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特許7585100圧力緩和部材、コネクタ及び輸液チューブセット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】圧力緩和部材、コネクタ及び輸液チューブセット
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/175 20060101AFI20241111BHJP
   A61M 5/14 20060101ALI20241111BHJP
   A61M 5/168 20060101ALI20241111BHJP
   A61M 39/10 20060101ALI20241111BHJP
   F16L 55/04 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
A61M5/175
A61M5/14 500
A61M5/168
A61M39/10 100
F16L55/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021038485
(22)【出願日】2021-03-10
(65)【公開番号】P2022138549
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】水野 慎一
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-502161(JP,A)
【文献】特開平08-121672(JP,A)
【文献】特開昭63-293396(JP,A)
【文献】特開2014-138866(JP,A)
【文献】特開2015-139508(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0136354(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/175
A61M 5/14
A61M 5/168
A61M 39/10
F16L 55/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸液ラインに連通し前記輸液ラインの薬液を流通させると共に、前記輸液ラインの圧力に応じて弾性変形して膨張する中空弾性体と、
前記中空弾性体の外表面と当接して前記中空弾性体の膨張を規制する膨張規制機構と、
前記中空弾性体の膨張状態から元の形状への復元を促す復帰機構と、
を備え
前記膨張規制機構は、
対向配置され、前記中空弾性体を挟み込むように当接する一対の押圧板と、
前記押圧板を貫通し前記押圧板の変位方向を案内する軸棒と、
前記軸棒の一端と他端とに設けられ、前記押圧板の最大可動範囲を規制する規制部と、
を備え、
前記軸棒は、外周部にネジ溝を有し、
前記規制部は、前記ネジ溝に螺合するネジ構造を有し、
前記規制部の位置が前記ネジ溝及び前記ネジ構造により調整可能である、圧力緩和部材。
【請求項2】
請求項記載の圧力緩和部材であって、さらに前記膨張規制機構を覆う筐体を有し、前記規制部は、前記筐体に固定されている、圧力緩和部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の圧力緩和部材であって、前記復帰機構は、弾性体よりなる圧力緩和部材。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の圧力緩和部材であって、前記復帰機構は一対の前記押圧板の間に架け渡され、一対の前記押圧板を互いに接近するように張力を作用させる弾性部材よりなる、圧力緩和部材。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の圧力緩和部材と、
血管に留置されるカテーテルに接続可能なコネクタ本体部と、を備え、
前記コネクタ本体部の基端側に前記圧力緩和部材が一体的に設けられている、コネクタ。
【請求項6】
請求項記載のコネクタであって、前記コネクタ本体部は前記カテーテルに接続される雄ルアー部を有する、コネクタ。
【請求項7】
