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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】保護膜形成用フィルム
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/00 20060101AFI20241111BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20241111BHJP
   B65D 73/02 20060101ALI20241111BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20241111BHJP
【FI】
H01L23/00 C
H01L21/78 M
B65D73/02 J
C09J7/20
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021052108
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149799
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山下 茂之
(72)【発明者】
【氏名】山本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中石 康喜
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-110071(JP,A)
【文献】特開2000-16489(JP,A)
【文献】特開2011-151361(JP,A)
【文献】特開2012-33638(JP,A)
【文献】特開2012-256758(JP,A)
【文献】特開2014-133859(JP,A)
【文献】特開2016-213236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 73/02
H01L 21/301
H01L 21/60
H01L 23/00
C09J 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CIE1976L表色系により規定される座標において、明度Lが37.9、色度aが-0.36、色度bが-2.6である色に対して、
下記式で表される色差ΔE abが17以上である、保護膜形成用フィルム。
ΔE ab=〔(ΔL+(Δa+(Δb1/2
【請求項2】
キャリアテープに収納される半導体チップに貼付され、
CIE1976L表色系により表される前記キャリアテープの色に対して、色差ΔE abが17以上である、請求項1に記載の保護膜形成用フィルム。
【請求項3】
CIE1976L表色系により規定される明度Lが22以下である、請求項1または2に記載の保護膜形成用フィルム。
【請求項4】
硬化後の保護膜において、CIE1976L表色系により表される明度Lが37.9、色度aが-0.36、色度bが-2.6である色に対する色差ΔE abが17以上である、請求項1~3のいずれかに記載の保護膜形成用フィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の保護膜形成用フィルムと、
支持シートとを備える、保護膜形成用シート。
【請求項6】
保護膜を備える半導体チップがキャリアテープに収納された、半導体チップの収納構造であって、
前記保護膜において、CIE1976L表色系により表される前記キャリアテープである色に対する、下記式で表される色差ΔE abが17以上である、収納構造。
ΔE ab=〔(ΔL+(Δa+(Δb1/2
【請求項7】
キャリアテープに収納された半導体チップの検出方法であって、
前記半導体チップは、CIE1976L表色系により表される前記キャリアテープである色に対して、下記式で表される色差ΔE abが17以上である保護膜を備えており、
上面視において、前記キャリアテープに収納された前記半導体チップを検出する工程を含む、半導体チップの検出方法。
ΔE ab=〔(ΔL+(Δa+(Δb1/2
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護膜形成用フィルム、保護膜形成用複合シート、それらを貼付した半導体チップがキャリアテープに収納された半導体チップの収納構造、およびキャリアテープに収納された半導体チップの検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆるフェースダウン(face down)方式と呼ばれる実装法を適用した半導体装置の製造が行われている。フェースダウン方式では、半導体チップの回路面上の電極が基板と接合される。このため、半導体チップの回路面とは反対側の裏面は剥き出しとなることがある。
【0003】
この剥き出しとなった半導体チップの裏面には、保護膜として、有機材料を含有する樹脂膜が形成され、保護膜付き半導体チップとして半導体装置に取り込まれることがある。保護膜によって、ダイシング工程やパッケージングの後に、半導体チップにおいてクラックが発生するのを防止できる。
【0004】
このような保護膜を形成するためには、例えば、支持シート上に保護膜を形成するための保護膜形成用フィルムを備えてなる保護膜形成用シートが使用される。保護膜形成用シートにおいて、保護膜形成用フィルムは硬化によって保護膜を形成する。また、支持シートをダイシングシートとして利用することもでき、保護膜形成用フィルムとダイシングシートとを一体化することも可能である。
【0005】
このような保護膜形成用シートとしては、例えば、加熱により硬化することで保護膜を形成する熱硬化性の保護膜形成用フィルムを備えたものが、これまでに主に利用されてきた。この場合、例えば、半導体ウエハの裏面(電極形成面とは反対側の面)に熱硬化性の保護膜形成用フィルムを有する保護膜形成用シートを貼付する。その後、加熱によって保護膜形成用フィルムを硬化させて保護膜とし、ダイシングによって半導体ウエハを保護膜ごと分割して半導体チップとする(特許文献1、特許文献2参照)。得られた半導体チップは、エンボスキャリアテープにリール詰めされ運搬される。
【0006】
図8は、通常の、半導体チップをエンボスキャリアテープにリール詰めした状態を示した概略断面図である。半導体ウエハ(図示省略)をダイシングすることにより分割して得られた保護膜付き半導体チップ101は、一つずつピックアップされる。そして、複数の窪み部分(ポケット102a)が連続的に設けられた包装用フィルム(エンボスキャリアテープ102)のポケット102aに収容され、前記エンボスキャリアテープ102上にカバーテープ103を貼付(リール詰め)した状態で出荷されて次工程へ搬送される。次工程では、保護膜付き半導体チップ101が収容されたエンボスキャリアテープ102のカバーテープ103を剥がしてポケット102aに収容された保護膜付き半導体チップ101を取り出し、更に後続の工程へ供される。
【0007】
ここで、エンボスキャリアテープ102の上方に配置される撮像装置(図示省略)を介して、保護膜付き半導体チップ101が検出される。そして、ポケット102a、およびこれに収容された保護膜付き半導体チップ101の位置情報が取得され、この位置情報に基づき保護膜付き半導体チップ101が取り出される。
【0008】
このとき、保護膜付き半導体チップが撮像装置によって検出できず、キャリアテープに収納された保護膜付き半導体チップを適切に取り出せないことがあり、問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第5144433号公報
【文献】特開2010-031183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、キャリアテープに収納された状態で半導体チップを良好に検出するための、保護膜形成用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題の解決を目的とした本発明の要旨は以下のとおりである。
【0012】
(1)CIE1976L表色系により規定される座標において、明度Lが37.9、色度aが-0.36、色度bが-2.6である色に対して、
下記式で表される色差ΔE abが17以上である、保護膜形成用フィルム。
ΔE ab=〔(ΔL+(Δa+(Δb1/2
【0013】
(2)キャリアテープに収納される半導体チップに貼付され、
CIE1976L表色系により表される前記キャリアテープの色に対して、色差ΔE abが17以上である、(1)に記載の保護膜形成用フィルム。
【0014】
(3)CIE1976L表色系により規定される明度Lが22以下である、(1)または(2)に記載の保護膜形成用フィルム。
【0015】
(4)硬化後の保護膜において、CIE1976L表色系により表される明度Lが37.9、色度aが-0.36、色度bが-2.6である色に対する色差ΔE abが17以上である、(1)~(3)のいずれかに記載の保護膜形成用フィルム。
【0016】
(5)上記(1)~(4)のいずれかに記載の保護膜形成用フィルムと、
支持シートとを備える、保護膜形成用シート。
【0017】
(6)保護膜を備える半導体チップがキャリアテープに収納された、半導体チップの収納構造であって、
前記保護膜において、CIE1976L表色系により表される前記キャリアテープの色に対する、下記式で表される色差ΔE abが17以上である、収納構造。
ΔE ab=〔(ΔL+(Δa+(Δb1/2
【0018】
(7)キャリアテープに収納された半導体チップの検出方法であって、
前記半導体チップは、CIE1976L表色系により表される前記キャリアテープの色に対して、下記式で表される色差ΔE abが17以上である保護膜を備えており、
上面視において、前記キャリアテープに収納された前記半導体チップを検出する工程を含む、半導体チップの検出方法。
ΔE ab=〔(ΔL+(Δa+(Δb1/2
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、キャリアテープに収納された状態で半導体チップを良好に検出するための、保護膜形成用フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る保護膜形成シートの一例を示す模式図である。
図2】本実施形態に係る保護膜形成シートの一例を示す模式図である。
図3】本実施形態に係る保護膜形成シートの一例を示す模式図である。
図4】本実施形態に係る保護膜形成シートの一例を示す模式図である。
図5】本実施形態に係る保護膜形成シートの一例を示す模式図である。
図6】本実施形態に係る保護膜形成シートの一例を示す模式図である。
図7】本実施形態に係る保護膜形成シートの製造過程の一例を示す模式図である。
図8】半導体チップをキャリアテープにリール詰めした状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
保護膜形成用フィルム
本実施形態に係る保護膜形成用フィルムは、
CIE1976L表色系により規定される座標において、明度Lが37.9、色度aが-0.36、色度bが-2.6の範囲にある色に対して、
下記式で表される色差ΔE abが17以上である。
ΔE ab=〔(ΔL+(Δa+(Δb1/2
【0022】
CIE1976L表色系により規定される座標において、
上記の明度Lが37.9、色度aが-0.36、色度bが-2.6である色の、明度LをLx、色度aをax、色度bをbxとし、
保護膜形成用フィルムの明度LをL、色度aをa、色度bをbとするとき、
ΔL、Δa、およびΔbは以下のように表される。
ΔL=Lx-L
Δa=ax-a
Δb=bx-b
【0023】
本実施形態に係る保護膜形成用フィルムでは、CIE1976L表色系により規定される座標において、明度Lが37.9、色度aが-0.36、色度bが-2.6である色に対して、上記式で表される色差ΔE abは17以上であり、好ましくは23以上であり、より好ましくは28以上である。
【0024】
本実施形態に係る保護膜形成用フィルムが上記範囲の色差ΔE abを有することで、半導体チップに貼付した場合に、キャリアテープに収納された状態で半導体チップを良好に検出できる。
【0025】
本実施形態に係る保護膜形成用フィルムは、後述する保護膜形成用フィルム組成物における着色剤(I)、充填剤(D)、およびその他の成分の種類および含有量を適宜調整することで、上記範囲の色差ΔE abを有することができる。
【0026】
また、本実施形態に係る保護膜形成用フィルムは、好ましくは、キャリアテープに収納される半導体チップに貼付される。そして、本実施形態に係る保護膜形成用フィルムにおいて、CIE1976L表色系により表される上記キャリアテープの色に対する色差ΔE abは、好ましくは17以上であり、より好ましくは23以上であり、さらに好ましくは28以上である。半導体チップに貼付した場合に、キャリアテープに収納された状態で半導体チップを良好に検出する観点から、本実施形態に係る保護膜形成用フィルムは上記範囲の色差ΔE abを有することが好ましい。なお、上記色差ΔE abは、下記式で表される。
ΔE ab=〔(ΔL+(Δa+(Δb1/2
【0027】
CIE1976L表色系により規定される座標において、
上記キャリアテープの明度LをLc、色度aをac、色度bをbcとし、
保護膜形成用フィルムの明度LをL、色度aをa、色度bをbとするとき、
ΔL、Δa、およびΔbは以下のように表される。
ΔL=Lc-L
Δa=ac-a
Δb=bc-b
【0028】
本実施形態に係る保護膜形成用フィルムは、後述する保護膜形成用フィルム組成物における着色剤(I)、充填剤(D)、およびその他の成分の種類および含有量を適宜調整することで、上記キャリアテープの色に対する色差ΔE abを上記範囲とすることができる。
【0029】
本実施形態に係る保護膜形成用フィルムにおいて、CIE1976L表色系により規定される明度Lは、好ましくは22以下であり、より好ましくは15以下であり、さらに好ましくは10以下である。
【0030】
CIE1976L表色系により規定される明度Lが小さいほど暗い色合いになる。したがって、半導体チップに貼付した場合に、キャリアテープに収納された状態で半導体チップを良好に検出する観点から、本実施形態に係る保護膜形成用フィルムは上記範囲の明度Lを有することが好ましい。
【0031】
また、本実施形態に係る保護膜形成用フィルムにおいて、CIE1976L表色系により規定される色度aは、-5以上とすることができ、-1以上、または-0.5以上でもよい。
【0032】
本実施形態に係る保護膜形成用フィルムにおいて、CIE1976L表色系により規定される色度bは、-5以上とすることができ、-3以上、または-1以上でもよい。
【0033】
本実施形態に係る保護膜形成用フィルムは、後述する保護膜形成用フィルム組成物における着色剤(I)、充填剤(D)、およびその他の成分の種類および含有量を適宜調整することで、上記範囲のCIE1976L表色系により規定される明度L、色度a、および色度bを有することができる。
【0034】
本実施形態に係る保護膜形成用フィルムは、一方の面に剥離フィルムを有してもよく、両方の面に剥離フィルムを有してもよい。両方の面に剥離フィルムを有する場合、剥離フィルムは、双方の面で同じでもよく、異なっていてもよい。本実施形態に係る保護膜形成用フィルムは、剥離フィルムを有することで、ロール状に巻回した長尺状フィルムとして提供することができる。剥離フィルムとしては、特に限定されないが、後述する保護膜形成用シートに用いる剥離フィルムと同様のものを用いることができる。
【0035】
本実施形態に係る保護膜形成用フィルムは、硬化して保護膜となる。この保護膜は、半導体ウエハ又は半導体チップの裏面(電極形成面とは反対側の面)を保護するためのものである。保護膜形成用フィルムは、軟質であり、貼付対象物に容易に貼付できる。
【0036】
本実施形態では、硬化後の保護膜においても、CIE1976L表色系により表される明度Lが37.9、色度aが-0.36、色度bが-2.6である色に対する色差ΔE abは、好ましくは17以上であり、より好ましくは23以上であり、さらに好ましくは28以上である。また、硬化後の保護膜は、保護膜形成用フィルムについて上述した明度L、色度a、色度bの範囲と同じ範囲の明度L、色度a、色度b有することができる。
【0037】
さらに本実施形態では、保護膜を備える半導体チップをリフロー炉のような熱処理装置で加熱した場合でも、その保護膜は、上述の保護膜形成用フィルムと同様の色差ΔE abを有する。すなわち、本実施形態において、保護膜を備える半導体チップがリフロー炉のような熱処理装置で加熱されたものである場合に、その半導体チップが備える保護膜の、CIE1976L表色系により表される明度Lが37.9、色度aが-0.36、色度bが-2.6である色に対する色差ΔE abは、好ましくは17以上であり、より好ましくは23以上であり、さらに好ましくは28以上である。また、本実施形態において、保護膜を備える半導体チップがリフロー炉のような熱処理装置で加熱されたものである場合に、その半導体チップが備える保護膜は、保護膜形成用フィルムについて上述した明度L、色度a、色度bの範囲と同じ範囲の明度L、色度a、色度b有することができる。
リフロー炉のような熱処理装置で加熱した半導体チップを、キャリアテープに収納された状態でも良好に検出する観点から、その半導体チップが備える保護膜の色差ΔE ab、明度L、色度a、および色度bは上記範囲とすることが好ましい。
【0038】
本実施形態では、保護膜形成用フィルム組成物における着色剤(I)、充填剤(D)、およびその他の成分の種類および含有量を適宜調整して形成された保護膜形成用フィルムを用いて保護膜を備える半導体チップを製造することで、半導体チップがリフロー炉のような熱処理装置で加熱された場合でも、その半導体チップが備える保護膜は、上記範囲の色差ΔE ab、明度L、色度a、および色度bを有することができる。
【0039】
以下に、本実施形態に係る保護膜形成用フィルムの材料および製造方法について、非制限的な例を示す。
【0040】
保護膜形成用フィルムは、CIE1976L表色系により規定される座標において、明度Lが37.9、色度aが-0.36、色度bが-2.6である色に対して、色差ΔE abが17以上であれば、熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれでもあってもよい。保護膜形成用フィルムは、硬化を経て最終的には耐衝撃性が高い保護膜となる。この保護膜によれば、例えば、ダイシング工程以降の半導体チップにおけるクラックの発生を防止できる他、キャリアテープに収納された状態の保護膜付き半導体チップを良好に検出できる。
【0041】
保護膜形成用フィルムは、後述する熱硬化性保護膜形成用フィルム用組成物又はエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルム用組成物(以下、これらを包括して「保護膜形成用フィルム用組成物」と称することがある)を用いて形成できる。
【0042】
保護膜形成用フィルムは1層(単層)のみでもよいし、2層以上の複数層でもよく、複数層である場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0043】
保護膜形成用フィルムの厚さは、特に限定されないが、1~100μmであることが好ましく、5~75μmであることがより好ましく、5~50μmであることが特に好ましい。保護膜形成用フィルムの厚さが上記下限値以上であることで、保護膜又は保護膜形成用フィルムに対してレーザーを照射してレーザー印字を行うときに、レーザーの貫通に伴う半導体ウエハの破損の防止効果が高くなる。また、保護膜の保護能が向上する。一方、保護膜形成用フィルムの厚さが上記上限値以下であることで、上記フィルムの硬化時における収縮の程度が低減されて、保護膜付き半導体チップの反りを低減する効果が高くなる。また、温度サイクル試験時において、保護膜と半導体ウエハとの線膨張係数の差に起因する応力の発生を抑制し、保護膜の半導体ウエハからの剥離を抑制する効果が高くなる。
【0044】
ここで、「保護膜形成用フィルムの厚さ」とは、保護膜形成用フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる保護膜形成用フィルムの厚さとは、保護膜形成用フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0045】
以下に、本実施形態に係る保護膜形成用フィルムが、熱硬化性保護膜形成用フィルム組成物から形成される熱硬化性保護膜形成用フィルムである場合、およびエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルム組成物から形成されるエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムである場合について説明する。
【0046】
・熱硬化性保護膜形成用フィルム
熱硬化性保護膜形成用フィルムとしては、例えば、後述する重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有するものが挙げられる。重合体成分(A)は、重合性化合物が重合反応して形成されたとみなせる成分である。また、熱硬化性成分(B)は、熱を反応のトリガーとして、硬化(重合)反応し得る成分である。なお、本発明において重合反応には、重縮合反応も含まれる。
【0047】
<<熱硬化性保護膜形成用フィルム用組成物>>
熱硬化性保護膜形成用フィルムは、その構成材料を含有する熱硬化性保護膜形成用フィルム用組成物から形成できる。例えば、熱硬化性保護膜形成用フィルムの形成対象面に熱硬化性保護膜形成用フィルム用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に熱硬化性保護膜形成用フィルムを形成できる。熱硬化性保護膜形成用フィルム用組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、熱硬化性保護膜形成用フィルムの上記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0048】
なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0049】
熱硬化性保護膜形成用フィルム用組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0050】
熱硬化性保護膜形成用フィルム用組成物の乾燥条件は、特に限定されないが、熱硬化性保護膜形成用フィルム用組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましく、この場合、例えば、70~130℃で10秒間~5分間の条件で乾燥させることが好ましい。
【0051】
<保護膜形成用フィルム用組成物(1)>
熱硬化性保護膜形成用フィルム用組成物としては、例えば、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有する熱硬化性保護膜形成用フィルム用組成物(1)(本明細書においては、「保護膜形成用フィルム用組成物(1)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0052】
[重合体成分(A)]
重合体成分(A)は、熱硬化性保護膜形成用フィルムに造膜性や可撓性等を付与するための重合体化合物である。
【0053】
保護膜形成用フィルム用組成物(1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する重合体成分(A)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0054】
重合体成分(A)としては、例えば、アクリル系樹脂(例えば、(メタ)アクリロイル基を有する樹脂)、ポリエステル、ウレタン系樹脂(例えば、ウレタン結合を有する樹脂)、アクリルウレタン樹脂、シリコーン系樹脂(例えば、シロキサン結合を有する樹脂)、ゴム系樹脂(例えば、ゴム構造を有する樹脂)、フェノキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド等が挙げられ、アクリル系樹脂が好ましい。
【0055】
重合体成分(A)における上記アクリル系樹脂としては、公知のアクリル重合体が挙げられる。
【0056】
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000~2000000であることが好ましく、100000~1500000であることがより好ましい。アクリル系樹脂の重量平均分子量が上記下限値以上であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの形状安定性(保管時の経時安定性)が向上する。また、アクリル系樹脂の重量平均分子量が上記上限値以下であることで、被着体の凹凸面へ熱硬化性保護膜形成用フィルムが追従し易くなり、被着体と熱硬化性保護膜形成用フィルムとの間でボイド等の発生がより抑制される。
【0057】
なお、本明細書において、「重量平均分子量」とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値を意味する。
【0058】
アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-60~70℃であることが好ましく、-30~50℃であることがより好ましい。アクリル系樹脂のTgが上記下限値以上であることで、保護膜と支持シートとの接着力が抑制されて、支持シートの剥離性が向上する。また、アクリル系樹脂のTgが上記上限値以下であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルム及び保護膜の被着体との接着力が向上する。
【0059】
本明細書において「ガラス転移温度」とは、示差走査熱量計を用いて、試料のDSC曲線を測定し、得られたDSC曲線の変曲点の温度で表される。
【0060】
アクリル系樹脂としては、例えば、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの重合体;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される少なくとも2種のモノマーの共重合体等が挙げられる。
【0061】
アクリル系樹脂を構成する上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリルともいう)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチルともいう)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチルともいう)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリルともいう)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イミド;
(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等の置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基を意味する。
【0062】
上記のなかでも、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、及びアクリル酸2-ヒドロキシエチル等が好ましい。
【0063】
アクリル系樹脂は、例えば、上記(メタ)アクリル酸エステル以外に、さらに(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される1種又は2種以上のモノマーが共重合してなるものでもよい。
【0064】
アクリル系樹脂を構成するモノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0065】
アクリル系樹脂は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の他の化合物と結合可能な官能基を有していてもよい。アクリル系樹脂の上記官能基は、後述する架橋剤(F)を介して他の化合物と結合してもよいし、架橋剤(F)を介さずに他の化合物と直接結合していてもよい。アクリル系樹脂が上記官能基により他の化合物と結合することで、保護膜形成用シートを用いて得られたパッケージの信頼性が向上する傾向がある。
【0066】
本発明においては、重合体成分(A)として、アクリル系樹脂以外の熱可塑性樹脂(以下、単に「熱可塑性樹脂」と略記することがある)をアクリル系樹脂と併用してもよい。
【0067】
上記熱可塑性樹脂を用いることで、保護膜の支持シートからの剥離性が向上したり、被着体の凹凸面へ熱硬化性保護膜形成用フィルムが追従し易くなり、被着体と熱硬化性保護膜形成用フィルムとの間でボイド等の発生がより抑制されることがある。
【0068】
上記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は1000~100000であることが好ましく、3000~80000であることがより好ましい。
【0069】
上記熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-30~150℃であることが好ましく、-20~120℃であることがより好ましい。
【0070】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等が挙げられる。
【0071】
保護膜形成用フィルム用組成物(1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する上記熱可塑性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0072】
重合体成分(A)の含有量は、重合体成分(A)の種類によらず、保護膜形成用フィルム用組成物(1)を構成する溶媒以外の全ての成分の総質量に対して(すなわち、熱硬化性保護膜形成用フィルムの総質量1に対して)、5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、15~35質量%であることが特に好ましい。
【0073】
重合体成分(A)は、熱硬化性成分(B)にも該当する場合がある。本発明においては、保護膜形成用フィルム用組成物(1)が、このような重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の両方に該当する成分を含有する場合、保護膜形成用フィルム用組成物(1)は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有するとみなす。
【0074】
[熱硬化性成分(B)]
熱硬化性成分(B)は、熱硬化性保護膜形成用フィルムを硬化させて、硬質の保護膜を形成するための成分である。
【0075】
保護膜形成用フィルム用組成物(1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する熱硬化性成分(B)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0076】
熱硬化性成分(B)としては、例えば、エポキシ系熱硬化性樹脂、熱硬化性ポリイミド、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂等が挙げられ、エポキシ系熱硬化性樹脂が好ましい。
【0077】
(エポキシ系熱硬化性樹脂)
エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)からなる。
【0078】
保護膜形成用フィルム用組成物(1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有するエポキシ系熱硬化性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0079】
・エポキシ樹脂(B1)
エポキシ樹脂(B1)としては、公知のものが挙げられ、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
【0080】
上記のなかでも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等が好ましい。
【0081】
エポキシ樹脂(B1)としては、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂は、不飽和炭化水素基を有しないエポキシ樹脂よりもアクリル系樹脂との相溶性が高い。そのため、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いることで、保護膜形成用シートを用いて得られたパッケージの信頼性が向上する。
【0082】
不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、多官能系エポキシ樹脂のエポキシ基の一部が不飽和炭化水素基を有する基に変換されてなる化合物が挙げられる。このような化合物は、例えば、エポキシ基へ(メタ)アクリル酸又はその誘導体を付加反応させることにより得られる。
【0083】
なお、本明細書において「誘導体」とは、元の化合物の少なくとも1個の水素原子が水素原子以外の基(置換基)で置換されてなるものを意味する。
【0084】
また、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を構成する芳香環等に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合した化合物等が挙げられる。
【0085】
不飽和炭化水素基は、重合性を有する不飽和基であり、その具体的な例としては、エテニル基(ビニル基)、2-プロペニル基(アリル基)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基等が挙げられ、アクリロイル基が好ましい。
【0086】
エポキシ樹脂(B1)の数平均分子量は、特に限定されないが、熱硬化性保護膜形成用フィルムの硬化性、並びに硬化後の保護膜の強度及び耐熱性の点から、300~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましく、300~3000であることが特に好ましい。
【0087】
本明細書において、「数平均分子量」は、特に断らない限り、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定される標準ポリスチレン換算の値で表される数平均分子量を意味する。
【0088】
エポキシ樹脂(B1)のエポキシ当量は、100~1100g/eqであることが好ましく、150~1000g/eqであることがより好ましい。
【0089】
本明細書において、「エポキシ当量」とは1グラム当量のエポキシ基を含むエポキシ化合物のグラム数(g/eq)を意味し、JIS K 7236:2001の方法に従って測定することができる。
【0090】
エポキシ樹脂(B1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0091】
・熱硬化剤(B2)
熱硬化剤(B2)は、エポキシ樹脂(B1)に対する硬化剤として機能する。
【0092】
熱硬化剤(B2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を少なくとも2個有する化合物が挙げられる。上記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
【0093】
熱硬化剤(B2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、アラルキルフェノール樹脂等が挙げられる。
【0094】
熱硬化剤(B2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0095】
熱硬化剤(B2)は、不飽和炭化水素基を有するものでもよい。
【0096】
不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(B2)としては、例えば、フェノール樹脂の水酸基の一部が、不飽和炭化水素基を有する基で置換されてなる化合物、フェノール樹脂の芳香環に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合してなる化合物等が挙げられる。
【0097】
熱硬化剤(B2)における上記不飽和炭化水素基は、上述の不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂における不飽和炭化水素基と同様のものである。
【0098】
熱硬化剤(B2)としてフェノール系硬化剤を用いる場合には、保護膜の支持シートからの剥離性が向上する点から、熱硬化剤(B2)は軟化点又はガラス転移温度が高いものが好ましい。
【0099】
熱硬化剤(B2)は、常温では固形で、かつエポキシ樹脂(B1)に対して硬化活性を示さず、一方で、加熱によって溶解し、かつエポキシ樹脂(B1)に対して硬化活性を示す熱硬化剤(以下、「熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤」と略記することがある)であることが好ましい。
【0100】
なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0101】
上記熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤は、常温では熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、エポキシ樹脂(B1)中に安定して分散しているが、加熱によってエポキシ樹脂(B1)と相溶し、エポキシ樹脂(B1)と反応する。上記熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤を用いることで、保護膜形成用シートの保存安定性が顕著に向上する。例えば、保護膜形成用フィルムから隣接する支持シートへのこの硬化剤の移動が抑制され、熱硬化性保護膜形成用フィルムの熱硬化性の低下が効果的に抑制される。そして、熱硬化性保護膜形成用フィルムの加熱による熱硬化度がより高くなるため、後述する保護膜付き半導体チップのピックアップ性がより向上する。
【0102】
上記熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、オニウム塩、二塩基酸ヒドラジド、ジシアンジアミド、硬化剤のアミン付加物等が挙げられる。
【0103】
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、多官能フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、アラルキルフェノール樹脂等の樹脂成分の数平均分子量は、300~30000であることが好ましく、400~10000であることがより好ましく、500~3000であることが特に好ましい。
【0104】
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、ビフェノール、ジシアンジアミド等の非樹脂成分の分子量は、特に限定されないが、例えば、60~500であることが好ましい。
【0105】
熱硬化剤(B2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0106】
保護膜形成用フィルム用組成物(1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、熱硬化剤(B2)の含有量は、エポキシ樹脂(B1)の含有量100質量部に対して、0.1~500質量部であることが好ましく、1~200質量部であることがより好ましい。熱硬化剤(B2)の上記含有量が上記下限値以上であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの硬化がより進行し易くなる。また、熱硬化剤(B2)の上記含有量が上記上限値以下であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの吸湿率が低減されて、保護膜形成用シートを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0107】
保護膜形成用フィルム用組成物(1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、熱硬化性成分(B)の含有量(例えば、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)の総含有量)は、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、1~100質量部であることが好ましく、1.5~85質量部であることがより好ましく、2~70質量部であることが特に好ましい。熱硬化性成分(B)の上記含有量がこのような範囲であることで、保護膜と支持シートとの接着力が抑制されて、支持シートの剥離性が向上する。
【0108】
別の側面として、保護膜形成用フィルム用組成物(1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、熱硬化性成分(B)の含有量は、保護膜形成用フィルム用組成物(1)の溶媒以外の全ての成分の総質量に対して(すなわち、熱硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対して)、1~90質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましく、30~70質量%がさらにより好ましい。
【0109】
[硬化促進剤(C)]
保護膜形成用フィルム用組成物(1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、硬化促進剤(C)を含有していてもよい。硬化促進剤(C)は、保護膜形成用フィルム用組成物(1)の硬化速度を調整するための成分である。
【0110】
好ましい硬化促進剤(C)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(少なくとも1個の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(少なくとも1個の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
【0111】
上記のなかでも、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾールが好ましい。
【0112】
保護膜形成用フィルム用組成物(1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する硬化促進剤(C)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0113】
硬化促進剤(C)を用いる場合、保護膜形成用フィルム用組成物(1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、硬化促進剤(C)の含有量は、熱硬化性成分(B)の含有量100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。硬化促進剤(C)の上記含有量が上記下限値以上であることで、硬化促進剤(C)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、硬化促進剤(C)の含有量が上記上限値以下であることで、例えば、高極性の硬化促進剤(C)が、高温・高湿度条件下で熱硬化性保護膜形成用フィルム中において被着体との接着界面側に移動して偏析することを抑制する効果が高くなり、保護膜形成用シートを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0114】
