(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
F04D 27/02 20060101AFI20241111BHJP
【FI】
F04D27/02 B
F04D27/02 D
(21)【出願番号】P 2021055548
(22)【出願日】2021-03-29
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】松尾 実
(72)【発明者】
【氏名】呉 文平
(72)【発明者】
【氏名】広江 隆治
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-024588(JP,A)
【文献】特公平03-050919(JP,B2)
【文献】特開2016-079839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機を含むシステムの制御装置であって、
前記システムの要求負荷に応じた前記圧縮機の回転数指令値を
所定の周期及び所定の振幅で変動させた変動回転数指令値を出力する回転数指令部と、
前記圧縮機の駆動状態を示す出力信号と前記変動回転数指令値とを用いて、サージングの予兆を検知するための予兆判別値を算出する判別値算出部と、
運転中の前記圧縮機のヘッドに応じた予兆判別基準値を取得する基準値取得部と、
前記予兆判別値と前記予兆判別基準値との比較結果に基づいて、
サージングを抑制するための前記システムの制御指令値を生成する制御指令生成部と
を具備
し、
前記圧縮機の駆動状態を示す出力信号は、正常時において、前記変動回転数指令値に同期して変化する信号であるとともに、サージング発生時に変動回転数指令値の変化に同期せずに変化が発生する信号である制御装置。
【請求項2】
前記基準値取得部は、前記圧縮機のヘッドに関係するパラメータと予兆判別基準値とが関連付けられた情報を用いて、運転中の前記圧縮機のヘッドに対応する予兆判別基準値を取得する請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記基準値取得部は、前記圧縮機の圧力変数と予兆判別基準値との関係式を用いて、運転中の前記圧縮機の圧力変数に対応する前記予兆判別基準値を取得
し、
前記圧縮機の圧力変数は、前記圧縮機のヘッドを反映した無次元数である請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記圧縮機の圧力変数と予兆判別基準値との関係式は、前記圧縮機の回転数指令値に対応付けて設定されており、
前記基準値取得部は、運転中の前記圧縮機の回転数指令値に対応する前記関係式を用いて、前記予兆判別基準値を取得する請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記判別値算出部は、前記変動回転数指令値の第1期間毎の変化量と、前記出力信号の前記第1期間毎の変化量とを用いて、前記第1期間よりも長い第2期間における共分散を算出し、前記共分散を前記予兆判別値とする請求項1から4のいずれかに記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御指令生成部は、前記予兆判別値が前記予兆判別基準値以上である場合に、前記圧縮機
に供給されるガス流量を増加させる請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御指令生成部は、
前記予兆判別値が前記予兆判別基準値以上である場合に、前記予兆判別値と前記予兆判別基準値との偏差に基づいて、
前記圧縮機から吐出された冷媒を前記圧縮機の吸気側へとバイパスさせるバイパスガス流量を決定
し、前記圧縮機に供給されるガス流量を増加させる請求項
5に記載の制御装置。
【請求項8】
圧縮機と、凝縮器と、蒸発器とが設けられた冷媒配管と、
前記圧縮機から吐出された冷媒を前記圧縮機の吸気側にバイパスさせるバイパス管と、
前記バイパス管に設けられるとともに、冷媒流量を調整するためのバイパス弁と、
請求項1から7のいずれかに記載の制御装置と
を備える冷凍機。
【請求項9】
前記制御指令生成部は、前記予兆判別値が前記予兆判別基準値以上である場合に、前記バイパス弁の弁開度を増加させるための開度指令値を生成する請求項8に記載の冷凍機。
【請求項10】
前記制御指令生成部は、前記予兆判別値と前記予兆判別基準値との偏差に基づいて、前記バイパス弁の開度指令値を生成する請求項9に記載の冷凍機。
【請求項11】
圧縮機を含むシステムの制御方法であって、
前記システムの要求負荷に応じた前記圧縮機の回転数指令値を
所定の周期及び所定の振幅で変動させた変動回転数指令値を出力する工程と、
前記圧縮機の駆動状態を示す出力信号と前記変動回転数指令値とを用いて、サージングの予兆を検知するための予兆判別値を算出する工程と、
運転中の前記圧縮機のヘッドに応じた予兆判別基準値を取得する工程と、
前記予兆判別値と前記予兆判別基準値との比較結果に基づいて、
