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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20241111BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20241111BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20241111BHJP
   B22D 18/02 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/17
B22D17/32 J
B22D18/02 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021054144
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022151191
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 裕充
(72)【発明者】
【氏名】榊原 正人
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-143045(JP,A)
【文献】特開昭62-085914(JP,A)
【文献】特開昭61-027226(JP,A)
【文献】特開昭61-158417(JP,A)
【文献】特開2006-082333(JP,A)
【文献】特開平04-142914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/76
B29C 45/17
B22D 17/32
B22D 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを有する加熱シリンダと、前記加熱シリンダを有する射出装置と、前記射出装置を移動させる電動モータと、前記電動モータを制御する制御装置と、を有する射出成形機であって、
前記制御装置が、射出装置移動動作として、
前記射出装置を前記ノズルが金型にタッチするノズルタッチ位置である目標位置より手前にある速度切換位置まで第1速度で移動させ、前記速度切換位置から前記目標位置まで前記第1速度より低速の第2速度で移動させるように前記電動モータを制御し、
前記射出装置を前記第1速度で移動させているときに前記電動モータの電流値に基づいて前記射出装置の衝突(ただし、前記ノズルと前記金型とのタッチを除く。)を判定し、
前記射出装置が衝突したと判定すると、前記射出装置の移動を直ちに停止させ、または、前記射出装置を前記目標位置から離れる方向に退避距離だけ移動させたあとに停止させるように前記電動モータを制御する、ことを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記制御装置が、前記射出装置を前記第1速度で移動させているときに前記電動モータの電流値が衝突判定電流値以上になると、前記射出装置が衝突したと判定する、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記衝突判定電流値が、前記ノズルが前記金型にタッチしたときの前記電動モータの電流値に基づいて設定されている、請求項2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記制御装置が、前記射出装置を前記第1速度で移動させているときに前記射出装置の速度が前記第2速度より低速の衝突判定速度以下になると、前記射出装置が衝突したと判定する、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記射出成形機が、平板形状のダイプレートを有しており、前記ダイプレートの一方の面に前記金型が取り付けられ、前記ノズルが前記ダイプレートに設けられた貫通孔に他方の面側から挿入されて当該ノズルが前記金型にタッチする、ように構成され
前記制御装置が、
前記射出装置を前記第1速度で移動させているときでかつ前記射出装置の位置が前記一方の面から前記他方の面側に衝突判定距離以上離れているときに前記電動モータの電流値に基づいて前記射出装置の衝突を判定する、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項6】
