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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】非水電解液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0566 20100101AFI20241111BHJP
   B01D 15/10 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
H01M10/0566
B01D15/10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021554854
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(86)【国際出願番号】 JP2020038320
(87)【国際公開番号】W WO2021090640
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2019202282
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】合庭 健太
(72)【発明者】
【氏名】中村 彰
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-229571(JP,A)
【文献】特開平11-185810(JP,A)
【文献】特開2010-153234(JP,A)
【文献】特開2015-185235(JP,A)
【文献】特開平07-235310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
B01D 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水電解液を含有する被処理液を貯蔵する原液タンクと、弱塩基性陰イオン交換樹脂を収容したイオン交換樹脂容器とを有するとともに、
前記原液タンクから前記イオン交換樹脂容器に前記被処理液を通液した後、通液した被処理液を前記原液タンクに返送する循環送液管を有する非水電解液の製造装置に対し、
前記原液タンクから、前記イオン交換樹脂容器に前記被処理液を通液した後、通液した被処理液を前記原液タンクに返送する送液を、前記被処理液を循環しながら行う非水電解液の製造方法であって、
前記弱塩基性陰イオン交換樹脂を収容したイオン交換樹脂容器が、前記被処理液を循環して送液するに際し、予め、前記被処理液を液空間速度1~20hr -1 で下部から上部方向に向けて通液し、通液倍量1~5で排出する置換処理を行ったものである(ただし、前記液空間速度は、前記被処理液の流量を前記弱塩基性陰イオン交換樹脂の体積で除した値であり、前記通液倍量は、前記被処理液の体積を前記弱塩基性陰イオン交換樹脂の体積で除した値である)
ことを特徴とする非水電解液の製造方法。
【請求項2】
前記原液タンクから前記イオン交換樹脂容器に前記被処理液を通液して水分量が10質量ppm未満である処理液を得た後、得られた処理液を前記原液タンクに返送する請求項に記載の非水電解液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液の製造装置および非水電解液の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池においては、電解液として、有機非水溶媒に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )などのリチウム系電解質を溶解させた非水電解液が用いられている。
【0003】
しかしながら、上記電解液を構成する溶媒及びリチウム系電解質中には微量の水分が残留しており、この水分は、上記LiPF6 等のリチウム系電解質と反応して、例えば以下の反応式(1)~(3)に示すようにフッ化水素(HF)等を生成する。
【0004】
電解液中に上記フッ化水素等の酸性不純物が存在する場合、リチウムイオン電池の電池容量や充放電のサイクル特性を低下させたり、電池内部の腐食を生じやすくなる(特許文献1(特開2011-71111号公報)等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-71111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、従来より、電解液中から酸性不純物を除去する方法が望まれるようになっており、例えば、図4に示すように、イオン交換樹脂を充填したカラム2中に原液タンクT1から被処理液(未処理の非水電解液)Sを通液し、液中に含まれるフッ化水素等の酸性不純物を除去した後、カラム2から流出する処理液(非水電解液)を貯蔵タンクT2に貯蔵することにより、目的とする非水電解液を製造している。
【0007】
