(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】遮断構造
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20241111BHJP
E06B 7/22 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E06B7/22 F
(21)【出願番号】P 2021175420
(22)【出願日】2021-10-27
【審査請求日】2024-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】307011510
【氏名又は名称】株式会社熊平製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 茂也
(72)【発明者】
【氏名】西村 太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 智紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴野 卓也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健一郎
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-175088(JP,A)
【文献】特開2016-020626(JP,A)
【文献】特開2011-094332(JP,A)
【文献】特開2013-119712(JP,A)
【文献】特開平09-228750(JP,A)
【文献】実公昭48-024101(JP,Y1)
【文献】特開2018-059367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00
E06B 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向するように配置される第1辺部及び第2辺部を有する支持体と、
前記支持体の前記第1辺部に対して支持された第1遮断部材と、
前記支持体の前記第2辺部に対して支持された第2遮断部材と、
前記支持体に取り付けられ、当該支持体と、遮断状態にある前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材との間に介在する支持体側パッキン部と、
前記第2遮断部材における前記第1辺部側の縁部から当該第1辺部へ接近する方向に突出して上下方向に延びる先端板部と、
前記第1遮断部材における前記第2辺部側の縁部に設けられ、正面視で前記先端板部の少なくとも突出方向先端部分と重複するように位置付けられる重複パッキン部と、
前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材が遮断状態にあるときに前記先端板部と前記支持体側パッキン部との間に介在し、前記先端板部と前記支持体側パッキン部とに沿って延びるとともに弾性変形する第1パッキン部と、
前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材が遮断状態にあるときに前記先端板部と前記重複パッキン部との間に介在し、前記先端板部と前記重複パッキン部とに沿って延びるとともに弾性変形する第2パッキン部とを備えている、遮断構造。
【請求項2】
請求項1に記載の遮断構造において、
前記支持体は、構造物に固定される枠体であり、
前記第1遮断部材は、前記支持体の前記第1辺部に対して回動可能に支持された第1扉であり、
前記第2遮断部材は、前記支持体の前記第2辺部に対して回動可能に支持され、開状態から閉状態とする際に前記第1扉よりも先に回動される第2扉である、遮断構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の遮断構造において、
前記第1パッキン部及び前記第2パッキン部は、前記先端板部から前記第1辺部へ接近する方向に突出するとともに、少なくとも前記第1遮断部材及び第2遮断部材が遮断状態にあるときに当該先端板部から突出した部分同士が接している、遮断構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の遮断構造において、
前記第1パッキン部と前記第2パッキン部とは、別部材で構成されており、
前記第1パッキン部における前記先端板部から突出した部分の先端部と、前記第2パッキン部における前記先端板部から突出した部分の先端部とが突出方向にずれている、遮断構造。
【請求項5】
請求項4に記載の遮断構造において、
前記第1パッキン部は、前記支持体側パッキン部に固定され、
前記第2パッキン部は、前記重複パッキン部に固定されている、遮断構造。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1つに記載の遮断構造において、
前記第1パッキン部と前記第2パッキン部とは、1枚のパッキン構成部材で構成されており、
前記パッキン構成部材は、中間部で折り返されて前記先端板部を厚み方向に挟むように形成されるとともに、当該先端板部に固定され、
前記パッキン構成部材における前記先端板部の前記支持体側パッキン部側に位置する部分により、前記第1パッキン部が構成され、
前記パッキン構成部材における前記先端板部の前記重複パッキン部側に位置する部分により、前記第2パッキン部が構成されている、遮断構造。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の遮断構造において、
前記第1パッキン部及び前記第2パッキン部は、前記支持体側パッキン部及び前記重複パッキン部よりも軟らかい部材で構成されている、遮断構造。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の遮断構造において、
