(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】釣状況管理装置及びこれを備えた釣竿
(51)【国際特許分類】
A01K 97/12 20060101AFI20241111BHJP
A01K 87/00 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
A01K97/12 Z
A01K87/00 640Z
(21)【出願番号】P 2021151421
(22)【出願日】2021-09-16
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】小田 琢也
(72)【発明者】
【氏名】三屋 幸久
(72)【発明者】
【氏名】古川 素基
【審査官】小林 直暉
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-320638(JP,A)
【文献】実開昭62-094780(JP,U)
【文献】特開平05-227864(JP,A)
【文献】特開平1-296932(JP,A)
【文献】特開2013-192542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 97/12
A01K 87/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部を備える釣竿に設けられる釣状況処理装置であって、
該把持部に設けられ、該把持部に振動を発生させる振動生成部と、該釣竿に設けられ、
該釣竿の動きと振動を少なくとも含む釣状況を検出して釣状況に関するデータを生成する検出部と、該釣状況に関するデータに基づき、振動発生信号を形成しかつ該振動生成部に送信する処理部と、を備え、
前記釣状況の内、特定の釣状況を検出した場合、前記振動発生信号は調整さ
れ、前記釣竿の動き及び前記釣竿の振動に基づいて、前記特定の釣状況として、ユーザの誘い動作又は着底の少なくともいずれかであるか判断し、その判断結果に応じて前記振動発生信号を調整することを特徴とする、釣状況管理装置。
【請求項2】
前記振動発生信号は、第1の閾値以下の信号が除去されるが、前記特定の釣状況が、魚のアタリである場合、該アタリの信号は該第1の閾値以下の信号が除去されないよう調整される、請求項1に記載の釣状況管理装置。
【請求項3】
前記釣竿が動いておらず、該釣竿の振動がアタリの閾値より大きい場合、前記釣状況は、魚のアタリであると判断され、前記振動発生信号は、該第1の閾値以下の信号が除去されないよう調整される、請求項1に記載の釣状況管理装置。
【請求項4】
前記釣竿が動いているが下方向に動いていない場合であって、該釣竿の振動が誘いの閾値より大きい場合、前記特定の釣状況は、ユーザの誘い動作の場合であると判断され、前記振動発生信号は、第1の閾値以下の信号が除去されるよう調整される、請求項1に記載の釣状況管理装置。
【請求項5】
前記釣竿が動いておりかつ下方向に動いている場合であって、該釣竿の振動が着底の閾値より小さい場合、前記特定の釣状況は、ユーザの誘い動作の場合であると判断され、前記振動発生信号は、第1の閾値以下の信号が除去されるよう調整される、請求項1に記載の釣状況管理装置。
【請求項6】
前記釣竿が動いておりかつ下方向に動いている場合であって、該釣竿の振動が着底の閾値以上である場合、前記特定の釣状況は、着底であると判断され、前記振動発生信号は、所定の時間出力停止にされ、該所定の時間経過後は、前記振動発生信号は、第1の閾値以下の信号が除去されるよう調整される、請求項1に記載の釣状況管理装置。
【請求項7】
前記第1の閾値は、電気的又は環境ノイズに基づくノイズを除去するために設定される、請求項2から6までのいずれか1項に記載の釣状況管理装置。
【請求項8】
前記振動発生信号は、電気的ノイズの除去のため、オフセットされるよう調整される、請求項1から7までのいずれか1項に記載の釣状況管理装置。
【請求項9】
前記検出部は、1又は複数のセンサであり、該1又は複数のセンサは、振動センサ、加速度センサ、糸長センサ、糸張力センサの少なくともいずれかであり、該振動センサは前記釣竿の振動を検出可能であり、該加速度センサは、前記釣竿が動いているかを検出可能である、請求項1から8までのいずれか1項に記載の釣状況管理装置。
【請求項10】
調整された前記振動発生信号は、振動生成部での出力前に増幅される、請求項1から9までのいずれか1項に記載の釣状況管理装置。
【請求項11】
1又は複数の増幅直線・曲線の中から選択された増幅直線・曲線に基づき、調整された前記振動発生信号が振動生成部での出力前に増幅される、請求項1から10までのいずれか1項に記載の釣状況管理装置。
【請求項12】
