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特許7585101インクジェット印刷装置及びそのフィルタのメンテナンス方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置及びそのフィルタのメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20241111BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
B41J2/175 501
B41J2/175 201
B41J2/175 301
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021040196
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022139698
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】福井 民雄
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 雄一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅基
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-129008(JP,A)
【文献】特開2013-240984(JP,A)
【文献】特開2019-162731(JP,A)
【文献】特開2006-088575(JP,A)
【文献】特開2005-041050(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0044303(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のノズルを備えたインクジェットヘッドにインクを供給し、前記インクジェットヘッドから印刷媒体に対してインクを吐出して印刷を行うインクジェット印刷装置において、
前記インクを貯留するタンクと、
前記タンクと前記インクジェットヘッドとを連通接続した供給管と、
前記供給管に設けられ、前記タンクに貯留しているインクを前記インクジェットヘッドに送液するポンプと、
前記供給管の経路中に設けられたフィルタと、
前記ポンプを操作して、前記インクの送液を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記タンクのインクを前記インクジェットヘッドから吐出させる印刷動作の際には、前記タンクのインクを前記インクジェットヘッドに向けて送液するように前記ポンプを正駆動させ、前記フィルタの詰まりを改善する機能回復動作の際には、前記ポンプの下流側から前記タンクへインクが前記フィルタを逆流するように前記ポンプを逆駆動させ
前記供給管のうち、前記ポンプと前記インクジェットヘッドとの間でかつ前記フィルタよりも下流に設けられ、インク中の気泡を除去する脱気フィルタをさらに備え、
前記制御部は、前記機能回復動作の際には、前記供給管内における前記インクジェットヘッド側のインクと気体の界面が前記脱気フィルタの前記インクジェットヘッド側に位置するまで逆駆動させることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
複数個のノズルを備えたインクジェットヘッドにインクを供給し、前記インクジェットヘッドから印刷媒体に対してインクを吐出して印刷を行うインクジェット印刷装置において、
前記インクを貯留するタンクと、
前記タンクと前記インクジェットヘッドとを連通接続した供給管と、
前記供給管に設けられ、前記タンクに貯留しているインクを前記インクジェットヘッドに送液するポンプと、
前記供給管の経路中に設けられたフィルタと、
前記ポンプを操作して、前記インクの送液を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記タンクのインクを前記インクジェットヘッドから吐出させる印刷動作の際には、前記タンクのインクを前記インクジェットヘッドに向けて送液するように前記ポンプを正駆動させ、前記フィルタの詰まりを改善する機能回復動作の際には、前記ポンプの下流側から前記タンクへインクが前記フィルタを逆流するように前記ポンプを逆駆動させ
前記制御部は、インクが流動していない状態の継続時間である静置時間と、前記フィルタに捕集された成分を再分散させるのに必要なインクの逆流量との関係に基づいて前記逆駆動を行わせることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項3】
複数個のノズルを備えたインクジェットヘッドにインクを供給し、前記インクジェットヘッドから印刷媒体に対してインクを吐出して印刷を行うインクジェット印刷装置において、
前記インクを貯留するタンクと、
前記タンクと前記インクジェットヘッドとを連通接続した供給管と、
前記供給管に設けられ、前記タンクに貯留しているインクを前記インクジェットヘッドに送液するポンプと、
前記供給管の経路中に設けられたフィルタと、
前記ポンプを操作して、前記インクの送液を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記タンクのインクを前記インクジェットヘッドから吐出させる印刷動作の際には、前記タンクのインクを前記インクジェットヘッドに向けて送液するように前記ポンプを正駆動させ、前記フィルタの詰まりを改善する機能回復動作の際には、前記ポンプの下流側から前記タンクへインクが前記フィルタを逆流するように前記ポンプを逆駆動させ
前記供給管のうち、前記インクジェットヘッド側と前記ポンプ側の二箇所に設けられた液面センサとを備え、
前記制御部は、前記機能回復動作の際には、前記供給管中におけるインクの気液界面が前記二箇所の液面センサの間に収まるように、前記逆駆動させることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット印刷装置において、
