(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】配車管理装置、配車管理方法及び配車管理システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/123 20060101AFI20241111BHJP
G06Q 50/40 20240101ALI20241111BHJP
【FI】
G08G1/123 A
G06Q50/40
(21)【出願番号】P 2021049601
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2024-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】512200217
【氏名又は名称】GO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 倫
(72)【発明者】
【氏名】織田 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 隆由
(72)【発明者】
【氏名】石鍋 雄一郎
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-005367(JP,A)
【文献】特表2018-503920(JP,A)
【文献】国際公開第2019/235253(WO,A1)
【文献】特開2006-011726(JP,A)
【文献】特開平11-120495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G06Q 10/00 - 10/30
G06Q 30/00 - 30/08
G06Q 50/00 - 50/20
G06Q 50/26 - 99/00
G16Z 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準値以上の料金に対応するタクシーの配車依頼を優先的に受けることができる権利である優先権の使用要求を乗務員端末から受ける使用要求受付部と、
タクシーの利用希望者から配車要求を受ける配車要求受付部と、
前記使用要求受付部が前記使用要求を受けた後に、降車予定地を含まない前記配車要求を前記配車要求受付部が受けた場合に、
前記配車要求を送信した前記利用希望者の過去の利用履歴
に対応する過去のタクシーの料金の実績を参照することにより、前記配車要求に基づく乗車に対応する予定乗車料金を推定する料金推定部と、
前記料金推定部が推定した前記予定乗車料金が閾値以上の前記配車要求に対する配車依頼を、前記使用要求を送信した前記乗務員端末に最初に送信する配車管理部と、
を有する配車管理装置。
【請求項2】
基準値以上の料金に対応するタクシーの配車依頼を優先的に受けることができる権利である優先権の使用要求を乗務員端末から受ける使用要求受付部と、
タクシーの利用希望者から配車要求を受ける配車要求受付部と、
前記使用要求受付部が前記使用要求を受けた後に、降車予定地を含まない前記配車要求を前記配車要求受付部が受けた場合に、前記配車要求受付部が前記配車要求を受けた曜日
と前記配車要求受付部が前記配車要求を受けた時刻のうち
少なくともいずれかに対応する過去のタクシーの料金の実績を参照することにより、前記配車要求に基づく乗車に対応する予定乗車料金を推定する料金推定部と、
前記料金推定部が推定した前記予定乗車料金が閾値以上の前記配車要求に対する配車依頼を、前記使用要求を送信した前記乗務員端末に最初に送信する配車管理部と、
を有する配車管理装置。
【請求項3】
基準値以上の料金に対応するタクシーの配車依頼を優先的に受けることができる権利である優先権の使用要求を乗務員端末から受ける使用要求受付部と、
タクシーの利用希望者から配車要求を受ける配車要求受付部と、
前記使用要求受付部が前記使用要求を受けた後に、降車予定地を含まない前記配車要求を前記配車要求受付部が受けた場合に、
前記配車要求が示す前記利用希望者の乗車地
に対応する過去のタクシーの料金の実績を参照することにより、前記配車要求に基づく乗車に対応する予定乗車料金を推定する料金推定部と、
前記料金推定部が推定した前記予定乗車料金が閾値以上の前記配車要求に対する配車依頼を、前記使用要求を送信した前記乗務員端末に最初に送信する配車管理部と、
を有する配車管理装置。
【請求項4】
前記配車管理部は、前記料金推定部が推定した前記予定乗車料金が閾値以上の高単価配車であることを示すデータを含む前記配車依頼を前記乗務員端末に送信する、
請求項1から
3のいずれか一項に記載の配車管理装置。
【請求項5】
前記優先権には有効期限が設定されており、
前記配車管理部は、前記有効期限から所定の期間が経過していないことを条件として、前記料金推定部が推定した領域が前記閾値以上である場合に前記乗務員端末に前記配車依頼を送信する、
請求項1から
4のいずれか一項に記載の配車管理装置。
【請求項6】
コンピュータが実行する、
基準値以上の料金に対応するタクシーの配車依頼を優先的に受けることができる権利である優先権の使用要求を乗務員端末から受けるステップと、
タクシーの利用希望者から配車要求を受けるステップと、
前記使用要求を受けた後に、降車予定地を含まない前記配車要求を受けた場合に、
前記配車要求を送信した前記利用希望者の過去の利用履歴
に対応する過去のタクシーの料金の実績を参照することにより、前記配車要求に基づく乗車に対応する予定乗車料金を推定するステップと、
推定した前記予定乗車料金が閾値以上の前記配車要求に対する配車依頼を、前記使用要求を送信した前記乗務員端末に最初に送信するステップと、
を有する配車管理方法。
【請求項7】
コンピュータが実行する、
基準値以上の料金に対応するタクシーの配車依頼を優先的に受けることができる権利である優先権の使用要求を乗務員端末から受けるステップと、
タクシーの利用希望者から配車要求を受けるステップと、
前記使用要求を受けた後に、降車予定地を含まない前記配車要求を受けた場合に、
前記配車要求を受けた曜日
と前記配車要求を受けた時刻のうち
少なくともいずれかに対応する過去のタクシーの料金の実績を参照することにより、前記配車要求に基づく乗車に対応する予定乗車料金を推定するステップと、
推定した前記予定乗車料金が閾値以上の前記配車要求に対する配車依頼を、前記使用要求を送信した前記乗務員端末に最初に送信するステップと、
を有する配車管理方法。
【請求項8】
コンピュータが実行する、
基準値以上の料金に対応するタクシーの配車依頼を優先的に受けることができる権利である優先権の使用要求を乗務員端末から受けるステップと、
タクシーの利用希望者から配車要求を受けるステップと、
前記使用要求を受けた後に、降車予定地を含まない前記配車要求を受けた場合に、
前記配車要求が示す前記利用希望者の乗車地
に対応する過去のタクシーの料金の実績を参照することにより、前記配車要求に基づく乗車に対応する予定乗車料金を推定するステップと、
