(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】安定した抗CD79B免疫複合体製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20241111BHJP
A61K 38/07 20060101ALI20241111BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20241111BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241111BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20241111BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20241111BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241111BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20241111BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
A61K47/68 ZNA
A61K38/07
A61K47/65
A61K47/26
A61K47/12
A61K47/02
A61K39/395 L
A61K9/19
A61P35/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021171589
(22)【出願日】2021-10-20
(62)【分割の表示】P 2020079093の分割
【原出願日】2019-04-12
【審査請求日】2022-04-12
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】パテール, アンキット アール.
(72)【発明者】
【氏名】リウ, ジュン
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-514651(JP,A)
【文献】特開2011-256206(JP,A)
【文献】特開2015-209384(JP,A)
【文献】特表2015-531750(JP,A)
【文献】特許第6761506(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00
A61K 9/00
A61K 38/00
A61K 39/395
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
30mgの抗CD79bイムノコンジュゲート、1.8mgのポリソルベート20、1.77mgのコハク酸、0.816mgの水酸化ナトリウム、及び61.8mgのスクロースを含む凍結乾燥された組成物であって、
抗CD79bイムノコンジュゲートが、式:
[上式中、
Abは、重鎖及び軽鎖を含む抗CD79b抗体であって、前記軽鎖が、(a)KASQSVDYEGDSFLN(配列番号1)のHVR-L1配列、(b)AASNLES(配列番号2)のHVR-L2配列、及び(c)QQSNEDPLT(配列番号3)のHVR-L3配列を含み、前記重鎖が、(a)GYTFSSYWIE(配列番号4)のHVR-H1配列、(b)GEILPGGGDTNYNEIFKG(配列番号5)のHVR-H2配列、及び(c)TRRVPIRLDY(配列番号6)のHVR-H3配列を含む抗CD79b抗体であり;Valがバリンであり;Citがシトルリンであり;且つpが1~8の値である]
を含む、凍結乾燥された組成物。
【請求項2】
2℃~8℃での保管時に少なくとも6ヶ月間安定しており、かつ/又は、0.3重量%~3.2重量%の残留水分含有量範囲にわたって、25℃で保管した時に、少なくとも7ヶ月間安定している、請求項1に記載の凍結乾燥された組成物。
【請求項3】
凍結乾燥された組成物が凍結乾燥されたケーキである、請求項1又は2に記載の凍結乾燥された組成物。
【請求項4】
(a)抗CD79b抗体が配列番号:7のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)と配列番号:8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含むか、又は、
(b)抗CD79b抗体の重鎖が配列番号9のアミノ酸配列を含み、かつ、抗CD79b抗体の軽鎖が配列番号10のアミノ酸配列を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の凍結乾燥された組成物。
【請求項5】
pが2から5の値であり、任意選択的に約3.5である、請求項1から4のいずれか一項に記載の凍結乾燥された組成物。
【請求項6】
任意選択的にB細胞増殖性障害が、リンパ腫、骨髄腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、再発性/難治性DLBCL、侵攻性NHL、緩慢性リンパ腫、濾胞性リンパ腫(FL)、再発性侵攻性NHL、再発性緩慢性NHL、再発性NHL、難治性NHL、難治性緩慢性NHL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、有毛細胞白血病(HCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、及びマントル細胞リンパ腫からなる群から選択される、
それを必要とする患者におけるB細胞増殖性障害の治療における使用のための、
請求項1から5のいずれか一項に記載の凍結乾燥された組成物。
【請求項7】
B細胞増殖性障害が非ホジキンリンパ腫(NHL)である、請求項6に記載の凍結乾燥された組成物。
【請求項8】
B細胞増殖性障害が再発性NHL又は難治性NHLである、請求項6に記載の凍結乾燥された組成物。
【請求項9】
B細胞増殖性障害が濾胞性リンパ腫(FL)である、請求項6に記載の凍結乾燥された組成物。
【請求項10】
B細胞増殖性障害が、再発性/難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である、請求項6に記載の凍結乾燥された組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年4月13日出願の米国仮特許出願第62/657,185号の優先権の利益を主張するものであり、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
ASCIIテキストファイルでの以下の提出の内容は、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる:コンピュータ可読形式(CRF)の配列表(ファイル名:146392044340SEQLIST.TXT、記録日:2019年4月9日、サイズ:12KB)。
【0003】
本開示は、抗CD79b免疫複合体及び界面活性剤を含む安定した薬学的組成物を対象とする。本開示はまた、がんの治療のためにそのような組成物を使用するための方法も提供する。
【背景技術】
【0004】
注入袋を使用した静脈内(IV)投与は、商業的環境において生物製剤の最も一般的な送達経路である。IV投与による免疫複合体などの生物製剤の送達及び適合性を支持するために、注入袋内への希釈後、輸送中、及び投与経過全体を通して、安定性を維持する好適な治療製剤を設計することが必要である(Bardin,C.et al.Annales pharmaceutiques francaises 69(2011)221-231)。
【0005】
特にIV注入袋を使用した生物製剤の投与の1つの課題は、構築材料及び注入溶液が治療タンパク質を不安定化する環境を提示し得ることである。加えて、タンパク質はまた、IV投与袋内の界面ストレスにも遭遇し得る。固体-液体界面及び空気-水界面でのタンパク質吸着は、表面でタンパク質の変性を引き起こし、タンパク質の凝集をもたらし得る(Shieh,I.,et al.Mol Pharm.12(2015):3184-93、Sreedhara,A.,et al.Pharm.Sci.101(2012):21-30)。IV投与を更に複雑にすることに、注入袋の撹拌は、空気-液体界面の連続的な再生を引き起こし、時間と共にタンパク質に対して繰り返し損傷をもたらす。IV投与袋を不安定化する溶液条件または界面ストレスのいずれかによって引き起こされる凝集は、生物製剤の製品品質、効力、及び免疫原性に著しく負の影響を与え得る。
【0006】
生物製剤に対するIV投与の有害な影響は、製剤開発における界面活性剤の使用を通して部分的に軽減することができる。空気-水界面ストレスに対して分子を保護し、安定化するために、ポリソルベート-20(PS20)またはポリソルベート-80(PS80)などの非イオン性界面活性剤がタンパク質製剤中で一般的に使用される(Kerwin,BA.J.Pharm.Sci.97(2008)2924-2935)。界面活性剤は、空気-水界面及び固体-水界面の両方でタンパク質と競合することによって、表面誘導損傷に対して薬物製品(DP)を保護することができる(Kerwin,BA.J.Pharm.Sci.97(2008)2924-2935)。加えて、界面活性剤はまた、系の表面張力も低減する(Cleland,JL.,et al.Critical reviews in therapeutic drug carrier systems 10(1993)307-377)。しかしながら、IV投与袋送達に好適な濃度の非イオン性界面活性剤を使用することの重大な欠点は、界面活性剤に対する生物製剤の延長した曝露が、特定のアミノ酸残基の酸化をもたらし、それにより治療効力を低減し得ることである。Lam X,et al.,Pharm Res.(2011)28:2543-2555。
【0007】
重要なことに、生物製剤はまた、IV投与前に、治療タンパク質の構造及び活性を含むことなく、保管条件下で長期の安定した有効期間を有しなくてはならない。例えば、リンカーを用いる抗体-薬物複合体(ADC)の液体製剤は、保管中にリンカーの酸触媒加水分解を受けやすい可能性がある。そのような不安定性は、患者へのIV投与時に薬物化合物の早まった放出を引き起こし、生物製剤の薬物動態及び安全性に負の影響を与え得る。
【0008】
したがって、IV投与のために安定しており、かつ保管条件下で長期の有効期間を有する、安定した薬学的組成物の開発に対する必要性が存在する。本開示は、この必要性を満たし、他の関連する利益を提供する。
【発明の概要】
【0009】
一態様において、本開示は、抗CD79b免疫複合体及び界面活性剤を含む薬学的組成物であって、界面活性剤が、少なくとも0.06重量体積%(すなわち、0.6mg/ml)の濃度であり、抗CD79b免疫複合体が、式、
を含み、式中、
Abが、抗CD79b抗体であり、抗CD79b抗体が、重鎖及び軽鎖を含み、軽鎖が、(a)KASQSVDYEGDSFLNのHVR-L1配列(配列番号1)、(b)AASNLESのHVR-L2配列(配列番号2)、及び(c)QQSNEDPLTのHVR-L3配列(配列番号3)を含み、重鎖が、(a)GYTFSSYWIEのHVR-H1配列(配列番号4)、(b)GEILPGGGDTNYNEIFKGのHVR-H2配列(配列番号5)、及び(c)TRRVPIRLDYのHVR-H3配列(配列番号6)を含み、Valが、バリンであり、Citが、シトルリンであり、pが、約1~約8(例えば、約3.5などの約2~約5)の値である、薬学的組成物を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態において、抗CD79b免疫複合体は、約5mg/ml~約60mg/ml、約10mg/ml~約50mg/ml、約10mg/ml~約40mg/ml、約10mg/ml~約30mg/ml、または約10mg/ml~約20mg/mlの濃度である。
【0011】
いくつかの実施形態において、抗CD79b免疫複合体は、約10mg/ml~約20mg/mlの濃度である。一実施形態において、抗CD79b免疫複合体は、約10mg/mlの濃度である。別の実施形態において、抗CD79b免疫複合体は、約20mg/mlの濃度である。
【0012】
いくつかの実施形態において、抗CD79b免疫複合体は、5mg/ml~60mg/ml、10mg/ml~50mg/ml、10mg/ml~40mg/ml、10mg/ml~30mg/ml、または10mg/ml~20mg/mlの濃度である。
【0013】
いくつかの実施形態において、抗CD79b免疫複合体は、10mg/ml~20mg/mlの濃度である。一実施形態において、抗CD79b免疫複合体は、10mg/mlの濃度である。別の実施形態において、抗CD79b免疫複合体は、20mg/mlの濃度である。
【0014】
いくつかの実施形態において、界面活性剤は、約0.06重量体積%(すなわち、0.6mg/ml)~約0.12重量体積%(すなわち、1.2mg/ml)の濃度である。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、少なくとも約0.06重量体積%(すなわち、0.6mg/ml)の濃度である。別の実施形態において、界面活性剤は、少なくとも約0.12重量体積%(すなわち、1.2mg/ml)の濃度である。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、少なくとも0.06重量体積%の濃度である。別の実施形態において、界面活性剤は、少なくとも0.12重量体積%の濃度である。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、0.06重量体積%の濃度である。別の実施形態において、界面活性剤は、0.12重量体積%の濃度である。
【0015】
いくつかの実施形態において、抗CD79b免疫複合体は、約10mg/mlの濃度であり、界面活性剤は、約0.06重量体積%(すなわち、0.6mg/ml)の濃度である。いくつかの実施形態において、抗CD79b免疫複合体は、約20mg/mlの濃度であり、界面活性剤は、少なくとも約0.12重量体積%の濃度である。いくつかの実施形態において、抗CD79b免疫複合体は、約20mg/mlの濃度であり、界面活性剤は、約0.12重量体積%(すなわち、1.2mg/ml)の濃度である。
【0016】
いくつかの実施形態において、抗CD79b免疫複合体は、10mg/mlの濃度であり、界面活性剤は、0.06重量体積%(すなわち、0.6mg/ml)の濃度である。いくつかの実施形態において、抗CD79b免疫複合体は、20mg/mlの濃度であり、界面活性剤は、少なくとも0.12重量体積%の濃度である。いくつかの実施形態において、抗CD79b免疫複合体は、20mg/mlの濃度であり、界面活性剤は、0.12重量体積%の濃度である。
【0017】
上記の実施形態のいずれかによる(またはそれに適用される)いくつかの実施形態において、本薬学的組成物は、液体薬学的組成物である。いくつかの実施形態において、本液体薬学的組成物は、30℃での保管時に少なくとも約4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24時間のいずれかの間、または2℃~8℃での保管時に少なくとも約24、48、または72時間のいずれかの間安定している。
【0018】
本開示のある特定の実施形態において、本明細書の界面活性剤は、非イオン性である。例示的な一実施形態において、界面活性剤は、ポリソルベート20(PS20)、ポリソルベート80(PS80)、ポロキサマー188(P188)、N-オクチル-β-Dグルコピラノシド(OG)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の一実施形態において、界面活性剤は、PS20である。更に別の特定の実施形態において、界面活性剤は、PS80である。
【0019】
本開示のいくつかの実施形態において、本組成物は、緩衝剤を更に含む。ある特定の実施形態において、緩衝剤は、ヒスチジン緩衝液である。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、コハク酸緩衝液である。特定の一実施形態において、コハク酸緩衝液は、コハク酸ナトリウム緩衝液である。いくつかの実施形態において、コハク酸ナトリウム緩衝液は、約10mM~約200mMの濃度である。いくつかの実施形態において、コハク酸ナトリウム緩衝液は、10mM~200mMの濃度である。一実施形態において、コハク酸ナトリウム緩衝液は、約10mMの濃度である。別の実施形態において、コハク酸ナトリウム緩衝液は、10mMの濃度である。
【0020】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、約5.0~約6.0のpHを有する。特定の実施形態において、緩衝液は、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、または約6.0のpHを有する。一実施形態において、本開示の組成物は、約5.3のpHを有する。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、5.0~6.0のpHを有する。特定の実施形態において、緩衝液は、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、または6.0のpHを有する。一実施形態において、本開示の組成物は、5.3のpHを有する。
【0021】
本開示のある特定の実施形態において、本組成物は、糖を更に含む。いくつかの実施形態において、糖は、約100mM~約260mMの濃度である。いくつかの実施形態において、糖は、100mM~260mMの濃度である。いくつかの実施形態において、糖は、スクロース、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、デキストラン40、及びトレハロースからなる群から選択される。
【0022】
特定の一実施形態において、糖は、スクロースである。本開示の一実施形態において、スクロースは、約120mMの濃度である。別の実施形態において、スクロースは、120mMの濃度である。
【0023】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、凍結乾燥されている(凍結乾燥されたケーキなど)。いくつかの実施形態において、凍結乾燥された組成物は、バイアル、例えば、20mlのガラスバイアル内に含有される。
【0024】
一態様において、本開示は、10mMのコハク酸ナトリウム緩衝液中20mg/mlの抗CD79b免疫複合体、0.12重量体積%のポリソルベート20、及び120mMのスクロースを含む液体製剤の凍結乾燥によって生成される薬学的組成物であって、液体製剤が、5.3のpHを有し、抗CD79b免疫複合体が、式、
を有し、式中、
Abが、抗CD79b抗体であり、抗CD79b抗体が、重鎖及び軽鎖を含み、軽鎖が、(a)KASQSVDYEGDSFLNのHVR-L1配列(配列番号1)、(b)AASNLESのHVR-L2配列(配列番号2)、及び(c)QQSNEDPLTのHVR-L3配列(配列番号3)を含み、重鎖が、(a)GYTFSSYWIEのHVR-H1配列(配列番号4)、(b)GEILPGGGDTNYNEIFKGのHVR-H2配列(配列番号5)、及び(c)TRRVPIRLDYのHVR-H3配列(配列番号6)を含み、Valが、バリンであり、Citが、シトルリンであり、pが、約1~約8(例えば、約3.5などの約2~約5)の値である、薬学的組成物を提供する。
【0025】
本開示のいくつかの実施形態において、抗CD79b抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。いくつかの実施形態において、重鎖は、配列番号9のアミノ酸配列を含み、軽鎖は、配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0026】
10mMのコハク酸ナトリウム緩衝液中20mg/mlの抗CD79b免疫複合体、0.12重量体積%のポリソルベート20、及び120mMのスクロースを含む液体製剤の凍結乾燥によって生成される薬学的組成物であって、液体製剤が、5.3のpHを有し、抗CD79b免疫複合体が、式、
を含み、式中、Abが、抗CD79b抗体であり、抗CD79b抗体が、重鎖及び軽鎖を含み、重鎖が、配列番号9のアミノ酸配列を含み、軽鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含み、Valが、バリンであり、Citが、シトルリンであり、pが、約2~約5(約3.5など)の値である、薬学的組成物もまた提供される。いくつかの実施形態において、本薬学的組成物は、凍結乾燥されたケーキである。
【0027】
ある特定の実施形態において、本開示の薬学的組成物は、光から保護された場合に5℃±3℃で約60ヶ月間の安定性を有する。ある特定の実施形態において、本開示の薬学的組成物は、光から保護された場合に5℃±3℃で約48ヶ月間の安定性を有する。
【0028】
いくつかの実施形態において、本開示の薬学的組成物の安定性は、サイズ排除クロマトグラフィー高速(SE-HPLC)によって測定される。一実施形態において、本組成物は、SE-HPLCによって測定して少なくとも95.0の主ピーク(面積%)を有する。
【0029】
いくつかの実施形態において、本開示の薬学的組成物の安定性は、画像化キャピラリー等電点電気泳動(icIEF)によって測定される。一実施形態において、本組成物は、icIEFによって測定して、少なくとも58.0の主ピーク(面積%)、最大で32.0の酸性領域(面積%)、及び最大で12.0の塩基性領域(面積%)を有する。
【0030】
ある特定の実施形態において、本開示の薬学的組成物は、注射用滅菌水(SWFI)で再構成される。いくつかの実施形態において、本薬学的組成物は、約7.2mlのSWFI中で再構成される。いくつかの実施形態において、再構成された組成物は、約30℃での保管時に少なくとも4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24時間安定している。いくつかの実施形態において、再構成された組成物は、約2℃~約8℃での保管時に少なくとも24、48、または72時間安定している。いくつかの実施形態において、再構成された組成物は、静脈内(IV)投与袋内の等張緩衝液中に更に希釈される。いくつかの実施形態において、IV投与袋内の希釈された組成物の最終体積は、約50ml~約100mlである。いくつかの実施形態において、IV投与袋内の免疫複合体の濃度は約0.72mg~約2.7mgである。
【0031】
10mMのコハク酸ナトリウム緩衝液中20mg/mlの抗CD79b免疫複合体、0.12重量体積%のポリソルベート20、及び120mMのスクロースを含む液体製剤の凍結乾燥によって生成される薬学的組成物であって、液体製剤が、5.3のpHを有し、抗CD79b免疫複合体が、式、
を含み、式中、Abが、抗CD79b抗体であり、抗CD79b抗体が、重鎖及び軽鎖を含み、重鎖が、配列番号9のアミノ酸配列を含み、軽鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含み、Valが、バリンであり、Citが、シトルリンであり、pが、約2~約5(約3.5など)の値である、薬学的組成物もまた提供される。
【0032】
a)約0.72~約2.7mg/mlのポラツズマブベドチン、b)約0.36~約01.35mMのコハク酸ナトリウム、c)約0.51~約16.24mMのスクロース、d)約0.0432~約0.162mg/mlのポリソルベート20を含む、(静脈内投与用などの)液体組成物が提供され、液体組成物のpHは、約5~約5.7である。a)約0.72mg/mlのポラツズマブベドチン、b)約0.36mMのコハク酸ナトリウム、c)約0.51mMのスクロース、d)約0.0432mg/mlのポリソルベート20を含む、(静脈内投与用などの)液体組成物もまた提供され、液体組成物のpHは、5.1~約5.4である。a)約2.7mg/mlのポラツズマブベドチン、b)約01.35mMのコハク酸ナトリウム、c)約16.24mMのスクロース、d)約0.162mg/mlのポリソルベート20を含む、(静脈内投与用などの)液体組成物もまた提供され、液体組成物のpHは、約5.1~約5.4である。いくつかの実施形態において、液体組成物の体積は、約50ml~約100mlである。いくつかの実施形態において、液体組成物の体積は、50mlである。いくつかの実施形態において、液体組成物の体積は、100mlである。いくつかの実施形態において、液体組成物は、静脈内(IV)投与袋内に含有される。いくつかの実施形態において、液体組成物に接触するIV投与袋の表面は、塩化ポリビニル(PVC)、ポリオレフィン(PO)、ポリエチレン(PE)、またはポリプロピレン(PE)で構成される。
【0033】
一態様において、本開示は、抗CD79b免疫複合体、界面活性剤、コハク酸緩衝液、及び糖を含む薬学的組成物であって、薬学的組成物が、水中で再構成された時に、約10mg/ml~約20mg/mlの濃度の抗CD79b免疫複合体、少なくとも0.06重量体積%(すなわち、0.6mg/ml)の濃度の界面活性剤、約10mM~約200mMの濃度のコハク酸緩衝液、及び約100mM~約260mMの濃度の糖を含む液体製剤を形成し、液体製剤が、5.3のpHを有し、抗CD79b免疫複合体が、式、
を含み、式中、Abが、抗CD79b抗体であり、抗CD79b抗体が、重鎖及び軽鎖を含み、軽鎖が、(a)KASQSVDYEGDSFLNのHVR-L1配列(配列番号1)、(b)AASNLESのHVR-L2配列(配列番号2)、及び(c)QQSNEDPLTのHVR-L3配列(配列番号3)を含み、重鎖が、(a)GYTFSSYWIEのHVR-H1配列(配列番号4)、(b)GEILPGGGDTNYNEIFKGのHVR-H2配列(配列番号5)、及び(c)TRRVPIRLDYのHVR-H3配列(配列番号6)を含み、Valが、バリンであり、Citが、シトルリンであり、pが、約1~約8(例えば、約3.5などの約2~約5)の値である、薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態において、抗CD79b抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。いくつかの実施形態において、抗CD79bの重鎖は、配列番号9のアミノ酸配列を含み、抗CD79b抗体の軽鎖は、配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、本薬学的組成物は、SWFI中で再構成され、その後IV投与袋内の緩衝液中に希釈される。ある特定の実施形態において、本薬学的組成物は、SWFI中で再構成され、その後IV投与袋内の等張緩衝液中に希釈される。一実施形態において、IV投与袋内への希釈時の界面活性剤濃度は、少なくとも0.003重量体積%である。一実施形態において、IV投与袋内への希釈時の界面活性剤濃度は、少なくとも0.004重量体積%である。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、ポリソルベート20である。いくつかの実施形態において、糖は、スクロースである。特定の一実施形態において、スクロースは、120mMの濃度である。いくつかの実施形態において、コハク酸緩衝液は、コハク酸ナトリウム緩衝液である。特定の一実施形態において、コハク酸ナトリウム緩衝液は、10mMの濃度である。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、再構成後、約30℃での保管時に少なくとも4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24時間安定している。いくつかの実施形態において、本薬学的組成物は、再構成後、約2℃~約8℃での保管時に少なくとも24、48、または72時間安定している。
【0035】
いくつかの実施形態において、本薬学的組成物は、水中で再構成された時に、30℃で最大約1日間、最大約2日間、または最大約3日間の安定性を有する。いくつかの実施形態において、本薬学的組成物は、水中で再構成された時に、5℃±3℃で最大約1日間、最大約2日間、最大約3日間、最大約4日間、最大約5日間、最大6日間、または最大約7日間の安定性を有する。ある特定の実施形態において、本組成物の安定性は、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって測定される。特定の一実施形態において、本組成物は、SE-HPLCによって測定して少なくとも95.0主ピーク(面積%)を有する。
【0036】
ある特定の実施形態において、本組成物の安定性は、画像化キャピラリー等電点電気泳動(icIEF)によって測定される。特定の一実施形態において、本組成物は、icIEFによって測定して、少なくとも58.0の主ピーク(面積%)、最大で32.0の酸性領域(面積%)、及び最大で12.0の塩基性領域(面積%)を有する。
【0037】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される薬学的組成物は、ガラスバイアル(例えば、20mlのガラスバイアル)内に含有される。
【0038】
一態様において、本開示は、抗CD79b免疫複合体、界面活性剤、コハク酸緩衝液、及び糖を含む液体組成物であって、抗CD79b免疫複合体が、約10mg/ml~約20mg/mlの濃度であり、界面活性剤が、少なくとも0.06重量体積%(すなわち、0.6mg/ml)の濃度であり、コハク酸緩衝液が、約10mM~約200mMの濃度であり、糖が、約100mM~約260mMの濃度であり、液体組成物が、5.3のpHを有し、抗CD79b免疫複合体が、式、
を含み、式中、
Abが、抗CD79b抗体であり、抗CD79b抗体が、重鎖及び軽鎖を含み、軽鎖が、(a)KASQSVDYEGDSFLNのHVR-L1配列(配列番号1)、(b)AASNLESのHVR-L2配列(配列番号2)、及び(c)QQSNEDPLTのHVR-L3配列(配列番号3)を含み、重鎖が、(a)GYTFSSYWIEのHVR-H1配列(配列番号4)、(b)GEILPGGGDTNYNEIFKGのHVR-H2配列(配列番号5)、及び(c)TRRVPIRLDYのHVR-H3配列(配列番号6)を含み、Valが、バリンであり、Citが、シトルリンであり、pが、約1~約8(例えば、約3.5などの約2~約5)の値である、薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態において、抗CD79b抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。いくつかの実施形態において、抗CD79bの重鎖は、配列番号9のアミノ酸配列を含み、抗CD79b抗体の軽鎖は、配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、界面活性剤は、ポリソルベート20である。いくつかの実施形態において、糖は、スクロースである。特定の一実施形態において、スクロースは、120mmの濃度である。いくつかの実施形態において、コハク酸緩衝液は、コハク酸ナトリウム緩衝液である。特定の一実施形態において、コハク酸ナトリウム緩衝液は、10mMの濃度である。
【0040】
いくつかの実施形態において、本開示の液体組成物は、等張緩衝液中に希釈される。例示的な一実施形態において、等張緩衝液中に溶解される本開示の液体組成物は、IV投与袋内にある。いくつかの実施形態において、液体組成物が希釈される等張緩衝液は、0.9%の塩化ナトリウム溶液、0.45%の塩化ナトリウム溶液、または5%のデキストロース溶液である。
【0041】
いくつかの実施形態において、0.9%の塩化ナトリウム溶液中に希釈されている本明細書に提供される液体組成物は、希釈後、2℃~8℃で最大少なくとも約24時間(本明細書に別途記載のいずれか1つ以上の基準に従って)安定している。いくつかの実施形態において、0.9%の塩化ナトリウム溶液中に希釈されている本明細書に提供される液体組成物は、希釈後、9℃~25℃で最大約4時間(本明細書に別途記載のいずれか1つ以上の基準に従って)安定している。いくつかの実施形態において、0.45%の塩化ナトリウム溶液中に希釈されている本明細書に提供される液体組成物は、希釈後、2℃~8℃で最大少なくとも約24時間(本明細書に別途記載のいずれか1つ以上の基準に従って)安定している。いくつかの実施形態において、0.45%の塩化ナトリウム溶液中に希釈されている本明細書に提供される液体組成物は、希釈後、9℃~25℃で最大約4時間(本明細書に別途記載のいずれか1つ以上の基準に従って)安定している。いくつかの実施形態において、5%のデキストロース溶液中に希釈されている本明細書に提供される液体組成物は、希釈後、2℃~8℃で最大少なくとも約48時間(本明細書に別途記載のいずれか1つ以上の基準に従って)安定している。いくつかの実施形態において、5%のデキストロース溶液中に希釈されている本明細書に提供される液体組成物は、希釈後、9℃~25℃で最大約8時間(本明細書に別途記載のいずれか1つ以上の基準に従って)安定している。
【0042】
いくつかの実施形態において、等張緩衝液中に希釈される本液体組成物は、IV投与袋内にある。いくつかの実施形態において、等張緩衝液中に希釈される本組成物に接触するIV投与袋の表面は、塩化ポリビニル(PVC)、ポリオレフィン(PO)、ポリエチレン(PE)、またはポリプロピレン(PE)で構成される。
【0043】
いくつかの実施形態において、IV投与袋内の等張緩衝液中に希釈される本開示の液体組成物は、30℃で最大約6~約8時間の安定性を有する。いくつかの実施形態において、IV投与袋内の等張緩衝液中に溶解される本開示の液体組成物は、25℃で最大約24時間の安定性を有する。いくつかの実施形態において、IV投与袋内の等張緩衝液中に溶解される本開示の液体組成物は、5℃±3℃で最大約72時間の安定性を有する。ある特定の実施形態において、等張緩衝液は、正常食塩水である。いくつかの実施形態において、本液体組成物は、約30℃での保管時に少なくとも4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24時間安定している。いくつかの実施形態において、本液体組成物は、約2℃~約8℃での保管時に少なくとも24、48、または72時間安定している。
【0044】
約150mgの抗CD79b免疫複合体、約9.0mgのポリソルベート20、約8.88mgのコハク酸、約4.08mgの水酸化ナトリウム、及び約309mgのスクロースを含む、凍結乾燥された薬学的組成物であって、抗CD79b免疫複合体が、式、
を含み、式中、Abが、抗CD79b抗体であり、抗CD79b抗体が、重鎖及び軽鎖を含み、抗CD79bの重鎖が、配列番号9のアミノ酸配列を含み、抗CD79b抗体の軽鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含み、Valが、バリンであり、Citが、シトルリンであり、pが、約2~約5(約3.5など)の値である、凍結乾燥された薬学的組成物もまた提供される。いくつかの実施形態において、凍結乾燥された組成物(ケーキなど)は、バイアル、例えば、20mlのガラスバイアル内に含有される。
【0045】
約150mgのポラツズマブベドチン、約9.0mgのポリソルベート20、約8.88mgのコハク酸、約4.08mgの水酸化ナトリウム、及び約309mgのスクロースを含む、凍結乾燥された薬学的組成物が、更に提供される。いくつかの実施形態において、凍結乾燥された組成物(ケーキなど)は、バイアル、例えば、20mlのガラスバイアル内に含有される。
【0046】
約140mgの抗CD79b免疫複合体、約8.4mgのポリソルベート20、約8.27mgのコハク酸、約3.80mgの水酸化ナトリウム、及び約288mgのスクロースを含む、凍結乾燥された薬学的組成物であって、抗CD79b免疫複合体が、式、
を含み、式中、bが、抗CD79b抗体であり、抗CD79b抗体が、重鎖及び軽鎖を含み、抗CD79bの重鎖が、配列番号9のアミノ酸配列を含み、抗CD79b抗体の軽鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含み、Valが、バリンであり、Citが、シトルリンであり、pが、約2~約5(約3.5など)の値である、凍結乾燥された薬学的組成物もまた提供される。いくつかの実施形態において、凍結乾燥された組成物(ケーキなど)は、バイアル、例えば、20mlのガラスバイアル内に含有される。
【0047】
約140mgのポラツズマブベドチン、約8.4mgのポリソルベート20、約8.27mgのコハク酸、約3.80mgの水酸化ナトリウム、及び約288mgのスクロースを含む、凍結乾燥された薬学的組成物が、更に提供される。いくつかの実施形態において、凍結乾燥された組成物(ケーキなど)は、バイアル、例えば、20mlのガラスバイアル内に含有される。
【0048】
