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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】打撃工具
(51)【国際特許分類】
   B25D 17/24 20060101AFI20241111BHJP
   B25D 17/04 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
B25D17/24
B25D17/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021026285
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2022128006
(43)【公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】町田 吉隆
(72)【発明者】
【氏名】中川 和樹
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-038093(JP,A)
【文献】特開2015-217471(JP,A)
【文献】特開2015-100897(JP,A)
【文献】特開2016-000447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25D1/00-17/32
B25F1/00-5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打撃工具であって、
先端工具を取り外し可能に保持するように構成され、前記先端工具の駆動軸線を規定する最終出力シャフトと、
前記駆動軸線と平行に延在する回転軸線を有するモータと、
前記モータの動力によって、少なくとも、前記先端工具を前記駆動軸線に沿って直線状に駆動するハンマ動作を遂行可能に構成された駆動機構と、
前記モータを収容するハウジングと、
前記ハウジングよりも前記回転軸線に関する径方向外側に配置され、前記回転軸線の軸線方向に延在する第1部分と、該第1部分と交差する方向に延在する第2部分と、を有し、前記ハウジングに対して前記軸線方向に相対移動可能に構成されたハンドルと、
前記ハンドルを、前記軸線方向のうちの前記最終出力シャフトから遠ざかる方向へ付勢する付勢部材と、
前記軸線方向に延在するように前記ハウジングと前記ハンドルの前記第1部分との間に配置され、前記ハンドルと前記ハウジングとの相対移動を摺動的に案内するように構成された少なくとも1つのガイド部材と、
前記少なくとも1つのガイド部材と前記ハウジングとの間、および、前記少なくとも1つのガイド部材と前記ハンドルの前記第1部分との間、のうちの一方に配置された少なくとも1つの弾性部材と
を備え、
前記少なくとも1つのガイド部材は、前記ハンドルの前記第1部分、または、前記ハウジングとの間で、前記少なくとも1つの弾性部材が介在しない摺動関係にあり、
前記少なくとも1つのガイド部材は、前記軸線方向に交差する方向である交差方向における前記少なくとも1つの弾性部材の弾性変形によって、前記ハウジングまたは前記ハンドルに対して前記交差方向に相対移動可能に配置された
打撃工具。
【請求項2】
請求項に記載の打撃工具であって、
前記少なくとも1つの弾性部材は、前記少なくとも1つのガイド部材と前記ハウジングとの間に配置され、
前記少なくとも1つのガイド部材は、前記ハンドルの前記第1部分との間で、前記少なくとも1つの弾性部材が介在しない摺動関係にあり、
前記少なくとも1つのガイド部材は、前記ハウジングに対して前記交差方向に相対移動可能に配置された
打撃工具。
【請求項3】
請求項に記載の打撃工具であって、
前記少なくとも1つの弾性部材は、前記ハウジングに固定状に取り付けられた少なくとも1つのスポンジである
打撃工具。
【請求項4】
請求項に記載の打撃工具であって、
前記少なくとも1つのガイド部材は、前記少なくとも1つのスポンジに固定状に取り付けられた
打撃工具。
【請求項5】
請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の打撃工具であって、
前記軸線方向における前記ハウジングに対する前記ハンドルの相対移動可能量は、前記交差方向における前記ハウジングまたは前記ハンドルに対する前記少なくとも1つのガイド部材の相対移動可能量よりも大きい
打撃工具。
【請求項6】
請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の打撃工具であって、
前記少なくとも1つの弾性部材は、前記軸線方向に離間して配置された第1弾性部材および第2弾性部材を備える
打撃工具。
【請求項7】
請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の打撃工具であって、
前記少なくとも1つのガイド部材は、前記軸線方向に離間して配置された第1ガイド部材および第2ガイド部材を備え、
前記少なくとも1つの弾性部材は、前記軸線方向において、前記第1ガイド部材の位置から前記第2ガイド部材の位置まで延在するように配置された
打撃工具。
【請求項8】
請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の打撃工具であって、
前記少なくとも1つのガイド部材は、円形断面を有する少なくとも1つのピンである
打撃工具。
【請求項9】
請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の打撃工具であって、
前記少なくとも1つのガイド部材および前記少なくとも1つの弾性部材は、前記回転軸線に関する周方向に沿った3箇所に配置された
