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特許7585127部品移載装置、部品移載方法、部品移載プログラムおよび記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】部品移載装置、部品移載方法、部品移載プログラムおよび記録媒体
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20241111BHJP
【FI】
H05K13/04 A
H05K13/04 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021068956
(22)【出願日】2021-04-15
(65)【公開番号】P2022163863
(43)【公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 恒太
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-037487(JP,A)
【文献】特開2008-147313(JP,A)
【文献】特開2007-103458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00 - 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品の保持および保持解除を実行可能な複数のヘッドと、前記ヘッド毎に設けられて前記ヘッドを第1方向に移動させる複数の第1駆動部とを有し、前記複数のヘッドを個別に移動させて前記部品を移載するヘッドユニットと、
前記複数のヘッドをそれぞれ識別するための複数の第1識別情報を選択可能に表示する表示部と、
前記表示部に表示された前記複数の第1識別情報のうちユーザにより選択された第1識別情報に対応する前記ヘッドをユーザ指定ヘッドと判断するユーザ指定判断部と、
前記ユーザ指定ヘッドによる前記部品の移載を制限するとともに、前記ユーザ指定ヘッド以外の前記ヘッドにより前記部品の移載を実行させる移載制御部と、を備え
前記複数のヘッドは、複数のヘッド群に分けられ、
前記ヘッドユニットは、前記ヘッド群毎に設けられて前記ヘッド群を構成する1または複数の前記ヘッドを一括して前記第1方向と異なる第2方向に移動させる複数の第2駆動部を有し、
前記表示部は、前記複数のヘッド群をそれぞれ識別するための複数の第2識別情報を選択可能に表示し、
前記ユーザ指定判断部は、前記表示部に表示された前記複数の第2識別情報のうちユーザにより選択された第2識別情報に対応する前記ヘッド群を構成する1または複数の前記ヘッドの全部を前記ユーザ指定ヘッドと判断する部品移載装置。
【請求項2】
請求項に記載の部品移載装置であって、
前記ユーザ指定ヘッド以外の前記ヘッドにより前記部品の移載を実行する手順を最適化する最適化処理部を備え、
前記移載制御部は、前記ユーザ指定ヘッドによる前記部品の移載が制限されるとき、前記最適化処理部により最適化された暫定手順で前記部品の移載を実行する部品移載装置。
【請求項3】
請求項に記載の部品移載装置であって、
前記ヘッドユニットは、前記ユーザ指定ヘッド以外の前記ヘッドにより部品供給位置で前記部品を保持し、前記部品を保持したまま部品載置位置の上方位置まで移動した後で、前記部品を保持している前記ヘッドから前記部品載置位置に前記部品を載置し、
前記最適化処理部は、前記ヘッドユニットの移動距離又は移動時間に基づいて、前記部品をピックアップする前記ヘッドを最適化ヘッドとして選定する部品移載装置。
【請求項4】
請求項に記載の部品移載装置であって、
前記最適化処理部は、前記ヘッドユニットの移動距離が最も短くなるように、前記最適化ヘッドを選定する部品移載装置。
【請求項5】
請求項に記載の部品移載装置であって、
前記最適化処理部は、前記ヘッドユニットの移動時間が最も短くなるように、前記最適化ヘッドを選定する部品移載装置。
【請求項6】
請求項2ないし5のいずれか一項に記載の部品移載装置であって、
前記表示部は、前記ユーザ指定ヘッドによる前記部品の移載が制限されるとき、前記最適化処理部により最適化された暫定手順で前記部品の移載を実行されることを示す暫定復旧モードを表示する部品移載装置。
【請求項7】
請求項に記載の部品移載装置であって、
前記ユーザ指定ヘッドによる前記部品の移載制限が解除されたことを判断する制限解除判断部を備え、
前記表示部は、前記制限解除判断部により移載制限の解除が判断されたとき、前記暫定復旧モードの表示を消去する部品移載装置。
【請求項8】
部品の保持および保持解除を実行可能な複数のヘッドを第1方向に移動させて前記部品を移載する部品移載方法であって、
前記複数のヘッドは複数のヘッド群に分けられるとともに、前記ヘッド群毎に設けられて前記ヘッド群を構成する1または複数の前記ヘッドは一括して前記第1方向と異なる第2方向に移動可能となっており、
前記複数のヘッドをそれぞれ識別するための複数の第1識別情報および前記複数のヘッド群をそれぞれ識別するための複数の第2識別情報を選択可能に表示する工程と、
前記複数の第1識別情報のうちユーザにより一の第1識別情報が選択されたとき、前記選択された第1識別情報に対応する前記ヘッドをユーザ指定ヘッドと判断する工程と、
前記複数の第2識別情報のうちユーザにより一の第2識別情報が選択されたとき、前記選択された第2識別情報に対応する前記ヘッド群を構成する1または複数の前記ヘッドの全部を前記ユーザ指定ヘッドと判断する工程と、
前記ユーザ指定ヘッドによる前記部品の移載を制限するとともに、前記ユーザ指定ヘッド以外の前記ヘッドにより前記部品の移載を実行する工程と、
を備える部品移載方法。
【請求項9】
部品の保持および保持解除を実行可能な複数のヘッドを第1方向に移動させて前記部品を移載する部品移載装置において、
前記複数のヘッドは複数のヘッド群に分けられるとともに、前記ヘッド群毎に設けられて前記ヘッド群を構成する1または複数の前記ヘッドは一括して前記第1方向と異なる第2方向に移動可能となっており、
前記複数のヘッドをそれぞれ識別するための複数の第1識別情報および前記複数のヘッド群をそれぞれ識別するための複数の第2識別情報を選択可能に表示する工程と、
前記複数の第1識別情報のうちユーザにより一の第1識別情報が選択されたとき、前記選択された第1識別情報に対応する前記ヘッドをユーザ指定ヘッドと判断する工程と、
前記複数の第2識別情報のうちユーザにより一の第2識別情報が選択されたとき、前記選択された第2識別情報に対応する前記ヘッド群を構成する1または複数の前記ヘッドの全部を前記ユーザ指定ヘッドと判断する工程と、
