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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20241111BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20241111BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20241111BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20241111BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20241111BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
H02J9/06 120
H02J7/34 J
H02J3/32
H02J3/38 110
H02M7/48 E
H02M7/12 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021180989
(22)【出願日】2021-11-05
(65)【公開番号】P2023069246
(43)【公開日】2023-05-18
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 智大
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-182316(JP,A)
【文献】特開2020-018106(JP,A)
【文献】特開2004-023860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/06
H02J 7/34
H02J 3/32
H02J 3/38
H02M 7/48
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方端子が交流電源から供給される交流電圧を受け、他方端子が負荷に接続され、前記交流電圧が正常である場合にはオンされ、前記交流電圧が正常でない場合にはオフされるスイッチと、
前記スイッチの他方端子と電力貯蔵装置との間に接続される電力変換器とを備え、
前記電力変換器は、互いに並列接続されたN台の電力変換ユニットを含み、
前記交流電圧が正常である場合には、前記N台の電力変換ユニットのうちのM台の電力変換ユニットのみが前記交流電源から前記スイッチを介して供給される交流電力を直流電力に変換して前記電力貯蔵装置に蓄え、
前記交流電圧が正常でない場合には、前記N台の電力変換ユニットは前記電力貯蔵装置の直流電力を交流電力に変換して前記負荷に供給し、
Nは2以上の自然数であり、MはNよりも小さな自然数である、電源装置。
【請求項2】
前記N台の電力変換ユニットのうちの前記M台の電力変換ユニットを選択する選択部をさらに備え、
前記交流電圧が正常である場合には、前記選択部によって選択された前記M台の電力変換ユニットが運転される、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記電力変換器と前記電力貯蔵装置との間に流れる電流を検出する電流検出器と、
前記電流検出器の検出結果に基づいて、前記電力貯蔵装置を充電するために必要な電力変換ユニットの台数Mを求める演算部とをさらに備え、
前記選択部は、前記演算部の演算結果に基づいて、前記N台の電力変換ユニットのうちの前記M台の電力変換ユニットを選択する、請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記電力貯蔵装置の充電状態を検出する充電状態検出器と、
前記充電状態検出器の検出結果に基づいて、前記電力貯蔵装置を充電するために必要な電力変換ユニットの台数Mを求める演算部とをさらに備え、
前記選択部は、前記演算部の演算結果に基づいて、前記N台の電力変換ユニットのうちの前記M台の電力変換ユニットを選択する、請求項2に記載の電源装置。
【請求項5】
前記交流電圧が正常であり、かつ前記電力貯蔵装置が満充電状態である場合にはM=1とされ、
前記選択部は、前記N台の電力変換ユニットを第1の時間ずつ、1台ずつ順次選択する、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項6】
前記選択部は、前記N台の電力変換ユニットのうちの1台の電力変換ユニットを充電用の電力変換ユニットとして選択している前記第1の時間内に、残りの(N-1)台の電力変換ユニットを第2の時間ずつ、1台ずつテスト対象の電力変換ユニットとして順次選択し、
それぞれ前記N台の電力変換ユニットに対応して設けられ、各々が対応する電力変換ユニットを制御するN個の制御回路をさらに備え、
前記N個の制御回路のうちの第1の制御回路は、前記充電用の電力変換ユニットを制御して前記電力貯蔵装置を充電させ、
前記N個の制御回路のうちの第2の制御回路は、前記テスト対象の電力変換ユニットが正常に動作するか否かをテストする、請求項5に記載の電源装置。
【請求項7】
前記第2の制御回路は、前記テスト対象の電力変換ユニットを制御してテスト用の無効電流を出力させ、
前記第1の制御回路は、前記充電用の電力変換ユニットを制御して、前記電力貯蔵装置を充電させるとともに前記テスト用の無効電流を吸収させ、
前記第2の制御回路は、前記テスト用の無効電流を検出し、その検出結果に基づいて、前記テスト対象の電力変換ユニットが正常に動作するか否かを判別する、請求項6に記載の電源装置。
【請求項8】
前記N台の電力変換ユニットの各々は、
一方端子が前記交流電源から前記スイッチを介して供給される交流電力を受けるリアクトルと、
前記リアクトルの他方端子と前記電力貯蔵装置との間に接続される双方向コンバータとを含む、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項9】