打撃工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端工具を直線状に駆動するように構成された打撃工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンマドリルは、ツールホルダに装着された先端工具を、駆動軸線に沿って直線状に駆動するハンマ動作、および、駆動軸線周りに回転駆動するドリル動作を遂行可能に構成されている。一般的には、ハンマ動作のためには、中間シャフトの回転運動を直線運動に変換する運動変換機構が採用され、ドリル動作のためには、中間シャフトを介してツールホルダに回転を伝達する回転伝達機構が採用される。この種のハンマドリルは、ハンマ動作を行う際に、先端工具の打撃力に対する被加工材からの反力を受ける。この反力は、主として駆動軸線が延在する方向(以下、軸線方向とも呼ぶ)の振動を発生させる。この振動は、ハンマドリルのハウジング、ひいてはユーザに伝達されることになる。
【0003】
下記の特許文献1,2は、このような軸線方向の振動を吸収するための構造を有するハンマドリルを開示している。具体的には、ハンマドリルのハンドルは、モータを収容するモータハウジング上に配置されたガイド上を軸線方向に摺動可能に構成される。ハンドルは、付勢部材によって、軸線方向のうちのモータハウジングから遠ざかる方向へ付勢される。ハンマ動作に伴って先端工具が反力を受けると、この反力によって、ハンドル以外の部分が先端工具とともに、付勢部材の付勢力に抗って、ハンドルに対して後方に向けて相対移動する。このとき、付勢部材が弾性変形し、反力の一部が緩衝される。この緩衝作用によって、反力に起因してハンドルに伝達される軸線方向の振動が低減されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6309881号公報
【文献】特許第6334144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ハンマドリルでは、運動変換機構やモータの駆動に起因して、軸線方向に交差する方向の振動も発生する。特許文献1,2のハンマドリルの上述した構造は、そのような軸線方向に交差する方向の振動を低減できない。このような問題は、ハンマドリルに限らず、ハンマ動作を遂行するための駆動機構を備える種々の打撃工具に共通する。
【0006】
本発明は、かかる状況に鑑み、軸線方向の振動に加えて、軸線方向に交差する方向の振動についても、ハンドルへの伝達が低減された打撃工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、最終出力シャフトと、モータと、駆動機構と、ハウジングと、ハンドルと、付勢部材と、少なくとも1つのガイド部材と、少なくとも1つの弾性部材と、を備えた打撃工具が提供される。
【0008】
最終出力シャフトは、先端工具を取り外し可能に保持するように構成されている。また、最終出力シャフトは、先端工具の駆動軸線を規定する。モータは、駆動軸線と平行に延在する回転軸線を有している。駆動機構は、モータの動力によって、少なくとも、先端工具を駆動軸線に沿って直線状に駆動するハンマ動作を遂行可能に構成されている。ハウジングは、モータを収容する。ハンドルは、ハウジングよりも回転軸線に関する径方向外側に配置され、回転軸線の軸線方向に延在する第1部分と、第1部分と交差する方向に延在する第2部分と、を有している。また、ハンドルは、ハウジングに対して軸線方向に相対移動可能に構成されている。付勢部材は、ハンドルを、軸線方向のうちの最終出力シャフトから遠ざかる方向へ付勢する。少なくとも1つのガイド部材は、軸線方向に延在するようにハウジングとハンドルの第1部分との間に配置され、ハンドルとハウジングとの相対移動を摺動的に案内するように構成される。少なくとも1つの弾性部材は、少なくとも1つのガイド部材とハウジングとの間、および、少なくとも1つのガイド部材とハンドルの第1部分との間、のうちの少なくとも一方に配置される。少なくとも1つのガイド部材は、軸線方向に交差する方向である交差方向における少なくとも1つの弾性部材の弾性変形によって、ハウジングまたはハンドルに対して交差方向に相対移動可能に配置される。
【0009】
本態様の打撃工具によれば、ハンマ動作に伴って先端工具が反力を受けると、付勢部材の付勢力に抗って、ハンドルが最終出力シャフトに近づくように、ハウジングとハンドルとが軸線方向に相対移動する。このときの付勢部材の弾性変形によって反力の一部が緩衝される。この緩衝作用によって、反力に起因して発生する軸線方向の振動について、ハンドルへの伝達が低減される。更に、本態様の打撃工具によれば、駆動機構やモータの駆動によって交差方向の振動が発生した際に、ハウジングとハンドルとの間に配置された少なくとも1つの弾性部材が交差方向に弾性変形して、当該振動を吸収する。したがって、交差方向の振動についても、ハンドルへの伝達が低減される。
【0010】
本発明の一態様において、少なくとも1つの弾性部材は、少なくとも1つのガイド部材とハウジングとの間、および、少なくとも1つのガイド部材とハンドルの第1部分との間、のうちの一方のみに配置されてもよい。本態様によれば、少なくとも1つのガイド部材とハウジングとの間、および、少なくとも1つのガイド部材とハンドルの第1部分との間、のうちの他方において、少なくとも1つのガイド部材と、ハウジングまたは第1部分と、の摺動性を良好に確保できる。したがって、少なくとも1つのガイド部材は、ハンドルとハウジングとの相対移動を円滑に案内できる。
【0011】