前記ユーザ指定ヘッドによる前記部品の移載を制限するとともに、前記ユーザ指定ヘッド以外の前記ヘッドにより前記部品の移載を実行する工程と、
を、コンピュータに実行させる部品移載プログラム。
【請求項10】
請求項に記載の部品移載プログラムをコンピュータにより読み出し可能に記憶する記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、部品の保持および保持解除を実行可能なヘッドを用いて部品を移載する部品移載技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記部品移載技術を装備した装置として、例えば部品実装装置が知られている。この部品実装装置では、ヘッドユニットに装備されるヘッドが部品供給位置に供給された部品を保持した後で、ヘッドユニットが基板の上方位置に移動させられる。そして、当該部品を保持しているヘッドが下降した後で部品保持を解除することで、当該部品がヘッドから基板に移載される。こうして、部品が基板に実装される。1枚の基板に移載すべき部品点数が増大するのに伴って、タクトタイムが増加する。そこで、部品移載技術を具備した装置には、タクトタイムの短縮を図るために、1つのヘッドユニットに対して複数のヘッドが設けられている。これにより、ヘッドユニットが部品供給位置から基板の上方位置に1回移動する毎に、複数の部品を基板に移載することができる。
【0003】
しかしながら、ヘッドユニットが複数のヘッドを装備するが故に、例えば1つのヘッドに異常が発生すると、その他のヘッドを含めてヘッドユニット全体について部品移載動作を停止する必要があった。このため、異常発生したヘッドが修理される、または交換されるまで、部品移載動作を中断する必要が生じていた。
【0004】
そこで、複数のヘッドユニットを予め装備しておき、複数のヘッドのうち一のヘッドにおいて異常が発生した場合、そのヘッド(以下「異常発生ヘッド」という)を含むヘッドユニットを全体制御範囲から除外する一方で、それ以外のヘッドユニットにより部品移載動作を実行することが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3758478号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の従来技術では、ヘッドユニット単位で部品移載の実行および実行停止が制御される。したがって、異常発生ヘッドを含むヘッドユニットでは、異常発生ヘッド以外のヘッドにより部品移載が可能であるにもかかわらず、ヘッドユニット全体として部品移載動作を停止せざるを得ない。このため、複数のヘッドユニットを装備するにもかかわらず、一部のヘッドユニットを使用することができず、生産効率の向上に改善の余地が残っている。
【0007】
また、特許文献1に記載の発明は、複数のヘッドユニットを装備する装置にしか適用できず、1個のヘッドユニットにより部品移載を行う装置には、適用することができない。つまり、特許文献1に記載の技術は、適用範囲は狭く、汎用性に欠けるという問題がある。
【0008】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、部品の保持および保持解除を実行可能なヘッドを複数装備するヘッドユニットの個数に制限されることなく、優れた効率で部品移載を実行することができる部品移載技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、部品移載装置であって、部品の保持および保持解除を実行可能な複数のヘッドと、ヘッド毎に設けられてヘッドを第1方向に移動させる複数の第1駆動部とを有し、複数のヘッドを個別に移動させて部品を移載するヘッドユニットと、複数のヘッドをそれぞれ識別するための複数の第1識別情報を選択可能に表示する表示部と、表示部に表示された複数の第1識別情報のうちユーザにより選択された第1識別情報に対応するヘッドをユーザ指定ヘッドと判断するユーザ指定判断部と、ユーザ指定ヘッドによる部品の移載を制限するとともに、ユーザ指定ヘッド以外のヘッドにより部品の移載を実行させる移載制御部と、を備え 複数のヘッドは、複数のヘッド群に分けられ、ヘッドユニットは、ヘッド群毎に設けられてヘッド群を構成する1または複数のヘッドを一括して第1方向と異なる第2方向に移動させる複数の第2駆動部を有し、表示部は、複数のヘッド群をそれぞれ識別するための複数の第2識別情報を選択可能に表示し、ユーザ指定判断部は、表示部に表示された複数の第2識別情報のうちユーザにより選択された第2識別情報に対応するヘッド群を構成する1または複数のヘッドの全部をユーザ指定ヘッドと判断するように構成している。
【0010】
また、本発明の第2の態様は、部品の保持および保持解除を実行可能な複数のヘッドを第1方向に移動させて部品を移載する部品移載方法であって、複数のヘッドは複数のヘッド群に分けられるとともに、ヘッド群毎に設けられてヘッド群を構成する1または複数のヘッドは一括して第1方向と異なる第2方向に移動可能となっており、複数のヘッドをそれぞれ識別するための複数の第1識別情報および複数のヘッド群をそれぞれ識別するための複数の第2識別情報を選択可能に表示する工程と、複数の第1識別情報のうちユーザにより一の第1識別情報が選択されたとき、選択された第1識別情報に対応するヘッドをユーザ指定ヘッドと判断する工程と、複数の第2識別情報のうちユーザにより一の第2識別情報が選択されたとき、選択された第2識別情報に対応するヘッド群を構成する1または複数のヘッドの全部をユーザ指定ヘッドと判断する工程と、ユーザ指定ヘッドによる部品の移載を制限するとともに、ユーザ指定ヘッド以外のヘッドにより部品の移載を実行する工程と、を備えている。
【0011】
また、本発明の第3の態様は、部品移載プログラムであって、部品の保持および保持解除を実行可能な複数のヘッドを第1方向に移動させて部品を移載する部品移載装置において、複数のヘッドは複数のヘッド群に分けられるとともに、ヘッド群毎に設けられてヘッド群を構成する1または複数のヘッドは一括して第1方向と異なる第2方向に移動可能となっており、複数のヘッドをそれぞれ識別するための複数の第1識別情報および複数のヘッド群をそれぞれ識別するための複数の第2識別情報を選択可能に表示する工程と、複数の第1識別情報のうちユーザにより一の第1識別情報が選択されたとき、選択された第1識別情報に対応するヘッドをユーザ指定ヘッドと判断する工程と、複数の第2識別情報のうちユーザにより一の第2識別情報が選択されたとき、選択された第2識別情報に対応するヘッド群を構成する1または複数のヘッドの全部をユーザ指定ヘッドと判断する工程と、ユーザ指定ヘッドによる部品の移載を制限するとともに、ユーザ指定ヘッド以外のヘッドにより部品の移載を実行する工程と、を、コンピュータに実行させる。
