(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】ポンペ病の治療のために有用な組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 7/01 20060101AFI20241111BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241111BHJP
C12N 15/56 20060101ALI20241111BHJP
C12N 15/16 20060101ALI20241111BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20241111BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20241111BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20241111BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241111BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20241111BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20241111BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241111BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241111BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
C12N7/01
C12N15/63 Z
C12N15/56 ZNA
C12N15/16
C12N15/12
C12N15/864 100Z
A61K35/76
A61K48/00
A61K9/10
A61P3/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K45/00
C12N15/62 Z
(21)【出願番号】P 2021565001
(86)(22)【出願日】2020-04-29
(86)【国際出願番号】 US2020030484
(87)【国際公開番号】W WO2020223356
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2023-04-25
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502409813
【氏名又は名称】ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア
(73)【特許権者】
【識別番号】521478131
【氏名又は名称】アミカス・セラピューティクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウイルソン,ジェームス・エム
(72)【発明者】
【氏名】オルドー,ジュリエット
(72)【発明者】
【氏名】ドー,フン・ブイ
(72)【発明者】
【氏名】ゴットシャル,ラッセル
(72)【発明者】
【氏名】タスケ,スティーブン
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/046774(WO,A1)
【文献】特表2014-503198(JP,A)
【文献】特開2018-198611(JP,A)
【文献】特表2012-518421(JP,A)
【文献】国際公開第2018/046772(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/096369(WO,A1)
【文献】Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,1991年,Vol.88,pp.1565-1569
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)であって、前記rAAVが、
(a)筋肉、心臓、および中枢神経系のうちの少なくとも1つの細胞を標的とするAAVカプシドと、
(b)前記AAVカプシド中にパッケージングされたベクターゲノムであって、前記ベクターゲノムが、少なくともhGAA780Iの活性部位を含むhGAAに融合した
配列番号49を含む結合免疫グロブリンタンパク質(BiP)シグナルペプチドおよび
配列番号44を含むvIGF2ペプチドを含むキメラ融合タンパク質
、をコードする核酸配列
を含み、
前記キメラ融合タンパク質は、配列番号6のアミノ酸配列1~982を含み、前記キメラ融合タンパク質をコードする核酸配列は、前記キメラ融合タンパク質の発現を指示する調節配列に操作可能に連結され、780位が、配列番号3におけるアミノ酸配列の位置の番号付けに基づいている、前記ベクターゲノムと、
を
含む、前記rAAV。
【請求項2】
前記ベクターゲノムが、配列番号30か、またはそれと少なくとも95%同一の配列を含む、請求項1に記載のrAAV。
【請求項3】
少なくともhGAA780Iの活性部位を含むヒト酸性α-グルコシダーゼ(hGAA)に融合した
配列番号49を含む結合免疫グロブリンタンパク質(BiP)シグナルペプチドおよび
配列番号44を含むvIGF2ペプチドを含むキメラ融合タンパク質
、をコードする核酸配列を、その発現を指示する調節配列の制御下に含む発現カセットであって、780位が、配列番号3におけるアミノ酸配列の位置の番号付けに基づいて
おり、
前記キメラ融合タンパク質は、配列番号6のアミノ酸配列1~982を含み、
前記キメラ融合タンパク質をコードする核酸配列は、前記キメラ融合タンパク質の発現を指示する調節配列に操作可能に連結されている、
発現カセット。
【請求項4】
前記キメラ融合タンパク質をコードする核酸配列の3’側に操作可能に連結されているmiR
-183標的配列の少なくとも2つのタンデム反復をさらに含
む、請求項3に記載の発現カセットであって、任意選択で、前記miR
-183標的配列が、配列番号26であるか、
および/または
、前記
miR-183標的配列のうちの2つ以上が、スペーサーによって分離されており、前記スペーサーのうちの1つ以上が、(i)GGAT、(ii)CACGTG、および(iii)GCATGCから独立して選択される、
前記発現カセット。
【請求項5】
前記融合タンパク質をコードする核酸配列の3’側に操作可能に連結されている少なくとも4つのmiR-183標的配列をさらに含み、前記少なくとも4つのmiR-183標的配列のそれぞれが配列番号26のヌクレオチド配列をさらに含む、請求項3に記載の発現カセット。
【請求項6】
前記発現カセットが、
(a)組換えパルボウイルス、組換えレンチウイルス、組換えレトロウイルス、および組換えアデノウイルスから選択されるウイルスベクターであって、任意選択で、前記組換えパルボウイルスがクレードFアデノ随伴ウイルスであり、任意選択で、前記クレードFアデノ随伴ウイルスがAAVhu68である、前記ウイルスベクター、または
(b)裸のDNA、裸のRNA、無機粒子、脂質粒子、ポリマーベースのベクター、もしくはキトサンベースの配合物から選択される非ウイルスベクター、
によって担持されている、請求項
3~5のいずれか一項に記載の発現カセット。
【請求項7】
前記
キメラ融合タンパク質
をコードする核酸配列が、配列番号7またはそれと少なくとも95%同一の配列
である、請求項1に記載のrAAVまたは請求項
3に記載の発現カセット。
【請求項8】
前記ベクターゲノムが、後根神経節(DRG)特異的miR-183標的配列の少なくとも2つのタンデム反復をさらに含み、前記少なくとも2つのタンデム反復が、同じかまたは異なり得る少なくとも第1のmiRNA標的配列および少なくとも第2のmiRNA標的配列を含み、これらが、前記融合タンパク質をコードする前記配列の3’側に操作可能に連結されており、任意選択で、前記miR-183標的配列が配列番号26であり、ならびに/または前記miRNA標的配列のうちの2つ以上が、スペーサーによって分離されており、1つ以上のスペーサーが、(i)GGAT、(ii)CACGTG、および(iii)GCATGCから独立して選択される、請求項
1、2または7のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項9】
前記ベクターゲノムが、前記融合タンパク質をコードする核酸配列の3’側に操作可能に連結されている少なくとも4つのmiR-183標的配列をさらに含み、前記少なくとも4つのmiR-183標的配列のそれぞれが配列番号26のヌクレオチド配列を含む、請求項1、2または7のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項10】
前記調節配列が、サイトメガロウイルス初期エンハンサーエレメント、ニワトリβアクチンプロモータおよびウサギβグロビンイントロン配列を含むCAGプロモーターを含み、任意選択で、前記CAGプロモーターが配列番号8を含む、請求項1もしくは7~9のいずれか一項に記載のrAAVまたは請求項4~6のいずれか一項に記載の発現カセット。
【請求項11】
前記調節配列がポリA配列を含み、任意選択で、前記ポリA配列が配列番号9を含む、請求項1、2もしくは7~10のいずれか一項に記載のrAAVまたは請求項3~6もしくは10のいずれか一項に記載の発現カセット。
【請求項12】
前記カプシドがクレードFカプシドであり、任意選択で、前記カプシドがAAVhu68カプシドである、請求項
1、2または7~11のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項13】
(a)請求項
3~7、10もしくは11のいずれか一項に記載の発現カセットをコードする配列
、
(b)配列番号30
、もしくは
配列番号6のアミノ酸1~982をコードする配列を含むそれと少なくとも95%同一の配列
、または
(c)配列番号7、もしくは配列番号6のアミノ酸1~982をコードする配列を含むそれと少なくとも95%同一の配列
を含む
プラスミド。
【請求項14】
請求項
13に記載の
プラスミドを含む、
パッケージング細胞。
【請求項15】
請求項
1、2もしくは7~12のいずれか一項に記載のrAAVと、
薬学的に許容される担体、賦形剤、および/または懸濁剤のうちの少なくとも1つと、
を含む組成物であって、任意選択で、前記組成物が、静脈内送達のために配合される懸濁液、または髄腔内、大槽内、もしくは脳室内投与のために配合される懸濁液である、前記組成物。
【請求項16】
ポンペ病を有する患者を治療する
のに使用するための、請求項
1、2もしくは7~12のいずれか一項に記載のrAA
Vまたは請求項
15に記載の組成
物。
【請求項17】
前記rAA
Vもしくは前記組成物が、別々の経路を介して同時送達され、ならびに/または前記rAA
Vもしくは前記組成物が、静脈内および/もしくは髄腔内送達を介して前記患者に投与される、請求項
16に記載の使用のためのrAA
Vまたは組成物。
【請求項18】
前記rAA
Vまたは前記組成物が、免疫調節剤と組み合わせて
患者に送達され、任意選択で、前記患者が、遅発性ポンペ病または乳児発症性ポンペ病を有する、請求項
16に記載の使用のためのrAA
Vまたは組成物。
【請求項19】
前記患者が、気管支拡張剤、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、呼吸筋力トレーニング(RMST)、酵素補充療法、および/または横隔膜ペーシング療法との併用療法を受ける、請求項
16に記載の使用のためのrAA
Vまたは組成物。
【請求項20】
α-グルコシダーゼ(GAA)に欠損を有する患者における心筋、呼吸筋、および/または骨格筋機能
の改善
における使用のための、請求項
1、2もしくは7~12のいずれか一項に記載のrAA
Vまたは請求項
15に記載の組成
物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
神経向性AAV血清型(例えば、AAV9)などの神経向性ウイルスは、新生および若年の動物に高用量で静脈内投与されるとき、脊髄アルファ運動ニューロンを形質導入することが実証されている。この観察は、下位運動ニューロンの選択的な死を特徴とする生存運動ニューロン(SMN)タンパク質の遺伝性欠損である脊髄性筋萎縮を有する乳児を治療するAAV9送達適用の最近の成功をもたらした。別の神経向性AAV(AAVhu68)に関係する試験では、同様の結果が、全身投与および髄腔内(脳脊髄液)投与の両方の後に、脊髄運動ニューロンおよび後根神経節の感覚ニューロンの効率的な形質導入で観察された(C.Hinderer,et al.,Hum Gene Ther.2018 Mar;29(3):285-298)。しかしながら、DRGニューロンの形質導入は、それらの感覚ニューロンに対する毒性および脊髄後索における二次的軸索障害を伴った。同様の所見は、カプシド血清型または導入遺伝子にかかわらず、高用量でのAAVベクターの静脈内およびクモ膜下腔内送達後に遭遇された(J.Hordeaux,Molecular Therapy:Methods&Clinical Development Vol.10,pp.79-88,September 2018を参照されたい)。
【0002】
ポンペ病は、II型糖原病としても知られており、心臓(心筋症)、筋肉、および運動ニューロン(神経筋疾患)にグリコーゲン蓄積をもたらす酸性α-グルコシダーゼ(GAA)遺伝子における変異によって引き起こされるリソソーム蓄積症である。古典的な乳児ポンペ病では、重度のGAA活性損失は、特に心臓および筋肉内で多系統および早期発症グリコーゲン蓄積を引き起こし、最初の数年間で心肺不全によって死亡する。乳児ポンペ病はまた、ニューロン(特に運動ニューロン)およびグリア細胞内の顕著なグリコーゲン蓄積を特徴とする。現在の標準治療である酵素補充療法(ERT)は、筋肉を矯正するのに最適以下の効率を有し、血液脳関門を通過することができず、古典的な乳児ポンペ病の長期生存者における進行性神経学的悪化につながる。ERTを受けて、心臓矯正によって長く生存する患者は、進行性の神経学的表現型を有する新しい自然経過を明らかにする。加えて、組換えヒトGAAは、高い免疫原性であり、骨格筋による取り込み不良のために、非常に大量に投与されなければならない。
【0003】
ポンペ病の治療のためのいくつかのに必要性が満たされておらず、疾患のCNS成分の矯正のための必要性、改善された筋肉矯正のための必要性、およびより有効であり、免疫原性が低く、かつ/またはより簡便である現在のERTの代替のための必要性が含まれる。
【発明の概要】
【0004】
特定の実施形態では、少なくともhGAA780Iの活性部位を含むヒト酸性α-グルコシダーゼ(hGAA)に融合されたシグナルペプチドおよびvIGF2ペプチドを含むキメラ融合タンパク質をコードする核酸配列を、その発現を指示する調節配列の制御下で含む発現カセットが提供され、780位は、配列番号3におけるアミノ酸配列の位置の番号付けに基づいている。特定の実施形態では、hGAAは、配列番号3(hGAA780I)の少なくともアミノ酸204~アミノ酸890、またはそれと少なくとも95%同一で780位にIleを有する配列を含む。特定の実施形態では、hGAAは、配列番号3の少なくともアミノ酸204~アミノ酸952、またはそれと少なくとも95%同一で780位にIleを有する配列を含む。特定の実施形態では、hGAAは、配列番号3の少なくともアミノ酸123~アミノ酸890、またはそれと少なくとも95%同一で780位にIleを有する配列を含む。特定の実施形態では、hGAAは、配列番号3の少なく
ともアミノ酸70~アミノ酸952、またはそれと少なくとも95%同一で780位にIleを有する配列を含む。特定の実施形態では、hGAAは、配列番号3の少なくともアミノ酸70~アミノ酸890、またはそれと少なくとも95%同一で780位にIleを有する配列を含む。特定の実施形態では、発現カセットは、miR標的配列の少なくとも2つのタンデム反復をさらに含み、少なくとも2つのタンデム反復は、同じかまたは異なり得る少なくとも1つの第1のmiRNA標的配列および少なくとも1つの第2のmiRNA標的配列を含み、融合タンパク質をコードする配列に3’で操作可能に連結される。
【0005】
特定の実施形態では、本明細書に提供される発現カセットは、組換えパルボウイルス、組換えレンチウイルス、組換えレトロウイルス、および組換えアデノウイルスから選択されるウイルスベクターによって担持される。特定の実施形態では、組換えパルボウイルスは、クレードFアデノ随伴ウイルス、任意選択的にAAVhu68である。特定の実施形態では、本明細書に提供される発現カセットは、裸のDNA、裸のRNA、無機粒子、脂質粒子、ポリマーベースのベクター、またはキトサンベースの配合物から選択される非ウイルスベクターによって担持される。
【0006】
特定の実施形態では、(a)筋肉、心臓、および中枢神経系のうちの少なくとも1つの細胞を標的とするAAVカプシド、ならびに(b)AAVカプシド中にパッケージングされるベクターゲノムであって、ベクターゲノムが、少なくともhGAA780Iの活性部位を含むhGAAに融合されたシグナルペプチドおよびvIGF2ペプチドを含むキメラ融合タンパク質をコードする核酸配列を、その発現を指示する調節配列の制御下で含み、780位が、配列番号3におけるアミノ酸配列の位置の番号付けに基づく、ベクターゲノムを含む、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)が本明細書に提供される。特定の実施形態では、hGAAは、配列番号3(hGAA780I)の少なくともアミノ酸204~アミノ酸890、またはそれと少なくとも95%同一で780位にIleを有する配列を含む。特定の実施形態では、hGAAは、配列番号3の少なくともアミノ酸204~アミノ酸952、またはそれと少なくとも95%同一で780位にIleを有する配列を含む。特定の実施形態では、hGAAは、配列番号3の少なくともアミノ酸123~アミノ酸890、またはそれと少なくとも95%同一で780位にIleを有する配列を含む。特定の実施形態では、hGAAは、配列番号3の少なくともアミノ酸70~アミノ酸952、またはそれと少なくとも95%同一で780位にIleを有する配列を含む。特定の実施形態では、hGAAは、配列番号3の少なくともアミノ酸70~アミノ酸890、またはそれと少なくとも95%同一で780位にIleを有する配列を含む。特定の実施形態では、rAAVベクターゲノムは、後根神経節(DRG)特異的miRー183標的配列の少なくとも2つのタンデム反復をさらに含み、少なくとも2つのタンデム反復は、同じかまたは異なり得る少なくとも第1のmiRNA標的配列および少なくとも1つの第2のmiRNA標的配列を含み、融合タンパク質をコードする配列に3’で操作可能に連結される。
【0007】
特定の実施形態では、本明細書に記載されるhGAA780I融合タンパク質をコードする発現カセット、ならびに薬学的に許容される担体、賦形剤、および/または懸濁剤の各々の少なくとも1つを含む組成物が提供される。
【0008】
特定の実施形態では、本明細書に記載されるhGAA780I融合タンパク質をコードする発現カセットを含むrAAV、ならびに薬学的に許容される担体、賦形剤、および/または懸濁剤の各々の少なくとも1つを含む組成物が提供される。
【0009】
特定の実施形態では、ポンペ病を有する患者を治療するための、ならびに/あるいはα-グルコシダーゼ(GAA)欠損を有する患者における心筋、呼吸筋、および/または骨格筋機能を改善するための方法が提供される。この方法は、患者に、本明細書に記載され
る発現カセット、rAAV、または組成物を送達することを含む。発現カセット、rAAV、または組成物は、静脈内および/または髄腔内、大槽内、もしくは脳室内投与を介して送達され得る。追加的または代替的に、かかる遺伝子治療は、心臓への直接送達(心臓)、肺への送達(鼻腔内、吸入、気管内)、および/または筋肉内注入を含み得る。これらのうちの1つは、発現カセット、ベクター、もしくは組成物の単独投与経路、または他の送達経路との同時投与であり得る。
【0010】
