(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】ホールプラグ
(51)【国際特許分類】
F16J 13/14 20060101AFI20241111BHJP
B60R 13/04 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
F16J13/14
B60R13/04 Z
(21)【出願番号】P 2021082428
(22)【出願日】2021-05-14
【審査請求日】2024-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】井上 正俊
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-135826(JP,U)
【文献】実開平01-063871(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 12/00-13/24
B60R 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の部材に形成された孔を閉塞するためのホールプラグであって、
前記孔の表側に配置される板状部と、該板状部の周縁に形成され、前記孔の表側周縁に当接するフランジ部とを有しており、
前記板状部は、
その中心部を通って前記板状部を横切るように延びる薄肉部と、
前記板状部の裏側において、前記薄肉部の延出方向に延びる延出ラインを挟んで、同薄肉部の両側に設けられた、前記薄肉部よりも肉厚の裏側突出部と、
前記裏側突出部の外側端部に設けられ、前記孔の裏側周縁に係合する係合爪部とを有しており、
前記板状部を表側から摘まんで、前記薄肉部の前記延出ラインに沿って、前記裏側突出部の対向面どうしを互いに近接するように、前記板状部を屈曲させたときに、前記係合爪部の外側寸法が前記孔の内側寸法よりも小さくなり、前記孔に対して前記係合爪部を通過可能に構成されており、
前記板状部の表側であって、前記薄肉部の両側には、前記板状部の表側を摘まむための
、表側突出部が設けられていることを特徴とするホールプラグ。
【請求項2】
所定の部材に形成された孔を閉塞するためのホールプラグであって、
前記孔の表側に配置される板状部と、該板状部の周縁に形成され、前記孔の表側周縁に当接するフランジ部とを有しており、
前記板状部は、
その中心部を通って前記板状部を横切るように延びる薄肉部と、
前記板状部の裏側において、前記薄肉部の延出方向に延びる延出ラインを挟んで、同薄肉部の両側に設けられた、前記薄肉部よりも肉厚の裏側突出部と、
前記裏側突出部の外側端部に設けられ、前記孔の裏側周縁に係合する係合爪部とを有しており、
前記板状部を表側から摘まんで、前記薄肉部の前記延出ラインに沿って、前記裏側突出部の対向面どうしを互いに近接するように、前記板状部を屈曲させたときに、前記係合爪部の外側寸法が前記孔の内側寸法よりも小さくなり、前記孔に対して前記係合爪部を通過可能に構成されており、
前記裏側突出部は、前記板状部の裏側であって、前記薄肉部の前記延出ラインに対して並列して延びる、少なくとも一対の第1突条を有しており、該第1突条の延出方向の両端部に、前記係合爪部がそれぞれ設けられていることを特徴とするホールプラグ。
【請求項3】
所定の部材に形成された孔を閉塞するためのホールプラグであって、
前記孔の表側に配置される板状部と、該板状部の周縁に形成され、前記孔の表側周縁に当接するフランジ部とを有しており、
前記板状部は、
その中心部を通って前記板状部を横切るように延びる薄肉部と、
前記板状部の裏側において、前記薄肉部の延出方向に延びる延出ラインを挟んで、同薄肉部の両側に設けられた、前記薄肉部よりも肉厚の裏側突出部と、
前記裏側突出部の外側端部に設けられ、前記孔の裏側周縁に係合する係合爪部とを有しており、
前記板状部を表側から摘まんで、前記薄肉部の前記延出ラインに沿って、前記裏側突出部の対向面どうしを互いに近接するように、前記板状部を屈曲させたときに、前記係合爪部の外側寸法が前記孔の内側寸法よりも小さくなり、前記孔に対して前記係合爪部を通過可能に構成されており、
前記裏側突出部は、前記板状部の裏側であって、前記薄肉部の前記延出ラインに対して並列して延びる、少なくとも一対の第1突条を有しており、該第1突条の延出方向の両端部に、前記係合爪部がそれぞれ設けられており、