サージングを抑制するための前記システムの制御指令値を生成する工程と
をコンピュータが実行
し、
前記圧縮機の駆動状態を示す出力信号は、正常時において、前記変動回転数指令値に同期して変化する信号であるとともに、サージング発生時に変動回転数指令値の変化に同期せずに変化が発生する信号である制御方法。
【請求項12】
コンピュータを請求項1から7のいずれかに記載の制御装置として機能させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機を含むシステムの制御装置、制御方法、及び制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ターボ冷凍機等の圧縮機を有するシステムでは、低負荷時においてサージングや旋回失速を回避し、安定運転を行うことが重要である。例えば、サージングを回避する一つの制御として、圧縮機から吐出されたガスを圧縮機の吸気側にバイパスさせる技術が提案されている。しかしながら、ガスのバイパス量を増やすほど、効率が低下するため、ガスのバイパス量を可能な限り少なくすることが望ましい。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、サージングが発生する主サージング制御曲線と、主サージング制御曲線からずれている予期サージング制御曲線とを設定し、予期サージング制御曲線を用いて近づきつつあるサージング状態を検知する技術が開示されている。そして、サージングが検知された場合には、バイパス弁を開くことでサージングを回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されているように、主サージング制御曲線や予期サージング制御曲線を用いてサージング制御を行う場合、これらサージング制御曲線の精度が重要となる。例えば、予期サージング制御曲線があまりにも安全側に設定されていると、サージングラインからかなり離れた運転点においてもサージング抑制制御(例えば、バイパス弁の弁開度を増加させる制御等)を行うこととなる。このため、運転効率の低下を招く可能性がある。このような運転効率の低下を抑制するためには、サージングが発生するぎりぎりのタイミングでサージング抑制制御を行うことが必要となるが、このタイミングを適切に検知することは難しかった。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、サージングの予兆の検知精度を向上させることのできる制御装置、制御方法、及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の制御装置は、圧縮機を含むシステムの制御装置であって、前記システムの要求負荷に応じた前記圧縮機の回転数指令値を所定の周期及び所定の振幅で変動させた変動回転数指令値を出力する回転数指令部と、前記圧縮機の駆動状態を示す出力信号と前記変動回転数指令値とを用いて、サージングの予兆を検知するための予兆判別値を算出する判別値算出部と、運転中の前記圧縮機のヘッドに応じた予兆判別基準値を取得する基準値取得部と、前記予兆判別値と前記予兆判別基準値との比較結果に基づいて、サージングを抑制するための前記システムの制御指令値を生成する制御指令生成部とを具備し、前記圧縮機の駆動状態を示す出力信号は、正常時において、前記変動回転数指令値に同期して変化する信号であるとともに、サージング発生時に変動回転数指令値の変化に同期せずに変化が発生する信号である。
【0008】
本開示の冷凍機は、圧縮機と、凝縮器と、蒸発器とが設けられた冷媒配管と、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記圧縮機の吸気側にバイパスさせるバイパス管と、前記バイパス管に設けられるとともに、冷媒流量を調整するためのバイパス弁と、上記制御装置とを具備する。
【0009】
本開示の制御方法は、圧縮機を含むシステムの制御方法であって、前記システムの要求負荷に応じた前記圧縮機の回転数指令値を所定の周期及び所定の振幅で変動させた変動回転数指令値を出力する工程と、前記圧縮機の駆動状態を示す出力信号と前記変動回転数指令値とを用いて、サージングの予兆を検知するための予兆判別値を算出する工程と、運転中の前記圧縮機のヘッドに応じた予兆判別基準値を取得する工程と、前記予兆判別値と前記予兆判別基準値との比較結果に基づいて、サージングを抑制するための前記システムの制御指令値を生成する工程とをコンピュータが実行し、前記圧縮機の駆動状態を示す出力信号は、正常時において、前記変動回転数指令値に同期して変化する信号であるとともに、サージング発生時に変動回転数指令値の変化に同期せずに変化が発生する信号である。
【0010】
本開示の制御プログラムは、コンピュータを上記制御装置として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
