(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】電流測定部品、電流測定装置及び電流測定方法
(51)【国際特許分類】
G01R 15/18 20060101AFI20241111BHJP
【FI】
G01R15/18 A
G01R15/18 B
(21)【出願番号】P 2021080639
(22)【出願日】2021-05-11
【審査請求日】2024-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2020109004
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中沢 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 英雄
(72)【発明者】
【氏名】芦田 豊
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-280845(JP,A)
【文献】特開2015-200630(JP,A)
【文献】特開2015-200631(JP,A)
【文献】特開2013-140719(JP,A)
【文献】特開平11-014679(JP,A)
【文献】特開平10-038914(JP,A)
【文献】特開平06-186346(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0278527(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 11/00-11/06、
21/00-22/10、
35/00-35/06、
15/00-17/22、
33/00-33/26、
1/00-1/04、
1/08-5/00、
5/10-9/08、
19/00-19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離間するとともに対向して配置される一対の側面部と、
前記一対の側面部に掛け渡され、前記一対の側面部の間に空間を形成する掛け渡し部と、
前記一対の側面部の各々に取り付けられ、対応する側面部に形成された孔部を貫通する内部導体を備える一対の同軸部品と、
前記一対の同軸部品の内部導体同士を電気的に接続する接続部と、
前記接続部の外周部に間隙を形成した状態で前記接続部の外周部を包囲する筒状部と、を備え、
前記一対の側面部及び前記掛け渡し部は、前記一対の同軸部品の外部導体同士が電気的に接続されるよう導電性を有し、
前記筒状部は、第一の側面部に基端部が電気的に接続されるとともに、第二の側面部に取り付けられた前記同軸部品の外部導体から
、絶縁するための間隙を介して先端部が
物理的に
遠ざけられている、
電流測定部品。
【請求項2】
請求項1に記載の電流測定部品であって、
前記筒状部及び前記接続部の構造は、前記同軸部品に対して同じ特性インピーダンスを持つ、
電流測定部品。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電流測定部品であって、
前記一対の側面部及び前記掛け渡し部は、導体である、
電流測定部品。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電流測定部品であって、
前記筒状部の先端に設けられる間隙は、前記一対の側面部間に配置される電流センサの幅よりも狭い、
電流測定部品。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電流測定部品であって、
前記筒状部は、第一の側面部の内面から延在し、前記間隙を有するように第二の側面部から離間する、
電流測定部品。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電流測定部品であって、
前記接続部と前記筒状部との間には空気よりも誘電率が小さい誘電体を有する、
電流測定部品。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電流測定部品であって、
前記同軸部品は、同軸コネクタである、
電流測定部品。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電流測定部品であって、
前記一対の同軸部品のうち一方は、同軸コネクタであり、他方は、終端器であり、
前記他方の前記内部導体は、前記終端器の第一電極であり、
前記他方の前記外部導体は、前記終端器の第二電極である、
電流測定部品。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の電流測定部品と、
前記掛け渡し部により前記一対の側面部の間に形成された空間内に配置され、前記筒状部を包囲した状態において前記接続部に流れる電流を検出する電流センサと
を備える電流測定装置。
【請求項10】
互いに離間するとともに対向して配置される一対の側面部と、
前記一対の側面部に掛け渡され、前記一対の側面部の間に空間を形成する掛け渡し部と、
前記一対の側面部の各々に取り付けられ、対応する側面部に形成された孔部を貫通する内部導体を備える一対の同軸部品と、
前記一対の同軸部品の内部導体同士を電気的に接続する接続部と、
前記接続部の外周部に間隙を形成した状態で前記接続部の外周部を包囲する筒状部と、を備える電流測定部品において、
前記一対の側面部及び前記掛け渡し部を用いて前記一対の同軸部品の外部導体同士を電気的に接続し、第一の側面部に前記筒状部の基端部を電気的に接続するとともに第二の側面部に前記同軸部品の外部導体から
、絶縁するための間隙を介して前記筒状部の先端部を
物理的に
遠ざけた前記電流測定部品を用いることにより、前記同軸部品を流れる電流を測定する電流測定方法であって、
前記空間内に電流センサを配置し、前記電流センサによって前記筒状部を包囲した状態にするステップと、
前記電流センサによって前記接続部に流れる電流を検出するステップと、
を有する電流測定方法。
【請求項11】
請求項10に記載の電流測定方法であって、
前記同軸部品は、同軸コネクタである、電流測定方法。
【請求項12】
請求項10に記載の電流測定方法であって、
前記一対の同軸部品のうち一方は、同軸コネクタであり、他方は、終端器であり、
前記他方の前記内部導体は、前記終端器の第一電極体であり、
前記他方の前記外部導体は、前記終端器の第二電極体である、
電流測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流測定部品、電流測定装置及び電流測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、同軸ケーブルの帰電導体に接続された測定用金具に対して測定用コイルを取り付けることによって測定用金具に流れる電流を測定する電流測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような電流測定装置においては、測定用コイルなどによって構成される電流センサの外側に導体が敷設されている状態で同軸伝送路から伝送される電流の測定が行われる場合がある。このような場合、電流センサは、電流センサの外を通る導体と電流センサの中を通る導体との間の電位差から生じる電界及び電磁界などの影響を受けることがあり、これに伴って測定精度が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、同軸伝送路から伝送される電流を精度よく測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様によれば、電流測定部品は、互いに離間するとともに対向して配置される一対の側面部と、前記一対の側面部に掛け渡され、前記一対の側面部の間に空間を形成する掛け渡し部と、前記一対の側面部の各々に取り付けられ、対応する側面部に形成された孔部を貫通する内部導体を備える一対の同軸部品と、を備える。さらに電流測定部品は、前記一対の同軸部品の内部導体同士を電気的に接続する接続部と、前記接続部の外周部に間隙を形成した状態で前記接続部の外周部を包囲する筒状部と、を備える。そして、前記一対の側面部及び前記掛け渡し部は、前記一対の同軸部品の外部導体同士が電気的に接続されるよう導電性を有し、前記筒状部は、第一の側面部に基端部が電気的に接続されるとともに、第二の側面部に取り付けられた前記同軸部品の外部導体から、絶縁するための間隙を介して先端部が物理的に遠ざけられている。
