(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】ネオエピトープを選択する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20241111BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20241111BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20241111BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20241111BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241111BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20241111BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20241111BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20241111BHJP
【FI】
A61K39/00 H
C12Q1/6869 Z ZNA
G01N33/574 Z
G01N33/53 M
A61P35/00
A61P37/04
A61K47/65
C07K14/47
(21)【出願番号】P 2021517009
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2019076210
(87)【国際公開番号】W WO2020065023
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-15
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512330710
【氏名又は名称】ナイコード セラピューティクス アルメン アクスイェ セルスカプ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】モニカ セケーリヤ
(72)【発明者】
【氏名】カロリーネ シュイェトゥーヌ
(72)【発明者】
【氏名】アグネーテ ブルンスビク フレードリクセン
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-515519(JP,A)
【文献】特表2018-507686(JP,A)
【文献】特表2018-524008(JP,A)
【文献】国際公開第2018/136664(WO,A1)
【文献】NATURE,2017年07月13日,VOL:547, NR:7662,PAGE(S):217-221,402,http://doi.org/10.1038/nature22991
【文献】JOURNAL OF EXPERIMENTAL MEDICINE,2014年10月20日,VOL:211, NR:11,PAGE(S):2231-2248,http://dx.doi.org/10.1084/jem.20141308
【文献】JOURNAL OF CLINICAL ONCOLOGY,2018年06月,VOL:36, NR:15 SUPPL,3100,http://ascopubs.org/doi/10.1200/JCO.2018.36.15_suppl.3100
【文献】FRONTIERS IN IMMUNOLOGY,2018年01月18日,VOL:8,1807,http://dx.doi.org/10.3389/fimmu.2017.01807
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
A61P 35/00
A61P 37/04
A61K 48/00
A61K 47/65
G01N 33/574
G01N 33/53
C12Q 1/6869
C07K
C12N 15/
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんに罹患している個体、またはがんに罹患していることが疑われる個体についてのネオエピトープの数Aを選択する方法であって、
a.
前記個体から取得された1つ以上のネオエピトープを
設ける工程、ここで、各ネオエピトープは少なくとも1つの最小エピトープを含み、各ネオエピトープは参照配列と比較して少なくとも1つの変異を含み、前記最小エピトープは、前記ネオエピトープのアミノ酸の数以下の数のアミノ酸からなるとともに前記少なくとも1つの変異を含み、前記ネオエピトープを
設ける工程は、腫瘍に特異的な核酸配列における変異を同定することを含む;
b.少なくとも1つの最小エピトープ及び対応する参照ペプチドについてMHC Iおよび/またはMHC IIへの結合親和性を決定する工程、ここで、結合親和性は%ランクスコアを算出することによりインシリコ予測によって決定され、小さな%ランクスコアは強い結合親和性を示し、大きな%ランクスコアは弱い結合親和性を示し、前記対応する参照ペプチドは同じ個体の体液もしくは健康な組織、又は正常で健康な集団の体液もしくは健康な組織から得られる;
c.MHC Iおよび/またはMHC IIに結合することが予測される少なくとも1つの最小エピトープを含むネオエピトープを選択することによってMHC結合ネオエピトープを取得する工程;
d.前記MHC結合ネオエピトープが臨床で有用である可能性に関して前記MHC結合ネオエピトープをランク付けする工程、ここで前記ランク付けは以下I~Vを含む:
I.工程cで選択された前記MHC結合ネオエピトープの中に含まれる最小エピトープの数を決定すること、ここで、大きな数の最小エピトープを含むネオエピトープは、より少ない数の最小エピトープを含むネオエピトープよりも上位にランクされる、
II.工程cで選択されたMHC I結合ネオエピトープのMHC I結合差を決定すること、ここで、前記MHC I結合差は、式:(参照の%ランクスコア(MHC I))/(ネオエピトープの%ランクスコア(MHC I))によって与えられ、MHC I結合差が大きいネオエピトープはMHC I結合差がより小さいネオエピトープよりも上位にランクされる、
III.前記変異が、前記ネオエピトープ中に含まれる各最小エピトープについて最小ネオエピトープの係留位置にあるか非係留位置にあるかを決定すること、ここで、係留位置にある変異を有する最小ネオエピトープが優先される、及び、
IV.前記MHC I結合ネオエピトープのMHC Iランクについて、工程cで選択されたMHC I結合ネオエピトープの優先度を決定すること、ここで、%ランクスコア(MHC I)が小さいネオエピトープは、%ランクスコアがより大きいネオエピトープよりも上位にランクされ、MHC Iに結合することが予測される1つ以上の最小エピトープを含むネオエピトープの%ランクスコア(MHC I)が、前記1つ以上の最小エピトープの最低%ランクスコア(MHC I)に等しい、
V.BLOSUMスコアを決定すること、ここで、工程cで選択されたMHC I結合ネオエピトープは、そのBLOSUMスコアの降順に従って優先度が決定され、ネオエピトープのBLOSUMスコアは、このネオエピトープに含まれる最高ランクの最小エピトープのBLOSUMスコアに等しく、BLOSUMスコアが2未満の最小エピトープが優先される;並びに
e.工程dの最高ランクのMHC結合ネオエピトープの中からA個のネオエピトープを選択する工程;を含み、
これらの工程によって臨床で有用である可能性が大きいA個のネオエピトープを選択する方法。
【請求項2】
Aが1~100の整数である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程aが、前記個体に由来する1つ以上のサンプルに含まれる核酸配列の中の変異を参照サンプルと比べて同定することを含む、請求項1又は2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上のサンプルは、前記個体の腫瘍細胞に由来するサンプルであり、前記工程cが、前記個体の腫瘍細胞に由来する少なくとも2つのサンプル中に見られるMHC I結合及び/又はMHC II結合ネオエピトープを選択することを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ネオエピトープが、1~50個の最小エピトープを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程cが、MHC Iに結合することが予測される少なくとも1つの最小エピトープとMHC IIに結合することが予測される少なくとも1つの最小エピトープを含むネオエピトープを選択することを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程cが、MHC Iに結合することが予測される少なくとも1つの最小エピトープを選択することを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程dのIVが、%ランクスコア(MHC I)が2.0未満のネオエピトープを優先することを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
%ランクスコア(MHC I)が10よりも大きいMHC I結合ネオエピトープは除外されるか優先度を下げられる、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ネオエピトープが、アミノ酸7~40個の長さを有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
腫瘍細胞に由来する1つより大きい数のサンプル中に見られるネオエピトープは、腫瘍細胞に由来する1つのサンプルだけに見られるネオエピトープよりも上位にランクされる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ネオエピトープのRNA発現レベルを決定し、RNA発現レベルが高いネオエピトープを選択する工程を更に含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記MHC I結合ネオエピトープ中に存在する変異のアレル頻度を決定し、アレル頻度が高いネオエピトープを選択する工程を更に含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程dは、MHC Iに結合することが予測される最小エピトープをまったく含まないネオエピトープの優先度を下げる又は除外する工程を更に含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも5個のMHC結合最小エピトープを含むネオエピトープは、5個より少ないMHC結合最小エピトープを含むネオエピトープよりも上位にランクされる、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
工程dのVIにおけるネオエピトープは、これらネオエピトープに含まれる最小エピトープの最大スコアを各ネオエピトープに割り当てることによりランク付けされる、ここで、前記ネオエピトープのランク付けは1)~7)の順で以下のように実施される、
1)前記変異が係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が20以上である場合には、最小エピトープは最大スコアを有する;
2)前記変異が非係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が20以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、1)の最小エピトープのスコアよりも小さい;
3)前記変異が係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が20未満かつ3以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、2)の最小エピトープのスコアよりも小さい;
4)前記変異が非係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が20未満かつ3以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、3)の最小エピトープのスコアよりも小さい;
5)前記変異が係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が3未満かつ1以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、4)の最小エピトープのスコアよりも小さい;
6)前記変異が非係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が3未満かつ1以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、5)の最小エピトープのスコアよりも小さい;
7)前記最小エピトープが、結合差が1未満の変異を有する場合には、前記変異の位置に関係なく、この最小エピトープは最低のスコアを有する、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
A個のネオエピトープを含むがんワクチンを調製する方法であって、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法を利用して前記A個のネオエピトープを選択する工程を含む方法。
【請求項18】
前記がんワクチンは、a)標的ユニット、b)2量体化ユニット、c)第1のリンカー、d)前記A個のネオエピトープを含む抗原ユニット、を含むポリヌクレオチドを含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個体のためのネオエピトープの選択を、MHC Iおよび/またはMHC IIに結合するネオエピトープを選択し、これらネオエピトープを臨床での有用性に関してランク付けすることによって実現する方法に関する。本発明により、本明細書に記載されている方法によって得られるがんワクチンも提供される。
【背景技術】
【0002】
がんの治療は特に早期の検出と診断によって過去数十年の間に改善され、生存率が大きく上昇したが、がんと診断されてから5年後に生きている患者は約60%にすぎない。
【0003】
利用されているがん治療法の大半は、外科的手術と、放射線と、細胞傷害性化学療法である。しかしこれらすべてに深刻な副作用がある。最近、既知のがん関連抗原または免疫調節分子に対する抗体を用いた治療法も利用されるようになってきた。
【0004】
数年前から、患者自身の免疫系の助けを借りてがん細胞を標的とするがん免疫療法(例えばがんワクチン)が注目されるようになってきた。なぜならこのような療法は、伝統的ながん治療法に見られる副作用のいくつかを減らすこと、それどころかなくすことさえできるからである。
【0005】
免疫学の基礎は、自己と非自己の識別にある。感染性疾患を引き起こす病原体の大半は分子シグネチャを含んでおり、宿主はその分子シグネチャを認識して免疫応答を開始させることができる。しかし腫瘍細胞は正常な細胞に由来していて一般にいかなる外来性分子シグネチャも発現しないため、腫瘍細胞を正常な細胞から識別することはより困難である。
【0006】
それでも大半の腫瘍細胞はさまざまなタイプの腫瘍抗原を発現する。腫瘍抗原の1つのクラスは、いわゆる腫瘍関連抗原(例えば正常組織では低レベルで発現し、腫瘍組織でははるかに高レベルで発現する抗原)である。このような腫瘍関連抗原が、過去10年にわたってがんワクチンの標的とされてきた。しかし腫瘍関連抗原に向けられた免疫学的治療法にはいくつかの挑戦課題がある。それは、腫瘍細胞が問題の抗原を下方調節することによって免疫系を逃れる可能性があることや、この治療法が正常な細胞を破壊するため毒性にもつながる可能性があることである。
【0007】
最近、別のクラスの腫瘍抗原が同定された。それは、腫瘍特異的抗原であるいわゆる腫瘍ネオアンチゲンである。腫瘍ネオアンチゲンは腫瘍ゲノムの中の1つ以上の変異が原因で生じ、問題のタンパク質のアミノ酸配列に変化をもたらす。これらの変異は正常な組織には存在していないため、腫瘍特異的ネオアンチゲンに向けられる治療法の副作用は、腫瘍ネオアンチゲンに向けられる免疫学的治療法では生じることがない。
【0008】
しかし効果的なワクチンを作製するには、免疫原性が最大のネオエピトープを選択してワクチンで使用することが重要である。
【発明の概要】
【0009】
本発明の発明者は、免疫原性にとって重要であることが証明された特性を持つネオエピトープを選択するためのネオエピトープ選択法を開発した。この方法を利用することで、腫瘍組織適合複合体(MHC)に結合することが予測される免疫原性が大きなネオエピトープをワクチンのために選択し、そのことによって強力かつロバストな免疫応答を誘導することのできるワクチンを得ることができる。したがって個別化がん療法に適したワクチンを作製することができる。したがって本明細書では、ネオエピトープをその臨床的有用性に従ってランク付けする方法が提供される。これらの方法は、がん療法のための個別化されたワクチンを製造するという文脈に特に適している。
【0010】
したがって本発明は、個体のためのネオエピトープの数Aを選択する方法に関するものであり、この方法は、
a.1つ以上のネオエピトープ(ただしそれぞれのネオエピトープは、少なくとも1つの最小エピトープを含むとともに、参照配列と比べて少なくとも1つの変異(例えば免疫原性変異)を含む)を個体から取得する工程と;
b.ネオエピトープそれぞれの中の少なくとも1つの最小エピトープ(例えば少なくとも2つ、または3つ、または4つの最小エピトープ)についてMHC Iおよび/またはMHC IIへの結合親和性を求める工程と;
c.MHC Iおよび/またはMHC IIに結合することが予測される少なくとも1つの最小エピトープを含むネオエピトープを選択することによってMHC結合ネオエピトープを取得する工程と;
d.これらMHC結合ネオエピトープを、臨床で有用である可能性に関してランク付けする工程と;
e.最高ランクのMHC結合ネオエピトープの中からA個のネオエピトープを選択する工程を含んでおり、
これらの工程によって臨床で有用であるA個のネオエピトープを選択する。
【0011】
個体のためのネオエピトープの数Aを選択する方法として、以下の工程を含む方法、すなわち
a.1つ以上のネオエピトープ(ただしそれぞれのネオエピトープは、少なくとも1つの最小エピトープを含むとともに、参照配列と比べて少なくとも1つの変異(例えば免疫原性変異)を含む)を前記個体から取得する工程と;
b.ネオエピトープのそれぞれについてMHC Iへの結合親和性を求めるとともに、ネオエピトープそれぞれについてMHC I結合最小エピトープの数を求める工程と;
c.ネオエピトープを以下のようにランク付けする工程、すなわち
i.MHC Iおよび/またはMHC IIに結合する多数の最小エピトープを含むネオエピトープの優先度を決めた後、大きなスコアを持つネオエピトープの第1のグループを選択し;
ii.場合によっては、ネオエピトープの第1のグループからのネオエピトープの優先度を以下のようにして決定し、すなわち
1)変異が係留位置にあって最小エピトープの結合差が20以上である場合には、最小エピトープは最大スコアを持ち;
2)変異が非係留位置にあって最小エピトープの結合差が20以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、1)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
3)変異が係留位置にあって最小エピトープの結合差が20未満かつ3以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、2)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
4)変異が非係留位置にあって最小エピトープの結合差が20未満かつ3以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、3)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
5)変異が係留位置にあって最小エピトープの結合差が3未満かつ1以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、4)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
6)変異が非係留位置にあって最小エピトープの結合差が3未満かつ1以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、5)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
7)最小エピトープが、結合差が1未満の変異を持つ場合には、変異の位置に関係なく、この最小エピトープは最低のスコアを持つようにし;
(ただしMHC I結合差は、式:(参照の%ランクスコア(MHC I))/(最小エピトープの%ランクスコア(MHC I))によって与えられる);大きなスコアを持つネオエピトープの第2のグループを選択し;
iii.場合によっては、第2のグループからのネオエピトープの優先度を、そのMHC I%ランクスコアに基づいて決定した後、小さなMHC I%ランクスコアを持つネオエピトープの第3のグループを選択し;
iv.場合によっては、T細胞によって認識されることが知られているエピトープとよく似た最小エピトープを含む第2のグループまたは第3のグループからネオエピトープの第4のグループを選択し;
v.場合によっては、第2のグループ、第3のグループまたは第4のグループからのネオエピトープの優先度を、そのBLOSUMスコアに基づいて決定して、所定の閾値(この閾値は1であることが好ましい)よりも小さいBLOSUMスコアを、この閾値以上のBLOSUMスコアよりも上にランクした後、BLOSUMスコアが閾値よりも小さいネオエピトープの第5のグループを選択し;
vi.場合によっては、ネオエピトープの第1のグループ、第2のグループ、第3のグループ、第4のグループ、第5のグループのいずれかから、ネオエピトープを、2つ以上のサンプルで見いだされるネオエピトープに基づいて選択することにより、2つ以上のサンプルで見いだされるネオエピトープの第6のグループを選択し;
vii.場合によっては、ネオエピトープの第1のグループ、第2のグループ、第3のグループ、第4のグループ、第5のグループ、第6のグループのいずれかから、ネオエピトープを、少なくとも2つの異なったバリアントコーラーによって変異が同定されることに基づいて選択することにより、少なくとも2つの異なったバリアントコーラーによって同定された変異を含むネオエピトープの第7のグループを選択する工程を含み、
第1のグループ、第2のグループ、第3のグループ、第4のグループ、第5のグループ、第6のグループ、第7のグループのいずれかがA個のネオエピトープを含んでいる方法も提供される。
【0012】
ネオエピトープを含むがんワクチンを調整する方法も提供され、この方法は、本明細書に記載されている方法を用いてそのネオエピトープを選択する工程を含んでいる。
【0013】
本明細書には、本明細書に記載されている方法によって取得可能ながんワクチンも記載されている。
【0014】
個体のためのネオエピトープの数Aを選択する方法として、以下の工程を含む方法、すなわち、
a.1つ以上のネオエピトープ(ただしそれぞれのネオエピトープは、少なくとも1つの最小エピトープを含むとともに、参照配列と比べて少なくとも1つの変異(例えば免疫原性変異)を含む)を個体から取得する工程と;
b.ネオエピトープのそれぞれについてMHC Iおよび/またはMHC IIへの結合親和性を求める工程と;
c.MHC Iおよび/またはMHC IIに結合することが予測される少なくとも1つの最小エピトープ(例えば少なくとも2つ、または3つ、または4つの最小エピトープ)を含むネオエピトープを選択することによってMHC結合ネオエピトープを取得する工程と;
d.これらMHC結合ネオエピトープを、臨床で有用である可能性に関してランク付けする工程と;
e.最高ランクのMHC結合ネオエピトープの中からA個のネオエピトープを選択する工程を含み(ただしAは整数であり、Aは、少なくとも3、例えば少なくとも4、例えば少なくとも5である)、
これらの工程によって個体に免疫学的に有効な量で投与されたときにCD8+ T細胞応答を誘導することのできるA個のネオエピトープを選択する方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1-1】MHC クラスI分子(A)に対する免疫原性ネオエピトープ(左)と非免疫原性ネオエピトープ(右)の結合親和性の%ランクをNetMHCpan/NetMHCIIpandedeで予測(VB10.NEOをワクチン接種したマウスで評価)。
【
図1-2】MHC クラスII分子(B)に対する免疫原性ネオエピトープ(左)と非免疫原性ネオエピトープ(右)の結合親和性の%ランクをNetMHCpan/NetMHCIIpandedeで予測(VB10.NEOをワクチン接種したマウスで評価)。
【0016】
【
図2-1】MHC クラスI分子(A)に対する%ランクが小さい選択されたネオエピトープのBLOSUMスコア。免疫原性ペプチド:左;非免疫原性ペプチド:右。
【
図2-2】MHC クラスII分子(B)に対する%ランクが小さい選択されたネオエピトープのBLOSUMスコア。免疫原性ペプチド:左;非免疫原性ペプチド:右。
【0017】
【
図3-1】CT26(A)モデルデータセットでNeoSELECTを用いて選択された上位20個のネオエピトープに関する IFN-γスポットの累積数。各データセットでランダムに選択された1000個のネオエピトープのうちの上位20個のネオエピトープに関するIFN-γスポットの平均累積数を黒い線で示してある。
【
図3-2】B16(B)モデルデータセットでNeoSELECTを用いて選択された上位20個のネオエピトープに関する IFN-γスポットの累積数。各データセットでランダムに選択された1000個のネオエピトープのうちの上位20個のネオエピトープに関するIFN-γスポットの平均累積数を黒い線で示してある。
【
図3-3】LL2(C)モデルデータセットでNeoSELECTを用いて選択された上位20個のネオエピトープに関する IFN-γスポットの累積数。各データセットでランダムに選択された1000個のネオエピトープのうちの上位20個のネオエピトープに関するIFN-γスポットの平均累積数を黒い線で示してある。
【0018】
【
図4-1】NeoSELECT戦略を利用してCT26(A)データセットから選択された上位20個のネオエピトープ(変異体)とこれらネオエピトープの野生型配列(WT)に関するIFN-γスポットの累積数。CT26(A)からランダムに選択された1000個のネオエピトープに関するIFN-γスポットの平均累積数を黒い線で示してある。
【
図4-2】NeoSELECT戦略を利用してB16(B)データセットから選択された上位20個のネオエピトープ(変異体)とこれらネオエピトープの野生型配列(WT)に関するIFN-γスポットの累積数。B16(B)からランダムに選択された1000個のネオエピトープに関するIFN-γスポットの平均累積数を黒い線で示してある。
【
図4-3】NeoSELECT戦略を利用してLL2(C)データセットから選択された上位20個のネオエピトープ(変異体)とこれらネオエピトープの野生型配列(WT)に関するIFN-γスポットの累積数。LL2(C)からランダムに選択された1000個のネオエピトープに関するIFN-γスポットの平均累積数を黒い線で示してある。
【0019】
【
図5】免疫原性ネオエピトープと非免疫原性ネオエピトープについて、MHC I結合親和性が低下したもの(MHC I結合差が1未満)、MHC I結合親和性が増加したもの(MHC I結合差が3超)、MHC I結合親和性が変化しないもののBLOSUMスコアを示している。この図からわかるのは、MHC I結合親和性が変化するとき(左側と中央の図)、免疫原性ネオエピトープ(薄い灰色)は非免疫原性ネオエピトープ(濃い灰色)よりもBLOSUMスコアが小さいのに対し、MHC I結合親和性が変化しないネオエピトープではBLOSUMスコアの変化が観察されないことである。
【0020】
【
図6】MCHクラスI(CD8
+ T細胞応答)に結合することが予測される10個の異なるネオエピトープ(pep1~10)はすべて、Kreiter他、2015年とCastle他、2012年によって調べられている。それは、これらのネオエピトープがマウスB16-F10黒色腫腫瘍モデルにおいてCD8