前記裏側突出部は、前記第1突条に対して交差するように、前記板状部の外方に向けて延びる、第2突条を更に有しており、該第2突条の延出方向の先端部にも、前記係合爪部が設けられていることを特徴とするホールプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の部材に形成された孔を閉塞するための、ホールプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のボディパネル等の部材には、塗装工程や組付け工程等において、用いられる孔が形成されることがある。このような孔は、通常はホールプラグにより閉塞されている。
【0003】
従来のこの種のホールプラグとして、下記特許文献1には、被取付部が有する排水孔の少なくとも一部を覆うフランジ部と、フランジ部の裏面から延び、排水孔の周縁部に係合する複数の係合脚部とを備え、各係合脚部は、フランジ部の裏面において別々の位置から延び、フランジ部は、フランジ部のなかで各係合脚部が接続する部分である接続部と、接続部よりも肉厚が薄く、かつ、少なくとも接続部間に位置する薄肉部とを含む排水プラグが記載されている。
【0004】
上記排水プラグの裏面側からは、一対の側壁と、それらの間に配置された柱部と、それらの先端どうしを連結する天井部とからなる、第2係合脚部が突出している。この第2係合脚部の各側壁の外面には、係合突部がそれぞれ設けられている。そして、この第2係合脚部を排水孔に挿入すると、排水孔の内周に係合突部が押圧されて、一対の側壁が撓み変形しながら挿入され、係合突部が排水孔の裏側から抜け出ると、一対の側壁が弾性復帰して、係合突部が排水孔の裏側周縁に係合するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の排水プラグにおいては、排水孔の裏側から、第2係合脚部が大きく突出するため、排水プラグを取付ける部位によっては、他の部材に干渉して、取付けられない恐れがある。この干渉を抑えるべく、第2係合脚部を構成する一対の側壁を低くすると、排水孔への第2係合脚部の挿入時、一対の側壁が撓みにくくなり、排水孔に排水プラグを取付けにくくなる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、孔の裏側からの突出量を抑えつつ、孔に取付けしやすい、ホールプラグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、所定の部材に形成された孔を閉塞するためのホールプラグであって、前記孔の表側に配置される板状部と、該板状部の周縁に形成され、前記孔の表側周縁に当接するフランジ部とを有しており、前記板状部は、その中心部を通って前記板状部を横切るように延びる薄肉部と、前記板状部の裏側において、前記薄肉部の延出方向に延びる延出ラインを挟んで、同薄肉部の両側に設けられた、前記薄肉部よりも肉厚の裏側突出部と、前記裏側突出部の外側端部に設けられ、前記孔の裏側周縁に係合する係合爪部とを有しており、前記板状部を表側から摘まんで、前記薄肉部の前記延出ラインに沿って、前記裏側突出部の対向面どうしを互いに近接するように、前記板状部を屈曲させたときに、前記係合爪部の外側寸法が前記孔の内側寸法よりも小さくなり、前記孔に対して前記係合爪部を通過可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のホールプラグによれば、板状部を表側から摘まんで、薄肉部の延出ラインに沿って、薄肉部の両側の、裏側突出部の対向面どうしを互いに近接するように、板状部を屈曲させることで、係合爪部の外側寸法が孔の内側寸法よりも小さくなり、孔に対して係合爪部を通過可能に構成されているので、係合爪部を設けた裏側突出部の、孔の裏側からの突出量を抑えて、ホールプラグを高さ方向において薄くすることができると共に、板状部の屈曲作業によって、係合爪部の外側寸法を可変させて、孔に対して係合爪部を通過可能であるため、孔にホールプラグを取付けしやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るホールプラグの、一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】同ホールプラグであって、
