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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】軌道走行車
(51)【国際特許分類】
   B61D 15/12 20060101AFI20241111BHJP
   B61D 15/00 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
B61D15/12
B61D15/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021040931
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2022140885
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朝田 航
(72)【発明者】
【氏名】藤田 知大
(72)【発明者】
【氏名】櫻場 充
(72)【発明者】
【氏名】小野 天之
【審査官】近藤 利充
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-156798(JP,A)
【文献】特開2001-088697(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111319638(CN,A)
【文献】特開2015-009607(JP,A)
【文献】特開2019-107206(JP,A)
【文献】実公昭26-012113(JP,Y1)
【文献】米国特許第02401316(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 15/12
B61D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール上を転動する一対の前輪および一対の後輪を備えた車体と、前記後輪を回転させる駆動力を出力する回転動力源と、前記車体の移動を制動するブレーキ機構と、前記回転動力源を作動させるためのハンドル操作部と、を備えた軌道走行車であって、
前記車体は、少なくとも左右一対の側部フレームと当該側部フレームの前端側に横架された前部フレームおよび前記側部フレームの後端側に横架された後部フレームを備えたフレームで構成され、
前記後部フレームのみに下端が結合された支持台によって支持された一人用の座席シートを1つのみ備え、
前記前部フレームと前記後部フレームとの間に足載せ部が設けられているとともに、
前記一対の後輪は1本の車軸の両端部に取り付けられる一方、前記一対の前輪は各々短い軸にて個別に支承されて車軸レス構成とされ、
前記座席シートの下方に前記回転動力源が配設され、前記回転動力源の回転力が前記後輪に伝達されるように構成され、
前記座席シートの側方に前記ハンドル操作部が設けられていることを特徴とする軌道走行車。
【請求項2】
前記前部フレームは前記一対の側部フレーム間にその前端から後方へずれた位置に横架されているとともに、
記前部フレームの前方に一辺が開口した空間が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の軌道走行車。
【請求項3】
前記前部フレームは、上面が前記側部フレームの上面よりも上方へ膨出し、断面形状が前記側部フレームの断面形状よりも大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の軌道走行車。
【請求項4】
前記ハンドル操作部は、前後方向に配設されたロッド部と、該ロッド部の前端に上方へ向かって突出するように設けられた搭乗者が把手可能な把手部とを備え、
前記把手部は軸周りに回転して水平方向へ傾倒可能に構成されていることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の軌道走行車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道軌道のレール上を走行する軌道走行車(軌道自転車)に関し、特に回転動力源を搭載した小型の軌道走行車に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道軌道の保線においては、鉄道車両が走行しない深夜に、保線作業員が徒歩で軌道を移動しながらレールやレール締結器などの線路設備の状態を目視で点検する線路総合巡視と呼ばれる作業が実施されている。従来の線路総合巡視は6~10km程度の距離を徒歩で移動しながら実施するため、保線作業員の肉体的な負担が大きいという課題がある。