推定した前記予定乗車料金が閾値以上の前記配車要求に対する配車依頼を、前記使用要求を送信した前記乗務員端末に最初に送信するステップと、
を有する配車管理方法。
【請求項9】
タクシーの乗務員が使用する乗務員端末と、前記乗務員端末と通信可能な配車管理装置と、を備え、
前記配車管理装置は、
基準値以上の料金に対応するタクシーの配車依頼を優先的に受けることができる権利である優先権の使用要求を前記乗務員端末から受ける使用要求受付部と、
タクシーの利用希望者から配車要求を受ける配車要求受付部と、
前記使用要求受付部が前記使用要求を受けた後に、降車予定地を含まない前記配車要求を前記配車要求受付部が受けた場合に、
前記配車要求を送信した前記利用希望者の過去の利用履歴
に対応する過去のタクシーの料金の実績を参照することにより、前記配車要求に基づく乗車に対応する予定乗車料金を推定する料金推定部と、
前記料金推定部が推定した前記予定乗車料金が閾値以上の前記配車要求に対する配車依頼を、前記使用要求を送信した前記乗務員が使用する乗務員端末に最初に送信する配車管理部と、
を有し、
前記乗務員端末は、
前記優先権を使用するための操作を受け付ける操作制御部と、
前記操作制御部が前記操作を受け付けた場合に前記使用要求を前記配車管理装置に送信する情報送信部と、
降車時に確定した乗車料金が前記閾値以上であった場合に、高単価配車であったことを表示部に表示させる表示処理部と、
を有する、配車管理システム。
【請求項10】
タクシーの乗務員が使用する乗務員端末と、前記乗務員端末と通信可能な配車管理装置と、を備え、
前記配車管理装置は、
基準値以上の料金に対応するタクシーの配車依頼を優先的に受けることができる権利である優先権の使用要求を前記乗務員端末から受ける使用要求受付部と、
タクシーの利用希望者から配車要求を受ける配車要求受付部と、
前記使用要求受付部が前記使用要求を受けた後に、降車予定地を含まない前記配車要求を前記配車要求受付部が受けた場合に、
前記配車要求受付部が前記配車要求を受けた曜日
と前記配車要求受付部が前記配車要求を受けた時刻のうち
少なくともいずれかに対応する過去のタクシーの料金の実績を参照することにより、前記配車要求に基づく乗車に対応する予定乗車料金を推定する料金推定部と、
前記料金推定部が推定した前記予定乗車料金が閾値以上の前記配車要求に対する配車依頼を、前記使用要求を送信した前記乗務員が使用する乗務員端末に最初に送信する配車管理部と、
を有し、
前記乗務員端末は、
前記優先権を使用するための操作を受け付ける操作制御部と、
前記操作制御部が前記操作を受け付けた場合に前記使用要求を前記配車管理装置に送信する情報送信部と、
降車時に確定した乗車料金が前記閾値以上であった場合に、高単価配車であったことを表示部に表示させる表示処理部と、
を有する、配車管理システム。
【請求項11】
タクシーの乗務員が使用する乗務員端末と、前記乗務員端末と通信可能な配車管理装置と、を備え、
前記配車管理装置は、
基準値以上の料金に対応するタクシーの配車依頼を優先的に受けることができる権利である優先権の使用要求を前記乗務員端末から受ける使用要求受付部と、
タクシーの利用希望者から配車要求を受ける配車要求受付部と、
前記使用要求受付部が前記使用要求を受けた後に、降車予定地を含まない前記配車要求を前記配車要求受付部が受けた場合に、
前記配車要求が示す前記利用希望者の乗車地
に対応する過去のタクシーの料金の実績を参照することにより、前記配車要求に基づく乗車に対応する予定乗車料金を推定する料金推定部と、
前記料金推定部が推定した前記予定乗車料金が閾値以上の前記配車要求に対する配車依頼を、前記使用要求を送信した前記乗務員が使用する乗務員端末に最初に送信する配車管理部と、
を有し、
前記乗務員端末は、
前記優先権を使用するための操作を受け付ける操作制御部と、
前記操作制御部が前記操作を受け付けた場合に前記使用要求を前記配車管理装置に送信する情報送信部と、
降車時に確定した乗車料金が前記閾値以上であった場合に、高単価配車であったことを表示部に表示させる表示処理部と、
を有する、配車管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タクシーの配車をするための配車管理装置、配車管理方法及び配車管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の条件を満たすタクシーの乗務員に対して優先的に配車をする技術が知られている。特許文献1には、残労働時間を取得している乗務員に対して優先的に配車をするシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
所定の条件を満たすタクシーの乗務員に対して、乗車料金が高額になる配車依頼を優先的に割り当てることにより、乗務員のモチベーションが向上する。しかしながら、タクシーの配車を要求した利用客がどこまで移動したいかがわかっていない場合、乗車料金が高額になる配車依頼を特定の乗務員に対して割り当てることが困難であるという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、配車を要求した利用客の行き先がわからない場合にも、乗車料金が所定の条件を満たす可能性がある配車依頼を特定の乗務員に割り当てられるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の配車管理装置は、基準値以上の料金に対応するタクシーの配車依頼を優先的に受けることができる権利である優先権の使用要求を乗務員端末から受ける使用要求受付部と、タクシーの利用希望者から配車要求を受ける配車要求受付部と、前記使用要求受付部が前記使用要求を受けた後に、降車予定地を含まない前記配車要求を前記配車要求受付部が受けた場合に、(1)前記配車要求を送信した前記利用希望者の過去の利用履歴、又は(2)前記配車要求が示す前記利用希望者の乗車地、前記配車要求受付部が前記配車要求を受けた曜日、若しくは前記配車要求受付部が前記配車要求を受けた時刻のうち複数の条件を組み合わせた複合条件の少なくともいずれかに対応する過去のタクシーの料金の実績を参照することにより、前記配車要求に基づく乗車に対応する予定乗車料金を推定する料金推定部と、前記料金推定部が推定した前記予定乗車料金が閾値以上の前記配車要求に対する配車依頼を、前記使用要求を送信した前記乗務員端末に最初に送信する配車管理部と、を有する。
【0007】
前記料金推定部は、前記利用希望者と、前記利用希望者の過去の乗車地と、当該乗車地から乗車した際の乗車料金と、が関連付けられた前記利用履歴を参照し、前記配車要求受付部が受けた前記配車要求を送信した前記利用希望者及び前記配車要求が示す乗車地に前記利用履歴において関連付けられた一以上の前記乗車料金に基づいて前記予定乗車料金を推定してもよい。
【0008】
前記料金推定部は、過去に前記配車要求を受けた曜日及び時刻と、過去の乗車地と、当該乗車地から乗車した際の乗車料金と、を関連付けて記憶している記憶部を参照し、前記配車要求受付部が前記配車要求を受けた曜日及び時刻、並びに前記配車要求が示す乗車地に関連付けて前記記憶部に記憶された一以上の前記乗車料金に基づいて前記予定乗車料金を推定してもよい。
