IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社マキタの特許一覧

<>
  • 特許-回転打撃工具 図1
  • 特許-回転打撃工具 図2
  • 特許-回転打撃工具 図3
  • 特許-回転打撃工具 図4
  • 特許-回転打撃工具 図5
  • 特許-回転打撃工具 図6
  • 特許-回転打撃工具 図7
  • 特許-回転打撃工具 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】回転打撃工具
(51)【国際特許分類】
   B25D 17/08 20060101AFI20241111BHJP
   B25D 16/00 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
B25D17/08
B25D16/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021033906
(22)【出願日】2021-03-03
(65)【公開番号】P2022134644
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 直樹
(72)【発明者】
【氏名】町田 吉隆
(72)【発明者】
【氏名】金子 博貴
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-214691(JP,A)
【文献】特開昭55-161066(JP,A)
【文献】国際公開第2017/078138(WO,A1)
【文献】特開2017-213659(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0072552(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0319712(US,A1)
【文献】特開平02-088185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25D 17/08
B25D 16/00
B23B 45/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端工具を駆動軸に沿って駆動する打撃動作と、前記先端工具を前記駆動軸周りに回転する回転動作とを行う回転打撃工具であって、
前記先端工具を着脱可能に収容し、前記先端工具に回転動力を伝達するように構成された回転伝達部を有するツールホルダを備え、
前記回転伝達部には、周期律表第5族元素の炭化物による皮膜が形成されており、
前記ツールホルダは、前記先端工具と、前記駆動軸に沿って移動して前記先端工具に衝突することで前記先端工具に打撃力を伝達するように構成された打撃子の少なくとも一部とを収容可能な筒壁を備え、
前記筒壁のうち、前記打撃子を収容する部位の内周面の表面粗さは、前記筒壁の他の部位の面の表面粗さよりも低い、
回転打撃工具。
【請求項2】
請求項1に記載の回転打撃工具であって、
前記皮膜は、炭化バナジウム(VC)皮膜である、回転打撃工具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の回転打撃工具であって、
前記ツールホルダは鍛造品である、回転打撃工具。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の回転打撃工具であって、
前記回転伝達部は、前記筒壁の内周面から径方向内側に突出した複数の突出部として形成されている、回転打撃工具。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の回転打撃工具であって、
前記筒壁は、前記駆動軸における前記先端工具側とは反対側に、前記打撃子を前記駆動軸に沿って移動させるように構成されたピストンの少なくとも一部を収容可能に形成されている、回転打撃工具。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の回転打撃工具であって、
前記ツールホルダは、0.04質量%以上かつ0.25質量%以下の炭素を含む鋼材により形成されている、回転打撃工具。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の回転打撃工具であって、
前記回転動力を発生させるモータを備え、
前記モータの回転軸は、前記駆動軸と交差する、回転打撃工具。
【請求項8】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の回転打撃工具であって、
前記回転動力を発生させるモータを備え、
前記モータの回転軸は、前記駆動軸と平行である、回転打撃工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転打撃工具に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物に衝撃を与える工具として、特許文献1には、工具本体の内部に設けられた筒状のシリンダと、シリンダ内を移動可能にシリンダに装填されたハンマーとを備える工具が記載されている。この工具では、シリンダ内への流体の圧入と流体の排出とを行うことにより、シリンダ内でハンマーを往復動作させて打撃伝達体に衝突させることにより、打撃力を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-251388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の技術では、シリンダ内のハンマーの表面に皮膜を作ることにより、ハンマーの割れの防止を図っている。しかし、近年、打撃のみならず、回転動力を先端工具に伝達することが可能な回転打撃工具において、耐久性を高める技術が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の一形態によれば、先端工具を駆動軸に沿って駆動する打撃動作と、前記先端工具を前記駆動軸周りに回転する回転動作とを行う回転打撃工具が提供される。この回転打撃工具は、前記先端工具を着脱可能に収容するツールホルダを備える。前記ツールホルダは、前記先端工具に回転動力を伝達するように構成された、回転伝達部を有する。前記回転伝達部には、周期律表第5族元素の炭化物による皮膜が形成されている。