【0003】
また、レールスターと呼ばれるエンジンを搭載しレール上を走行する軌道自転車に乗って線路総合巡視を実施することで保線作業員の肉体的な負担を軽減することが可能であるが、従来のレールスターは小型のものでも二人乗りで60kgに近い重量があり、人手による搬送が困難で、立入退出は各留置箇所または斜路に限られてしまう。また、トロ台車などの諸車扱いの軌道用車両と異なり、レール上を走行させる際には、前もって作業実施を申請してダイヤ上に計画行路を登録しておく必要があり、手続きが面倒であるとともに機動性が悪いと課題があった。
【0004】
なお、従来、エンジンやモータなどの回転動力源を搭載しつつ小型軽量化を図った軌道走行車に関する発明としては、例えば特許文献1~3に記載されているものがある。
このうち、特許文献1の軌道自転車は、足場板を除き車体をフレームで構成することで軽量化を図っている。また、特許文献2と3の軌道走行車は、座席を省略して立ち乗り式とすることで、車体の前後幅を小さくして小型軽量化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-9607号公報
【文献】特開2018-161994号公報
【文献】特開2019-89393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の軌道自転車は、軽量化されているものの、二人乗りのため2つの座席を備えるとともに、座席の前方にそれぞれ風防パネルを設けているので、小型化が充分に達成されていない。そのため、バンやワンボックスカーなど荷物の積載スペースを有する自動車に載せて搬送することが困難であり、ましてや2台の車体を重ねた状態にして搬送するようなことはできないという課題がある。
【0007】
一方、特許文献2と3の立ち乗り式の軌道走行車は、座席を省略して前後幅を小さくすることで前後方向の小型化は達成しているが、搭乗者が手で捕まるための手すりを設けているため、上下方向の小型化は充分に達成されていない。また、立ち乗り式であるため、長時間の移動を伴う場合には搭乗者の肉体的な負担が充分に軽減されないという課題がある。さらに、立ち乗り式であるため、移動中のバランスが悪くなり、安全上の問題が生じるおそれがある。
【0008】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、小型軽量化を図ることができ、バンやワンボックスカーなどの自動車に2台の車両を重ねて積載し搬送することができるとともに機動性に優れた軌道走行車を提供することにある。
本発明の他の目的は、走行安定性を大きく低下させたり移動中の搭乗者がバランスを崩したりすることのない小型の軌道走行車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、
レール上を転動する一対の前輪および一対の後輪を備えた車体と、前記後輪を回転させる駆動力を出力する回転動力源と、前記車体の移動を制動するブレーキ機構と、前記回転動力源を作動させるためのハンドル操作部と、を備えた軌道走行車であって、
前記車体は、少なくとも左右一対の側部フレームと当該側部フレームの前端側に横架された前部フレームおよび前記側部フレームの後端側に横架された後部フレームを備えたフレームで構成され、
前記後部フレームのみに下端が結合された支持台によって支持された一人用の座席シートを1つのみ備え、
前記前部フレームと前記後部フレームとの間に足載せ部が設けられているとともに、
前記一対の後輪は1本の車軸の両端部に取り付けられる一方、前記一対の前輪は各々短い軸にて個別に支承されて車軸レス構成とされ、
前記座席シートの下方に前記回転動力源が配設され、前記回転動力源の回転力が前記後輪に伝達されるように構成され、
前記座席シートの側方に前記ハンドル操作部が設けられているように構成したものである。
【0010】
上記のような構成を有する軌道走行車によれば、車体がフレームで構成されているため軽量であり人手で持ち運びすることができるとともに、一人用の座席シートが後部フレームの上方に位置するため、他の軌道走行車を前後逆にし上下逆さにした姿勢で重ねたときに座席シート同士が干渉せず、全体としての高さを低くしてバンなどの自動車の荷台に、2台の軌道走行車を積載して搬送することができる。そのため、軌道の任意の位置から軌道走行車を搬入して載線したり離線したりすることができるので、諸車扱いの車両として利用することができ、線路総合巡視に使用する場合に、予め作業実施を申請して計画ダイヤに登録する必要がなく機動性に優れるとともに、保線作業員が徒歩で軌道点検をする必要がないため保線作業員の肉体的負担を軽減することができる。