[充填材(D)]
保護膜形成用フィルム用組成物(1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、充填材(D)を含有していてもよい。熱硬化性保護膜形成用フィルムが充填材(D)を含有することにより、熱硬化性保護膜形成用フィルムを硬化して得られた保護膜は、熱膨張係数の調整が容易となり、この熱膨張係数を保護膜の形成対象物に対して最適化することで、保護膜形成用シートを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。また、熱硬化性保護膜形成用フィルムが充填材(D)を含有することにより、保護膜の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
【0115】
充填材(D)は、有機充填材及び無機充填材のいずれでもよいが、無機充填材であることが好ましい。
【0116】
好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。これらの中でも、無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましい。
【0117】
充填材(D)の平均粒径は0.1~10μmとすることが好ましい。充填材(D)の粒径を上記範囲とすることで保護膜形成用フィルムの平滑性を維持でき、充填性を高めることもできる。
【0118】
保護膜形成用フィルム用組成物(1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する充填材(D)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0119】
充填材(D)を用いる場合、保護膜形成用フィルム用組成物(1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量(総質量)に対する充填材(D)の含有量(すなわち、熱硬化性保護膜形成用フィルムの充填材(D)の含有量)は、5~80質量%であることが好ましく、7~60質量%であることがより好ましい。充填材(D)の含有量がこのような範囲であることで、上記の熱膨張係数の調整がより容易となる。
【0120】
[カップリング剤(E)]
保護膜形成用フィルム用組成物(1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、カップリング剤(E)を含有していてもよい。カップリング剤(E)として、無機化合物又は有機化合物と反応可能な官能基を有するものを用いることにより、熱硬化性保護膜形成用フィルムの被着体に対する接着性及び密着性を向上させることができる。また、カップリング剤(E)を用いることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムを硬化して得られた保護膜は、耐熱性を損なうことなく、耐水性が向上する。
【0121】
カップリング剤(E)は、重合体成分(A)、熱硬化性成分(B)等が有する官能基と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。
【0122】
上記シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
【0123】
保護膜形成用フィルム用組成物(1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有するカップリング剤(E)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0124】
カップリング剤(E)を用いる場合、保護膜形成用フィルム用組成物(1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、カップリング剤(E)の含有量は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の総含有量100質量部に対して、0.03~20質量部であることが好ましく、0.05~10質量部であることがより好ましく、0.1~5質量部であることが特に好ましい。カップリング剤(E)の上記含有量が上記下限値以上であることで、充填材(D)の樹脂への分散性の向上や、熱硬化性保護膜形成用フィルムの被着体との接着性の向上等、カップリング剤(E)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、カップリング剤(E)の上記含有量が上記上限値以下であることで、アウトガスの発生がより抑制される。
【0125】
[架橋剤(F)]
重合体成分(A)として、上述のアクリル系樹脂等の、他の化合物と結合可能なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の官能基を有するものを用いる場合、保護膜形成用フィルム用組成物(1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、さらに上記官能基を他の化合物と結合させて架橋するための架橋剤(F)を含有していてもよい。架橋剤(F)を用いて架橋することにより、熱硬化性保護膜形成用フィルムの初期接着力及び凝集力を調節できる。
【0126】
架橋剤(F)としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤)、アジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0127】
上記有機多価イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物及び脂環族多価イソシアネート化合物(以下、これら化合物をまとめて「芳香族多価イソシアネート化合物等」と略記することがある);上記芳香族多価イソシアネート化合物等の三量体、イソシアヌレート体及びアダクト体;上記芳香族多価イソシアネート化合物等とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。上記「アダクト体」は、上記芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物又は脂環族多価イソシアネート化合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン又はヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物を意味し、その例としては、後述するようなトリメチロールプロパンのキシリレンジイソシアネート付加物等が挙げられる。また、「末端イソシアネートウレタンプレポリマー」とは「末端イソシアネートウレタンプレポリマー」とは、ウレタン結合を有するとともに、分子の末端部にイソシアネート基を有するプレポリマーを意味する。
【0128】
上記有機多価イソシアネート化合物として、より具体的には、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート;2,6-トリレンジイソシアネート;1,3-キシリレンジイソシアネート;1,4-キシレンジイソシアネート;ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート;3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート;トリメチロールプロパン等のポリオールのすべて又は一部の水酸基に、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートのいずれか1種又は2種以上が付加した化合物;リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0129】
上記有機多価イミン化合物としては、例えば、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等が挙げられる。
【0130】
架橋剤(F)として有機多価イソシアネート化合物を用いる場合、重合体成分(A)としては、水酸基含有重合体を用いることが好ましい。架橋剤(F)がイソシアネート基を有し、重合体成分(A)が水酸基を有する場合、架橋剤(F)と重合体成分(A)との反応によって、熱硬化性保護膜形成用フィルムに架橋構造を簡便に導入できる。
【0131】
保護膜形成用フィルム用組成物(1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する架橋剤(F)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0132】
架橋剤(F)を用いる場合、保護膜形成用フィルム用組成物(1)において、架橋剤(F)の含有量は、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることが特に好ましい。架橋剤(F)の上記含有量が上記下限値以上であることで、架橋剤(F)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、架橋剤(F)の上記含有量が上記上限値以下であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの支持シートとの接着力や、熱硬化性保護膜形成用フィルムの半導体ウエハ又は半導体チップとの接着力が、過度に低下することが抑制される。
【0133】
本発明においては、架橋剤(F)を用いなくても、本発明の効果が十分に得られる。
【0134】
[エネルギー線硬化性樹脂(G)]
保護膜形成用フィルム用組成物(1)は、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していてもよい。熱硬化性保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していることにより、エネルギー線の照射によって特性を変化させることができる。
【0135】
エネルギー線硬化性樹脂(G)は、エネルギー線硬化性化合物を重合(硬化)して得られたものである。
【0136】
上記エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、分子内に少なくとも1個の重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
【0137】
上記アクリレート系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の鎖状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等の環状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;オリゴエステル(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;エポキシ変性(メタ)アクリレート;上記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外のポリエーテル(メタ)アクリレート;イタコン酸オリゴマー等が挙げられる。
【0138】
上記エネルギー線硬化性化合物の重量平均分子量は、100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0139】
重合に用いる上記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0140】
保護膜形成用フィルム用組成物(1)が含有するエネルギー線硬化性樹脂(G)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0141】
保護膜形成用フィルム用組成物(1)において、エネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量は、保護膜形成用フィルム用組成物(1)の溶媒以外の全ての成分の総質量に対して、1~95質量%であることが好ましく、2~90質量%であることがより好ましく、3~85質量%であることが特に好ましい。
【0142】
[光重合開始剤(H)]
保護膜形成用フィルム用組成物(1)は、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有する場合、エネルギー線硬化性樹脂(G)の重合反応を効率よく進めるために、光重合開始剤(H)を含有していてもよい。
【0143】
保護膜形成用フィルム用組成物(1)における光重合開始剤(H)としては、粘着剤組成物(i)における光重合開始剤と同じものが挙げられる。
【0144】
保護膜形成用フィルム用組成物(1)が含有する光重合開始剤(H)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0145】
保護膜形成用フィルム用組成物(1)において、光重合開始剤(H)の含有量は、エネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましく、2~5質量部であることが特に好ましい。
【0146】
[着色剤(I)]
保護膜形成用フィルム用組成物(1)は、CIE1976L表色系により規定される座標において、明度Lが37.9、色度aが-0.36、色度bが-2.6である色に対して、色差ΔE abが17以上である保護膜形成用フィルムを得る観点から、着色剤(I)を含有することが好ましい。
【0147】
着色剤(I)としては、CIE1976L表色系により規定される座標において、明度Lが37.9、色度aが-0.36、色度bが-2.6である色に対して、色差ΔE abが17以上である保護膜形成用フィルムを得ることができれば特に限定されず、例えば、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料等、公知のものを用いることができる。
【0148】
上記有機系顔料及び有機系染料としては、例えば、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、チオインジゴ系色素、金属錯体系色素(金属錯塩染料)、ジチオール金属錯体系色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、アントラキノン系色素、ナフトール系色素、アゾメチン系色素、ベンズイミダゾロン系色素、ピランスロン系色素及びスレン系色素等が挙げられる。
【0149】
上記無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、コバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、白金系色素、ITO(インジウムスズオキサイド)系色素、ATO(アンチモンスズオキサイド)系色素等が挙げられる。
【0150】
保護膜形成用フィルム用組成物(1)が含有する着色剤(I)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0151】
熱硬化性保護膜形成用フィルムにおける着色剤(I)の含有量は、CIE1976L表色系により規定される座標において、明度Lが37.9、色度aが-0.36、色度bが-2.6である色に対して、色差ΔE abが17以上である保護膜形成用フィルムを得ることができれば特に限定されないが、溶媒以外の全ての成分の総含有量(総質量)に対して、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、さらに好ましくは1.5質量%以上である。熱硬化性保護膜形成用フィルムにおける着色剤(I)の含有量の上限は、特に限定されないが、熱硬化性保護膜形成用フィルムの光透過性の過度な低下を抑制する観点から、溶媒以外の全ての成分の総含有量(総質量)に対して、好ましくは10質量%であり、5質量%とすることもできる。
【0152】
[汎用添加剤(J)]
保護膜形成用フィルム用組成物(1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲内において、汎用添加剤(J)を含有していてもよい。
【0153】
汎用添加剤(J)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ゲッタリング剤等が挙げられる。
【0154】
保護膜形成用フィルム用組成物(1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する汎用添加剤(J)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0155】
保護膜形成用フィルム用組成物(1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムの汎用添加剤(J)の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0156】
[溶媒(K)]
保護膜形成用フィルム用組成物(1)は、さらに溶媒(K)を含有することが好ましい。溶媒(K)を含有する保護膜形成用フィルム用組成物(1)は、取り扱い性が良好となる。
【0157】
上記溶媒(K)は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オール)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
【0158】
保護膜形成用フィルム用組成物(1)が含有する溶媒(K)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0159】
保護膜形成用フィルム用組成物(1)が含有する溶媒(K)は、保護膜形成用フィルム用組成物(1)中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン等であることが好ましい。
【0160】
溶媒の含有量は、上記保護膜形成用フィルム用組成物の総質量に対して、上記保護膜形成用フィルム用組成物の固形分濃度が10~80質量%となる量であることが好ましく、20~70質量%となる量であることがより好ましく、30~65質量%となる量であることがさらにより好ましい。
【0161】
<<熱硬化性保護膜形成用フィルム用組成物の製造方法>>
保護膜形成用フィルム用組成物(1)としての熱硬化性保護膜形成用フィルム用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
【0162】
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
【0163】
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
【0164】
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
【0165】
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0166】
・エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルム
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性成分(a)を含有する。
【0167】
エネルギー線硬化性成分(a)は、未硬化であることが好ましく、粘着性を有することが好ましく、未硬化でかつ粘着性を有することがより好ましい。
【0168】
なお、本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、電子線等が挙げられる。紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンランプ又はキセノンランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
【0169】
また、本明細書において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味し、「非エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射しても硬化しない性質を意味する。
【0170】
<<エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルム用組成物>>
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、その構成材料を含有するエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルム用組成物から形成できる。例えば、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムの形成対象面にエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルム用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位にエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムを形成できる。エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルム用組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムの上記成分同士の含有量の比率と同じとなる。ここで、「常温」とは、先に説明したとおりである。
【0171】
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルム用組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0172】