図1とは異なる方向から見た場合の斜視図である。
【
図5】同ホールプラグを孔に取付けた状態の断面図である。
【
図6】同ホールプラグを孔に取付けるべく、板状部及びフランジ部を屈曲させた際の、断面図である。
【
図7】同ホールプラグを孔に取付けるべく、板状部及びフランジ部を屈曲させた際の、背面図である。
【
図8】同ホールプラグの変形例を示す背面図である。
【
図9】同ホールプラグを、湾曲した部材の孔に、取付けた状態の断面図である。
【
図10】同ホールプラグを、屈曲した部材の取付けた状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(ホールプラグの一実施形態)
以下、図面を参照して、本発明に係るホールプラグの、一実施形態について説明する。
【0012】
図1に示すように、このホールプラグ10は、例えば、自動車の車体パネル等の、所定の部材1に形成された孔5を閉塞するために用いられる。この実施形態の場合、部材1は、平坦面状の板状体となっている(
図5及び
図6)。ただし、部材としては、
図9に示すような、湾曲した部材1Aでもよく、
図10に示すような、一対の平坦面状の板状体が屈曲部を介して連設された、部材1Bあってもよい。また、部材としては、自動車の荷室のリッドや、トランクリッド、ドア、フェンダー等であってもよく、特に限定はされない。更に、孔5は円形状をなしているが、孔としては、楕円形や小判状の長孔等、少なくとも一対の対向する孔縁が、円弧状曲線をなす形状であればよい。
【0013】
そして、
図2や
図5に示すように、この実施形態におけるホールプラグ10(以下、単に「プラグ10」ともいう)は、孔5の表側に配置される板状部20と、この板状部20の周縁に形成され、孔5の表側周縁に当接するフランジ部30とを有している。
【0014】
なお、孔5の「表側」とは、ホールプラグ10のフランジ部30が配置される側を意味し、孔5の「裏側」とは、上記の「表側」とは反対側を意味する。
【0015】
図2及び
図3に示すように、この実施形態における板状部20は、所定厚さで形成され、その外周が円形状をなした略円板状をなしている。この板状部20の厚さ方向の一側、すなわち、板状部20の、部材1に対向する側を、板状部20の「裏側」とする。また、板状部20の裏側に位置する面を、「裏面20а」とする。一方、板状部20の「裏側」とは反対側を、板状部20の「表側」とし、板状部20の表側に位置する面を、「表面20b」とする。また、ホールプラグの、後述する係合爪部47,49を除く各部(フランジ部30、裏側突出部40、表側突出部50等)における「裏側」、「裏面」、「表側」、「表面」も同様の意味である。
【0016】
なお、板状部としては、円形状ではなくとも、例えば、長方形、正方形、菱形、その他の四角形状や、五角形以上の多角形状や、楕円形状、小判形状等であってもよく、取付孔の形状により適宜定めることができる。
【0017】
前記フランジ部30は、板状部20の円形状をなした外周縁部から、板状部20の表面20bから離反するように、斜め外方に向けてスカート状に広がるように延出している。
【0018】
また、
図2、
図3、及び
図5に示すように、板状部20は、その中心部21を通って板状部20を横切るように延びる薄肉部25と、板状部20の裏側において、薄肉部25の延出方向に延びる延出ラインL1を挟んで、薄肉部25の両側に設けられた、薄肉部25よりも肉厚の裏側突出部40,40と、裏側突出部40の外側端部に設けられ、孔5の裏側周縁に係合する係合爪部47,49とを有している。
【0019】
この実施形態の場合、
図3に示すように、板状部20の中心部21は、外周が円形状をなした板状部20の径方向の中心Cを含む部分であり、この中心Cを通過すると共に、板状部20の径方向に対向する2箇所を通過する直線が、延出ラインL1をなしている。
【0020】
図5に示すように、薄肉部25の裏面は、板状部20の裏面20аに対して段差のない連続した面となっている(面一となっている)。一方、薄肉部25の表側は、板状部20の表面20bに対して所定深さで凹み、同薄肉部25の表面が、板状部20の表面20bに対して低い位置となっており、薄肉部25は、板状部20の薄肉部25以外の部分よりも、厚さが薄くなっている。
【0021】
また、薄肉部25の両側には、薄肉部25よりも肉厚の一対の裏側突出部40,40が設けられているが(