前記電源装置は瞬低補償装置である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電源装置に関し、特に、交流電源と負荷の間に接続されるスイッチと、負荷と電力貯蔵装置との間に接続される電力変換器とを備えた電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特開平9-182316号公報(特許文献1)には、交流電源と負荷の間に接続されるスイッチと、負荷と電力貯蔵装置との間に接続される電力変換器とを備えた電源装置が開示されている。
【0003】
交流電源から供給される交流電圧が正常である場合には、スイッチがオンされ、交流電源からの交流電力がスイッチを介して負荷に供給されるとともに、電力変換器によって直流電力に変換されて電力貯蔵装置に蓄えられる。
【0004】
交流電源から供給される交流電圧が正常でない場合には、スイッチがオフされ、電力貯蔵装置の直流電力が電力変換器によって交流電力に変換されて負荷に供給される。したがって、この電源装置によれば、交流電源からの交流電圧が正常でない場合でも、電力貯蔵装置に直流電力が蓄えられている期間は、負荷の運転を継続することができる。
【0005】
また、この電源装置では、交流電源からの交流電圧が正常である場合における電力変換器のスイッチング周波数を、交流電源からの交流電圧が正常でない場合における電力変換器のスイッチング周波数よりも低く設定することにより、電力変換器におけるスイッチング損失を低減させ、装置の効率を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-182316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の電源装置では、電力変換器のスイッチング周波数を下げることにより、電力変換器に含まれるリアクトルの鉄損が増大するため、装置の効率を十分に高くすることができなかった。
【0008】
それゆえに、本開示の主たる目的は、高効率の電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る電源装置は、一方端子が交流電源から供給される交流電圧を受け、他方端子が負荷に接続され、交流電圧が正常である場合にはオンされ、交流電圧が正常でない場合にはオフされるスイッチと、スイッチの他方端子と電力貯蔵装置との間に接続される電力変換器とを備えたものである。電力変換器は、互いに並列接続されたN台の電力変換ユニットを含む。交流電圧が正常である場合には、N台の電力変換ユニットのうちのM台の電力変換ユニットのみが交流電源からスイッチを介して供給される交流電力を直流電力に変換して電力貯蔵装置に蓄える。交流電圧が正常でない場合には、N台の電力変換ユニットは電力貯蔵装置の直流電力を交流電力に変換して負荷に供給する。Nは2以上の自然数であり、MはNよりも小さな自然数である。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る電源装置では、電力変換器を並列接続されたN台の電力変換ユニットに分割し、交流電圧が正常である場合には、N台のうちのM台の電力変換ユニットのみを運転し、交流電圧が正常でない場合には、N台の電力変換ユニットを運転する。したがって、(N-M)台の電力変換ユニットのスイッチング損失を低減し、効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の基礎となる瞬低補償装置の構成を示す回路ブロック図である。
図2】実施の形態1に従う瞬低補償装置の構成を示す回路ブロック図である。
図3図2に示す電力変換器の構成を示す回路ブロック図である。
図4図2に示す制御装置の要部を示すブロック図である。
図5】実施の形態1の変更例を示す回路ブロック図である。
図6】実施の形態2に従う瞬低補償装置の要部を示す回路ブロック図である。
図7】実施の形態3に従う瞬低補償装置の要部を示す回路ブロック図である。
図8図7に示す選択部の動作を例示するタイムチャートである。
図9】実施の形態4に従う瞬低補償装置の要部を示す回路ブロック図である。
図10図9に示す選択部の動作を例示するタイムチャートである。
図11図9に示す制御回路の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の理解を容易にするため、実施の形態について説明する前に、まず本開示の基礎となる瞬低補償装置について説明する。図1は、本開示の基礎となる瞬低補償装置の構成を示す回路ブロック図である。
【0013】
図1において、この瞬低補償装置は、入力端子T1、出力端子T2、直流端子T3、VCB(Vacuum Circuit Breaker;真空遮断器)1,5,6,21、高速スイッチ2、電力変換器7、変圧器20、操作部22、および制御装置23を備える。
【0014】
入力端子T1は、商用交流電源71から供給される商用周波数の交流電圧VIを受ける。交流電圧VIの瞬時値は、制御装置23によって検出される。制御装置23は、交流電圧VIが下限値よりも低下した場合に、瞬低(瞬時電圧低下)が発生したと判別する。
【0015】
出力端子T2は、負荷72に接続される。負荷72は、出力端子T2から供給される交流電圧VOによって駆動される。交流電圧VOの瞬時値は、制御装置23によって検出される。
【0016】
直流端子T3は、電力貯蔵装置73に接続される。電力貯蔵装置73は、直流電力を蓄える。電力貯蔵装置73は、バッテリでもよいし、コンデンサでも構わない。直流端子T3の直流電圧VDCは、制御装置23によって検出される。
【0017】
VCB1、高速スイッチ2、およびVCB5は、入力端子T1と出力端子T2の間に直列接続される。VCB1,5は、瞬低補償装置の通常運転時にオンされ、たとえば高速スイッチ2のメンテナンス時、バイパス給電時にオフされる。
【0018】
高速スイッチ2は、直列接続された半導体スイッチ3および機械スイッチ4を含む。半導体スイッチ3および機械スイッチ4の各々は、制御装置23によって制御され、交流電圧VIが正常である場合にオンされ、交流電圧VIが正常でない場合(瞬低時)にオフされる。