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルム用組成物の乾燥条件は、特に限定されないが、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルム用組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましく、この場合、例えば、70~130℃で10秒間~5分間の条件で乾燥させることが好ましい。
【0173】
<保護膜形成用フィルム用組成物(2)>
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルム用組成物としては、例えば、上記エネルギー線硬化性成分(a)を含有するエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルム用組成物(2)(本明細書においては、単に「保護膜形成用フィルム用組成物(2)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0174】
[エネルギー線硬化性成分(a)]
エネルギー線硬化性成分(a)は、エネルギー線の照射によって硬化する成分であり、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムに造膜性や、可撓性等を付与するための成分でもある。
【0175】
エネルギー線硬化性成分(a)としては、例えば、エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1)、及びエネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2)が挙げられる。上記重合体(a1)は、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。
【0176】
(エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1))
エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1)としては、例えば、他の化合物が有する基と反応可能な官能基を有するアクリル系重合体(a11)と、上記官能基と反応する基、及びエネルギー線硬化性二重結合等のエネルギー線硬化性基を有するエネルギー線硬化性化合物(a12)と、が付加反応してなるアクリル系樹脂(a1-1)が挙げられる。
【0177】
アクリル系重合体(a11)における他の化合物が有する基と反応可能な上記官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基(アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基)、エポキシ基等が挙げられる。ただし、半導体ウエハや半導体チップ等の回路の腐食を防止するという点では、上記官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。
これらの中でも、上記官能基は、水酸基であることが好ましい。
【0178】
・官能基を有するアクリル系重合体(a11)
官能基を有するアクリル系重合体(a11)としては、例えば、上記官能基を有するアクリル系モノマーと、上記官能基を有しないアクリル系モノマーと、が共重合してなるものが挙げられ、これらモノマー以外に、さらにアクリル系モノマー以外のモノマー(非アクリル系モノマー)が共重合したものであってもよい。
【0179】
また、上記アクリル系重合体(a11)は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0180】
上記官能基を有するアクリル系モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、置換アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
【0181】
上記水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ビニルアルコール、アリルアルコール等の非(メタ)アクリル系不飽和アルコール(すなわち、(メタ)アクリロイル骨格を有しない不飽和アルコール)等が挙げられる。
【0182】
上記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸(すなわち、エチレン性不飽和結合を有するモノカルボン酸);フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸(すなわち、エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸);上記エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物;2-カルボキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸カルボキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0183】
上記官能基を有するアクリル系モノマーは、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマーが好ましく、水酸基含有モノマーがより好ましい。
【0184】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。(メタ)アクリル酸と類似の用語につても同様であり、例えば、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を包含する概念である。
【0185】
上記アクリル系重合体(a11)を構成する、上記官能基を有するアクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0186】
上記官能基を有しないアクリル系モノマーとしては、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリルともいう)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチルともいう)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリルともいう)等が挙げられる。
【0187】
また、上記官能基を有しないアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル等を含む、芳香族基を有する(メタ)アクリル酸エステル;非架橋性の(メタ)アクリルアミド及びその誘導体;(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等も挙げられる。
【0188】
上記アクリル系重合体(a11)を構成する、上記官能基を有しないアクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0189】
上記非アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
【0190】
上記アクリル系重合体(a11)を構成する上記非アクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0191】
上記アクリル系重合体(a11)において、上記官能基を有するアクリル系モノマーから誘導された構成単位の割合(含有量)は、上記アクリル系重合体(a11)を構成する構成単位の総質量に対して、0.1~50質量%であることが好ましく、1~40質量%であることがより好ましく、3~30質量%であることが特に好ましい。上記割合がこのような範囲であることで、上記アクリル系重合体(a11)と上記エネルギー線硬化性化合物(a12)との共重合によって得られた上記アクリル系樹脂(a1-1)におけるエネルギー線硬化性基の含有量により保護膜の硬化の程度を好ましい範囲に容易に調節できる。
【0192】
上記アクリル系樹脂(a1-1)を構成する上記アクリル系重合体(a11)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0193】
・エネルギー線硬化性化合物(a12)
上記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、上記アクリル系重合体(a11)が有する官能基と反応可能な基として、イソシアネート基、エポキシ基及びカルボキシ基からなる群より選択される1種又は2種以上を有するものが好ましく、上記基としてイソシアネート基を有するものがより好ましい。上記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、例えば、上記基としてイソシアネート基を有する場合、このイソシアネート基が、上記官能基として水酸基を有するアクリル系重合体(a11)のこの水酸基と容易に反応する。
【0194】
上記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、1分子中に上記エネルギー線硬化性基を1~5個有することが好ましく、1~2個有することがより好ましい。
【0195】
上記エネルギー線硬化性化合物(a12)としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メターイソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;
ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;
ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0196】
これらの中でも、上記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートであることが好ましい。
【0197】
上記アクリル系樹脂(a1-1)を構成する上記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0198】
アクリル系樹脂(a1-1)の含有量は、保護膜形成用フィルム用組成物(2)の溶媒以外の成分の総質量に対して、1~40質量%であることが好ましく、2~30質量%であることがより好ましく、3~20質量%であることが特に好ましい。
【0199】
上記アクリル系樹脂(a1-1)において、上記アクリル系重合体(a11)に由来する上記官能基の含有量に対する、上記エネルギー線硬化性化合物(a12)に由来するエネルギー線硬化性基の含有量の割合は、20~120モル%であることが好ましく、35~100モル%であることがより好ましく、50~100モル%であることが特に好ましい。上記含有量の割合がこのような範囲であることで、硬化後の保護膜の接着力がより大きくなる。なお、上記エネルギー線硬化性化合物(a12)が一官能(上記基を1分子中に1個有する)化合物である場合には、上記含有量の割合の上限値は100モル%となるが、上記エネルギー線硬化性化合物(a12)が多官能(上記基を1分子中に2個以上有する)化合物である場合には、上記含有量の割合の上限値は100モル%を超えることがある。
【0200】
ここで、「由来」とは、重合するために、化学構造が変化することを意味する。
【0201】
上記重合体(a1)の重量平均分子量(Mw)は、100000~2000000であることが好ましく、300000~1500000であることがより好ましい。
ここで、「重量平均分子量」とは、先に説明したとおりである。
【0202】
上記重合体(a1)が、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものである場合、上記重合体(a1)は、上記アクリル系重合体(a11)を構成するものとして説明した、上述のモノマーのいずれにも該当せず、かつ架橋剤と反応する基を有するモノマーが重合して、上記架橋剤と反応する基において架橋されたものであってもよいし、上記エネルギー線硬化性化合物(a12)に由来する、上記官能基と反応する基において、架橋されたものであってもよい。
【0203】
保護膜形成用フィルム用組成物(2)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが含有する上記重合体(a1)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0204】
(エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2))
エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2)が有するエネルギー線硬化性基としては、エネルギー線硬化性二重結合を含む基が挙げられ、好ましいものとしては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
【0205】
上記化合物(a2)は、上記の条件を満たすものであれば、特に限定されないが、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂等が挙げられる。
【0206】
上記化合物(a2)のうち、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物としては、例えば、多官能のモノマー又はオリゴマー等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
【0207】
上記アクリレート系化合物としては、例えば、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル]プロパン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル]プロパン、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリロキシプロパン等の2官能(メタ)アクリレート;
トリス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー等の多官能(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
【0208】
上記化合物(a2)のうち、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂としては、例えば、「特開2013-194102号公報」の段落0043等に記載されているものを用いることができる。このような樹脂は、後述する熱硬化性成分を構成する樹脂にも該当するが、本発明においては上記化合物(a2)として取り扱う。
【0209】
上記化合物(a2)は、重量平均分子量が100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0210】
保護膜形成用フィルム用組成物(2)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが含有する上記化合物(a2)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0211】
[エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)]
保護膜形成用フィルム用組成物(2)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、上記エネルギー線硬化性成分(a)として上記化合物(a2)を含有する場合、さらにエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)も含有することが好ましい。
上記重合体(b)は、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。
【0212】
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、アクリル系重合体、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル、ゴム系樹脂、アクリルウレタン樹脂等が挙げられる。
【0213】
これらの中でも、上記重合体(b)は、アクリル系重合体(以下、「アクリル系重合体(b-1)」と略記することがある)であることが好ましい。
【0214】
アクリル系重合体(b-1)は、公知のものでよく、例えば、1種のアクリル系モノマーの単独重合体であってもよいし、2種以上のアクリル系モノマーの共重合体であってもよいし、1種又は2種以上のアクリル系モノマーと、1種又は2種以上のアクリル系モノマー以外のモノマー(非アクリル系モノマー)と、の共重合体であってもよい。
【0215】
アクリル系重合体(b-1)を構成する上記アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル、グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、先に説明したとおりである。
【0216】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリルともいう)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチルともいう)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチルともいう)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等が挙げられる。
【0217】
上記環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル等が挙げられる。
上記グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。
上記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
【0218】
上記置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等が挙げられる。
【0219】
アクリル系重合体(b-1)を構成する上記非アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
【0220】
少なくとも一部が架橋剤によって架橋された、上記エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、上記重合体(b)中の反応性官能基が架橋剤と反応したものが挙げられる。
【0221】
上記反応性官能基は、架橋剤の種類等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、架橋剤がポリイソシアネート化合物である場合には、上記反応性官能基としては、水酸基、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられ、これらの中でも、イソシアネート基との反応性が高い水酸基が好ましい。また、架橋剤がエポキシ系化合物である場合には、上記反応性官能基としては、カルボキシ基、アミノ基、アミド基等が挙げられ、これらの中でもエポキシ基との反応性が高いカルボキシ基が好ましい。ただし、半導体ウエハや半導体チップの回路の腐食を防止するという点では、上記反応性官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。
【0222】
上記反応性官能基を有する、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、少なくとも上記反応性官能基を有するモノマーを重合させて得られたものが挙げられる。アクリル系重合体(b-1)の場合であれば、これを構成するモノマーとして挙げた、上記アクリル系モノマー及び非アクリル系モノマーのいずれか一方又は両方として、上記反応性官能基を有するものを用いればよい。例えば、反応性官能基として水酸基を有する上記重合体(b)としては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを重合して得られたものが挙げられ、これ以外にも、先に挙げた上記アクリル系モノマー又は非アクリル系モノマーにおいて、1個又は2個以上の水素原子が上記反応性官能基で置換されてなるモノマーを重合して得られたものが挙げられる。
【0223】
反応性官能基を有する上記重合体(b)において、反応性官能基を有するモノマーから誘導された構成単位の割合(含有量)は、上記重合体(b)を構成する構成単位の総質量に対して、1~20質量%であることが好ましく、2~10質量%であることがより好ましい。上記割合がこのような範囲であることで、上記重合体(b)において、架橋の程度がより好ましい範囲となる。
【0224】
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の重量平均分子量(Mw)は、保護膜形成用フィルム用組成物(2)の造膜性がより良好となる点から、10000~2000000であることが好ましく、100000~1500000であることがより好ましい。ここで、「重量平均分子量」とは、先に説明したとおりである。
【0225】
保護膜形成用フィルム用組成物(2)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが含有する、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0226】
保護膜形成用フィルム用組成物(2)としては、上記重合体(a1)及び上記化合物(a2)のいずれか一方又は両方を含有するものが挙げられる。そして、保護膜形成用フィルム用組成物(2)は、上記化合物(a2)を含有する場合、さらにエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)も含有することが好ましく、この場合、さらに上記(a1)を含有することも好ましい。また、保護膜形成用フィルム用組成物(2)は、上記化合物(a2)を含有せず、上記重合体(a1)、及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)をともに含有していてもよい。