ポンペ病を有する患者を治療するための治療レジメンは、患者に、本明細書に記載の発現カセット、rAAV、または組成物を、単独で、あるいは併用療法と組み合わせて、例えば、免疫調節剤、気管支拡張剤、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、呼吸筋力トレーニング(RMST)、酵素補充療法、および/もしくは横隔膜ペーシング療法のうちの1つ以上と組み合わせて、送達することを含み得る。
【0011】
特定の実施形態では、本明細書に記載の発現カセットおよび/またはrAAVの生成のための核酸分子および宿主細胞が提供される。
【0012】
特定の実施形態では、医薬品の調製における発現カセット、rAAV、および/または組成物の使用が提供される。
【0013】
特定の実施形態では、ポンペ病を有する患者を治療するために、ならびに/あるいはα-グルコシダーゼ(GAA)欠損を有する患者における心筋、呼吸筋、および/もしくは骨格筋機能を改善するために好適である、発現カセット、rAAV、および/または組成物が提供される。
【0014】
本発明の他の態様および利点は、以下の本発明の詳細な説明から、容易に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A-1B】CB6(3番目のカラム)、CAG(4番目のカラム)、またはUbCプロモータ(最後のカラム)の指示下で、hGAAV780Iのために操作されたコード配列を有する種々のAAVhu68.hGAAの静脈内投与後4週のポンペ(-/-)マウスの肝臓におけるhGAA活性を示す。(
図1A)低用量(1×10
11GC)。(
図1B)高用量(1×10
12)。
【
図2A-2B】CB6(3番目のカラム)、CAG(4番目のカラム)、またはUbCプロモータ(最後のカラム)の指示下で、hGAAV780Iのために操作されたコード配列を有する種々のAAVhu68.hGAAの静脈内投与後4週のポンペ(-/-)マウスの心臓におけるhGAA活性を示す。(
図2A)低用量(1×10
11GC)。(
図2B)高用量(1×10
12)。
【
図3A-3B】CB6(3番目のカラム)、CAG(4番目のカラム)、またはUbCプロモータ(最後のカラム)の指示下で、hGAAV780Iのために操作されたコード配列を有する種々のAAVhu68.hGAAの静脈内投与後4週のポンペ(-/-)マウスの骨格筋(四頭筋)におけるhGAA活性を示す。(
図3A)低用量(1×10
11GC)。(
図3B)高用量(1×10
12)。
【
図4A-4B】CB6(3番目のカラム)、CAG(4番目のカラム)、またはUbCプロモータ(最後のカラム)の指示下で、hGAAV780Iのために操作されたコード配列を有する種々のAAVhu68.hGAAの静脈内投与後4週のポンペ(-/-)マウスの脳におけるhGAA活性を示す。(
図4A)低用量(1×10
11GC)。(
図4B)高用量(1×10
12)。CB7活性下で発現するベクターは、両方の用量で低い活性を有し、一方、CAGまたはUbCプロモータ下で発現するベクターは、高い用量で同等の活性を有する。
【
図5A-5H】AAVhu68.hGAAの送達後4週のポンペマウス(グリコーゲン貯蔵を示すPAS染色)における心臓の組織学を示す。5つの異なるhGAA発現カセットを含有するrAAVhu68ベクターを生成し、評価した。ビヒクル対照ポンペ(-/-)(
図5D)および野生型(+/+)(
図5A)マウスは、PBS注入を受けた。「hGAA」は、天然シグナルペプチドを有する野生型配列によってコードされる参照天然酵素(hGAAV780)を指す(
図5B)。「BiP-vIGF2.hGAAco」は、最初の35個のAAの欠失を含有し、さらにインスリン受容体に低い親和性を有するIGF2バリアントとの融合であるBiPシグナルペプチドを有する、参照hGAAV780タンパク質の遺伝子操作されたコード配列を指す(
図5C)。「hGAAcoV780I」は、操作された配列によってコードされ、天然シグナルペプチドを含有する、hGAAV780Iバリアントを指す(
図5E)。「BiP-vIGF2.hGAAcoV780I」は、最初の35個のAAの欠失を含有し、さらに、インスリン受容体に低い親和性を有するIGF2バリアントと融合されたBiPシグナルペプチドおよび操作された配列によってコードされるhGAAV780Iを有する、hGAAcoV780Iを指す(
図5F)。「Sp7.Δ8.hGAAcoV780I」は、前の構築物と同じ操作された配列によってコードされる最初の35個のAAの欠失を有するが、天然シグナルペプチドの代わりにB2キモトリプシノゲンシグナルペプチドをコードする配列を含有する、hGAAV780Iバリアントを指す(
図5G)。(
図5H)盲検組織病理学的半定量的重症度スコアリング。委員会認定の獣医病理学者が盲検方式でスライドをレビューし、グリコーゲン貯蔵およびオートファジービルドアップに基づく重症度スコアを確立した。
【
図6A-6H】種々のhGAAをコードするAAVhu68(2.5×10
13GC/kg)の投与後4週のポンペマウスにおける四頭筋の組織学からの結果(PAS染色)を示す。対照ポンペ(-/-)(
図6D)および野生型(+/+)(
図6A)マウスは、PBS注入を受けた。「hGAA」は、天然シグナルペプチドを有する野生型配列によってコードされる参照天然酵素(hGAAV780)を指す(
図6B)。「hGAAcoV780I」は、操作された配列によってコードされ、天然シグナルペプチドを含有するhGAAV780Iバリアントを指す(
図6E)。「Sp7.Δ8.hGAAcoV780I」は、前の構築物と同じ操作された配列によってコードされる最初の35個のAAの欠失を有するが、天然シグナルペプチドの代わりにB2キモトリプシノゲンシグナルペプチドをコードする配列を含有するhGAAV780Iバリアントを指す(
図6F)。「BiP-vIGF2.hGAAco」は、最初の35個のAAの欠失を含有し、さらに、インスリン受容体に低い親和性を有するIGF2バリアントとの融合であり、操作された配列によってコードされるBiPシグナルペプチドを有する参照hGAAV780を指す(
図6C)。「BiP-vIGF2.hGAAcoV780I」は、最初の35個のAAの欠失を含有し、さらに、インスリン受容体に低い親和性を有するIGF2バリアントと融合されたBiPシグナルペプチドおよび操作された配列によってコードされるhGAAV780Iを有する、hGAAV780Iを指す(
図6G)。(
図6H)盲検組織病理学的半定量的重症度スコアリング。委員会認定の獣医病理学者が盲検方式でスライドをレビューし、グリコーゲン貯蔵およびオートファジービルドアップに基づく重症度スコアを確立した。0のスコアは、病変なしを意味し、1は、平均で貯蔵によって影響を受ける9%未満の筋線維を意味し、2は、10~49%を意味し、3は、50~75%を意味し、4は、76~100%を意味する。
【
図7A-7H】種々のhGAAをコードするAAVhu68の2.5×10
12GC/Kg(すなわち、
図6A~
図6Hよりも10倍低い用量)での投与後4週のポンペマウスからの四頭筋の組織学(過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色)の結果を示す。対照ポンペ(-/-)(
図7D)および野生型(+/+)(
図7A)マウスは、PBS注入を受けた。「hGAA」は、天然シグナルペプチドを有する野生型配列によってコードされる参照天然酵素(hGAAV780)を指す(
図7B)。「hGAAcoV780I」は、操作された配列によってコードされ、天然シグナルペプチドを含有するhGAAV780Iバリアントを指す(
図7E)。「Sp7.Δ8.hGAAcoV780I」は、前の構築物と同じ操作された配列によってコードされる最初の35個のAAの欠失を有するが、天然シグナルペプチドの代わりにB2キモトリプシノゲンシグナルペプチドをコードする配列を含有するhGAAV780Iバリアントを指す(
図7F)。「BiP-vIGF2.hGAAco」は、最初の35個のAAの欠失を含有し、さらに、インスリン受容体に低い親和性を有するIGF2バリアントとの融合であり、操作された配列によってコードされるBiPシグナルペプチドを有する参照hGAAV780を指す(
図7C)。「BiP-vIGF2.hGAAcoV780I」は、最初の35個のAAの欠失を含有し、さらに、インスリン受容体に低い親和性を有するIGF2バリアントと融合されたBiPシグナルペプチドおよび操作された配列によってコードされるhGAAV780Iを有する、hGAAV780Iを指す(
図7G)。(
図7H)盲検組織病理学的半定量的重症度スコアリング。委員会認定の獣医病理学者が盲検方式でスライドをレビューし、グリコーゲン貯蔵およびオートファジービルドアップに基づく重症度スコアを確立した。0のスコアは、病変なしを意味し、1は、平均で貯蔵によって影響を受ける9%未満の筋線維を意味し、2は、10~49%を意味し、3は、50~75%を意味し、4は、76~100%を意味する。
【
図8】天然hGAAをコードする配列を有するAAVhu68、または最初の35個のAAの欠失を含有し、さらに、インスリン受容体に低親和性を有するIGF2と融合されたBiPシグナルペプチドおよび操作された配列によってコードされるhGAAV780Iを有するhGAAV780I(「BiP-vIGF2.hGAAcoV780I」)の投与(2.5×10
12GC/kg)後4週のポンペマウスからの脊髄の組織学(PASおよびルクソール-ファストブルー染色)の結果を示す。盲検化した組織病理学的重症度スコアリングが、脊髄切片で実施された。
【
図9A-9C】血漿中のhGAA活性およびIGF2/CI-MPRとの結合を示す。ポンペマウスに、野生型hGAAまたはBiP-vIGF2.hGAAをコードするベクターを低用量(2.5×10
12GC)で投与した。(
図9A、
図9B)高レベルの野生型および操作されたhGAAの静脈内投与の4週後に、活性が血漿中で検出された。(
図9C)操作されたhGAAは、CI-MPRと効率的に結合する。
【
図10】AAVhu68構築物の2.5×10
12GC/Kg(LD)用量での投与4週後のポンペマウスにおける、グリコーゲンクリアランスおよびオートファジービルドアップの分解を示す。DAPIおよび抗LC3B抗体で染色した腓腹筋のパラフィン切片。
【
図11】BiP-vIGF2.hGAAcoV780I.4xmiR183構築物の概略図を示す。
【
図12】AAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780I.4XmiR183(drg非標的化配列の4コピー、miR183を含有する)の高用量(HD:2.5×10
13GC/kg)または低用量(LD:2.5×10
12GC/kg)での静脈投与後4週の、ポンペマウスの脳幹におけるグリコーゲン貯蔵(PAS、ルクソールブルー染色)を示す。矢印は、ニューロン内のPAS陽性貯蔵を示す。
【
図13】AAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780I.4XmiR183の高用量(HD:2.5×10
13GC/kg)または低用量(LD:2.5×10
12GC/kg)での静脈投与後4週の、ポンペマウスの脊髄におけるグリコーゲン貯蔵(PAS、ルクソールブルー染色)を示す。矢印は、ニューロン内のPAS陽性貯蔵を示す。
【
図14】AAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780I.4XmiR183の高用量(HD:2.5×10
13GC/kg)または低用量(LD:2.5×10
12GC/kg)での静脈投与後4週の、ポンペマウスの四頭筋におけるグリコーゲン貯蔵(PAS染色)を示す。
【
図15】AAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780I.4XmiR183の高用量(HD:2.5×10
13GC/kg)または低用量(LD:2.5×10
12GC/kg)での静脈投与後4週の、ポンペマウスの心臓におけるグリコーゲン貯蔵(PAS、ルクソールブルー染色)を示す。
【
図16】AAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780I.4XmiR183の高用量(HD:2.5×10
13GC/kg)または低用量(LD:2.5×10
12GC/kg)での静脈投与後4週のポンペマウスの四頭筋におけるオートファジー空胞マーカーLC3bを示す。
【
図17】AAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780I(左)またはAAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780I.4XmiR183(右)の3e13GCの高用量でのICM投与後35日の、アカゲザルの頸部DRGにおけるhGAA発現(hGAAに対する免疫組織化学)の代表的な画像を示す。
【
図18】AAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780I(左)またはAAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780I.4XmiR183(右)の3e13GCの高用量でのICM投与後35日のアカゲザルの、腰部DRGにおけるhGAA発現(hGAAに対する免疫組織化学)の代表的な画像を示す。
【
図19】AAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780I(左)またはAAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780I.4XmiR183(右)の3e13GCの高用量でのICM投与後35日のアカゲザルの、脊髄下位運動ニューロンにおけるhGAA発現(hGAAに対する免疫組織化学)の代表的な画像を示す。
【
図20】AAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780I(左)またはAAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780I.4XmiR183(右)の3e13GCの高用量でのICM投与後35日の、アカゲザルの心臓におけるhGAA発現(hGAAに対する免疫組織化学)の代表的な画像を示す。
【
図21A-21C】AAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780IまたはAAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780I.4XmiR183の高用量3×10
13GCでのICM投与後35日後の、アカゲザルにおける、頸部セグメント(
図21A)、胸部セグメント(
図21B)、および腰部セグメント(
図21C)のDRGにおけるDRGニューロン変性および炎症性細胞浸潤の組織病理学的スコアリングを示す。AAVhu68ベクターは、既に報告されているように(KatzらHum,Gene Ther.Methods,2018,29:212-9)、蛍光透視誘導下で、大槽内に注入された1mLの滅菌人工CSF(ビヒクル)の総体積で送達された。ベクター群に盲検化された委員会認定の獣医病理学者が、病変の非存在として0、1を最小(10%未満)、2を軽度(10~25%)、3を中度(25~50%)、4を顕著(50~95%)、5を重度(95%超)として定義される重症度を確立した。各データポイントは、1つのDRGを表す。1セグメントおよび1動物当たり最低5つのDRGを得た。
【
図22A-22C】AAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780IまたはAAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780I.4XmiR183の3e13GCの高用量でのICM投与後の、アカゲザルのASTレベル(
図22A)、ALTレベル(
図22B)、および血小板数(
図22C)を示す。
【
図23】AAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780IまたはAAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780I.4XmiR183が3e13GCの高用量で投与(ICM)されたNHPにおける、注入後0~35日目の血漿hGAA活性レベルを示す。
【
図24A-24G】AAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780IまたはAAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780I.4XmiR183(ICM、3e13GC)の投与されたNHPについて、ベースラインおよび35日目の神経伝導速度試験の結果を示す。
【
図25A-25B】疾患の進行段階に7ヶ月齢で処置され、ベースラインで既に徴候的だったポンペマウスにおける、ベクター注入(0日目)から注入後180日目までの体重の長期的フォローアップを示す。それらは、AAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780Iを、代替的な投与経路および用量レベル:高用量(HD)(1e11GC)または低用量(LD)(5e10GC)での脳室内(ICV)、HD(5e13GC/Kg)またはLD(1e13GC/Kg)での静脈内(IV)、ならびに低用量または高用量でのICVおよびIVの組み合わせを使用して投与された。平均値および標準偏差を示す。各時点における統計解析は、KO PBS対照群と他の群との間のウィルコクソン-マン-ホイットニー検定によって行われる。*p<0.05、**p<0.01
【
図26A-26B】疾患の進行段階に7ヶ月齢で処置され、ベースラインで既に徴候的だったポンペマウスにおける、ベクター注入(0日目)から注入後180日目までの体重の長期的フォローアップに対する握力を示す。(
図26A)マウスは、AAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780Iを、代替的な投与経路および用量レベル:高用量での脳室内(ICV)(ICV HD:1e11GC)、高用量での静脈内(IV)(IV HD:5e13GC/Kg)、ならびにICVおよびIV高用量ならびにICVおよびIV低用量の組み合わせを介して投与された。握力は、握力計(IITC Life Science)を用いて様々な時点で測定した。握力計のトランスデューサは、陽極酸化されたベースプレートに接続されたワイヤメッシュグリッドに接続されている。動物を尻尾で保持し、その4本の足でグリッドを掴むまでゆっくりとメッシュの上を通過させる。3回握力測定を行い、これらの読み取りの平均は、その特定の時点での動物の握力を表す。(
図26B)IV+ICV HD対IV HDの増加分を示す180日目からの結果である。値は、動物の体重によって基準化される。群当たりN=雄4匹、雌4匹。各時点での統計解析は、KO PBS対照群と比較した一元配置分散分析(
図26A)または二元配置分散分析(
図26B)、事後多重比較検定によって決定した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001
【
図27A-27B】AAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780IベクターをIV、ICV、またはIVおよびICV(二重経路)で投与したポンペマウスを用いたプルチスモグラフィーの結果を示す。(
図27A)5%CO2負荷。(
図27B)7%CO2負荷。
【
図28】高用量(HD:1e11GC)または低用量(LD:5e10GC)のAAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780IのICV投与後の徴候後ポンペマウスの四頭筋、心臓、および脊髄におけるグリコーゲン貯蔵を示す。
【
図29】高用量(HD:5e13GC/Kg)または低用量(LD:1e13GC)のAAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780IのIV投与後の徴候後ポンペマウスの四頭筋、心臓、および脊髄におけるグリコーゲン貯蔵を示す。
【
図30A-30C】AAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780IベクターをIV、ICV、またはIVおよびICV(二重経路)で投与されたポンペマウスの30日目(
図30A)、60日目(
図30B)、および90日目(
図30C)における血漿中hGAA活性を示す。