【0007】
第二の態様によれば、電流測定部品は、互いに離間するとともに対向して配置される一対の側面部と、前記一対の側面部に掛け渡され、前記一対の側面部の間に空間を形成する掛け渡し部と、前記一対の側面部の各々に取り付けられ、対応する側面部に形成された孔部を貫通する内部導体を備える一対の同軸部品と、前記一対の同軸部品の内部導体同士を電気的に接続する接続部と、前記接続部の外周部に間隙を形成した状態で前記接続部の外周部を包囲する筒状部と、を備える。前記電流測定部品においては、前記一対の側面部及び前記掛け渡し部を用いて前記一対の同軸部品の外部導体同士を電気的に接続し、第一の側面部に前記筒状部の基端部を電気的に接続するとともに第二の側面部に前記同軸部品の外部導体から、絶縁するための間隙を介して前記筒状部の先端部を物理的に遠ざけている。電流測定方法は、前記電流測定部品を用いることにより前記同軸部品に流れる電流を測定する方法であり、前記空間内に電流センサを配置し、前記電流センサによって前記筒状部を包囲した状態にするステップと、前記電流センサによって前記接続部に流れる電流を検出するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0008】
これらの態様によれば、筒状部の基端部が同軸部品の外部導体に対して電気的に接続され、かつ、筒状部の先端部が他の同軸部品の外部導体から電気的に離間されている。
【0009】
このような構成を採用することにより、一方の同軸部品の外部導体、筒状部、一対の側面部、及び掛け渡し部の電位と、他方の同軸部品の外部導体の電位と、を概ね同じにすることができる。これに加え、電流測定部品に配置される電流センサを通過する電流、すなわち一方の同軸部品の内部導体、接続部、他方の同軸部品の内部導体の順にこれらを流れた電流が、電流センサを通過して他方の同軸部品の外部導体の第二電極体、筒状部、一方の同軸部品の外部導体の順にこれらを流れて折り返してくることを防ぐことができる。
【0010】
そのため、筒状部の周りに配置される電流センサによって電流を測定でき、かつ、電流センサにおいて、一対の側面部及び掛け渡し部と同軸部品の内部導体との間の電位差によって生じる電界及び電磁界などの影響を受けにくくすることができる。
【0011】
したがって、電流測定部品に接続される同軸伝送路から伝送される電流を精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態における電流測定装置が配置される同軸伝送システムの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、電流測定装置の外観を示す側面図である。
【
図3】
図3は、電流測定装置の構造を示す断面図である。
【
図4】
図4は、電流測定装置を構成する電流測定器具の外観を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、電流測定装置が配置される測定システムの等価回路の一例を示す回路図である。
【
図7】
図7は、電流測定器具の電流経路を示す観念図である。
【
図8】
図8は、電流測定器具を構成する伝送路の変形例を示す図である。
【
図9】
図9は、第二実施形態における電流測定装置の構造を示す断面図である。
【
図10】
図10は、電流測定器具に生じる電力損失を説明するための図である。
【
図11】
図11は、電流測定器具を構成する伝送路の変形例を示す断面図である。
【
図12】
図12は、電流測定器具を用いた電流測定方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の各実施形態について説明する。
【0014】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態において電流測定装置が配置される同軸伝送システムの一例を示す図である。
【0015】
電流測定装置100は、同軸伝送システム1において同軸伝送路(同軸線路)に伝送される電流を測定するための装置である。
【0016】
同軸伝送システム1は、複数の装置同士に接続された同軸伝送路を通じて電気信号を伝送するシステムである。この同軸伝送システム1は、交流装置10と、負荷装置20と、複数の同軸ケーブル30a乃至30cと、信号源側の終端抵抗器41と、負荷側の終端抵抗器42とを備える。
【0017】
交流装置10は、交流信号を生成する装置である。交流装置10は、例えば数[Hz]から数百[MHz]の交流電流を生成する。交流装置10の等価回路は、
図1に示すように、信号源インピーダンス11と交流信号源12とによって表現することができる。
【0018】
本実施形態において、交流装置10は、交流信号源12から出力される交流電流を測定するためのスイッチ13を備えている。スイッチ13は、例えば、交流信号源12から交流電流を負荷装置20に供給するときには交流信号源12と負荷装置20との間を接続し、交流信号源12の交流電流を測定するときには交流信号源12と負荷装置20との間の接続状態を遮断する。
【0019】
交流装置10は、例えば、負荷装置20に交流電力を供給するための電源装置、又は伝送特性を解析するために交流信号を生成するための解析装置などである。交流装置10は、生成した交流信号を、同軸ケーブル30bを介して負荷装置20に供給する。
【0020】
同軸ケーブル30bは、同心円状に内部導体31と外部導体32とを有する同軸伝送路である。同軸ケーブル30bにおいて、内部導体31と外部導体32との間には誘電体が介在する。介在する誘電体は、例えば、ポリエチレンなどの絶縁部材又は空気などである。また、同軸ケーブル30bは、例えば50[Ω]又は75[Ω]の特性インピーダンスZ0を有する。同軸ケーブル30bと同様、同軸ケーブル30a,30cは、内部導体31と外部導体32とを有する。
【0021】
負荷装置20は、同軸ケーブル30bを介して交流装置10から供給される交流信号を受けて作動する装置である。負荷装置20の等価回路は、
図1に示すように、負荷インピーダンス21によって表現することができる。
【0022】
本実施形態において、負荷装置20は、負荷インピーダンス21に供給される交流信号を測定するためのスイッチ22を備えている。スイッチ22は、例えば、同軸ケーブル30bを介して交流信号源12から供給される交流電流を測定するときに交流信号源12と負荷装置20との間の接続を遮断する。
【0023】
上述のような同軸伝送システム1においては、例えば障害箇所を切り分けるために複数のポイントにおいて本実施形態における電流測定装置100が配置される。例えば、電流測定装置100は、同軸ケーブル30aに流れる交流電流を測定するために交流装置10と信号源側の終端抵抗器41との間に配置される。さらに電流測定装置100は、同軸ケーブル30bに流れる交流電流を測定するために交流装置10と負荷装置20との間に配置されるとともに、同軸ケーブル30cに流れる交流電流を測定するために負荷装置20と負荷側の終端抵抗器42との間に配置される。