前記制御部は、前記機能回復動作の際には、前記正駆動と前記逆駆動とを複数回繰り返すことを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット印刷装置において、
前記ポンプは、前記供給管の上流側に一端側が連通接続され、U字状部を介して前記供給管の下流側に他端側が連通接続された、弾性を有するチューブと、前記U字状部の中央から前記チューブの内周側を外周側に押圧する複数個のローラを備え、前記複数個のローラを回転駆動する回転部とを備えたチューブポンプであることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のインクジェット印刷装置において、
前記ポンプを逆駆動させることにより、前記フィルタに捕集されているインクの成分を前記供給管に貯留しているインクに再分散させ、前記印刷に利用することを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項7】
ポンプで送液することにより、インクジェットヘッドに対してタンクからフィルタを介してインクを供給し、前記インクジェットヘッドから印刷媒体に対してインクを吐出して印刷を行うインクジェット印刷装置のフィルタのメンテナンス方法において、
前記ポンプの下流側から前記タンクへインクが前記フィルタを逆流するように前記ポンプを逆駆動させて、前記フィルタの上流側に捕集している前記インクの成分を再分散させることにより、前記印刷に利用するとともに、前記フィルタの詰まりを改善する機能回復動作ステップを実施し
前記機能回復動作ステップは、インクが流動していない状態の継続時間である静置時間と、前記フィルタに捕集された成分を再分散させるのに必要なインクの逆流量との関係に基づいて前記逆駆動を行わせることを特徴とするインクジェット印刷装置のフィルタのメンテナンス方法。
【請求項8】
請求項7に記載のインクジェット印刷装置のフィルタのメンテナンス方法において、
前記機能回復動作ステップは、前記タンクのインクを前記インクジェットヘッドに向けて送液するように前記ポンプを動作させる正駆動と、前記逆駆動とを複数回繰り返すことを特徴とするインクジェット印刷装置のフィルタのメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出することにより印刷媒体に印刷を行うインクジェット印刷装置及びそのフィルタのメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、メインタンクと、ポンプと、フィルタと、サブタンクと、ヘッドと、供給管とを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。メインタンクには、画像を形成するためのインクが貯留されている。供給管は、メインタンクとヘッドとを連通接続し、ポンプと、フィルタと、サブタンクとがその順に設けられている。ポンプは、メインタンクからフィルタを介してサブタンクへインクを供給する。サブタンクは、ヘッドにインクを供給する。フィルタは、例えば、メインタンクへのインク補充作業時に混入したパーティクルや、供給管の接続箇所や可動部などから発生した、画像形成に貢献せず、ヘッドの詰まりの原因となるパーティクルを除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-195967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、インクジェット印刷装置において用いられるインクは、UV光によって乾燥するUVインクであれば、顔料、分散剤、モノマーなどの成分が分散されて構成されている。熱によって乾燥する水性顔料インクであれば、顔料、分散剤、安定剤、水などの成分で構成されている。フィルタは、例えば、これらの成分のうち、特に顔料やモノマーが緩やかに凝集することによってフィルタに捕集されて、フィルタを詰まらせることがある。これにより、従来の装置は、本来取り除くべきパーティクル以外のインク成分の凝集物によって不要にフィルタの交換時期が短くなることがある。そのため、フィルタの交換頻度が高くなって運用コストが高くなるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、フィルタの詰まりを改善することにより、フィルタの交換に起因する運用コストを低減できるインクジェット印刷装置及びそのフィルタのメンテナンス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、複数個のノズルを備えたインクジェットヘッドにインクを供給し、前記インクジェットヘッドから印刷媒体に対してインクを吐出して印刷を行うインクジェット印刷装置において、前記インクを貯留するタンクと、前記タンクと前記インクジェットヘッドとを連通接続した供給管と、前記供給管に設けられ、前記タンクに貯留しているインクを前記インクジェットヘッドに送液するポンプと、前記供給管の経路中に設けられたフィルタと、前記ポンプを操作して、前記インクの送液を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記タンクのインクを前記インクジェットヘッドから吐出させる印刷動作の際には、前記タンクのインクを前記インクジェットヘッドに向けて送液するように前記ポンプを正駆動させ、前記フィルタの詰まりを改善する機能回復動作の際には、前記ポンプの下流側から前記タンクへインクが前記フィルタを逆流するように前記ポンプを逆駆動させ、前記供給管のうち、前記ポンプと前記インクジェットヘッドとの間でかつ前記フィルタよりも下流に設けられ、インク中の気泡を除去する脱気フィルタをさらに備え、前記制御部は、前記機能回復動作の際には、前記供給管内における前記インクジェットヘッド側のインクと気体の界面が前記脱気フィルタの前記インクジェットヘッド側に位置するまで逆駆動させることを特徴とするものである。