【0012】
また、本発明の第4の態様は、記録媒体であって、上記部品移載プログラムをコンピュータにより読み出し可能に記録する。
【0013】
このように構成された発明では、部品の移載を実行可能なヘッドが複数個設けられている。例えば、これら複数のヘッドの一部に異常が発生することがある。このような時に、ユーザが所定ヘッド(ここでは、「異常発生ヘッド」)を指定できるように、ヘッドをそれぞれ識別するための複数の第1識別情報が選択可能に表示部に表示される。このため、ユーザは、簡単に、しかも的確に異常発生ヘッドをユーザ指定ヘッドとして指定することができる。なお、本発明の「異常発生ヘッド」には、上記したように異常が現実に発生しているヘッドに限定されるものではなく、異常の前兆が発現しているヘッドおよび長期間にわたってメンテナンスされていないヘッド等が含まれる。これは、以下のような実情を考慮したものである。例えば一部のヘッドについてユーザが異常の前兆を察知することがある。また、一定間隔でメンテナンスを行うことが推奨されているヘッドでは、前回のメンテナンスから長期間(例えば数ヶ月)経過した場合、ユーザが異常発生の蓋然性を予測することがある。これらのケースでは、ユーザは、当該ヘッドを異常発生ヘッドと指定し、その他のヘッドにより部品を移載することができる。
【0014】
また、上記ユーザ指定ヘッドについては、部品の移載が制限される。これらの機能により、異常発生ヘッドが存在する場合に、その異常発生ヘッドの移載を制限することによって部品の移載ミスを未然に防止することができる。その一方で、ユーザ指定ヘッド以外のヘッドにより部品の移載が実行される。したがって、例えばヘッドユニットを構成する複数のヘッドの一部で異常が発生したとしても、残りのヘッドにより部品の移載を実行することができ、部品移載装置の稼働率を高めることができる。
【0015】
ここで、部品の移載を多様なバリエーションかつ高精度に行うために、各ヘッドを第1方向のみならず第2方向にも移動させることがある。しかも、第1方向に移動させるための第1駆動部がヘッド毎に設けられているが、第2方向に移動させるための第2駆動部についてはヘッド群毎に設けられることがある。つまり、複数のヘッドは複数のヘッド群に分けられ、ヘッドユニットは、ヘッド群毎に設けられてヘッド群を構成する1または複数のヘッドを一括して第1方向と異なる第2方向に移動させる複数の第2駆動部を有することがある。この場合、第2駆動部の一部が故障すると、故障した第2駆動部に対応するヘッド群を構成する一または複数のヘッドが異常発生ヘッドに相当する。したがって、複数のヘッド群をそれぞれ識別するための複数の第2識別情報を選択可能に表示部に表示するのが好適である。これにより、ユーザが故障した第2駆動部を選択することで、選択された第2駆動部により第2方向に駆動される全ヘッドがユーザ指定ヘッド(異常発生ヘッド)として指定される。その結果、ユーザによるユーザ指定ヘッドが簡単で、かつ的確に行うことが可能となる。
【0016】
また、一部のヘッドによる部品の移載を制限する場合、ユーザ指定ヘッド以外のヘッドにより部品の移載を実行する手順を最適化するのが好適である。つまり、ユーザ指定ヘッドによる部品の移載が制限されるとき、移載制御部が、最適化処理部により最適化された暫定手順で部品の移載を実行することで、ユーザ指定ヘッドの使用を制限しつつも、部品の移載を効率的に行うことができる。
【0017】
また、ヘッドユニットが、ユーザ指定ヘッド以外のヘッドにより部品供給位置で部品を保持し、部品を保持したまま部品載置位置の上方位置まで移動した後で、部品を保持しているヘッドから部品載置位置に部品を載置する場合、上記最適化は次のような基準で行うのが望ましい。すなわち、最適化処理部が、ヘッドユニットの移動距離又は移動時間に基づいて、部品をピックアップするヘッドを最適化ヘッドとして選定するように構成してもよい。さらに、具体的には、最適化処理部は、ヘッドユニットの移動距離が最も短くなるように、最適化ヘッドを選定してもよいし、ヘッドユニットの移動時間が最も短くなるように、最適化ヘッドを選定してもよい。
【0018】
また、ユーザ指定ヘッドによる部品の移載が制限されるとき、表示部が最適化処理部により最適化された暫定手順で部品の移載を実行されることを示す暫定復旧モードを表示するように構成してもよい。このような表示によって、ユーザは部品移載装置の現状を的確に把握することができる。
【0019】
さらに、ユーザ指定ヘッドによる部品の移載制限が解除されたことを判断する制限解除判断部を設け、この制限解除判断部により移載制限の解除が判断されたとき、表示部が暫定復旧モードの表示を消去するように構成してもよい。これによって、ユーザは部品移載装置の復旧を的確に把握することができる。
【発明の効果】
【0020】
上記のように構成された発明では、ヘッドユニットの個数に制限されることなく、一部のヘッドにおいて異常が発生したとしても、優れた効率で部品移載を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る部品移載装置の一実施形態に相当する部品実装装置の構成を示す平面図である。
図2図1に示す部品実装装置の部分正面図である。
図3図1に示す部品実装装置に装備されるヘッドユニットの構成を模式的に示す図である。
図4図1に示す部品実装装置の電気的構成を示すブロック図である。
図5図1に示す部品実装装置で実行される故障対応処理を示すフローチャートである。
図6】故障対応処理および故障復旧処理で実行される最適化処理を示すフローチャートである。
図7A】故障対応処理において表示部に表示される表示内容の第1例を示す模式図である。
図7B】故障対応処理において表示部に表示される表示内容の第2例を示す模式図である。
図7C】故障対応処理において表示部に表示される表示内容の第3例を示す模式図である。
図7D】故障対応処理において表示部に表示される表示内容の第4例を示す模式図である。
図8】通常運転モードと暫定復旧モードとの動作例を模式的に示す図である。
図9図1に示す部品実装装置で実行される故障復旧処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明に係る部品移載装置の一実施形態に相当する部品実装装置の構成を示す平面図である。図2は、図1に示す部品実装装置の部分正面図である。図3は、図1に示す部品実装装置に装備されるヘッドユニットの構成を模式的に示す図である。さらに、図4は、図1に示す部品実装装置の電気的構成を示すブロック図である。この部品実装装置1は、フィーダ型供給機構40に装着されたフィーダ50により供給される電子部品(後で説明する図8中の符号PT)を基板Bに移載する装置である。部品実装装置1では、上記フィーダ型供給機構40以外に、基台10と、基板Bを搬送するための搬送コンベア20と、基板B上に電子部品を実装するための部品実装部30とが装備されている。