約30mgの抗CD79b免疫複合体、約1.8mgのポリソルベート20、約1.77mgのコハク酸、約0.816mgの水酸化ナトリウム、及び約61.8mgのスクロースを含む、凍結乾燥された薬学的組成物であって、抗CD79b免疫複合体が、式、
を含み、式中、Abが、抗CD79b抗体であり、抗CD79b抗体が、重鎖及び軽鎖を含み、抗CD79bの重鎖が、配列番号9のアミノ酸配列を含み、抗CD79b抗体の軽鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含み、Valが、バリンであり、Citが、シトルリンであり、pが、約2~約5(約3.5など)の値である、凍結乾燥された薬学的組成物もまた提供される。いくつかの実施形態において、凍結乾燥された組成物は、凍結乾燥されたケーキである。いくつかの実施形態において、凍結乾燥された組成物(ケーキなど)は、バイアル、例えば、20mlのガラスバイアル内に含有される。
【0049】
約30mgのポラツズマブベドチン、約1.8mgのポリソルベート20、約1.77mgのコハク酸、約0.816mgの水酸化ナトリウム、及び約61.8mgのスクロースを含む、凍結乾燥された薬学的組成物が、更に提供される。いくつかの実施形態において、凍結乾燥された組成物(ケーキなど)は、バイアル、例えば、20mlのガラスバイアル内に含有される。
【0050】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供される凍結乾燥された薬学的組成物は、凍結乾燥されたケーキである。いくつかの実施形態において、本明細書の実施形態のいずれかによる凍結乾燥された薬学的組成物は、約2℃~約8℃での保管時に少なくとも6、12、18、24、30、36、42、48、54、または60ヶ月間安定している。
【0051】
a)約5~60mg/mlのポラツズマブベドチン、b)約10~200mMのコハク酸ナトリウム、c)約100~260mMのスクロース、d)約0.06~0.12重量体積%のポリソルベート20を含む、液体薬学的組成物が提供され、液体組成物のpHは、5~6である。いくつかの実施形態において、本液体薬学的組成物は、a)約10~55mg/mlのポラツズマブベドチン、b)約10~100mMのコハク酸ナトリウム、c)約150~260mMのスクロース、及びd)約0.08~0.12重量体積%のポリソルベート20を含み、液体組成物のpHは、5.1~5.6である。いくつかの実施形態において、本液体薬学的組成物は、a)約15~40mg/mlのポラツズマブベドチン、b)約10~50mMのコハク酸ナトリウム、c)約200~260mMのスクロース、及びd)約0.1~0.12重量体積%のポリソルベート20を含み、液体組成物のpHは、5.2~5.4である。いくつかの実施形態において、本液体組成物は、凍結乾燥された組成物(ケーキなど)を再構成することによって得られる。いくつかの実施形態において、本液体組成物は、バイアル、例えば、20mlのガラスバイアル内に含有される。
【0052】
a)20mg/mlのポラツズマブベドチン、b)10mMのコハク酸ナトリウム、c)120mMのスクロース、d)0.12重量体積%のポリソルベート20を含む、液体薬学的組成物もまた提供され、液体組成物のpHは、約5.3である。いくつかの実施形態において、本液体組成物は、凍結乾燥された組成物(ケーキなど)を再構成することによって得られる。いくつかの実施形態において、本液体組成物は、バイアル、例えば、20mlのガラスバイアル内に含有される。
【0053】
いくつかの実施形態において、本明細書の実施形態のいずれかによる液体組成物は、約30℃での保管時に少なくとも4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24時間安定している。いくつかの実施形態において、本明細書の実施形態のいずれかによる液体組成物は、約2℃~約8℃での保管時に少なくとも24、48、または72時間安定している。いくつかの実施形態において、本液体組成物は、凍結乾燥された組成物(ケーキなど)を再構成することによって得られる。いくつかの実施形態において、本液体組成物は、バイアル、例えば、20mlのガラスバイアル内に含有される。
【0054】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供される再構成された薬学的組成物は、2℃~8℃で72時間の保管後に安定している。いくつかの実施形態において、本明細書に提供される再構成された薬学的組成物は、環境光に曝露された状態で、30℃で24時間の保管後に安定している。いくつかの実施形態において、再構成された薬学的組成物は、10mMのコハク酸中の20mg/mLのポラツズマブベドチン、120mMのスクロース、及び1.2mg/mLのポリソルベート20を含み、pHは、5.3である。いくつかの実施形態において、ポラツズマブベドチンのその標的(すなわち、CD79b)への親和性またはポラツズマブベドチンの生物学的活性中。
【0055】
一態様において、本開示は、増殖性障害の治療を必要とする患者において増殖性障害を治療する方法であって、患者に本明細書に記載の薬学的組成物または液体組成物を投与することを含む、方法を提供する。増殖性障害の治療を必要とする患者において増殖性障害を治療するための医薬品を製造するための、本明細書に記載の薬学的組成物または液体組成物の使用もまた提供される。いくつかの実施形態において、増殖性障害の治療を必要とする患者における増殖性障害の治療において使用するための、本明細書に記載の薬学的組成物または液体組成物が提供される。増殖性障害の治療を必要とする患者において増殖性障害を治療する方法において使用するための、本明細書に記載の薬学的組成物または液体組成物もまた提供される。
【0056】
いくつかの実施形態において、増殖性障害は、がんである。例示的な一実施形態において、がんは、B細胞増殖性障害である。特定の実施形態において、B細胞増殖性障害は、リンパ腫、骨髄腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、再発性/難治性DLBCL、侵攻性NHL、緩慢性リンパ腫、濾胞性リンパ腫(FL)、再発性侵攻性NHL、再発性緩慢性NHL、再発性NHL、難治性NHL、難治性緩慢性NHL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、有毛細胞白血病(HCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、及びマントル細胞リンパ腫からなる群から選択される。
【0057】
本開示の一実施形態において、B細胞増殖性障害は、非ホジキンリンパ腫(NHL)である。一実施形態において、B細胞増殖性障害は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。一実施形態において、B細胞増殖性障害は、再発性/難治性DLBCLである。いくつかの実施形態において、B細胞増殖性障害は、再発性/難治性DLBCLである。別の実施形態において、B細胞増殖性障害は、再発性NHLまたは難治性NHLである。更に別の実施形態において、B細胞増殖性障害は、濾胞性リンパ腫(FL)である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】3つの異なる静脈内(IV)投与袋サイズにおいて、固定濃度のPS20([PS20])で、30℃で22時間の静的保管後の高分子量種(HMWS)の増加を描写する。
【
図2】3つの異なるIV投与袋サイズにおいて、固定濃度のPS20([PS20])で、30℃で2時間の撹拌ストレス(100rpm)後のHMWSの増加を描写する。
【
図3】様々な濃度のPS20([PS20])で、食塩水IV投与袋内の抗CD79b-vc-MMAEの物理的安定性に対する温度の影響を描写する。
【
図4】30℃で22時間の静的保管時の界面活性剤及び注入液の種類の影響を描写する。
【
図5A】撹拌時の抗CD79b-vc-MMAEの安定性に対する2~8℃の温度の影響を描写する。
【
図5B】撹拌時の抗CD79b-vc-MMAEの安定性に対する25℃の温度の影響を描写する。
【
図5C】撹拌時の抗CD79b-vc-MMAEの安定性に対する30℃の温度の影響を描写する。
【
図6】撹拌モデル1を使用した抗CD79b-vc-MMAEの物理的安定性を描写する。
【
図7】撹拌モデル2を使用した抗CD79b-vc-MMAEの物理的安定性を描写する。
【
図8】免疫複合体を安定化し、除去を防止するための、チオスクシンイミドの加水分解反応を描写する。マレイミド除去は、免疫複合体上に存在するチオスクシンイミド結合の加水分解によって防ぐことができる。
【
図9】3つの異なる時点、2週間、4週間、及び8週間での、30℃での酸性チャージバリアント形成に対するpHの影響を描写する。
【
図10】3つの異なる時点、2週間、4週間、及び8週間での、30℃での塩基性チャージバリアント形成に対するpHの影響を描写する。
【
図11】3つの異なる時点、2週間、4週間、及び8週間での、30℃でのHMWS形成に対するpHの影響を描写する。
【
図12】30℃で4週間ストレスを与えた低分子量種(LMWS)に対するpH及び緩衝液種の影響を描写する。
【
図13】サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による、30℃での凍結乾燥された製剤の安定性を描写する。
【
図14】画像化キャピラリー等電点電気泳動(icIEF)による、30℃での凍結乾燥された製剤の安定性を描写する。
【
図15】
図15A~
図15Cは、異なるタンパク質対スクロース比を有する凍結乾燥されたケーキの外観を描写する。
図15Aは、10mg/mlの抗CD79b-vc-MMAE及び260mMのスクロースを表す。
図15Bは、10mg/mlの抗CD79b-vc-MMAE及び180mMのスクロースを表す。
図15Cは、10mg/mlの抗CD79b-vc-MMAE及び120mMのスクロースを表す。
【
図16】
図16A~
図16Bは、異なるタンパク質対スクロース比を有する凍結乾燥されたケーキの外観を描写する。
図16Aは、10mg/mlの抗CD79b-vc-MMAE及び260mMのスクロースを表す。
図16Bは、20mg/mlの抗CD79b-vc-MMAE及び120mMのスクロースを表す。
【
図17】SECによってHMWSバリアントを測定するために、2~8℃、25℃、及び40℃でストレスを与えた、凍結乾燥された抗CD79b-vc-MMAE薬物製品の安定性を描写する。
【
図18】icIEFによってHMWSバリアントを測定するために、2~8℃、25℃、及び40℃でストレスを与えた、凍結乾燥された抗CD79b-vc-MMAE薬物製品の安定性を描写する。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本開示は、抗CD79b免疫複合体及び界面活性剤を含む安定した薬学的組成物を提供する。本開示はまた、がんの治療のためにそのような組成物を使用するための方法も提供する。
【0060】
I. 定義
本開示は、特定の組成物または生物系に限定されず、これらは言うまでもなく変動し得ることを理解されたい。本明細書で使用される専門用語が特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定するようには意図されていないこともまた理解されたい。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別段文脈が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「分子」への言及は、2つ以上のそのような分子の組み合わせを任意で含むといった具合である。
【0061】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、当業者に容易に知られているそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。
【0062】
本明細書に記載の本開示の態様及び実施形態は、態様及び実施形態「を含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」を含むことが理解される。
【0063】
「抗CD79b免疫複合体」という用語は、抗CD79b抗体-薬物複合体(ADC)を指す。本明細書で使用される場合、抗CD79b免疫複合体は、CD79b、リンカー、及び薬物分子に結合することができる抗体またはその断片を含有する。「リンカー」という用語は、6-マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル(MC-val-cit-PAB)を指すために使用される。
【0064】
「抗体」という用語は、最も広義に使用され、それらが所望の生物学的活性または免疫学的活性を呈する限り、例えば、単一抗CD79bモノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、中和抗体、完全長もしくはインタクトモノクローナル抗体を非限定的に含む)、ポリエピトープ特異性を有する抗CD79b抗体組成物、ポリクローナル抗体、多価抗体、少なくとも2つのインタクト抗体から形成される多特異性抗体(例えば、それらが所望の生物学的活性を呈する限り、二特異性抗体)、一本鎖抗CD79b抗体、ならびに抗CD79b抗体の断片(下記を参照されたい)(Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片を含む)、ダイアボディ、単一ドメイン抗体(sdAb)を具体的に包含する。「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、本明細書で抗体と互換的に使用される。抗体は、キメラ、ヒト、ヒト化、及び/または親和性成熟であり得る。
【0065】
「抗CD79b抗体」または「CD79bに結合する抗体」という用語は、抗体がCD79bを標的とする上で診断剤及び/または治療剤として有用であるように、十分な親和性でCD79bに結合することができる抗体を指す。好ましくは、例えば、放射免疫測定法(RIA)によって測定して、無関係の非CD79bタンパク質への抗CD79b抗体の結合の程度は、この抗体のCD79bへの結合の約10%未満である。ある特定の実施形態において、CD79bに結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、または≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態において、抗CD79b抗体は、異なる種に由来するCD79b間で保存されているCD79bのエピトープに結合する。
【0066】
塩基性4本鎖抗体単位は、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなるヘテロ四量体糖タンパク質である(IgM抗体は、J鎖と呼ばれる追加のポリペプチドと共に5個の塩基性ヘテロ四量体単位からなるため、10個の抗原結合部位を含有する一方で、分泌型IgA抗体は重合して、J鎖と共に2~5個の塩基性4本鎖単位を含む多価集合体を形成することができる)。IgGの場合、4本鎖単位は一般に、約150,000ダルトンである。各L鎖は、1つのジスルフィド共有結合によってH鎖に連結している一方で、2本のH鎖は、H鎖のアイソタイプに応じて1つ以上のジスルフィド結合によって互いに連結している。各H鎖及びL鎖はまた、規則的に離間した鎖間ジスルフィド架橋も有する。各H鎖は、N末端に可変ドメイン(VH)を有し、続いてα鎖及びγ鎖の各々について3つの定常ドメイン(CH)、ならびにμアイソタイプ及びεアイソタイプについて4つのCHドメインを有する。各L鎖は、N末端に可変ドメイン(VL)を有し、続いてその反対末端に定常ドメイン(CL)を有する。VLは、VHと整合しており、CLは、重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と整合している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。VHとVLとが一緒に対合することにより、単一抗原結合部位が形成される。異なるクラスの抗体の構造及び特性については、例えば、Basic and Clinical Immunology,8th edition,Daniel P.Stites,Abba I.Terr and Tristram G.Parslow(eds.),Appleton&Lange,Norwalk,CT,1994の71頁及び第6章を参照されたい。
【0067】
任意の脊椎動物種に由来するL鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ及びラムダと呼ばれる2つの明確に異なる種類のうちの1つに割り当てることができる。それらの重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスまたはアイソタイプに割り当てることができる。5つのクラスの免疫グロブリン、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと表記される重鎖を有する。γクラス及びαクラスは、CH配列及び機能の比較的わずかな差異に基づいてサブクラスに更に分けられ、例えば、ヒトは、以下のサブクラス、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2を発現する。
【0068】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは、「VH」と称され得る。軽鎖可変ドメインは、「VL」と称され得る。これらのドメインは一般に、抗体の最も可変の部分であり、抗原結合部位を含有する。
【0069】
「可変」という用語は、抗体間で、可変ドメインのある特定のセグメントの配列が大きく異なるという事実を指す。Vドメインは、抗原結合を媒介し、特定の抗体の、その特定の抗原に対する特異性を定義する。しかしながら、可変性は、可変ドメインの110個のアミノ酸全長にわたって均等には分布していない。代わりに、V領域は、各々9~12アミノ酸長である「超可変領域」と呼ばれる極度に可変性のより短い領域によって分離された、15~30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変の区間からなる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、主にβシート構成を採用する4つのFRを含み、これらは、3つの超可変領域により連結され、これらの超可変領域は、βシート構造を連結し、場合によってはその一部を形成する、ループを形成する。各鎖内の超可変領域は、FRによって近接近して一緒に保持されており、他方の鎖の超可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)を参照されたい)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合には直接関与しないが、抗体の抗体依存性細胞毒性(ADCC)への関与などの様々なエフェクター機能を呈する。
【0070】
「インタクト」抗体は、抗原結合部位だけでなく、CLならびに少なくとも重鎖定常ドメインCH1、CH2、及びCH3も含む抗体である。定常ドメインは、天然配列の定常ドメイン(例えば、ヒトの天然配列の定常ドメイン)またはそれらのアミノ酸配列バリアントであり得る。好ましくは、インタクト抗体は、1つ以上のエフェクター機能を有する。
【0071】
本明細書における目的のための「ネイキッド抗体」は、薬物部分または放射標識に複合体化されていない抗体である。
【0072】
「抗体断片」は、インタクト抗体の一部分、好ましくはインタクト抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;ダイアボディ;線状抗体(米国特許第5,641,870号の実施例2、Zapata et al.,Protein Eng.8(10):1057-1062[1995]を参照されたい);一本鎖抗体分子;ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。一実施形態において、抗体断片は、インタクト抗体の抗原結合部位を含むため、抗原に結合する能力を保持する。
【0073】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片、及び残りの「Fc」断片(容易に結晶化する能力を反映する名称)と呼ばれる、2つの同一の抗原結合断片を産生する。Fab断片は、H鎖の可変領域ドメイン(VH)と共に全L鎖、及び1つの重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)からなる。各Fab断片は、抗原結合に関して一価であり、すなわち、それは、単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理により、単一の大きいF(ab’)2断片がもたらされ、これは概して、二価の抗原結合活性を有する2つのジスルフィド結合Fab断片に対応し、依然として抗原に架橋することができる。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端に追加のいくつかの残基を有することによって、Fab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を保有するFab’の本明細書における名称である。F(ab’)2抗体断片は元来、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生された。抗体断片の他の化学共役もまた既知である。
【0074】
Fc断片は、ジスルフィドによって一緒に保持された両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域内の配列によって決定され、この領域はまた、ある特定の細胞型に見出されるFc受容体(FcR)によって認識される部分でもある。
【0075】
「Fv」は、完全な抗原認識部位及び抗原結合部位を含有する最小の抗体断片である。この断片は、緊密な非共有結合にある1つの重鎖可変領域ドメイン及び1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種では、1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインは、軽鎖及び重鎖が二本鎖Fv種における構造に類似した「二量体」構造で会合し得るように、柔軟性ペプチドリンカーによって共有結合し得る。これら2つのドメインの折り畳みにより、抗原結合のためのアミノ酸残基を寄与し、抗原結合特異性を抗体に与える、6つの超可変ループ(H鎖及びL鎖から各々3つのループ)が生じる。しかしながら、全結合部位よりも低い親和性ではあるが、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でさえも、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
【0076】
「sFv」または「scFv」とも省略される「一本鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖に連結したVH抗体ドメイン及びVL抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを更に含み、これにより、sFvが抗原結合に所望の構造を形成することが可能になる。sFvに関する概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)、Borrebaeck 1995(以下)を参照されたい。
【0077】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメイン(VL)に接続した重鎖可変ドメイン(VH)(VH-VL)を含む。小さな抗体断片は、Vドメインの鎖内ではなく鎖間の対合が達成され、二価断片、すなわち、2つの抗原結合部位を有する断片をもたらすように、VHドメインとVLドメインとの間に短いリンカー(約5~10個の残基)を有するsFv断片(先行段落を参照されたい)を構築することによって調製される。ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る。二重特異性ダイアボディは、2つの抗体のVHドメイン及びVLドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する2つの「交差」sFv断片のヘテロ二量体である。ダイアボディは、例えば、EP404,097、WO93/11161、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)、及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)により詳細に記載されている。トリアボディ及びテトラボディもまた、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)に記載されている。
【0078】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能性のある天然に存在する変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位に対して指向されている。更に、異なる決定基(エピトープ)に対して指向された異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが他の抗体の混入なく合成され得るという点で有利である。「モノクローナル」という修飾語は、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものとして解釈されるべきではない。例えば、本開示において有用なモノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature,256:495(1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ方法論によって調製されても、細菌細胞、真核動物細胞、または植物細胞内で組み換えDNA法を使用して作製されてもよい(米国特許第4,816,567号を参照されたい)。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991)及びMarks et al.,J.Mol.Biol.,222:581-597(1991)に記載の技術を使用してファージ抗体ライブラリから単離してもよい。
【0079】
本明細書におけるモノクローナル抗体には、具体的には、重鎖及び/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一または相同である一方で、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体、ならびに所望の生物学的活性を呈する限りそのような抗体の断片が含まれる(例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984)を参照されたい)。本明細書において対象となるキメラ抗体としては、非ヒト霊長類(例えば、旧世界ザル、類人猿など)に由来する可変ドメイン抗原結合配列と、ヒト定常領域配列とを含む「霊長類化」抗体が挙げられる。
【0080】
非ヒト(例えば、齧歯類)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト抗体に由来する配列を最小限含有するキメラ抗体である。大部分について、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域由来の残基が、所望の抗体特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域由来の残基によって置換される、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体性能を更に改良するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、超可変ループの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである、少なくとも1つ、及び典型的には2つの超可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。ヒト化抗体は、任意で、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部分も含むであろう。更なる詳細については、Jones et al.,Nature321:522-525(1986)、Riechmann et al.,Nature332:323-329(1988)、及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照されたい。また、以下の概説論文、Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma and Immunol.,1:105-115(1998)、Harris,Biochem.Soc.Transactions,23:1035-1038(1995)、Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.,5:428-433(1994)及びその中に引用される参考文献も参照されたい。
【0081】
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生され、及び/または本明細書に開示されるヒト抗体を作製するための技術のいずれかを使用して作製される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を具体的に除外する。ヒト抗体は、ファージ提示ライブラリを含む当該技術分野において既知である様々な技術を使用して産生することができる。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991)。Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)、Boerner et al.,J.Immunol.,147(1):86-95(1991)に記載の方法もまた、ヒトモノクローナル抗体の調製のために利用可能である。van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.,5:368-74(2001)もまた参照されたい。ヒト抗体は、抗原負荷に応答してそのような抗体を産生するように修飾されているが、その内因性遺伝子座が無効化されているトランスジェニック動物、例えば、免疫化異種マウスに抗原を投与することによって調製することができる(例えば、XENOMOUSE(商標)技術に関する米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号を参照されたい)。例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されるヒト抗体に関するLi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)もまた参照されたい。
【0082】
本明細書で使用される場合、「超可変領域」、「HVR」、または「HV」という用語は、配列が超可変性であり、及び/または構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は6つの超可変領域を含み、このうち3つがVHにあり(H1、H2、H3)、3つがVLにある(L1、L2、L3)。いくつかの超可変領域記述法が使用されており、本明細書に包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づくものであり、最も一般的に使用されている(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))。代わりに、Chothiaは、構造的ループの位置に言及する(Chothia and LeskJ.Mol.Biol.196:901-917(1987))。Kabat番号付けの慣習を使用して番号付けされる場合、ChothiaのCDR-H1ループの末端は、ループの長さに応じてH32とH34との間で変動する(これは、Kabat番号付けのスキームがH35A及びH35Bに挿入を置くためであり、35Aまたは35Bのいずれも存在しない場合、ループは32で終了し、35Aのみが存在する場合、ループは33で終了し、35A及び35Bの両方が存在する場合、ループは34で終了する)。AbM超可変領域は、KabatのCDRとChothiaの構造的ループとの折衷案であり、Oxford MolecularのAbM抗体モデル化ソフトウェアによって使用されている。「接触」超可変領域は、利用可能な複合結晶構造の分析に基づく。これらの超可変領域の各々に由来する残基を、以下に記述する。
【0083】
超可変領域は、以下の「伸長超可変領域」、VLにおいて、24~36または24~34(L1)、46~56または50~56(L2)、及び89~97(L3)、ならびにVHにおいて、26~35B(H1)、50~65、47~65、または49~65(H2)、及び93~102、94~102、または95~102(H3)を含み得る。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、Kabatら(上記)に従って番号付けされる。
【0084】
「フレームワーク」残基または「FR」残基は、本明細書に定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0085】
「Kabatにあるような可変ドメイン残基番号付け」または「Kabatにあるようなアミノ酸位置番号付け」という用語及びそれらの変形は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)における抗体の編集物の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用される番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを使用する場合、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくはCDRの短縮、またはそれへの挿入に対応するより少ないアミノ酸または追加のアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入断片(Kabatによる残基52a)、ならびに重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatによる残基82a、82b、及び82cなど)を含み得る。残基のKabat番号付けは、「標準的な」Kabat番号付け配列との抗体の配列の相同性領域での整列によって所与の抗体について決定され得る。
【0086】
Kabat番号付けシステムは一般に、可変ドメイン内の残基(軽鎖の残基約1~107及び重鎖の残基1~113)に言及する際に使用される(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照されたい)。「EU番号付けシステム」または「EU指標」は一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域内の残基に言及する際に使用される(例えば、Kabatら(上記)に報告されるEU指標)。「KabatにあるようなEU指標」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。別段本明細書において述べられない限り、抗体の可変ドメイン内の残基番号への言及は、Kabat番号付けシステムによる残基番号付けを意味する。別段本明細書において述べられない限り、抗体の定常ドメイン内の残基番号への言及は、EU番号付けシステム(例えば、米国仮特許出願第60/640,323号、EU番号付けに関する図面を参照されたい)による残基番号付けを意味する。
【0087】
「親和性成熟」抗体は、その1つ以上のHVR内に1つ以上の改変を有し、これらの改変が、これらの改変(複数可)を有しない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性の改善をもたらす抗体である。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモルまたは更にはピコモルの親和性を有するであろう。親和性成熟抗体は、当該技術分野において既知である技術によって産生される。Marks et al.Bio/Technology10:779-783(1992)は、VH及びVLドメインシャフリングによる親和性成熟を記載している。HVR及び/またはフレームワーク残基のランダム変異原性は、Barbas et al.Proc Nat.Acad.Sci,USA 91:3809-3813(1994)、Schier et al.Gene 169:147-155(1995)、Yelton et al.J.Immunol.155:1994-2004(1995)、Jackson et al.,J.Immunol.154(7):3310-9(1995)、及びHawkins et al,J.Mol.Biol.226:889-896(1992)によって記載されている。