【0007】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、制御部は、印刷動作の際には、タンクのインクをインクジェットヘッドに向けて送液するようにポンプを正駆動させる。制御部は、機能回復動作の際には、ポンプの下流側からタンクへインクがフィルタを逆流するようにポンプを逆駆動させる。これにより、印刷動作の際にフィルタに捕集されたインクの成分を供給管中のインクに再分散させることができる。したがって、フィルタの詰まりを改善できるので、フィルタの交換に起因する運用コストを低減できる。その結果、画像形成に貢献せず、インクジェットヘッドの詰まりの原因となるパーティクルを除去するというフィルタの本来の目的でフィルタを最大限に活用できる。
【0009】
制御部は、機能回復動作の際には、供給管内におけるインクジェットヘッド側のインクと気体の界面が脱気フィルタのインクジェットヘッド側に位置するまで逆駆動させる。これにより、インクと気体の界面が脱気フィルタ内に位置することがない。そのため、機能回復動作を行っても、脱気フィルタがインクで満たされたままにできる。したがって、インクに気泡が混入することを防止できる。
【0010】
また、本発明において、前記制御部は、前記機能回復動作の際には、前記正駆動と前記逆駆動とを複数回繰り返すことが好ましい(請求項4)
【0011】
制御部が機能回復動作を行う際に、正駆動と逆駆動とを複数回繰り返す。これにより、供給管内のインクを、フィルタを通して十分に撹拌することができる。そのため、フィルタに捕集されたインクの成分を確実にインクに再分散させることができる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、複数個のノズルを備えたインクジェットヘッドにインクを供給し、前記インクジェットヘッドから印刷媒体に対してインクを吐出して印刷を行うインクジェット印刷装置において、前記インクを貯留するタンクと、前記タンクと前記インクジェットヘッドとを連通接続した供給管と、前記供給管に設けられ、前記タンクに貯留しているインクを前記インクジェットヘッドに送液するポンプと、前記供給管の経路中に設けられたフィルタと、前記ポンプを操作して、前記インクの送液を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記タンクのインクを前記インクジェットヘッドから吐出させる印刷動作の際には、前記タンクのインクを前記インクジェットヘッドに向けて送液するように前記ポンプを正駆動させ、前記フィルタの詰まりを改善する機能回復動作の際には、前記ポンプの下流側から前記タンクへインクが前記フィルタを逆流するように前記ポンプを逆駆動させ、前記制御部は、インクが流動していない状態の継続時間である静置時間と、前記フィルタに捕集された成分を再分散させるのに必要なインクの逆流量との関係に基づいて前記逆駆動を行わせることを特徴とするものである。
【0013】
静置時間と再分散に必要な逆流量との関係には、一定の相関がある。そこで、静置時間に応じて必要なインクの逆流量が決められる。したがって、機能回復動作を最小限の逆流量で行うことができるので、機能回復動作を効率的に行うことができる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、複数個のノズルを備えたインクジェットヘッドにインクを供給し、前記インクジェットヘッドから印刷媒体に対してインクを吐出して印刷を行うインクジェット印刷装置において、前記インクを貯留するタンクと、前記タンクと前記インクジェットヘッドとを連通接続した供給管と、前記供給管に設けられ、前記タンクに貯留しているインクを前記インクジェットヘッドに送液するポンプと、前記供給管の経路中に設けられたフィルタと、前記ポンプを操作して、前記インクの送液を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記タンクのインクを前記インクジェットヘッドから吐出させる印刷動作の際には、前記タンクのインクを前記インクジェットヘッドに向けて送液するように前記ポンプを正駆動させ、前記フィルタの詰まりを改善する機能回復動作の際には、前記ポンプの下流側から前記タンクへインクが前記フィルタを逆流するように前記ポンプを逆駆動させ、前記供給管のうち、前記インクジェットヘッド側と前記ポンプ側の二箇所に設けられた液面センサとを備え、前記制御部は、前記機能回復動作の際には、前記供給管中におけるインクの気液界面が前記二箇所の液面センサの間に収まるように、前記逆駆動させることを特徴とするものである。
【0015】
制御部は、機能回復動作の際には、供給管中におけるインクの気液界面が二箇所の液面センサの間に収まるように逆駆動させる。したがって、インクに気泡が混入したり、逆駆動をし過ぎたりすることがない。よって、確実に機能回復動作を行うことができる。
【0016】
また、本発明において、前記ポンプは、前記供給管の上流側に一端側が連通接続され、U字状部を介して前記供給管の下流側に他端側が連通接続された、弾性を有するチューブと、前記U字状部の中央から前記チューブの内周側を外周側に押圧する複数個のローラを備え、前記複数個のローラを回転駆動する回転部とを備えたチューブポンプであることが好ましい(請求項5)
【0017】
チューブポンプの回転部を一方側に回転させると、チューブポンプが正駆動できる。また、チューブポンプの回転部を他方側に回転させると、チューブポンプを逆駆動できる。そのため、逆止弁や開閉弁の切り換え動作を行うことなく、印刷動作及び機能回復動作を行わせることができる。したがって、構成を簡単化できるので、低コストで目的を達成できる。
【0018】
また、本発明において、前記ポンプを逆駆動させることにより、前記フィルタに捕集されているインクの成分を前記供給管に貯留しているインクに再分散させ、前記印刷に利用することが好ましい(請求項6)
【0019】
インクの成分を供給管中のインクに再分散させるので、インクの特性変化を抑制できる。その結果、インクの特性変化に起因する悪影響を受けないので、印刷において長期間にわたって同じ品質を維持できる。
【0020】
また、請求項7に記載の発明は、ポンプで送液することにより、インクジェットヘッドに対してタンクからフィルタを介してインクを供給し、前記インクジェットヘッドから印刷媒体に対してインクを吐出して印刷を行うインクジェット印刷装置のフィルタのメンテナンス方法において、前記ポンプの下流側から前記タンクへインクが前記フィルタを逆流するように前記ポンプを逆駆動させて、前記フィルタの上流側に捕集している前記インクの成分を再分散させることにより、前記印刷に利用するとともに、前記フィルタの詰まりを改善する機能回復動作ステップを実施し、