【0019】
半導体スイッチ3は、機械スイッチ4と比べて、動作速度が速く、耐圧が低いという特性を有する。機械スイッチ4は、半導体スイッチ3と比べて、動作速度が遅く、耐圧が高いという特性を有する。半導体スイッチ3および機械スイッチ4を直列接続することにより、瞬低発生時に瞬時にオフし、高い耐圧を有する高速スイッチ2を構成している。
【0020】
VCB6は、入力端子T1と出力端子T2の間に接続される。VCB6は、瞬低補償装置の通常運転時にオフされ、たとえばバイパス給電時にオンされる。VCB6がオンされると、商用交流電源71からVCB6を介して負荷72に交流電圧VIが供給され、負荷72が運転される。
【0021】
電力変換器7は、双方向コンバータ8、ヒューズ9、電流検出器10、リアクトル11、およびコンデンサ12を含む。双方向コンバータ8の直流端子8aは直流端子T3に接続され、その交流端子8bはヒューズ9およびリアクトル11を介して変圧器20の1次巻線20aに接続される。変圧器20の2次巻線20bは、VCB21を介して、高速スイッチ2およびVCB5間のノードN1に接続されている。変圧器20の1次巻線20aに現れる交流電圧VACの瞬時値は、制御装置23によって検出される。
【0022】
双方向コンバータ8は、複数のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)および複数のダイオードを含む周知のものであり、制御装置23により、たとえばPWM(Pulse Width Modulation)制御される。双方向コンバータ8に含まれる各IGBTを所定のスイッチング周波数でオンおよびオフさせることにより、交流電力を直流電力に変換したり、逆に、直流電力を交流電力に変換することが可能となっている。
【0023】
商用交流電源71から供給される交流電圧VIが正常である場合には、双方向コンバータ8は、商用交流電源71からVCB1、高速スイッチ2、VCB21、変圧器20、リアクトル11、およびヒューズ9を介して供給される交流電力を直流電力に変換して電力貯蔵装置73に蓄える。
【0024】
また、交流電圧VIが正常でない場合には、双方向コンバータ8は、電力貯蔵装置73の直流電力を交流電力に変換して交流端子8bに出力する。この交流電力は、ヒューズ9、リアクトル11、変圧器20、およびVCB21,5を介して負荷72に供給される。
【0025】
ヒューズ9は、双方向コンバータ8などを過電流から保護する。電流検出器10は、リアクトル11に流れる電流ILを検出し、その検出値を示す信号ILfを制御装置23に与える。
【0026】
リアクトル11およびコンデンサ12は、交流フィルタを構成する。この交流フィルタは、低域通過フィルタであり、商用周波数の電流を通過させ、双方向コンバータ8で発生するスイッチング周波数の電流を遮断する。換言すると、交流フィルタは、双方向コンバータ8の出力電圧を正弦波状の交流電圧VACに変換する。
【0027】
変圧器20は、ノードN1と電力変換器7との間で交流電力を授受する。VCB21は、瞬低補償装置の通常運転時にオンされ、たとえば高速スイッチ2、電力変換器7などのメンテナンス時にオフされる。
【0028】
操作部22は、複数のボタン、複数のスイッチ、画像表示部などを含む。瞬低補償装置の使用者は、操作部22を操作することにより、瞬低補償装置の起動、停止、自動運転、手動運転等を指示したり、種々の条件設定などを行なうことが可能となっている。操作部22は、使用者の指示などを示す信号を制御装置23に与える。
【0029】
制御装置23は、操作部22からの信号、交流電圧VI,VO,VAC、直流電圧VDC、電流検出器10の出力信号ILfなどに基づいて、瞬低補償装置全体を制御する。
【0030】
商用交流電源71から交流される交流電圧VIが正常である場合には、制御装置23は、交流電圧VAC、直流電圧VDC、および電流検出器10の出力信号ILfに基づいて、直流端子T3の直流電圧VDCが所定の参照直流電圧VDCrになるように双方向コンバータ8を制御する。
【0031】
商用交流電源71から交流される交流電圧VIが正常でない場合には、制御装置23は、出力端子T2の交流電圧VOおよび電流検出器10の出力信号ILfに基づいて、その交流電圧VOが所定の参照交流電圧VOrになるように双方向コンバータ8を制御する。
【0032】
次に、この瞬低補償装置の通常運転時の動作について説明する。通常運転時には、VCB1,5,21はオンされ、VCB6はオフされている。商用交流電源71から供給される交流電圧VIが正常である場合には、高速スイッチ2がオンされ、商用交流電源71からVCB1、高速スイッチ2、およびVCB5を介して負荷72に交流電力が供給され、負荷72が運転される。
【0033】
また、商用交流電源71からVCB1、高速スイッチ2、VCB21、および変圧器20を介して電力変換器7に交流電力が供給され、その交流電力が電力変換器7によって直流電力に変換されて電力貯蔵装置73に蓄えられる。このとき、直流端子T3の直流電圧VDCは参照直流電圧VDCrに維持される。
【0034】
たとえば、落雷が発生して交流電圧VIの瞬時電圧低下が発生した場合には、制御装置23によって商用交流電源71から供給される交流電圧VIが正常でないと判別され、高速スイッチ2が瞬時にオフされ、商用交流電源71と負荷72が電気的に切り離される。
【0035】
同時に、電力貯蔵装置73の直流電力が電力変換器7によって交流電力に変換され、その交流電力が変圧器20およびVCB21,5を介して負荷72に供給され、負荷72の運転が継続される。このとき、出力端子T2の交流電圧VOは、商用周波数の参照交流電圧VOrに維持される。
【0036】
交流電圧VIが正常な電圧に復帰すると、再び高速スイッチ2がオンされ、商用交流電源71からVCB1、高速スイッチ2、およびVCB5を介して負荷72に交流電力が供給され、負荷72が運転される。また、商用交流電源71からの交流電力が電力変換器7によって直流電力に変換されて電力貯蔵装置73に蓄えられる。
【0037】