【0088】
「結合親和性」は一般に、分子(例えば、抗体)とその結合パートナー(例えば、抗原)との単一結合部位間の非共有結合相互作用の合計の強度を指す。別段示されない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は一般に、解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載の方法を含む当該技術分野において既知の一般的な方法によって測定することができる。低親和性抗体は一般に、抗原に緩徐に結合し、容易に解離する傾向があるが、高親和性抗体は一般に、抗原により迅速に結合し、より長く結合したままである傾向がある。結合親和性を測定する様々な方法が当該技術分野において既知であり、これらのいずれも、本開示の目的のために使用することができる。具体的で例示的な実施形態を、以下に記載する。
【0089】
結合親和性を指すために本明細書で使用される場合、「またはそれより良好な」は、分子とその結合パートナーとの間のより強い結合を指す。本明細書で使用される場合、「またはそれより良好な」は、より小さなKd数値によって表されるより強い結合を指す。例えば、「.6nMまたはそれより良好な」抗原に対する親和性を有する抗体では、抗体の抗原に対する親和性は、.6nM未満、すなわち、.59nM、.58nM、.57nMなど、または.6nM未満の任意の値である。
【0090】
一実施形態において、本開示による「Kd」または「Kd値」は、一連の滴定の非標識抗原の存在下でFabを最小濃度の(125I)標識抗原と平衡化し、その後抗Fab抗体コーティングプレートに結合した抗原を捕捉することによってFabの抗原に対する溶液結合親和性を測定する、以下のアッセイによって記載される、対象となる抗体のFabバージョン及びその抗原によって実行される放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される(Chen,et al.,(1999)J.Mol Biol293:865-881)。このアッセイのための条件を確立するために、マイクロタイタープレート(Dynex)を50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中5μg/mlの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、その後PBS中2重量体積%のウシ血清アルブミンで、室温(およそ23℃)で2~5時間遮断する。非吸着性プレート(Nunc番号269620)内で、100pMまたは26pMの[125I]抗原を、対象となるFabの段階希釈液と混合する(例えば、Presta et al.,(1997)Cancer Res.57:4593-4599における抗VEGF抗体、Fab-12の評価と一貫)。その後、対象となるFabを一晩インキュベートするが、インキュベーションをより長い期間(例えば、65時間)継続して、平衡に到達することを確実にしてもよい。その後、混合物を、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のため、捕捉プレートに移す。その後、溶液を除去し、PBS中0.1%のTween-20でプレートを8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルのシンチラント(MicroScint-20、Packard)を添加し、プレートをTOPCOUNT(商標)ガンマ計数器(Packard)で10分間計数する。20%以下の最大結合をもたらす各Fabの濃度を、競合結合アッセイにおいて使用するために選択する。
【0091】
別の実施形態によると、「Kd」または「Kd値」は、BIAcore(商標)2000またはBIAcore(商標)3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用した表面プラスモン共鳴アッセイを使用して、25℃で、約10応答単位(RU)で固定化した抗原CM5チップを用いて測定される。簡潔には、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore Inc.)を、供給業者の指示に従って、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化させる。抗原を10mMの酢酸ナトリウム(pH4.8)で5ug/ml(約0.2uM)に希釈してから、5ul/分の流量で注射して、およそ10応答単位(RU)の共役タンパク質を達成する。抗原の注射後、1Mのエタノールアミンを注射して、未反応基を遮断する。動態測定のために、Fabの2倍段階希釈液(0.78nM~500nM)を、0.05%のTween20を有するPBS(PBST)中に、およそ25ul/分の流量、25℃で注射する。会合速度(kon)及び解離速度(koff)を、単純な1対1ラングミュア結合モデル(BIAcore Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して、会合センサーグラム及び解離センサーグラムを同時適合することによって計算する。平衡解離定数(Kd)を、koff/kon比として計算する。例えば、Chen,Y.,et al.,(1999)J.Mol Biol293:865-881を参照されたい。上記の表面プラスモン共鳴アッセイによる結合速度が106M-1S-1を超える場合、結合速度は、ストップトフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)または撹拌レッドキュベットを備えた8000シリーズSLM-Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計で測定して、増加する抗原濃度の存在下、25℃で、PBS中20nMの抗抗原抗体(Fab形態)(pH7.2)の蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nmの帯域通過)の増加または減少を測定する蛍光消光技術を使用することによって決定することができる。
【0092】
本開示による「結合速度」または「会合の速度」または「会合速度」または「kon」はまた、上述のBIAcore(商標)2000またはBIAcore(商標)3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用して、上述の同じ表面プラスモン共鳴技術で決定することもできる。
【0093】
本明細書で使用される場合、「実質的に同様の」または「実質的に同じ」という語句は、2つの数値(一般に、一方は本開示の抗体に関連し、他方は基準/比較用抗体に関連する)間の十分に高い程度の類似性を意味し、これは、当業者が、2つの値の間の差異を、該値(例えば、Kd値)によって測定される生物学的特徴の文脈において生物学的及び/または統計的有意性がほとんどまたは全くないものと見なすようなものである。該2つの値の間の差異は、基準/比較用抗体に関する値の関数として、好ましくは約50%未満、好ましくは約40%未満、好ましくは約30%未満、好ましくは約20%未満、好ましくは約10%未満である。
【0094】
本明細書で使用される場合、「実質的に低減した」または「実質的に異なる」という語句は、2つの数値(一般に、一方は本開示の抗体に関連し、他方は基準/比較用抗体に関連する)間の十分に高い度合いの差異を表し、これは、当業者が、2つの値の間の差異を、該値(例えば、Kd値、HAMA応答)によって測定される生物学的特徴の文脈において統計的有意性があるものと見なすようなものである。該2つの値の間の差異は、基準/比較用抗体に関する値の関数として、好ましくは約10%超、好ましくは約20%超、好ましくは約30%超、好ましくは約40%超、好ましくは約50%超である。
【0095】
本明細書における目的のための「アクセプターヒトフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンフレームワーク由来またはヒトコンセンサスフレームワーク由来のVLフレームワークまたはVHフレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「由来の」アクセプターヒトフレームワークは、それと同じアミノ酸配列を含んでも、既存のアミノ酸配列変化を含有してもよい。既存のアミノ酸変化が存在する場合、好ましくは5個以下、及び好ましくは4個以下または3個以下の既存のアミノ酸変化が存在する。既存のアミノ酸変化がVHにおいて存在する場合、好ましくはそれらの変化は、71H位、73H位、及び78H位のうちの3つ、2つ、または1つのみにあり、例えば、それらの位置のアミノ酸残基は、71A、73T、及び/または78Aであり得る。一実施形態において、VLアクセプターヒトフレームワークの配列は、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と同一である。
【0096】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列の下位群からのものである。一般に、配列の下位群は、Kabatらにあるような下位群である。一実施形態において、VLについて、下位群は、Kabatらにあるような下位群カッパIである。一実施形態において、VHについて、下位群は、Kabatらにあるような下位群IIIである。
【0097】
「VH下位群IIIコンセンサスフレームワーク」は、Kabatらの可変重下位群III内のアミノ酸配列から得られるコンセンサス配列を含む。一実施形態において、VH下位群IIIコンセンサスフレームワークアミノ酸配列は、以下の配列、EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号11)-H1-WVRQAPGKGLEWV(配列番号12)-H2-RFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYC(配列番号145)-H3-WGQGTLVTVSS(配列番号13)の各々の少なくとも一部分または全部を含む。
【0098】
「VL下位群Iコンセンサスフレームワーク」は、Kabatらの可変軽カッパ下位群I内のアミノ酸配列から得られるコンセンサス配列を含む。一実施形態において、VL下位群Iコンセンサスフレームワークアミノ酸配列は、以下の配列、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号14)-L1-WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号15)-L2-GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号141)-L3-FGQGTKVEIKR(配列番号16)の各々の少なくとも一部分または全部を含む。
【0099】
「未修飾のヒトフレームワーク」は、アクセプターヒトフレームワークと同じアミノ酸配列を有し、例えば、アクセプターヒトフレームワーク内のヒトから非ヒトへのアミノ酸置換(複数可)を欠くヒトフレームワークである。
【0100】
抗CD79b免疫複合体またはCD79b「に結合する」抗体は、抗体が、抗原を発現する細胞または組織を標的とする上で治療剤として有用であり、かつ他のタンパク質と有意には交差反応しないように十分な親和性でCD79b抗原に結合する抗体である。そのような実施形態において、抗体の「非標的」タンパク質への結合の程度は、蛍光活性化細胞選別(FACS)分析または放射性免疫沈降法(RIA)によって決定して、抗体のその特定の標的タンパク質への結合の約10%未満である。抗体の標的分子への結合に関して、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープへの「特異的結合」またはそれ「に特異的に結合する」またはそれ「に特異的である」という用語は、非特異的相互作用とは測定可能に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、一般に結合活性を有しない同様の構造の分子である対照分子の結合との比較での、分子の結合を決定することによって測定することができる。例えば、特異的結合は、標的に類似した対照分子、例えば、過剰な非標識標的との競合によって決定することができる。この場合、標識標的のプローブへの結合が、過剰な非標識標的によって競合的に阻害される場合に、特異的結合が示される。本明細書で使用される場合、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープへの「特異的結合」またはそれ「に特異的に結合する」またはそれ「に特異的である」という用語は、例えば、標的に対して、少なくとも約10-4M、あるいは少なくとも約10-5M、あるいは少なくとも約10-6M、あるいは少なくとも約10-7M、あるいは少なくとも約10-8M、あるいは少なくとも約10-9M、あるいは少なくとも約10-10M、あるいは少なくとも約10-11M、あるいは少なくとも約10-12M、またはそれ以上のKdを有する分子によって呈され得る。一実施形態において、「特異的結合」という用語は、抗体が、いかなる他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープにも実質的に結合することなく、CD79bポリペプチド上のエピトープに結合する結合を指す。
【0101】
抗体の「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列Fc領域またはアミノ酸配列バリアントFc領域)起因する生物学的活性を指し、抗体のアイソタイプに応じて変動する。抗体のエフェクター機能の例としては、C1q結合及び補体依存性細胞毒性、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御、ならびにB細胞活性化が挙げられる。
【0102】
本明細書における「Fc領域」という用語は、天然配列Fc領域及びバリアントFc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変動し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、Cys226位のアミノ酸残基から、またはPro230から、そのカルボキシル末端まで伸びると定義される。Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムによる残基447)は、例えば、抗体の産生もしくは精製中に、または抗体の重鎖をコードする核酸を組み換え操作することによって除去されてもよい。したがって、インタクト抗体の組成物は、全K447残基が除去された抗体集団、K447残基が除去されていない抗体集団、及びK447残基を有する抗体とK447残基を有しない抗体との混合物を有する抗体集団を含み得る。
【0103】
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を有する。例示的な「エフェクター機能」としては、C1q結合、CDC、Fc受容体結合、ADCC、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体、BCR)の下方制御などが挙げられる。そのようなエフェクター機能は一般に、Fc領域と結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)との組み合わせを必要とし、例えば、本明細書の定義に開示される様々なアッセイを使用して評価することができる。
【0104】
「天然配列Fc領域」は、天然に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然配列ヒトFc領域としては、天然配列ヒトIgG1 Fc領域(非A及びAアロタイプ)、天然配列ヒトIgG2 Fc領域、天然配列ヒトIgG3 Fc領域、及び天然配列ヒトIgG4 Fc領域、ならびにそれらの天然に存在するバリアントが挙げられる。
【0105】
「バリアントFc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾、好ましくは1つ以上のアミノ酸置換(複数可)のために天然配列Fc領域のものとは異なるアミノ酸配列を含む。好ましくは、バリアントFc領域は、天然配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較して、少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、天然配列Fc領域内または親ポリペプチドのFc領域内に約1~約10個のアミノ酸置換、及び好ましくは約1~約5個のアミノ酸置換を有する。本明細書におけるバリアントFc領域は、好ましくは天然配列Fc領域及び/または親のポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の相同性、ならびに最も好ましくはそれらと少なくとも約90%の相同性、より好ましくはそれらと少なくとも約95%の相同性を有する。
【0106】
「抗体依存性細胞媒介性細胞毒性」または「ADCC」は、ある特定の細胞毒性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)に存在するFc受容体(FcR)に分泌型Igが結合することにより、これらの細胞毒性エフェクター細胞が抗原保有標的細胞に特異的に結合し、その後細胞毒により標的細胞を殺滅することが可能になる、細胞毒性の形態を指す。抗体は、細胞毒性細胞を「備え」ており、そのような殺滅には絶対的に必要とされる。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞が、FcγRIIIのみを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-92(1991)の464頁の表3に要約されている。対象となる分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載のものなどのインビトロADCCアッセイを実行してもよい。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、または加えて、対象となる分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.(USA)95:652-656(1998)に開示されるものなどの動物モデルにおいて評価されてもよい。
【0107】
「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を説明する。好ましいFcRは、天然配列ヒトFcRである。更に、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合するものであり、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体(これらの受容体のアレルバリアント及び代替的にはスプライシング形態を含む)を含む。FcγRII受容体には、FcγRIIA「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害受容体」)が含まれ、これらは、主にそれらの細胞質ドメインが異なる、類似したアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン系阻害モチーフ(ITIM)を含有する。(M.in Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203-234(1997)の概説を参照されたい)。FcRは、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-492(1991)、Capel et al.,Immunomethods 4:25-34(1994)、及びde Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.126:330-41(1995)に概説されている。今後特定されるFcRを含む他のFcRが、本明細書において「FcR」という用語によって包含される。この用語はまた、母体IgGの胎児への移行に関与する新生児受容体FcRnも含む(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))。
【0108】
インビボでのヒトFcRnへの結合及びヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドの血清半減期は、例えば、ヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウスもしくはトランスフェクトヒト細胞株において、またはバリアントFc領域を有するポリペプチドが投与される霊長類においてアッセイすることができる。WO2000/42072(Presta)は、FcRへの結合が改善または減少した抗体バリアントについて記載している。例えば、Shields et al.J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)もまた参照されたい。
【0109】
「ヒトエフェクター細胞」は、1つ以上のFcRを発現し、エフェクター機能を実行する白血球である。好ましくは、この細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞毒性T細胞、及び好中球が挙げられ、PBMC及びNK細胞が好ましい。エフェクター細胞は、天然源、例えば、血液から単離され得る。
【0110】
「補体依存性細胞毒性」または「CDC」は、補体の存在下での標的細胞の溶解を指す。古典的補体経路の活性化は、補体系の第1の構成成分(C1q)が(適切なサブクラスの)抗体に結合することにより開始され、これらの抗体にはそれらの同族抗原が結合する。補体活性化を評価するために、例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)に記載のCDCアッセイを実行することができる。改変されたFc領域アミノ酸配列及び増加または減少したC1q結合能力を有するポリペプチドバリアント(バリアントFc領域を有するポリペプチド)については、例えば、米国特許第6,194,551B1号及びWO1999/51642に記載されている。例えば、Idusogie et al.J.Immunol.164:4178-4184(2000)を参照されたい。
【0111】
「Fc領域を含む抗体」という用語は、Fc領域を含む抗体を指す。Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムによる残基447)は、例えば、抗体の精製中に、または抗体をコードする核酸を組み換え操作することによって除去されてもよい。したがって、本開示によるFc領域を有する抗体を含む組成物は、K447を有する抗体、全K447が除去された抗体、またはK447残基を有する抗体とK447残基を有しない抗体との混合物を含んでもよい。
【0112】
本明細書における「B細胞表面マーカー」または「B細胞表面抗原」は、B細胞に結合するアンタゴニストで標的とすることができるB細胞の表面上に発現される抗原であり、これには、リガンドの天然に存在するB細胞抗原への結合を弱めることができるB細胞表面抗原または可溶性形態B細胞表面抗原に対する抗体が含まれるが、これらに限定されない。例示的なB細胞表面マーカーとしては、CD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD40、CD53、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CDw78、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CDw84、CD85、及びCD86白血球表面マーカー(説明については、The Leukocyte Antigen Facts Book,2nd Edition.1997,ed.Barclay et al.Academic Press,Harcourt Brace&Co.,New Yorkを参照されたい)が挙げられる。他のB細胞表面マーカーとしては、RP105、FcRH2、B細胞CR2、CCR6、P2X5、HLA-DOB、CXCR5、FCER2、BR3、BAFF、BLyS、Btig、NAG14、SLGC16270、FcRH1、IRTA2、ATWD578、FcRH3、IRTA1、FcRH6、BCMA、及び239287が挙げられる。特に対象となるB細胞表面マーカーは、哺乳動物の他の非B細胞組織と比較してB細胞上で優先的に発現され、前駆B細胞及び成熟B細胞上の両方で発現され得る。
【0113】
「がん」及び「がん性」という用語は、典型的に未制御の細胞成長を特徴とする哺乳動物の生理学的病態を指すか、または説明する。がんの例としては、リンパ腫、白血病、骨髄腫、またはリンパ系腫瘍などの造血系がんまたは血液関連がんだけでなく、脾臓癌及びリンパ節癌、ならびに癌腫、芽細胞腫、及び肉腫も挙げられるが、これらに限定されない。がんのより具体的な例には、例えば、高、中、及び低悪性度リンパ腫(例えば、粘膜関連リンパ系組織B細胞リンパ腫及び非ホジキンリンパ腫(NHL)、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、及びホジキンリンパ腫などのB細胞リンパ腫、ならびにT細胞リンパ腫を含む)と、白血病(二次性白血病、慢性リンパ球性白血病(CLL)(B細胞白血病(CD5+Bリンパ球)など)、骨髄性白血病(急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病など)、リンパ性白血病(急性リンパ芽球性白血病(ALL)など)、及び脊髄形成異常症を含む)とを含むB細胞関連がん、ならびに他の血液がん及び/またはB細胞関連がんもしくはT細胞関連がんが含まれる。好塩基球、好酸球、好中球、及び単球などの多形核白血球、樹状細胞、血小板、赤血球、ならびにナチュラルキラー細胞を含む、追加の造血細胞のがんもまた含まれる。以下、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、侵攻性NHL、再発性侵攻性NHL、再発性緩慢性NHL、難治性NHL、難治性緩慢性NHL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、有毛細胞白血病(HCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、DLBCL、再発性/難治性DLBCL、FL、及びマントル細胞リンパ腫から選択されるがん性B細胞増殖性障害もまた含まれる。B細胞がんの起源には、以下のものが含まれ、辺縁帯B細胞リンパ腫は辺縁帯のメモリーB細胞内に起こり、濾胞性リンパ腫及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫は胚中心の明調域の中心細胞内に起こり、慢性リンパ球性白血病及び小リンパ球性白血病はB1細胞(CD5+)内に起こり、マントル細胞リンパ腫は外套帯のナイーブB細胞内に起こり、バーキットリンパ腫は胚中心の暗調域の中心芽細胞内に起こる。本明細書において「造血細胞組織」と称される造血細胞を含む組織としては、胸腺及び骨髄、ならびに末梢リンパ系組織(脾臓、リンパ節、粘膜に関連するリンパ系組織(腸管関連リンパ系組織、扁桃、パイエル板、及び虫垂、ならびに他の粘膜に関連するリンパ系組織、例えば、気管支内層など)など)が挙げられる。そのようながんの更に具体的な例としては、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞癌、消化管癌、膵臓癌、神経膠腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、小腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝臓癌、白血病及び他のリンパ増殖性障害、ならびに様々な種類の頭頸部癌が挙げられる。
【0114】
本明細書における「B細胞悪性腫瘍」または「B細胞増殖性障害」としては、低悪性度/濾胞性NHL、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非開裂細胞性NHL、巨大病変性NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、及びヴァルデンストレームマクログロブリン血症、非ホジキンリンパ腫(NHL)、DLBCL、再発性/難治性DLBCL、FL、リンパ球優位型ホジキン病(LPHD)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、及び緩慢性NHL(再発性緩慢性NHL及びリツキシマブ不応性緩慢性NHLを含む)を含む、非ホジキンリンパ腫(NHL);急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、有毛細胞白血病、慢性骨髄芽球性白血病を含む、白血病;マントル細胞リンパ腫;ならびに他の血液学的悪性腫瘍が挙げられる。そのような悪性腫瘍は、CD79bなどのB細胞表面マーカーに対して指向された抗体で治療することができる。そのような疾患は、CD79bなどのB細胞表面マーカーに対して指向された抗体の投与によって治療されることが本明細書において企図され、複合体化されていない(「ネイキッド」)抗体または本明細書に開示される細胞毒性剤に複合体化される抗体の投与を含む。そのような疾患は、同時にまたは連続して投与される、別の抗体または抗体薬物複合体、別の細胞毒性剤、放射線または他の治療との併用での、本開示の抗CD79b抗体または抗CD79b抗体薬物複合体を含む、併用療法によって治療されることもまた本明細書において企図される。本開示の例示的な治療法において、本開示の抗CD79b抗体は、抗CD20抗体、免疫グロブリン、またはそのCD20結合断片との併用で、一緒にまたは連続的にかのいずれかで投与される。抗CD20抗体は、ネイキッド抗体または抗体薬物複合体であり得る。併用療法の一実施形態において、抗CD79b抗体は本開示の抗体であり、抗CD20抗体はRituxan(登録商標)(リツキシマブ)である。
【0115】
本明細書で使用される場合、「非ホジキンリンパ腫」または「NHL」という用語は、ホジキンリンパ腫以外のリンパ系のがんを指す。ホジキンリンパ腫は一般に、ホジキンリンパ腫におけるリード・シュテルンベルク細胞の存在、及び非ホジキンリンパ腫における該細胞の不在によって、非ホジキンリンパ腫と区別することができる。本明細書で使用される場合、この用語によって包含される非ホジキンリンパ腫の例には、Color Atlas of Clinical Hematology(3rd edition),A.Victor Hoffbrand and John E.Pettit(eds.)(Harcourt Publishers Ltd.,2000)に記載のRevised European-American Lymphoma(REAL)スキームなどの当該技術分野において既知である分類スキームに従って、当業者(例えば、腫瘍学者または病理学者)によってそのように特定されるもの全てが含まれる。特に、
図11.57、11.58、及び11.59の一覧を参照されたい。より具体的な例としては、再発性または難治性NHL、フロントライン低悪性度NHL、第III/IV病期NHL、化学療法耐性NHL、前駆Bリンパ芽球性白血病及び/またはリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、B細胞慢性リンパ球性白血病及び/または前リンパ球性白血病及び/または小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性リンパ腫、免疫細胞腫及び/またはリンパ形質細胞性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、節外性辺縁帯-MALTリンパ腫、結節性辺縁帯リンパ腫、有毛細胞白血病、形質細胞腫及び/または形質細胞骨髄腫、低悪性度/濾胞性リンパ腫、中悪性度/濾胞性NHL、マントル細胞リンパ腫、濾胞中心リンパ腫(濾胞性リンパ腫)、中悪性度びまん性NHL、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、再発性/難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、侵攻性NHL(侵攻性フロントラインNHL及び侵攻性再発性NHLを含む)、自家幹細胞移植後に再発するNHLまたはそれに対して不応性のNHL、縦隔原発B細胞性大細胞型リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非開裂細胞性NHL、巨大病変性NHL、バーキットリンパ腫、前駆(末梢)大顆粒リンパ球性白血病、菌状息肉腫及び/またはセザリー症候群、皮膚(skin)(皮膚(cutaneous))リンパ腫、未分化大細胞型リンパ腫、血管中心性リンパ腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
「障害」は、本開示の物質/分子または方法による治療から利益を受ける可能性がある任意の病態である。これには、哺乳動物を問題の障害に罹患しやすくする病理学的状態を含む慢性及び急性障害または疾患が含まれる。本明細書において治療される障害の非限定的な例としては、悪性腫瘍及び良性腫瘍などのがん性病態;非白血病及びリンパ系腫瘍;神経細胞障害、膠細胞障害、星状細胞障害、視床下部及び他の腺性障害、マクロファージ障害、上皮障害、間質障害、胞胚腔障害;ならびに炎症性障害、免疫障害、及び他の血管新生関連障害が挙げられる。障害には、B細胞増殖性障害及び/またはB細胞腫瘍、例えば、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、侵攻性NHL、再発性侵攻性NHL、再発性緩慢性NHL、難治性NHL、難治性緩慢性NHL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、有毛細胞白血病(HCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、及びマントル細胞リンパ腫などのがん性病態が更に含まれる。
【0117】
「細胞増殖性障害」及び「増殖性障害」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖に関連する障害を指す。一実施形態において、増殖性障害は、がんである。いくつかの実施形態において、がんは、B細胞増殖性障害である。
【0118】
本明細書で使用される場合、「腫瘍」は、悪性か良性かに関わらず、全ての新生物細胞の成長及び増殖、ならびに全ての前がん性及びがん性細胞及び組織を指す。
【0119】
「治療する」または「治療」または「緩和」という用語は、治療的処置と予防的または防止的処置との両方を指し、その目的は、標的とする病理学的状態または障害を予防または減速(緩和)することである。治療を必要とする者には、既に障害を有する者だけでなく、障害を発症しやすい者または障害を予防する必要がある者も含まれる。本開示の方法に従って治療量の抗CD79b抗体を受けた後、患者が、以下、がん細胞の数の低減もしくはがん細胞の不在;腫瘍サイズの低減;軟組織及び骨へのがんの伝播を含む、末梢器官へのがん細胞浸潤の阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止);腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止);腫瘍成長のある程度の阻害;及び/または特定のがんに関連する症状のうちの1つ以上のある程度の軽減;罹患率及び死亡率の低減、ならびに生活の質の問題の改善のうちの1つ以上の観察可能及び/または測定可能な低減または不在を示す場合に、対象または哺乳動物は、CD79bポリペプチド発現がんの「治療」に成功している。抗CD79b抗体が既存のがん細胞の成長の予防及び/またはそれらの殺滅を行うことができる限り、それは細胞増殖抑制性及び/または細胞毒性であり得る。これらの兆候または症状の低減はまた、患者によっても感じられる可能性がある。
【0120】