【0007】
この形態によれば、ツールホルダの回転伝達部は、周期律表第5族元素の炭化物による皮膜を有するので、先端工具に回転動力を伝達することによる回転伝達部の摩耗が抑制される。そのため、ツールホルダの耐久性を高めることができるので、回転打撃工具の耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】先端工具18が装着されたハンマドリル1の断面図である。
図2】ハンマドリル1の内部構造を説明するための断面図である。
図3】ツールホルダ60の断面図である。
図4図1のIV-IV視におけるツールホルダ60及び先端工具18を示す図である。
図5】先端工具18Aが装着されたハンマドリル1Aの断面図である。
図6】ハンマドリル1Aの内部構造を説明するための断面図である。
図7】ツールホルダ60Aの断面図である。
図8図5のVIII-VIII視におけるツールホルダ60A及び先端工具18Aを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、本開示の代表的かつ非限定的な具体例について、図面を参照して詳細に説明する。この詳細な説明は、本開示の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。また、以下に開示される追加的な特徴ならびに開示は、更に改善された回転打撃工具、その製造方法及び使用方法を提供するために、他の特徴や開示とは別に、又は共に用いることができる。
【0010】
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本開示を実施する際に必須のものではなく、特に本開示の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。更に、上記及び下記の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、独立及び従属クレームに記載されるものの様々な特徴は、本開示の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
【0011】
本明細書及び/又は特許請求の範囲に記載された全ての特徴は、実施形態及び/又はクレームに記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。更に、全ての数値範囲及びグループ又は集団に関する記載は、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
【0012】
1つ又はそれ以上の実施形態において、皮膜は、炭化バナジウム(VC)皮膜であってもよい。
【0013】
上記の構成によれば、ツールホルダの回転伝達部には、炭化バナジウム皮膜が形成されているので、回転伝達部の摩耗が効果的に抑制される。そのため、ツールホルダの耐久性を高めることができる。
【0014】
1つ又はそれ以上の実施形態において、ツールホルダは鍛造品であってもよい。
【0015】
上記の構成によれば、ツールホルダの形状の自由度を高めることができる。
【0016】
1つ又はそれ以上の実施形態において、ツールホルダは、先端工具を収容可能な筒壁を備えていてもよい。回転伝達部は、筒壁の内周面から径方向内側に突出した、複数の突出部として形成されていてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、筒壁の内周面から径方向内側に突出する複数の突出部により、先端工具に回転動力を伝達しつつ、当該突出部の摩耗を抑制することができる。
【0018】
1つ又はそれ以上の実施形態において、ツールホルダは、先端工具と、打撃子の少なくとも一部と、を収容可能な筒壁を備えていてもよい。打撃子は、駆動軸に沿って移動して先端工具に衝突することで、先端工具に打撃力を伝達するように構成されていてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、ツールホルダに、先端工具を収容する機能に加え、打撃子を収容する機能を発揮させることができる。そのため、打撃子を収容する部材を別途設ける場合と比較して、回転打撃工具の部品点数を少なくすることができる。
【0020】
1つ又はそれ以上の実施形態において、筒壁は、ピストンの少なくとも一部を収容可能に形成されていてもよい。ピストンは、打撃子の駆動軸における先端工具側とは反対側に収容されていてもよい。ピストンは、打撃子を駆動軸に沿って移動させるように構成されていてもよい。
【0021】
上記の構成によれば、ツールホルダに、更に、ピストンの少なくとも一部を収容する機能を発揮させることができる。そのため、ピストンを収容する部材を別途設ける場合と比較して、回転打撃工具の部品点数を少なくすることができる。
【0022】