【
図31】NHPにおける投与の単一(IVまたはICM)および二重経路(IV+ICM)の評価のための試験設計を示す。
【
図32A-32H】AAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780IのIVまたはICM投与後のNHPにおける血漿およびCSF中のhGAAおよびhGAA活性の検出を示す。
【
図33A-33F】AAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780IのIV(1e13GC/Kgまたは5e13GC/Kg)またはICM(1e13GCまたは3e13GC)投与後のアカゲザルのDRG神経変性および炎症性細胞浸潤(
図33A~
図33C)ならびに脊髄軸索症(
図33D~
図33F)の組織病理学的スコアを示す。ベクター群に盲検化された委員会認定の獣医病理学者が、病変の非存在として0、1を最小(10%未満)、2を軽度(10~25%)、3を中度(25~50%)、4を顕著(50~95%)、5を重度(95%超)として定義される重症度を確立した。
【
図34】AAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780Iの低用量(IV-1e13GC/Kg、ICM-1e13GC)投与後のアカゲザルの四頭筋、心臓、および脊髄におけるhGAA発現(hGAAに対する免疫組織化学)の代表的な画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
少なくともhGAA780I酵素の活性部分に融合されたシグナルペプチドおよびvIGF2ペプチドを含む融合タンパク質を、ポンペ病の患者に送達するための組成物が提供される。それらの製造および使用方法が本明細書に記載され、これらの組成物で患者を治療するためのレジメンを含む。
【0017】
本明細書で使用される場合、「ポンペ病」という用語は、マルターゼ欠損症、グリコーゲン蓄積疾患II型(GSDII)、または糖原病II型とも称され、酸性α-グルコシダーゼをコードするGAA遺伝子の変異によって引き起こされるリソソーム酵素酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の完全な欠如または部分的な欠損を特徴とする遺伝的リソソーム蓄積障害を指すことが意図されている。本用語には、限定されないが、疾患の早期および遅発形態が含まれ、乳児、若年、および成人発症性ポンペ病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
ギリシャ文字「アルファ」および記号「α」は、本明細書全体を通して互換的に使用されることが理解されるであろう。同様に、ギリシャ文字「デルタ」および「Δ」は、本明細書全体を通して互換的に使用される。
【0019】
本明細書で使用される場合、「酸性α-グルコシダーゼ」または「GAA」という用語は、グリコーゲン、マルトース、およびイソマルトースのD-グルコース単位間のα-1,4結合を加水分解するリソソーム酵素を指す。代替的な名称名としては、リソソームα-グルコシダーゼ(EC:3.2.1.20)、グルコアミラーゼ、1,4-α-D-グルカングルコヒドロラーゼ、アミログルコシダーゼ、ガンマ-アミラーゼ、およびエキソ-1,4-α-グルコシダーゼが挙げられるが、これらに限定されない。ヒト酸性α-グルコシダーゼは、GAA遺伝子(National Centre for Biotechnology Information(NCBI)Gene ID 2548)によってコードされ、染色体17の長腕(位置17q25.2~q25.3)にマッピングされている。アミノ酸残基516~521で保存されたヘキサペプチドWIDMNEは、酸性α-グルコシダーゼタンパク質の活性に必要である。「hGAA」という用語は、ヒトGAAのコード配列を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「rAAV.hGAA」は、GAA酵素(例えば、780Iバリアント、少なくともhGAA780I酵素の活性部分に融合されたシグナルペプチドおよびvIGF2ペプチドを含む融合タンパク質)のコード配列を最低限含むベクターゲノムをパッケージングしているAAVカプシドを有するrAAVを指す。rAAVhu68.hGAAまたはrAAVhu68.hGAAは、AAVカプシドがAAVhu68カプシドであるrAAVを指し、本明細書で定義される。
【0021】
全長hGAAの番号付けに従い、アミノ酸1位~27位にシグナルペプチドが存在する。さらに、本酵素は、複数の成熟タンパク質、すなわち、アミノ酸70位~952位の成熟タンパク質、アミノ酸123位~952位に位置する76kD成熟タンパク質、およびアミノ酸204位~952位の70kD成熟タンパク質と関連している。「活性触媒部位
」は、ヘキサペプチドWIDMNE(配列番号3のアミノ酸残基516~521)を含む。特定の実施形態では、より長い断片、例えば、516位~616位が選択され得る。他の活性部位はリガンド結合部位を含み、376位、404位、405位、441位、481位、516位、518位、519位、600位、613位、616位、649位、674位のうちの1つ以上に位置され得る。
【0022】
別段の定めのない限り、「hGAA780I」または「hGAAV780I」という用語は、配列番号3で再現されるアミノ酸配列を有する全長プレプロタンパク質を指す。いくつかの例では、hGAAco780IまたはhGAAcoV780Iという用語は、hGAA780Iをコードする操作された配列を指すために使用される。前の段落に記載のhGAA参照タンパク質と比較して、hGAA780Iは、参照hGAAがバリン(ValまたはV)を含有する780位にイソロイシン(IleまたはI)を有する。このhGAA780Iは、「参照配列」として文献に広く記載されている780位にバリンを有するhGAA配列(hGAAV780)よりも優れた効果および改善された安全性プロファイルを有することが意外にも認められている。例えば、
図5A~
図5Hに示されるように、hGAAV780参照配列は、同じ用量のhGAA780I酵素では認められない毒性(線維化心筋炎)を誘発する。したがって、hGAA780Iの使用は、hGAAによる療法を受ける患者における線維化心筋炎を低減または排除し得る。hGAAシグナルペプチド、成熟タンパク質、活性触媒部位、および結合部位の位置は、配列番号3で再現されるhGAA780I、すなわち、アミノ酸1~27位のシグナルペプチド、アミノ酸70位~952位の成熟タンパク質、アミノ酸123位~952位の76kD成熟タンパク質およびアミノ酸204位~952位の70kD成熟タンパク質、アミノ酸残基516~521のヘキサペプチドWIDMNE(配列番号61)を含む「活性触媒部位」、376、404、405、441、481、516、518、519、600、613、616、649、674位のうちの1つ以上に位置され得るリガンド結合部位を含む他の活性部位における類似の位置に基づいて決定され得る。
【0023】
特定の実施形態では、hGAA780Iは、hGAA780Iと少なくとも95%同一、hGAA780Iと少なくとも97%同一、または配列番号3のhGAA780Iと少なくとも99%同一である配列を有するものから選択され得る。特定の実施形態では、配列番号3の成熟hGAA780Iタンパク質と少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%の同一性である配列が提供される。特定の実施形態では、hGAA780Iと少なくとも95%~少なくとも99%の同一性を有する配列は、いかなる変化もなく保持される活性触媒部位の配列を有する。特定の実施形態では、配列番号3に対するhGAA780Iと少なくとも95%~少なくとも99%の同一性を有する配列は、適切な動物モデルで試験した場合、参照hGAAV780よりも改善された生物学的効果および優れた安全性プロファイルを有することを特徴とする。特定の実施形態では、GAA活性アッセイは、既に報告されているように(例えば、J.Hordeaux,et.al.,Acta Neuropathological Communications,(2107)5:66)、または他の適切な方法を使用して実施され得る。特定の実施形態では、hGAA780I酵素は、hGAAアミノ酸配列における他の位置に改変を含有する。変異体の例としては、例えば、米国特許第9,920,307号に記載のものが挙げられ得る。特定の実施形態では、かかる変異体hGAA780Iは、最低限、活性触媒部位:WIDMNE(配列番号61)および以下に記載される780Iの領域におけるアミノ酸を保持し得る。
【0024】
特定の実施形態では、天然hGAAシグナルペプチド以外のリーダーペプチドを含む、新規hGAA780I融合タンパク質が提供される。特定の実施形態では、かかる外因性リーダーペプチドは、好ましくは、ヒト起源のものであり、例えば、IL-2リーダーペプチドを含み得る。特定の実施形態において作用可能な特定の外因性シグナルペプチドと
しては、キモトリプシノゲンB2由来のアミノ酸1~20、ヒトアルファ-1-アンチトリプシンのシグナルペプチド、イズロン酸-2-スルファターゼ由来のアミノ酸1~25、およびプロテアーゼCI阻害物質由来のアミノ酸1~23が挙げられる。例えば、WO2018/046774を参照されたい。他のシグナル/リーダーペプチドは、とりわけ、免疫グロブリン(例えば、IgG)、サイトカイン(例えば、IL-2、IL12、IL18など)、インスリン、アルブミン、β-グルクロニダーゼ、アルカリプロテアーゼ、またはフィブロネクチン分泌シグナルペプチドに天然に認められ得る。また、例えば、signalpeptide.de/index.php?m=listspdb_mammaliaを参照されたい。
【0025】
かかるキメラhGAA780Iは、全27個のaaの天然シグナルペプチドの代わりに外来性リーダーを有し得る。任意選択的に、hGAA780I酵素のN末端切断は、シグナルペプチドの一部のみ(例えば、約2~約25個、またはそれらの間の数値のアミノ酸の欠失)、シグナルペプチド全体、またはシグナルペプチドより長い断片(例えば、配列番号3の番号付けに基づいて70位までのアミノ酸)を欠如し得る。任意選択的に、かかる酵素は、約5、10、15、または20アミノ酸長のC末端切断を含有し得る。
【0026】
特定の実施形態では、成熟hGAA780Iタンパク質(aa70~952)、成熟70kDタンパク質(aa123~aa952)、または融合パートナーに結合した成熟76kDタンパク質(aa204~952)を含む、新規融合タンパク質が提供される。任意選択的に、融合タンパク質は、hGAAに対して非天然であるシグナルペプチドをさらに含む。さらに任意選択的に、これらの実施形態のうちの1つは、約5、10、15、または20アミノ酸長のC末端切断をさらに含有し得る。
【0027】
特定の実施形態では、hGAA780Iタンパク質を含む融合タンパク質は、配列番号3(hGAA780I)の少なくともアミノ酸204~アミノ酸890、またはそれと少なくとも95%同一で780位にIleを有する配列を含む。特定の実施形態では、hGAA780Iタンパク質は、配列番号3の少なくともアミノ酸204~アミノ酸952、またはそれと少なくとも95%同一で780位にIleを有する配列を含む。特定の実施形態では、hGAA780Iタンパク質は、配列番号3の少なくともアミノ酸123~アミノ酸890、またはそれと少なくとも95%同一で780位にIleを有する配列を含む。特定の実施形態では、hGAA780I酵素は、配列番号3の少なくともアミノ酸70~アミノ酸952、またはそれと少なくとも95%同一で780位にIleを有する配列を含む。特定の実施形態では、hGAA780Iタンパク質は、配列番号3の少なくともアミノ酸70~アミノ酸890、またはそれと少なくとも95%同一で780位にIleを有する配列を含む。
【0028】
特定の実施形態では、融合タンパク質は、シグナル配列と、リーダー配列と、配列番号7に対して少なくとも95%同一性、少なくとも97%同一性、または99%の同一性を有するhGAA780I配列と、を含み、活性部位に変化を有しないか、かつ/または活性部位に対して3~12個のアミノ酸のN末端および/もしくはC末端に変化を有しない。好ましい実施形態では、操作されたhGAA発現カセットは、T-Val(V)-P-Ile(780I)-Glu(E)-Ala(A)-Leu(L)(配列番号62)の少なくともヒトhGAA780I断片をコードする。特定の実施形態では、操作されたhGAA発現カセットは、より長いヒトhGAA780I断片:Gln(Q)-T-V-P-780I-E-A-L-Gly(G)(配列番号63)をコードする。特定の実施形態では、操作されたhGAA発現カセットは、少なくともPLGT-Trp(W)-Tyr(Y)-Asp(D)-LQTVP-780I-EALG-(SerまたはS)-L-PPPPAA配列(配列番号64)に対応する断片をコードする。同様に、好ましい実施形態では、活性結合部位(配列番号3のaa518~521)にアミノ酸変化はない。特定の
実施形態では、600位、616位、および/または674位における結合部位は、変化しないままである。特定の実施形態では、融合タンパク質は、シグナルペプチドと、任意選択的なvIGF+2GS伸長と、任意選択的なERタンパク質分解ペプチドと、hGAAの最初の35個のアミノ酸(すなわち、天然シグナルペプチドおよびアミノ酸28~35を欠く)の欠失を有するhGAA780Iバリアントと、を含む。
【0029】
特定の実施形態では、BiPシグナルペプチド、IGF2+2GS伸長、およびhGAA780Iのアミノ酸61~952(hGAA 780Iのアミノ酸1~60の欠失を伴う)を含む、分泌型の操作されたGAAが提供される。特定の実施形態では、配列番号6を含む融合タンパク質、またはそれと少なくとも95%同一の配列が本明細書に提供される。特定の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号7、またはそれと少なくとも95%同一の配列によってコードされる。特定の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号4の配列、またはそれと少なくとも95%同一の配列を含む。特定の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号5の配列、またはそれと少なくとも95%同一の配列を含む。
【0030】
本明細書に提供される融合タンパク質の成分は、以下にさらに記載される。
【0031】
CI-MPRに結合するペプチド
CI-MPRに結合するペプチド(例えば、vIGF2ペプチド)が、本明細書に提供される。かかるペプチドおよびhGAA780Iタンパク質を含む融合タンパク質は、遺伝子療法ベクターから発現される場合、hGAA780Iを、それが必要とされる細胞に標的化し、かかる細胞による細胞取り込みを増加させ、治療用タンパク質を細胞内位置(例えば、リソソーム)に標的化する。いくつかの実施形態では、ペプチドは、hGAA780Iタンパク質のN末端に融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドは、hGAA780Iタンパク質のC末端に融合される。いくつかの実施形態では、ペプチドは、vIGF2ペプチドである。いくつかのvIGF2ペプチドは、CI-MPRに対する高い親和性結合を維持するが、IGF1受容体、インスリン受容体、およびIGF結合タンパク質(IGFBP)に対するそれらの親和性は低下または排除される。したがって、いくつかのバリアントIGF2ペプチドは、野生型IGF2と比較して、実質的に高い選択力であり、低い安全性リスクを有する。本明細書におけるvIGF2ペプチドには、配列番号46のアミノ酸配列を有するものが含まれる。バリアントIGF2ペプチドは、野生型IGF2(配列番号34)と比較して、6位、26位、27位、43位、48位、49位、50位、54位、55位、または65位にバリアントアミノ酸を有するものをさらに含む。いくつかの実施形態では、vIGF2ペプチドは、E6R、F26S、Y27L、V43L、F48T、R49S、S50I、A54R、L55R、およびK65Rからなる群からの1つ以上の置換を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、vIGF2ペプチドは、E6Rの置換を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、vIGF2ペプチドは、F26Sの置換を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、vIGF2ペプチドは、Y27Lの置換を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、vIGF2ペプチドは、V43Lの置換を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、vIGF2ペプチドは、F48Tの置換を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、vIGF2ペプチドは、R49Sの置換を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、vIGF2ペプチドは、S50Iの置換を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、vIGF2ペプチドは、A54Rの置換を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、vIGF2ペプチドは、L55Rの置換を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、vIGF2ペプチドは、K65Rの置換を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、vIGF2ペプチドは、E6R、F26S、Y27L、V43L、F48T、R49S、S50I、A54R、およびL55Rの置換を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、vIGF2ペプチドは、N末端欠失を有する。いくつかの実施形態では、vIGF2ペプチドは、1つのアミノ酸のN末端欠失を有する。いくつかの実施形態では、
vIGF2ペプチドは、2つのアミノ酸のN末端欠失を有する。いくつかの実施形態では、vIGF2ペプチドは、3つのアミノ酸のN末端欠失を有する。いくつかの実施形態では、vIGF2ペプチドは、4つのアミノ酸のN末端欠失を有する。いくつかの実施形態では、vIGF2ペプチドは、4つのアミノ酸のN末端欠失ならびにE6R、Y27L、およびK65Rの置換を有する。いくつかの実施形態では、vIGF2ペプチドは、4つのアミノ酸のN末端欠失ならびにE6RおよびY27Lの置換を有する。いくつかの実施形態では、vIGF2ペプチドは、5つのアミノ酸のN末端欠失を有する。いくつかの実施形態では、vIGF2ペプチドは、6つのアミノ酸のN末端欠失を有する。いくつかの実施形態では、vIGF2ペプチドは、7つのアミノ酸のN末端欠失を有する。いくつかの実施形態では、vIGF2ペプチドは、7つのアミノ酸のN末端欠失ならびにY27LおよびK65Rの置換を有する。
【表1-1】
【表1-2】
【表2】
【0032】
シグナルペプチド
本明細書に提供される組成物は、いくつかの実施形態では、さらにシグナルペプチドを含み、遺伝子療法構築物で形質導入される細胞からのhGAA780Iの分泌を改善する。いくつかの実施形態におけるシグナルペプチドは、治療用タンパク質のタンパク質プロセシングを改善し、新生ポリペプチドリボソーム複合体のERへの転位置を促進し、適切な共翻訳および翻訳後改変を確実にする。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、(i)シグナル翻訳開始配列の上流位置、(ii)翻訳開始配列と治療用タンパク質との間、または(iii)治療用タンパク質の下流位置に配置される。遺伝子療法構築物に有用なシグナルペプチドには、HSP70タンパク質ファミリー(例えば、HSPA5、熱ショックタンパク質ファミリーAメンバー5)に由来する結合免疫グロブリンタンパク質(BiP)シグナルペプチドおよびガウシアシグナルペプチド、ならびにそれらのバリアンが含まれるが、これらに限定されない。これらのシグナルペプチドは、シグナル認識粒子に対して超高親和性を有する。BiPおよびガウシアアミノ酸配列の例を以下の表に提供する。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号49~53からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号49~53からなる群から選択される配列と、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、または1個のアミノ酸で異なる。