請求項5又は6記載のコネクタであって、前記コネクタ本体部の基端側には、前記圧力緩和部材を通じて輸液チューブが接続可能である、コネクタ。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の圧力緩和部材と、
血管に留置されるカテーテルに接続可能なコネクタ本体部と、
前記コネクタ本体部の基端側に接続される輸液チューブと、を備え、
前記コネクタ本体部と前記輸液チューブとが前記圧力緩和部材を介して接続された輸液チューブセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液ラインに設けられる圧力緩和部材、コネクタ及び輸液チューブセットに関する。
【背景技術】
【0002】
患者への薬液、生理食塩水等の投与に輸液チューブセットが用いられている。輸液チューブセットには、患者に穿刺されて患者の体内に輸液を投与する輸液投与部(カテーテル)と、輸液投与部の基端側に接続された輸液チューブとを有している(例えば、特許文献1)。輸液チューブと輸液投与部とは、コネクタを介して接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-334280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
輸液チューブセットを血管造影等に使用する場合には、輸液チューブ及びカテーテルを通じて患者の血管に造影剤の投与が行われる。ところが、造影剤は比較的粘度が高いため、カテーテルやコネクタ等に比較的高い圧力が作用することが有り、カテーテルやコネクタの破損や、コネクタの接続部からの薬液漏洩が生じるおそれがある。
【0005】
また、圧力によるカテーテルやコネクタの破損や漏洩は、造影剤以外の粘度の高い薬液の投与の際にも生じるおそれがある。
【0006】
そこで、一実施形態は、粘度の高い輸液を投与する際の過大な圧力の発生を防止して各部の破損及び輸液の漏洩を防止できる、圧力緩和部材、コネクタ及び輸液チューブセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の開示の一観点は、輸液ラインに連通し前記輸液ラインの薬液を流通させると共に、前記輸液ラインの圧力に応じて弾性変形して膨張する中空弾性体と、前記中空弾性体の外表面と当接して前記中空弾性体の膨張を規制する膨張規制機構と、前記中空弾性体の膨張状態から元の形状への復元を促す復帰機構と、を備える圧力緩和部材にある。
【0008】
別の一観点は、上記観点の圧力緩和部材と、血管に留置されるカテーテルに接続可能なコネクタ本体部と、を備え、前記コネクタ本体部の基端側に前記圧力緩和部材が一体的に設けられているコネクタにある。
【0009】
別の一観点は、上記観点の圧力緩和部材と、血管に留置されるカテーテルに接続可能なコネクタ本体部と、前記コネクタ本体部の基端側に接続される輸液チューブと、を備え、前記コネクタ本体部と前記輸液チューブとが前記圧力緩和部材を介して接続された輸液チューブセットにある。
【発明の効果】
【0010】
上記の圧力緩和部材、コネクタ及び輸液チューブセットによれば、粘度の高い輸液を投与する際の急激な圧力の上昇を緩和して各部の破損及び輸液の漏洩を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る輸液チューブセットの説明図である。
図2図1のカテーテル及びカテーテルハブの使用状態を示す説明図である。
図3図3Aは、図2の圧力緩和部材の縦断面図であり、図3B図3AのIIIB-IIIB線に対応する部分の断面図である。
図4図2の初期状態の圧力緩和部材の作用を示す説明図である。
図5図2の圧力が作用した状態の圧力緩和部材の作用を示す説明図である。
図6】第2実施形態に係る圧力緩和部材の断面図である。
図7】第3実施形態に係る圧力緩和部材の復帰機構及び膨張規制機構の説明図である。
図8図8Aは、第4実施形態に係る圧力緩和部材の復帰機構及び膨張規制機構の説明図であり、図8B図8Aの圧力緩和部材の作用を示す説明図である。
図9図9Aは、第5実施形態に係る圧力緩和部材の復帰機構及び膨張規制機構の説明図であり、図9B図9Aの圧力緩和部材の作用を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、圧力緩和部材、コネクタ及び輸液チューブセットについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