本発明の一態様において、少なくとも1つの弾性部材は、少なくとも1つのガイド部材とハウジングとの間のみに配置されてもよい。少なくとも1つのガイド部材は、ハウジングに対して交差方向に相対移動可能に配置されてもよい。本態様によれば、少なくとも1つのガイド部材と、ハンドルの第1部分と、の間の摺動性を良好に確保できる。したがって、少なくとも1つのガイド部材は、ハンドルとハウジングとの相対移動を円滑に案内できる。更に、本態様によれば、ハウジングの外表面上に少なくとも1つの弾性部材と少なくとも1つのガイド部材とを配置できるので、組み立てが容易になる。
【0012】
本発明の一態様において、少なくとも1つの弾性部材は、ハウジングに固定状に取り付けられた少なくとも1つのスポンジであってもよい。スポンジは変形しやすいので、本態様によれば、交差方向における少なくとも1つの弾性部材の弾性変形量を大きく確保できる。その結果、交差方向の振動について、ハンドルへの伝達低減効果が向上する。また、スポンジは、軽量で安価な材料であるから、打撃工具を低コスト化および軽量化できる。
【0013】
本発明の一態様において、少なくとも1つのガイド部材は、少なくとも1つのスポンジに固定状に取り付けられてもよい。本態様によれば、ハウジングに対して、少なくとも1つの弾性部材および少なくとも1つのガイド部材が固定されるので、組み立てが容易になる。
【0014】
本発明の一態様において、軸線方向におけるハウジングに対するハンドルの相対移動可能量は、交差方向におけるハウジングまたはハンドルに対する少なくとも1つのガイド部材の相対移動可能量よりも大きくてもよい。本態様によれば、発生する振動の大きさに合わせて相対移動可能量が設定されている。具体的には、相対的に大きな振動である軸線方向の振動のハンドルへの振動を低減するために、ハウジングに対するハンドルの相対移動可能量は、相対的に大きく設定されており、相対的に小さな振動である交差方向の振動のハンドルへの振動を低減するために、ハウジングまたはハンドルに対する少なくとも1つのガイド部材の相対移動可能量は、相対的に小さく設定されている。つまり、2つの相対移動可能量が、必要な防振性能に応じて最適化されており、打撃工具の大型化が抑制される。
【0015】
本発明の一態様において、少なくとも1つの弾性部材は、軸線方向に離間して配置された第1弾性部材および第2弾性部材を備えていてもよい。本態様によれば、単一の弾性部材が、第1弾性部材の位置から第2弾性部材の位置まで延在し、かつ、単一のガイド部材が第1弾性部材の位置から第2弾性部材の位置まで延在する場合と比べて、少なくとも1つの弾性部材は、小さい領域で集中的に交差方向の力を受けることになる。したがって、少なくとも1つの弾性部材の弾性変形量が大きくなり、交差方向の振動について、ハンドルへの伝達低減効果が向上する。
【0016】
本発明の一態様において、少なくとも1つのガイド部材は、軸線方向に離間して配置された第1ガイド部材および第2ガイド部材を備えていてもよい。少なくとも1つの弾性部材は、軸線方向において、第1ガイド部材の位置から第2ガイド部材の位置まで延在するように配置されてもよい。本態様によれば、単一の弾性部材が、第1弾性部材の位置から第2弾性部材の位置まで延在し、かつ、単一のガイド部材が第1弾性部材の位置から第2弾性部材の位置まで延在する場合と比べて、少なくとも1つの弾性部材は、小さい領域で集中的に交差方向の力を受けることになる。したがって、少なくとも1つの弾性部材の弾性変形量が大きくなり、交差方向の振動について、ハンドルへの伝達低減効果が向上する。しかも、少なくとも1つのガイド部材全体の延長距離を短くできるので、打撃工具を軽量化できる。更に、少なくとも1つの弾性部材を、軸線方向における第1ガイド部材の位置と、前記第2ガイド部材の位置と、に分離配置する必要が無いので、製造工程を簡素化できる。
【0017】
本発明の一態様において、少なくとも1つのガイド部材は、円形断面を有する少なくとも1つのピンであってもよい。本態様によれば、少なくとも1つのガイド部材についての摺動性を良好に確保できるとともに、製造も容易である。
【0018】
本発明の一態様において、少なくとも1つのガイド部材および少なくとも1つの弾性部材は、回転軸線に関する周方向に沿った3箇所に配置されてもよい。本態様によれば、少なくとも1つのガイド部材は、ハンドルとハウジングとの相対移動をより安定的に案内できる。更に、少なくとも1つの弾性部材の各々は、互いに異なる方向に弾性変形するので、交差方向の振動について、ハンドルへの伝達低減効果が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態によるハンマドリルの側面図であり、ハンドルは、本体ハウジングに対して初期位置にある。
図2】ハンマドリルの縦断面図であり、ハンドルは本体ハウジングに対して初期位置にある。
図3図2の部分拡大図である。
図4図2のIV―IV線に沿った断面図であり、ハンドルは本体ハウジングに対して初期位置にある。
図5図4のV-V線に沿った部分断面図であり、ハンドルは本体ハウジングに対して初期位置にある。
図6】ハンマドリルの側面図であり、ハンドルは本体ハウジングに対して最近接位置にある。
図7】ハンマドリルの縦断面図であり、ハンドルは本体ハウジングに対して最近接位置にある。
図8図7のVIII―VIII線に沿った断面図であり、ハンドルは本体ハウジングに対して最近接位置にある。
図9図8の部分拡大図である。
図10図8のX-X線に沿った部分断面図であり、ハンドルは本体ハウジングに対して最近接位置にある。
図11】代替実施形態によるハンマドリルの部分縦断面図であり、図2に対応している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態では、打撃工具の一例として、ハンマドリル101を例示する。ハンマドリル101は、ハツリ作業、穴あけ作業等の加工作業に用いられる手持ち式の電動工具であって、先端工具91を所定の駆動軸線A1に沿って直線状に駆動する動作(以下、ハンマ動作という)、および、先端工具91を駆動軸線A1周りに回転駆動する動作(以下、ドリル動作という)を遂行可能に構成されている。