【0227】
保護膜形成用フィルム用組成物(2)が、上記重合体(a1)、上記化合物(a2)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)を含有する場合、保護膜形成用フィルム用組成物(2)において、上記化合物(a2)の含有量は、上記重合体(a1)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の合計含有量100質量部に対して、10~400質量部であることが好ましく、30~350質量部であることがより好ましい。
【0228】
保護膜形成用フィルム用組成物(2)において、溶媒以外の成分の総含有量(総質量)に対する、上記エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の合計含有量(すなわち、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムの上記エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の合計含有量)は、5~90質量%であることが好ましく、10~80質量%であることがより好ましく、20~70質量%であることが特に好ましい。エネルギー線硬化性成分の含有量の上記割合がこのような範囲であることで、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムのエネルギー線硬化性がより良好となる。
【0229】
上記エネルギー線硬化性成分(a)の含有量は、保護膜形成用フィルム用組成物(2)における溶媒以外の成分の総質量に対して、1~80質量%が好ましい。
【0230】
上記エネルギー線硬化性成分(a1)の含有量は、保護膜形成用フィルム用組成物(2)における溶媒以外の成分の総質量に対して、1~80質量%が好ましい。
【0231】
上記エネルギー線硬化性成分(a2)の含有量は、保護膜形成用フィルム用組成物(2)における溶媒以外の成分の総質量に対して、1~80質量%が好ましい。
【0232】
上記エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の含有量は、保護膜形成用フィルム用組成物(2)における溶媒以外の成分の総質量に対して、1~80質量%が好ましい。
【0233】
なお、上記成分(a1)、成分(a2)、成分(b)の合計含有量は、100質量%を超えない。
【0234】
保護膜形成用フィルム用組成物(2)は、上記エネルギー線硬化性成分以外に、さらに目的に応じて、熱硬化性成分、光重合開始剤、充填材、カップリング剤、架橋剤、着色剤及び汎用添加剤からなる群より選択される1種又は2種以上を含有していてもよい。例えば、上記エネルギー線硬化性成分及び熱硬化性成分を含有する保護膜形成用フィルム用組成物(2)を用いることにより、形成されるエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、加熱によって被着体に対する接着力が向上し、このエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムから形成された保護膜の強度も向上する。
【0235】
保護膜形成用フィルム用組成物(2)における上記熱硬化性成分、光重合開始剤、充填材、カップリング剤、架橋剤、着色剤及び汎用添加剤としては、それぞれ、保護膜形成用フィルム用組成物(1)における熱硬化性成分(B)、光重合開始剤(H)、充填材(D)、カップリング剤(E)、架橋剤(F)、着色剤(I)及び汎用添加剤(J)と同じものが挙げられる。
【0236】
保護膜形成用フィルム用組成物(2)において、上記熱硬化性成分、光重合開始剤、充填材、カップリング剤、架橋剤、着色剤及び汎用添加剤は、それぞれ、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0237】
保護膜形成用フィルム用組成物(2)における上記熱硬化性成分、光重合開始剤、充填材、カップリング剤、架橋剤、着色剤及び汎用添加剤の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。
【0238】
保護膜形成用フィルム用組成物(2)は、希釈によってその取り扱い性が向上することから、さらに溶媒を含有するものが好ましい。
【0239】
保護膜形成用フィルム用組成物(2)が含有する溶媒としては、例えば、保護膜形成用フィルム用組成物(1)における溶媒と同じものが挙げられる。
【0240】
保護膜形成用フィルム用組成物(2)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0241】
<<エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルム用組成物の製造方法>>
保護膜形成用フィルム用組成物(2)等のエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルム用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
【0242】
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
【0243】
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
【0244】
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
【0245】
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0246】
保護膜形成用シート
本実施形態に係る保護膜形成用シートは、上述の保護膜形成用フィルムと、後述する支持シートとを備える。また上記保護膜形成用フィルムは、支持シートを備えていない面において、剥離フィルムを備えていてもよい。
【0247】
本実施形態に係る保護膜形成用シートは、上記剥離フィルムを取り除いた後、上記保護膜形成用フィルムにより、半導体ウエハにおける回路が設けられている面とは反対側の表面(裏面)に貼付される。この後、いずれかの段階で保護膜形成用フィルムは硬化によって保護膜を形成する。そして、支持シート、保護膜又は保護膜形成用フィルム、及び半導体ウエハがこの順に積層されてなる積層体は、さらにダイシングによって、支持シート、保護膜又は保護膜形成用フィルム、及び半導体チップがこの順に積層されてなる積層体に個片化される。半導体チップは最終的に、その裏面に保護膜を備えた状態で、支持シートからピックアップされる。このように、本実施形態に係る保護膜形成用シートは、半導体チップの裏面に保護膜を形成するために使用される。
【0248】
支持シート、保護膜又は保護膜形成用フィルム、及び半導体チップがこの順に積層されてなる積層体は、この状態のまま、後述するキャリアテープにリール詰めされ、運搬される。その後、この積層体が取り出されるときには、キャリアテープの上方に配置される撮像装置を介して、リール詰めされた積層体が検出され、その位置情報が取得される。そして、この位置情報に基づき積層体が取り出される。
【0249】
本実施形態では、保護膜形成用フィルムがCIE1976L表色系により規定される座標において、明度Lが37.9、色度aが-0.36、色度bが-2.6である色に対して、所定の色差ΔE abを有することで、これを半導体チップに積層した積層体を、キャリアテープに収納された状態で良好に検出できる。また、このような保護膜形成用フィルムを用いることで、硬化後の保護膜が積層された積層体についても、同様に良好に検出できる。
【0250】
本明細書では、保護膜形成用シートにおいて、保護膜形成用フィルムを加熱又はエネルギー線の照射によって硬化させて保護膜としたものも、支持シート及び保護膜の積層構造が維持されている限り、保護膜形成用シートと称する。また、保護膜形成用シートにおいて、例えば、支持シートが粘着剤層を備えている場合に、この粘着剤層を硬化させたものも、粘着剤層の硬化物、及び保護膜形成用フィルム又は保護膜等の積層構造が維持されている限り、保護膜形成用シートと称する。
【0251】
支持シートとしては、例えば、基材を備えたものが挙げられ、このような支持シートとしては、例えば、基材のみからなるシートと、基材上に粘着剤層、中間層等の他の層が積層されてなるシートと、が挙げられる。上記他の層は1層(単層)のみでもよいし、2層以上の複数層でもよく、複数層である場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
なお、本明細書においては、上記他の層の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の材質及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0252】
このように、本実施形態においては、上記支持シートとして種々の形態のシートを用いることができる。以下、支持シートの種類ごとに、本実施形態に係る保護膜形成用シートについて、説明する。なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0253】
図1は、本実施形態に係る保護膜形成用シートの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【0254】
図1に示す保護膜形成用シート1Aは、基材11上に粘着剤層12を備え、粘着剤層12上に保護膜形成用フィルム13を備えてなるものである。支持シート10は、基材11及び粘着剤層12の積層体であり、保護膜形成用シート1Aは、支持シート10の一方の表面10a上に保護膜形成用フィルム13が積層された構成を有する。また、保護膜形成用シート1Aは、さらに保護膜形成用フィルム13上に剥離フィルム14を備えている。
【0255】
保護膜形成用シート1Aにおいては、基材11の一方の表面11aに粘着剤層12が積層され、粘着剤層12の表面12a(粘着剤層12における基材11と接触する面とは反対側の面)の全面に保護膜形成用フィルム13が積層され、保護膜形成用フィルム13の表面13a(保護膜形成用フィルム13における粘着剤層12と接触する面とは反対側の面)の一部に治具用接着剤層15が積層され、保護膜形成用フィルム13の表面13aのうち、治具用接着剤層15が積層されていない面と、治具用接着剤層15の表面15a(上面、すなわち治具用接着剤層15における保護膜形成用フィルム13と接触する面とは反対側の面、及び側面)に、剥離フィルム14が積層されている。
【0256】
治具用接着剤層15は、例えば、接着剤成分を含有する単層構造のものであってもよいし、芯材となるシートの両面に接着剤成分を含有する層が積層された複数層構造のものであってもよい。
【0257】
図1に示す保護膜形成用シート1Aは、剥離フィルム14が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム13の表面13aに半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、治具用接着剤層15の表面15aのうち上面が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0258】
図2は、本実施形態に係る保護膜形成用シートの他の実施形態を模式的に示す断面図である。なお、図2において、図1に示すものと同じ構成要素には、図1の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。これは図3以降の図においても同様である。
【0259】
図2に示す保護膜形成用シート1Bは、治具用接着剤層15を備えていない点以外は、図1に示す保護膜形成用シート1Aと同じものである。すなわち、保護膜形成用シート1Bにおいては、基材11の一方の表面11aに粘着剤層12が積層され、粘着剤層12の表面12a(粘着剤層12における基材11と接触する面とは反対側の面)の全面に保護膜形成用フィルム13が積層され、保護膜形成用フィルム13の表面13a(保護膜形成用フィルム13における粘着剤層12と接触する面とは反対側の面)の全面に剥離フィルム14が積層されている。
【0260】
図2に示す保護膜形成用シート1Bは、剥離フィルム14が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム13の表面13aのうち、中央側の一部の領域に半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、保護膜形成用フィルム13の半導体ウエハを取り囲む周縁部近傍の領域が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0261】
図3は、本実施形態に係る保護膜形成用シートのさらに他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【0262】
図3に示す保護膜形成用シート1Cは、粘着剤層12を備えていない点以外は、図1に示す保護膜形成用シート1Aと同じものである。すなわち、保護膜形成用シート1Cにおいては、支持シート10が基材11のみからなる。そして、基材11の一方の表面11aに保護膜形成用フィルム13が積層され、保護膜形成用フィルム13の表面13a(保護膜形成用フィルム13における基材と接触する面とは反対側の面)の一部に治具用接着剤層15が積層され、保護膜形成用フィルム13の表面13aのうち、治具用接着剤層15が積層されていない面と、治具用接着剤層15の表面15a(上面、すなわち治具用接着剤層15における保護膜形成用フィルム13と接触する面とは反対側の面、及び側面)に、剥離フィルム14が積層されている。
【0263】
図3に示す保護膜形成用シート1Cは、図1に示す保護膜形成用シート1Aと同様に、剥離フィルム14が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム13の表面13aに半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、治具用接着剤層15の表面15aのうち上面が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0264】
図4は、本実施形態に係る保護膜形成用シートのさらに他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【0265】
図4に示す保護膜形成用シート1Dは、治具用接着剤層15を備えていない点以外は、図3に示す保護膜形成用シート1Cと同じものである。すなわち、保護膜形成用シート1Dにおいては、基材11の一方の表面11aに保護膜形成用フィルム13が積層され、保護膜形成用フィルム13の表面13a(保護膜形成用フィルム13における基材と接触する面とは反対側の面)の全面に剥離フィルム14が積層されている。
【0266】
図4に示す保護膜形成用シート1Dは、図2に示す保護膜形成用シート1Bと同様に、剥離フィルム14が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム13の表面13aのうち、中央側の一部の領域に半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、保護膜形成用フィルム13の半導体ウエハを取り囲む周縁部近傍の領域が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0267】
図5は、本実施形態に係る保護膜形成用シートのさらに他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【0268】
ここに示す保護膜形成用シート1Eは、保護膜形成用フィルムの形状が異なる点以外は、図1に示す保護膜形成用シート1Aと同じものである。すなわち、保護膜形成用シート1Eは、基材11上に粘着剤層12を備え、粘着剤層12上に保護膜形成用フィルム23を備えてなるものである。支持シート10は、基材11及び粘着剤層12の積層体であり、保護膜形成用シート1Eは、支持シート10の一方の表面10a上に保護膜形成用フィルム23が積層された構成を有する。また、保護膜形成用シート1Eは、さらに保護膜形成用フィルム23上に剥離フィルム14を備えている。保護膜形成用フィルム23は、形状が異なる点以外は保護膜形成用フィルム13と同じものである。
【0269】
保護膜形成用シート1Eを上方から見下ろして平面視したときに、保護膜形成用フィルム23は粘着剤層12よりも表面積が小さく、例えば、円形状等の形状を有する。
【0270】
保護膜形成用シート1Eにおいては、基材11の一方の表面11aに粘着剤層12が積層され、粘着剤層12の表面12a(粘着剤層12における基材11と接触する面とは反対側の面)の一部に保護膜形成用フィルム23が積層されている。そして、粘着剤層12の表面12aのうち、保護膜形成用フィルム23が積層されていない面と、保護膜形成用フィルム23の表面23a(上面、すなわち保護膜形成用フィルム23における根着剤層12と接触する面とは反対側の面、及び側面)の上に、剥離フィルム14が積層されている。
【0271】
図5に示す保護膜形成用シート1Eは、剥離フィルム14が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム23の表面23aに半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、粘着剤層12の表面12aのうち、保護膜形成用フィルム23が積層されていない面が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0272】
図6は、本実施形態に係る保護膜形成用シートのさらに他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【0273】
ここに示す保護膜形成用シート1Fは、粘着剤層12を備えていない点以外は、図5に示す保護膜形成用シート1Eと同じものである。すなわち、保護膜形成用シート1Fにおいては、支持シートが基材11のみからなる。また、基材11の一方の表面11aの一部に保護膜形成用フィルム23が積層され、基材11の表面11aのうち、保護膜形成用フィルム23が積層されていない面と、保護膜形成用フィルム23の表面23a(上面、すなわち保護膜形成用フィルム23における基材11と接触する面とは反対側の面、及び側面)の上に、剥離フィルム14が積層されている。
【0274】
図6に示す保護膜形成用シート1Fは、剥離フィルム14が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム23の表面23aに半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、基材11の表面11aのうち、保護膜形成用フィルム23が積層されていない面が、治具用接着剤層(図示略)によってリングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。ここで治具用接着剤層としては、図1等に示す治具用接着剤層15と同様のものを使用できる。
【0275】
なお、保護膜形成用シートは、支持シートがいかなる構成のものであっても、治具用接着剤層を使用して、リングフレーム等の治具に貼付することが可能である。
【0276】
本実施形態に係る保護膜形成用シートは、図1~6に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、図1~6に示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。
【0277】
また、図1図2、及び図5では、保護膜形成用シートとして、基材上に粘着剤層が直接接触して設けられているものについて説明したが、本実施形態に係る保護膜形成用シートは、基材と粘着剤層との間に中間層が設けられたものであってもよい。すなわち、本実施形態に係る保護膜形成用シートにおいて、支持シートは、基材、中間層及び粘着剤層がこの順に積層されてなる積層構造を有するものであってもよい。
【0278】
そして、図3図4及び図6では、保護膜形成用シートとして、基材上に保護膜形成用フィルムが直接接触して設けられているものについて説明したが、本実施形態に係る保護膜形成用シートは、基材と保護膜形成用フィルムとの間に中間層が設けられたものであってもよい。
【0279】
ここで、中間層としては、目的に応じて任意のものを選択でき、好ましいものとしては、例えば、隣接する二層の密着性を向上させるものが挙げられる。
【0280】
また、本実施形態に係る保護膜形成用シートは、上記中間層以外の層が、任意の箇所に設けられていてもよい。
【0281】
以下、本実施形態に係る保護膜形成用シートの各構成について、さらに詳細に説明する。
【0282】
○支持シート
本実施形態において、保護膜形成用シートを構成する支持シートは、上記保護膜形成用フィルムを設けることが可能であれば、特に限定されない。好ましい支持シートとしては、例えば、先に説明したような、半導体ウエハの加工用シートの分野で通常用いられる基材のみからなるもの、基材及び粘着剤層が積層されてなるもの等が挙げられる。また、好ましい支持シートとしては、例えば、基材、中間層及び粘着剤層が積層されてなるもの等、上記で例示した積層構造において、隣接する二層の間に中間層が設けられたものも挙げられる。
【0283】
すなわち、支持シートは、1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。支持シートが複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0284】
支持シートの厚さは、目的に応じて適宜選択すればよいが、上記保護膜形成用シートに十分な可撓性を付与し、半導体ウエハに良好に貼付する観点から、10~500μmであることが好ましく、20~350μmであることがより好ましく、30~200μmであることがさらに好ましい。