治療の成功及び疾患の改善を評価するための上記のパラメータは、医師に知られた通例の手順によって容易に測定可能である。がん療法では、有効性は、例えば、疾患進行までの時間(TTP)の評価及び/または奏効率(RR)の決定によって測定することができる。転移は、進行度診断試験によって、骨スキャンならびに骨への伝播を決定するためのカルシウムレベル及び他の酵素の試験によって、決定することができる。その領域内の骨盤及びリンパ節への伝播を探すために、CTスキャンを行ってもよい。肺及び肝臓への転移を探すためには、それぞれ胸部X線及び既知の方法による肝臓酵素レベルの測定が使用される。疾患を監視するための他の通例の方法としては、経直腸的超音波検査(TRUS)及び経直腸的針生検(TRNB)が挙げられる。
【0121】
より限局性のがんである膀胱癌の場合、疾患の進行を決定するための方法には、膀胱鏡検査による尿細胞評価、尿中の血液の存在の監視、超音波検査または経静脈腎盂造影による尿路上皮管の可視化、コンピュータ断層撮影(CT)、及び磁気共鳴画像法(MRI)が含まれる。遠隔転移の存在は、腹部CT、胸部X線、または骨格放射性核種画像法によって評価することができる。
【0122】
「慢性」投与は、急性の様式に対して、初期治療効果(活性)を長期間維持するような連続的な様式での薬剤(複数可)の投与を指す。「間欠的」投与は、中断なく連続的に行うのではなく、むしろ周期的な性質の治療である。
【0123】
「個体」または「対象」または「患者」は、脊椎動物である。ある特定の実施形態において、脊椎動物は、哺乳動物である。哺乳動物には、家畜動物(ウシなど)、競技用動物、愛玩動物(ネコ、イヌ、及びウマなど)、霊長類、マウス、ならびにラットが含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、哺乳動物は、ヒトである。
【0124】
1つ以上の更なる治療剤「との併用での」投与は、同時(同時期)及び任意の順序の連続的な投与を含む。
【0125】
本明細書で使用される場合、「担体」には、用いられる投与量及び濃度で曝露されている細胞または哺乳動物にとって無毒である、薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤が含まれる。多くの場合、生理学的に許容される担体は、pH緩衝水溶液である。生理学的に許容される担体の例としては、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、及び他の炭水化物(グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む);EDTAなどのキレート剤;マンニトールもしくはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;及び/またはTWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(登録商標)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0126】
「薬学的組成物」または「薬学的製剤」という用語は、活性成分の生物学的活性が有効になるような形態にあり、製剤が投与される対象にとって許容できないほど有毒である追加の構成成分を何ら含有しない、抗CD79b免疫複合体の調製物を指す。そのような製剤は、滅菌である。「薬学的に許容される」賦形剤(ビヒクル、添加剤)は、対象哺乳動物に適度に投与されて、用いられる有効用量の活性成分を提供することができるものである。
【0127】
「滅菌」製剤は、無菌であるか、または全ての生存微生物及びそれらの胞子を含まないか、もしくはそれらを本質的に含まない。
【0128】
本明細書に開示される「有効量」の抗CD79b免疫複合体は、具体的に述べられた目的を実行するのに十分な量である。「有効量」は、述べられた目的に関して、経験的に及び通例の様式で決定することができる。
【0129】
「治療有効量」という用語は、対象または哺乳動物において疾患または障害を「治療する」のに有効な抗CD79b免疫複合体の量を指す。がんの場合、治療有効量の免疫複合体は、がん細胞の数を低減、腫瘍サイズを低下、末梢器官へのがん細胞浸潤を阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止)、腫瘍転移を阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止)、腫瘍成長をある程度阻害、及び/またはがんに関連する症状のうちの1つ以上をある程度軽減することができる。本明細書における「治療する」の定義を参照されたい。免疫複合体が既存のがん細胞の成長の予防及び/またはそれらの殺滅を行うことができる限り、それは細胞増殖抑制性及び/または細胞毒性であり得る。「予防有効量」は、必要な投与量及び投与期間で、所望の予防的結果を達成するのに有効な量を指す。典型的であって必ずしもそうではないが、疾患の早期段階前または早期段階で予防用量が対象において使用されるため、予防有効量は、治療有効量よりも少ないであろう。
【0130】
「成長阻害量」の抗CD79b免疫複合体は、インビトロまたはインビボのいずれかで、細胞、特に腫瘍(例えば、がん細胞)の成長を阻害することができる量を指す。新生物細胞成長を阻害する目的のための「成長阻害量」の抗CD79b免疫複合体は、経験的に及び通例の様式で決定することができる。
【0131】
「細胞毒性量」の抗CD79b免疫複合体は、インビトロまたはインビボのいずれかで、細胞、特に腫瘍(例えば、がん細胞)の破壊を引き起こすことができる量を指す。新生物細胞成長を阻害する目的のための「細胞毒性量」の抗CD79b抗体は、経験的に及び通例の様式で決定することができる。
【0132】
「CD79b発現細胞」は、細胞表面上でまたは分泌型形態のいずれかで、内因性またはトランスフェクトCD79bポリペプチドを発現する細胞である。「CD79b発現がん」は、細胞表面上にCD79bポリペプチドが存在する細胞、またはCD79bポリペプチドを産生もしくは分泌する細胞を含むがんである。「CD79b発現がん」は、任意で、十分なレベルのCD79bポリペプチドをその細胞表面上に産生しており、結果として、抗CD79b抗体がそれに結合し、そのがんに対して治療効果を有することができるようなものである。別の実施形態において、「CD79b発現がん」は、任意で、十分なレベルのCD79bポリペプチドを産生及び分泌しており、結果として、抗CD79b抗体アンタゴニストがそれに結合し、そのがんに対して治療効果を有することができるようなものである。後者に関して、アンタゴニストは、腫瘍細胞による分泌型CD79bポリペプチドの産生及び分泌を低減、阻害、または予防することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。CD79bポリペプチドを「過剰発現する」がんは、同じ組織型の非がん性細胞と比較して、より高いレベルのCD79bポリペプチドをその細胞表面上に有するか、または産生及び分泌するがんである。そのような過剰発現は、遺伝子の増幅によって、または転写もしくは翻訳の増加によって引き起こされ得る。CD79bポリペプチドの過剰発現は、(例えば、組み換えDNA技術を使用してCD79bポリペプチドをコードする単離核酸から調製され得る単離CD79bポリペプチドに対して調製した抗CD79b抗体を使用する、免疫組織化学アッセイ、FACS分析などを介して)細胞表面上に存在するか、またはその細胞によって分泌されるCD79bタンパク質のレベルの増加を評価することによって、検出または予後アッセイにおいて決定することができる。あるいは、または加えて、例えば、CD79bをコードする核酸またはその補体に対応する核酸系プローブを使用する蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH、1998年10月公開のWO98/45479を参照されたい)、サザンブロット、ノーザンブロット、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術(リアルタイム定量的PCR(RT-PCR)など)を介して、細胞内のCD79bポリペプチドをコードする核酸またはmRNAのレベルを測定してもよい。例えば、抗体系アッセイを使用して、血清などの生物流体中の流出抗原を測定することによって、CD79bポリペプチド過剰発現を研究することもできる(例えば、1990年6月12日発行の米国特許第4,933,294号、1991年4月18日発行のWO91/05264、1995年3月28日発行の米国特許第5,401,638号、及びSias et al.,J.Immunol.Methods132:73-80(1990)も参照されたい)。上記のアッセイとは別に、様々なインビボアッセイが熟練した医師に利用可能である。例えば、患者の体内の細胞を、任意で検出可能な標識(例えば、放射性同位体)を用いて標識した抗体に曝露してもよく、患者における細胞への抗体の結合は、例えば、放射活性の外部スキャンによって、または以前に抗体に曝露された患者から取得した生検の分析によって評価することができる。
【0133】
本明細書で使用される場合、「細胞毒性剤」という用語は、細胞機能を阻害もしくは防止する薬物分子、及び/または細胞の破壊を引き起こす薬物分子を指す。この用語は、細菌、真菌、植物、または動物起源の小分子毒素または酵素活性毒素などの毒素(細胞の成長または増殖に有害な影響を有し得るそれらの断片及び/またはバリアントを含む)を含むことが意図される。一実施形態において、細胞毒性剤は、モノ-メチルオーリスタチンE(MMAE)である。
【0134】
本明細書で使用される場合、「凍結乾燥された」組成物は、凍結乾燥のプロセスを介した凍結乾燥に供されており、「ケーキ」をもたらす液体組成物を指す。ある特定の実施形態において、凍結乾燥されたケーキは、ケーキ構造、色、外観、または水分含有量が著しく変化することなく、保管条件(5℃±3℃かつ光から保護)下で安定している。特定の一実施形態において、凍結乾燥されたケーキは、刻み目がなく滑らかである。本開示のある特定の実施形態において、凍結乾燥された組成物は、約60ヶ月間安定している。本開示のある特定の実施形態において、凍結乾燥された組成物は、約48ヶ月間安定している。
【0135】
「安定した」製剤は、内部の免疫複合体が保管時にその物理的安定性及び/または化学的安定性及び/または生物学的活性を本質的に保持する製剤である。好ましくは、製剤は、保管時にその物理的安定性及び化学的安定性ならびにその生物学的活性を本質的に保持する。保管期間は一般に、製剤の意図される有効期間に基づいて選択される。タンパク質安定性を測定するための様々な分析技術が、当該技術分野において利用可能であり、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery,247-301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)及びJones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29-90(1993)に概説されている。安定性は、選択された温度で選択された期間にわたって測定され得る。安定性は、様々な異なる方法で、例えば、凝集物形成の評価によって(例えば、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、濁度を測定することによって、及び/または目視検査によって)、カチオン交換クロマトグラフィー、画像キャピラリー等電点電気泳動(icIEF)、またはキャピラリーゾーン電気泳動を使用して電荷不均一性を評価することによって、アミノ末端またはカルボキシ末端配列分析によって、質量分光分析によって、還元された及びインタクト抗体を比較するためのSDS-PAGE分析によって、ペプチドマッピング(例えば、トリプシンまたはLYS-C)分析によって、抗体の生物学的活性または抗原結合機能を評価することなどによって、定性的及び/または定量的に評価され得る。不安定性は、凝集、脱アミド(例えば、Asn脱アミド)、酸化(例えば、Met酸化)、異性化(例えば、Asp異性化)、クリッピング/加水分解/断片化(例えば、ヒンジ領域断片化)、スクシンイミド形成、不対システイン(複数可)、N末端伸長、C末端プロセシング、グリコシル化差異などのいずれか1つ以上を伴い得る。
【0136】
免疫複合体は、それが、色及び/または透明度の目視検査時に、またはUV光散乱もしくはサイズ排除クロマトグラフィーによって測定した時に、凝集、沈殿、及び/または変性の兆候を全くまたはほとんど示さない場合に、薬学的製剤中で「その物理的安定性を保持する」。
【0137】
免疫複合体は、所与の時点での化学的安定性が、免疫複合体が以下に定義されるその生物学的活性を依然として保持していると見なされるようなものである場合に、薬学的製剤中で「その化学的安定性を保持する」。化学的安定性は、免疫複合体(例えば、抗体)の化学的に改変された形態のタンパク質部分を検出及び定量化することによって評価することができる。化学的改変は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、SDS-PAGE、及び/またはマトリックス支援レーザー脱離イオン化/飛行時間型質量分析法(MALDI/TOF MS)を使用して評価することができるサイズ修飾(例えば、クリッピング)を伴い得る。他の種類の化学的改変としては、例えば、イオン交換クロマトグラフィーまたはicIEFによって評価することができる(例えば、脱アミドの結果として生じる)タンパク質の電荷改変が挙げられる。加えて、またはあるいは、免疫複合体の化学的安定性は、免疫複合体の化学的に改変された形態の薬物部分を検出及び定量化することによって評価することができる。加えて、またはあるいは、免疫複合体の化学的安定性は、例えば、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を介して薬物:抗体比(DAR)を測定して、免疫複合体を含む組成物中のDAR分布を決定することによって評価することができる。
【0138】
免疫複合体の抗体は、所与の時点での免疫複合体(例えば、抗CD79b抗体などの抗体)のタンパク質部分の生物学的活性が、アッセイ(例えば、抗原結合アッセイ)で決定して、その免疫複合体を含む薬学的製剤が調製された時点で呈される生物学的活性の少なくとも約60%(アッセイの誤差以内)である場合に、薬学的製剤中で「その生物学的活性を保持する」。
【0139】
本明細書における「脱アミド化」モノクローナル抗体は、その1つ以上のアスパラギン残基が、例えば、アスパラギン酸またはイソアスパラギン酸に誘導体化されている抗体である。
【0140】
本明細書における「酸化」モノクローナル抗体は、1つ以上のトリプトファン残基及びその1つ以上のメチオニンが酸化されている抗体である。
【0141】
本明細書における「糖化」モノクローナル抗体は、その1つ以上のリジン残基が糖化されている抗体である。
【0142】
「脱アミドを受けやすい」抗体は、脱アミドしやすいことが見出されている1つ以上の残基を含む抗体である。
【0143】
「酸化を受けやすい」抗体は、酸化しやすいことが見出されている1つ以上の残基を含む抗体である。
【0144】
「凝集を受けやすい」抗体は、特に凍結及び/または撹拌時に他の抗体分子(複数可)と凝集することが見出されている抗体である。
【0145】
「断片化を受けやすい」抗体は、例えば、そのヒンジ領域で、2つ以上の断片に切断されることが見出されている抗体である。
【0146】
「脱アミド、酸化、凝集、または断片化の低減」は、異なる製剤中に製剤化されたモノクローナル抗体と比較して、脱アミド、酸化、凝集、または断片化を防止またはその量を減少させることが意図される。
【0147】
製剤化される抗体は、好ましくは本質的に純粋であり、望ましくは本質的に同種である(例えば、混入タンパク質などを含まない)。「本質的に純粋な」抗体は、組成物中のタンパク質の総重量に基づいて、少なくとも約90重量%、好ましくは少なくとも約95重量%の抗体を含む組成物を意味する。「本質的に同種の」抗体は、組成物中のタンパク質の総重量に基づいて、少なくとも約99重量%の抗体を含む組成物を意味する。
【0148】
「等張」は、対象となる製剤がヒトの血液と本質的に同じ浸透圧を有することを意味する。等張製剤は一般に、約250~350mOsmの浸透圧を有する。等張性は、例えば、蒸気圧浸透圧計または氷結型浸透圧計を使用して測定することができる。
【0149】
本明細書で使用される場合、「緩衝液」は、その酸-塩基複合体構成成分の作用によりpHの変化に抵抗する緩衝溶液を指す。本明細書における緩衝剤の非限定的な例としては、ヒスチジン、リン酸ナトリウム、及びコハク酸ナトリウムが挙げられる。本開示の緩衝剤は、好ましくは約4.5~約7.0、好ましくは約5.0~約6.0の範囲内のpHを有する。一実施形態において、緩衝剤は、pH5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、または6.0を有する。例示的な一実施形態において、緩衝剤は、5.3のpHを有する。例えば、コハク酸ナトリウムは、pHをこの範囲内に制御する緩衝剤の一例である。
【0150】
本明細書で使用される場合、「界面活性剤」は、表面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤を指す。本明細書における界面活性剤の例としては、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20及びポリソルベート80);ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188);トリトン;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウリル硫酸ナトリウム;オクチルグルコシドナトリウム;ラウリルスルホベタイン、ミリスチルスルホベタイン、リノレイルスルホベタイン、またはステアリルスルホベタイン;ラウリルサルコシン、ミリスチルサルコシン、リノレイルサルコシン、またはステアリルサルコシン;リノレイルベタイン、ミリスチルベタイン、またはセチルベタイン;ラウロアミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、リノールアミドプロピルベタイン、ミリスタミドプロピルベタイン、パルミドプロピルベタイン、またはイソステアラミドプロピルベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル);ミリスタミドプロピルジメチルアミン、パルミドプロピルジメチルアミン、またはイソステアラミドプロピルジメチルアミン;メチルココイルタウリン酸ナトリウムまたはメチルオレイルタウリン酸二ナトリウム;ならびにMONAQUAT(商標)シリーズ(Mona Industries,Inc.,Paterson,N.J.);ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、及びエチレングリコール-プロピレングリコールコポリマー(例えば、Pluronics、PF68など)などが挙げられる。一実施形態において、本明細書における界面活性剤は、ポリソルベート20である。別の実施形態において、本明細書における界面活性剤は、ポリソルベート80である。
【0151】
本明細書で使用される場合、「糖」は、可溶性炭水化物を指す。糖の非限定的な例としては、グルコース、フルクトース、スクロース、トレハロース、アルギニン、グリセリン、プロリン、デキストラン、ならびに糖アルコール(グリセロール、マンニトール、及びソルビトールなど)が挙げられる。
【0152】
II.薬学的組成物
一態様において、本開示は、抗CD79b免疫複合体及び界面活性剤を含む薬学的組成物であって、界面活性剤が、少なくとも0.06重量体積%(すなわち、0.6mg/ml)の濃度であり、抗CD79b免疫複合体が、式、
を含み、式中、
Abが、抗CD79b抗体であり、抗CD79b抗体が、重鎖及び軽鎖を含み、軽鎖が、(a)KASQSVDYEGDSFLNのHVR-L1配列(配列番号1)、(b)AASNLESのHVR-L2配列(配列番号2)、及び(c)QQSNEDPLTのHVR-L3配列(配列番号3)を含み、重鎖が、(a)GYTFSSYWIEのHVR-H1配列(配列番号4)、(b)GEILPGGGDTNYNEIFKGのHVR-H2配列(配列番号5)、及び(c)TRRVPIRLDYのHVR-H3配列(配列番号6)を含み、Valが、バリンであり、Citが、シトルリンであり、pが、約1~約8(例えば、約3.5などの約2~約5)の値である、薬学的組成物を提供する。
【0153】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、凍結乾燥されている。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、再構成された組成物、すなわち、凍結乾燥されたケーキから再構成されている組成物である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の薬学的組成物(例えば、凍結乾燥された組成物または再構成された組成物)を含有する20mlのガラスバイアル(密閉バイアルなど)が提供される。
【0154】
A.免疫複合体
本開示は、モノメチルオーリスタチン(MMAE)(ドラスタチンの合成類似体)などの小分子毒素に複合体化された抗体を含む免疫複合体(互換的に「抗体-薬物複合体」または「ADC」と称される)に関連する。本開示は、式Ab-(L-D)pの抗CD79b免疫複合体を提供し、式中、Abは、抗CD79b抗体であり、抗CD79b抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、軽鎖は、(a)KASQSVDYEGDSFLNのHVR-L1配列(配列番号1)、(b)AASNLESのHVR-L2配列(配列番号2)、及び(c)QQSNEDPLTのHVR-L3配列(配列番号3)を含み、重鎖は、(a)GYTFSSYWIEのHVR-H1配列(配列番号4)、(b)GEILPGGGDTNYNEIFKGのHVR-H2配列(配列番号5)、及び(c)TRRVPIRLDYのHVR-H3配列(配列番号6)を含み、Lは、6-マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル(MC-val-cit-PAB)を含むリンカーであり、Dは、MMAEであり、pは、約1~約8(約2~約5、例えば、約3.5など)の値であり、抗CD79b免疫複合体は、以下の構造を有する。
本開示の抗CD79b免疫複合体は、抗CD79b-MC-val-cit-MMAE、抗CD79b-MC-vc-MMAE、または抗CD79b-vc-MMAEと称され得る。ポラツズマブベドチンは、本開示の抗CD79b免疫複合体の一例である。ポラツズマブベドチンは、CAS登録番号1313206-42-6、IUPHAR/BPS番号8404、及びKEGG番号D10761を有する。「ポラツズマブベドチン」、「DCDS4501A」、及び「RG7596」は、米国、欧州、及び日本からなる国の群から選択される国または領域において同一の製品またはバイオシミラー製品として販売促進の認可を得るために必要な要求を満たす全ての対応する免疫複合体を包含する。
【0155】
いくつかの実施形態において、抗CD79b免疫複合体は、薬学的組成物中、約5mg/ml~約60mg/ml、約10mg/ml~約50mg/ml、約10mg/ml~約40mg/ml、約10mg/ml~約30mg/ml、または約10mg/ml~約20mg/mlの濃度である。特定の一実施形態において、抗CD79b免疫複合体は、薬学的組成物中、約5mg/ml、約6mg/ml、約7mg/ml、約8mg/ml、約9mg/ml、約10mg/ml、約11mg/ml、約12mg/ml、約13mg/ml、約14mg/ml、約15mg/ml、約16mg/ml、約17mg/ml、約18mg/ml、約19mg/ml、約20mg/ml、約25mg/ml、約30mg/ml、約35mg/ml、約40mg/ml、約45mg/ml、約50mg/ml、約55mg/ml、または約60mg/mlの濃度である。
【0156】
本明細書に提供される実施形態のいずれかのいくつかの実施形態において、「約」値またはパラメータは、述べられる値またはパラメータの±10%、±9%、±8%、±7%、±6%,±5%、±4%、±3%、±2%、または±1%のいずれか1つの誤差範囲(これらの値間の任意の範囲を含む)を包含する。
【0157】
いくつかの実施形態において、抗CD79b免疫複合体は、薬学的組成物中、約10mg/ml~約20mg/mlの濃度である。例示的な一実施形態において、抗CD79b免疫複合体は、薬学的組成物中、約10mg/mlの濃度である。別の例示的な実施形態において、抗CD79b免疫複合体は、薬学的組成物中、約20mg/mlの濃度である。
【0158】
いくつかの実施形態において、抗CD79b免疫複合体は、薬学的組成物中、5mg/ml~60mg/ml、10mg/ml~50mg/ml、10mg/ml~40mg/ml、10mg/ml~30mg/ml、または10mg/ml~20mg/mlの濃度である。特定の一実施形態において、抗CD79b免疫複合体は、薬学的組成物中、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/ml、mg/ml、11mg/ml、12mg/ml、13mg/ml、14mg/ml、15mg/ml、16mg/ml、17mg/ml、18mg/ml、19mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、35mg/ml、40mg/ml、45mg/ml、50mg/ml、55mg/ml、または60mg/mlの濃度である。
【0159】
いくつかの実施形態において、抗CD79b免疫複合体は、薬学的組成物中、10mg/ml~20mg/mlの濃度である。例示的な一実施形態において、抗CD79b免疫複合体は、薬学的組成物中、10mg/mlの濃度である。別の例示的な実施形態において、抗CD79b免疫複合体は、薬学的組成物中、20mg/mlの濃度である。
【0160】
本明細書で企図される場合、抗CD79b免疫複合体は、以下に示される式Iのものであり、抗CD79b抗体またはその断片(Ab)は、リンカー(L)を通してMMAE薬物部分(D)に複合体化されている(すなわち、共有結合している)。
Ab-(L-D)p I
【0161】
式I中、pは、1抗体当たりの薬物部分の平均数であり、これは、例えば、1抗体当たり約1~約20個の薬物部分、及びある特定の実施形態において1抗体当たり1~約8個の薬物部分の範囲であり得る。本開示は、1抗体当たりの平均薬物負荷が約2~約5または約3~約4、例えば、3.5である、式Iの抗体-薬物化合物の混合物を含む組成物を含む。
【0162】
1.抗CD79b抗体
本開示は、抗CD79b抗体またはその機能的断片を含む免疫複合体を提供する。
【0163】
一態様において、本開示は、好ましくは特異的にCD79bに結合する抗CD79b抗体を提供する。任意で、抗体は、モノクローナル抗体、抗体断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片を含む)、ダイアボディ、単一ドメイン抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、または抗CD79bポリペプチド抗体のそのそれぞれの抗原エピトープへの結合を競合的に阻害する抗体である。本開示の抗体は、任意で、CHO細胞内または細菌細胞内で産生され、好ましくはそれらが結合する細胞の死を誘導することができる。
【0164】
本開示は、抗体のCD79bへの一価親和性(例えば、Fab断片としての抗体の、CD79bへの親和性)がマウス抗体(例えば、Fab断片としてのマウス抗体の、CD79bへの親和性)またはキメラ抗体(例えば、Fab断片としてのキメラ抗体の、CD79bへの親和性)の一価親和性と実質的に同じである、ヒト化抗CD79b抗体を含む抗CD79b免疫複合体を提供する。
【0165】
一実施形態において、本開示は、抗体のその二価形態でのCD79bへの親和性(例えば、IgGとしての抗体のCD79bへの親和性)が0.3nMまたはそれより良好な、ヒト化抗CD79b抗体を含む抗CD79b免疫複合体を提供する。別の実施形態において、本開示は、抗体のその二価形態でのCD79bへの親和性(例えば、IgGとしての抗体のCD79bへの親和性)が0.5nMである、ヒト化抗CD79b抗体を提供する。更なる一実施形態において、本開示は、抗体のその二価形態でのCD79bへの親和性(例えば、IgGとしての抗体のCD79bへの親和性)が0.5nM+/-0.1である、ヒト化抗CD79b抗体を提供する。別の実施形態において、本開示は、抗体のその二価形態でのCD79bへの親和性(例えば、IgGとしての抗体のCD79bへの親和性)が0.3nM~0.7nMである、ヒト化抗CD79b抗体を提供する。別の実施形態において、本開示は、抗体のその二価形態でのCD79bへの親和性(例えば、IgGとしての抗体のCD79bへの親和性)が0.4nM~0.6nMである、ヒト化抗CD79b抗体を提供する。別の実施形態において、本開示は、抗体のその二価形態でのCD79bへの親和性(例えば、IgGとしての抗体のCD79bへの親和性)が0.5nM~0.55nMである、ヒト化抗CD79b抗体を提供する。
【0166】
当該技術分野において確立されているように、あるリガンドのその受容体への結合親和性は、様々なアッセイのいずれかを使用して決定し、様々な定量値に関して表現することができる。したがって、一実施形態において、結合親和性は、Kd値として表現され、(例えば、最小化した結合力効果での)固有の結合親和性を反映する。一般に及び好ましくは、結合親和性は、無細胞設定または細胞関連設定のいずれかでインビトロで測定される。本明細書により詳細に記載されるように、結合親和性の倍率差は、(例えば、Fab形態の)ヒト化抗体の一価結合親和性値と、(例えば、Fab形態の)基準/比較用抗体(例えば、ドナー超可変領域配列を有するマウス抗体)の一価結合親和性値との比率に関して定量化することができ、これらの結合親和性値は、類似したアッセイ条件下で決定される。したがって、一実施形態において、結合親和性の倍率差は、Fab形態のヒト化抗体のKd値と、該基準/比較用Fab抗体のKd値の比率として決定される。例えば、一実施形態において、本開示の抗体(A)が基準抗体(M)の親和性よりも「3倍低い」親和性を有する場合、AのKd値は3倍であり、MのKd値は1倍であり、AのKdとMのKdとの比率は3:1である。逆に、一実施形態において、本開示の抗体(C)が基準抗体(R)の親和性よりも「3倍大きい」親和性を有する場合、CのKd値は1倍であり、RのKd値は3倍であり、CのKdとRのKdとの比率は1:3である。本明細書に記載のものを含む、当該技術分野において既知であるいくつかのアッセイ(例えば、Biacore、放射免疫測定法(RIA)、及びELISAを含む)のいずれかを使用して、結合親和性測定を得ることができる。
【0167】
提供される抗CD79b抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、軽鎖は、(a)KASQSVDYEGDSFLNのHVR-L1配列(配列番号1)、(b)AASNLESのHVR-L2配列(配列番号2)、及び(c)QQSNEDPLTのHVR-L3配列(配列番号3)を含み、重鎖は、(a)GYTFSSYWIEのHVR-H1配列(配列番号4)、(b)GEILPGGGDTNYNEIFKGのHVR-H2配列(配列番号5)、及び(c)TRRVPIRLDYのHVR-H3配列(配列番号6)を含む。
【0168】
本開示のいくつかの実施形態において、抗CD79b抗体は、
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSSYWIEWVRQAPGKGLEWIGEILPGGGDTNYNEIFKGRATFSADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCTRRVPIRLDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)
のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、及び
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQSVDYEGDSFLNWYQQKPGKAPKLLIYAASNLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSNEDPLTFGQGTKVEIKR(配列番号8)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。
【0169】
いくつかの実施形態において、重鎖は、
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFSSYWIEWVRQAPGKGLEWIGEILPGGGDTNYNEIFKGRATFSADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCTRRVPIRLDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号9)
のアミノ酸配列を含み、軽鎖は、
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQSVDYEGDSFLNWYQQKPGKAPKLLIYAASNLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSNEDPLTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号10)のアミノ酸配列を含む。
【0170】
2.リンカー
本開示は、6-マレイミドカプロイル(「MC」)、バリン-シトルリン(「val-cit」または「vc」)、及びp-アミノベンジルオキシカルボニル(「PAB」)を含むいくつかの構成成分を含むリンカーを提供する。そのようなリンカー構成成分は、当該技術分野において既知であり、以下に簡潔に記載される。
【0171】
本明細書で使用される場合、リンカーは、以下の式II、
【0172】
を有し、式中、Aは、ストレッチャー単位であり、aは、0~1の整数であり、Wは、アミノ酸単位であり、wは、0~12の整数であり、Yは、スペーサー単位であり、yは、0、1、または2である。「ストレッチャー単位」は、抗体を別のリンカー構成成分に連結する。本明細書に提供されるストレッチャー単位MCを、以下に示す(式中、波線は、抗体への共有結合部位を示す)。
【0173】
アミノ酸単位は、プロテアーゼによるリンカーの切断を可能にし、それによりリソソーム酵素などの細胞内プロテアーゼへの曝露時に免疫複合体から薬物が容易に放出される。例えば、Doronina et al.(2003)Nat.Biotechnol.21:778-784を参照されたい。アミノ酸単位は、天然に存在するアミノ酸残基、ならびに微量アミノ酸及び天然に存在しないアミノ酸類似体(シトルリンなど)を含んでもよい。アミノ酸単位は、特定の酵素、例えば、腫瘍関連プロテアーゼ、カテプシンB、C、及びD、またはプラスミンプロテアーゼによる酵素的切断に対するそれらの選択性を設計及び最適化することができる。本明細書に提供されるアミノ酸単位は、バリン-シトルリン(vcまたはval-cit)ジペプチドである。
【0174】
本明細書で使用される場合、「スペーサー」単位は、自己犠牲的であり、ストレッチャー単位及びアミノ酸単位によって抗体を薬物部分に連結する。「自己犠牲的」スペーサー単位は、アミド結合の結果として、別個の加水分解ステップなく薬物部分の放出を可能にし、カルバミン酸塩、メチルカルバミン酸塩、または炭酸塩が、ベンジルアルコールと細胞毒性剤との間に作製される。例えば、Hamann et al.(2005)Expert Opin.Ther.Patents(2005)15:1087-1103を参照されたい。本明細書に提供されるスペーサー単位は、p-アミノベンジルオキシカルボニル(PAB)である。
【0175】
ストレッチャー単位、スペーサー単位、及びアミノ酸単位を含むリンカー構成成分は、US2005/0238649(A1)に記載の方法などの当該技術分野において既知である方法によって合成することができる。
【0176】
本開示のリンカーは、以下に示されるMC-val-cit-PABである。
【0177】
3.モノメチルオーリスタチン(MMAE)
本開示の免疫複合体は、ドラスタチンの合成類似体であるオーリスタチンに複合体化された抗CD79b抗体またはその断片を含む(米国特許第5635483号、同第5780588号)。ドラスタチン及びオーリスタチンは、微小管動態、GTP加水分解、ならびに核及び細胞の分裂に干渉し(Woyke et al(2001)Antimicrob.Agents and Chemother.45(12):3580-3584)、抗がん活性(米国特許第5663149号)及び抗菌活性(Pettit et al(1998)Antimicrob.Agents Chemother.42:2961-2965)を有することが示されている。オーリスタチン薬物部分は、ペプチド薬物部分のN(アミノ)末端またはC(カルボキシル)末端を通して抗体に結合することができる(WO02/088172)。本開示のオーリスタチンは、以下に示される、合成で非電荷のN末端連結モノメチルオーリスタチン(MMAE)ペンタペプチドである。