1つ又はそれ以上の実施形態において、筒壁のうち、打撃子を収容する部位の内周面の表面粗さは、筒壁の他の部位の面の表面粗さよりも低くてもよい。
【0023】
上記の構成によれば、打撃子と筒壁との間の気密度を高めることができるとともに、収容部位以外の他の部位の表面粗さを収容部位と同様に低くする場合と比較して、ツールホルダを容易に製造することができる。
【0024】
1つ又はそれ以上の実施形態において、ツールホルダは、0.04質量%以上かつ0.25質量%以下の炭素を含む鋼材により形成されていてもよい。
【0025】
上記の構成によれば、先端工具に回転動力を伝達するために適したツールホルダを提供することができる。
【0026】
1つ又はそれ以上の実施形態において、回転打撃工具は、回転動力を発生させるモータを備えていてもよい。モータの回転軸は、駆動軸と交差していてもよい。
【0027】
上記の構成によれば、駆動軸と交差するようにモータの回転軸を配置した、回転打撃工具を提供することができる。
【0028】
1つ又はそれ以上の実施形態において、回転打撃工具は、回転動力を発生させるモータを備えていてもよい。モータの回転軸は、駆動軸と平行であってもよい。
【0029】
上記の構成によれば、駆動軸と平行にモータの回転軸を配置した、回転打撃工具を提供することができる。
【0030】
<第1実施形態>
図1から図4を参照して、第1実施形態に係る回転打撃工具について説明する。図1及び図2は、回転打撃工具の一例であるハンマドリル1を示している。ハンマドリル1は、打撃動作と回転動作とを行うことが可能に構成されている。打撃動作は、先端工具18を駆動軸A1に沿って直線状に駆動させる動作である。回転動作は、先端工具18を駆動軸A1周りに回転駆動させる動作である。駆動軸A1は、打撃軸とも呼ばれる。
【0031】
まず、図1及び図2を参照して、ハンマドリル1の概略構成について説明する。ハンマドリル1の外郭は、主として、本体ハウジング11と、本体ハウジング11に連結されたハンドル13とによって形成されている。
【0032】
本体ハウジング11は、駆動機構3を収容する駆動機構収容部112と、モータ2を収容するモータ収容部111とを備える。駆動機構収容部112は、駆動軸A1方向に延在する長尺状に形成され、モータ収容部111は、駆動軸A1から離れる方向に突出するように配置されている。そのため、本体ハウジング11は、全体としては略L字状に形成されている。駆動機構収容部112の駆動軸A1方向における一端部には、先端工具18を着脱可能に構成されたツールホルダ60が設けられている。本実施形態では、モータシャフト25の回転軸A2は、駆動軸A1に直交する方向に延在している。
【0033】
なお、以下の説明では、便宜上、駆動軸A1の延在方向をハンマドリル1の前後方向と規定し、ツールホルダ60が設けられている一端部側をハンマドリル1の前側、反対側をハンマドリル1の後側と規定する。また、モータシャフト25の回転軸A2の延在方向をハンマドリル1の上下方向と規定し、駆動機構収容部112からモータ収容部111が突出する側を下側、反対側を上側と規定する。
【0034】
以下、ハンマドリル1の各部分の詳細構成について説明する。
【0035】
ハンドル13は、本体ハウジング11の後端部に連結されている。ハンドル13は、駆動軸A1に交差する方向に延在する把持部131を備える。ハンドル13は、全体としては略U字状に形成されている。把持部131の前部には、押圧操作によってモータ2を駆動するように構成された、トリガ14が設けられている。
【0036】
本体ハウジング11におけるモータ収容部111は、上述したように、モータ2を収容する。図2に示すように、モータ2は、ステータ及びロータを含むモータ本体部20と、ロータから延設されたモータシャフト25とを含む。本実施形態では、モータ2として、電源ケーブル19を介して外部電源からの電力供給を受けて駆動される交流モータが採用されている。モータシャフト25の下端部及び上端部は、それぞれ、モータ収容部111に保持されたベアリングによって回転可能に支持されている。モータシャフト25の上端部には、駆動ギヤ29が形成されている。
【0037】
本体ハウジング11における駆動機構収容部112は、上述したように、駆動機構3を収容する。駆動機構収容部112の前側部分は、駆動軸A1に沿って概ね円筒状に形成されている。ツールホルダ60は、当該前側部分に収容されている。本実施形態のツールホルダ60は、硬質皮膜を有しており、耐摩耗性に優れている。ツールホルダ60の詳細については後述する。
【0038】
本実施形態では、駆動機構3は、運動変換機構30と、打撃要素36と、回転伝達機構40とを備える。
【0039】
運動変換機構30は、モータシャフト25の回転運動を直線運動に変換して、打撃要素36に伝達するように構成されている。本実施形態では、運動変換機構30として、クランク機構が採用されている。運動変換機構30は、クランクシャフト31と、連接ロッド32と、ピストン33とを備える。クランクシャフト31は、駆動機構収容部112の後端部であってモータシャフト25よりも前部分に、モータシャフト25と平行に配置されている。クランクシャフト31は、下部に駆動ギヤ29に噛合する被動ギヤ311を有し、上端部にクランクピン312を有する。連接ロッド32の一端部は、クランクピン312に回動可能に連結されている。連接ロッド32の他端部は、ピンを介してピストン33に取り付けられている。ピストン33は、円筒状のシリンダ35内に摺動可能に配置されている。モータ2が駆動されると、ピストン33は、シリンダ35内で駆動軸A1に沿って前後方向に往復移動される。本実施形態では、シリンダ35は、スリーブ46内に収容されている。スリーブ46は、本体ハウジング11に対して駆動軸A1周りに回転可能に、本体ハウジング11に支持されている。スリーブ46には、ツールホルダ60の後端部が嵌合されている。