サージングの予兆の検知精度を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態に係る冷凍機の概略構成を示した図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る制御装置が備える機能のうち、圧縮機のサージングを制御するサージング制御機能を抽出して示した機能ブロック図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る変動回転数指令値の時間的変化の一例を示した図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係るサージングが発生していないときと、サージングが発生しているときのインバータ出力の時間的変化の一例を示した図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係るサージング制御方法の手順の一例を示したフローチャートである。
【
図6】本開示の一実施形態に係る変動回転数指令値、インバータ出力値、予兆判別基準値、予兆判別値の時間的変化の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示の一実施形態に係る制御装置、制御方法、及び制御プログラムについて、図面を参照して説明する。また、以下の実施形態では、本開示の制御装置等が冷凍機に適用される場合を例示して説明するが、制御装置等の適用先はこれに限定されず、圧縮機を備えるシステムに広く適用することが可能である。
【0014】
図1は、本開示の一実施形態に係る冷凍機の概略構成を示す図である。本実施形態に係る冷凍機1は、例えば、ターボ冷凍機である。
図1に示すように、冷凍機1は、例えば、圧縮機3、凝縮器5、蒸発器9が冷媒配管で接続された冷媒回路を備えている。また、冷凍機1は、冷凍機1が備える各部の制御を行う制御装置10を備えている。
冷媒は特に限定されない。冷媒の一例として、GWP(Global-Warming Potential)がフロン系冷媒よりも小さい低GWP冷媒が挙げられる。具体的には、R-1233zd(E)、二酸化炭素冷媒等が挙げられる。
【0015】
圧縮機3は、例えば、遠心式圧縮機が用いられる。圧縮機3は、一例として、軸線回りに回転する羽根車を備える単段の圧縮機とされている。しかしながら、圧縮機3の構成はこの例に限定されず、例えば、2段以上の羽根車を備える多段式の圧縮機とされていてもよい。
【0016】
圧縮機3は、例えば、インバータ11によって回転数制御されたモータ12によって駆動される。インバータ11は、制御装置10によって周波数制御され、この結果、モータ12の回転数が制御される。
【0017】
圧縮機3の冷媒吸入口には、例えば、吸入冷媒流量を制御する入口案内翼(以下「IGV」という。)13が設けられており、冷凍機1の容量制御が可能とされている。IGV13の開度は、例えば、制御装置10によってIGV用電動モータが駆動されることによって調整される。
【0018】
凝縮器5は、例えば、シェルアンドチューブ型やプレート型等の熱交換器である。凝縮器5には、例えば、冷媒を冷却するための冷却水が供給される。凝縮器5に導かれる冷却水は、図示しない冷却塔や空気熱交換器において外部へと排熱された後に、再び凝縮器5へと導かれる。凝縮器5は、例えば、空気熱交換器でもよい。凝縮器5を空気熱交換器とした場合、冷やされた外気と冷媒との間で熱交換が行われる。
【0019】
蒸発器9は、シェルアンドチューブ型やプレート型等の熱交換器である。例えば、蒸発器9には、図示しない外部負荷へ供給される冷水が導かれる。冷水は、蒸発器9にて冷媒と熱交換することによって、定格温度(例えば7℃)まで冷却され、外部負荷(図示略)へと送られる。
【0020】
冷媒配管において、凝縮器5と蒸発器9との間には膨張弁7が設けられている。
膨張弁7は、例えば、電動式とされている。凝縮器5から導かれた低温高圧の冷媒は、膨張弁7によって等エンタルピ的に膨張させられる。膨張弁7の開度は、所望のヘッド差(冷凍サイクルにおける冷媒の高低圧差)が得られるように制御装置10によって制御される。
【0021】
圧縮機3の吐出側と圧縮機3の吸込側との間には、ホットガスバイパス管(バイパス管)16が設けられている。ホットガスバイパス管16には、冷媒流量を調整するためのホットガスバイパス弁(バイパス弁)8が設けられている。ホットガスバイパス弁(以下「HGBP弁」という。)によって流量が調整された高温高圧の吐出冷媒が蒸発器9側へと導かれ、圧縮機3の吸込側へとバイパスされるようになっている。HGBP弁8の開度は、制御装置10によってHGBP用電動モータが駆動されることによって調整される。HGBP弁8は、サージングが発生していない正常時は、「閉状態」とされている。
【0022】