【0285】
ここで、「支持シートの厚さ」とは、支持シートを構成する各層の合計の厚さを意味し、例えば、基材及び粘着剤層が積層されてなる支持シートの場合には、基材の厚さ及び粘着剤層の厚さの合計値を意味する。
【0286】
また、本明細書において、「厚さ」とは、任意の5箇所で、接触式厚み計で厚さを測定した平均で表される値を意味する。
【0287】
・基材
本実施形態において、上記支持シートを構成する基材の材質は、各種樹脂であることが好ましく、その具体的な例としては、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等)、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリウレタンアクリレート、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、フッ素樹脂、これらのいずれかの樹脂の水添加物、変性物、架橋物又は共重合物等が挙げられる。
【0288】
基材の厚さは、目的に応じて適宜選択できる。
支持シートが、基材と、粘着剤層等のその他の層と、が積層されてなるものである場合、基材の厚さは、15~300μmであることが好ましく、20~200μmであることがより好ましい。基材の厚さがこのような範囲であることで、保護膜形成用シートの可撓性、および半導体ウエハ又は半導体チップへの貼付性が、より向上する。
【0289】
基材は1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。基材が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0290】
なお、基材が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましい基材の厚さとなるようにするとよい。
【0291】
基材は、その上に設けられる粘着剤層、保護膜形成用フィルム等の他の層との密着性を向上させるために、サンドブラスト処理、溶剤処理、エンボス加工処理等による凹凸化処理(マット処理)や、コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理等が表面に施されたものであってもよい。また、基材は、表面がプライマー処理を施されたものであってもよい。
【0292】
・粘着剤層
本実施形態において、上記支持シートを構成する粘着剤層は、公知のものを適宜使用できる。
【0293】
粘着剤層は、これを構成するための、粘着剤等の各種成分を含有する粘着剤組成物から形成できる。粘着剤組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、粘着剤層の上記成分同士の含有量の比率と同じとなる。ここで、「常温」とは、先に説明したとおりである。
【0294】
粘着剤層の厚さは、目的に応じて適宜選択できるが、1~100μmであることが好ましく、2~80μmであることがより好ましく、3~50μmであることがさら好ましい。
【0295】
粘着剤層は、1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。粘着剤層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0296】
粘着剤層が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましい粘着剤層の厚さとなるようにするとよい。
【0297】
上記粘着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、ビニルエーテル系樹脂等の粘着性樹脂が挙げられ、その樹脂の機能に着目した場合には、例えば、エネルギー線硬化性樹脂等が挙げられる。
【0298】
ここで、「エネルギー線」及び「エネルギー線硬化性」とは、先に説明したとおりである。
【0299】
上記エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性基を有するものが挙げられる。
【0300】
上記粘着性樹脂は、アクリル系樹脂であることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を含む、(メタ)アクリル酸エステル共重合体であることがより好ましい。
【0301】
上記粘着剤層は、エネルギー線硬化性樹脂等の、エネルギー線の照射により重合する成分を含有している場合には、エネルギー線硬化性のものとなり、エネルギー線を照射してその粘着性を低下させることで、後述する保護膜付き半導体チップのピックアップが容易となる。このような粘着剤層は、例えば、エネルギー線の照射により重合する成分を含有する各種の粘着剤組成物から形成できる。
【0302】
<<粘着剤組成物>>
上記粘着剤組成物で好ましいものとしては、エネルギー線の照射により重合する成分を含有するものが挙げられ、このような粘着剤組成物としては、例えば、アクリル系樹脂とエネルギー線重合性化合物とを含有するもの(以下、「粘着剤組成物(i)」と略記することがある。);水酸基を有し、かつ重合性基を側鎖に有する上記アクリル系樹脂(例えば、水酸基を有し、かつウレタン結合を介して重合性基を側鎖に有するもの)と、イソシアネート系架橋剤と、を含有するもの(以下、「粘着剤組成物(ii)」と略記することがある。)等が挙げられる。
【0303】
[粘着剤組成物(i)]
粘着剤組成物(i)は、上記アクリル系樹脂とエネルギー線重合性化合物とを必須成分として含有する。
以下、各成分について説明する。
【0304】
(アクリル系樹脂)
粘着剤組成物(i)における上記アクリル系樹脂で好ましいものとしては、例えば、モノマーとして(メタ)アクリル酸エステルと、必要に応じて用いられる、(メタ)アクリル酸エステル以外のモノマーと、を重合して得られた、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。
【0305】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリルともいう)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル基、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチルともいう)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリルともいう)、(メタ)アクリル酸イソオクタデシル((メタ)アクリル酸イソステアリルともいう)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イミド;
(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0306】
上記のなかでも、メタクリル酸メチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル等が好ましい。
【0307】
上記(メタ)アクリル酸エステル以外のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、N-メチロールアクリルアミド等が挙げられる。
【0308】
アクリル系樹脂を構成する上記(メタ)アクリル酸エステル、上記(メタ)アクリル酸エステル以外のモノマー等の各種モノマーは、いずれも1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0309】
粘着剤組成物(i)が含有するアクリル系樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0310】
粘着剤組成物(i)のアクリル系樹脂の含有量は、粘着剤組成物(i)中の溶媒以外の全ての含有成分の総質量に対して40~99質量%であることが好ましく、50~91量%であることがより好ましい。
【0311】
(エネルギー線重合性化合物)
粘着剤組成物(i)における上記エネルギー線重合性化合物は、エネルギー線の照射により重合して硬化する化合物であり、その例としては、分子内にエネルギー線硬化性二重結合等のエネルギー線重合性基を有するものが挙げられる。
【0312】
上記エネルギー線重合性化合物としては、例えば、エネルギー線重合性基を有する低分子量化合物(単官能又は多官能のモノマー及びオリゴマー)が挙げられ、より具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;
ジシクロペンタジエンジメトキシジ(メタ)アクリレート等の環状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;
ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ変性(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、イタコン酸オリゴマー等の(メタ)アクリレート系化合物等が挙げられる。
【0313】
上記エネルギー線重合性化合物は、分子量が100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0314】
粘着剤組成物(i)が含有するエネルギー線重合性化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0315】
粘着剤組成物(i)のエネルギー線重合性化合物の含有量は、上記アクリル系樹脂の含有量100質量部に対して、1~125質量部であることが好ましく、10~125質量部であることがより好ましい。
【0316】
(光重合開始剤)
粘着剤組成物(i)は、上記アクリル系樹脂及びエネルギー線重合性化合物以外に、光重合開始剤を含有していてもよい。
【0317】
上記光重合開始剤は、公知のものでよく、具体的には、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α’-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン等のα-ケトール系化合物;
アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1等のアセトフェノン系化合物;
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;
ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール等のケタール系化合物;
2-ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;
1-フェノン-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(o-アセチルオキシム)等の光活性オキシム系化合物;
ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;
2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン系化合物;
チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;
p-ジメチルアミノ安息香酸エステル;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド;アシルホスフォナート、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]等が挙げられる。
【0318】
粘着剤組成物(i)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0319】
光重合開始剤を用いる場合、粘着剤組成物(i)の光重合開始剤の含有量は、上記エネルギー線重合性化合物の含有量100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、1~5質量部であることがより好ましい。光重合開始剤の上記含有量が上記下限値以上であることで、光重合開始剤を用いたことによる効果が十分に得られる。また、光重合開始剤の上記含有量が上記上限値以下であることで、過剰な光重合開始剤からの副生成分の発生が抑制されて、粘着剤層の硬化がより良好に進行する。
【0320】
(架橋剤)
粘着剤組成物(i)は、上記アクリル系樹脂及びエネルギー線重合性化合物以外に、さらに架橋剤を含有していてもよい。
【0321】
上記架橋剤としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物等が挙げられる。
【0322】
上記有機多価イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物、脂環族多価イソシアネート化合物並びにこれら化合物の三量体、イソシアヌレート体及びアダクト体や、上記芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物又は脂環族多価イソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。上記アダクト体は、上記芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物又は脂環族多価イソシアネート化合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン又はヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物を意味する。
【0323】
上記有機多価イソシアネート化合物として、より具体的には、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート;2,6-トリレンジイソシアネート;1,3-キシリレンジイソシアネート;1,4-キシレンジイソシアネート;ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート;3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート;トリメチロールプロパン等のポリオールのすべて若しくは一部の水酸基に、トリレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートのいずれか一方又は両方を付加した化合物;リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0324】
上記有機多価イミン化合物としては、例えば、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等が挙げられる。
【0325】
架橋剤としてイソシアネート化合物を用いる場合、アクリル系樹脂としては、水酸基含有重合体を用いることが好ましい。架橋剤がイソシアネート基を有し、アクリル系樹脂が水酸基を有する場合、これらイソシアネート基と水酸基との反応によって、粘着剤層に架橋構造を簡便に導入できる。
【0326】
粘着剤組成物(i)が含有する架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0327】
架橋剤を用いる場合、粘着剤組成物(i)における架橋剤の含有量は、上記アクリル系樹脂の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~16質量部であることがより好ましい。
【0328】
(溶媒)
粘着剤組成物(i)は、上記アクリル系樹脂及びエネルギー線重合性化合物以外に、さらに溶媒を含有することが好ましい。
【0329】
上記溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オールともいう)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(すなわち、アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
【0330】
粘着剤組成物(i)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0331】
粘着剤組成物(i)が溶媒を含有する場合の溶媒の含有量は、粘着剤組成物の総質量に対して、40~90質量%であることが好ましく、50~80質量%であることがより好ましい。
【0332】
(その他の成分)
粘着剤組成物(i)は、上記アクリル系樹脂及びエネルギー線重合性化合物以外に、本発明の効果を損なわない範囲内において、さらに、上記光重合開始剤、架橋剤及び溶媒に該当しないその他の成分を含有していてもよい。
【0333】
上記その他の成分は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、着色剤(染料、顔料)、劣化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、シリコーン化合物、連鎖移動剤等の各種添加剤が挙げられる。粘着剤組成物(i)が含有する上記その他の成分は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0334】
[粘着剤組成物(ii)]
粘着剤組成物(ii)は、水酸基を有し、かつ重合性基を側鎖に有するアクリル系樹脂(例えば、水酸基を有し、かつウレタン結合を介して重合性基を側鎖に有するもの)と、イソシアネート系架橋剤と、を必須成分として含有する。
【0335】
粘着剤組成物(ii)を用いた場合には、アクリル系樹脂が重合性基を側鎖に有することにより、粘着剤組成物(i)の場合のように、エネルギー線重合性化合物を用いて、エネルギー線の照射により重合反応させた場合よりも、重合反応(硬化)後の粘着剤層の粘着性低下による被着体からの剥離性が向上し、保護膜付き半導体チップのピックアップ性が向上する。
【0336】
なお、本明細書においては、粘着剤組成物(ii)における「アクリル系樹脂」との記載は、特に断りのない限り、「重合性基を側鎖に有するアクリル系樹脂」を意味するものとする。
【0337】
(アクリル系樹脂)
上述の重合性基を側鎖に有するアクリル系樹脂としては、例えば、モノマーとして、水酸基を有しない水酸基非含有(メタ)アクリル酸エステルと、水酸基を有する水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有化合物と、を共重合させ、得られた水酸基含有共重合体の水酸基に、イソシアネート基及び重合性基を有する化合物のイソシアネート基を反応させて、ウレタン結合を形成して得られたものが挙げられる。
【0338】
上記水酸基非含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、粘着剤組成物(i)における(メタ)アクリル酸エステルのうち、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル以外のものが挙げられる。
【0339】
また、上記水酸基含有化合物としては、粘着剤組成物(i)における水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルと同じものが挙げられる。
【0340】
上記アクリル系樹脂を構成する、水酸基非含有(メタ)アクリル酸エステル及び水酸基含有化合物は、それぞれ1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0341】
上記イソシアネート基及び重合性基を有する化合物としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0342】
上記アクリル系樹脂を構成する、上記イソシアネート基及び重合性基を有する化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0343】
粘着剤組成物(ii)が含有するアクリル系樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0344】
粘着剤組成物(ii)のアクリル系樹脂の含有量は、粘着剤組成物(ii)中の溶媒以外の全ての含有成分の総質量に対して、80~99質量%であることが好ましく、90~97質量%であることがより好ましい。
【0345】
(イソシアネート系架橋剤)
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、粘着剤組成物(i)における架橋剤である上記有機多価イソシアネート化合物と同じものが挙げられる。
【0346】
粘着剤組成物(ii)が含有するイソシアネート系架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0347】
粘着剤組成物(ii)中のイソシアネート系架橋剤が有するイソシアネート基のモル数は、粘着剤組成物(ii)中のアクリル系樹脂が有する水酸基のモル数に対して0.2~3倍であることが好ましい。イソシアネート基の上記モル数が上記下限値以上であることで、硬化後の粘着剤層の粘着性低下による被着体からの剥離性が向上し、保護膜付き半導体チップのピックアップ性が向上する。また、イソシアネート基の上記モル数が上記上限値以下であることで、イソシアネート系架橋剤同士の反応による副生成物の発生をより抑制できる。
【0348】
粘着剤組成物(ii)のイソシアネート系架橋剤の含有量は、イソシアネート基のモル数が上述のような範囲となるように適宜調節すればよいが、このような条件を満たしたうえで、アクリル系樹脂の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~15質量部であることがより好ましく、0.3~12質量部であることが特に好ましい。
【0349】
(光重合開始剤)
粘着剤組成物(ii)は、上記アクリル系樹脂及びイソシアネート系架橋剤以外に、光重合開始剤を含有していてもよい。
【0350】
上記光重合開始剤としては、例えば、粘着剤組成物(i)の場合と同じものが挙げられる。