ノズルを有する加熱シリンダと、前記加熱シリンダを有する射出装置と、前記射出装置を移動させる電動モータと、前記電動モータを制御する制御装置と、表示装置と、操作入力装置と、を有する射出成形機であって、
前記制御装置が、射出装置移動動作として、
前記射出装置を目標位置より手前にある速度切換位置まで第1速度で移動させ、前記速度切換位置から前記目標位置まで前記第1速度より低速の第2速度で移動させるように前記電動モータを制御し、
前記射出装置を前記第1速度で移動させているときに前記電動モータの電流値または前記射出装置の速度に基づいて前記射出装置の衝突を判定し、
前記射出装置が衝突したと判定すると、前記射出装置の移動を直ちに停止させ、または、前記射出装置を前記目標位置から離れる方向に退避距離だけ移動させたあとに停止させるように前記電動モータを制御し、
前記目標位置が、前記ノズルが金型にタッチするノズルタッチ位置であり、
前記制御装置が、
前記射出装置が衝突したと判定した後、金型の交換有無を問い合わせるメッセージを前記表示装置に表示し、
前記操作入力装置に金型の交換有りに対応する操作が入力されると、前記射出装置が衝突したと判定したときの前記射出装置の位置を新たに前記目標位置として前記射出装置移動動作を実行し、
前記操作入力装置に金型の交換無しに対応する操作が入力されると、前記ノズルまたは前記金型の確認を促すメッセージを前記表示装置に表示する、射出成形機。
【請求項7】
ノズルを有する加熱シリンダと、前記加熱シリンダを有する射出装置と、前記射出装置を移動させる電動モータと、前記電動モータを制御する制御装置と、を有する射出成形機であって、
前記制御装置が、射出装置移動動作として、
前記射出装置を目標位置より手前にある速度切換位置まで第1速度で移動させ、前記速度切換位置から前記目標位置まで前記第1速度より低速の第2速度で移動させるように前記電動モータを制御し、
前記射出装置を前記第1速度で移動させているときに前記電動モータの電流値または前記射出装置の速度に基づいて前記射出装置の衝突を判定し、
前記射出装置が衝突したと判定すると、前記射出装置の移動を直ちに停止させ、または、前記射出装置を前記目標位置から離れる方向に退避距離だけ移動させたあとに停止させるように前記電動モータを制御し、
前記目標位置が、前記射出装置の機械的な後退限位置である、射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、加熱シリンダ内の樹脂を排出するパージ動作を実行する。
【0003】
加熱シリンダのノズルが下に向けられた射出装置を有する竪型射出成形機では、パージ動作の際に、ノズルから排出された樹脂を受けるためのトレーがノズルと金型との間に置かれる。そのため、作業者が、パージ動作を終了した後にトレーを取り出すことを失念して、ノズルを金型にタッチさせるために射出装置を下降させると、ノズルがトレーに衝突してしまう。そして、作業者がノズルとトレーとが衝突したことに気がつかずに射出装置の下降を継続すると、射出装置に過大な力が加わって損傷してしまうおそれがある。
【0004】
また、加熱シリンダのノズルが横に向けられた射出装置を有する横型射出成形機では、パージ動作の際に、ノズルから噴き出した樹脂の飛散を防止するためのシャッターがノズルと金型との間に置かれるものがある。そのため、横型射出成形機も、竪型射出成形機と同様に、ノズルとシャッターとの衝突によって損傷してしまうおそれがある。
【0005】
特許文献1に開示されている竪型射出成形機は、ノズルを囲うカバーを有しており、パージ動作が終了した後にカバーのドアの開閉が検知されるまで、射出装置の下降を規制する。この竪型射出成形機では、カバーのドアの開閉によってトレーの取り出しを判定し、ノズルとトレーとの衝突を抑制している。
【0006】
特許文献2に開示されている竪型射出成形機は、トレーの存在を検出する検出器を有しており、トレーの存在を検出しているときは加熱シリンダを停止状態として、ノズルとトレーとの衝突を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-188625号公報
【文献】実開昭63-82519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の竪型射出成形機では、実際にトレーを取り出していなくてもパージ動作終了後にドアが開閉されると射出装置の下降が可能となる。そのため、作業者が、作業手順を間違えて、ドアを開閉したのみでトレーを取り出していないと、ノズルとトレーとが衝突してしまうことがある。そして、カバー内に置かれたトレーは視認しにくく、作業者がノズルとトレーとの衝突に気がつかないおそれがある。