前記振動生成部は、前記把持部を振動させるアクチュエータ部を備え、前記処理部による振動発生信号に基づき該アクチュエータ部を駆動させる、請求項1から11までのいずれか1項に記載の釣状況管理装置。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の釣状況管理装置を備えることを特徴とする釣竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣状況を検出し、振動生成するための装置及びこれを備えた釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、釣り竿を模擬できる装置や魚信の検出ができる装置が知られている。釣り竿を模擬できる装置は、釣り竿を保持して釣りの所定の体験ができるようになっている。また、魚信の検出ができる装置では、所謂アタリの振動を検知して、これを発光体やブザーなどの報知手段や電子装置を用いて釣人に知らせるようにしている。
【0003】
このような釣り竿を模擬できる装置は、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1では、釣りゲーム等に用いられる入力装置に係り、特に、釣り糸等の機械的な拘束なく、釣り竿等を模擬できる入力装置およびその処理技術に係り、操作者が把持部を把持して操作することによりその全体が動かされる入力装置であって、当該入力装置の動きを検出する動き検出手段を備えたことを特徴とする入力装置が開示されている。
【0004】
また、魚信の検出ができる装置として、特許文献2では、釣竿の先端に位置するように形成された取付体の前方の下側に、釣糸支承環の支持杆を設け、該支持杆の下端近傍に水平方向に伸びる支軸を有する枢軸部を設け、該枢軸部に上部に回動接点を有する釣糸支承環の中部を軸着し、取付体の前端下側に固定接点を設け、釣糸支承環を常時後傾姿勢をとらせるようにし、釣糸支承環をくぐらせた釣糸が釣糸支承環の下半部に当接するとき、その当接によって後傾姿勢の釣糸支承環を前傾する向きに回動させて回動接点を固定接点に接触させ、釣糸の前記の当接が緩められると釣糸支承環が後傾する向きに回動して回動接点が固定接点から離れるように構成し、かつ、電池の一方の電極と回動接点とを結線し他方の電極と固定接点とを結線して、その結線路中に電気報知器を挿設したところの感知部と、釣竿の先端近傍の下側にあって釣糸支承環の後方に位置して釣糸を係止する釣糸係止部とから成る魚信の感知装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-214155号公報
【文献】特開2005-34116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に係る態様では、アタリ(魚信)の際の釣り竿を模擬することができるとするものの、該アタリはあくまで魚が餌を咥え、釣針に魚がかかった状態であり、該アタリ以外の仕掛け投入から魚を釣り上げるまでの間の状態を模擬するものではなく、また、釣り竿の模擬はあくまでゲーム上のものであり、仕掛け投入から魚を釣り上げるまでの間の状態を検出し、これに基づき振動生成を行うことができないという問題があった。
【0007】
また、特許文献2に掛かる態様では、アタリの感知を行うことができるとするものの、該アタリ以外の仕掛け投入から魚を釣り上げるまでの間の状態を知ること自体が難しいため、これを検出したり、これに基づき振動生成を行うことがそもそもできないという問題があった。
【0008】
着底を含め仕掛け投入からアタリまでの間の魚や釣糸の状況、またアタリ以降の巻上げ等の状況(以下、総合して釣状況と呼ぶこととする)を広く検出すると共に、これに基づき振動生成を行うことができれば、釣果を向上させることができたり、釣りへの関心や興味を大幅に高めることに繋がるが、特許文献1に係る態様も含め、このような釣状況の記録や再現を行うことはできていない。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上述のような釣状況を検出すると共に、これに基づき振動生成を行うことが可能な釣状況管理装置及びこれを備えた釣竿を提供することにある。本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置は、把持部を備える釣竿に設けられる釣状況処理装置であって、該把持部に設けられ、該把持部に振動を発生させる振動生成部と、該釣竿に設けられ、該釣竿の動きと振動を少なくとも含む釣状況を検出して釣状況に関するデータを生成する検出部と、該釣状況に関するデータに基づき、振動発生信号を形成しかつ該振動生成部に送信する処理部と、を備え、前記釣状況の内、特定の釣状況を検出した場合、前記振動発生信号は調整される。
【0011】
本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置において、前記振動発生信号は、第1の閾値以下の信号が除去されるが、前記特定の釣状況が、魚のアタリである場合、該アタリの信号は該第1の閾値以下の信号が除去されないよう調整される。
【0012】
本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置において、前記釣竿が動いておらず、該釣竿の振動がアタリの閾値より大きい場合、前記釣状況は、魚のアタリであると判断され、前記振動発生信号は、該第1の閾値以下の信号が除去されないよう調整される。
【0013】
本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置において、前記釣竿が動いているが下方向に動いていない場合であって、該釣竿の振動が誘いの閾値より大きい場合、前記特定の釣状況は、ユーザの誘い動作の場合であると判断され、前記振動発生信号は、第1の閾値以下の信号が除去されるよう調整される。