前記第2パッキン部は、前記重複パッキン部から前記第1遮断部材の表面または裏面まで連続して配置される、遮断構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば各種構造物等に設けられる遮断構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばビル等の構造物には、当該構造物の内部に水が浸入するのを防止するための止水扉が設置される場合がある(例えば特許文献1参照)。特許文献1に開示されている止水扉は、構造物に固定される枠体に対して一対の扉体が開閉自在に取り付けられている。枠体には、扉体に接触する枠状止水部材が取り付けられている。また、一方の扉体の先端部には、当該先端部に沿って上下方向に延びる召し合わせ止水部材が取り付けられている。さらに、枠状止水部材の上辺部の左右方向中央部及び下辺部の左右方向中央部には、それぞれ上側補助止水部材及び下側補助止水部材が取り付けられている。
【0003】
したがって、特許文献1の扉体を閉じると、両扉体と枠体との間に枠状止水部材が介在し、また召し合わせ止水部材が、一方の扉体の先端部と、他方の扉体の先端部に設けられた当たり部との間に介在するとともに、枠状止水部材の上辺部の左右方向中央部及び下辺部の左右方向中央部に重ねられる。このとき、上側補助止水部材は、他方の扉体の当たり部の上部と、枠状止水部材の上辺部の左右方向中央部と、召し合わせ止水部材の上部とに接触し、また、下側補助止水部材は、他方の扉体の当たり部の下部と、枠状止水部材の下辺部の左右方向中央部と、召し合わせ止水部材の下部とに接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、特許文献1では、他方の扉体の当たり部と、枠状止水部材と、召し合わせ止水部材とを接触させ、これら3つの部材の間に生じる隙間を埋めるべく、上側及び下側補助止水部材を設けている。
【0006】
ところで、経年による扉体の変位によって上記3つの部材の間に生じる隙間と、補助止水部材との相対的な位置関係が変化して補助止水部材が上記隙間からずれてしまい、止水性能の低下を招くおそれがある。また、止水扉の設計時にはある程度の耐震性を持たせた設計を施しているが、設計時に想定していた震度よりも大きな震度の地震が起こった場合にも補助止水部材が上記隙間からずれることがあり、このことで止水性能が低下する可能性がある。
【0007】
また、補助止水部材の取り付け時には、上記隙間に対応するように正確に位置決めして取り付ける必要がある。しかし、上記隙間が小さなものであることから、補助止水部材自体も小さなものであり、このような小さな補助止水部材を小さな隙間を狙って正確な位置に取り付ける作業は簡単ではなく、所望の止水性能を確保するのが難しい。つまり、特許文献1の場合、補助止水部材の取付作業性が良好であるとは言い難く、ひいては施工が難しいものであった。
【0008】
また、上述した水の遮断が必要な箇所以外の箇所、例えば気体の流通を遮断したい箇所もあり、そのような箇所では気体の流通を遮断可能な遮断構造が要求される。
【0009】
また、必要に応じて、例えば通路の下側における水の流通を遮断したい場合があり、そのような場合には、止水板のような遮断部材を用いて遮断構造を構成することも考えられる。
【0010】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、施工を簡単にしながら、遮断部材及びそれを支持する支持体の相対的な位置関係が多少変化しても流体の遮断性能が低下しないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様では、互いに対向するように配置される第1辺部及び第2辺部を有する支持体と、前記支持体の前記第1辺部に対して支持された第1遮断部材と、前記支持体の前記第2辺部に対して支持された第2遮断部材と、前記支持体に取り付けられ、当該支持体と、遮断状態にある前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材との間に介在する支持体側パッキン部と、前記第2遮断部材における前記第1辺部側の縁部から当該第1辺部へ接近する方向に突出して上下方向に延びる先端板部と、前記第1遮断部材における前記第2辺部側の縁部に設けられ、正面視で前記先端板部の少なくとも突出方向先端部分と重複するように位置付けられる重複パッキン部と、前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材が遮断状態にあるときに前記先端板部と前記支持体側パッキン部との間に介在し、前記先端板部と前記支持体側パッキン部とに沿って延びるとともに弾性変形する第1パッキン部と、前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材が遮断状態にあるときに前記先端板部と前記重複パッキン部との間に介在し、前記先端板部と前記重複パッキン部とに沿って延びるとともに弾性変形する第2パッキン部とを備えている。
【0012】
この構成によれば、水や気体等の流体の浸入のおそれが無いときには、第1遮断部材及び第2遮断部材を開状態にしたり、支持体から取り外しておくことで、例えば第1辺部と第2辺部との間を通って移動することが可能になる。一方、流体の浸入のおそれがあるときには、第1遮断部材及び第2遮断部材を開状態から閉状態にしたり、支持体で支持して遮断状態にしておく。
【0013】