【0009】
特許文献2の竪型射出成形機では、各種スイッチや光電管等で構成された検出器の設置や配線が必要になり、構成が複雑になる。
【0010】
そこで、本発明は、射出装置と障害物との衝突による損傷を抑制できる簡易な構成の射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る射出成形機は、ノズルを有する加熱シリンダと、前記加熱シリンダを有する射出装置と、前記射出装置を移動させる電動モータと、前記電動モータを制御する制御装置と、を有する射出成形機であって、前記制御装置が、射出装置移動動作として、前記射出装置を目標位置より手前にある速度切換位置まで第1速度で移動させ、前記速度切換位置から前記目標位置まで前記第1速度より低速の第2速度で移動させるように前記電動モータを制御し、前記射出装置を前記第1速度で移動させているときに前記電動モータの電流値または前記射出装置の速度に基づいて前記射出装置の衝突を判定し、前記射出装置が衝突したと判定すると、前記射出装置の移動を直ちに停止させ、または、前記射出装置を前記目標位置から離れる方向に退避距離だけ移動させたあとに停止させるように前記電動モータを制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、射出装置を速度切換位置まで第1速度で移動させ、速度切換位置から目標位置まで第1速度より低速の第2速度で移動させる。射出装置を第1速度で移動させているときに、射出装置を移動させる電動モータの電流値または射出装置の速度に基づいて射出装置の衝突を判定する。そして、射出装置が衝突したと判定すると、射出装置の移動を直ちに停止させ、または、射出装置を目標位置から離れる方向に退避距離だけ移動させたあとに停止させる。このようにしたことから、高速の第1速度と低速の第2速度とを組み合わせて射出装置を移動させることにより、射出装置を速やかに目標位置に移動させることができるとともに、目標位置にある金型や後退限ストッパなどに高速で衝突してしまうことを抑制できる。また、射出装置を第1速度で移動させているときは射出装置が速度切換位置より手前の位置にあり、射出装置が目標位置から離れている。そのため、射出装置が衝突したと判定したときは、射出装置が障害物などに衝突した可能性が高く、このときに射出装置の移動を停止することで、射出装置が移動を続けようとして強い力で障害物に押し付けられることを回避でき、ノズルや駆動部等、射出装置の損傷を抑制できる。また、射出成形機に障害物を検出する検出器を設ける必要がなく、射出成形機を簡易な構成で実現できる。また、衝突したと判定した後に射出装置を目標位置から離れる方向に退避距離だけ移動させることで、射出成形機に応力が残ってしまうことを抑制し、その後の作業の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る竪型射出成形機の正面図である。
図2図1の竪型射出成形機の機能ブロックを説明する図である。
図3図1の竪型射出成形機のカバーおよびその近傍の拡大図である。
図4図1の竪型射出成形機の表示部に表示されるメッセージの一例を示す図である。
図5図1の竪型射出成形機の制御装置が実行する処理(ノズルタッチ動作)の一例に係るフローチャートである。
図6】ノズルタッチ動作において、射出装置がノズルタッチ位置まで正常に移動したときの射出装置駆動部の電動モータの電流値のグラフおよび射出装置の位置のグラフの一例を示す図である。
図7】ノズルタッチ動作において、ノズルが障害物に衝突したときの射出装置駆動部の電動モータの電流値のグラフおよび射出装置の位置のグラフの一例を示す図である。
図8】ノズルタッチ動作において、射出装置がノズルタッチ位置まで正常に移動したときの射出装置の速度のグラフおよび射出装置の位置のグラフの一例を示す図である。
図9】ノズルタッチ動作において、ノズルが障害物に衝突したときの射出装置の速度のグラフおよび射出装置の位置のグラフの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る竪型射出成形機について、図1図5を参照して説明する。以下の説明では、加熱シリンダのノズルが下に向けられた構成を有する竪型射出成形機について説明するが、本発明は、加熱シリンダのノズルが横に向けられた横型射出成形機にも適用可能である。
【0015】