【0014】
本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置において、前記釣竿が動いておりかつ下方向に動いている場合であって、該釣竿の振動が着底の閾値より小さい場合、前記特定の釣状況は、ユーザの誘い動作の場合であると判断され、前記振動発生信号は、第1の閾値以下の信号が除去されるよう調整される。
【0015】
本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置は、前記釣竿が動いておりかつ下方向に動いている場合であって、該釣竿の振動が着底の閾値以上である場合、前記特定の釣状況は、着底であると判断され、前記振動発生信号は、所定の時間出力停止にされ、該所定の時間経過後は、前記振動発生信号は、第1の閾値以下の信号が除去されるよう調整される。
【0016】
本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置において、前記第1の閾値は、電気的又は環境ノイズに基づくノイズを除去するために設定される。
【0017】
本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置において、前記振動発生信号は、電気的ノイズの除去のため、オフセットされるよう調整される。
【0018】
本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置において、前記検出部は、1又は複数のセンサであり、該1又は複数のセンサは、振動センサ、加速度センサ、糸長センサ、糸張力センサの少なくともいずれかであり、該振動センサは前記釣竿の振動を検出可能であり、該加速度センサは、前記釣竿が動いているかを検出可能である。
【0019】
本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置において、調整された前記振動発生信号は、振動生成部での出力前に増幅される。また、本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置において、1又は複数の増幅直線・曲線の中から選択された増幅直線・曲線に基づき、調整された前記振動発生信号が振動生成部での出力前に増幅される。
【0020】
本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置において、前記振動生成部は、前記把持部を振動させるアクチュエータ部を備え、前記処理部による振動発生信号に基づき該アクチュエータ部を駆動させる。
【0021】
本発明の一実施形態に係る釣竿は、上記いずれかの釣状況管理装置を備えるように構成される。
【発明の効果】
【0022】
上記実施形態によれば、釣状況を検出すると共に、これに基づき振動生成を行うことが可能な釣状況管理装置及びこれを備えた釣竿を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る釣竿を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置における釣状況に関するデータを示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置における振動発生信号の調整方法を説明する図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置における振動発生信号の調整方法のフローを説明する図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置における振動発生信号の出力制御方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る釣竿の実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0025】
図1は、釣竿を説明する図である。図示のように、釣竿11は、竿体2と、竿体2に釣竿11を介して取り付けられたリール6と、竿体2に取り付けられた釣糸ガイド10と、を備える。図示の実施形態においては、釣竿11及び釣糸ガイド10の各々が、竿体の外周面に取り付けられる取付部品に該当する。
【0026】
竿体2は、例えば、元竿3、中竿5、及び穂先竿7等を連結することによって構成されている。これらの各竿体は、例えば、並継ぎ式に継合される。元竿3、中竿5、及び穂先竿7は、振出方式、逆並継方式、インロー方式、又はこれら以外の公知の任意の継合方式により継合され得る。竿体2は、単一の竿体から構成されていても良い。
【0027】