+ T細胞応答を誘導できるかどうかを調べるためであった。6個のネオエピトープが本明細書に記載されているVaccibody(「VB10.NEO」)として投与されたときに誘導された応答が上方の図に示されている。ペプチド+ポリICLCアジュバントとして、RNAとして、Vaccibodyとして投与されたときのCD4応答とCD8応答が下方の図にまとめられている。白色は応答なしを示し、薄い灰色は弱い応答を示し、中程度の灰色は中程度の応答を示し、濃い灰色は強い応答を示す。
【0021】
【0022】
【
図8-1】アミノ酸27個の長さを持つネオエピトープの中にあってMHC クラスIに結合することが予想される最小エピトープの総数(VB10.NEOをワクチン接種したマウスで評価)。Im:免疫原性;Non-im:非免疫原性。
【
図8-2】アミノ酸27個の長さを持つネオエピトープの中にあってMHC クラスIIに結合することが予想される最小エピトープの総数(VB10.NEOをワクチン接種したマウスで評価)。Im:免疫原性;Non-im:非免疫原性。
【0023】
【
図9】係留位置に変異を持つネオエピトープを探すため、MHCクラスI分子に対する野生型と変異体の結合差を免疫原性ネオエピトープと非免疫原性ネオエピトープで比較。
【0024】
【
図10-1】MHC クラスI分子(A)に対する%ランクが小さい選択されたネオエピトープのBLOSUMスコア。
【
図10-2】MHC クラスII分子(B)に対する%ランクが小さい選択されたネオエピトープのBLOSUMスコア。
【発明を実施するための形態】
【0025】
定義
【0026】
「腫瘍ネオアンチゲン」または「ネオアンチゲン」という用語は、本明細書では、宿主の健康な組織エキソームと比べて1つ以上の変異を含むあらゆる腫瘍特異的抗原を意味する。腫瘍ネオアンチゲンは、がんネオアンチゲンという用語と同じ意味で用いられる。上記の1つ以上の変異は、「ネオエピトープ変異」と呼ぶこともできる。変異として、少なくとも1つのアミノ酸の変化につながるあらゆる変異が可能である。したがって変異として、以下に示すものの1つが可能である:
- アミノ酸の変化につながる非同義変異
- フレームシフトにつながる変異。その結果として変異後にその方向に完全に異なったオープンリーディングフレームになる
- 終止コドンが変化するか欠失して腫瘍特異的ネオエピトープを持つより長いタンパク質になる読み飛ばし変異
- 独自の腫瘍特異的タンパク質配列になるスプライス変異
- 2つのタンパク質の接合部に腫瘍特異的ネオエピトープを持つキメラタンパク質を生じさせる染色体再構成。
【0027】
変異は、本明細書では単一の残基の変異を必ずしも意味するのではなく、より一般に、(例えば潜在的なネオエピトープの)所与の配列と参照配列の間の違いを意味すると理解される。したがって変異は、2個以上のアミノ酸残基の変異を意味することができる。いくつかの実施態様では、変異は免疫原性変異である。
【0028】
「腫瘍ネオエピトープ」または「ネオエピトープ」という用語は、本明細書では、腫瘍抗原の中のあらゆる免疫原性変異を意味し、がんネオエピトープという用語と同じ意味で用いられる。変異の存在は、腫瘍サンプルに由来するネオエピトープの配列を参照サンプル(例えば同じ個体からの健康な組織)の中に存在する参照配列と比較することによって明らかにされる。この用語は、典型的には、長さがアミノ酸27個のペプチドを意味する。ネオエピトープは、本明細書で明確にされているように、最小エピトープを1個または数個含むことができる。変異は典型的にはネオエピトープの中央(すなわち27量体の中の14位)の位置またはその近傍に存在するが、最小エピトープの中央の位置である必要はない。
【0029】
「腫瘍ネオエピトープ配列」または「ネオエピトープ配列」という用語は、本明細書では、抗原サブユニットの中にネオエピトープを含む配列を意味し、がんネオエピトープ配列という用語と同じ意味で用いられる。
【0030】
「腫瘍ネオエピトープペプチド」、「ネオエピトープペプチド」という用語は、本明細書では、ネオエピトープのペプチド配列で変異を含むものを意味する。
【0031】
「最小エピトープ」という用語は、変異(免疫原性である可能性がある)を含んでいてMHC IまたはMHC IIに結合することが予想される部分配列を意味する。言い換えると、最小エピトープは免疫原性である可能性、すなわち免疫応答を誘導できる可能性がある。それは例えば、最小エピトープが、この最小エピトープに免疫原性を与える変異、またはこの最小エピトープの免疫原性を増大させる変異を含んでいる場合である。このような変異を本明細書では免疫原性変異と呼ぶ。したがって最小エピトープという用語は、ネオエピトープの短い部分配列であって、MHC IまたはMHC IIに結合することが予想され、ネオエピトープの中に見いだされる変異を含んでいるものを意味することができる。したがって14位に変異を含む27量体ネオエピトープに含めることができるのは、いくつかの最小結合エピトープ、すなわち長さがアミノ酸27個よりも短いが、それぞれが変異を含んでいる最小結合エピトープである。例えば最小エピトープは、MHC IまたはMHC IIに結合することが予想されるという条件で、ネオエピトープの最初の14個のアミノ酸からなることができよう。あるいは最小エピトープは、ネオエピトープの9位~18位のアミノ酸、または7位~22位のアミノ酸からなることができよう。
【0032】
「MHC分子」という用語は、本明細書では、MHCクラスI(MHC I)分子とMHCクラスII(MHC II)分子の両方を含む。MHC Iは、いくつかの遺伝子座、例えばHLA-A(ヒト白血球抗原-A)、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、HLA-H、HLA-J、HLA-K、HLA-L、HLA-P、HLA-Vを表わすのに対し、MHC IIは、HLA-DRA、HLA-DRB 1-9、HLA-、HLA-DQA1、HLA-DQB1、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DMA、HLA-DMB、HLA-DOA、HLA-DOBなどの遺伝子座を表わす。「MHC分子」と「HLAクラス」いう用語は、本明細書では交換可能に用いられる。
【0033】
「ネオエピトープが選択される」または「ネオエピトープの選択」という表現は、本明細書では、臨床または治療で利用できる可能性、好ましくはがんワクチンで利用できる可能性のあるネオエピトープの選択を意味する。したがってネオエピトープは、選択されるときには、臨床またはがんワクチンで利用するための潜在的な候補である。選択されたネオエピトープは、選択されなかったネオエピトープよりも上にランクされるか、優先される。
【0034】
ヌクレオチドは、本明細書では、RNAまたはDNAの単量体と定義される。ヌクレオチドは、塩基とリン酸基の両方に結合しているリボース環またはデオキシリボース環である。一リン酸ヌクレオシド、二リン酸ヌクレオシド、三リン酸ヌクレオシドはすべて、ヌクレオチドと呼ばれる。
【0035】
「ゲノム」という用語は、本明細書では、生物または細胞の染色体に含まれるゲノム情報の総量を意味する。
【0036】
「エキソーム」という用語は、本明細書では、ゲノムのうちでエキソンによって形成される部分を意味し、その配列は、転写されたとき、RNAスプライシングによってイントロンが除去された後に成熟RNAの中に残る。エキソームは、任意のタイプの細胞内で成熟RNAへと転写される全DNAからなり、特定の細胞集団の中でだけ転写されるRNAであるトランスクリプトームとは明確に異なっている。
【0037】
「変異」という用語は、本明細書では、転位、逆転、欠失、重複、点変異を含んでおり、これらはネオエピトープをコードするヌクレオチドの中に存在することが好ましい。好ましい一実施態様では、変異はアミノ酸置換であり、ネオエピトープの中に存在することが好ましい。
【0038】
「がんワクチン」という用語は、本明細書では、既存のがんを治療するワクチン、またはがんの進行を阻止するワクチンを意味する。既存のがんを治療するワクチンは、治療用がんワクチンとして知られている。
【0039】
ネオエピトープの同定
【0040】
本発明の方法は、本明細書に記載されているように、個体から得られたサンプルに由来する核酸配列の中の腫瘍特異的変異を同定することによって1つ以上のネオエピトープを同定する工程を含むことができる。この1つ以上のネオエピトープは、複数のネオエピトープであることが好ましい。しかしいくつかの場合には、単一のネオエピトープでさえ個別化療法(例えば個別化がん療法)の文脈で有用である可能性があるが、そのネオエピトープが望む免疫応答を誘導できることが条件である。
【0041】
個体はがん患者であることが好ましい。臨床(例えば個別化免疫原性がんワクチン)で利用するための潜在的候補となる可能性のあるネオエピトープを同定するため、1つ以上のサンプルをがん患者から取得することができる。
【0042】
腫瘍特異的変異は、個体に由来する腫瘍サンプルから得られたヌクレオチド配列を正常なヌクレオチド配列と比較することによって同定されることが好ましい。正常なヌクレオチド配列は、その個体からの体液サンプルまたは任意の非腫瘍組織から得られたサンプル核酸をシークエンシングすることによって取得できる。正常なヌクレオチド配列は、同じ個体に由来する健康な組織から得られることが好ましい。正常なヌクレオチド配列はデータベースから取得することもできる。「正常な」という用語は、配列に適用するときには、ペプチド配列であれヌクレオチド配列であれ、本明細書では「参照」または「野生型」という用語と交換可能に用いられる。したがってこの用語は、同じ個体内または正常な健康な集団内で「正常な」環境において見いだされる対応する配列に適用することができる。したがって、腫瘍特異的配列を同じ個体から単離された別の非腫瘍組織に見いだされる対応する配列と比較することにより、偽陽性の数を減らすことができる。なぜなら、個体間の遺伝的バリエーションには例えば個体に特異的だが腫瘍に特異的ではない可能性があるSNPが含まれていて、そうした遺伝的バリエーションから生じるネオエピトープが結果から除かれるからである。個体から単離された参照配列は、診断前の同じ個体から得られた健康な細胞のサンプルに由来するものが可能である。サンプルは、治療の開始前に取得すること、または治療を開始した後に取得することができる。
【0043】
「腫瘍サンプル」という用語は、本明細書では、腫瘍細胞を含むサンプルを意味する。腫瘍サンプルは同じ個体またはがん患者から生検を採取することによって取得できる。生検として、針または簡単な手術で採取した腫瘍組織の小さなサンプルが可能である。サンプルとして、リンパ節生検も可能である。いくつかの生検または腫瘍生検を採取することもできる。
【0044】
参照サンプルとして、体液サンプルが可能である。体液サンプルとして、例えば尿サンプル、糞便サンプル、血清サンプル、唾液サンプルのいずれかが可能である。好ましい一実施態様では、体液サンプルは血液サンプルである。参照サンプルは、治療を必要とする個体の健康な組織から得られることが好ましい。
【0045】
サンプルから得られる核酸は、既知の任意のシークエンシング法を利用してシークエンシングすることができる。例えば次世代シークエンシング利用することができる。いくつかの実施態様では、個体に由来する腫瘍細胞からの核酸配列を、同じ個体からの正常な細胞(例えば健康な細胞)と比較するか、参照細胞からの核酸配列と比較し、配列内の差を特定する。
【0046】
MHC IとMHC IIへの結合親和性
【0047】
個別化されたがんワクチンのための最強の候補となるネオエピトープを選択して優先度を決定するため、本発明の発明者は、強い免疫応答を誘導するネオエピトープをランク付けして選択する方法を開発した。
【0048】
免疫応答を開始させるには、ネオエピトープは、主要組織適合複合体(MHC)に限定されたエピトープを標的とせねばならない。なぜならMHC分子に結合できるペプチドだけが、適格なT細胞標的を提供するからである。したがって最も有望なネオエピトープを選択する第1の工程として、そのMHC結合親和性を求めることが可能である。
【0049】
MHC Iは身体のあらゆる有核細胞の細胞表面に見いだされる。MHC Iの1つの機能は、さまざまなペプチドを細胞の中から細胞傷害性T細胞に提示することである。MHC I複合体-ペプチドの複合体を、このペプチドを細胞傷害性T細胞に提示する細胞の形質膜に挿入し、そのことによってこの特定のMHC I-ペプチド複合体に対する細胞傷害性T細胞の活性化を開始させる。ペプチドはMHC I分子内の溝の中に位置するため、通常は長さがアミノ酸約8~10個であることが可能である。MHC IはMHCクラスIと交換可能に用いることができる。
【0050】
MHC II分子は、通常は抗原提示細胞(例えば樹状細胞、単核食細胞、いくつかの内皮細胞、胸腺上皮細胞、B細胞)の表面にだけ見いだされる分子のファミリーである。MHC IIはMHCクラスIIと交換可能に用いることができる。
【0051】
MHCクラスIIペプチドによって提示される抗原は、MHC Iとは異なり、細胞外タンパク質に由来する。細胞外タンパク質はエンドサイトーシスを受け、リソソームの中で消化され、得られた抗原性ペプチドがMHCクラスII分子の表面にロードされ、次いで細胞表面に提示される。MHCクラスII分子の抗原結合溝は両端が開いているため、より長いペプチド(一般に長さが15~24個のアミノ酸残基)を提示することができる。それに加え、外来抗原は、通常は樹状細胞の表面にMHC IIによって提示されるため、交差提示によってMHC I経路を通じて提示することができる。交差提示は、大半の腫瘍とウイルスに対する免疫にとって必要である。
【0052】
MHCクラスI分子は、CD8+ T細胞の表面にあるT細胞受容体(TCR)と共受容体によって認識されるのに対し、MHCクラスII分子は、CD4+ T細胞の表面にあるTCRと共受容体によって認識される
【0053】
本発明の発明者は、ネオエピトープを選択する方法を確立した。この方法では、ネオエピトープがその臨床的有用性に関してランク付けされて、MHC(例えばMHC Iおよび/またはMHC II)に対する親和性を持つネオエピトープが選択される。
【0054】
したがって本発明の1つの側面は、個体のためのネオエピトープの数Aを選択する方法に関するものであり、この方法は、
a.1つ以上のネオエピトープ(ただしそれぞれのネオエピトープは、少なくとも1つの最小エピトープを含むとともに、参照配列と比べて少なくとも1つの変異(例えば免疫原性変異)を含む)を個体から取得する工程と;
b.ネオエピトープそれぞれの中の少なくとも1つの最小エピトープ(例えば少なくとも2つ、または3つ、または4つの最小エピトープ)についてMHC Iおよび/またはMHC IIへの結合親和性を求める工程と;
c.MHC Iおよび/またはMHC IIに結合することが予測される少なくとも1つの最小エピトープを含むネオエピトープを選択することによってMHC結合ネオエピトープを取得する工程と;
d.これらMHC結合ネオエピトープを、臨床で有用である可能性に関してランク付けする工程と;
e.最高ランクのMHC結合ネオエピトープの中からA個のネオエピトープを選択する工程を含んでおり、
これらの工程によって臨床で有用である可能性が大きいA個のネオエピトープを選択する。
【0055】
臨床で有用である可能性が大きいネオエピトープは免疫原性であるため、がんワクチンで用いるのに適している可能性が大きいネオエピトープである。したがって本発明の方法は、がんワクチンで用いるのに適している可能性が大きい免疫原性が最高のネオエピトープを選択する方法である。
【0056】
ヒト集団内のMHCアレルは極端な多型性を示す。それぞれの遺伝子座は、異なるペプチドをコードする明確に異なるアレルを含む多数のハプロタイプを含んでいる。したがってMHC IとMHC IIへの結合親和性は、同じ個体から得られたネオエピトープ配列とMHC Iおよび/またはMHC II配列の間で求めることが好ましい。
【0057】
個体で同定されたネオエピトープのMHC結合親和性を求めるには、その個体のHLA型を判定する必要がある。したがって本発明の方法は、その個体のHLA遺伝子型を判定することによってMHC結合親和性を求める工程も含むことができる。例えばそのHLA遺伝子型は、その個体の血液サンプルから判定する。
【0058】
個体のHLA型を判定する技術は周知である。HLA型の判定は適切な任意のシークエンシング法を用いて実施することができる。次世代シークエンシングを利用することが好ましい。
【0059】
例えば個体の血液サンプルから単離されたDNAを次世代シークエンシングプラットフォーム(例えばIlluminaプラットフォーム)でシークエンシングすることができる。
【0060】
MHC IとMHC IIへの結合親和性は、ペプチドとMHC I分子の間の結合親和性と、ペプチドとMHC II分子の間の結合親和性を予測するコンピュータプログラムを用いて求めること、または予測することができる。
【0061】
したがって一実施態様では、MHC結合親和性は、インシリコ予測によって求める。このインシリコ予測は、MHCクラスI分子および/またはMHCクラスII分子に対するペプチドの結合を予測するコンピュータプログラムによって実施することが好ましい。予測される結合親和性の値は、ランダムな天然の9量体ペプチド100,000個からなるセットで予測される結合親和性と比較することによって百分位スコアに翻訳される。MHC I分子とMHC II分子に対するネオエピトープの結合親和性を予測するために用いる%ランクスコアは、Nielsen他、2016年(Nielsen, M.他(2016年)「NetMHCpan-3.0:多重受容体とペプチド長のデータセットからの情報を組み込んだMHCクラスI分子への結合の予測改良」Genome Medicine:第8巻:33ページ)とVannessa, J.他((2017年)「NetMHCpan-4.0:溶離したリガンドとペプチド結合親和性のデータを組み込んだペプチド-MHCクラスI相互作用予測の改良」Vanessa Jurtz、Sinu Paul、Massimo Andreatta、Paolo Marcatili、Bjoern Peters、Morten Nielsen. The Journal of Immunology(2017年))に記載されているNetMHCpanコンピュータプログラムと、Andreatta他2015年(Andreatta M他「結合コア同定が改善されたペプチド-MHCクラスII結合親和性の正確な汎特異的予測」Immunogenetics. 2015年;第67巻(11~12):641~650ページ)に記載されているNetMHCIIpanコンピュータプログラムを用いて計算することが好ましい。本明細書に言及されている%ランクスコアは、NetMHCpan のための2016年3月30日の上記のデータベースと、NetMHCIIpanのための2015年9月29日の上記のデータベースを用いて計算される。
【0062】
小さな%ランクスコアは強い結合親和性を示しているのに対し、より大きな%ランクスコアは、より弱い結合親和性を示している。したがって小さな%ランクスコアを持つネオエピトープは、より大きな%ランクスコアを持つネオエピトープよりも上位にランクされることが好ましい。
【0063】
%ランクスコア(MHC I)は、ペプチド、最小エピトープ、ネオエピトープのいずれかについてMHC Iへの結合親和性を予測する%ランクスコアを意味する。
【0064】
%ランクスコア(MHC II)は、ペプチド、最小エピトープ、ネオエピトープのいずれかについてMHC IIへの結合親和性を予測する%ランクスコアを意味する。
【0065】
上に説明したように、各ネオエピトープは1つ以上の最小エピトープを含むことができる。所与の1つのネオエピトープ内のそれぞれの最小エピトープについて%ランクスコア(MHC I)または%ランクスコア(MHC II)を求めることもできる。そのときネオエピトープの%ランクスコアは、中に含まれる最小エピトープの最低%ランクスコアに等しいことが好ましい。すなわちネオエピトープの結合親和性は、このネオエピトープの中に含まれる最小エピトープのうちで最もよく結合した最小エピトープの結合親和性と同じであると見なされる。
【0066】
いくつかの実施態様では、%ランクスコア(MHC I)が2以下のネオエピトープまたは最小エピトープはMHC Iに結合すると見なされる。一般に、より小さな%ランクスコア(MHC I)は、より大きな結合親和性であることを示す。例えばいくつかの実施態様では、%ランクスコア(MHC I)が0.5~2(0.5<%ランクスコア(MHC I)≦2)であるネオエピトープまたは最小エピトープは、MHC Iに弱く結合すると見なされるのに対し、%ランクスコア(MHC I)が0.5以下であるというのは、ネオエピトープまたは最小エピトープがMHC Iに強く結合することを示している。いくつかの実施態様では、%ランクスコアが2よりも大きいネオエピトープまたは最小エピトープは、MHC Iに結合できるとは見なされない。好ましい実施態様では、MHC Iに結合することが予測される最小エピトープをまったく含まないネオエピトープは臨床で有用であるとは見なされず、除外されるか優先度が下げられる。言い換えると、本発明の方法の工程eは、MHC Iに結合しないことが予測されるネオエピトープを除外するか優先度を下げる工程を含むこと、またはこの工程からなることが可能である。ネオエピトープの優先度を下げるとは、ネオエピトープが、臨床における利用の重要性が低いと見なすことを意味する。ネオエピトープの除外は、ネオエピトープが臨床で用いるのに選択されないこと、および/またはネオエピトープがワクチンで用いるのに選択されないことを意味する。
【0067】
一般に、大きなMHC I結合親和性(すなわち小さな%ランクスコア(MHC I))を持つ最小エピトープを含むネオエピトープは、より小さなMHC I結合親和性(すなわちより大きい%ランクスコア(MHC I))を含むネオエピトープよりも上にランクされる。大きなMHC I結合親和性(すなわち小さな%ランクスコア(MHC I))を持つ最小エピトープを含むネオエピトープは、より小さなMHC I結合親和性(すなわちより大きい%ランクスコア(MHC I))を含むネオエピトープよりも上にランクされる。
【0068】
いくつかの実施態様では、%ランクスコア(MHC II)が10以下のネオエピトープまたは最小エピトープはMHC Iに結合すると見なされる。例えばいくつかの実施態様では、%ランクスコア(MHC II)が2~10(2<%ランクスコア(MHC II)≦10)であるネオエピトープまたは最小エピトープは、MHC II結合体に弱く結合すると見なせるのに対し、2以下の%ランクスコア(MHC II)は、ネオエピトープまたは最小エピトープがMHC IIに強く結合することを示す。いくつかの実施態様では、10よりも大きい%ランクスコア(MHC II)を持つネオエピトープまたは最小エピトープは、MHC IIに結合できないと見なされる。好ましい実施態様では、結合する最小エピトープをまったく含まないネオエピトープは臨床で有用ではないと見なされ、除外されるか優先度が下げられる。言い換えると、本発明の方法(例えば本発明の方法の工程cまたは工程e)は、MHC IIに結合しないことが予測される最小エピトープだけを含むネオエピトープを除外する工程を含むこと、またはこの工程からなることが可能である。ネオエピトープの優先度を下げるとは、ネオエピトープが、臨床における利用の重要性が低いと見なすことを意味する。ネオエピトープの除外は、ネオエピトープが臨床で用いるのに選択されないこと、および/またはネオエピトープがワクチンで用いるのに選択されないことを意味する。
【0069】
一般に、大きなMHC II結合親和性、すなわち小さな%ランクスコア(MHC II)を持つネオエピトープまたは最小エピトープは、より小さなMHC II結合親和性、すなわちより大きな%ランクスコア(MHC II)を持つネオエピトープまたは最小エピトープよりも上にランクされる。大きなMHC II結合親和性、すなわち小さな%ランクスコア(MHC II)を持つ最小エピトープを含むネオエピトープは、より小さなMHC II結合親和性、すなわちより大きな%ランクスコア(MHC II)を持つ最小エピトープを含むネオエピトープよりも上にランクされる。
【0070】
好ましい一実施態様では、MHC II結合最小エピトープは、%ランクスコア(MHC II)が10未満である。したがって本発明の方法の工程bで選択されたネオエピトープに含まれているMHC II結合最小エピトープは、%ランクスコア(MHC II)が10未満であることが好ましい。これは、%ランクスコア(MHC II)が10未満であってMHC IIに結合することが予測されるか明らかになった最小エピトープを含むネオエピトープが、臨床で利用できる可能性があるとして選択され、潜在的なワクチン候補となることを意味する。%ランクスコア(MHC II)が10超であってMHC IIに結合することが予測される最小エピトープを含むネオエピトープは、優先度が下げられるか除外されることが好ましい。
【0071】
一般に、大きなMHC II結合親和性を持つ最小エピトープを含むMHC II結合ネオエピトープが、より小さなMHC II結合親和性を持つ最小エピトープを含むネオエピトープよりも上にランクされる。
【0072】
最小エピトープの数
【0073】
2つ以上の最小エピトープを含むネオエピトープは、最小エピトープを1つだけ含むネオエピトープよりも臨床で有用である可能性が大きいと予想することができる。したがっていくつかの実施態様では、免疫原性変異を含んでいてMHC分子に結合することのできる最小エピトープの数が、上記の方法の工程dにおける最も重要なパラメータである。しかし臨床で有用である可能性が大きいとして本発明の方法によって選択されるネオエピトープが最小エピトープを1つだけ含むことも可能である。このようなネオエピトープは、他のネオエピトープをまったく利用できない場合、および/またはこの最小エピトープがMHC分子に結合したり強く結合したりする場合には、臨床において重要である可能性がある。
【0074】
一実施態様では、より多数の最小エピトープを含むネオエピトープは、より少数の最小エピトープを含むネオエピトープよりも上にランクされる。より少数の最小エピトープを含むネオエピトープには、最小エピトープを1つだけ含むネオエピトープが含まれる。
【0075】
したがって一実施態様では、本発明の方法は、MHC I結合ネオエピトープに含まれる最小エピトープの数を求める工程をさらに含んでいて、結合するより多数の最小エピトープを含むMHC I結合ネオエピトープは、結合するより少数の最小エピトープを含むMHC I結合ネオエピトープよりも上にランクされる。
【0076】
別の一実施態様では、本発明の方法は、MHC II結合ネオエピトープの中に存在する最少エピトーの数を求める工程を含んでいるか、さらに含んでおり、結合するより多数の最小エピトープを含むMHC II結合ネオエピトープは、結合するより少数の最小エピトープを含むMHC II結合ネオエピトープよりも上にランクされる。
【0077】
いくつかの実施態様では、本発明の方法は、MHC I分子に結合できる最小エピトープの数と、MHC II分子に結合できる最小エピトープの数の両方を求める工程を含んでいる。
【0078】
ネオエピトープをその中に含まれる最小エピトープの総数の関数としてランク付けするため、いくつかの実施態様では、MHC I結合最小エピトープの数に、MHC II結合最小エピトープの数よりも大きな重み(例えば2倍)を付ける。これは、MHC I結合最小エピトープの数に関するスコアが、MHC II結合最小エピトープの数に関するスコアよりも大きいことを意味する。例えば14個のMHC I結合最小エピトープと13個のMHC II結合最小エピトープを持つネオエピトープは、12個のMHC I結合最小エピトープと15個のMHC II結合最小エピトープを含むネオエピトープよりも免疫原性が大きいことが予測される。
【0079】
したがって各ネオエピトープに関する結合スコアが求まる。実際には、1つのネオエピトープに含まれる(結合)最小エピトープの数が求まり、そのことによってx個のMHC I結合最小エピトープおよび/またはy個のMHC II結合最小エピトープが同定される。
【0080】
ネオエピトープの結合スコアを求めるための適切なスコア化スキームとして、
a×2x+b×y
が可能であり、より大きな結合スコアは、上に説明したように、臨床で有用である可能性がより大きいことを示している。
【0081】
例えばy>0の場合にはa=1、y=0の場合にはa=0であり、x>0の場合にはb=1、x=0の場合にはb=0である。
【0082】
別の適切なスコア化スキームとして、
a×x+b×y
が可能であり、より大きな結合スコアは、上に説明したように、臨床で有用である可能性がより大きいことを示している。
【0083】
