギア63には変速ギア79が噛み合っている。モーター820から入力ギア65に入力された駆動力は分岐ギア63を介して変速ギア79に伝達される。さらに、変速ギア79は、第一駆動ギア81に噛み合っている。よって、変速ギア79が駆動力を第一駆動ギア81に伝達する。第一駆動ギア81はレジストローラ41の回転軸にワンウエイクラッチ83を介してロックされているため、第一駆動ギア81がレジストローラ41を回転させる。この場合、レジクラッチ62はオフであり、レジストローラ41は第一速度V1で回転する。
【0045】
その一方で、変速ギア79はレジクラッチ62への駆動力を伝達する。レジクラッチ62はCPU800により制御される電磁クラッチであってもよい。レジクラッチ62がオンの場合、駆動力はレジクラッチ62から第二駆動ギア82に伝達される。第二駆動ギア82はレジストローラ41の回転軸に固定されているため、第二駆動ギア82が回転することでレジストローラ41も回転する。このように、レジクラッチ62がオンになると、レジクラッチ62を介してレジストローラ41へ駆動力が伝達される。これによりレジストローラ41は第二速度V2で回転する。このように、レジクラッチ62のオフ/オンにより、レジストローラ41の回転速度を切り替えることが可能となる。
【0046】
ところで、第一駆動ギア81にはワンウエイクラッチ83が連結されている。レジクラッチ62がオフである場合、ワンウエイクラッチ83は第一駆動ギア81をレジストローラ41の回転軸にロックさせる。レジクラッチ62がオンである場合、ワンウエイクラッチ83は第一駆動ギア81をレジストローラ41の回転軸に対してフリーにする。つまり、ワンウエイクラッチ83は第一駆動ギア81を空転させる。
【0047】
●搬送制御
図12(A)ないし
図12(D)は連続して搬送される二枚のシートP1、P2の搬送位置、各ローラの搬送速度、および、給紙クラッチ61、レジクラッチ62の状態を示している。
図12(A)が示すタイミングでは画像形成部50においてシートP1に対して画像が形成されている。このタイミングでは、シートP1の後端は中間搬送ローラ対30を通過していない。給紙クラッチ61およびレジクラッチ62はともにオフになっている。そのため、レジストローラ41および中間搬送ローラ31はそれぞれ第一速度V1で回転している。
【0048】
図12(B)によれば、シートP1の後端が中間搬送ローラ対30を通過したことがシートセンサ3aにより検知されると、給紙クラッチ61がオンになる。これにより、給紙ローラ群20および中間搬送ローラ31は第二速度V2で回転し、ピックローラ21およびフィードローラ22がシートP2の搬送を開始する。このとき、シートP1はレジストローラ対40によりニップされている。また、レジクラッチ62はオフのままであるため、レジストローラ対40は第一速度V1で回転している。そのため、シートP1は第一速度V1で搬送されている。少なくともシートP1の後端がレジストローラ対40を抜けるまで、レジストローラ対40は第一速度V1で回転する。たとえば、シートセンサ3bがシートP1の後端が抜けたことを検知すると、CPU800は、レジクラッチ62をオンにする。このように、シートP1がレジストローラ対40を通過した後で、かつ、シートP2がレジストローラ41に到達する前に、レジクラッチ62がオンになり、レジストローラ41が第一速度V1から第二速度V2に増速する。
【0049】
図12(C)が示すように、シートセンサ3aがシートP2の先端を検知すると、CPU800は、タイマー801から時間Tを取得する。CPU800は、時間TからシートP1の後端からシートP2の先端までの距離Lを演算する。実施例1で説明されたように、CPU800は、時間T、距離L、第一速度V1、第二速度V2および目標距離Xに基づき時間T0を演算する。時間T0は、レジストローラ41および中間搬送ローラ31がともに第二速度V2で回転すべき時間である。また、時間T0は、給紙クラッチ61およびレジクラッチ62がともにオンになる時間である。CPU800は、時間T0に基づき、給紙クラッチ61およびレジクラッチ62をともにオフに切り替えるタイミング(オフタイミング)を演算する。
