(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】障子開閉装置
(51)【国際特許分類】
E05F 11/34 20060101AFI20241111BHJP
E06B 3/38 20060101ALN20241111BHJP
【FI】
E05F11/34
E06B3/38
(21)【出願番号】P 2021042438
(22)【出願日】2021-03-16
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 貴哉
(72)【発明者】
【氏名】倉林 慶太
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-200694(JP,A)
【文献】特開2009-191455(JP,A)
【文献】特開2008-274669(JP,A)
【文献】特開2021-152300(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0302015(US,A1)
【文献】登録実用新案第3180331(JP,U)
【文献】特開2019-19640(JP,A)
【文献】特開2019-157575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 11/34
E06B 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体に設けられ、枠体内に開閉可能に取り付けられた障子を開閉操作可能な操作部を有する障子開閉装置であって、
前記操作部は、1回転以上回転されることにより前記障子を開閉可能であり、
前記操作部の回転状態を検知するセンサと、
前記センサに接続され、前記操作部の回転の開始の原点を検知する原点検知手段と、を備える障子開閉装置。
【請求項2】
前記原点検知手段は、前記障子が完全に閉じられた全閉状態の前記操作部の位置を原点として検知する、請求項1に記載の障子開閉装置。
【請求項3】
前記原点検知手段は、スイッチである、請求項1又は2に記載の障子開閉装置。
【請求項4】
前記原点検知手段は、原点検知センサである、請求項1又は2に記載の障子開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、障子開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建具の施錠状態か解除状態かを検知する技術が知られている。例えば、引き違い窓に設けられたクレセント錠の場合は、加速度センサによってクレセント錠のハンドルの位置を検知する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クレセント錠の場合は、ハンドルの位置が180度回転するため、ハンドルの位置によって検知が可能である。しかし、ハンドルが360度回転し、複数回回転させることによって建具を開閉するハンドルでは、電池の交換や停電等が起きた場合に、検知の原点の位置が不明になってしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、枠体に設けられ、枠体内に開閉可能に取り付けられた障子を開閉操作可能な操作部を有する障子開閉装置であって、前記操作部は、1回転以上回転されることにより前記障子を開閉可能であり、前記操作部の回転状態を検知するセンサと、前記センサに接続され、前記操作部の回転の開始の原点を検知する原点検知手段と、を備える障子開閉装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本実施形態の横辷り出し窓を室内側から視た図である。
【
図2】本実施形態の操作部の解錠状態を示す図である。
【
図3】本実施形態の操作部の施錠状態を示す図である。
【
図4】他の実施形態の原点検知手段を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態の障子開閉装置1は、横辷り出し窓10に設けられるとともに、障子開閉状態通知装置100と接続される。障子開閉装置1は、障子開閉状態通知装置100を通じて障子3の施錠状態及び解錠状態を通知可能に構成されている。施錠状態とは、障子3が完全に閉じられた障子3の全閉状態を言う。解錠状態とは、全閉状態から障子3が開いた状態を言う。
【0008】
障子開閉状態通知装置100は、
図1に示すように、障子開閉装置1と、インターネットINを介して接続されたクラウドCL上の情報処理装置COと、インターネットINを介して接続され、情報処理装置COの情報を表示する端末装置TEと、を備えている。
【0009】
横辷り出し窓10は、
図1に示すように、建物の開口部に取り付けられる枠体2と、枠体2に開閉可能に納められた障子3と、を備える。
【0010】
枠体2は、上枠21と、下枠22と、左右の縦枠23、24と、により矩形に枠組みされて形成される。横辷り出し窓10は、建物の開口部に納められる。
【0011】
障子3は、枠体2内に開閉可能に取り付けられる。上框31と、下框32と、左右の縦框33、34と、により矩形に框組みされて形成された框体30と、框体30内に嵌め込まれたガラス35と、を備える。
【0012】