図1に示すように、竪型射出成形機1は、基台5上に、射出装置10と、型締装置20と、表示操作装置30と、を有している。また、図2に示すように、竪型射出成形機1は、制御装置40を有している。
【0016】
射出装置10は、上側金型2と下側金型3とによって形成されたキャビティに樹脂を射出充填する。射出装置10は、加熱シリンダ11と、スクリュー12と、を有している。加熱シリンダ11は、下方を向くノズル11aが先端に設けられている。スクリュー12は、加熱シリンダ11内に収容されている。また、射出装置10は、射出装置駆動部13と、スクリュー駆動部14と、を有している。射出装置駆動部13は、射出装置10を昇降させる電動モータを有する。スクリュー駆動部14は、加熱シリンダ11内でスクリュー12を回転および前後進させる電動モータを有する。射出装置駆動部13およびスクリュー駆動部14は、制御装置40に接続されており、制御装置40からの制御信号に応じて動作する。また、射出装置10は、電流センサ15と、エンコーダ16と、を有している。電流センサ15は、射出装置駆動部13の電動モータの電流値Iに応じた信号を出力する。エンコーダ16は、射出装置10の上下方向の位置Pに応じた信号を出力する。
【0017】
型締装置20は、上側金型2と下側金型3とを開閉するとともに、上側金型2と下側金型3とを閉じた状態で型締力を発生させて型締する。型締装置20は、可動ダイプレート21と、ロータリーテーブル22と、を有している。可動ダイプレート21は、平板形状を有しており、上側金型2が取付面である下面21aに取り付けられる。ロータリーテーブル22は、下側金型3が上面22aに取り付けられる。ロータリーテーブル22は、複数の下側金型3が取り付けられており、回転することにより複数の下側金型3を順次上側金型2と対向する位置に搬送する。型締装置20によって上側金型2と下側金型3とが型締されるとキャビティが形成される。
【0018】
可動ダイプレート21の上方に射出装置10が配置されている。可動ダイプレート21の中心部には、貫通孔21bが設けられている。貫通孔21bは、可動ダイプレート21の下面21a(一方の面)から上面21c(他方の面)まで貫通している。貫通孔21bの上部はすり鉢状に形成されている。貫通孔21bには、上面21c側からノズル11aが挿入される。射出装置10は、ノズル11aが上側金型2にタッチした状態でキャビティに溶融した樹脂を射出する。
【0019】
型締装置20は、図3に示すように、可動ダイプレート21の上面21cにノズル11aを囲うように設けられたカバー23を有している。カバー23は、カバー本体24と、ドア25と、を有している。カバー本体24は、直方体の箱形に形成されている。カバー本体24の上面には、加熱シリンダ11が挿入される開口が設けられている。また、カバー本体24の正面には、開口24aが設けられている。ドア25は、開口24aを開閉可能なようにカバー本体24に取り付けられている。図3(a)は、ドア25(すなわち開口24a)が開いた状態を示し、図3(b)は、ドア25が閉じた状態を示す。ドア25は、扉構造であるが、引き戸構造であってもよい。通常の作業手順では、作業者は、パージ動作を開始する前に、ドア25を開けて可動ダイプレート21の上面21cにトレーTを置き、ドア25を閉める。作業者は、パージ動作が終了した後に、ドア25を開けてトレーTを取り出し、ドア25を閉める。
【0020】
表示操作装置30は、竪型射出成形機1に係る情報を表示する表示部31と、操作を入力するため操作部32と、を有している。表示部31および操作部32は、制御装置40に接続されている。表示部31は、制御装置40からの制御信号に基づき、表示領域に各種画面を表示する。操作部32は、複数のキーを備えており、各キーに入力された操作に応じた信号を制御装置40に送信する。なお、表示操作装置30は、操作部32として表示部31に重ねられたタッチパネルを備え、表示部31に表示したアイコンとタッチパネルとを組み合わせて構成したソフトウェアスイッチを有していてもよい。表示操作装置30は、表示装置であり、操作入力装置でもある。
【0021】
制御装置40は、マイクロコンピュータで構成されており、竪型射出成形機1の全体の動作を司る。制御装置40は、プログラムやデータを記憶するメモリを有している。制御装置40は、射出装置10や型締装置20などの各装置の動作を制御する。図2に示すように、制御装置40は、射出装置10(射出装置駆動部13、スクリュー駆動部14、電流センサ15、エンコーダ16)、型締装置20と、表示操作装置30(表示部31、操作部32)と、接続されている。