前記機能回復動作ステップは、インクが流動していない状態の継続時間である静置時間と、前記フィルタに捕集された成分を再分散させるのに必要なインクの逆流量との関係に基づいて前記逆駆動を行わせることを特徴とするものである。
【0021】
[作用・効果]請求項7に記載の発明によれば、機能回復動作ステップにより、ポンプを逆駆動させて、フィルタの上流側に捕集しているインクの成分を再分散させることにより、印刷に利用するとともに、フィルタの詰まりを改善する。したがって、フィルタの交換に起因する運用コストを低減できる。その結果、画像形成に貢献せず、ヘッドの詰まりの原因となるパーティクルを除去するというフィルタの本来の目的でフィルタを最大限に活用できる。また、インクの成分をインクに供給管中のインクに再分散させるので、インクの特性変化を抑制できる。その結果、インクの特性変化に起因する悪影響を受けないので、印刷において長期間にわたって同じ品質を維持できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るインクジェット印刷装置によれば、制御部は、印刷動作の際には、タンクのインクをインクジェットヘッドに向けて送液するようにポンプを正駆動させる。制御部は、機能回復動作の際には、ポンプの下流側からタンクへインクがフィルタを逆流するようにポンプを逆駆動させる。これにより、印刷動作の際にフィルタに捕集されたインクの成分を供給管中のインクに再分散させることができる。したがって、フィルタの詰まりを改善できるので、フィルタの交換に起因する運用コストを低減できる。その結果、画像形成に貢献せず、インクジェットヘッドの詰まりの原因となるパーティクルを除去するというフィルタの本来の目的でフィルタを最大限に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例1に係るインクジェット印刷システムの全体構成図である。
図2】実施例1に係るインクジェット印刷システムにおけるインク供給装置のブロック図である。
図3】静置時間と流量低下率との関係を示すグラフである。
図4】静置時間と逆流量との関係を示す表である。
図5】(a)は、印刷動作時におけるフィルタの状態を模式的に示し、(b)は、機能回復動作時におけるフィルタの状態を模式的に示し、(c)機能回復処理後におけるフィルタの状態を模式的に示したものである。
図6】処理の流れを示すフローチャートである。
図7】実施例2に係るインクジェット印刷システムにおけるインク供給装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下にインクジェット印刷装置の実施例について説明する
【実施例1】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施例1について説明する。
【0026】
図1は、実施例1に係るインクジェット印刷システムの全体構成図である。
【0027】
実施例1に係るインクジェット印刷システムは、給紙部1と、インクジェット印刷装置3と、排紙部5とを備えている。給紙部1は、ロール状の連続紙WPを水平軸周りに回転可能に保持している。給紙部1は、インクジェット印刷装置3に対して連続紙WPを巻き出して供給する。インクジェット印刷装置3は、連続紙WPに対してインクを吐出して画像を形成することによって印刷を行い、連続紙WPを排紙部5に対して送り出す。排紙部5は、インクジェット印刷装置3で印刷された連続紙WPを水平軸周りに巻き取る。
【0028】
ここでは、給紙部1によって連続紙WPが送り出されて搬送される方向を搬送方向Xとする。また、搬送方向Xに直交する水平方向を幅方向Yとする。上述した給紙部1は、搬送方向Xにおけるインクジェット印刷装置5の上流側に配置されている。上述した排紙部5は、搬送方向Xにおけるインクジェット印刷装置5の下流側に配置されている。
【0029】
インクジェット印刷装置3は、給紙部1からの連続紙WPを取り込むための駆動ローラ7を上流側に備えている。駆動ローラ7によって給紙部1から取り込まれた連続紙WPは、複数個の搬送ローラ9によって搬送方向Xに送られ、下流側の排紙部5に向かって搬送される。最下流の搬送ローラ9と排紙部5との間には、駆動ローラ11が配置されている。この駆動ローラ11は、搬送ローラ9上を搬送されている連続紙WPを排紙部5に向かって送り出す。
【0030】
インクジェット印刷装置3は、駆動ローラ7と駆動ローラ11との間に、印刷ユニット13と、乾燥部15と、検査部17とを上流側から搬送方向Xに沿ってその順に備えている。印刷ユニット12は、連続紙WPに印刷を行う。乾燥部15は、印刷ユニット13によって印刷された連続紙WPの乾燥を行う。UVインクを使用するインクジェット装置であれば乾燥部15はUVランプやUV-LEDで構成され、水性インクを使用するインクジェット装置であれば乾燥部15はヒートローラーや熱風機で構成される。検査部17は、連続紙WPに印刷された部分に汚れや抜け等がないかを検査する。
【0031】
印刷ユニット13は、インクを連続紙WPに対して吐出する複数個のノズルを有するインクジェットヘッド19を備えている。インクジェットヘッド19は、一般的に、連続紙WPの搬送方向Xに沿って複数個配置されている。例えば、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の合計4個の印刷ユニット13を備えている。但し、以下の説明においてはインクジェット印刷装置3が、1個の印刷ユニット13だけを備えている構成を例にとって説明する。また、印刷ユニット13は、連続紙WPの幅方向Yに、連続紙WPの幅を超える長さを有する。印刷ユニット13は、幅方向Yに移動することなく連続紙WPの幅方向における印刷領域を印刷できるだけのインクジェットヘッド19を備えている。インクジェットヘッド19は、サブタンク21を介してインク供給装置23からインクの供給を受ける。
【0032】