【0021】
まず、図1および図2を参照して、ハンマドリル101の概略構成について簡単に説明する。図1に示すように、ハンマドリル101の外郭は、主に、本体ハウジング10と、本体ハウジング10に連結されたハンドル17と、によって形成されている。
【0022】
本体ハウジング10は、スピンドル31、駆動機構5、モータ2等を収容する中空体である。スピンドル31は、長尺の円筒状部材であって、その軸線方向の一端部に、先端工具91を取り外し可能に保持するツールホルダ32を備えている。スピンドル31の長軸は、先端工具91の駆動軸線A1を規定する。本体ハウジング10は、駆動軸線A1に沿って延在する。ツールホルダ32は、駆動軸線A1の延在方向(以下、単に軸線方向ともいう)における本体ハウジング10の一端部内に配置されている。
【0023】
ハンドル17は、軸線方向における本体ハウジング10の一方側(ツールホルダ32が配置されているのとは反対側)に配置されている。ハンドル17は、駆動軸線A1に交差する方向(詳細には、概ね直交する方向)に延在するグリップ部171を備えている。グリップ部171は、使用者によって把持されることが意図される部分であり、駆動軸線A1に交差する方向に突出するように形成されている。
【0024】
以下の説明では、便宜上、駆動軸線A1の延在方向(本体ハウジング10の長軸方向)をハンマドリル101の前後方向と規定する。前後方向において、ツールホルダ32が配置されている側をハンマドリル101の前側、反対側(モータ2が配置されている側)を後側と規定する。また、駆動軸線A1に直交し、かつ、グリップ部171が延在する方向に対応する方向をハンマドリル101の上下方向と規定する。上下方向において、本体ハウジング10が位置する側を上側、グリップ部171の突出端側を下側と規定する。また、前後方向と上下方向とに直交する方向をハンマドリル101の左右方向と規定する。左右方向において、後側から前側を見たときの右側をハンマドリル101の右側と定義し、その反対側をハンマドリル101の左側と定義する。
【0025】
以下、ハンマドリル101の詳細構成について説明する。まず、本体ハウジング10の構成について説明する。図2に示すように、本体ハウジング10は、ギヤハウジング13とモータハウジング11とを備えている。ギヤハウジング13には、スピンドル31および駆動機構5が収容される。ギヤハウジング13は、円筒状の前端部を有する。この円筒状の部分を、バレル部131という。本体ハウジング10のうち、バレル部131以外の部分は、概ね矩形箱状に形成されている。ギヤハウジング13の後端部には、軸受支持体15が嵌め込まれている。
【0026】
モータハウジング11には、モータ2が収容される。モータハウジング11は、ギヤハウジング13の後側に、ギヤハウジング13に隣接して配置されている。モータハウジング11は、単一の部材であり、筒部111と軸受保持部113とを備えている。
【0027】
筒部111は、軸線方向に延在する筒状の部材である。より詳細には、筒部111は、前端部と、前端部よりも後方に位置する後側部分と、を備えている。筒部111の前端部は、ギヤハウジング13の後端部と略同一の太さ(換言すれば、駆動軸線A1周りの寸法)を有している。後側部分は、筒部111の前端部よりも小さな外径を有している。軸受保持部113は、筒部111の後端面から後側に向けて突出している。
【0028】
筒部111内にモータ2を配置した状態で、バッフルプレート16を筒部111内に嵌め込み、バッフルプレート16と筒部111とを複数のネジ114で連結することによって、モータ2は、モータハウジング11内に固定状に保持される。バッフルプレート16は、後述する冷却ファン27によって発生する空気流を方向付ける機能も有している。モータハウジング11とギヤハウジング13とは、ネジ等の固定手段によって固定状に連結されている。
【0029】
以下、本体ハウジング10の内部構造について説明する。まず、モータ2について説明する。本実施形態では、モータ2として、外部の交流電源から供給された電力で駆動される交流モータが採用されている。図2に示すように、モータ2は、ステータとロータとを含むモータ本体部20と、ロータと一体的に回転するように構成されたモータシャフト25と、を備える。本実施形態では、モータ2(換言すれば、モータシャフト25)の回転軸線A2は、駆動軸線A1よりも下側で、駆動軸線A1と平行に延在する。
【0030】
モータシャフト25は、2つの軸受251および252を介して、本体ハウジング10に対して回転軸線A2周りに回転可能に支持されている。前側の軸受251は、軸受支持体15の後面側に保持されており、後側の軸受252は、モータハウジング11の軸受保持部113内に保持されている。モータシャフト25のうち、モータ本体部20と前側の軸受251との間の部分には、モータ2を冷却するための冷却ファン27が固定されている。
【0031】
モータシャフト25の前端部は、軸受支持体15を貫通して、ギヤハウジング13内に突出している。このギヤハウジング13内に突出する部分には、ピニオンギヤ255が固定されている。
【0032】
次いで、スピンドル31について説明する。スピンドル31は、ハンマドリル101の最終出力シャフトである。図2に示すように、スピンドル31は、駆動軸線A1に沿って、ギヤハウジング13内に配置され、本体ハウジング10に対して駆動軸線A1周りに回転可能に支持されている。スピンドル31は、長尺状の段付きの円筒部材として構成されている。
【0033】