【0050】
図12(D)は、給紙クラッチ61およびレジクラッチ62のオフタイミングを示している。シートP1とシートP2との間の距離Lが目標距離Xに一致したことで、給紙クラッチ61およびレジクラッチ62がオフになる。これにより、中間搬送ローラ31およびレジストローラ41は第二速度V2から第一速度V1に減速する。
【0051】
ここでは給紙クラッチ61とレジクラッチ62とが同時にオフされているが、これは一例にすぎない。電磁クラッチには応答ばらつきが存在する。レジストローラ対40と中間搬送ローラ対30が等速でシートPを搬送している期間がある。この期間において、レジクラッチ62のオフタイミングよりも給紙クラッチ61のオフタイミングが遅くなると、シートPがレジストローラ対40と中間搬送ローラ対30とによって引っ張られてしまう。これに対して、レジクラッチ62のオフタイミングよりも給紙クラッチ61のオフタイミングが早くなると、シートPがレジストローラ対40と中間搬送ローラ対30とによってシートPにたわみが生じる。小さなたわみは許容される。そのため、小さなたわみが生じるように、給紙クラッチ61のオフタイミングがレジクラッチ62のオフタイミングよりも早められてもよい。
【0052】
図13は先行するシートP1の後端の搬送位置と後続のシートP2の先端の搬送位置を示すダイアグラムである。縦軸は搬送位置を示す。横軸は時間を示す。
図7を用いて説明されたように、実施例1は、(i)のケースと(ii)のケースとに対処できる。実施例2は、さらに、(iii)のケースに対処できる。(iii)のケースは、(ii)のケースと比較して、さらにシートP2の先端がシートPの搬送方向においてさらに上流側に位置するように、シートP2がシートカセット2a内に積載されているケースである。実施例2では、レジストローラ対40に第二速度V2に増速可能である。そのため、搬送開始時刻である時刻t0から、シートP2の先端がシートセンサ3bに到着する時刻tc2まで、シートP2を第二速度V2で搬送可能となっている。
【0053】
図13では、シートセンサ3aがシートP2の先端を検知することで、タイマー801により時間Tが計時される。(iii)のケースでは時刻tc1にシートセンサ3aがシートP2の先端を検知することで、時間Tが取得される。さらに、時間Tから時刻T0が演算され、オフタイミングが確定する。(iii)のケースでは時刻tc2がオフタイミングに決定される。
【0054】
なお、レジクラッチ62は、シートP1の後端がレジストローラ対40から抜ける時刻tcz以降でレジクラッチ62がオンされうる。レジクラッチ62がオンされると、レジストローラ対40が第二速度V2で回転する。その後、シートP2がレジストローラ対40に受け渡される。シートセンサ3bの少し手前に位置しているとき(時刻tc2)で給紙クラッチ61とレジクラッチ62が同時にオフに切り替えられる。これにより、シートP1とシートP2との距離が目標距離Xに調整される。
【0055】
実施例2ではレジクラッチ62によりレジストローラ41の回転速度を切り替えることで、シート搬送装置100が対処できる搬送ばらつきが増える。つまり、シート搬送装置100の性能が向上する。
図13が示すように、実施例1では、シートP2の先端位置のばらつきが距離Fまでであれば対処可能であるが、実施例2では、シートP2の先端位置のばらつきが距離F+Gまでであれば対処可能である。
【0056】
実施例2は実施例1と同様の効果を奏することができることに加え、さらに、多くの搬送ばらつきにも対処できるようになる。レジクラッチ62に関するコストが増えるものの、依然として、低コスト化が図られる。
【0057】