したがって、この瞬低補償装置によれば、瞬時電圧低下が発生した場合でも負荷72の運転を継続することができる。
【0038】
なお、商用交流電源71から供給される交流電圧VIが比較的短時間(たとえば1秒未満)低下する現象は、瞬時電圧低下と呼ばれる。また、交流電圧VIが比較的長時間(たとえば1秒以上)低下する現象は、停電と呼ばれる。瞬時電圧低下時に負荷72に交流電力を供給する装置は瞬低補償装置と呼ばれ、停電時に負荷72に交流電力を供給する装置は無停電電源装置と呼ばれる。瞬低補償装置と無停電電源装置は同様の構成であるので、この明細書では、両者を総称して電源装置と呼ぶ場合がある。
【0039】
次に、この瞬低補償装置の問題点について説明する。瞬時電圧低下が発生するのは1年間で数十回程度であり、瞬時電圧低下が発生していない大部分の時間において、電力変換器7は電力貯蔵装置73を満充電状態に維持している。電力貯蔵装置73が満充電状態である場合には、電力変換器7はほとんど電流を流していないが、双方向コンバータ8においてスイッチング損失が発生する。このスイッチング損失により、瞬低補償装置の給電効率が低下する。
【0040】
この対策として、上記特許文献1で開示されているように、交流入力電圧VIが正常である場合に、双方向コンバータ8のスイッチング周波数を下げることにより、双方向コンバータ8のスイッチング損失を低減させる方法がある。
【0041】
しかし、この方法に従って、双方向コンバータ8のスイッチング周波数を下げると、リアクトル11に流れるリプル電流が増大し、リアクトル11の鉄損が増大し、その鉄損により給電効率が低下するという問題がある。リアクトル11を大型化すれば、リアクトル11の鉄損を低減できるが、装置寸法が大型化してしまう。また、スイッチング周波数を下げると、騒音が増大する恐れがある。本願発明は、これらの問題点の解決を図るものである。
【0042】
[実施の形態1]
図2は、この発明の実施の形態1に従う瞬低補償装置の構成を示す回路ブロック図であって、図1と対比される図である。図2を参照して、この瞬低補償装置が図1の瞬低補償装置と異なる点は、電力変換器7が電力変換器30で置換され、電流検出器36が追加され、制御装置23が制御装置37で置換されている点である。
【0043】
電力変換器30は、直流端子T3に接続された直流端子30aと、変圧器20の1次巻線20aに接続された交流端子30bと、端子30a,30b間に互いに並列接続されたN個の電力変換ユニットU1~UNを含む。ここで、Nは2以上の自然数であり、図2ではN=10の場合が示されている。
【0044】
図3は、電力変換器30の構成を示す回路ブロック図である。電力変換ユニットU1は、双方向コンバータ31、ヒューズ32、電流検出器33、リアクトル34、およびコンデンサ35を含む。双方向コンバータ31の直流端子31aは直流端子30aに接続され、その交流端子31bはヒューズ32およびリアクトル34を介して交流端子30bに接続されている。
【0045】
双方向コンバータ31は、双方向コンバータ8(図1)と同じ構成である。ただし、双方向コンバータ31の電流駆動能力およびサイズは、双方向コンバータ8のN分の1(ここでは10分の1)である。
【0046】
また、ヒューズ32、電流検出器33、リアクトル34、およびコンデンサ35は、それぞれヒューズ9、電流検出器10、リアクトル11、およびコンデンサ12(図1)と同じ目的で設けられているので、その説明は繰り返さない。
【0047】
ただし、ヒューズ32、電流検出器33、リアクトル34、およびコンデンサ35の容量およびサイズは、それぞれヒューズ9、電流検出器10、リアクトル11、およびコンデンサ12のN分の1(ここでは10分の1)である。
【0048】
電力変換ユニットU2~U10の各々は、電力変換ユニットU1と同じ構成である。つまり、電力変換器20は、電力変換器7(図1)をN個(ここでは10個)の電力変換ユニットU1~U10に分割したものである。
【0049】
ただし、この電力変換ユニットU1~U10の双方向コンバータ31は、それぞれ制御装置37からの制御信号CNT1~CNT10によって制御され、個別に制御可能となっている。また、電力変換ユニットU1~U10の電流検出器33は、それぞれ電力変換ユニットU1~U10のリアクトル34に流れる電流IL1~IL10を検出し、検出値を示す信号IL1f~IL10fを出力する。
【0050】
再び図2を参照して、電流検出器36は、電力変換器30から電力貯蔵装置73に流れる直流電流IDCを検出し、その検出値を示す信号IDCfを制御装置37に与える。直流電流IDCは、電力貯蔵装置73の充電状態に応じて変化し、電力貯蔵装置73が満充電状態に近付くに従って減少し、満充電状態では一定値となる。電力貯蔵装置73が満充電状態である場合の直流電流IDCは、電力貯蔵装置73のリーク電流である。
【0051】
直流電流IDCが減少した場合には、全ての電力変換ユニットU1~U10を運転する必要はない。そこで、本実施の形態1では、商用交流電源71から供給される交流電圧VIが正常である場合には、直流電流IDCに応じた数Mの電力変換ユニットUだけを運転することとし、電力変換器30のスイッチング損失を低減化する。ここで、MはNよりも小さな自然数である。
【0052】
交流入力電圧VIが正常である場合には、制御装置37は、電流検出器36の出力信号IDCfによって示される直流電流IDCに応じた数Mの電力変換ユニットUのみを運転する。本明細書では、電力変換ユニットU1~U10を総称して代表的に電力変換ユニットUと呼ぶ場合がある。交流入力電圧VIが正常でない場合(瞬低時)には、制御装置37は、全ての電力変換ユニットU1~U10を運転し、負荷72に交流電力を供給する。
【0053】
図4は、制御装置37の要部を示すブロック図である。図4において、制御装置37は、瞬低検出部41、演算部42、選択部43、および制御回路A1~A10を含む。瞬低検出部41は、商用交流電源71(図2)から供給される交流電圧VIが正常であるか否かを判別し、判別結果を示す瞬低検出信号DLを選択部43および制御回路A1~A10に与える。