例えばy>0の場合にはa=2かつb=1、またはa=2であり、y=0の場合にはa=0であり、x>0の場合にはb=1、x=0の場合にはb=0である。
【0084】
いくつかの実施態様では、少なくとも1つのMHC I結合最小エピトープと少なくとも1つのMHC II結合最小エピトープを含むネオエピトープは、MHC I結合最小エピトープだけを含むかMHC II結合最小エピトープだけを含むネオエピトープよりも上にランクされる。別の実施態様では、少なくとも1つのMHC I結合最小エピトープを含むネオエピトープは、MHC II結合最小エピトープだけを含むネオエピトープよりも上にランクされる。別の実施態様では、少なくとも1つのMHC II結合最小エピトープを含むネオエピトープは、MHC I結合最小エピトープだけを含むネオエピトープよりも上にランクされる。
【0085】
いくつかの実施態様では、少なくとも2個のMHC結合最小エピトープを含むネオエピトープは、MHC結合最小エピトープを1個だけ含むネオエピトープよりも上にランクされる。いくつかの実施態様では、少なくとも3個のMHC結合最小エピトープを含むネオエピトープは、2個以下のMHC結合最小エピトープを含むネオエピトープよりも上にランクされる。いくつかの実施態様では、少なくとも4個のMHC結合最小エピトープを含むネオエピトープは、3個以下のMHC結合最小エピトープを含むネオエピトープよりも上にランクされる。いくつかの実施態様では、少なくとも5個のMHC結合最小エピトープを含むネオエピトープは、4個以下のMHC結合最小エピトープを含むネオエピトープよりも上にランクされる。いくつかの実施態様では、少なくとも6個のMHC結合最小エピトープを含むネオエピトープは、5個以下のMHC結合最小エピトープを含むネオエピトープよりも上にランクされる。いくつかの実施態様では、少なくとも7個のMHC結合最小エピトープを含むネオエピトープは、6個以下のMHC結合最小エピトープを含むネオエピトープよりも上にランクされる。いくつかの実施態様では、少なくとも8個のMHC結合最小エピトープを含むネオエピトープは、7個以下のMHC結合最小エピトープを含むネオエピトープよりも上にランクされる。いくつかの実施態様では、少なくとも9個のMHC結合最小エピトープを含むネオエピトープは、8個以下のMHC結合最小エピトープを含むネオエピトープよりも上にランクされる。いくつかの実施態様では、少なくとも10個のMHC結合最小エピトープを含むネオエピトープは、9個以下のMHC結合最小エピトープを含むネオエピトープよりも上にランクされる。MHC結合最小エピトープとして、MHC I結合最小エピトープまたはMHC II結合最小エピトープが可能である。
【0086】
いくつかの実施態様では、少なくとも2個のMHC I結合最小エピトープを含むネオエピトープは、MHC I結合最小エピトープを1個だけ含むネオエピトープ、またはMHC II結合最小エピトープだけを含むネオエピトープよりも上にランクされる。いくつかの実施態様では、少なくとも3個のMHC I結合最小エピトープを含むネオエピトープは、2個以下のMHC I結合最小エピトープを含むネオエピトープ、またはMHC II結合最小エピトープだけを含むネオエピトープよりも上にランクされる。いくつかの実施態様では、少なくとも4個のMHC I結合最小エピトープを含むネオエピトープは、3個以下のMHC I結合最小エピトープを含むネオエピトープ、またはMHC II結合最小エピトープだけを含むネオエピトープよりも上にランクされる。いくつかの実施態様では、少なくとも5個のMHC I結合最小エピトープを含むネオエピトープは、4個以下のMHC I結合最小エピトープを含むネオエピトープ、またはMHC II結合最小エピトープだけを含むネオエピトープよりも上にランクされる。いくつかの実施態様では、少なくとも6個のMHC I結合最小エピトープを含むネオエピトープは、5個以下のMHC I 結合最小エピトープを含むネオエピトープ、またはMHC II結合最小エピトープだけを含むネオエピトープよりも上にランクされる。いくつかの実施態様では、少なくとも7個のMHC I結合最小エピトープを含むネオエピトープは、6個以下のMHC I結合最小エピトープを含むネオエピトープ、またはMHC II結合最小エピトープだけを含むネオエピトープよりも上にランクされる。いくつかの実施態様では、少なくとも8個のMHC I結合最小エピトープを含むネオエピトープは、7個以下のMHC I結合最小エピトープを含むネオエピトープ、またはMHC II結合最小エピトープだけを含むネオエピトープよりも上にランクされる。いくつかの実施態様では、少なくとも9個のMHC I結合最小エピトープを含むネオエピトープは、8個以下のMHC I結合最小エピトープを含むネオエピトープ、またはMHC II結合最小エピトープだけを含むネオエピトープよりも上にランクされる。いくつかの実施態様では、少なくとも10個のMHC I結合最小エピトープを含むネオエピトープは、9個以下のMHC I結合最小エピトープを含むネオエピトープ、またはMHC II結合最小エピトープだけを含むネオエピトープよりも上にランクされる。
【0087】
いくつかの実施態様では、少なくとも2個のMHC II結合最小エピトープを含むネオエピトープは、MHC II結合最小エピトープを1個だけ含むネオエピトープよりも上にランクされる。いくつかの実施態様では、少なくとも3個のMHC II結合最小エピトープを含むネオエピトープは、2個以下のMHC II結合最小エピトープを含むネオエピトープよりも上にランクされる。いくつかの実施態様では、少なくとも4個のMHC II結合最小エピトープを含むネオエピトープは、3個以下のMHC II結合最小エピトープを含むネオエピトープよりも上にランクされる。いくつかの実施態様では、少なくとも5個のMHC II結合最小エピトープを含むネオエピトープは、4個以下のMHC II結合最小エピトープを含むネオエピトープよりも上にランクされる。いくつかの実施態様では、少なくとも6個のMHC II結合最小エピトープを含むネオエピトープは、5個以下のMHC II結合最小エピトープを含むネオエピトープよりも上にランクされる。いくつかの実施態様では、少なくとも7個のMHC II結合最小エピトープを含むネオエピトープは、6個以下のMHC II結合最小エピトープを含むネオエピトープよりも上にランクされる。いくつかの実施態様では、少なくとも8個のMHC II結合最小エピトープを含むネオエピトープは、7個以下のMHC II結合最小エピトープを含むネオエピトープよりも上にランクされる。いくつかの実施態様では、少なくとも9個のMHC II結合最小エピトープを含むネオエピトープは、8個以下のMHC II結合最小エピトープを含むネオエピトープよりも上にランクされる。いくつかの実施態様では、少なくとも10個のMHC II結合最小エピトープを含むネオエピトープは、9個以下のMHC II結合最小エピトープを含むネオエピトープよりも上にランクされる。
【0088】
結合差
【0089】
いくつかの実施態様では、MHC I結合親和性が対応する参照ペプチドのMHC I結合親和性よりも大きいか、はるかに大きい最小エピトープを含むネオエピトープは、MHC I結合親和性が対応する参照ペプチドのMHC I結合親和性と比べてわずかしか改善されていない最小エピトープを含むネオエピトープよりも優先される。
【0090】
したがってネオエピトープと対応する参照ペプチドの間の%ランクスコア(MHC I)の比を用いて臨床で使用できる可能性のあるネオエピトープを選択することができる。本明細書では、MHC Iへの結合に関する%ランクスコアの比をMHC I結合差とも呼ぶ。
【0091】
同様に、いくつかの実施態様では、MHC II結合親和性が対応する参照ペプチドのMHC II結合親和性よりも大きいか、はるかに大きい最小エピトープを含むネオエピトープは、MHC II結合親和性が対応する参照ペプチドのMHC II結合親和性と比べてわずかしか改善されていない最小エピトープを含むネオエピトープよりも優先される。
【0092】
したがってネオエピトープと対応する参照ペプチドの間の%ランクスコア(MHC II)の比を用いて臨床で使用できる可能性のあるネオエピトープを選択することができる。本明細書では、MHC IIへの結合に関する%ランクスコアの比をMHC II結合差とも呼ぶ。
【0093】
参照ペプチドとネオエピトープの間のMHC I結合差は、以下の式、すなわち(参照の%ランクスコア(MHC I))/(ネオエピトープの%ランクスコア(MHC I))によって与えられる。ただし参照の%ランクスコア(MHC I)は、参照ペプチドとMHC I分子の間の結合親和性の予測値であり、ネオエピトープの%ランクスコア(MHC I)は、ネオエピトープとMHC I分子の間の結合親和性の予測値である。
【0094】
本発明の一実施態様では、上記の方法の工程bまたは工程はさらに、(参照の%ランクスコア(MHC I))/(ネオエピトープの%ランクスコア(MHC I))によって与えられるMHC I結合差を求めることを含んでおり、大きなMHC I結合差を持つネオエピトープは、より小さなMHC I結合差を持つネオエピトープよりも上にランクされる。
【0095】
一実施態様では、ネオエピトープは、MHC I結合差、すなわち(参照の%ランクスコア(MHC I))/(ネオエピトープの%ランクスコア(MHC I))が2未満である場合に優先度が下げられる。
【0096】
一実施態様では、ネオエピトープは、MHC I結合差、すなわち(参照の%ランクスコア(MHC I))/(ネオエピトープの%ランクスコア(MHC I))が20未満(例えば3未満、例えば1未満)である場合に優先度が下げられる。ネオエピトープは、結合差が1以上(例えば3以上、例えば20以上)である場合に臨床で重要である可能性があると見なされる。
【0097】
同様に、参照ペプチドと最小エピトープの間のMHC I結合差は、以下の式、すなわち(参照の%ランクスコア(MHC I))/(最小エピトープの%ランクスコア(MHC I))によって与えられる。ただし参照の%ランクスコア(MHC I)は、参照ペプチドとMHC I分子の間の結合親和性の予測値であり、最小エピトープの%ランクスコア(MHC I)は、最小エピトープとMHC I分子の間の結合親和性の予測値である。
【0098】
本発明の一実施態様では、上記の方法の工程bまたは工程はさらに、(参照の%ランクスコア(MHC I))/(最小エピトープの%ランクスコア(MHC I))によって与えられるMHC I結合差を求めることを含んでおり、大きなMHC I結合差を持つ最小エピトープは、より小さなMHC I結合差を持つ最小エピトープよりも上にランクされる。
【0099】
一実施態様では、最小エピトープの優先度が下げられるのは、MHC I結合差、すなわち(最小エピトープの参照配列の%ランクスコア(MHC I))/(最小エピトープの%ランクスコア(MHC I))が20未満(例えば3未満、例えば1未満)の場合である。最小エピトープは、結合差が1以上(例えば3以上、例えば20以上)である場合に臨床で重要である可能性があると見なされる。
【0100】
ネオエピトープがMHC I結合最小エピトープを1つだけ含んでいる場合には、このネオエピトープのMHC I結合差は、この最小エピトープのMHC I結合差と等しい。ネオエピトープが2つ以上のMHC I結合最小エピトープを含んでいる場合には、このネオエピトープのMHC I結合差は、これら2つ以上のMHC I結合最小エピトープの中の最大MHC I結合差に等しいと見なす。同様に、ネオエピトープがMHC II結合最小エピトープを1つだけ含んでいる場合には、このネオエピトープのMHC II結合差は、この最小エピトープのMHC II結合差と等しい。ネオエピトープが2つ以上のMHC II結合最小エピトープを含んでいる場合には、このネオエピトープのMHC II結合差は、これら2つ以上のMHC II結合最小エピトープの中の最大MHC II結合差に等しいと見なす。これは、参照ペプチドにも当てはまる。
【0101】
いくつかの実施態様では、変異の位置も考慮する。言い換えると、ネオエピトープまたは最小エピトープの臨床での有用性は、上記のことを考慮して判断されるだけでなく、変異の位置の関数としても判断される。好ましい実施態様では、変異は免疫原性である。MHC分子のペプチド結合溝は、ペプチド、またはペプチドの断片(一般に長さが9個のアミノ酸、すなわち最小エピトープ)を収容する。最小エピトープとMHC分子は係留残基の側鎖を通じて接触する。長さがアミノ酸9個の最小エピトープを例に取ると、MHC分子に対する最小エピトープの係留位置は2位と9位である。MHC II分子への結合に関しては、係留位置は、1位と4位と9位である。
【0102】
いくつかの実施態様では、変異が非係留位置にある最小エピトープを含むネオエピトープは、その結合差に関係なく、除外されるかランクが下げられる。MHC I結合最小エピトープに関しては、これは、いくつかの実施態様では、変異が、MHC分子の結合溝に収容される最小エピトープまたは最小エピトープの一部の1位、3位、4位、5位、6位、7位、8位のいずれかにある場合には、結合差がどれほど大きくてもネオエピトープが除外されるかランクが下げられることを意味する。好ましいネオエピトープは、係留位置に変異があって結合差が2以上(例えば4以上、例えば6以上、例えば8以上、例えば10以上、例えば12以上、例えば14以上、例えば16以上、例えば18以上、最も好ましくは例えば20以上)の最小エピトープを含んでいる。
【0103】
MHC II結合差も選択基準として用いることができる。参照ペプチドとネオエピトープの間のMHC II結合差は、以下の式、すなわち(最小エピトープの参照配列の%ランクスコア(MHC II))/(最小エピトープの%ランクスコア(MHC II))によって与えられる。ただし最小エピトープの%ランクスコア(MHC II)は、そのネオエピトープ内の最高ランクの最小エピトープに関する結合親和性の予測値であり、参照配列の%ランクスコア(MHC II)は、参照配列の中の対応するペプチドに関する結合親和性の予測値である。
【0104】
本発明の一実施態様では、上記の方法の工程bまたは工程cはさらに、式:(最小エピトープの参照配列の%ランクスコア(MHC II))/(最小エピトープの%ランクスコア(MHC II))によって与えられるMHC II結合差を求めることを含んでおり、大きなMHC II結合差を持つネオエピトープは、より小さなMHC II結合差を持つネオエピトープよりも上にランクされる。
【0105】
同様に、参照ペプチドと最小エピトープの間のMHC II結合差は、以下の式、すなわち(参照の%ランクスコア(MHC II))/(最小エピトープの%ランクスコア(MHC II))によって与えられる。ただし参照の%ランクスコア(MHC II)は、参照ペプチドとMHC II分子の間の結合親和性の予測値であり、最小エピトープの%ランクスコア(MHC II)は、最小エピトープペプチドとMHC II分子の間の結合親和性の予測値である。
【0106】
結合親和性MHC IIを求める方法は上に記載されている。
【0107】
本発明の一実施態様では、20未満(例えば15未満、例えば14未満、例えば13未満、例えば12未満、例えば11未満)の%ランクスコア(MHC II)でMHC IIに結合することが予想されるMHC II結合最小エピトープを含むネオエピトープは、除外されるか優先度が下げられる。
【0108】
好ましい一実施態様では、10未満の%ランクスコア(MHC II)を持つMHC II結合最小エピトープを含むネオエピトープは、除外されるか優先度が下げられる。
【0109】
別の一実施態様では、9以下(例えば8以下、例えば7以下、例えば6以下、例えば5以下、例えば4以下、例えば3以下、例えば2以下)の%ランクスコア(MHC II)を持つMHC II結合最小エピトープを含むネオエピトープは、除外されるか優先度が下げられる。
【0110】
上記の方法の工程(例えば工程d)で利用できるスコア化スキームの一例を以下に与える:
・変異を持ち、変異の位置に関係なく結合差が1未満の最小エピトープ:スコアは1に等しい;
・非係留位置に変異を持ち、1≦結合差<3である最小エピトープ:スコアは2に等しい;
・係留位置に変異を持ち、1≦結合差<3である最小エピトープ:スコアは3に等しい;
・非係留位置に変異を持ち、3≦結合差<20である最小エピトープ:スコアは4に等しい;
・係留位置に変異を持ち、3≦結合差<20である最小エピトープ:スコアは5に等しい;
・非係留位置に変異を持ち、結合差が20超である最小エピトープ:スコアは6に等しい;
・係留位置に変異を持ち、結合差が20超である最小エピトープ:スコアは7に等しい。
【0111】
結合差として、MHC I結合差またはMHC II結合差が可能である。
【0112】
上に与えたスコアは任意に決めた値であり、スコアが上に例示したように増加していく限り、別の任意の値で置き換えられることが理解されよう。見てわかるように、一般に、結合差が小さい(例えば1未満)最小エピトープまたはエピトープは、変異の位置に関係なく最低のランクである。結合差が同じ範囲(例えば1≦結合差<3;または3≦結合差<20;または結合差が20超)にある最小エピトープまたはエピトープに関しては、係留位置に変異を含む最小エピトープまたはエピトープは、非係留位置に変異を含む最小エピトープまたはエピトープよりも上にランクされる。一般に、結合差が大きいほどスコアは大きくなる。似たスコアだと、係留位置の変異は、非係留位置の変異よりも大きなスコアになる。
【0113】
上記のスコア化スキームでは、最低ランクの最小エピトープは、非係留位置に変異を持つか、係留位置に変異を持ち、かつ結合差が1未満である。
【0114】
ネオエピトープの長さ
【0115】
ネオエピトープ配列は、ネオエピトープに含まれる最小エピトープを処理してMHC分子の表面に提示するのに適した長さを持つことが好ましい。したがって一実施態様では、ネオエピトープは長さがアミノ酸7~40個である(例えばアミノ酸10~35個、より好ましくはアミノ酸15~30個、例えばアミノ酸25~30個)。好ましい一実施態様では、ネオエピトープは27個のアミノ酸である。ネオエピトープの長さには、MHC I結合ネオエピトープとMHC II結合ネオエピトープの両方の長さが含まれる。
【0116】
変異は、本質的にネオエピトープ配列の中央に位置することが好ましい。
【0117】
いくつかの実施態様では、所与のネオエピトープのための最小エピトープは、このネオエピトープのアミノ酸の数以下の数のアミノ酸からなる。ネオエピトープが最小エピトープである場合には、ネオエピトープと最小エピトープは同じ長さを持つ。そのような実施態様では、最小エピトープは、長さがアミノ酸7~40個(例えばアミノ酸10~35個)、より好ましくはアミノ酸15~30個(例えばアミノ酸25~30個)である。一実施態様では、最小エピトープの長さはアミノ酸27個である。最小エピトープの長さには、MHC I結合ネオエピトープとMHC II結合ネオエピトープの両方の長さが含まれる。
【0118】
別の実施態様では、ネオエピトープに含まれる最小エピトープは、ネオエピトープよりも短い。例えばネオエピトープは長さがアミノ酸7~40個であり、対応する最小エピトープは長さがアミノ酸6~39個である、すなわちネオエピトープの長さより少なくとも1個のアミノ酸だけ短い(例えば少なくともアミノ酸2個、例えば少なくともアミノ酸3個、例えば少なくともアミノ酸4個、例えば少なくともアミノ酸5個、例えば少なくともアミノ酸6個、例えば少なくともアミノ酸7個、例えば少なくともアミノ酸8個、例えば少なくともアミノ酸9個、例えば少なくともアミノ酸10個、例えば少なくともアミノ酸11個、例えば少なくともアミノ酸12個、例えば少なくともアミノ酸13個、例えば少なくともアミノ酸15個、例えば少なくともアミノ酸16個、例えば少なくともアミノ酸17個、例えば少なくともアミノ酸18個、例えば少なくともアミノ酸19個、例えば少なくともアミノ酸20個だけ短い)。好ましい一実施態様では、ネオエピトープはアミノ酸27個であり、最小エピトープは長さがアミノ酸6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個のいずれかである。
【0119】
いくつかの実施態様では、最小エピトープはMHC Iに結合するか、結合することが予測され、最小エピトープは長さがアミノ酸5~20個である(例えばアミノ酸6~19個、例えばアミノ酸7~18個、例えばアミノ酸7~17個、例えばアミノ酸7~16個、例えばアミノ酸8~15個、例えばアミノ酸8~14個)。典型的には、このような最小エピトープは長さがアミノ酸8~14個である。
【0120】
いくつかの実施態様では、最小エピトープはMHC IIに結合するか、結合することが予測され、最小エピトープは長さがアミノ酸5~20個である(例えばアミノ酸6~19個、例えばアミノ酸7~18個、例えばアミノ酸7~17個、例えばアミノ酸8~16個、例えばアミノ酸9~15個)。典型的には、このような最小エピトープは長さがアミノ酸9~15個である。
【0121】
T細胞によって認識されることが知られているエピトープとの類似
【0122】
いくつかの実施態様では、本発明の方法はさらに、T細胞によって認識されることが知られているエピトープと非常によく似た最小エピトープを含む一群のネオエピトープを選択する工程を含んでいる。当業者は、そのようなエピトープのリストをどこで見つけられるかを知っている。T細胞によって認識されることが知られているエピトープは、例えばImmune Epitope Database and Analysis Resource(IEDBデータベース)から取得することができ、そこにはヒトに感染するエピトープが掲載されている(https://www.iedb.org/)。ネオエピトープに含まれていて臨床で有用である可能性が大きいと考えられる最小エピトープの配列をこのデータベースの中で探し、それらの最小エピトープが、T細胞によって認識されることが知られているエピトープとよく似ているかどうかを判断することができる。
【0123】
「よく似た」という表現は、2つの配列に適用されるとき、これらの配列が有意な類似性(すなわち一致と類似の合計が多いこと)を共有していることを意味する。類似性は、例えばBLOSUM62を用いてアラインメントスコアを計算することによって判断することができる。当業者は、2つの配列が互いによく似ているかどうかを判断するのにどの閾値のアラインメントスコアを用いるかを知っている。例えば9量体エピトープに関しては、26超というアラインメントスコアが、よく似たエピトープを選択するための閾値として用いるのに適切である可能性がある。
【0124】
規格化したアラインメントスコアを用いて2つのペプチド配列が互いによく似ているかどうかを評価することもできる。例えば規格化したアラインメントスコアとして、IEDBデータベースの中で所与の最小エピトープと所与のエピトープに関して得られたBLOSUM62アラインメントスコアを、この最小エピトープとそれ自身の間のアラインメントスコア(この最小エピトープに関する最大アラインメントスコアに対応する)で割った値が可能である。類似性の指標を得るため、この結果を次に1から差し引く。言い換えると、以下の計算を実行する。
既知のエプトープとの類似性=1-(最小エピトープのアラインメントスコア)/(既知のエピトープのアラインメントスコア)
【0125】
このスコアが大きいほど、既知のエピトープとの類似性が大きい。
【0126】
全最小エピトープの数
【0127】
有用なネオエピトープは、変異(例えば免疫原性変異)を含んでいて長さがアミノ酸5~20個(好ましくはアミノ酸6~19個、例えばアミノ酸7~18個、例えばアミノ酸8~17個、例えばアミノ酸9~16個、例えばアミノ酸10~15個、例えばアミノ酸11~14個、例えばアミノ酸12個または13個、例えばアミノ酸が5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個のいずれか)の少なくとも1つの最小エピトープを含んでいる。最小エピトープは長さがアミノ酸8~14個であることが好ましい。ネオエピトープはいくつかの最小エピトープを含むことができ、それらは重複していてもよい。したがって1つのネオエピトープは、1~100個の最小エピトープ、例えば1~90個の最小エピトープ、例えば1~80個の最小エピトープ、例えば1~70個の最小エピトープ、例えば1~60個の最小エピトープ、例えば1~50個の最小エピトープ、例えば1~40個の最小エピトープ、例えば1~30個の最小エピトープ、例えば1~20個の最小エピトープ、例えば2~19個の最小エピトープ、例えば3~18個の最小エピトープ、例えば4~17個の最小エピトープ、例えば5~16個の最小エピトープ、例えば6~15個の最小エピトープ、例えば7~14個の最小エピトープ、例えば8~13個の最小エピトープ、例えば9~12個の最小エピトープ、例えば10個または11個の最小エピトープを含むことができ、これらはすべて免疫原性変異を含んでいる。最小エピトープはMHC分子(例えばMHC I分子またはMHC II分子)に対する親和性を有する。ネオエピトープに含まれる変異は必ずしも最小エピトープの中央にある必要はないが、いくつかの実施態様では最小エピトープの中央に存在することができる。したがって変異は、最小エピトープの最初の残基または最後の残基に位置すること、または両者の間の他の任意の残基に位置することが可能である。上述のように、好ましい実施態様では、変異は係留位置にある。いくつかの実施態様では、非係留位置に変異を持つ最小エピトープは、除外されるか優先度が下げられる。
【0128】
一般に、1つのネオエピトープは、アミノ酸k個の長さを持つn個の異なる最小エピトープを含むことができ、これらはすべて変異を含んでいる。所与の1つのネオエピトープは、長さが異なる複数の最小エピトープを含むことができる。
【0129】
変異が自然に起こる確率
【0130】
好ましい一実施態様では、本発明の方法はさらに、ネオエピトープの中に存在する変異が自然に起こる確率を求める工程を含んでいる。タンパク質の中のアミノ酸を変化させるとそのタンパク質の機能を発揮する能力が低下する可能性や、それどころか機能が変化する可能性さえある。細胞の中で重要な機能を持つタンパク質が変化すると、細胞の死を引き起こす可能性がある。逆に、変化することによって細胞が異なるやり方ではあるが機能し続ける可能性があり、元のタンパク質と比べて効率的/有利な変化につながる可能性さえある。するとこの変異をこの生物の子孫へと受け継ぐことが可能になる。変化することによって子孫に有意な物理的不利益がまったく生じないとしても、この変異は集団内に残り続ける可能性がある。アミノ酸は物理的特性と化学的特性が互いに大きく異なっているため、似た特性のグループに分類される。同じグループ内の1つのアミノ酸を別のアミノ酸で置き換えると、異なるカテゴリーからのアミノ酸で置き換えるよりもタンパク質の構造と機能に対する影響がより小さい可能性が大きい。したがって参照アミノ酸とは異なる物理化学的グループからの変異したアミノ酸を含むネオエピトープは、いくつかの実施態様では、参照アミノ酸と同じ物理化学的グループからの変異したアミノ酸を含むネオエピトープよりも優先される。
【0131】
変異によってアミノ酸置換が生じることが好ましい。「置換ペア」という用語は、本明細書では、置換されるアミノ酸と、このアミノ酸と置換されるアミノ酸のペアを意味する。
【0132】
したがって本発明の好ましい一実施態様では、本明細書の上部に記載されている工程dはさらに、変異したアミノ酸配列と参照アミノ酸配列の間の類似性を反映したスコアを求めることを含んでいる。
【0133】
特定のアミノ酸置換に関するスコアを計算するのに置換行列を用いることができる。置換行列は、利用できるすべてのタンパク質配列で観察される変異頻度に基づく確率または対数スコアを含んでいる。対数オッズスコアが小さいほど、天然のアミノ酸配列を互いに比較したときにこのアミノ酸置換が観察される可能性が小さい。小さな対数オッズスコアは、アミノ酸置換ペアの間の物理化学的特性の大きな違いとよく相関していることも示されている。例えば対数オッズスコアが小さい置換だと、すなわち進化的視点でこの変異が起こる確率/頻度がより小さいと、新たに形成される変異したペプチド(エピトープ)と参照ペプチドの間の物理化学的特性の差がより大きいため、T細胞受容体によって発見される機会が、対数オッズスコアが大きい置換よりも多い。T細胞受容体は、自己ペプチドに対して寛容であるだけでなく、自己ペプチドとよく似たペプチド(すなわち大きな対数スコアを持つペプチド)に対しても寛容である能力を有する。この機構は中枢性寛容として知られている。
【0134】