スピンドル31の前半部分は、先端工具91を着脱可能なツールホルダ32を構成する。先端工具91は、その長軸が駆動軸線A1と一致するように、ツールホルダ32の前端部のビット挿入孔330に挿入される。先端工具91は、ツールホルダ32に対する軸線方向の移動が許容され、かつ、軸線周りの回転が規制された状態で、ビット挿入孔330内に保持される。スピンドル31の後半部分は、後述するピストン65を摺動可能に保持するシリンダ33を構成する。スピンドル31は、軸受316および317によって支持されている。軸受316は、バレル部131内に保持されており、軸受317は、ギヤハウジング13と一体的に形成されたインナハウジング132内に保持されている。
【0034】
以下、駆動機構5について説明する。本実施形態では、駆動機構5は、モータ2の動力によって、先端工具91を駆動軸線A1に沿って直線状に駆動するハンマ動作と、先端工具91を駆動軸線A1周りに回転駆動するドリル動作と、を遂行可能に構成される。
【0035】
より詳細には、駆動機構5は、ハンマ動作のための打撃機構6を含む。打撃機構6は、運動変換部材61と、アーム部62と、ピストン65と、ストライカ67と、インパクトボルト68とを含む。運動変換部材61は、中間シャフト41の周囲に配置されている。中間シャフト41は、モータシャフト25の回転軸線A2と平行に延在している。中間シャフト41は、本体ハウジング10に対して移動不能に配置された2つの軸受(図示せず)によって、回転可能に支持されている。中間シャフト41には、モータシャフト25の前端に取り付けられたピニオンギヤ255に噛合しているギヤ(図示せず)を介して、モータシャフト25の回転力が伝達される。運動変換部材61は、中間シャフト41の回転に伴って前後方向に揺動するように構成されている。アーム部62は、運動変換部材61とピストン65とを連結している。中間シャフト41の回転運動は、運動変換部材61によって直線運動に変換され、アーム部62を介してピストン65に伝達される。
【0036】
ピストン65は、有底円筒状の部材であって、スピンドル31のシリンダ33内に、駆動軸線A1に沿って摺動可能に配置されている。ストライカ67は、ピストン65内に、駆動軸線A1に沿って摺動可能に配置されている。ストライカ67の後側のピストン65の内部空間は、空気バネとして機能する空気室として規定されている。インパクトボルト68は、ストライカ67の運動エネルギを先端工具91に伝達する中間子である。インパクトボルト68は、ツールホルダ32内で、ストライカ67の前側に、駆動軸線A1に沿って移動可能に配置されている。
【0037】
上述のように中間シャフト41の回転運動が直線運動に変換されてピストン65に伝達されると、ピストン65が前後方向に移動する。このとき、空気室の空気の圧力が変動し、空気バネの作用によってストライカ67がピストン65内を前後方向に摺動する。より詳細には、ピストン65が前方に向けて移動されると、空気室の空気が圧縮されて内圧が上昇する。ストライカ67は、空気バネの作用で高速に前方に押し出されてインパクトボルト68を打撃する。インパクトボルト68は、ストライカ67の運動エネルギを先端工具91に伝達する。これにより、先端工具91は駆動軸線A1に沿って直線状に駆動される。一方、ピストン65が後方へ移動されると、空気室の空気が膨張して内圧が低下し、ストライカ67が後方へ引き込まれる。先端工具91は、被加工物への押し付けにより、インパクトボルト68と共に後方へ移動する。このようにして、打撃機構6によってハンマ動作が繰り返される。
【0038】
更に、駆動機構5は、ドリル動作のための回転伝達機構(図示せず)を含む。回転伝達機構は、中間シャフト41の回転運動をスピンドル31に伝達し、先端工具91を駆動軸線A1周りに回転駆動するように構成されている。より詳細には、中間シャフト41の前端部には、駆動ギヤ(図示せず)が固定されている。この駆動ギヤは、スピンドル31のシリンダ33の外周に固定された被動ギヤ79に噛合している。このため、中間シャフト41と一体的に駆動ギヤが回転するのに伴って、被動ギヤ79と一体的にスピンドル31が回転される。これにより、ツールホルダ32に保持された先端工具91が駆動軸線A1周りに回転駆動されるドリル動作が遂行される。
【0039】
本実施形態では、ハンマドリル101は、選択的に実行可能な3つの動作モード、すなわち、ハンマドリルモード、ハンマモード、およびドリルモードを有する。ハンマドリルモードは、打撃機構6および回転伝達機構の両方が駆動されることで、ハンマ動作およびドリル動作が行われる動作モードである。ハンマモードは、ドリル動作のための動力伝達が遮断され、打撃機構6のみが駆動されることで、ハンマ動作のみが行われる動作モードである。ドリルモードは、ハンマ動作のための動力伝達が遮断され、回転伝達機構のみが駆動されることで、ドリル動作のみが行われる動作モードである。これらの動作モードは、モード切替ダイヤル80の操作によって切り替えられる。そのような動作モードの切替機構は周知であるから、その説明は省略する。
【0040】
上述した駆動機構5は、例えば、米国特許出願公開第2015/144366号および米国特許出願公開第2016/136801号に記載されている。米国特許出願公開第2015/144366号および米国特許出願公開第2016/136801号の開示内容は、参照よって全体が本願に組み入れられる。
【0041】
次いで、ハンドル17の構成について説明する。図1および図2に示すように、ハンドル17は、グリップ部171と筒部172とを備えている。筒部172は、前後方向に延在する筒状の部分である。図2に示すように、筒部172は、モータハウジング11を周方向に取り囲むように、モータハウジング11よりも回転軸線A2に関する径方向外側に配置されている。グリップ部171は、筒部172の後端から、回転軸線A2に交差する方向に長尺状に延在する中空体である。本実施形態では、筒部172とグリップ部171の前側部分とは、一体的に形成されている。この一体的に形成された部材と、グリップ部171の後側部分と、がネジによって連結されることによって、ハンドル17が構成されている。