実施例2では、シートセンサ3bがシートP2の先端を検知する前に給紙クラッチ61およびレジクラッチ62がオフに切り替えられている。つまり、シートP2の後端がシートセンサ3bを通過するときには、第一速度V1でシートP2が搬送されている。しかし、これは一例に過ぎない。給紙クラッチ61およびレジクラッチ62の応答性能やモーター820の性能が許容できるのであれば、シートセンサ3bをシートPの先端が通過した後に、給紙クラッチ61およびレジクラッチ62がオフに切り替えられてもよい。
【0058】
<実施例3>
実施例1および実施例2では、シートカセット2aから給紙されるシートPに関して説明された。実施例3ではオプション給紙装置10のシートカセット2bから給紙されるシートPに関して説明される。
【0059】
図14(A)ないし
図14(C)は連続して搬送される二枚のシートP1、P2の搬送位置、各ローラの搬送速度、および、クラッチ機構の状態を示している。なお、実施例3における駆動列の構成は、実施例2の駆動列の構成と類似している。つまり、給紙ローラ群20bは給紙ローラ群20aに対応し、搬送ローラ対55は中間搬送ローラ対30に対応し、出口ローラ対56はレジストローラ対40に対応している。そのため、実施例3における駆動列の詳細は実施例1、2の駆動列の説明が援用される。ただし、実施例3では給紙クラッチ61およびレジクラッチ62として異なるクラッチが採用される。つまり、電磁クラッチに代えて
図15(A)および
図15(B)に示されるクラッチ機構260が採用される。
図15(A)はクラッチ機構260がオン状態(伝達状態)であることを示している。
図15(B)はクラッチ機構260がオフ状態(遮断状態)であることを示している。
【0060】
オプション給紙装置10は駆動源を備えていないため、モーター820により生成された駆動力がギア等を介してオプション給紙装置10に伝達される。クラッチ機構260はカム等によって駆動力の伝達と遮断とを切り替える。
【0061】
図14(A)が示すように、搬送ローラ対55の下流にはシートセンサ3cが設けられている。シートセンサ3cは、シートカセット2bか給送されるシートPの先端を検知し、検知信号をCPU800に出力する。
図14(A)が示すように、シートP2の搬送が開始される前は、クラッチ機構260はオフである。したがって、搬送ローラ対55と出口ローラ対56は第一速度V1で回転する。
図14(B)が示すように、シートP2の後端が出口ローラ対56を抜けると、CPU800はクラッチ機構260をオフからオンに切り替える。これにより、給紙ローラ群20b、搬送ローラ対55および出口ローラ対56は第二速度V2で回転する。CPU800は、シートP2がシートセンサ3cにより検知されるまでに計測された時間Tに基づきクラッチ機構260をオフに切り替えるタイミングを決定する。時間Tは、シートP1の後端からシートP2の先端までの距離Lに相当する時間である。シートP1の後端からシートP2の先端までの距離Lの目標距離はYと仮定されている。CPU800は、距離Lが目標距離Yに一致するタイミングで、クラッチ機構260をオフに切り替える。これにより、シートP2はシートP1に対する距離を目標距離Yに維持したまま、シート搬送装置100へ搬送される。
【0062】
図15(A)および
図15(B)が示すように、制御レバー261が矢印方向に移動すると、制御カム262が回転する。制御カム262は、いわゆる端面カムである。端面カムとは、筒状のカムであり、軸方向における筒の長さが筒の回転位相に応じて変化するカムである。筒の軸方向における二つの端面のうち一方の端面に従動節が当接しており、筒が回転することで従動節が筒の軸方向に移動する。制御カム262が回転すると、出力ギア266と入力軸267の連結状態が変化する。
【0063】
より詳細には、モーター820により生成された駆動力は入力軸267に入力されている。入力軸267には入力係合部材264が固定されている。入力係合部材264が出力係合部材265と噛み合うと、入力軸267に入力された駆動力が入力係合部材264および出力係合部材265を介して出力ギア266に伝達される。
【0064】