冷凍機1には、例えば、蒸発器9に流入する冷水の温度である冷水入口温度Ti、蒸発器9から流出する冷水の温度である冷水出口温度To、冷水流量Gw、蒸発器圧力Pe、凝縮器5に流入する冷却水の温度である冷却水入口温度Twi、凝縮器5から流出する冷却水の温度である冷却水出口温度Two、凝縮器圧力Pc等、冷凍機1の制御に必要となる各種パラメータを計測するための温度センサ、流量センサ、圧力センサ等が適宜設けられている。これら各センサの計測値は、制御装置10に送信され、冷凍機1の制御に用いられる。
【0023】
制御装置10は、各センサから受信した測定値や上位システムから送られてくる要求負荷などに基づいて冷凍機1を制御する。また、制御装置10は、圧縮機3のサージングを未然に防ぐためのサージング制御部30を備えている。
【0024】
このような冷凍機1において、圧縮機3から吐出された高温高圧の冷媒は、凝縮器5へ送られる。凝縮器5において、冷却水との熱交換により冷却された冷媒は、膨張弁7を通過する過程で断熱膨張した後、蒸発器9に送られる。蒸発器9において、冷媒は冷水との熱交換により気化し、圧縮機3に送られる。このような動作により、冷凍機1は、所望温度(例えば、7℃)の冷水を外部負荷(図示略)へ供給する。
【0025】
ここで、
図1に示した冷凍機1の構成は一例であり、この構成に限定されない。例えば、冷凍機1の構成としては、様々な構成が提案されており、公知の構成を用いることが可能である。また、冷凍機1は冷水を供給する場合に限定されず、例えば、温水を供給するものであってもよいし、或いは、冷水と温水との両方を供給するものであってもよい。また、冷却又は加熱される媒体は水に限られず、空気やそれ以外の媒体であってもよい。
【0026】
次に、本実施形態に係る制御装置10について説明する。
制御装置10は、例えば、図示しないCPU(中央演算装置)、RAM(Random Access Memory)等のメインメモリ、記憶部(例えば、ROM、フラッシュメモリ等)を備えている。後述の各種機能を実現するための一連の処理の過程は、例えば、プログラムの形式で記憶部に記録されており、このプログラムをCPUがメインメモリに読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、後述の各種機能が実現される。
【0027】
なお、プログラムは、記憶部に予めインストールされている形態や、他のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0028】
図2は、制御装置10が備える機能のうち、圧縮機3のサージングを回避・抑制するためのサージング制御機能を抽出して示した機能ブロック図である。
図2に示されるように、サージング制御部30は、例えば、回転数指令部31、判別値算出部32、基準値取得部33、及び制御指令生成部34を備えている。
【0029】
回転数指令部31は、冷凍機1の要求負荷に応じた圧縮機3の回転数指令値(以下「基本回転数指令値」という。)を所定の条件で変動させた変動回転数指令値を出力する。例えば、回転数指令部31は、冷凍機の要求負荷に応じた圧縮機3の基本回転数指令値に変動指令値を加算することにより、変動回転数指令値を生成する。
【0030】
変動指令値は、例えば、所定の周期及び所定の振幅で変動する値である。
【0031】
上記「所定の周期」は、例えば、冷凍機1の応答周期よりも短く設定される。例えば、冷凍機1は、システムの熱容量の影響で圧縮機3の回転数指令を変更した後、冷凍能力にその変更が反映されるまでにタイムラグが発生する。このタイムラグに対して、「所定の周期」が十分に短い周期であれば、圧縮機3の回転数を周期的に変動させても冷凍機の冷凍能力に大きな影響を与えることはない。例えば、「所定の周期」は、上記冷凍能力のタイムラグの約1/5以下に設定され、好ましくは、約1/10以下に設定されるとよい。
【0032】
また、上記「所定の振幅」は、例えば、冷凍機1の定格運転時の基本回転数指令の1/100~1/50程度に設定される。
【0033】
また、変動指令値の波形は、特に限定されない。一例として、三角波、正弦波等が挙げられる。
本実施形態においては、基本回転数指令値を、周期T[sec]、振幅Δx[Hz]の三角波に基づく変動指令値を用いて変動させる場合を例示して説明する。
例えば、冷凍機1の要求負荷に応じた圧縮機3の基本回転数指令値がx[Hz]の場合、変動回転数指令値は、
図3に示すように、基本回転数指令値xに周期T[sec]、振幅Δx[Hz]の三角波に基づく変動指令値を加算した値となる。
【0034】
判別値算出部32は、圧縮機3の駆動状態を示す出力信号と変動回転数指令値とを用いて、サージングの予兆を検知するための予兆判別値を算出する。
圧縮機3の駆動状態を示す出力信号は、平常時において、上述の変動回転数指令値に同期して変化する信号であるとともに、サージング発生時に変動回転数指令値の変化に同期せずに変化が発生する信号である。
【0035】
出力信号の一例として、インバータ11の出力であるインバータ出力、圧縮機3の吐出圧力、圧縮機3の吸込圧力、圧縮機3の磁気軸受のスラスト位置等が挙げられる。なお、上記吸込圧力は、変動回転数指令値と逆位相となる。