元竿3、中竿5、及び穂先竿7は、例えば、繊維強化樹脂製の管状体で構成されている。この繊維強化樹脂製の管状体は、強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂プリプレグ(プリプレグシート)を芯金に巻回し、このプリプレグシートを加熱して硬化させることにより作成される。このプリプレグシートに含まれる強化繊維として、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、及びこれら以外の任意の公知の強化繊維を用いることができる。当該プリプレグシートに含まれるマトリクス樹脂として、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。プリプレグシートが硬化された後には、芯金が脱芯される。また、管状体の外表面は、適宜研磨される。各竿体は、中実状に構成されてもよい。
【0028】
図示の実施形態において、元竿3、中竿5及び穂先竿7には、釣竿11に装着されるリール6から繰り出される釣糸を案内する複数の釣糸ガイド10(釣糸ガイド10A~10D)が設けられている。より具体的には、元竿3には釣糸ガイド10Aが設けられ、中竿5には釣糸ガイド10Bが設けられ、穂先竿7には釣糸ガイド10Cが設けられている。穂先竿7の先端には、トップガイド10Dが設けられるが、詳細は省略する。
【0029】
次に、
図2を参照して、本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置について説明する。図示のように、本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置1は、把持部4を備える釣竿11に設けられる釣状況処理装置1であって、該把持部4に設けられ、該把持部4に振動を発生させる振動生成部12と、該釣竿11に設けられ、該釣竿11の動きと振動を少なくとも含む釣状況を検出して釣状況に関するデータを生成する検出部13と、該釣状況に関するデータに基づき、振動発生信号を形成しかつ該振動生成部12に送信する処理部15と、を備え、該釣状況の内、特定の釣状況を検出した場合、該振動発生信号は調整されるように構成される。また、本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置1は、該釣状況に関するデータを外部とやり取りするための送受信部14を備えるように構成してもよい。ここで、ここで、外部(装置)とは、外部の情報通信端末(例えば、スマートフォンなど)や情報処理装置、情報処理システム、クラウドシステム(クラウド装置)が考えられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置1によれば、釣状況を検出すると共に、これに基づき振動生成を行うことが可能な釣状況管理装置を提供することが可能となる。これにより、釣人は、アタリ以前の釣糸や釣針等の状況やアタリ以降の釣糸や釣針等の状況(釣竿の手元で感じる振動等の情報)を釣竿の把持部で的確に感知せしめることができるため、釣果の向上に資するだけでなく、釣りへの関心の向上に繋げることができる。
【0031】
ここで、釣状況とは、仕掛け投入から魚を釣り上げるまでの間の状態における、釣竿の動き(例えば、速度、加速度、傾き、振動、引張力等)、釣針や釣糸の動きや引張力、釣糸の糸長又は魚釣用リールの各種パラメータ(例えば、スプールの回転速度、スプールに働く力)の少なくともいずれかをいうものとする。また、その他に、風量、温度、日照、又は船/はしけ等の釣り場(立地点)の振動等も含まれ得るが、これらに限られない。なお、当該釣糸8には、釣針16に加えて、ルアーや集魚部材(例えば、コマセ籠や集魚板など)等を取付けることができ(これらに限られない)、これらを総称して釣針等と呼ぶこととする。また、振動生成に関する設定値は、仕掛け投入から魚を釣り上げるまでの間の状態における、振動生成のための設定値をいい、例えば、振動量(アクチュエータへ出力される電圧値)、振動時間、振動間隔、振動タイミングをいう。
【0032】
ここで、検出部13は、1又は複数のセンサであり、振動センサ、加速度センサ、糸長センサ、糸張力センサの少なくともいずれかである。また、検出部13として、圧電素子、ひずみゲージ”又は歪検出素子を用いることもできる。検出部13により検出された釣状況に関するデータに基づき、該釣竿の動きや振動を振動生成部12により生成することができる。また、該釣竿の動きや振動を振動生成部12により増幅して生成してもよい。または、該釣竿の動きや振動を振動生成部12において伝達強度を調整して生成するようにしてもよい。ここで、把持部4の一部として振動生成部12を構成することができ、把持部4に振動を発生させることは、振動生成部12自身が振動することも含むものとする(本明細書を通じて同様とする)。なお、当該釣糸8には、釣針16に加えて、ルアーや集魚部材(例えば、コマセ籠や集魚板など)等を取付けることができ(これらに限られない)、これらを総称して釣針等と呼ぶこととする。
【0033】
ここで、端部に釣針16を有する釣糸が取付けられた釣竿11という場合、当該端部は、仕掛けの種類によっては、厳密な意味で端部とはならない場合もある。例えば、釣糸の端部に仕掛けやルアー若しくはその他の部材が設けられ、これらに釣針16が設けられることもあるし、釣糸自体が複数の釣糸で構成されていたり、複数の釣糸とこれらの釣糸間に別の中間部材が取付けられるなど様々な態様が考えられる。以上のことから、釣糸には、1つの釣糸、複数の釣糸、又は複数の釣糸とこれらの間に設けられた中間部材とで構成され得、釣糸の端部に釣針を設けるという場合、釣糸の端部に直接又は中間部材(仕掛けやルアー等が想定されるがこれらに限られない)を介して設けることを意味するものと理解されたい。