(第1実施形態)
本実施形態に係る輸液チューブセット100は、例えば、輸液の投与に用いられるものであり、輸液を収容する輸液バッグ102と、患者の血管に留置されるカテーテル組立体104と、輸液バッグ102とカテーテル組立体104とを繋ぐチューブ106(輸液ライン)とを備える。
【0014】
チューブ106の先端には、圧力緩和部材10及びコネクタ本体部13を含むコネクタ12が設けられており、チューブ106は、圧力緩和部材10及びコネクタ本体部13を介してカテーテル組立体104に接続される。コネクタ12は、例えばルアーロック式のコネクタである。図2に示すように、コネクタ本体部13には、カテーテルハブ108(カテーテル組立体104)の空洞部に装入される雄ルアー部15(ルアーチップ14)が設けられている。ルアーチップ14の外周部には、カテーテルハブ108の基端のフランジ部110が螺合するネジ機構が内周に形成された円筒状のルアーロック部16が形成されている。
【0015】
コネクタ本体部13の基端側には、接続ポート18が設けられており、その接続ポート18に本実施形態の圧力緩和部材10の一端が接続される。圧力緩和部材10の基端には、チューブ106が接続される。チューブ106は、圧力緩和部材10を介してコネクタ本体部13に接続されている。
【0016】
カテーテル組立体104は、図示のようにカテーテル112の先端を血管114に穿刺した状態で、粘着テープ116等で皮膚118に固定された状態で留置される。
【0017】
図1に示す輸液バッグ102から、造影剤や抗がん剤等の粘度の高い輸液を送り出すと、チューブ106の内部の圧力が急激に上昇することがあり、圧力緩和部材10が無い場合には、コネクタ本体部13及びカテーテル組立体104に過大な圧力が作用することがある。このような過大な圧力が作用すると、コネクタ本体部13とカテーテル組立体104の接続部分からの輸液の漏洩や、カテーテル組立体104の破損を生じることがある。本実施形態では、コネクタ本体部13の基端側に圧力緩和部材10を設けることにより、圧力上昇を緩和して、過大な圧力の発生を防ぐ。以下、圧力緩和部材10の詳細について説明する。
【0018】
本実施形態の圧力緩和部材10はコネクタ本体部13の基端側に接続された筐体20(図3A参照)を備えており、圧力緩和部材10はコネクタ本体部13と一体的に設けられている。すなわち、コネクタ12はその構成要素として圧力緩和部材10を含む。なお、圧力緩和部材10はコネクタ本体13と一体的である必要はなく、チューブ106の途上に個別の部品として接続されるように構成してもよい。
【0019】
図3Aに示すように、圧力緩和部材10の筐体20の内部には、中空弾性体22と、膨張規制機構24と、復帰機構26とが設けられている。このうち、中空弾性体22は、内部に薬液を流通できる筒状の弾性材料よりなる。中空弾性体22は、チューブ106よりも柔軟に形成されており、内部の圧力に応じて弾性変形して膨張又は収縮し、その直径を圧力に応じて可逆的に増大(又は減少)させることができる。
【0020】
中空弾性体22の先端側には、接続ポート18に接続された第1接続部22bが設けられている。第1接続部22bは、中空弾性体22の先端の一部を接続ポート18に液密及び気密に密着させる、かつ、中空弾性体22が膨張して接続ポート18から外れないように中空弾性体22を接続ポート18に接合している。中空弾性体22の基端側には、筐体20を貫通して基端側に延び出た筒状のチューブ接続ポート28が設けられている。チューブ接続ポート28は、チューブ106を接続可能な径に形成されている。中空弾性体22の基端側には、チューブ接続ポート28に接続された第2接続部22cが設けられている。第2接続部22cは、中空弾性体22の基端の一部をチューブ接続ポート28に液密及び気密に密着させる、かつ、中空弾性体22が膨張してチューブ接続ポート28から外れないように中空弾性体22をチューブ接続ポート28に接合している。
【0021】
膨張規制機構24は、中空弾性体22の外表面と当接して中空弾性体22の膨張を規制する部材である。具体的には、中空弾性体22を挟むように配置された一対の押圧板30と、押圧板30の移動方向を案内する軸棒32と、軸棒32の両端に設けられ、押圧板30の移動範囲を規制する規制部36と、を備える。
