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  • 特許-スリーブ弁 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】スリーブ弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 3/26 20060101AFI20241111BHJP
【FI】
F16K3/26 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021043118
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022142874
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】松原 圭佑
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-108460(JP,U)
【文献】特開2019-173928(JP,A)
【文献】実開昭54-112625(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流入する入口管(1)に接続された筒状のバルブボディ(2)の周壁にノズル(3)が穿設され、前記バルブボディ(2)の内周側に筒状のゲート(4)が嵌められ、前記ゲート(4)に前記バルブボディ(2)の内側に位置する弁棒(5)が連結され、前記弁棒(5)が前記入口管(1)の曲管部(1a)及びその周壁の貫通部(1b)を通って外部に突出しており、
前記弁棒(5)の押引により前記ゲート(4)が前記バルブボディ(2)に対して摺動し、これに伴い前記ノズル(3)が前記ゲート(4)で開閉されて、前記ノズル(3)からの流体の流出量が調整されるスリーブ弁において、
前記弁棒(5)は、その一部分の断面形状が流線形とされており、前記ノズル(3)が開いている状態では、前記断面形状が流線形とされた部分が前記入口管(1)の曲管部(1a)及び貫通部(1b)に跨るように位置することを特徴とするスリーブ弁。
【請求項2】
前記弁棒(5)の断面形状が流線形とされた部分は、芯棒(5a)に導流カバー(5b)を被せて構成されていることを特徴とする請求項1に記載のスリーブ弁。
【請求項3】
流体が流入する入口管(1)に接続された筒状のバルブボディ(2)の周壁にノズル(3)が穿設され、前記バルブボディ(2)の内周側に筒状のゲート(4)が嵌められ、前記ゲート(4)に前記バルブボディ(2)の内側に位置する弁棒(5)が連結され、前記弁棒(5)が前記入口管(1)の曲管部(1a)及びその周壁の貫通部(1b)を通って外部に突出しており、
前記弁棒(5)の押引により前記ゲート(4)が前記バルブボディ(2)に対して摺動し、これに伴い前記ノズル(3)が前記ゲート(4)で開閉されて、前記ノズル(3)からの流体の流出量が調整されるスリーブ弁において、
前記弁棒(5)は、前記入口管(1)の曲管部(1a)を通る部分のみ断面形状が流線形とされ、他の部分の断面形状が円形とされていることを特徴とするスリーブ弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ダム放流設備、水道、化学プラント等において、水をはじめとした流体の運搬ラインに使用されるサブマージド型のスリーブ弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、上記各種設備の放流弁として、図4に示すようなサブマージド型のスリーブ弁が使用されている。このスリーブ弁は、流体が流入するエルボの入口管51に接続された筒状のバルブボディ52の周壁に多数のノズル53が穿設され、バルブボディ52の内周側に筒状のゲート54が嵌められ、ゲート54にバルブボディ52の内側に位置する弁棒55が連結された構成となっている。
【0003】
弁棒55は、断面形状が円形であり、入口管51の周壁を貫通して図示しないゲート開閉機構に連結されている。そして、ゲート開閉機構で操作される弁棒55の押引により、ゲート54がバルブボディ52に対して摺動し、これに伴いノズル53がゲート54で開閉されて、流体の流出量が調整される(例えば、下記特許文献1(第1図)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭53-93733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図4に示されたスリーブ弁のように、弁棒55がバルブボディ52の内側に配置されたものでは、図5に示すように、流体が湾曲した入口管51において弁棒55を横切るように流れる際、弁棒55の側面及び後面付近で渦が発生しやすく、局所的に圧力降下が生じる。
【0006】
そして、流速が速くなるに従い圧力降下が激しくなり、振動や騒音、キャビテーションが発生する恐れがあることから、その対策として、弁口径を大きく設定し、流速を許容値まで低下させる必要がある。
【0007】
そこで、この発明は、許容流速を高めて、弁口径を小さくすることができるスリーブ弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明は、流体が流入する入口管に接続された筒状のバルブボディの周壁にノズルが穿設され、前記バルブボディの内周側に筒状のゲートが嵌められ、前記ゲートに前記バルブボディの内側に位置する弁棒が連結され、前記弁棒が前記入口管の曲管部を通って外部に突出しており、