【0042】
グリップ部171の下端からは、外部の交流電源に接続可能な電源ケーブル179が延出されている。グリップ部171には、使用者によって押圧操作(引き操作)されるトリガ141が取り付けられている。グリップ部171内には、トリガ141の押圧操作に応じてオン状態とされるスイッチ142が配置されている。ハンマドリル101では、スイッチ142がオン状態とされると、モータ2が通電され、駆動機構5が駆動されて、ハンマ動作および/またはドリル動作が行われる。
【0043】
本実施形態では、本体ハウジング10とハンドル17とは、伸縮可能な蛇腹198を介して連結されている。より詳細には、図2および図4に示すように、蛇腹198は、回転軸線A2を周方向に取り囲む環状に形成されている。蛇腹198の前端は、モータハウジング11に連結されており、蛇腹198の後端は、ハンドル17の筒部172に連結されている。
【0044】
ところで、本実施形態では、ハンマドリル101は、モータ2および駆動機構5の駆動に伴って生じる振動がハンドル17に伝達されるのを抑制するように構成されている。以下、ハンマドリル101の防振構造について説明する。
【0045】
防振構造として、本体ハウジング10とハンドル17とは、前後方向に相対移動可能に構成されている。この相対移動は、本体ハウジング10(より詳細には、モータハウジング11)とハンドル17(より詳細には、筒部172)との間に配置され、前後方向に延在する3つのガイド部材191によって摺動的に案内される。より詳細には、図2~4に示すように、モータハウジング11の筒部111の外表面には、前後方向に延在する3つの溝115が形成されている。図3に示すように、溝115の前端は、筒部111の前端まで達しており、溝115の後端は、筒部111の後端面117に達する前に、後側内面116のところで終端している。図4に示すように、3つの溝115は、回転軸線A2に関する周方向に沿って3箇所にそれぞれ配置されている。本実施形態では、3つの溝115は、周方向に均等に(つまり、回転軸線A2を中止とする120度回転対称に)配置されている。図9に示すように、溝115は、断面で円弧形状を有している。
【0046】
図3および図9に示すように、3つの溝115の内側には、3つのガイド部材191がそれぞれ配置される。ガイド部材191は、部分的に溝115内に収まっており、その大半は、溝115の外に位置している。図3に示すように、ガイド部材191の長さは、溝115の長さよりも僅かに小さい。そして、溝115の前端は、バッフルプレート16によって塞がれている。このため、ガイド部材191は、前後方向の移動をバッフルプレート16と後側内面116とによって前後方向の移動がほぼ規制された状態で、溝115内に配置される。
【0047】
図9に示すように、本実施形態では、ガイド部材191は、円形断面を有するピンの形態である。特に、本実施形態では、ガイド部材191は、中空形状を有している。このため、ガイド部材191、ひいてはハンマドリル101が軽量化される。
【0048】
また、図3および図9に示すように、ハンドル17の筒部172の内面には、前後方向に延在する3つのガイド溝174が形成されている。図9に示すように、ガイド溝174は、ガイド部材191の外周面に適合する円弧状の断面形状を有している。図8に示すように、3つのガイド溝174は、周方向において、溝115およびガイド部材191に対応する位置に設けられている。ハンドル17は、ガイド溝174を形成する筒部172の内面がガイド部材191上を摺動することによって、本体ハウジング10に対して前後方向に相対移動できる。
【0049】
本実施形態のように、ガイド部材191として、円形断面を有するピンを使用することによって、良好な摺動性を確保できるとともに、製造も容易となる。ただし、ガイド部材191およびガイド溝174の断面形状は、互いに適合する任意の形状とすることができる。また、本実施形態では、ガイド部材191が周方向に沿って3箇所に配置されているので、ハンドル17と本体ハウジング10との相対移動が、より安定的に案内される。
【0050】
図3および図9に示すように、溝115内において、筒部111とガイド部材191との間には、弾性部材192が配置されている。弾性部材192は、本実施形態では、スポンジ、つまり、発泡形成された樹脂(例えば、ポリウレタン)である。本実施形態では、弾性部材192は、任意の固定手段(例えば、接着剤)を使用して、筒部111に固定状に取り付けられる。さらに、ガイド部材191は、任意の固定手段(例えば、接着剤)を使用して、弾性部材192に固定状に取り付けられる。この構成によれば、筒部111に対して弾性部材192とガイド部材191とが固定されるので、ハンマドリル101の組み立て(より詳細には、ハンドル17の筒部172内に筒部111を嵌め込む作業)が容易になる。ただし、筒部111と弾性部材192との間、および、ガイド部材191と弾性部材192との間の少なくとも一方において、固定手段が省略されてもよい。本実施形態では、弾性部材192は、僅かに圧縮された状態で筒部111とガイド部材191との間に配置されるが、回転軸線A2に交差する方向(交差方向とも呼ぶ)に力を受けた場合には、交差方向に更に弾性変形できる。弾性部材192が僅かに圧縮された状態を初期状態とすることで、ガイド部材191と筒部172との間で良好な摺動性が得られる。
【0051】
このように、ガイド部材191は、弾性部材192を介してモータハウジング11に固定されているものの、モータハウジング11には直接的には固定されていない。このため、ガイド部材191は、弾性部材192の交差方向の弾性変形量に応じて、モータハウジング11に対して交差方向に相対移動可能である。換言すれば、ガイド部材191は、筒部111と筒部172との間にフローティング状態で保持されている。