【0178】
抗CD79b抗体またはその断片、様々なリンカー構成成分を有するリンカー、及びMMAEを含む、式Iの抗CD79b免疫複合体を、以下の省略を用いて以下に示す(「Ab」は、抗CD79b抗体またはその断片であり、pは、1~約8(例えば、約3.5などの約2~約5)であり、「Val-Cit」または「vc」は、バリン-シトルリンジペプチドであり、「S」は、硫黄原子である)。
【0179】
本明細書における硫黄連結免疫複合体のある特定の構造的説明において、抗体は、特定の硫黄原子が複数のリンカー-薬物部分を保有することを示すためではなく、単に硫黄連結の特徴を示すために、「Ab-S」として表されることに留意されたい。以下の構造の左括弧はまた、AbとSとの間で硫黄原子の左に置かれてもよく、これは、本明細書に記載の本開示の免疫複合体と同等の記載である。
【0180】
4.薬物負荷
薬物負荷は、式Iの分子中の1抗体当たりの薬物部分の平均数である、pによって表される。薬物負荷は、1抗体当たり1~20個の薬物部分(D)の範囲であり得る。式IのADCは、1~20個の範囲の薬物部分に複合体化された抗体の集合を含む。複合反応からADCを調製する際の1抗体当たりの薬物部分の平均数は、質量分析法、ELISAアッセイ、及びHPLCなどの慣習的な手段によって特性評価することができる。pに関するADCの定量的分布もまた、決定することができる。場合によっては、pがある特定の値である同種のADCを、他の薬物負荷を有するADCから分離、精製、及び特性評価することは、逆相HPLCまたは電気泳動などの手段によって達成することができる。したがって、式Iの抗体-薬物複合体の薬学的製剤は、そのような複合体と、1個、2個、3個、4個、またはそれ以上の薬物部分に連結された抗体との不均一混合物であり得る。
【0181】
いくつかの抗体-薬物複合体では、pは、抗体上の結合部位の数によって限定され得る。例えば、本明細書に提供される実施形態におけるように、結合がシステインチオールである場合、抗体は、1個のみもしくはいくつかのシステインチオール基を有しても、1個のみもしくはいくつかの十分に反応性のチオール基を有してもよく、リンカーはそれらを通して結合することができる。ある特定の実施形態において、薬物負荷がより高く(例えば、p>5)なると、ある特定の抗体-薬物複合体の凝集、不溶性、毒性、または細胞透過性の損失が引き起こされ得る。ある特定の実施形態において、本開示のADCの薬物負荷は、1~約8、約2~約6、約3~約5、または約3.5の範囲である。実際に、ある特定のADCでは、1抗体当たりの薬物部分の最適な比率は、8未満であり得、約2~約5であり得ることが示されている。US2005/0238649(A1)を参照されたい。
【0182】
ある特定の実施形態において、理論上の最大数よりも少ない薬物部分が、複合反応中に抗体に複合体化される。抗体は、以下に考察されるように、例えば、薬物-リンカー中間体またはリンカー試薬と反応しないリジン残基を含有し得る。一般に、抗体は、薬物部分に連結し得る多くの遊離及び反応性システインチオール基を含有せず、実際に、抗体内のほとんどのシステインチオール残基は、ジスルフィド架橋として存在する。ある特定の実施形態において、抗体は、部分または完全還元条件下で、ジチオスレイトール(DTT)またはトリカルボニルエチルホスフィン(TCEP)などの還元剤によって還元されて、反応性システインチオール基を生成し得る。ある特定の実施形態において、抗体は、リジンまたはシステインなどの反応性求核基を明らかにするために、変性条件に供される。
【0183】
ADCの負荷(薬物/抗体比率)は、異なる方法で、例えば、(i)抗体に対してモル過剰の薬物-リンカー中間体またはリンカー試薬を制限すること、(ii)複合反応時間または温度を制限すること、及び(iii)システインチオール修飾のための部分または限定的還元条件によって、制御することができる。
【0184】
2つ以上の求核基が薬物-リンカー中間体またはリンカー試薬と反応し、続いて薬物部分試薬と反応する場合、結果として生じる生成物は、抗体に結合した1つ以上の薬物部分が分布するADC化合物の混合物であることを理解されたい。1抗体当たりの薬物の平均数は、抗体及び薬物に特異的である二重ELISA抗体アッセイによって混合物から計算することができる。個々のADC分子は、質量分析法によって混合物中で特定され、HPLC、例えば、疎水性相互作用クロマトグラフィーによって分離されてもよい(例えば、McDonagh et al(2006)Prot.Engr.Design&Selection 19(7):299-307、Hamblett et al(2004)Clin.Cancer Res.10:7063-7070、Hamblett,K.J.,et al.“Effect of drug loading on the pharmacology,pharmacokinetics,and toxicity of an anti-CD30 antibody-drug conjugate,”Abstract No.624,American Association for Cancer Research,2004 Annual Meeting,March27-31,2004,Proceedings of the AACR,Volume45,March 2004、Alley,S.C.,et al.“Controlling the location of drug attachment in antibody-drug conjugates,”Abstract No.627,American Association for Cancer Research,2004 Annual Meeting,March27-31,2004,Proceedings of the AACR,Volume45,March2004を参照されたい)。ある特定の実施形態において、単一の負荷値を有する同種のADCが、電気泳動またはクロマトグラフィーによって複合混合物から単離されてもよい。
【0185】
5.免疫複合体を調製する例示的な方法
式IのADCは、(1)抗体の求核基と二価リンカー試薬とを反応させて、共有結合を介してAb-Lを形成し、続いて薬物部分Dと反応させること、及び(2)薬物部分の求核基と二価リンカー試薬とを反応させて、共有結合を介してD-Lを形成し、続いて抗体の求核基と反応させることを含む、当業者に既知である有機化学反応、条件、及び試薬を用いるいくつかの経路によって調製することができる。後者の経路を介して式IのADCを調製するための例示的な方法は、US2005/0238649(A1)に記載され、これは参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0186】
抗体上の求核基には、(i)N末端アミン基、(ii)側鎖アミン基、例えば、リジン、(iii)側鎖チオール基、例えば、システイン、及び(iv)抗体がグリコシル化されている糖ヒドロキシルまたはアミノ基が含まれるが、これらに限定されない。アミン基、チオール基、及びヒドロキシル基は、求核性であり、(i)NHSエステル、HOBtエステル、ハロホルメート(haloformate)、及び酸ハロゲン化物などの活性エステル、(ii)ハロアセトアミドなどのアルキルハロゲン化物及びベンジルハロゲン化物、ならびに(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシル、及びマレイミド基を含む、リンカー部分上及びリンカー試薬上の求電子基と反応して、共有結合を形成することができる。ある特定の抗体は、還元可能な鎖間ジスルフィド、すなわち、システイン架橋を有する。抗体が完全にまたは部分的に還元されるように、DTT(ジチオスレイトール)またはトリカルボニルエチルホスフィン(TCEP)などの還元剤で処理することによって、抗体は、リンカー試薬との複合に対して反応性となり得る。したがって、各システイン架橋は、理論上、2つの反応性チオール求核剤を形成するであろう。追加の求核基は、リジン残基の修飾を通して、例えば、リジン残基と2-イミノチオラン(トラウト試薬)とを反応させて、アミンのチオールへの変換をもたらすことによって抗体内に導入することができる。反応性チオール基もまた、1個、2個、3個、4個、またはそれ以上のシステイン残基を導入することによって(例えば、1個以上の非天然システインアミノ酸残基を含むバリアント抗体を調製することによって)抗体内に導入することができる。
【0187】
本開示の抗体-薬物複合体はまた、アルデヒド基またはケトンカルボニル基などの抗体上の求電子基と、リンカー試薬上または薬物上の求核基との間の反応によって産生されてもよい。リンカー試薬上の有用な求核基には、ヒドラジド、オキシム、アミノ、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレート、及びアリールヒドラジドが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、抗体は、リンカー試薬上または薬物上の求核置換基と反応することができる求電子部分を導入するように修飾される。別の実施形態において、グリコシル化抗体の糖を、例えば、過ヨウ素酸酸化試薬で酸化させて、リンカー試薬または薬物部分のアミン基と反応し得るアルデヒド基またはケトン基を形成してもよい。結果として生じるイミンシッフ塩基群は、安定した結合を形成し得るか、または例えば、水素化ホウ素試薬によって還元されて、安定したアミン結合を形成し得る。一実施形態において、グリコシル化抗体の炭水化物部分と、ガラクトースオキシダーゼまたはメタ過ヨウ素酸ナトリウムのいずれかとを反応させると、抗体内で、薬物上の適切な基と反応し得るカルボニル(アルデヒド及びケトン)基を得ることができる(Hermanson,Bioconjugate Techniques)。別の実施形態において、N末端セリン残基またはスレオニン残基を含有する抗体は、メタ過ヨウ素酸ナトリウムと反応することができ、第1のアミノ酸の代わりにアルデヒドの産生をもたらす(Geoghegan&Stroh,(1992)Bioconjugate Chem.3:138-146、US5362852)。そのようなアルデヒドは、薬物部分またはリンカー求核剤と反応することができる。
【0188】
薬物部分上の求核基には、(i)NHSエステル、HOBtエステル、ハロホルメート、及び酸ハロゲン化物などの活性エステル、(ii)ハロアセトアミドなどのアルキルハロゲン化物及びベンジルハロゲン化物、ならびに(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシル、及びマレイミド基を含む、リンカー部分及びリンカー試薬上の求電子基と反応して、共有結合を形成することができるアミン基、チオール基、ヒドロキシル基、ヒドラジド基、オキシム基、ヒドラジン基、チオセミカルバゾン基、ヒドラジンカルボキシレート基、及びアリールヒドラジド基が含まれるが、これらに限定されない。
【0189】
本開示の化合物は、以下の架橋剤試薬、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、ならびにSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)(これらは市販されており、例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aからのもの)で調製されたADCを明示的に企図するが、これらに限定されない(2003-2004 Applications Handbook and Catalogの467~498頁を参照されたい)。
【0190】
抗体及び細胞毒性剤を含む免疫複合体はまた、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(アジプイミド酸ジメチルHClなど)、活性エステル(スベリン酸ジスクシンイミジルなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(トルエン2,6-ジイソシアネートなど)、及びビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなど)などの様々な二官能性タンパク質共役剤を使用して作製することもできる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al.,Science238:1098(1987)に記載されるように調製され得る。炭素-14で標識された1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への複合のための例示的なキレート剤である。WO94/11026を参照されたい。
【0191】
B.界面活性剤
本開示は、抗CD79b免疫複合体及び界面活性剤を含む組成物を提供する。ある特定の実施形態において、界面活性剤は、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20及びポリソルベート80);ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188);N-オクチル-β-Dグルコピラノシド(OG);トリトン;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウリル硫酸ナトリウム;オクチルグルコシドナトリウム;ラウリルスルホベタイン、ミリスチルスルホベタイン、リノレイルスルホベタイン、もしくはステアリルスルホベタイン;ラウリルサルコシン、ミリスチルサルコシン、リノレイルサルコシン、もしくはステアリルサルコシン;リノレイルベタイン、ミリスチルベタイン、もしくはセチルベタイン;ラウロアミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、リノールアミドプロピルベタイン、ミリスタミドプロピルベタイン、パルミドプロピルベタイン、もしくはイソステアラミドプロピルベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル);ミリスタミドプロピルジメチルアミン、パルミドプロピルジメチルアミン、もしくはイソステアラミドプロピルジメチルアミン;メチルココイルタウリン酸ナトリウムもしくはメチルオレイルタウリン酸二ナトリウム;MONAQUAT(商標)シリーズ(Mona Industries,Inc.,Paterson,N.J.);ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、エチレングリコール-プロピレングリコールコポリマー(例えば、PluronicsもしくはPF68)、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0192】
いくつかの実施形態において、本明細書における界面活性剤は、非イオン性である。ある特定の例示的な実施形態において、界面活性剤は、ポリソルベート20(PS20)、ポリソルベート80(PS80)、ポロキサマー188(P188)、N-オクチル-β-Dグルコピラノシド(OG)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の一実施形態において、界面活性剤は、PS20である。別の実施形態において、本明細書における界面活性剤は、PS80である。
【0193】
ある特定の実施形態において、本薬学的組成物中の界面活性剤(例えば、PS20)は、少なくとも約0.01重量体積%(すなわち、0.1mg/ml)及び約0.20重量体積%(すなわち、2.0mg/ml)の濃度である。ある特定の実施形態において、本薬学的組成物中の界面活性剤(例えば、PS20)は、少なくとも約0.01重量体積%(すなわち、0.1mg/ml)、少なくとも約0.02重量体積%(すなわち、0.2mg/ml)、少なくとも約0.03重量体積%(すなわち、0.3mg/ml)、少なくとも約0.04重量体積%(すなわち、0.4mg/ml)、少なくとも約0.05重量体積%(すなわち、0.5mg/ml)、少なくとも約0.06重量体積%(すなわち、0.6mg/ml)、少なくとも約0.07重量体積%(すなわち、0.7mg/ml)、少なくとも約0.08重量体積%(すなわち、0.8mg/ml)、少なくとも約0.09重量体積%(すなわち、0.9mg/ml)、少なくとも約0.10重量体積%(すなわち、1mg/ml)、少なくとも約0.11重量体積%(すなわち、1.1mg/ml)、少なくとも約0.12重量体積%(すなわち、1.2mg/ml)、少なくとも約0.13重量体積%(すなわち、1.3mg/ml)、少なくとも約0.14重量体積%(すなわち、1.4mg/ml)、少なくとも約0.15重量体積%(すなわち、1.5mg/ml)、少なくとも約0.16重量体積%(すなわち、1.6mg/ml)、少なくとも約0.17重量体積%(すなわち、1.7mg/ml)、少なくとも約0.18重量体積%(すなわち、1.8mg/ml)、少なくとも約0.19重量体積%(すなわち、1.9mg/ml)、または少なくとも約0.20重量体積%(すなわち、2.0mg/ml)の濃度(これらの値間の任意の範囲を含む)である。特定の一実施形態において、本薬学的組成物中の界面活性剤(例えば、PS20)は、少なくとも約0.06重量体積%(すなわち、0.6mg/ml)の濃度である。別の特定の実施形態において、本薬学的組成物中の界面活性剤(例えば、PS20)は、少なくとも約0.12重量体積%(すなわち、1.2mg/ml)の濃度である。いくつかの実施形態において、本薬学的組成物は、液体薬学的組成物である。いくつかの実施形態において、本液体薬学的組成物は、30℃での保管時に少なくとも約4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24時間のいずれかの間、または2℃~8℃での保管時に少なくとも約24、48、または72時間のいずれかの間安定している。
【0194】
ある特定の実施形態において、本薬学的組成物中の界面活性剤(例えば、PS20)は、少なくとも約0.01重量体積%(すなわち、0.1mg/ml)及び約0.20重量体積%(すなわち、2.0mg/ml)の濃度である。ある特定の実施形態において、凍結乾燥された薬学的組成物中の界面活性剤(例えば、PS20)は、少なくとも0.01重量体積%、少なくとも0.02重量体積%、少なくとも0.03重量体積%、少なくとも0.04重量体積%、少なくとも0.05重量体積%、少なくとも0.06重量体積%、少なくとも0.07重量体積%、少なくとも0.08重量体積%、少なくとも0.09重量体積%、少なくとも0.10重量体積%、少なくとも0.11重量体積%、少なくとも0.12重量体積%、少なくとも0.13重量体積%、少なくとも0.14重量体積%、少なくとも0.15重量体積%、少なくとも0.16重量体積%、少なくとも0.17重量体積%、少なくとも0.18重量体積%、少なくとも0.19重量体積%、または少なくとも0.20重量体積%の濃度(これらの値間の任意の範囲を含む)である。特定の一実施形態において、凍結乾燥された薬学的組成物中の界面活性剤(例えば、PS20)は、少なくとも0.06重量体積%の濃度である。別の特定の実施形態において、凍結乾燥された薬学的組成物中の界面活性剤(例えば、PS20)は、少なくとも0.12重量体積%の濃度である。いくつかの実施形態において、凍結乾燥された薬学的組成物は、凍結乾燥されたケーキである。いくつかの実施形態において、凍結乾燥された薬学的組成物は、ガラスバイアル内に含有される。
【0195】
ある特定の実施形態において、本液体薬学的組成物中の界面活性剤(例えば、PS20)は、少なくとも約0.1~約2.0mg/mlの濃度である。ある特定の実施形態において、本液体薬学的組成物中の界面活性剤(例えば、PS20)は、少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、または2.0mg/mlのいずれかの濃度(これらの値間の任意の範囲を含む)である。特定の一実施形態において、本液体薬学的組成物中の界面活性剤(例えば、PS20)は、少なくとも約0.6%mg/mlの濃度である。別の特定の実施形態において、本液体薬学的組成物中の界面活性剤(例えば、PS20)は、少なくとも1.2mg/mlの濃度である。いくつかの実施形態において、本液体薬学的組成物は、凍結乾燥された薬学的組成物(凍結乾燥されたケーキなど)から再構成されている(例えば、SWFIを使用して再構成されている)。いくつかの実施形態において、本液体薬学的組成物は、ガラスバイアル内に含有される。いくつかの実施形態において、本液体薬学的組成物は、30℃での保管時に少なくとも約4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24時間のいずれかの間、または2℃~8℃での保管時に少なくとも約24、48、または72時間のいずれかの間安定している。
【0196】
例示的な一実施形態において、凍結乾燥された薬学的組成物中の界面活性剤(例えば、PS20)は、0.06重量体積%の濃度である。別の例示的な実施形態において、凍結乾燥された薬学的組成物中の界面活性剤(例えば、PS20)は、0.12重量体積%の濃度である。いくつかの実施形態において、凍結乾燥された薬学的組成物は、凍結乾燥されたケーキである。いくつかの実施形態において、凍結乾燥された薬学的組成物は、ガラスバイアル内に含有される。
【0197】
例示的な一実施形態において、本液体薬学的組成物中の界面活性剤(例えば、PS20)は、0.6mg/mlの濃度である。別の例示的な実施形態において、本液体薬学的組成物中の界面活性剤(例えば、PS20)は、1.2mg/mlの濃度である。いくつかの実施形態において、本液体薬学的組成物は、凍結乾燥された組成物(凍結乾燥されたケーキなど)から再構成されている(例えば、SWFIを使用して再構成されている)。いくつかの実施形態において、本液体薬学的組成物は、ガラスバイアル内に含有される。いくつかの実施形態において、本液体薬学的組成物は、30℃での保管時に少なくとも約4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24時間のいずれかの間、または2℃~8℃での保管時に少なくとも約24、48、または72時間のいずれかの間安定している。いくつかの実施形態において、本液体薬学的組成物は、30℃での保管時に少なくとも約4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24時間のいずれかの間、または2℃~8℃での保管時に少なくとも約24、48、または72時間のいずれかの間安定している。
【0198】
いくつかの実施形態において、本薬学的組成物中の抗CD79b免疫複合体は、10mg/mlの濃度であり、本薬学的組成物中の界面活性剤は、少なくとも0.06重量体積%(すなわち、0.6mg/ml)の濃度である。いくつかの実施形態において、本薬学的組成物中の抗CD79b免疫複合体は、10mg/mlの濃度であり、本薬学的組成物中の界面活性剤(例えば、PS20)は、少なくとも0.12重量体積%(すなわち、1.2mg/ml)の濃度である。いくつかの実施形態において、本薬学的組成物は、再構成された(例えば、凍結乾燥された組成物からSWFIを使用して再構成された)組成物である。いくつかの実施形態において、本薬学的組成物は、ガラスバイアル内に含有される。いくつかの実施形態において、本液体薬学的組成物は、30℃での保管時に少なくとも約4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24時間のいずれかの間、または2℃~8℃での保管時に少なくとも約24、48、または72時間のいずれかの間安定している。
【0199】
いくつかの実施形態において、本薬学的組成物中の抗CD79b免疫複合体は、10mg/mlの濃度であり、本薬学的組成物中の界面活性剤(例えば、PS20)は、0.06重量体積%(すなわち、0.6mg/ml)の濃度である。いくつかの実施形態において、本薬学的組成物中の抗CD79b免疫複合体は、10mg/mlの濃度であり、本薬学的組成物中の界面活性剤(例えば、PS20)は、0.12重量体積%(すなわち、1.2mg/ml)の濃度である。いくつかの実施形態において、本薬学的組成物は、再構成された(例えば、凍結乾燥された組成物からSWFIを使用して再構成された)組成物である。いくつかの実施形態において、本薬学的組成物は、ガラスバイアル内に含有される。
【0200】
いくつかの実施形態において、本薬学的組成物中の抗CD79b免疫複合体は、20mg/mlの濃度であり、本薬学的組成物中の界面活性剤(例えば、PS20)は、少なくとも0.06重量体積%(すなわち、0.6mg/ml)の濃度である。いくつかの実施形態において、本薬学的組成物中の抗CD79b免疫複合体は、20mg/mlの濃度であり、本薬学的組成物中の界面活性剤(例えば、PS20)は、少なくとも0.12重量体積%(すなわち、1.2mg/ml)の濃度である。いくつかの実施形態において、本薬学的組成物は、再構成された(例えば、凍結乾燥された組成物からSWFIを使用して再構成された)組成物である。いくつかの実施形態において、本薬学的組成物は、ガラスバイアル内に含有される。
【0201】
いくつかの実施形態において、本薬学的組成物中の抗CD79b免疫複合体は、20mg/mlの濃度であり、本薬学的組成物中の界面活性剤(例えば、PS20)は、0.06重量体積%(すなわち、0.6mg/ml)の濃度である。いくつかの実施形態において、本薬学的組成物中の抗CD79b免疫複合体は、20mg/mlの濃度であり、本薬学的組成物中の界面活性剤は、0.12重量体積%(すなわち、1.2mg/ml)の濃度である。いくつかの実施形態において、本液体薬学的組成物は、30℃での保管時に少なくとも約4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24時間のいずれかの間、または2℃~8℃での保管時に少なくとも約24、48、または72時間のいずれかの間安定している。
【0202】
いくつかの実施形態において、本薬学的組成物は、静脈内投与に好適な液体組成物である。いくつかの実施形態において、投与に好適な液体組成物は、約0.0432及び約0.162mg/mlの界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)を含む。いくつかの実施形態において、本液体組成物は、約0.72mg/ml~約2.7mg/mlのポラツズマブベドチンを含む。いくつかの実施形態において、静脈内投与に好適な液体組成物は、約0.72mg/mlのポラツズマブベドチン及び約0.0432mg/mlのポリソルベート20を含む。いくつかの実施形態において、静脈内投与に好適な液体組成物は、約2.7mg/mlのポラツズマブベドチン及び約0.162mg/mlのポリソルベート20を含む。
【0203】
C.緩衝剤
本開示によると、緩衝剤を含む薬学的組成物が提供される。理論によって拘束されることを望むものではないが、緩衝液の使用は、本組成物の製造、保管、及び使用中に薬学的組成物のpHを維持する。緩衝剤の非限定的な例としては、ヒスチン、コハク酸、コハク酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパンスルホン酸(TAPS)、2-(ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ)酢酸(ビシン)、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール(トリス)、N-(2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル)グリシン(トリシン)、3-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]アミノ]-2-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸(TAPSO)、2-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]エタンスルホン酸(HEPES)、2-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]アミノ]エタンスルホン酸(TES)、1,4-ピペラジンジエタンスルホン酸(PIPES)、ジメチルアルシン酸、2-モルホリン-4-イルエタンスルホン酸(MES)、またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。他の好適な緩衝剤は、塩中酢酸、塩中クエン酸、塩中ホウ酸、及び塩中リン酸であり得る。
【0204】
本開示の例示的な実施形態において、緩衝剤は、ヒスチジン緩衝液またはコハク酸緩衝液である。特定の一実施形態において、コハク酸緩衝液は、コハク酸ナトリウム緩衝液である。
【0205】
いくつかの実施形態において、緩衝剤は、約10mM~約200mMの濃度である。特定の一実施形態において、緩衝剤は、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、約20mM、約21mM、約22mM、約23mM、約24mM、約25mM、約26mM、約27mM、約28mM、約29mM、約30mM、約35mM、約40mM、約45mM、約50mM、約55mM、約60mM、約65mM、約70mM、約75mM、約80mM、約85mM、約90mM、約95mM、約100mM、約105mM、約110mM、約115mM、約120mM、約125mM、約130mM、約135mM、約140mM、約145mM、約150mM、約155mM、約160mM、約165mM、約170mM、約175mM、約180mM、約185mM、約190mM、約195mM、または約200mMの濃度である。
【0206】
別の特定の実施形態において、緩衝剤は、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、21mM、22mM、23mM、24mM、25mM、26mM、27mM、28mM、29mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mM、100mM、105mM、110mM、115mM、120mM、125mM、130mM、135mM、140mM、145mM、150mM、155mM、160mM、165mM、170mM、175mM、180mM、185mM、約190mM、195mM、または200mMの濃度である。
【0207】
本開示の例示的な一実施形態において、コハク酸ナトリウム緩衝液は、約10mM~約200mMの濃度である。一実施形態において、コハク酸ナトリウム緩衝液は、約10mMの濃度である。別の実施形態において、コハク酸ナトリウム緩衝液は、10mMの濃度である。
【0208】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、約5.0~約6.0のpHを有する。特定の実施形態において、緩衝液は、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、または約6.0のpHを有する。他の特定の実施形態において、緩衝液は、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、または6.0のpHを有する。
【0209】
例示的な一実施形態において、本開示の組成物は、約5.3のpHを有する。別の例示的な実施形態において、本開示の組成物は、5.3のpHを有する。
【0210】
D.糖
本開示によると、糖を含む薬学的組成物が提供される。理論によって拘束されることを望むものではないが、糖は、薬学的組成物の凍結保護を促進し、それにより凝集を防止し、薬学的組成物の化学的安定性及び物理的安定性を維持するように機能する。ある特定の実施形態において、糖は、グルコース、フルクトース、スクロース、トレハロース、アルギニン、グリセリン、プロリン、デキストラン、デキストラン40、グリセロール、マンニトール、またはソルビトールである。
【0211】
いくつかの実施形態において、糖は、スクロース、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、デキストラン40、及びトレハロースからなる群から選択される。例示的な一実施形態において、糖は、スクロースである。
【0212】
いくつかの実施形態において、糖は、約50mM~約300mMの濃度である。特定の一実施形態において、緩衝剤は、約50mM、約60mM、約70mM、約80mM、約90mM、約100mM、約110mM、約120mM、約130mM、約140mM、約150mM、約160mM、約170mM、約180mM、約190mM、約200mM、約210mM、約220mM、約230mM、約240mM、約250mM、約260mM、約270mM、約280mM、約290mM、または約300mMの濃度である。いくつかの実施形態において、糖は、約100mM~約260mMの濃度である。
【0213】
いくつかの実施形態において、糖は、50mM~300mMの濃度である。特定の一実施形態において、緩衝剤は、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、mM、110mM、120mM、130mM、140mM、150mM、160mM、170mM、180mM、190mM、200mM、210mM、220mM、230mM、240mM、250mM、260mM、270mM、280mM、290mM、または300mMの濃度である。いくつかの実施形態において、糖は、100mM~260mMの濃度である。
【0214】
本開示の例示的な一実施形態において、スクロースは、約120mMの濃度である。別の例示的な実施形態において、スクロースは、120mMの濃度である。
【0215】
別の態様において、本開示は、10mMのコハク酸ナトリウム緩衝液中20mg/mlの抗CD79b免疫複合体、0.12重量体積%のポリソルベート20、及び120mMのスクロースを含む液体組成物の凍結乾燥によって生成される薬学的組成物であって、液体組成物が、5.3のpHを有し、抗CD79b免疫複合体が、式、
を有し、式中、
Abが、抗CD79b抗体であり、抗CD79b抗体が、重鎖及び軽鎖を含み、軽鎖が、(a)KASQSVDYEGDSFLNのHVR-L1配列(配列番号1)、(b)AASNLESのHVR-L2配列(配列番号2)、及び(c)QQSNEDPLTのHVR-L3配列(配列番号3)を含み、重鎖が、(a)GYTFSSYWIEのHVR-H1配列(配列番号4)、(b)GEILPGGGDTNYNEIFKGのHVR-H2配列(配列番号5)、及び(c)TRRVPIRLDYのHVR-H3配列(配列番号6)を含み、Valが、バリンであり、Citが、シトルリンであり、pが、約1~約8(例えば、約3.5などの約2~約5)の値である、薬学的組成物を提供する。
【0216】
本開示のいくつかの実施形態において、抗CD79b抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。いくつかの実施形態において、重鎖は、配列番号9のアミノ酸配列を含み、軽鎖は、配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0217】
E.安定性
いくつかの実施形態において、液体状態または凍結乾燥形態における薬学的組成物の物理的安定性、化学的安定性、または生物学的活性が評価または測定される。当該技術分野において既知であり、本明細書の実施例に記載される任意の方法を使用して、本開示の薬学的組成物の安定性及び生物学的活性を評価することができる。例えば、薬学的組成物中の抗体の安定性は、サイズ排除クロマトグラフィー(SECまたはSE-HPLC)、画像化キャピラリー等電点電気泳動(icIEF)、ペプチドマッピング、少量光遮蔽(HIAC)アッセイ、ならびにキャピラリー電気泳動(CE)技術(CE-ドデシル硫酸ナトリウム(CE-SDS)及びCE-グリカン分析など)によって測定することができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、安定した薬学的組成物(または製剤)は、内部の免疫複合体が、特定の条件(温度、相対湿度、残留水分、光の存在または不在、撹拌期間後など)下で、保管時、例えば、特定の時間または期間(時間、日、月、年など)の保管時にその物理的安定性及び/または化学的安定性及び/または生物学的活性を本質的に保持する製剤である。いくつかの実施形態において、所与の時点での免疫複合体(及び/または抗CD79b抗体などの免疫複合体の抗体部分)の生物学的活性が、薬学的製品の国または領域の規制当局(例えば、米国のFederal Drug Administration(FDA)、豪州のTherapeutic Goods Administration(TGA)、欧州連合のEuropean Medicines Agency(EMA)など)によって許容される範囲内にある場合に、本薬学的組成物中に存在する免疫複合体は、生物学的に安定している(例えば、その生物学的活性を保持する)。例えば、免疫複合体(抗CD79b抗体を含む免疫複合体など)またはそのような免疫複合体を含む薬学的組成物の生物学的活性は、それが抗原に結合する能力(抗CD79b抗体がCD79b、例えば、ヒトCD79bに結合する能力など)によって測定することができる。例えば、表面プラスモン共鳴(SPR)、放射免疫測定法(RIA)、及びELISAを非限定的に含む、当該技術分野において既知であるいくつかのアッセイを使用して、抗体結合親和性測定を測定することができる。加えて、またはあるいは、免疫複合体(抗CD79b抗体を含む免疫複合体など)の生物学的活性は、例えば、インビトロもしくはインビボで、それが細胞成長及び/または細胞増殖を阻害する能力、または例えば、インビトロもしくはインビボで、プログラム細胞死(アポトーシス)を含む細胞死を誘導する能力によって測定される。抗CD79b抗体または抗CD79b抗体を含む免疫複合体の生物学的活性を測定するためのアッセイに関する更なる詳細は、米国特許第8,088,387号に提供され、その内容の全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0218】