しかしながら、上記従来の方法によれば、被処理液Sの処理開始直後においては、酸性不純物濃度が最も低減された処理液(非水電解液)が得られるものの、イオン交換能が経時的に低下することに伴って、処理液中の酸性不純物濃度が上昇し、ある時点を超えると処理液中の酸性不純物濃度が所定値を超えてしまう。
この場合、例えば図4に例示する非水電解液の製造装置において、上記酸性不純物濃度が最も低減された処理液と上記酸性不純物濃度が上昇した処理液が全て貯蔵タンクT2に貯蔵され、結果として貯蔵タンクT2中に貯蔵される処理液中の酸性不純物濃度が処理の経過とともに徐々に高くなってしまう。
【0008】
このため、上記従来の方法によれば、得られる処理液中の酸性不純物濃度が所定値以下であったとしても、イオン交換樹脂に対する通液開始直後に得られる処理液と通液を開始してから一定時間経過後に得られる処理液では処理液中の酸性不純物濃度が変化してしまい、一定品質を有する処理液(非水電解液)を得難かった。
また、上記従来の方法によれば、処理液(非水電解液)中の酸性不純物濃度が所定値を超えた場合には常にイオン交換樹脂を交換する必要が生じることから、非水電解液を工業的に製造する上でその作業が煩雑であるとともに製造コストの上昇を招き易かった。
【0009】
このような状況下、本発明は、イオン交換樹脂のイオン交換能の低下の有無に拘わらず、酸性不純物濃度が所定濃度になるように容易に制御しつつ、簡便かつ低コストに非水電解液を製造し得る非水電解液の製造装置および非水電解液の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、非水電解液を含有する被処理液を貯蔵する原液タンクと、弱塩基性陰イオン交換樹脂を収容したイオン交換樹脂容器とを有するとともに、前記原液タンクから前記イオン交換樹脂容器に前記被処理液を通液した後、得られた処理液(通液した被処理液)を前記原液タンクに返送する循環送液管を有する非水電解液の製造装置により、上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)非水電解液を含有する被処理液を貯蔵する原液タンクと、弱塩基性陰イオン交換樹脂を収容したイオン交換樹脂容器とを有するとともに、
前記原液タンクから前記イオン交換樹脂容器に前記被処理液を通液した後、通液した被処理液を前記原液タンクに返送する循環送液管を有する
ことを特徴とする非水電解液の製造装置、
(2)前記原液タンクから前記イオン交換樹脂容器に前記被処理液を通液して水分量が10質量ppm未満である処理液を得た後、得られた処理液を前記原液タンクに返送する循環送液管を有する上記(1)に記載の非水電解液の製造装置、
(3)非水電解液を含有する被処理液を貯蔵する原液タンクと、弱塩基性陰イオン交換樹脂を収容したイオン交換樹脂容器とを有するとともに、
前記原液タンクから前記イオン交換樹脂容器に前記被処理液を通液した後、通液した被処理液を前記原液タンクに返送する循環送液管を有する非水電解液の製造装置に対し、
前記原液タンクから、前記イオン交換樹脂容器に前記被処理液を通液した後、通液した被処理液を前記原液タンクに返送する送液を、前記被処理液を循環しながら行う
ことを特徴とする非水電解液の製造方法、
(4)前記原液タンクから前記イオン交換樹脂容器に前記被処理液を通液して水分量が10質量ppm未満である処理液を得た後、得られた処理液を前記原液タンクに返送する上記(3)に記載の非水電解液の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、原液タンクからイオン交換樹脂容器に被処理液を通液した後、得られた処理液(通液した被処理液)を原液タンクに返送する送液を、被処理液を循環しながら行って非水電解液を製造するものであることから、被処理液を処理する際における被処理液量を調整すること等により、イオン交換基を余すことなく利用して、イオン交換樹脂のイオン交換能の低下の有無に拘わらず、酸性不純物濃度が所定濃度になるように容易に制御して一定品質を有する非水電解液を得ることができ、また、イオン交換樹脂の交換間隔を容易に長期化することができる。
このため、本発明によれば、酸性不純物濃度が所定濃度になるように容易に制御しつつ、簡便かつ低コストに非水電解液を製造し得る非水電解液の製造装置および非水電解液の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る非水電解液の製造装置の形態例を示す概略図である。
図2】イオン交換樹脂の前処理方法を示す概略図である。
図3】本発明に係る非水電解液の製造装置の形態例を示す概略図である。
図4】非水電解液の製造装置の比較形態例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る非水電解液の製造装置について、適宜、図面を例示しつつ説明するものとする。
【0015】
図1は、本発明に係る非水電解液の製造装置の構成例を示す概略図である。