【0351】
粘着剤組成物(ii)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0352】
光重合開始剤を用いる場合、粘着剤組成物(ii)の光重合開始剤の含有量は、アクリル系樹脂の含有量100質量部に対して、0.05~20質量部であることが好ましい。
【0353】
光重合開始剤の上記含有量が上記下限値以上であることで、光重合開始剤を用いたことによる効果が十分に得られる。また、光重合開始剤の上記含有量が上記上限値以下であることで、過剰な光重合開始剤からの副生成分の発生が抑制されて、粘着剤層の硬化がより良好に進行する。
【0354】
(溶媒)
粘着剤組成物(ii)は、上記アクリル系樹脂及びイソシアネート系架橋剤以外に、さらに溶媒を含有することが好ましい。
【0355】
上記溶媒としては、例えば、粘着剤組成物(i)の場合と同じものが挙げられる。
【0356】
粘着剤組成物(ii)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0357】
粘着剤組成物(ii)が溶媒を含有する場合の溶媒の含有量は、粘着剤組成物(ii)の総質量に対して、40~90質量%であることが好ましく、50~80質量%であることがより好ましい。
【0358】
(その他の成分)
粘着剤組成物(ii)は、上記アクリル系樹脂及びイソシアネート系架橋剤以外に、本発明の効果を損なわない範囲内において、上記光重合開始剤及び溶媒に該当しないその他の成分を含有していてもよい。
【0359】
上記その他の成分としては、例えば、粘着剤組成物(i)の場合と同じものが挙げられる。
【0360】
粘着剤組成物(ii)が含有する上記その他の成分は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0361】
ここまでは、エネルギー線の照射により重合する成分を含有する粘着剤組成物について説明したが、粘着剤層の形成には、エネルギー線の照射により重合する成分を含有しない粘着剤組成物を用いてもよい。すなわち、粘着剤層はエネルギー線硬化性を有しない、非エネルギー線硬化性のものでもよい。
【0362】
このような非エネルギー線硬化性粘着剤組成物で好ましいものとしては、例えば、アクリル系樹脂及び架橋剤を含有するもの(以下、「粘着剤組成物(iii)」と略記することがある。)等が挙げられ、溶媒、溶媒に該当しないその他の成分等の任意成分を含有していてもよい。
【0363】
[粘着剤組成物(iii)]
粘着剤組成物(iii)が含有する上記アクリル系樹脂、架橋剤、溶媒及びその他の成分は、いずれも粘着剤組成物(i)におけるものと同様のものである。
【0364】
粘着剤組成物(iii)のアクリル系樹脂の含有量は、粘着剤組成物(iii)中の溶媒以外の全ての含有成分の総質量に対して40~99質量%であることが好ましく、50~97質量%であることがより好ましい。
【0365】
粘着剤組成物(iii)の架橋剤の含有量は、アクリル系樹脂の含有量100質量部に対して、2~30質量部であることが好ましく、4~25質量部であることがより好ましい。
【0366】
粘着剤組成物(iii)は、上述の点以外は、粘着剤組成物(i)と同様のものである。
【0367】
<<粘着剤組成物の製造方法>>
粘着剤組成物(i)~(iii)等の上記粘着剤組成物は、上記粘着剤と、必要に応じて上記粘着剤以外の成分等の、粘着剤組成物を構成するための各成分を配合することで得られる。
【0368】
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
【0369】
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
【0370】
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0371】
○剥離フィルム
剥離フィルムとしては、例えば、この分野で用いられる、剥離処理面を有する公知の剥離フィルム等が挙げられる。上記剥離処理面における剥離処理としては、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系又はワックス系等の各種剥離剤による処理が挙げられる。上記剥離剤は、耐熱性を有する点では、アルキッド系、シリコーン系又はフッ素系の剥離剤が好ましい。
【0372】
剥離フィルムの厚さは、特に限定されないが、20~85μmであることが好ましく、25~75μmであることがより好ましい。剥離フィルムの厚さが上記下限値以上であることで、目的とする段階での剥離フィルムの剥離がより容易となり、また、保護膜形成用シートを巻き取ってロールとした後に、巻き跡が剥離フィルムに付き難くなる。一方、剥離フィルムの厚さが上記上限値以下であることで、目的外の段階での剥離フィルムの剥離を抑制する効果がより高くなる。
【0373】
<保護膜形成用シートの製造方法>
本実施形態に係る保護膜形成用シートは、上記支持シートと上記保護膜形成用フィルムとの積層構造を形成する工程(以下、「積層工程(P1)」と称することがある)と、上記保護膜形成用フィルムと上記剥離フィルムとの積層構造を形成する工程(以下、「積層工程(P2)」と称することがある)と、を含む製造方法により製造できる。
【0374】
支持シートが複数層からなる場合には、これら複数の層を積層して支持シートを製造すればよい。
【0375】
基材上に他の層(例えば、粘着剤層、中間層層等)が積層されてなる支持シートを製造する場合には、例えば、上記他の層を構成するための成分を含有する組成物(例えば、粘着剤組成物、中間層形成用組成物等)を、基材の表面に塗工して、必要に応じて乾燥させることで、基材に上記他の層を積層すればよい。また、基材上に他の層が積層されてなる支持シートを製造する場合には、例えば、上記他の層を構成するための成分を含有する組成物を、剥離材の剥離処理面に塗工して、必要に応じて乾燥させることで、剥離材上に上記他の層をあらかじめ形成した後、形成した上記他の層の表面(露出面)を上記基材の表面と貼り合わせることで、基材に上記他の層を積層してもよい。この場合、上記剥離材は、必要に応じて、例えば、上記他の層への保護膜形成用フィルムの積層時等、上記他の層に何らかの操作を行うときまでに取り除けばよい。
【0376】
上記剥離材としては、この分野で公知のものを用いればよく、例えば、本実施形態に係る保護膜形成用シートを構成する上述の剥離フィルムと同様のものを用いてもよい。
【0377】
例えば、一方又は両方の表面に上記他の層が既に積層されている基材に対して、目的とする組成物を直接塗工して、さらに他の層を形成することは、可能である。ただし、このような場合には、上述の様に、剥離材上であらかじめ形成された上記他の層を、基材又は基材上にすでに積層されている他の層と貼り合わせる方法を採用することが好ましい。
【0378】
上記積層工程(P1)において、支持シートと保護膜形成用フィルムとの積層構造は、例えば、支持シートの表面に保護膜形成用フィルム用組成物を塗工して、必要に応じて乾燥させて、保護膜形成用フィルムを形成することで形成できる(以下、本工程を特に「積層工程(P1)-11」と称することがある)。
【0379】
上記積層工程(P1)において、支持シートと保護膜形成用フィルムとの積層構造は、例えば、上述の複数層からなる支持シートの作製の場合と同様の方法でも形成できる。すなわち、剥離材の剥離処理面に保護膜形成用フィルム用組成物を塗工して、必要に応じて乾燥させることで、上記剥離材上に保護膜形成用フィルムをあらかじめ形成した後、形成したこの保護膜形成用フィルムの上記剥離材が設けられていない側の表面を、支持シートの表面と貼り合わせることでも、支持シートと保護膜形成用フィルムとの積層構造を形成できる(以下、本工程を特に「積層工程(P1)-12」と称することがある)。
【0380】
本法での上記剥離材としては、この分野で公知のものを用いればよく、例えば、本実施形態に係る保護膜形成用シートを構成する上述の剥離フィルムと同様のものが好ましい。
【0381】
例えば、上記支持シートが基材の一方又は両方の表面に上記他の層が積層されてなるものである場合にも、保護膜形成用フィルム用組成物をこのような支持シート上に直接塗工して、保護膜形成用フィルムを形成することは、可能である。ただし、このような場合にも、積層工程(P1)において上述の様に、剥離材上であらかじめ形成しておいた保護膜形成用フィルムを支持シートと貼り合わせる方法を採用することが好ましい。
【0382】
積層工程(P1)として、上述の積層工程(P1)-11を採用した場合には、上記積層工程(P2)においては、保護膜形成用フィルムの支持シートが設けられていない側の表面に、上記剥離フィルムを貼り合わせればよい。
【0383】
一方、積層工程(P1)として、上述の積層工程(P1)-12を採用した場合には、上記積層工程(P2)においては、保護膜形成用フィルムの支持シートが設けられている側とは反対側の表面に設けられている剥離材を取り除いて、保護膜形成用フィルムの一方の表面を露出させた後、この保護膜形成用フィルムの露出面に、上記剥離フィルムを貼り合わせればよい。
【0384】
また、積層工程(P1)として、上述の積層工程(P1)-12を採用した場合には、保護膜形成用フィルムをあらかじめ形成する上記剥離材として、上記剥離フィルム(本実施形態に係る保護膜形成用シートを構成する剥離フィルム)を採用することで、この積層工程(P1)-12は、上記積層工程(P2)も兼ねるものとなる。この製造方法は、製造工程が簡略化できる点で好ましいものといえる。この製造方法での支持シートと保護膜形成用フィルムとの積層構造を形成する工程を、以下、特に「積層工程(P1’)」と称することがある。
【0385】
例えば、図5等に示すように、保護膜形成用シートを剥離フィルム側から見下ろして平面視したときに、保護膜形成用フィルムが粘着剤層よりも表面積が小さい保護膜形成用シートを製造する場合には、上述の製造方法において、あらかじめ所定の大きさ及び形状に切り出しておいた保護膜形成用フィルムを粘着剤層上に設けるようにすればよい。
【0386】
本実施形態に係る保護膜形成用シートの製造時において、保護膜形成用フィルムは、上述のとおり、上記保護膜形成用フィルム用組成物を保護膜形成用フィルムの形成対象面に塗工して形成できる。
【0387】
本実施形態に係る保護膜形成用シートの製造時において、例えば、粘着剤層は、上記粘着剤組成物を粘着剤層の形成対象面に塗工して、好ましくは乾燥させることで形成できる。粘着剤組成物は、保護膜形成用フィルム用組成物の場合と同じ方法で塗工できる。
【0388】
塗工した粘着剤組成物は、加熱することで架橋させてもよく、この加熱による架橋は乾燥を兼ねて行ってもよい。加熱条件は、例えば、100~130℃で1~5分間とすることができるが、これに限定されない。
【0389】
以下に、本実施形態に係る保護膜形成用シートのうち、一例として、図2に示す構成のものの製造方法として、上記積層工程(P1’)を有する製造方法について、図7を参照して説明する。なお、ここで説明する製造方法は、一例であり、図2に示す構成の保護膜形成用シートの他の製造方法や、他の保護膜形成用シートの製造方法が、以下で説明する工程と同じであるか又は類似する工程を有する場合には、このような工程も、以下で説明する工程と同様に行うことができる。
【0390】
本法では、熱硬化性保護膜形成用フィルム用組成物又はエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルム用組成物を剥離フィルム14の剥離処理面14bに塗工して、図7(a)に示すように、保護膜形成用フィルム13を形成する。なお、ここでは、保護膜形成用シート1Bとの比較が容易となるように、保護膜形成用フィルム13が剥離フィルム14よりも下層となるように配置されている例を示しているが、これは、保護膜形成組成物の塗工時における剥離フィルム14における剥離処理面14bの向きが、図7(a)に示すような下向きに限定されることを意味するものではなく、これとは反対の上向きでもよく、上向きであることが好ましい。
【0391】
また、形成した保護膜形成用フィルム13における剥離フィルム14と接触している側とは反対側の表面(露出面)には、別途剥離材を貼り合わせておいてもよい(図示略)。ここで剥離材とは、後述する粘着剤組成物の塗工対象である剥離材と同じものが挙げられる。
【0392】
本法では、次いで、粘着剤組成物を剥離材90の剥離処理面90bに塗工して、図7(b)に示すように、粘着剤層12を形成する。ここでも、保護膜形成用シート1Bとの比較が容易となるように、粘着剤層12が剥離材90よりも下層となるように配置されている例を示しているが、これは、粘着剤組成物の塗工時における剥離材90の剥離処理面90bの向きが、図7(b)に示すような下向きに限定されることを意味するものではなく、これとは反対の上向きでもよく、上向きであることが好ましい。
【0393】
本法では、次いで、図7(c)に示すように、粘着剤層12における剥離材90と接触している側とは反対側の表面(露出面)に、基材11を貼り合わせる。
以上により、支持シート10が得られる。
【0394】
本法では、次いで、図7(d)に示すように、支持シート10における粘着剤層12に設けられている剥離材90を取り除くことによって露出された粘着剤層12の露出面と、保護膜形成用フィルム13の露出面とを貼り合わせることで、図7(e)に示すように、保護膜形成用シート1Bが得られる。保護膜形成用フィルム13の剥離フィルム14と接触している側とは反対側の表面(露出面)に、上述の剥離材が別途貼り合わされている場合には、この剥離材を取り除いてから、保護膜形成用フィルム13の露出面と粘着剤層12の露出面とを貼り合わせればよい。
【0395】
次に、本実施形態に係る保護膜形成用シートのうち、図1に示す構成のものの製造方法について説明する(図示略)。
【0396】
本法では、上記の保護膜形成用シート1Bの製造方法が利用できる。
【0397】
まず、治具用接着剤層15を形成するための接着テープの片面に剥離フィルム14が積層された積層シートを用い、接着テープの目的とする箇所に目的とする形状となるように切れ込みを形成する。ここで、目的とする形状とは、例えば、この積層シートの表面を見下ろすように平面視したときに円形となる形状である。
【0398】
次いで、この目的とする形状(例えば、上記平面視での円形)の接着テープを積層シートから取り除き、この接着テープが取り除かれた領域においては、上記剥離材が露出された状態の加工済み積層シートとする。すなわち、上記平面視にて円形の接着テープを取り除いた場合には、この加工済み積層シートは、目的とする箇所において接着テープが丸抜きされたものとなる。
【0399】
次いで、上記で得られた保護膜形成用シート1Bから、剥離フィルム14を取り除いて、保護膜形成用フィルム13の露出面と、この加工済み積層シートの接着テープと、を貼り合わせることで、図1に示す保護膜形成用シート1Aが得られる。本法において、保護膜形成用シート1Bとして、ロール状に巻き取ったものを用いない場合には、上記加工済み積層シートの貼り合わせ対象として、剥離フィルム14に代えてこれ以外の公知の剥離材を備えた点以外は、保護膜形成用シート1Bと同じ構成の保護膜形成用シートを用いてもよい。
【0400】
ただし、上述の製造方法は一例であり、保護膜形成用シート1Aの製造方法はこれに限定されない。
【0401】
<保護膜形成用シートの使用方法>
本実施形態に係る保護膜形成用シートの使用方法は、例えば、以下に示すとおりである。
【0402】
まず、保護膜形成用フィルムが熱硬化性である場合の保護膜形成用シートの使用方法について説明する。
【0403】
保護膜形成用フィルムが熱硬化性である場合には、まず、保護膜形成用シートの保護膜形成用フィルムに半導体ウエハの裏面を貼付するとともに、保護膜形成用シートをダイシング装置に固定する。
【0404】
次いで、保護膜形成用フィルムを加熱によって硬化させて保護膜とする。半導体ウエハの表面(電極形成面)にバックグラインドテープが貼付されている場合には、通常、このバックグラインドテープを半導体ウエハから取り除いてから、保護膜を形成する。
【0405】
次いで、半導体ウエハを保護膜とともにダイシングして半導体チップとする。保護膜を形成してからダイシングを行うまでの間においては、保護膜形成用シートの支持シート側から保護膜にレーザー光を照射して、保護膜の表面に印字(レーザー印字)を行うことができる。
【0406】
次いで、支持シートから、半導体チップをその裏面に貼付されている切断後の保護膜とともに剥離してピックアップすることにより、保護膜付き半導体チップを得る。例えば、支持シートが基材及び粘着剤層が積層されたシートであり、上記粘着剤層がエネルギー線硬化性の層である場合には、エネルギー線の照射によって粘着剤層を硬化させ、この硬化後の粘着剤層から、半導体チップをその裏面に貼付されている保護膜とともにピックアップすることにより、より容易に保護膜付き半導体チップが得られる。
【0407】
得られた保護膜付き半導体チップは、図8に示すように、エンボスキャリアテープにリール詰めされる。保護膜付き半導体チップ101は、一つずつピックアップされ、複数の窪み部分(ポケット102a)が連続的に設けられた包装用フィルム(エンボスキャリアテープ102)のポケット102aに収容され、前記エンボスキャリアテープ102上にカバーテープ103を貼付(リール詰め)した状態で出荷されて次工程へ搬送される。次工程では、保護膜付き半導体チップ101が収容されたエンボスキャリアテープ102のカバーテープ103を剥がしてポケット102aに収容された保護膜付き半導体チップ101を取り出される。このとき、エンボスキャリアテープ102の上方に配置される撮像装置(図示省略)を介して、保護膜付き半導体チップ101が検出される。そして、ポケット102a、およびこれに収容された保護膜付き半導体チップ101の位置情報が取得され、この位置情報に基づき保護膜付き半導体チップ101が取り出される。そして、更に後続の工程へ供される。
【0408】
以降は、リフロー工程で保護膜付き半導体チップを実装する。例えば、得られた保護膜付き半導体チップを基板の回路面にフリップチップ接続して実装できる。その後、全体を樹脂により封止することで、半導体パッケージとする。そして、この半導体パッケージを用いて、目的とする半導体装置を作製すればよい。
【0409】
なお、ここまでは、保護膜形成用フィルムを硬化させて保護膜を形成してからダイシングを行う場合について説明したが、保護膜形成用フィルムを硬化させずにダイシングを行い、このダイシング後に保護膜形成用フィルムを硬化させて保護膜を形成してもよい。
【0410】
次に、保護膜形成用フィルムがエネルギー線硬化性である場合の保護膜形成用シートの使用方法について説明する。
【0411】
保護膜形成用フィルムがエネルギー線硬化性である場合には、まず、上述の保護膜形成用フィルムが熱硬化性である場合と同様に、保護膜形成用シートの保護膜形成用フィルムに半導体ウエハの裏面を貼付するとともに、保護膜形成用シートをダイシング装置に固定する。
【0412】
次いで、保護膜形成用フィルムをエネルギー線の照射によって硬化させて保護膜とする。半導体ウエハの表面(電極形成面)にバックグラインドテープが貼付されている場合には、通常、このバックグラインドテープを半導体ウエハから取り除いてから、保護膜を形成する。
【0413】
次いで、半導体ウエハを保護膜とともにダイシングして半導体チップとする。保護膜を形成してからダイシングを行うまでの間においては、保護膜形成用シートの支持シート側から保護膜にレーザー光を照射して、保護膜の表面に印字を行うことができる。
【0414】
次いで、支持シートから、半導体チップをその裏面に貼付されている切断後の保護膜とともに剥離させてピックアップすることにより、保護膜付き半導体チップを得る。
【0415】
この方法は、例えば、保護膜形成用シートとして、支持シートが基材及び粘着剤層が積層されてなり、かつ上記粘着剤層がエネルギー線硬化性以外であるものを用いる場合に、特に好適である。
【0416】
例えば、支持シートが基材及び粘着剤層が積層されてなり、かつ上記粘着剤層がエネルギー線硬化性のものである保護膜形成用シートを用いる場合には、以下に説明する方法が好ましい。
【0417】
すなわち、まず、上記の場合と同様に、保護膜形成用シートの保護膜形成用フィルムに半導体ウエハの裏面を貼付するとともに、保護膜形成用シートをダイシング装置に固定する。
【0418】
次いで、必要に応じて保護膜形成用シートの支持シート側から保護膜形成用フィルムにレーザー光を照射して、保護膜形成用フィルムの表面に印字を行った後、半導体ウエハをダイシングして半導体チップとする。
【0419】
次いで、エネルギー線の照射によって、保護膜形成用フィルムを硬化させて保護膜とすると共に、粘着剤層を硬化させ、この硬化後の粘着剤層から、半導体チップをその裏面に貼付されている保護膜とともにピックアップすることにより、保護膜付き半導体チップが得られる。保護膜形成用フィルムの表面に施された印字は、保護膜においても同じ状態で維持される。
【0420】
以降の工程は、上述の保護膜形成用フィルムが熱硬化性である場合と同様である。
【0421】
また、ここで説明した方法は、上述の保護膜形成用フィルムが熱硬化性である場合と同様に、変更を加えることができる。すなわち、ここまでは、保護膜形成用フィルムを硬化させて保護膜を形成してからダイシングを行う場合について説明したが、保護膜形成用フィルムを硬化させずにダイシングを行い、このダイシング後に保護膜形成用フィルムを硬化させて保護膜を形成してもよい。
【0422】
半導体チップの収納構造
一般に、キャリアテープは、CIE1976L表色系により規定される座標において明度Lが37.9、色度aが-0.36、色度bが-2.6である色、またはこれと同様の色を有する。したがって、本実施形態に係る保護膜形成用フィルムまたはこれを硬化した保護膜において、このような色に対する色差ΔE abが17以上であることで、上記保護膜を備える半導体チップを、キャリアテープに収納された状態でも良好に検出することができる。
【0423】
上記知見を発展させ、本実施形態に係る保護膜形成用フィルムまたはこれを硬化した保護膜において、キャリアテープの色に対する色差ΔE abを17以上とすることで、上記保護膜を備える半導体チップを、キャリアテープに収納された状態で良好に検出できることを見出した。