いくつかの実施形態において、本開示の薬学的組成物は、光から保護された場合に、-20℃で、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約8ヶ月間、少なくとも約10ヶ月間、少なくとも約12ヶ月間、少なくとも約14ヶ月間、少なくとも約16ヶ月間、少なくとも約18ヶ月間、少なくとも約20ヶ月間、少なくとも約21ヶ月間、少なくとも約22ヶ月間、少なくとも約23ヶ月間、少なくとも約24ヶ月間、少なくとも約3年間、少なくとも約4年間、または少なくとも約5年間安定している。
【0219】
いくつかの実施形態において、本開示の薬学的組成物は、光から保護された場合に、2℃~8℃(例えば、5℃±3℃)で、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約8ヶ月間、少なくとも約10ヶ月間、少なくとも約12ヶ月間、少なくとも約14ヶ月間、少なくとも約16ヶ月間、少なくとも約18ヶ月間、少なくとも約20ヶ月間、少なくとも約21ヶ月間、少なくとも約22ヶ月間、少なくとも約23ヶ月間、少なくとも約24ヶ月間、少なくとも約3年間、少なくとも約4年間、または少なくとも約5年間安定している。
【0220】
いくつかの実施形態において、本開示の薬学的組成物は、25℃~40℃で、少なくとも約30分間、少なくとも約60分間、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、少なくとも約10時間、少なくとも約12時間、少なくとも約14時間、少なくとも約16時間、少なくとも約18時間、少なくとも約20時間、少なくとも約22時間、少なくとも約1日間、少なくとも約2日間、または少なくとも約3日間安定している。
【0221】
例示的な一実施形態において、本組成物は、光から保護された場合に5℃±3℃で少なくとも約48ヶ月間の安定性を有する。別の例示的な実施形態において、本組成物は、光から保護された場合に5℃±3℃で約48ヶ月間の安定性を有する。
【0222】
ある特定の実施形態において、本開示の薬学的組成物の凍結乾燥形態(例えば、凍結乾燥されたケーキ)が、安定性について検査されてもよい。いくつかの実施形態において、保管条件(5℃±3℃かつ光から保護)下で、凍結乾燥されたケーキは、構造、色、外観、または水分含有量のいかなる著しい変化も実証しない。特定の一実施形態において、凍結乾燥されたケーキは、保管条件下で5%未満の水分含有量を有する。別の特定の実施形態において、凍結乾燥されたケーキは、保管条件下で刻み目がなく滑らかである。本開示のある特定の実施形態において、凍結乾燥されたケーキは、保管条件下で少なくとも約48ヶ月間安定している。
【0223】
いくつかの実施形態において、本開示の薬学的組成物の安定性は、サイズ排除クロマトグラフィー高速(SE-HPLC)によって測定される。例示的な一実施形態において、本組成物は、SE-HPLCによって測定して少なくとも95.0の主ピーク(面積%)を有する。
【0224】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供される凍結乾燥された薬学的組成物(ケーキなど)は、約0.3重量%~約3.2重量%の残留水分含有量範囲にわたって、約2℃~約8℃の温度で保管した時に、少なくとも約44ヶ月間(約30、35、40、45、50、または55ヶ月間のいずれかなど)安定している(これらの値間の任意の範囲を含む)。いくつかの実施形態において、本明細書に提供される凍結乾燥された薬学的組成物(ケーキなど)は、約0.3重量%~約3.2重量%の残留水分含有量範囲にわたって、約25℃で保管した時に、少なくとも約7ヶ月間(約2、3、4、5、6、7、8、8、または10ヶ月間のいずれかなど)安定している(これらの値間の任意の範囲を含む)。
【0225】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供される凍結乾燥された薬学的組成物(ケーキなど)は、(a)約17~約23mg/mlのタンパク質濃度、(b)約7~約23mMのコハク酸濃度、(c)約90~約150mMのスクロース濃度、(d)約0.9~約1.5mg/mlのポリソルベート20濃度、及び(e)約4.95~約5.65のpHにわたって頑強である。いくつかの実施形態において、上記の(a)~(e)のいずれか1つ以上を含む凍結乾燥された薬学的組成物(ケーキなど)は、約2℃~約8℃の温度で、最大少なくとも約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヶ月間のいずれかの間安定している。
【0226】
G.静脈内投与のための組成物
本開示は、静脈内(IV)投与に好適な薬学的組成物及び液体組成物を提供する。インビボIV投与に使用される本組成物は、滅菌であるべきである。これは、薬学的組成物の調製前または調製後の滅菌濾過膜を通した濾過によって容易に達成される。ある特定の実施形態において、本開示の薬学的組成物は、注射用滅菌水(SWFI)で再構成される。いくつかの実施形態において、再構成された組成物は、静脈内(IV)投与袋内の等張緩衝液中に更に希釈される。
【0227】
一態様において、本開示は、抗CD79b免疫複合体、界面活性剤、コハク酸緩衝液、及び糖を含む薬学的組成物であって、薬学的組成物が、水中で再構成された時に、約10mg/ml~約20mg/mlの濃度の抗CD79b免疫複合体、少なくとも0.06重量体積%(すなわち、0.6mg/ml)の濃度の界面活性剤、約10mM~約200mMの濃度のコハク酸緩衝液、及び約100mM~約260mMの濃度の糖を含む液体薬学的組成物を形成し、液体薬学的組成物が、5.3のpHを有し、抗CD79b免疫複合体が、式、
を含み、式中、
Abが、抗CD79b抗体であり、抗CD79b抗体が、重鎖及び軽鎖を含み、軽鎖が、(a)KASQSVDYEGDSFLNのHVR-L1配列(配列番号1)、(b)AASNLESのHVR-L2配列(配列番号2)、及び(c)QQSNEDPLTのHVR-L3配列(配列番号3)を含み、重鎖が、(a)GYTFSSYWIEのHVR-H1配列(配列番号4)、(b)GEILPGGGDTNYNEIFKGのHVR-H2配列(配列番号5)、及び(c)TRRVPIRLDYのHVR-H3配列(配列番号6)を含み、Valが、バリンであり、Citが、シトルリンであり、pが、約1~約8(約2~約5など、例えば、約3.5)の値である、薬学的組成物を提供する。
【0228】
いくつかの実施形態において、本薬学的組成物は、SWFI中で再構成(1:1の質量:体積)される。いくつかの実施形態において、水中で再構成された時に、本薬学的組成物は、10mMのコハク酸ナトリウム緩衝液中20mg/mlの抗CD79b免疫複合体、0.12重量体積%のポリソルベート20、及び120mMのスクロースを含む液体薬学的組成物を形成し、液体薬学的組成物は、5.3のpHを有する。
【0229】
いくつかの実施形態において、本薬学的組成物は、SWFI中で再構成され、その後IV投与袋内の等張緩衝液中に希釈され、IV投与袋内への希釈時の界面活性剤濃度は、少なくとも0.003重量体積%である。一実施形態において、IV投与袋内への希釈時の界面活性剤濃度は、少なくとも0.004重量体積%である。例示的な一実施形態において、界面活性剤は、ポリソルベート20である。いくつかの実施形態において、糖は、スクロースである。特定の一実施形態において、スクロースは、120mMの濃度である。いくつかの実施形態において、コハク酸緩衝液は、コハク酸ナトリウム緩衝液である。特定の例示的な一実施形態において、コハク酸ナトリウム緩衝液は、10mMの濃度である。
【0230】
いくつかの実施形態において、水中で再構成された時に、本開示の薬学的組成物の安定性は、凝集、pH、濁度、可視粒子及び/または可視サイズ以下の粒子の数、または遊離(例えば、複合体化されていない)薬物の量によって測定される。ある特定の実施形態において、UV分光光度法、SE-HPLC、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、icIEF、もしくはHIAC、またはそれらの組み合わせを使用して、安定性を評価することができる。いくつかの実施形態において、本薬学的組成物は、水中で再構成された時に、30℃で最大約1日間、最大約2日間、または最大約3日間の安定性を有する。いくつかの実施形態において、いくつかの実施形態において、本薬学的組成物は、水中で再構成された時に、5℃±3℃で最大約1日間、最大約2日間、最大約3日間、最大約4日間、最大約5日間、最大6日間、または最大約7日間の安定性を有する。
【0231】
ある特定の実施形態において、水中で再構成された組成物の安定性は、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって測定される。例示的な一実施形態において、本組成物は、SE-HPLCによって測定して少なくとも95.0の主ピーク(面積%)を有する。
【0232】
特定の実施形態において、本組成物は、SE-HPLCによって測定して4.0未満のHMWS(%)を有する。特定の実施形態において、本組成物は、SE-HPLCによって測定して1.0未満のLMWS(%)を有する。いくつかの実施形態において、本組成物は、SE-HPLCによって測定して少なくとも95.0の主ピーク(面積%)及び4.0未満のHMWSを有する。いくつかの実施形態において、本組成物は、SE-HPLCによって測定して、少なくとも95.0の主ピーク(面積%)、4.0未満のHMWS(%)、及び1.0未満のLMWS(%)を有する。
【0233】
ある特定の実施形態において、水中で再構成された組成物の安定性は、画像化キャピラリー等電点電気泳動(icIEF)によって測定される。一実施形態において、本組成物は、icIEFによって測定して、少なくとも73.0の主ピーク(面積%)、最大で25.5の酸性領域(面積%)、及び最大で10.0の塩基性領域(面積%)を有する。例示的な一実施形態において、本組成物は、icIEFによって測定して、少なくとも58.0の主ピーク(面積%)、最大で32.0の酸性領域(面積%)、及び最大で12.0の塩基性領域(面積%)を有する。
【0234】
いくつかの実施形態において、10mMのコハク酸中の20mg/mLのポラツズマブベドチン、120mMのスクロース、1.2mg/mLのポリソルベート20(pH5.3)を含む、再構成された薬学的組成物は、約2℃~約8℃の温度で72時間の保管後に物理化学的に安定している。いくつかの実施形態において、約2℃~約8℃の温度での再構成された薬学的組成物の72時間の保管は、ポラツズマブベドチンの生物学的活性を減少させない。いくつかの実施形態において、10mMのコハク酸中の20mg/mLのポラツズマブベドチン、120mMのスクロース、1.2mg/mLのポリソルベート20(pH5.3)を含む、再構成された薬学的組成物は、環境光に曝露された状態で、30℃で24時間の保管後に物理化学的に安定している。いくつかの実施形態において、環境光に曝露された状態で、30℃での再構成された薬学的組成物の24時間の保管は、ポラツズマブベドチンの生物学的活性を減少させない。
【0235】
一態様において、本開示は、抗CD79b免疫複合体、界面活性剤、コハク酸緩衝液、及び糖を含む液体組成物であって、抗CD79b免疫複合体が、約10mg/ml~約20mg/mlの濃度であり、界面活性剤が、少なくとも0.06重量体積%(すなわち、0.6mg/ml)の濃度であり、コハク酸緩衝液が、約10mM~約200mMの濃度であり、糖が、約100mM~約260mMの濃度であり、液体組成物が、5.3のpHを有し、抗CD79b免疫複合体が、式、
を含み、式中、
Abが、抗CD79b抗体であり、抗CD79b抗体が、重鎖及び軽鎖を含み、軽鎖が、(a)KASQSVDYEGDSFLNのHVR-L1配列(配列番号1)、(b)AASNLESのHVR-L2配列(配列番号2)、及び(c)QQSNEDPLTのHVR-L3配列(配列番号3)を含み、重鎖が、(a)GYTFSSYWIEのHVR-H1配列(配列番号4)、(b)GEILPGGGDTNYNEIFKGのHVR-H2配列(配列番号5)、及び(c)TRRVPIRLDYのHVR-H3配列(配列番号6)を含み、Valが、バリンであり、Citが、シトルリンであり、pが、約1~約8(例えば、約3.5などの約2~約5)の値である、液体組成物を提供する。
【0236】
いくつかの実施形態において、界面活性剤は、ポリソルベート20である。いくつかの実施形態において、糖は、スクロースである。例示的な一実施形態において、スクロースは、120mMの濃度である。いくつかの実施形態において、コハク酸緩衝液は、コハク酸ナトリウム緩衝液である。特定の例示的な一実施形態において、コハク酸ナトリウム緩衝液は、10mMの濃度である。
【0237】
ある特定の実施形態において、本開示の液体組成物は、緩衝液中に溶解される。緩衝液は、非限定的に、正常食塩水(0.9重量体積%の塩化ナトリウム)、半食塩水(0.45重量体積%の塩化ナトリウム)、5重量体積%のデキストロース、乳酸リンゲル液、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0238】
いくつかの実施形態において、本開示の液体組成物は、等張緩衝液中に溶解される。ある特定の実施形態において、等張緩衝液は、新たに調製されても、予め充填されたIV投与袋内に含有されてもよい。ある特定の実施形態において、等張緩衝液は、正常食塩水(0.9%の塩化ナトリウム)である。例示的な一実施形態において、等張緩衝液中に溶解される本開示の液体組成物は、IV投与袋内にある。
【0239】
いくつかの実施形態において、IV投与袋内の等張緩衝液中に溶解される本開示の液体組成物は、約4.8~約5.8のpHを有する。特定の一実施形態において、pHは、約4.8、約4.9、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、または約5.8である。いくつかの実施形態において、IV投与袋内の等張緩衝液中に溶解される本開示の液体組成物は、約5.3のpHを有する。
【0240】
いくつかの実施形態において、本開示のIV投与袋内の液体組成物の安定性は、凝集、pH、濁度、可視粒子及び/または可視サイズ以下の粒子の数、または遊離(例えば、複合体化されていない)薬物の量によって測定される。ある特定の実施形態において、UV分光光度法、SE-HPLC、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、icIEF、もしくはHIAC、またはそれらの組み合わせを使用して、IV投与袋内の液体組成物の安定性を評価することができる。
【0241】
ある特定の実施形態において、本開示のIV投与袋内の液体組成物は、静的条件下で安定している。ある特定の実施形態において、本開示のIV投与袋内の液体組成物は、撹拌条件下で安定している。いくつかの実施形態において、IV投与袋内の等張緩衝液中に溶解される本開示の液体組成物は、30℃で、最大約1時間、最大約2時間、最大約3時間、最大約4時間、最大約5時間、最大約6時間、最大約7時間、または最大約8時間の安定性を有する。いくつかの実施形態において、IV投与袋内の等張緩衝液中に溶解される本開示の液体組成物は、25℃で、最大約8時間、最大約9時間、最大約10時間、最大約12時間、最大約14時間、最大約16時間、最大約18時間、最大約20時間、最大約22時間、または最大約24時間の安定性を有する。いくつかの実施形態において、IV投与袋内の等張緩衝液中に溶解される本開示の液体組成物は、5℃±3℃で、最大約24時間、最大約30時間、最大約36時間、最大約42時間、最大約48時間、最大約54時間、最大約60時間、最大約66時間、または最大約72時間の安定性を有する。ある特定の実施形態において、等張緩衝液は、正常食塩水である。
【0242】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の注入のための再構成された溶液または希釈された溶液(例えば、免疫複合体(例えば、ポラツズマブベドチン)を含む注入のための希釈された溶液)は、滅菌である。
【0243】
III.治療方法
本開示の薬学的組成物または液体組成物を使用して、例えば、腫瘍抗原の過剰発現を特徴とする様々な増殖性障害を治療することができることが企図される。例示的な増殖性障害は、がんである。がんの例としては、リンパ腫、白血病、骨髄腫、またはリンパ系腫瘍などの造血系がんまたは血液関連がんだけでなく、脾臓癌及びリンパ節癌、ならびに癌腫、芽細胞腫、及び肉腫も挙げられるが、これらに限定されない。がんのより具体的な例には、例えば、高、中、及び低悪性度リンパ腫(例えば、粘膜関連リンパ系組織B細胞リンパ腫及び非ホジキンリンパ腫(NHL)、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、及びホジキンリンパ腫などのB細胞リンパ腫、ならびにT細胞リンパ腫を含む)と、白血病(二次性白血病、慢性リンパ球性白血病(CLL)(B細胞白血病(CD5+Bリンパ球)など)、骨髄性白血病(急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病など)、リンパ性白血病(急性リンパ芽球性白血病(ALL)など)、及び脊髄形成異常症を含む)とを含むB細胞増殖性障害、ならびに他の血液がん及び/またはB細胞関連がんもしくはT細胞関連がんが含まれる。好塩基球、好酸球、好中球、及び単球などの多形核白血球、樹状細胞、血小板、赤血球、ならびにナチュラルキラー細胞を含む、追加の造血細胞のがんもまた含まれる。ある特定の実施形態において、本開示の増殖性障害は、再発性がんまたは難治性がんである。
【0244】
ある特定の実施形態において、本開示の薬学的組成物または液体組成物を使用して、再発性白血病または再発性リンパ腫を治療することができる。他の特定の実施形態において、本開示の薬学的組成物または液体組成物を使用して、難治性白血病または難治性リンパ腫を治療することができる。
【0245】
一態様において、本開示は、増殖性障害の治療を必要とする患者において増殖性障害を治療する方法であって、患者に本明細書に記載の薬学的組成物または液体組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0246】
いくつかの実施形態において、治療されるがんは、B細胞増殖性障害である。特定の実施形態において、B細胞増殖性障害は、リンパ腫、骨髄腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、侵攻性NHL、緩慢性リンパ腫、濾胞性リンパ腫(FL)、再発性侵攻性NHL、再発性緩慢性NHL、再発性NHL、難治性NHL、難治性緩慢性NHL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、有毛細胞白血病(HCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、及びマントル細胞リンパ腫からなる群から選択される。
【0247】
本開示の一実施形態において、B細胞増殖性障害は、非ホジキンリンパ腫(NHL)である。例示的な一実施形態において、B細胞増殖性障害は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。特定の一実施形態において、B細胞増殖性障害は、再発性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。別の特定の実施形態において、B細胞増殖性障害は、難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。
【0248】
例示的な一実施形態において、B細胞増殖性障害は、再発性NHLまたは難治性NHLである。更に別の例示的な実施形態において、B細胞増殖性障害は、濾胞性リンパ腫である。
【0249】
がんは、本開示の抗CD79b免疫複合体ががん細胞に結合することができるようなCD79b発現細胞を含み得る。がんにおけるCD79bの発現を決定するために、様々な診断/予後アッセイが利用可能である。一実施形態において、CD79bの過剰発現は、IHCによって分析することができる。腫瘍生検組織からのパラフィン包埋組織切片をIHCアッセイに供し、染色の程度に関して及び検査される腫瘍細胞の割合において、CD79bタンパク質染色強度基準に一致させることができる。
【0250】
障害の予防または治療に関して、ADCの適切な投与量は、上述のような治療される疾患の種類、疾患の重症度及び経過、本分子が予防目的で投与されるか治療目的で投与されるか、以前の治療法、患者の病歴及び抗体に対する応答、ならびに主治医の裁量に依存するであろう。本分子は、一度に、または一連の治療にわたって患者に好適に投与される。疾患の種類及び重症度に応じて、例えば、1回以上の別個の投与によるか連続的な注入によるかに関わらず、約1μg/kg~15mg/kg(例えば、0.1~20mg/kg)の分子が、患者に投与するための初回候補投与量である。典型的な1日投与量は、上述の要因に応じて、約1μg/kg~100mg/kgまたはそれ以上の範囲であり得る。患者に投与されるADCの例示的な投与量は、患者の体重1kg当たり約0.1~約10mgの範囲内である。病態に応じて数日間以上にわたる反復投与の場合、治療は、疾患症状の所望の抑制が生じるまで持続される。
【0251】
増殖性障害を治療または予防するために、本開示の薬学的組成物または液体組成物は、静脈内注入を介して投与される。注入を介して投与される投与量は、1用量当たり約1μg/m2~約10,000μg/m2の範囲内、一般に1週間に1用量、合計で1、2、3、または4用量である。あるいは、投与量範囲は、約1μg/m2~約1000μg/m2、約1μg/m2~約800μg/m2、約1μg/m2~約600μg/m2、約1μg/m2~約400μg/m2、約10μg/m2~約500μg/m2、約10μg/m2~約300μg/m2、約10μg/m2~約200μg/m2、及び約1μg/m2~約200μg/m2である。用量は、1日1回、1週間に1回、1週間に複数回であるが1日1回未満、1ヶ月に複数回であるが1日1回未満、1ヶ月に複数回であるが1週間に1回未満、1ヶ月に1回、または疾患の症状を軽減もしくは緩和するために間欠的に投与され得る。投与は、腫瘍または治療されるリンパ腫、白血病の症状の寛解まで開示される間隔のいずれかで継続することができる。投与は、寛解または軽減がそのような継続投与によって延長される場合、症状のそのような寛解または軽減が達成された後に継続することができる。
【0252】
がんにおけるCD79bの発現を決定するために、様々な検出アッセイが利用可能である。一実施形態において、CD79bポリペプチドの過剰発現は、免疫組織化学(IHC)によって分析することができる。腫瘍生検組織からのパラフィン包埋組織切片をIHCアッセイに供し、以下のようなCD79bタンパク質染色強度基準に一致させることができる。
スコア0:染色が観察されないか、または膜染色が腫瘍細胞の10%未満で観察される。
スコア1+:かすかな/ほとんど認識不能な膜染色が、腫瘍細胞の10%超で検出される。細胞は、それらの膜の一部分が染色されるに過ぎない。
スコア2+:弱~中度の完全な膜染色が、腫瘍細胞の10%超で観察される。
スコア3+:中~強度の完全な膜染色が、腫瘍細胞の10%超で観察される。
【0253】
CD79bポリペプチドの発現について0または1+のスコアを有する腫瘍は、CD79bを過剰発現しないと特徴付けることができる一方で、2+または3+のスコアを有する腫瘍は、CD79bを過剰発現すると特徴付けることができる。
【0254】
あるいは、または加えて、ホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍組織に対してINFORM(登録商標)(Ventana,Arizonaにより販売)またはPATHVISION(登録商標)(Vysis,Illinois)などのFISHアッセイを実行して、(存在する場合)腫瘍におけるCD79bの過剰発現の程度を決定することができる。
【0255】
CD79bの過剰発現または増幅は、例えば、検出される分子に結合し、検出可能な標識(例えば、放射性同位体または蛍光標識)でタグ付けされる分子(抗体など)を投与し、その標識の局在性について患者を外部スキャンすることによって、インビボ検出アッセイを使用して評価することができる。
【0256】
併用療法
現在、がんの病期に応じて、がん治療は、以下の治療法、がん性組織を除去するための手術、放射線療法、及び化学療法のうちの1つまたは併用を伴う。抗CD79b免疫複合体療法は、化学療法の毒性及び副作用に対する耐容性が良好ではない高齢の患者において、ならびに放射線療法の有用性が限定されている転移性疾患において特に望ましくあり得る。本開示の腫瘍を標的とする抗CD79b免疫複合体は、疾患の初期診断時または再発中にCD79b発現がんを緩和するのに有用である。治療用途のために、抗CD79b免疫複合体は、単独で使用されても、例えば、ホルモン、抗血管新生剤、もしくは放射標識された化合物、または手術、寒冷療法、及び/または放射線療法との併用療法で使用されてもよい。本開示の薬学的組成物または液体組成物の投与は、慣習的な治療法に連続して、その前、またはその後のいずれかで、他の形態の慣習的な治療法との併用で実行することができる。TAXOTERE(登録商標)(ドセタキセル)、TAXOL(登録商標)(パクリタキセル)、エストラムスチン、及びミトキサントロンなどの化学療法薬が、特に、低リスクの患者におけるがんを治療する上で使用される。がんを治療または緩和するための本開示の本方法において、がん患者には、前述の化学療法剤のうちの1つ以上による治療との併用で抗CD79b抗体が投与され得る。特に、パクリタキセル及び修飾誘導体(例えば、EP0600517を参照されたい)との併用療法が企図される。本開示の薬学的組成物または液体組成物は、治療有効用量の化学療法剤と一緒に投与されてもよい。別の実施形態において、本開示の薬学的組成物または液体組成物は、化学療法剤、例えば、パクリタキセルの活性及び有効性を増強するために、化学療法との併用で投与される。医師用添付文書集(Physicians’ Desk Reference(PDR))は、様々ながんの治療において使用されているこれらの薬剤の投与量を開示している。治療的に有効であるこれらの上述の化学療法薬の投薬レジメン及び投与量は、治療される特定のがん、疾患の程度、及び当該技術分野の医師に知られた他の要因に依存し、医師によって決定され得る。
【0257】
別の実施形態において、本開示の薬学的組成物または液体組成物は、1つ以上の化学療法剤または成長阻害剤(異なる化学療法剤のカクテルの同時投与を含む)、または同様に腫瘍成長を阻害する他の細胞毒性剤(複数可)もしくは他の治療剤(複数可)と併用して投与されてもよい。化学療法剤としては、リン酸エストラムスチン、プレドニムスチン、シスプラチン、5-フルオロウラシル、メルファラン、シクロホスファミド、ヒドロキシウレア、及びヒドロキシウレアタキサン(パクリタキセル及びドセタキセルなど)、及び/またはアントラサイクリン抗生物質が挙げられる。そのような化学療法剤の調製及び投薬スケジュールは、製造業者の指示に従って、または当業者によって経験的に決定されるように使用され得る。そのような化学療法剤の調製及び投薬スケジュールはまた、Chemotherapy Service Ed.,M.C.Perry,Williams&Wilkins,Baltimore,MD(1992)にも記載されている。本開示の薬学的組成物または液体組成物は、抗ホルモン化合物、例えば、抗エストロゲン化合物(タモキシフェンなど)、抗プロゲステロン(オナプリストン(EP616812を参照されたい)など)、または抗アンドロゲン(フルタミドなど)と、そのような分子について既知である投与量で、併用することができる。治療されるがんがアンドロゲン非依存性がんである場合、患者は以前に抗アンドロゲン療法に供されている可能性があり、がんがアンドロゲン非依存性となった後に、本開示の薬学的組成物または液体組成物が患者に投与され得る。
【0258】
時折、患者に(この治療法に関連する心筋機能不全を予防もしくは低減するために)心臓保護剤または1つ以上のサイトカインを同時投与することもまた有益であり得る。上記の治療レジメンに加えて、患者は、本開示の薬学的組成物または液体組成物の投与前、それと同時、またはその後に、がん細胞の外科的除去及び/または放射線療法(例えば、外照射、または抗体などの放射性標識剤による治療法)に供されてもよい。上記の同時投与される薬剤のいずれにも好適な投与量は、現在使用されているものであり、薬剤と他の抗CD79b抗体との併用作用(相乗作用)のため、低下させてもよい。
【0259】
いくつかの実施形態において、本開示の薬学的組成物または液体組成物は、有効量の別の治療剤との併用で患者に投与されてもよい。一実施形態において、治療剤は、抗体、化学療法剤、細胞毒性剤、抗血管新生剤、免疫抑制剤、プロドラッグ、サイトカイン、サイトカインアンタゴニスト、細胞毒性放射線療法、コルチコステロイド、がんワクチン、及び成長阻害剤からなる群から選択される。別の実施形態において、治療剤は、タモキシフェン、レトロゾール、エキセメスタン、アナストロゾール、イリノテカン、セツキシマブ、フルベストラント、ビノレルビン、エルロチニブ、ベバシズマブ、ビンクリスチン、メシル酸イマチニブ、ソラフェニブ、ラパチニブ、トラスツズマブ、シスプラチン、ゲムシタビン、メトトレキサート、ビンブラスチン、カルボプラチン、パクリタキセル、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、ボルテゾミブ、メルファラン、プレドニゾン、及びドセタキセルのうちの1つ以上から選択される。
【0260】
いくつかの実施形態において、治療剤は、抗CD20抗体である。
【0261】
ある特定の実施形態において、本開示の薬学的組成物または液体組成物は、B細胞増殖性障害を治療するために有効量の抗CD20抗体との併用で投与されてもよい。一実施形態において、B細胞増殖性障害は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。別の実施形態において、増殖性障害は、濾胞性リンパ腫(FL)である。ある特定の実施形態において、抗CD20抗体は、リツキシマブである。
【0262】
いくつかの実施形態において、治療剤は、化学療法剤である。一実施形態において、化学療法剤は、シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾンのうちの1つ以上を含む。別の実施形態において、化学療法剤は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、及びプレドニゾンを含む。
【0263】
いくつかの実施形態において、本開示の薬学的組成物または液体組成物は、有効量の抗CD20抗体及び化学療法剤との併用で投与されてもよい。一実施形態において、化学療法剤は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、及びプレドニゾンを含む。
【0264】
いくつかの実施形態において、本開示の薬学的組成物または液体組成物は、B細胞増殖性障害を治療するために有効量の抗CD20抗体及び化学療法剤との併用で投与されてもよい。一実施形態において、B細胞増殖性障害は、非ホジキンリンパ腫(NHL)である。別の実施形態において、B細胞増殖性障害は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。特定の一実施形態において、DLBCLは、再発性/難治性DLBCLである。別の実施形態において、DLBCLは、再発性NHLまたは難治性NHLである。別の特定の実施形態において、増殖性障害は、濾胞性リンパ腫(FL)である。ある特定の実施形態において、抗CD20抗体は、リツキシマブである。
【0265】
一実施形態において、本開示の本開示の薬学的組成物または液体組成物は、抗CD20抗体(ネイキッド抗体またはADCのいずれか)と併用されてもよい。一実施形態において、抗CD20抗体は、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))またはそのバイオシミラーである。いくつかの実施形態において、抗CD20抗体は、オクレリズマブ(2H7)(Genentech,Inc.,South San Francisco,CA)またはそのバイオシミラーである。別の実施形態において、本開示の薬学的組成物または液体組成物は、抗VEGF抗体(例えば、Avastin(登録商標))と併用されてもよい。
【0266】
併用療法は、同時レジメンまたは連続レジメンとして投与されてもよい。連続的に投与される場合、併用は、2回以上の投与において投与されてもよい。併用投与には、別個の製剤または単一の薬学的製剤を使用した同時投与、及びいずれかの順序での連続投与が含まれ、好ましくは、両方の(または全ての)活性剤が同時にその生物学的活性を発揮する期間が存在する。
【0267】
上記の同時投与される薬剤のいずれにも好適な投与量は、現在使用されているものであり、新たに特定された薬剤及び他の化学療法剤または治療の併用作用(相乗作用)のため、低下させてもよい。
【0268】
併用療法は「相乗作用」を提供し、「相乗的」であると判明し得る、すなわち、活性成分が共に使用された時に達成される効果が、化合物の別個の使用から生じる効果の合計よりも大きい。相乗的効果は、活性成分が、(1)組み合わせた単位投与量製剤で同時処方され、投与または同時送達される時、(2)別個の製剤として交互または平行して送達される時、または(3)いくつかの他のレジメンによる時に獲得され得る。交互療法で送達される場合、相乗的効果は、化合物が、例えば、別個のシリンジ中の異なる注射によって連続的に投与または送達される時に獲得され得る。一般に、交互療法中、各活性成分の有効投与量は、連続的に、すなわち、段階的に投与される一方で、併用療法において、2つ以上の活性成分の有効投与量は、一緒に投与される。
【0269】
IV.製造品及びキット
本開示の別の実施形態は、増殖性障害の治療、予防、及び/または診断に有用な材料を含有する製造品である。一実施形態において、製造品は、容器と、その容器上の、またはその容器に添えられたラベルまたは添付文書とを含む。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジなどが挙げられる。これらの容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器は、がんの病態を治療、予防、及び/または診断するのに有効である組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、静脈内投与用溶液袋、または皮下注射針によって穿刺可能な栓を有するバイアルであり得る)。本組成物中の少なくとも1つの活性薬剤は、本開示の抗CD79b免疫複合体である。ラベルまたは添付文書は、本組成物ががんの治療のために使用されることを示す。ラベルまたは添付文書は、本組成物をがん患者に投与するための指示を更に含むであろう。加えて、製造品は、注射用滅菌水(SWFI)、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液、及びデキストロース溶液などの薬学的に許容される緩衝液を含む第2の容器を更に含んでもよい。それは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的観点及びユーザの観点から望ましい他の材料を更に含んでもよい。
【0270】
いくつかの実施形態において、製造品は、本開示の薬学的組成物を含むボトル、バイアル、シリンジなどの容器である。いくつかの実施形態において、製造品は、凍結乾燥された本開示の薬学的組成物(ケーキなど)を含むボトル、バイアル、シリンジなどの容器である。いくつかの実施形態において、製造品は、再構成された凍結乾燥された本開示の薬学的組成物を含むボトル、バイアル、シリンジなどの容器である。特定の一実施形態において、製造品は、注射用滅菌水(SWFI)で再構成されている、凍結乾燥された薬学的組成物を含む容器である。