【0022】
押圧板30は、図3Bに示すように、矩形状に形成され、筐体20の内部の幅方向の大部分を占めており、中空弾性体22の長手方向の大部分を覆うように配置されている。押圧板30の四隅には、軸棒32が摺動自在に挿通する挿通孔30aが形成されている。各々の挿通孔30aには、軸棒32が挿入されている。挿通孔30aは、軸棒32の直径よりも僅かに大きな直径に形成されており、押圧板30は挿通孔30aを通じて軸棒32に対して摺動可能となっている。押圧板30の移動方向は、4本の軸棒32によって軸棒32の延在方向に案内される。押圧板30は、中空弾性体22が膨張した場合であっても、中空弾性体22を挟み込める幅を有している。
【0023】
軸棒32は、円柱状に形成されている。4つの軸棒32は、中空弾性体22の基端付近及び先端付近に2本ずつ設けられており、中空弾性体22を幅方向に避けた位置に配置されている。軸棒32は、例えば、第1接続部22bの横や第2接続部22cの横等の膨張した中空弾性体22と干渉しない位置に設けると好適である。なお、軸棒32の設置位置は、これに限定されるものではなく軸棒32と膨張した中空弾性体22とが当接してもよい。
【0024】
図3Aに示すように、軸棒32は、一対の押圧板30を厚さ方向(上下方向)に貫通している。軸棒32は、その一端と他端とが筐体20に接合されており、筐体20によって支持されている。また、軸棒32の一端と他端とには、押圧板30の移動範囲を形成する規制部36がそれぞれ設けられている。規制部36は、全ての軸棒32に設けられている。規制部36は、挿通孔30a(図3B参照)よりも大きな径に形成された円柱状部材であり、カシメ、ネジ止め、溶着等の方法で軸棒32に固定されている。押圧板30の挿通孔30aは、規制部36を通すことができないため、押圧板30の上下方向の移動範囲は規制部36によって規制される。本実施形態においては、規制部36は、筐体20に当接している。
【0025】
一対の押圧板30の間には、押圧板30及び中空弾性体22を初期位置に復帰させる復帰機構26が設けられている。本実施形態の復帰機構26は、コイルバネよりなり、対向する一対の押圧板30の間に架け渡されている。復帰機構26は、弾性復元力により、一対の押圧板30を互いに接近するように引っ張り力を作用させる。復帰機構26は、軸棒32の近傍の膨張した中空弾性体22と干渉しない位置に配置されている。復帰機構26の設置は、一対の押圧板30の間に限定されるものではない。復帰機構26は、一対の押圧板30の外側にそれぞれ配置されてもよい。本実施形態において、復帰機構26は軸棒32と同じく4本設けられている。また、復帰機構26は、コイルバネに限定されず、ゴム等の弾性材料で構成してもよい。
【0026】
本実施形態の圧力緩和部材10の作用について説明する。
【0027】
図4に示すように、中空弾性体22は、圧力が作用していない状態では、チューブ106と同程度の直径の円筒状となっており、膨張していない初期状態となっている。中空弾性体22を挟み込む一対の押圧板30は、復帰機構26の引っ張り力により、互いに接近する方向に付勢されており、中空弾性体22の外周面の一部と当接した状態に保たれる。
【0028】
図5に示すように、中空弾性体22の内部の流路22aの輸液の圧力が上昇すると、中空弾性体22が膨張する。中空弾性体22は、内部の圧力に応じて膨張し、一対の押圧板30を押し広げるようにして膨張する。中空弾性体22が膨張することにより、コネクタ12に作用する圧力が緩和され、コネクタ12からの輸液の漏洩やコネクタ12及びカテーテル組立体104の破損を防ぐことができる。
【0029】
中空弾性体22の膨張は、押圧板30が規制部36に当接することにより規制される。膨張規制機構24を設けない、中空弾性体22のみの場合には、中空弾性体22が膨張しすぎて破裂したり、元の状態への復元が困難になるおそれがある。これに対して、本実施形態では、膨張規制機構24により、中空弾性体22の膨張を規制することにより、中空弾性体22の破損を防ぐことができる。また、復帰機構26により、押圧板30を通じて中空弾性体22の初期状態への復元を促すことができるため、繰り返し生じる圧力増大にも容易に対応できる。
