IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -車両用灯具 図1
  • -車両用灯具 図2
  • -車両用灯具 図3
  • -車両用灯具 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/24 20060101AFI20241111BHJP
   F21V 14/04 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
B60Q1/24 B
F21V14/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021162622
(22)【出願日】2021-10-01
(65)【公開番号】P2023053532
(43)【公開日】2023-04-13
【審査請求日】2024-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】北澤 達磨
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-31807(JP,A)
【文献】特開2016-9609(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0043702(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/24
F21V 14/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配光可変型灯具ユニットと、車両周辺の物体検出信号を取得する、物体検出信号取得部と、取得された物体検出信号に基づいて、前記配光可変型灯具ユニットの照射領域および照射光量をそれぞれ調整する配光可変制御部と、を備えた車両用灯具において、
前記配光可変型灯具ユニットが、車両周辺のカーブミラーの物体検出信号に基づき、検出された前記カーブミラーを照射するように構成されたことを特徴とする、車両用灯具。
【請求項2】
前記物体検出信号取得部は、車両周辺を撮像して、前記カーブミラーを検出する周辺検出ユニットであることを特徴とする、請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記車両用灯具は、配光可変型車両用前照灯であって、
前記配光可変型灯具ユニットは、配光可変型前照灯ユニットであって、前記カーブミラーに光を照射する照射領域を少なくとも一部に有することを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記配光可変型灯具ユニットによる光が、点滅光であることを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記配光可変型灯具ユニットが、車両の左右両側に設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記物体検出信号取得部が、車両周辺に存在する左右のカーブミラーの検出信号を取得し、
前記配光可変型灯具ユニットは、自車両が曲がらない方向のカーブミラーに常時点灯光を照射し、かつ自車両が曲がる方向のカーブミラーに点滅光を照射するように構成されたことを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
死角が生じる曲がり角への自車両を侵入させる際に、曲がり角の死角にいる歩行者や他車両に自車両の侵入を報知可能な車両用灯具。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図3及び図4には、走査機構により、白色光の所定の点消灯制御を行いつつ車両の前方に高速で走査し、所定形状の白色配光パターンを表示する車両用前照灯が開示されている。
【0003】
また、特許文献2の[0049]~[0052]及び図7(a)~(c)には、自車両前方の歩行者をカメラ等で検出し、照射幅が変化するスポット光を、検出した歩行者に照射することで自車両のドライバーに、歩行者接近の危険性を報知する、車両用スポットランプ制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-130398号公報