【0271】
いくつかの実施形態において、製造品は、本開示の薬学的組成物を含むプラスチック容器である。いくつかの実施形態において、製造品は、本開示の薬学的組成物を含むガラス容器である。
【0272】
いくつかの実施形態において、製造品は、本開示の薬学的組成物を含むガラスバイアルである。特定の一実施形態において、製造品は、凍結乾燥された本開示の薬学的組成物(ケーキなど)を含むガラスバイアルである。特定の一実施形態において、製造品は、再構成されている、凍結乾燥された本開示の薬学的組成物(ケーキなど)を含むガラスバイアルである。特定の一実施形態において、製造品は、注射用滅菌水(SWFI)で再構成されている凍結乾燥された薬学的組成物(ケーキなど)を含むガラスバイアルである。
ある特定の実施形態において、製造品は、本開示の薬学的組成物または液体組成物を含有するIV投与袋である。IV投与袋は、ポリオレフィン(PO)、塩化ポリビニル(PVC)、エチレン酢酸ビニル、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、コポリエステルエーテル、またはそれらの組み合わせを非限定的に含む材料からなり得る。いくつかの実施形態において、IV投与袋は、ポリオレフィン(PO)袋、ポリプロピレン(PP)袋、ポリエチレン(PE)袋、または塩化ポリビニル(PVC)袋である。
【0273】
いくつかの実施形態において、本開示の薬学的組成物または液体組成物を含有する製造品は、少なくとも約5ミリリットル(mL)、少なくとも約10mL、少なくとも約15mL、少なくとも約20mL、少なくとも約25mL、少なくとも約30mL、少なくとも約35mL、少なくとも約40mL、少なくとも約45mL、少なくとも約50mL、少なくとも約55mL、少なくとも約60mL、少なくとも約65mL、少なくとも約70mL、少なくとも約75mL、少なくとも約80mL、少なくとも約85mL、少なくとも約90mL、少なくとも約95mL、少なくとも約100mL、少なくとも約105mL、少なくとも約110mL、少なくとも約115mL、少なくとも約120mL、少なくとも約125mL、少なくとも約130mL、少なくとも約135mL、少なくとも約140mL、少なくとも約145mL、少なくとも約150mL、少なくとも約155mL、少なくとも約160mL、少なくとも約165mL、少なくとも約170mL、少なくとも約175mL、少なくとも約180mL、少なくとも約185mL、少なくとも約190mL、少なくとも約195mL、または少なくとも約200mLの体積を収容することができる。いくつかの実施形態において、製造品は、少なくとも約25mL、少なくとも約50mL、または少なくとも約100mLの体積を収容することができるPO袋である。いくつかの実施形態において、製造品は、少なくとも約25mL、少なくとも約50mL、または少なくとも約100mLの体積を収容することができるPVC袋である。
【0274】
ある特定の実施形態において、製造品は、本開示の薬学的組成物または液体組成物及び緩衝液を含むIV投与袋である。特定の一実施形態において、緩衝液は、正常食塩水、半食塩水、5重量体積%のデキストロース、乳酸リンゲル液、またはそれらの組み合わせであり得る。一実施形態において、製造品は、半食塩水中に溶解される本開示の薬学的組成物または液体組成物を含むIV投与袋である。
【0275】
いくつかの実施形態において、製造品は、本開示の薬学的組成物または液体組成物及び等張緩衝液を含むIV投与袋である。一実施形態において、製造品は、正常食塩水中に溶解される本開示の薬学的組成物または液体組成物を含むIV投与袋である。
【0276】
例示的な一実施形態において、製造品は、少なくとも約100mLの体積を収容することができる、本開示の薬学的組成物または液体組成物及び正常食塩水を含むPVC袋である。別の例示的な実施形態において、製造品は、約100mLの体積を収容することができる、本開示の薬学的組成物または液体組成物及び正常食塩水を含むPVC袋である。
【0277】
別の例示的な実施形態において、製造品は、少なくとも約100mLの体積を収容することができる、本開示の薬学的組成物または液体組成物及び正常食塩水を含むPO袋である。更に別の例示的な実施形態において、製造品は、少なくとも約100mLの体積を収容することができる、本開示の薬学的組成物または液体組成物及び半食塩水を含むPO袋である。
【0278】
本明細書の実施形態のいずれにおいても、安定した薬学的製剤または液体薬学的組成物は、ボトル、バイアル、シリンジ、または静脈内(IV)投与袋などの容器内で保管することができる。
【0279】
CD79b発現細胞殺滅アッセイのためのなどの様々な目的に有用なキットもまた、提供される。製造品と同様に、キットは、容器と、その容器上の、またはその容器に添えられたラベルまたは添付文書とを含む。容器は、少なくとも1つの本開示の抗CD79b免疫複合体を含む組成物を保持する。例えば、希釈剤、界面活性剤、緩衝液、対照抗体を含有する追加の容器が含まれてもよい。ラベルまたは添付文書は、組成物の説明及び意図される用途についての指示を提供し得る。
また、本発明のある態様は、以下の項に記載の態様を含む。
項1
抗CD79b免疫複合体及び界面活性剤を含む薬学的組成物であって、前記界面活性剤が、少なくとも0.06重量体積%の濃度であり、前記抗CD79b免疫複合体が、式、
を含み、式中、
Abが、抗CD79b抗体であり、前記抗CD79b抗体が、重鎖及び軽鎖を含み、前記軽鎖が、(a)KASQSVDYEGDSFLNのHVR-L1配列(配列番号1)、(b)AASNLESのHVR-L2配列(配列番号2)、及び(c)QQSNEDPLTのHVR-L3配列(配列番号3)を含み、前記重鎖が、(a)GYTFSSYWIEのHVR-H1配列(配列番号4)、(b)GEILPGGGDTNYNEIFKGのHVR-H2配列(配列番号5)、及び(c)TRRVPIRLDYのHVR-H3配列(配列番号6)を含み、Valが、バリンであり、Citが、シトルリンであり、
pが、約1~約8の値である、前記薬学的組成物。
項2
前記抗CD79b免疫複合体が、約5mg/ml~約60mg/ml、約10mg/ml~約50mg/ml、約10mg/ml~約40mg/ml、約10mg/ml~約30mg/ml、または約10mg/ml~約20mg/mlの濃度である、項1に記載の薬学的組成物。
項3
前記抗CD79b免疫複合体が、約10mg/ml~約20mg/mlの濃度である、項2に記載の薬学的組成物。
項4
前記抗CD79b免疫複合体が、20mg/mlの濃度である、項2または3に記載の薬学的組成物。
項5
前記組成物が、10mg/mlの濃度の前記抗CD79b免疫複合体及び0.06重量体積%の濃度の前記界面活性剤を含む、項1~3のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項6
前記組成物が、20mg/mlの濃度の前記抗CD79b免疫複合体及び0.12重量体積%の濃度の前記界面活性剤を含む、項1~4のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項7
前記組成物が、20mg/mlの濃度の前記抗CD79b免疫複合体及び少なくとも0.12重量体積%の濃度の前記界面活性剤を含む、項1~4のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項8
前記界面活性剤が、ポリソルベート20(PS20)、ポリソルベート80(PS80)、ポロキサマー188(P188)、N-オクチル-β-Dグルコピラノシド(OG)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、項1~7のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項9
前記組成物が、緩衝剤を更に含む、項1~8のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項10
前記緩衝剤が、ヒスチジン緩衝液またはコハク酸緩衝液である、項9に記載の薬学的組成物。
項11
前記緩衝剤が、ヒスチジン緩衝液である、項10に記載の薬学的組成物。
項12
前記緩衝剤が、コハク酸緩衝液である、項10に記載の薬学的組成物。
項13
前記コハク酸緩衝液が、コハク酸ナトリウム緩衝液である、項12に記載の組成物。
項14
前記コハク酸ナトリウム緩衝液が、約10mM~約200mMの濃度である、項13に記載の薬学的組成物。
項15
前記コハク酸ナトリウム緩衝液が、10mMの濃度である、項14に記載の薬学的組成物。
項16
前記組成物が、約5.0~約6.0のpHを有する、項1~15のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項17
前記組成物が、5.3のpHを有する、項16に記載の薬学的組成物。
項18
前記組成物が、糖を更に含む、項1~17のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項19
前記糖が、約100mM~約260mMの濃度である、項18に記載の薬学的組成物。
項20
前記糖が、スクロース、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、デキストラン40、及びトレハロースからなる群から選択される、項18~19に記載の薬学的組成物。
項21
前記糖が、スクロースである、項20に記載の薬学的組成物。
項22
前記スクロースが、120mMの濃度である、項22に記載の薬学的組成物。
項23
前記組成物が、凍結乾燥されたケーキから再構成されている、項1~22のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項24
10mMのコハク酸ナトリウム緩衝液中20mg/mlの抗CD79b免疫複合体、0.12重量体積%のポリソルベート20、及び120mMのスクロースを含む液体組成物の凍結乾燥によって生成される薬学的組成物であって、前記液体組成物が、5.3のpHを有し、前記抗CD79b免疫複合体が、式、
を含み、式中、
Abが、抗CD79b抗体であり、前記抗CD79b抗体が、重鎖及び軽鎖を含み、前記軽鎖が、(a)KASQSVDYEGDSFLNのHVR-L1配列(配列番号1)、(b)AASNLESのHVR-L2配列(配列番号2)、及び(c)QQSNEDPLTのHVR-L3配列(配列番号3)を含み、前記重鎖が、(a)GYTFSSYWIEのHVR-H1配列(配列番号4)、(b)GEILPGGGDTNYNEIFKGのHVR-H2配列(配列番号5)、及び(c)TRRVPIRLDYのHVR-H3配列(配列番号6)を含み、Valが、バリンであり、Citが、シトルリンであり、
pが、約1~約8の値である、前記薬学的組成物。
項25
前記抗CD79b抗体が、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、項1~24のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項26
前記重鎖が、配列番号9のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含む、項1~25のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項27
pが、約2~約5の値である、項1~26のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項28
10mMのコハク酸ナトリウム緩衝液中20mg/mlの抗CD79b免疫複合体、0.12重量体積%のポリソルベート20、及び120mMのスクロースを含む液体組成物の凍結乾燥によって生成される薬学的組成物であって、前記液体組成物が、5.3のpHを有し、前記抗CD79b免疫複合体が、式、
を含み、式中、
Abが、抗CD79b抗体であり、前記抗CD79b抗体が、重鎖及び軽鎖を含み、前記重鎖が、配列番号9のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含み、Valが、バリンであり、Citが、シトルリンであり、pが、約2~約5の値である、前記薬学的組成物。
項29
pが、約3.5である、項1~28のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項30
前記組成物が、光から保護された場合に5℃±3℃で約48ヶ月間の安定性を有する、項24~29のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項31
前記組成物の前記安定性が、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって測定される、項30に記載の薬学的組成物。
項32
前記組成物が、SE-HPLCによって測定して、少なくとも95.0の主ピーク(面積%)を有する、項31に記載の薬学的組成物。
項33
前記組成物の前記安定性が、画像化キャピラリー等電点電気泳動(icIEF)によって測定される、項28~32のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項34
前記組成物が、icIEFによって測定して、少なくとも58.0の主ピーク(面積%)、最大で32.0の酸性領域(面積%)、及び最大で12.0の塩基性領域(面積%)を有する、項33に記載の薬学的組成物。
項35
前記薬学的組成物が、凍結乾燥されたケーキである、項25~34のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項36
前記組成物が、注射用滅菌水(SWFI)で再構成される、項1~35のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項37
前記組成物が、約7.2mlのSWFI中で再構成される、項36に記載の薬学的組成物。
項38
前記再構成された組成物が、約30℃での保管時に少なくとも4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24時間安定している、項37に記載の薬学的組成物。
項39
前記再構成された組成物が、約2℃~約8℃での保管時に少なくとも24、48、または72時間安定している、項37または項38に記載の薬学的組成物。
項40
前記再構成された組成物が、静脈内(IV)投与袋内の等張緩衝液中に更に希釈される、項36~39のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項41
前記IV投与袋内の前記希釈された組成物の最終体積が、約100mlである、項40に記載の薬学的組成物。
項42
前記IV投与袋内の前記免疫複合体の濃度が、約0.72mg/ml~約2.7mg/mlである、項40または41に記載の薬学的組成物。
項43
10mMのコハク酸ナトリウム緩衝液中20mg/mlの抗CD79b免疫複合体、0.12重量体積%のポリソルベート20、及び120mMのスクロースを含む液体組成物の凍結乾燥によって生成される薬学的組成物であって、前記液体組成物が、5.3のpHを有し、前記抗CD79b免疫複合体が、式、
を含み、式中、
Abが、抗CD79b抗体であり、前記抗CD79b抗体が、重鎖及び軽鎖を含み、前記重鎖が、配列番号9のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含み、Valが、バリンであり、Citが、シトルリンであり、pが、約2~約5の値であり、
前記組成物が、約7.2mlの注射用滅菌水(SWFI)で再構成され、静脈内(IV)投与袋内の等張緩衝液中に更に希釈され、
前記IV投与袋内の前記希釈された組成物の最終体積が、約100mlであり、
前記IV投与袋内の前記免疫複合体の最終濃度が、約0.72mg/mlまたは約2.7mg/mlである、前記薬学的組成物。
項44
pが、約3.5である、項43に記載の薬学的組成物。
項45
前記等張緩衝液が、0.9%の塩化ナトリウム溶液、0.45%の塩化ナトリウム溶液、または5%のデキストロース溶液である、項38~44のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項46
液体組成物であって、a)約0.72~2.7mg/mlのポラツズマブベドチン、b)約0.36~01.35mMのコハク酸ナトリウム、c)約0.51~16.24mMのスクロース、d)約0.0432~0.162mg/mlのポリソルベート20を含み、前記液体組成物のpHが、約5~約5.7である、前記液体組成物。
項47
液体組成物であって、a)約0.72mg/mlのポラツズマブベドチン、b)約0.36mMのコハク酸ナトリウム、c)約0.51mMのスクロース、d)約0.0432mg/mlのポリソルベート20を含み、前記液体組成物のpHが、5.1~約5.4である、前記液体組成物。
項48
液体組成物であって、a)約2.7mg/mlのポラツズマブベドチン、b)約01.35mMのコハク酸ナトリウム、c)約16.24mMのスクロース、d)約0.162mg/mlのポリソルベート20を含み、前記液体組成物のpHが、約5.1~約5.4である、前記液体組成物。
項49
前記液体組成物の体積が、約50ml~約100mlである、項46~48のいずれか1項に記載の液体組成物。
項50
前記液体組成物の体積が、50mlである、項49に記載の液体組成物。
項51
前記液体組成物の体積が、100mlである、項49に記載の液体組成物。
項52
抗CD79b免疫複合体、界面活性剤、コハク酸緩衝液、及び糖を含む薬学的組成物であって、前記薬学的組成物が、水中で再構成された時に、約10mg/ml~約20mg/mlの濃度の前記抗CD79b免疫複合体、少なくとも0.06重量体積%の濃度の前記界面活性剤、約10mM~約200mMの濃度の前記コハク酸緩衝液、及び約100mM~約260mMの濃度の前記糖を含む液体薬学的組成物を形成し、前記液体薬学的組成物が、5.3のpHを有し、前記抗CD79b免疫複合体が、式、
を含み、式中、
Abが、抗CD79b抗体であり、前記抗CD79b抗体が、重鎖及び軽鎖を含み、前記軽鎖が、(a)KASQSVDYEGDSFLNのHVR-L1配列(配列番号1)、(b)AASNLESのHVR-L2配列(配列番号2)、及び(c)QQSNEDPLTのHVR-L3配列(配列番号3)を含み、前記重鎖が、(a)GYTFSSYWIEのHVR-H1配列(配列番号4)、(b)GEILPGGGDTNYNEIFKGのHVR-H2配列(配列番号5)、及び(c)TRRVPIRLDYのHVR-H3配列(配列番号6)を含み、Valが、バリンであり、Citが、シトルリンであり、
pが、約1~約8の値である、前記薬学的組成物。
項53
前記抗CD79b抗体が、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、項52に記載の薬学的組成物。
項54
前記抗CD79bの前記重鎖が、配列番号9のアミノ酸配列を含み、前記抗CD79b抗体の前記軽鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含む、項52または53に記載の薬学的組成物。
項55
前記薬学的組成物が、凍結乾燥によって生成され、前記凍結乾燥された薬学的組成物が、約2℃~約8℃での保管時に少なくとも6、12、18、24、30、36、42、48、54、または60ヶ月間安定している、項24~34または52~54のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項56
前記凍結乾燥された薬学的組成物が、凍結乾燥されたケーキである、項55に記載の薬学的組成物。
項57
前記薬学的組成物が、再構成後、約30℃での保管時に少なくとも4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24時間安定している、項52~56のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項58
前記薬学的組成物が、再構成後、約2℃~約8℃での保管時に少なくとも24、48、または72時間安定している、項52~57のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項59
前記薬学的組成物が、再構成後、その後IV投与袋内の等張緩衝液中に希釈され、前記IV投与袋内への希釈時の前記界面活性剤濃度が、少なくとも0.003重量体積%である、項52~58のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項60
前記IV投与袋内への希釈時の前記界面活性剤濃度が、少なくとも0.004重量体積%である、項59に記載の薬学的組成物。
項61
前記界面活性剤が、ポリソルベート20である、項52~60のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項62
前記糖が、スクロースである、項52~61のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項63
前記スクロースが、120mMの濃度である、項52~58及び61~62のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項64
前記コハク酸緩衝液が、コハク酸ナトリウム緩衝液である、項52~63のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項65
再構成後だが希釈前に、前記コハク酸ナトリウム緩衝液が、10mMの濃度である、項64に記載の薬学的組成物。
項66
前記組成物が、5℃±3℃で約7日間の安定性を有する、項52~58及び61~65のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項67
前記組成物の前記安定性が、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって測定される、項66に記載の薬学的組成物。
項68
前記組成物が、SE-HPLCによって測定して、少なくとも95.0の主ピーク(面積%)を有する、項67に記載の薬学的組成物。
項69
前記組成物の前記安定性が、画像化キャピラリー等電点電気泳動(icIEF)によって測定される、項52~68のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
項70
前記組成物が、icIEFによって測定して、少なくとも58.0の主ピーク(面積%)、最大で32.0の酸性領域(面積%)、及び最大で12.0の塩基性領域(面積%)を有する、項69に記載の薬学的組成物。
項71
項452~58及び61~70のいずれか1項に記載の薬学的組成物を含有する、ガラスバイアル。
項72
抗CD79b免疫複合体、界面活性剤、コハク酸緩衝液、及び糖を含む液体組成物であって、前記抗CD79b免疫複合体が、約10mg/ml~約20mg/mlの濃度であり、前記界面活性剤が、少なくとも0.06重量体積%の濃度であり、前記コハク酸緩衝液が、約10mM~約200mMの濃度であり、前記糖が、約100mM~約260mMの濃度であり、前記液体組成物が、5.3のpHを有し、前記抗CD79b免疫複合体が、式、
を含み、式中、
Abが、抗CD79b抗体であり、前記抗CD79b抗体が、重鎖及び軽鎖を含み、前記軽鎖が、(a)KASQSVDYEGDSFLNのHVR-L1配列(配列番号1)、(b)AASNLESのHVR-L2配列(配列番号2)、及び(c)QQSNEDPLTのHVR-L3配列(配列番号3)を含み、前記重鎖が、(a)GYTFSSYWIEのHVR-H1配列(配列番号4)、(b)GEILPGGGDTNYNEIFKGのHVR-H2配列(配列番号5)、及び(c)TRRVPIRLDYのHVR-H3配列(配列番号6)を含み、Valが、バリンであり、Citが、シトルリンであり、
pが、約1~約8の値である、前記液体組成物。
項73
前記抗CD79b抗体が、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)及び配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、項72に記載の液体組成物。
項74
前記抗CD79bの前記重鎖が、配列番号9のアミノ酸配列を含み、前記抗CD79b抗体の前記軽鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含む、項72または73に記載の液体組成物。
項75
前記界面活性剤が、ポリソルベート20である、項72~74のいずれか1項に記載の液体組成物。
項76
前記糖が、スクロースである、項72~75のいずれか1項に記載の液体組成物。
項77
前記スクロースが、約120mMの濃度である、項76に記載の液体組成物。
項78
前記コハク酸緩衝液が、コハク酸ナトリウム緩衝液である、項72~77のいずれか1項に記載の液体組成物。
項79
前記コハク酸ナトリウム緩衝液が、10mMの濃度である、項78に記載の液体組成物。
項80
前記組成物が、等張緩衝液中に希釈される、項72~79のいずれか1項に記載の液体組成物。
項81
前記等張緩衝液が、0.9%の塩化ナトリウム溶液、0.45%の塩化ナトリウム溶液、または5%のデキストロース溶液である、項80に記載の液体組成物。
項82
等張緩衝液中に希釈される前記組成物が、IV投与袋内にある、項80または81に記載の液体組成物。
項83
前記組成物が、5℃±3℃で約72時間の安定性を有する、項72~79のいずれか1項に記載の液体組成物。
項84
前記組成物が、25℃で約24時間の安定性を有する、項72~79のいずれか1項に記載の液体組成物。
項85
前記液体組成物が、約30℃での保管時に少なくとも4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24時間安定している、項72~79のいずれか1項に記載の液体組成物。
項86
前記液体組成物が、約2℃~約8℃での保管時に少なくとも24、48、または72時間安定している、項72~79のいずれか1項に記載の液体組成物。
項87
約150mgの抗CD79b免疫複合体、約9.0mgのポリソルベート20、約8.88mgのコハク酸、約4.08mgの水酸化ナトリウム、及び約309mgのスクロースを含む、凍結乾燥された薬学的組成物であって、前記抗CD79b免疫複合体が、式、
を含み、式中、
Abが、抗CD79b抗体であり、前記抗CD79b抗体が、重鎖及び軽鎖を含み、前記抗CD79bの前記重鎖が、配列番号9のアミノ酸配列を含み、前記抗CD79b抗体の前記軽鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含み、Valが、バリンであり、Citが、シトルリンであり、
pが、約2~約5の値である、前記凍結乾燥された薬学的組成物。
項88
約150mgのポラツズマブベドチン、約9.0mgのポリソルベート20、約8.88mgのコハク酸、約4.08mgの水酸化ナトリウム、及び約309mgのスクロースを含む、凍結乾燥された薬学的組成物。
項89
約140mgの抗CD79b免疫複合体、約8.4mgのポリソルベート20、約8.27mgのコハク酸、約3.80mgの水酸化ナトリウム、及び約288mgのスクロースを含む、凍結乾燥された薬学的組成物であって、前記抗CD79b免疫複合体が、式、
を含み、式中、
Abが、抗CD79b抗体であり、前記抗CD79b抗体が、重鎖及び軽鎖を含み、前記抗CD79bの前記重鎖が、配列番号9のアミノ酸配列を含み、前記抗CD79b抗体の前記軽鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含み、Valが、バリンであり、Citが、シトルリンであり、
pが、約2~約5の値である、前記凍結乾燥された薬学的組成物。
項90
約140mgのポラツズマブベドチン、約8.4mgのポリソルベート20、約8.27mgのコハク酸、約3.80mgの水酸化ナトリウム、及び約288mgのスクロースを含む、凍結乾燥された薬学的組成物。
項91
約30mgの抗CD79b免疫複合体、約1.8mgのポリソルベート20、約1.77mgのコハク酸、約0.816mgの水酸化ナトリウム、及び約61.8mgのスクロースを含む、凍結乾燥された薬学的組成物であって、前記抗CD79b免疫複合体が、式、
を含み、式中、
Abが、抗CD79b抗体であり、前記抗CD79b抗体が、重鎖及び軽鎖を含み、前記抗CD79bの前記重鎖が、配列番号9のアミノ酸配列を含み、前記抗CD79b抗体の前記軽鎖が、配列番号10のアミノ酸配列を含み、Valが、バリンであり、Citが、シトルリンであり、pが、約2~約5の値である、前記凍結乾燥された薬学的組成物。
項92
約30mgのポラツズマブベドチン、約1.8mgのポリソルベート20、約1.77mgのコハク酸、約0.816mgの水酸化ナトリウム、及び約61.8mgのスクロースを含む、凍結乾燥された薬学的組成物。
項93
pが、約3.5である、項87、89、または91のいずれか1項に記載の凍結乾燥された組成物。
項94
約140~150mgのポラツズマブベドチン、約8.4~9.0mgのポリソルベート20、約8.27~8.88mgのコハク酸、約3.80~4.08mgの水酸化ナトリウム、及び約288~309mgのスクロースを含む、凍結乾燥された薬学的組成物。
項95
前記凍結乾燥された薬学的組成物が、再構成後、約2℃~約8℃での保管時に少なくとも6、12、18、24、30、36、42、48、54、または60ヶ月間安定している、項87~94のいずれか1項に記載の凍結乾燥された薬学的組成物。
項96
前記凍結乾燥された薬学的組成物が、凍結乾燥されたケーキである、項87~95のいずれか1項に記載の凍結乾燥された薬学的組成物。
項97
液体薬学的組成物であって、a)5~60mg/mlのポラツズマブベドチン、b)10~200mMのコハク酸ナトリウム、c)100~260mMのスクロース、d)0.06~0.12重量体積%のポリソルベート20を含み、前記液体組成物のpHが、5~6である、前記液体薬学的組成物。
項98
a)10~55mg/mlのポラツズマブベドチン、b)10~100mMのコハク酸ナトリウム、c)150~260mMのスクロース、d)0.08~0.12重量体積%のポリソルベート20を含み、前記液体組成物のpHが、5.1~5.6である、項97に記載の液体組成物。
項99
a)15~40mg/mlのポラツズマブベドチン、b)10~50mMのコハク酸ナトリウム、c)200~260mMのスクロース、d)0.1~0.12重量体積%のポリソルベート20を含み、前記液体組成物のpHが、5.2~5.4である、項97に記載の液体組成物。
項100
液体薬学的組成物であって、a)20mg/mlのポラツズマブベドチン、b)10mMのコハク酸ナトリウム、c)120mMのスクロース、d)0.12重量体積%のポリソルベート20を含み、前記液体組成物のpHが、約5.3である、前記液体薬学的組成物。
項101
前記液体組成物が、約30℃での保管時に少なくとも4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24時間安定している、項97~100のいずれか1項に記載の液体組成物。
項101
前記液体組成物が、約2℃~約8℃での保管時に少なくとも24、48、または72時間安定している、項97~101のいずれか1項に記載の液体組成物。
項102
増殖性障害の治療を必要とする患者において増殖性障害を治療する方法であって、前記患者に先行項のいずれか1項に記載の薬学的組成物または液体組成物を投与することを含む、前記方法。
項103
前記増殖性障害が、がんである、項102に記載の方法。
項104
前記がんが、B細胞増殖性障害である、項103に記載の方法。
項105
前記B細胞増殖性障害が、リンパ腫、骨髄腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、侵攻性NHL、緩慢性リンパ腫、濾胞性リンパ腫(FL)、再発性侵攻性NHL、再発性緩慢性NHL、再発性NHL、難治性NHL、難治性緩慢性NHL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、有毛細胞白血病(HCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、及びマントル細胞リンパ腫からなる群から選択される、項104に記載の方法。
項106
前記B細胞増殖性障害が、非ホジキンリンパ腫(NHL)である、項105に記載の方法。
項107
前記B細胞増殖性障害が、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である、項105に記載の方法。
項108
前記B細胞増殖性障害が、再発性NHLまたは難治性NHLである、項105に記載の方法。
項109
前記B細胞増殖性障害が、濾胞性リンパ腫(FL)である、項105に記載の方法。
【0280】
以下の説明は、当業者が様々な実施形態を作製し、使用できるように提供される。具体的なデバイス、技術、及び用途の説明は、例として提供されるに過ぎない。本明細書に記載の実施例に対する様々な修正が、当業者に容易に明らかになり、本明細書に定義される一般的な原理は、様々な実施形態の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の実施例及び用途に適用することができる。したがって、様々な実施形態は、本明細書に記載され、示される実施形態に限定されることは意図されず、特許請求の範囲と一貫した範囲に一致するものである。
【実施例】
【0281】
実施例1:抗CD79b免疫複合体界面活性剤研究
抗CD79b-vc-MMAEについての患者の初期相臨床試験のために初めに使用される製剤は、0.02%のポリソルベート20を有する酢酸ヒスチジン緩衝液を含む液体製剤であり、これを静脈内シリンジポンプを介して患者に送達した。薬物製品用の商業的製剤を確立するために、異なる濃度の様々な非イオン性界面活性剤を試験して、それらが、IV投与袋(商業的環境における患者への送達経路である)内に希釈した時に抗CD79b-vc-MMAEを凝集に対して保護及び安定化することができるかを決定した。具体的には、(a)IV投与袋内での静的条件下、及び(b)IV投与袋内の短期間の撹拌によって引き起こされる空気-水界面ストレス条件下の両方で、抗CD79b-vc-MMAEの安定性を評価した。
【0282】
抗CD79b-vc-MMAE
抗CD79b-vc-MMAEを、20mMの酢酸ヒスチジン(pH5.5)中に希釈した。800mLの新鮮な超純水中、3.11gのヒスチジン及び1.03mLの氷酢酸を添加することによって、20mMの酢酸ヒスチジン(pH5.5)緩衝液を調製した。pHの測定値は、5.5±0.1であった。結果として生じる溶液を、新鮮な超純水を使用して1Lに調整し、0.22μMのPESフィルターを通して濾過し、2~8℃で保管した。必要に応じて、10mg/mLまたは20mg/mLになるように濾過した緩衝液中に希釈することによって、(i)10mg/mL及び(ii)20mg/mLの両方で、抗CD79b-vc-MMAEの濃度を試験した。希釈した材料を2~8℃で保管し、光から保護した。
【0283】
界面活性剤
試験した界面活性剤は、(i)ポリソルベート20(PS20)、等級USP、NF、Croda製、(ii)ポリソルベート80(PS80)、等級USP、NF、Croda製、(iii)ポロキサマー(P188)、等級USP、98ppmのブチルヒドロキシトルエンを含有するNF、Spectrum Chemicals製、及び(iv)N-オクチル-β-Dグルコピラノシド(OG)C14H28O6、FW:292.4、Affymetrix製、Anagradeであった。10%、1.0%、及び0.5%のPS20ストック溶液の調製物は、以下のように調製した:袋内のPS20の標的濃度に応じて、超純水中10%、1%、または0.5%のPS20ストック溶液を使用した。10gのPS20を100mLのメスフラスコ内に添加することによって、10%のPS20ストック溶液を調製した。フラスコに60mLの超純水を充填し、その後マグネチックスターラーで撹拌して、溶液の十分な混合を確実にした。気泡を30分間鎮静させた後、フラスコに超純水を100mLまで充填した。溶液を光保護容器に移し、2~8℃で最大1週間保管した。類似した手順を使用して、100mLの超純水中1.0gのPS20を使用して1.0%のPS20溶液を調製した。1.0%のPS20ストックの1:1(体積/体積)の希釈物を使用して、0.5%のPS20溶液を作製した。
【0284】
0.5%のPS80調製は、以下の通りであった:100mLのメスフラスコ内に10gのPS80を添加することによって、10%のPS20ストックを調製した。フラスコに50mLの超純水を充填し、その後溶液が十分に混合されるまで、マグネチックスターラーで撹拌した。溶液を30分間放置して、気泡を鎮静させ、その後撹拌物を除去した。その後、超純水を使用して、溶液体積を100mLに調整した。0.5%のPS80ストック溶液を得るために、超純水を使用して、0.5mLの10%のPS80ストック溶液を10mLに調整した。溶液を光保護容器に移し、2~8℃で最大1週間保管した。