【0011】
ここで、望ましくは、前記前部フレームは前記一対の側部フレーム間にその前端から後方へずれた位置に横架されているとともに、
記前部フレームの前方に一辺が開口した空間が形成されているように構成する。
【0012】
かかる構成によれば、前輪が車軸レスで前部フレームが後方へずれているので、他の軌道走行車を前後逆にし上下逆さにした姿勢で重ねたときに座席シートが入り込むスペースが前部フレームの前方に確保されるため、重ねたときの全体としての高さを低くすることができ、荷台の収納空間が比較的狭い自動車であっても2台の軌道走行車を載せて同時に搬送することができる。
【0013】
さらに、望ましくは、前記前部フレームは、上面が前記側部フレームの上面よりも上方へ膨出し、断面形状が前記側部フレームの断面形状よりも大きくなるように形成されているように構成する。
かかる構成によれば、前輪を車軸レスとし前部フレームの前方にスペースを設けた構成の車体フレームにおいて、走行中および他の軌道走行車を重ねた際にフレームが変形を起こしにくくすることができる。
【0014】
また、望ましくは、前記一対の前輪は、外径が前記一対の後輪の外径よりも小さくなるように形成され、軸が挿通されるボス部の軸方向の幅は、前記一対の後輪のボス部の軸方向の幅よりも大きくなるように形成されているように構成する。
【0015】
上記のような構成によれば、座席シートが後部フレームの上方に位置し座席シートの下方に回転動力源が配設されることで重心が車体の後部に位置することとなるが、後輪の径が大きいため重量をしっかりと支えることができるとともに、前輪の径が小さいので前輪の軽量化を図り、車両全体の重量を低減することができる。
また、前輪ボス部の軸方向の幅は後輪のボス部の軸方向の幅よりも大きいので、前輪が車軸レスの構成であっても回転軸が傾くことがないとともに、後輪は車軸を有する構成であるため、走行安定が低下するのを防止することができる。その結果、移動中の搭乗者がバランスを崩したりするおそれがない。
【0016】
また、望ましくは、前記ハンドル操作部は、前後方向に配設されたロッド部と、該ロッド部の前端に上方へ向かって突出するように設けられた搭乗者が把手可能な把手部とを備え、前記把手部は軸周りに回転して水平方向へ傾倒可能に構成する。
【0017】
かかる構成によれば、ハンドル操作部の把手部が軸周りに回転して水平方向へ傾倒可能であるため、2台の軌道走行車を重ねる際に、把手部を水平に倒すことによって把手部の高さを低くして、逆さにして重ねた他の軌道走行車の座席シートと点で接触するのを回避し、全体の高さを低くすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の軌道走行車によれば、小型軽量化を図ることができ、バンやワンボックスカーなどの自動車に2台の車両を重ねて積載し搬送することができるとともに、人手で移動することができるため機動性に優れる。また、走行安定性を大きく低下させたり移動中の搭乗者がバランスを崩し易くなったりするのを回避しつつ小型化を実現することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る軌道走行車の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1の実施形態の軌道走行車の構成を示す側面図である。
図3図1の実施形態の軌道走行車の構成を示す平面図である。
図4図1の実施形態の軌道走行車を進行方向後方より見た状態を示す背面図である。
図5】(A),(B)は図1の実施形態の軌道走行車の前輪と後輪の詳細を示す拡大断面図である。
図6図1の実施形態の軌道走行車のハンドル操作部の詳細を示す要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明に係る軌道走行車の一実施形態について詳細に説明する。図1は本実施形態の軌道走行車100の構成を示す斜視図、図2はその側面図である。
本実施形態の軌道走行車100は、作業員が搭乗してレール上を走行するために使用する一人用の車両として構成することで軽量化を図っている点が第1の特徴である。また、一人用として構成した場合、複線区間の線路状態を点検する線路総合巡視の際には、上り線と下り線のレール上にそれぞれ1台ずつ載置して並行走行して点検を行えるようにする必要があるため、バンやワンボックスカーなどの自動車に2台の軌道走行車を載せて目的地へ搬送するとともに、目的地へ搬送後の運搬や、線路への離載線を1人の作業者が人力で行うことができるようにすることを目的として、小型軽量化を図っている点が第2の特徴である。