【0009】
前記料金推定部は、降車予定地を含まない前記配車要求を前記配車要求受付部が受けた場合に、前記過去のタクシーの料金の実績を参照することにより、前記配車要求に基づく乗車に対応する前記予定乗車料金を推定し、前記利用希望者の降車予定地を含む前記配車要求を前記配車要求受付部が受けた場合に、前記配車要求が示す乗車予定地及び降車予定地に基づいて前記予定乗車料金を推定してもよい。
【0010】
前記配車管理部は、前記使用要求受付部が前記使用要求を受けたことに応じて前記配車依頼を前記乗務員端末に送信した場合、前記乗務員端末を使用する乗務員が前記優先権を使用したことを記憶部に記憶させてもよい。
【0011】
前記配車管理部は、前記閾値以上の前記予定乗車料金に対応する前記配車依頼を送信した後に、降車時に確定した乗車料金が前記閾値未満であった場合に、前記乗務員端末を使用する乗務員が前記優先権を使用していないことを記憶部に記憶させてもよい。
【0012】
前記配車管理部は、前記料金推定部が推定した前記予定乗車料金が閾値以上の高単価配車であることを示すデータを含む前記配車依頼を前記乗務員端末に送信してもよい。
【0013】
前記配車管理部は、降車時に確定した乗車料金を示すデータを受け、当該乗車料金が閾値以上の額である場合に、前記配車依頼が、前記料金推定部が推定した前記予定乗車料金が閾値以上の高単価配車に対応する配車依頼であったことを示す通知を前記乗務員端末に送信してもよい。
【0014】
前記優先権には有効期限が設定されており、前記配車管理部は、前記有効期限から所定の期間が経過していないことを条件として、前記料金推定部が推定した領域が前記閾値以上である場合に前記乗務員端末に前記配車依頼を送信してもよい。
【0015】
前記配車管理部は、前記料金推定部が推定した前記予定乗車料金が閾値以上である場合に、前記使用要求を送信した前記乗務員端末に対応する前記タクシーが前記配車要求により特定される乗車地に到着するまでの所要時間と、前記乗務員端末を使用する乗務員が前記優先権を有するか否かと、に基づいて、前記乗務員端末に前記配車依頼を送信するか否かを決定してもよい。
【0016】
前記配車管理部は、前記料金推定部が推定した前記予定乗車料金が閾値以上である場合に、前記乗務員端末を使用する乗務員に関連付けて評価結果を記憶している記憶部に記憶された前記乗務員の評価結果と、前記乗務員が前記優先権を有するか否かと、に基づいて、前記乗務員端末に前記配車依頼を送信するか否かを決定してもよい。
【0017】
前記使用要求受付部は、前記乗務員端末を使用する乗務員に関連付けて前記優先権の有効期限が記憶されている記憶部を参照し、前記有効期限まで所定の期間になると、前記優先権の有効期限を示す情報を前記乗務員端末に送信してもよい。
【0018】
本発明の第2の態様の配車管理方法は、コンピュータが実行する、基準値以上の料金に対応するタクシーの配車依頼を優先的に受けることができる権利である優先権の使用要求を乗務員端末から受けるステップと、タクシーの利用希望者から配車要求を受けるステップと、前記使用要求を受けた後に、降車予定地を含まない前記配車要求を受けた場合に、(1)前記配車要求を送信した前記利用希望者の過去の利用履歴、又は(2)前記配車要求が示す前記利用希望者の乗車地、前記配車要求を受けた曜日、若しくは前記配車要求を受けた時刻のうち複数の条件を組み合わせた複合条件の少なくともいずれかに対応する過去のタクシーの料金の実績を参照することにより、前記配車要求に基づく乗車に対応する予定乗車料金を推定するステップと、推定した前記予定乗車料金が閾値以上の前記配車要求に対する配車依頼を、前記使用要求を送信した前記乗務員端末に最初に送信するステップと、を有する。
【0019】
本発明の第3の態様の配車管理システムは、タクシーの乗務員が使用する乗務員端末と、前記乗務員端末と通信可能な配車管理装置と、を備え、前記配車管理装置は、基準値以上の料金に対応するタクシーの配車依頼を優先的に受けることができる権利である優先権の使用要求を前記乗務員端末から受ける使用要求受付部と、タクシーの利用希望者から配車要求を受ける配車要求受付部と、前記使用要求受付部が前記使用要求を受けた後に、降車予定地を含まない前記配車要求を前記配車要求受付部が受けた場合に、(1)前記配車要求を送信した前記利用希望者の過去の利用履歴、又は(2)前記配車要求が示す前記利用希望者の乗車地、前記配車要求受付部が前記配車要求を受けた曜日、若しくは前記配車要求受付部が前記配車要求を受けた時刻のうち複数の条件を組み合わせた複合条件の少なくともいずれかに対応する過去のタクシーの料金の実績を参照することにより、前記配車要求に基づく乗車に対応する予定乗車料金を推定する料金推定部と、前記料金推定部が推定した前記予定乗車料金が閾値以上の前記配車要求に対する配車依頼を、前記使用要求を送信した前記乗務員が使用する乗務員端末に最初に送信する配車管理部と、を有し、前記乗務員端末は、前記優先権を使用するための操作を受け付ける操作制御部と、前記操作制御部が前記操作を受け付けた場合に前記使用要求を前記配車管理装置に送信する情報送信部と、降車時に確定した乗車料金が前記閾値以上であった場合に、高単価配車であったことを表示部に表示させる表示処理部と、を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、配車を要求した利用客の行き先がわからない場合にも、乗車料金が所定の条件を満たす可能性がある配車依頼を特定の乗務員に割り当てられるようになるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】車両管理システムSの概要を説明するための図である。
【
図2】乗務員端末に表示される画面の例を示す図である。
【
図5】あるユーザの利用履歴の一例を示す図である。
【
図6】乗務員管理データベースの一例を示す図である。
【
図7】配車管理システムにおける処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図8】配車管理装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[車両管理システムSの概要]
図1は、車両管理システムSの概要を説明するための図である。車両管理システムSは、タクシーTの利用希望者(以下、「ユーザ」という)の要求に応じてタクシーTを配車するためのシステムであり、複数のユーザ端末1(ユーザ端末1-1からユーザ端末1-M、Mは自然数)と、複数の乗務員端末2(乗務員端末2-1から乗務員端末2-N、Nは自然数)と、配車管理装置3とを備える。
【0023】
ユーザ端末1は、タクシーTを利用するユーザの情報端末であり、例えばスマートフォン、タブレット、又はパーソナルコンピュータである。ユーザ端末1は、無線通信回線及びネットワークNを介して配車管理装置3との間でデータを送受信することができる。ネットワークNは、例えばインターネットである。