【0034】
本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置1において、当該振動生成部12は、当該把持部4を振動させるアクチュエータ部を備え、当該処理部15による振動発生信号に基づき該アクチュエータ部を駆動させるように構成される。ここで、また、本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置において、前記アクチュエータ部は、板状アクチュエータであるように構成される。板状アクチュエータが望ましい理由は、まず、振動生成12の振動波形を釣人の実釣感覚と同化させるのに最適であること(板の変形形態が釣竿の変形形態と同じで、穂先の変形・振動が手元にあるように感ずる)、次に、物理的な変形により、例えば、低周波数(1Hz~)の振動も感じ取ることができることからである。なお、当該アクチュエータ部は、板状アクチュエータに限られず、その他の態様であってもよい。
【0035】
次に、
図3を参照して、本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置1における釣状況に関するデータについて説明する。
図3において、横軸は時間を示し、縦軸に電圧を示す。図示の例では、カワハギを例に釣の開始からカワハギが釣れるまでの、該釣竿の動きや振動を検出部13により捉えたものである。
【0036】
例えば、本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置1において、検出部13が、図示の釣状況に関するデータAを検出したとすると、波形の性質から釣竿による誘いの動作中であることが判るため、当該振動生成部は、釣竿による誘いの動作中であることを示す第1の振動を生成するようにする。
【0037】
また、例えば、本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置1において、検出部13が、図示の釣状況に関するデータBを検出したとすると、波形の性質から釣針に魚が近付いている(所謂前アタリとも呼ぶ)ことを示すことが判るため、当該振動生成部は、釣針に魚が近付いていることを示す第2の振動を生成するようにする。
【0038】
次に、例えば、本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置1において、検出部13が、図示の釣状況に関するデータCを検出したとすると、波形の性質から釣針への魚のアタリを示すことが判るため、当該振動生成部は、釣針への魚のアタリを示す第3の振動を生成するようにする。
【0039】
また、例えば、本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置1において、検出部13が、図示の釣状況に関するデータDを検出したとすると、波形の性質から釣糸の合わせ及び巻上げ中であることを示すことが判るため、当該振動生成部は、釣糸の合わせ及び巻上げ中であることを示す第4の振動を生成するようにする。
【0040】
次に、例えば、本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置1において、検出部13が、図示の釣状況に関するデータEを検出したとすると、波形の性質から釣糸の巻上げ中であることを示すことが判るため、当該振動生成部12は、釣糸の巻上げ中であることを示す第5の振動を生成するようにする。
【0041】
次に、
図4、5を参照して、本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置1における振動発生信号の調整方法について説明する。
図4(a)に魚のアタリの信号(生の振動データを示す)であり、
図4(b)は、電気ノイズや環境ノイズ(例えば、閾値以下の微小なノイズや小魚が糸に触れた際の振動)を除去するため、所定の閾値(第1の閾値といい、例えば、電圧±10mV(単位)に設定する方法があるが、諸条件により変動し得る)以下の信号を除去したものである。図示の信号は、ノイズが除去されているものの、魚のアタリの信号がトゲトゲしく感じる(アタリの信号の増幅再現性が低く違和感を感じる)ことが判明した。これを踏まえ、
図4(c)に示す信号は、所定の調整を経たものである。より具体的には、魚のアタリと思われる信号については、上述のトゲトゲしさを緩和するため、所定の閾値(第1の閾値といい、例えば、電圧±10mV(単位)に設定する方法があるが、諸条件により変動し得る)以下の信号を除去を行わないようにすることで、魚のアタリの際の振動生成をより的確なものとすることができることが判った。ここで、当該第1の閾値は、魚のアタリである場合、誘い動作である場合、着底時の振動の場合のいずれであるかにより異なる(設定すべき閾値が各場合で異なる)が、本明細書ではこれらを第1の閾値として説明している。
また、入力値(電圧値)は、例えば、通常+数mV付近の値である(+数mVのバイアスがかかっている)が、そのため、0mV付近にオフセットする(-数mVから0mV付近にオフセットも可能)ことで、プラス側、マイナス側の両方で魚のアタリを検出できる。これにより、原点(0V)の位置で振動の検出が可能となり、正確な出力ができる。