【0024】
次に、本実施形態における電流測定装置100の構成について
図2乃至
図5を参照しながら説明する。以下では、同軸ケーブル30a乃至30cのことを総じて同軸ケーブル30とも称する。
【0025】
図2は、電流測定装置100の外観を示す側面図であり、
図3は、電流測定装置100の内部構造を示す断面図である。
図4は、電流測定装置100を構成する電流測定器具300の外観を示す斜視図であり、
図5は、
図4に示されたV-V線に沿う電流測定器具300の断面図である。
【0026】
図2及び
図3に示すように、電流測定装置100は、非接触で電流を検出する電流センサ200と、電流センサ200が筐体(枠体)300A内に取り付けられる電流測定器具300と、を備える。
【0027】
電流センサ200は、
図3に示すように、交流電流が流れる電路(電線)などの測定対象物を電流センサ200の環状部220に挿通させた状態で、測定対象物に流れる交流電流を非接触で検出するセンサである。電流センサ200は、オシロスコープ又はスペクトルアナライザなどの計測器に接続され、電流計測器は、電流センサ200の検出信号に基づいて、測定対象物を流れる電流、若しくは、測定対象物から生じる磁界などの物理量を測定する。
【0028】
電流センサ200は、例えば、
図3に示すように、測定対象物の外周に巻き回されるコイル210によって構成される。これに代えて、電流センサ200は、測定対象物が挿通される環状の磁気コアに対して導線が巻き回されたコイルを有するものであってもよい。また、電流センサ200は、測定対象物を挟み込み可能な構造を有するクランプ型でもよく、据え付け構造を有する貫通型であってもよい。
【0029】
電流測定器具300は、電流センサ200を用いて同軸ケーブル30に流れる電流を測定するための電流測定部品である。電流測定器具300は、
図4及び
図5に示すように、電流センサ200を収容するための筐体300Aの内部に、同軸ケーブル30に流れる交流電流を伝送するための伝送路360を備える。
【0030】
筐体300Aの形状は、
図4及び
図5に例示された矩形筒状に限らず、例えば直方体、多角柱、又は、円柱若しくは楕円柱などの筒状であってもよい。また、電流測定器具300は、分解不能な構造でもよく、貫通型の電流センサ200の環状部220に伝送路360を通すために組立て可能な構造であってもよい。
【0031】
電流測定器具300は、電流センサ200を収容するための一対の側面部310,320と、一対の側面部310,320に掛け渡された掛け渡し部330と、一対の側面部310,320に取り付けられる一対の同軸コネクタ340,350とを備える。さらに電流測定器具300は、上述の伝送路360を備え、伝送路360は、
図3に示すように、電流センサ200の環状部220に挿通される。
【0032】
第一の側面部310及び第二の側面部320によって構成される一対の側面部310,320は、互いに離間するとともに対向して配置される。
【0033】
本実施形態において、一対の側面部310,320は、板状の部材であり、互いに対向するように配置される。また、一対の側面部310,320は導体であり、例えば、ステンレスなどの導電性を有する金属によって構成される。
【0034】
一対の側面部310,320が設けられることにより、第一の側面部310と第二の側面部320との間に、電流センサ200を配置するために必要となる空間(配置空間)Sが形成される。これにより、電流センサ200から測定対象物以外の電路及び電子部品などを物理的に遠ざけることが可能となる。
【0035】
また、一対の側面部310,320には、
図3に示すように、互いに対向する一対の孔部313,323が形成されている。一方の孔部313には、同軸コネクタ340の内部導体であるピン341が貫通している。同様に、他方の孔部323には、同軸コネクタ350の内部導体であるピン351が貫通している。
【0036】
さらに、側面部320には、
図4及び
図5に示すように、同軸コネクタ350を取り付けるために複数のネジ穴324が形成されている。側面部320と同様、側面部310においても複数のネジ穴が形成されている。
【0037】
掛け渡し部330は、一対の側面部310,320に掛け渡されるとともに一対の側面部310,320の間に空間Sを形成する。
【0038】
本実施形態において、掛け渡し部330は、互いに対向する板状の部材によって構成されている。具体的には、掛け渡し部330は、側面部310の一端部と側面部320の一端部との間に掛け渡されるとともに、側面部310の他端部と側面部320の他端部との間に掛け渡されている。掛け渡し部330は、一対の側面部310,320と同様、導体であり、例えば導電性を有する金属によって構成される。
【0039】
本実施形態の掛け渡し部330は対向する二つの板状の部材で構成されているが、掛け渡し部330は、一又は三つの板状の部材で構成されてよく、あるいは、筒状の部材で構成されてもよい。また、本実施形態では電流センサ200を挿入するために、掛け渡し部330の外周の一部が開口するように掛け渡し部330が成形されているが、掛け渡し部330は電流センサ200の外周全部を覆うように成形されてもよい。
【0040】
第一の同軸コネクタ340及び第二の同軸コネクタ350によって構成される一対の同軸コネクタ340,350は、同軸ケーブル30を筐体300A内の伝送路360に接続するための同軸部品である。
【0041】
同軸コネクタ340,350の各々は、同軸ケーブル30と同様、同軸上に内部導体と外部導体とを有する。同軸コネクタ340,350は、例えば、BNC型、SMA型、SMB型、TNC型、N型、M型、又はF型のコネクタによって構成される。
【0042】
本実施形態において、同軸コネクタ340,350は、共に同じ構成であり、一対の同軸ケーブル30の先端にそれぞれ同軸コネクタ340,350が接続されている。
図3及び
図5に示す例では、同軸コネクタ340,350と同軸ケーブル30との結合構造が簡略化して示されているが、結合方式としては、例えば、ネジ方式、バヨネットロック方式、スナップロック方式などが用いられる。
【0043】
同軸コネクタ340は、内部導体であるピン341と、外部導体である本体部342と、ピン341及び本体部342間を絶縁するための誘電層343と、本体部342の先端部から径方向に突出するフランジ344とを備える。
【0044】
同軸コネクタ340のピン341には、同軸ケーブル30の内部導体31が電気的に接続され、本体部342には、同軸ケーブル30の外部導体32が電気的に接続されている。また、フランジ344には、
図4に示すように、同軸コネクタ340を側面部310に固定するための複数のネジ穴345が形成されており、ネジ穴345に挿入されるネジによって同軸コネクタ340は、側面部310の外面312に固定されている。
【0045】
同軸コネクタ350は、
図3及び
図5に示すように上述の同軸コネクタ340と同様、内部導体であるピン351と、外部導体である本体部352と、ピン351及び本体部352間を絶縁するための誘電層353と、本体部352の先端部から径方向に突出するフランジ354とを備える。ピン351、本体部352、誘電層353及び
フランジ354は、同軸コネクタ340と同様の構成であるため、ここでの説明を省略する。
【0046】
一対の同軸コネクタ340,350は、一対の側面部310,320の各々に取り付けられ、対応する側面部に形成された孔部313,323を貫通する内部導体としてのピン341,351を備える。すなわち、一対の同軸コネクタ340,350は、一対の側面部310,320の外面312,322に、ピン341,351がそれぞれ孔部313,323を通過するよう一つずつ取り付けられている。