【0024】
乗務員端末2は、タクシーTに搭載されており、タクシーTの乗務員が使用する情報端末である。乗務員端末2は、各種の情報を表示するディスプレイ、及びタクシーTの乗務員の操作を受け付ける操作部を有している。乗務員端末2は、無線通信回線及びネットワークNを介して配車管理装置3との間でデータを送受信することができる。乗務員端末2は、定期的にタクシーTの位置を示す位置情報を配車管理装置3に送信する。
【0025】
配車管理装置3は、例えばタクシー会社が管理しているサーバであり、ユーザ端末1から送信されたユーザからの配車要求に応じて、予め配車管理装置3に登録された複数のタクシーTから、配車を依頼するタクシーTを選択する。配車管理装置3は、選択したタクシーTに対応する乗務員端末2に配車依頼を送信する。配車管理装置3は、例えば、ユーザ端末1から配車依頼を受けたことに応じて、ユーザの位置に到達できるまでの所要時間が短い順番にタクシーTの優先順位を決定し、優先順位が高いタクシーTの乗務員端末2から順番に配車依頼を送信する。
【0026】
ところで、ユーザが、タクシーTに乗車する予定の時刻を指定する場合がある。このような時刻指定配車の依頼に乗務員が応じた場合、タクシーTは、乗車予定時刻までに乗車予定位置に到着する必要があるため、タクシーTが乗車予定位置に到着してからユーザが乗車予定位置に到着するまでの間に、タクシーTが営業運転をできない時間が生じてしまう場合がある。
【0027】
そこで、配車管理システムSは、高い料金になると予想されるユーザからの配車要求があった場合に、過去に時刻指定配車の依頼に応じたりユーザからの評価が高かったりした高貢献乗務員に対して優先的に配車依頼を送信する。このように、基準値以上の料金に対応するタクシーの配車依頼を優先的に受けることができる権利である優先権を、本明細書においては高単権(High-price Right)と称する。また、予め設定された金額以上の料金になると想定される配車を高単価配車と称する。
【0028】
高単権が付与された乗務員が、高い料金になると予想される高単価配車を受けたい場合に、高単権を使用するための操作を乗務員端末2において行うと、乗務員端末2は、高単権を使用する要求を配車管理装置3に送信する。配車管理装置3は、乗務員端末2から高単権を使用する要求を受けた場合、当該要求を送信した配車管理装置3に対して高単価配車を優先的に依頼する。配車管理システムSがこのように構成されていることで、乗務員は、待ち時間が長くなる可能性がある時刻指定配車に対する依頼であっても積極的に受けるように動機づけられる。
【0029】
ここで、配車管理装置3がユーザ端末1から配車要求を受けた時点では、配車要求を送信したユーザの降車予定位置がわからないため、当該ユーザの乗車料金が高単価になるかどうかもわからない。そこで、配車管理装置3は、ユーザ端末1を用いて(1)配車要求を送信したユーザの過去の利用履歴、又は(2)配車要求が示すユーザの乗車地、配車要求受付部が配車要求を受けた曜日、若しくは配車要求を受けた時刻のうち複数の条件を組み合わせた複合条件の少なくともいずれかに対応する過去のタクシーの料金の実績を参照することにより、配車要求に基づく乗車に対応する予定乗車料金を推定することを特徴としている。
【0030】
配車管理装置3は、このようにして推定した予定乗車料金が閾値以上(例えば平均的な乗車料金以上)である場合に、高単権を使用する要求をした乗務員の乗務員端末2に対して優先的に配車依頼を送信する。配車管理システムSがこのように動作することで、配車要求に降車予定位置が含まれていない場合であっても、高単権を使用する乗務員に、高い料金になる蓋然性が高い配車を依頼することができるので、乗務員が高単権を取得するように動機づけられる。
【0031】
図2は、乗務員端末2に表示される画面の例を示す図である。
図2(a)は、乗務員が高単権を獲得した場合に表示される画面を示している。配車管理装置3は、乗務員を定期的に評価しており、例えば、所定の期間(例えば1ヵ月)における時刻指定配車の依頼に対する承諾数が多かった乗務員に対して
図2(a)に示すような通知を送信する。
図2(a)においては、2つの高単権が付与されたことが示されているが、一時に付与される高単権の数は任意であり、配車管理装置3は、例えば、単位期間(例えば1ヵ月)内の時刻指定配車の依頼に対する承諾数が多いほど多くの数の高単権を付与する。
【0032】
乗務員は、
図2(a)における「使用する」というアイコン画像に触れることで、すぐに高単権を使用することができる。乗務員は乗務員端末2に表示される他の画面を介して高単権を使用するための操作をしてもよい。
【0033】
図2(b)は、乗務員が高単権を使用するための操作をした後に表示される画面の一例である。
図2(b)においては、高単権を使用して配車を受ける高単価配車モードに設定されていることが示されている。
図2(b)に示す画面の右側には、乗務員が持っている高単権の残数と、高単権の有効期限が示されている。
図2(b)に示す例においては、2021年4月30日が有効期限の高単権が3つ、5月31日が有効期限の高単権が4つ、6月30日が有効期限の高単権が3つ残っていることが示されている。
【0034】
[乗務員端末2の構成]
図3は、乗務員端末2の構成例を示す図である。乗務員端末2は、通信部21と、表示部22と、操作部23と、GPS(Global Positioning System)受信機24と、記憶部25と、制御部26とを有する。
【0035】
通信部21は、ネットワークNを介して配車管理装置3とデータを送受信するための通信インターフェイスであり、例えば無線通信コントローラを有する。通信部21は、配車管理装置3から受信したデータを制御部26に通知する。また、通信部21は、制御部26から入力されたデータをネットワークNに送信する。
【0036】
表示部22は、タクシーTの乗務員に通知するための情報を表示するデバイスであり、例えばディスプレイである。表示部22は、音声を出力するスピーカを含んでもよい。操作部23は、タクシーTの乗務員の操作を受け付けるためのデバイスであり、例えば表示部22に重ねて設けられたタッチパネルを含む。
【0037】
GPS受信機24は、GPSの衛星から送信される電波を受信し、受信した電波に含まれる情報に基づいて、タクシーTの位置を示す経度・緯度を算出する。GPS受信機24は、算出した経度・緯度を制御部26に通知する。
【0038】
記憶部25は、各種のデータを記憶するためのデバイスであり、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を含む。記憶部25は、制御部26が実行するプログラムを記憶する。また、記憶部25は、配車管理装置3から受信した非送信エリアを示すエリア情報を記憶する。
【0039】
制御部26は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、記憶部25に記憶されたプログラムを実行することにより、情報取得部261、位置特定部262、操作制御部263及び情報送信部264として機能する。