図1に示すように、本発明に係る非水電解液の製造装置1は、非水電解液を含有する被処理液Sを貯蔵する原液タンクT1と、弱塩基性陰イオン交換樹脂を収容したイオン交換樹脂容器2と、原液タンクT1からイオン交換樹脂容器2に被処理液Sを通液した後、得られた処理液(通液した被処理液)Sを原液タンクT1に返送する循環送液管cとを有している。
【0016】
本発明に係る非水電解液の製造装置1において、原液タンクT1には、非水電解液を含有する被処理液Sが貯蔵されている。
【0017】
原液タンク中に貯蔵される非水電解液は、非水溶媒中にアルカリ金属塩電解質が分散してなるものである。
【0018】
非水電解液を構成する非水溶媒としては、有機非水溶媒が好ましい。
有機非水溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、炭酸フルオロエチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン、スルホラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、エトキシメトキシエタン等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0019】
非水電解液を構成するアルカリ金属塩電解質としては、リチウム系電解質を挙げることができ、リチウム系電解質としては、LiPF6、LiClO4、LiBF4 、LiAsF6 、LiSbF6 、LiAlCl4 、LiCF3SO3 、LiN(SOF)、LiN(SOCF等から選ばれる一種以上を挙げることができ、電池性能を考慮した場合、LiPF6 が好適である。
本発明に係る非水電解液の製造装置において、非水電解液としては、リチウムイオン電池用電解液が好適である。
【0020】
本発明に係る非水電解液の製造装置において、被処理液中の非水電解液がリチウム系電解質を含むものである場合、被処理液中のリチウム系電解質濃度が、0.5~10.0mol/Lであることが好ましく、0.5~5.0mol/Lであることがより好ましく、0.8~2.0mol/Lであることがさらに好ましい。
【0021】
なお、本出願書類において、被処理液中のリチウム系電解質濃度は、原子吸光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製、偏光ゼーマン原子吸光光度計 ZA3000)を用い、原子吸光光度法により測定したリチウム金属濃度から求められる値を意味する。
【0022】
本発明に係る非水電解液の製造装置において、被処理液を貯蔵する原液タンクは、不活性ガス雰囲気下にあるものが好ましく、不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガスおよびアルゴンガス等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0023】
図1に示すように、本発明に係る非水電解液の製造装置1は、弱塩基性陰イオン交換樹脂を収容したイオン交換樹脂容器2を有している。
【0024】
本発明に係る非水電解液の製造装置で使用する弱塩基性陰イオン交換樹脂としては、公知の陰イオン交換樹脂を使用することができ、有機高分子樹脂化合物系のイオン交換樹脂が好ましい。
【0025】
有機高分子樹脂化合物系のイオン交換樹脂としては、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体等のスチレン系樹脂を基体(母体)とするものや、メタクリル酸・ジビニルベンゼン共重合体、アクリル酸・ジビニルベンゼン共重合体等のアクリル系樹脂等を基体とするものを挙げることができる。
【0026】
本出願書類において、スチレン系樹脂とは、スチレン又はスチレン誘導体を単独または共重合した、スチレン又はスチレン誘導体に由来する構成単位を50質量%以上含む樹脂を意味する。
【0027】
上記スチレン誘導体としては、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i-プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。
【0028】
スチレン系樹脂としては、スチレンまたはスチレン誘導体の単独または共重合体を主成分とするものであれば、共重合可能な他のビニルモノマーとの共重合体であってもよく、このようなビニルモノマーとしては、例えば、o-ジビニルベンゼン、m-ジビニルベンゼン、p-ジビニルベンゼン等のジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能性モノマーや、(メタ)アクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0029】
上記共重合可能な他のビニルモノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン重合数が4~16のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンがより好ましく、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートがより好ましく、ジビニルベンゼンがさらに好ましい。