【0424】
すなわち、本実施形態に係る半導体チップの収納構造は、
保護膜を備える半導体チップがキャリアテープに収納された、半導体チップの収納構造であって、
上記保護膜において、CIE1976L表色系により表される上記キャリアテープの色に対する、下記式で表される色差ΔE abが17以上である。
ΔE ab=〔(ΔL+(Δa+(Δb1/2
【0425】
CIE1976L表色系により規定される座標において、キャリアテープの明度LをLc、色度aをac、色度bをbcとし、
保護膜の明度LをL、色度aをa、色度bをbとするとき、
ΔL、Δa、およびΔbは以下のように表される。
ΔL=Lc-L
Δa=ac-a
Δb=bc-b
【0426】
本実施形態に係る半導体チップの収納構造において、半導体チップが備える保護膜の、キャリアテープに対する色差ΔE abは17以上であり、好ましくは23以上であり、より好ましくは28以上である。
【0427】
半導体チップが備える保護膜が上記範囲の色差ΔE abを有することで、キャリアテープに収納された状態で半導体チップを良好に検出できる。
【0428】
本実施形態に係る半導体チップの収納構造において、保護膜は、上述した保護膜形成用フィルムを硬化したものである。したがって、上述した保護膜形成用フィルム組成物における着色剤(I)、充填剤(D)、およびその他の成分の種類および含有量を適宜調整して保護膜形成用フィルムを形成することで、保護膜は上記範囲の色差ΔE abを有することができる。
【0429】
本実施形態に係る半導体チップの収納構造において、半導体チップが備える保護膜のCIE1976L表色系により規定される明度Lは、好ましくは22以下であり、より好ましくは15以下であり、さらに好ましくは10以下である。
【0430】
キャリアテープに収納された状態で半導体チップを良好に検出する観点から、半導体チップが備える保護膜は上記範囲の明度Lを有することが好ましい。
【0431】
また、本実施形態に係る半導体チップの収納構造において、半導体チップが備える保護膜のCIE1976L表色系により規定される色度aは、-5以上とすることができ、-1以上、または-0.5以上でもよい。
【0432】
本実施形態に係る半導体チップの収納構造において、半導体チップが備える保護膜のCIE1976L表色系により規定される色度bは、-5以上とすることができ、-3以上、または-1以上でもよい。
【0433】
本実施形態に係る半導体チップの収納構造では、保護膜形成用フィルム組成物における着色剤(I)、充填剤(D)、およびその他の成分の種類および含有量を適宜調整して保護膜形成用フィルムを形成することで、保護膜は上記範囲の明度L、色度a、および色度bを有することができる。
【0434】
本実施形態に係る半導体チップの収納構造において、上記キャリアテープは、CIE1976L表色系により規定される座標において、明度Lが10~50、色度aが-5~+5、色度bが-5~+5の範囲にあることが好ましい。
【0435】
上記キャリアテープは、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレン等の樹脂製の長尺状シートに一定間隔で列設された複数の凹部(ポケットと称される場合がある)が形成された梱包資材である。上記複数の各ポケットには、保護膜付き半導体チップを収納できる。上記複数の各ポケットは、通常、保護膜付き半導体チップ等の被収納物を収納した状態で、その開口部が長尺状のカバーテープが貼着されることにより閉蓋される。保護膜付き半導体チップを梱包したキャリアテープは、リールに巻回した状態で使用することができる。例えば、上記リールをマウンターにセットし、基板に保護膜付き半導体チップを実装することができる。キャリアテープのポケットは、被収納物の大きさに合わせて設計、加工することができる。例えば、キャリアテープの各ポケットは、縦寸0.5mm~30mm、横寸0.5mm~30mm及び深さ0.1mm~10mmとすることができる。上記長尺状のカバーテープは、特に限定されないが、厚さ10~100μmとすることができ、PET、ポリエチレン等の素材で形成することができる。
【0436】
なお、本実施形態に係る半導体チップの収納構造において、保護膜を備える半導体チップの製造方法は、保護膜形成用シートの使用方法で述べたとおりである。また、半導体チップを得るための半導体ウエハはシリコンウエハであってもよく、またガリウム・砒素などの化合物半導体ウエハであってもよい。
【0437】
さらに本実施形態では、保護膜を備える半導体チップをリフロー炉のような熱処理装置で加熱した場合でも、その保護膜は、キャリアテープの色に対する色差ΔE abを17以上とすることができる。すなわち、本実施形態に係る半導体チップの収納構造において、保護膜を備える半導体チップがリフロー炉のような熱処理装置で加熱されたものである場合に、その半導体チップが備える保護膜の、キャリアテープの色に対する色差ΔE abは、好ましくは17以上であり、より好ましくは23以上であり、さらに好ましくは28以上である。また、本実施形態において、保護膜を備える半導体チップがリフロー炉のような熱処理装置で加熱されたものである場合に、その半導体チップが備える保護膜は、上述した明度L、色度a、色度b有することができる。
リフロー炉のような熱処理装置で加熱した半導体チップを、キャリアテープに収納された状態でも良好に検出する観点から、その半導体チップが備える保護膜の色差ΔE ab、明度L、色度a、および色度bは上記範囲とすることが好ましい。
【0438】
本実施形態に係る半導体チップの収納構造では、保護膜形成用フィルム組成物における着色剤(I)、充填剤(D)、およびその他の成分の種類および含有量を適宜調整して形成された保護膜形成用フィルムを用いて保護膜を備える半導体チップを製造することで、半導体チップがリフロー炉のような熱処理装置で加熱された場合でも、その半導体チップが備える保護膜は、上記範囲の色差ΔE ab、明度L、色度a、および色度bを有することができる。
【0439】
半導体チップの検出方法
上述のように、キャリアテープに収納された保護膜付き半導体チップは、カバーテープを貼付(リール詰め)した状態で出荷されて次工程へ搬送される。次工程では、保護膜付き半導体チップが収納されたキャリアテープのカバーテープを剥がしてポケットに収納された保護膜付き半導体チップを取り出し、更に後続の工程へ供される。
【0440】
キャリアテープのポケットに収納された保護膜付き半導体チップを取り出す際には、キャリアテープの上方に配置される撮像装置を介して保護膜付き半導体チップが検出され、ポケット、およびこれに収納された保護膜付き半導体チップの位置情報が取得される。この位置情報に基づき保護膜付き半導体チップが取り出される。
【0441】
そこで、本実施形態に係る検出方法は、キャリアテープに収納された保護膜付き半導体チップを取り出す際の検出方法に関する。
【0442】
すなわち、本実施形態に係る検出方法は、
キャリアテープに収納された半導体チップの検出方法であって、
上記半導体チップは、CIE1976L表色系により表される上記キャリアテープの色に対して、下記式で表される色差ΔE abが17以上である保護膜を備えており、
上面視において、上記キャリアテープに収納された上記半導体チップを検出する工程を含む。
ΔE ab=〔(ΔL+(Δa+(Δb1/2
【0443】
CIE1976L表色系により規定される座標において、キャリアテープの明度LをLc、色度aをac、色度bをbcとし、
半導体チップが備える保護膜の明度LをL、色度aをa、色度bをbとするとき、
ΔL、Δa、およびΔbは以下のように表される。
ΔL=Lc-L
Δa=ac-a
Δb=bc-b
【0444】
本実施形態に係る半導体チップの検出方法において、半導体チップが備える保護膜の、キャリアテープに対する色差ΔE abは17以上であり、好ましくは23以上であり、より好ましくは28以上である。
【0445】
半導体チップが備える保護膜が上記範囲の色差ΔE abを有することで、キャリアテープに収納された状態で半導体チップを良好に検出できる。
【0446】
本実施形態に係る半導体チップの検出方法において、保護膜は、上述した保護膜形成用フィルムを硬化したものである。したがって、上述した保護膜形成用フィルム組成物における着色剤(I)、充填剤(D)、およびその他の成分の種類および含有量を適宜調整して保護膜形成用フィルムを形成することで、保護膜は上記範囲の色差ΔE abを有することができる。
【0447】
本実施形態に係る半導体チップの検出方法において、半導体チップが備える保護膜のCIE1976L表色系により規定される明度Lは、好ましくは22以下であり、より好ましくは15以下であり、さらに好ましくは10以下である。
【0448】
キャリアテープに収納された状態で半導体チップを良好に検出する観点から、半導体チップが備える保護膜は上記範囲の明度Lを有することが好ましい。
【0449】
また、本実施形態に係る半導体チップの検出方法において、半導体チップが備える保護膜のCIE1976L表色系により規定される色度aは、-5以上とすることができ、-1以上、または-0.5以上でもよい。
【0450】
本実施形態に係る半導体チップの検出方法において、半導体チップが備える保護膜のCIE1976L表色系により規定される色度bは、-5以上とすることができ、-3以上、または-1以上でもよい。
【0451】
本実施形態に係る半導体チップの検出方法では、保護膜形成用フィルム組成物における着色剤(I)、充填剤(D)、およびその他の成分の種類および含有量を適宜調整して保護膜形成用フィルムを形成することで、保護膜は上記範囲の明度L、色度a、および色度bを有することができる。
【0452】
本実施形態に係る半導体チップの検出方法において、上記キャリアテープは、CIE1976L表色系により規定される座標において、明度Lが10~50、色度aが-5~+5、色度bが-5~+5の範囲にあることが好ましい。また、上記キャリアテープとしては、半導体チップの収納構造で述べたキャリアテープと同様のものを用いることができる。
【0453】
本実施形態に係る検出方法では、上面視において、上記キャリアテープに収納された上記半導体チップを検出する工程を含む。上記半導体チップを検出する具体的な方法は、特に限定されないが、目視でもよく、顕微鏡また撮像装置を介して行ってもよい。顕微鏡および撮像装置は、上面視となるように、上記キャリアテープの上方に配置されることが好ましい。顕微鏡および撮像装置における倍率および解像度は、上記キャリアテープに収納された上記半導体チップを検出できれば、特に限定されない。
【0454】
なお、本実施形態に係る半導体チップの検出方法において、保護膜を備える半導体チップの製造方法は、保護膜形成用シートの使用方法で述べたとおりである。また、半導体チップを得るための半導体ウエハはシリコンウエハであってもよく、またガリウム・砒素などの化合物半導体ウエハであってもよい。
【0455】
さらに本実施形態では、保護膜を備える半導体チップをリフロー炉のような熱処理装置で加熱した場合でも、その保護膜は、キャリアテープの色に対する色差ΔE abを17以上とすることができる。すなわち、本実施形態に係る半導体チップの検出方法において、保護膜を備える半導体チップがリフロー炉のような熱処理装置で加熱されたものである場合に、その半導体チップが備える保護膜の、キャリアテープの色に対する色差ΔE abは、好ましくは17以上であり、より好ましくは23以上であり、さらに好ましくは28以上である。また、本実施形態において、保護膜を備える半導体チップがリフロー炉のような熱処理装置で加熱されたものである場合に、その半導体チップが備える保護膜は、上述した明度L、色度a、色度b有することができる。
リフロー炉のような熱処理装置で加熱した半導体チップを、キャリアテープに収納された状態でも良好に検出する観点から、その半導体チップが備える保護膜の色差ΔE ab、明度L、色度a、および色度bは上記範囲とすることが好ましい。
【0456】
本実施形態に係る半導体チップの検出方法では、保護膜形成用フィルム組成物における着色剤(I)、充填剤(D)、およびその他の成分の種類および含有量を適宜調整して形成された保護膜形成用フィルムを用いて保護膜を備える半導体チップを製造することで、半導体チップがリフロー炉のような熱処理装置で加熱された場合でも、その半導体チップが備える保護膜は、上記範囲の色差ΔE ab、明度L、色度a、および色度bを有することができる。
【実施例
【0457】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0458】
保護膜形成用フィルム用組成物の製造に用いた原料を以下に示す。
【0459】
[重合体成分(A)]
(A)-1:アクリル重合体:n-ブチルアクリレート15質量部、メチルメタクリレート10質量部、メチルアクリレート60質量部、および2-ヒドロキシエチルアクリレート15質量部を共重合してなるアクリル系重合体(重量平均分子量:60万、ガラス転移温度:1℃)
【0460】
[熱硬化性成分(B)]
・エポキシ樹脂(B1)
(B1)-1:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(日本触媒社製、BPA328、エポキシ当量230)
(B1)-2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER1055」、エポキシ当量800~900)
(B1)-3:ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(三菱化学社製「jERYL983U」、エポキシ当量165~175)
【0461】
・熱硬化剤(B2)
(B2)-1:ジシアンジアミド(熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤、ADEKA社製「アデカハードナーEH-3636AS」)
【0462】
[硬化促進剤(C)]
(C)-1:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製「キュアゾール2PHZ」)
【0463】
[充填材(D)]
(D)-1:シリカフィラー(アドマテックス社 SC105G-MMQ:球状シリカ,平均0.3μm)
【0464】
[カップリング剤(E)]
(E)-1:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン)(信越化学工業社製,KBM403)
【0465】
[着色剤(I)]
(I)-1:カーボンブラック(三菱化学社製「MA600B」、平均粒径28nm)
【0466】
保護膜形成用シートの製造に用いた支持シートおよび剥離フィルムは以下のとおりである。なお、下記支持シートは、基材(厚さ80μm)と、非エネルギー線硬化型アクリル系粘着剤からなる粘着剤層(厚さ5μm)とを有する。
支持シート:リンテック社製「Adwill G-535H」
剥離フィルム:リンテック社製「SP-PET381130」
【0467】
[実施例1]
<保護膜形成用シートの製造>
(熱硬化性保護膜形成用フィルム用組成物の製造)
表1に示すように、重合体成分(A)-1(20質量部)、エポキシ樹脂(B1)-1(15質量部)、エポキシ樹脂(B1)-2(1.8質量部)、熱硬化剤(B2)-1(0.45質量部)、硬化促進剤(C)-1(0.45質量部)、充填材(D)-1(60質量部)、カップリング剤(E)-1(0.4質量部)、及び着色剤(I)-1(1.9質量部)を混合し、さらにメチルエチルケトンを混合して、23℃で60分間撹拌することにより、固形分の含有量が52質量%である保護膜形成用フィルム用組成物(1-1)を得た。なお、ここと表1に示すメチルエチルケトン以外の成分の配合量は、すべて固形分量である。
【0468】
(保護膜形成用フィルムの形成)
剥離フィルムの剥離処理面上に、ナイフコーターによって、上記で得られた保護膜形成用フィルム用組成物(1-1)を塗工し、110℃で2分間乾燥させることにより、厚さが25μmである保護膜形成用フィルムを形成した。さらに、この保護膜形成用フィルムの剥離フィルムが設けられている側とは反対側の露出面に、剥離フィルムの剥離処理面を貼り合わせた。
【0469】
(保護膜形成用シートの製造)
上記で得られた保護膜形成用フィルムの一方の表面から剥離フィルムを取り除き、保護膜形成用フィルムの露出面と、支持シートの粘着剤層の露出面とをラミネートすることで、支持シート、上記保護膜形成用フィルム、および剥離フィルムがこの順に積層されてなる、保護膜形成用シートを得た。
【0470】
(保護膜付きシリコンチップの製造)
6インチシリコンウエハ(厚さ350μm)の#2000研磨面に、得られた保護膜形成用シートをその保護膜形成用フィルムを介して貼付し、さらにこのシートをリングフレームに固定して、30分静置した。
次いで、130℃、2時間熱処理することで、保護膜形成用フィルムを硬化させ、保護膜とした。
次いで、ダイシングブレードを用いて、シリコンウエハを保護膜ごとダイシングして個片化し、縦3mm、横3mmの大きさ、保護層厚さ25μm、Si層厚350μm、のシリコンチップを得た。次いで、ダイボンダー(キャノンマシナリー社製「BESTEM-D02」)を用いて、保護膜付きシリコンチップをピックアップした。保護膜付きシリコンチップを得た。
【0471】
(色の測定)
得られた保護膜付きシリコンチップ、およびキャリアテープ(KOSTAT社製)について、日本電色工業株式会社製SE6000を用いてC/2光源の反射にて、CIE1976L表色系における明度L、色度a、色度bを測定した。
保護膜付きシリコンチップについて、キャリアテープの色に対する下記式で表される色差ΔE abを算出した。結果を表1に示す。
ΔE ab=〔(ΔL+(Δa+(Δb1/2
【0472】
(視認性の評価)
上記キャリアテープのポケットに、得られた保護膜付きシリコンチップを収納した。この状態で、収納された保護膜付きシリコンチップを視認できるかを、以下の基準で評価した。なお、キャリアテープに収納された保護膜付きシリコンチップは、顕微鏡(KEYENCE社製、VHX-7000)を用いて、倍率20倍、同軸落射照明で観察した。結果を表1に示す。
・良好:保護膜形成用シートを視認できた人数が5人中4人以上
・可 :保護膜形成用シートを視認できた人数が5人中2~3人
・不良:保護膜形成用シートを視認できた人数が5人中1人以下
【0473】
[実施例2]
実施例1と同様にして保護膜付きシリコンチップを得た。リフロー炉(千住金属社製「STR-2010M」)を用いて、下記条件で保護膜付きシリコンチップを熱処理した。熱処理後の保護膜付きシリコンチップについて、実施例1と同様に評価した。
速度:17cm/min.
総加熱時間:10.8分
コンベア長さ:
ゾーン1 355mm
ゾーン2 355mm
ゾーン3 355mm
ゾーン4 400mm
ゾーン5 355mm
温度:
ゾーン1 上260℃、下260℃
ゾーン2 上220℃、下220℃
ゾーン3 上190℃、下190℃
ゾーン4 上220℃、下220℃
ゾーン5 上355℃、下355℃
【0474】
[実施例3]
熱硬化性保護膜形成用フィルム用組成物の製造において、表1に示すように、重合体成分(A)-1(25.8質量部)、エポキシ樹脂(B1)-2(2質量部)、エポキシ樹脂(B1)-3(15.3質量部)、熱硬化剤(B2)-1(0.45質量部)、硬化促進剤(C)-1(0.45質量部)、充填材(D)-1(55.4質量部)、カップリング剤(E)-1(0.4質量部)、及び着色剤(I)-1(0.2質量部)を混合し、さらにメチルエチルケトンを混合して、23℃で60分間撹拌することにより、固形分の含有量が52質量%である保護膜形成用フィルム用組成物(1-2)を得た。これ以外は、実施例1と同様にして保護膜形成用シートを製造し、保護膜付きシリコンチップを得た。実施例1と同様に評価した。
【0475】
[実施例4]
熱硬化性保護膜形成用フィルム用組成物の製造において、表1に示すように、重合体成分(A)-1(20質量部)、エポキシ樹脂(B1)-2(1.8質量部)、エポキシ樹脂(B1)-3(15質量部)、熱硬化剤(B2)-1(0.45質量部)、硬化促進剤(C)-1(0.45質量部)、充填材(D)-1(60質量部)、カップリング剤(E)-1(0.4質量部)、及び着色剤(I)-1(1.9質量部)を混合し、さらにメチルエチルケトンを混合して、23℃で60分間撹拌することにより、固形分の含有量が52質量%である保護膜形成用フィルム用組成物(1-3)を得た。これ以外は、実施例1と同様にして保護膜形成用シートを製造し、保護膜付きシリコンチップを得た。実施例1と同様に評価した。
【0476】
[比較例1]
熱硬化性保護膜形成用フィルム用組成物の製造において、表1に示すように、重合体成分(A)-1(20質量部)、エポキシ樹脂(B1)-1(15質量部)、エポキシ樹脂(B1)-2(1.8質量部)、熱硬化剤(B2)-1(0.45質量部)、硬化促進剤(C)-1(0.45質量部)、充填材(D)-1(60質量部)、カップリング剤(E)-1(0.4質量部)、及び着色剤(I)-1(0.1質量部)を混合し、さらにメチルエチルケトンを混合して、23℃で60分間撹拌することにより、固形分の含有量が52質量%である保護膜形成用フィルム用組成物(1-4)を得た。これ以外は、実施例1と同様にして保護膜形成用シートを製造し、保護膜付きシリコンチップを得た。実施例1と同様に評価した。
【0477】
【表1】
【0478】
以上の結果から、本実施形態に係る保護膜形成用フィルムによれば、キャリアテープに収納された状態で半導体チップを良好に検出できることが確認された。
【符号の説明】
【0479】
1A,1B,1C,1D,1E,1F・・・保護膜形成用シート、
10・・・支持シート、
10a・・・支持シートの表面、
10b・・・支持シートの裏面(露出面)、
11・・・基材、
11a・・・基材の表面、
11b・・・基材の裏面、
12・・・粘着剤層、
12a・・・粘着剤層の表面、
13,23・・・保護膜形成層、
13a,23a・・・保護膜形成層の表面、
14・・・剥離フィルム、
14a・・・剥離フィルムの表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8