【文献】特開2013-82253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の車両用前照灯は、自車両の前方を前照灯配光パターンによって照明するものの、当該前照灯配光パターンは、自車両の周囲に存在する歩行者や他車両に、具体的な進路変更方向を知らせるものではない。また、特許文献2の車両用スポットランプ制御装置は、死角の生じるT字路や交差点等、曲がり角の死角にいる歩行者を検出することが出来ず、ドライバーに報知することが出来ない。
【0006】
このような場合、死角にいる歩行者は、曲がり角に設置されたカーブミラーに写る自車両を視認し、自車両の接近及び自車両に表示される左右ターンシグナルランプのいずれが点滅するかを視認することで、自車両が自分に向かってくることを認識し、自車両との衝突を回避することが望ましい。
【0007】
しかし、カーブミラーによって反射される自車両のターンシグナルランプの光は、光量が少なく、車両の左右一方しか光らず、ミラーに反射されても拡散範囲が狭いため、死角にいる歩行者に対し、自車両が自分のいる方向に曲がってくることを十分に報知できないおそれがある。
【0008】
本願は、上記問題に鑑みて、死角が生じる曲がり角への自車両を侵入させる際に、曲がり角の死角にいる歩行者や他車両に自車両の侵入を報知可能な車両用前照灯具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
配光可変型灯具ユニットと、車両周辺の物体検出信号を取得する、物体検出信号取得部と、取得された物体検出信号に基づいて、前記配光可変型灯具ユニットの照射領域および照射光量をそれぞれ調整する配光可変制御部と、を備えた車両用灯具において、前記配光可変型灯具ユニットが、車両周辺のカーブミラーの物体検出信号に基づき、検出された前記カーブミラーを照射するように構成した。
【0010】
(作用)死角が生じる曲がり角への自車両が侵入する際に、物体検出信号取得部で検出された、車両周辺のカーブミラーに対し、配光可変型灯具ユニットから、指向性のある光を照射することで、侵入報知用の反射光が、死角のより広い範囲に照射される。
【0011】
また、前記物体検出信号取得部は、車両周辺を撮像して、前記カーブミラーを検出する周辺検出ユニットであることが望ましい。
【0012】
(作用)死角が生じる曲がり角への自車両が侵入する際に、周辺検出ユニットの撮像結果に基づいて検出された、車両周辺のカーブミラーに対し、配光可変型灯具ユニットから、指向性のある光を照射することで、侵入報知用の反射光が、死角のより広い範囲に照射される。
【0013】
また、前記車両用灯具は、配光可変型車両用前照灯であって、前記配光可変型灯具ユニットは、配光可変型前照灯ユニットであって、前記カーブミラーに光を照射する照射領域を少なくとも一部に有することが望ましい。。
【0014】
(作用)配光可変型前照灯ユニットの少なくとも一部の照射領域を利用して、検出されたカーブミラーに指向性のある光を照射することにより、侵入報知用の反射光をより強い光量でより遠くから曲がり角の死角に照射出来る。
【0015】
また、前記配光可変型灯具ユニットによる光は、点滅光であることが望ましい。
【0016】
(作用)死角となる道路への侵入を報知するための反射光を点滅させることにより、常時点灯させた場合よりも反射光に、変化が生じる。
【0017】
また、前記配光可変型灯具ユニットは、車両の左右両側に設けられていることが望ましい。
【0018】
(作用)死角となる道路への侵入を報知するための照射光を車両の左右両側の配光可変型灯具ユニットからカーブミラーに照射することで、反射光の反射角がより大きくなる。
【0019】
また、前記物体検出信号取得部が、車両周辺に存在する左右のカーブミラーの検出信号を取得し、前記配光可変型灯具ユニットは、自車両が曲がらない方向のカーブミラーに常時点灯光を照射し、かつ自車両が曲がる方向のカーブミラーに点滅光を照射するように構成されることが望ましい。
【0020】
(作用)自車両が曲がる方向の死角には、自車両が曲がる方向に向けて設置されたカーブミラーを介し、点滅光が照射され、自車両が曲がらない方向の死角には、自車両が曲がらない方向に向けて設置されたカーブミラーを介し、常時点灯光が照射される。
【発明の効果】
【0021】
車両用灯具によれば、配光可変型車両用灯具により、曲がり角の死角にいる歩行者や他の車両のドライバーに対し、ターンシグナルランプの反射光よりも明るく広い範囲に自車両の侵入を報知する光が照射され、より広い範囲にいる歩行者や他車両のドライバーに死角から自車両が進入することを報知出来る。また、ターンシグナルランプが点灯していなくても、より強い光でより遠くから、歩行者のいる方向に自車両が曲がってくることを報知できる。