【0047】
具体的には、同軸コネクタ340は、ピン341が側面部310の孔部313を貫通するよう側面部310の外面312に取り付けられている。これにより、同軸コネクタ340のフランジ344が側面部310の外面312に当接する。
【0048】
同様に、同軸コネクタ350は、ピン351が側面部320の孔部323を貫通するよう側面部320の外面322に取り付けられている。これにより、同軸コネクタ350のフランジ354が側面部320の外面322に当接する。ここにいう外面312,322とは、一対の側面部310,320が互いに対向する面である内面311,321に対してそれぞれ背向する面のことである。
【0049】
上述のように、筐体300Aを構成する一対の側面部310,320及び掛け渡し部330は、一対の同軸コネクタ340,350の本体部342,352同士が電気的に接続されるよう導電性を有している。それゆえ、一対の同軸コネクタ340,350の外部導体同士が一対の側面部310,320及び掛け渡し部330を経由して電気的に接続される。これにより、電流測定器具300の外部から筐体300A内の空間Sに混入するノイズが抑制される。
【0050】
続いて、電流測定器具300に備えられた伝送路360の構成について説明する。
【0051】
図5に示すように、伝送路360は、一対の同軸コネクタ340,350の内部導体同士を電気的に接続する接続部361と、接続部361の外周部から離間して配置される筒状部362とを備えている。そして、接続部361及び筒状部362間には、中空部363が形成されている。
【0052】
さらに伝送路360は、筒状部362の基端部から径方向に突出するフランジ365を備え、フランジ365は、側面部310の内面311に固定されている。
【0053】
接続部361は、同軸ケーブル30の内部導体31を流れる電気信号を伝送するために、一対の同軸コネクタ340,350のピン341,351同士を電気的に接続する電路である。
【0054】
本実施形態において、接続部361は円筒状に形成されている。また、接続部361は導体であり、例えば銅などの金属によって構成される。接続部361の両端には長手方向に穴が形成されており、接続部361の一方の穴には同軸コネクタ340のピン341が挿入され、接続部361の他方の穴には同軸コネクタ350のピン351が挿入されている。接続部361は、例えば半田を用いてピン341,351の両者と接合される。
【0055】
これに代えて、接続部361の両端にそれぞれネジ穴を形成するとともにピン341,351を雄ネジに形成して両者を接合してもよく、あるいは、接続部361の双方の穴にピン341,351を圧入して両者を嵌合接合してもよい。また、接続部361は、円筒状に代えて多角柱状又は楕円柱状に形成されてもよい。
【0056】
筒状部362は、接続部361の外周から径方向に放射(輻射)される電界及び電磁界などのノイズを抑制するとともに、筒状部362の外部から接続部361に混入するノイズを低減するための部材である。筒状部362は、
図3に示すように電流センサ200の環状部220に挿通される。
【0057】
筒状部362は、接続部361の外周部に間隙を形成した状態で接続部361の外周部を包囲する。さらに筒状部362の基端部は、第一の側面部310に電気的に接続されるとともに、筒状部362の先端部は、第二の側面部320に取り付けられた同軸コネクタ350の外部導体である本体部352から電気的に離れている。
【0058】
本実施形態において、同軸コネクタ350の本体部352から筒状部362の先端部を電気的に離すために、伝送路360には、一対の同軸コネクタ340,350の本体部342,352同士の電気的な接続を遮断するよう間隙364が形成されている。
【0059】
これにより、筒状部362が挿通された電流センサ200を通過する電流、すなわち同軸コネクタ340のピン341、接続部361、同軸コネクタ350のピン351の順に流れた電流が、電流センサ200を通過して同軸コネクタ350の本体部352、筒状部362、同軸コネクタ340の本体部342の順に流れて戻ることを防ぐことができる。
【0060】
その結果、同軸コネクタ340のピン341、接続部361、同軸コネクタ350のピン351を流れる電流によって作られる磁界が、同軸コネクタ350の本体部352、筒状部362、同軸コネクタ340の本体部342を流れる戻り電流によって作られる磁界で相殺されることを抑制することができる。
【0061】
したがって、電流測定器具300内の空間Sには交流電流が流れる接続部361を中心に磁界が発生するので、電流センサ200において、接続部361に流れる交流電流によって作られる磁界を検出することが可能となる。
【0062】
また、筒状部362は、導体であり、例えば銅などの金属によって構成される。そして筒状部362は円筒状に形成される。筒状部362は、円筒状に限らず、例えば多角柱状、又は楕円柱状に形成されてもよい。
【0063】
筒状部362は、
図3及び
図5に示すように、側面部310の内面311から側面部320の内面321に向かって延在し、間隙364を設けるために側面部320から離間している。
【0064】
このように、間隙364を側面部320の孔部323又はその近傍に設けることにより、間隙364から電流センサ200を遠ざけることができる。したがって、露出した接続部361から電流センサ200に向かって放射される電界及び電磁界などのノイズを低減することができる。
【0065】
筒状部362の先端に設けられる間隙364は、一対の側面部310,320間の長手方向における電流センサ200の長さ(幅)よりも狭くなるように設計される。これにより、筒状部362から露出した接続部361の長さは比較的短くなるので、露出した接続部361から放射される電界及び電磁界などのノイズを低減することができる。
【0066】
また、筒状部362の先端に間隙364を設けることにより、一対の同軸コネクタ340,350の本体部342,352同士の電気的な接続が遮断されるとともに、伝送路360の特性インピーダンスを同軸ケーブル30の特性インピーダンスZ0と同じ向き及び大きさに調整しやすくなる。
【0067】
なお、本実施形態では上述のように筒状部362の先端が側面部320の内面321から離間して形成されているが、これに限られるものではない。
【0068】
例えば、側面部320を厚くするとともに孔部323の内径を筒状部362の外径よりも大きくした場合は、筒状部362と同軸コネクタ350の本体部352とが接触しなければ、筒状部362の先端を側面部320の内面321よりもさらに延在してもよい。この場合には、筒状部362の先端は、少なくとも同軸コネクタ350の本体部352から離間するように形成される。
【0069】
また、本実施形態では筒状部362が側面部310の内面311に取り付けられたが、筒状部362は、側面部320の内面321に取り付けられてもよい。この場合には、筒状部362の先端は、側面部320から側面部310に向かって延在するとともに、同軸コネクタ340の本体部342から離間するように形成される。
【0070】
次に、本実施形態における電流測定器具300の電気的特性について
図6及び
図7を参照しながら説明する。
【0071】
図6は、
図1に示した同軸伝送システム1のうち、交流装置10と信号源側の終端抵抗器41との間を接続した同軸ケーブル30aに電流測定装置100を配置した測定システム1Aの等価回路を示す回路図である。
【0072】
図6には、電流測定器具300の抵抗Rm及び特性インピーダンスZmと、電流測定器具300に対して接続された一対の同軸ケーブル30aの特性インピーダンスZ0と、終端抵抗器41の抵抗Rtと、が示されている。