第1遮断部材及び第2遮断部材が遮断状態になると、支持体と、第1遮断部材及び第2遮断部材との間に支持体側パッキン部が介在するので、支持体と第1遮断部材及び第2遮断部材の周縁部との間からの流体の浸入が防止される。同時に、第2遮断部材の先端板部と、支持体側パッキン部との間に第1パッキン部が介在し、当該第1パッキン部が弾性変形することによって先端板部及び支持体側パッキン部の両方に密着して先端板部と支持体側パッキン部との間からの流体の浸入が防止される。また、第2遮断部材の先端板部と、重複パッキン部との間に第2パッキン部が介在し、当該第2パッキン部が弾性変形することによって先端板部及び重複パッキン部の両方に密着して先端板部と重複パッキン部との間からの流体の浸入が防止される。
【0014】
ここで、例えば経年や大きな地震によって第1遮断部材、第2遮断部材、支持体が変形ないし変位して各部材の相対的な位置関係が変化した場合を想定する。第2遮断部材の先端板部と支持体側パッキン部との間に介在している第1パッキン部は、先端板部と支持体側パッキン部とに沿って延びているので、上記各部材が変形ないし変位したとしても、第1パッキン部の少なくとも一部を先端板部と支持体側パッキン部との間に介在させることができる。また、第2遮断部材の先端板部と重複パッキン部との間に介在している第2パッキン部は、先端板部と重複パッキン部とに沿って延びているので、上記各部材が変形ないし変位したとしても、第2パッキン部の少なくとも一部を先端板部と重複パッキン部との間に介在させることができる。よって、上記各部材の相対的な位置関係が変化したとしても、流体の遮断性能の低下が抑制される。
【0015】
また、第1パッキン部は、先端板部または支持体側パッキン部に沿って延びるように取り付ければよいので、取付作業の際に求められる精度はそれほど高くなく、また、第2パッキン部についても、先端板部または重複パッキン部に沿って延びるように取り付ければよいので、取付作業の際に求められる精度はそれほど高くない。よって、施工が簡単になる。
【0016】
本開示の第2の態様では、前記支持体は、構造物に固定される枠体であり、前記第1遮断部材は、前記支持体の前記第1辺部に対して回動可能に支持された第1扉であり、前記第2遮断部材は、前記支持体の前記第2辺部に対して回動可能に支持され、開状態から閉状態とする際に前記第1扉よりも先に回動される第2扉である。
【0017】
遮断する際には、第2遮断部材を先に回動させ、その後、第1遮断部材を回動させればよく、遮断状態にすると、上述したように流体の遮断性能が高まる。
【0018】
本開示の第3の態様では、前記第1パッキン部及び前記第2パッキン部は、前記先端板部から前記第1辺部へ接近する方向に突出するとともに、少なくとも前記第1遮断部材及び第2遮断部材が遮断状態にあるときに当該先端板部から突出した部分同士が接しているものである。
【0019】
この構成によれば、第1パッキン部及び第2パッキン部における先端板部から突出した部分同士が接しているので、第1パッキン部と第2パッキン部との間からの流体の浸入も防止される。よって、遮断性能がより一層高まる。
【0020】
本開示の第4の態様では、前記第1パッキン部と前記第2パッキン部とは、別部材で構成されており、前記第1パッキン部における前記先端板部から突出した部分の先端部と、前記第2パッキン部における前記先端板部から突出した部分の先端部とが突出方向にずれている。
【0021】
すなわち、第1パッキン部の先端部と第2パッキン部の先端部とが重なってしまうと両パッキン部を合わせた厚み分の隙間ができやすくなり、その隙間が例えば水道等となってしまうおそれがあるが、本態様のように、第1パッキン部の先端部と第2パッキン部の先端部とが重ならないように配置することで、両パッキン部の先端部に隙間ができにくくなり、遮断性能がより一層高まる。
【0022】
本開示の第5の態様では、前記第1パッキン部は、前記支持体側パッキン部に固定することができる。また、前記第2パッキン部は、前記重複パッキン部に固定することができる。
【0023】
本開示の第6の態様では、前記第1パッキン部と前記第2パッキン部とは、1枚のパッキン構成部材で構成されており、前記パッキン構成部材は、中間部で折り返されて前記先端板部を厚み方向に挟むように形成されるとともに、当該先端板部に固定され、前記パッキン構成部材における前記先端板部の前記支持体側パッキン部側に位置する部分により、前記第1パッキン部が構成され、前記パッキン構成部材における前記先端板部の前記重複パッキン部側に位置する部分により、前記第2パッキン部が構成されている。
【0024】
本開示の第7の態様では、前記第1パッキン部及び前記第2パッキン部は、前記支持体側パッキン部及び前記重複パッキン部よりも軟らかい部材で構成されている。
【0025】
この構成によれば、第1パッキン部及び第2パッキン部が弾性変形し易くなるので、先端板部と支持体側パッキン部との間、先端板部と重複パッキン部との間に隙間が形成されにくくなり、遮断性能がより一層高まる。
【0026】
本開示の第8の態様では、前記第2パッキン部は、前記重複パッキン部から前記第1遮断部材の表面または裏面まで連続して配置される。
【0027】
この構成によれば、重複パッキン部と第1遮断部材の表面または裏面との間が第2パッキン部によって閉塞されるので、重複パッキン部と第1遮断部材の表面または裏面との間に例えば水道等ができなくなり、遮断性能がより一層高まる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、第2遮断部材の先端板部と支持体側パッキン部とに沿って延びる第1パッキン部と、第2遮断部材の先端板部と重複パッキン部とに沿って延びる第2パッキン部とを設けたので、施工を簡単にしながら、遮断部材及び支持体の相対的な位置関係が多少変化しても遮断性能が低下しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施形態に係る遮断構造を備えた止水装置の斜視図である。
【