行列計算で用いる確率は、多重タンパク質アラインメントで見いだされる保存された配列の「ブロック」を見ることによって計算される。これらの保存された配列は関連するタンパク質群の中で機能的に重要であると考えられるため、より保存されていない領域よりも置換率が小さい。密接に関連した配列群が置換率に及ぼすバイアスを小さくするため、ブロック内にあって配列一致率が所定の閾値よりも大きい区画をクラスター化することで、そのような各クラスターの重みを小さくする(Henikoff, S;Henikoff, JG(1992年)「タンパク質ブロックからのアミノ酸置換行列」Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 第89巻(22):10915~10919ページ)。BLOSUM62行列に関しては、この閾値は62%に設定されている。次いでクラスター間でペア頻度をカウントした。したがってペアは、62%未満一致する区画の間でだけカウントした。密接に関連した2つの配列のアラインメントにはより大きな数のBLOSUM行列を用い、違いがより大きな配列にはより小さな数のBLOSUM行列を用いることが考えられる。
【0135】
したがって本発明の好ましい一実施態様では、ネオエピトープの中にアミノ酸置換がランダムに生じる確率を反映したスコアは、進化に基づくスコア行列を用いて求められる。より好ましい一実施態様では、このスコア行列は対数オッズ行列である。特に好ましい一実施態様では、この行列はBLOSUM行列であり、好ましいのはBLOSUM62行列である。
【0136】
BLOSUM行列を計算するため、以下の式を用いる:
Sij=(1/λ)×log(ρij/(qi×qj))。
ただしρijは、相同な配列の中で2つのアミノ酸iとjが互いに置き換わる確率であり、qiとqjは、任意のタンパク質配列の中にアミノ酸iとjが見いだされるバックグラウンドの確率である。因子λはスケーリング因子であり、行列が容易に計算できる整数値を含むように設定した。
【0137】
変異を含んでいてBLOSUM62スコアが小さいアミノ酸置換ペアを持つネオエピトープは、BLOSUM62スコアがより大きいアミノ酸置換ペアを持つネオエピトープよりも上にランクされる。
【0138】
一実施態様では、BLOSUM62スコアが3未満(例えば2未満)のアミノ酸置換ペアと関連する変異を含まないネオエピトープは、優先度が下げられるか除外される。
【0139】
本発明の好ましい一実施態様では、BLOSUM62スコアが1未満のアミノ酸置換ペアを含まないネオエピトープは、優先度が下げられるか除外される。したがって臨床で用いるため、BLOSUM62スコアが1未満の少なくとも1つのアミノ酸置換ペアを含むネオエピトープが優先されるか選択されることが好ましい。
【0140】
別の一実施態様では、BLOSUM62スコアが1未満のアミノ酸置換ペアを含まないネオエピトープは、優先度が下げられるか除外される。したがって一実施態様では、臨床で用いるため、BLOSUM62スコアが1未満の少なくとも1つのアミノ酸置換ペアを含むネオエピトープが優先されるか選択される。
【0141】
臨床で使用できる可能性のあるMHC I結合ネオエピトープを選択するには、ネオエピトープが、以下の2つの基準iとii、すなわち
i.大きなMHC I結合差
ii.小さなBLOSUM62スコア
の少なくとも1つを満たすことが好ましい。
【0142】
一実施態様では、以下の基準iとii、すなわち
i.ネオエピトープのMHC I結合差が1よりも大きいこと;
ii.ネオエピトープが、3未満のBLOSUM62スコア(例えば2未満、好ましくは1未満)を持つアミノ酸置換を含むこと
の少なくとも1つを満たすMHC I結合ネオエピトープは、基準iとiiのどちらも満たさないMHC I結合ネオエピトープよりも上にランクされる。
【0143】
好ましい一実施態様では、以下の基準iとii、すなわち
i.ネオエピトープのMHC I結合差が3よりも大きいこと;
ii.ネオエピトープが、3未満のBLOSUM62スコア(例えば2未満、好ましくは1未満)を持つアミノ酸置換を含むこと
の少なくとも1つを満たすMHC I結合ネオエピトープは、基準iとiiのどちらも満たさないMHC I結合ネオエピトープよりも上にランクされる。
【0144】
さらに好ましい一実施態様では、以下の基準iとii、すなわち
i.ネオエピトープのMHC I結合差が2よりも大きいこと;
ii.ネオエピトープが、3未満のBLOSUM62スコア(例えば2未満、好ましくは1未満)を持つアミノ酸置換を含むこと
の少なくとも1つを満たすMHC I結合ネオエピトープは、基準iとiiのどちらも満たさないMHC I結合ネオエピトープよりも上にランクされる。
【0145】
いくつかの実施態様では、上記の基準iとiiのどちらも満たさないMHC I結合ネオエピトープは、除外されるか優先度が下げられることが好ましい。それに加え、上に記載されているように、いくつかの実施態様では、基準iを満たすが変異が非係留位置にあるMHC I結合ネオエピトープは、除外されるか優先度が下げられる。
【0146】
臨床で使用できる可能性のあるMHC II結合ネオエピトープを選択するには、ネオエピトープが、以下の基準iとii、すなわち
i.大きなMHC II結合差
ii.小さなBLOSUM62スコア
の少なくとも1つを満たすことが好ましい。
【0147】
一実施態様では、以下の基準iとii、すなわち
i.ネオエピトープのMHC II結合差が2よりも大きいこと;
ii.ネオエピトープが、3未満のBLOSUM62スコア(例えば2未満、好ましくは1未満)を持つアミノ酸置換を含むこと
の少なくとも1つを満たすMHC II結合ネオエピトープは、基準iとiiのどちらも満たさないMHC II結合ネオエピトープよりも上にランクされる。
【0148】
好ましい一実施態様では、以下の基準iとii、すなわち
i.ネオエピトープのMHC II結合差が3よりも大きいこと;
ii.ネオエピトープが、3未満のBLOSUM62スコア(例えば2未満、好ましくは1未満)を持つアミノ酸置換を含むこと
の少なくとも1つを満たすMHC II結合ネオエピトープは、基準iとiiのどちらも満たさないMHC II結合ネオエピトープよりも上にランクされる。
【0149】
さらに好ましい一実施態様では、以下の基準iとii、すなわち
i.ネオエピトープのMHC II結合差が2よりも大きいこと;
ii.ネオエピトープが、1未満のBLOSUM62スコアを持つアミノ酸置換を含むこと
の少なくとも1つを満たすMHC II結合ネオエピトープは、基準iとiiのどちらも満たさないMHC II結合ネオエピトープよりも上にランクされる。
【0150】
上記の基準iとiiのどちらも満たさないMHC II結合ネオエピトープは、除外されるか優先度が下げられることが好ましい。それに加え、上に記載されているように、いくつかの実施態様では、基準iを満たすが変異が非係留位置にあるMHC II結合ネオエピトープは、除外されるか優先度が下げられる。
【0151】
RNA発現のレベル
【0152】
変異が見いだされるソース遺伝子のRNA発現のレベルは、ネオエピトープの免疫原性にとって重要な因子である可能性がある。RNA発現のレベルがより高いと通常はタンパク質の発現がより多くなり、MHC分子の表面へのネオエピトープの提示がより多くなるため、がん特異的免疫原性を誘導する可能性がより大きくなる。
【0153】
したがって好ましい一実施態様では、本発明の方法はさらに、ネオエピトープのRNA発現レベルを求める工程を含んでいる。
【0154】
一般に、RNA発現レベルが高いネオエピトープは、RNA発現レベルがより低いネオエピトープよりも上にランクされる。
【0155】
特別な一実施態様では、本発明の方法の工程dにおいて、RNA発現レベルが高いMHC I結合ネオエピトープは、RNA発現レベルがより低いMHC I結合ネオエピトープよりも上にランクされる。別の特別な一実施態様では、RNA発現レベルが高いMHC II結合ネオエピトープは、RNA発現レベルがより低いMHC II結合ネオエピトープよりも上にランクされる。
【0156】
ソース遺伝子のRNAが検出されないネオエピトープは、除外されるか優先度が下げられることが好ましい。特に、規格化された転写産物発現レベルが0転写産物/100万(TPM)であるネオエピトープは、除外されるか優先度が下げられる。転写産物発現レベルが検出可能である(例えば転写産物発現レベルが0 TPMよりも大きい)転写産物は除外されない。
【0157】
RNA発現レベルは、上に定義した腫瘍サンプルから得られた核酸のRNAシークエンシングによって求めることができる。RNAシークエンシングは本分野で知られている技術によって実施することができる。RNA発現レベルを求める方法は当業者に周知である。RNA発現レベルは、例えば次世代シークエンシング技術(例えばIlluminaプラットフォーム)を利用して求めることができる。
【0158】
自己免疫のリスク
【0159】
交差反応性のリスクを最小にするには、ヒトプロテオームの中のペプチド配列と一致する天然のコアペプチド(例えば変異を含んでいて長さがアミノ酸9個のペプチド)を含むネオエピトープは除外されるか優先度が下げられることが好ましい。したがって本発明の方法はさらに、ネオエピトープのペプチド配列をヒトプロテオームのペプチド配列と比較する工程を含むことができる。
【0160】
ヒトプロテオームは、ここでは、ヒトゲノムの既知の遺伝子から生じるあらゆる翻訳と定義される。既知の遺伝子はwww.ensembl.orgで公開されている。したがってネオエピトープのコアペプチド配列がヒトプロテオームの中のペプチド配列と一致するかどうかを判断する目的で、配列をデータベースから得られたヒトゲノムのペプチド配列を比較することができる。
【0161】
ネオエピトープのコアペプチド配列は、上に記載されているようにネオエピトープの中に含まれる。変異を含んでいてヒトプロテオームの中の天然のペプチド配列と一致するペプチド配列を含むネオエピトープは、除外されるか優先度が下げられることが好ましい。
【0162】
理論に囚われることは望まないが、その理由として、天然のペプチド配列と一致する変異は、中枢性寛容の帰結としてT細胞受容体によって寛容になるリスクがより大きいため、天然の配列と一致しない変異と比べて免疫原性がより小さいと予想されることがある。
【0163】
一実施態様では、ヒトゲノムのペプチド配列と比較されるネオエピトープのコアペプチド配列は、9~27個のアミノ酸(例えば10~25個のアミノ酸、例えば11~15個のアミノ酸、または例えば12個、13個、14個のアミノ酸)を含むか、これらの個数のアミノ酸からなる。
【0164】
一実施態様では、ヒトゲノムのペプチド配列と比較されるネオエピトープのペプチド配列は、5~15個のアミノ酸(例えば6~12個のアミノ酸、好ましくは7~11個のアミノ酸、より好ましくは8~10個のアミノ酸)を含むか、これらの個数のアミノ酸からなる。
【0165】
好ましい一実施態様では、ヒトゲノムのペプチド配列と比較されるネオエピトープのペプチド配列は、9個のアミノ酸を含むか、9個のアミノ酸からなる。
【0166】
別の一実施態様では、ヒトゲノムのペプチド配列と比較されるネオエピトープのペプチド配列は、15個のアミノ酸、14個のアミノ酸、13個のアミノ酸、12個のアミノ酸、11個のアミノ酸、10個のアミノ酸のいずれかを含むか、これらの個数のアミノ酸からなる。
【0167】
ネオエピトープのペプチド配列は、ネオエピトープ変異を含んでいる。好ましい一実施態様では、この変異はアミノ酸置換である。所与のネオペプチドの配列をヒトゲノムのペプチド配列と比較する代わりにそのネオエピトープに含まれる最小エピトープの配列をヒトゲノムのペプチド配列と比較することが可能であることは当業者には明らかであろう。
【0168】
臓器特異的自己免疫のリスクをさらに小さくするため、いくつかの実施態様では、特定の臓器/組織で多く発現している遺伝子に見いだされるネオエピトープは除外されるか優先度が下げられる。
【0169】
一実施態様では、ある臓器におけるRNA発現レベルが他の組織と比べて少なくとも3倍(例えば少なくとも4倍)である遺伝子の中に存在するネオエピトープまたは最小エピトープは、除外されるか優先度が下げられる。
【0170】
好ましい一実施態様では、ある臓器におけるRNA発現レベルが他の組織と比べて少なくとも5倍であるネオエピトープまたは最小エピトープ(例えばMHC Iおよび/またはMHC IIに結合するネオエピトープ)は、除外されるか優先度が下げられる。
【0171】
別の一実施態様では、ある臓器におけるRNA発現レベルが他の組織と比べて少なくとも6倍、または少なくとも7倍、または例えば少なくとも8倍である遺伝子の中に存在するネオエピトープまたは最小エピトープ(例えばMHC Iおよび/またはMHC IIに結合するネオエピトープまたは最小エピトープ)は、除外されるか優先度が下げられる。
【0172】
臓器と組織は同じ種(ヒトなど)に由来することが好ましい。RNA発現レベルは例えばデータベース(例えばwww.gtexportal.org)から得ることができる。RNA発現レベルはUhlen, M.他(2015年)(Uhlen, M. 他(2015年)「プロテオミクス。組織に基づくヒトプロテオームのマップ」Science;第347巻(6220))にも記載されている。あるいはRNA発現レベルは、ネオエピトープの出所である個体から得られる。
【0173】
臓器は例えば心臓と脳から選択することができる。別の一実施態様では、臓器は、肝臓、肺、胃、腎臓、秘蔵、大腸、小腸から選択される。
【0174】
アレル頻度
【0175】
一実施態様では、本発明の方法は、各ネオエピトープの中に存在する変異のアレル頻度を求める工程を含んでいる。アレル頻度という用語は、本明細書では、特定の遺伝子座に特定のゲノム変異を含むアレル配列を、この特定のゲノム領域にあるすべてのアレルに関する配列の総数と比べたときの相対頻度を意味する。変異体アレル頻度という用語は、変異またはネオエピトープ変異を含むアレルの頻度を意味し、本明細書ではバリアントアレル頻度(VAF)という用語と交換可能に用いられる。一般に、大きな変異体アレル頻度またはVAFは、臨床での有用性がより大きいことを示している。大きな変異体アレル頻度またはVAFは、同じ変異を含むがん細胞の割合がより大きいことを示している。したがって、理論に囚われることは望まないが、アレル頻度またはVAFが大きいネオエピトープは、アレル頻度またはVAFが小さいネオエピトープよりも多くの割合のがん細胞の中に存在すると予測できることを示している。
【0176】
特別な一実施態様では、変異体アレル頻度またはVAFが大きいMHC I結合ネオエピトープは、変異体アレル頻度またはVAFがより小さいMHC I結合ネオエピトープよりも上にランクされる。別の特別な実施態様では、変異体アレル頻度またはVAFが大きいMHC II結合ネオエピトープは、変異体アレル頻度またはVAFがより小さいMHC II結合ネオエピトープよりも上にランクされる。
【0177】
ある1つの変異のアレル頻度は、例えば腫瘍サンプルからのシークエンシングデータを分析し、変異体アレルの頻度を同じ遺伝子の中に存在する別のアレルと比較することによって求めることができる。
【0178】
いくつかの実施態様では、0.05よりも大きい変異体アレル頻度またはVAFは、この変異を含む最小エピトープまたはネオエピトープが臨床で有用であることを示している。したがっていくつかの実施態様では、変異を含んでいてVAFが0.05よりも大きい(例えば0.06よりも大きい、例えば0.07よりも大きい、例えば0.08よりも大きい、例えば0.09よりも大きい、例えば0.1よりも大きい、例えば0.15よりも大きい、例えば0.20よりも大きい)ネオエピトープまたは最小エピトープは、変異を含んでいてVAFが0.05以下(それぞれ例えば0.06以下、例えば0.07以下、例えば0.08以下、例えば0.09以下、例えば0.1以下、例えば0.15以下、例えば0.20以下)のネオエピトープまたは最小エピトープよりも上にランクされる。
【0179】
バリアントコーリング
【0180】
多くのタイプの体細胞変異同定ソフトウエア(バリアントコーラー)を本分野では利用することができる。いくつかの実施態様では、ネオエピトープまたは最小エピトープは、その中に含まれる変異が少なくとも2つの異なるバリアントコーラーによって同定される場合に、臨床で有用である可能性が大きいと見なされる。したがっていくつかの実施態様では、ネオエピトープまたは最小エピトープは、その中に含まれる変異をどれだけ多くのバリアントコーラーが同定するかに依存してランク付けされる。少なくとも2つの異なるバリアントコーラーによって同定された変異を含むネオエピトープまたは最小エピトープは、1つのバリアントコーラーだけによって同定された変異を含むネオエピトープまたは最小エピトープよりも上にランクされる。いくつかの実施態様では、変異は、少なくとも3つの異なるバリアントコーラー(例えば少なくとも4つの異なるバリアントコーラー、例えば少なくとも5つの異なるバリアントコーラー、例えば少なくとも6つの異なるバリアントコーラー、例えば少なくとも7つの異なるバリアントコーラー、例えば少なくとも8つの異なるバリアントコーラー、例えば少なくとも9つの異なるバリアントコーラー、例えば少なくとも10の異なるバリアントコーラー、またはそれよりも多い数の異なるバリアントコーラー)によって同定される。
【0181】
既知のがん関連遺伝子との類似性
【0182】
いくつかの実施態様では、既知のがん関連遺伝子から生じるネオエピトープが優先される。
【0183】
がん関連遺伝子は、がんの発達に関与する遺伝子と定義される。がん関連遺伝子は、当業者に知られているように、例えばCatalogue Of Somatic Mutations in Cancer(COSMIC)データベース、またはがんに関連した変異および/または遺伝子の注釈付きリストを含む他のデータベースに見いだすことができる。したがって既知のがん関連遺伝子との一致は、ネオエピトープのソース遺伝子、ゲノム位置、バリアント位置(HGVS表記)のいずれかをCOSMICデータベースの中の対応する情報と比較することによって見いだすことができる。
【0184】
いくつかの実施態様では、ネオエピトープは、このネオエピトープが含まれている遺伝子が、がんと関連することが知られている遺伝子である場合に臨床で有用である可能性が大きいと見なされる。したがってこのようなネオエピトープは、がんと関連することが知られていない遺伝子の中に含まれるネオエピトープよりも優先される。
【0185】
クローン性
【0186】
「クローン性」という用語は、本明細書では、複数の腫瘍サンプルにネオエピトープが生じることを意味する。例えばあるネオエピトープまたは最小エピトープが2つ以上の腫瘍生検の中に見いだされる場合には、クローン性が大きいことを示しているため、大半のがん細胞の中に存在している可能性がより大きく、したがって臨床で有用である可能性がより大きい。
【0187】
ネオエピトープのクローン性は、同じ個体からの少なくとも2つの腫瘍サンプルを取得し、2つ以上の生検中に変異が存在するかどうかを調べることによって判断できる。2つ以上の腫瘍サンプルの中に見いだされるネオエピトープは、1つの生検だけに見いだされるネオエピトープよりも優先されることが好ましい。「2つ以上の腫瘍サンプル」は、同じ個体に由来するか、同じ病巣または異なる病巣に由来するいくつかのサンプルと理解される。
【0188】
いくつかの実施態様では、同じ個体からの少なくとも2つの異なるサンプルに見いだされる変異を持つ最小エピトープまたはネオエピトープは、1つの腫瘍サンプルだけに見いだされる変異を持つ最小エピトープまたはネオエピトープよりも臨床で有用である可能性が大きい。いくつかの実施態様では、少なくとも2つの異なるサンプルは、
- 同じ腫瘍または病巣(例えば同じ腫瘍または病巣からのマルチアングル生検)
- 少なくとも2つの異なる腫瘍または病巣
- 少なくとも1つの腫瘍または病巣と、少なくとも1つのアーカイブ腫瘍材料(例えば腫瘍または病巣からのアーカイブ生検またはアーカイブ切除材料)
に由来し、少なくとも2つの異なるサンプルの中で変異を含む最小エピトープまたはネオエピトープが見いだされることが、臨床での有用性がより大きいことを示している。「アーカイブ腫瘍材料」という用語は、同じ個体に由来する腫瘍組織からより早い時点にサンプリングした材料(例えば腫瘍または病巣からのアーカイブ生検またはアーカイブ切除材料)を意味する。
【0189】
いくつかの実施態様では、少なくとも2つの異なるサンプルは、少なくとも3つの異なるサンプル(例えば少なくとも4つの異なるサンプル、例えば少なくとも5つの異なるサンプル、例えば少なくとも6つの異なるサンプル、例えば少なくとも7つの異なるサンプル、例えば少なくとも8つの異なるサンプル、例えば少なくとも9つの異なるサンプル、例えば少なくとも10の異なるサンプル、またはそれよりも多い数の異なるサンプル)である。いくつかの実施態様では、少なくとも2つの異なるサンプルのうちの少なくとも1つは、個体からのアーカイブ腫瘍材料であり、少なくとも2つの異なるサンプルのうちの少なくとも1つは、腫瘍または病巣からのサンプルである。
【0190】
リキッドバイオプシー
【0191】
臨床で有用である可能性が大きい最小エピトープを含むネオエピトープを選択するとき、このネオエピトープまたは最小エピトープを個体の血漿中でも見いだせるかどうかを調べると有利である可能性がある。したがっていくつかの実施態様では、方法は、無細胞DNA(例えば個体から得られたリキッドバイオプシーからの血漿に含まれる循環している腫瘍DNA)からの核酸配列をシークエンシングすることを含んでいる。これは、ネオエピトープの同定、および/または確認、および/または追跡に有用である可能性があり、例えば無細胞DNAをシークエンシングすることによって実現できる。
【0192】
いくつかの実施態様では、個体からの血漿サンプルに含まれる循環している腫瘍DNAに見いだされるネオエピトープは、そのサンプル中に見いだされないネオエピトープよりも上にランクされる。
【0193】
個体
【0194】
本発明の方法での個体はヒトであることが好ましい。個体またはヒトはがん患者であることが好ましい。したがって個体はがんを持つヒトであることが好ましい。がんとして、あらゆるタイプのがんが可能である。個体は少なくとも1つの腫瘍を持つことが好ましい。
【0195】
がんとして、がん細胞が少なくとも1つの変異を含む任意のがんが可能である。がんとして、原発がんと転移がんの一方または両方が可能である。変異を調べる腫瘍として、原発がんまたは転移がんが可能である。治療するがんとして、大きな変異負荷を持つことが知られているがん(例えば黒色腫または肺がん)が可能である。治療するがんとして、1つのがん特異的変異だけを特徴とするがんも可能である。
【0196】
さらなる基準
【0197】
MHC Iおよび/またはMHC IIに結合するネオエピトープは、以下の基準i~vii、すなわち
i.高いRNA発現レベル
ii.大きなアレル頻度
iii.大きなクローン性
iv.既知のがん関連遺伝子との一致
v.少なくとも2つの異なるバリアントコーラーによって同定された変異を含むこと
vi.例えば無細胞DNAのシークエンシングによってわかるように、個体の血漿中にも見いだされること
vii.同じ個体からの少なくとも2つのサンプル(例えば同じ病巣、または2つの異なる病巣からの2つのサンプル、または少なくとも1つの腫瘍または病巣と、その腫瘍または病巣からの少なくとも1つのアーカイブ腫瘍材料)中に見いだされること
のうちの少なくとも1つを満たすことが好ましい。
【0198】
RNA発現レベル、アレル頻度、クローン性、既知のがん関連遺伝子との一致、少なくとも2つの異なるバリアントコーラーによる同定、個体の血漿中の存在、同じ個体からの少なくとも2つのサンプル中の存在は、本明細書で上に定義した通りである。
【0199】
より好ましい一実施態様では、MHC Iおよび/またはMHC IIに結合するネオエピトープは、以下の基準i~vii、すなわち
i.高いRNA発現レベル
ii.大きなアレル頻度
iii.大きなクローン性
iv.既知のがん関連遺伝子との一致
v.少なくとも2つの異なるバリアントコーラーによって同定された変異を含むこと
vi.例えば無細胞DNAのシークエンシングによってわかるように、個体の血漿中にも見いだされること
vii.同じ個体からの少なくとも2つのサンプル(例えば同じ病巣、または2つの異なる病巣からの2つのサンプル、または少なくとも1つの腫瘍または病巣と、その腫瘍または病巣からの少なくとも1つのアーカイブ腫瘍材料)中に見いだされること
のうちの少なくとも2つを満たすことが好ましい。
【0200】
より一層好ましい一実施態様では、MHC Iおよび/またはMHC IIに結合するネオエピトープは、以下の基準i~vii、すなわち
i.高いRNA発現レベル
ii.大きなアレル頻度
iii.大きなクローン性
iv.既知のがん関連遺伝子との一致
v.少なくとも2つの異なるバリアントコーラーによって同定された変異を含むこと
vi.例えば無細胞DNAのシークエンシングによってわかるように、個体の血漿中にも見いだされること
vii.同じ個体からの少なくとも2つのサンプル(例えば同じ病巣、または2つの異なる病巣からの2つのサンプル、または少なくとも1つの腫瘍または病巣と、その腫瘍または病巣からの少なくとも1つのアーカイブ腫瘍材料)中に見いだされること
のうちの少なくとも3つを満たすことが好ましい。
【0201】
好ましい一実施態様では、MHC Iおよび/またはMHC IIに結合するネオエピトープは、以下の基準i~vii、すなわち
i.高いRNA発現レベル
ii.大きなアレル頻度
iii.大きなクローン性
iv.既知のがん関連遺伝子との一致
v.少なくとも2つの異なるバリアントコーラーによって同定された変異を含むこと
vi.例えば無細胞DNAのシークエンシングによってわかるように、個体の血漿中にも見いだされること
vii.同じ個体からの少なくとも2つのサンプル(例えば同じ病巣、または2つの異なる病巣からの2つのサンプル、または少なくとも1つの腫瘍または病巣と、その腫瘍または病巣からの少なくとも1つのアーカイブ腫瘍材料)中に見いだされること
のうちの少なくとも4つを満たすことが好ましい。
【0202】
別の好ましい一実施態様では、MHC Iおよび/またはMHC IIに結合するネオエピトープは、以下の基準i~vii、すなわち
i.高いRNA発現レベル
ii.大きなアレル頻度
iii.大きなクローン性
iv.既知のがん関連遺伝子との一致
v.少なくとも2つの異なるバリアントコーラーによって同定された変異を含むこと
vi.例えば無細胞DNAのシークエンシングによってわかるように、個体の血漿中にも見いだされること
vii.同じ個体からの少なくとも2つのサンプル(例えば同じ病巣、または2つの異なる病巣からの2つのサンプル、または少なくとも1つの腫瘍または病巣と、その腫瘍または病巣からの少なくとも1つのアーカイブ腫瘍材料)中に見いだされること
のうちの少なくとも5つを満たすことが好ましい。
【0203】
別の好ましい一実施態様では、MHC Iおよび/またはMHC IIに結合するネオエピトープは、以下の基準i~vii、すなわち
i.高いRNA発現レベル
ii.大きなアレル頻度
iii.大きなクローン性
iv.既知のがん関連遺伝子との一致
v.少なくとも2つの異なるバリアントコーラーによって同定された変異を含むこと
vi.例えば無細胞DNAのシークエンシングによってわかるように、個体の血漿中にも見いだされること
vii.同じ個体からの少なくとも2つのサンプル(例えば同じ病巣、または2つの異なる病巣からの2つのサンプル、または少なくとも1つの腫瘍または病巣と、その腫瘍または病巣からの少なくとも1つのアーカイブ腫瘍材料)中に見いだされること
のうちの少なくとも6つを満たすことが好ましい。
【0204】
別の好ましい一実施態様では、MHC Iおよび/またはMHC IIに結合するネオエピトープは、以下の基準i~vii、すなわち
i.高いRNA発現レベル
ii.大きなアレル頻度
iii.大きなクローン性
iv.既知のがん関連遺伝子との一致
v.少なくとも2つの異なるバリアントコーラーによって同定された変異を含むこと
vi.例えば無細胞DNAのシークエンシングによってわかるように、個体の血漿中にも見いだされること
vii.同じ個体からの少なくとも2つのサンプル(例えば同じ病巣、または2つの異なる病巣からの2つのサンプル、または少なくとも1つの腫瘍または病巣と、その腫瘍または病巣からの少なくとも1つのアーカイブ腫瘍材料)中に見いだされること
のすべてを満たすことが好ましい。
【0205】
上記の基準i~viiは、何らかの好ましい順番で掲載されているのではないため、任意の優先順位にすることができる。RNA発現レベル、アレル頻度、クローン性、既知のがん関連遺伝子との一致、少なくとも2つの異なるバリアントコーラーによる同定、個体の血漿中の存在、同じ個体からの少なくとも2つのサンプル中の存在は、本明細書で上に定義した通りである。
【0206】
したがってRNA発現レベルがより高くてMHC Iおよび/またはMHC IIに結合するネオエピトープは、RNA発現レベルがより低いネオエピトープよりも上にランクされることが好ましい。
【0207】
アレル頻度がより大きくてMHC Iおよび/またはMHC IIに結合するネオエピトープは、アレル頻度がより小さいネオエピトープよりも上にランクされることが好ましい。
【0208】