【0030】
本発明に係る非水電解液の製造装置において、弱塩基性陰イオン交換樹脂を構成するイオン交換基は、弱塩基性の陰イオン交換基であり、一級~三級のアミノ基であることが好ましく、三級アミノ基であることがより好ましい。
【0031】
弱塩基性陰イオン交換樹脂を構成する弱塩基性陰イオン交換基としては、下記一般式(I)
【化1】
(ただし、R1基およびR2基は炭素数1~3の炭化水素基であって互いに同一であっても異なっていてもよく、*は基体または基体へ結合するための結合基との結合部位を示す。)
で表される三級アミノ基を挙げることができる。
【0032】
上記一般式(I)で表される弱塩基性陰イオン交換基において、R1基およびR2基は炭素数1~3の炭化水素基である。
1基またはR2基としては、アルキル基およびアルケニル基から選ばれる一種以上を挙げることができ、アルキル基であることが好ましい。
1基またはR2基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基およびプロピレン基から選ばれる一種以上を挙げることができ、メチル基であることが好ましい。
上記一般式(I)で表される弱塩基性陰イオン交換基において、R1基およびR2基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0033】
上記一般式(I)で表される弱塩基性陰イオン交換基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基等を挙げることができ、ジメチルアミノ基であることが好ましい。
【0034】
上記一般式(I)において、*は、上記一般式(I)で表される弱塩基性陰イオン交換基と、基体または基体へ結合するための結合基との結合部位を示す。
【0035】
上記一般式(I)で表される弱塩基性陰イオン交換基は、スチレン系樹脂からなる基体に対し、下記一般式(II)に示すように、適宜結合基であるR3基を介して結合していることが好ましい。
【化2】
(ただし、R1基およびR2基は炭素数1~3の炭化水素基であって互いに同一であっても異なっていてもよく、R3基は炭素数1~3の炭化水素基であり、*は基体との結合部位を示す。)
【0036】
上記R1基およびR2基としては、上述したものと同様のものを挙げることができる。
上記R3基は炭素数1~3の炭化水素基であり、R3基としては、アルキレン基およびアルケニレン基から選ばれる一種以上を挙げることができ、アルキレン基であることが好ましい。
3基として、具体的には、メチレン基 (-CH2-)、エチレン基(-CH2CH2-)、 プロピレン基(-CH2CH2CH2-)等から選ばれる一種以上を挙げることができ、メチレン基が好ましい。
【0037】
上記一般式(I)で表される弱塩基性陰イオン交換基は、スチレン又はスチレン誘導体に置換基として導入することにより、スチレン系樹脂中に導入することができる。
【0038】
上記イオン交換樹脂は、ゲル型構造を有するものであってもよいし、マクロレティキュラー型(MR型)構造を有するものであってもよいし、マクロポーラス型(MP型)構造を有するものであってもよいし、ポーラス型構造を有するものであってもよい。
【0039】
本発明で使用する弱塩基性陰イオン交換樹脂としては、1級アミノ基または2級アミノ基をイオン交換基とするもの、ポリアミン構造を有するアミノ基をイオン交換基とするもの、スチレン系樹脂を基体とするとともにジメチルアミノ基をイオン交換基とするもの等が好ましく、これ等の弱塩基性陰イオン交換樹脂を使用することにより、フッ化水素等の酸性不純物の含有量を容易に低減することができる。
【0040】
弱塩基性陰イオン交換樹脂のサイズは特に制限されないが、その調和平均径が、300~1000μmであるものが好ましく、400~800μmであるものがより好ましく、500~700μmであるものがさらに好ましい。
【0041】
また、弱塩基性陰イオン交換樹脂としては、その湿潤状態の総イオン交換容量が、0.1~3.0(eq/L-R)であるものが好ましく、0.5~2.5(eq/L-R)であるものがより好ましく、1.0~2.0(eq/L-R)であるものがさらに好ましい。
【0042】
このような弱塩基性陰イオン交換樹脂は、市販品であってもよく、例えば、三菱化学株式会社製ダイヤイオンWA30や、オルガノ株式会社製ORLITE DS-6等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0043】
本発明に係る非水電解液の製造装置において、イオン交換樹脂容器内に収容される弱塩基性陰イオン交換樹脂の収容形態は、被処理液と弱塩基性陰イオン交換樹脂とが接触し得る形態であれば特に制限されない。
例えば、イオン交換樹脂容器が、被処理液を通液し得る弱塩基性陰イオン交換樹脂を充填したカラムまたは槽であってもよい。