【0022】
また、車両用灯具によれば、ターンシグナルランプよりも格段に明るい前照灯光の少なくとも一部を利用した反射光を、曲がり角の死角にいる歩行者や他のドライバーに向けて照射することで、歩行者等により速く自車両接近による危険性を認識させることが出来る。
【0023】
また、車両用灯具によれば、死角となる道路への侵入を報知するための反射光を変化のある点滅光とすることにより、他の車両に道を譲る際に前照灯で行うパッシング行為のように昼間であっても、曲がり角の死角にいる歩行者や他のドライバーに、曲がり角の死角から来る自車両の接近をより認識させやすくなる。
【0024】
車両用灯具によれば、死角となる道路への侵入を報知するための反射光の反射角がより大きくなることで、曲がり角の死角におけるより広い範囲にいる歩行者や他の車両のドライバーに、自車両の接近をより認識させやすくなる。
【0025】
車両用灯具によれば、自車両の曲がる方向の死角にいる歩行者や他車両のドライバーは、自車両が死角から自分に向かってくることをいち早く認識出来、自車両の曲がらない方向の死角にいる歩行者や他車両のドライバーは、自車両が死角から自分のいる方向に曲がってこないものの、接近しているので飛び出しに注意すべきことを認識出来る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本願発明の車両用灯具である配光可変型の車両用前照灯を含む車両用前照灯システムの概略構成図。
図2】(a)車両用前照灯の配光可変型前照灯ユニットの走査機構をほぼ正面から見た斜視図。(b)配光可変型前照灯ユニットの水平断面図。
図3】(a)走査機構による配光パターン形成手段の説明図。(b)配光可変型前照灯ユニットによる前照灯配光パターン及びカーブミラー照射の説明図。
図4】(a)カーブミラー照射の第1実施例に関する説明図。(b)カーブミラー照射の第2実施例に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本願発明の車両用灯具の実施形態を図1から図4に基づいて説明する。各図においては、車両に対する各方向を(上方:下方:左方:右方:前方:後方=Up:Lo:Le:Ri:Fr:Re)として説明する。
【0028】
図1は、本発明の車両用灯具である左右一対の配光可変型の車両用前照灯(1L,1R)と、左右一対のターンシグナルランプ(2L,2R)と、車両用CPU3と、通信ユニット14を備え、自車両C1(図4を参照)に搭載された、車両用前照灯システムHLS1を示す。左車両用前照灯1Lは、ランプボディ1LB及び透光性を有する前面カバー1LCの内側に、左配光可変型前照灯ユニット4Lと、左前照灯用CPU6Lと、周辺検出ユニットである車載カメラ5を備え、右車両用前照灯1Rは、ランプボディ1RBと透光性を有する前面カバー1RCの内側に、右配光可変型前照灯ユニット4Rと、右前照灯用CPU6Rを有する。左配光可変型前照灯ユニット4Lは、右配光可変型前照灯ユニット4Rと共通の構成を有する。尚、車載カメラ5と、通信ユニット14は、車両周辺のカーブミラーを検出する、物体検出信号取得部を構成する。車載カメラ5は、車両C1の前方周辺を撮像してカーブミラーの位置や大きさ等を検出する。通信ユニット14は、自車両周辺に存在する図示しない他車両、道路上の構造物等(信号機や標識や建物等)の自車両以外の交通インフラによって検出された、自車両前方のカーブミラーの位置や大きさ等に関する信号を、車両間通信や、ネット通信を介して受信する。
【0029】
尚、車載カメラ5は、右配光可変型前照灯ユニット4R内に設置されてもよく、ランプボディ(1LB、1RB)と、前面カバー(1LC,1RC)の外において、通信ユニット14と共に、図4に示す自車両C1の車体のいずれかの箇所に設置されても良く、物体検出信号取得部である車載カメラ5と通信ユニット14は、いずれか一方のみを搭載するようにしてもよい。
【0030】
ターンシグナルランプ(2L,2R)、車載カメラ5及び通信ユニット14は、信号ケーブル7を介して接続された車両用CPU3によって、動作を制御される。配光可変型前照灯ユニット(4L,4R)は、それぞれ前照灯用CPU(6L,6R)を介して車両用CPU3に接続され、前照灯用CPU(6L,6R)は、車両用CPU3の制御信号に基づいて、配光可変型前照灯ユニット(4L,4R)を所定の態様で点消灯制御する。車両用CPU3は、車載カメラ5による自車両周辺の撮像情報を解析し、または、通信ユニットで受信したカーブミラーに関する情報信号から自車両周辺に存在するカーブミラーの位置や大きさ等を検出し、検出結果に基づいて、配光可変型前照灯ユニット(4L,4R)に所定の点消灯を行わせる。