【0030】
本実施形態の圧力緩和部材10は以上のように構成され、以下その作用について説明する。
【0031】
本実施形態の圧力緩和部材10、コネクタ12及び輸液チューブセット100は、以下の効果を奏する。
【0032】
本実施形態の圧力緩和部材10は、輸液ライン(例えば、チューブ106)に連通し輸液ラインの薬液を流通させると共に、輸液ラインの圧力に応じて弾性変形して膨張する中空弾性体22と、中空弾性体22の外表面と当接して中空弾性体22の膨張を規制する膨張規制機構24と、中空弾性体22の膨張状態から元の形状への復元を促す復帰機構26と、を備える。
【0033】
上記の構成の圧力緩和部材10によれば、中空弾性体22の膨張により、輸液ラインの急激な圧力の急上昇を緩和できる。また、中空弾性体22の膨張を膨張規制機構24で規制することにより、中空弾性体22に永久歪が生じて復元不可能な径までの膨張を防止でき、中空弾性体22の破損を防止できる。さらに、復帰機構26により、中空弾性体22の初期形状への復帰を促すことができるため、繰り返し発生する圧力の上昇に対応することができる。
【0034】
上記の圧力緩和部材10において、膨張規制機構24は、中空弾性体22を挟み込むように当接する押圧部(例えば、押圧板30)を有してもよい。この構成によれば、中空弾性体22の膨張を規制して中空弾性体22の破損を防止できる。
【0035】
上記の圧力緩和部材10において、押圧部は、対向配置された一対の押圧板30を有してもよい。この構成によれば、中空弾性体22の外周部に押圧板30が面接触しつつ中空弾性体22の過剰な膨張を規制できるため、中空弾性体22の破損を防止できる。
【0036】
上記の圧力緩和部材10において、膨張規制機構24は、押圧部(押圧板30)の最大可動範囲を規制する規制部36を有してもよい。この構成によれば、中空弾性体22の過剰な膨張を規制して中空弾性体22の破損を防止できる。
【0037】
上記の圧力緩和部材10において、膨張規制機構24は、押圧部(押圧板30)を貫通し押圧部の変位方向を案内する軸棒32を有し、規制部36は軸棒32に設けられている。この構成によれば、規制部36は、軸棒32に沿った移動を規制することで押圧部の変位範囲を規制できる。
【0038】
上記の圧力緩和部材10において、さらに膨張規制機構24を覆う筐体20を有し、規制部36は、筐体20に固定されてもよい。
【0039】
上記の圧力緩和部材10において、復帰機構26は、弾性体で構成してもよい。より具体的には、一対の押圧板30の間に架け渡されたコイルバネとしてもよい。
【0040】
上記の圧力緩和部材10において、復帰機構26は押圧部(例えば、押圧板30)の中空弾性体22側の部位に設けられ、押圧部に張力を作用させる弾性部材(例えば、ゴム又はコイルバネ)で構成してもよい。
【0041】
本実施形態のコネクタ12は、上記の圧力緩和部材10と、血管114に留置されるカテーテル(カテーテル組立体104)に接続可能なコネクタ本体部13と、を備え、コネクタ本体部13の基端側に圧力緩和部材10が一体的に設けられている。この構成のコネクタ12によれば、コネクタ本体部13への急速な圧力の上昇による破損から保護することができる。
【0042】
本実施形態のコネクタ12は、コネクタ本体部13にカテーテル組立体104に接続される雄ルアー部15を有してもよい。
【0043】
本実施形態のコネクタ12は、コネクタ本体部13の基端側に、圧力緩和部材10を通じてチューブ106が接続可能である。
【0044】
本実施形態の輸液チューブセット100は、上記の圧力緩和部材10と、血管114に留置されるカテーテル組立体104に接続可能なコネクタ本体部13と、コネクタ本体部13の基端側に接続されるチューブ106と、を備え、コネクタ本体部13と前記チューブ106とが圧力緩和部材10を介して接続されている。この構成によれば、圧力緩和部材10により、コネクタ12及びカテーテル組立体104の液漏れや破損を防止できる。
【0045】
(第2実施形態)
本実施形態の圧力緩和部材10Aは、図6に示すように、押圧板30Aの構成において、図3Aの圧力緩和部材10と相違する。なお、本実施形態の圧力緩和部材10Aにおいて、図3Aの圧力緩和部材10と同様の構成については、同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0046】