【0042】
本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置1において、当該振動発生信号は、第1の閾値以下の信号が除去されるが、当該特定の釣状況が、魚のアタリである場合、該アタリの信号は該第1の閾値以下の信号が除去されないよう調整される。このようにして、魚のアタリの際の振動生成をより的確なものとすることができる。
【0043】
また、本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置1において、釣竿が動いておらず、該釣竿の振動がアタリの閾値より大きい場合、当該釣状況は、魚のアタリであると判断され、当該振動発生信号は、該第1の閾値以下の信号が除去されないよう調整される。このようにして、魚のアタリの際の振動生成をより的確なものとすることができる。
【0044】
次に、
図5を参照して、本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置1における振動発生信号の調整方法のフローについて説明する。図示のように、まず、釣状況管理装置1の処理部15により、釣りの状態が着底出力制限時間内か判断される(ステップS1)。着底出力制限時間内である場合は、出力値を0とし(ステップS6)、アクチュエータへの出力を0、すなわち出力を行わないようにする(ステップS7)。着底後すぐの振動が魚のアタリの信号と似ているため、この間に出力を行うと魚のアタリであると誤認識してしまう可能性があり、これを防止するため、一定の制限時間内である場合は、アクチュエータへの出力を停止することが有効となる。
【0045】
詳細は後述するが、次にステップで、電気的ノイズを考慮し、入力値を所定分(所定値分)だけオフセットする(ステップS2)。次に、処理部15は、釣竿(ロッド)が動いているか判断する(ステップS3)。ステップS3で釣竿(ロッド)が動いていない場合は、次に進み、入力値がアタリ閾値範囲内であるか判断され(ステップS4)、アタリ閾値範囲内である場合は、次に進み、アタリ出力時間内であるかが判断される(ステップS5)。なお、このステップは、釣竿から感じる魚のアタリに近付けるための処理となる。
【0046】
アタリ出力時間内でない場合は、ノイズと判定され、出力値を0とし(ステップS6)、アクチュエータへの出力を0、すなわち出力を行わないようにする(ステップS7)。他方で、アタリ出力時間内である場合は、魚のアタリが継続していると判断され、アタリ出力時間の残り時間を計算し(ステップS5A)、アタリ出力値を算出し(ステップS5B)、アクチュエータへの出力を行う(S7)。
【0047】
上述のステップにおいて、入力値がアタリ閾値範囲内であるか判断され(ステップS4)、アタリ閾値範囲内より大きい場合は、魚のアタリであると判断され、次に進み、アタリ出力時間を設定し(ステップS4A)、アタリ出力値を算出し(ステップS4B)、アクチュエータへの出力を行う(ステップS7)。
【0048】
次に、処理部15は、釣竿(ロッド)が動いているか判断し(ステップS3)、で釣竿(ロッド)が動いてる場合は、次に進み、釣竿(ロッド)が下方向に動いているか判断される(ステップS3A)。ステップS3Aで、釣竿(ロッド)が下方向に動いていると判断された場合は、次に進み、入力値が着底判定閾値以上であるかが判断される(ステップS3B)。入力値が着底判定閾値以上である場合は、着底であると判断され、着底出力時間を設定し(ステップS3C)、着底出力値を算出し(ステップ3D)、アクチュエータへ出力を行う(ステップS7)。
【0049】
他方、入力値が着底判定閾値未満である場合は、次に進み、入力値が誘い出力閾値以内であるかが判断される(S3AB1)。入力値が誘い出力閾値以内でない場合は、ユーザの誘い動作の場合の動作であると判断され、誘い出力値を算出し(ステップS3AB2)、アクチュエータへ出力を行う(ステップS7)。入力値が誘い出力閾値以内である場合は、ノイズと判定され、出力値を0とし(ステップS3AB3)、アクチュエータへの出力を0、すなわち出力を行わないようにする(ステップS7)。なお、上記の設定として、糸長センサによる糸長、糸張力センサによるパラメータを含めてもよい。
【0050】
以上のようにして、魚のアタリ、着底、ユーザの誘い動作の各状態の適切な判断を行い、これらの各状態に応じた適切な出力をアクチュエータに行わしめることができ、釣人に各状態を的確かつ確実に感知させることが可能となる。
【0051】
本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置1において、釣竿が動いているが下方向に動いていない場合であって、該釣竿の振動が誘いの閾値(例えば、電圧±10mV(単位)を誘いの閾値(ユーザの誘い動作の閾値)とすることができるが、これに限られない)より大きい場合、前記特定の釣状況は、ユーザの誘い動作の場合であると判断され、前記振動発生信号は、第1の閾値以下の信号が除去されるよう調整される。
【0052】