【0022】
制御装置40は、パージ動作を実行する。パージ動作は、加熱シリンダ11のノズル11aが上側金型2から上方に離れた状態において、スクリュー12を回転させて後退させる動作、または、スクリュー12を前進させる動作、または、これら動作を組み合わせた動作である。制御装置40は、パージ動作によって加熱シリンダ11内の樹脂をノズル11aから排出する。また、スクリュー12の前方に樹脂を供給せず、加熱シリンダ11内でスクリュー12を後退および前進させる動作(空打動作)もパージ動作に含まれる。
【0023】
制御装置40は、ノズルタッチ動作を実行する。ノズルタッチ動作は、加熱シリンダ11のノズル11aを上側金型2にタッチさせる動作である。ノズルタッチ動作は、射出装置10を下方に移動させる動作(射出装置移動動作)である。制御装置40のメモリには、ノズルタッチ位置Paとして、直前にノズル11aが上側金型2にタッチしたときの射出装置10の位置Pが記憶されている。ノズルタッチ位置Paは、射出装置10の下降時の目標位置である。また、制御装置40のメモリには、射出装置10の下降時の速度切換位置Pbとして、ノズルタッチ位置Paより所定距離(例えば、10mm)上方の位置が記憶されている。制御装置40は、エンコーダ16が出力する信号に基づいて、射出装置10の速度Vおよび位置Pを取得する。
【0024】
制御装置40は、ノズルタッチ動作として、射出装置駆動部13の電動モータを制御して、射出装置10を現在位置から速度切換位置Pbまで高速の第1速度V1で移動させ、速度切換位置Pbからノズルタッチ位置Paまで低速の第2速度V2で移動させる。第2速度V2は、第1速度V1より低速である。本実施形態において、第1速度V1は20mm/秒であり、第2速度V2は2mm/秒である。このとき、制御装置40は、射出装置10を速度制御で移動させる。制御装置40は、例えば、射出装置10を第1速度V1で移動させているときに、射出装置10の速度Vが第1速度V1より下がると射出装置駆動部13の電動モータの電流値Iを増加させて速度Vを上げ、射出装置10の速度Vが第1速度V1より上がると電流値Iを減少させて速度Vを下げる。このような速度制御では、射出装置10が障害物に衝突すると、射出装置10が速度を維持しようとして、射出装置駆動部13の電動モータの電流値Iが急激に上昇する。
【0025】
制御装置40は、射出装置10の下降時の衝突を判定する。具体的には、制御装置40は、電流センサ15が出力する信号に基づいて、射出装置駆動部13の電動モータの電流値Iを取得する。そして、制御装置40は、射出装置10を第1速度V1で移動させているときでかつ射出装置10の位置Pが可動ダイプレート21の下面21aから上面21c側に所定の衝突判定距離DS以上離れているときに、電流値Iが所定の衝突判定電流値IS以上になると、加熱シリンダ11が衝突したと判定する。なお、制御装置40は、電流値Iの上昇時の傾きによって、射出装置10の衝突を判定するようにしてもよい。制御装置40は、射出装置10が衝突したと判定したときの射出装置10の位置Pを衝突位置Pxとしてメモリに記憶する。
【0026】
衝突判定電流値ISは、例えば、ノズルタッチ動作においてノズル11aが上側金型2にタッチしたときの射出装置駆動部13の電動モータの電流値I(以下、「ノズルタッチ時電流値Int」という。)基づいて設定される。例えば、衝突判定電流値ISは、あらかじめ測定したノズルタッチ時電流値Intの整数倍(2~5倍など)の値が設定される。本実施形態においては、衝突判定電流値ISとして、ノズルタッチ時電流値Intの3倍の値が設定されている。制御装置40は、正常終了したノズルタッチ動作におけるノズルタッチ時電流値Intをメモリに記憶し、次回のノズルタッチ動作においてノズルタッチ時電流値Intに所定の倍数を乗じた値を衝突判定電流値ISとして設定するようにしてもよい。
【0027】
衝突判定距離DSは、可動ダイプレート21の下面21aからトレーTが置かれる場所(例えば、可動ダイプレート21の上面21c)までの距離より小さい値が設定される。また、下面21aから上面21c側に衝突判定距離DSだけ離れた位置は、速度切換位置Pbより上方にある。本実施形態では、衝突判定距離DSは30mmである。なお、制御装置40は、衝突判定距離DSを衝突判定に用いずに、射出装置10を第1速度V1で移動させているときに、電流値Iが衝突判定電流値IS以上になると、射出装置10が衝突したと判定するようにしてもよい。