図5参照)、言い換えると、一対の裏側突出部40,40の間に、裏側突出部40よりの肉薄の薄肉部25が配置されている、とも言える。
【0022】
なお、本発明において、「薄肉部」とは、板状部20において、隆起した部分や突出した部分のない領域であって、薄肉部25以外の他の箇所よりも肉薄であり、延出ラインL1を折れ目として屈曲可能(
図6参照)であると共に、その両側に、薄肉部25よりも肉厚の一対の裏側突出部40,40を有する部位、を意味する。言い換えると、薄肉部25とは、板状部20の延出ラインL1を挟んで、その両側に配置された一対の裏側突出部40,40の間に配置されていると共に、裏側突出部40よりも肉薄であって、延出ラインL1を折れ目として屈曲可能とされた部位、とも言える。また、薄肉部25の領域は、
図5に示すように、プラグ10の板状部20の断面を見たときに、板状部20の表面20bに対して最も低い位置から(ここでは、後述する表側突出部50のR状部分50аの底部を意味する。)、板状部20の中心Cを通過する中心線C´に対して平行な線L2,L2で囲まれた範囲を意味する。
【0023】
また、
図5に示すように、この実施形態における薄肉部25の厚さは、延出ラインL1に沿った延出方向全域に亘って一定となっている(薄肉部25の表面と裏面とが互いに平行とされている)。更に
図5に示すように、薄肉部25の幅(延出ラインL1を挟んでその両側間の距離、すなわち、
図5の線L2,L2間の距離)は、一定となっている。
【0024】
なお、この実施形態における薄肉部25は、板状部20の中心部21を通ってその径方向を横切るように延びる、一定厚さで且つ一定幅の帯状をなしているが(
図5参照)、例えば、(1)板状部の中心部を肉薄にして、板状部の外方に向けて次第に肉厚となるテーパ面又は曲面としたり(薄肉部の表裏両面がテーパ面又は曲面)、(2)板状部の外方から板状部の中心部に向けて次第に肉厚となるテーパ面又は曲面としたり(薄肉部の表裏両面がテーパ面又は曲面)、(3)薄肉部の表面又は裏面のいずれか一方をテーパ面又は曲面とし、他方を平坦面として、板状部の中心部が肉薄で板状部の外方に向けて次第に肉厚とするか、又は、板状部外方から板状部中心部に向けて次第に肉厚としたり、(4)板状部を裏面側から見たときに、板状部の中心部が幅広で、板状部の外方に向けて次第に幅狭としたり、(5)板状部を裏面側から見たときに、板状部の外方部分が幅広で、板状部の中心部に向けて次第に幅狭としたりしてもよく、更に、上記の(1)~(3)のいずれかの構成と、上記の(4)又は(5)の構成とを適宜組み合わせたりしてもよい。
【0025】
また、薄肉部の表面及び/又は裏面に、筋状溝や、凹状溝、ノッチ、切欠き等を形成して、薄肉部中に更に薄肉部分を設けてもよい。特に、延出ラインL1に沿うように、薄肉部の裏面及び/又は表面に、上記の筋状溝等を形成すると、薄肉部を屈曲させやすくなるので好ましく、更に、薄肉部の裏面側に筋状溝等を形成することがより好ましい。
【0026】
また、上記の薄肉部25の延出ラインL1を挟んで、その両側に対向配置された一対の裏側突出部40,40は、次のような構成となっている。
【0027】
すなわち、この実施形態の場合、各裏側突出部40は、板状部20の裏側であって、薄肉部25の延出ラインL1に対して並列して延びる、少なくとも一対の第1突条41,41と、これらの第1突条41,41に対して交差するように、板状部20の外方に向けて延びる、第2突条43,43とから構成されている。
【0028】
より具体的には、一対の第1突条41,41は、薄肉部25の延出ラインL1を挟んで、同延出ラインL1に沿って互いに平行となるように並列して延びている。また、一対の第1突条41,41は、その対向面45,45(相手側の第1突条41に向く面)どうしが、互いに平行となるように配置されている。
【0029】
また、一対の第1突条41,41の延出方向中央の外面(対向面45とは反対側の面を意味する。以下の説明でも同様)から互いに離反するように、一対の第2突条43,43が延出しており、
図3に示すように、各裏側突出部40は、プラグ10の裏面側(プラグ10の背面側とも言える)から見たときに、全体として略T字状をなしている。
【0030】
各第1突条41は、一定の幅(対向面45と外面との長さ)で延びており、且つ、板状部20の裏面20аから一定高さで突出した、突条となっている。また、