本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置において、前記釣竿が動いておりかつ下方向に動いている場合であって、該釣竿の振動が着底の閾値より小さい場合、前記特定の釣状況は、ユーザの誘い動作の場合であると判断され、前記振動発生信号は、第1の閾値以下の信号が除去されるよう調整される。
【0053】
本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置は、前記釣竿が動いておりかつ下方向に動いている場合であって、該釣竿の振動が着底の閾値以上である場合、前記特定の釣状況は、着底であると判断され、前記振動発生信号は、所定の時間出力停止にされ、該所定の時間経過後は、前記振動発生信号は、第1の閾値以下の信号が除去されるよう調整される。
【0054】
本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置において、前記第1の閾値は、電気的又は環境ノイズに基づくノイズを除去するために設定される。
【0055】
本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置において、前記振動発生信号は、電気的ノイズの除去のため、オフセットされるよう調整される。
【0056】
本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置において、前記検出部は、1又は複数のセンサであり、該1又は複数のセンサは、振動センサ、加速度センサ、糸長センサ、糸張力センサの少なくともいずれかであり、該振動センサは前記釣竿の振動を検出可能であり、該加速度センサは、前記釣竿が動いているかを検出可能である。
【0057】
次に、
図6を参照して、本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置1における振動発生信号の出力制御方法について説明する。図示のように、まず、本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置において、前記振動発生信号は、電気的ノイズの除去のため、所定のオフセット値だけオフセットされるよう調整される。このようにして、効果的に電気的ノイズを除去することが可能となる。
【0058】
また、本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置において、調整された前記振動発生信号は、振動生成部での出力前に増幅される。図示のように、本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置において、1又は複数の増幅直線・曲線(図示の例では、増幅直線X,増幅曲線Y、Z)の中から選択された増幅直線・曲線に基づき、調整された前記振動発生信号が振動生成部での出力前に増幅される。
【0059】
例えば、増幅直線Xでは、立ち上がりの入力値をそのまま出力すると、出力値が低くなり、ユーザが生成された振動を感じづらくなるという問題があることが判っているが、増幅直線Xの立ち上がりを垂直又は略垂直な直線とすることで、ユーザに振動を感じ易くさせるようにすることができる。また、増幅直線X、その後の比較的急な傾きを持つ増幅直線としてなっているために、ある程度の入力値の幅で大きな出力を行うようにして全体的な出力値を高く形成することができる。このように、増幅直線をどのように設定するかは、ユーザの好みや釣り環境により異なり、様々な増幅直線・曲線の中から選択するようにすることができる。
【0060】
また、図示のように、増幅曲線として、増幅曲線Y、Zが示されており、入力値のより狭い幅で出力値を高める場合は増幅曲線Yを、入力値のより広い幅で出力値を高める場合は増幅曲線Zを選択するようにすることができる。このようにして、ユーザの好みや釣り環境に応じて、より適切な出力増幅を行うようにすることができる。
【0061】
さらには、図示の出力値は、センサ入力電圧に対するアクチュエータへの出力電圧であるところ、アクチュエータの電圧規格値以上の入力でアクチュエータが破損してしまう恐れがあるため、これを防止するため、アクチュエータの電圧規格値以内で最大出力値を設定することができる。このようにして、アクチュエータの破損を効果的に防止することができる。
【0062】
本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置において、前記振動生成部は、前記把持部を振動させるアクチュエータ部を備え、前記処理部による振動発生信号に基づき該アクチュエータ部を駆動させる。
【0063】
本発明の一実施形態に係る釣竿は、上記いずれかの釣状況管理装置を備えるように構成される。
【0064】
本発明の一実施形態に係る釣状況管理装置1は、表示部(図示しない)を備え、該表示部は、当該釣状況を表示するように構成してもよい。
【0065】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0066】
1 釣状況管理装置
2 竿体
3 元竿
4 把持部
5 中竿
6 リール
7 穂先竿
8 釣糸
10 釣糸ガイド
11 釣竿
12 振動生成部
13 第1の検出部
14 記録部
15 処理部
16 釣針
17 送受信部