【0028】
制御装置40は、射出装置10が衝突したと判定すると、射出装置駆動部13の電動モータを制御して、射出装置10を上方(ノズルタッチ位置Paから離れる方向)に所定の退避距離DRだけ移動させたあとに停止させる。本実施形態において、退避距離DRは20mmである。なお、制御装置40は、射出装置10が衝突したと判定すると、射出装置10の移動を直ちに停止させるようにしてもよい。
【0029】
上側金型2を他の上側金型2に交換した場合、メモリに記憶されているノズルタッチ位置Paと実際のノズルタッチ位置とにずれが生じる場合がある。その場合、速度切換位置Pbや衝突判定距離DSの設定によっては、制御装置40が、ノズル11aが交換後の他の上側金型2にタッチしたにもかかわらず、ノズル11aが衝突したと判定してしまうことがある。そこで、制御装置40は、ノズル11aが衝突したと判定すると、図4に示す金型の交換有無を問い合わせるメッセージ(例えば、「金型交換をしましたか?」)およびYESボタンおよびNOボタンを含むメッセージ画面60を表示部31に表示させる。そして、YESボタンに対応する操作部32のキーが押されると(金型の交換有りに対応する操作)、制御装置40は、上記衝突位置Pxを新たなノズルタッチ位置Paとして再度ノズルタッチ動作を実行する。または、NOボタンに対応する操作部32のキーが押されると(金型の交換無しに対応する操作)、制御装置40は、ノズル11aまたは上側金型2の確認を促すメッセージ(例えば、「ノズル先端や金型を確認してください」)を表示部31に表示する。
【0030】
次に、上述した本実施形態の竪型射出成形機1の制御装置40における本発明に係る動作(ノズルタッチ動作)の一例について、図5を参照して説明する。
【0031】
例えば、パージ動作を実行した後など、加熱シリンダ11のノズル11aが上側金型2から上方に離れているときに、操作部32にノズルタッチ動作を要求する操作が入力されると、制御装置40は、射出装置10を現在位置から速度切換位置Pbまで第1速度V1で移動させるように射出装置駆動部13の電動モータを制御する(S110)。
【0032】
制御装置40は、電流センサ15が出力する信号に基づいて、射出装置駆動部13の電動モータの電流値Iを取得し(S120)、エンコーダ16が出力する信号に基づいて、射出装置10の速度Vおよび位置Pを取得する(S130)。そして、制御装置40は、射出装置10の位置Pが可動ダイプレート21の下面21aから上方に衝突判定距離DS以上離れているときに(S140でY)、電流値Iが衝突判定電流値IS以上になると(S150でY)、射出装置10が衝突したと判定する。
【0033】
制御装置40は、射出装置10が衝突したと判定すると、そのときの射出装置10の位置Pを衝突位置Pxとしてメモリに記憶するとともに(S160)、射出装置10を上方に退避距離DRだけ移動させたあとに停止させるように射出装置駆動部13の電動モータを制御する(S170)。そして、制御装置40は、金型の交換有無を問い合わせるメッセージ画面60を表示部31に表示させる(S180)。そして、操作部32に金型の交換有りに対応する操作が入力されると(S190でY)、制御装置40は、上記衝突位置Pxを新たなノズルタッチ位置Paとし(S200)、ノズルタッチ動作を始めから実行する(S110に戻る)。または、操作部32に金型の交換無しに対応する操作が入力されると(S190でN)、制御装置40は、ノズル11aまたは上側金型2の確認を促すメッセージを表示部31に表示させる(S210)。そして、ノズルタッチ動作を終了する。
【0034】
制御装置40は、射出装置10が衝突しておらず(S140でNまたはS150でN)、かつ射出装置10が速度切換位置Pbに到達していないとき(S220でN)、射出装置10の第1速度V1での移動を継続する(S110に戻る)。そして、射出装置10が、速度切換位置Pbに到達すると(S220でY)、射出装置10をノズルタッチ位置Paまで第2速度V2で移動させるように射出装置駆動部13の電動モータを制御する(S230)。そして、制御装置40は、射出装置10がノズルタッチ位置Paに到達するとノズルタッチ動作を終了する。なお、制御装置40は、射出装置10がノズルタッチ位置Paにおいて上側金型2にタッチしない場合は、ノズル11aが上側金型2にタッチするまで射出装置10の第2速度V2での移動を継続するようにしてもよい。
【0035】