図示のように、本実施形態の圧力緩和部材10Aにおいても、押圧板30Aで中空弾性体22の上下方向から挟み込むことで中空弾性体22の膨張を規制する膨張規制機構24を構成する。但し、本実施形態の押圧板30Aは、軸方向(長手方向)の中央で分離されており、先端側の部分と、基端側の部分とに分離されている。その他の点は、図3Aの圧力緩和部材10と同様である。
【0047】
以上に説明した本実施形態の圧力緩和部材10Aによっても、図3Aの圧力緩和部材10と同様の効果が得られる。加えて、圧力緩和部材10Aは、押圧板30Aが中央で分離されているため、圧力緩和部材10よりも組み立てが容易である。また、押圧板30よりも押圧板30Aで中空弾性体22を押圧している面積が小さいため、瞬間的な圧力の増加に対して、中空弾性体22が変形しやすい。そのため、圧力緩和性能(応答速度)が向上する。また、押圧板30Aは、中央部で分離される構成に限定されず、例えば、メッシュやパンチングプレート等の穴あき板で構成してもよい。
【0048】
(第3実施形態)
図7に示すように、本実施形態の圧力緩和部材10Bは、膨張規制機構24の軸棒32B及び規制部36Bにおいて、図3Aの圧力緩和部材10と異なる。なお、本実施形態の圧力緩和部材10Bにおいて、図3Aの圧力緩和部材10と同様の構成については、同一符号を付してその詳細な説明は省略する。また、図7において、筐体20の図示は省略する。
【0049】
本実施形態の軸棒32Bには、外周部にネジ溝40が形成されている。特に限定させるものではないが、ネジ溝40は、軸棒32Bの全範囲に形成されてよい。軸棒32Bの両端付近には、それぞれ規制部36Bが設けられている。規制部36Bは、ネジ溝40に螺合可能なネジ構造を有している。規制部36Bの位置は、規制部36Bを軸棒32Bの回りで回動させることで、調整可能となっている。
【0050】
以上のように、本実施形態では、軸棒32Bにおける規制部36Bの位置をネジ機構により、調整可能となっている。そのため、本実施形態の圧力緩和部材10Bによれば、押圧板30の変位可能な範囲を必要に応じて調整できる。
【0051】
(第4実施形態)
図8A及び図8Bに示すように、本実施形態の圧力緩和部材10Cは、押圧板30C、軸棒32Cにおいて、図3Aの圧力緩和部材10と異なる。なお、本実施形態の圧力緩和部材10Cにおいて、図3Aの圧力緩和部材10と同様の構成については、同一符号を付してその詳細な説明は省略する。また、図8A及び図8Bにおいて、筐体20の図示は省略する。
【0052】
図8Aに示すように、圧力緩和部材10Cは、一対の押圧板30C1、30C2で中空弾性体22を挟み込む構造となっている。押圧板30C1、30C2は、図の紙面に垂直な方向に延在しており、中空弾性体22の外周部に当接している。一方の押圧板30C1は、その一端がヒンジ42を介して軸棒32Cに対して回転可能に接続されている。また、他方の押圧板30C2は、その一端がヒンジ44を介して軸棒32Cに対して回転可能に接続されている。
【0053】
押圧板30C1の他端には、ヒンジ46を介して第1連結板48が回転可能に接続されている。押圧板30C2の他端には、ヒンジ50を介して第2連結板52が回転可能に接続されている。さらに、第1連結板48と第2連結板52とは、ヒンジ54により回転可能に接続されている。なお、ヒンジ42、44、46、50、54の回動軸は、図の紙面に垂直な向きである。第1連結板48及び第2連結板52は、押圧板30C1、30C2の変位範囲を規制する。すなわち、本実施形態の膨張規制機構24は、ヒンジ46、50、54で連結された第1連結板48及び第2連結板52を含む。
【0054】
一対の押圧板30C1、30C2の間には、コイルバネ(弾性部材)よりなる復帰機構26Cが架け渡されている。復帰機構26Cは、中空弾性体22の第1接続部22bの近傍や第2接続部22cの近傍(図3A参照)に設けられており、膨張した中空弾性体22と干渉しない位置に配置されている。
【0055】