障子開閉装置1は、枠体2に設けられ、操作部4と、センサ5と、原点検知手段6と、通信部7と、を有する。操作部4は、下枠22の屋内側における左右方向の中央に取り付けられる。障子開閉装置1は、障子3を枠体2に対して開閉操作するとともに、障子3の位置を検知して障子開閉状態通知装置100に通知する。
【0013】
操作部4は、障子3を開閉するために操作者が操作する把手であり、回転して操作されるオペレータハンドルである。
図2に示すように、操作部4は、ハンドル41と、ケーシング42と、連結バー43と、電源部44と、基板45と、を含んで構成される。
【0014】
ハンドル41は、施錠状態と解錠状態で姿勢が変更される。
図1に示すように、施錠状態では、ハンドル41は、折り畳まれて下枠22に沿うように配置される。施錠状態では、障子3は完全に閉じられた全閉位置にある。ハンドル41は、障子3の全閉位置では回転しておらず、回転角度は0度である。ハンドル41の0度の状態を原点とする。ハンドル41は、折り畳まれた状態から室内側へ延びるように引き起こされ、起こされた状態から360度回転可能に構成されている。ハンドル41の回転方向を変更することによって、障子3の開閉が可能となっている。ハンドル41は、障子3の解錠状態から全閉位置に移動する際に、解錠状態の回転の際にかけられる負荷よりも大きな負荷をかけて閉じられる。
【0015】
ケーシング42は、ハンドル41が取り付けられる筐体であり、下枠22に固定されている。ケーシング42には、ハンドル41の基端側を回転可能に支持する基部41aが接続されている。
【0016】
連結バー43は、歯車部431と、ステー部432とを有する。歯車部431は、ケーシング42内に配置され、ハンドル41と噛み合って配置される。ステー部432は、歯車部431から延びる平棒である。ハンドル41が障子3を開閉するために回転されると、歯車部431が回転し、連結バー43を移動させる。連結バー43は、障子3の下框32に接続される。ハンドル41が回転することにより、連結バー43が移動して障子3が開閉される。
【0017】
電源部44は、ハンドル41の内部に配置される乾電池である。乾電池は、ハンドル41の延びる方向に一列に並べられ、直列接続されて収納されている。電源部44は、後述するセンサ5、原点検知手段6及び通信部7に電力を供給する。
【0018】
基板45は、ハンドル41の内部に配置されて、電源部44に接続されている。基板45には、後述するセンサ5、原点検知手段6及び通信部7が設けられる。
【0019】
センサ5は、基板45に配置される加速度センサである。センサ5は、ハンドル41の回転状態を検知する。具体的には、センサ5は、3軸(X軸、Y軸、Z軸)以上の方向における加速度を検知し、ハンドル41の回転角度を検知可能である。センサ5は、ハンドル41の回転の速度及び回転角度を検知することで、ハンドル41が何回回転したか、ハンドル41の回転数を検知する。センサ5は、後述する原点検知手段6と電気的に接続される。センサ5は、原点検知手段6によってハンドル41が原点にあることが検知されると、ハンドル41の回転角度の検知をリセットするように構成されている。
【0020】
原点検知手段6は、ハンドル41が回転角度0度であること、すなわち回転の開始の原点にあることを検知するスイッチであり、例えば、リミットスイッチである。原点検知手段6は、接点部61と、原点検知基板部62と、を有する。
【0021】
接点部61は、ケーシング42に接続されたハンドル41の基部41aに配置される。ハンドル41は、障子3を閉じる際には下枠22に近づくように回転される。接点部61は、
図3に示すように、ハンドル41の基端側における内側の面が障子3を完全に閉じるためハンドル41の基部41aまで来たときに、ハンドル41の内側の面によって押圧される。接点部61がハンドル41に押圧されることでスイッチが切り替わり、ハンドル41が原点に位置したことが検知される。したがって、原点検知手段6は、障子3の全閉状態のハンドル41の位置を原点として検知する。
【0022】
原点検知基板部62は、基板45に配置され、接点部61及びセンサ5と電気的に接続された電気回路である。接点部61によって原点検知基板部62の電気回路が切り替えられると、センサ5によるハンドル41の回転の検知がリセットされる。
【0023】
通信部7は、例えば、Bluetooth(登録商標、以下同じ)等の消費電力の小さい無線通信方式により通信を行うための電気回路により構成されて、基板45に配置されている。通信部7は、屋内等に設置されインターネットIN(
図1参照)に接続されたBluetooth等の通信装置Rとの間で、無線通信を行い、センサ5からのハンドル41の回転の情報を、通信装置Rへ送信する。
【0024】
通信装置Rは、センサ5からのXYZ軸方向の変位情報(加速度と方位情報)を、インターネットINを介してクラウドCL上の情報処理装置COへアップロードする。センサ5からのXYZ軸方向の変位情報(加速度と方位情報)は、算出装置としての情報処理装置COにおいて用いられて演算が行われ、情報処理装置COは、ハンドル41の回転位置を算出する。算出されたハンドル41の回転位置の情報は、さらにインターネットINを介して端末装置TEへ送信され、端末装置TEにおいて表示される。情報処理装置COは、例えばアプリケーションサーバー等の電子機器により構成される。端末装置TEは、クラウドCL上にある情報処理装置COにより算出されたハンドル41の回転位置等の情報を表示可能なモニタを含む電子機器、例えば、パーソナルコンピュータや、スマートフォン、タブレット端末等の電子機器により構成される。