【0044】
上記イオン交換樹脂は、約40~100℃で減圧下にて乾燥し、カラムに充填することが好ましい。
【0045】
また、図1に示すように、本発明に係る非水電解液の製造装置1は、被処理液Sを通液するためのポンプPを備えたものであってもよい。図1において、ポンプPは、原液タンクT1およびイオン交換樹脂容器2間における循環送液管cに設けられている。
【0046】
上述したように、非水電解液としてはフッ化水素等の酸性不純物を除去したものが望まれるが、非水電解液においては、酸性不純物とともに水分も不純物となることから、上記弱塩基性陰イオン交換樹脂としては水分含有量が極力低減されたものが好ましい。
このため、本発明に係る非水電解液の製造装置で使用する弱塩基性陰イオン交換樹脂としては、以下に説明するように、前処理して予め水分含有量を一定程度低減させたものであることが好ましい。
【0047】
本発明に係る非水電解液の製造装置で使用する弱塩基性陰イオン交換樹脂としては、予め下記前処理装置で前処理したもの、すなわち、非水溶媒を貯蔵する非水溶媒タンク、イオン交換樹脂を収容したイオン交換樹脂容器および非水溶媒中の水分を除去する水分除去装置を少なくとも有するとともに、上記非水溶媒タンクから、上記イオン交換樹脂容器および上記水分除去装置の順に非水溶媒を通液した後、通液した非水溶媒を上記非水溶媒タンクに返送する非水溶媒循環送液管並びに上記非水溶媒タンクから、上記水分除去装置および上記イオン交換樹脂容器の順に非水溶媒を通液した後後、通液した非水溶媒を前記非水溶媒タンクに返送する非水溶媒循環送液管から選ばれる少なくとも一つの送液管を有するイオン交換樹脂の前処理装置で予め処理してなるものが好ましい。
【0048】
図2は、上記イオン交換樹脂の前処理装置の構成例を示すものである。
【0049】
図2(a)~図2(c)に示す例において、イオン交換樹脂の前処理装置11は、非水溶媒を貯蔵する非水溶媒タンク12、イオン交換樹脂を収容したイオン交換樹脂容器2および非水溶媒中の水分を除去する水分除去装置13を少なくとも有している。
【0050】
イオン交換樹脂の前処理装置11は、図2(a)に例示するように、非水溶媒タンク12からイオン交換樹脂容器2および水分除去装置13の順に非水溶媒を通液した後、通液した非水溶媒を非水溶媒タンク12に返送する非水溶媒循環送液管Lか、図2(b)に例示するように、非水溶媒タンク12から水分除去装置13およびイオン交換樹脂容器2の順に非水溶媒を通液した後、通液した非水溶媒を非水溶媒タンク12に返送する非水溶媒循環送液管Lから選ばれる少なくとも一つの送液管を有している。
【0051】
また、イオン交換樹脂の前処理装置11は、図2(c)に例示するように、非水溶媒タンク12からイオン交換樹脂容器2および水分除去装置13の順に非水溶媒を通液した後、通液した非水溶媒を非水溶媒タンク12に返送する非水溶媒循環送液管L1を有するとともに、非水溶媒タンク12から、水分除去装置13およびイオン交換樹脂容器2の順に非水溶媒を通液した後、通液した非水溶媒を非水溶媒タンク12に返送する非水溶媒循環送液管L2を有するものであってもよい。
図2(c)に例示する態様においては、非水溶媒の通液時に、非水溶媒循環送液管L1または非水溶媒循環送液管L2に設けられたいずれか一方の送液管のバルブを閉じることにより、他方の送液管内を通液させることになる。
イオン交換樹脂の前処理装置11は、非水溶媒を流通させるための、(図示しない)ポンプを備えたものであってもよい。
【0052】
イオン交換樹脂の前処理時においては、イオン交換樹脂容器2中のイオン交換樹脂に対して上向流で(イオン交換樹脂容器2の下部から上部方向に向けて)非水電解液を通液することが好ましい。
【0053】
上記イオン交換樹脂の前処理装置を流通させる非水溶媒としては、有機非水溶媒を挙げることができる。
非水溶媒としては、イオン交換樹脂の前処理装置による前処理を行い、本発明の非水電解液の製造装置に組み込んだ後、イオン交換樹脂に通液する非水電解液の構成溶媒と同一のものであることが好ましい。
上記非水溶媒の具体例は、上述したとおりである。
【0054】
上記イオン交換樹脂の前処理装置11に組み込まれるイオン交換樹脂容器2中に収容されるイオン交換樹脂は、本発明に係る非水電解液の製造装置で使用されるものと同一のものであり、係るイオン交換樹脂の具体例は、上述したものと同様である。
上記イオン交換樹脂の前処理装置11に組み込まれるイオン交換樹脂容器2も、本発明に係る非水電解液の製造装置で使用されるものと同一のものであってもよいし、異なるものであってもよく、係るイオン交換樹脂容器の具体例も、上述したものと同様である。
前処理後における非水電解液の製造処理を簡便、迅速に行う上では、イオン交換樹脂容器およびイオン交換樹脂ともに前処理時に使用したものをそのまま非水電解液の製造装置に組み込むことが好ましい。
【0055】
上記水分除去装置13としては、水分吸着装置、膜分離装置または気液分離装置を挙げることができ、水分吸着装置が好ましい。