【0054】
たとえば瞬低検出部41は、交流電圧VIが許容範囲内である場合には、交流電圧VIは正常であると判別し、交流電圧VIが許容範囲の下限値よりも低下した場合には、交流電圧VIは正常でないと判別する。交流電圧VIが正常である場合には、瞬低検出信号DLは非活性化レベルの「H」レベルにされ、交流電圧VIが正常でない場合には瞬低検出信号DLは活性化レベルの「L」レベルにされる。
【0055】
演算部42は、電流検出器36(図2)の出力信号IDCfによって示される直流電流IDCに基づいて、直流電流IDCを供給するために必要な電力変換ユニットUの数Mを求め、その数Mを示す信号φMを選択部43および制御回路A1~A10に与える。
【0056】
ここで、瞬低補償装置の起動時における数Mは、電力貯蔵装置73の容量、充電に許容される時間、1台の電力変換ユニットUの充電動作時における定格電流Idなどに基づいて、Nよりも小さな最大値Mmaxに予め設定されている。電力貯蔵装置73が充電されるに従って、Mは減少する。たとえば、Mmax=4であり、Mは1以上4以下の自然数となる。
【0057】
選択部43は、瞬低検出信号DLおよび演算部42の出力信号φMに従って、N個(ここでは10個)の選択信号SE1~SE10を生成する。瞬低検出信号DLが非活性化レベルの「H」レベルである場合(すなわち、交流入力電圧VIが正常である場合)には、10個の選択信号SE1~SE10のうちの、演算部42の出力信号φMによって示される数Mの選択信号SEが活性化レベルの「H」レベルにされ、残りの(10-M)個の選択信号SEは非活性化レベルの「L」レベルにされる。なお、本明細書では、選択信号SE~SE10を総称して代表的に選択信号SEと呼ぶ場合がある。
【0058】
たとえば、M=1である場合には、選択信号SE1が「H」レベルにされ、選択信号SE2~SE10は「L」レベルにされる。M=4である場合には、選択信号SE1~SE4が「H」レベルにされ、選択信号SE5~SE10は「L」レベルにされる。
【0059】
また、瞬低検出信号DLが活性化レベルの「L」レベルである場合(すなわち、交流入力電圧VIが正常でない場合)には、全ての選択信号SE1~SE10が活性化レベルの「H」レベルにされる。
【0060】
選択信号SE1~SE10は、それぞれ制御回路A1~A10に与えられる。選択信号SE1~SE10が活性化レベルの「H」レベルにされた場合には、制御回路A1~A10が活性化される。選択信号SE1~SE10が非活性化レベルの「L」レベルにされた場合には、制御回路A1~A10は非活性化される。
【0061】
制御回路A1~A10は、ともに、瞬低検出信号DL、信号φM、直流電圧VDC、および交流電圧VAC,VOを受ける。また、制御回路A1~A10は、それぞれ電力変換ユニットU1~U10に対応して設けられており、それぞれ電力変換ユニットU1~U10の電流検出器33の出力信号IL1f~IL10fを受け、それぞれ電力変換ユニットU1~U10の双方向コンバータ31を制御するための制御信号CNT1~CNT10を生成する。
【0062】
制御回路A1は、瞬低検出信号DLが非活性化レベルの「H」レベルであり、かつ対応する選択信号SE1が活性化レベルの「H」レベルである場合には、信号φM、直流電圧VDC、交流電圧VAC、および信号IL1fに基づいて、制御信号CNT1を生成し、電力変換ユニットU1の双方向コンバータ31を運転して電力貯蔵装置73を充電する。
【0063】
このとき制御回路A1は、直流電圧VDCが参照直流電圧VDCrになるように、双方向コンバータ31を制御する。また、電力貯蔵装置73の充電は、信号φMによって示される台数Mの電力変換ユニットUによって分担される。
【0064】
また、制御回路A1は、瞬低検出信号DLが非活性化レベルの「H」レベルであり、かつ対応する選択信号SE1が非活性化レベルの「L」レベルである場合には、制御信号CNT1の生成を停止し、電力変換ユニットU1の双方向コンバータ31の運転を停止させ、双方向コンバータ31のスイッチング損失を削減する。
【0065】
また、制御回路A1は、瞬低検出信号DLが活性化レベルの「L」レベルである場合には、直流電圧VDC、交流電圧VO、および信号IL1fに基づいて、制御信号CNT1を生成し、電力変換ユニットU1の双方向コンバータ31を運転して電力貯蔵装置73を放電させ、負荷72に交流電力を供給させる。
【0066】
このとき制御回路A1は、交流電圧VOが参照交流電圧VOrになるように双方向コンバータ31を制御する。なお、このとき、電力貯蔵装置73の放電は、全ての電力変換ユニットU1~U10によって分担される。
【0067】
他の制御回路A2~A10の動作は、制御回路A1の動作と同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0068】
次に、この瞬低補償装置の通常運転時の動作について説明する。通常運転時には、VCB1,5,21(図2)はオンされ、VCB6はオフされている。商用交流電源71から供給される交流電圧VIが正常である場合には、瞬低検出部41(図4)によって瞬低検出信号DLが非活性化レベルの「H」レベルにされ、高速スイッチ2がオンされ、商用交流電源71からVCB1、高速スイッチ2、およびVCB5を介して負荷72に交流電力が供給され、負荷72が運転される。
【0069】
また、商用交流電源71からVCB1、高速スイッチ2、VCB21、および変圧器20を介して電力変換器30に交流電力が供給され、その交流電力が電力変換器30によって直流電力に変換されて電力貯蔵装置73に蓄えられる。
【0070】
このとき、電流検出器36(図2)によって直流電流IDCが検出され、その検出値に基づいて、電力貯蔵装置73を充電するために必要な電力変換ユニットUの数Mが演算部42(図4)によって求められる。その数Mの制御回路Aが選択部43によって活性化され、活性化された制御回路Aによって電力変換ユニットUが運転される。なお、本明細書では、制御回路A1~A10を総称して代表的に制御回路Aと呼ぶ場合がある。