クローン性がより大きくてMHC Iおよび/またはMHC IIに結合するネオエピトープは、クローン性がより小さいネオエピトープよりも上にランクされることが好ましい。
【0209】
既知のがん関連遺伝子と一致していてMHC Iおよび/またはMHC IIに結合するネオエピトープは、既知のがん関連遺伝子と一致しないネオエピトープよりも上にランクされることが好ましい。
【0210】
少なくとも2つの異なるバリアントコーラーによって同定された変異を含んでいてMHC Iおよび/またはMHC IIに結合するネオエピトープは、1つのバリアントコーラーだけによって同定された変異を含むネオエピトープよりも上にランクされることが好ましい。
【0211】
個体の血漿中に見いだされてMHC Iおよび/またはMHC IIに結合するネオエピトープは、個体の血漿中に見いだされないネオエピトープよりも上にランクされることが好ましい。
【0212】
同じ個体からの2つ以上のサンプル中に見いだされてMHC Iおよび/またはMHC IIに結合するネオエピトープは、個体からの1つのサンプルだけに見いだされるネオエピトープよりも上にランクされることが好ましい。2つ以上のサンプルとして、同じ病巣、または異なる病巣からのサンプル、または少なくとも1つの腫瘍または病巣と、その腫瘍または病巣からの少なくとも1つのアーカイブ腫瘍材料からのサンプルが可能である。
【0213】
選択されるネオエピトープの数
【0214】
個体のために選択されるネオエピトープは、がんワクチン(例えばがんワクチンコンストラクト、好ましくはヌクレオチドワクチンコンストラクト)の中で用いることが好ましい。ワクチンは、個別化がんワクチンとも呼ばれる。ワクチンは免疫原性である。
【0215】
本発明による方法では、臨床で有用なA個のネオエピトープが選択される。これらA個のネオエピトープは、がんワクチン、またはがんワクチンコンストラクトで使用されることが好ましい。したがってこれらA個のネオエピトープは、同じワクチンコンストラクトに含まれることが好ましい。ワクチンコンストラクトはヌクレオチドコンストラクトであることが好ましい。ヌクレオチドコンストラクトとして、RNAコンストラクトおよび/またはDNAコンストラクトが可能である。ワクチンはDNAコンストラクト(Vaccibody DNAワクチンとも呼ばれる)であることが好ましい。
【0216】
Aは整数である。例えばAは、少なくとも1(例えば少なくとも3、例えば少なくとも5、例えば少なくとも7、例えば少なくとも10、例えば少なくとも20、例えば少なくとも30、例えば少なくとも40、またはそれよりも大きな数)である。Aとして、あらかじめ決めた数が可能である。
【0217】
それに加え、本発明の発明者は、ワクチンコンストラクトに含まれるネオエピトープの数を1個から3個のネオエピトープに、または3個から10個のネオエピトープに増やすと、驚いたことに免疫応答が増加することを見いだした。それに加え、ワクチンコンストラクトに含まれるネオエピトープの数を10個から15個または20個のネオエピトープに増やすと、免疫応答がさらに増加することを見いだした。いくつかの実施態様では、ワクチンコンストラクトに含まれるネオエピトープの数は20~40個(例えば30個)である。いくつかの実施態様では、ワクチンコンストラクトに含まれるネオエピトープの数は40個以上である。
【0218】
一実施態様では、Aは、3~100の整数(例えば3~75の整数、例えば3~50の整数、例えば3~30の整数、例えば3~20の整数、例えば3~15の整数、例えば3~10の整数)である。
【0219】
別の一実施態様では、Aは、5~50の整数(例えば5~30の整数、例えば5~25の整数、例えば5~20の整数、例えば5~15の整数、例えば5~10の整数)である。
【0220】
さらに別の一実施態様では、Aは、10~50の整数(例えば10~40の整数、例えば10~30の整数、例えば10~20の整数、例えば10~25の整数、例えば10~20の整数、例えば10~15の整数)である。
【0221】
本発明の方法によって選択されるネオエピトープを用いてVaccibodyワクチンを設計することができる。Vaccibodyワクチンについてはあとで詳細に説明する。Vaccibodyワクチンは、少なくとも1つの抗原ユニットと、標的ユニットと、2量体化ユニットを含んでいる。ネオエピトープは抗原ユニットの中に含まれることが好ましい。
【0222】
本発明の発明者は、10個のネオエピトープを含むVaccibody DNAワクチンが、3個しかネオエピトープを含まないVaccibody DNAワクチンよりも強力かつ広範な全免疫応答を誘導することを示した。同様に、20個のネオエピトープを含むVaccibody DNAワクチンは、10個しかネオエピトープを含まないVaccibody DNAワクチンよりも強力かつ広範な全免疫応答を誘導する。しかし治療するがんは1つのがん特異的ネオエピトープだけと関係している可能性があるため、2つ以上のエピトープを含むVaccibody DNAワクチンは構成できない可能性がある。
【0223】
好ましい一実施態様では、Aは10~20の整数である。
【0224】
別の一実施態様では、Aは15~50の整数(例えば15~30の整数、例えば15~20の整数)である。
【0225】
特別な一実施態様では、Aは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40のいずれかである。
【0226】
一実施態様では、抗原ユニットは、各がんネオエピトープのコピーを1つ含んでいるため、10個のネオエピトープがワクチンに含まれているとき、異なる10個のネオエピトープに対して細胞を媒介とした免疫応答を誘起することができる。
【0227】
本発明の方法では、最高ランクのMHC I結合ネオエピトープの中からはx個のネオエピトープが選択され、最高ランクのMHC II結合ネオエピトープの中からはy個のネオエピトープが選択される。ただしx+y=Aである。Aは、選択されるネオエピトープの総数である。Aは本明細書の上部に定義されている。
【0228】
xとyは整数である。
【0229】
好ましい一実施態様では、x>yである。例えばx≧2yである。別の一実施態様では、x>2.5yである。一実施態様では、x≧3yである。
【0230】
一実施態様では、0.5A<x<Aである(ただしAは上に定義した通りである)。Aは10~20の整数であることが好ましい。
【0231】
別の一実施態様では、0.6A<x<A(例えば0.7A<x<A、例えば0.8A<x<A)である(ただしAは上に定義した通りである)。Aは10~20の整数であることが好ましい。
【0232】
具体的な方法
【0233】
特別な一実施態様では、本発明の方法は、個体のためのネオエピトープの数Aを選択する方法であり、この方法は、
a.1つ以上のネオエピトープ(ただしそれぞれのネオエピトープは、少なくとも1つの最小エピトープを含むとともに、参照配列と比べて少なくとも1つの変異(例えば免疫原性変異)を含む)を個体から取得する工程と;
b.ネオエピトープそれぞれの中の少なくとも1つの最小エピトープ(例えば少なくとも2つ、または3つ、または4つの最小エピトープ)についてMHC Iへの結合親和性を求めるとともに、ネオエピトープそれぞれについてMHC I結合最小エピトープの数を求めることにより、x個のMHC I結合最小エピトープを同定する工程と;
c.ネオエピトープを以下のようにランク付けする工程、すなわち
i.MHC Iに結合する多数の最小エピトープを含むネオエピトープの優先度を決めた後、大きなスコアを持つネオエピトープの第1のグループを選択し;
ii.場合によっては、ネオエピトープの第1のグループからのネオエピトープの優先度を以下のようにして決定し、すなわち
1)変異が係留位置にあって最小エピトープの結合差が20以上である場合には、最小エピトープは最大スコアを持ち;
2)変異が非係留位置にあって最小エピトープの結合差が20以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、1)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
3)変異が係留位置にあって最小エピトープの結合差が20未満かつ3以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、2)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
4)変異が非係留位置にあって最小エピトープの結合差が20未満かつ3以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、3)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
5)変異が係留位置にあって最小エピトープの結合差が3未満かつ1以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、4)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
6)変異が非係留位置にあって最小エピトープの結合差が3未満かつ1以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、5)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
7)最小エピトープが、結合差が1未満の変異を持つ場合には、変異の位置に関係なく、この最小エピトープは最低のスコアを持つようにし;
(ただしMHC I結合差は、式:(参照の%ランクスコア(MHC I))/(最小エピトープの%ランクスコア(MHC I))によって与えられる);大きなスコアを持つネオエピトープの第2のグループを選択し;
iii.場合によっては、第2のグループからのネオエピトープの優先度を、そのMHC I%ランクスコアに基づいて決定した後、小さなMHC I%ランクスコアを持つネオエピトープの第3のグループを選択し;
iv.場合によっては、T細胞によって認識されることが知られているエピトープとよく似た最小エピトープを含むネオエピトープの第4のグループを選択し;
v.場合によっては、第3のグループまたは第4のグループからのネオエピトープの優先度を、そのBLOSUMスコアに基づいて決定して、所定の閾値(この閾値は1であることが好ましい)よりも小さいBLOSUMスコアを、この閾値以上のBLOSUMスコアよりも上にランクした後、BLOSUMスコアが閾値よりも小さいネオエピトープの第5のグループを選択する工程を含み;
第1のグループ、第2のグループ、第3のグループ、第4のグループ、第5のグループのいずれかがA個のネオエピトープを含んでいる。
【0234】
特別な一実施態様では、方法は、個体のためのネオエピトープの数Aを選択する方法であり、この方法は、
a.1つ以上のネオエピトープ(ただしそれぞれのネオエピトープは、少なくとも1つの最小エピトープを含むとともに、参照配列と比べて少なくとも1つの変異(例えば免疫原性変異)を含む)を個体から取得する工程と;
b.ネオエピトープそれぞれの中の少なくとも1つの最小エピトープ(例えば少なくとも2つ、または3つ、または4つの最小エピトープ)についてMHC Iへの結合親和性を求めるとともに、ネオエピトープそれぞれについてMHC I結合最小エピトープの数を求めることにより、x個のMHC I結合最小エピトープを同定する工程と;
c.ネオエピトープを以下のようにランク付けする工程、すなわち
i.MHC Iに結合する多数の最小エピトープを含むネオエピトープの優先度を決めた後、大きなスコアを持つネオエピトープの第1のグループを選択し;
ii.場合によっては、ネオエピトープの第1のグループからのネオエピトープの優先度を以下のようにして決定し、すなわち
1)変異が係留位置にあって最小エピトープの結合差が20以上である場合には、最小エピトープは最大スコアを持ち;
2)変異が非係留位置にあって最小エピトープの結合差が20以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、1)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
3)変異が係留位置にあって最小エピトープの結合差が20未満かつ3以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、2)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
4)変異が非係留位置にあって最小エピトープの結合差が20未満かつ3以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、3)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
5)変異が係留位置にあって最小エピトープの結合差が3未満かつ1以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、4)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
6)変異が非係留位置にあって最小エピトープの結合差が3未満かつ1以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、5)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
7)最小エピトープが、結合差が1未満の変異を持つ場合には、変異の位置に関係なく、この最小エピトープは最低のスコアを持つようにし;
iii.場合によっては、第2のグループからのネオエピトープの優先度を、そのMHC I%ランクスコアに基づいて決定した後、小さなMHC I%ランクスコアを持つネオエピトープの第3のグループを選択し;
iv.場合によっては、T細胞によって認識されることが知られているエピトープとよく似た最小エピトープを含むネオエピトープの第4のグループを選択し;
v.場合によっては、第2のグループ、第3のグループ、第4のグループのいずれかからのネオエピトープの優先度を、そのBLOSUMスコアに基づいて決定して、所定の閾値(この閾値は1であることが好ましい)よりも小さいBLOSUMスコアを、この閾値以上のBLOSUMスコアよりも上にランクした後、BLOSUMスコアが閾値よりも小さいネオエピトープの第5のグループを選択し;
vi.場合によっては、ネオエピトープの第1のグループ、第2のグループ、第3のグループ、第4のグループ、第5のグループのいずれかから、ネオエピトープを、2つ以上のサンプルで見いだされるネオエピトープに基づいて選択することにより、2つ以上のサンプルで見いだされるネオエピトープの第6のグループを選択し;
vii.場合によっては、ネオエピトープの第1のグループ、第2のグループ、第3のグループ、第4のグループ、第5のグループ、第6のグループのいずれかから、ネオエピトープを、少なくとも2つの異なったバリアントコーラーによって変異が同定されることに基づいて選択することにより、少なくとも2つの異なったバリアントコーラーによって同定された変異を含むネオエピトープの第7のグループを選択する工程を含み、
第1のグループ、第2のグループ、第3のグループ、第4のグループ、第5のグループ、第6のグループ、第7のグループのいずれかがA個のネオエピトープを含んでいる。
【0235】
この方法はさらに、本明細書に記載されている追加パラメータのうちの任意のもの(例えばクローン性、RNA発現レベル、アレル頻度)に従ってネオエピトープをランク付けすることも含むことができる。
【0236】
いくつかの実施態様では、第2のグループは第1のグループの下位グループである。いくつかの実施態様では、第3のグループは、第2のグループおよび/または第1のグループの下位グループである。いくつかの実施態様では、第4のグループは、第3のグループおよび/または第2のグループおよび/または第1のグループの下位グループである。いくつかの実施態様では、第5のグループは、第4のグループおよび/または第3のグループおよび/または第2のグループおよび/または第1のグループの下位グループである。いくつかの実施態様では、第6のグループは、第5のグループおよび/または第4のグループおよび/または第3のグループおよび/または第2のグループおよび/または第1のグループの下位グループである。いくつかの実施態様では、第7のグループは、第6のグループおよび/または第5のグループおよび/または第4のグループおよび/または第3のグループおよび/または第2のグループおよび/または第1のグループの下位グループである。
【0237】
一実施態様では、本発明の方法は、上記の工程iを含んでいる。別の一実施態様では、本発明の方法は、上記の工程iと工程iiを含んでいる。別の一実施態様では、本発明の方法は、上記の工程iと工程iiiを含んでいる。別の一実施態様では、本発明の方法は、上記の工程iと工程ivを含んでいる。別の一実施態様では、本発明の方法は、上記の工程iと工程iiと工程iiiを含んでいる。別の一実施態様では、本発明の方法は、上記の工程iと工程iiと工程ivを含んでいる。別の一実施態様では、本発明の方法は、上記の工程iと工程iiiと工程ivを含んでいる。別の一実施態様では、本発明の方法は、上記の工程iと工程iiと工程iiiと工程ivを含んでいる。いくつかの実施態様では、本発明の方法はさらに、上記の工程vおよび/または工程viおよび/または工程viiを含んでいる。
【0238】
一実施態様では、がんに罹患しているか、がんに罹患していることが疑われる個体のためのネオエピトープの数Aを選択する方法は、
a.1つ以上のネオエピトープ(ただしそれぞれのネオエピトープは、少なくとも1つの最小エピトープを含むとともに、参照配列と比べて少なくとも1つの変異(例えば免疫原性変異)を含み、最小エピトープは、ネオエピトープのアミノ酸の数以下の数のアミノ酸からなるとともに少なくとも1つの変異を含む)を個体から取得する工程(好ましくは、ネオエピトープを取得するこの工程が、腫瘍に特異的な核酸配列の中の変異を同定する工程を含む)と;
b.ネオエピトープそれぞれの中の少なくとも1つの最小エピトープ(例えば少なくとも2つ、または3つ、または4つの最小エピトープ)についてMHC Iおよび/またはMHC IIへの結合親和性を(場合によってはインシリコ予測によって)求める工程と;
c.MHC Iおよび/またはMHC IIに結合することが予測される少なくとも1つの最小エピトープを含むネオエピトープを選択することによってMHC結合ネオエピトープを取得する工程と;
d.これらMHC結合ネオエピトープを、臨床で有用である可能性に関してランク付けする工程と;
e.最高ランクのMHC結合ネオエピトープの中からA個のネオエピトープを選択する工程を含み、
これらの工程によって臨床で有用である可能性が大きいA個のネオエピトープを選択するが、工程dは、ネオエピトープを以下のようにランク付けすること、すなわち
i)ネオエピトープに含まれる各最小エピトープについて、変異がその最小ネオエピトープの係留位置にあるか非係留位置にあるかを判断し;
ii)ネオエピトープの優先度を決定することをさらに含み、
場合によっては、工程ii)のネオエピトープの優先度決定を、これらネオエピトープに含まれる最小エピトープの最大スコアを各ネオエピトープに割り当てることによって実施し、ネオエピトープのこの優先度決定は、以下のようにして実施する、すなわち
1)変異が係留位置にあって最小エピトープの結合差が20以上である場合には、最小エピトープは最大スコアを持ち;
2)変異が非係留位置にあって最小エピトープの結合差が20以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、1)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
3)変異が係留位置にあって最小エピトープの結合差が20未満かつ3以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、2)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
4)変異が非係留位置にあって最小エピトープの結合差が20未満かつ3以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、3)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
5)変異が係留位置にあって最小エピトープの結合差が3未満かつ1以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、4)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
6)変異が非係留位置にあって最小エピトープの結合差が3未満かつ1以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、5)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
7)最小エピトープが、結合差が1未満の変異を持つ場合には、この変異の位置に関係なく、この最小エピトープは最低のスコアを持つことになるように実施する。
【0239】
一実施態様では、がんに罹患しているか、がんに罹患していることが疑われる個体のためのネオエピトープの数Aを選択する方法は、
a.1つ以上のネオエピトープ(ただしそれぞれのネオエピトープは、少なくとも1つの最小エピトープを含むとともに、参照配列と比べて少なくとも1つの変異(例えば免疫原性変異)を含み、最小エピトープは、ネオエピトープのアミノ酸の数以下の数のアミノ酸からなるとともに少なくとも1つの変異を含む)を個体から取得する工程(好ましくは、ネオエピトープを取得するこの工程が、腫瘍に特異的な核酸配列の中の変異を同定する工程を含む)と;
b.ネオエピトープそれぞれの中の少なくとも1つの最小エピトープ(例えば少なくとも2つ、または3つ、または4つの最小エピトープ)についてMHC Iおよび/またはMHC IIへの結合親和性を(場合によってはインシリコ予測によって)求める工程と;
c.MHC Iおよび/またはMHC IIに結合することが予測される少なくとも1つの最小エピトープを含むネオエピトープを選択することによってMHC結合ネオエピトープを取得する工程と;
d.これらMHC結合ネオエピトープを、臨床で有用である可能性に関してランク付けする工程と;
e.最高ランクのMHC結合ネオエピトープの中からA個のネオエピトープを選択する工程を含み、
これらの工程によって臨床で有用である可能性が大きいA個のネオエピトープを選択するが、
工程dは、ネオエピトープを、その中に含まれる最小エピトープの数に応じてランク付けすることを含み、より多い数の最小エピトープをより上にランクする。
【0240】
別の一実施態様では、がんに罹患しているか、がんに罹患していることが疑われる個体のためのネオエピトープの数Aを選択する方法は、
a.1つ以上のネオエピトープ(ただしそれぞれのネオエピトープは、少なくとも1つの最小エピトープを含むとともに、参照配列と比べて少なくとも1つの変異(例えば免疫原性変異)を含み、最小エピトープは、ネオエピトープのアミノ酸の数以下の数のアミノ酸からなるとともに少なくとも1つの変異を含む)を個体から取得する工程(好ましくは、ネオエピトープを取得するこの工程が、腫瘍に特異的な核酸配列の中の変異を同定する工程を含む)と;
b.ネオエピトープそれぞれの中の少なくとも1つの最小エピトープ(例えば少なくとも2つ、または3つ、または4つの最小エピトープ)についてMHC Iおよび/またはMHC IIへの結合親和性を(場合によってはインシリコ予測によって)求める工程と;
c.MHC Iおよび/またはMHC IIに結合することが予測される少なくとも1つの最小エピトープを含むネオエピトープを選択することによってMHC結合ネオエピトープを取得する工程と;
d.これらMHC結合ネオエピトープを、臨床で有用である可能性に関してランク付けする工程と;
e.最高ランクのMHC結合ネオエピトープの中からA個のネオエピトープを選択する工程を含み、
これらの工程によって臨床で有用である可能性が大きいA個のネオエピトープを選択するが、
工程dは、ネオエピトープを、これらネオエピトープが見いだされるサンプルの数に従ってランク付けし、より多い数のサンプルで見いだされるネオエピトープを、より少ない数のサンプルで見いだされるネオエピトープよりもランクを上にすることを含み、好ましくは、サンプルは異なる病巣からのサンプルである。
【0241】
このセクションに記載されている具体的な方法の上記工程のそれぞれは、本明細書の別の箇所に記載されているのと同じにすることができる。
【0242】
ワクチン
【0243】
本発明の別の1つの側面は、ネオエピトープを含むがんワクチンを調製する方法に関するものであり、この方法は、ネオエピトープを選択するための本明細書に規定されている方法を利用してネオエピトープを選択する工程を含んでいる。
【0244】
いくつかの実施態様では、10~40個のネオエピトープが選択される。すなわちAは10~40の整数である。別の実施態様では、10~30個、または10~20個のネオエピトープが選択される。
【0245】
一実施態様では、がんワクチンは、
- 標的ユニット
- 2量体化ユニット
- 第1のリンカー
- 抗原ユニット(この抗原ユニットは、A-1個の抗原サブユニットを含んでいて、各サブユニットは、ネオエピトープの少なくとも1つをコードする配列と、第2のリンカーを含み、この抗原ユニットはさらに、これらネオエピトープの1つをコードする最終配列を含んでいる;ただしAは1~100の整数、例えば3~50の整数である)
を含むヌクレオチドコンストラクトを含んでいて、このヌクレオチドコンストラクトは、抗がんワクチンに免疫学的に有効な量で適用される。
【0246】
整数Aは本明細書の上部に記載されている通りである。上記のDNAワクチンはVaccibody DNAワクチンとも呼ばれる。
【0247】
本発明は、上記の方法によって調製されるワクチンに関する。
【0248】
したがって本明細書に記載されている方法によって提供されるネオアンチゲンワクチンは、3つのユニット、すなわち標的ユニット、2量体化ユニット、抗原ユニットを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むことができる。2量体化ユニットがあるため、ポリペプチドはVaccibodyと呼ばれる2量体タンパク質を形成する。
【0249】
3つのユニットをコードする遺伝子群を遺伝子操作して1つの遺伝子として発現させる。ポリペプチド/2量体タンパク質は、生体内で発現するとき、抗原提示細胞(APC)を標的としているため、その結果として標的とされない同じ抗原と比べてワクチンの効力が増大する。
【0250】
抗原ユニット
【0251】
抗原ユニットは複数の腫瘍ネオエピトープを含んでおり、それぞれのネオエピトープは、腫瘍ネオアンチゲンの中で同定された変異に対応している。この変異として、上に説明したように、1つ以上の変異が可能である。
【0252】
抗原ユニットでは、最後の腫瘍ネオエピトープを除くすべての腫瘍ネオエピトープが抗原サブユニットの中に配置されていて、各サブユニットは腫瘍ネオエピトープ配列と第2のリンカーからなるのに対し、最後のサブユニットはネオエピトープだけからなる(すなわちそのような第2のリンカーはない)。腫瘍ネオエピトープ配列は第2のリンカーによって分離されているため、各ネオエピトープは最適なやり方で免疫系に提示され、そのことによってワクチンの効果が下に説明するように保証される。
【0253】
がんネオエピトープ配列は、上述のように、MHC分子によって提示されるのに適した長さを持つことが好ましい。ネオエピトープの好ましい長さは上に記載されている。
【0254】
ワクチンが変異した遺伝子の発現産物に向けられているのであれば、腫瘍がその遺伝子の発現を停止させて免疫系を逃避することを回避するため、抗原ユニットに複数の異なるネオエピトープを含めることが好ましい。一般に、腫瘍が停止せねばならない遺伝子が多くなるほど、腫瘍がそれらすべてを停止させることができる可能性、そして相変わらず増殖したり、それどころか生き延びたりできる可能性は小さくなる。さらに、腫瘍は、すべての腫瘍細胞が個々のネオアンチゲンをすべて発現しているわけではないという意味で多様である可能性がある。したがって本発明によるアプローチは、腫瘍を効率的に攻撃するためワクチンに多くのネオエピトープを含めるというものである。複数のネオアンチゲンが複数の遺伝子の発現を標的とすることが好ましい。また、すべてのネオエピトープが同じ抗原提示細胞に効率的にロードされることを保証するため、ネオエピトープは、離散した複数のペプチドとしてではなく1本のアミノ酸鎖として配置する。
【0255】
選択されてワクチンコンストラクトに含まれるネオエピトープの数は上に記載されている通りである。