本実施形態では、出力信号として、インバータ出力を利用する場合について説明する。
【0036】
出力信号(インバータ出力)は、サージングが発生していない正常時においては、
図4に実線で示すように、変動回転数指令値の変化に同期して変化する。これに対し、サージング発生時には、変動回転数指令値の変化に同期せずに値が急激に変化する。例えば、
図4では、サージング発生時に正常時のインバータ出力の値yに対してΔy´の変動が生じている場合を例示している。したがって、変動回転数指令値に同期しない出力信号の値の変化を検知することで、サージングの発生を速やかに検知することができる。
【0037】
判別値算出部32は、例えば、変動回転数指令値の第1期間毎の変化量と、出力信号の第1期間毎の変化量とを用いて、第1期間よりも長い第2期間における共分散を算出し、共分散を変動回転数指令値の分散で除算した値を予兆判別値とする。
【0038】
例えば、出力信号としてインバータ出力、すなわちモータ出力[kW]を使用する場合、予兆判別値は、以下のように算出される。
まず、時刻tにおける変動回転数指令値とインバータ出力の第1期間毎(例えば、1秒毎)の変化量をそれぞれ算出する。
【0039】
Xt=xt-xt-1 (1)
Yt=yt-yt-1 (2)
【0040】
(1)式において、Xtは第1期間における変動回転数指令値の変化量、xtは時刻tにおける変動回転数指令値、xt-1は時刻tから第1期間前である時刻t-1における変動回転数指令値である。
(2)式において、Ytは、第1期間におけるインバータ出力値の変化量、ytは、時刻tにおけるインバータ出力値、yt-1は、時刻tから第1期間前である時刻t-1におけるインバータ出力値である。
【0041】
そして、第1期間よりも長い第2期間において、第1期間毎に上記Xt,Ytを演算し、これらの値を用いて、以下の(3)式に基づいて、予兆判別値(Zt)を算出する。例えば、第2期間は、変動回転数指令値を得る際に用いる変動指令値の変動周期Tの整数倍に設定される。
【0042】
Zt=Cov(Xt,Yt)/Var(Xt) (3)
【0043】
上記(3)式において、Cov(Xt,Yt)は、第2期間におけるXt,Ytの共分散、Var(Xt)は、第2期間における変動回転数指令値の分散である。
なお、上記(3)式では、第2期間におけるXt,Ytの共分散を第2期間における変動回転数指令値の分散で徐算することにより、予兆判別値を算出していたが、予兆判別値の算出式はこの例に限定されない。
例えば、以下の(4)式のように、第2期間におけるXt,Ytの共分散を予兆判別値としてもよい。
【0044】
Zt=Cov(Xt,Yt) (4)
【0045】
基準値取得部33は、運転中の圧縮機3のヘッドに応じた予兆判別基準値を取得する。例えば、基準値取得部33は、圧縮機3のヘッドに関係するパラメータと予兆判別基準値とが関連付けられた情報を用いて、運転中の上記パラメータに対応する予兆判別基準値を取得する。例えば、基準値取得部33は、圧縮機3の圧力変数と予兆判別基準値との関係式を用いて、運転中の圧縮機の圧力変数に対応する予兆判別基準値を取得する。
【0046】
例えば、上記「関係式」は、事前にシミュレーション又は実機試験等を行うことにより、導出された関数である。上記「関係式」は、例えば、圧縮機3の圧力変数をパラメータとして含む、予兆判別基準値の関数として定義される。
【0047】
以下、シミュレーションを事前に行い、そのシミュレーション結果を用いて上記「関係式」を導出する方法の一例について説明する。
【0048】
事前に行うシミュレーションでは、例えば、基本回転数指令値の条件を変化させ、各基本回転数指令値において圧縮機の運転状態がどのように変化するかをシミュレーションする。また、変動指令値の変動幅(
図3の変動幅Δx)は、基本回転数指令値によらず一定とする。圧縮機の運転状態を示す項目として、例えば、基本回転数指令値に対するインバータ出力(以下「基本インバータ出力」という。)、変動指令値の変動幅に対するインバータ出力の変動幅(以下「インバータ出力変動幅」という。)、マッハ数、流量変数、圧力変数、IGV開度が挙げられる。
【0049】
続いて、これらのシミュレーション結果を用いて、各基本回転数指令値において、圧力変数と基本インバータ出力との関係を示した第1関係式と、圧力変数とインバータ出力変動幅との関係を示す第2関係式をそれぞれ導出する。
【0050】
次に、上記第1関係式及び第2関係式に任意の圧力変数を与えることにより、基本回転数指令値毎に、基本インバータ出力及びインバータ出力変動幅をそれぞれ演算し、これら演算結果を上述した予兆判別値の演算式、例えば、上記(1)式~(3)式に代入して予兆判別値を算出する場合と同様の演算を行うことにより、予兆判別基準値を得る。
【0051】
そして、基本回転数指令値毎に、異なる圧力変数において上記演算処理を繰り返し行うことにより、複数の異なる圧力変数に対応する予兆判別基準値を算出する。そして、これらの算出結果から圧力変数と予兆判別基準値との関係を示す関係式を導出する。すなわち、この関係式は、圧力変数をパラメータとして含む予兆判別基準値の関数として表されている。更に、上記関係式は、基本回転数指令値と対応付けられている。