【0040】
打撃要素36は、ストライカ361と、インパクトボルト362とを含む。ストライカ361は、ピストン33の前側に、シリンダ35内で駆動軸A1に沿って前後方向に摺動可能に配置されている。ストライカ361とピストン33との間には、ピストン33の往復移動によって生じる空気の圧力変動を介して、ストライカ361を直線状に移動させるための空気室365が形成されている。インパクトボルト362は、ストライカ361の前側に配置されている。インパクトボルト362は、ストライカ361の運動エネルギを先端工具18に伝達するように構成されている。本実施形態では、ツールホルダ60は筒状に形成されており、インパクトボルト362は、ツールホルダ60の筒壁601の内側に摺動自在に配置されている。インパクトボルト362とツールホルダ60との間には、環状の弾性部材368(いわゆるOリング)が介在している。本実施形態では、弾性部材368は、インパクトボルト362の外周面に設けられた、環状の溝に嵌め込まれている。
【0041】
モータ2が駆動され、ピストン33が前方に向けて移動されると、空気室365の空気が圧縮されて内圧が上昇する。ストライカ361は、空気バネの作用で高速に前方に押し出されてインパクトボルト362に衝突し、運動エネルギを先端工具18に伝達する。これにより、先端工具18は駆動軸A1に沿って直線状に駆動され、被加工物を打撃する。一方、ピストン33が後方へ移動されると、空気室365の空気が膨張して内圧が低下し、ストライカ361が後方へ引き込まれる。ハンマドリル1は、運動変換機構30及び打撃要素36にこのような動作を繰り返させることで、打撃動作を行う。
【0042】
回転伝達機構40は、モータシャフト25のトルクを、ツールホルダ60に伝達するように構成されている。本実施形態では、回転伝達機構40は、複数のギヤを含む減速ギヤ機構として構成されている。回転伝達機構40の複数のギヤは、駆動ギヤ29と、被動ギヤ311と、第1ギヤ314と、第2ギヤ411と、小ベベルギヤ412と、大ベベルギヤ413とを含む。被動ギヤ311及び第1ギヤ314は、クランクシャフト31に設けられている。第2ギヤ411及び小ベベルギヤ412は、中間シャフト41に設けられている。大ベベルギヤ413は、スリーブ46に設けられている。
【0043】
中間シャフト41は、モータシャフト25と平行に配置されている。本実施形態では、中間シャフト41は、モータシャフト25及びクランクシャフト31に対して前側に配置されている。中間シャフト41は、駆動機構収容部112に保持された2つの軸受によって、回転軸A2と平行な回転軸A3周りに回転可能に支持されている。中間シャフト41は、上下方向における略中央部に第2ギヤ411を有し、上端部に小ベベルギヤ412を有する。第2ギヤ411は、クランクシャフト31における被動ギヤ311の下側に設けられた第1ギヤ314に噛合している。
【0044】
大ベベルギヤ413は、スリーブ46の後端部に設けられて、中間シャフト41の上端部の小ベベルギヤ412に噛合している。本実施形態の回転伝達機構40では、これらの減速ギヤ機構により、モータシャフト25、中間シャフト41、クランクシャフト31、スリーブ46(ツールホルダ60)の順に、回転速度が低下する。
【0045】
本実施形態のハンマドリル1は、モード切替ノブ391の操作により、ハンマドリルモード及びハンマモードの2つのモードのうちいずれかが選択可能に構成されている。ハンマドリルモードは、運動変換機構30及び回転伝達機構40が駆動されることで、打撃動作及び回転動作が行われるモードである。ハンマモードは、運動変換機構のみが駆動されることで、打撃動作のみが行われるモードである。
【0046】
以下、ツールホルダ60の詳細について説明する。まず、ツールホルダ60に装着される先端工具18について説明する。先端工具18は、ビットとも呼ばれる。先端工具18は、ツールホルダ60に装着されるシャンク181(図1参照)を有する。シャンク181には、図4に示す断面視において、先端工具18の中心軸A4に向けて窪む円弧溝182と角溝183とが設けられている。円弧溝182及び角溝183は、中心軸A4に沿って直線状に延びている。本実施形態では、先端工具18には、中心軸A4に対称な2つの円弧溝182と、中心軸A4周りの周方向に所定の間隔で設けられた3つの角溝183とが形成されている。なお、先端工具18の中心軸A4は、先端工具18がツールホルダ60に装着された状態において、駆動軸A1と概ね一致する。
【0047】
上述したように、ツールホルダ60は、駆動機構収容部112の前側部分に収容されている。図3及び図4に示すように、ツールホルダ60は、駆動軸A1に沿って延びる筒状の部材である。ツールホルダ60の筒壁601の内側には、先端工具18が収容される。詳細には、筒壁601の内側には、前側から、先端工具18のシャンク181が挿入される。
【0048】
本実施形態では、ツールホルダ60の筒壁601は、駆動軸A1方向における前側部分に設けられた小径部61と、後側部分に設けられた大径部62と、小径部61と大径部62とを接続する段差部63とを有する。大径部62の内径及び外径は、それぞれ、小径部61の内径及び外径よりも大きく形成されている。ツールホルダ60の筒壁601の径方向厚さは、前後方向において概ね等しい。大径部62は、スリーブ46の前部分に嵌合され、かつ、ピン461によってスリーブ46に固定されている(図2参照)。そのため、ツールホルダ60は、スリーブ46とともに、本体ハウジング11に対して駆動軸A1周りに回転可能である。打撃要素36(インパクトボルト362)は、スリーブ46(シリンダ35)の前部分と大径部62とに収納されて、大径部62内を前後方向に摺動する。