【0256】
一実施態様では、抗原ユニットは、それぞれのがんネオエピトープの1つのコピーを含んでいるため、ワクチンに含まれているのと同数の異なるネオエピトープに対して応答を誘導することができる。例えば10個のネオエピトープがワクチンに含まれているときには、10個の異なるネオエピトープに対して細胞を媒介とした免疫応答を誘導することができ、20個のネオエピトープがワクチンに含まれているときには、20個の異なるネオエピトープに対して細胞を媒介とした免疫応答を誘導することができる。いくつかの実施態様では、ワクチンは20個よりも多いネオエピトープを含むことができ、そうすることによってできるだけ多くのネオエピトープに対して応答を誘起する。
【0257】
しかし関係する抗原変異が数個だけ同定される場合には、抗原ユニットは、少なくとも1つのネオエピトープの少なくとも2つのコピーを含むことでこれらネオエピトープに対する免疫応答を強化することができる。また製造上と調節上の理由で、プラスミドの長さを保持すること、すなわち抗原ユニットを一定の長さまたは似た長さに保持することが有利である可能性があり、したがって抗原ユニットの中に同じネオエピトープの2つ以上のコピーを含めることが有利である可能性がある。
【0258】
上述のように、抗原ユニットコンストラクトの長さを維持することが有利である可能性があるため、一実施態様では、すべてのがんネオエピトープ配列が同じ長さを持つことが好ましい。しかしネオエピトープの1つ以上がフレームシフト変異または終止コドン変異につながる変異から生じる場合には、そのネオエピトープはかなりの長さを持つ(例えばタンパク質の少なくとも変異した部分(変異したタンパク質の抗原性が最も大きい部分)からなる)可能性、または変異したタンパク質全体である可能性があり、そのことによってネオエピトープの少なくとも1つの長さは、非同義点変異から生じるネオエピトープよりも実質的に長くなる。
【0259】
抗原ユニットの長さは、主に、ネオエピトープの長さと、抗原ユニットの中に配置されるネオエピトープの数によって決まり、約21~1500個のアミノ酸、好ましくは約30個のアミノ酸~約1000個のアミノ酸、より好ましくは約50個~約500個のアミノ酸(例えば約100個~約400個のアミノ酸、約100個~約300個のアミノ酸)である。
【0260】
ワクチンに挿入されるがんネオエピトープ配列は、両側にアミノ酸配列が隣接した変異を含むことができる。変異は、プロセシングの後に抗原提示細胞によってこの免疫原性変異が提示されることを保証するため、本質的にがんネオエピトープ配列の中央に位置していることが好ましい。変異に隣接するアミノ酸配列は、ネオアンチゲン内の変異に隣接するアミノ酸配列であることが好ましく、そうなっていることでがんネオエピトープ配列は、がんネオアンチゲンアミノ酸配列の真の部分配列となる。
【0261】
第2のリンカーは、非免疫原性であるように設計する。第2のリンカーは可撓性リンカーでもあることが好ましい。そうなっていることで、腫瘍ネオエピトープは、抗原ユニットの中に存在する抗原サブユニットの数が多いにもかかわらず、最適なやり方でT細胞に提示される。第2のリンカーの長さは、可撓性を保証するため4~20個のアミノ酸であることが好ましい。別の好ましい一実施態様では、第2のリンカーの長さは、8~20個のアミノ酸(例えば8~15個のアミノ酸、例えば8~12個のアミノ酸、例えば10~15個のアミノ酸)である。特別な一実施態様では、第2のリンカーの長さは10個のアミノ酸である。
【0262】
特別な一実施態様では、本発明のワクチンは10個のネオエピトープを含んでおり、第2のリンカーは長さが8~20個のアミノ酸(例えば8~15個のアミノ酸、例えば8~12個のアミノ酸、例えば10~15個のアミノ酸)である。特別な一実施態様では、本発明のワクチンは10個のネオエピトープを含んでおり、第2のリンカーは長さが10個のアミノ酸である。
【0263】
第2のリンカーは、セリン-グリシンリンカーであること、例えば可撓性GGGGSリンカー(例えばGGGSS、GGGSG、GGGGS、またはその多重バリアント(例えばGGGGSGGGGSまたは (GGGGS)m、(GGGSS)m、(GGGSG)m)であることが好ましい(ただしmは1~5の整数、または1~4の整数、または1~3の整数である)。好ましい一実施態様では、mは2である。
【0264】
標的ユニット
【0265】
標的ユニットがあることで、ポリペプチド/2量体タンパク質は、樹状細胞(DC)、好中球や、これら以外の免疫細胞を引きつける。したがって標的ユニットを含むポリペプチド/2量体タンパク質は、抗原を特定の細胞に向かわせるだけでなく、それに加えて特定の免疫細胞をワクチンの投与部位にリクルートすることによって応答増幅効果(アジュバント効果)も促進する。この独自の機構は、臨床設定において非常に重要である。なぜならワクチンそれ自体がアジュバント効果を与えるため、患者は追加のアジュバントなしでワクチンを受けることができるからである。
【0266】
「標的ユニット」という用語は、本明細書では、CD4+ T細胞にMHCクラスIIだけを提示するため、またはMHCクラスIだけをCD8 + T細胞に交差提示するため、自らの抗原を持つポリペプチド/タンパク質を抗原提示細胞に送達するユニットを意味する。
【0267】
標的ユニットは2量体化ユニットを介して抗原ユニットに接続されており、抗原ユニットはポリペプチド/2量体タンパク質のCOOH末端またはNH2末端に存在する。抗原ユニットはポリペプチド/2量体タンパク質のCOOH末端に存在することが好ましい。
【0268】
標的ユニットは、本発明のポリペプチド/2量体タンパク質が、関連する抗原提示細胞の表面に発現している表面分子(例えば樹状細胞(DC)のサブセットの表面にだけ発現している分子)を標的とするように設計する。
【0269】
APC上のこのような標的表面分子の例は、ヒト白血球抗原(HLA)、分化のクラスター14(CD14)、分化のクラスター40(CD40)、ケモカイン受容体、Toll様受容体(TLR)である。HLAはヒトにおける主要組織適合複合体(MHC)である。Toll様受容体には、例えばTLR-2、および/またはTLR-4、および/またはTLR-5を含めることができる。
【0270】
本発明のポリペプチド/2量体タンパク質がこれら表面分子を標的とすることができるのは、例えばCD14、CD40、Toll様受容体;リガンド(例えば可溶性CD40リガンド);ケモカインなどの天然のリガンド(例えばRANTESまたはMIP-1α);フラジェリンなどの細菌抗原のいずれかに対する特異性を持つ抗体結合領域を含む標的ユニットによってである。
【0271】
一実施態様では、標的ユニットは、MHCクラスIIタンパク質に対する親和性を有する。したがって一実施態様では、標的ユニットをコードするヌクレオチド配列は、抗HLA-DP、抗HLA-DR、抗HLA-IIからなるグループから選択されたMHCクラスIIタンパク質に対する特異性を持つ抗体可変ドメイン(VLとVH)をコードしている。
【0272】
別の一実施態様では、標的ユニットは、CD40、TLR-2、TLR-4、TLR-5からなるグループから選択された表面分子に対する親和性を有する。したがって一実施態様では、標的ユニットをコードするヌクレオチド配列は、抗CD40、抗TLR-2、抗TLR-4、抗TLR-5に対する特異性を持つ抗体可変ドメイン(VLとVH)をコードしている。一実施態様では、標的ユニットをコードするヌクレオチド配列は、フラジェリンをコードしている。フラジェリンはTLR-5に対する親和性を有する。
【0273】
標的ユニットは、CCR1、CCR3、CCR5から選択されたケモカイン受容体に対する親和性を有することが好ましい。より好ましいのは、標的ユニットをコードするヌクレオチド配列がケモカインhMIP-1α(LD78β)をコードしていて、このLD78βがAPCの細胞表面に発現している対応するコグネイト受容体CCR1、CCR3、CCR5に結合することである。hMIP-1α(ヒトMIP-1α)はケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド3(CCL3)としても知られており、ヒトではCCL3遺伝子によってコードされている。CCL3はマクロファージ炎症性タンパク質-1α(MIP-1α)としても知られており、急性炎症状態において多形核白血球のリクルートと活性化に関与するCCケモカインファミリーに属するサイトカインである。マウスCCL3はアミノ酸が69個の成熟ケモカインをコードする単一コピーの遺伝子だが、ヒトホモログは二重化されて変異しており、2つの非アレルバリアントLD78α(CCL3)とLD78β(CCL3-L1)を生成させる。両方とも、マウスCCL3と74%の相同性を示す。
【0274】
本発明のポリペプチド/2量体タンパク質が対応するコグネイト受容体に結合するとAPCへの内部化が起こり、このタンパク質が分解されて最小エピトープを含む小さなペプチドになる。したがって変異がMHC分子の表面にロードされてCD4+ T細胞とCD8+ T細胞に提示され、腫瘍特異的免疫応答が誘導される。CD8+ T細胞は、刺激されると、活性化されたCD4+ T細胞からの助けを得て、同じネオアンチゲンを発現している腫瘍細胞を標的とし、この腫瘍細胞を殺す。
【0275】
本発明の一実施態様では、標的ユニットは、配列ID番号1のアミノ酸5~70と配列が少なくとも80%一致するアミノ酸配列を含んでいる。好ましい一実施態様では、標的ユニットは、配列ID番号1のアミノ酸5~70と配列が少なくとも85%(例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%)一致するアミノ酸配列を含んでいる。
【0276】
より好ましい一実施態様では、標的ユニットは、配列が配列ID番号1のアミノ酸5~70と配列が少なくとも80%(例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%、例えば少なくとも100%)一致するアミノ酸配列からなる。
【0277】
2量体化ユニット
【0278】
「2量体化ユニット」という用語は、本明細書では、抗原ユニットと標的ユニットの間にあるアミノ酸配列を意味する。したがって2量体化ユニットは抗原ユニットと標的ユニットを接続する機能を持ち、2つの単量体ポリペプチドを2量体化して2量体タンパク質にするのを助ける。さらに、2量体化ユニットは、ポリペプチド/2量体タンパク質に可撓性を与えることで、標的ユニットが、APC上の表面分子がさまざまな距離に位置しているときでさえ、それら表面分子に最適に結合できるようにする。2量体化ユニットとして、これらの条件を満たす任意のユニットが可能である。
【0279】
したがって一実施態様では、2量体化ユニットは、ヒンジ領域と、場合によっては2量体化を助ける別のドメインを含むことができる。ヒンジ領域とこの別のドメインは、第3のリンカーを通じて接続することができる。
【0280】
「ヒンジ領域」という用語は、2量体化を促進する2量体タンパク質のペプチド配列を意味する。ヒンジ領域はユニット間の可撓性スペーサとして機能し、APC上の2つの標的分子がさまざまな距離で発現している場合でさえ、2つの標的ユニットがそれら標的分子に同時に結合することを可能にする。ヒンジ領域として、Ig(例えばIgG3)に由来するものが可能である。ヒンジ領域は、共有結合(例えばジスルフィド架橋)の形成を通じて2量体化に寄与することができる。したがって一実施態様では、ヒンジ領域は1つ以上の共有結合を形成する能力を有する。共有結合として、例えばジスルフィド架橋が可能である。
【0281】
一実施態様では、2量体化を促進する他のドメインは、免疫グロブリンドメイン(例えばカルボキシ末端Cドメイン)や、Cドメインまたはそのバリアントと実質的に一致する配列である。2量体化を促進する他のドメインは、IgGに由来するカルボキシ末端Cドメインであることが好ましい。
【0282】
免疫グロブリンドメインは、非共有結合相互作用(例えば疎水性相互作用)を通じた2量体化に寄与する。例えば免疫グロブリンドメインは、非共有結合相互作用を通じて2量体を形成する能力を有する。非共有結合相互作用は疎水性相互作用であることが好ましい。
【0283】
2量体化ユニットは、F細胞受容体に結合することのできるCH2ドメインを含まないことが好ましい。いくつかの実施態様では、2量体化ユニットにCH2ドメインが完全に欠けている。別の実施態様では、CH2ドメインが変異してF細胞受容体に結合する能力を失っている。
【0284】
好ましい一実施態様では、2量体化ユニットはヒンジのエキソンh1とh4からなり、第3のリンカーを通じてヒトIgG3のCH3ドメインに接続される。
【0285】
CD8
+
T細胞応答
【0286】
本発明のランク付け法によって得られる本明細書に記載のワクチンは、所与のネオエピトープに対する免疫応答をCD4+ T細胞応答からCD8+ T細胞応答へとシフトさせることを誘導することができる。そのため1つの側面では、個体のためのネオエピトープの数Aを選択する方法が提供され、この方法は、
a.1つ以上のネオエピトープ(ただしそれぞれのネオエピトープは、少なくとも1つの最小エピトープを含むとともに、参照配列と比べて少なくとも1つの変異(例えば免疫原性変異)を含む)を個体から取得する工程と;
b.ネオエピトープそれぞれの中の少なくとも1つの最小エピトープ(例えば少なくとも2つ、または3つ、または4つの最小エピトープ)についてMHC Iおよび/またはMHC IIへの結合親和性を求める工程と;
c.MHC Iおよび/またはMHC IIに結合することが予測されるネオエピトープを選択することによってMHC結合ネオエピトープを取得する工程と;
d.これらMHC結合ネオエピトープを、臨床で有用である可能性に関してランク付けする工程と;
e.最高ランクのMHC結合ネオエピトープの中からA個のネオエピトープを選択する工程を含んでおり(ただしAは整数であり、Aは少なくとも3、例えば少なくとも4、例えば少なくとも5である)、
これらの工程により、本明細書に記載されているワクチンとして投与されたときにCD8+ T細胞応答を誘導することのできるA個のネオエピトープを選択する。
【0287】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載されている方法によって選択されたネオエピトープを含むワクチンは、このようにしてCD8
+ T細胞応答を誘導することができる。特別な実施態様では、このようなワクチンは、他のワクチン形式とは異なり、CD8
+ T細胞応答の誘導を優勢にすることができる。例えばペプチドワクチンおよび/またはRNAワクチンとして投与されたときにCD4
+ T細胞応答を誘導するネオエピトープは、本明細書に記載されているVaccibody DNAワクチンとして投与されたときにCD8
+ T細胞応答を誘導することができる。特に、本発明の方法によって選択されたネオエピトープがCD8
+ T細胞応答を誘導できることは、これまで見いだされていなかった可能性がある。発明者は、実施例13と
図6に示されているように、いくつかのネオエピトープがこの状況に当てはまることを見いだした。
【0288】
いくつかの実施態様では、Aは、特に断わらない限り整数である。
【実施例】
【0289】
実施例1:VB10.NEO患者特異的宿主細胞系の供給源、歴史、作製
【0290】
ネオエピトープ抗原モジュールの設計は、それぞれの患者で同定された独自の腫瘍特異的配列に基づいている。免疫原性が最も大きいネオエピトープを予測するため、以下にまとめた最適化された作業フローを確立し、それを
図7に示してある。
【0291】
1)ネオエピトープを選択する第1の工程は、腫瘍特異的変異をすべて同定する工程である。腫瘍の中で発現していないネオエピトープ、または(変異部位を含んでいて)プロテオーム内の別の場所で一致する配列を持つアミノ酸9個のペプチドを含むネオエピトープは、除外されるか優先度が下げられる。さらに、特定の臓器/組織の中でのRNA発現レベルが他のあらゆる組織と比べて少なくとも5倍高い遺伝子内のネオエピトープも、除外されるか優先度が下げられる。
【0292】
2)次の工程は、(長さが27個のアミノ酸で、中央に変異がある)ネオエピトープを構成し、これらネオエピトープのランク付けを、HLA分子に対するペプチドの結合親和性と、これらネオエピトープの残基特性の最適な組み合わせに基づいて実行する工程である。
【0293】
3)いくつかの実施態様では、ネオエピトープセットの最終的決定には、ネオエピトープの特性、および/またはネオエピトープのソース遺伝子で、免疫原性ネオエピトープを明確にする上で潜在的に重要であることが報告されているものの特性からなる注意深く選択された評価基準に基づくネオエピトープの評価が含まれる。この評価は、臨床医(CMO)、免疫学者(CSO)、バイオインフォマティクス研究者からなる標的選択ボードによってなされる。
【0294】
実施例2:患者組織の回収と取り扱い
【0295】
スクリーニングの間に適格な患者から固形腫瘍組織と血液サンプルを回収する。
【0296】
エキソームのシークエンシングとRNAのシークエンシングのため少なくとも1つのコア生検を回収する。エキソームとトランスクリプトームをシークエンシングするための試料の完全性を維持するには低温保存が理想的であるため、この材料はシークエンシングの目的で使用することが好ましい。新鮮な腫瘍材料をスクリーニングのときに取得できない場合には、スクリーニング前にFFPEの中に保管されていた腫瘍材料をスクリーニングすることが許容される。
【0297】
血液サンプルを回収する。腫瘍生検サンプルを低温で保管するため、サンプルを液体窒素の中に沈めて瞬間的に凍結させ、液体窒素の中で保管する。FFPE腫瘍材料にするには、組織サンプルを4~10%中性緩衝化ホルマリンの中で固定する。次いでサンプルを脱水した後に包埋し、室温で保管する。
【0298】
実施例3:患者のエキソームとRNAのシークエンシングと、HLA型判定
【0299】
エキソームとRNAのシークエンシングのデータを血液と腫瘍から取得するほか、患者のHLA型を取得する。腫瘍サンプルと血液サンプルのシークエンシングを少なくとも2×100 bpの読み取り長で実施する。生データ出力は少なくとも24ギガ塩基(Gb)である。
【0300】
RNAのシークエンシングを腫瘍サンプルから少なくとも2×100 bpの読み取り長で実施する。全データ出力は少なくとも1億リードである。
【0301】
HLA型を判定するため、血液サンプルから単離されたDNAのシークエンシングをIlluminaプラットフォームで少なくとも2×150 bpの読み取り長にして100×超のカバレッジで実施する。
【0302】
実施例4:腫瘍内の変異のバイオインフォマティクス処理と同定
【0303】
エキソームとRNAの発現データは、シークエンシング提供者のセキュリティが確保された内部サーバーからダウンロードするFASTQファイルとして提供される。品質管理に合格した生エキソーム配列(FASTQファイル)の分析は、腫瘍サンプルと正常なサンプルのペアに関するfastqプロセシングとバリアントコーリングのための最新技術と最適化されたアルゴリズムによって規定されている最良の作業フローに従う(例えばMiller他、2015年;Van der Auwera他、2013年)。
【0304】
RNAシークエンシング分析の範囲内で最も進んだやり方を用いてRNAシークエンシングからの生FASTQファイルをマッピングする(例えばDobin他、2013年;Dutton G. 2016年)。
【0305】
患者のHLAアレルは、Illuminaシークエンシングプラットフォームを用いてEDTA-血液サンプルから同定する。
【0306】
RNA発現が腫瘍組織で検出される(TPM>0、Gubin他、2015年で明確にされている)タンパク質コード遺伝子の中で見いだされるすべての変異(vcfファイルの中で同定されたバリアント)について、ネオエピトープとして有用である可能性を調べる。
【0307】
変異のそれぞれの側にアミノ酸13個にわたって広がって全長がアミノ酸27個のネオエピトープ配列を形成するペプチド配列を取り出す。タンパク質のC末端またはN末端からアミノ酸13個未満の位置にある非同義変異については、変異に隣接する配列は一方の側がアミノ酸13個よりも短いため、ネオエピトープ配列の全長はアミノ酸27個よりも短くなる。
【0308】
実施例5:自己免疫のリスクを最少にするための除外基準
【0309】
交差反応性のリスクを最少にするため、(変異を含んでいて)アミノ酸9個のコアペプチドを有するネオエピトープのうちで、正常なヒトプロテオームの中の任意のペプチド配列と一致するネオエピトープはすべて、この段階で除外するか優先度を下げることが好ましい。さらに、(Human Proteome Atlas, Uhlen他、2015年によって明確にされているように)特定の組織または臓器の中でのRNA発現レベルが他のあらゆる組織または臓器と比べて少なくとも5倍高い遺伝子内のネオエピトープも、除外されるか優先度が下げられる。
【0310】
実施例6:マウス腫瘍モデルにおいてネオエピトープの優先度を決定するためのコンピュータモデルの開発
【0311】
免疫原性の最も大きいネオエピトープを同定するため、2つの生体内マウス腫瘍モデルからのデータと結果を利用してネオエピトープの優先度を予測するためのコンピュータモデルを開発した。
【0312】
マウスにおける臨床前生体内実験からの多重データセットを用い、免疫原性ネオエピトープを予測する上で重要な特徴を回収し、その予測可能性を評価した。CT26大腸がんモデルで同定されたネオエピトープと、これらネオエピトープについてVB10.NEOワクチンを接種したBALB/cマウス(H-2d)で観察された免疫原性を用い、予想される免疫原性に基づいてネオエピトープの優先度を決定する戦略を開発した。B16黒色腫モデルとLL2肺がんモデルで同定されたネオエピトープに関して回収された免疫原性データと、これらネオエピトープについてVB10.NEOワクチンを接種したC57BI/6マウス(H-2b)で観察された免疫原性を用い、この戦略の予測能力を確認した。ネオエピトープが免疫原性であると分類されるのは、社内で実施したIFNγELISpotアッセイによる分析でIFNγの数>陰性対照+2×標準偏差、かつ、スポットの数>25である場合であった。予測ツールNetMHCpan(Nielsen他、2016年)とNetMHCIIpan(Andreatta他、2015年)を用いて求めたMHC分子クラスIとIIに対する結合親和性(%ランク)、結合する最小エピトープの総数、変異したエピトープと野生型エピトープの間の結合親和性の差(結合差)、BLOcks SUbstitution Matrix(BLOSUM)スコア(Henikoff他、1992年)は、免疫原性ネオエピトープと非免疫原性ネオエピトープの間で明確に異なるパターンを示していた。
【0313】
実施例7:結合親和性(%ランク)、結合エピトープの総数、結合差、BLOSUMスコア
【0314】
マウスでは、MHCクラスIまたはII(ヒトではHLAクラスIまたはII)に対する親和性を持つペプチドだけが適格なT細胞標的を提供する。ワクチン標的を選択するための1つの戦略は、候補ネオエピトープを、MHC分子クラスIとIIに対するこれら候補ネオエピトープの親和性に関してNetMHCpan とNetMHCIIpan をそれぞれ用いて求めた予測値に基づいて選択するというものである。27個のアミノ酸からなるすべてのネオエピトープについて、これらサーバーが、選択されたMHC分子に関する結合親和性スコアを提供する。結合親和性予測サーバーは、MHC親和性に関していくつかの数値を提供するが、そのうちで%ランクが大いに推奨される(Nielsen他、2016年、Andreatta他、2015年)。小さな%ランクスコアは、結合親和性が強いことを示している。
【0315】
図2は、MHCクラスIとMHCクラスIIについて、VB10.NEOワクチンを接種したマウスで調べた免疫原性ネオエピトープと非免疫原性ネオエピトープの%ランクの分布を示している。
【0316】
長さがアミノ酸27個のネオエピトープの中に、関係するMHC分子に結合することが予測される2つ以上の最小エピトープ(それぞれ、MHCクラスIに関しては8~14個のアミノ酸、MHCクラスIIに関しては9~15個のアミノ酸)を持つことが可能である。予測される最小エピトープを最も多く含有するネオエピトープは、1つ以上の免疫原性ペプチドを処理して患者のMHC分子の表面に提示する機会が増加するため、より効果的な腫瘍特異的免疫応答を誘起する。
図8は、B16データとCT26データの中の免疫原性ネオエピトープと非免疫原性ネオエピトープで最小エピトープの総数を比較した結果を示している。
【0317】
ネオエピトープが、対応する野生型配列よりもMHC分子に対する結合親和性が大きい(大きな結合差)場合には、野生型は健康な組織の中にほとんど、またはまったく提示されない可能性が大きいため、ネオエピトープ特異的T細胞は、健康な細胞を認識するリスクが小さい一方で、ネオエピトープを発現しているがん細胞を認識する可能性が大きいはずである。参照配列と変異体ネオエピトープ配列の間の結合差を測定するには、これら配列の%ランク値の比(参照/変異体)を用い、残基のタイプ(係留(2位または8位/9位)と非係留(他のすべての残基位置))によってグループ化する。
図9は、エピトープが係留位置の変異と大きな結合差を持つ場合に免疫原性である可能性がより大きいことを示している。
【0318】
BLOSUMスコアは、アミノ酸置換ペアの起こりやすさを記述している。われわれのケースでは、健康な組織で発現しているタンパク質に見いだされるアミノ酸が、変異したアミノ酸によって置き換えられている。スコアが小さいほど、関連するタンパク質のアラインメントの中でこの置換が起こる可能性は小さい。結合親和性が大きいCT26黒色腫モデルのデータセットの中のネオエピトープのBLOSUMスコアは、一般に免疫原性ネオエピトープの方が小さい(
図10)。
【0319】
免疫原性が最も大きいネオエピトープを予測するには、5つの因子(MHC IとMHC IIに関する%ランク値、ネオエピトープ内の最小エピトープの数、係留位置における結合差、BLOSUMスコア)すべての組み合わせが含まれる。ネオエピトープの優先度を決定するための戦略(NeoSELECTと呼ぶ)は、これら5つの因子を重み付けし、ネオエピトープのランク付けされたリストを生成させる。NeoSELECTランキングをLL2腫瘍モデルとCT26腫瘍モデルとB16腫瘍モデルからのネオエピトープで調べた。これらのネオエピトープで観察された免疫原性を
図3に示してある。
【0320】
(A)CT26モデル、(B)B16モデル、(C)LL2モデルについて、NeoSELECT戦略によって予測される上位20個のネオエピトープで観察された参照ペプチド配列に対する交差反応性を、変異したペプチド配列に対する応答とともに
図4に示してある。CT26モデルでは、交差反応性の測定値を20個のネオエピトープのうちの12個について取得し、B26モデルでは、交差反応性の測定値を20個のネオエピトープのうちの17個について取得した。LL2モデルについては、交差反応性の測定値を20個のネオエピトープすべてについて取得した。このようにNeoSELECT戦略を利用すると、交差反応性T細胞を誘導するリスクが限定される。
【0321】
実施例8:VB N-01臨床試験で用いるネオエピトープ予測法
【0322】
可能性のある20個超のネオエピトープが1人の患者で見いだされる場合には、それらを上記のネオエピトープ予測のためのNeoSELECT優先化戦略に従ってランク付けする。患者データに関しては、NetMHCpanとNetMHCIIpanから参照ネオエピトープと野生型ネオエピトープに関する%ランク値を取得する方法において患者特異的HLAアレルを用いる。結合差を計算し、係留位置を明確にする。すべてのHLAアレルについて、予測された最小エピトープの完全なリストを用いてMHCクラスIとIIのための最小エピトープの数を計算する。各変異に関するBLOSUMスコアをBLOSUMスコア行列から取り出す。その後、これらの因子をNeoSELECT戦略で用い、予測される免疫原性ネオエピトープのランク付けされたリストを取得する。%ランクで表わした結合親和性の測定値、結合差、最小エピトープの数、BLOSUMスコアは、標準化された値であり、体内のネオエピトープを同定した生物による影響を受けない。したがってマウスのデータに基づいて開発された予測モデルは、ヒトでネオエピトープを予測するのに用いるための追加のカスタム化を必要としない。
【0323】
実施例9:最終的なネオエピトープの品質管理と選択
【0324】
最後に、これら除外基準に合格したすべてのネオエピトープに関する追加情報を回収して選択基準として用いる。これらの基準に含まれるのは以下の事項である。
・クローン性(すなわち患者からの2つ以上の生検サンプルに見いだされるネオエピトープが優先される(例えばネオエピトープは、アーカイブ腫瘍材料、同じ病巣からの多面的生検、無細胞DNAのいずれかに見いだされる))