【0031】
図2(a)は、配光可変型前照灯ユニット(4L,4R)に設けられた走査機構8を示す。走査機構8は、2軸方向に傾動可能な反射鏡を有するスキャンデバイスである。走査機構8は、一対の第1トーションバー19を介し、第1回動体17を回動可能に支持するベース16と、一対の第2トーションバー20を介し、第1回動体17によって回動可能に支持される第2回動体18を有する。ベース16には、第1及び第2トーションバー(19、20)の伸びる方向に、永久磁石21と、永久磁石22とが一対ずつ設けられる。第1及び第2回動体(18、19)には、それぞれ端子部23を介して通電される第1及び第2のコイル(図示せず)が設けられ、第1及び第2のコイルは、図1に示す前照灯用CPU(6L,6R)によって、それぞれ独立した通電制御を行われる。
【0032】
図2(a)に示す、第1回動体17は、第1コイル(図示せず)への通電のオンまたはオフに基づいて第1トーションバー19の軸線回りに往復傾動し、第2回動体18は、第2コイル(図示せず)への通電のオンまたはオフに基づいて第2トーションバー20の軸線回りに往復傾動する。反射面24は、第1または第2コイル(図示せず)への通電に基づいて上下左右に傾動し、LED光源9(レーザー光源でもよい)からの光を反射させ、上下左右に走査する。蛍光体12を通過した光は、投影レンズ11と図1に示す前面カバー(1LC,1RC)を透過し、車両の前方に走査に基づいた所定形状の白色配光パターンを表示する。尚、配光可変型前照灯ユニット(4L,4R)は、走査機構8の替わりに配列された多数のLEDの点消灯によって所定形状の配光パターンを表示可能なLEDアレイを備えるようにしてもよい。
【0033】
図2(b)は、図1に示す配光可変型前照灯ユニット(4L,4R)の構成を示す。配光可変型前照灯ユニット(4L,4R)は、走査機構8,LED光源9,投影レンズ11,蛍光体12及び光学系である集光レンズ13をそれぞれ有し、これらはいずれも支持部材10に取り付けられる。台座10aに固定されたLED光源9から出射した光L1は、集光レンズ13によって集光されつつ反射面24に入射する。反射面24によって反射された光L1は、投影レンズ11と、図1の前面カバー(1LC,1RC)を透過し、図5に示す自車両C1の前方に走査に基づいた所定形状の白色配光パターンを所定方向及び所定位置に表示する。
【0034】
図3(a)により、配光可変型前照灯ユニット(4L,4R)が行う走査によって車両前方に表示される配光パターンの形成方法を説明する。符号S1は、走査機構8による走査線の軌跡を示す。車両前方の矩形の走査領域(符号Sc1)内において、図3(a)の走査機構8は、図2(a)(b)に示す反射面24の傾動によって左端S11から右端S12への走査を行った後、左端S11から微小距離d1だけ下方にずれた次の左端S13に向けて反射面24を左斜め下方に傾動させ、再び右端S14へ走査することを高速で繰り返し行う。LED光源9は、前照灯用CPU(6L,6R)の制御に基づいて点消灯する。具体的には、LED光源9は、配光パターンLaを表示するP2からP3までの区間において点灯して左右に伸びる線像を表示し、配光パターンを表示しないP1からP2までの区間と、P3からP4までの区間において消灯する。走査機構8は、所定の点消灯を伴う走査を微小距離d1ずつ下方にずらしながら左右方向に高速に繰り返し行い、線像を上下に積層することで、所定形状の白色配光パターンLaを車両の前方に表示し、または、走査光によるカーブミラー反射面への指向的な光の照射を行う。
【0035】
尚、本実施例では、本願発明に係る車両用灯具を配光可変型前照灯とし、配光可変型灯具ユニットを配光可変型前照灯ユニットとすることにより、配光可変型前照灯ユニットにより、前照灯配光パターンの表示と検出したカーブミラーへの指向的な照射の双方を行っているが、カーブミラーを照射するための配光可変型灯具ユニットは、自車両C1において、前照灯表示を行うための配光可変型前照灯ユニットと別に設けられることにより、車両用前照灯と別の車両用灯具を構成してもよい。
【0036】