【0040】
情報取得部261は、配車管理装置3から各種の情報を取得する。情報取得部261は、例えば高単権が付与されたことを示す通知を配車管理装置3から取得する。また、情報取得部261は、配車依頼を配車管理装置3から取得する。情報取得部261は、配車依頼を取得したことを操作制御部263に通知する。
【0041】
位置特定部262は、タクシーTの位置に対応する経度・緯度を示す位置情報をGPS受信機24から取得し、取得した位置情報に基づいてタクシーTの位置を特定する。位置特定部262は、特定した位置を情報送信部264に通知する。
【0042】
操作制御部263は、タクシーTの乗務員による操作を受け付ける。具体的には、操作制御部263は、操作用画面を表示部22に表示させ、操作用画面を表示している間に操作部23において検出された操作位置に基づいて、乗務員が操作した内容を特定する。
【0043】
操作制御部263は、情報取得部261を介して高単権が付与されたという通知を配車管理装置3から取得した場合、高単権を使用する操作を行うための画面を表示部22に表示させ、高単権を使用するための操作を受け付ける。操作制御部263は、高単権を使用するための操作が行われた場合、情報送信部264を介して、高単権を使用する要求を配車管理装置3に送信する。
【0044】
操作制御部263は、情報取得部261を介して配車依頼の通知を受けると、配車依頼があったことを示す情報とともに、配車依頼を受け付けるか否かを入力するための操作用画像を表示部22に表示させる表示処理部としても機能する。操作制御部263は、操作部23において配車依頼を承諾する操作が行われたことを検出すると、配車依頼を承諾する操作が行われたことを情報送信部264に通知する。
【0045】
また、操作制御部263は、高単権の使用する操作が行われた後に、高単権を使用した配車依頼であったことを示す通知を配車管理装置3から受けた場合に、高単価配車であったことを表示部22に表示させる表示処理部としても機能する。操作制御部263は、降車時に確定した乗車料金が、高単価配車に対応する閾値以上であった場合に、高単価配車であったことを表示部22に表示させる。
【0046】
情報送信部264は、通信部21を介して、各種の情報を配車管理装置3に送信する。情報送信部264は、例えば位置特定部262が特定した現在のタクシーTの位置を示す位置情報を配車管理装置3に送信する。また、情報送信部264は、高単権を使用するための操作が行われたことが操作制御部263から通知されると、高単権を使用する要求を配車管理装置3に送信する。情報送信部264は、配車依頼を承諾する操作が行われたことが操作制御部263から通知されると、通信部21を介して、配車依頼を承諾することを示す通知を配車管理装置3に送信する。
【0047】
[配車管理装置3の構成]
図4は、配車管理装置3の構成例を示す図である。配車管理装置3は、通信部31と、記憶部32と、制御部33とを有する。制御部33は、高単権管理部331と、使用要求受付部332と、配車要求受付部333と、料金推定部334と、配車管理部335と、を有する。
【0048】
通信部31は、ネットワークNを介してユーザ端末1及び乗務員端末2とデータを送受信するための通信インターフェイスであり、例えばLAN(Local Area Network)コントローラを有する。通信部31は、ユーザ端末1及び乗務員端末2から受信したデータを制御部33に通知する。また、通信部31は、制御部33から入力されたデータをネットワークNに送信する。
【0049】
記憶部32は、各種のデータを記憶するためのデバイスであり、例えばROM、RAM及びSSD等の記憶媒体を含む。記憶部32は、制御部33が実行するプログラムを記憶する。また、制御部33は、複数のユーザに関連付けて、ユーザが過去にタクシーTを利用して乗車した利用履歴を記憶している。
【0050】
図5は、あるユーザの利用履歴の一例を示す図である。利用履歴には、例えば、ユーザが乗車した日時、ユーザの乗車地、ユーザの降車地、及び乗車料金が含まれている。利用履歴には、ユーザが乗車した日時及び乗車料金が含まれていなくてもよい。記憶部32は、ユーザに無関係に、過去に配車要求を受けた曜日及び時刻(すなわち乗車日時)と、過去の乗車地と、当該乗車地から乗車した際の乗車料金と、を関連付けて記憶してもよい。記憶部32は、過去に配車要求を受けた曜日又は日にち及び過去の乗車地の組み合わせごとに、乗車料金の統計値(例えば平均値、中央値)を記憶してもよい。
【0051】
また、記憶部32は、複数の乗務員それぞれの状態を管理するための乗務員管理データベースを記憶している。
図6は、乗務員管理データベースの一例を示す図である。
図6に示す乗務員管理データベースにおいては、乗務員を識別するための乗務員IDと、乗務員が有する高単権の残数と、乗務員の評価と、高単権使用フラグと、が関連付けられている。
図6においては、「高単権使用フラグ」に〇が付されている乗務員が、高単権を使用する要求をしており、使用を要求した高単権をまだ使用していないことが示されている。乗務員管理データベースにおいては、乗務員IDと高単権の残数のみが関連付けられていてもよい。
【0052】
図4に戻って、制御部33の各部の構成を説明する。制御部33は、記憶部32に記憶されたプログラムを実行することにより、高単権管理部331、使用要求受付部332、配車要求受付部333、料金推定部334及び配車管理部335として機能する。
【0053】
高単権管理部331は、
図6に示した乗務員管理データベースに記録された乗務員の評価を参照して、どの乗務員に高単権を付与するかを決定し、高単権を付与した乗務員の乗務員IDに関連付けられた高単権残数を更新する。高単権管理部331は、例えば、過去の所定の期間内に乗務員が承諾した時刻指定配車の数に基づいて、乗務員に付与する高単権の数を決定する。高単権管理部331は、通信部31を介して、乗務員に高単権を付与したことを示す通知を乗務員端末2に送信する。
【0054】
使用要求受付部332は、通信部31を介して、高単権の使用要求を乗務員端末2から受ける。使用要求受付部332は、乗務員管理データベースを参照し、高単権の使用要求を受けた乗務員端末2に対応する乗務員IDに関連付けられたデータを高単権使用中の状態に更新する。使用要求受付部332は、高単権の使用要求を受けたことを配車要求受付部333に通知する。
【0055】
なお、高単権には有効期限が設定されており、使用要求受付部332は、有効期限の前であることを条件として使用要求を受けてもよい。使用要求受付部332は、乗務員端末2を使用する乗務員に関連付けて高単権の有効期限が記憶されている記憶部32を参照し、有効期限まで所定の期間になると、高単権の有効期限を示す情報を乗務員端末2に送信してもよい。所定の期間は、高単権の使用を要求してから高単権を使用することができるまでの期間の最大値に基づいて定められており、例えば1週間である。使用要求受付部332がこのように動作することで、乗務員端末2が、乗務員が持っている高単権の有効期限が切れる前に高単権の有効期限を表示できるので、乗務員が、自身が持っている高単権を有効期限内に使用しやすくなる。