【0071】
電力貯蔵装置73が満充電状態である場合には、1台の電力変換ユニット(たとえばU1)のみが運転され、直流電圧VDCは参照直流電圧VDCrに維持される。また、残りの9台の電力変換ユニット(この場合はU2~U9)の運転は停止され、電力変換ユニットU2~U9のスイッチング損失が削減される。
【0072】
たとえば、落雷が発生して交流電圧VIの瞬時電圧低下が発生した場合には、瞬低検出部41(図4)によって瞬低検出信号DLが活性化レベルの「L」レベルにされ、高速スイッチ2が瞬時にオフされ、商用交流電源71と負荷72が電気的に切り離される。
【0073】
同時に、電力貯蔵装置73の直流電力が電力変換器30によって交流電力に変換され、その交流電力が変圧器20およびVCB21,5を介して負荷72に供給され、負荷72の運転が継続される。
【0074】
このとき、全ての制御回路A1~A10が活性化されて全ての電力変換ユニットU1~U10が運転され、出力端子T2の交流電圧VOは、商用周波数の参照交流電圧VOrに維持される。
【0075】
交流電圧VIが正常な電圧に復帰すると、瞬低検出部41(図4)によって瞬低検出信号DLが非活性化レベルの「H」レベルにされ、再び高速スイッチ2がオンされ、商用交流電源71からVCB1、高速スイッチ2、およびVCB5を介して負荷72に交流電力が供給され、負荷72が運転される。また、商用交流電源71からの交流電力が電力変換器7によって直流電力に変換されて電力貯蔵装置73に蓄えられる。
【0076】
したがって、この瞬低補償装置によれば、瞬時電圧低下が発生した場合でも負荷72の運転を継続することができる。
【0077】
以上のように、この実施の形態1によれば、電力変換器30を並列接続されたN台の電力変換ユニットU1~UNに分割し、交流電圧VIが正常である場合には、N台のうちのM台の電力変換ユニットUのみを運転し、交流電圧VIが正常でない場合には、N台の電力変換ユニットU1~UNを運転する。したがって、(N-M)台の電力変換ユニットUのスイッチング損失を低減し、効率の向上を図ることができる。
【0078】
また、上記特許文献1で開示されている方法のように、双方向コンバータ31のスイッチング周波数を下げることはないので、リアクトル34に流れるリプル電流が増大し、リアクトル34の鉄損が増大し、その鉄損により給電効率が低下することはない。また、鉄損を低減するためにリアクトル34を大型化する必要もない。
【0079】
図5は、実施の形態1の変更例を示す回路ブロック図であって、図3と対比される図である。図5を参照して、この変更例が実施の形態1と異なる点は、電力変換ユニットU1~U10がそれぞれ電力変換ユニットU1A~U10Aで置換され、コンデンサ45が追加されている点である。電力変換ユニットU1A~U10Aは、それぞれ電力変換ユニットU1~U10からコンデンサ35を除去したものである。コンデンサ45は、交流端子30bに接続される。コンデンサ45の容量は、10個のコンデンサ35の容量の和と等しい。つまり、この変更例は、10個のコンデンサ35を1個のコンデンサ45にまとめたものである。この変更例でも、実施の形態1と同じ効果が得られる。
【0080】
[実施の形態2]
図6は、この発明の実施の形態2に従う瞬低補償装置の要部を示すブロック図であって、図4と対比される図である。図6を参照して、この変更例が実施の形態1の瞬低補償装置と異なる点は、電流検出器36および演算部42がそれぞれSOC(State of Charge;充電状態)検出器46および演算部47で置換されている点である。
【0081】
SOC検出器46は、電力貯蔵装置73のSOCを検出し、その検出値を示す信号φSOCを演算部47に与える。SOCは、電力貯蔵装置73の残容量(Ah)/満充電容量(Ah)×100(%)で表される値である。
【0082】
演算部47は、SOC検出器46の出力信号φSOCによって表されるSOCに基づいて、電力貯蔵装置73を充電するために必要な電力変換ユニットUの数Mを求め、その数Mを示す信号φMを選択部43に与える。
【0083】
ここで、瞬低補償装置の起動時における数Mは、電力貯蔵装置73の容量、充電に許容される時間、1台の電力変換ユニットUの充電動作時における定格電流Idなどに基づいて、Nよりも小さな最大値Mmaxに予め設定されている。電力貯蔵装置73が充電されるに従って、Mは減少する。たとえば、Mmax=4であり、Mは1以上4以下の自然数となる。
【0084】
たとえば、SOCの下限値が80%である場合には、SOCが85%以下である場合にはM=4とされる。SOCが85%よりも大きく90%以下である場合にはM=3とされる。SOCが90%よりも大きく95%以下である場合にはM=2となる。SOCが95%よりも大きい場合にはM=1とされる。他の構成および動作は、実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。
【0085】
この実施の形態2でも、実施の形態1と同じ効果が得られる。
[実施の形態3]
実施の形態1,2では、電力貯蔵装置73が満充電状態になった場合、1台の電力変換ユニット(たとえばU1)のみが運転され、残りの9台の電力変換ユニット(この場合はU2~U10)の運転は停止される。このため、1台の電力変換ユニット(この場合はU1)だけの経年劣化が進むこととなり、たとえば電力変換ユニットU1のヒューズ32(図3)が経年劣化によって溶断され、故障が検知されて瞬低補償装置の運転が停止される恐れがある。この実施の形態3では、この問題の解決が図られる。
【0086】
図7は、この発明の実施の形態3に従う瞬低補償装置の要部を示すブロック図であって、図4と対比される図である、図7を参照して、この瞬低補償装置が実施の形態1の瞬低補償装置と異なる点は、タイマー50が追加され、選択部43が選択部51で置換されている点である。
【0087】