図2】枠体を第1の空間側(正面側)から見た図である。
【
図3】右止水扉を第2の空間側(背面側)から見た斜視図である。
【
図4】右止水扉を第2の空間側から見た背面図である。
【
図5】左止水扉を第2の空間側から見た斜視図である。
【
図6】左止水扉を第2の空間側から見た背面図である。
【
図7A】
図1におけるVII-VII線断面図である。
【
図7B】
図1におけるVII-VII線に相当する断面図であり、左右の止水扉が閉状態となる直前の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。また、実施形態を構成する各構成要素は、あくまでも例示に過ぎないものであり、当業者が容易に置換可能なものや、実質的に同一なものも本実施形態に含まれる。
【0031】
図1は、本発明の実施形態に係る遮断構造を備えた止水装置1の斜視図である。止水装置1は、例えば、各種ビル、地下道、工場、研究施設、倉庫、家屋等の構造物100に設置される。この
図1では、構造物100の一部のみ仮想線で示しているが、構造物100の形状は特に限定されない。構造物100は、例えば鉄筋コンクリート製の躯体等を備えていてもよい。
【0032】
止水装置1は、第1の空間R1と第2の空間R2とを連通させる開状態と、第1の空間R1と第2の空間R2とを仕切る閉状態(遮断状態)との一方から他方、他方から一方に切り替えられるように構成されている。したがって、止水装置1は、第1の空間R1と第2の空間R2との間に設置される。例えば、第1の空間R1及び第2の空間R2の両方が部屋である場合、第1の空間R1及び第2の空間R2の両方が通路である場合、第1の空間R1が通路、第2の空間R2が部屋である場合、第1の空間R1が部屋、第2の空間R2が通路である場合等があるが、いずれの場合であっても、止水装置1を設置できる。
【0033】
尚、この実施形態の説明では、止水装置1の第1の空間R1側を表側(正面側)とし、止水装置1の第2の空間R2側を裏側(背面側)と定義するが、これは説明の便宜を図るために定義するだけであり、どちら側が表側であってもよい。例えば表裏方向の一方、他方という定義も可能である。また、各図に示すように、止水装置1の左右方向を定義するが、これも説明の便宜を図るために定義するだけであり、どちら側が左側であってもよい。例えば、左右方向の一方、他方という定義も可能である。
【0034】
また、第1の空間R1を屋外側空間(表側の空間)といい、第2の空間R2を屋内側空間(裏側の空間)ということもできる。この場合、第1の空間R1は水が溜まる、または水が流入する可能性のある空間であり、第2の空間R2は、第1の空間R1からの水の浸入を防止したい、または第1の空間R1からの水の浸入を防止する必要がある空間であり、屋外側空間から屋内側空間への水の浸入を止水装置1によって防止できる。水の浸入方向で止水装置1の方向を定義することもでき、この場合、第1の空間R1側が上流側、第2の空間R2側が下流側となる。尚、第2の空間R2側が上流側、第1の空間R1側が下流側となったとしても、止水装置1の止水性能が発揮されないわけではない。
【0035】
上述したように、第1の空間R1を屋外側空間とし、第2の空間R2を屋内側空間としているが、構造物100の構造によっては、これが反対になる場合があってもよい。この場合、止水装置1を表裏反転させて使用することで、第2の空間R2から第1の空間R1への水の浸入を止水装置1によって防止することになる。尚、止水装置1を表裏反転させなかったとしても、止水装置1の止水性能が発揮されないわけではない。
【0036】
また、第1の空間R1と第2の空間R2は概念的なものであってもよく、例えば1つの通路の途中に止水装置1を設置することもでき、この場合、止水装置1を基準として通路の上流側(または下流側)を第1の空間R1とし、通路の下流側(または上流側)を第2の空間R2とすることができる。同様に、例えば1つの部屋の中間位置に止水装置1を設置することもでき、この場合、止水装置1を基準として部屋の一方側を第1の空間R1とし、部屋の他方側を第2の空間R2とすることができる。
【0037】
止水装置1は、枠体(支持体)10、右止水扉(第1遮断部材、第1扉)20、左止水扉(第2遮断部材、第2扉)30、枠状止水部材(支持体側パッキン部)40(
図2に示す)、召し合わせ止水部材(重複パッキン部)50(
図3に示す)、上部第1パッキン部61a(
図2に示す)、下部第1パッキン部61b(
図2に示す)、上部第2パッキン部62a(
図3に示す)、下部第2パッキン部62b(
図3に示す)などを備えているが、これら以外の部材、部品、装置等を備えていてもよい。
【0038】
図2に示すように、枠体10は、右縦辺部(第1辺部)11と、左縦辺部(第2辺部)12と、上横辺部13と、下横辺部14とを備えており、正面視で矩形枠状をなしている。枠体10の上下方向の寸法が左右方向の寸法よりも長くてもよいし、短くてもよい。右縦辺部11、左縦辺部12、上横辺部13及び下横辺部14は、例えば中空の鋼材などのように高い剛性を持つ部材で構成されている。
【0039】
右縦辺部11及び左縦辺部12は、共に上下方向に略平行に延びており、水平方向に互いに対向するように配置される。上横辺部13及び下横辺部14は、共に左右方向に略平行に延びており、鉛直方向に互いに対向するように配置される。すなわち、上横辺部13の右端部は、右縦辺部11の上端部に接続される一方、上横辺部13の左端部は、左縦辺部12の上端部に接続されている。また、下横辺部14の右端部は、右縦辺部11の下端部に接続される一方、下横辺部14の左端部は、左縦辺部12の下端部に接続されている。右縦辺部11、左縦辺部12、上横辺部13及び下横辺部14は、それぞれ構造物100に対して強固に固定されている。構造物100が鉄筋コンクリート製の躯体を備えている場合、その躯体に対して枠体10を固定することができる。