【0056】
配車要求受付部333は、タクシーTの利用を希望するユーザから配車要求を受ける。具体的には、配車要求受付部333は、通信部31を介して、ユーザ端末1が送信した配車要求を受ける。配車要求には、ユーザが希望する乗車予定位置を示す乗車予定位置情報が含まれている。配車要求受付部333は、配車要求を受けたことを料金推定部334及び配車管理部335に通知する。
【0057】
料金推定部334は、配車要求受付部333が配車要求を受けた場合に、配車を要求したユーザの乗車において発生する予定の料金である予定乗車料金を推定する。料金推定部334は、使用要求受付部332が高単権の使用要求を受けていない場合には料金を推定せず、使用要求受付部332が高単権の使用要求を受けた後に配車要求受付部333が配車要求を受けたことに応じて料金を推定してもよい。料金推定部334は、配車管理部335から予定乗車料金を要求された場合に予定乗車料金を推定し、推定した予定乗車料金を配車管理部335に通知してもよい。
【0058】
料金推定部334は、ユーザの降車予定地を含む配車要求を配車要求受付部333が受けた場合に、配車要求が示す乗車予定地及び降車予定地に基づいて予定乗車料金を推定する。料金推定部334は、例えば、ユーザの降車予定地を含む配車要求を配車要求受付部333が受けた場合に、乗車地と降車地の組み合わせと乗車料金とが関連付けられた乗車料金データベースを参照することにより、予定乗車料金を推定する。
【0059】
一方、料金推定部334は、降車予定地を含まない配車要求を配車要求受付部333が受けた場合に、例えば、過去のタクシーTの料金の実績を参照することにより、配車要求に基づく乗車に対応する予定乗車料金を推定する。具体的には、料金推定部334は、使用要求受付部332が高単権の使用要求を受けた後に、降車予定地を含まない配車要求を配車要求受付部333が受けた場合に、記憶部32に記憶された、配車要求を送信したユーザの過去の利用履歴を参照して、ユーザが過去にタクシーTを利用したときの料金に基づいて、配車要求に基づく乗車に対応する予定乗車料金を推定する。
【0060】
具体的には、料金推定部334は、
図5に示した利用履歴を参照し、ユーザと、ユーザの過去の乗車地と、当該乗車地から乗車した際の乗車料金と、に基づいて予定乗車料金を推定する。料金推定部334は、例えば、配車要求受付部333が受けた配車要求を送信したユーザ及び配車要求が示す乗車地に利用履歴において関連付けられた一以上の乗車料金に基づいて予定乗車料金を推定する。料金推定部334がこのように動作することで、ユーザが降車予定地を入力することなく配車を要求した場合であっても、予定乗車料金を推定することができる。
【0061】
図5に示した利用履歴においては、金曜日の午後10時以降にユーザが神田からタクシーTに乗車した場合に、乗車料金の平均値が3500円になっている。そこで、料金推定部334は、例えば、このユーザが金曜日の夜間帯に神田から乗車する場合の予定乗車料金を3500円と推定する。また、ユーザが昼間の時間帯に神田からタクシーTに乗車した場合の乗車料金の平均値は1200円である。そこで、料金推定部334は、このユーザが昼間の時間帯に神田から乗車する場合の予定乗車料金を1200円と推定する。
【0062】
料金推定部334は、過去の所定期間(例えば直近の1ヵ月間)におけるユーザの利用履歴における乗車料金のばらつきが所定の範囲に収まっていることを条件として、ユーザが過去の所定期間内にタクシーTを利用したときの乗車料金の統計値(例えば平均値、中央値、最大値又は最小値)に基づいて予定乗車料金を推定してもよい。料金推定部334がこのように動作することで、配車要求に降車予定地が含まれていなくても、乗車地や降車地が一定ではないが、タクシーTを利用する際には同程度の料金になるユーザの予定乗車料金を推定することが可能になる。なお、利用履歴に乗車料金が含まれていない場合、料金推定部334は、乗車地と降車地と乗車料金とが関連付けられた乗車料金データベースを参照し、ユーザの利用履歴が示す乗車地と降車地とに対応する予定乗車料金を推定してもよい。
【0063】
料金推定部334は、同じ曜日又は同じ時間帯に、配車要求が示す乗車地から乗車した複数の履歴があることを条件として、複数の履歴が示す乗車料金の平均値を予定乗車料金としてもよい。料金推定部334がこのように動作することで、予定乗車料金の推定精度が向上する。また、料金推定部334は、同じ曜日又は同じ時間帯に、配車要求が示す乗車地から乗車した履歴のうち、他の履歴が示す乗車料金との差が閾値以上ある履歴を除く複数の履歴を用いて予定乗車料金を推定してもよい。料金推定部334がこのように動作することで、乗車地から降車地まで移動する間に通常と異なる他の場所を経由した場合の乗車料金が使用されないので、予定乗車料金の推定精度が向上する。
【0064】
料金推定部334は、配車を要求したユーザの利用履歴ではなく、過去にタクシーTを利用した多数のユーザの利用履歴が示す乗車地と乗車料金との関係、曜日と乗車料金との関係、乗車時刻と乗車料金との関係の少なくともいずれかに基づいて、予定乗車料金を推定してもよい。一例として、料金推定部334は、配車要求が示すユーザの乗車地、配車要求受付部が配車要求を受けた曜日、若しくは配車要求受付部が配車要求を受けた時刻のうち複数の条件を組み合わせた複合条件の少なくともいずれかに対応する過去のタクシーの料金の実績を参照することにより、配車要求に基づく乗車に対応する予定乗車料金を推定する。
【0065】
料金推定部334は、例えば、過去に配車要求を受けた曜日及び時刻と、過去の乗車地と、当該乗車地から乗車した際の乗車料金と、を関連付けて記憶している記憶部32を参照し、配車要求受付部333が配車要求を受けた曜日及び時刻、並びに配車要求が示す乗車地に関連付けて記憶部32に記憶された一以上の乗車料金の実績に基づいて予定乗車料金を推定する。
【0066】
具体的には、昼間の時間帯に神田から乗車した複数のユーザの乗車料金の平均値が1500円であり、夜間の時間帯に神田から乗車した複数のユーザの乗車料金の平均値が2500円であるとする。この場合、料金推定部334は、乗車地が神田になっている配車要求を昼間の時間帯に配車要求受付部333が受けた場合の予定乗車料金を1500円であると推定し、乗車地が神田になっている配車要求を夜間の時間帯に配車要求受付部333が受けた場合の予定乗車料金を2500円であると推定する。
【0067】
他の例として、月曜日に神田から乗車した複数のユーザの乗車料金の平均値が1500円であり、金曜日に神田から乗車した複数のユーザの乗車料金の平均値が2000円であるとする。この場合、料金推定部334は、乗車地が神田になっている配車要求を配車要求受付部333が月曜日に受けた場合の予定乗車料金を1500円であると推定し、乗車地が神田になっている配車要求を配車要求受付部333が金曜日に受けた場合の予定乗車料金を2000円であると推定してもよい。