水分除去装置が水分吸着装置である場合、水分吸着装置は、水分吸着材としてゼオライトを収容したものが好ましい。
水分吸着装置に収容するゼオライトとしては、非水溶媒中の水分を吸着し得るものであれば特に制限されず、結晶性ゼオライトから選ばれる一種以上を挙げることができる。
上記結晶性ゼオライトとしては、A型、Y型、X型、チャバサイト、フェリエライト、ZSM-5およびクリノプチロライト等から選ばれる一種以上の結晶性ゼオライトを挙げることができる。
【0056】
上記イオン交換樹脂の前処理装置において、水分吸着装置内に収容されるゼオライトの収容形態は、非水溶媒とゼオライトとが接触し得る形態であれば特に制限されず、例えば、水分吸着装置が、非水溶媒を通液し得るゼオライトを充填したカラムまたは槽であってもよい。
また、水分吸着装置は、非水溶媒を通液するためのポンプを備えたものであってもよい。
【0057】
上記イオン交換樹脂の前処理装置において、非水溶媒をイオン交換樹脂容器や水分除去装置に通液する速度(液空間速度)は、イオン交換樹脂中の水分を除去し得る速度から適宜選定すればよい。
【0058】
イオン交換樹脂の前処理完了後、イオン交換樹脂容器2の上部から不活性ガスを用いて前処理に使用した非水溶媒を押し出し、イオン交換樹脂容器2の下部から排出することが好ましい。
【0059】
上記イオン交換樹脂の前処理装置11においては、非水溶媒循環送液管L、L1、L2が、非水溶媒タンク12内の非水溶媒を、イオン交換樹脂容器2および水分除去装置13内を循環し得るように配置されていることにより、イオン交換樹脂内に残留する水分の非水溶媒による溶出と、非水溶媒中に溶出した水分の水分除去装置による吸着除去を繰り返しつつ、イオン交換樹脂を前処理することができる。このため、上記イオン交換樹脂の前処理装置においては、非水溶媒循環送液管の流路に少量の非水溶媒を流通させることのみで、簡便かつ経済的にイオン交換樹脂中の含有水分を低減することができる。
【0060】
本発明に係る非水電解液の製造装置において、上記イオン交換樹脂の前処理装置は、本発明に係る非水電解液の製造装置とは別体のものであってもよいし、本発明に係る非水電解液の製造装置が、上記イオン交換樹脂の前処理装置からなるイオン交換樹脂前処理部を備えた一体のものとなっていてもよい。
【0061】
図3は、本発明に係る非水電解液の製造装置の構成形態例を示す概略図であって、上記イオン交換樹脂の前処理装置からなるイオン交換樹脂前処理部11を備えた非水電解液の製造装置1を示すものである。
【0062】
図3に示す非水電解液の製造装置1を構成するイオン交換樹脂前処理部11は、同図に例示するように、非水溶媒タンク12からイオン交換樹脂容器2および水分除去装置13の順に非水溶媒を通液した後、通液した非水溶媒を非水溶媒タンク12に返送する非水溶媒循環送液管Lを有している。非水溶媒タンク12とイオン交換樹脂容器2の間の非水溶媒循環送液管LにはポンプP’が設けられている。
【0063】
図3に例示する態様においては、非水溶媒の通液時に、循環送液管cに設けられた(図示しない)バルブを閉じ、非水溶媒循環送液管Lに設けられた(図示しない)バルブを開いた上で、ポンプP’を用いてイオン交換樹脂容器2内に非水溶媒を循環させつつ通液してイオン交換樹脂を前処理することができ、上記前処理終了後においては、非水溶媒循環送液管Lに設けられた(図示しない)バルブを閉じ、上記循環送液管cに設けられた(図示しない)バルブを開いた上で、ポンプPを用いてイオン交換樹脂容器2内に被処理液Sを循環させつつ通液することにより、イオン交換樹脂容器2において、イオン交換樹脂の前処理および非水電解液の製造処理を連続的に行うことができる。
【0064】
図1に示すように、本発明に係る非水電解液の製造装置1においては、原液タンクT1からイオン交換樹脂容器2に被処理液Sを通液する。
【0065】
本発明に係る非水電解液の製造装置において、被処理液をイオン交換樹脂容器内の弱塩基性陰イオン交換樹脂に通液する通液速度(液空間速度)は、被処理液中の酸性不純物を除去し得る速度から適宜選定すればよい。
【0066】
図1に示すように、本発明に係る非水電解液の製造装置においては、イオン交換樹脂容器2中のイオン交換樹脂に対して上向流で(イオン交換樹脂容器2の下部から上部方向に向けて)被処理液を通液することが好ましい。
【0067】
本発明に係る非水電解液の製造装置においては、被処理液を循環して送液するに際し、予め(好ましくは上記イオン交換樹脂の前処理を行った上で)、イオン交換樹脂容器に対し、被処理液を液空間速度SV(被処理液の流量/イオン交換樹脂の体積)1~20hr-1で上向流で(イオン交換樹脂容器の下部から上部方向に向けて)通液し、通液倍量BV(被処理液の体積/イオン交換樹脂の体積)1~5で排出する置換処理を行うことが好ましい。
上記置換処理は、例えば、イオン交換樹脂容器から流出する被処理液中の水分量が10質量ppm未満となるまで行うことが好ましく、置換処理の初期にイオン交換樹脂容器から流出する水分量が10質量ppm以上の処理液は除去することが好ましい。