【0040】
図1に示すように、右止水扉20は、枠体10の右側に配置され、当該枠体10の右縦辺部11に対して回動可能に支持され、また、左止水扉30は、枠体10の左側に配置され、当該枠体10の左縦辺部12に対して回動可能に支持されている。開状態から閉状態とする際には、左止水扉30を右止水扉20よりも先に閉状態となるまで回動させ、その後、右止水扉20を閉状態となるまで回動させる。右止水扉20及び左止水扉30は、その裏側の周縁部が枠体10の表側に位置するように配置されている。
【0041】
右止水扉20及び左止水扉30により、枠体10の内側全体を閉塞することができるようになっている。右止水扉20及び左止水扉30の左右方向の寸法は殆ど同じに設定されているので、両止水扉20、30が重なる部分(召し合わせ部)は枠体10の左右方向中央部近傍に位置することになる。尚、右止水扉20及び左止水扉30の左右方向の寸法は同じでなくてもよく、一方が他方より長く設定されていてもよい。この場合、両止水扉20、30の召し合わせ部は、枠体10の左右方向中央部近傍から右側または左側に寄ることになるが、この場合にも本発明を適用することができる。
【0042】
枠体10の右縦辺部11の表側(第1の空間R1側)には、上側支軸11aと下側支軸11bとが上下方向に間隔をあけて設けられている(
図2では省略)。上側支軸11a及び下側支軸11bは、上下方向に延びている。一方、右止水扉20の右端部には、上側支軸11aが挿通される上側軸受部20aと、下側支軸11bが挿通される下側軸受部20bとが設けられている(
図3及び
図4で省略)。右止水扉20は、上側支軸11a及び下側支軸11b周りに回動することで、開状態から閉状態、閉状態から開状態にすることができる。尚、右止水扉20に支軸が設けられ、右縦辺部11に軸受が設けられていてもよい。
【0043】
枠体10の左縦辺部12の表側には、上側支軸12aと下側支軸12bとが上下方向に間隔をあけて設けられている(
図2では省略)。上側支軸12a及び下側支軸12bは、上下方向に延びている。一方、左止水扉30の左端部には、上側支軸12aが挿通される上側軸受部30aと、下側支軸12bが挿通される下側軸受部30bとが設けられている(
図5及び
図6で省略)。左止水扉30は、上側支軸12a及び下側支軸12b周りに回動することで、開状態から閉状態、閉状態から開状態にすることができる。尚、左止水扉30に支軸が設けられ、左縦辺部12に軸受が設けられていてもよい。
【0044】
図1、
図3及び
図4に示すように、右止水扉20の表側及び裏側(第2の空間R2側)には、それぞれ表側ハンドル21a及び裏側ハンドル21bが設けられている。表側ハンドル21aと裏側ハンドル21bは、図示しないが、右止水扉20の内部に収容されたかんぬきを操作するためのものであり、表側ハンドル21aと裏側ハンドル21bを回転させることにより、かんぬきを右止水扉20から上下両方向に突出させ、枠体10に設けられた上側係合部15及び下側係合部16(
図1及び
図2に示す)にそれぞれ係合させることができるようになっている。表側ハンドル21aと裏側ハンドル21bを反対に回転させれば、かんぬきを上側係合部15及び下側係合部16から抜くことができる。
【0045】
図1、
図5及び
図6に示すように、左止水扉30の表側及び裏側にも、右止水扉20と同様に、表側ハンドル31a及び裏側ハンドル31bが設けられており、左止水扉30の内部に収容されたかんぬきの操作が可能になっている。
【0046】
(枠状止水部材)
図2に示すように、枠状止水部材40は、枠体10の表側の面に取り付けられている。枠体10の表側の面と、閉状態にある右止水扉20及び左止水扉30との間に、枠状止水部材40が介在するように配置されている。枠状止水部材40の材料は、弾性材である。枠状止水部材40は、その一部が枠体10の表側の面から膨出ないし突出するように形成されている。これにより、枠状止水部材40が、閉状態にある右止水扉20及び左止水扉30の裏側の面の周縁部に密着して沿う形状になるとともに、枠体10の表側の面にも密着して沿う形状になるので、枠体10の表側の面と、右止水扉20及び左止水扉30の裏側の面の周縁部との間からの水の浸入を防止できる。
【0047】
上記弾性材として、例えばゴムや樹脂、これらの混合物等を挙げることができる。上記弾性材は、気泡が無いソリッドであってもよいし、気泡がある発泡体であってもよいが、発泡体の場合には独立気泡のものが好ましい。上記弾性材は、ソリッドの部分と発泡体とが組み合わされて構成されていてもよい。
【0048】
枠状止水部材40は、右側部41と、左側部42と、上側部43と、下側部44とを有している。右側部41は、枠体10の右縦辺部11に沿って上下方向に延びており、当該右縦辺部11に固定されている。左側部42は、枠体10の左縦辺部12に沿って上下方向に延びており、当該左縦辺部12に固定されている。上側部43は、枠体10の上横辺部13に沿って左右方向に延びており、当該上横辺部13に固定されている。下側部44は、枠体10の下横辺部14に沿って左右方向に延びており、当該下横辺部14に固定されている。そして、上側部43の右端部は、右側部41の上端部に接続される一方、上側部43の左端部は、左側部42の上端部に接続されている。また、下側部44の右端部は、右側部41の下端部に接続される一方、下側部44の左端部は、左側部42の下端部に接続されている。つまり、環状に連続した枠状止水部材40となっている。尚、枠状止水部材40は、中空状であってもよい。
【0049】
(左止水扉の先端板部)
図5及び
図6に示すように、左止水扉30は、先端板部32を有している。先端板部32は、左止水扉30における右側(右縦辺部11側)の縁部から右方向(右縦辺部11へ接近する方向)に突出して上下方向に延びている。