出力係合部材265はクラッチ部材263とともに入力係合部材264に向けてバネ等の弾性体により付勢されている。より詳細には、クラッチ部材263は制御カム262に向けて付勢されており、クラッチ部材263と制御カム262は常に当接している。制御カム262はカム部262aを有し、クラッチ部材263はカム部263aを有している。制御カム262の回転位相に依存して、クラッチ部材263の軸方向の位置が変化する。
図15(A)では、クラッチ機構260がオン、すなわち、入力軸267から出力ギア266に駆動力が伝達される状態が示されている。
図15(A)においてクラッチ部材263は右側に位置しているため、入力係合部材264と出力係合部材265とが噛み合う。
【0065】
図15(B)が示すように、クラッチ機構260がオフになると、入力軸267から出力ギア266への駆動力の伝達が解除される。より詳細には、制御レバー261が矢印方向に移動することで、制御カム262が回転する。制御カム262のカム部262aの端面(カム面)がクラッチ部材263のカム部263aの端面を押すことで、クラッチ部材263が図中左に移動する。これにより、出力係合部材265も左に移動する。その結果、入力係合部材264から出力係合部材265への駆動力の伝達が遮断される。
【0066】
CPU800は、駆動回路812bを介してソレノイド57を駆動することで、制御レバー261を移動させる。ソレノイド57がオンになると、クラッチ機構260がオフになる。ソレノイド57がオフになると、クラッチ機構260がオンになる。
【0067】
実施例3における目標距離Yは実施例1、2における目標距離Xよりも長いものと仮定されている。これは、カム部262aとカム部263aとのピッチに起因したばらつき(0~1歯相当)が生じるためである。このばらつきをdとすると、実施例3において目標距離Yは、目標距離Xとばらつきdとの和となる(Y=X+d)。実施例3において、ばらつきdは、シートセンサ3bがシートPの先端を検知したことをトリガーとするレーザ光の書き出しタイミングで吸収される。ばらつきdが画像形成装置1の生産性に影響しない範囲に収まるように、カム部262aとカム部263aのピッチが設計されればよい。このようにカムを利用したクラッチ機構260は電磁クラッチと比較してより大きなばらつきをもたらす。しかし、このばらつきが画像形成装置1にとって許容可能であれば、画像形成装置1のコストをさらに低減することが可能となる。
【0068】
実施例3ではオプション給紙装置10に関して主に説明されたが、実施例1、2の給紙クラッチ61およびレジクラッチ62としてクラッチ機構260が採用されてもよい。実施例3の搬送ローラの駆動列は基本的に実施例2の駆動列と同様であると仮定されている。しかし、実施例3の駆動列において、一つのクラッチ機構260によって駆動力を伝達されるローラが、搬送ローラ対55と出口ローラ対56とになるように駆動列が変更されてもよい。
【0069】
実施例3によれば、クラッチ機構260により搬送ローラ対55と出口ローラ対56の回転速度を第一速度V1と第二速度V2とのどちらかに切り替えることが可能となる。また、クラッチ機構260がオンの場合にのみ、給紙ローラ群20bは駆動力を供給されて第二速度V2で回転する。クラッチ機構260がオフ場合、給紙ローラ群20bは駆動力を供給されないため、停止するか、または、シートPに従動して第二速度V2で回転する。このように、実施例1ないし3では、給紙ローラ群20a、20bは駆動力を受けて回転する駆動状態と、駆動力を供給されない停止状態(従動状態)とを有している。しかし、これは一例に過ぎない。しかし、駆動状態と従動状態とを有する搬送ローラと、駆動力の伝達方向において下流にあるクラッチに連動して変速されるローラとがあれば、実施例1ないし3の技術思想は適用可能である。
【0070】
<実施例から導き出される技術思想>
[観点1]