【0068】
さらに他の例として、月曜日の夜間の時間帯に乗車した複数のユーザの乗車料金の平均値が2000円であり、金曜日の夜間の時間帯に乗車した複数のユーザの乗車料金の平均値が3000円であるとする。この場合、料金推定部334は、月曜日の夜間の時間帯に配車要求受付部333が配車要求を受けた場合の予定乗車料金を2000円であると推定し、金曜日の夜間の時間帯に配車要求受付部333が配車要求を受けた場合の予定乗車料金を3000円であると推定してもよい。
【0069】
料金推定部334は、配車要求受付部333が受けた配信要求が示す乗車地、又は配信要求を受けた曜日若しくは時間帯に基づいて、どの条件に基づいて予定乗車料金を推定するかを決定してもよい。料金推定部334は、例えば、複数の乗車料金のばらつきが所定の範囲内に収まっている乗車地、曜日又は時間帯の組み合わせに対応する過去の乗車料金に基づいて予定乗車料金を推定する。料金推定部334が、このように、予定乗車料金を推定するために用いる条件を複数の条件から選択することで、料金推定部334は、配車要求の内容に適した方法(すなわち、比較的高い精度で予定乗車料金を推定できる方法)で予定乗車料金を推定することができる。
【0070】
配車管理部335は、配車要求受付部333が配車要求を受けた場合に、配車依頼をする乗務員端末2を決定する。配車管理部335は、
図6に示した乗務員管理データベースを参照し、高単権の使用要求をしている乗務員がいない場合、配車要求が示す乗車地に最も早く到着できると想定されるタクシーTの乗務員端末2から順番に配車依頼を送信する。
【0071】
配車管理部335は、高単権の使用要求をしている乗務員がいる場合、料金推定部334が推定する予定乗車料金に基づいて、配車要求に基づく乗車が高単価配車であるか否かを判定する。配車管理部335は、料金推定部334が推定した予定乗車料金が閾値以上となった配車要求に対する配車依頼を、高単権の使用要求を送信した乗務員端末2に最初に送信する。配車管理部335は、高単権の使用要求をしている乗務員が複数いる場合、高単権の残数がより多い乗務員の乗務員端末2に優先的に配車依頼を送信してもよい。配車管理部335がこのように動作することで、乗務員の高単権で消滅してしまうのを防ぎやすい。
【0072】
ところで、乗務員が高単権の使用要求をしているとしても、当該乗務員のタクシーTが乗車地に到着するまでに長時間を要する場合、当該乗務員の乗務員端末2に配車依頼をすることは望ましくない。そこで、配車管理部335は、料金推定部334が推定した予定乗車料金が閾値以上である場合に、高単権の使用要求を送信した乗務員端末2に対応するタクシーTが配車要求により特定される乗車地に到着するまでの所要時間と、乗務員端末2を使用する乗務員が高単権を有するか否かと、に基づいて、乗務員端末2に配車依頼を送信するか否かを決定してもよい。
【0073】
配車管理部335は、高単権を有する乗務員が運転するタクシーTの位置に基づいて、乗車地に閾値以内の時間(例えば5分以内)に到着することができると予想されることを条件として、高単価配車に対応する配車依頼を乗務員端末2に送信する。配車管理部335がこのように動作することで、高単権を有する乗務員に優先的に高単価配車に対応する配車依頼をしつつ、ユーザが待ち過ぎる状況の発生を抑制することができる。
【0074】
配車管理部335は、料金推定部334が推定した予定乗車料金が閾値以上である場合に、乗務員端末2を使用する乗務員に関連付けて評価結果を記憶している記憶部32に記憶された乗務員の評価結果(すなわち乗務員管理データベースが示す乗務員の評価結果)と、乗務員が高単権を有するか否かと、に基づいて、乗務員端末2に配車依頼を送信するか否かを決定してもよい。配車管理部335は、例えば高単権の使用要求をしている乗務員が複数いる場合、乗務員管理データベースを参照し、より高い評価を受けている乗務員の乗務員端末2に配車依頼を送信してもよい。配車管理部335がこのように動作することで、乗務員が高い評価を受けるように動機づけられる。
【0075】
配車管理部335は、使用要求受付部332が使用要求を受けたことに応じて配車依頼を乗務員端末2に送信した場合、乗務員端末2を使用する乗務員が高単権を使用したことを記憶部32に記憶させる。配車管理部335は、例えば、配車依頼を送信した乗務員端末2に対応する乗務員に関連付けて記憶部32に記憶された高単権残数から1を減算することで、乗務員が同じ高単権を繰り返し使用できないようにする。
【0076】
ただし、配車管理部335が、予定乗車料金に基づいて高単価配車であると判定したとしても、予定乗車料金の推定の根拠となった降車地と異なる場所で乗客が降車してしまい、実際には高単価の乗車でなかったという場合も生じ得る。そこで、配車管理部335は、閾値以上の予定乗車料金に対応する配車依頼を送信した後に、降車時に確定した乗車料金(乗務員端末2から受信した乗車料金)が閾値未満であった場合に、乗務員端末2を使用する乗務員が高単権を使用していないことを記憶部32に記憶させる。具体的には、配車管理部335は、配車依頼を送信した時点で、高単権残数を減算していた場合、配車依頼を送信した乗務員端末2に対応する乗務員に関連付けて記憶部32に記憶された高単権残数に1を加算することで、乗務員が再び高単権を使用できるようにする。配車管理部335は、配車依頼を送信した時点で、高単権残数を減算していなかった場合、記憶部32に記憶された高単権残数を更新しない。
【0077】
配車管理部335は、配車依頼を乗務員端末2に送信する際に、料金推定部334が推定した予定乗車料金が閾値以上の高単価配車であることを示すデータを含む配車依頼を乗務員端末2に送信してもよい。配車管理部335がこのような配車依頼を乗務員端末2に送信することで、乗務員が配車依頼を承諾する確率が高まる。
【0078】
しかしながら、乗務員が高単価配車であることを期待したにもかかわらず、実際には高単価の乗車ではなかった場合に、乗務員のモチベーションが低下してしまうおそれがある。そこで、配車管理部335は、降車時に確定した乗車料金を示すデータを受け、当該乗車料金が閾値以上の額である場合に、乗務員端末2に送信した配車依頼が、予定乗車料金が閾値以上の高単価配車に対応する配車依頼であったことを示す通知を乗務員端末2に送信してもよい。配車管理部335が、高単価配車に対応する配車依頼であったことを示す通知を乗務員端末2に送信することで、乗務員は、高単権が使用されたことを認識することができる。
【0079】
配車管理部335は、配車依頼を乗務員端末2に送信した時点では、乗務員端末2に対応する乗務員に関連付けて記憶部32に記憶された高単権残数から1を減算せず、降車時に確定した乗車料金が閾値以上の額である場合に、配車依頼を送信した乗務員端末2に対応する乗務員に関連付けて記憶部32に記憶された高単権残数から1を減算してもよい。そして、配車管理部335は、高単価配車に対応する配車依頼であったことを示す通知とともに、減算後の高単権残数を乗務員端末2に送信してもよい。配車管理部335が高単権残数を乗務員端末2に送信することで、乗務員が自身の高単権残数を認識することができる。