【0049】
ツールホルダ60には、筒壁601を径方向に貫通し、駆動軸A1方向に直線状に延びる、2つの長孔603が設けられている。長孔603は、駆動軸A1に対称に配置されている。本実施形態では、長孔603は、小径部61における後部分に設けられている。長孔603には、ツールホルダ60に挿入された先端工具18の抜き取りを規制したり、抜き取りを許容するための抜け止め部材71が配置される(図1及び図2参照)。抜け止め部材71は、長孔603内において駆動軸A1方向に移動可能である。詳細な説明は省略するが、ツールホルダ60の周囲には、抜け止め部材71を駆動軸A1に向けて付勢する、付勢機構が設けられている。付勢機構は、先端工具18がツールホルダ60(筒壁601の内側)から抜けることを規制する。
【0050】
小径部61における後部分には、周方向における所定位置に、複数の突出部611が設けられている。突出部611は、筒壁601の内周面602から径方向内側に突出した部位である。突出部611は、駆動軸A1方向に直線状に延びている。突出部611は、3つの角溝183の周方向における位置に対応するように配置されている。突出部611は、駆動軸A1周りの周方向に沿った第1面613と、当該周方向に交差する第2面615とを有する。
【0051】
ユーザが、先端工具18をツールホルダ60に挿入して、ツールホルダ60の突出部611が先端工具18の角溝183に嵌り合うように位置合わせを行うと、抜け止め部材71は、シャンク181の後端部に押されつつ径方向外側へ移動し、ツールホルダ60の長孔603を介してシャンク181の円弧溝182に係合する。回転伝達機構40によってスリーブ46及びツールホルダ60にモータ2の回転動力が伝達されて、これらが駆動軸A1周りに回転されると、突出部611は、先端工具18の角溝183に当接してモータ2の回転動力を先端工具18に伝達する。より詳細には突出部611のうちの第2面615が先端工具18の角溝183の側面に当接して、モータ2の回転動力を先端工具18に伝達する。突出部611は、モータ2の回転動力を先端工具18に伝達するための回転伝達部として機能する。第2面615は、先端工具18にトルクを伝達する、トルク伝達部位(トルク伝達面)でもある。
【0052】
次に、ツールホルダ60の材質及びツールホルダ60に形成された皮膜について説明する。ツールホルダ60は、炭素を含有し、鉄を主成分とする材料(鋼材)によって形成されている。ツールホルダ60は、当該鋼材を鍛造することによって形成されている。本実施形態では、炭素の含有量は、0.04質量%(以下、単に%(パーセント)と示す)以上である。また、本実施形態では、炭素の含有量は、0.25%以下である。ツールホルダ60の材質の一例としては、機械構造用炭素鋼(例えば、S10C、S15C、S17C)や、クロムモリブデン鋼(例えば、SCM415)等が挙げられる。
【0053】
ツールホルダ60の表面には、硬質皮膜が形成されている。硬質皮膜は、周期律表における第5族元素の炭化物によって形成されている。第5族元素は、例えば、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、Ta(タンタル)、Db(ドブニウム)である。本実施形態では、ツールホルダ60の表面には、硬質皮膜として、炭化バナジウム(VC)皮膜が形成されている。
【0054】
硬質皮膜は、上記の鋼材をツールホルダ60の形状に鍛造した、ツールホルダ60の中間品に、表面硬化処理を施すことによって形成することができる。表面硬化処理としては、例えば、TD処理が挙げられる。TD処理(TDプロセス、(Toyota Diffusion Coating Process))は、850℃~1050℃程度の溶融塩浴中に、被処理材を浸漬保持することにより、被処理材の表面に炭化物層を形成させる処理である。溶融塩は、主材としての硼酸(硼酸塩、硼砂)と、炭化物を形成させる目的元素とを含む。TD処理により、例えば、硬度(Hv)2000~3800程度の極めて硬い皮膜が形成される。
【0055】
なお、本実施形態のツールホルダ60は、大径部62の内周面602の表面粗さが、他の部位の面の表面粗さよりも小さく形成されている。本実施形態では、ツールホルダ60は、TD処理が施された中間品に対し、大径部62の内周面602が研磨されることで形成される。
【0056】
以上で説明した第1実施形態のハンマドリル1は、炭化バナジウム皮膜を有するツールホルダ60を備えている。そのため、先端工具18の角溝183に回転を伝達する突出部611の摩耗が抑制されるので、ツールホルダ60及びハンマドリル1の耐久性を高めることができる。
【0057】
また、ツールホルダ60は、先端工具18に加え、先端工具18を打撃する打撃子としてのインパクトボルト362を摺動可能に収容している。そのため、インパクトボルト362を収容する部材を別途設ける構成と比較して、ハンマドリル1の部品点数を少なくすることができる。
【0058】
ツールホルダ60は鍛造品であるので、形状の自由度を高めることができる。また、ツールホルダ60は、0.04%以上0.25%以下の炭素を含有する鋼材により形成されているので、鍛造品としても好適である。更に、ツールホルダ60は、0.04%以上0.25%以下の炭素を含有する鋼材から形成された鍛造品に、周期律表における第5族元素を用いたTD処理を施すことで形成された、硬質皮膜を有する。そのため、作業時の負荷に耐えうる靭性と、耐摩耗性とを有するツールホルダ60を備えるハンマドリル1を提供することができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、ツールホルダ60及びハンマドリル1の耐久性が高められ、かつ、モータ2の回転軸A2が駆動軸A1と交差するように配置されたハンマドリル1を提供することができる。