図3(b)は、車両用前照灯(1L,1R)によって車両の前方に表示される各種配光パターンを示すものである。符号LBは、カットオフラインCfを備え、符号Pt1、Pt2、Pt3、Pt4を結ぶ実線で囲まれた領域に表示されたロービーム用配光パターンを示す。符号HBは、符号Pt1,Pt2、Pt5,Pt6を結ぶ、実線と二点鎖線に囲まれた領域に表示されたハイビーム用配光パターンを示す。符号ABは、ハイビーム用配光パターンHBの点灯領域内において、三点鎖線で囲まれた符号Sh領域を消灯させて形成された可変型配光パターンを示す。
【0037】
また、図3(b)の3点鎖線で囲まれた可変型配光パターンCBは、ハイビーム用配光パターンHBの照射エリアの外側で検出された、カーブミラーCMの反射面CMMに向けて指向的に照射されたスポット照射パターンである。カーブミラーCMは、車載カメラ5による撮像結果、または通信ユニット14で受信されたカーブミラーCMに関する情報信号から、車両用CPU3により、自車両に対する相対的な位置や反射面CMMの大きさ等を解析される。車両用CP3は、位置と大きさを特定されたカーブミラーCMの反射面CMMに対し、前照灯用CPU(6L,6R)を介して配光可変型前照灯ユニット(4L,4R)による光の照射を指向的に行わせる。
【0038】
次に図4(a)(b)により、本願の車両用前照灯(1L,1R)によって行われるカーブミラーへの光の照射の第1及び第2実施例を説明する。図4(a)(b)は、道路R0から交差する道路R1に向かってT字路を右折しようとする自車両C1を示し、交差する道路R1には、右カーブミラーCM1と左カーブミラーCM2が並んで設置されており、交差する道路R1の右側には、自車両に近づいてくる歩行者H1が存在する。交自車両C1のドライバーD1は、建物T1によって視界を遮られることにより、交差する道路R1において、破線Li1よりも右側を直接視認することが出来ず、ドライバーD1の死角にいる歩行者H1もまた、建物T1によって自車両C1の接近を直接視認することが出来ない。
【0039】
そのような場合において、図4(a)に示す自車両C1が、右折する際に、右ターンシグナルランプ2R(ターンシグナルランプは、右車両用前照灯1Rと右ドアミラーMR1に1つずつ装備されており、左車両用前照灯と左ドアミラーにも同様に装備されている)が点滅すると、一対の右ターンシグナルランプ2Rの光は、一対の右ターンシグナルランプ2Rの左右の設置幅が短いために、右カーブミラーCM1によって反射されても、広く拡散されず、交差する道路R1上における一点鎖線Li2及びLi3で囲まれる範囲にしか照射されない。従って、歩行者H1は、従来のように右折時に右ターンシグナルランプ2Rのみが点滅した場合、歩いて一点鎖線Li2及びLi3で囲まれる範囲に到達するまで、自車両C1の接近を知ることが出来ない。
【0040】
第1実施例においては、図4(a)に示すように、自車両C1の右折時において、車載カメラ5または、通信ユニット14を介して得られるカーブミラー(CM1,CM2)の検出結果に基づき、車両用CPU3が、左右の配光可変型前照灯(1L,1R)の双方から、右カーブミラーCM1の反射面の範囲内に指向的な照射を行うようにする。左右の配光可変型前照灯(1L,1R)は、一対の右ターンシグナルランプ2Rよりも左右の設置幅が広いため、右カーブミラーCM1によって、一対のターンシグナルランプよりも幅広く拡散反射され、一点鎖線Li3及び2点鎖線Li4で囲まれる範囲に照射される。その結果、左右の配光可変型前照灯(1L,1R)の一部の光によって、一点鎖線Li3及び2点鎖線Li4で囲まれる範囲に照射された光は、ターンシグナルランプよりも光度が強く、図4(a)に示すように、右カーブミラーCM1を介して一対のターンシグナルランプ2Rによる光よりも幅広くかつ遠くまで照射されることによって、歩行者H1にいち早く照射されるため、道路R0を死角から接近する自車両C1の存在をいち早く歩行者H1に知らしめることができる。
【0041】
尚、左右の配光可変型前照灯(1L,1R)の双方から右カーブミラーCM1に向けて指向的に照射される光は、継続点灯の光としてもよいが、右ターンシグナルランプと同様に点滅光とすることがより望ましい。ターンシグナルランプと同様に変化する点滅光とすることにより、歩行者H1は、白色光を単なる前照灯表示では無く、自分に向けられた歩行指示であることを認識しやすくなる。また、左右の配光可変型前照灯(1L,1R)から右カーブミラーに照射される光は、左右の配光可変型前照灯のいずれか一方から向けられても良いが、拡散範囲を拡げる点を考慮し、左右両方から照射されることがより望ましい。
【0042】