【0023】
基台10は、平面視で長方形状を有している。そして、この基台10の上面に対し、搬送コンベア20が、平行に設けられている。図1に示すように、搬送コンベア20は、基台10の長手方向に延びている。また、搬送コンベア20の下方には、バックアッププレート(図示省略)が設けられている。このバックアッププレートは、基板B上に電子部品を実装する際に、当該基板Bに向かって移動し、基板Bをバックアップする機能を有している。なお、以下の説明では、基台10の長辺方向(図1の左右方向)および搬送コンベア20による基板Bの搬送方向をX軸方向とし、基台10の短辺方向(図1の上下方向)をY軸方向とし、上下方向(図2の上下方向)をZ軸方向とする。また、Z軸方向に延びる回転軸まわりの回転方向をR軸方向とする。
【0024】
搬送コンベア20は、Y軸方向における基台10の略中央位置に配置される。搬送コンベア20は、基板Bを搬送方向(X軸方向)に沿って搬送する。搬送コンベア20は、搬送方向Xに循環駆動する一対のコンベアベルト22を備えている。基板Bは、両コンベアベルト22に架設する形で載置され、その状態でX軸方向に搬送される。基板Bは、搬送方向Xの一方側(図1で示す右側)からコンベアベルト22に沿って基台10上の作業位置(図1の二点鎖線で囲まれる位置)に搬入される。こうして搬入される基板Bは、作業位置で停止する。そして、当該基板Bに対して電子部品の実装作業がされた後で、当該基板Bは、コンベアベルト22に沿って移動し、他方側(図1で示す左側)から搬出される。
【0025】
部品実装部30は、一対の支持フレーム31と、ヘッドユニット32と、ヘッドユニット32を駆動するヘッドユニット駆動機構とを有している。各支持フレーム31は、それぞれX軸方向における基台10の両側に位置しており、Y軸方向に延設されている。支持フレーム31には、ヘッドユニット駆動機構を構成するX軸サーボ機構およびY軸サーボ機構が設けられている。そして、装置全体を制御する制御部80からの動作指令に応じてX軸サーボ機構およびY軸サーボ機構が作動することで、ヘッドユニット32が一定の可動領域内でX軸方向およびY軸方向に移動する。
【0026】
部品実装装置1には、Y軸サーボ機構が作動することによって、ヘッドユニット32をY軸方向に移動させるY軸移動機構が設けられている。Y軸移動機構は、Y軸ガイドレール33Y、Y軸ボールねじ34YおよびY軸モータ35Yを有している。このY軸移動機構では、各支持フレーム31に対し、Y軸ガイドレール33Yが延設されている。また、Y軸ボールねじ34Yが、各Y軸ガイドレール33Yと平行に延設されている。このY軸ボールねじ34Yの一方端には、Y軸モータ35Yが取り付けられている。そして、制御部80からの駆動指令に応じてY軸モータ35Yが作動することで、Y軸ボールねじ34Yに螺合しているボールナット(図示省略)がY軸方向に移動する。これらのボールナットにヘッド支持体36が固定されている。ヘッド支持体36はX軸方向に延設されている。そして、ヘッド支持体36は、2つのY軸ガイドレール33Yを橋渡しするようにボールナット上に配置され、Y軸ガイドレール33Yに沿って移動自在となっている。このため、制御部80によりY軸モータ35Yが通電制御されると、上記したボールナットの進退動作によって、ボールナットに固定されたヘッド支持体36およびヘッドユニット32がY軸ガイドレール33Yに沿ってY軸方向に移動する。
【0027】
部品実装装置1には、X軸サーボ機構が作動することによって、ヘッドユニット32をX軸方向に移動させるX軸移動機構が設けられている。X軸移動機構は、X軸ガイドレール33X(図2参照)、X軸ボールねじ34XおよびX軸モータ35Xを有している。このX軸移動機構では、ヘッド支持体36に対し、X軸ガイドレール33XがX軸方向に延設されている。また、X軸ボールねじ34Xが、X軸ガイドレール33Xと平行に延設されている。このX軸ボールねじ34Xの一方端には、X軸モータ35Xが取り付けられている。そして、制御部80からの駆動指令に応じて作動することで、X軸ボールねじ34Xに螺合しているボールナット(図示省略)がX軸方向に移動する。このボールナットには、ヘッドユニット32が固定されている。このため、上記ボールナットの移動によってヘッドユニット32がX軸ガイドレール33Xに沿ってX軸方向に移動する。
【0028】
ヘッドユニット32は、後述するフィーダ型供給機構40によって部品供給位置50sに供給される電子部品をピックアップして基板B上に移載する。これにより、当該部品が基板Bの部品載置位置(後で説明する図8中の符号Bp)上に実装される。本実施形態では、ヘッドユニット32は1個であり、次のように構成されている。ヘッドユニット32には、図2および図3に示すように、電子部品の移載動作を行うヘッド37がX軸方向に列状をなして複数個(本実施形態では10個)搭載されている。各ヘッド37は、図2に示すように、ヘッドユニット32の本体部32Aの下面から下向きに突出している。各ヘッド37の先端には、電子部品を負圧によって吸着する吸着ノズル38が設けられている。このため、各ヘッド37は、吸着方式で部品の保持および保持解除を実行可能となっている。
【0029】
各ヘッド37は、ヘッドユニット32の本体部32Aに対して上下方向Zに昇降自在、かつ上下方向Zに延びるR軸まわりの回転方向Rに回転自在に支持されている。そして、各ヘッド37に対してZ軸モータ35Zが接続されている。このため、制御部80のモータ制御部82からの指令に応じて、10本のヘッド37が、個別にヘッドユニット32の本体部32Aに対して上下方向Zに昇降駆動される。なお、これら10本のヘッド37を明確に区別するために、図3に示すように、X軸方向(同図の右手方向)の最上流に位置するヘッド37をヘッド37aと称するとともに、X軸方向の下流側に向けて配列されている9本のヘッド37をそれぞれヘッド37b、37c、…、37jと称する。また、ヘッド37aに接続されているZ軸モータ35ZをZ軸モータZ1と称するとともに、ヘッド37b~37jに接続されているZ軸モータ35ZをそれぞれZ軸モータZ2~Z10と称する。このように、上下方向Zが本発明の「第1方向」に相当し、Z軸モータZ1~Z10がそれぞれ本発明の「第1駆動部」の一例に相当している。
【0030】