図2に示すように、各第1突条41の延出方向の先端部41аにおける端面41bは、対向面45側から外面側に向けて、第1突条41の延出長さが短くなるように次第に傾斜した、テーパ面となっている。なお、各第1突条41の先端部41а,41аは、孔5にプラグ10を取付けたときに、孔5の内周に対して、その端面41b,41bが対向して配置されるようになっている。
【0031】
また、
図2に示すように、第1突条41の延出方向の先端部41аであって、第1突条41の突出方向の先端部(板状部20の裏面20аから離れた端部)に、係合爪部47が設けられている。この係合爪部47は、第1突条41の先端部41аの端面41bよりも、板状部20の外方に向けて張り出している。また、係合爪部47の、対向面45とは反対側の外面には、円弧状に丸みを帯びたR状部47аが設けられている(
図2及び
図3参照)。また、係合爪部47の裏側(板状部20の裏面20аに向く側)に、孔5の裏側周縁に係合する、平坦面状をなした係合段部47bが設けられている。更に、第1突条41の突出方向の先端部で、且つ、係合爪部47を含む部分であって、第2突条43を除く部分には、係合第1突条41の突出方向先端面から基端部(板状部20の裏面20аとの連結部分)側に向けて、次第に突出量が小さくなるテーパ面41cが形成されている。なお、第1突条41の延出方向の先端部41аが、本発明における「裏側突出部の外側端部」をなしている。
【0032】
一方、第2突条43は、各第1突条41の延出方向中央の外面から、同第1突条41に対して直交するように、板状部20の外方に向けて延びている。各第2突条43は、一定の幅(両側面どうしの長さ)で延びており、且つ、板状部20の裏面20аから一定高さで突出した、突条となっている。各第2突条43の延出方向の先端部43аにおける端面43bは、上記第1突条41の端面41bとは異なり、第1突条41の外面と平行な平坦面状をなしている。なお、各第2突条43の先端部43аは、孔5にプラグ10を取付けたときに、孔5の内周に対して、その端面43bが対向して配置されるようになっている。
【0033】
また、
図2に示すように、第2突条43の延出方向の先端部43аであって、第2突条43の突出方向の先端部(板状部20の裏面20аから離れた端部)に、係合爪部49が設けられている。この係合爪部49は、第2突条43の先端部43аの端面43bよりも、板状部20の外方に向けて張り出している。また、係合爪部49の延出方向の先端部であって、板状部20の裏面20аから離れた外面は、第2突条43の突出方向先端面から基端部側(板状部20の裏面20аとの連結部分)に向けて、次第に突出量が小さくなるテーパ面49аをなしている。更に、係合爪部49の裏側(板状部20の裏面20аに向く側)に、孔5の裏側周縁に係合する、平坦面状をなした係合段部49bが設けられている。なお、第2突条43の延出方向の先端部43аが、本発明における「裏側突出部の外側端部」をなしている。
【0034】
以上説明した裏側突出部40は、第1突条41及び第2突条43からなる略T字状をなしているが、このような形状や構造に限定されるものではない。例えば、裏側突出部を、(1)第1突条と、その延出方向途中から直交して板状部の外方に向けて延出した、複数の第2突状とからなる形状としたり、(2)第1突条と、該第1突条に対して所定角度で傾斜して板状部の外方に向けて延出した、1個又は複数の第2突条とからなる形状としたり、(3)
図8に示すような、裏側突出部40Aとしてもよい。
【0035】
図8に示す変形例の裏側突出部40Aは、プラグ10を裏面側から見たときに、略半円形状をなしており、その対向面45,45どうしが互いに平行となるように配置されている。また、この裏側突出部40Aの外側端部、すなわち、裏側突出部40Aの径方向外方の外周縁部に、円弧状をなした係合爪部47Aが設けられている。
【0036】
また、この実施形態における第1突条47は、薄肉部25の延出ラインL1に沿って連続して且つ並列して延びる一対のものからなるが、第1突条としては、薄肉部の延出ラインに沿って、断続的に延びる複数の突部から構成されていてもよい(複数の突部が、薄肉部の延出ラインに沿って、所定間隔を空けて配置された構成)。
【0037】
また、
図1に示すように、板状部20の表側であって、薄肉部25の両側には、板状部20の表側を摘まむための、表側突出部50が設けられている。