【表3】
【0033】
ガウシアシグナルペプチドは、Gaussia princepsのルシフェラーゼに由来し、このシグナルペプチドに融合した治療用タンパク質のタンパク質合成および分泌の増加を指示する。いくつかの実施形態では、ガウシアシグナルペプチドは、配列番号54と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号54と、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、または1個のアミノ酸で異なる。
【0034】
リンカー
本明細書で提供される組成物は、いくつかの実施形態では、標的化ペプチドと治療用タンパク質との間にリンカーを含む。かかるリンカーは、いくつかの実施形態では、vIGF2ペプチドと治療用タンパク質との間の正しい間隔を維持し、立体的な衝突を緩和する。リンカーは、いくつかの実施形態では、反復グリシン残基、反復グリシン-セリン残基、およびそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、5~20個のアミノ酸、5~15個のアミノ酸、5~10個のアミノ酸、8~12個のアミノ酸、または約5、6、7、8、9、10、11、12、もしくは13個のアミノ酸からなる。好適なリンカーとしては、限定されないが、以下の表に提供されるものが挙げられる:
【表4】
【0035】
本明細書全体を通して、様々な発現カセット、ベクターゲノム、ベクター、および組成物が、hGAA780Iコード配列またはhGAA780Iタンパク質もしくは融合タンパク質を含有するものとして記載される。別途指定されない限り、N末端切断、C末端切
断、および本明細書に記載されるものなどの融合タンパク質を含む操作されたhGAA780Iタンパク質のいずれか、またはそれらのコード配列は、発現カセット、ベクターゲノム、ベクター、および組成物に、同様に操作され得ることが理解されるであろう。
【0036】
好適には、本明細書に記載の核酸配列を含む発現カセットが提供される。
【0037】
発現カセット
本明細書で使用される場合、「発現カセット」は、標的細胞における発現を誘導する調節配列に操作可能に連結された、機能的な遺伝子産物をコードする核酸配列(例えば、hGAA780I誘導タンパク質コード配列)を含む核酸分子を指し、それらのために他の調節配列を含み得る。必要な調節配列は、標的細胞におけるその転写、翻訳、および/または発現を可能にする方式で、hGAA780I誘導タンパク質コード配列と操作可能に連結される。
【0038】
特定の実施形態では、発現カセットは、非翻訳領域に1つ以上のmiRNA標的配列を含み得る。miRNA標的配列は、導入遺伝子の発現が望ましくなく、かつ/または導入遺伝子の発現レベルの低下が所望される細胞に存在するmiRNAによって特異的に認識されるように設計される。特定の実施形態では、発現カセットは、後根神経節におけるhGAA780I融合タンパク質の発現を特異的に低減するmiRNA標的配列を含む。特定の実施形態では、miRNA標的配列は、3’UTR、5’UTR、および/または3’UTRと5’UTRの両方に位置する。特定の実施形態では、発現カセットは、後根神経節(DRG)特異的miRNA標的配列の少なくとも2つのタンデム反復を含み、少なくとも2つのタンデム反復は、同じかまたは異なり得る少なくとも第1のmiRNA標的配列および少なくとも第2のmiRNA標的配列を含む。特定の実施形態では、少なくとも2つのDRG特異的miRNAタンデム反復の第1の開始は、hGAA780I融合タンパク質コード配列の3’末端から20ヌクレオチド以内である。特定の実施形態では、少なくとも2つのDRG特異的miRNAタンデム反復の第1の開始は、hGAA780I融合タンパク質コード配列の3’末端から少なくとも100ヌクレオチドである。特定の実施形態では、miRNAタンデム反復は、200~1200ヌクレオチド長を含む。特定の実施形態では、miR標的の包含は、miR標的配列を欠く発現カセットまたはベクターゲノムと比較して、1つ以上の標的組織における治療用導入遺伝子の発現または有効性を変化させない。
【0039】
特定の実施形態では、ベクターゲノムまたは発現カセットは、miR-183の標的配列である少なくとも1つのmiRNA標的配列を含む。特定の実施形態では、ベクターゲノムまたは発現カセットは、
を含むmiR-183標的配列を含有し、miR-183シード配列に相補的な配列に下線が引かれている。特定の実施形態では、ベクターゲノムまたは発現カセットは、miR-183シード配列に100%相補的である配列の2コピー以上(例えば、2または3コピー)含む。特定の実施形態では、miR-183標的配列は、約7ヌクレオチド~約28ヌクレオチド長であり、miR-183シード配列に少なくとも100%相補的である少なくとも1つの領域を含む。特定の実施形態では、miR-183標的配列は、配列番号26に部分的な相補性を有する配列を含有し、したがって、配列番号26に整列させた場合、1つ以上のミスマッチがある。特定の実施形態では、miR-183標的配列は、配列番号26に整列させた場合、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のミスマッチを有する配列を含み、ミスマッチは非連続的であり得る。特定の実施形態では、miR-183標的配列は、100%相補性の領域を含み、また、miR-
183標的配列の長さの少なくとも30%を含む。特定の実施形態では、100%相補性の領域は、miR-183シード配列と100%相補性を有する配列を含む。特定の実施形態では、miR-183標的配列の残部は、miR-183と少なくとも約80%~約99%相補性を有する。特定の実施形態では、発現カセットまたはベクターゲノムは、切断された配列番号26(すなわち、配列番号26の5’末端もしくは3’末端のいずれかまたは両方で少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチドを欠く配列)を含むmiR-183標的配列を含む。特定の実施形態では、発現カセットまたはベクターゲノムは、導入遺伝子および1つのmiR-183標的配列を含む。さらに他の実施形態では、発現カセットまたはベクターゲノムは、少なくとも2つ、3つ、または4つのmiR-183標的配列を含む。
【0040】
特定の実施形態では、ベクターゲノムまたは発現カセットは、miR-182の標的配列である少なくとも1つのmiRNA標的配列を含む。特定の実施形態では、ベクターゲノムまたは発現カセットは、AGTGTGAGTTCTACCATTGCCAAA(配列番号27)を含むmiR-182標的配列を含む。特定の実施形態では、ベクターゲノムまたは発現カセットは、miR-182シード配列に100%相補的である配列の2コピー以上(例えば、2または3コピー)を含む。特定の実施形態では、miR-182標的配列は、約7ヌクレオチド~約28ヌクレオチド長であり、miR-182シード配列に少なくとも100%相補的である少なくとも1つの領域を含む。特定の実施形態では、miR-182標的配列は、配列番号27に部分的な相補性を有する配列を含有し、したがって、配列番号27に整列させた場合、1つ以上のミスマッチがある。特定の実施形態では、miR-183標的配列は、配列番号27に整列させた場合、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のミスマッチを有する配列を含み、ミスマッチは非連続的であり得る。特定の実施形態では、miR-182標的配列は、100%相補的な領域を含み、また、miR-182標的配列の長さの少なくとも30%を含む。特定の実施形態では、100%相補性の領域は、miR-182シード配列と100%相補性を有する配列を含む。特定の実施形態では、miR-182標的配列の残部は、miR-182と少なくとも約80%~約99%相補性を有する。特定の実施形態では、発現カセットまたはベクターゲノムは、切断された配列番号27(すなわち、配列番号27の5’末端もしくは3’末端のいずれかまたは両方で少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチドを欠く配列)を含むmiR-182標的配列を含む。特定の実施形態では、発現カセットまたはベクターゲノムは、導入遺伝子および1つのmiR-182標的配列を含む。さらに他の実施形態では、発現カセットまたはベクターゲノムは、少なくとも2つ、3つ、または4つのmiR-182標的配列を含む。
【0041】
「タンデム反復」という用語は、2つ以上の連続するmiRNA標的配列の存在を指すように本明細書で使用される。これらのmiRNA標的配列は、連続的であり得、すなわち、一方の3’末端が、介在配列なしで、次の配列の5’末端のすぐ上流にあるように、またはその逆で、互いの後に直接的に配置され得る。別の実施形態では、miRNA標的配列のうちの2つ以上が、短いスペーサー配列によって分離されている。
【0042】
本明細書で使用される場合、「スペーサー」は、2つ以上の連続するmiRNA標的配列の間に位置する、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチド長の任意の選択された核酸配列である。特定の実施形態では、スペーサーは、1~8ヌクレオチド長、2~7ヌクレオチド長、3~6ヌクレオチド長、4ヌクレオチド長、4~9ヌクレオチド、3~7ヌクレオチド、またはより長い数値である。好適には、スペーサーは、非コード配列である。特定の実施形態では、スペーサーは、4つの(4)ヌクレオチドであり得る。特定の実施形態では、スペーサーは、GGATである。特定の実施形態では、スペーサーは、6つの(6)ヌクレオチドである。特定の実施形態では、スペーサーは、CACGTGまたはGCATGCである。
【0043】
特定の実施形態では、タンデム反復は、2つ、3つ、4つ以上の同じmiRNA標的配列を含む。特定の実施形態では、タンデム反復は、少なくとも2つの異なるmiRNA標的配列、少なくとも3つの異なるmiRNA標的配列、または少なくとも4つの異なるmiRNA標的配列などを含む。特定の実施形態では、タンデム反復は、2つまたは3つの同じmiRNA標的配列、および異なる第4のmiRNA標的配列を含有し得る。
【0044】
特定の実施形態では、発現カセットには、少なくとも2つの異なるセットのタンデム反復が存在し得る。例えば、3’UTRは、導入遺伝子のすぐ下流のタンデム反復と、UTR配列と、UTRの3’末端に近接する2つ以上のタンデム反復と、を含み得る。別の例では、5’UTRは、1つ、2つ以上のmiRNA標的配列を含み得る。別の例では、3’は、タンデム反復を含有し得、5’UTRは、少なくとも1つのmiRNA標的配列を含有し得る。
【0045】
特定の実施形態では、発現カセットは、導入遺伝子の終止コドンの約0~20ヌクレオチド以内で開始する、2つ、3つ、4つ以上のタンデム反復を含有する。他の実施形態では、発現カセットは、導入遺伝子の終止コドンから少なくとも100~約4000ヌクレオチドでmiRNAタンデム反復を含む。
【0046】
参照により本明細書に組み込まれる2018年12月21日に出願された米国仮特許出願第62/783,956号に対する優先権を主張する、参照により本明細書に組み込まれる2019年12月20日に出願されたPCT/US19/67872を参照されたい。
【0047】
本明細書で使用される場合、「BiP-vIGF2.hGAAcoV780I.4xmir183」は、改変されたBiP-vIGF2シグナル配列を遍在性CAGプロモータの制御下で有するhGAA780Iのための操作されたコード配列、およびmiR183標的配列の4つのタンデム反復を含む発現カセット(例えば、
図11に示される)を指す。本明細書に提供される実施例に例示されるように、V780I変異およびBiP-vIGF2改変の両方が、安全性および有効性の向上に寄与する。特定の実施形態では、BiP-vIGF2.hGAAcoV780I.4xmir183は、配列番号3の融合タンパク質をコードする配列、またはそれと少なくとも95%同一の配列を含む。特定の実施形態では、BiP-vIGF2.hGAAcoV780I.4xmir183は、配列番号7の核酸配列、またはそれと少なくとも95%~99%同一の配列を含む。さらに別の実施形態では、本明細書に提供されるのは、ベクターゲノムであり、BiP-vIGF2.hGAAcoV780I.4xmir183は、5’ITRおよび3’ITRに隣接している。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号30である。さらに別の実施形態では、配列番号30と少なくとも95%同一の配列を含み、配列番号6の融合タンパク質をコードするベクターゲノムが提供される。
【0048】
本明細書で使用される場合、「操作可能に連結される」配列は、hGAA780Iコード配列と隣接する発現制御配列と、hGAA780Iコード配列を制御するためにトランスで、または離れて作用する発現制御配列と、の両方を含む。かかる調節配列は、典型的には、例えば、プロモータ、エンハンサー、イントロン、コザック配列、ポリアデニル化配列、およびTATAシグナルのうちの1つ以上を含む。
【0049】
特定の実施形態では、調節エレメントは、ポンペ病によって影響される複数の細胞および組織における発現を指示して、複数の標的細胞を治療するのに好適である単一発現カセットの構築および送達を可能にする。例えば、調節エレメント(例えば、プロモータ)は、肝臓細胞、骨格筋細胞、心臓細胞、および中枢神経系細胞のうちの2つ以上で発現させ
るように選択され得る。例えば、調節エレメント(例えば、プロモータ)は、中枢神経系(例えば、脳)細胞、および骨格筋で発現させるように選択され得る。他の実施形態では、調節エレメントは、CNS、骨格筋、および心臓で発現させる。他の実施形態では、発現カセットは、肝臓細胞、骨格筋細胞、心臓細胞、および中枢神経系細胞のすべてにおけるコードされたhGAA780Iの発現を可能にする。他の実施形態では、調節エレメントは、特定の組織を標的化し、特定の細胞または組織内での発現を回避するために(例えば、本明細書に記載のdrg非標的化システムの使用によって、および/または組織特異的プロモータの選択によって)選択され得る。特定の実施形態では、本明細書で提供される異なる発現カセットが患者に投与され、異なる組織を優先的に標的とする。
【0050】
調節配列は、プロモータを含む。好適なプロモータが選択され得、これには、標的細胞においてhGAAV780Iタンパク質を発現するプロモータが含まれるが、これに限定されない。
【0051】
特定の実施形態では、構成的プロモータまたは誘導性/調節性プロモータが選択される。構成的プロモータの例は、ニワトリβアクチンプロモータである。様々なニワトリベータアクチンプロモータが、単独で、または様々なエンハンサーエレメントと組み合わせて報告されている(例えば、サイトメガロウイルスエンハンサーエレメントを有するニワトリβアクチンプロモータであるCB7、プロモータと、ニワトリβアクチンの第1のエキソンと、および第1のイントロンと、ウサギβグロビン遺伝子のスプライスアクセプターとを含むCAGプロモータ、SJ Gray et al,Hu Gene Ther,2011 Sep;22(9):1143-1153によるCBhプロモータ)。特定の実施形態では、調節可能なプロモータが選択され得る。例えば、WO2011/126808B2を参照されたく、参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
特定の実施形態では、組織特異的プロモータが選択され得る。組織特異的であるプロモータの例は、肝臓(アルブミン、Miyatake et al.,(1997)J.Virol.,71:5124-32、B型肝炎ウイルスコアプロモータ、Sandig et al.,(1996)Gene Ther.,3:1002-9、アルファフェトプロテイン(AFP )、Arbuthnot et al.,(1996)Hum.Gene Ther.,7:1503-14)、中枢神経系、例えば、ニューロン(神経特異的エノラーゼ(NSE)プロモータ、Andersen et al.,(1993)Cell.Mol.Neurobiol.,13:503-15、ニューロフィラメント軽鎖遺伝子、Piccioli et al.,(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:5611-5、およびニューロン特異的vgf遺伝子、Piccioli et al.,(1995)Neuron,15:373-84)、心筋、骨格筋、肺、および他の組織について周知である。別の実施形態では、好適なプロモータとしては、限定されないが、伸長因子1α(EF1α)プロモータ(例えば、Kim
DW et al,Use of the human elongation factor 1 alpha promoter as a versatile and
efficient expression system.Gene.1990 Jul 16;91(2):217-23を参照されたい)、シナプシン1プロモータ(例えば、Kugler S et al,Human synapsin 1 gene promoter confers highly neuron-specific long-term transgene expression from an adenoviral vector in the adult rat brain depending on the transduced area.Gene Ther.2003 Feb;10(4):337-47を参照されたい)、神経特異的エノラーゼ(NSE)プロモータ(例えば、Kim J et al,Involvement of cholesterol-rich lipid rafts in int
erleukin-6-induced neuroendocrine differentiation of LNCaP prostate cancer cells.Endocrinology.2004 Feb;145(2):613-9.Epub 2003 Oct 16を参照されたい)、またはCB6プロモータ(例えば、Large-Scale Production of Adeno-Associated
Viral Vector Serotype-9 Carrying the Human Survival Motor Neuron Gene,Mol Biotechnol.2016 Jan;58(1):30-6.doi:10.1007/s12033-015-9899-5を参照されたい)が挙げられる。組織特異的プロモータを利用する特定の実施形態では、異なる発現カセットと、異なる細胞タイプを標的とする組織特異的プロモータと、を含む併用療法が選択され得る。
【0053】
一実施形態では、調節配列は、エンハンサーをさらに含む。一実施形態では、調節配列は、1つのエンハンサーを含む。別の実施形態では、調節配列は、2つ以上の発現エンハンサーを含む。これらのエンハンサーは、同じであり得るか、または異なり得る。例えば、エンハンサーは、Alpha mic/bikエンハンサー、またはCMVエンハンサーを含み得る。このエンハンサーは、互いに隣接して位置する2つのコピーに存在し得る。代替的には、エンハンサーの二重コピーは、1つ以上の配列によって分離される。
【0054】
一実施形態では、調節配列は、イントロンをさらに含む。さらなる実施形態では、イントロンは、ニワトリβアクチンイントロンである。他の好適なイントロンには、当該技術分野で既知のものが含まれ、ヒトβ-グロブリンイントロン、および/または市販のPromega(登録商標)イントロン、ならびにWO2011/126808に記載のものであり得る。
【0055】
一実施形態では、調節配列は、ポリアデニル化シグナル(ポリA)をさらに含む。さらなる実施形態では、ポリAは、ウサギグロビンポリAである。例えば、WO2014/151341を参照されたい。代替的には、別のポリA、例えば、ヒト成長ホルモン(hGH)ポリアデニル化配列、SV40ポリA、または合成ポリAが、発現カセットに含まれ得る。