【0021】
図1図4に示すように、本実施形態の軌道走行車100は、レール上を転動する4個の車輪11A~11Dを備えた車体10と、座席シート12および該座席シート12を支持する座席支持台13、車輪11を回転させる駆動力を出力する回転動力源としてのガソリンエンジン14、エンジンの回転を車軸に伝えるプーリーおよびベルトなどからなる動力伝達機構を内蔵したケース15、車輪11Dの回転を制動するブレーキ機構16、搭乗者が操作するハンドル17等を備えている。
【0022】
車体10は、軽量化のため繊維強化プラスチック等の軽量素材でフレームとして構成されているとともに、曲げ剛性を高める各フレームの断面はコの字状をなし、開口が下を向くように形成されている。具体的には、車体10は、左右の側部フレーム10A,10Bと、側部フレーム10A,10B間に横架された前部フレーム10Cおよび後部フレーム10Dと、前部フレーム10Cと後部フレーム10D間に渡された上面視で台形状をなす足載せ部10Eとを備え、全体として上面視でほぼ矩形状をなすように構成されている。
【0023】
座席支持台13は、上部が平坦で左右両側部がハの字状をなすように形成され、下端が車体10の後部フレーム10Dの上面に結合されることで安定に支持されるように構成され、上部の平坦部に座席シート12が載置、固定されている。ガソリンエンジン14および動力伝達機構を内蔵したケース15は、足載せ部10Eの後部であって座席シート12の下方に位置するように配設されている。
【0024】
また、本実施形態の軌道走行車100は、後車輪11C,11Dが、後部フレーム10D内に回転自在に配設されている車軸の両端にそれぞれ固定され、ケース15内の動力伝達機構を介してガソリンエンジン14の動力が伝達されて回転駆動されるように構成されている。一方、前車輪11A,11Bは、側部フレーム10A,10Bの前端に、短い回転軸によって回転自在に装着されており、それぞれ別個に自由回転できるように構成されている。
【0025】
上記のように、本実施形態の軌道走行車100においては、前車輪11A,11Bを車軸レスとすることで、前部フレーム10Cの位置を、本来の車軸が設けられる位置よりも後方へずらし、前部フレーム10Cの前方に空きスペースを形成している。そして、このように空きスペースを設けたことにより、他の軌道走行車100を前後逆にして上下逆さにした姿勢で重ねたときに座席シート12同士が干渉しないとともに、座席シート12が入り込むスペースを前部に確保することができ、重ねた際の全体としての高さを低くしてバンなどの自動車の荷台に、2台の軌道走行車100を積載して搬送することができるようになる。
【0026】
なお、前車輪11A,11Bの回転軸を前部フレーム10Cの位置に設けることで車体フレームの前後幅を短くして小型化することも考えられるが、車体フレームの前後幅を短くすると、前車輪11A,12Bと後車輪11C,11Dとの距離が短くなって走行安定性が低下するが、上記のように、前部フレーム10Cの位置のみを後方へずらすことで、走行安定性を犠牲にすることなく前部フレーム10Cの前方に空きスペースを形成することができる。
また、特許文献2の軌道走行車のように、前車輪11A,11Bと同様に後車輪11C,11Dも車軸レスとすることも考えられるが、前後の車輪とも車軸レスにすると走行安定性が低下するとともに、共通の車軸によって車輪を回転させることができないため、動力伝達機構が複雑になり、軽量化を充分に達成することができなくなる。
【0027】
さらに、本実施形態の軌道走行車100においては、前部フレーム10Cの上部を車体フレームの他の部位よりも上方へ膨出させることで、前部フレーム10Cの曲げ剛性を高めている。これにより、側部フレーム10A,10Bの前端に装着した前車輪11A,11Bに車体の荷重や搭乗者の重量が作用した際に、車体フレームが変形を起こしにくくなる。また、他の軌道走行車100を逆さにして重ねた際に、他方の座席シート12の上面が当接して車両の重量がかかったとしても変形するのを防止することができる。
なお、符号10Fが付されている部位(2箇所)は車体10に設けられた開口部であり、開口部10Fを設けることで車体の軽量化を図っている。また、側部フレーム10Bの前端上面には、図1に示すように、市販の携帯用ライト(懐中電灯)20を取付け可能なライト装着部19が設けられている。