10本のヘッド37a~37jは、2つのヘッド群37A、37Bに分けられている。より詳しくは、ヘッド37a~37eによりヘッド群37Aが構成される一方、ヘッド37f~37jによりヘッド群37Bが構成されている。本実施形態では、ヘッド群37Aに対応してR軸モータ35R(図4参照)が設けられている。このため、制御部80のモータ制御部82からの指令に応じて上記R軸モータ35Rが作動することで、ヘッド37a~37eが一括して回転方向Rに回転駆動される。この点については、ヘッド群37Bについても同様である。つまり、ヘッド群37Bに対応して設けられたR軸モータ35Rが、制御部80のモータ制御部82からの指令に応じて作動することで、ヘッド37f~37jが一括して回転方向Rに回転駆動される。なお、これら2つのR軸モータ35Rを明確に区別するために、図3に示すように、ヘッド群37Aに接続されるR軸モータ35RをR軸モータR1と称するとともに、ヘッド群37Bに接続されるR軸モータ35RをR軸モータR2と称する。このように、回転方向Rが本発明の「第2方向」に相当し、R軸モータR1、R2がそれぞれ本発明の「第2駆動部」の一例に相当している。
【0031】
このように構成されたヘッド37a~37jを用いることで、部品の種類や形状、フィーダ50の配列状況などに適合した多様なバリエーションで、吸着ノズル38を介した部品の保持および当該部品の保持解除が可能となっている。
【0032】
ヘッドユニット32には、基板認識カメラC1(図2)が設けられている。基板認識カメラC1は、撮像面を下に向けた状態でヘッドユニット32の本体部32Aに固定されており、ヘッドユニット32とともに一体的に移動する。基板認識カメラC1は、ヘッドユニット32がX軸方向およびY軸方向に移動されることで、作業位置に停止した基板B上の任意の位置の画像を撮像する。
【0033】
また、基台10上におけるヘッドユニット32による作業位置の近傍には、部品認識カメラC2(図1)が固定されている。部品認識カメラC2は、ヘッド37によって部品供給位置50sから取り出された電子部品の画像を撮像することで、各電子部品の吸着ノズル38による吸着姿勢等を認識する。
【0034】
上記のように構成された部品実装装置1の各部を制御するために、制御部80が設けられている。制御部80はCPU(Central Processing Unit)を装備するコンピュータで構成される演算処理部81を備えている。演算処理部81には、モータ制御部82と、記憶部83と、画像処理部84と、外部入出力部85と、フィーダ通信部86と、表示部88と、入力部89と、がそれぞれ接続されている。
【0035】
モータ制御部82は、後述する実装プログラム83Aに従ってヘッドユニット32のX軸モータ35XおよびY軸モータ35Yを駆動させるとともに、各ヘッド37のZ軸モータ35Z(Z1~Z10)およびR軸モータ35R(R1、R2)を駆動させる。また、モータ制御部82は、実装プログラム83Aに従って搬送コンベア20を駆動させる。
【0036】
記憶部83は、フラッシュメモリやハードディスク装置等から構成され、実装プログラム83Aなどを記憶する。記憶部83に記憶される実装プログラム83Aには、電子部品を基板Bに実装することで所定枚数の部品実装基板Bを生産する生産計画、当該生産計画に従って基板Bに実装すべき電子部品の種類や個数を示す情報、および部品の移載手順等が含まれている。
【0037】
画像処理部84には、基板認識カメラC1および部品認識カメラC2から出力される撮像信号がそれぞれ取り込まれる。画像処理部84では、各カメラC1、C2から取り込まれた撮像信号に基づいて、部品画像の解析、基板画像の解析等が行われる。
【0038】
外部入出力部85は、いわゆるインターフェースであって、部品実装装置1の本体に設けられる各種スイッチ・センサ類85Aから出力される信号が取り込まれるように構成されている。それらの信号の一つが、後で説明するスタートボタン(図示省略)の押下に伴って制御部80に与えられる自動運転開始信号である。また、外部入出力部85は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体RMから読み取りを行う読取装置85Bと接続されている。この記録媒体RMは、後で説明する故障対応処理および故障復旧処理を含め装置全体を制御するための部品移載プログラムを記憶している。この部品移載プログラムは、読取装置85Bを介して読み出され、記憶部83に記憶される。このような記録媒体RMとしては、フレキシブルディスクやCD-ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置等の、コンピュータが読み取り可能な種々の媒体を利用できる。また、このようなコンピュータプログラムを、インターネットを介してコンピュータにダウンロードすることも可能である。
【0039】
表示部88は、表示画面を有する液晶表示装置等から構成され、部品実装装置1の状態等を表示画面上に表示する。入力部89は、キーボード等から構成され、ユーザによる手動操作によって外部からの入力を受け付けるようになっている。なお、本実施形態では、表示部88はタッチパネルディスプレイで構成されており、ユーザが表示部88をタッチすることで各種情報を入力することも可能となっている。
【0040】
上記のように構成された部品実装装置1では、演算処理部81が装置各部の動作状況を監視している。そして、例えばZ軸モータ35Zが故障したり、ヘッド37を構成するシャフト(図示省略)が破損するなどの異常が発生すると、演算処理部81は部品実装動作を一時的に停止させる。これと同時に、演算処理部81は、以下に説明するように、部品移載プログラムにしたがって各種制御を行う。すなわち、演算処理部81は、異常が発生したヘッド37やR軸モータ35Rをユーザに指定してもらい、部品実装に使用できない、いわゆる異常発生ヘッド37をユーザ指定ヘッドと判断する。そして、演算処理部81は、ユーザ指定ヘッドによる部品実装(部品の移載)を制限するとともに、その制限下で部品実装に適した手順の最適化を行った上で、ユーザ指定ヘッド以外のヘッド37により部品実装を最適化された暫定手順で実行させる。また、演算処理部81は、異常箇所の交換や修理などによりユーザ指定ヘッドによる部品の移載が可能となり、移載制限を解除して実装手順を元に戻す。このように、本実施形態では、演算処理部81が、本発明の「ユーザ指定判断部」、「移載制御部」、「最適化処理部」および「制限解除判断部」として機能し、装置各部を制御し、以下の説明する故障対応処理および故障復旧処理を実行する。
【0041】