【0056】
本明細書に記載の発現カセットにおける組成物は、本明細書にわたって記載される他の組成物、レジメン、態様、実施形態、および方法に適用されることが意図されることを理解されたい。
【0057】
発現カセットは、任意の好適な送達システムを介して送達することができる。好適な非ウイルス送達システムは、当該技術分野において既知であり(例えば、Ramamoorth and Narvekar.J Clin Diagn Res.2015 Jan;9(1):GE01-GE06を参照されたく、参照により本明細書に組み込まれる)、当業者によって容易に選択され得、例えば、裸のDNA、裸のRNA、デンドリマー、PLGA、ポリメタクリレート、無機粒子、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子またはLNP)、またはキトサンベースの配合物を含み得る。
【0058】
一実施形態では、ベクターは、非ウイルスプラスミドであり、その記載される発現カセット、例えば、「裸のDNA」、「裸のプラスミドDNA」、RNA、およびmRNAを含み、様々な組成物およびナノ粒子、例えば、ミセル、リポソーム、カチオン性脂質-核酸組成物、ポリグリカン組成物および他のポリマー、脂質および/またはコレステロール系-核酸コンジュゲート、ならびに本明細書に記載されるなどの他の構築物と結合される。例えば、X.Su et al,Mol.Pharmaceutics,2011,8
(3),pp 774-787、ウェブ公開:March 21,2011;WO20
13/182683、WO2010/053572、およびWO2012/170930,を参照されたく、これらはすべて参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
特定の実施形態では、本明細書に記載のhGAA780Iバリアント、融合タンパク質、または切断タンパク質をコードする配列を有する核酸分子が本明細書に提供される。1つの望ましい実施形態では、hGAA780Iは、配列番号4の操作された配列、またはhGAA780Iバリアントをコードする配列と少なくとも95%同一の配列によってコードされる。特定の実施形態では、配列番号4は、780I位置でのIleをコードするコドンがATTまたはATCであるように改変される。特定の実施形態では、配列番号4またはその断片の操作された配列を含む核酸が、融合タンパク質または切断されたhGAA780Iを発現するために使用される。望ましくないが、特定の実施形態では、hGAA780Iは、配列番号5によってコードされる。特定の実施形態では、核酸は、配列番号6のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも95%同一の配列を有する融合タンパク質をコードする。特定の実施形態では、配列番号7の配列、またはそれと少なくとも95%同一の配列を有する核酸が提供される。特定の実施形態では、核酸分子は、プラスミドである。
【0060】
ベクター
本明細書で使用される「ベクター」は、核酸配列の複製または発現のために適切な標的細胞に導入することができる核酸配列を含む、生物学的または化学的部分である。ベクターの例としては、組換えウイルス、プラスミド、リポプレックス、ポリマーソーム、ポリプレックス、デンドリマー、細胞透過性ペプチド(CPP)コンジュゲート、磁性粒子、またはナノ粒子が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、ベクターは、機能的な遺伝子産物をコードする外因性または異種の操作された核酸を有する核酸分子であり、そのため、適切な標的細胞に導入することができる。かかるベクターは、好ましくは、1つ以上の複製起点、および組換えDNAを挿入することができる1つ以上の部位を有する。ベクターは、しばしば、ベクターを有する細胞を、有しない細胞から選択することができる手段を有しており、例えば、それらは薬剤耐性遺伝子をコードしている。一般的なベクターには、プラスミド、ウイルスゲノム、および「人工染色体」が含まれる。ベクターの生成、産生、特徴付け、または定量化の従来の方法は、当業者にとって利用可能である。
【0061】
特定の実施形態では、本明細書に記載のベクターは、合成または人工ウイルス粒子を指す「複製欠損ウイルス」または「ウイルスベクター」であり、粒子中では、ウイルスカプシドまたはエンベロープにパッケージングされた機能的hGAA780I融合タンパク質をコードする核酸配列を含む発現カセットは、そこに任意のゲノム配列もウイルスカプシドまたはエンベロープ内にパッケージングされて、複製欠損であり、すなわち、それらは、後代ビリオンを生成することができないが、標的細胞に感染する能力を保持することができる。一実施形態では、ウイルスベクターのゲノムは、複製に必要とされる酵素をコードする遺伝子を含まないが(ゲノムは、人工ゲノムの増幅およびパッケージングに必要とされるシグナルに隣接してコードされる核酸配列のみを含有する「ガットレス」であるように操作することができる)、これらの遺伝子は、産生の際に供給され得る。したがって、それは、後代ビリオンによる複製および感染が、複製に必要とされるウイルス酵素の存在下以外で生じることができないために、遺伝子療法での使用のために安全であると考えられる。
【0062】
本明細書で使用される場合、組換えウイルスベクターは、所望の細胞を標的とする任意の好適なウイルスベクターである。したがって、組換えウイルスベクターは、好ましくは、中枢神経系(例えば、脳)、骨格筋、心臓、および/または肝臓を含む、ポンペ病に影響を受ける細胞および組織のうちの1つ以上を標的とする。特定の実施形態では、ウイル
スベクターは、少なくとも中枢神経系(例えば、脳)細胞、肺、心臓細胞、または骨格筋を標的とする。他の実施形態では、ウイルスベクターは、CNS(例えば、脳)、骨格筋、および/または心臓を標的とする。他の実施形態では、ウイルスベクターは、肝臓細胞、骨格筋細胞、心臓細胞、および中枢神経系細胞のすべてを標的とする。実施例は、例示的な組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を提供する。しかしながら、他の好適なウイルスベクターとしては、例えば、組換えアデノウイルス、組換えボカウイルスなどの組換えパルボウイルス、ハイブリッドAAV/ボカウイルス、組換え単純ヘルペスウイルス、組換えレトロウイルス、または組換えレンチウイルスが挙げられ得る。好ましい実施形態では、これらの組換えウイルスは、複製不能である。
【0063】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、ベクター(例えば、組換えAAV)が産生されるパッケージング細胞株を指し得る。宿主細胞は、原核細胞または真核細胞(例えば、ヒト、昆虫、または酵母)であり得、任意の手段、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、マイクロインジェクション、形質転換、ウイルス感染、トランスフェクション、リポソーム送達、膜融合技術、高速DNAコーティングペレット、ウイルス感染、およびプロトプラスト融合によって細胞に導入される、外因性DNAまたは異種DNAを含有する。宿主細胞の例としては、単離された細胞、細胞培養、Escherichia coli細胞、酵母細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳類細胞、非哺乳類細胞、昆虫細胞、HEK-293細胞、肝臓細胞、腎臓細胞、中枢神経系細胞、ニューロン、グリア細胞、または幹細胞が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0064】
特定の実施形態では、宿主細胞は、hGAA780Iの産生のための発現カセットを含有し、それによってタンパク質が単離または精製のためにインビトロで十分な量で産生される。特定の実施形態では、宿主細胞は、hGAAV780Iまたはその断片をコードする発現カセットを含有する。本明細書で提供されるように、hGAA780Iは、治療剤(すなわち、酵素補充療法)として対象に投与される医薬組成物に含まれ得る。
【0065】
本明細書で使用される場合、「標的細胞」という用語は、機能的な遺伝子産物の発現が所望される任意の標的細胞を指す。
【0066】
本明細書で使用される場合、「ベクターゲノム」は、ウイルスベクター内にパッケージされる核酸配列を指す。一例では、「ベクターゲノム」は、最低限、5’から3’に向けて、ベクター特異的配列と、標的細胞における発現を指示する調節制御配列に作動可能に連結された機能的遺伝子産物(例えば、hGAAV780I、融合タンパク質hGAAV780I、または別のタンパク質)をコードする核酸配列と、ベクター特異的配列と、任意選択的に、非翻訳領域におけるmiRNA標的配列と、ベクター特異的配列と、を含む。ベクター特異的配列は、ベクターゲノムをウイルスベクターカプシドまたはエンベロープタンパク質に特異的にパッケージングする末端反復配列であり得る。例えば、AAV逆位末端反復は、AAVおよび特定の他のパルボウイルスカプシドにパッケージングするために利用される。レンチウイルスの長い末端反復は、レンチウイルスベクターへのパッキングが所望される場合に利用され得る。同様に、他の末端反復(例えば、レトロウイルス長末端反復)等が選択され得る。
【0067】
本明細書に記載のベクターにおける組成物が、本明細書にわたって記載される他の組成物、レジメン、態様、実施形態、および方法に適用されるように意図されることを理解されたい。
【0068】
アデノ随伴ウイルス(AAV)
一態様では、AAVカプシドと、そこにパッケージングされた本明細書に記載されるhGAAV780I融合タンパク質(酵素)をコードするベクターゲノムと、を含む、組換
えAAV(rAAV)が本明細書に提供される。特定の実施形態では、選択されるAAVカプシドは、肝臓細胞型、筋肉細胞型、腎臓細胞型、心臓細胞型、および/または中枢神経系細胞型のうちの2つ以上の細胞を標的とする。特定の実施形態では、肝臓細胞型、骨格筋細胞型、心臓細胞型、腎臓細胞型、および/または少なくとも1つの中枢神経系細胞型のうちの少なくとも2つ以上においてhGAA780I融合タンパク質を発現することが望ましい。したがって、一実施形態では、選択されたAAVカプシドは、心臓組織を標的とする。特定の実施形態では、心臓組織を標的とするように選択されるAAVカプシドは、AAV1、6、8、および9から選択される(例えば、Katz et al.Hum Gene Ther Clin Dev.2017 Sep 1;28(3):157-164を参照されたい)。さらに他の実施形態では、選択されるAAVカプシドは、腎臓の細胞を標的とする。一実施形態では、腎細胞を標的とするためのカプシドは、AAV1、2、6、8、9、およびAnc80から選択される(例えば、Ikeda Y et al.J Am Soc Nephrol.2018 Sep;29(9):2287-2297、およびAscio et al.Biochem Biophys Res Commun.2018 Feb 26;497(1):19-24を参照されたい)。特定の実施形態では、AAVカプシドは、天然または操作されたクレードFカプシドである。特定の実施形態では、カプシドは、AAV9カプシドまたはAAVhu68カプシドである。
【0069】
一実施形態では、ベクターゲノムは、AAVの5’逆位末端反復(ITR)と、本明細書に記載の発現カセットと、AAVの3’ITRと、を含む。一実施形態では、ベクターゲノムは、rAAVベクターを形成するrAAVカプシド内にパッケージングされる核酸配列を指す。かかる核酸配列は、発現カセットに隣接するAAV逆位末端反復配列(ITR)を含有する。一例では、AAVまたはボカウイルスカプシドにパッケージングするための「ベクターゲノム」は、最低限、5’から3’に向けて、AAVの5’ITRと、標的細胞において発現を指示する調節制御配列に操作可能に連結された本明細書に記載の機能的なhGAA780I融合タンパク質をコードする核酸配列と、AAVの3’ITRと、を含む。特定の実施形態では、ITRは、AAV2由来であり、カプシドは、異なるAAV由来である。あるいは、他のITRが使用され得る。特定の実施形態において、ベクターゲノムは、導入遺伝子の発現が望ましくなく、かつ/または導入遺伝子の発現レベルの低下が所望される、細胞に存在するmiRNA配列によって特異的に認識されるように設計される、非翻訳領域にmiRNA標的配列をさらに含む。
【0070】
ITRは、ベクター生成の際にゲノムの複製およびパッケージングに関与する遺伝子要素であり、rAAVを生成するために必要とされる唯一のウイルスシス要素である。一実施形態では、ITRは、カプシドを供給するのとは異なるAAV由来である。好ましい実施形態では、AAV2由来のITR配列、またはその欠失型(ΔITR)が、利便性のため、および規制承認を速めるために使用され得る。しかしながら、他のAAV供給源に由来するITRが選択され得る。ITRの供給源がAAV2由来であり、AAVカプシドが別のAAV供給源由来である場合、得られるベクターは、擬似型と称され得る。典型的には、AAVベクターゲノムは、AAV5’ITRと、hGAA780Iコード配列と、任意の調節配列と、AAV3’ITRと、を含む。しかしながら、これらの要素の他の構成も好適であり得る。ΔITRと称される5’ITRの短縮型が報告されており、D配列および末端分離部位(trs)が欠失されている。他の実施形態では、全長AAV5’および3’ITRが使用される。
【0071】
本明細書で使用される「AAV」という用語は、天然に存在するアデノ随伴ウイルス、当業者に、かつ/または本明細書に記載の組成物および方法の観点において利用可能であるアデノ随伴ウイルス、ならびに人工AAVを指す。アデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクターは、AAVタンパク質カプシドを有するAAVヌクレアーゼ(例えば、DN
ase)耐性粒子であり、その中にパッケージングされる発現カセットは、標的細胞に送達するためのAAVの逆位末端反復配列(ITR)に隣接している。ヌクレアーゼ耐性組換えAAV(rAAV)は、AAVカプシドが完全に構築されていることを示し、これらのパッケージングされたベクターゲノム配列を、産生プロセスから存在し得る汚染核酸を除去するために設計される、ヌクレアーゼインキュベーション工程の際の分解(消化)から保護する。多くの場合、本明細書に記載のrAAVは、DNase耐性である。
【0072】
AAVカプシドは、60個のカプシド(cap)タンパク質サブユニットであるVP1、VP2、およびVP3からなり、選択されるAAVに応じて、およそ1:1:10~1:1:20の比率で二十面体対称に配置される。様々なAAVが、上記で特定されるAAVウイルスベクターのカプシドの供給源として選択され得る。例えば、米国公開特許出願第2007/0036760A1号、米国公開特許出願第2009/0197338A1号、EP1310571を参照されたい。また、WO2003/042397(AAV7および他のサルAAV)、米国特許第7790449号および米国特許第7282199号(AAV8)、WO2005/033321および米国特許第7,906,111号(AAV9)、ならびにWO2006/110689およびWO2003/042397(rh.10)も参照されたい。また、これらの文書は、AAVを生成するために選択され得、参照により組み込まれる、他のAAVも記載している。ヒトまたは非ヒト霊長類(NHP)から単離または操作され、十分に特徴付けられたAAVのうち、ヒトAAV2は、遺伝子導入ベクターとして開発された最初のAAVであり、異なる標的組織および動物モデルにおける効率的な遺伝子導入実験に広く使用されている。特に明記しない限り、本明細書に記載のAAVカプシド、ITR、および他の選択されるAAV成分は、限定されないが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV8bp、AAV7M8、およびAAVAnc80として一般に特定されているAAVを含む任意のAAVの中から容易に選択され得る。例えば、参照により本明細書に組み込まれるWO2005/033321を参照されたい。一実施形態では、AAVカプシドは、AAV9カプシドまたはそのバリアントである。特定の実施形態では、カプシドタンパク質は、rAAVベクターの名称で「AAV」という用語の後の数値または数値および文字の組み合わせによって指定される。
【0073】
ITRまたは他のAAV成分は、当業者に利用可能な技術を使用して、AAVから容易に単離または操作され得る。かかるAAVは、学術的、商業的、または公的供給源(例えば、American Type Culture Collection,Manassas,VA)から単離、操作、または入手することができる。あるいは、AAV配列は、文献または例えばGenBank、PubMedなどのデータベースで利用可能であるような公開された配列を参照することによって、合成または他の好適な手段を通して操作され得る。AAVウイルスは、従来の分子生物学的な技術によって操作することができ、これらの粒子を、核酸配列の細胞特異的送達のため、免疫原性を最小限に抑えるため、安定性および粒子寿命を調整するため、効率的な分解のため、核への正確な送達のためなどに最適化することを可能にする。
【0074】
本明細書で使用される場合、「rAAV」および「人工AAV」という用語は互換的に使用され、限定されないが、カプシドタンパク質およびそこにパッケージングされるベクターゲノムを含むAAVを意味し、ベクターゲノムは、AAVとは異種の核酸を含む。一実施形態では、カプシドタンパク質は、非天然に存在するプシドである。かかる人工カプシドは、選択されたAAV配列(例えば、vp1カプシドタンパク質の断片)を、同じAAVの非隣接部分である異なる選択されたAAVからか、非AAVウイルス供給源からか、または非ウイルス供給源から得ることができる異種配列と組み合わせて使用して、任意の好適な技術によって生成され得る。人工AAVは、限定されないが、擬似型AAVカプシド、キメラAAVカプシド、組換えAAVカプシド、または「ヒト化」AAVカプシド
であり得る。1つのAAVのカプシドが異種カプシドタンパク質に置き換えられている擬似型ベクターは、特定の実施形態で有用である。一実施形態では、AAV2/5およびAAV2/8は、例示的な擬似型ベクターである。選択される遺伝子要素は、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポソーム送達、膜融合技術、高速DNAコーティングペレット、ウイルス感染、およびプロトプラスト融合を含む任意の好適な方法によって送達され得る。かかる構築物を作製するために使用される方法は、核酸操作における技術者に既知であり、遺伝子工学、組換え工学、および合成技術が含まれる。例えば、Green and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(2012)を参照されたい。
【0075】
特定の実施形態では、AAVカプシドは、天然および操作されたクレードFアデノ随伴ウイルスの中から選択される。以下の実施例では、クレードFアデノ随伴ウイルスは、AAVhu68である。WO2018/160582を参照されたく、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。しかしながら、他の実施形態では、AAVカプシドは、異なるクレード、例えば、クレードA、B、C、D、もしくはEから、またはこれらのクレードのいずれかからも外れたAAV供給源から選択される。
【0076】
本明細書で使用される場合、AAVの群に関連する「クレード」という用語は、互いに系統的に関連するAAVの群を指し、AAV vp1アミノ酸配列の整列に基づいて、少なくとも75%のブートストラップ値(bootstrap value)(少なくとも1000複製のうち)および0.05以下のポアソン補正距離測定値(Poisson correction distance measurement)による隣接結合アルゴリズム(Neighbor-Joining algorithm)を使用して決定される。隣接結合アルゴリズムは、文献に記載されている。例えば、M.Nei and
S.Kumar,Molecular Evolution and Phylogenetics (Oxford University Press,New York