【0073】
測定システム1Aにおいては、交流信号源12から出力される交流電流が終端抵抗器41で反射するのを抑制するために、終端抵抗器41の抵抗Rtは信号源インピーダンス11と同じ値に設定される。
【0074】
そして、信号源111から終端抵抗器41に伝送される交流電流の電力損失を抑えるために、電流測定器具300の抵抗Rmを抵抗値がゼロ(0)となるよう小さくする。これとともに、電流測定器具300の特性インピーダンスZ0が同軸ケーブル30aの特性インピーダンスZ0と同じ値になるように設計される。これにより、同軸ケーブル30aに流れる交流電流を精度よく測定することが可能となる。
【0075】
本実施形態では、筒状部362と同軸コネクタ350とを絶縁するための間隙364、接続部361と筒状部362との間隔、接続部361と筒状部362との間に挿入される誘電体とを調整することにより、電流測定器具300のインピーダンス調整が行われる。このように、伝送路360を構成する接続部361及び筒状部362の構造を調整することにより、電流測定器具300の特性インピーダンスZmを同軸ケーブル30の特性インピーダンスZ0に調整することが可能となる。
【0076】
したがって、筒状部362の間隙364、筒状部362と接続部361との間隔などを調整することで電流測定器具300の特性インピーダンスZmを調整できるので、交流装置10と終端抵抗器41との間のインピーダンスを簡易に整合させることができる。
【0077】
図7は、同軸ケーブル30aに流れる交流電流がプラス(+)となるときに電流測定器具300に流れる電流の経路を示す観念図である。
【0078】
まず、一方の同軸ケーブル30aの内部導体31に流れる電流は、同軸コネクタ340のピン341、接続部361、同軸コネクタ350のピン351の順に経由して他方の同軸ケーブル30aの内部導体31に伝送される。その後、終端抵抗器41を経由して他方の同軸ケーブル30aの外部導体32から同軸コネクタ350の本体部352に向かって電流が流れる。
【0079】
このとき、一対の側面部310,320及び掛け渡し部330によって構成される筐体300Aは導電性を有しているため、一対の同軸コネクタ340,350の本体部342,352同士が電気的に接続される。このため、
図7に示すように、同軸コネクタ350の本体部352から一対の側面部310,320及び掛け渡し部330を経由して同軸コネクタ340の本体部342に電流が流れる。
【0080】
さらに、筒状部362も、筐体300Aと同様に導電性を有しているため、同軸コネクタ340の本体部342から筒状部362にも電流が流れる。これにより、筐体300Aと筒状部362とは概ね同じ電位になる。したがって、筐体300Aと接続部361との間で生じる電界及び電磁界などのノイズが、筐体300Aとほぼ同じ電位の筒状部362によって遮蔽される。それゆえ、接続部361から筐体300A内の空間Sにノイズとして放射される電界及び電磁界などを抑制することができる。
【0081】
一方、同軸コネクタ350の本体部352と筒状部362とは間隙364によって非接触となるので、接続部361に流れる電流によって作られる磁界を、電流センサ200を収容する空間Sに発生させることができる。
【0082】
このように、筒状部362の先端に間隙364を設けることにより、接続部361に流れる電流によって作られる磁界を電流センサ200の環状部220の内側に発生させるとともに、電流センサ200の周辺をほぼ同じ電位にすることができる。したがって、筐体300A内の空間Sは電流センサ200に対してノイズが混入しにくい状態となるので、電流センサ200は、接続部361に流れる電流によって生じる磁界を精度よく検出することができる。
【0083】
ここで電流測定器具300内の空間Sに生じるノイズについて詳細に説明する。まず、接続部361の周囲に導電性を有する筒状部362を省いた構成では、筐体300Aと接続部361との電位差に起因して電流測定器具300内の空間Sには電界及び電磁界などのノイズが発生する。このノイズの影響により空間Sに配置された電流センサ200の検出精度が低下してしまう。
【0084】
これに対し、本実施形態においては接続部361の外周部に筒状部362が設けられ、その筒状部362と筐体300Aとが電気的に接続されている。それゆえ、筐体300Aと筒状部362との電位差がほぼゼロになるので、電流センサ200が配置される空間Sには、上述のように電界及び電磁界などのノイズの発生が抑制される。したがって、筒状部362を省略した構成に比べて、電流センサ200に混入するノイズを抑制することが可能となる。
【0085】
次に、第一実施形態による作用効果について説明する。
【0086】
本実施形態において、電流測定部品を構成する電流測定器具300は、互いに離間するとともに対向して配置される一対の側面部310,320と、一対の側面部310,320に掛け渡される掛け渡し部330とを備える。さらに電流測定器具300は、一対の側面部310,320の各々に取り付けられ、対応する側面部310,320に形成された孔部313,323に貫通する内部導体を備える一対の同軸部品を含む。一対の同軸部品としては、内部導体とその外周に形成される外部導体とによって構成される同軸コネクタ又は終端器などが挙げられ、本実施形態における同軸部品は、内部導体としてのピン341,351を備える一対の同軸コネクタ340,350である。また、電流測定器具300は、一対の同軸コネクタ340,350のピン341,351同士を電気的に接続する接続部361を備える。
【0087】
これに加え、電流測定器具300は、接続部361の外周部に間隙を形成した状態で接続部361の外周部を包囲する筒状部362を備える。そして、一対の側面部310,320及び掛け渡し部330は、一対の同軸コネクタ340,350における外部導体としての本体部342,352同士が電気的に接続されるよう導電性を有するとともに、筒状部362は、第一の側面部310に基端部が電気的に接続されるとともに、第二の側面部320に取り付けられた一方の同軸コネクタ350の本体部352から先端部が電気的に離されている。
【0088】
上述の構成によれば、一対の側面部310,320の間に掛け渡し部330が設けられる。これにより、同軸コネクタ340,350の少なくとも一方に接続された同軸ケーブル30とは異なる電路又は電子部品などを電流測定器具300内の接続部361から物理的に遠ざけることができる。それゆえ、一対の側面部310,320及び掛け渡し部330によって形成される空間Sに発生するノイズを低減できるので、同軸ケーブル30のような同軸伝送路から電流測定器具300に伝送される電流を精度よく測定することができる。
【0089】
これに加え、一対の側面部310,320及び掛け渡し部330に導電性を持たせることにより、一対の同軸コネクタ340,350の本体部342,352同士が電気的に接続されるので、電流測定器具300の外部から混入し得るノイズを遮蔽しやすくなる。また、接続部361の外周部から離間して筒状部362を配置することにより、筒状部362の内側に接続部361から発生する電界及び電磁界を閉じ込めることができる。
【0090】
さらに、
図7に示したように、一対の側面部310,320及び掛け渡し部330と筒状部362とを電気的に接続することによって空間Sがほぼ同電位となる。これにより、一対の側面部310,320及び掛け渡し部330と筒状部362との電位差から生じるノイズを低減することができる。
【0091】