給紙ローラ群20a、20bはシートを搬送する第一搬送ローラの一例である。中間搬送ローラ対30および搬送ローラ対55はシートの搬送方向において第一搬送ローラよりも下流側に配置された第二搬送ローラの一例である。駆動力が第二搬送ローラに伝達されることで第二搬送ローラが第一速度で回転する場合に、第一搬送ローラは従動回転する。駆動力が第二搬送ローラに伝達されることで第二搬送ローラが第一速度よりも速い第二速度で回転する場合に、第一搬送ローラは前記第二速度で回転する。このように、実施例1ないし3から導き出される技術思想によれば、従来よりも低コストで複数のローラの速度を切り替えることが可能となる。
【0071】
[観点2]
入力ギア65、分岐ギア63、アイドラギア64および第一駆動ギア71を含む駆動列は、モーターにより生成される駆動力を第二搬送ローラに伝達する第一伝達手段の一例である。入力ギア65、分岐ギア63、給紙クラッチ61およびフィードギア67を含む駆動列は、第一伝達手段に対して並列に設けられ、モーターにより生成される駆動力を第一搬送ローラに伝達する第二伝達手段の一例である。フィードギア67、アイドラギア68および第二駆動ギア72を含む駆動列は、第二伝達手段を介して伝達される駆動力を第二搬送ローラに伝達する第三伝達手段の一例である。実施例1ないし3で説明されたように、第二搬送ローラが第一速度で回転する場合がある。この場合に、第一伝達手段がモーターにより生成される駆動力を第二搬送ローラに伝達することで、第二搬送ローラが第一速度で回転し、第二伝達手段はモーターにより生成される駆動力を遮断する。第一搬送ローラと第二搬送ローラとが第一速度よりも速い第二速度で回転する場合がある。この場合に、第二伝達手段がモーターにより生成される駆動力を第一搬送ローラに伝達するとともに、第三伝達手段が当該駆動力をさらに第二搬送ローラに伝達し、第一伝達手段がモーターにより生成される駆動力を第二搬送ローラに伝達しない。これにより、第一搬送ローラと第二搬送ローラとがそれぞれ第二速度で回転する。このように、実施例1ないし3から導き出される技術思想によれば、従来よりも低コストで複数のローラの速度を切り替えることが可能となる。
【0072】
[観点3]
第二伝達手段は、駆動力を伝達する伝達状態と駆動力を遮断する遮断状態とを有する第一クラッチを有してもよい。ここで、給紙クラッチ61およびクラッチ機構260は第一クラッチの一例である。第一クラッチは、第二搬送ローラを第一速度で回転させる場合に遮断状態に制御され、第二搬送ローラを第二速度で回転させる場合に伝達状態に制御される。
【0073】
[観点4]
実施例1、2で説明されたように、第一クラッチは、電磁クラッチであってもよい。電磁クラッチがオンになると、第一クラッチは伝達状態になる。電磁クラッチがオフになると、第一クラッチは遮断状態になる。このように、第一搬送ローラと第二搬送ローラとに対して一つの電磁クラッチを設けるだけでこれらの速度を切り替えることが可能となる。よって、二つの電磁クラッチが必要となる従来技術と比較して、実施例1、2はコストを削減することが可能となる。
【0074】
[観点5]
実施例3で説明されたように、第一クラッチ(例:クラッチ機構260)は、端面カムと、端面カムの位相を第一位相または第二位相に切り替えるレバーと、を有してもよい。第一クラッチは、端面カムの位相が第一位相に制御されると伝達状態になり、端面カムの位相が第二位相に制御されると遮断状態になる。このように、第一搬送ローラと第二搬送ローラとに対してクラッチ機構260を設けるだけでこれらの速度を切り替えることが可能となる。よって、二つの電磁クラッチが必要となる従来技術と比較して、実施例3はコストを削減することが可能となる。
【0075】
[観点6、7]
シートセンサ3a~3cは、シートを検知する検知手段の一例である。CPU800は、検知手段による検知結果に応じて第一クラッチを制御する制御手段の一例である。制御手段は、先行するシートP1の後端から後続のシートP2の先端までの距離Lが目標距離XまたはYになるよう、検知手段により後続のシートの先端が検知されたタイミングに応じて第一クラッチを伝達状態から遮断状態に切り替えるタイミングを決定する。これにより、安価に、先行するシートP1の後端から後続のシートP2の先端までの距離Lが目標距離XまたはYに制御することが可能となる。