(2000)を参照されたい。このアルゴリズムを実行するために使用することができコンピュータプログラムが利用可能である。例えば、MEGA v2.1プログラムは、修正Nei-Gojobori法を実行する。これらの技術およびコンピュータプログラム、ならびにAAV vp1カプシドタンパク質の配列を使用して、当業者は、選択されたAAVが、本明細書で特定されるクレードのうちの1つに含まれるか、別の系統群に含まれるか、またはこれらのクレード外にあるかを容易に決定することができる。例えば、G Gao,et al,J Virol,2004 Jun;7810:6381-6388,which identifies Clades A,B,C,D,E and F,and provides nucleic acid sequences of novel AAV,GenBank Accession Numbers AY530553 to AY530629を参照されたい。また、WO2005/033321も参照されたい。
【0077】
本明細書で使用される場合、「AAV9カプシド」は、(a)参照により本明細書に組み込まれるGenBank登録:AAS99264、およびAAV vp1カプシドタンパク質、ならびに/または(b)GenBank登録:AY530579.1:(nt 1..2211)のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列、のアミノ酸配列を有するAAV9を指す。このコード配列からのいくつかの変化は、本発明によって包含され、GenBank登録:AAS99264およびUS7906111(同様に、WO2005/033321)における参照アミノ酸配列と約99%同一性を有する配列を含み得る(すなわち、参照配列からの約1%未満の変化)。かかるAAVは、例えば、天然単離物(例えば、hu31もしくはhu32)、またはアミノ酸置換、欠失、もしくは付加を有するAAV9のバリアントを含み得、例えば、限定されないが、アミノ酸置換は
、AAV9カプシドと整列された任意の他のAAVカプシドにおける対応する位置から「補充された」代替的な残基から選択されるアミノ酸置換を含み、例えば、US9,102,949、US8,927,514、US2015/349911、WO2016/049230A1、US9,623,120、およびUS9,585,971に記載されているものなどが挙げられる。しかし、他の実施形態では、AAV9の他のバリアント、または上記の参照配列に少なくとも約95%同一性を有するAAV9カプシドが選択され得る。例えば、US2015/0079038を参照されたい。カプシド、したがってコーディング配列を生成する方法、およびrAAVウイルスベクターの産生のための方法が報告されている。例えば、Gao,et al,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100(10),6081-6086(2003)およびUS2013/0045186A1を参照されたい。
【0078】
特定の実施形態では、AAVhu68カプシドは、「Novel Adeno-associated virus (AAV)Clade F Vector and Uses Therefor」と題されるWO2018/160582に記載される通りであり、参照により本明細書に組み込まれる。特定の実施形態では、AAVhu68カプシドタンパクは、配列番号2の1~736の予測アミノ酸配列をコードする核酸配列からの発現によって産生されるAAVhu68 vp1タンパク質、配列番号2から産生されるvp1タンパク質、もしくは配列番号2の1~736の予測アミノ酸配列をコードする配列番号1と少なくとも70%同一の核酸配列から産生されるvp1タンパク質;配列番号2の少なくとも約アミノ酸138~736の予測アミノ酸配列をコードする核酸配列からの発現によって産生されるAAVhu68 vp2タンパク質、配列番号1の少なくともヌクレオチド412~2211を含む配列から産生されるvp2タンパク質、もしくは配列番号2の少なくとも約アミノ酸138~736の予測アミノ酸配列をコードする配列番号1の少なくともヌクレオチド412~2211と少なくとも70%同一の核酸配列から産生されるvp2タンパク質;および/または配列番号2の少なくとも約アミノ酸203~736の予測アミノ酸配列をコードする核酸配列からの発現によって産生されるAAVhu68 vp3タンパク質、配列番号1の少なくともヌクレオチド607~2211を含む配列から産生されるvp3タンパク質、もしくは配列番号2の少なくとも約アミノ酸203~736の予測アミノ酸配列をコードする配列番号1の少なくともヌクレオチド607~2211と少なくとも70%同一の核酸配列から産生されるvp3タンパク質を含む。
【0079】
AAVhu68 vp1、vp2、およびvp3タンパク質は、典型的には、配列番号2の全長vp1アミノ酸配列(アミノ酸1~736)をコードする同じ核酸配列によってコードされる代替的スプライシングバリアントとして発現される。任意選択的に、vp1コード配列は単独で使用されて、vp1、vp2、およびvp3タンパク質を発現する。あるいは、この配列は、配列番号2のAAVhu68vp3アミノ酸配列(約aa203~aa736)をvp1固有領域(約aa1~約aa137)および/もしくはvp2固有領域(約aa1~約aa202)を有せずにコードする核酸配列またはそれに相補的な鎖、対応するmRNA(配列番号1の約nt607~約nt2211)、あるいは配列番号2のaa203~736をコードする配列番号1と少なくとも70%~少なくとも99%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%)同一の配列のうちの1つ以上と共発現され得る。追加的に、または代替的に、vp1コード配列および/またはvp2コード配列は、配列番号2のAAVhu68 vp2アミノ酸配列(約aa138~736)をvp1固有領域(約aa1~約137)を有せずにコードする核酸配列またはそれに相補的な鎖、対応するmRNA(配列番号1のnt412~2211)、または配列番号2の約aa138~736をコードする配列番号1のnt412~2211と少なくとも70%~少なくとも99%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95
%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%)同一の配列と、共発現され得る。
【0080】
本明細書に記載されるように、rAAVhu68は、配列番号2のvp1アミノ酸配列をコードするAAVhu68核酸、および任意選択的に、追加の核酸配列、例えば、vp1および/またはvp2固有領域を含まないvp3タンパク質をコードする配列、からカプシドを発現する産生システムで産生されるrAAVhu68カプシドを有する。単一の核酸配列vp1を使用した産生から得られるrAAVhu68は、vp1タンパク質、vp2タンパク質、およびvp3タンパク質の異種集団を産生する。より特定的には、AAVhu68カプシドは、配列番号2の予測アミノ酸残基からの改変を有する、vp1タンパク質内、vp2タンパク質内、およびvp3タンパク質内に亜集団を含有する。これらの亜集団は、最低限、脱アミド化アスパラギン(NまたはAsn)残基を含む。例えば、アスパラギン-グリシン対におけるアスパラギンは、高度に脱アミド化される。
【0081】
一実施形態では、AAVhu68 vp1核酸配列は、配列番号1の配列、またはそれに相補的な鎖、例えば、対応するmRNAを有する。特定の実施形態では、vp2および/またはvp3タンパク質は、追加的または代替的に、例えば、選択された発現系においてvpタンパク質の比を変化させるために、vp1とは異なる核酸配列から発現され得る。特定の実施形態では、配列番号2のAAVhu68vp3アミノ酸配列(約aa203~736)をvp1固有領域(約aa1~約aa137)および/またはvp2固有領域(約aa1~約aa202)を有せずにコードする核酸配列、あるいはそれに相補的な鎖、対応するmRNA(配列番号2の約nt607~約nt2211)も提供される。特定の実施形態では、配列番号2のAAVhu68vp2アミノ酸配列(約aa138~736)をvp1固有領域(約aa1~約137)を有せずにコードする核酸配列、またはそれに相補的な鎖、対応するmRNA(配列番号1のnt412~2211)も提供される。
【0082】
しかしながら、配列番号2のアミノ酸配列をコードする他の核酸配列が、rAAVhu68カプシドの産生に使用するために選択され得る。特定の実施形態では、核酸配列は、配列番号1の核酸配列、または配列番号2をコードする配列番号1と少なくとも70%~99%同一、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列をする。特定の実施形態では、核酸配列は、配列番号1の核酸配列、または配列番号2のvp2カプシドタンパク質(約aa138~736)をコードする配列番号1の約nt412~約nt2211と少なくとも70%~99%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも99%同一の配列を有する。特定の実施形態では、核酸配列は、配列番号1の約nt607~約nt2211の核酸配列、または配列番号1のvp3カプシドタンパク質(約aa203~736)をコードする配列番号1のnt412~約nt2211と少なくとも70%~99%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を有する。
【0083】
DNA(ゲノムまたはcDNA)、またはRNA(例えば、mRNA)を含む、このAAVhu68カプシドをコードする核酸配列を設計することは、当該技術分野の範囲内である。特定の実施形態では、AAVhu68 vp1カプシドタンパク質をコードする核酸配列は、配列番号2に提供される。特定の実施形態では、AAVhu68カプシドは、配列番号1の核酸配列、または本明細書に記載の修飾(例えば、脱アミド化アミノ酸)を有する配列番号2のvp1アミノ酸配列をコードする少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも99%の配列を使用して産生される。特定の実施形態
では、vp1アミノ酸配列は、配列番号2に再現される。
【0084】
特定の実施形態では、カプシド脱アミド化が減少しているAAVカプシドが選択され得る。例えば、ともに2019年2月27日に出願され、それらの全体が参照により組み込まれる、PCT/US19/19804およびPCT/US18/19861を参照されたい。
【0085】
本明細書で使用される場合、vpカプシドタンパク質を指すために使用されるとき、「異種」という用語またはその任意の文法的変形は、例えば、異なる改変アミノ酸配列を有するvp1、vp2、またはvp3モノマー(タンパク質)を有する、同じではない要素からなる集団を指す。配列番号2は、AAVhu68 vp1タンパク質のコードされたアミノ酸配列を提供する。vp1、vp2、およびvp3タンパク質(あるいは、アイソフォームと称される)に関連して使用される「異種」という用語は、カプシド内のvp1、vp2、およびvp3タンパク質のアミノ酸配列における違いを指す。AAVカプシドは、予測アミノ酸残基の改変を有する、vp1タンパク質内、vp2タンパク質内、およびvp3タンパク質内に亜集団を含む。これらの亜集団は、最低限、特定の脱アミド化アスパラギン(NまたはAsn)残基を含む。例えば、特定の亜集団は、アスパラギン-グリシン対における少なくとも1つ、2つ、3つ、または4つの高度に脱アミド化されたアスパラギン(N)位置を含み、任意選択的に他の脱アミド化アミノ酸をさらに含み、脱アミド化は、アミノ酸変化および他の任意選択的な修飾をもたらす。
【0086】
本明細書で使用される場合、vpタンパク質の「亜集団」は、別途指定されない限り、少なくとも1つの定義された特徴を共通して有し、参照群のすべてのメンバーよりも少ない、少なくとも1つの群メンバーからなるvpタンパク質の群を指す。例えば、vp1タンパク質の「亜集団」は、別途指定されない限り、組み立てられたAAVカプシドにおける、少なくとも1つの(1)vp1タンパク質であり、すべてのvp1タンパク質よりも少ない。Vp3タンパク質の「亜集団」は、別途指定されない限り、組み立てられたAAVカプシドにおける1つ(1)vp3タンパク質~全vp3タンパク質未満であり得る。例えば、組み立てられたAAVカプシドにおいて、vp1タンパク質は、vpタンパク質の亜集団であり得、vp2タンパク質は、vpタンパク質の別の亜集団であり得、vp3はなお、vpタンパク質のさらなる亜集団である。別の例では、vp1、vp2、およびvp3タンパク質は、例えば、少なくとも1つ、2つ、3つ、または4つの高度脱アミド化アスパラギン、例えば、アスパラギン-グリシン対における異なる修飾を有する亜集団を含み得る。
【0087】
別途指定されない限り、高度脱アミド化は、予測アミノ酸配列と参照アミノ酸位置で比較して、参照アミノ酸位置で少なくとも45%の脱アミド化、少なくとも50%の脱アミド化、少なくとも60%の脱アミド化、少なくとも65%の脱アミド化、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または最大約100%の脱アミド化を指す(例えば、配列番号2[AAVhu68]の番号付けに基づいてアミノ酸57で少なくとも80%のアスパラギンが、総vp1タンパク質に基づいて脱アミド化され得、総vp1、vp2、およびvp3タンパク質に基づいて脱アミド化され得る)。かかる割合は、2Dゲル、質量分析技術、または他の好適な技術を使用して決定され得る。
【0088】
したがって、rAAVは、少なくとも1つの高度脱アミド化アスパラギンを含む少なくとも1つの亜集団を最低限含む、脱アミド化アミノ酸を有するvp1、vp2、および/またはvp3タンパク質のrAAVカプシド内の亜集団を含む。さらに、他の修飾は、特に、選択されたアスパラギン酸(DまたはAsp)残基位置での異性化を含み得る。さらに他の実施形態では、修飾は、Asp位置でのアミド化を含み得る。
【0089】
特定の実施形態では、AAVカプシドは、少なくとも4~少なくとも約25の脱アミド化アミノ酸残基位置を有するvp1、vp2、およびvp3の亜集団を含み、そのうちの少なくとも1~10%は、vpタンパク質のコードされたアミノ酸配列と比較して脱アミド化される。これらの大部分は、N残基であり得る。しかしながら、Q残基も脱アミド化され得る。
【0090】
特定の実施形態では、rAAVは、実施例1に提供され、参照により本明細書に組み込まれる表に示される位置に、2つ、3つ、4つ以上の脱アミド化残基の組み合わせを含む亜集団を有するvp1、vp2およびvp3タンパク質を有するAAVカプシドを有する。rAAVの脱アミド化は、2Dゲル電気泳動、および/または質量分析、および/またはタンパク質モデリング技術を使用して決定され得る。オンラインクロマトグラフィーは、PepMapカラムおよびNanoFlex源(Thermo Fisher Scientific)を備えたQ Exactive HFに接続されたAcclaim Thermo UltiMate 3000 RSLCシステム(Thermo Fisher Scientific)で実行され得る。MSデータは、Q Exactive HFのデータ依存性Top-20法を使用して取得され、最も豊富な未配列決定前駆体イオンをサーベイスキャン(200~2000m/z)から動的に選択する。配列決定は、予測的自動ゲイン制御で決定された1e5イオンの標的値で、より高いエネルギー衝突解離断片化を介して行い、前駆体の単離を4m/zのウィンドウで行った。サーベイスキャンは、m/z200で120,000の解像度で取得した。HCDスペクトルの解像度は、最大イオン注入時間が50ms、正規化された衝突エネルギーが30によるm/z200で30,000に設定され得る。S-レンズRFレベルを50に設定して、消化物からのペプチドによって占められるm/z領域の透過率を最適化し得る。前駆体イオンは、単一か、割り当てられていないか、または断片化選択から6以上の電荷状態で除外され得る。BioPharma Finder 1.0ソフトウェア(Thermo Fischer Scientific)が、取得したデータの分析に使用され得る。ペプチドマッピングのために、検索は、固定変更としてカルバミドメチル化設定された単一エントリのタンパク質FASTAデータベース、可変修飾として酸化、脱アミド、およびリン酸化の設定、10ppm質量精度、高プロテアーゼ特異性、ならびにMS/MSスペクトルにおける信頼レベル0.8を使用して実施する。好適なプロテアーゼの例としては、例えば、トリプシンまたはキモトリプシンが含まれ得る。脱アミド化ペプチドの質量分析的同定は、脱アミド化がインタクト分子の質量+0.984Da(-OHおよび-NH2基の質量差)を加えるので、比較的簡単である。特定のペプチドの脱アミド化率は、脱アミド化ペプチドの質量面積を、脱アミド化およびネイティブペプチドの面積の合計で除することによって決定される。脱アミド化の可能性がある部位の数を考慮すると、異なる部位で脱アミド化されている同重種は、単一のピークで共移動し得る。したがって、脱アミド化の可能性がある複数の部位を有するペプチドに由来する断片イオンを使用して、複数の脱アミド部位を特定または区別することができる。これらの例では、観察された同位体パターン内の相対強度を使用して、異なる脱アミド化ペプチド異性体の相対的な量を特異的に決定することができる。この方法は、すべての異性体種についての断片化効率が同じであり、脱アミド化部位に依存しないことを想定する。これらの例示的な方法について多くの変化が使用され得ることは、当業者によって理解されるであろう。例えば、好適な質量分析装置は、例えば、Waters XevoもしくはAgilent 6530などの四重極飛行型質量分析装置(QTOF)、またはOrbitrap FusionもしくはOrbitrap Velos(Thermo Fisher)などのオービトラップ装置を含み得る。好適な液体クロマトグラフィーシステムには、例えば、WatersのAcquity UPLCシステムまたはAgilentシステム(1100または1200シリーズ)が含まれる。好適なデータ分析ソフトウェアには、例えば、MassLynx(Waters)、PinpointおよびPepfinder(Thermo Fisc
her Scientific)、Mascot(Matrix Science)、Peaks DB(Bioinformatics Solutions)が含まれ得る。さらに他の技法は、例えば、2017年6月16日にオンラインで公開されたX.Jin
et al,Hu Gene Therapy Methods,Vol.28,No.5,pp.255-267に記載され得る。
【0091】
脱アミド化に加えて、他の修飾が生じても、1つのアミノ酸が異なるアミノ酸残基に変換されることはない。かかる修飾は、アセチル化残基、異性化、リン酸化、または酸化を含み得る。
【0092】
脱アミド化の調節:特定の実施形態では、AAVは、アスパラギン-グリシン対におけるグリシンを変更して、脱アミド化を低減するように改変される。他の実施形態では、アスパラギンは、異なるアミノ酸、例えば、より遅い速度で脱アミド化するグルタミンに、またはアミド基を欠くアミノ酸(例えば、アミド基を含むグルタミンおよびアスパラギン)、および/またはアミン基を欠くアミノ酸(例えば、アミン基を含むリジン、アルギニン、およびヒスチジン)に変更される。本明細書で使用される場合、アミドまたはアミン側基を欠くアミノ酸は、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、シスチン、フェニルアラニン、チロシン、もしくはトリプトファン、および/またはプロリンを指す。記載されるような改変は、コードされたAAVアミノ酸配列に認められるアスパラギン-グリシン対のうちの1つ、2つ、または3つであり得る。特定の実施形態では、かかる改変は、アスパラギン-グリシン対の4つすべてでは行われない。したがって、AAVおよび/または操作されたAAVバリアントの脱アミドを低減するための方法は、より低い脱アミド率を有する。加えて、または代替え的に、1つ以上の他のアミドアミノ酸を非アミドアミノ酸に変更して、AAVの脱アミド化を低減し得る。特定の実施形態では、本明細書に記載される変異AAVカプシドは、グリシンがアラニンまたはセリンに変更されるように、アスパラギン-グリシン対における変異を含む。変異AAVカプシドは、参照AAVが天然に4つのNG対を含む位置に、1つ、2つ、または3つの変異を含み得る。特定の実施形態では、AAVカプシドは、参照AAVが天然に5つのNG対を含む位置に、1つ、2つ、3つ、または4つのかかる変異を含み得る。特定の実施形態では、変異AAVカプシドは、NG対に単一の変異のみを含む。特定の実施形態では、変異AAVカプシドは、2つの異なるNG対に変異を含む。特定の実施形態では、変異AAVカプシドは、AAVカプシド中で構造的に離れて位置する2つの異なるNG対に変異を含む。特定の実施形態では、変異は、VP1固有領域にはない。特定の実施形態では、変異のうちの1つは、VP1固有領域にある。任意選択的に、変異AAVカプシドは、NG対中に改変を含まないが、NG対から外れて位置する1つ以上のアスパラギンまたはグルタミン中の脱アミド化を最小化または排除するために変異を含む。AAVhu68カプシドタンパク質において、4つの残基(N57、N329、N452、N512)は、様々なロットにわたって>70%の脱アミド化レベルを日常的に示し、ほとんどの場合、>90%である。さらなるアスパラギン残基(N94、N253、N270、N304、N409、N477、およびQ599)も、様々なロットにわたって最大約20%の脱アミドレベルを示す。脱アミド化レベルは、最初にトリプシン消化を使用して特定され、キモトリプシン消化で検証された。