【0038】
この実施形態の場合、板状部20の表面20b側であって、薄肉部25の延出ラインL1を挟んで、薄肉部25の両側に、互いに平行に並列して延びる、一対の表側突出部50,50を有している。また、一対の表側突出部50,50は、板状部20の、各表側突出部50に隣接する部分の表面20bよりも、所定高さ高く突出した突条をなしており、その対向面51,51(相手側の表側突出部50に向く面)どうしが、互いに平行となるように配置されている。
図5に示すように、各対向面51の基端(凹んだ部分の底部)と、薄肉部25の表面との境界部分には、R状部分50аが設けられている。
【0039】
また、一対の表側突出部50,50の外面(対向面51とは反対側の面)には、表側突出部50の天井面から、板状部20の、表側突出部50に隣接する部分の表面20bに向けて、次第に突出量が小さくなる、外側テーパ面53が形成されている。
図6に示すように、各表側突出部50の外側テーパ面53には、プラグ10を屈曲させる作業者の指7が引っ掛かる部分となり、板状部20の表側の摘まみ作業時に指7が滑りにくくなっている。
【0040】
なお、
図5に示すように、表側突出部50は、板状部20の裏面20a側に設けた第1突条41にほぼ整合する位置に設けられているが、その対向面51は、第1突条41の対向面45よりも、薄肉部25の延出ラインL1寄りに位置ずれしている。
【0041】
以上説明した表側突出部50は、裏側突出部40を構成する一対の第1突条41,41のように、薄肉部25の延出ラインL1に沿って互いに平行に延びる形状となっているが、このような形状や構造に限定されるものではなく、例えば、薄肉部両側に配置された、筋状に延びる複数の突条としたり、板状部中央部に設けた所定形状の突部としたりしてもよく、指7の、少なくとも一部を引き掛けることが可能な形状であることが好ましい。
【0042】
そして、このプラグ10においては、
図3に示す板状部20が屈曲していない状態から、
図6に示すように、板状部20を表側から摘まんで、薄肉部25の延出ラインL1に沿って、薄肉部25の両側に設けられた、裏側突出部40,40の対向面45,45どうしを互いに近接するように、板状部20を屈曲させたときに、
図7に示すように、係合爪部47,49の外側寸法が孔5の内側寸法よりも小さくなり、孔5に対して係合爪部47,49を通過可能に構成されている。
【0043】
上記構成について、
図3、
図6、及び
図7を参照して説明する。
図3には、板状部20が屈曲していない状態が示されている。この状態では、板状部20の薄肉部25は、延出ラインL1を折れ目として屈曲されておらず、表裏両面が平坦で延出ラインL1に沿って長く延びる帯状となっており、各第1突条41の先端部41а,41аに設けた係合爪部47,47、及び、各第2突条43の先端部43аに設けた係合爪部49は、孔5の裏側周縁に係合可能な位置となっている。
【0044】
なお、この実施形態において、係合爪部47の外側寸法とは、係合爪部47の外部形状における最大寸法、ここでは、
図3に示すように、各第1突条41の延出方向の先端部41а,41аにそれぞれ設けた係合爪部47,47どうしの最大距離を意味し、これを符号「S1」で示す。同様に、係合爪部49の外側寸法とは、係合爪部49の外部形状における最大寸法、ここでは、
図3に示すように、対向配置された一対の第2突条43,43の、延出方向の先端部43а,43аに設けた係合爪部49,49どうしの最大距離を意味し、これを符号「S2」で示す。一方、孔5の内側寸法とは、孔5の内側における最大寸法を意味し、これを符号「S3」で示す。この実施形態の場合、孔5は円形状をなしているので、その直径が内側寸法となる。
【0045】
そして、
図3に示す状態から、
図6に示すように、指先を板状部20の表面20bに当接させると共に、指7の一部を、一対の表側突出部50,50の外側テーパ面53,53に引っ掛けるようにして、複数の指7で板状部20の表側を摘まんで、薄肉部25の延出ラインL1に沿って、裏側突出部40,40を構成する一対の第1突条41,41の対向面45,45どうしを互いに近接するように、板状部20を屈曲させる。すると、フランジ部30が、板状部20の延出ラインL1を折れ目として屈曲すると共に、薄肉部25が、略「く」の字状をなすように延出ラインL1を折れ目として屈曲する(