図7Bにも示すように、先端板部32は、左止水扉30の右側の縁部において、裏側部分から突出しており、先端板部32の裏面と、左止水扉30の本体部分の裏面とは同一平面上に位置するように形成されている。尚、左止水扉30における先端板部32以外の部分が本体部分である。
【0050】
図7Aに示すように、右止水扉20及び左止水扉30が閉状態の時に、正面視または背面視で、先端板部32の少なくとも突出方向先端側が右止水扉20の左側部分に重複するように位置付けられる。先端板部32と右止水扉20の左側部分とがこのような位置関係にあるため、左止水扉30を先に回動させて閉状態にする必要がある。また、先端板部32と右止水扉20の左側部分とが重複する位置関係にあることから、止水装置1は右止水扉20と左止水扉30との召し合わせ部を持った構造であると言える。
【0051】
尚、
図5及び
図6にのみ示しているが、左止水扉30の裏面には、補強部材33が固定されている。補強部材33は、先端板部32の裏面から左止水扉30の本体部分の裏面に亘っており、上下方向に延びている。これにより、水圧を受けたときに左止水扉30の変形、特に先端板部32近傍の変形が抑制され、ひいては右止水扉20の変形も抑制される。
【0052】
(召し合わせ止水部材)
図3及び
図4に示すように、右止水扉20には、当該右止水扉20の上端部から下端部まで上下方向に延びる召し合わせ止水部材50が取り付けられている。召し合わせ止水部材50は、枠状止水部材40と同様な弾性材で構成されている。召し合わせ止水部材50は、右止水扉20における左側の縁部(左縦辺部12側の縁部)に設けられている。
【0053】
具体的には、
図7Bに示すように、右止水扉20の裏側の面における左側の縁部には、裏側に向けて開放し、かつ上下方向に直線状に延びる溝20cが形成されている。この溝20cの水平方向の断面は矩形状とされているが、これに限らず、例えば半円状等であってもよい。溝20cの左壁部20dの端部20eは、右止水扉20の裏側の面よりも表側に位置付けられている。これにより、
図7Aに示すように閉状態にするときに、左止水扉30の先端板部32が左壁部20dに当たらないようにすることができる。
【0054】
一方、召し合わせ止水部材50の水平方向の断面は、溝20cの断面と同様に矩形状とされている。この召し合わせ止水部材50を右止水扉20の溝20cに押し込むことで、召し合わせ止水部材50が右止水扉20に固定される。召し合わせ止水部材50の固定に際しては、例えば接着剤や粘着剤等を利用してもよいが、単に圧入によって固定してもよい。右止水扉20に固定された召し合わせ止水部材50は、正面視で先端板部32の少なくとも突出方向先端部分と重複するように位置付けられる。
【0055】
右止水扉20に固定された召し合わせ止水部材50の裏側の面は、右止水扉20の裏面と同一平面上に位置するように配置される。これにより、左止水扉30の先端板部32が召し合わせ止水部材50の裏側の面を表側へ向けて押圧することが可能になる。尚、図示しないが、召し合わせ止水部材50の裏側の面は、右止水扉20の裏面から膨出ないし突出していてもよい。また、召し合わせ止水部材50は、中空状であってもよい。
【0056】
(第1パッキン部及び第2パッキン部)
図2に示すように、上部第1パッキン部61aは、板状の弾性材で構成されており、枠状止水部材40の上側部43の左右方向中央部に固定されている。具体的には
図7Aに示すように、上部第1パッキン部61aは、右止水扉20及び左止水扉30が閉状態にあるときに、左止水扉30の先端板部32と枠状止水部材40の上側部43との間に介在するように配置されている。従って、上部第1パッキン部61aは、右止水扉20及び左止水扉30が閉状態にあるとき、先端板部32の裏面と上側部43の表面とに沿って延びるとともに、先端板部32と上側部43とで厚み方向の圧縮力を受けて弾性変形する。上部第1パッキン部61aが先端板部32と上側部43とで圧縮されることにより、上部第1パッキン部61aと先端板部32とが隙間無く密着するとともに、上部第1パッキン部61aと上側部43とが隙間無く密着する。上部第1パッキン部61aは、右止水扉20及び左止水扉30が閉状態にあるときに、先端板部32から右方向(右縦辺部11へ接近する方向)に突出している。
【0057】
図7Bに示すように、非圧縮時の上部第1パッキン部61aの厚みは、非圧縮時の枠状止水部材40の厚み(表裏方向の寸法)よりも薄く設定されている。これにより、
図7Aに示すように、上部第1パッキン部61aが圧縮された時に、上部第1パッキン部61aを十分に薄くすることができ、上部第1パッキン部61aの左端部や右端部に隙間が形成され難くなる。尚、
図7Aに示すように、閉状態のときの上部第1パッキン部61aの厚みは、非圧縮時の上部第1パッキン部61aの厚みの2/3以下または1/2以下となる。閉状態のときの上部第1パッキン部61aは、先端板部32により押圧された部分が枠状止水部材40の上側部43に埋め込まれた状態になる(
図7A参照)。
【0058】
上部第1パッキン部61aは、枠状止水部材40及び召し合わせ止水部材50よりも軟らかい部材で構成されている。すなわち、上部第1パッキン部61aを構成する弾性材は、例えばゴムや樹脂、これらの混合物等で構成することができ、ソリッドであっても、独立気泡の発泡体であっても、これらの組み合わせであってもよいが、枠状止水部材40及び召し合わせ止水部材50を構成する弾性材に比べて小さな力で大きく弾性変形する。つまり、上部第1パッキン部61aを構成する弾性材の弾性率は、枠状止水部材40及び召し合わせ止水部材50を構成する弾性材の弾性率よりも低く設定されている。尚、上部第1パッキン部61aは、先端板部32の裏面に取り付けられていてもよい。
【0059】
図2に示す下部第1パッキン部61bは、上部第1パッキン部61aと同様に構成されており、枠状止水部材40の下側部44の左右方向中央部に固定されている。