【0285】
0.5%のP188調製は、以下の通りであった:100mLのメスフラスコ内に10gのP188を添加することによって、10%のP188ストックを調製した。フラスコに60mLの超純水を充填し、その後溶液が十分に混合されるまで、マグネチックスターラーで撹拌した。溶液を30分間放置して、気泡を鎮静させ、その後撹拌物を除去した。その後、超純水を使用して、溶液体積を100mLに調整した。0.5%のP188ストック溶液を得るために、超純水を使用して、0.5mLの10%のP188ストック溶液を10mLに調整した。溶液を光保護容器に移し、2~8℃で最大1週間保管した。
【0286】
A.静的IV投与袋研究:
抗CD79b-vc-MMAEをIV投与袋内に希釈した。薬学において推奨される調製手順を模倣するために、添加される抗CD79b-vc-MMAE及び界面活性剤の総体積と等しい体積の食塩水を、IV投与袋から除去した。ヒスチジン緩衝液中の抗CD79b-vc-MMAE製剤の前に界面活性剤をIV投与袋に導入し、界面活性剤を含まない限外濾過ダイアフィルトレーション(UFDF)プールとしての抗CD79b-vc-MMAEが、IV投与袋内にいかなる界面活性剤もない状態で食塩水に曝露されないことを確実にした。その後、IV投与袋を穏やかに回転させて、抗CD79b-vc-MMAEを含有する袋のいかなる激しい振盪及び撹拌も回避しながら、完全な混合を可能にした。
【0287】
ガラスバイアル内に含有される食塩水中の抗CD79b-vc-MMAEの調製:様々な量の食塩水(0.9%の塩化ナトリウム)、界面活性剤、及び免疫複合体を、15ccのForma Vitrumガラスバイアルに添加し、20mmのDaikyo栓でキャップをした。後に試料を特定の研究条件下でインキュベートした。
【0288】
試料回収:研究経過全体を通して、18Gの針と組み合わせた1ccまたは5ccのBD Falconシリンジを使用して、試料を除去した。回収した試料を、10ccのPETG(Nalgene)容器内に保管した。
【0289】
UV分光光度法スキャンによるタンパク質濃度決定:Agilent分光光度計を使用して、選択された試料について希釈後のタンパク質濃度を決定した。UVシグナルが0.1~1.0AUとなるように、IV投与袋から回収した試料を(必要に応じて)体積測定的に希釈した。吸光度を279nm及び320nmで記録した。1.40(mg/mL)-1cm-1の減衰係数を使用することによって、UV濃度決定を計算した。A279nmからA320nmを減算することによって、補正したA279を得た。この補正は、溶液の濁度を説明し、タンパク質濃度の正確な測定を可能にする。
【0290】
濁度:Agilent分光光度計において、1cmの経路長のキュベットを使用して340~360nmからの平均UV吸光度を記録することによって、試料の濁度を測定した。分光光度計は、精製水を用いてブランクにした。
【0291】
可視粒子:いかなる可視粒子の存在も、10ccのPETG容器内の試料について、白黒背景のライトボックスに対して目視評価した。280nmに設定したダイオードアレイ検出器及びTosoh Bioscience LLC(Montgomeryville,Pennsylvania)TSK-Gel G3000SWXLサイズ排除カラム(300×7.8mm、5μm)を備えたAgilent1200/1280高速サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)(Agilent Technologies,Santa Clara,California)を周囲温度で使用して、タンパク質の不安定性の尺度としての可溶性凝集含有物を決定した。0.2MのK3PO4、0.25MのKCl(pH6.2)を使用して、0.5mL/分の均一濃度の流量で、試料を30分間にわたって溶出させた。
【0292】
高確度液体粒子計数器(HIAC):HIACを使用して、溶液中にある間の微粒子のサイズ分類及び計数を実行した。可視粒子及び/または可視サイズ以下の粒子(SVP)の定量化には、HIAC(モデル9703+)機器を使用する光遮蔽を使用した。以下の粒径、1.6、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、20、25、及び50μmが回収された。
【0293】
静的保管時のIV投与袋内の安定性研究:
IV投与袋内の界面活性剤研究のために、静的条件下及び撹拌条件下の両方で初期研究を実行した。これらの研究に試験した抗CD79b-vc-MMAEの投与量範囲は、1.8mg/kg~2.4mg/kgの範囲で設計及び実行した。大部分の患者の体重は、40kg~120kgの間にあると想定した。これらの想定に基づいて、1つのIV投与袋当たりの総用量を、72mg(低用量/低体重)~288mg(高用量/高体重)まで変動させた。
【0294】
図1~
図2は、0.005%の固定PS20袋内濃度及び0.65mg/mLの最終的な抗CD79b-vc-MMAE濃度での、IV投与袋性能の結果を要約する。IV投与袋内の抗CD79b-vc-MMAE濃度の濃度は、40kgの患者の最低患者体重について、100mLのIV投与袋内に1.8mg/kgの低用量を想定して選択した。100mLのIV投与袋は、10mLの予備充填を有するため、IV投与袋内の最終的な濃度は、(1.8mg/kg×40kg)/110mL=0.65mg/mLであった。
【0295】
30℃で22時間の静的保管条件下、抗CD79b-vc-MMAEの物理的安定性に関してIV投与袋種類間に有意な差異は存在しなかった。全ての袋は、SECによって測定される、高分子量種(HMWS)の0.3%+0.1%の増加(Δ)を示した。これは、抗CD79b-vc-MMAEが0.9%のNaCl中への希釈時に30℃で不安定であることを実証した。
【0296】
界面活性剤及び静的保管下でのスクリーニング研究:
界面活性剤種類及び界面活性剤濃度の十分に制御された効率的なスクリーニングには、袋内の固定タンパク質濃度の利用が必要であった。以下の計算、(2.4mg/kg×120kg)/110mL=2.6mg/mLに見られるように、120kgの高体重患者について、100mLの袋(診療所に推奨される袋サイズであり、10%の予備充填容積を有する)で投与される2.4mg/kgの可能性のある最高用量に基づいて、袋内に2.6mg/mLの抗CD79b-vc-MMAE濃度を選択した。より高いバルクタンパク質濃度は、空気-水界面への抗体のより急速な吸着を促進し、より高いレベルの界面媒介凝集をもたらすため、袋内の最高タンパク質濃度を最悪の場合と想定した。
【0297】
静的保管下での安定性に対する温度の影響:
化合されたIV投与袋のための適切な保管条件の提供は、抗体治療薬の製品品質にとって重要であり、これを評価した。この情報はまた、あらゆる抗体治療薬の適切な使用を確実にするための薬学マニュアル及び製品添付文書の準備にも必要とされる。袋内の様々なレベルのPS20を、30℃、25℃、及び2~8℃の温度で試験した。2~8℃では、袋内の試験したレベルのPS20(0.003%、0.005%、及び0.01%)は、22時間の静的保管後、HMWSの有意な変化を示さなかった(
図3)。全ての変化(HMWS%)は、0.02%未満であった。25℃、かつ袋内の0.005%、0.01%、0.015%、0.025%、及び0.030%のPS20レベルでは、22時間の静的保管後に約0.1%のHMWSの増加が観察された(
図3)。30℃でのHMWSの増加は、25℃で観察された増加よりも一層大きかった。22時間の静的保管後の袋内の0.004%、0.015%、0.02%、0.025%、0.05%、及び0.1%のPS20レベルでは、0.3+0.1%の増加が観察された(
図3)。
【0298】
全ての温度にわたって、HMWSの増加は袋内のPS20の濃度とは独立しており、静的条件下での凝集が界面ストレスによって媒介されるものではないことを示す。HMWSの増加は、保管温度に対して強い相関性を示した。これらの結果は、Beckley,N.et al.,Investigation into Temperature-Induced Aggregation of an Antibody Drug Conjugate.Bioconjugate Chemistry.,24,pp:1674-1683(2013)によって実施された後続の研究に良く相関しており、これは、恐らくCH2ドメイン付近の鎖間システインでの複合体化された薬物の存在のために、より高い温度での抗体薬物複合体(ADC)中でのHMWSの形成が熱ストレスに対する三次構造の感受性の増加に起因することを示す。
【0299】
界面活性剤ハイブリッドの試験:
ポロキサマー188(P188)は、IV投与袋内でのHMWSの形成を減少させることが既知であるが、撹拌時には可視サイズ以下の粒子(SVP)の有意な増加が存在し得る。対照的に、PS20は、SVPを増加させない。2つの界面活性剤間のこれらの異なる結果を更に調査するために、1:1の等しい重量比のPS20-P188ハイブリッドを使用して、PS20がSVP形成を防止し得るか、及びP188がHMWSの増加を制限し得るかを決定した。この研究は、袋内の2.6mg/mLの抗CD79b-vc-MMAE濃度を使用して、25mLのIV投与袋内で実行した。質量に基づいて、等量のPS20及びP188を添加して、0.05%または0.1%のいずれかのIV投与袋内の全界面活性剤濃度を得た。以下の表1において、30℃で22時間の静的条件下で、0.3~0.4%のHMWSの増加が観察された。
表1:熱ストレスを与えた30℃静的条件下でのハイブリッドPS20-P188界面活性剤研究
【0300】
5μm、10μm、及び25μm超のサイズの粒子のわずかな増加が存在した。IV投与袋内で0.1%の全界面活性剤を使用した場合、2μmの粒子の増加が存在した。これらの結果に基づいて、界面活性剤ハイブリッドは、PS20単独に対する実質的な差異を実証しなかった。
【0301】
この研究では、PS20、PS80、P188、及びオクチルグルコシド(OG)を含む4つの異なる界面活性剤を評価した。PVC袋からの食塩水で充填したバイアル内の0.02%の界面活性剤及び2.6mg/mLの薬物製品と共に、30℃で22時間インキュベートした後、0.3~0.4%のHMWSの増加が存在し、これは、凝集もまた、使用される界面活性剤の種類とは独立していることを実証した(
図4)。
【0302】
バイアル内の静的保管下での抗CD79b-vc-MMAEの安定性:
IV投与袋内の静的保管下での正常食塩水(0.9%のNaCl)中での抗CD79b-vc-MMAEの物理的不安定性を考慮して、5%のデキストロース(D5W)及び半食塩水(0.45重量体積%のNaCl)中の免疫複合体の安定性をバイアル内で試験して、イオン強度に対する免疫複合体の不安定性の依存性を評価した。0.02%のPS20を含有する溶液を、2.6mg/mLの固定抗CD79b-vc-MMAE濃度で調製した。抗CD79b-vc-MMAEは、半食塩水中及びD5W中の両方で、物理的安定性における有意な改善を示した(
図4)。D5W溶液中では、HMWSの変化は存在しなかった一方で、半食塩水溶液は、30℃で24時間の静的保管後、0.1%以下のHMWSの増加を示した。D5W中での調製は、抗CD79b-vc-MMAEの凝集を制限したものの、D5W溶液中での抗体の糖化は、既知のリスクである(Fischer,S.et al.,Glycation during Storage and Administration of Monoclonal Antibody Formulations.European J Pharma and Biopharm.vol.70;pp.42-50(2008)を参照されたい)。したがって、5%のデキストロース袋での抗CD79b-vc-MMAEのIV送達は、糖化の潜在性のために、それ以上考慮しなかった。半食塩水は、正常食塩水と比較して物理的安定性の有意な改善を示したものの、臨床及び商業的環境全体において既製の半食塩水袋の入手可能性は低く、かつ薬局での半食塩水袋の調製に関連する不便及び潜在的な微生物混入リスクのため、抗CD79b-vc-MMAEのIV注入のための半食塩水の使用もまた、好ましくなかった。
【0303】
IV投与袋内及びガラスバイアル内での静的安定性研究からの結論:
上述の静的安定性研究は、抗CD79b-vc-MMAEの凝集が高イオン強度環境によって促進されることを実証し、これは、製剤緩衝液中の凝集速度が食塩水中の凝集速度よりも著しく緩徐であることを示す。
【0304】
B.IV投与袋撹拌研究:
病院設定または臨床設定における、用量投与用の抗CD79b-vc-MMAEを含有する化合されたIV投与袋の輸送を支持するために、一連のIV投与袋撹拌研究を実行した。治療タンパク質を含有する調製されたIV投与袋の輸送は一般に、凝集リスクのために推奨されないが、臨床設定において、特に薬局へのアクセスが限られている遠隔地において、IV投与袋を輸送する実際的な必要性が頻繁に存在する。したがって、最小量の輸送が支持されるべきであり、開発中には、IV投与袋の撹拌による薬物に対する影響が評価されなければならない。輸送中のIV投与袋内の撹拌ストレスは、治療抗体に対する物理的分解を誘導し得る。抗体の物理的分解(すなわち、凝集及び粒子形成)は、撹拌中に連続的な再生を受けるIV投与袋内での空気-液体界面への吸着によって媒介される可能性がある。以下の研究経過全体を通して、MaxQ4000楕円形実験振盪機(0.75インチの軌道長)をIV投与袋撹拌研究に利用した。IV投与袋を、振盪機の平面上に平らに置いた。
【0305】
IV投与袋内の撹拌時の安定性に対する温度の影響:
袋内の異なるレベルのPS20によって、2~8℃、25℃、及び30℃で、撹拌研究を実行した(
図5A~
図5C)。HMWSの増加速度は、25℃よりも30℃でより早く、これは2~8℃で試験したものよりも早かった。HMWSの増加は、撹拌中のIV投与袋内の温度に相関した。0.01%、0.005%、及び0.003%のPS20濃度レベルを含有する袋では、2~8℃で2時間撹拌した時にHMWSの増加は存在しなかった(
図5A)。30℃では、HMWSの増加は、袋内のPS20の濃度に依存していた(
図5C)。2~8℃(
図5A)及び25℃の両方で、全PS20レベルにわたって、撹拌時のHMWSの増加は非線形であったことに留意されたい(
図5B)。この非線形挙動は、異なる時点での試料採取によるものである可能性があった。
【0306】
IV投与袋内の撹拌時の安定性に対する界面活性剤混合物の影響:
1:1の等しい重量比のPS20-P188ハイブリッドを使用して、撹拌時に、PS20がSVP形成を防止し得るか、及びP188がHMWSの増加を制限し得るかを決定した。この研究は、袋内の2.6mg/mLの抗CD79b-vc-MMAE濃度を使用して、25mLのIV投与袋内で実行した。質量に基づいて、等量のPS20及びP188を添加して、0.05%または0.1%のいずれかのIV投与袋内の全界面活性剤濃度を得た。
【0307】
IV投与袋内で0.05%の全界面活性剤を使用した場合、30℃で2時間撹拌した後に2.9%のHMWSの増加が観察された(表2)。5μm、10μm、及び25μm超のサイズの粒子の最大1時間の増加傾向が存在し、粒子数は2時間で検出限界(LOD)を超えた。IV投与袋内で0.1%の全界面活性剤を使用した場合、全てのサイズにわたって粒子の増加傾向が存在したが、0.05%の界面活性剤を有する袋よりも著しく低かった(表2)。HMWSの増加もまた、0.05%のIV投与袋内の全界面活性剤濃度と比較して、2時間の撹拌後に約2.8%だけ低かった。これらの結果に基づいて、界面活性剤ハイブリッドは、PS20単独に対する差異を示さなかった。
表2:熱ストレスを与えた30℃撹拌条件下でのハイブリッドPS20-P188界面活性剤研究
【0308】
30℃での短期間のIV投与袋撹拌:
この研究の目的は、短期間、周囲条件での希釈された抗CD79b-vc-MMAEを有するIV投与袋の輸送を調査すること、及び抗CD79b-vc-MMAAE製剤中のPS20の有効濃度を決定することであった。この研究は、袋を30℃で30分間の短期間の撹拌に供する。30℃でのこのより短い撹拌は、希釈された抗CD79b-vc-MMAEが、病院または他の施設において周囲条件で輸送中に経験し得る潜在的な撹拌を包含し得る。この研究を、IV投与袋内に希釈した0.001%、0.002%、0.003%、及び0.005%のPS20で実行し、30℃、100rpmで撹拌した。結果を
図6に示す。これらの結果に基づいて、袋内の0.005%のPS20では、0.1%未満の増加が存在する。これらの条件下、抗CD79b-vc-MMAEでは、HMWSの増加とIV投与袋内のPS20の濃度との直接的な相関性が存在する。この研究に基づいて、IV投与袋内の希釈した抗CD79b-vc-MMAEの物理的安定性について、凝集レベルを定量化限界未満に維持するためのIV投与袋内の最小量のPS20は、0.003%~0.005%であった。
【0309】
IV投与袋の冷却中の2~8℃での撹拌(袋の予冷なし):
この研究の目的は、より現実的なシナリオでの化合されたIV投与袋の輸送を支持することであった。典型的には、IV投与袋は、薬剤師によって化合され、予冷されても予冷されなくてもよい車両内で輸送される。この実験の開始前に、袋を30℃まで平衡化して、世界中の異なる地域に存在し得るより高い周囲温度をシミュレートした。これは、袋が予冷されていない場合または予冷されていない容器内で輸送される場合でさえも、希釈したDPの安定性を保証する。この研究は、IV投与袋内で4つの異なる100mLのPS20レベル(0.001%、0.002%、0.003%、及び0.005%)を有する2.6mg/mlの抗CD79b-vc-MMAEで実行した。0.1%未満のHMWSの増加(0.002%以下はIV投与袋内)が存在する。この撹拌モデル研究の結果に基づいて、凝集レベルを定量化限界未満に維持するためのIV投与袋内の最小量のPS20は、0.001%~0.002%であった。結果を
図7に要約する。
【0310】
結論:
抗体薬物複合体(ADC)は、通常の複合体化されていない抗体よりも食塩水及び高イオン強度緩衝液に対して特に感受性である(Adem,Y.,et al.Bioconjugate Chemistry,25(2014)656-664)。試験した抗CD79b-vc-MMAEは、30℃で22時間の静的保管下、0.3%の食塩水中に希釈した時のHMWSの増加を実証した。
【0311】
2つの撹拌モデルに基づいて、抗CD79b-vc-MMAEは、2~8℃で1時間の短期間の輸送によって引き起こされる撹拌中、IV投与袋内で少なくとも0.002%のPS20で安定している。取り扱い及び輸送中ならびに短期間の保管中の撹拌ストレスに対する安定性要求を満たすために、抗CD79b-vc-MMAE製剤中の最終的に提案される界面活性剤濃度は、0.12%であり、これは、100mLのIV投与袋の使用と組み合わせた場合に、患者の予測される最低患者体重(40kg)について、袋内に0.004%をもたらす。このレベルの界面活性剤は、1.8mg/kg~2.4mg/kgの投与量範囲について抗CD79b-vc-MMAEを保護することが示された。この量の界面活性剤、特にPS20は、科学文献を考慮すると、予想外に高く反直感的であることに留意されたい(Kerwin BA.Polysorbates 20 and 80 used in the Formulation of Protein Biotherapeutics:Structure and Degradation Pathways.Journal of Pharmaceutical Sciences.2008;97(8):2924-2935を参照されたい)。抗CD79b-vc-MMAE薬物製品に使用されるこの量のPS20はまた、0.05%のPS20の商業的製剤がIV投与袋内への希釈に好適なものとして確立された、別の免疫複合体である抗CD22-vc-MMAEと比較して、予想外により高い(データ示さず)。
【0312】
実施例2:抗CD79b免疫複合体酸化及びリンカー加水分解リスクの軽減
実施例1に考察されるIV投与袋送達に好適な界面活性剤濃度の確立は、抗CD79b-vc-MMAEの酸化の問題を潜在的に増大させた。より高いレベルのポリソルベートは一般に、ポリソルベートの自己酸化分解のために、より高いレベルの過酸化物に関連することが既知である。Lam XM,Yang JY,Cleland JL.Antioxidants for prevention of methionine oxidation in recombinant monoclonal antibody HER2.Journal of Pharmaceutical Sciences.1997;86(11):1250-1255、Donbrow M,Azaz E,Pillersdorf A.Autoxidation of polysorbates.Journal of Pharmaceutical Sciences.1978;67(12):1676-1681、Kerwin BA.Polysorbates 20 and 80 used in the Formulation of Protein Biotherapeutics:Structure and Degradation Pathways.Journal of Pharmaceutical Sciences.2008;97(8):2924-2935を参照されたい)。
【0313】
更に、PS20の存在下ではトリプトファン酸化が生じ得ることが既知である。Lam X,et al.,Site-Specific Tryptophan Oxidation Induced by Autocatalytic Reaction of Polysorbate 20 in Protein Formulation.,Pharm Res.(2011)28:2543-2555を参照されたい。注目すべきことに、本開示で使用される抗CD79b抗体では、可変重鎖HVR1:GYTFSSYWIE(配列番号4)にトリプトファンが存在する。AAPHストレス条件(例えば、40℃で最大2週間または25℃で6ヶ月間または2~8℃で6ヶ月間)下で酸化する傾向を、抗CD79b-vc-MMAEをAAPHと共に製剤化した後、トリプシンペプチドの質量分析の解析によって決定した。ストレスを与えた抗CD79b-vc-MMAEをトリプシンで消化させ、消化されたペプチドをLC-MS/MSに供して、酸化のパーセンテージを決定した(データ示さず)。ペプチドマッピングによって、HVRトリプトファンの68%の酸化が観察された。これは、抗CD79b-vc-MMAEについておよそ58%の効力損失をもたらした(データ示さず)。したがって、酸化リスクを軽減することが必要である。
【0314】
考慮すべき追加の要因には、免疫複合体のリンカーのスクシンイミド加水分解への対応方法が含まれた。本抗CD79b-vc-MMAE免疫複合体は、抗体システイン残基に複合体化されて、チオ-スクシンイミド結合を形成する、マレイミド含有薬物-リンカーを用いた。そのようなチオ-スクシンイミド結合が、患者の血漿中で2つの競合反応、つまり(a)免疫複合体からの薬物の望まれない損失をもたらす、マレイミドの除去、及び(b)除去を受けることができないコハク酸誘導体をもたらす、チオ-スクシンイミド環の加水分解を受け得ることが既知である。
図8及びLyon,R.,et al Self-Stabilizing ADCs:Conjugates Prepared with Maleimido Drug-Linkers that Catalyze their own Thiosuccinimide Ring Hydrolysis.,Abstract No.4333,American Association for Cancer Research(April 2013)を参照されたい。これは薬物動態(pK)及び安全性に対する潜在的な影響を有するため、それは重要な重要品質特性(CQA)である。患者の初期相臨床試験に使用される初期液体製剤、例えば、酢酸ヒスチジン緩衝液(pH5.5)中の液体製剤は、推奨される保管条件で2年間にわたって酸性物のおよそ9%の増加を実証することが以前に実証された(データ示さず)。
【0315】
これら3つのリスク、つまりPS20濃度の増加による酸化リスクの増加、効力損失をもたらすトリプトファン酸化による酸化リスクの増加、及び免疫複合体からのMMAE薬物の損失をもたらし、患者の血漿中に遊離薬物をもたらすリンカー加水分解リスクの結果として、これらのリスクを軽減して、より長くより安定した有効期間をもたらすための凍結乾燥された製剤が提案された。
【0316】
A.代替的な緩衝液種の調査:
凍結乾燥された生成物の製剤開発を開始するために、代替的な緩衝液種を調査した。初期臨床相の製剤に使用される緩衝液種は、酢酸ヒスチジン緩衝液であった。L-ヒスチジンは、多様な機構を通した酸化潜在性を有することが既知であり、このうち、観察される最も一般的な酸化機構は、光酸化である。Mason,B.,et al Oxidation of Free L-histidine by tert-Butylhydroperoxide.,Pharm Res.(2010)27(3):447-456を参照されたい。加えて、酢酸は、凍結乾燥プロセス中に蒸発し、それにより免疫複合体生成物を不安定化し得るpHの変化をもたらす可能性がある。更に、酢酸は可燃性であるため、酢酸の含有は凍結乾燥プロセスにとって潜在的な危険と見なされ得る。したがって、代替的な緩衝液種を評価した。表3に示される3つの製剤を試験した。
表3:緩衝液種のスクリーニング及びpH範囲評価
【0317】
使い捨てPETG容器内の表3の凍結解凍した抗CD79b-vc-MMAE薬学的組成物の安定性を、凍結/解凍ストレス実験で評価した。タンパク質製剤を滅菌濾過し、PETG容器に充填した。容器を-20℃にT=0及び1週間置いた。容器を合計5回、凍結し、室温まで解凍した。T=0及び3回目の凍結解凍サイクルのみを分析した。結果を表4に要約する。
表4:凍結解凍した抗CD79b-vc-MMAEの安定性
【0318】
これらの結果は、試験した3つの製剤のいずれについても問題が観察されなかったことを実証する。したがって、ヒスチジンまたはコハク酸の使用は、酢酸ヒスチジンに対する許容できる代替的な緩衝液種であろう。
【0319】
次に、30℃でのチャージバリアント形成に対するpHの影響を試験する、安定性スクリーニングを試験した。表3と同じ3つの液体製剤を使用して、2週間、4週間、及び8週間の3つの異なる時点において30℃でストレスを与え、PrinCE微量注射器及び100μm×5cmのフッ化炭素コーティングされたキャピラリーカートリッジ(ProteinSimple)を有するiCE280分析機(ProteinSimple)によって、チャージバリアント分布を評価した。重鎖C末端リジン残基を除去するために、希釈ステップ後、1:1000(重量/重量)の酵素対基質比でカルボキシペプチダーゼB(CpB)を各試料に添加した。加えて、シアリダーゼAを添加して、シアル酸を除去した。CpB及びシアリダーゼAの添加後、試料を37℃で10分間インキュベートした。インキュベートした液体製剤試料を、700μLの1%のメチルセルロースと、1218μLの精製水と、8μLのファルマライト8-10.5と、55μLのファルマライト5-8と、15μLのpIマーカー5.12と、4μLのpIマーカー7.05との混合物からなる両性電解質溶液と混合した。80mMのリン酸の陽極液及び100mMの水酸化ナトリウムの陰極液(共に0.1%のメチルセルロース中)を用いて、1500Vの電位を1分間、その後3000Vの電位を5分間導入することによって試料を集中させた。キャピラリーを通して電荷結合素子デジタルカメラのレンズに280nmの紫外線(UV)光を通過させることによって、集中させたチャージバリアントの画像を得た。結果を
図9及び
図10に示し、これらは、pH5.0~5.5で、酸性種の形成がより少なく、かつ塩基性種の形成がわずかにより迅速であることを実証する。したがって、緩衝液構成成分は電荷安定性に対して測定可能な影響を有しないようである。
【0320】
B.安定性に対するpHの影響の調査:
表3にあるものと同じ3つの液体製剤を使用して、2週間、4週間、及び8週間の3つの異なる時点において30℃でストレスを与え、30℃でのサイズバリアント形成に対するpHの影響を試験する安定性スクリーニングを試験した。0.25mMの塩化カリウム(pH6.2、移動相)を使用して、Agilent Technologies1200シリーズHPLC(Santa Clara,California)で、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によってサイズバリアント分布を決定した。その後、液体製剤試料をTosoh Bioscience TSKgel G3000SWXLカラム(South San Francisco,California)上に充填した。0.5ml/分の流量を使用して、試料を30分間にわたって溶出させ、280nmでの吸光度を監視した。結果を曲線下総面積の相対的ピーク領域として報告し、
図11に示す。安定性スクリーニングは、pH6.0と比較して、pH5.0~5.5で、より少ない高分子量種(HMWS)が観察されることを実証した。30℃で4週間後に、同様の量の低分子量種(LMWS)が観察された。8週間時点で、30℃でわずかにより高いLMWSが観察された。pHの5.3への減少が、チャージバリアント形成及びサイズバリアント形成の両方を低減するようであるため、pH5.3を選択した。
【0321】
図12は、3つの異なるpH(5.0、5.5、及び6.0)のコハク酸ナトリウムとの比較での、2つの緩衝液種、ヒスチジン/ヒスチジン-HCl(pH5.5)を試験するクロマトグラムを示す。pH5.5のヒスチジン緩衝液は、試験したあらゆるpH(pH5.0、5.5、及び6.0)のコハク酸ナトリウムよりも、30℃の液体中でわずかに良好な物理的安定性を示した。しかしながら、コハク酸ナトリウム緩衝液は液体中で許容できる安定性を示したため、ヒスチジンの酸化リスクの潜在性を考慮して、コハク酸ナトリウム緩衝液を選択した。
【0322】
C.凍結乾燥された製剤の試験:
上述のリスクを軽減するために、凍結乾燥された製剤を試験した。凍結乾燥サイクルの一般的なスキームは、表5に示される通りである。
表5:抗CD79b-vc-MMAEの凍結乾燥サイクル
【0323】
サイクルの長さは、およそ78時間または約3日間であった。水分含有量は、0.5%~0.7%に設定した。
【0324】
表6に示される、様々な抗CD79b-vc-MMAE濃度、2つの異なる緩衝液種、異なるpH、及び2つの異なる界面活性剤レベルを試験する、凍結乾燥スクリーニング研究を実行した。
表6:凍結乾燥スクリーニング研究-試験製剤
【0325】
これらの試験凍結乾燥された製剤を、スクリーニング研究の一部として、30℃で最大2ヶ月間保管した。
【0326】
安定性の指標として、試験した各製剤(1)~(5)のために開発したいかなるモノマーも定量化するために、上述のように試験した各製剤を10mg/mlまたは20mg/mlに再構成した後に、SEC分析を用いた。
図13は、この研究を要約し、30℃で2ヶ月間の熱ストレスにわたって、試験した製剤のいずれにおけるモノマーのパーセントにも変化が存在しなかったことを実証する。凍結乾燥された各製剤(1)~(5)を、上述のicIEFによっても試験して、30℃で2ヶ月間の熱ストレス後の主ピークパーセントを決定した。
図14は、この研究を要約し、30℃で2ヶ月間の熱ストレスにわたって、試験した製剤のいずれにおける主ピークパーセントにも変化が存在しなかったことを実証する。これら2つの研究の結果として、5.0~6.0のpH範囲にわたるコハク酸ナトリウム緩衝液が、試験した凍結乾燥された製剤にとって許容できる安定性をもたらすと決定した。
【0327】
D.凍結乾燥されたケーキの外観:
凍結乾燥された製剤の重要な一態様は、凍結乾燥されたケーキの実際の外観であるが、これはその外観が、製品品質特性であるためである。抗CD79b-vc-MMAEの凍結乾燥された製剤について、免疫複合体の濃度及び安定剤/等張化剤の濃度の両方を試験して、凍結乾燥されたケーキの外観の改善方法を検査した。
図15A~
図15Cは、試験した異なるタンパク質対スクロース比を有する3つの凍結乾燥された製剤の外観を示す。試験した3つ全てのスクロースレベルについて、凍結乾燥されたケーキの下部には刻み目が見られ、これは理想的な凍結乾燥されたケーキの外観ではない。それにも関わらず、同様の凍結乾燥条件下で、より少ないスクロースを有する製剤はより小さい刻み目を示し、より低いスクロース濃度はより低い水分もたらす。免疫複合体濃度を20mg/mlに増加させた一方で、スクロース濃度を120mMに低下させた別の凍結乾燥された製剤を試験した。
図16A及び
図16Bは、2つの凍結乾燥されたケーキの外観を比較する。20mg/mlの免疫複合体濃度と120mMのスクロースとの組み合わせが、最も頑強で均質な凍結乾燥されたケーキの外観を実証した。40℃、25℃、及び5℃で、4週間にわたって熱ストレス安定性研究を実行した際にケーキの構造、色、または外観に変化は見られず、水分含有量は5%未満のままであった。
【0328】
E.凍結乾燥された製剤の安定性:
薬物製品の凍結乾燥された製剤:20mg/mlの抗CD79b-vc-MMAE、120mMのスクロース、10mMのコハク酸ナトリウム中0.12%のPS20(pH5.3)を、可溶性凝集物またはチャージバリアント形成によって測定される安定性について試験した。可溶性凝集物を、上述のSECによって測定した。
図17は、凍結乾燥された薬物製品について、25℃及び2~8℃で8週間にわたって、0.1%未満の可溶性凝集物の増加が存在したことを示す。40℃では、1週間当たりおよそ0.1%の二量体凝集物種の増加が観察され、この凝集速度は、水分レベルに依存し得る。チャージバリアントを、上述のicIEFによって測定した。
図18は、凍結乾燥された薬物製品について、40℃で4週間後に主ピークのおよそ5%の損失及び酸性物の3.7%の増加を示す。25℃及び2~8℃で測定される有意な変化は存在しなかった。結果として、25℃及び2~8℃のストレス条件下で凍結乾燥された薬物製品の変化は観察されなかった。
【0329】
表7は、実施例1及び2に記載の多くの研究の結果として到達した、最終的な抗CD79b-vc-MMAE製剤を要約する。
表7:最終的な抗CD79b-vc-MMAE製剤の要約
【0330】
上記の表7に示されるように、最終的な商業的薬物製品製剤は、20mg/mlの薬物製品を含有し、これは、タンパク質対薬物比を増加させ、溶液の凍結乾燥時のケーキの外観の改善をもたらす。0.12%のPS20(すなわち、1.2mg/ml)は、IV投与袋及びIV注入セットを使用した投与中に遭遇する界面ストレスから製剤中のタンパク質を保護する。5.3のpHは、スクシンイミドの加水分解によって寄与される酸性バリアントの形成を最小化する。表7の製剤は、1.8mg/kgの臨床用量を支持するために7.2mLのSWFI中で再構成した後、1バイアル当たり140mgの薬物製品を送達するために設計された。
【0331】
実施例3:抗CD79b-vc-MMAE薬物物質及び薬物製品製剤の頑強性の評価
凍結乾燥された製剤中の薬物製品(表7を参照されたい)は、0.3重量%~3.2重量%の残留水分含有量範囲にわたって、2℃~8℃で少なくとも44ヶ月間、及び0.3重量%~3.2重量%の残留水分含有量範囲にわたって、25℃で少なくとも7ヶ月間安定していることが見出された。
【0332】
次に、凍結乾燥された薬物製品の製剤パラメータを変動させ、凍結乾燥された薬物製品の安定性に対する実際的に有意義な影響について評価した。試験した5つの製剤パラメータ(及びパラメータを変動させた範囲)は、(a)タンパク質濃度(17~23mg/ml)、(b)コハク酸濃度(7~23mM)、(c)スクロース濃度(90~150mM)、(d)ポリソルベート20濃度(0.9~1.5mg/ml)、及び(e)pH(4.95~5.65)であった。2℃~8℃での保管後、最大9ヶ月間の間、凍結乾燥された薬物製品の安定性に対する実際的に有意義な影響は観察されなかった。モデルが予測した分解速度に基づいて、2℃~8℃での保管後、最大少なくとも24ヶ月間の間、凍結乾燥された薬物製品の安定性に対する実際的に有意義な影響は、予想されない。
【0333】
再構成された薬物製品溶液(すなわち、10mMのコハク酸中の20mg/mLのポラツズマブベドチン、120mMのスクロース、1.2mg/mLのポリソルベート20(pH5.3))は、2℃~8℃で72時間の保管後、または環境光に曝露された状態で、30℃で24時間の保管後に物理化学的に安定していることが見出された。ポラツズマブベドチンのその標的(すなわち、CD79b)への親和性において、またはポラツズマブベドチンの生物学的活性において、有意な変化(例えば、統計学的に有意な変化)は検出されなかった。
【0334】
本開示は、明確な理解のために例証及び実施例によって幾分詳細に記載されているが、説明及び実施例は、本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書に引用される全ての特許及び科学文献の開示の全体が、参照により明白に組み込まれる。
【配列表】