図5は、図1に示す部品実装装置で実行される故障対応処理を示すフローチャートである。図6は、故障対応処理および故障復旧処理で実行される最適化処理を示すフローチャートである。図7Aないし図7Dは、故障対応処理において表示部に表示される表示内容の一例を示す模式図である。部品実装装置1では、電源投入直後や部品実装動作を行っている間に、ヘッドユニット32において異常が発生すると、演算処理部81が部品実装動作を一時的に停止させる。また、例えばZ軸モータ35Zが故障したり、ヘッド37を構成するシャフト(図示省略)が破損するなどの異常が発生すると、演算処理部81は、図7Aに示すようなメッセージを表示する。これにより、部品実装装置1において故障が発生したことがユーザ(オペレータ)に報知される(ステップS11)。そして、ユーザが報知内容を確認し、図7Aに表示された「閉じる」のアイコン881を押す。このユーザによる報知確認を検出する(ステップS12の「YES」)と、演算処理部81は、表示部88への表示内容を故障箇所の選択用画像に切り替える(ステップS13)。図7Bでは、故障箇所の選択用画像の一例が記載されている。
【0042】
この故障箇所の選択用画像は、ヘッド単体画像H1~H10と、R軸モータ画像M1、M2とを含んでいる。ヘッド単体画像H1~H10は、それぞれヘッドユニット32に装備されるヘッド37a~37jとZ軸モータZ1~Z10とを相互に関連付けながら模式的に図案化したものである。また、R軸モータ画像M1は、R軸モータR1をヘッド単体画像H1~H5と関連付けながら模式的に示したものである。R軸モータ画像M2は、R軸モータR2をヘッド単体画像H6~H10と関連付けながら模式的に示したものである。このように、ヘッドユニット32の内部構造が模式的かつ視覚的に表示部88に映し出される。したがって、ユーザは、表示部88での表示内容を見ながら、故障箇所に相当する画像を容易に、しかも的確に選択可能となっている。より具体的には、異常の発生箇所がヘッド37a~37jまたはZ軸モータZ1~Z10のいずれかであると判断した場合、ユーザはヘッド単体画像H1~H10のうち異常発生箇所に対応する画像を選択可能となっている。一方、異常の発生箇所がR軸モータR1、R2のいずれかであると判断した場合、ユーザはR軸モータ画像M1、M2のうち異常発生箇所に対応する画像を選択可能となっている。このように、本実施形態では、ヘッド単体画像H1~H10が本発明の「第1識別情報」の一例に相当し、R軸モータ画像M1、M2が本発明の「第2識別情報」の一例に相当している。
【0043】
ユーザによる表示部88へのタッチあるいは入力部89によりヘッド単体画像H1~H10およびR軸モータ画像M1、M2のうちの一部がクリックされると、演算処理部81は、クリックされた画像に対応するヘッド37、つまり現状では部品実装に使用できない異常発生ヘッド37をユーザ指定ヘッドと判断する(ステップS14)。そして、演算処理部81は、ユーザ選択に応じてユーザ指定ヘッド37をグレーアウトする(ステップS15)。例えば図7Cに示すように、ヘッド単体画像H1~H10のうちヘッド単体画像H10が選択されると、演算処理部81は、その選択されたヘッド単体画像H10に対応するヘッド37j(図3参照)がユーザ指定ヘッドであると判断する。そして、ヘッド37jに対応するヘッド単体画像H10が、表示部88上でグレーアウトされる(図7Cでは、ドットを付している)。
【0044】
一方、例えば図7Dに示すように、R軸モータ画像M1がユーザにより選択された場合、演算処理部81は、R軸モータR1に接続される5本のヘッド37a~37eのすべてがユーザ指定ヘッドであると判断し、R軸モータ画像M1とヘッド単体画像H1~H5を一体的にグレーアウトする。このように、本実施形態では、ヘッド単体画像H1~H5の選択は、ユーザによるユーザ指定ヘッドの直接的な選択となっていないが、間接的にユーザ指定ヘッドが選択され、後述するように使用が制限される。
【0045】
また、ユーザ指定ヘッドの選定と連動して、図7Cおよび図7Dに示すように、演算処理部81は表示部88に「暫定復旧モード」を追加表示する(ステップS16)。これにより、10本のヘッド37a~37jの一部が使用制限されていることをユーザに報知することができる。しかも、各ヘッド37の使用可能/使用制限の区別は表示部88の表示内容から明確になっている。このように、本実施形態では、暫定復旧モードの内容が視覚化されており、ユーザフレンドリーなものとなっている。
【0046】
このようなユーザ指定ヘッドの選定処理を、演算処理部81はユーザによるスタートボタンの押下を検知するまで繰り返して実行する。すなわち、ステップS17でスタートボタンの押下が検知されるまで、ステップS14に戻って選定処理が繰り返される。一方、演算処理部81は、スタートボタンの押下を検知する(ステップS17で「YES」)と、ユーザ指定ヘッド37による部品の実装を一括して一時的に禁止する(ステップS18)。ただし、当該ユーザ指定ヘッド37以外のヘッド37による部品の実装は引き続き実行可能となっている。例えば図7Cに示すように、ヘッド37jのみがユーザ指定ヘッドに選定された場合、演算処理部81は、Z軸モータZ10の駆動を制限し、ユーザ指定ヘッド37j(図3参照)による部品の実装を一時的に禁止する。しかしながら、当該ユーザ指定ヘッド37j以外のヘッド37a~37iによる部品の実装は、引き続き実行可能となっている。そこで、本実施形態では、駆動部のスキップを上記選定に対応したものに限定している。
【0047】
故障対応処理の最後に、直前まで実行していた通常運転データが実装プログラム83Aとして記憶部83に保存される(ステップS19)。なお、既に保存済である場合には、ステップS19をスキップしてもよい。
【0048】
こうして故障対応処理が終了すると、演算処理部81は直ちに自動運転を開始する。まずステップS21において、演算処理部81は、駆軸動(Z軸モータZ1~Z10、R軸モータR1、R2)の一部を無効化しているか否か、つまりスキップする駆動軸の存在を確認する。ここで、ユーザ指定ヘッドが存在しておらず、Z軸モータZ1~Z10およびR軸モータR1、R2の駆動がいずれも制限されていない場合(ステップS21で「NO」)、演算処理部81は上記した通常運転モードで部品実装動作を実行する。一方、例えば図7Cに示すようにZ軸モータZ10の駆動が制限されていたり、図7Dに示すようにR軸モータR1の駆動が制限されている場合、演算処理部81はステップS21で「YES」と判定し、以下の処理(ステップS22~S25)を実行する。
【0049】
スキップする駆動軸が存在している場合、ユーザ指定ヘッド37を用いた部品実装は実行不可である。ただし、ユーザ指定ヘッド37以外のヘッド37を用いて部品実装を行うことができる場合がある。ここで、ユーザ指定ヘッド37を除くヘッド37により部品実装を行うための手順を規定したテンポラリデータが記憶部83に既に保存されている可能性がある。このテンポラリデータが存在しているときには、当該テンポラリデータを用いた暫定復旧モードで部品実装を行うことができる。一方、そのようなテンポラリデータが記憶部83に記憶されていない場合には、ユーザ指定ヘッド37以外のヘッド37により部品実装を行うのに適した実装プログラム(テンポラリデータ)を取得する必要がある。そこで、本実施形態では、演算処理部81は、暫定復旧モードを実行するのに必要な実装プログラムを作成する、いわゆる最適化の必要性を判定する(ステップS22)。ここで、テンポラリデータが存在しており、最適化は不要であると、演算処理部81が判定すると、当該テンポラリデータを記憶部83から読み出し、テンポラリデータにしたがって暫定復旧モードを実行する。