【0080】
ところで、乗務員が高単権を使用したいと思っても、高単権を使用できる配車要求がすぐに発生するとは限らない。したがって、高単権に有効期限が定められている場合に、乗務員が高単権の有効期限内に使用要求をしても、有効期限内に高単権を使用できないということも生じ得る。そこで、配車管理部335は、高単権の有効期限から所定の期間が経過していないことを条件として、料金推定部334が推定した領域が閾値以上である場合に乗務員端末2に配車依頼を送信してもよい。所定の期間は、高単権を使用できる配車要求が発生する最大の時間間隔に基づいて定められており、例えば1週間である。配車管理部335がこのように動作することで、乗務員に不満が生じることを防止できる。
【0081】
[配車管理システムSにおける処理の流れ]
図7は、配車管理システムSにおける処理の流れを示すシーケンス図である。
図7に示すシーケンス図は、高単権を持っている乗務員が、高単権を使用するための操作を乗務員端末2-1において行った時点から開始している。乗務員端末2-1は、高単権の使用要求を配車管理装置3に送信する。配車管理装置3は、使用要求を送信した乗務員端末2-1に対応する乗務員IDに関連付けられた高単権使用フラグを使用状態にすることにより、使用要求を登録する(S1)。
【0082】
その後、配車管理装置3がユーザ端末1から配車要求を受けた場合、料金推定部334は、配車要求が示す乗車地又は配車要求が送信された日時の少なくともいずれかの情報と、記憶部32に記憶された情報とに基づいて、予定乗車料金の推定値を算出する(S2)。配車管理部335は、推定された予定乗車料金が高単価配車に相当する閾値以上であると判定した場合(S3においてYES)、高単権の使用要求を送信していた乗務員端末2-1に配車依頼を送信する。
【0083】
配車管理部335は、予定乗車料金が高単価配車に相当する閾値未満であると判定した場合(S3においてNO)、高単権の使用要求を送信していた乗務員端末2-1に対応するタクシーTよりも早く乗車地に到着できるタクシーTに搭載された乗務員端末2-2に配車依頼を送信する。なお、配車管理部335は、予定乗車料金が高単価配車に相当する閾値未満であると判定した場合であっても、乗務員端末2-1に対応するタクシーTが他のタクシーTよりも早く乗車地に到着できると想定される場合には、乗務員端末2-1に配車依頼を送信してもよい。この場合、配車管理部335は、高単権を使用していないものとして扱い、乗務員IDに関連付けて記憶部32に記憶された高単権残数から1を減算する処理をしなくてもよい。
【0084】
[配車管理装置3における処理の流れ]
図8は、配車管理装置3における処理の流れを示すフローチャートである。
図8に示すフローチャートは、1台の乗務員端末2から高単権の使用要求が送信された時点から開始している。
【0085】
使用要求受付部332は、高単権の使用要求を受けると(S11)、使用要求を送信した乗務員端末2を使用する乗務員が高単権を使用中であることを記憶部32に記憶させる。その後、配車要求受付部333が配車要求を受け付けると(S12)、料金推定部334は、配車要求を送信したユーザが過去にタクシーTを利用したときの利用履歴が記憶部32に記憶されているか否かを判定する(S13)。
【0086】
料金推定部334は、配信要求を送信したユーザの利用履歴が記憶部32に記憶されていると判定した場合(S13においてYES)、
図5に示した利用履歴を参照して(S14)、予定乗車料金を推定する(S16)。料金推定部334は、利用履歴が記憶部32に記憶されていないと判定した場合(S13においてNO)、複数のユーザの乗車地、乗車日時等の過去の情報を参照して(S15)、予定乗車料金を推定する(S16)。
【0087】
配車管理部335は、推定された予定乗車料金が高単価配車に対応する閾値以上である場合(S17においてYES)、高単権の使用要求を送信したタクシーTの乗務員端末2に配車依頼を送信する(S18)。配車管理部335は、推定された予定乗車料金が高単価配車に対応する閾値未満である場合(S17においてNO)、乗車地に最も早く到着できるタクシーTの乗務員端末2に配車依頼を送信する(S19)。
【0088】
配車管理部335は、配車依頼に対する承諾を乗務員端末2から受けた場合(S20においてYES)、承諾した乗務員端末2を使用する乗務員に対応する高単権の残数を減らす(S21)。配車管理部335は、所定の時間以内に配車依頼に対する承諾を乗務員端末2から受けない場合(S20においてNO)、S19に戻って、乗車地に最も早く到着できるタクシーTの乗務員端末2に配車依頼を送信する。なお、配車管理部335は、乗務員が高単権を使用した場合に高単権の残数を減らし、乗務員が高単権を使用していない場合には高単権の残数を減らさない。配車管理部335は、配車依頼を承諾した乗務員が運転するタクシーTが乗車地に到着する予定時刻をユーザ端末1に送信することにより、予定時刻をユーザに通知する(S22)。
【0089】
[配車管理システムSによる効果]
以上説明したように、料金推定部334は、降車予定地を含まない配車要求を配車要求受付部333が受けた場合に、配車要求を送信したユーザ端末1のユーザの過去の利用履歴、又は配車要求が示す乗車地、配車要求を受けた曜日、若しくは配車要求を受けた時刻のうち複数の条件を組み合わせた複合条件の少なくともいずれかに対応する過去のタクシーの料金の実績を参照することにより、配車要求に基づく乗車に対応する予定乗車料金を推定する。そして、配車管理部335は、推定された予定乗車料金が、高単価配車に対応する閾値以上の配車要求に対する配車依頼を、高単権の使用要求を送信した乗務員端末2に最初に送信する。
【0090】
料金推定部334及び配車管理部335がこのように動作することで、ユーザ端末1においてユーザが配車要求をする際に降車地が入力されていない場合であっても、高単価配車であると想定される場合に、高単権を使用したい乗務員が使用する乗務員端末2に配車依頼を送信することができる。その結果、配車を要求した利用客の行き先がわからない場合にも、乗車料金が所定の条件を満たす可能性がある配車依頼を特定の乗務員に割り当てられるようになる。したがって、乗務員が高単権を使用できる機会が増えるので、高単権の価値が高まり、乗務員が時刻指定配車の依頼に積極的に応じたり、高い評価を受けるように努めたりするように動機づけられる。
【0091】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0092】
1 ユーザ端末
2 乗務員端末
3 配車管理装置
21 通信部
22 表示部
23 操作部
24 GPS受信機
24 受信機
25 記憶部
26 制御部
31 通信部
32 記憶部
33 制御部
261 情報取得部
262 位置特定部
263 操作制御部
264 情報送信部
331 高単権管理部
332 使用要求受付部
333 配車要求受付部
334 料金推定部
335 配車管理部