【0025】
情報処理装置COは、センサ5からのXYZ軸方向の変位情報から、ハンドル41の回転方向と角度を算出する。具体的には、情報処理装置COは、障子3が施錠されている全閉状態におけるハンドル41の位置を原点位置として、原点位置からのハンドル41の変位角度からズレ量と向きを算出し、記憶する。ハンドル41の同一方向への変化量が360°を超えて進んだ場合には、情報処理装置COは、360°に回転したハンドル41の位置を、ハンドル41が0°の原点位置にあると認識せずに、361°、362°、363°・・・と認識し記憶する。回転方向が逆方向とされた場合には、情報処理装置COは、逆方向とされる直前の回転角度から減算し、0°になったときに、ハンドル41が原点位置にあると判断する。障子3が最も大きく開いた位置から原点位置へ移動するまで、例えば、情報処理装置COは、ハンドル41が8回転したところで、全閉したと判断する。ハンドル41の位置の情報、及び、ハンドル41の位置に基づく施解錠状態の情報は、端末装置TEに送信され、端末装置TEにおいて表示される。使用者は、端末装置TEを操作することにより、横辷り出し窓10が施錠されているか否かを確認することができる。
【0026】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。障子開閉装置1を、枠体2に設けられ、枠体2内に開閉可能に取り付けられた障子3を開閉操作可能な操作部4を含んで構成した。操作部4を、1回転以上回転されることにより障子3を開閉可能であり、操作部4の回転状態を検知するセンサ5と、センサ5に接続され、操作部4の回転の開始の原点を検知する原点検知手段6と、含んで構成した。原点検知手段6が操作部4の回転の開始の原点を検知することで、センサ5がハンドル41の回転の原点から回転を検知すること可能になる。これにより、停電や電池切れの場合や、センサ5の誤動作によりハンドル41の位置と検知した位置が連動しなくなった場合、あるいはハンドル41を取り外して再試行した場合等に、センサ5の検知をリセットすることができる。そして、ハンドル41の位置の検知を、回転の始点となる原点から始めることが可能になる。このため、センサ5による回転の検知の精度が大きく向上する。
【0027】
本実施形態によれば、原点検知手段6を、障子3が完全に閉じられた全閉状態のハンドル41の位置を原点として検知するように構成した。障子3を閉じる際、使用者はハンドル41を締め切るために、開閉時にかける力よりも大きな負荷をハンドル41にかけて締め切り動作を行う位置である。この締め切り動作による過負荷作動力を利用することで、確実に原点検知手段6を反応させることができる。よって、原点検知手段6に接続されたセンサ5の検知の精度が向上し、上記と同様の効果を奏する。
【0028】
本実施形態によれば、原点検知手段6を、リミットスイッチにより構成した。これにより、原点検知をハンドル41の締め切り動作によって行うことが可能となる。簡易な構成で原点検知を行うことが可能となり、製造が容易になる。
【0029】
本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれる。原点検知手段は、ハンドル41の回転の原点を検知可能に構成するものであれば、種類や方法は限定されない。
【0030】
図4に示す他の実施形態では、原点検知手段6Aは、タクトスイッチにより構成される。原点検知手段6Aは、ボタン部63と、板ばね64と、を有する。ボタン部63は、原点検知基板部62の上に接続され、押圧によって回路が切り替わるように構成されている。板ばね64は、ボタン部63の上に配置されている。原点検知手段6Aは、上記実施形態におけるリミットスイッチの場合と同様に、ハンドル41を施錠位置まで回し、障子3を締め切る際に、ハンドル41がボタン部63を押圧するように配置される。板ばね64により、障子3の締め切り動作による負荷が板ばね64を押圧可能な程度に大きい場合にのみタクトスイッチが押圧されるので、原点検知手段6Aの誤動作を防止することができる。
【0031】
また、さらに他の実施形態として、図示を省略するが、原点検知手段6Bは、原点を検知するための原点検知センサであってよい。原点検知センサは、種類を特に限定されないが、例えば光センサであってよい。ハンドル41の基部41aに投光部を設けておき、ハンドル41の締め切り動作によって光を遮蔽することで全閉位置を検知してもよい。
【0032】
また、さらに別の実施形態として、図示を省略するが、原点検知手段6Cは、距離センサであってよい。この場合、操作部4の連結バー43に設けられた歯車部431の所定の位置に切り欠きを形成しておく。距離センサにより、切り欠きとの間の距離を検知し、予め設定された歯車部431が全閉位置に来た位置を検知したときに、全閉位置を検知するように設定する。
【0033】
また、上記実施形態では、センサ5として加速度センサを例に説明した。しかし、操作部4の回転を検知するセンサの種類は、特に限定されない。
【符号の説明】
【0034】
1 障子開閉装置、 2 枠体、 3 障子、 4 操作部、 5 センサ、 6 原点検知手段