インクジェット印刷装置3は、駆動ローラ7,11、印刷ユニット13、乾燥部15、検査部17、インク供給装置23を統括的に制御する制御部25を備えている。制御部25には、カウント部27と、記憶部29と、演算部31とが直接的あるいは間接的に接続されている。制御部25は、例えば、CPUやメモリによって構成されている。カウント部27は、インクジェット印刷装置3が印刷処理を停止している時間などを計測する。記憶部29は、詳細を後述するが、静置時間と逆流量との関係などを記憶している。演算部21は、カウント部27による計測時間と、静置時間と逆流量との関係とに基づいて、インク供給装置23を動作させるための逆駆動の動作時間を求めるための演算を行う。
【0033】
なお、上述した連続紙WPが本発明における「印刷媒体」に相当する。
【0034】
ここで図2を参照して、インク供給装置23について説明する。図2は、実施例1に係るインクジェット印刷システムにおけるインク供給装置のブロック図である。
【0035】
インク供給装置23は、メインタンク33と、開閉弁35と、供給管37と、ポンプ39と、フィルタ41と、脱気フィルタ43と、液送量検出部45とを備えている。
【0036】
メインタンク33は、インクを貯留する容器である。メインタンク33には、この装置のオペレータがインクを適宜に補充する。開閉弁35は、制御部25により開閉が操作される。開閉弁35は、供給管37におけるインクの流通を許容したり遮断したりする。供給管37は、メインタンク33とインクジェットヘッド19とを連通接続している。供給管37は、インクが流通する。
【0037】
ポンプ39は、メインタンク33及び供給管37に貯留しているインクを圧送する。このポンプ39は、チューブポンプ(ローラーポンプ、ペリスタルティックポンプ、チュービングポンプとも呼ばれる)であることが好ましい。ポンプ39は、供給部47と、送出部49と、チューブ51と、回転部53と、筐体55と、モータ57とを備えている。
【0038】
供給部47及び送出部49は、供給管37が連通接続されている。供給部47と送出部49とは、チューブ51の両端部に連通接続されている。供給部47は、ポンプ39でインクを通常に供給する動作時における供給管37の上流側に連通接続されている。インクを通常に供給する動作時とは、例えば、印刷動作時であり、インクをメインタンク33からインクジェットヘッド19側へ送る動作のことをいう。送出部49は、ポンプ39でインクを通常に供給する動作時における供給管37の下流側に連通接続されている。チューブ51は、U字状を呈する形状とされて供給部47と送出部49とを連通接続している。チューブ51は、弾性体で構成されている。そのため、チューブ51は、外部から押圧されると流路断面積が縮小し、押圧を解除すると通常の流路断面積に戻る。チューブ51は、U字状の中央部に回転部53を備えている。チューブ51は、U字状の外周面が筐体55の内周面に沿って当接するように筐体55に収められている。回転部53は、十字型の回転枠59と、複数個のローラ60とを備えている。各ローラ60は、回転枠59の各先端部に回転自在に取り付けられている。回転部53は、各ローラ60がチューブ51の内周面を外周面側に押圧し、チューブ51の流路断面積を小さく絞りつつ回転する。この回転部53の一方側への回転動作により、チューブ51内のインクが供給部47から送出部49へ送られる。また、回転部53の他方側への回転動作により、チューブ51内のインクが送出部49から供給部47へ送られる。回転部53は、モータ57によって回転駆動される。モータ57は、制御部25により回転方向や回転速度が操作される。
【0039】
上述したポンプ39は、連続送液が可能なため、大量のインクを送ることに適している。また、このポンプ39は、基本的には回転部53の回転数と流量が比例し、回転部53の回転数が一定であれば、流量も一定になるため、定量送液がしやすい利点がある。
【0040】
フィルタ41は、供給管37のうち、ポンプ39よりも、インクを通常に供給する動作時における下流側に設けられている。フィルタ41は、インク中に混在している、画像形成に貢献せず、インクジェットヘッド19の詰まりの原因となるパーティクルを除去するために設けられている。但し、このフィルタ41は、メインタンク33に含まれているインクの一部の成分を捕集してしまう。インクは、顔料、分散剤、モノマーなどの成分が分散されて構成されている。これらの成分のうち、特に顔料やモノマーは、インク中において緩やかに凝集することがある。すると、顔料やモノマーが分散している状態よりも大きな凝集物となる。フィルタ41は、本来取り除くべきパーティクル以外のインク成分の凝集物を捕集して、パーティクルとともに詰まりを生じることがある。本実施例では、フィルタ41が供給管37に対して、インクを通常に供給する動作に下方から上方に向かってインクが流通する姿勢で取り付けられている。そのため、フィルタ41は、後述する逆駆動時に、捕集されている凝集物に重力も加わって、凝集物が離脱されやすくなっている。
【0041】
脱気フィルタ43は、供給管37のうち、フィルタ41よりも、インクを通常に供給する動作時における下流側に設けられている。脱気フィルタ43は、供給管37を流通しているインクに含まれている気泡を除去する。インク中に気泡が含まれていると、インクジェットヘッド19からインクが適切に吐出されない不具合を生じる恐れがある。この脱気フィルタ43を設けることにより、インク中に気泡が含まれていても気泡が除去されるので、品質高く印刷を行うことができる。
【0042】
サブタンク21は、供給管37のうち、脱気フィルタ43よりも、インクを通常に供給する動作時における下流側に設けられている。サブタンク21には、レベルセンサー(不図示)が設けられている。インクジェットヘッド19におけるインクの消費に伴い、サブタンク21内のインク量が一定値を下回ると、制御部25がこれを検知してメインタンク33からインクを供給させ、サブタンク21のインク量を一定量になるまで回復させる。
【0043】
フィルタ41と脱気フィルタ43の間には、液送量検出部45が設けられている。この液送量検出部45は、供給管37を流通するインクの量を検出する。
【0044】
なお、上述したメインタンク33が本発明における「タンク」に相当する。
【0045】