図6に、ノズルタッチ動作において、射出装置10がノズルタッチ位置Paまで正常に移動したときの射出装置駆動部13の電動モータの電流値Iのグラフおよび射出装置10の位置Pのグラフの一例を示す。
【0036】
図7に、ノズルタッチ動作において、射出装置10が第1速度V1で移動中に障害物に衝突したときの射出装置駆動部13の電動モータの電流値Iのグラフおよび射出装置10の位置Pのグラフの一例を示す。
【0037】
以上説明したように、竪型射出成形機1は、ノズル11aを有する加熱シリンダ11と、加熱シリンダ11を有する射出装置10と、射出装置10を移動させる射出装置駆動部13の電動モータと、当該電動モータを制御する制御装置40と、を有している。制御装置40は、射出装置10をノズルタッチ位置Paより手前にある速度切換位置Pbまで第1速度V1で移動させ、速度切換位置Pbからノズルタッチ位置Paまで第1速度V1より低速の第2速度V2で移動させるように射出装置駆動部13の電動モータを制御する。制御装置40は、射出装置10を第1速度V1で移動させているときでかつ射出装置10が可動ダイプレート21の下面21aから上面21c側に衝突判定距離DS以上離れているときに射出装置駆動部13の電動モータの電流値Iに基づいて射出装置10の衝突を判定する。射出装置10が衝突したと判定すると、射出装置10を上方に退避距離DRだけ移動させたあとに停止させるように射出装置駆動部13の電動モータを制御する。
【0038】
このようにしたことから、竪型射出成形機1の制御装置40は、高速の第1速度V1と低速の第2速度V2とを組み合わせて射出装置10を移動させることにより、射出装置10を速やかにノズルタッチ位置Paに移動させることができるとともに、ノズルタッチ位置Paにある上側金型2に高速で衝突してしまうことを抑制できる。また、射出装置10を第1速度V1で移動させているときは射出装置10が速度切換位置Pbより上方にあり、射出装置10がノズルタッチ位置Paから離れている。そのため、制御装置40が、射出装置10が衝突したと判定したときは、射出装置10が障害物に衝突した可能性が高く、このときに射出装置10の移動を停止することで、射出装置10が移動を続けようとして強い力で障害物に押し付けられることを回避でき、射出装置10、加熱シリンダ11やノズル11aの損傷を抑制できる。また、障害物を検出する検出器を設ける必要がなく、竪型射出成形機1を簡易な構成で実現できる。また、衝突判定後に射出装置10を上方に退避距離DRだけ移動させることで、竪型射出成形機1に応力が残ってしまうことを抑制し、その後の作業の安全性を高めることができる。
【0039】
また、制御装置40が、衝突判定の条件に衝突判定距離DSを含んでいるので、衝突判定距離DSを適切に設定することにより、上側金型2を他の上側金型2に交換した際に、ノズル11aが他の上側金型2にタッチしたにもかかわらず、ノズル11aが衝突したと判定してしまうことを抑制できる。
【0040】
また、制御装置40が、射出装置10を第1速度V1で移動させているときに射出装置駆動部13の電動モータの電流値Iが衝突判定電流値IS以上になると、射出装置10が衝突したと判定する。このようにしたことから、比較的簡易な制御で衝突を判定できる。
【0041】
また、衝突判定電流値ISが、ノズル11aが上側金型2にタッチしたときの射出装置駆動部13の電動モータの電流値に基づいて設定されている。このようにしたことから、ノズルタッチ位置Paに正しく移動したときの電流値に基づいて射出装置10の衝突判定をすることができるので、衝突判定の精度を高めることができる。
【0042】
また、竪型射出成形機1が、表示操作装置30を有している。制御装置40が、ノズル11aが衝突したと判定した後、金型の交換有無を問い合わせるメッセージを含むメッセージ画面60を表示操作装置30の表示部31に表示する。制御装置40が、表示操作装置30の操作部32に金型の交換有りに対応する操作が入力されると、ノズル11aが衝突したと判定したときの射出装置10の位置P(衝突位置Px)を新たにノズルタッチ位置Paとしてノズルタッチ動作を実行する。制御装置40が、操作部32に金型の交換無しに対応する操作が入力されると、ノズル11aまたは上側金型2の確認を促すメッセージを表示部31に表示する。このようにすることで、ノズル11aが障害物に衝突した可能性がある状況において、作業者に対して適切な行動を促すことができる。
【0043】