【0052】
図3に示すように、本実施形態では、1つの溝115につき、2つの弾性部材192が配置される。一方の弾性部材192は、溝115の前端に配置されており、他方の弾性部材192は、溝115の後端に配置されている。2つの弾性部材192の間では、筒部111とガイド部材191との間に径方向のクリアランスが形成されている。
【0053】
このようにハンドル17が本体ハウジング10に対して前後方向に相対移動可能な構成において、ハンドル17は、後側(換言すれば、前後方向のうちの、スピンドル31から遠ざかる方向)へ付勢されている。より詳細には、図4および図5に示すように、ハンマドリル101は、4つの付勢バネ193を備えている。図5に示すように、付勢バネ193は、コイルバネの形態であり、圧縮状態で筒部111と筒部172との間に配置される。筒部172は、筒部172の前端付近において、筒部172の外周よりも内側で前側に向けて突出する突起175を備えている。突起175の基部には、突起175の径が大きくなることによって段部176が形成されている。付勢バネ193は、この段部176をバネ座として、付勢バネ193内に突起175が位置するように配置されている。この付勢バネ193によって、ハンドル17は、後側へ常時、付勢される。
【0054】
図4に示すように、本実施形態では、付勢バネ193および突起175は、縦断面において、上下左右に対称となるように、ハンマドリル101の4隅付近に配置されている。このため、回転軸線A2に直交する平面上において、ハンドル17を均一に付勢できる。
【0055】
このような構成により、ハンマドリル101では、ハンドル17は、図1~3および図5に示す初期位置と、図6図7および図10に示す最近接位置と、の間で、本体ハウジング10に対して前後方向に相対移動可能となっている。初期位置は、本体ハウジング10およびハンドル17に対して前後方向の力が作用していない状態におけるハンドル17の相対位置である。最近接位置は、本体ハウジング10およびハンドル17に対して前後方向の力が作用し、本体ハウジング10とハンドル17とが最も近づいた状態におけるハンドル17の相対位置である。最近接位置は、筒部111の後端面117(図3参照)が、筒部172の当接部173(図3参照)に当接することによって、規定される。当接部173は、筒部172の内面から径方向内側に突出した部分であり、本体ハウジング10に対するハンドル17の前後方向の相対移動を規制するストッパとして機能する。なお、初期位置は、モータハウジング11およびハンドル17の各々に設けられた当接部(図示せず)が互いに当接することによって規定される。
【0056】
以上説明したハンマドリル101によれば、ハンマ動作に伴って先端工具91が後ろ向きの反力を受けると、先端工具91を保持するスピンドル31、ならびに、スピンドル31および駆動機構5を支持する本体ハウジング10も、後ろ向きの反力を受ける。これによって、ハンドル17は、本体ハウジング10に対して初期位置から最近接位置まで相対移動する(実際には、ハンドル17は使用者によって把持されているので、本体ハウジング10が移動する)。つまり、本体ハウジング10とハンドル17とは、ガイド部材191によって摺動的に案内されつつ、付勢バネ193の付勢力に抗ってハンドル17がスピンドル31に近づくように前後方向に相対移動する。このときの付勢バネ193の弾性変形によって反力の一部が緩衝される。この緩衝作用によって、反力に起因して発生する前後方向の振動について、ハンドル17への伝達が低減される。
【0057】
更に、ハンマドリル101によれば、運動変換部材61やモータ2の駆動によって、前後方向に交差する方向(以下、交差方向とも呼ぶ)の振動が発生した際に、モータハウジング11と、ハンドル17の筒部172と、の間に配置された弾性部材192が、当該振動の方向に弾性変形して、当該振動を吸収する。したがって、交差方向の振動についても、ハンドル17への伝達が低減される。
【0058】
更に、ハンマドリル101によれば、弾性部材192は、ガイド部材191とモータハウジング11との間にのみ配置されており、ガイド部材191と、ハンドル17の筒部172と、の間には配置されていない。このため、ガイド部材191と筒部172との間での摺動性を良好に確保でき、したがって、本体ハウジング10とハンドル17との相対移動がガイド部材191によって円滑に案内される。
【0059】
更に、弾性部材192として、変形しやすい性状を有するスポンジが使用される。このため、交差方向における弾性部材192の弾性変形量を大きく確保できる。その結果、交差方向の振動について、ハンドル17への伝達低減効果が向上する。
【0060】
更に、ハンマドリル101では、1つのガイド部材191に対して、2つの弾性部材192が前後方向に離間して配置される。このため、ガイド部材191と同じ長さの単一の弾性部材192が使用される場合(つまり、ガイド部材191の全長に亘ってガイド部材191と弾性部材192とが接触する場合)と比べて、弾性部材192は、小さい領域で集中的に交差方向の力を受けることになる。したがって、弾性部材192の弾性変形量が大きくなり、交差方向の振動について、ハンドル17への伝達低減効果が向上する。
【0061】
さらに、弾性部材192は、周方向に沿った3箇所に配置されており、周方向位置が異なる弾性部材192は、互いに異なる方向に弾性変形する。このため、交差方向の振動について、ハンドル17への伝達低減効果が向上する。
【0062】
ハンマドリル101において、本実施形態では、前後方向における本体ハウジング10に対するハンドル17の相対移動可能量(つまり、初期位置と最近接位置との間での移動量)は、交差方向における本体ハウジング10に対するガイド部材191の相対移動可能量(換言すれば、弾性部材192の初期状態からの更なる弾性変形量)よりも大きく設定されてもよい。通常、反力に起因する前後方向の振動は、交差方向の振動よりも大きいので、この構成によれば、それらの振動の大きさに応じて(つまり、必要な防振性能に応じて)、2つの相対移動可能量が最適化され得るので、ハンマドリル101の大型化が抑制される。