以下、圧力緩和部材10Cの作用について説明する。初期状態では、復帰機構26Cの張力(弾性復元力)によって、押圧板30C1の他端部と押圧板30C2の他端部とが接近するように変位し、中空弾性体22の外周面が一対の押圧板30C1、30C2に当接する。中空弾性体22に圧力が作用し、中空弾性体22が膨張すると、図8Bに示すように、押圧板30C1、30C2の他端部同士が離間するように押し広げられる。それに伴って第1連結板48及び第2連結板52が開いてゆく。図示のように、第1連結板48及び第2連結板52が完全に伸び切ると、それ以上は押圧板30C1、30C2は開かなくなる。その際に、押圧板30C1、30C2は、略平行となる。すなわち第1連結板48及び第2連結板52によって、押圧板30C1、30C2の可動範囲が規制される。中空弾性体22の膨張可能範囲を規定する押圧板30C1、30C2の間隔は、ヒンジ42、44の間隔と、第1連結板48及び第2連結板52の長さとにより決定される。
【0056】
中空弾性体22の圧力が減少すると、復帰機構26Cの作用により、中空弾性体22及び押圧板30C1、30C2の初期位置へ復帰する。以上に説明した本実施形態の圧力緩和部材10Cによれば、第1実施形態の圧力緩和部材10と同様に、急激な圧力の上昇を緩和できる。また、圧力緩和部材10Cによれば、部品点数が削減され、組み立ても容易になる。
【0057】
(第5実施形態)
図9A及び図9Bに示すように、本実施形態の圧力緩和部材10Dは、概ね圧力緩和部材10Cと同様であるが、押圧板30Dにおいて、図8Aに示す圧力緩和部材10Cと異なる。なお、本実施形態の圧力緩和部材10Dにおいて、図8Aの圧力緩和部材10Cと同様の構成については、同一符号を付してその詳細な説明は省略する。また、図9A及び図9Bにおいて、筐体20の図示は省略する。
【0058】
図9Aに示すように、圧力緩和部材10Dは、一枚の押圧板30Dで中空弾性体22を挟み込む構造となっている。押圧板30Dは、屈曲部56で折り曲げられており、一端と他端とが挿通孔58を通じて軸棒32Cに取り付けられている。押圧板30Dは、図の紙面に垂直な方向に延在した板状部材よりなる。押圧板30Dは、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の可撓性を有する樹脂シートよりなる。押圧板30Dは、挿通孔58を通じて軸棒32Cに対して摺動自在に取り付けられている。
【0059】
押圧板30Dの一端と他端との間には、コイルバネ(弾性部材)よりなる復帰機構26Cが架け渡されている。復帰機構26Cは、軸棒32の近傍に設けられており、膨張した中空弾性体22と干渉しない位置に配置されている。なお、押圧板30Dは、初期状態において、図示の屈曲した形状に形付けられており、押圧板30Dの弾性的復元力のみでも初期状態に復元することができる。
【0060】
以下、圧力緩和部材10Dの作用について説明する。初期状態では、復帰機構26Cの張力(弾性復元力)によって、押圧板30Dの一端と他端が接近するように変位し、中空弾性体22の外周面が一対の押圧板30Dに当接する。中空弾性体22に圧力が作用し、中空弾性体22が膨張すると、図9Bに示すように、押圧板30Dの一端と他端とが離間するように押し広げられる。図示のように、押圧板30Dが規制部36に当接すると、それ以上は押圧板30Dが開かなくなる。その結果、押圧板30Dにより中空弾性体22の膨張が規制される。
【0061】
中空弾性体22の圧力が減少すると、復帰機構26Cの作用により、中空弾性体22が押圧板30Dによって押し戻され、中空弾性体22が初期の形状に復帰する。
【0062】
以上に説明した本実施形態の圧力緩和部材10Dによれば、第1実施形態の圧力緩和部材10と同様に、急激な圧力の上昇を緩和できる。また、圧力緩和部材10Dによれば、部品点数が削減され、組み立ても容易になる。
【0063】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0064】
10、10A、10B、10C、10D…圧力緩和部材
12…コネクタ 13…コネクタ本体部
20…筐体 22…中空弾性体
24…膨張規制機構 26、26C…復帰機構
30、30A、30C、30D…押圧板
32、32B、32C…軸棒 36、36B…規制部
100…輸液チューブセット 106…チューブ
112…カテーテル
図1
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図9