・RNA発現レベルが高いこと(単位はTPM)
・MHCクラスIとIIに対するネオエピトープの%ランクが小さいこと(結合親和性が大きいこと)
・結合差が大きいこと(ネオエピトープと参照の%ランク)
・BLOSUMスコアが小さいこと:ネオエピトープの中の置換されたアミノ酸残基を野生型残基と比べた特徴
・VCFファイルから推定される変異の位置におけるアレル頻度(AF)またはバリアントアレル頻度(VAF)が大きいこと
・ソース遺伝子が、がんの中の体細胞変異のカタログ(COSMIC)データベースに含まれる既知のがん関連遺伝子であること
・ネオエピトープが、T細胞によって認識されることが知られているエピトープ(例えば免疫エピトープデータベースと分析リソース(IEDBデータベース)から得られるエピトープ)とよく似ていること
・アミノ酸27個からなるネオエピトープ内の最小エピトープ(8~15個のアミノ酸)の数が多いこと
・Fritsch他、2014年に記載されているように、HLA-TCR複合体の中の変異の位置
・NetMHCCstabpan(Rasmussen他、2016年)またはそれと同様のものを用いて推定されたMHCクラスI/MHCクラスII分子に対する結合安定性スコアが大きいこと
・NetChop(Nielsen他、2005年)またはそれと同様のものによって予測されるプロテアソーム切断スコアが大きいこと。
【0325】
NeoSELECT戦略から予測される優先化に加え、これらの基準が10~20個のネオエピトープの最終セットを選択するための基礎を形成しており、標的選択ボードによって評価される。これらの判断基準について、ワクチン内の各ネオエピトープに対する患者の免疫応答と患者の臨床反応が記録されて分析される。
【0326】
推奨されるネオエピトープ群を組み合わせ、可撓性非免疫原性グリシン/セリンリッチリンカーによって互いに隔てる(実施例11を参照されたい)。ネオエピトープの順番は各ネオエピトープとリンカーの間の接合配列に依存するが、プロテオーム内の別の位置で一致する長さがアミノ酸9個の接合配列はすべて避けられる。
【0327】
実施例10:データの保管と分析
【0328】
生データのほか、エキソームとRNAの配列分析からの結果は、患者のセンシティブなデータの処理と保管に関する条件を満たす安全で管理されたコンピュータクラスター環境プラットフォームの中に保管される。患者の属性を安全に保護するため、すべての患者に、登録時に独自のd桁のコードが与えられる。
【0329】
実施例11:ネオエピトープ抗原モジュールの合成
【0330】
それぞれの患者特異的ネオエピトープ抗原モジュールは、Vaccibody AS社により、長さ10個のアミノ酸からなるグリシン/セリンリッチリンカーに接続された長さ27個のアミノ酸からなる10~20個のネオエピトープに基づいて設計される。このネオエピトープ抗原モジュールはDNA合成者によって新たに合成され、プラスミドにクローニングされてVB10.NEOが生成する。
【0331】
実施例12:Vaccibodyは他のワクチン形式と比べて強力で優勢なCD8
+
T細胞応答を誘導する
【0332】
MCHクラスI(CD8
+ T細胞応答)に結合することが予測される10個の異なるネオエピトープ(pep1~10)はすべて、Kreiter他、2015年とCastle他、2012年によって調べられている。それは、これらのネオエピトープがマウスB16-F10黒色腫腫瘍モデルにおいてCD8
+ T細胞応答を誘導できるかどうかを調べるためであった。これら10個のネオエピトープがペプチドとして、またはRNAとして、または本明細書に記載されているVaccibody(「VB10.NEO」)として投与されたとき、そのうちの6個によって誘導された応答が
図6に示されている。
【0333】
ネオエピトープを合成ペプチドとして投与したときには6個のうちの1個がCD8+ T細胞応答を誘導し、mRNAとして投与したときには6個のうちの2個がCD8+ T細胞応答を誘導した。
【0334】
しかし同じ6個のネオエピトープを、ヒトMIP1αを標的とするVaccibodyとして送達するとき、すべてのネオエピトープがCD8+ T細胞応答を誘導した。これは、ネオエピトープに対する強いCD8+キラーT細胞応答を誘導するのにワクチンの形式が重要であることを明確に実証している。
【0335】
実施例13:選択されたネオエピトープの免疫原性
【0336】
腎細胞がんまたは頭頸部の扁平細胞がんに罹患している4人の患者のため、本明細書に記載されている方法を用いてネオエピトープを選択した。個別化ワクチンを構成してこれらの患者に投与した。個別化ワクチンの最初の用量を投与してから3~9ヶ月後に末梢血単核細胞を回収して免疫原性を測定した。T細胞応答は、10日前刺激ELISPOTアッセイで測定し(バックグラウンドを差し引い)た。ワクチンによって誘導される応答:ワクチン接種後に30 SFU超増加。免疫原性ネオエピトープ:少なくとも1つの時点で30 SFU超。
【0337】
【0338】
平均すると、これら4人の患者ではこの方法によって選択されたネオエピトープの95%が免疫原性であった。すなわち、腫瘍の中に対応する変異した配列を持つ患者でT細胞応答を活性化することができた。選択されたネオエピトープを個別化されたワクチンに組み込んで患者に投与したとき、ワクチン接種前と比べてT細胞応答の誘導が増加し、平均値はネオエピトープの約78%になった。
【0339】
この実施例は、このネオエピトープ選択法により、患者に投与したときにT細胞応答を増加させることのできるネオエピトープが選択されることを示している。
【0340】
配列
【0341】
配列ID番号1
シグナルペプチドと成熟ペプチドを含むC-Cモチーフケモカイン3様1前駆体(LD78β)、アミノ酸24~93:
MQVSTAALAVLLCTMALCNQVLSAPLAADTPTACCFSYTSRQIPQNFIADYFETSSQCSKPSVIFLTKRGRQVCADPSEEWVQKYVSDLELSA
【0342】
参考文献
【0343】
Andreatta, M.他(2015年)「結合コア同定が改善されたペプチド-MHCクラスII結合親和性の正確な汎特異的予測」Immunogenetics. 2015年、第67巻(11~12):641~650ページ。
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【0344】
項目
【0345】
1.個体のためのネオエピトープの数Aを選択する方法であって、
a.1つ以上のネオエピトープ(ただしそれぞれのネオエピトープは、少なくとも1つの最小エピトープを含むとともに、参照配列と比べて少なくとも1つの変異(例えば免疫原性変異)を含む)を前記個体から取得する工程と;
b.前記ネオエピトープそれぞれの中の少なくとも1つの最小エピトープ(例えば少なくとも2つ、または3つ、または4つの最小エピトープ)についてMHC Iおよび/またはMHC IIへの結合親和性を求める工程と;
c.MHC Iおよび/またはMHC IIに結合することが予測される少なくとも1つの最小エピトープを含むネオエピトープを選択することによってMHC結合ネオエピトープを取得する工程と;
d.これらMHC結合ネオエピトープを、臨床で有用である可能性に関してランク付けする工程と;
e.最高ランクのMHC結合ネオエピトープの中からA個のネオエピトープを選択する工程を含み、
これらの工程によって臨床で有用である可能性が大きいA個のネオエピトープを選択する方法。
【0346】
2.前記A個のネオエピトープのいくつかまたはすべてが少なくともMHC Iに結合する、項1に記載の方法。
【0347】
3.前記少なくとも1つの最小エピトープが、1~50個の最小エピトープ、例えば1~40個の最小エピトープ、例えば1~30個の最小エピトープ、例えば1~20個の最小エピトープである、項1または2に記載の方法。
【0348】
4.それぞれの最小エピトープが前記変異を含む、項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【0349】
5.工程bを、前記最小エピトープのそれぞれについてMHC Iおよび/またはMHC IIへの結合親和性を求めることによって実施し、そのことによってx個のMHC I結合最小エピトープおよび/またはy個のMHC II結合最小エピトープを同定する、項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【0350】
6.前記ネオエピトープのそれぞれについて、MHC IとMHC IIへの結合親和性を、これらネオエピトープのそれぞれに含まれる最小エピトープの最大MHC I結合親和性および最大MHC II結合親和性として計算する、項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【0351】
7.工程cが、MHC Iに結合することが予測される少なくとも1つの最小エピトープおよび/またはMHC IIに結合することが予測される少なくとも1つの最小エピトープを選択し、そのことによってMHC結合ネオエピトープを取得することを含むか、工程cが、MHC Iに結合することが予測される少なくとも1つの最小エピトープおよび/またはMHC IIに結合することが予測される少なくとも1つの最小エピトープを選択し、そのことによってMHC結合ネオエピトープを取得することことからなる、項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【0352】
8.工程cが、MHC Iに結合することが予測される少なくとも1つの最小エピトープとMHC IIに結合することが予測される少なくとも1つの最小エピトープを含むネオエピトープを選択することを含む、項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【0353】
9.工程dが、前記ネオエピトープのそれぞれの中にあってMHC Iおよび/またはMHC IIに結合する最小エピトープの数を求める工程を含み、MHC Iおよび/またはMHC IIに結合する最小エピトープの数がより多いことが、前記ネオエピトープが臨床で有用である可能性より大きいことを示している、項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【0354】
10.工程dが前記ネオエピトープの結合スコアを求める工程を含み、この結合スコアは、(a×2x+b×y)であり(ただし、好ましくはy=0の場合にはa=0、x=0の場合にはb=0であり、y>0の場合にはa=1、x>0の場合にはb=1である)、結合スコアがより大きいことが、前記ネオエピトープが臨床で有用である可能性がより大きいことを示している、項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【0355】
11.工程dが、前記ネオエピトープの結合スコアを求める工程を含み、この結合スコアは、(a×x+b×y)であり(ただし、好ましくはa=2、b=1であるか、y=0の場合にはa=0、x=0の場合にはb=1であり、y>0の場合にはa=1、x>0の場合にはb=1である)、結合スコアがより大きいことが、前記ネオエピトープが臨床で有用である可能性がより大きいことを示している、項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【0356】
12.工程dが、工程cのMHC I結合ネオエピトープのMHC I結合差を求める工程をさらに含み(ただしこのMHC I結合差は、式:(参照の%ランクスコア(MHC I))/(ネオエピトープの%ランクスコア(MHC I))によって与えられる)、MHC I結合差が大きいネオエピトープを、MHC I結合差がより小さいネオエピトープよりも上にランクする、項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【0357】
13.工程dが、工程cのMHC I結合最小エピトープのMHC I結合差を求める工程を含み(ただしこのMHC I結合差は、式:(参照の%ランクスコア(MHC I))/(最小エピトープの%ランクスコア(MHC I))によって与えられる)、MHC I結合差が大きい最小エピトープを含むネオエピトープを、MHC I結合差がより小さな最小エピトープを含むネオエピトープよりも上にランクする、項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【0358】
14.各ネオエピトープの前記MHC I結合差が、そのネオエピトープに含まれる最小エピトープの最大MHC I結合差に等しい、項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【0359】
15.工程dが、工程cのMHC II結合ネオエピトープのMHC II結合差を求める工程をさらに含み(ただしこのMHC II結合差は、式:(参照の%ランクスコア(MHC II))/(ネオエピトープの%ランクスコア(MHC II))によって与えられる)、MHC II結合差が大きいネオエピトープを、MHC II結合差がより小さなネオエピトープよりも上にランクする、項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【0360】
16.工程dが、工程cのMHC II結合ネオエピトープのMHC II結合差を求める工程をさらに含み(ただしこのMHC II結合差は、式:(参照の%ランクスコア(MHC II))/(最小エピトープの%ランクスコア(MHC II))によって与えられる)、MHC II結合差が大きい最小エピトープを含むネオエピトープを、MHC II結合差がより小さな最小エピトープを含むネオエピトープよりも上にランクする、項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【0361】
17.各ネオエピトープの前記MHC II結合差が、そのネオエピトープに含まれる最小エピトープの最大MHC II結合差に等しい、項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【0362】
18.工程cで選択されたネオエピトープがMHC IIに結合する、項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【0363】
19.MHC Iに結合するネオエピトープが工程eで選択されるのは、これら複数のネオエピトープがMHC IIに結合するネオエピトープをまったく含まない場合だけである、項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【0364】
20.工程dが、前記ネオエピトープを以下のようにランク付けすることをさらに含み、すなわち
i)前記ネオエピトープに含まれる各最小エピトープについて、前記変異がその最小ネオエピトープの係留位置にあるか非係留位置にあるかを判断し;
ii)前記ネオエピトープの優先度を決定することをさらに含み、好ましくは、結合差がより大きいネオエピトープを、結合差がより小さいネオエピトープよりも優先する、項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【0365】
21.工程ii)のネオエピトープの優先度決定を、これらネオエピトープに含まれる最小エピトープの最大スコアを各ネオエピトープに割り当てることによって実施する、項20に記載の方法。
【0366】
22.結合差がより大きいネオエピトープが、結合差がより小さいネオエピトープよりも大きなスコアであり、係留位置に変異を含むネオエピトープが、非係留位置に変異を含むネオエピトープよりも大きなスコアである、項20または21に記載の方法。
【0367】
23.前記ネオエピトープの優先度決定を以下のようにして実施する、すなわち
1)前記変異が係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が20以上である場合には、最小エピトープは最大スコアを持ち;
2)前記変異が非係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が20以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、1)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
3)前記変異が係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が20未満かつ3以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、2)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
4)前記変異が非係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が20未満かつ3以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、3)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
5)前記変異が係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が3未満かつ1以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、4)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
6)前記変異が非係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が3未満かつ1以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、5)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
7)前記最小エピトープが、結合差が1未満の変異を持つ場合には、この変異の位置に関係なく、この最小エピトープは最低のスコアを持つことになるように実施する、項19~21のいずれか1項に記載の方法。
【0368】
24.工程dが、前記ネオエピトープを、そのMHC Iランクに従って優先度を決定する工程をさらに含む、項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【0369】
25.MHC Iに結合することが予測される1つ以上の最小エピトープを含むネオエピトープの%ランクスコア(MHC I)が、この1つ以上の最小エピトープの最低%ランクスコア(MHC I)に等しい、項24に記載の方法。
【0370】
26.工程eが、%ランクスコア(MHC I)が2.0未満(例えば1.5未満、例えば1未満、好ましくは0.5以下)のネオエピトープを選択することを含む、項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【0371】
27.%ランクスコア(MHC I)が2よりも大きいMHC I結合ネオエピトープを除外するか優先度を下げる、項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【0372】
28.工程dが、前記ネオエピトープを、そのMHC IIランクに従って優先度を決定する工程をさらに含む、項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【0373】
29.MHC IIに結合することが予測される1つ以上の最小エピトープを含むネオエピトープの%ランクスコア(MHC II)が、この1つ以上の最小エピトープの最低%ランクスコア(MHC II)に等しい、項24~28のいずれか1項に記載の方法。
【0374】
30.工程eが、%ランクスコア(MHC II)が10未満(例えば2未満)のネオエピトープを選択することを含む、項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【0375】
31.%ランクスコア(MHC I)が10よりも大きい(例えば2よりも大きい)MHC I結合ネオエピトープを除外するか優先度を下げる、項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【0376】
32.工程dが、前記ネオエピトープを、そのBLOSUMスコアの降順に従って優先する工程をさらに含み、1つのネオエピトープのBLOSUMスコアは、このネオエピトープに含まれる最高ランクの最小エピトープのBLOSUMスコアに等しく、BLOSUMスコアが1未満の最小エピトープを、BLOSUMスコアが1以上の最小エピトープよりも上にランクする、項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【0377】
33.項1に記載の工程dが、前記ネオエピトープの中に存在するアミノ酸置換がランダムに発生する確率を求めることをさらに含み、小さな確率でランダムに発生するアミノ酸置換を含むネオエピトープを、より大きな確率でランダムに発生するアミノ酸置換を含むネオエピトープよりも上にランクする、項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【0378】
34.前記ネオエピトープの中に存在するアミノ酸置換がランダムに発生する前記確率を、進化に基づくスコア行列を用いて求める、項33に記載の方法。
【0379】
35.前記スコア行列が対数オッズ行列である、項34に記載の方法。
【0380】
36.前記対数オッズ行列がBLOSUM行列である、項35に記載の方法。
【0381】
37.前記BLOSUM行列がBLOSUM62行列である、項36に記載の方法。
【0382】
38.BLOSUM62スコアが1未満のアミノ酸置換ペアに連結された変異がないネオエピトープを除外するか優先度を下げる、項37に記載の方法。
【0383】
39.前記ネオエピトープのRNA発現レベルを求めることをさらに含み、RNA発現が検出されないネオエピトープを除外するか優先度を下げる、項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【0384】
40.RNA発現レベルが高いネオエピトープを、RNA発現レベルがより低いネオエピトープよりも上にランクする、項39に記載の方法。
【0385】
41.前記RNA発現レベルをMHC Iおよび/またはMHC IIに結合するネオエピトープについて求める、項39または40に記載の方法。
【0386】
42.ネオエピトープのペプチド配列をヒトプロテオームのペプチド配列と比較する工程をさらに含み、ヒトプロテオームの中のペプチド配列と一致するペプチド配列を含むネオエピトープを除外するか優先度を下げる、項1~41のいずれか1項に記載の方法。
【0387】
43.前記ネオエピトープのペプチドが5~15個のアミノ酸を含むか、5~15個のアミノ酸からなる、項42に記載の方法。
【0388】
44.前記個体で1つ以上の腫瘍特異的変異を同定することによって前記複数のネオエピトープを同定する工程をさらに含む、項1~43のいずれか1項に記載の方法。
【0389】
45.前記個体からの腫瘍DNAのエキソームをシークエンシングすることによって前記1つ以上の腫瘍特異的変異を同定する、項44に記載の方法。
【0390】
46.前記1つ以上の腫瘍特異的変異の結果としてアミノ酸置換が起こる、項44または45に記載の方法。
【0391】
47.前記MHC結合親和性が、前記個体のHLA遺伝子型を判定することを含む、項1~46のいずれか1項に記載の方法。
【0392】
48.前記HLA遺伝子型を前記個体の血液サンプルから判定する、項1~47のいずれか1項に記載の方法。
【0393】
49.前記MHC Iおよび/またはMHC IIへの結合親和性をインシリコ予測によって求める、項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【0394】
50.前記インシリコ予測を、MHCクラスI分子および/またはMHCクラスII分子へのペプチドの結合を予測するコンピュータプログラムを用いて実現する、項49に記載の方法。
【0395】
51.所与の臓器または組織の中で他の臓器または組織と比べて少なくとも5倍大きいRNA発現レベルを示す遺伝子の中に存在するネオエピトープを除外するか優先度を下げる、項1~50のいずれか1項に記載の方法。
【0396】
52.前記臓器を心臓と脳から選択する、項51に記載の方法。
【0397】
53.前記臓器を、心臓、脳、肝臓、肺、胃、腎臓、秘蔵、大腸、小腸から選択する、項52に記載の方法。
【0398】
54.工程dが、MHC結合ネオエピトープの中に存在する変異のアレル頻度を求める工程をさらに含み、アレル頻度が大きいMHC結合ネオエピトープを、アレル頻度がより小さいMHC結合ネオエピトープよりも上にランクする、項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【0399】
55.2つ以上の生検に見いだされる変異を含むMHC結合ネオエピトープを、1つの生検でだけ見いだされる変異を含むMHC結合ネオエピトープよりも上にランクする、項1~54のいずれか1項に記載の方法。
【0400】
56.前記ネオエピトープが、アミノ酸7~40個の長さを持つ、項1~55のいずれか1項に記載の方法。
【0401】
57.前記ネオエピトープが、アミノ酸15~30個の長さを持つ、項1~56のいずれか1項に記載の方法。
【0402】
58.前記ネオエピトープが、アミノ酸25~30個、例えばアミノ酸27個の長さを持つ、項1~57のいずれか1項に記載の方法。
【0403】
59.前記変異が本質的に前記ネオエピトープ配列の中央に位置する、項1~58のいずれか1項に記載の方法。
【0404】
60.前記個体ががん患者である、項1~59のいずれか1項に記載の方法。
【0405】
61.前記ネオエピトープを前記個体のために選択してがんワクチンで使用する、項1~60のいずれか1項に記載の方法。
【0406】
62.Aが、1~100の整数、例えば5~50の整数、例えば5~30の整数である、項1~61のいずれか1項に記載の方法。
【0407】
63.Aが10~20の整数である、項1~62のいずれか1項に記載の方法。
【0408】
64.x>yである、項1~63のいずれか1項に記載の方法。
【0409】
65.x≧2yである、項1~64のいずれか1項に記載の方法。
【0410】
66.x>2.5yである、項1~65のいずれか1項に記載の方法。
【0411】
67.A≧3である、項1~66のいずれか1項に記載の方法。
【0412】
68.前記A個のネオエピトープのうちの少なくともいくつか、例えばA個のネオエピトープのうちのA/2個、例えばA個のネオエピトープのうちのA/2個~A個がCD8+ T細胞応答を誘導することができる、項1~67のいずれか1項に記載の方法。
【0413】
69.a.複数のネオエピトープ(ただし各ネオエピトープは、少なくとも3つの最小エピトープを含むとともに、参照配列と比べて少なくとも1つの変異(例えば免疫原性変異)を含む)を前記個体から取得する工程と;
b.前記ネオエピトープのそれぞれについてMHC IとMHC IIへの結合親和性を求め、そのことによってx個のMHC I結合ネオエピトープとy個のMHC II結合ネオエピトープを同定する工程(ただしx+y≧3である)と;
c.少なくともMHC Iに結合することが予測されるとともに、場合によってはMHC IIに結合することが予測されるネオエピトープを選択することによってMHC結合ネオエピトープを取得する工程と;
d.これらMHC結合ネオエピトープを臨床で有用である可能性に関してランク付けする操作を、
i.ネオエピトープを、その中に含まれるMHC Iと場合によってはMHC IIに結合する最小エピトープの数に応じてランク付けし、より大きな数をより上のランクにする工程と;
e.最高ランクのMHC結合ネオエピトープの中からA個のネオエピトープを選択する工程を含み、
これらの工程によって臨床で有用である可能性が大きいA個のネオエピトープを選択する、項1~68のいずれか1項に記載の方法。
【0414】
70.ネオエピトープの中に含まれるMHC I結合最小エピトープの数に、このネオエピトープの中に含まれるMHC II結合最小エピトープの数よりも大きな例えば2倍を超える重みを付ける、項69に記載の方法。
【0415】
71.工程dの工程iの後に、工程ii、すなわち
ii.前記ネオエピトープのMHC I結合差および/またはMHC II結合差のスコアを求め(ただしこのMHC I結合差は、式:(参照の%ランクスコア(MHC I))/(ネオエピトープの%ランクスコア(MHC I))によって与えられ、このMHC II結合差は、式:(参照の%ランクスコア(MHC II))/(ネオエピトープの%ランクスコア(MHC II))によって与えられる)、結合差が大きいネオエピトープを、結合差がより小さいネオエピトープよりも上にランクする操作が続く、項69または70に記載の方法。