図1に戻る。カウント部27は、供給管37におけるインクの流通が停止した時間を計測する。具体的には、制御部25が液送量検出部45における液送量が0になった時点からカウント部27に計時を開始させる。そして、再び液送量が0を越えた時点で制御部35は、カウント部27に計時時間をリセットさせる。
【0046】
記憶部29について説明する。ここで、図3図5を参照する。図3は、静置時間と流量低下率との関係を示すグラフである。図4は、静置時間と逆流量との関係を示す表である。図5(a)は、印刷動作時におけるフィルタの状態を模式的に示し、図5(b)は、機能回復動作時におけるフィルタの状態を模式的に示し、図5(c)機能回復処理後におけるフィルタの状態を模式的に示したものである。
【0047】
ここでは、インクの液送量が0になった状態における経過時間を静置時間とする。そして、静置時間と、フィルタ41における詰まりに起因する流量の低下の割合を示す流量低下率との関係の一例を示すのが図3である。図3から明らかなように、静置時間が増大すると、流量低下率が増大する。このときにおける静置時間と流量低下率の具体的な数値を図4に示す。このように静置時間が増大すると流量低下率が増大するのは、特に、インクが流動しない静置時間が長くなるにつれて、インク中に分散しているはずの顔料やモノマーの一部が緩やかに凝集するからである。そして、凝集した顔料やモノマーが大きな凝集物となって、フィルタ41に捕集されることが主たる原因である。
【0048】
装置が稼働してインクがインクジェットヘッド19から連続紙WPに吐出されると、インクが消費される。すると、フィルタ41では、図5(a)に示すように、インク中に混入しているパーティクルと、インク中の成分の一部が緩やかに凝集した凝集物とが捕集される。そのため、フィルタ41では、圧力損失が生じ、フィルタ41を通過するインクの流量が減少する。フィルタ41を交換した直後における流量を100とした場合に、その後にインクの供給を停止した静置時間が増えると、インクの流量低下率が増大する。
【0049】
発明者等は、流量が低下した場合に、どれだけの量のインクをフィルタ41に逆流させると、フィルタ41の詰まりを解消できるかについて実験を行った。その結果、例えば、図4における逆流量に示すように、静置時間に応じた逆流量とすると、フィルタ41における詰まりを改善できることがわかった。その結果に基づいて、記憶部29には、静置時間と逆流量との関係を示すデータが予め記憶されている。制御部25は、装置が起動された際、あるいは印刷ジョブが停止された状態から再び印刷ジョブの印刷処理が開始された際には、その際の静置時間をカウント部27から読み出す。続いて、制御部25は、読み出した載置時間を演算部31に与える。演算部31は、与えられた載置時間と、記憶部29における載置時間と逆流量との関係とに基づいて、逆流量を求める。演算部31が求めた逆流量は、制御部25に与えられる。制御部25は、演算部31から与えられた逆流量となるように、ポンプ39を操作する。
【0050】
制御部25は、ポンプ39を操作するが、その操作には、次の二種類がある。つまり、印刷動作における正駆動と、機能回復動作における逆駆動との二種類である。
【0051】
正駆動は、供給管37を介してインクジェットヘッド19にインクを通常に供給するように、メインタンク33からフィルタ41を介してインクジェットヘッド19にインクが流通するようにポンプ39を駆動することである。逆駆動は、正駆動時にインクが供給されるインクの流通方向とは逆方向となるように、ポンプ39を駆動することである。逆行動を換言すると、インクがフィルタ41において逆流するように、メインタンク33へインクを戻す方向にポンプ39を動作させる。
【0052】
すると、フィルタ41では、図5(b)に示すように、フィルタ41の上流側にて捕集されていたパーティクルと、インク成分の凝集物とがフィルタ41の上流側にインクの流れに乗って押し戻されて撹拌される。これにより、フィルタ41に捕集されていた物質がフィルタ41の上流側にあたる供給管47のインク中へ押し流される。したがって、フィルタ41における圧力損失がほぼなくなる。この状態を示したのが図5(c)である。
【0053】
制御部25は、後述するように、装置が起動した際に、機能回復動作が必要か否かを判断する。さらに、制御部25は、印刷処理を行っている間に、ポンプ39の操作量と液送量検出部45の液送量との関係に基づいて、液送量が閾値以下となっていないかを監視する。これは、印刷処理を行っている間においても、フィルタ41が詰まりを起こしていないかを判断するためである。そのため、ポンプ39の操作に応じた液送量にならない場合には、フィルタ41が詰まりを生じていることを表す。そのため、ポンプ39の操作量に対して、送られるはずの液送量より少なくなったか否かについて閾値を基準にして判断する。制御部25は、装置が起動していても、フィルタ41をインクが流通していない状態から流通するようになった時点や、装置が起動した時点では、静置時間に基づいて機能回復動作が必要か否かを判断することが好ましい。
【0054】
次に、上述した構成のインクジェット印刷システムによる動作について図6を参照して説明する。図6は、処理の流れを示すフローチャートである。
【0055】
ステップS1
装置を起動する。つまり、インクジェット印刷システムによって印刷処理ができるように、装置の電源をオンにする。
【0056】
ステップS2
機能回復動作が必要か否かに応じて処理を分岐する。具体的には、制御部25は、カウント部27の計測時間を読み出し、演算部21に与える。演算部21は、記憶部29の静置時間と逆流量との関係と、静置時間にあたる計測時間とに基づいて逆流量を求める。求められた逆流量は、制御部25に与えられる。制御部25は、逆流量に応じて機能回復動作が必要か否かを判断する。例えば、逆流量が0であれば、機能回復動作を行う必要がない。一方、逆流量が0を越えれば、機能回復動作を行う必要があると判断する。
【0057】
なお、機能回復動作が必要か否かは、静置時間だけで判断するようにしてもよい。また、装置の起動時は、機能回復動作が必要か否かの判断を行うことなく、必ず機能回復動作を行うようにしてもよい。これにより、印刷動作に移行するまでの時間を短縮できる。