【0093】
AAVhu68カプシドは、配列番号2の予測アミノ酸残基からの改変を有する、vp1タンパク質内、vp2タンパク質内、およびvp3タンパク質内に亜集団を含む。これらの亜集団は、最低限、特定の脱アミド化アスパラギン(NまたはAsn)残基を含む。例えば、特定の亜集団は、配列番号2におけるアスパラギン-グリシン対に少なくとも1つ、2つ、3つ、または4つの高度に脱アミド化されたアスパラギン(N)位置を含み、任意選択的に他の脱アミド化アミノ酸をさらに含み、脱アミド化は、アミノ酸変化および他の任意選択的な修飾をもたらす。これらおよび他の改変の様々な組み合わせは、本明細
書に記載されている。
【0094】
特定の実施形態では、本明細書に記載されるrAAVは、自己相補的AAVである。「自己相補的AAV」は、組換えAAV核酸配列によって有されるコーディング領域が、分子内二本鎖DNA鋳型を形成するように設計されている構築物を指す。感染時には、第2の鎖の細胞媒介性合成を待つのではなく、scAAVの2つの相補的な片割れが会合して、即時の複製および転写に備える1つの二本鎖DNA(dsDNA)ユニットを形成する。例えば、D M McCarty et al,“Self-complementary recombinant adeno-associated virus (scAAV)vectors promote efficient transduction independently of DNA synthesis”,Gene
Therapy,(August 2001),Vol 8,Number 16,Pages 1248-1254を参照されたい。自己相補的AAVは、例えば、米国特許第6,596,535号、第7,125,717号、および第7,456,683号に記載されており、その各々が参照によりそのすべてが本明細書に組み込まれる。
【0095】
本明細書に記載の組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)は、既知である技術を使用して生成され得る。例えば、WO2003/042397、WO2005/033321、WO2006/110689、US7588772B2を参照されたい。かかる方法は、AAVカプシドをコードする核酸配列と、機能的rep遺伝子と、AAV逆位末端配列(ITR)に隣接する本明細書に記載の発現カセットと、発現カセットをAAVカプシドタンパク質にパッケージングすることを可能にするように機能する適切なヘルパーと、を含有する宿主細胞を培養することを含む。また、AAVカプシドをコードする核酸配列と、機能的rep遺伝子と、記載のベクターゲノムと、ベクターゲノムをAAVカプシドタンパク質にパッケージングすることを可能にするように機能する適切なヘルパーと、を含有する宿主細胞も本明細書に提供される。一実施形態では、宿主細胞は、HEK293細胞である。これらの方法は、参照により本明細書に組み込まれるWO2017/160360A2にさらに詳細に記載されている。
【0096】
当業者に利用可能なrAAVを生成する他の方法が利用され得る。好適な方法としては、バキュロウイルス発現系または酵母を介した生成が挙げられ得るが、これらに限定されない。例えば、Robert M.Kotin,Large-scale recombinant adeno-associated virus production.Hum Mol Genet.2011 Apr 15;20(R1):R2-R6.Published online 2011 Apr 29.doi:10.1093/hmg/ddr141、Aucoin MG et al.,Production of adeno-associated viral vectors in insect cells using triple infection:optimization of baculovirus concentration ratios.Biotechnol Bioeng.2006 Dec 20;95(6):1081-92、SAMI S.THAKUR,Production of Recombinant Adeno-associated viral vectors in yeast.Thesis presented to the Graduate School of the University of Florida,2012、Kondratov O et al.Direct Head-to-Head Evaluation of Recombinant Adeno-associated Viral Vectors Manufactured in Human versus Insect Cells,Mol Ther.2017 Aug 10.pii:S1525-0016(17)30362-3.doi:10.1016/j.ymthe.2017.08.003.[Epub ahead of print]、Mie
tzsch M et al,OneBac 2.0:Sf9 Cell Lines for Production of AAV1,AAV2,and AAV8 Vectors with Minimal Encapsidation of Foreign DNA.Hum Gene Ther Methods.2017 Feb;28(1):15-22.doi:10.1089/hgtb.2016.164、Li L
et al.Production and characterization of novel recombinant adeno-associated virus replicative-form genomes:a eukaryotic
source of DNA for gene transfer.PLoS One.2013 Aug 1;8(8):e69879.doi:10.1371/journal.pone.0069879.Print 2013、Galibert L et al,Latest developments in the large-scale production of adeno-associated virus vectors in insect cells toward the treatment of neuromuscular diseases.J Invertebr Pathol.2011 Jul;107 Suppl:S80-93.doi:10.1016/j.jip.2011.05.008、およびKotin RM,Large-scale recombinant adeno-associated
virus production.Hum Mol Genet.2011 Apr
15;20(R1):R2-6.doi:10.1093/hmg/ddr141.Epub 2011 Apr 29を参照されたい。
【0097】
高塩濃度での2ステップアフィニティクロマトグラフィー精製、続いて、アニオン交換樹脂クロマトグラフィーを使用して、ベクター薬物生成物を精製し、空カプシドを除去する。これらの方法は、「Scalable Purification Method for AAV9」と題するWO2017/160360により詳細が記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。簡単に説明すると、パッケージングされたゲノム配列を有するrAAV9粒子をゲノム欠損AAV9中間体から分離するための方法は、組換えAAV9ウイルス粒子およびAAV9カプシド中間体を含む懸濁液を高速液体クロマトグラフィーに供することを含み、このときAAV9ウイルス粒子およびAAV9中間体は、10.2のpHで平衡化された強アニオン交換樹脂に結合され、約260および約280の紫外吸光度で溶離液をモニタリングしながら塩勾配に供される。rAAV9には最適未満であるが、pHは約10.0~10.4の範囲であってもよい。この方法では、AAV9全カプシドは、A260/A280の比が変曲点に達するときに溶離される画分から収集される。一例では、アフィニティクロマトグラフィーステップのために、透析濾過された生成物を、AAV2/9血清型を効率的に捕捉するCapture Select(商標)Poros-AAV2/9アフィニティ樹脂(Life Technologies)に適用し得る。これらのイオン条件下、著しい割合の残留細胞DNAおよびタンパク質が、カラムを通って流れ、一方、AAV粒子は効率的に捕捉される。
【0098】
rAAVの特徴付けまたは定量化のための従来の方法は、当業者に利用可能である。空粒子および完全粒子の含有量を算出するために、選択された試料(例えば、本明細書の実施例では、イオジキサノール勾配-精製された調製物、ここで、GCの数=粒子の数)におけるVP3バンド体積が、ロードされたGC粒子に対してプロットされる。得られた線形方程式(y=mx+c)を使用して、試験品ピークのバンド体積中の粒子数を計算する。次いで、ロードされた20μL当たりの粒子の数(pt)に50を乗じて、粒子(pt)/mLを得る。pt/mLをGC/mLで除することによって、ゲノムコピーに対する粒子の比(pt/GC)を得る。pt/mL-GC/mLは、空のpt/mLを与える。空pt/mLをpt/mLで除し、×100によって空粒子のパーセンテージを得る。一般に、空カプシドおよびパッケージされたゲノムを有するAAVベクター粒子に関するア
ッセイ方法は、当該分野において周知である。例えば、Grimm et al.,Gene Therapy(1999)6:1322-1330;Sommer et al.,Molec.Ther.(2003)7:122 -128を参照されたい。変性したカプシドについて試験するために、方法には、例えば、緩衝液中に3~8%のTris-酢酸を含有する勾配ゲルなどの3つのカプシドタンパク質を分離することができる任意のゲルからなるSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動に処理済みAAVストックを供することと、次いで、試料材料が分離されるまでゲルをランさせることと、ゲルをナイロンまたはニトロセルロースメンブレン、好ましくは、ナイロンにゲル上にブロッティングすることと、を含む。次いで、抗AAVカプシド抗体を、変性したカプシドタンパク質に結合する一次抗体として、好ましくは、抗AAVカプシドモノクローナル抗体、最も好ましくは、B1抗AAV-2モノクローナル抗体(Wobus et al.,J.Viral.(2000)74:9281-9293)を使用する。次いで二次抗体を使用し、これは一次抗体に結合し、一次抗体との結合を検出するための手段を含み、より好ましくは、共有結合された検出分子を含む抗IgG抗体、最も好ましくは、ホースラディッシュペルオキシダーゼと共有結合されたヒツジ抗マウスIgG抗体を使用する。結合を検出するための方法が、一次と二次抗体との間の結合を半定量的に決定するために使用され、好ましくは、放射性同位元素放射、電磁放射、または発色変化を検出することができる検出方法、最も好ましくは、化学発光検出キットが使用される。例えば、SDS-PAGEでは、カラム画分から試料を得て、還元剤(例えば、DTT)を含有するSDS-PAGEロード緩衝液中で加熱し、カプシドタンパク質をプレキャスト勾配ポリアクリルアミドゲル(例えば、Novex)で分離した。銀染色は、SilverXpress(Invitrogen、CA)を製造業者の説明書に従って使用して、あるいは他の適切な染色方法、すなわち、SYPROルビーまたはクマシー染色を使用して実施され得る。一実施形態では、カラム画分中のAAVベクターゲノム(vg)の濃度は、定量的リアルタイムPCR(Q-PCR)によって測定することができる。試料は希釈し、DNase I(または別の適切なヌクレアーゼ)で消化して、外因性DNAを除去する。ヌクレアーゼの不活化後、試料をさらに希釈して、プライマーおよびプライマー間のDNA配列に特異的なTaqMan(商標)蛍光発生プローブを使用して増幅される。所定レベルの蛍光(閾値サイクル、Ct)に到達するのに必要とされるサイクル数が、Applied Biosystems Prism 7700配列検出システムで各試料について測定される。AAVベクター中に含有されるものと同一の配列を含有するプラスミドDNAを利用して、Q-PCR反応における標準曲線を作成する。試料から得られたサイクル閾値(Ct)値を使用して、それをプラスミド標準曲線のCt値に対して基準化することによって、ベクターゲノム力価を決定する。デジタルPCRに基づくエンドポイントアッセイも使用することができる。
【0099】
一態様では、広域スペクトル血清プロテアーゼ、例えば、プロテアーゼK(例えば、Qiagenから購入可能)を利用する最適化q-PCR方法が使用される。より具体的には、最適化qPCRゲノム力価アッセイは、DNase I消化後である以外は標準アッセイと同様であり、試料をプロテアーゼK緩衝液で希釈し、プロテアーゼKで処理し、続いて、熱不活性化処理する。好適には、試料は、試料サイズと等しい量のプロテアーゼK緩衝液で希釈される。プロテアーゼK緩衝液は、2倍以上に濃縮され得る。典型的に、プロテアーゼK処理は、約0.2mg/mLであるが、0.1mg/mL~約1mg/mLで変動し得る。処理ステップは、一般に、約55℃で約15分間実施されるが、より低い温度(例えば、約37℃~約50℃)でより長時間(例えば、約20分間~約30分間)、またはより高い温度(例えば、最高約60℃)でより短時間(例えば、約5~10分間)で実施され得る。同様に、熱不活性化は、一般に、約95℃で約15分間であるが、温度を下げて(例えば、約70~約90℃)、時間を延長し得る(例えば、約20分間~約30分間)。次いで、試料は希釈され(例えば、1000倍)、標準アッセイに記載されるように、TaqMan分析に供される。
【0100】
追加的または代替的に、液滴デジタルPCR(ddPCR)が使用され得る。例えば、ddPCRによる一本鎖および自己相補的AAVベクターゲノム力価を測定するための方法が報告されている。例えば、M.Lock et al,Hu Gene Therapy Methods,Hum Gene Ther Methods.2014 Apr;25(2):115-25.doi:10.1089/hgtb.2013.131.Epub 2014 Feb 14を参照されたい。
【0101】
カプシドタンパク質のvp1、vp2、およびvp3間の比率を決定する方法も利用可能である。例えば、Vamseedhar Rayaprolu et al,Comparative Analysis of Adeno-Associated Virus Capsid Stability and Dynamics,J Virol.2013 Dec;87(24):13150-13160、Buller RM,Rose JA.1978.Characterization of adenovirus-associated virus-induced polypeptides
in KB cells.J.Virol.25:331-338、およびRose JA,Maizel JV,Inman JK,Shatkin AJ.1971.Structural proteins of adenovirus-associated viruses.J.Virol.8:766-770を参照されたい。
【0102】
本明細書に記載のrAAVにおける組成物が、本明細書にわたって記載される他の組成物、レジメン、態様、実施形態、および方法に適用されるように意図されることを理解されたい。
【0103】
医薬組成物
hGAA780I融合タンパク質、またはhGAA780I融合タンパク質導入遺伝子を含む発現カセットを含む医薬組成物は、液体懸濁液、凍結乾燥もしくは凍結組成物、または別の好適な配合物であり得る。特定の実施形態では、組成物は、hGAA780I融合タンパク質または発現カセットと、懸濁液を形成する生理学的に適合する液体(例えば、溶液、希釈剤、担体)と、を含む。かかる液体は、好ましくは水性ベースであり、1つ以上の緩衝剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、または他の好適な賦形剤を含み得る。好適な成分が以下でより詳細に考察される。医薬組成物は、水性懸濁液および任意の選択された賦形剤、ならびにhGAA780I融合タンパク質または発現カセットを含む。
【0104】
特定の実施形態では、医薬組成物は、導入遺伝子を含む発現カセットおよび非ウイルス送達システムを含む。これには、例えば、裸のDNA、裸のRNA、無機粒子、脂質または脂質様粒子、キトサンベースの配合物、および当該技術分野で既知で、例えば、上記で引用されるRamamoorth and Narvekarによって記載されている他のものが含まれ得る。他の実施形態では、医薬組成物は、ウイルスベクター系において操作された導入遺伝子を含む発現カセットを含む懸濁液である。特定の実施形態では、医薬組成物は、非複製ウイルスベクターを含む。好適なウイルスベクターには、例えば、組換えアデノウイルス、組換えレンチウイルス、組換えボカウイルス、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)、または別の組換えパルボウイルスなどの任意の好適な送達ベクターが含まれ得る。特定の実施形態では、ウイルスベクターは、それを必要とする患者に遺伝子産物を送達するための組換えAAVである。
【0105】
一実施形態では、医薬組成物は、hGAA780I融合タンパク質、またはhGAA780I融合タンパク質のコード配列を含む発現カセットと、脳室内(ICV)、髄腔内(IT)、大槽内、または静脈内(IV)注入を介した送達に好適な製剤緩衝液と、を含む。一実施形態では、発現カセットは、ベクターゲノムパッケージング化組換えウイルスベ
クター(すなわち、融合タンパク質を担持するrAAV.hGAA780I)の一部である。
【0106】
一実施形態では、医薬組成物は、酵素補充療法(ERT)として対象に送達するために、hGAA780I融合タンパク質またはその機能性断片を含む。かかる医薬組成物は、通常、静脈内投与されるが、いくつかの状況では、皮内、筋肉内、または経口投与も可能である。組成物は、ポンペ病に罹患しているか、またはポンペ病のリスクがある個体の予防的治療のために投与することができる。治療適用のために、医薬組成物は、確立された疾患に罹患している患者に、蓄積した代謝産物の濃度を減少させ、かつ/または代謝産物のさらなる蓄積を防止もしくは阻止するのに十分な量で投与される。リソソーム酵素欠乏症のリスクがある個体について、医薬組成物は、代謝産物の蓄積を防止または阻害するのに十分な量で予防的に投与される。本明細書に記載の改変GAA組成物は、治療有効量で投与される。概して、治療有効量は、対象における医学的状態の重症度、ならびに対象の年齢、一般的状態、および性別に応じて変化し得る。投薬量は、医師によって決定され得、観察された治療の効果に適するように、必要に応じて調整することができる。一態様では、hGAA780I融合タンパク質、またはその機能的断片の単位用量を含有するように配合されるERTのための医薬組成物が、本明細書に提供される。
【0107】
一実施形態では、組成物は、対象への送達に適した最終配合物を含み、例えば、生理的に適合するpHおよび塩濃度に緩衝化される水性液体懸濁液である。任意選択的に、1つ以上の界面活性剤が配合物中に存在する。別の実施形態では、組成物は、対象への投与のために希釈される濃縮物として輸送され得る。他の実施形態では、組成物は、凍結乾燥され、投与時に再構成され得る。