【0060】
また、ツールホルダ60では、大径部62の内周面602の表面粗さが、他の部位の表面粗さよりも小さく形成されている。そのため、弾性部材368によって、ツールホルダ60の大径部62における筒壁601の内周面602とインパクトボルト362との間の気密を保つことができる。
【0061】
なお、大径部62の外周面の表面粗さは、大径部62の内周面602を除いたツールホルダ60の他の部位の表面粗さよりも、小さく形成されていてもよい。こうすることで、スリーブ46にツールホルダ60を高精度に嵌合できる。また、スリーブ46とツールホルダ60との組付け精度を確保できる。
【0062】
<第2実施形態>
以下、図5から図8を参照して第2実施形態に係る回転打撃工具としてのハンマドリル1Aについて説明する。以下の説明では、第1実施形態のハンマドリル1と同様の構成については同じ符号を使用し、説明を省略する。ハンマドリル1Aは、第1実施形態のハンマドリル1と同様に、先端工具18Aを駆動軸(打撃軸)A5に沿って直線上に往復動させる動作(打撃動作)と、先端工具18Aを駆動軸A5周りに回転駆動させる動作(回転動作)を行うように構成されている。
【0063】
ハンマドリル1Aの外郭は、主として、本体ハウジング11Aと、ハンドル13Aとによって形成されている。図5及び図6に示すように、本体ハウジング11Aは、長尺状に形成され、駆動軸A5に沿って延在している。本体ハウジング11Aの駆動軸A5方向における一端部には、先端工具18Aを着脱可能に構成されたツールホルダ60Aが設けられている。また、この一端部は、円筒状に形成されており、ハンマドリル1Aとは別体として構成された補助ハンドル95Aが外周部に取り外し可能に装着される。ハンドル13Aは、ユーザによって把持される把持部131Aを含む。把持部131Aは、駆動軸A5に交差する方向(詳細には、概ね直交する方向)に延在し、本体ハウジング11Aに対して駆動軸A5から離れる方向に片持ち梁状に突出している。
【0064】
なお、以下の説明では、便宜上、駆動軸A5の延在方向をハンマドリル1Aの前後方向と規定し、ツールホルダ60Aが設けられている一端部側をハンマドリル1Aの前側、反対側をハンマドリル1Aの後側と規定する。また、駆動軸A5に直交し、把持部131Aの延在方向に対応する方向を上下方向と規定し、把持部131Aの基端部側を上側、把持部131Aの突出端側を下側と規定する。把持部131Aの下側には、モータ2Aに外部電源からの電力供給を行うための電源ケーブル19が配置されている。把持部131Aの前部には、押圧操作によってモータ2を駆動するように構成された、トリガ14が設けられている。
【0065】
本体ハウジング11Aは、モータ収容部111Aと、駆動機構収容部112Aとを含む。
【0066】
図5及び図6に示すように、モータ収容部111Aは、モータ2Aを収容する。モータ2Aは、ステータ及びロータを含むモータ本体部20と、ロータから延設されたモータシャフト25Aとを含む。本実施形態では、モータシャフト25Aの回転軸A6は、駆動軸A5と平行に配置されて前後方向に延在している。モータシャフト25の前端部及び後端部は、それぞれ、モータ収容部111Aに保持されたベアリングによって回転可能に支持されている。モータシャフト25Aの前端部には、駆動ギヤ29Aが形成されている。
【0067】
駆動機構収容部112Aは、全体としては駆動軸A5に沿って前後方向に延在する長尺の筒状体として形成され、駆動機構3Aを収容する。駆動機構収容部112Aの前側部分には、筒状のツールホルダ60Aが収容されている。ツールホルダ60Aは、本体ハウジング11Aに対して駆動軸A5周りに回転可能に本体ハウジング11Aに支持されている。ツールホルダ60Aは、第1実施形態のツールホルダ60と同様に、硬質皮膜を有しており、耐摩耗性に優れている。ツールホルダ60Aの詳細については後述する。
【0068】
駆動機構3Aは、運動変換機構30Aと、打撃要素36Aと、回転伝達機構40Aとを備える。
【0069】
運動変換機構30Aは、モータシャフト25Aの回転運動を直線運動に変換して打撃要素36Aに伝達するように構成されている。本実施形態では、図6に示すように、運動変換機構30Aは、中間シャフト32Aと、回転体33Aと、揺動部材34Aと、ピストンシリンダ35Aとを備える。中間シャフト32Aは、モータシャフト25Aと平行に、前後方向に延在するように配置されている。中間シャフト32Aの前端部と後端部は、本体ハウジング11Aに保持された2つの軸受によって回転可能に支持されている。回転体33Aは、中間シャフト32Aの外周部に取り付けられており、中間シャフト32Aと一体的に回転可能である。揺動部材34Aは、回転体33Aの外周部に取り付けられ、回転体33Aの回転に伴って前後方向に揺動される。ピストンシリンダ35Aは、有底筒状に形成され、ツールホルダ60A内に前後方向に摺動可能に保持されている。ピストンシリンダ35Aは、揺動部材34Aの揺動に伴って前後方向に往復移動される。
【0070】
打撃要素36Aは、第1実施形態と同様に、ストライカ361Aと、インパクトボルト362Aとを含む。本実施形態では、打撃要素36Aは、ツールホルダ60A内に収容されている。ストライカ361Aは、ツールホルダ60Aに収容されたピストンシリンダ35A内に、前後方向に摺動可能に配置されている。ストライカ361とピストンシリンダ35Aとの間には、ストライカ361Aを直線状に移動させるための空気室365Aが形成されている。インパクトボルト362Aは、ストライカ361Aの運動エネルギを先端工具18Aに伝達するように構成されている。