図6参照)、すなわち、薄肉部25は、延出ラインL1を挟んで幅方向両側部分が、その裏面どうしを互いに近接するように延出ラインL1を折れ目として屈曲し、それによって、板状部20全体が薄肉部25を介して屈曲する。
【0046】
その結果、
図7に示すように、各第1突条41の一対の係合爪部47,47、及び、第2突条43の係合爪部49が、孔5の裏側周縁に係合可能な位置(
図3参照)から、孔5の裏側周縁に係合しない位置に移動する。すなわち、各係合爪部47が、孔5の内側寸法S3よりも小さい外側寸法S1´(
図7参照)となるように、孔5の内側に移動すると共に、各係合爪部49が、孔5の内側寸法S3よりも小さい外側寸法S2´(
図7参照)となるように、孔5の内側に移動する。それによって、各係合爪部47,49が、孔5の内周に引っ掛からずに、通過させることが可能となり、各係合爪部47,49や、それらを設けた第1突条41や第2突条43を、孔5の裏側開口から挿出させることができるようになっている。
【0047】
以上説明したホールプラグは、その全ての部分(板状部、フランジ部、薄肉部、裏側突出部、第1突条、第2突条、係合爪部、裏側突出部等)が一体形成されている。また、ホールプラグの各部分の形状や構造は、上記態様に限定されるものではない。
【0048】
(作用効果)
次に、上記構造からなるプラグ10の作用効果について説明する。
【0049】
部材1の孔5にプラグ10を取付ける際には、上述した段落0045で説明したように、指7で板状部20の表側を摘まんで、薄肉部25の延出ラインL1に沿って、一対の第1突条41,41の対向面45,45どうしを互いに近接するように、板状部20を屈曲させる。すると、薄肉部25が延出ラインL1を折れ目として屈曲して、板状部20全体が薄肉部25を介して屈曲すると共に、フランジ部30も屈曲する(
図6参照)。
【0050】
その結果、
図7に示すように、各第1突条41の一対の係合爪部47,47、及び、第2突条43の係合爪部49が、孔5の裏側周縁に係合可能な位置(
図3参照)から、孔5の裏側周縁に係合しない位置に移動する。この状態で、プラグ10を部材1の表側に向けて押し込むと、各係合爪部47,49が孔5の内周に引っ掛からずに、孔5内に挿入されると共に、裏側突出部40,40の係合爪部47,49以外の部分の一部が孔5内に入り込み、更に、フランジ部30の外周縁部31が、部材1の表面に当接して湾曲するように撓み変形する(
図6参照)。
【0051】
更に、プラグ10を押し込んで、各係合爪部47,49を、孔5の裏側開口から挿出させた後、摘まんだ指7をプラグ10から離すことで、薄肉部25を含む板状部20全体及びフランジ部30を屈曲しない状態に戻す。その結果、
図5に示すように、各係合爪部47,49の、係合段部47b,49bが、孔5の裏側周縁に係合すると共に、フランジ部30の外周縁部31が、孔5の表側周縁に当接して、係合爪部47,49及びフランジ部30で部材1を挟持した状態となり、孔5にプラグ10を取付けることができる。この状態では、板状部20のみならず、フランジ部30も屈曲しない状態に戻ると共に、薄肉部25も屈曲しない状態、すなわち、部材1の表面の面方向に対して、薄肉部25の表裏両面が共に平行な状態となる。
【0052】
なお、このプラグ10は、
図9や
図10に示すように、部材1A,1Bが湾曲したり屈曲したりしていても、その孔5に問題なく取付けることができるようになっている。
【0053】
図9には、湾曲した部材1Aの孔5に、プラグ10を取付けた状態が示されている。この場合、薄肉部25が適宜湾曲することで、係合爪部47,49の位置を移動させて、孔5の裏側周縁に係合させ、孔5にプラグ10を取付け可能となる。なお、この状態では、薄肉部25が、部材1の表面から離れるように、板状部20の外方に向けてやや湾曲した状態が維持される。
【0054】
図10には、屈曲した部材1Bの孔5に、プラグ10を取付けた状態が示されている。この場合、薄肉部25が適宜屈曲することで、係合爪部47,49の位置を移動させて、孔5の裏側周縁に係合させ、孔5にプラグ10を取付け可能となる。なお、この状態では、薄肉部25が、略「く」の字状に屈曲した状態に維持される。
【0055】