【0050】
一方、最適化が必要であると、演算処理部81が判定すると、図6に示す最適化処理が実行される(ステップS23)。この最適化処理では、演算処理部81は、割り付けヘッド37を検索する(ステップS231)。そして、演算処理部81は、
・当該割り付けヘッド37を使用することができる(ステップS232)、
・部品供給位置50sおよび部品載置位置(後で説明する図8中の符号Bp)の両方に届く(ステップS233)、
・サイクルタイムが最短化される(ステップS234)、
という3つの条件を判定し、1つでも満足されない場合には、検索対象となるヘッドが存在しないと判定する(ステップS235で「NO」)まで、上記処理(ステップS231~S234)を繰り返す。これによって、ユーザ指定ヘッド37以外のヘッド37により部品実装の手順が最適化される。演算処理部81は、ステップS235で「NO」と判定した場合、最適化に失敗した旨を示すエラー情報を出力する。
【0051】
図5に戻って故障対応処理の説明を続ける。上記最適化処理(ステップS23)の実行に続いて、演算処理部81は最適化に成功したか否かを判定する(ステップS24)。そして、最適化に失敗した場合、演算処理部81はユーザ指定ヘッド37以外のヘッド37により部品実装を実行できない旨のエラー情報を出力して故障対応処理を終了する。一方、最適化に成功した場合、演算処理部81は最適化された最適化データをテンポラリデータとして記憶部83に記憶した(ステップS25)後で、当該テンポラリデータにしたがって暫定復旧モードを実行する。
【0052】
このような故障対応処理によれば、ユーザに指定されたユーザ指定ヘッド(異常発生ヘッド)37については、部品実装(部品の移載)が制限され、部品の実装ミスを未然に防止することができる。その一方で、ユーザ指定ヘッド37以外のヘッド37では、異常が発生していないため、それらのヘッド37により部品実装を実行することができる。したがって、ヘッドユニット32を構成する10本のヘッド37の一部で異常が発生したとしても、残りのヘッド37により部品実装を実行することができ、部品実装装置1の稼働率を高めることができる。
【0053】
また、一部のヘッドによる部品実装を制限する際に、ユーザ指定ヘッド37以外のヘッド37により部品実装(部品の移載)を実行する手順を最適化しているため、ユーザ指定ヘッド37の使用を制限しつつも、最適化された暫定手順により部品実装が実行される。その結果、サイクルタイムを最短化し、部品実装を効率的に行うことができる。
【0054】
上記実施形態では、詳しく説明していないが、サイクルタイムの最短化の観点から、最適化処理では、ヘッドユニット32の移動距離又は移動時間に基づいてヘッド37を選定するのが望ましい。その理由は以下のとおりである。ヘッドユニット32は、ユーザ指定ヘッド37以外のヘッド37により部品供給位置(ピックアップ位置)50sで部品を保持し、当該部品を保持したまま部品載置位置Bpの上方位置まで移動した後で、部品を保持しているヘッド37から部品載置位置Bpに部品を載置する。したがって、演算処理部81が、例えばヘッドユニット32の移動距離が最も短くなるように、部品をピックアップするヘッド37を最適化ヘッドとして選定すると、部品実装を合理的に行うことができ、サイクルタイムを短縮することができる。この点について、具体例を図8に示しながら説明する。
【0055】
図8は、通常運転モードと暫定復旧モードとの動作例を模式的に示す図であり、上段の(a)に通常運転モードでの部品実装の一例が示され、下段の(b)に暫定復旧モードでの部品実装の一例が示されている。また、暫定復旧モードは、図7Cに示すようにヘッド37jに異常が発生し、ユーザによりヘッド37jがユーザ指定ヘッドに選定されたケースである。図8(a)に示された通常運転モードでは、ヘッド37h、37jがそれぞれフィーダ50により部品供給位置50sに供給された部品PTをピックアップし、基板Bの部品載置位置Bpに移載している。一方、図8(b)に示された暫定復旧モードでは、ヘッド37jに異常が発生し、当該ヘッド37jが異常発生ヘッドとしてユーザに指定されている。このため、最適化処理により部品PTをピックアップする最適化ヘッドとして、ヘッド373g、37iが選定されている。このようなヘッド選定によりヘッドユニット32の移動距離の増大を招くことなく、最も短い移動距離で部品PTの基板Bへの実装を実行することができる。その結果、暫定復旧モードにおいても、サイクルタイムを最短化することができる。なお、移動距離の代わりに、移動時間に基づき最適化ヘッドを選定してもよい。
【0056】
次に、故障復旧処理について、図9を参照しつつ説明する。図9は、図1に示す部品実装装置で実行される故障復旧処理を示すフローチャートである。この故障復旧処理は、異常箇所の交換または修正の後で実行されるものである。交換または修理が完了した直後においても、表示部88には、例えば図7C図7Dに示すように暫定復旧モードと、交換や修理の対象となっていた異常箇所を示すグレーアウト画像とが表示されている。また、これら以外に、表示部88には、復旧解除用のアイコン882が表示されている。そして、演算処理部81は、ユーザによる解除指令(アイコン882の押下)を受ける(ステップS31で「YES」)ことで、故障復旧処理を開始する。
【0057】
本実施形態では、異常箇所の交換または修理が完了すると、ユーザは、上記解除指令に続いて、交換修理した箇所に相当するグレーアウト画像をクリックする。そこで、次のステップS32で、演算処理部81は、クリックされたグレーアウト画像に対応するユーザ指定ヘッド37を特定する。そして、演算処理部81は、当該ユーザ指定ヘッドを有効化するとともにグレーアウトを消去して元の画像に戻す(ステップS33)。例えば図7Cに示すグレーアウト画像(ヘッド単体画像H10)がクリックされた場合、ヘッド37jが有効化され、ヘッド単体画像H10のグレーアウトが消去される。一方、例えば図7Dに示すグレーアウト画像(R軸モータR1+ヘッド37a~37e)がクリックされた場合、ヘッド37a~37eが一括して有効化され、ヘッド単体画像H1~H5およびR軸モータ画像M1のグレーアウトが消去される。
【0058】