これと共に、筒状部362の先端に間隙364を設けることにより、電流センサ200を挿通して一方の同軸コネクタ340のピン341、接続部361、他方の同軸コネクタ350のピン351の順に流れた電流が、電流センサ200を通過して他方の同軸コネクタ350の本体部352、筒状部362、一方の同軸コネクタ340の本体部342の順に流れて戻ることを防ぐことができる。その結果、電流測定器具300内の空間Sにおいて、接続部361に流れる電流によって接続部361を中心に磁界を発生させることができる。
【0092】
このように、接続部361の外周部に筒状部362を設け、筒状部362を一対の側面部310,320及び掛け渡し部330に電気的に接続することにより、電流測定器具300内の空間Sに混入するノイズを低減することができる。したがって、接続部361に流れる電流を精度よく測定することが可能になる。
【0093】
また、本実施形態において、電流測定装置100は、測定対象物を挿通させた状態で測定対象物に流れる電流を検出する電流センサ200と、上述の電流測定器具300とを備える。そして掛け渡し部330は、一対の側面部310,320の間に空間Sを形成し、電流センサ200は、筒状部362を包囲した状態で空間S内に配置され、接続部361に伝送される電流を検出する。
【0094】
この構成によれば、一対の側面部310,320の間に掛け渡し部330を設けることにより、電流センサ200を配置するための空間Sが確保される。したがって、電流センサ200から、接続部361に電流を伝送する同軸ケーブル30以外の電路又は電子部品を物理的に遠ざけることができる。それゆえ、電流センサ200に混入するノイズが低減されるので、電流センサ200を用いて接続部361に流れる電流を測定する際の測定精度が向上する。
【0095】
また、本実施形態において、筒状部362及び接続部361の構造は、同軸コネクタ340,350と同じ特性インピーダンスを持つように構成される。これにより、同軸ケーブル30に流れる電流が高周波である場合には、電流測定器具300で生じる反射を低減することができる。それゆえ、同軸ケーブル30から電流測定器具300の接続部361に伝送される電流を精度よく測定することが可能となる。
【0096】
また、本実施形態において、一対の側面部310,320及び掛け渡し部330は導体である。この構成によれば、一対の側面部310,320及び掛け渡し部330の表面に導通部を張り付ける処理又は導通部材を塗布する処理を施さなくて済むので、電流測定器具300を簡易に製作することができる。
【0097】
また、本実施形態において一対の側面部310,320間の方向、すなわち接続部361の長手方向における筒状部362の先端に形成される間隙364は、電流センサ200の幅よりも狭い。この構成によれば、接続部361の露出部分を減らすことができるので、露出部分から輻射される電界及び電磁界などのノイズを低減することができる。
【0098】
また、本実施形態において筒状部362は、第一の側面部310の内面311から延在し、間隙364を有するように第二の側面部320から離間する。この構成によれば、間隙364が第二の側面部320又はその近傍に形成されるので、電流センサ200を間隙364から遠ざけて配置させることができる。したがって、露出した接続部361から電流センサ200に向かって放射される電界及び電磁界などのノイズを低減することができる。
【0099】
<変形例>
次に、第一実施形態における電流測定器具300の変形例について
図8を参照して説明する。
図8は、電流測定器具300の変形例として電流測定器具301の構造を示す断面図である。
【0100】
本変形例における電流測定器具301は、
図2乃至
図5に示した電流測定器具300の伝送路360に代えて伝送路360Aを備えている。伝送路360Aは、先端が第一の側面部310に向かって後退した筒状部362に加えて、筒状部462及び筒状部462の基端部から径方向に突出するフランジ465を備えている。
図8に示すように、他の構成については、電流測定器具300の構成と同じであるため、同一符号を付して重複する説明については省略する。
【0101】
筒状部462は、側面部320の内面321から接続部361の長手方向に沿って延在している。筒状部462の先端は、筒状部362の先端に対して離間するとともに対向している。
【0102】
筒状部362の先端と筒状部462の先端との間に形成される間隙364Aは、一対の側面部310,320間の中間に形成されている。この間隙364Aの長さは、電流測定器具300と同様、接続部361から放射されるノイズを抑制するために電流センサ200の幅よりも短く設計されている。また、フランジ465は、フランジ365と同様、側面部310の内面311に固定されている。
【0103】
このように、筒状部362に対向するように筒状部462を備えることにより、筒状部362の先端に設けられる間隙364Aが一対の側面部310,320の中間に形成される。このような構成であっても、接続部361から空間Sに放射されるノイズを抑制しつつ、接続部361に流れる交流電流によって発生する磁界を電流測定器具301の空間Sに発生させることができる。
【0104】
なお、本変形例では一対の側面部310,320及び掛け渡し部330によって構成される筐体300Aは導体であったが、筐体300Aは一対の同軸コネクタ340,350の本体部342,352同士が電気的に接続されるものであればよい。それゆえ、絶縁性を有する一対の側面部310,320及び掛け渡し部330の表面に導通部を張り付ける処理又は導通部材を塗布する処理を施すことにより、一対の同軸コネクタ340,350の本体部342,352同士を電気的に接続するようにしてもよい。
【0105】
(第二実施形態)
図9は、第二実施形態における電流測定装置101の構造を示す断面図である。電流測定装置101は、
図2及び
図3に示した電流センサ200と電流測定器具302とを備える。
【0106】
本実施形態において、電流測定器具302は、同軸コネクタ350に代えて終端器450を備えている。他の構成については、
図2乃至
図5に示した電流測定器具300の構成と同じである。そのため、電流測定器具300の構成と同じ構成については同一符号を付してここでの説明を省略する。
【0107】
終端器450は、電流測定器具302の伝送路360の一端を終端するための同軸部品である。本実施形態では、終端器450は、終端抵抗を有するコネクタ部品であり、
図1及び
図6に示した終端抵抗器41を収容する。
【0108】
終端抵抗器41は、
図9に示すように、同軸部品の内部導体を構成する第一電極体411と抵抗体412と第二電極体413とによって構成される。第一電極体411は、第一電極411Aと、第一電極411Aから抵抗体412の延在方向に突出するピン411Bとを有する。
【0109】
終端器450は、上述の終端抵抗器41と、終端抵抗器41の第二電極体413を覆うバネ電極451と、終端抵抗器41及びバネ電極451を収容する本体部452とを備える。さらに終端器450は、本体部452の先端部から開口する穴部453と、本体部452の先端部から径方向に突出するフランジ454とを備える。なお、終端器450の第二電極体413、バネ電極451及び本体部452は、同軸部品の外部導体を構成する。
【0110】
バネ電極451は、穴部453の底部に嵌め込まれるように形成され、本体部452は導体によって形成されている。穴部453の底面にはバネ電極451が当接するよう終端抵抗器41が圧入されている。これにより、終端抵抗器41が本体部452に固定されるとともに、終端抵抗器41のピン411Bが本体部452から突出する。
【0111】
また、
図9には示されていないが、フランジ454には、
図4及び
図5に示したフランジ344と同様
、複数のネジ穴が形成さており、ネジ穴に挿入されるネジによって終端器450は、側面部320の外面322に固定されている。
【0112】