【0060】
図7Bに示すように、上部第2パッキン部62aは、上部第1パッキン部61aとは別部材で構成されており、上部第2パッキン部62aと上部第1パッキン部61aとは異なる部品となっている。上部第2パッキン部62aの材料は、上部第1パッキン部61aと同様な弾性材である。上部第2パッキン部62aは、召し合わせ止水部材50の上部から右止水扉20の裏面(外面)の上部まで連続して配置されている。上部第2パッキン部62aを召し合わせ止水部材50の裏面にのみ固定してもよいし、右止水扉20の裏面にのみ固定してもよいし、召し合わせ止水部材50の裏面と右止水扉20の裏面との両方に固定してもよい。上部第2パッキン部62aは、例えば接着剤等を利用して固定できる。尚、上部第2パッキン部62aは、先端板部32の表側の面に取り付けてもよい。
【0061】
上部第2パッキン部62aは、右止水扉20及び左止水扉30が閉状態にあるときに、左止水扉30の先端板部32と召し合わせ止水部材50との間に介在するように配置されている。従って、上部第2パッキン部62aは、右止水扉20及び左止水扉30が閉状態にあるときには、先端板部32の表面と召し合わせ止水部材50の裏面とに沿って延びるとともに、先端板部32と、召し合わせ止水部材50及び右止水扉20とで厚み方向の圧縮力を受けて弾性変形する。上部第2パッキン部62aが先端板部32と、召し合わせ止水部材50及び右止水扉20とで圧縮されることにより、上部第2パッキン部62aと先端板部32とが隙間無く密着するとともに、上部第2パッキン部62aと、召し合わせ止水部材50及び右止水扉20とが隙間無く密着する。この上部第2パッキン部62aは、右止水扉20及び左止水扉30が閉状態にあるときに、先端板部32から右方向(右縦辺部11へ接近する方向)に突出している。
【0062】
右止水扉20及び左止水扉30が閉状態にあるとき、上部第1パッキン部61aにおける先端板部32から右側へ突出した部分と、上部第2パッキン部62aにおける先端板部32から右側へ突出した部分とが互いに接している。これにより、上部第1パッキン部61aと上部第2パッキン部62aとの間からの水の浸入が防止されるので、止水性能がより一層高まる。
【0063】
図7Bに示すように、非圧縮時の上部第2パッキン部62aの厚みは、非圧縮時の召し合わせ止水部材50の厚み(表裏方向の寸法)よりも薄く設定されている。これにより、
図7Aに示すように、上部第2パッキン部62aが圧縮された時に、上部第2パッキン部62aを十分に薄くすることができ、上部第2パッキン部62aの左端部や右端部に隙間が形成され難くなる。
【0064】
上部第2パッキン部62aの左右方向の寸法は、召し合わせ止水部材50の左右方向の寸法よりも長く設定されている。これにより、上部第2パッキン部62aと召し合わせ止水部材50との接触面積を広く確保することができる。
【0065】
尚、
図7Aに示すように、閉状態のときの上部第2パッキン部62aの厚みは、非圧縮時の上部第2パッキン部62aの厚みの2/3以下または1/2以下となる。閉状態のときの上部第2パッキン部62aは、先端板部32により押圧された部分が召し合わせ止水部材50の上部に埋め込まれた状態になる(
図7A参照)。
【0066】
また、閉状態のとき、上部第2パッキン部62aの先端板部32よりも右側部分は、上部第1パッキン部61aの先端板部32よりも右側部分と接触して両者が圧縮変形する。これにより、上部第2パッキン部62aと上部第1パッキン部61aとを密着させることができるので、止水性が向上する。
【0067】
また、上部第1パッキン部61aにおける先端板部32から突出した部分の先端部と、上部第2パッキン部62aにおける先端板部32から突出した部分の先端部とが突出方向にずれている。すなわち、上部第2パッキン部62aの右端部は、上部第1パッキン部61aの右端部よりも右に位置付けられている。仮に、上部第1パッキン部61aの右端部と、上部第2パッキン部62aの右端部とが重なってしまうと両パッキン部61a、62aを合わせた厚み分の隙間ができやすくなり、その隙間が水道となってしまうおそれがあるが、本実施形態のように、上部第1パッキン部61aの右端部と、上部第2パッキン部62aの右端部とが重ならないように配置することで、両パッキン部61a、62aの右端部に隙間ができにくくなり、止水性能がより一層高まる。尚、上部第2パッキン部62aの右端部が、上部第1パッキン部61aの右端部よりも左に位置付けられていてもよい。また、上部第1パッキン部61a及び上部第2パッキン部62aの厚みが薄い場合には、上部第1パッキン部61aの右端部と、上部第2パッキン部62aの右端部とが重なるように配置されていてもよい。
【0068】
図3に示す下部第2パッキン部62bは、上部第2パッキン部62aと同様に構成されており、召し合わせ止水部材50の下部から右止水扉20の裏面の下部まで連続して設けられている。尚、上部第2パッキン部62aと、下部第2パッキン部62bとの上下方向の間隔は、上部第1パッキン部61aと、下部第1パッキン部61bとの上下方向の間隔の同じに設定されている。
【0069】
(実施形態の作用効果)
水の浸入のおそれが無いときには、止水装置1の右止水扉20及び左止水扉30を開状態にしておくことで、例えば枠体10内を通って第1の空間R1から第2の空間R2(またはその反対)に移動することが可能になる。一方、水の浸入のおそれがあるときには、右止水扉20及び左止水扉30を開状態から閉状態にする。このとき、左止水扉30を先に回動させ、その後、右止水扉20を回動させる。
【0070】