演算処理部81は、ユーザによるスタートボタンの押下を検知するまで、上記したユーザ指定ヘッドの有効化処理(ステップS32、S33)を繰り返して実行する。すなわち、ステップS34でスタートボタンの押下が検知されるまで、ステップS32に戻って有効化処理が繰り返される。一方、演算処理部81は、スタートボタンの押下を検知する(ステップS34で「YES」)と、全てのヘッド37a~37jが有効化されているか否かを判定する(ステップS35)。
【0059】
演算処理部81は、全てのヘッド37a~37jの有効化を確認すると、例えば図7C図7Dに示すように表示部88に表示されている「暫定復旧モード」のポップアップ画像および復旧解除用のアイコン882を消去し、例えば図7Bに示す通常運転用の表示内容に戻す(ステップS36)。さらに、演算処理部81は、実装プログラムを故障前のデータ、つまりテンポラリデータを廃棄するとともに通常運転データを戻し(ステップS37)、故障復旧処理を終了する。一方、一部のヘッド37がユーザ指定ヘッドのままである(ステップS35で「NO」)場合には、「暫定復旧モード」のポップアップ画像および復旧解除用のアイコン882を残したまま、故障復旧処理を終了する。
【0060】
こうして故障復旧処理が終了すると、演算処理部81は直ちに先に説明した故障対応処理後と同様の自動運転を開始する。
【0061】
以上のように、異常発生箇所の全てを交換または修理した後で、ユーザは表示部88に表内容にしたがって操作するという簡単なUI(ユーザ・インターフェース)操作のみで故障前の部品実装動作に戻ることができる。
【0062】
また、異常発生箇所の一部についてのみ交換または修理した場合であっても、交換または修正後のユーザ指定ヘッドの有効化を、簡単なUI操作のみで実行することができる。また、ヘッド37a~37jの一部が依然としてユーザ指定ヘッドのままであったとしても、故障対応処理後の自動運転と同様の作用効果が得られる。つまり、無効化状態のユーザ指定ヘッドによる部品実装(部品の移載)が制限され、部品の実装ミスを未然に防止することができる。また、ヘッド37の一部で異常が発生したとしても、残りのヘッド37により部品実装を実行することができ、部品実装装置1の稼働率を高めることができる。さらに、ユーザ指定ヘッド37以外のヘッド37により部品実装(部品の移載)を実行する手順を最適化しているため、ユーザ指定ヘッド37の使用を制限しつつも、最適化された暫定手順により部品実装が実行される。その結果、サイクルタイムを最短化し、部品実装を効率的に行うことができる。
【0063】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、ヘッド37をそれぞれ識別するための第1識別情報として、ヘッド単体画像H1~H10を用いられている。しかしながら、第1識別情報は、表示部88に表示してヘッド37a~37jをそれぞれ特定することができる表示要素である限り、任意である。例えば、ヘッド37a~37jの模式図、ヘッド37a~37jの写真、ヘッド37a~37jを示す英数字、文字や記号などを第1識別情報として用いることができる。また、この点については、第2識別情報についても同様である。
【0064】
また、上記実施形態では、1つのヘッドユニット32で部品実装を行う部品実装装置1に対して本発明に係る部品移載装置を適用しているが、2以上のヘッドユニット32を有する部品実装装置に対して本発明を適用することができる。
【0065】
また、上記実施形態では、10本のヘッド37で部品実装を行う部品実装装置1に対して本発明に係る部品移載装置を適用しているが、ヘッド37の本数はこれに限定されるものではなく、複数本のヘッド37で部品実装を行う部品実装装置に対して本発明を適用することができる。
【0066】
また、上記実施形態では、ヘッド37を2つのヘッド群37A、37Bに区分けし、ヘッド群37A、37B毎にR軸モータ35Rを設けた部品実装装置1に対して本発明を適用している。しかしながら、3以上に区分けするとともにヘッド群毎にR軸モータに設けた部品実装装置に対しても本発明を適用することができる。一方、ヘッド群に区分けしない部品実装装置、つまりヘッド37毎にR軸モータを設けた部品実装装置や全ヘッド37を単一のR軸モータで回転させる部品実装装置に対しても本発明を適用することができる。
【0067】
また、上記実施形態では、本発明に係る部品移載装置を部品実装装置に適用しているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではない。例えば先端にアームにより部品を保持するヘッドを複数個装備し、各ヘッドにおいてアームで部品を機械的に保持しながら部品を移載するロボットなどに対しても本発明を適用することができる。
【0068】
また、上記実施形態では、装置各部の動作状況を監視する演算処理部は、Z軸モータ等に異常が発生した場合、部品実装動作を一時停止させ、その後異常が発生したZ軸モータ等をユーザに指定してもらうことによって部品実装に使用できないユーザ指定ヘッドを判断している。しかしながら、本発明にかかる部品移載装置においては、例えばZ軸モータ等に異常が発生していない状態でも、使用されたくないZ軸モータ等がユーザに指定されることによって、部品実装に使用されないユーザ指定ヘッドが指定されてもよい。つまり、演算処理部は、Z軸モータ等に異常が発生していない場合においても、Z軸モータ等をユーザに指定してもらうことによって部品実装に使用できないユーザ指定ヘッドを指定できる。これにより、例えば異常発生の前兆があるZ軸モータおよびR軸モータをユーザが発見した際に、その異常が発生することを抑制させつつ効率的な部品実装をさせることができる。また、ユーザがZ軸モータおよびR軸モータについて異常発生の蓋然性を予測した場合に、ユーザにユーザ指定ヘッドを指定してもらってもよく、上記異常発生の前兆の場合と同様の作用効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
この発明は、部品の保持および保持解除を実行可能なヘッドを用いて部品を移載する部品移載技術全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1…部品実装装置
37,37a~37j…ヘッド
37A,37B…ヘッド群
50s…部品供給位置
80…制御部
81…演算処理部(ユーザ指定判断部、移載制御部、最適化処理部、制限解除判断部)
88…表示部
B…基板
H1-H10…ヘッド単体画像
M1,M2…R軸モータ画像
R…回転方向(第2方向)
R1,R2,35R…R軸モータ(第2駆動部)
Z1-Z10,35Z…Z軸モータ(第1駆動部)
RM…記録媒体
PT…部品
Z…上下方向(第1方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9