このように構成された終端器450は、第一電極体411を構成するピン411Bが第二の側面部320の孔部323を通過するよう第二の側面部320の外面322に取り付けられる。そして接続部361は、同軸コネクタ340の内部導体を構成するピン341と終端器450の内部導体の一部を構成するピン411Bとを互いに電気的に接続する。
【0113】
また、一対の側面部310,320及び掛け渡し部330は、第一実施形態と同様、同軸コネクタ340の外部導体を構成する本体部342と終端器450の第二電極体413とが電気的に接続されるよう導電性を有する。そして筒状部362は、第一の側面部310に基端部が電気的に接続されるとともに、第二の側面部320に取り付けられた終端器450の本体部452から先端部が電気的に離されている。
【0114】
なお、本実施形態では間隙364が筒状部362の側面部320寄りに設けられているが、これに限られるものではない。例えば、間隙364は、
図8に示したように、一対の側面部310,320の中間に設けられてもよい。
【0115】
続いて、本実施形態における電流測定器具302の電力損失について
図10を参照して説明する。
【0116】
図10は、電流測定器具302の同軸コネクタ340を介して同軸ケーブル30から伝送路360に流れる交流電流の周波数[Hz]と電流測定器具302の電力損失[dB]との関係を説明するための図である。
【0117】
図10には、電流測定器具302の入力反射係数S11の周波数特性が実線により示され、比較例として、筒状部362を省いた比較対象器具の入力反射係数S11の周波数特性が破線により示されている。
【0118】
図10に示す例では、同軸ケーブル30の特性インピーダンスZ0は50[Ω]であり、電流測定器具302に取り付けられる終端器450内の終端抵抗器41の値は50[Ω]である。また、比較対象器具には、終端器450に代えて筐体300Aと接続部361とを短絡する別の終端器が取り付けられている。
【0119】
図10に示すように、本実施形態における電流測定器具302の入力反射係数S11は、伝送路360を流れる交流電流の周波数が高くなるほどゼロに近づいている。すなわち、同軸ケーブル30に流れる交流電流の周波数が高くなるほど電流測定器具302での電力損失が小さくなっていることがわかる。
【0120】
これに加え、電流測定器具302の入力反射係数S11は、比較対象器具の入力反射係数S11に比べて周波数全体に亘り改善していることがわかる。この理由は、終端器450で生じる交流電流の反射が抑えられただけでなく、電流測定器具302に筐体300Aと電気的に接続された筒状部362が設けられたことによって接続部361から筐体300Aの空間Sに漏れる電磁波が減少したからである。
【0121】
次に、第二実施形態による作用効果について説明する。
【0122】
本実施形態において、電流測定器具302は、互いに離間するとともに対向して配置される一対の側面部310,320と、一対の側面部310,320に掛け渡される掛け渡し部330とを備える。さらに電流測定器具302は、第一の側面部310に取り付けられ、第一の側面部310に形成された孔部313を貫通する内部導体であるピン341を備える同軸コネクタ340と、第二の側面部320に取り付けられ、第二の側面部320に形成された孔部323を貫通する第一電極体を構成するピン411Bを備える終端器450とを備える。
【0123】
同軸コネクタ340及び終端器450は、一対の同軸部品を構成する。本実施形態では、一方の同軸部品の内部導体が同軸コネクタ340のピン341で実現され、外部導体が同軸コネクタ340の本体部342で実現されている。そして他方の同軸部品の内部導体が終端器450の第一電極体411で実現され、外部導体の一部が終端器450の第二電極体413で実現されている。
【0124】
これに加えて、電流測定器具302は、同軸コネクタ340のピン341と終端器450のピン411Bとを互いに電気的に接続する接続部361と、接続部361の外周部に間隙を形成した状態で接続部361の外周部を包囲する筒状部362とを備える。そして、一対の側面部310,320及び掛け渡し部330は、同軸コネクタ340の外部導体である本体部342と終端器450の第二電極体413とが電気的に接続されるよう導電性を有する。さらに筒状部362は、第一の側面部310に基端部が電気的に接続されるとともに、第二の側面部320に取り付けられた終端器450の第二電極体413から先端部が電気的に離されている。
【0125】
この構成によれば、第一実施形態と同様、一対の側面部310,320の端部間に掛け渡し部330が設けられる。これにより、同軸コネクタ340に接続された同軸ケーブル30とは異なる電路及び電子部品などを電流測定器具302内の接続部361から物理的に遠ざけることができる。したがって、一対の側面部310,320及び掛け渡し部330によって形成される空間Sに混入するノイズを低減することができるので、同軸ケーブル30から電流測定器具302に伝送される電流を精度よく測定することができる。
【0126】
これに加え、第一実施形態と同様、一対の側面部310,320及び掛け渡し部330に導電性を持たせることにより、電流測定器具302の外部から筐体300A内の空間Sに混入し得るノイズを遮蔽しやすくなる。また、接続部361の外周部を包囲する筒状部362を配置することにより、筒状部362の内側において接続部361から発生する電界及び電磁界を閉じ込めることができる。
【0127】
さらに、一対の側面部310,320及び掛け渡し部330と筒状部362とを互いに電気的に接続することにより、筐体300A内の空間Sにおいて一対の側面部310,320及び掛け渡し部330と筒状部362との電位差から生じるノイズを低減することができる。
【0128】
このように、本実施形態によれば、第一実施形態と同様、筒状部362を設け、筒状部362を一対の側面部310,320及び掛け渡し部330に電気的に接続することにより、電流測定器具302内の空間Sに混入するノイズを低減することができる。それゆえ、電流測定器具302に流れる電流を精度よく測定することが可能になる。
【0129】
また、本実施形態において、電流測定装置101は、測定対象物に流れる電流を検出する電流センサ200と、上記の電流測定器具302とを備える。そして掛け渡し部330は、一対の側面部310,320の間に空間Sを形成し、電流センサ200は、筒状部362を包囲した状態で空間S内に配置され、接続部361に伝送される電流を検出する。
【0130】
この構成によれば、第一実施形態と同様、電流測定器具300内の空間Sに配置される電流センサ200に対して混入するノイズが低減されるので、電流センサ200を用いて接続部361に流れる電流を精度よく測定することができる。
【0131】
また、本実施形態において、筒状部362及び接続部361の構造は、同軸コネクタ340及び終端器450と同じ特性インピーダンスを持つように構成される。これにより、同軸ケーブル30に流れる電流が高周波である場合には、電流測定器具302で生じる反射を低減することができる。したがって、同軸ケーブル30から電流測定器具302の筒状部362及び接続部361に伝送される電流を精度よく測定することができる。
【0132】
また、本実施形態において一対の側面部310,320及び掛け渡し部330は、第一実施形態と同様に導体である。この構成によれば、一対の側面部310,320及び掛け渡し部330の表面に導通部を張り付ける処理又は導通部材を塗布する処理を施さなくて済むので、電流測定器具302を簡易に製作することができる。
【0133】
また、本実施形態において一対の側面部310,320間の方向における筒状部362の先端に設けられる間隙364は、第一実施形態と同様、一対の側面部310,320間に配置される電流センサ200の幅よりも狭い。この構成によれば、接続部361の露出部分を減らすことができるので、露出部分から輻射される電界及び電磁界などのノイズを低減することができる。