右止水扉20及び左止水扉30が閉状態になると、枠体10と、右止水扉20及び左止水扉30との間に枠状止水部材40が介在するので、枠体10と、右止水扉20及び左止水扉30の周縁部との間からの水の浸入が防止される。同時に、左止水扉30の先端板部32と、枠状止水部材40の上側部43との間に上部第1パッキン部61aが介在し、当該上部第1パッキン部61aが弾性変形することによって先端板部32及び枠状止水部材40の上側部43の両方に密着して先端板部32と枠状止水部材40の上側部43との間からの水の浸入が防止される。また、左止水扉30の先端板部32の上部と、召し合わせ止水部材50の上部との間に上部第2パッキン部62aが介在し、当該上部第2パッキン部62aが弾性変形することによって先端板部32の上部及び召し合わせ止水部材50の上部の両方に密着して先端板部32の上部と召し合わせ止水部材50の上部との間からの水の浸入が防止される。下部については、下部第1パッキン部61b及び下部第2パッキン部62bによって水の浸入が防止される。
【0071】
例えば経年や大きな地震によって枠体10、右止水扉20、左止水扉30が変形ないし変位して各部材10、20、30の相対的な位置関係が変化することが考えられる。この場合、左止水扉30の先端板部32と枠状止水部材40の上側部43との間に介在している上部第1パッキン部61aは、先端板部32と枠状止水部材40の上側部43とに沿って延びているので、上記各部材10、20、30が変形ないし変位したとしても、上部第1パッキン部61aの少なくとも一部を先端板部32と枠状止水部材40の上側部43との間に介在させることができる。下部第1パッキン部61bについても同様である。
【0072】
また、左止水扉30の先端板部32と召し合わせ止水部材50との間に介在している上部第2パッキン部62aは、先端板部32と召し合わせ止水部材50とに沿って延びているので、上記各部材10、20、30が変形ないし変位したとしても、上部第2パッキン部62aの少なくとも一部を先端板部32と召し合わせ止水部材50との間に介在させることができる。よって、上記各部材10、20、30の相対的な位置関係が変化したとしても、止水性能の低下が抑制される。下部第2パッキン部62bについても同様である。
【0073】
また、上部第1パッキン部61a、下部第1パッキン部61bは、先端板部32または枠状止水部材40に沿って延びるように取り付ければよいので、取付作業の際に求められる精度はそれほど高くない。また、上部第2パッキン部62a、下部第2パッキン部62bについても、先端板部32または召し合わせ止水部材50に沿って延びるように取り付ければよいので、取付作業の際に求められる精度はそれほど高くない。よって、施工が簡単になる。
【0074】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0075】
例えば、
図8A及び
図8Bに示す変形例のように、1枚の板状のパッキン構成部材63で第1パッキン部63aと第2パッキン部63bとを構成してもよい。すなわち、パッキン構成部材63は、幅方向の中間部または長手方向の中間部で折り返されて、先端板部32を厚み方向に挟むように形成されるとともに、当該先端板部32に対して接着剤や粘着剤により固定されている。パッキン構成部材63における枠状止水部材40側に位置する部分により、第1パッキン部63aが構成されている。また、パッキン構成部材63における召し合わせ止水部材50側に位置する部分により、第2パッキン部63bが構成されている。この変形例の場合も、第1パッキン部63a及び第2パッキン部63bが先端板部32よりも右方向へ突出しており、突出した部分同士が接している。また、
図8Aに示すように、右止水扉20及び左止水扉30が閉状態になると、第2パッキン部63bは、召し合わせ止水部材50から右止水扉20の裏面まで連続して配置されることになる。先端板部32の下部にも同様にパッキン構成部材63を設けることができる。1枚のパッキン構成部材63を使用することで、第1パッキン部63aの右端部と第2パッキン部63bの右端部との間に隙間ができることはなく、止水性がより一層向上する。
【0076】
また、本発明に係る遮断構造は、止水装置1以外にも適用することができ、例えば気体の流通を遮断する場合に適用することもできる。この場合、気体が流通する通路等に上記遮断構造を設置すればよい。
【0077】
また、上記実施形態では、右止水扉20、左止水扉30が遮断部材である場合について説明したが、止水扉ではなく、気密性を持った扉であってもよい。また、扉以外にも、例えば第1止水板及び第2止水板がそれぞれ第1遮断部材及び第2遮断部材であってもよい。第1止水板及び第2止水板は、例えば通路の下側における水の流通を遮断するための部材であり、第1止水板及び第2止水板を右縦辺部11及び左縦辺部12に対して支持することで、通路の下側における水の流通を遮断できる。この場合、枠体10を用いることなく、右縦辺部11、左縦辺部12及び下横辺部14を備えた支持体を用いればよい。第1止水板及び第2止水板の場合、召し合わせ部の代わりに、流体の流通方向に重複する重複部が形成されることになる。通路の下側のみを遮断する場合には、枠状止水部材40を用いなくてもよく、右縦辺部11、左縦辺部12及び下横辺部14に支持体側パッキン部を設ければよい。尚、止水板を用いる場合に枠体10を用いてもよく、支持体の構造は特に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上説明したように、本発明に係る遮断構造は、例えば各種構造物等に設けることができる。
【符号の説明】
【0079】
1 止水装置
10 枠体(支持体)
20 右止水扉(第1遮断部材、第1扉)
30 左止水扉(第2遮断部材、第2扉)
40 枠状止水部材(支持体側パッキン部)
50 召し合わせ止水部材(重複パッキン部)
61a、61b 第1パッキン部
62a、62b 第2パッキン部
63 パッキン構成部材
63a 第1パッキン部
63b 第2パッキン部
100 構造物