また、右折時に検出された右カーブミラーCM1に向けて指向的に照射される光は、前照灯表示を行わない昼間の走行時においても、点滅光によって照射されることが望ましい。昼間においてもパッシングライトのような点滅光をカーブミラーに照射することで、自車両C1が歩行者H1に向かって右折することを認識させやすくなる。また、昼間の右折時に検出された右カーブミラーCM1に向けて指向的に照射される光は、右ターンシグナルランプ2Rの発光前に予め照射されることがより望ましい。ターンシグナルランプよりも光度の高い前照灯光の一部をいち早く指向的にカーブミラーに照射することで、ターンシグナルランプを点灯するよりも早く右折を歩行者H1に知らせることが出来る。
【0043】
尚、自車両1の左折時には、左ターンシグナルランプ2Lの点灯と共に、左右の配光可変型前照灯(1L,1R)により、右折時に右カーブミラーCM1に対して行ったのと同様の指向的な光の照射を左カーブミラーCM2に向かって行うようにし、交差する道路R1の左側から自車両C1に接近する歩行者に左折を報知する。
【0044】
次に、図4(b)に示す、本願の車両用前照灯によるカーブミラーへの光の照射の第2実施例を説明する。図4(a)の第1実施例においては、左右の配光可変型前照灯(1L,1R)により、右折時には、検出された右カーブミラーCM1のみを照射し、左折時には、検出された左カーブミラーCM2のみを照射するようにしたが、第2実施例においては、左右の両方のカーブミラー(CM1,CM2)の双方に配光可変型前照灯(1L,1R)による照射を行う。右折または左折のいずれを行う場合においても、自車両C1が曲がらない方向の死角から歩行者が接近することがありえる。図4(b)は、自車両C1が右折する場合において、交差する道路R1の左側から歩行者H2が接近している場合を示す。第2実施例のように右折する場合において、配光可変型前照灯(1L,1R)による指向的な照射を右カーブミラーCM1に行うと同時に、左カーブミラーCM2にも行うと、歩行者H2は、実線Li5,Li6で囲まれる範囲に照射される反射光をいち早く見て、建物T2の死角からT字路の交差点に近づく自車両C1の存在を認識出来るため、道路R0に飛び出さずに済む。
【0045】
尚、第2実施例において、自車両C1が右折する場合には、配光可変型前照灯(1L,1R)から右カーブミラーCM1に指向的に照射される光を点滅光とし、かつ配光可変型前照灯(1L,1R)から左カーブミラーCM2に指向的に照射される光を継続点灯光とすることがより望ましく、自車両C1が左折する場合には、配光可変型前照灯(1L,1R)から左カーブミラーCM2に指向的に照射される光を点滅光とし、かつ配光可変型前照灯(1L,1R)から右カーブミラーCM1に指向的に照射される光を継続点灯光とすることがより望ましい。例えば、右折の場合、右カーブミラーCM1を介して照射する光を点滅光とすることで、右側から自車両C1に接近する歩行者H1は、点滅光を方向指示と認識し、接近する自車両C1が右折することを認識しやすくなる。また、左側から自車両C1に接近する歩行者H2は、自分に照射された光が、接近のみを示す常時点灯光であって、左折を意味する点滅表示ではないことを認識することにより、自車両C1の左折を心配すること無く交差する道路R1上を右方向に進むことが出来る。
【0046】
尚、光可変型前照灯(1L,1R)から左右のカーブミラー(CM1,CM2)のいずれか一方(第1実施例)または、双方(第回 に実施例)に対して行われる指向的な光の照射は、図4(a)(b)示す自車両C1が、夜間走行中であって、カーブミラーCMの反射面CMMが、前照灯配光パターンの照射範囲内に位置することを検出された場合、自車両C1が曲がる方向に向けられたカーブミラー(例えば、右折時なら右カーブミラーCM1)の反射面の検出範囲のみを点滅照射とし、それ以外の範囲を継続点灯による前照灯表示とすることが望ましい。配光可変型前照灯(1L,1R)による右折時または左折時のいずれかにおいて、前照灯配光パターンの全体を丸ごと点滅させることは、自車両ドライバーD1に対し、前方視界の視認性を低下させる点で問題があるからである。配光可変型前照灯(1L,1R)による方向指示は、あくまで曲がる方向に設置されたカーブミラーの反射面が存在する範囲のみを点滅光で照射することによって行うことが望ましい。
【符号の説明】
【0047】
1L,1R 車両用前照灯(車両用灯具)
4L,4R 配光可変型前照灯ユニット(配光可変型灯具ユニット)
5 車載カメラ(周辺検出ユニット)
6L,6R 前照灯用CPU(配光可変制御部)
14 通信ユニット(物体検出信号取得部)
CM、CM1、CM2 カーブミラー
図1
図2
図3
図4