【0134】
また、本実施形態において筒状部362は、第一実施形態と同様、第一の側面部310の内面311から延在し、間隙364を形成するように第二の側面部320から離間する。この構成によれば、間隙364が第二の側面部320又はその近傍に形成されるので、電流センサ200を間隙364から遠ざけて配置させることができる。したがって、露出した接続部361から電流センサ200に向かって放射される電界及び電磁界などのノイズを低減することができる。
【0135】
また、本実施形態において電流測定装置100を構成する電流測定器具302は、
図11に示したように、接続部361と筒状部362との間には空気よりも誘電率が小さい誘電体363Aを有してもよい。これにより、中空部363を有する伝送路360に比べて、接続部361と筒状部362との距離を短くすることが可能になるので、電流測定器具302を小型にすることが可能となる。
【0136】
なお、本実施形態では同軸コネクタ340が第一の側面部310に取り付けられ、終端器450が第二の側面部320に取り付けられたが、終端器450が第一の側面部310に取り付けられ、同軸コネクタ340が第二の側面部320に取り付けられてもよい。この場合、筒状部362は、第一の側面部310に基端部が電気的に接続されるとともに、第二の側面部320に取り付けられた同軸コネクタ340の外部導体である本体部342から先端部が電気的に離される。
【0137】
また、本実施形態では終端抵抗器41を有する終端器450が側面部320に取り付けられたが、電流測定器具302の伝送路360を短絡する終端器が側面部320に取り付けられてもよい。このような構成であっても、本実施形態と同様、電流測定器具302内の空間Sに生じるノイズを低減することができる。
【0138】
<変形例>
次に、
図11を参照して、第二実施形態における電流測定器具302を構成する伝送路360の変形例について説明する。
図11は、伝送路360の変形例として伝送路360Bの構造を示す断面図である。
【0139】
本変形例における伝送路360Bは、
図9に示した伝送路360の中空部363に代えて、中空部363よりも誘電率が小さい誘電体363Aを備えている。誘電体363Aとしては、例えばポリエチレンなどが挙げられる。
【0140】
これにより、伝送路360Bは、上述の伝送路360に比べて、接続部361と筒状部362との距離を短くすることが可能になるので、電流測定器具302を小型にすることが可能となり、また、環状部220が小さな電流センサ200を利用することも可能となる。
【0141】
次に、上記実施形態における電流測定器具300乃至302のうちいずれか一つの電流測定部品を用いて同軸コネクタ340を流れる電流を測定する電流測定方法について
図12を参照して説明する。
【0142】
図12は、電流測定器具300を用いた電流測定方法の一例を示すフローチャートである。
【0143】
この例では、まず、電流測定器具300を構成する一対の同軸コネクタ340,350に対し、
図1に示した同軸ケーブル30がそれぞれ接続される。なお、電流測定器具302が用いられる場合は、同軸コネクタ340のみに同軸ケーブル30が接続される。
【0144】
ステップS1において、掛け渡し部330により一対の側面部310,320の間に形成される空間S内に電流センサ200が配置され、電流センサ200によって筒状部362を包囲した状態にする。
【0145】
ステップS2において、電流センサ200を用いて電流測定器具300の接続部361に流れる電流が検出される。このとき、電流センサ200は計測器に電気的に接続されており、この計測器は、例えば、電流センサ200から出力される検出信号に基づいて同軸コネクタ340を流れる電流の大きさを測定する。
【0146】
電流センサ200が接続部361に流れる電流を検出して計測器により同軸コネクタ340を流れる電流の測定が行われると、電流測定方法が終了する。
【0147】
このように電流測定方法は、電流測定器具300乃至302のいずれか一つの電流測定部品を用いて同軸部品に流れる電流を測定する。この電流測定部品は、一対の側面部310,320及び掛け渡し部330を用いて一対の同軸部品の外部導体同士を電気的に接続し、第一の側面部310に筒状部362の基端部を電気的に接続するとともに第二の側面部320に取り付けられた同軸部品の外部導体から筒状部362の先端部を電気的に離したものである。例えば一方の同軸部品は、同軸コネクタ340であり、他方の同軸部品は、同軸コネクタ350又は終端器450である。第二実施形態では一対の同軸部品のうち一方は、同軸コネクタ340であり、他方は、終端器450であり、他方の内部導体は、終端器450の第一電極体411であり、他方の外部導体は、終端器450の第二電極体413である。
【0148】
そして電流測定方法は、空間S内に電流センサ200を配置して電流センサ200によって筒状部362を包囲した状態にするステップS1と、電流センサ200によって接続部361に流れる電流を検出するステップS2と、を有する。
【0149】
この構成によれば、筒状部362が一対の側面部310,320及び掛け渡し部330に電気的に接続されることにより、空間Sに配置された電流センサ200に混入するノイズを低減することができる。それゆえ、接続部361に流れる電流を精度よく測定することが可能になる。
【0150】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0151】
例えば、上記実施形態では同軸ケーブル30に流れる電流を測定するために電流測定装置100,101を用いたが、電流センサ200を校正するために電流測定装置100,101を用いてもよい。この場合、交流装置10から出力される精度の高い交流信号と電流センサ200による測定結果とを比較することにより、電流センサ200を校正する。このような場合であっても、電流センサ200に混入するノイズの影響を小さくすることができるので、電流センサ200を精度よく校正することができる。
【0152】
上記実施形態では筐体300Aの形状が矩形筒状であったが、例えば、筐体300Aは、伝送路360を中心とする同心円状に形成することができる。これにより、伝送路360,360A,360Bに流れる電流によって伝送路360,360A,360Bを中心とする同心円状に磁界を発生させることが可能となる。それゆえ、電流測定器具301乃至303に正しく電流センサ200を配置することにより、伝送路360,360A,360Bに流れる電流の電流センサ200による検出精度を高めることができる。
【0153】
また、
図11に示した第二実施形態の変形例は、第一実施形態の電流測定装置100,101に適用することも可能である。この場合であっても、伝送路360Bの外径を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0154】
100、101 電流測定装置
200 電流センサ
300~302 電流測定器具(電流測定部品)
300A 筐体
310、320 側面部(第一の側面部、第二の側面部)
311、321 内面
312、322 外面
313、323 孔部
330 掛け渡し部
340、350 同軸コネクタ
341、351 ピン(内部導体)
342、352、452 本体部(外部導体)
361 接続部
362 筒状部
363A 誘電体
364、364A 間隙
411 第一電極体(内部導体)
411A 第一電極(第一電極体)
411B ピン(第一電極体)
413 第二電極体(外部導体)
450 終端器(同軸部品)