係る置換処理を行うことにより、イオン交換樹脂中に残存する液体成分を被処理液で十分に置換し、循環運転時における被処理液中の電解質濃度の低下を抑制することができる。
【0068】
本発明に係る非水電解液の製造装置においては、適宜上記前処理や置換処理を施したイオン交換樹脂容器に対し、常法に従い適宜逆洗・押出し操作等を行った後、被処理液を好ましくは液空間速度SV(被処理液の流量/イオン交換樹脂の体積)10~1000hr-1、より好ましくはSV20~500hr-1、さらに好ましくはSV50~200hr-1で通液することにより処理することができる。
【0069】
本発明に係る非水電解液の製造装置において、上記被処理液を通液する時間(被処理液の循環運転時間)は、1~24時間が好ましく、3~16時間がより好ましく、6~12時間がさらに好ましい。
【0070】
本発明に係るリチウムイオン電池用電解液の製造装置においては、上記イオン交換樹脂容器から得られる処理液(酸吸着処理液)中の水分が10質量ppm未満であることが好ましく、原液タンクからイオン交換樹脂容器に通液され、原液タンクに返送される処理液(酸吸着処理液)中の水分が返送当初から10質量ppm未満であることが好ましい。
このため、予め上記置換処理等により、原液タンクからイオン交換樹脂容器に被処理液を通液し、水分量が10質量ppm未満である処理液を得た後、得られた処理液を原液タンクに返送することが好ましい。
ここで、処理液中の水分が10質量ppm以上あると、処理完了後の処理液において時間経過とともに水と電解質が反応してフッ化水素濃度が上昇するおそれがある。
なお、本出願書類において、上記水分量は、カール・フィッシャー法により測定した値を意味する。
【0071】
図1に示すように、本発明に係る非水電解液の製造装置1においては、上記原液タンクT1から上記イオン交換樹脂容器2に被処理液Sを通液した後、通液した被処理液Sを上記原液タンクT1に返送する循環送液管cを有している。
本発明に係る非水電解液の製造装置1を用いて非水電解液を製造する場合、上記循環送液菅cを用いて、上記原液タンクT1から、上記イオン交換樹脂容器2に被処理液を通液した後、通液した被処理液Sを前記原液タンクT1に返送する送液を、被処理液Sを循環しながら行う。
上記のとおり被処理液Sを循環しながらこれを繰り返し処理し、その際の被処理液Sの量を調整したり、イオン交換樹脂容器2中に充填するイオン交換樹脂量を調整することにより、イオン交換樹脂のイオン交換能の低下の有無に拘わらず、得られる非水電解液中の酸性不純物濃度が所定濃度になるように容易に制御することができ、一定品質を有する非水電解液を常時供給し得るとともに、イオン交換樹脂の交換間隔を容易に長期化することができる。
【0072】
本発明に係る非水電解液の製造装置においては、原液タンク内の処理液中の酸性不純物濃度(例えばフッ化水素濃度)を確認しつつ上記循環運転を行い、酸性不純物濃度が所定濃度になった時点でポンプを停止する等して循環運転を停止することにより、酸性不純物濃度が所定濃度になるように容易に制御しつつ、余計な時間をかけることなく簡便に処理することができる。
上記循環運転完了後、イオン交換樹脂容器内に残存する処理液は、不活性ガスでイオン交換樹脂容器から押し出し、原液タンクへ回収することが好ましい。
【0073】
本発明に係る非水電解液の製造装置においては、上記被処理液を循環処理して得られる処理液(酸吸着処理液)中のフッ化水素等の酸性不純物の含有量が、フッ化水素の質量換算で20質量ppm以下であることが好ましく、10質量ppm以下であることがより好ましく、5質量ppm以下であることがさらに好ましい。
なお、本出願書類において、上記酸性不純物量は、中和滴定法により測定した値を意味する。
【0074】
本発明に係る非水電解液の製造装置においては、上記イオン交換樹脂容器で循環処理した処理液(酸吸着処理液)をそのまま、あるいは適宜公知の精製処理を施すことにより、目的とする非水電解液を得ることができる。
上記非水電解液としては、リチウムイオン電池用電解液、ナトリウムイオン電池用電解液、カリウムイオン電池用電解液等から選ばれる電解液を挙げることができる。
【0075】
本発明に係る非水電解液の製造装置は、原液タンクからイオン交換樹脂容器に被処理液を通液した後、通液した被処理液を原液タンクに返送する送液を、被処理液を循環しながら行うものであることから、酸性不純物濃度が所定濃度になるように容易に制御しつつ、簡便かつ低コストに非水電解液を製造することができる。
【0076】
次に、本発明に係る非水電解液の製造方法について説明する。
本発明に係る非水電解液の製造方法は、
非水電解液を含有する被処理液を貯蔵する原液タンクと、弱塩基性陰イオン交換樹脂を収容したイオン交換樹脂容器とを有するとともに、
前記原液タンクから前記イオン交換樹脂容器に前記被処理液を通液した後、通液した被処理液を前記原液タンクに返送する循環送液管を有する非水電解液の製造装置に対し、