そして、このホールプラグ10によれば、板状部20を表側から摘まんで、薄肉部25の延出ラインL1に沿って、薄肉部25の両側の、裏側突出部40,40の対向面45,45どうしを互いに近接するように、板状部20を屈曲させることで、係合爪部47,49のS1´,S2´が、孔5の内側寸法S3よりも小さくなり、孔5に対して係合爪部47,49を通過可能に構成されている。
【0056】
そのため、係合爪部47,49を設けた裏側突出部40の、板状部20の裏側から突出量、ひいては孔5の裏側からの突出量を抑えて、プラグ10を高さ方向において薄くすることができる。すなわち、裏側突出部40の、孔5への挿入時における撓み変形を、考慮する必要がないため、裏側突出部40を低くすることができる。加えて、裏側突出部40の撓み変形を考慮する必要がないので、裏側突出部40の剛性を最大限に高めて、孔5に対するプラグ10の取付け状態を安定させることができる。
【0057】
それと共に、孔5に対する裏側突出部40や係合爪部47,49の挿入時に、板状部20の屈曲作業によって、係合爪部47,49の外側寸法を可変させて(S1からS1´へと可変させ、S2からS2´へと可変させる)、孔5に対して係合爪部47,49を通過可能であるため、孔5にプラグ10を取付けしやすくすることができる。すなわち、孔5への裏側突出部40や係合爪部47,49の挿入時に、孔5の内周に係合爪部47,49に押圧されつつ、プラグ10を押し込む必要がないため、プラグ10の取付作業性を向上させることができる。
【0058】
また、この実施形態においては、板状部20の表側であって、薄肉部25の両側には、板状部20の表側を摘まむための、表側突出部50,50が設けられている。この態様によれば、板状部20の表側を摘まみやすくすることができるので、板状部20を屈曲させやすくすることができる。また、表側突出部50によって、板状部20の剛性を高めることができ、孔5に対するプラグ10の取付け状態を、より安定させることができる。
【0059】
更に、この実施形態においては、裏側突出部40は、板状部20の裏側であって、薄肉部25の延出ラインL1に対して並列して延びる、少なくとも一対の第1突条41,41を有しており、該第1突条41の延出方向の両端部に、係合爪部47,47がそれぞれ設けられている。
【0060】
上記態様によれば、各第1突条41の延出方向の両端部にそれぞれ設けた係合爪部47,47が、孔5の裏側周縁に係合するため、部材1に形成した孔5に対して、ホールプラグ10を安定して取付けることができ、且つ、孔5からプラグ10を外れにくくすることができる。すなわち、仮に、摘み方向(延出ラインL1に直交する方向)に沿った位置にのみ、第2突条43の係合爪部を設けた場合、孔5にプラグ10が取付けられた後、不測の外力によって板状部20が屈曲した際に、孔5と係合爪部との係合が解除されやすい(係合爪部が、孔5の裏側周縁から外れやすいため)。これに対して本実施形態では、上記のように、第1突条41の延出方向の両端部に係合爪部47,47をそれぞれ設けたので、不測の外力によって板状部20が屈曲した場合でも、係合爪部47が孔5の裏側周縁に係合した状態に維持しやすく、孔5と係合爪部47との係合が解除されづらいため、孔5にプラグ10を安定して取付けることができる。
【0061】
また、この実施形態においては、
図3に示すように、裏側突出部40は、第1突条41に対して交差するように、板状部20の外方に向けて延びる、第2突条43を更に有しており、該第2突条43の延出方向の先端部にも、係合爪部49が設けられている。
【0062】
上記態様によれば、孔5の裏側周縁に係合する係合爪部49を更に増やすことができ、部材1に形成した孔5に、プラグ10を更に安定して取付けることができ、且つ、孔5からプラグ10をより外れにくくすることができる。また、板状部20の裏側における、薄肉部25の延出ラインL1を挟んで両側部分の、剛性を高めることができるので、板状部20の表側を摘まんで板状部20を屈曲させる際に、板状部20をより屈曲させやすくすることができる。
【0063】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1,1A,1B 部材
5 孔
10 ホールプラグ(プラグ)
20 板状部
21 中心部
25 薄肉部
30 フランジ部
40,40A 裏側突出部
41 第1突条
43 第2突条
45 対向面
47,47A,49 係合爪部
50 裏側突出部
C 中心
L1 延出ライン