タイマー50は、瞬低補償装置の運転時間を測定し、その測定時間を示す信号φTを選択部51に与える。瞬低検出信号DLが非活性化レベルの「H」レベルであり、かつ演算部42の出力信号φMによって示される電力変換ユニットUの数Mが1である場合、選択部51は、タイマー50の出力信号φTによって示される瞬低補償装置の運転時間に基づいて、選択信号SE1~SE10を所定時間(たとえば1ヶ月)ずつ、1つずつ順次「H」レベルにする。
【0088】
図8(A)~(J)は、選択部51の動作を例示するタイムチャートである。図8(A)~(J)は、それぞれ選択信号SE1~SE10の波形を示している。図8において、電力貯蔵装置73が満充電状態になった場合には、まず選択信号SE1が所定時間だけ「H」レベルにされ、次に、選択信号SE2が所定時間だけ「H」レベルにされ、次いで選択信号SE3が所定時間だけ「H」レベルにされ、以下同様にして、選択信号SE10が所定時間だけ「H」レベルにされる。選択信号SE10が所定時間だけ「H」レベルにされた後は、再び選択信号SE1が所定時間だけ「H」レベルにされる。
【0089】
また、瞬低が発生して電力貯蔵装置73が放電された場合には、選択部51は、その瞬低が発生する前に「H」レベルにした選択信号(たとえばSE5)を記憶している。そして、その瞬低が終了して再び電力貯蔵装置73が満充電された場合には、選択部51は、記憶している選択信号(この場合はSE5)の次の選択信号(この場合はSE6)を「H」レベルとし、選択信号SE6~SE10,SE1~SE5を所定時間(この場合は1ヶ月)ずつ、1つずつ順次「H」レベルにする。これにより、電力変換ユニットU1~U10が所定時間ずつ、1つずつ順次運転されることとなり、電力変換ユニットU1~U10の経年劣化が均一化される。
【0090】
この実施の形態3では、実施の形態1と同じ効果が得られる他、1台の電力変換ユニット(この場合はU1)だけの経年劣化が進むことを防止することができ、故障が検知されて瞬低補償装置の運転が停止されることを防止することができる。
【0091】
[実施の形態4]
実施の形態3では、電力貯蔵装置73の満充電時に、電力変換ユニットU1~U10を所定時間ずつ1台ずつ順次運転することにより、1台の電力変換ユニットUだけの経年劣化が進むことを防止した。しかし、電力変換ユニットUの数Nが多い場合には、各電力変換ユニットUの停止期間が長くなり、その停止期間中に当該電力変換ユニットUや、それに対応する制御回路Aが故障し、瞬低発生時に負荷72を運転することができなくなる恐れがある。この実施の形態4では、この問題の解決が図られる。
【0092】
図9は、この発明の実施の形態4に従う瞬低補償装置の要部を示すブロック図であって、図6と対比される図である、図9を参照して、この瞬低補償装置が実施の形態3の瞬低補償装置と異なる点は、選択部51が選択部55で置換され、制御回路A1~A10がそれぞれ制御回路B1~B10で置換されている点である。
【0093】
選択部55は、選択信号SE1~SE10をそれぞれ制御回路B1~B10に出力するとともに、テスト信号TE1~TE10をそれぞれ制御回路B1~B10に出力する。すなわち、選択部55は、瞬低検出信号DLが非活性化レベルの「H」レベルであり、かつ演算部42の出力信号φMによって示される電力変換ユニットUの数Mが1である場合、タイマー50の出力信号φTによって示される瞬低補償装置の運転時間に基づいて選択信号SE1~SE10を出力する。選択信号SE1~SE10は、図8で示したように、所定時間(たとえば1ヶ月)ずつ、1つずつ順次「H」レベルにされる。
【0094】
図10(A)~(K)は、選択部55の動作を例示するタイムチャートである。図10(A)~(K)は、それぞれ選択信号SEおよびテスト信号TE1~TE10の波形を示している。
【0095】
図10において、選択部55は、1つの選択信号(たとえばSE1)を「H」レベルにした場合には、当該選択信号(この場合はSE1)に対応するテスト信号(この場合はTE1)をテスト期間(たとえば90分)だけ活性化レベルの「H」レベルにするとともに、残りの9個の選択信号(この場合はSE2~SE10)に対応する9個のテスト信号(この場合はTE2~TE10)を所定時間(たとえば10分)ずつ、1つずつ順次「H」レベルにする。
【0096】
すなわち、テスト期間では、同時に2個のテスト信号(この場合はTE1,TE2)が活性化レベルの「H」レベルにされる。対応する選択信号(この場合はSE2)が「L」レベルにされ、かつテスト信号(この場合はTE2)が「H」レベルにされた方の制御回路(この場合はB2)は、対応する電力変換ユニット(この場合はU2)を制御してテスト用の無効電流を出力させる。
【0097】
そして、制御回路(この場合はB2)は、対応する電流検出器33(図3)の出力信号(この場合はφIL2)に基づいて、対応する電力変換ユニット(この場合はU2)からテスト用の無効電流が出力されているか否かを判別し、判別結果を示す故障検出信号(この場合はDB2)を出力する。
【0098】
対応する電力変換ユニット(この場合はU2)からテスト用の無効電流が出力されている場合には、その電力変換ユニット(この場合はU2)は正常に動作していると判別され、故障検出信号(この場合はDB2)は非活性化レベルの「L」レベルにされる。
【0099】
対応する電力変換ユニット(この場合はU2)からテスト用の無効電流が出力されていない場合には、その電力変換ユニット(この場合はU2)は故障したと判別され、故障検出信号(この場合はDB2)は非活性化レベルの「L」レベルにされる。
【0100】
故障検出信号(この場合はDB2)は、たとえば操作部22(図2)に与えられる。操作部22は、故障検出信号(この場合はDB2)に基づいて、電力変換ユニット(この場合はU2)が正常に動作するか否かを内蔵の表示画面に表示する。また、操作部22は、電力変換ユニット(この場合はU2)が故障した場合には、その旨を音、光などによって瞬低補償装置の使用者に報知する。
【0101】
瞬低補償装置の使用者は、操作部22からの音、光などにより、電力変換ユニット(この場合はU2)が故障していることを検知することができる。電力変換ユニット(この場合はU2)が故障した場合には、使用者は、その電力変換ユニット(この場合はU2)を修理するか新品と交換する。