【0416】
72.前記ネオエピトープを降順で以下のようにランク付けする、すなわち
1)前記変異が係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が20以上である場合には、最小エピトープは最大スコアを持ち;
2)前記変異が非係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が20以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、1)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
3)前記変異が係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が20未満かつ3以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、2)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
4)前記変異が非係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が20未満かつ3以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、3)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
5)前記変異が係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が3未満かつ1以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、4)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
6)前記変異が非係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が3未満かつ1以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、5)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
7)前記最小エピトープが、結合差が1未満の変異を持つ場合には、前記変異の位置に関係なく、この最小エピトープは最低のスコアを持つようにする、項70に記載の方法。
【0417】
73.工程dの工程iまたは工程iiの後に工程iiiが続く、すなわち
iii.前記ネオエピトープをそのBLOSUMスコアに従ってランク付けし、小さなBLOSUMスコアを持つネオエピトープを、大きなスコアを持つネオエピトープよりも上にランクする操作が続く、項69~72のいずれか1項に記載の方法。
【0418】
74.ネオエピトープの%ランクスコアが、その中に含まれる最小エピトープの最低%ランクスコアに等しい、項73に記載の方法。
【0419】
75.ネオエピトープまたは最小エピトープが、
- 0.5以下の%ランクスコア(MHC I)を持つ場合にはMHC Iに強く結合し;
- 0.5<%ランクスコア(MHC I)≦2である場合にはMHC Iに弱く結合し;
- 2よりも大きい%ランクスコア(MHC I)を持つ場合にはMHC Iに結合しないことが予測される、項73または74に記載の方法。
【0420】
76.ネオエピトープまたは最小エピトープが、
- 2以下の%ランクスコア(MHC II)を持つ場合にはMHC IIに強く結合し;
- 2<%ランクスコア(MHC II)≦10である場合にはMHC IIに弱く結合し;
- 10よりも大きい%ランクスコア(MHC II)を持つ場合にはMHC IIに結合しないことが予測される、項73~75のいずれか1項に記載の方法。
【0421】
77.工程i、工程ii、工程iiiのいずれかの後に工程ivが続く、すなわち
iv.前記ネオエピトープをそのBLOSUMスコアに従ってスコア化し、小さなBLOSUMスコアにより大きなスコアを与える操作が続く、項69~76のいずれか1項に記載の方法。
【0422】
78.BLOSUMスコアが3未満、例えばBLOSUMスコアが2未満、例えばBLOSUMスコアが1未満、例えばBLOSUMスコアが0未満のネオエピトープを優先する、項69~77のいずれか1項に記載の方法。
【0423】
79.個体のためのネオエピトープの数Aを選択する方法であって、
a.1つ以上のネオエピトープ(ただしそれぞれのネオエピトープは、少なくとも1つの最小エピトープを含むとともに、参照配列と比べて少なくとも1つの変異(例えば免疫原性変異)を含む)を前記個体から取得する工程と;
b.前記ネオエピトープそれぞれの中の少なくとも1つの最小エピトープ(例えば少なくとも2つ、または3つ、または4つの最小エピトープ)についてMHC Iへの結合親和性を求めるとともに、前記ネオエピトープそれぞれについてMHC I結合最小エピトープの数を求める工程と;
c.前記ネオエピトープを以下のようにランク付けする工程、すなわち
i.MHC Iに結合する多数の最小エピトープを含むネオエピトープの優先度を決めた後、大きなスコアを持つネオエピトープの第1のグループを選択し;
ii.場合によっては、ネオエピトープの第1のグループからのネオエピトープの優先度を以下のようにして決定し、すなわち
1)前記変異が係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が20以上である場合には、最小エピトープは最大スコアを持ち;
2)前記変異が非係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が20以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、1)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
3)前記変異が係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が20未満かつ3以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、2)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
4)前記変異が非係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が20未満かつ3以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、3)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
5)前記変異が係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が3未満かつ1以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、4)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
6)前記変異が非係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が3未満かつ1以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、5)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
7)前記最小エピトープが、結合差が1未満の変異を持つ場合には、前記変異の位置に関係なく、この最小エピトープは最低のスコアを持つようにし;
(ただし前記MHC I結合差は、式:(参照の%ランクスコア(MHC I))/(最小エピトープの%ランクスコア(MHC I))によって与えられる);大きなスコアを持つネオエピトープの第2のグループを選択し;
iii.場合によっては、第2のグループからのネオエピトープの優先度を、そのMHC I%ランクスコアに基づいて決定した後、小さなMHC I%ランクスコアを持つネオエピトープの第3のグループを選択し;
iv.場合によっては、T細胞によって認識されることが知られているエピトープとよく似た最小エピトープを含む第2のグループまたは第3のグループからネオエピトープの第4のグループを選択し;
v.第2のグループ、第3のグループ、第4のグループのいずれかからのネオエピトープの優先度を、そのBLOSUMスコアに基づいて決定して、所定の閾値(この閾値は1であることが好ましい)よりも小さいBLOSUMスコアを、この閾値以上のBLOSUMスコアよりも上にランクした後、BLOSUMスコアが前記閾値よりも小さいネオエピトープの第5のグループを選択する工程を含み;
前記第1のグループ、前記第2のグループ、前記第3のグループ、前記第4のグループ、前記第5のグループのいずれかが前記A個のネオエピトープを含んでいる方法。
【0424】
80.工程cが、工程iと工程ii、または工程iと工程iii、または工程iと工程iv、または工程iと工程v、または工程iと工程iiと工程iii、または工程iと工程iiと工程iv、または工程iと工程iiiと工程iv、または工程iと工程iiと工程v、または工程iと工程iiiと工程v、または工程iと工程ivと工程v、または工程iと工程iiと工程iiiと工程iv、または工程iと工程iiと工程iiiと工程v、または工程iと工程iiと工程ivと工程v、または工程iと工程iiiと工程ivと工程v、または工程iと工程iiと工程iiiと工程ivと工程vを含む、項79に記載の方法。
【0425】
81.項1~78のいずれか1項に記載の方法の特徴のうちの任意のものをさらに含む、項79または80に記載の方法。
【0426】
82.個体のためのネオエピトープの数Aを選択する方法であって、
a.1つ以上のネオエピトープ(ただしそれぞれのネオエピトープは、少なくとも1つの最小エピトープを含むとともに、参照配列と比べて少なくとも1つの変異(例えば免疫原性変異)を含む)を前記個体から取得する工程と;
b.前記ネオエピトープそれぞれの中の少なくとも1つの最小エピトープ(例えば少なくとも2つ、または3つ、または4つの最小エピトープ)についてMHC Iへの結合親和性を求めるとともに、前記ネオエピトープそれぞれについてMHC I結合最小エピトープの数を求める工程と;
c.前記ネオエピトープを以下のようにランク付けする工程、すなわち
i.MHC Iに結合する多数の最小エピトープを含むネオエピトープの優先度を決めた後、大きなスコアを持つネオエピトープの第1のグループを選択し;
ii.場合によっては、ネオエピトープの第1のグループからのネオエピトープの優先度を以下のようにして決定し、すなわち
1)前記変異が係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が20以上である場合には、最小エピトープは最大スコアを持ち;
2)前記変異が非係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が20以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、1)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
3)前記変異が係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が20未満かつ3以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、2)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
4)前記変異が非係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が20未満かつ3以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、3)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
5)前記変異が係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が3未満かつ1以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、4)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
6)前記変異が非係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が3未満かつ1以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、5)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
7)前記最小エピトープが、結合差が1未満の変異を持つ場合には、前記変異の位置に関係なく、この最小エピトープは最低のスコアを持つようにし;
(ただし前記MHC I結合差は、式:(参照の%ランクスコア(MHC I))/(最小エピトープの%ランクスコア(MHC I))によって与えられる);大きなスコアを持つネオエピトープの第2のグループを選択し;
iii.場合によっては、第2のグループからのネオエピトープの優先度を、そのMHC I%ランクスコアに基づいて決定した後、小さなMHC I%ランクスコアを持つネオエピトープの第3のグループを選択し;
iv.場合によっては、T細胞によって認識されることが知られているエピトープとよく似た最小エピトープを含む第2のグループまたは第3のグループからネオエピトープの第4のグループを選択し;
v.第2のグループ、第3のグループ、第4のグループのいずれかからのネオエピトープの優先度を、そのBLOSUMスコアに基づいて決定して、所定の閾値(この閾値は1であることが好ましい)よりも小さいBLOSUMスコアを、この閾値以上のBLOSUMスコアよりも上にランクした後、BLOSUMスコアが前記閾値よりも小さいネオエピトープの第5のグループを選択し;
vi.場合によっては、ネオエピトープの第1のグループ、第2のグループ、第3のグループ、第4のグループ、第5のグループのいずれかから、ネオエピトープを、2つ以上のサンプルで見いだされるネオエピトープに基づいて選択することにより、2つ以上のサンプルで見いだされるネオエピトープの第6のグループを選択し;
vii.場合によっては、ネオエピトープの第1のグループ、第2のグループ、第3のグループ、第4のグループ、第5のグループ、第6のグループのいずれかから、ネオエピトープを、少なくとも2つの異なったバリアントコーラーによって変異が同定されることに基づいて選択することにより、少なくとも2つの異なったバリアントコーラーによって同定された変異を含むネオエピトープの第7のグループを選択する工程を含み、
前記第1のグループ、前記第2のグループ、前記第3のグループ、前記第4のグループ、前記第5のグループ、前記第6のグループ、前記第7のグループのいずれかが前記A個のネオエピトープを含んでいる方法。
【0427】
83.工程cが、工程iと工程ii、または工程iと工程iii、または工程iと工程iv、または工程iと工程v、または工程iと工程vi、または工程iと工程vii、または工程iと工程iiと工程iii、または工程iと工程iiと工程iv、または工程iと工程iiと工程v、または工程iと工程iiと工程vi、または工程iと工程iiと工程vii、または工程iと工程iiiと工程iv、または工程iと工程iiiと工程v、または工程iと工程iiiと工程vi、または工程iと工程iiiと工程vii、または工程iと工程ivと工程v、または工程iと工程ivと工程vi、または工程iと工程ivと工程vii、または工程iと工程vと工程vi、または工程iと工程vと工程vii、または工程iと工程viと工程vii、または工程iiと工程iiiと工程iv、または工程iiと工程iiiと工程v、または工程iiと工程iiiと工程vi、または工程iiと工程iiiと工程vii、または工程iiと工程ivと工程v、または工程iiと工程ivと工程vi、または工程iiと工程ivと工程vii、または工程iiと工程vと工程vi、または工程iiと工程vと工程vii、または工程iiと工程viと工程vii、または工程iiiと工程ivと工程v、または工程iiiと工程ivと工程vi、または工程iiiと工程ivと工程vii、または工程iiiと工程vと工程vi、または工程iiiと工程vと工程vii、または工程iiiと工程viと工程vii、または工程ivと工程vと工程vi、または工程ivと工程vと工程vii、または工程ivと工程viと工程vii、または工程vと工程viと工程viiを含む、項82に記載の方法。
【0428】
84.項1~78のいずれか1項に記載の方法の特徴のうちの任意のものをさらに含む、項82または83に記載の方法。
【0429】
85.ネオエピトープを含むがんワクチンを調整する方法であって、項1~78または項79~84のいずれか1項に記載の方法を利用して前記ネオエピトープを選択する工程を含む方法。
【0430】
86.10~20個のネオエピトープを選択する、項85に記載の方法。
【0431】
87.前記がんワクチンが、
- 標的ユニットと、
- 2量体化ユニットと、
- 第1のリンカーと、
- 抗原ユニット(この抗原ユニットは、A-1個の抗原サブユニットを含んでいて、各サブユニットは、前記ネオエピトープの少なくとも1つをコードする配列と第2のリンカーを含み、この抗原ユニットはさらに、前記ネオエピトープの1つをコードする最終配列をさらに含む(ただしAは1~100の整数であり、Aは3~50の整数であることが好ましい))
を含むヌクレオチドコンストラクトを含み、
このヌクレオチドコンストラクトが抗がんワクチンに免疫学的に有効な量で適用される、項85または86に記載の方法。
【0432】
88.前記第2のリンカーがセリン-グリシンリンカーである、項85~87のいずれか1項に記載の方法。
【0433】
89.前記標的ユニットが、CCR1、CCR3、CCR5から選択されたケモカイン受容体に対する親和性を有する、項85~88のいずれか1項に記載の方法。
【0434】
90.前記標的ユニットが、配列ID番号1(MIP1α)のアミノ酸配列のアミノ酸5~70と配列が少なくとも80%一致するアミノ酸配列を含む、項89に記載の方法。
【0435】
91.項85~90のいずれか1項に記載の方法によって取得可能ながんワクチン。
【0436】
92.前記がんワクチンが、
- 標的ユニットと、
- 2量体化ユニットと、
- 第1のリンカーと、
- 抗原ユニット(この抗原ユニットは、n-1個の抗原サブユニットを含んでいて、各サブユニットは、前記ネオエピトープの少なくとも1つをコードする配列と第2のリンカーを含み、この抗原ユニットはさらに、前記ネオエピトープの1つをコードする最終配列をさらに含む(ただしnは1~100の整数、例えば3~50の整数である))
を含むヌクレオチドコンストラクトを含み、
このヌクレオチドコンストラクトが抗がんワクチンに免疫学的に有効な量で適用される、項91に記載のがんワクチン。
【0437】
93.前記第2のリンカーがセリン-グリシンリンカーである、項92または93に記載のがんワクチン。
【0438】
94.前記標的ユニットが、CCR1、CCR3、CCR5から選択されたケモカイン受容体に対する親和性を有する、項91~93のいずれか1項に記載のがんワクチン。
【0439】
95.前記標的ユニットが、配列ID番号1(MIP1α)のアミノ酸配列のアミノ酸5~70と配列が少なくとも80%一致するアミノ酸配列を含む、項91~94のいずれか1項に記載のがんワクチン。
【0440】
96.個体のためのネオエピトープの数Aを選択する方法であって、
a.1つ以上のネオエピトープ(ただしそれぞれのネオエピトープは、少なくとも1つの最小エピトープを含むとともに、参照配列と比べて少なくとも1つの変異(例えば免疫原性変異)を含む)を前記個体から取得する工程と;
b.前記ネオエピトープのそれぞれについてMHC Iおよび/またはMHC IIへの結合親和性を求める工程と;
c.MHC Iおよび/またはMHC IIに結合することが予測される少なくとも1つの最小エピトープを含むネオエピトープを選択することによってMHC結合ネオエピトープを取得する工程と;
d.これらMHC結合ネオエピトープを、臨床で有用である可能性に関してランク付けする工程と;
e.最高ランクのMHC結合ネオエピトープの中からA個(ただしAは整数であり、Aは少なくとも3、例えば少なくとも4、例えば少なくとも5である)のネオエピトープを選択する工程を含み、
これらの工程により、個体に免疫学的に有効な量で投与されたときにCD8+ T細胞応答を誘導することのできるA個のネオエピトープを選択する方法。
【0441】
97.項1~78のいずれか1項に記載の方法の特徴のうちの任意のものをさらに含む、項96に記載の方法。
【0442】
98.がんに罹患しているか、がんに罹患していることが疑われる個体のためのネオエピトープの数Aを選択する方法であって、
a.1つ以上のネオエピトープ(ただしそれぞれのネオエピトープは、少なくとも1つの最小エピトープを含むとともに、参照配列と比べて少なくとも1つの変異(例えば免疫原性変異)を含み、前記最小エピトープは、前記ネオエピトープのアミノ酸の数以下の数のアミノ酸からなるとともに前記少なくとも1つの変異を含む)を前記個体から取得する工程(好ましくは、ネオエピトープを取得するこの工程が、腫瘍に特異的な核酸配列の中の変異を同定する工程を含む)と;
b.前記ネオエピトープそれぞれの中の少なくとも1つの最小エピトープ(例えば少なくとも2つ、または3つ、または4つの最小エピトープ)についてMHC Iおよび/またはMHC IIへの結合親和性を(場合によってはインシリコ予測によって)求める工程と;
c.MHC Iおよび/またはMHC IIに結合することが予測される少なくとも1つの最小エピトープを含むネオエピトープを選択することによってMHC結合ネオエピトープを取得する工程と;
d.これらMHC結合ネオエピトープを、臨床で有用である可能性に関してランク付けする工程と;
e.最高ランクのMHC結合ネオエピトープの中からA個(ただしAは整数であり、Aは少なくとも3、例えば少なくとも4、例えば少なくとも5である)のネオエピトープを選択する工程を含み、
これらの工程によって臨床で有用である可能性が大きいA個のネオエピトープを選択するが、工程dは、前記ネオエピトープを以下のようにランク付けすること、すなわち
i)前記ネオエピトープに含まれる各最小エピトープについて、前記変異がその最小ネオエピトープの係留位置にあるか非係留位置にあるかを判断し;
ii)前記ネオエピトープの優先度を決定することをさらに含み、
場合によっては、工程ii)のネオエピトープの優先度決定を、これらネオエピトープに含まれる最小エピトープの最大スコアを各ネオエピトープに割り当てることによって実施し、ネオエピトープのこの優先度決定は、以下のようにして実施する、すなわち
1)前記変異が係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が20以上である場合には、最小エピトープは最大スコアを持ち;
2)前記変異が非係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が20以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、1)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
3)前記変異が係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が20未満かつ3以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、2)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
4)前記変異が非係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が20未満かつ3以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、3)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
5)前記変異が係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が3未満かつ1以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、4)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
6)前記変異が非係留位置にあって前記最小エピトープの結合差が3未満かつ1以上である場合には、この最小エピトープのスコアは、5)の最小エピトープのスコアよりも小さく;
7)前記最小エピトープが、結合差が1未満の変異を持つ場合には、この変異の位置に関係なく、この最小エピトープは最低のスコアを持つことになるように実施する、方法。
【0443】
99.がんに罹患しているか、がんに罹患していることが疑われる個体のためのネオエピトープの数Aを選択する方法であって、
a.1つ以上のネオエピトープ(ただしそれぞれのネオエピトープは、少なくとも1つの最小エピトープを含むとともに、参照配列と比べて少なくとも1つの変異(例えば免疫原性変異)を含み、前記最小エピトープは、前記ネオエピトープのアミノ酸の数以下の数のアミノ酸からなるとともに前記少なくとも1つの変異を含む)を前記個体から取得する工程(好ましくは、ネオエピトープを取得するこの工程が、腫瘍に特異的な核酸配列の中の変異を同定する工程を含む)と;
b.前記ネオエピトープそれぞれの中の少なくとも1つの最小エピトープ(例えば少なくとも2つ、または3つ、または4つの最小エピトープ)についてMHC Iおよび/またはMHC IIへの結合親和性を(場合によってはインシリコ予測によって)求める工程と;
c.MHC Iおよび/またはMHC IIに結合することが予測される少なくとも1つの最小エピトープを含むネオエピトープを選択することによってMHC結合ネオエピトープを取得する工程と;
d.これらMHC結合ネオエピトープを、臨床で有用である可能性に関してランク付けする工程と;
e.最高ランクのMHC結合ネオエピトープの中からA個のネオエピトープを選択する工程を含み、
これらの工程によって臨床で有用である可能性が大きいA個のネオエピトープを選択するが、
工程dは、前記ネオエピトープを、その中に含まれる最小エピトープの数に応じてランク付けすることを含み、より多い数の最小エピトープをより上にランクする、方法。
【0444】
100.がんに罹患しているか、がんに罹患していることが疑われる個体のためのネオエピトープの数Aを選択する方法であって、
a.1つ以上のネオエピトープ(ただしそれぞれのネオエピトープは、少なくとも1つの最小エピトープを含むとともに、参照配列と比べて少なくとも1つの変異(例えば免疫原性変異)を含み、前記最小エピトープは、前記ネオエピトープのアミノ酸の数以下の数のアミノ酸からなるとともに前記少なくとも1つの変異を含む)を前記個体から取得する工程(好ましくは、ネオエピトープを取得するこの工程が、腫瘍に特異的な核酸配列の中の変異を同定する工程を含む)と;
b.前記ネオエピトープそれぞれの中の少なくとも1つの最小エピトープ(例えば少なくとも2つ、または3つ、または4つの最小エピトープ)についてMHC Iおよび/またはMHC IIへの結合親和性を(場合によってはインシリコ予測によって)求める工程と;
c.MHC Iおよび/またはMHC IIに結合することが予測される少なくとも1つの最小エピトープを含むネオエピトープを選択することによってMHC結合ネオエピトープを取得する工程と;
d.これらMHC結合ネオエピトープを、臨床で有用である可能性に関してランク付けする工程と;
e.最高ランクのMHC結合ネオエピトープの中からA個のネオエピトープを選択する工程を含み、
これらの工程によって臨床で有用である可能性が大きいA個のネオエピトープを選択するが、
工程dは、前記ネオエピトープを、これらネオエピトープが見いだされるサンプルの数に従ってランク付けし、より多い数のサンプルで見いだされるネオエピトープを、より少ない数のサンプルで見いだされるネオエピトープよりもランクを上にすることを含み、好ましくは前記サンプルが異なる病巣からのサンプルである、方法。
【0445】
101.項1~78のいずれか1項に記載の方法の特徴のうちの任意のものをさらに含む、項99または100に記載の方法。
【配列表】