【0071】
第1実施形態と同様に、モータ2Aが駆動され、ピストンシリンダ35Aが前方に向けて移動されると、空気室365Aの空気が圧縮されて内圧が上昇する。本実施形態では、ピストンシリンダ35Aは、いわゆるピストンとしての機能をも発揮する。ストライカ361Aは、空気バネの作用で高速に前方に押し出されてインパクトボルト362Aに衝突し、運動エネルギを先端工具18Aに伝達する。これにより、先端工具18Aは駆動軸A5に沿って直線状に駆動され、被加工物を打撃する。一方、ピストンシリンダ35Aが後方へ移動されると、空気室365Aの空気が膨張して内圧が低下し、ストライカ361Aが後方へ引き込まれる。ハンマドリル1Aは、運動変換機構30A及び打撃要素36Aにこのような動作を繰り返させることで、打撃動作を行う。
【0072】
回転伝達機構40Aは、モータシャフト25Aのトルクを、ツールホルダ60Aに伝達するように構成されている。第1実施形態と同様に、回転伝達機構40Aは、複数のギヤを含む減速ギヤ機構として構成されている。複数のギヤは、駆動ギヤ29Aと、被動ギヤ311Aと、第1ギヤ401Aと、第2ギヤ402Aとを含む。駆動ギヤ29Aは、モータシャフト25Aの前端に設けられている。被動ギヤ311Aは、中間シャフト32Aの後端部に設けられおり、駆動ギヤ29Aと噛合している。第1ギヤ401Aは、中間シャフト32Aの前端部に設けられている。第2ギヤ402Aは、ツールホルダ60Aの外周部に設けられており、第1ギヤ401Aと噛合している。本実施形態では、これらの減速ギヤ機構により、モータシャフト25A、中間シャフト32A、ツールホルダ60Aの順に、回転速度が低下する。
【0073】
本実施形態のハンマドリル1Aは、ドリルモードと、第1実施形態で説明したハンマモードとハンマドリルモードとの3つの動作モードのうち1つを選択可能に構成されている。ドリルモードは、運動変換機構30Aにおける動力の伝達が遮断され、回転伝達機構40Aのみが駆動されることで、ドリル動作のみが行われる動作モードである。
【0074】
以下、ツールホルダ60Aの詳細について説明する。まず、ツールホルダ60Aに装着される先端工具18Aについて説明する。先端工具18Aのシャンク181Aには、図8に示す断面視において、先端工具18Aの中心軸A7に向けて窪む円弧溝182Aと角溝183Aとが設けられている。円弧溝182A及び角溝183Aは、中心軸A7に沿って直線状に延びている。本実施形態では、先端工具18Aには、中心軸A7に対称な2つの円弧溝182Aと、中心軸A7周りの周方向に所定の間隔で設けられた2つの角溝183Aとが形成されている。なお、先端工具18Aの中心軸A7は、先端工具18Aがツールホルダ60Aに装着された状態において、駆動軸A5と概ね一致する。
【0075】
ツールホルダ60Aは、駆動軸A5に沿って延びる筒状の部材である。ツールホルダ60Aの筒壁601Aは、駆動軸A5方向における前側部分に設けられた小径部61Aと、後側部分に設けられた大径部62Aと、小径部61Aと大径部62Aとを接続する多段状の段差部63Aとを有する。大径部62Aの内径及び外径は、それぞれ、小径部61Aの内径及び外径よりも大きく形成されている。ツールホルダ60Aの外周は、本体ハウジング11Aに保持された軸受によって、本体ハウジング11Aに対して駆動軸A5周りに回転可能に支持されている。ツールホルダ60Aは、先端工具18に加え、打撃要素36A、ピストンシリンダ35Aを収容している。
【0076】
第1実施形態と同様に、ツールホルダ60Aには、筒壁601Aを径方向に貫通し駆動軸A5方向に直線状に延びる2つの長孔603Aが設けられている。また、長孔603Aには、抜け止め部材71が配置される(図5及び図6参照)。また、小径部61Aには、筒壁601Aの内周面602Aから径方向内側に向けて突出した突出部611Aが設けられている。突出部611Aは、駆動軸A5方向に直線状に延びている。突出部611Aは、2つの角溝183Aの周方向における位置に対応するように配置されている。突出部611Aは、駆動軸A5周りの周方向に沿った第1面613Aと、当該周方向に交差する第2面615Aとを有する。ツールホルダ60Aへの先端工具18Aの取付方法は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0077】
第1実施形態と同様に、回転伝達機構40Aによってツールホルダ60Aにモータ2Aの回転動力が伝達されてツールホルダ60Aが回転されると、突出部611Aは、角溝183Aの側面に当接してモータ2Aの回転動力を先端工具18Aに伝達する。より詳細には突出部611Aのうちの第2面615Aが、先端工具18Aの角溝183に当接し、モータ2Aの回転動力を先端工具18Aに伝達する。突出部611Aは、モータ2Aの回転動力を先端工具18Aに伝達するための回転伝達部として機能する。第2面615Aは、先端工具18Aにトルクを伝達する、トルク伝達部位(トルク伝達面)でもある。
【0078】
ツールホルダ60Aの材質及びツールホルダ60Aに形成された皮膜は、第1実施形態と同様である。つまり、ツールホルダ60Aは、炭素を含有し、鉄を主成分とする材料(鋼材)を鍛造することによって形成されている。また、皮膜は、周期律表における第5族に属する元素によって形成されている。皮膜は、TD処理によって形成することができる。なお、本実施形態では、ツールホルダ60Aの大径部62Aにおける内周面602Aの表面粗さは、他の部位の面の表面粗さと概ね等しい。