上述した竪型射出成形機1は、制御装置40が、ノズルタッチ動作時に射出装置10の衝突を判定する構成を有するものであるが、この構成に限定されるものではない。例えば、竪型射出成形機1において、何らかの原因によりエンコーダ16が射出装置10の位置Pについて誤った信号を出力してしまった場合に、射出装置10が後退限位置Pcにある後退限ストッパなどに衝突してしまうおそれがある。そこで、制御装置40は、射出装置10を機械的な後退限位置Pcに移動させるときも、射出装置10の衝突を判定するようにしてもよい。
【0044】
具体的には、制御装置40のメモリに、機械的な後退限位置Pcを記憶する。後退限位置Pcは、加熱シリンダ11の上昇時の目標位置である。また、制御装置40のメモリに、射出装置10の上昇時の速度切換位置Pdとして、後退限位置Pcより所定距離(例えば、10mm)下方の位置を記憶する。制御装置40は、エンコーダ16が出力する信号に基づいて、射出装置10の位置Pおよび速度Vを取得する。
【0045】
制御装置40は、射出装置10を後退限位置Pcに移動させる動作として、射出装置駆動部13の電動モータを制御して、射出装置10を現在位置から速度切換位置Pdまで高速の第1速度V1で移動させ、速度切換位置Pdから後退限位置Pcまで低速の第2速度V2で移動させる。制御装置40は、射出装置10の上昇時の衝突を判定する。具体的には、制御装置40は、電流センサ15が出力する信号に基づいて、射出装置駆動部13の電動モータの電流値Iを取得する。そして、制御装置40は、射出装置10を第1速度V1で移動させているときに、電流値Iが所定の衝突判定電流値IS以上になると、射出装置10が衝突したと判定する。
【0046】
制御装置40は、射出装置10が衝突したと判定すると、射出装置駆動部13の電動モータを制御して、射出装置10を下方(後退限位置Pcから離れる方向)に所定の退避距離DRだけ移動させたあとに停止させる。なお、制御装置40は、射出装置10を後退限位置Pcに移動させる動作においても、射出装置10が衝突したと判定すると、射出装置10の移動を直ちに停止させるようにしてもよい。
【0047】
このようにすることで、竪型射出成形機1は、射出装置10を後退限位置Pcに移動させる動作においても、射出装置駆動部13等の射出装置10の損傷を抑制できる。
【0048】
また、上述した竪型射出成形機1は、制御装置40が、射出装置駆動部13の電動モータの電流値Iに基づいて、射出装置10の衝突を判定する構成を有するものであるが、この構成に限定されるものではない。例えば、制御装置40は、射出装置10の速度Vに基づいてノズル11aの衝突を判定するようにしてもよい。具体的には、制御装置40は、エンコーダ16が出力する信号に基づいて、射出装置10の速度Vを取得する。そして、制御装置40は、射出装置10を第1速度V1で移動させているときに、速度Vが衝突判定速度VS以下になると、射出装置10が衝突したと判定する。なお、制御装置40は、第1速度V1の低下時の傾きによって、射出装置10の衝突を判定するようにしてもよい。衝突判定速度VSは、第2速度V2より低い速度が設定される。本実施形態においては、衝突判定速度VSは、1mm/秒に設定されている。
【0049】
図8に、ノズルタッチ動作において、射出装置10がノズルタッチ位置まで正常に移動したときの射出装置10の速度Vのグラフおよび射出装置10の位置Pのグラフの一例を示す。
【0050】
図9に、ノズルタッチ動作において、射出装置10が第1速度V1で移動中に障害物に衝突したときの射出装置10の速度Vのグラフおよび射出装置10の位置Pのグラフの一例を示す。
【0051】
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0052】
1…竪型射出成形機、2…上側金型、3…下側金型、5…基台、10…射出装置、11…加熱シリンダ、11a…ノズル、12…スクリュー、13…射出装置駆動部、14…スクリュー駆動部、15…電流センサ、16…エンコーダ、20…型締装置、21…可動ダイプレート、21a…下面、21b…貫通孔、21c…上面、22…ロータリーテーブル、22a…上面、23…カバー、24…カバー本体、24a…開口、25…ドア、30…表示操作装置、31…表示部、32…操作部、40…制御装置、Pa…ノズルタッチ位置、Pb…速度切換位置、Pc…後退限位置、Pd…速度切換位置、Px…衝突位置、IS…衝突判定電流値、DS…衝突判定距離、VS…衝突判定速度、DR…退避距離
図1
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図9