【0063】
上記実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。但し、実施形態の各構成要素は単なる一例であって、本発明の各構成要素を限定するものではない。ハンマドリル101は、「打撃工具」の一例である。スピンドル31は、「最終出力シャフト」の一例である。駆動軸線A1は、「駆動軸線」の一例である。モータ2は、「モータ」の一例である。駆動機構5は、「駆動機構」の一例である。本体ハウジング10(より詳細には、モータハウジング11)は、「ハウジング」の一例である。ハンドル17は、「ハンドル」の一例である。筒部172は、「第1部分」の一例である。グリップ部171は、「第2部分」の一例である。付勢バネ193は、「付勢部材」の一例である。ガイド部材191は、「少なくとも1つのガイド部材」の一例である。弾性部材192は、「少なくとも1つの弾性部材」の一例である。
【0064】
なお、上記実施形態は単なる例示であり、本発明に係る打撃工具は、例示されたハンマドリル101の構成に限定されるものではない。例えば、下記に例示される変更を加えることができる。そのような変更は、これらのうちいずれか1つのみ、あるいは複数が、実施形態に示すハンマドリル101あるいは各請求項に記載された発明と組み合わされて採用され得る。
【0065】
上述したガイド部材191および弾性部材192に代えて、図11に示すように、ガイド部材191aおよび弾性部材192aが使用されてもよい。この例では、1つの溝115につき2つのガイド部材191aが前後方向に離間して同軸状に配置されている。前側のガイド部材191aは、溝115の前端に配置され、後側の191aは、溝115の後端に配置されているので、2つのガイド部材191a全体としては、上述のガイド部材191と同等の案内性能が確保されている。弾性部材192aは、前後方向において溝115の全体に亘って配置されている。
【0066】
この構成によっても、図3に示した構成と同様に、弾性部材192aは、小さい領域で集中的に交差方向の力を受けることになる。したがって、弾性部材192aの弾性変形量が大きくなり、交差方向の振動について、ハンドル17への伝達低減効果が向上する。更なる代替実施形態では、弾性部材192aも前後方向に離間して配置されていてもよい。つまり、前後方向におけるガイド部材191aが配置された位置にのみ、弾性部材192aが配置されてもよい。こうしても、図11の構成と同様の効果が得られる。ただし、更なる代替実施形態では、ガイド部材191と弾性部材192との両方が溝115の全体に亘って配置されてもよい。
【0067】
弾性部材192は、スポンジに限られるものではなく、交差方向に弾性変形可能な任意の弾性部材であってもよい。例えば、弾性部材192は、シリコーン樹脂、ウレタンなどの柔軟な樹脂から形成されていてもよい。
【0068】
弾性部材192の数は、任意に設定され得る。例えば、ガイド部材191および弾性部材192は、付勢バネ193と同様に、周方向に沿った4箇所に配置されてもよい。
【0069】
筒部111とガイド部材191との間に加えて、筒部172とガイド部材191との間(すなわち、摺動側)にも、弾性部材192が配置されてもよい。この場合、弾性部材192には、摩擦に対する耐性がスポンジよりも大きい材料が使用されてもよい。
【0070】
あるいは、筒部111とガイド部材191との間に代えて、ハンドル17に対してガイド部材191が交差方向に相対移動可能となるように、筒部172とガイド部材191との間に弾性部材192が配置されてもよい。この場合、ガイド部材191と筒部111(より詳細には、筒部111に形成されたガイド溝の内面)とが摺動してもよい。更に、弾性部材192が、筒部172の内面に形成された溝内に配置されてもよい。
【0071】
上記実施形態では、打撃工具の一例として、ハンマ動作およびドリル動作を遂行可能なハンマドリル101が例示されている。しかしながら、打撃工具は、ハンマ動作のみを遂行可能な電動ハンマであってもよい。
【符号の説明】
【0072】
2...モータ
5...駆動機構
6...打撃機構
10...本体ハウジング
11...モータハウジング
13...ギヤハウジング
15...軸受支持体
16...バッフルプレート
17...ハンドル
20...モータ本体部
25...モータシャフト
27...冷却ファン
31...スピンドル
32...ツールホルダ
33...シリンダ
41...中間シャフト
61...運動変換部材
62...アーム部
65...ピストン
67...ストライカ
68...インパクトボルト
79...被動ギヤ
80...モード切替ダイヤル
91...先端工具
101...ハンマドリル
111...筒部
113...軸受保持部
114...ネジ
115...溝
116...後側内面
117...後端面
131...バレル部
132...インナハウジング
141...トリガ
142...スイッチ
171...グリップ部
172...筒部
173...当接部
174...ガイド溝
175...突起
176...段部
179...電源ケーブル
191,191a...ガイド部材
192,192a...弾性部材
193...付勢バネ
198...蛇腹
251,252...軸受
255...ピニオンギヤ
316,317...軸受
330...ビット挿入孔
A1...駆動軸線
A2...回転軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11