【0028】
また、本実施形態では、図5に示すように、(A)の前車輪11A,11Bの外径を(B)の後車輪11C,11Dの外径よりも小さくするとともに、軸が挿通される中心のボス部の相対的な径を大きくし、かつ前車輪11A,11Bのボス部11a,11bの軸方向の幅を後車輪11C,11Dのボス部11c,11dの幅よりも大きくしている。これは、前車輪11A,12Bを短い回転軸によって支承する構成としたことによって、車軸が傾き易くなり走行安定性が低下するのを防止するためである。なお、前車輪11A,12Bは車体フレームに伝わる振動を軽減するため、ナイロンのような合成樹脂で形成され、後車輪11C,11Dは、左右のレール間を電気的に導通し車軸を通して軌道回路の信号電流を流すためにアルミニウム等の金属で形成されている。ただし、車輪の材質については、円筒状の金属コアの外周面に樹脂層を形成したものなど用途に応じて適宜変更しても良い。
【0029】
また、座席支持台13の上部の座席シート12の側方に操作ハンドル17が設けられており、この操作ハンドル17は、図6に拡大して示すように、座席シート12の側方にて前後方向に配設され周方向に回転可能に設けられたロッド部17aと、ロッド部17aの前端に上端が前方に傾斜した姿勢で回動可能に軸支された把手部17bを備えている。また、ロッド部17aの内部には把手部17bを前方へ付勢するトーションバネが内蔵されており、把手部17bを掴んでバネの付勢力に抗って後方に引くと、ブレーキが解除されてエンジンの回転が後車輪11C,11Dへ伝達されて車体が前進する一方、把手部17bを後方へ引く力を弱くすると内部のバネの付勢力によって把手部17bが前方へ戻って、ブレーキがかかるようになっている。
【0030】
さらに、操作ハンドル17は、把手部17bをロッド部17aごと横方向へ90度回転、傾倒させて、横向きの状態(水平姿勢)を維持することができるように構成されている。これは、軌道走行車100を自動車等に乗せて搬送する際に、2台の軌道走行車100を上下逆さにして重ねた際に、操作ハンドル17が他方の軌道走行車の構成部品(座席シート等)と干渉しないようにして、上下高さを低くするためである。なお、操作ハンドル17は、把手部17bが前後に回動する回動式に限定されず、ロッド部17aが前後にスライドするスライド式としても良い。
【0031】
また、本実施形態の軌道走行車100は、自動車等で搬送する際に上下逆さの姿勢にすることができるようにするため、回転動力源として180度回転させても燃料が漏れないタイプのガソリンエンジンが使用されている。このようなエンジンとしては、例えば本田技研工業株式会社が製造販売している汎用エンジンGX35がある。
【0032】
本発明者らは、上記のような構成を有する軌道走行車を試作した結果、全重量約22kgを達成することができた。この重量は、動力源を有する既存の軌道走行車のうち最も軽量なもののおよそ1/3の重量であり、大幅な軽量化が可能になった。また、1回の燃料補給で継続走行可能な距離は15kmであった。なお、目標重量や目標走行距離によっては、ガソリンエンジンの代わりに、回転動力源としてモータとバッテリーを搭載するようにしても良い。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の軌道走行車100によれば、小型であるため2台を重ねた状態でバンなどの自動車に乗せて運搬することができるとともに、軽量であるため容易に運搬用の自動車に乗せたり、レールに載線したり離線したりすることができる。また、これにより、任意の箇所にある既設の門扉へ搬送することができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、上記実施形態においては、軌道走行車を走行させたり停止させたりするスライド式の操作ハンドル17を設けたものを示したが、操作ハンドル17は前後に傾倒させる回転式ものでも良いし、ハンドルの代わりにペダルを設けるようにしてもよい。
また、座席支持台13の上面の操作ハンドル17と反対側の側部に、内側へ倒したり垂直に起立させたりあるいは着脱できる手すりを設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
100 軌道走行車
10 車体
11 車輪
12 座席シート
13 座席支持台
14 ガソリンエンジン(動力源)
15 動力伝達機構を内蔵したケース
16 ブレーキ機構
17 操作ハンドル
18 手押しロッド
19 ライト装着部
20 携帯用ライト
図1
図2
図3
図4
図5
図6