【0058】
ステップS3
ここでは、機能回復動作が不要であったとする。制御部25は、印刷動作に応じてポンプ39を正駆動させる。具体的には、制御部25は、開閉弁35を開放するとともに、メインタンク33からインクジェットヘッド19にインクが流通するようにポンプ39を操作する。その操作は、サブタンク21のインクの容量に応じて行われる。
【0059】
ステップS4
全ての印刷処理が終了したか否かに応じて処理を分岐する。
【0060】
ステップS5
全ての印刷処理が終了したら装置を停止する。これにより、カウント部27は、装置の静置時間を計測し始める。
【0061】
ここで、上述したステップS2において機能回復処理が必要であると判断された場合について説明する。
【0062】
ステップS6(機能回復動作ステップ)
制御部25は、機能回復処理を実行する。
【0063】
具体的には、ポンプ39を逆駆動させる。これにより、印刷動作の際とは逆方向に向かってインクがフィルタ41を流通する。これにより、フィルタ41の詰まりが改善される。また、インクの成分の一部が凝集物としてフィルタ41に捕集されていた場合には、インクの成分の一部が再びインクに分散する。なお、ポンプ39を逆駆動させる際には、サブタンク21と脱気フィルタ43とを連通接続している供給管37において、インクの気液界面が脱気フィルタ43よりもサブタンク21側に位置するまでとすることが好ましい。つまり、インクの気液界面が脱気フィルタ43の内部に位置しないようにポンプ39を逆駆動する。制御部25は、静置時間から求められる逆流量で機能回復処理を行うが、インクの気液界面が脱気フィルタ43よりサブタンク21側に位置させると、求められた逆流量だけインクを逆流させることができないことがある。その場合には、ポンプ39の逆駆動と正駆動とを複数回繰り返して逆流量を稼ぐようにすればよい。
【0064】
また、上述したステップS4において、一つの印刷ジョブが終了し、全ての印刷処理が終了したか否かの判断を行った際に、次の印刷ジョブによる印刷を行う前に行うステップS7について説明する。
【0065】
ステップS7
制御部25は、一つの印刷ジョブが完了した時点で、次の印刷ジョブに移行する前に、フィルタ41の詰まりをチェックする。具体的には、制御部25は、ステップS3の印刷処理時において、ポンプ39の操作量に対して、送られるはずの液送量より少なくなったか否かについて閾値を基準にして判断する。閾値より液送量が少なくなった場合には、ステップS6に戻って上述した機能回復処理を行う。一方、閾値より液送量が多い場合には、正常であると判断して、ステップS3に移行し、次の印刷ジョブによる印刷処理に移行する。
【0066】
なお、一つの印刷ジョブごとにステップS7を実行するのではなく、複数回の印刷ジョブごとや、印刷処理により所定の時間が経過するごとにステップS7を実行するようにしてもよい。印刷物によっては、インクの消費が少ないものもある。このような場合、印刷処理中であっても供給管37内におけるインクの流動量が少なくなりやすい。すると、印刷処理中であってもインクの成分の凝集が生じる恐れがあるので、所定時間ごとにステップS7を行うことで、印刷処理中におけるフィルタ41の詰まりを検出しやすくできる。
【0067】
本実施例によると、制御部25は、印刷動作の際には、ポンプ39を正駆動させる。制御部25は、機能回復動作の際には、ポンプ39を逆駆動させる。これにより、印刷動作の際にフィルタ41に捕集されたインクの成分からなる凝集物を供給管37中のインクに再分散させることができる。したがって、フィルタ41の詰まりを改善できるので、フィルタ41の交換に起因する運用コストを低減できる。その結果、画像形成に貢献せず、インクジェットヘッド19の詰まりの原因となるパーティクルを除去するというフィルタ41の本来の目的でフィルタを最大限に活用できる。
【0068】
また、制御部25は、機能回復動作の際には、供給管37内におけるインクジェットヘッド19側のインクの気液界面が脱気フィルタ43のインクジェットヘッド19側に位置するまで逆駆動させる。これにより、インクの気液界面が脱気フィルタ43内に位置することがない。そのため、機能回復動作を行っても、脱気フィルタ43がインクで満たされたままにできる。したがって、インクに気泡が混入することを防止できる。
【0069】
さらに、制御部25は、機能回復動作を行う際に、正駆動と逆駆動とを複数回繰り返す。これにより、供給管37内のインクを、フィルタ41を通して十分に撹拌することができる。そのため、フィルタ41に捕集されたインクの成分からなる凝集物を確実にインクに再分散させることができる。
【0070】
制御部25は、演算部31が求めた逆流量に応じてポンプ39を逆駆動する。したがって、必要以上にポンプ39を逆駆動させる必要がなく、機能回復動作を最小限の逆流量で行うことができる。そのため、機能回復動作を効率的に行うことができる。
【実施例2】
【0071】
次に、図面を参照して本発明の実施例2について説明する。
【0072】
図7は、実施例2に係るインクジェット印刷システムにおけるインク供給装置のブロック図である。なお、上述した実施例1と同様の構成については、同符号を付すことで詳細な説明については省略する。
【0073】
実施例2では、インク供給装置23の供給管37に第1のセンサ61と第2のセンサ63とが取り付けられている。具体的には、第1のセンサ61は、供給管37のうち、脱気フィルタ43とサブタンク21との間であって、サブタンク21に近い側に設けられている。第2のセンサ63は、供給管37のうち、脱気フィルタ43に近い側に設けられている。これらの第1のセンサ61と第2のセンサ63は、供給管37に貯留しているインクの気液界面を検出する。
【0074】
実施例2の構成においては、上述した機能回復処理の際に、供給管37のインクの気液界面が第1のセンサ61と第2のセンサ63との間に収まるように制御部25がポンプ39を逆駆動するように操作する。したがって、インクに気泡が混入したり、逆駆動をし過ぎたりすることがない。よって、確実に機能回復動作を行うことができる。
【0075】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0076】