【0052】
基本回転数指令値毎に取得された圧力変数と予兆判別基準値との関係を示す関係式は、制御装置10が備える所定の記憶部に記録されてもよいし、ネットワークを介して接続される所定のサーバ上(例えば、クラウド上)に格納されてもよいし、制御装置10が読み取り可能な記録媒体に格納されてもよい。なお、ネットワーク上のサーバ等のように、制御装置10以外の記憶部に上記「関係式」が格納されている場合には、例えば、冷凍機1の起動時等の所定のタイミングで制御装置10によって「関係式」がダウンロード等され、以下の通り、予兆判別基準値の取得に用いられることとなる。
【0053】
基準値取得部33は、例えば、冷凍機1の運転中において、圧縮機3の圧力変数を演算し、圧力変数を上述した圧力変数と予兆判別基準値との関係式に代入することにより、予兆判別基準値を得る。
ここで、圧力変数は、圧縮機3のヘッドを反映した無次元数である。圧力変数は、以下の(5)式により得られる。
【0054】
Ω=Δh(Te)/A2 (5)
【0055】
上記(5)式において、Ωは圧力変数、Δh(Te)は冷媒ガスのエンタルピ差であり、凝縮器圧力Pc、蒸発器圧力Pe、及び蒸発器圧力Peから算出される飽和温度Teを用いて演算される。Aは吸込ガスの音速である。
【0056】
なお、上述した予兆判別基準値に関する説明では、「出力信号」として、インバータ出力を用いる場合を例示したが、例えば、「出力信号」として他のパラメータ、例えば、圧縮機3の吐出圧力、圧縮機3の吸込圧力、圧縮機3の磁気軸受のスラスト位置等を用いる場合には、これらの出力信号の値をシミュレーション結果として得、これら出力信号と圧力変数との関係式を導出すればよい。
【0057】
また、上記説明では、圧力変数と予兆判別基準値との関係式を導出する場合について説明したが、この例に限定されない。例えば、圧力変数に代えて、凝縮圧力等を用いてもよい。ただし、凝縮圧力を用いる場合には、蒸発温度が一定である必要がある。
【0058】
制御指令生成部34は、判別値算出部32によって算出された予兆判別値と基準値取得部33によって取得された予兆判別基準値との比較結果に基づいて、冷凍機1の制御指令値を生成する。
【0059】
例えば、制御指令生成部34は、予兆判別値が予兆判別基準値以上である場合に、圧縮機3へバイパスさせるバイパスガス流量を増加させる。具体的には、制御指令生成部34は、予兆判別値と予兆判別基準値との偏差に基づいて、圧縮機3へバイパスさせるバイパスガス流量を決定する。
【0060】
例えば、制御指令生成部34は、予兆判別値が予兆判別基準値以上である場合に、HGBP弁8(
図1参照)を開くための開度指令値を生成する。より具体的には、制御指令生成部34は、予兆判別値と予兆判別基準値との偏差に基づいて、HGBP弁8の開度指令値を生成する。例えば、予兆判別値と予兆判別基準値との偏差が大きいほど、HGBP弁8の弁開度が大きくなるように開度指令値が設定される。例えば、制御指令生成部34は、予兆判別値と予兆判別基準値との偏差にP制御、PI制御、又はPID制御等の公知のフィードバック制御を行うことにより、開度指令値を決定する。また、上述したように、予兆判別値が予兆判別基準値未満の場合には、HGBP弁は閉状態とされている。
【0061】
次に、上述した制御装置10によって実行されるサージング制御方法について
図5を参照して説明する。
図5は、本実施形態に係るサージング制御処理の手順の一例を示したフローチャートである。このサージング制御処理は、例えば、所定の時間間隔で繰り返し行われる。
【0062】
以下に示すサージング制御処理は、例えば、制御装置10が備える記憶部に格納されたサージング管理制御プログラムをCPUがメインメモリに読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより実行される。
なお、以下に示すサージング制御処理の他、制御装置10は、IGV開度制御、膨張弁開度制御等を行っている。なお、これらの制御については、公知の制御を採用すればよく、ここでの説明は省略する。そして、以下に示すサージング制御処理は、要求負荷を満足するような制御等を行っている際に、圧縮機3のサージングの予兆を検知し、サージングや旋回失速が生じないように、又は、サージングや旋回失速を低減させるように冷凍機1を制御するものである。
【0063】
まず、冷凍機1の要求負荷に応じた圧縮機3の回転数指令値に対して変動幅Δx[Hz]、周期T[sec]の変動指令値を加算した変動回転数指令値を算出し、圧縮機3のインバータ11に出力する(SA1)。これにより、圧縮機3のインバータ11が変動回転数指令値に応じた周波数で制御され、圧縮機3の回転数が変動回転数指令値に応じた回転数で駆動される。
【0064】
次に、圧縮機3の出力信号と変動回転数指令値及び上記(1)式~(3)式を用いて、予兆判別値を算出する(SA2)。