前記原液タンクから、前記イオン交換樹脂容器に被処理液を通液した後、通液した被処理液を前記原液タンクに返送する送液を、前記被処理液を循環しながら行う
ことを特徴とするものである。
【0077】
本発明に係る非水電解液の製造方法は、実質的に、本発明に係る製造装置を用いて非水電解液を製造するものであることから、本発明に係る非水電解液の製造方法の詳細は、上述した本発明に係る非水電解液の製造装置の使用形態の説明と共通する。
【0078】
本発明によれば、原液タンクからイオン交換樹脂容器に被処理液を通液した後、得られた処理液(通液した被処理液)を原液タンクに返送する送液を、被処理液を循環しながら行って非水電解液を製造するものであることから、被処理液を処理する際に被処理液量等を調整することにより、イオン交換基を余すことなく利用して、イオン交換樹脂のイオン交換能の低下の有無に拘わらず、酸性不純物濃度が所定濃度になるように容易に制御して一定品質を有する非水電解液を得ることができ、また、イオン交換樹脂の交換間隔を容易に長期化することができる。
このため、本発明によれば、酸性不純物濃度が所定濃度になるように容易に制御しつつ、簡便かつ低コストに非水電解液を製造し得る非水電解液の製造方法を提供することができる。
【実施例
【0079】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0080】
(実施例1)
図1に示す非水電解液の製造装置1を用いてリチウムイオン電池用電解液を調製した。
すなわち、先ず、図1に示すように、非水電解液の製造装置(リチウムイオン電池用電解液の製造装置)1において、イオン交換樹脂容器2であるカラム中に、弱塩基性陰イオン交換樹脂として、スチレン-ジビニルベンゼンを基体とし、弱塩基性陰イオン交換基としてジメチルアミノ基を有するマクロレティキュラー型(MR型)の弱塩基性陰イオン交換樹脂を収容した。
被処理液Sとして、原液タンクT1中に貯蔵した、エチレンカーボネート(EC)およびジメチルカーボネート(DMC)を体積比で1:1の割合で混合した混合溶媒に、フッ化水素濃度が100質量ppm、LiPFが1mol/Lとなるように各々溶解した被処理液0.7kg(0.54L)を、ポンプPを用いて上記イオン交換樹脂容器2中のイオン交換樹脂5mLに対してSV320hr-1の流量で6時間循環しながら通液することにより処理液(電解液)を得た。
得られた処理液中のフッ化水素濃度および水分量を測定した。結果を表1に示す。
【0081】
(実施例2)
原液タンク1中に貯蔵する被処理液Sの液量を0.7kg(0.54L)から0.9kg(0.69L)に変更した以外は、実施例1と同様に処理して目的とする処理液(電解液)を得た。
得られた処理液中のフッ化水素濃度および水分量を測定した。結果を表1に示す。
【0082】
(比較例1)
図4に示す非水電解液の製造装置を用いてリチウムイオン電池用電解液を調製した。
図4に示す非水電解液の製造装置(リチウムイオン電池用電解液の製造装置)において、イオン交換樹脂容器2であるカラム中に、弱塩基性陰イオン交換樹脂として、実施例1で用いたものと同一のイオン交換樹脂を収容した。
被処理液Sとして、原液タンクT1中に貯蔵した、実施例1で用いたものと同一の被処理液0.7kg(0.54L)を、ポンプPを用いてSV40hr-1の流量で通液し、イオン交換樹脂容器2から流出する処理液を貯蔵タンクT2に貯蔵した。
得られた処理液中のフッ化水素濃度および水分量を測定した。結果を表1に示す。
【0083】
(比較例2)
原液タンク1中に貯蔵する被処理液Sの液量を0.7kg(0.54L)から0.9kg(0.69L)に変更した以外は、比較例1と同様に処理して目的とする処理液(電解液)を得た。
得られた処理液中のフッ化水素濃度および水分量を測定した。結果を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
表1より、実施例1及び実施例2においては、原液量を調整することにより、任意のHF濃度の処理液を得ることができた。この結果から、本発明により酸性不純物濃度が所定濃度になるように容易に制御できることが分かる。
また、表1より、比較例1及び比較例2においては、それぞれ実施例1及び実施例2と同量の原液を用いたにもかかわらず、HF濃度が高い処理液しか得られないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によれば、酸性不純物濃度が所定濃度になるように容易に制御しつつ、簡便かつ低コストに非水電解液を製造し得る非水電解液の製造装置および非水電解液の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 非水電解液の製造装置
2 イオン交換樹脂容器
11 前処理装置
12 非水溶媒タンク
13 水分除去装置
S 被処理液
L、L1、L2 非水溶媒循環送液管
T1 原液タンク
T2 貯蔵タンク
c 循環送液管
P、P’ ポンプ
図1
図2
図3
図4