(1)上述した各実施例1,2では、フィルタ41とインクジェットヘッド19との間に脱気フィルタ43とサブタンク21とを備えている。しかしながら、本発明は、これらの構成を必須とするものではない。
【0077】
(2)上述した各実施例1,2では、ポンプ39としてチューブポンプを例にとって説明したが、本発明はポンプ39としてこの型式のものに限定されるものではなく、他の型式のポンプ39を採用してもよい。その場合には、開閉弁や逆止弁などを供給管37に介在させて、正駆動と逆駆動とでインクの流通方向を上述した方向に制御すればよい。
【0078】
(3)上述した各実施例1,2では、インクを通常に供給する動作時において、ポンプ39は、フィルタ41よりも上流側の位置で配管37に介在するように配置されている。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。つまり、インクを通常に供給する動作時において、ポンプ39は、フィルタ41よりも下流側の位置で配管37に介在するように配置されるようにしてもよい。この場合にも、機能回復動作の際には、ポンプ39を逆駆動させることにより、印刷動作の際にフィルタ41に捕集されたインクの成分からなる凝集物を供給管37中のインクに再分散させることができる。したがって、フィルタ41の詰まりを改善できる。
【0079】
(4)上述した各実施例1,2では、機能回復処理の際には正駆動と逆駆動とを複数回繰り返すとして説明した。しかしながら、本発明は必ずしも機能回復処理の際にポンプ39の正駆動と逆駆動とを複数回繰り返す必要はない。つまり、ポンプ39を逆駆動することでフィルタ41の詰まりが完全に解消できる必要はなく、機能回復動作の前の状態よりもフィルタ41の詰まりが改善できればよい。また、一度の逆駆動により機能回復を最大限に図るため、脱気フィルタ43とサブタンク21とにおける供給管37の長さを長くするようにしてもよい。
【0080】
(5)上述した各実施例1,2では、ステップS2において機能回復動作が必要か否かを装置の起動後に確認している。しかしながら、ステップS7のように、印刷処理の間に、流量に基づくチェックに応じて機能回復処理を行うか否かを判断することにより、装置の起動ごとに機能回復動作が必要か否かを判断する必要はない。また、逆に、印刷処理の間に、流量に基づくチェックに応じて機能回復処理を行うか否かを判断せず、装置の起動時にのみ機能回動作が必要か否かを判断するようにしてもよい。
【0081】
(6)上述した各実施例1,2では、図6のステップS2において機能回復動作が必要か否かを装置の起動後に確認し、また、ステップS7のように、印刷処理の間に、流量に基づくチェックに応じて機能回復処理を行うか否かを判断するようにしている。しかしながら、本発明は、そもそも機能回復動作が必要か否か、また機能回復処理が必要かいなかを確認、判断することなく定期的に機能回復動作を行うようにしてもよい。
【0082】
すなわち、制御部25は、ポンプ39に対して、インクをサブタンク21に供給した直後に機能回復動作を行うように制御してもよい。かかる場合において、インクをサブタンク21に供給した直後には、供給管37内のインクの気液界面は、サブタンク21の供給口近傍に位置する。ここで、インクの気液界面が存在するその位置から、脱気フィルタ43のインクジェットヘッド19側の位置、すなわち、インクで充たされた脱気フィルタ43の図示しないインク流出口までに存在するインクの量は既知である。そこで、機能回復動作を行うにあたっては、かかるインク量以下のインク量を逆流させるようにすればよい。
【0083】
また、制御部25は、ポンプ39に対して、供給管37内におけるインクの気液界面の位置が既知の状態で、例えば、30分毎に1回、機能回復動作を行うなど、ある一定時間間隔ごとに機能回復動作を行うように制御してもよい。機能回復動作を行う頻度を上げれば、インクの送液量を常に安定して確保することができる。
【0084】
(7)上述した実施例1,2では、フィルタ41が供給管37に対して、通常の使用時に下方から上方に向かってインクが流通する姿勢で取り付けられている。しかしながら、本発明は、このような取り付け姿勢に限定されるものではない。つまり、フィルタ41に対してインクが上方から下方に向かってインクが流通する姿勢や、水平方向における一方側から他方側に向かってインクが流通する姿勢でフィルタ41が取り付けられてもよい。
【0085】
(8)上述した実施例1,2では、機能回復処理をポンプ39の操作だけで行った。しかしながら、開閉弁35を併せて操作して次のように行うようにしてもよい。
【0086】
すなわち、機能回復処理を行う際には、まず開閉弁35を閉止する。そして、ポンプ39を逆駆動する。これにより、脱気フィルタ43と開閉弁35との間における供給管37の内部におけるインクの圧力が高くなる。その後、開閉弁35を開放する。すると、脱気フィルタ43と開閉弁35との間における供給管37内の圧力が一気に開放される。したがって、逆流されるインクの流速を速くすることができるので、フィルタ41の詰まりを改善しやすくできる。また、インクの凝集物を短時間で再分散することができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上のように、本発明は、インクがフィルタで濾過されて吐出される構成のインクジェット印刷装置及びそのフィルタのメンテナンス方法に適している。
【符号の説明】
【0088】
1 … 給紙部
3 … インクジェット印刷装置
5 … 排紙部
7,11 … 駆動ローラ
9 … 搬送ローラ
13 … 印刷ユニット
19 … インクジェットヘッド
21 … サブタンク
23 … インク供給装置
25 … 制御部
27 … カウント部
29 … 記憶部
31 … 演算部
33 … メインタンク
35 … 開閉弁
37 … 供給管
39 … ポンプ
41 … フィルタ
43 … 脱気フィルタ
47 … 供給部
49 … 送出部
51 … チューブ
53 … 回転部
55 … 筐体
57 … モータ
59 … 回転枠
60 … ローラ
61 … 第1のセンサ
63 … 第2のセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7