【0076】
[観点8]
実施例1ないし3で説明されたように、第一搬送ローラは、第二搬送ローラにより第一速度で搬送されるシートを介して、第二搬送ローラに対して従動して第一速度で回転してもよい。
【0077】
[観点9]
実施例1で説明されたように、第一伝達手段は、駆動力により回転する第一ギア(例:第一駆動ギア71)と、第一ギアと第二搬送ローラの回転軸との間に設けられた第一ワンウエイクラッチ(ワンウエイクラッチ73)とを有してもよい。第一ワンウエイクラッチは、第一ギアに入力された駆動力を第二搬送ローラの回転軸に伝達させて、第二搬送ローラを第一速度で回転させる。第一ワンウエイクラッチは、第二搬送ローラが第二速度で回転する場合に、第一ギアを第二搬送ローラの回転軸に対して空転させる。これにより、電磁クラッチなどの高価な部品の数が削減される。
【0078】
[観点10]
第三伝達手段は、第二搬送ローラに取り付けられた第二ワンウエイクラッチ(例:ワンウエイクラッチ74)を有してもよい。第二ワンウエイクラッチは、第一伝達手段を介して伝達されてきた駆動力を第一搬送ローラに伝達しない。第二ワンウエイクラッチは、第二伝達手段を介して伝達されてきた駆動力を第二搬送ローラに伝達する。これにより、電磁クラッチなどの高価な部品の数が削減される。
【0079】
[観点11]
実施例2で説明されたように、レジストローラ41は、シートの搬送方向において第二搬送ローラよりも下流側に配置された第三搬送ローラの一例である。入力ギア65、分岐ギア63、変速ギア79、および、第一駆動ギア81を含む駆動列は、モーターにより生成される駆動力を第三搬送ローラに伝達する第四伝達手段の一例である。入力ギア65、分岐ギア63、レジクラッチ62および第二駆動ギア82を含む駆動列は、第四伝達手段に対して並列に設けられ、モーターにより生成される駆動力を第三搬送ローラに伝達する第五伝達手段の一例である。第三搬送ローラは、第四伝達手段を介して伝達される駆動力によって第一速度で回転する。第三搬送ローラは、第五伝達手段を介して伝達される駆動力によって第二速度で回転する。
【0080】
[観点12]
レジクラッチ62は、駆動力を伝達する伝達状態と駆動力を遮断する遮断状態とを有する第二クラッチの一例である。第二クラッチは、第三搬送ローラを第一速度で回転させる場合に遮断状態に制御され、第三搬送ローラを第二速度で回転させる場合に伝達状態に制御される。
【0081】
[観点13]
第四伝達手段は、駆動力により回転する第二ギア(例:第一駆動ギア81)と、第二ギアと第三搬送ローラの回転軸との間に設けられた第三ワンウエイクラッチ(例:ワンウエイクラッチ83)とを有してもよい。第三ワンウエイクラッチは、第二ギアに入力された駆動力を第三搬送ローラの回転軸に伝達させて、第三搬送ローラを第一速度で回転させる。第三ワンウエイクラッチは、第三搬送ローラが第二速度で回転する場合に、第二ギアを第三搬送ローラの回転軸に対して空転させる。
【0082】
[観点14、15]
シート搬送装置100は、画像形成装置1に内蔵されていてもよい。シート搬送装置(例:オプション給紙装置10)は、画像形成装置1の外部に取り付けられる着脱可能なシート搬送装置であってもよい。この場合、モーター820は画像形成装置1に設けられていてもよい。
【0083】
[観点16]
シート搬送装置100およびオプション給紙装置10は、シートを搬送する搬送手段の一例である。画像形成部50は、搬送手段により搬送されるシートに画像を形成する画像形成手段の一例である。
【0084】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0085】
20:給紙ローラ群、31:中間搬送ローラ、61:給紙クラッチ、63:分岐ギア、64、68:アイドラギア、66:変速ギア、71、72:駆動ギア、73、74:ワンウエイクラッチ