【0065】
続いて、圧縮機3の圧力変数を演算し、演算した圧力変数に対応する予兆判別基準値を上述した「関係式」を用いて取得する(SA3)。
【0066】
次に、予兆判別値が予兆判別基準値以上であるか否かを判定する(SA4)。この結果、予兆判別値が予兆判別基準値未満である場合には(SA4:NO)、本処理を終了する。すなわち、予兆判別値が予兆判別基準値未満である場合には、サージングの予兆は検知されず、HGBP弁8の弁開度を変更する制御は行われない。これにより、HGBP8の開度は閉じた状態が維持される。
【0067】
一方、予兆判別値が予兆判別基準値以上である場合には(SA4:YES)、予兆判別値と予兆判別基準値との偏差に基づく弁開度指令を生成する(SA5)。これにより、HGBP弁8の弁開度が増加する方向に制御され、圧縮機3に対するバイパスガス流量が増加する。これにより、サージングを抑制することが可能となる。
【0068】
そして、上記処理が繰り返し行われることにより、サージングの予兆を速やかに検知することができ、早期の段階でサージングを抑制させる制御を行うことが可能となる。これにより、サージング状態から早期に脱することが可能となる。
【0069】
図6は、本実施形態に係るインバータ出力値、変動回転数指令値、予兆判別基準値、予兆判別値の時間的変化の一例を示した図である。
図6に示した各信号値において、一点鎖線の四角で囲んだ領域において、予兆判別値が予兆判別基準値以上となっている。したがって、このような領域において、予兆判別値と予兆判別基準値との偏差に応じたHGBP弁8の弁開度指令が生成され、HGBP弁が当該偏差に応じた開度で開かれる。これにより、サージングが抑制される。
【0070】
なお、上述した実施形態では、単段の圧縮機3としていたが、例えば、2段以上の圧縮機を備える多段圧縮機を適用してもよい。この場合は、複数の圧縮機を一つの圧縮機とみなして、上記サージング制御を行ってもよいし、圧縮機毎に、上記サージング制御を行うこととしてもよい。この場合、例えば、全ての圧縮機において、予兆判別値が予兆判別基準値以上であると判定された場合に、HGBP弁8の弁開度を増加させる制御を行うこととしてもよい。このように制御することにより、例えば、全ての圧縮機がサージング状態にあると判定されるまで、HGBP弁8の弁開度は開く方向に制御されない。これにより、HGBP弁8を開くタイミングを可能な限り遅らせることができる。これにより、冷凍機1の運転効率の低下を抑制することができる。
【0071】
また、多段圧縮機を適用する場合、いずれかの圧縮機がサージングに入りにくい特性とされている場合には、サージングに入りにくい方の圧縮機のみに基づいて上記サージング制御を行うこととしてもよい。例えば、低段側圧縮機と高段側圧縮機とを備える2段圧縮機において、高段圧縮機の方がサージングに入りにくい特性になっている場合、高段側圧縮機において、予兆判別値が予兆判別基準値以上と判定された場合に、HGBP弁8の弁開度を増加させる制御を行うこととしてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、第1期間毎(例えば、1秒毎)又は第1期間よりも短い周期で出力信号(例えば、インバータ出力値)をサンプリングし、サンプリングした出力信号を用いて予兆判別値を算出していたが、この例に限定されない。例えば、出力信号のサンプリング周期を第1期間よりも長くし、取得したサンプリングデータに基づいて第2期間における出力信号の波形を推定し、推定した波形に基づいて上述した予兆判定値を算出することとしてもよい。
このように、第2期間における出力信号の波形をサンプリングデータに基づいて推定することにより、上述した実施形態に比べて、サンプリング周期を長めに設定することが可能となるので(例えば、第1期間<サンプリング周期<第2期間)、データを取得する際の処理負担を軽減することが可能となる。
推定の方法としては、例えば、サンプリングデータのうち、最大値と最小値とを特定し、特定した最大値と最小値とを用いて所定のアルゴリズムに従って波形を推定すればよい。なお、波形の具体的な推定手法については、公知の手法を適宜採用すればよい。
【0073】
以上、本開示の制御装置、制御方法、及び制御プログラムについて実施形態を用いて説明したが、要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができる。また、上記実施形態で説明したサージング制御方法の処理手順も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【0074】
以上説明した各実施形態に記載の制御装置、制御方法、及び制御プログラムは、例えば以下のように把握される。
【0075】