【0102】
これに対して、選択信号(この場合はSE1)が「H」レベルにされ、かつテスト信号(この場合はTE1)が「H」レベルにされた方の制御回路(この場合はB1)は、対応する電力変換ユニット(この場合はU1)を制御して、電力貯蔵装置73を満充電状態に維持させるとともに、上記テスト用の無効電流を吸収させる。これにより、商用交流電源71および負荷72にテスト用の無効電流が流れることを防止することができる。
【0103】
図11は、制御回路B1の構成を示すブロック図である。図11において、制御回路B1は、有効電流指令部60、無効電流指令部61、位相検出器62、逆DQ変換器63、および制御部64を含む。
【0104】
有効電流指令部60は、選択信号SE1が活性化レベルの「H」レベルである場合に活性化され、参照直流電圧VDCrと直流電圧VDCの偏差ΔVDC=VDCr-VDCに応じた値の有効電流指令値Id0を求める。そして、有効電流指令部60は、その有効電流指令値Id0を、演算部42(図8)の出力信号φMによって示される電力変換ユニットUの数Mで除算して有効電流指令値Id=Id0/Mを求める。選択信号SE1が非活性化レベルの「L」レベルである場合には、有効電流指令値Idは0にされる。
【0105】
無効電流指令部61は、選択信号SE1が活性化レベルの「H」レベルにされ、かつテスト信号TE1が非活性化レベルの「L」レベルにされている場合には、10個のコンデンサ35の容量値に応じた値の無効電流指令値Iq0を生成する。そして、無効電流指令部61は、その無効電流指令値Iq0を、演算部42(図8)の出力信号φMによって示される電力変換ユニットUの数Mで除算して無効電流指令値Iq=Iq0/Mを求める。
【0106】
また、無効電流指令部61は、選択信号SE1が非活性化レベルの「L」レベルにされ、かつテスト信号TE1が活性化レベルの「H」レベルにされている場合には、テスト用の無効電流を出力するための無効電流指令値Iq=Iqtを生成する。
【0107】
また、無効電流指令部61は、選択信号SE1が活性化レベルの「H」レベルにされ、かつテスト信号TE1が活性化レベルの「H」レベルにされている場合には、10個のコンデンサ35の容量値に応じた値の無効電流指令値Iq0と、テスト用の無効電流を吸収するための無効電流指令値(-Iqt)とを加算して無効電流指令値Iq=Iq0-Iqtを生成する。選択信号SE1およびテスト信号TE1がともに「L」レベルにされている場合には、Iq=0とされる。
【0108】
位相検出器62は、電力変換器30の交流端子30bに現れる交流電圧VAC(図2)の位相θを検出し、その検出値を示す信号φθを逆DQ変換器63に出力する。
【0109】
逆DQ変換器63は、位相検出器62の出力信号φθによって示される位相θに基づいて、有効電流指令値Idおよび無効電流指令値Iqを逆DQ変換して電流指令値Icを求める。
【0110】
制御部64は、瞬低検出信号DLが非活性化レベルの「H」レベルである場合には、電流指令値Icと、対応する電流検出器33(図3)の出力信号IL1fによって示される電流IL1と、交流電圧VACとに基づいて、対応する電力変換ユニットU1を制御するための制御信号CNT1を生成する。
【0111】
この場合において、選択信号SE1およびテスト信号TE1がそれぞれ「H」レベルおよび「L」レベルであるときには、電力変換ユニットU1から電力貯蔵装置73に直流電力が供給され、電力貯蔵装置73が充電される。
【0112】
また、選択信号SE1およびテスト信号TE1がともに「H」レベルであるときには、電力変換ユニットU1から電力貯蔵装置73に直流電力が供給されるとともに、他の電力変換ユニットUから出力されるテスト用の無効電流Iqtが電力変換ユニットU1に吸収される。
【0113】
また、選択信号SE1およびテスト信号TE1がそれぞれ「L」レベルおよび「H」レベルであるときには、電力変換ユニットU1からテスト用の無効電流Iqtが出力される。制御部64は、対応する電流検出器33の出力信号φIL1に基づいて、電力変換ユニットU1が正常であるか否かを判別し、判別結果を示す故障検出信号DB1を出力する。
【0114】
また、制御部64は、瞬低検出信号DLが活性化レベルの「L」レベルである場合には、対応する電流検出器33(図3)の出力信号IL1fによって示される電流IL1と、交流電圧VOとに基づいて、対応する電力変換ユニットU1を制御し、負荷72に交流電力を供給させる。
【0115】
他の構成および動作は、実施の形態3と同じであるので、その説明は繰り返さない。
この実施の形態4では、実施の形態3と同じ効果が得られる他、電力貯蔵装置73の満充電時に各電力変換ユニットUが正常であるか否かをテストすることができる。したがって、瞬低発生時に、故障した電力変換ユニットUがあるために負荷72を運転することができなくなることを防止することができる。
【0116】
なお、上記実施の形態1~4および変更例を適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【0117】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0118】
T1 入力端子、T2 出力端子、T3 直流端子、1,5,6,21 VCB、2 高速スイッチ、3 半導体スイッチ、4 機械スイッチ、7,30 電力変換器、8,31 双方向コンバータ、9,32 ヒューズ、10,33,36 電流検出器、11,34 リアクトル、12,35,45 コンデンサ、20 変圧器、22 操作部、23,37 制御装置、U1~U10,U1A~U10A 電力変換ユニット、41 瞬低検出部、42,47 演算部、43,51,55 選択部、A1~A10,B1~B10 制御回路、46 SOC検出器、50 タイマー、60 有効電流指令部、61 無効電流指令部、62 位相検出器、63 逆DQ変換器、64 制御部、71 商用交流電源、72 負荷、73 電力貯蔵装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11