【0079】
以上で説明した第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、ツールホルダ60A及びハンマドリル1Aの耐久性が高められ、かつ、モータ2Aの回転軸A6が駆動軸A5と平行に配置されたハンマドリル1Aを提供することができる。
【0080】
また、ツールホルダ60Aは、先端工具18Aに加え、ピストンシリンダ35Aを収容可能に形成されている。そのため、ツールホルダ60Aに、先端工具18Aを収容して回転動力を伝達する機能と、ピストンシリンダ35Aを収容する機能とを含む複数の機能を発揮させることができる。また、ピストンシリンダ35Aを収容する部材を別途設ける構成と比較して、ハンマドリル1Aの部品点数を少なくすることができる。
【0081】
<対応関係>
上記実施形態の各構成要素と本開示の技術の各構成要素の対応関係を以下に示す。但し、実施形態の各構成要素は単なる一例であって、本開示の技術の各構成要素を限定するものではない。
ハンマドリル1、1Aは、「回転打撃工具」の一例である。
先端工具18、18Aは、「先端工具」の一例である。
駆動軸A1、A5は、「駆動軸」の一例である。
ツールホルダ60、60Aは、「ツールホルダ」の一例である。
突出部611、611A、第2面615、615Aは、「回転伝達部」の一例である。
筒壁601、601Aは、「筒壁」の一例である。
突出部611、611Aは、「突出部」の一例である。
インパクトボルト362、362Aは、「打撃子」の一例である。
ピストンシリンダ35Aは、「ピストン」の一例である。
大径部62は、「打撃子を収容する部位」の一例である。
内周面602、602Aは、「内周面」の一例である。
モータ2、2Aは、「モータ」の一例である。
回転軸A2、A6は、「回転軸」の一例である。
【0082】
<他の実施形態>
ツールホルダ60、60Aは、鍛造品でなくともよく、例えば、鋳造品であってもよい。
【0083】
ツールホルダ60、60Aの皮膜は、周期律表における第5族に属する元素の炭化物に限らず、クロム(Cr)の炭化物によって形成されていてもよい。クロム炭化物皮膜は、TD処理によって形成してもよい。この形態によっても、上述の実施形態と同様にツールホルダ60、60Aの耐久性を高めることができる。
【0084】
第1実施形態において、インパクトボルト362を収容する収容部位(大径部62)における内周面602の表面粗さは、他の部位の面の表面粗さと同じであってもよい。
【0085】
皮膜は、TD処理によって形成されなくともよい。例えば、皮膜は、PVD(Physical Vapor Deposition)や、CVD(Chemical Vapor Deposition)により形成されてもよい。
【0086】
皮膜は、ツールホルダ60、60A全体に形成されていなくともよく、先端工具18、18Aに回転を伝達するための部位に形成されていればよい。例えば、皮膜は、突出部611、611Aにのみ形成されていてもよいし、突出部611、611Aのうちの第2面615、615Aにのみ形成されていてもよい。
【0087】
ツールホルダ60、60Aの駆動軸A1、A5に対するモータ2、2Aの回転軸A2、A6の配置は、平行、直交以外の配置であってもよい。モータ2、2Aの回転軸A2、A6は、駆動軸A1、A5に対して所定の角度で交差していてもよい。
【0088】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0089】
1…ハンマドリル
1A…ハンマドリル
2…モータ
2A…モータ
3…駆動機構
3A…駆動機構
11…本体ハウジング
11A…本体ハウジング
13…ハンドル
13A…ハンドル
14…トリガ
18…先端工具
18A…先端工具
19…電源ケーブル
20…モータ本体部
25…モータシャフト
25A…モータシャフト
29…駆動ギヤ
29A…駆動ギヤ
30…運動変換機構
30A…運動変換機構
31…クランクシャフト
32…連接ロッド
32A…中間シャフト
33…ピストン
33A…回転体
34A…揺動部材
35…シリンダ
35A…ピストンシリンダ
36…打撃要素
36A…打撃要素
40…回転伝達機構
40A…回転伝達機構
41…中間シャフト
46…スリーブ
60…ツールホルダ
60A…ツールホルダ
61…小径部
61A…小径部
62…大径部
62A…大径部
63…段差部
63A…段差部
71…抜け止め部材
95A…補助ハンドル
111…モータ収容部
111A…モータ収容部
112…駆動機構収容部
112A…駆動機構収容部
131…把持部
131A…把持部
181…シャンク
181A…シャンク
182…円弧溝
182A…円弧溝
183…角溝
183A…角溝
311…被動ギヤ
311A…被動ギヤ
312…クランクピン
314…第1ギヤ
361…ストライカ
361A…ストライカ
362…インパクトボルト
362A…インパクトボルト
365…空気室
365A…空気室
368…弾性部材
391…モード切替ノブ
401A…第1ギヤ
402A…第2ギヤ
411…第2ギヤ
412…小ベベルギヤ
413…大ベベルギヤ
461…ピン
601…筒壁
601A…筒壁
602…内周面
602A…内周面
603…長孔
603A…長孔
611…突出部
611A…突出部
613…第1面
613A…第1面
615…第2面
615A…第2面
A1…駆動軸
A2…回転軸
A3…回転軸
A4…中心軸
A5…駆動軸
A6…回転軸
A7…中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8