前記弁棒の押引により前記ゲートが前記バルブボディに対して摺動し、これに伴い前記ノズルが前記ゲートで開閉されて、前記ノズルからの流体の流出量が調整されるスリーブ弁において、
前記弁棒は、前記入口管の曲管部を通る部分の断面形状が流線形とされているものとしたのである。
【0009】
また、前記弁棒の断面形状が流線形とされた部分は、芯棒に導流カバーを被せて構成されるものとしたのである。
【0010】
また、前記ゲートの上流側と下流側の端部には、断面形状を流線形にするためのテーパー面が形成されているものとしたのである。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係るスリーブ弁では、バルブボディの内側に位置する弁棒の断面形状を、入口管の曲管部を通る部分で流線形としたので、流体が弁棒を横切るように流れる際、弁棒の側面及び後面付近での流体の渦の発生が抑制される。
【0012】
弁棒の断面形状が流線形とされた部分は、芯棒に導流カバーを被せて構成されるものとすれば、弁棒の加工に多大な手間やコストがかからない。
【0013】
また、ゲートの上流側と下流側の端部にそれぞれテーパー面を形成したことにより、弁内における渦の発生の抑制効果が向上する。
【0014】
そして、これらの構成上の特徴により、振動や騒音、キャビテーションが生じにくくなるので、流速の許容値を高めて、弁口径を小さくすることができる。
【0015】
なお、上記特徴のうち、少なくともいずれかの特徴を備えていれば、流体の渦の発生が抑制され、キャビテーションが生じにくくなる効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の実施形態に係るスリーブ弁の全体の外観を示す斜視図
図2】同上の入口管における流体の流れを示す横断平面図
図3】同上のゲート部分を示す拡大縦断面図
図4】従来の内弁棒型スリーブ弁を示す全体縦断側面図
図5】同上の入口管における流体の流れを示す横断平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態を図1乃至図3に基づいて説明する。
【0018】
このスリーブ弁は、流体が流入するエルボの入口管1に接続された円筒状で有底のバルブボディ2の周壁に多数のノズル3が設けられ、バルブボディ2の内周側に円筒状のゲート4が嵌められ、ゲート4に1本の弁棒5が連結された構成となっている。
【0019】
弁棒5は、バルブボディ2の内側において径方向断面の中央部に配置され、バルブボディ2と入口管1の間に介在する直管部6及び入口管1の曲管部1aを通り、曲管部1aの周壁の貫通部1bから外部に突出し、図示省略したゲート開閉機構に連結されている。
【0020】
そして、ゲート開閉機構の操作に伴う弁棒5の押引により、ゲート4がバルブボディ2に対して摺動し、これに伴いノズル3がゲート4で開閉されて、ノズル3からの流体の流出量が調整される。
【0021】
弁棒5の入口管1の曲管部1aを通る部分の断面形状は、図2に示すように、流線形とされており、弁棒5の断面形状が流線形とされた部分は、断面形状が円形の芯棒5aに導流カバー5bを被せて構成されている。
【0022】
このように、芯棒5aに導流カバー5bを被せて弁棒5の断面形状を流線形とすれば、弁棒5の加工に多大な手間やコストがかからない。なお、1本の棒材を切削等により加工して、弁棒5の断面形状を部分的に流線形としても、機能上の差異はない。
【0023】
ここで、弁棒5における流線形の断面形状とは、流体の流れが当たり始める部分から離脱する部分にかけて、円弧状の前面部分の両端から両側面の間隔が次第に細くなるように延びる涙滴状の形状を示すこととしている。
【0024】
また、ゲート4の上流側と下流側の端部には、それぞれ断面形状を流線形にするため、テーパー面4a,4bが形成されている。テーパー面4aは、下流側へかけて漸次縮径するものであり、テーパー面4bは、下流側へかけて漸次拡径するものである。これらのテーパー面4a,4bは、円錐面のほか、滑らかに内径が変化する曲面であってもよい。
【0025】
このようなスリーブ弁では、バルブボディ2の内側に位置する弁棒5の断面形状を、入口管1の曲管部1aを通る部分で流線形とした構成上の第1の特徴により、流体が弁棒5を横切るように流れる際、弁棒5の側面及び後面付近での流体の渦の発生が抑制される。
【0026】
また、ゲート4の上流側と下流側の端部にそれぞれテーパー面4a,4bを形成した構成上の第2の特徴により、弁内における渦の発生の抑制効果が向上する。
【0027】
これらの構成上の特徴により、上記スリーブ弁では、振動や騒音、キャビテーションが生じにくくなるので、流速の許容値を高めて、弁口径を小さくすることができる。
【0028】
なお、上記実施形態では、直管部6が入口管1及びバルブボディ2とは別体の管になっているものを例示したが、直管部6は、入口管1及びバルブボディ2の少なくともいずれかと一体化されているものであってもよい。
【0029】
また、構成上の第1及び第2の特徴をともに備えたものを例示したが、少なくとも構成上の第1の特徴を備えていれば、流体の渦の発生が抑制され、キャビテーションが生じにくくなる効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 入口管
1a 曲管部
1b 貫通部
2 バルブボディ
3 ノズル
4 ゲート
4a,4b テーパー面
5 弁棒
5a 芯棒
5b 導流カバー
6 直管部
図1
図2
図3
図4
図5