本開示に係る制御装置(10)は、圧縮機(3)を含むシステム(冷凍機1)の制御装置であって、システムの要求負荷に応じた圧縮機の回転数指令値を所定の条件で変動させた変動回転数指令値を出力する回転数指令部(31)と、圧縮機の駆動状態を示す出力信号(例えば、インバータ出力)と変動回転数指令値とを用いて、サージングを予兆するための予兆判別値を算出する判別値算出部(32)と、運転中の圧縮機のヘッドに応じた予兆判別基準値を取得する基準値取得部(33)と、予兆判別値と予兆判別基準値との比較結果に基づいて、システムの制御指令値を生成する制御指令生成部(34)とを備える。
【0076】
本開示に係る制御装置によれば、圧縮機の回転数指令を所定の条件で変動させた変動回転数指令値を圧縮機に与え、その応答を用いてサージングの予兆を検知するための予兆判別値を算出する。また、運転中の圧縮機のヘッドに応じた予兆判別基準値を取得し、取得した予兆判別基準値と予兆判別値との比較結果に基づいてシステムの制御指令値を生成する。
このように、圧縮機の回転数指令値を所定の条件で変動させた変動回転数指令値を圧縮機に与えることで、サージングに近づいた状態とサージングに近づいていない状態とを区別することが可能となる。これにより、サージングの検知精度を高めることが可能となり、サージングを抑制させるサージング抑制制御(例えば、HGBP弁の弁開度を増加させる等)を適切なタイミングで実行することが可能となる。換言すると、圧縮機の運転点がサージングラインぎりぎりまで近づいたタイミングで、サージング抑制制御を行うことが可能となる。この結果、サージング抑制制御を行うことによるシステムの効率低下を可能な限り低減させることが可能となる。
【0077】
本開示に係る制御装置において、基準値取得部は、圧縮機のヘッドに関係するパラメータと予兆判別基準値とが関連付けられた情報を用いて、運転中のパラメータに対応する予兆判別基準値を取得することとしてもよい。
より具体的には、基準値取得部は、圧縮機の圧力変数と予兆判別基準値との関係式を用いて、運転中の圧縮機の圧力変数に対応する予兆判別基準値を取得することとしてもよい。
【0078】
本開示に係る制御装置によれば、圧縮機の運転状態に応じた予兆判別基準値を容易に取得することが可能となる。
【0079】
本開示に係る制御装置において、判別値算出部は、変動回転数指令値の第1期間毎の変化量と、出力信号の第1期間毎の変化量とを用いて、第1期間よりも長い第2期間における共分散を算出し、この共分散を予兆判別値としてもよい。
【0080】
本開示に係る制御装置によれば、共分散を用いて予兆判別値を算出するので、サージングの予兆の検知感度を高めることが可能となる。また、前記共分散を更に変動回転指令値の分散で割った(除算した)値を予兆判別値として用いることにより、サージングの予兆検知の感度を更に高めることができる。
【0081】
本開示に係る冷凍機の制御装置において、制御指令生成部は、予兆判別値が予兆判別基準値以上である場合に、圧縮機へバイパスさせるバイパスガス流量を増加させることとしてもよい。例えば、制御指令生成部は、予兆判別値と予兆判別基準値との偏差に基づいて、圧縮機へバイパスさせるバイパスガス流量を決定することとしてもよい。
【0082】
本開示に係る制御装置によれば、サージングの状況に応じたガス流量を圧縮機にバイパスさせることが可能となる。
【0083】
本開示に係る冷凍機(1)は、圧縮機(3)と、凝縮器(5)と、蒸発器(9)とが設けられた冷媒配管と、圧縮機から吐出された冷媒を圧縮機の吸気側にバイパスさせるバイパス管(ホットガスバイパス管16)と、バイパス管に設けられるとともに、冷媒流量を調整するためのバイパス弁(ホットガスバイパス弁8)と、上記制御装置(10)とを備える。
【0084】
本開示に係る冷凍機(1)において、制御指令生成部は、予兆判別値が予兆判別基準値以上である場合に、バイパス弁を開くための開度指令値を生成することとしてもよい。
より具体的には、制御指令生成部は、予兆判別値と予兆判別基準値との偏差に基づいて、バイパス弁の開度指令値を生成することとしてもよい。
【0085】
本開示に係る冷凍機(1)によれば、サージングの状況に応じた冷媒量を圧縮機にバイパスさせることが可能となる。
【0086】
本開示に係る制御方法は、圧縮機を含むシステムの制御方法であって、システム(冷凍機1)の要求負荷に応じた圧縮機の回転数指令値を所定の条件で変動させた変動回転数指令値を出力する工程と、圧縮機の駆動状態を示す出力信号と変動回転数指令値とを用いて、サージングの予兆を検知するための予兆判別値を算出する工程と、運転中の圧縮機のヘッドに応じた予兆判別基準値を取得する工程と、予兆判別値と予兆判別基準値との比較結果に基づいて、システムの制御指令値を生成する工程とをコンピュータが実行する。
【0087】
本開示の制御プログラムは、コンピュータを上記制御装置として機能させる。
【符号の説明】
【0088】
1 冷凍機
3 圧縮機
5 凝縮器
8 ホットガスバイパス弁(バイパス弁)
9 蒸発器
10 制御装置
11 インバータ
12 モータ
16 ホットガスバイパス管(バイパス管)
30 サージング制御部
31 回転数指令部
32 判別値算出部
33 基準値取得部
34 制御指令生成部