【0108】
一実施形態では、本明細書に提供される組成物は、水性懸濁液中に溶解される界面活性剤、防腐剤、賦形剤、および/または緩衝剤を含む。一実施形態では、緩衝液は、PBSである。別の実施形態では、緩衝液は、人工脳脊髄液(aCSF)、例えば、エリオット製剤緩衝液、またはハーバード装置灌流液(最終イオン濃度を有する人口CSF(mM):Na 150、K 3.0、Ca 1.4、Mg 0.8、P 1.0、Cl 155)である。様々な好適な溶液が既知であり、緩衝化生理食塩水、界面活性剤、約100mMの塩化ナトリウム(NaCl)~約250mMの塩化ナトリウムに相当にイオン強度に調整された生理学的に適合する塩もしくは塩の混合物、または同等のイオン濃度に調整された生理学的に適合する塩のうちの1つ以上を含むものが含まれる。
【0109】
適切には、配合物は、生理学的に許容されるpH、例えば、pH6~8、またはpH6.5~7.5、pH7.0~7.7、またはpH7.2~7.8の範囲に調整される。脳脊髄液のpHは約7.28~約7.32であるため、髄腔内送達では、この範囲内のpHが望ましいものであり得、一方、静脈内送達のためには、6.8~約7.2のpHが望ましいものであり得る。しかし、より広範囲にある他のpH、およびこれらの下位範囲が、他の送達経路のために選択され得る。
【0110】
適切な界面活性剤、または界面活性剤の組み合わせが、非毒性である非イオン性界面活性剤の中から選択され得る。一実施形態では、例えば、中性pHを有し、平均分子量8400を有するポロキサマー188としても知られているPluronic(登録商標)F68[BASF]などの、末端が一級ヒドロキシル基の二機能性ブロックコポリマー界面活性剤が選択される。他の界面活性剤および他のポロキサマー、すなわち、ポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))の2つの親水性鎖に隣接するポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))の中心疎水性鎖からなる非イオン性トリブロックコポリマー、SOLUTOL HS 15(マクロゴール-15ヒドロキシステアラート)、LABRASOL(ポリオキシカプリン酸グリセリド)、ポリオキシ10オレイルエーテル
、TWEEN(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)、エタノール、およびポリエチレングリコールが選択され得る。一実施形態では、配合物は、ポロキサマーを含有する。これらのコポリマーは、一般に、文字「P」(ポロキサマーについて)に続いて、3桁数字を用いて命名され、初めの2桁数字×100は、ポリオキシプロピレンコアのおおよその分子質量を示し、最後の数字×10は、ポリオキシエチレン含有量パーセントを示す。一実施形態では、ポロキサマー188が選択される。界面活性剤は、懸濁液の最高約0.0005%~約0.001%の量で存在し得る。
【0111】
一実施例では、配合物は、例えば、水中に、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、デキストロース、硫酸マグネシウム(例えば、硫酸マグネシウム・7H2O)、塩化カリウム、塩化カルシウム(例えば、塩化カルシウム・2H2O)、二塩基性リン酸ナトリウム、およびそれらの混合物のうちの1つ以上を含む、緩衝化生理食塩水溶液を含有し得る。好適には、髄腔内送達では、モル浸透圧濃度は、脳脊髄液と適合する範囲内(例えば、約275~約290)であり、例えば、emedicine.medscape.com/article/2093316-overviewを参照されたい。任意選択的に、髄腔内送達では、商業的に入手可能な希釈剤が懸濁化剤として、または別の懸濁化剤および他の任意選択的な賦形剤と組み合わせて使用され得る。例えば、Elliotts B(登録商標)溶液[Lukare Medical]を参照されたい。
【0112】
他の実施形態では、配合物は、1つ以上の浸透促進剤を含有し得る。好適な浸透促進剤の例には、例えば、マンニトール、グリココール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、またはEDTAが含まれ得る。。
【0113】
さらに、薬学的に許容される担体と、本明細書に記載される核酸配列を含むベクターと、を含む医薬組成物が提供される。本明細書で使用される場合、「担体」は、任意のおよびすべての溶媒、分散媒体、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、緩衝剤、担体溶液、懸濁液、コロイドなどを含む。薬学的な活性物質のためのかかる媒体および薬剤の使用は、当該技術分野において周知である。補助的な有効成分を組成物中に組み込むこともできる。リポソーム、ナノカプセル、マイクロ粒子、マイクロスフェア、脂質粒子、小胞などの送達ビヒクルが、本明細書に記載の組成物の好適な宿主細胞への導入のために使用され得る。特に、rAAVベクターは、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノスフィア、またはナノ粒子などのいずれかに封入された送達のために配合され得る。一実施形態では、治療有効量のベクターが、医薬組成物に含まれる。担体の選択は、本発明の制限ではない。防腐剤または化学的安定剤などの他の従来の薬学的に許容される担体。好適な例示的な防腐剤には、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノール、およびパラクロロフェノールが含まれる。好適な化学的安定剤には、ゼラチンおよびアルブミンが含まれる。
【0114】
「薬学的に許容される」という語句は、宿主に投与されるときにアレルギーまたは類似の有害反応を生じない分子実体および組成物を指す。
【0115】
本明細書で使用される場合、「投薬量」または「量」という用語は、対象に治療の過程で送達される総投薬量もしくは総量、あるいは単一単位(または複数単位もしくは分割投薬量)投与で送達される投薬量もしくは量を指し得る。
【0116】
本明細書に記載の水性懸濁液または医薬組成物は、それを必要とする対象に、任意の好適な経路または異なる経路の組み合わせによって送達されるように設計される。一実施形
態では、医薬組成物は、脳室内(ICV)、髄腔内(IT)、または大槽内注入を介した送達のために配合される。一実施形態では、本明細書に記載の組成物は、それを必要とする対象に、静脈内注入によって送達するために設計される。あるいは、他の投与経路(例えば、経口、吸入、鼻腔内、気管内、動脈内、眼内、筋内、および他の非経口経路)が選択され得る。
【0117】
本明細書で使用される場合、「髄腔内送達」または「髄腔内投与」という用語は、脊柱管への注入、より具体的には、脳脊髄液(CSF)へ到達するようにクモ膜下腔内への注入を介した、薬物の投与経路を指す。髄腔内送達は、腰椎穿刺、脳室内穿刺、後頭下/大槽内穿刺、および/またはC1-2穿刺を含み得る。例えば、材料は、腰椎穿刺の手段によって、クモ膜下腔全体に拡散させるために導入され得る。別の実施例では、注入は、大槽へのものであり得る。鼻腔内送達は、ベクター拡散を増加させ、かつ/または投与によって引き起こされる毒性および炎症を低減し得る。例えば、Christian Hinderer et al,Widespread gene transfer in the central nervous system of cynomolgus
macaques following delivery of AAV9 into the cisterna magna,Mol Ther Methods Clin Dev.2014;1:14051.Published online 2014 Dec 10.doi:10.1038/mtm.2014.51を参照されたい。
【0118】
本明細書で使用される場合、「大槽内送達」または「大槽内投与」という用語は、脳室の脳脊髄液への、または小脳延髄槽内への直接的な薬物の投与経路、より具体的には、後頭下穿刺を介した、または大槽内への直接的な注入もしくは永久的に配置されたチューブを介した薬物の投与経路を指す。
【0119】
一態様では、本明細書に記載されるベクターを製剤緩衝液中に含む医薬組成物が、本明細書で提供される。特定の実施形態において、複製欠損ウイルス組成物は、投薬量単位で配合され、ヒト患者にとって、約1.0×109GC~約1.0×1016GCの範囲にある量の複製欠損ウイルス(体重70kgの平均対象を治療するため)を含み、その範囲内のすべての整数または分数量、および好ましくは1.0×1012GC~1.0×1014GCの範囲を含む。一実施形態では、組成物は、用量当たり少なくとも1×109、2×109、3×109、4×109、5×109、6×109、7×109、8×109、または9×109GCを含むように配合され、範囲内のすべての整数または分数を含む。別の実施形態では、組成物は、用量当たり少なくとも1×1010、2×1010、3×1010、4×1010、5×1010、6×1010、7×1010、8×1010、または9×1010GCを含むように配合され、範囲内のすべての整数または分数を含む。別の実施形態では、組成物は、用量当たり少なくとも1×1011、2×1011、3×1011、4×1011、5×1011、6×1011、7×1011、8×1011、または9×1011GCを含むように配合され、範囲内のすべての整数または分数を含む。別の実施形態では、組成物は、用量当たり少なくとも1×1012、2×1012、3×1012、4×1012、5×1012、6×1012、7×1012、8×1012、または9×1012GCを含むように配合され、範囲内のすべての整数または分数を含む。別の実施形態では、組成物は、用量当たり少なくとも1×1013、2×1013、3×1013、4×1013、5×1013、6×1013、7×1013、8×1013、または9×1013GCを含むように配合され、範囲内のすべての整数または分数を含む。別の実施形態では、組成物は、用量当たり少なくとも1×1014、2×1014、3×1014、4×1014、5×1014、6×1014、7×1014、8×1014、または9×1014GCを含むように配合され、範囲内のすべての整数または分数を含む。別の実施形態では、組成物は、用量当たり少なくとも1×1015、2×1015、3×1015、4×1015、5×1015、6×1015、7×1015、
8×1015、または9×1015GCを含むように配合され、範囲内のすべての整数または分数を含む。一実施形態では、ヒト適用のために、用量は、用量当たり1×1010~約1×1012GCの範囲であることができ、範囲内のすべての整数または分数量を含む、
【0120】
一実施形態では、本明細書に記載されるrAAVを製剤緩衝液中に含む医薬組成物が提供される。一実施形態では、rAAVは、約1×109ゲノムコピー(GC)/mL~約1×1014GC/mLで配合される。さらなる一実施形態では、rAAVは、約3×109GC/mL~約3×1013GC/mLで配合される。またさらなる一実施形態では、rAAVは、約1×109GC/mL~約1×1013GC/mLで配合される。一実施形態では、rAAVは、少なくとも約1×1011GC/mLで配合される。
【0121】
一実施形態では、本明細書に記載のrAAVを含む医薬組成物は、脳質量1グラム当たり約1×109GC~脳質量1グラム当たり約1×1014GCの用量で投与される。
【0122】
本明細書に記載の医薬組成物における組成物が、本明細書にわたって記載される他の組成物、レジメン、態様、実施形態、および方法に適用されるように意図されることを理解されたい。
【0123】
治療方法
ポンペ病を有する患者を治療するための治療レジメンが提供され、これは、本明細書に記載の発現カセット、rAAV、および/またはhGAA780I融合タンパク質を、任意選択的に免疫調節剤と組み合わせて含む。特定の実施形態では、患者は、遅発性ポンペ病を有する。他の実施形態では、患者は、小児発症性ポンペ病を有する。特定の実施形態では、併用治療剤は、免疫調節レジメンなど、発現カセット、rAAV、またはhGAA780I融合タンパク質とともに送達される。追加的に、または代替的に、併用療法は、気管支拡張剤、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、呼吸筋力トレーニング(RMST)、酵素補充療法、および/または横隔膜ペーシング療法のうちの1つ以上を含み得る。特定の実施形態では、患者は、rAAVの単回投与を受ける。特定の実施形態では、患者は、本明細書に記載の発現カセットおよび/またはrAAVを含む組成物の単回投与を受ける。特定の実施形態では、有効量の発現カセットを含む組成物のこの単回投与は、少なくとも1つの併用治療薬を含む。特定の実施形態では、患者に、発現カセット、rAAV、および/またはhGAA780I融合タンパク質、あるいは本明細書に記載されるように、実質的に同時に2つの異なる経路を介して投与される。特定の実施形態では、2つの異なる注入経路は、静脈内および髄腔内投与である。一実施形態では、組成物は、懸濁液であり、対象に、脳室内、髄腔内、大槽内、または静脈内に送達される。特定の実施形態では、α-グルコシダーゼの欠損を有する患者は、本明細書に提供される組成物が投与されて、心筋機能、呼吸筋機能、および/または骨格筋機能のうちの1つ以上が改善する。特定の実施形態では、治療の結果として、心臓、CNS(脳)、および/または骨格筋のうちの1つ以上における減少したグリコーゲン貯蔵および/またはオートファジービルドアップが存在する。
【0124】
特定の実施形態では、発現カセット、rAAV、ウイルスまたは非ウイルスベクターが、医薬品の調製に使用される。特定の実施形態では、ポンペ病を治療するための組成物の使用が提供される。
【0125】
これらの組成物は、他の療法と組み合わせて使用され得、例えば、免疫療法、酵素補充療法(例えば、Genzyme、Sanofi Corporationによって市販され、米国外ではMyozymeとして市販されるLumizyme)が含まれる。ポンペ病の追加の治療は、対症療法であり、支持療法である。例えば、呼吸支援が必要とされ得
、物理療法が、呼吸筋を強化するのに役立ち得、一部の患者は、夜間および/または昼間の間、機械的換気(すなわち、バイレベル気道陽圧またはボリューム・ベンチレーター)を介した呼吸補助を必要とし得る。さらに、気道感染の際に追加の支援が必要とされ得る。一部の患者には、固定具を含む整形外科機器が推奨され得る。手術が、拘縮または脊椎変形などの特定の整形外科的症状のために必要とされ得る。一部の乳児は、鼻を通って食道を下って胃の中に流れる栄養チューブ(経鼻胃管)の挿入を必要とし得る。一部の小児では、栄養チューブが、腹壁の小さな外科的開口部を介して胃に直接的に挿入されることが必要とされ得る。遅発性ポンペ病を有する一部の個体は、軟食を必要とし得るが、栄養チューブを必要とする個体はほとんどいない。
【0126】
本明細書に記載されるように、用語「増加させる」(例えば、組織、血液等で測定されるとき、hGAA780I融合タンパク質による治療後にhGAAレベルを増加させる)または「減少させる」、「低下させる」、「緩和させる」、「改善する」、「遅延させる」、もしくはその任意の文法的変形、または任意の類似の用語は、別途指定されない限り、対応する参照(例えば、未治療の対照、またはポンペを有しない正常な状態の対象)と比較して、約5倍、約2倍、約1倍、約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%、または約5%の変化を意味する。
【0127】
本明細書で同義に使用される「患者」または「対象」は、ヒト、獣医学または農業動物、家庭用動物または愛玩動物、ならびに通常臨床研究に使用される動物を含む、雄または雌の哺乳動物を意味する。一実施形態では、これらの方法および組成物の対象は、ヒト患者である。一実施形態では、これらの方法および組成物の対象は、男性または女性のヒトである。
【0128】
一実施形態では、懸濁液は、約7.28~約7.32のpHを有する。
【0129】
これらの用量および濃度の送達のために好適な容量は、当業者によって決定され得る。例えば、約1μL~150mLの容量が選択され得、成人のためにより高容量が選択される。典型的には、新生児では、好適な容量は、約0.5mL~約10mL、より年齢の高い乳児では、約0.5mL~約15mLが選択され得る。幼児では、約0.5mL~約20mLの容量が選択され得る。小児では、最高約30mLの容量が選択され得る。10代前および10代では、最大約50mLの容量が選択され得る。さらに他の実施形態では、患者は、選択される約5mL~約15mL、または約7.5mL~約10mLの容量で髄腔内投与を受け得る。他の適切な容量および投薬量が決定され得る。投薬量を調整して、任意の副作用に対する治療的利益のバランスをとり、かかる投薬量は、組換えベクターが利用される治療適用に応じて変化し得る。
【0130】
一実施形態では、本明細書に記載のrAAVを含む組成物は、脳質量1グラム当たり約1×109GC~脳質量1グラム当たり約1×1014GCの用量で投与される。特定の実施形態では、rAAVは、体重1kg当たり約1×109GC~体重1kg当たり約1×1013GCの用量で全身に同時投与される。
【0131】
一実施形態では、対象は、治療有効量の本明細書に記載の発現カセット、rAAV、またはhGAA780I融合タンパク質が送達される。本明細書で使用される場合、「治療有効量」は、発現カセット、rAAV、もしくはhGAA780I融合タンパク質、またはそれらの組み合わせの量を指す。したがって、特定の実施形態において、方法は、対象に、hGAA780I融合タンパク質コード核酸配列の送達のためのrAAVまたは発現カセットを投与することを、本明細書に提供されるhGAA780I融合タンパク質酵素を含む組成物を投与することと組み合わせて含む。
【0132】
一実施形態では、発現カセットは、ベクターゲノムにおいて、脳質量1グラム当たり約1×109GC~脳質量1グラム(g)当たり約1×1013ゲノムコピー(GC)の量で送達され、範囲内のすべての整数または分数量およびエンドポイントを含む。別の実施形態では、投薬量は、脳質量1グラム当たり1×1010GC~脳質量1グラム当たり約1×1013GCである。具体的な実施形態では、患者に投与されるベクターの用量は、少なくとも約1.0x109GC/g、約1.5x109GC/g、約2.0x109GC/g、約2.5x109GC/g、約3.0x109GC/g、約3.5x109GC/g、約4.0x109GC/g、約4.5x109GC/g、約5.0x109GC/g、約5.5x109GC/g、約6.0x109GC/g、約6.5x109GC/g、約7.0x109GC/g、約7.5x109GC/g、約8.0x109GC/g、約8.5x109GC/g、約9.0x109GC/g、約9.5x109GC/g、約1.0x1010GC/g、約1.5x1010GC/g、約2.0x1010GC/g、約2.5x1010GC/g、約3.0x1010GC/g、約3.5x1010GC/g、約4.0x1010GC/g、約4.5x1010GC/g、約5.0x1010GC/g、約5.5x1010GC/g、約6.0x1010GC/g、約6.5x1010GC/g、約7.0x1010GC/g、約7.5x1010GC/g、約8.0x1010GC/g、約8.5x1010GC/g、約9.0x1010GC/g、約9.5x1010GC/g、約1.0x1011GC/g、約1.5x1011GC/g、約2.0x1011GC/g、約2.5x1011GC/g、約3.0x1011GC/g、約3.5x1011GC/g、約4.0x1011GC/g、約4.5x1011GC/g、約5.0x1011GC/g、約5.5x1011GC/g、約6.0x1011GC/g、約6.5x1011GC/g、約7.0x1011GC/g、約7.5x1011GC/g、約8.0x1011GC/g、約8.5x1011GC/g、約9.0x1011GC/g、約9.5x1011GC/g、約1.0x1012GC/g、約1.5x1012GC/g、約2.0x1012GC/g、約2.5x1012GC/g、約3.0x1012GC/g、約3.5x1012GC/g、約4.0x1012GC/g、約4.5x1012GC/g、約5.0x1012GC/g、約5.5x1012GC/g、約6.0x1012GC/g、約6.5x1012GC/g、約7.0x1012GC/g、約7.5x1012GC/g、約8.0x1012GC/g、約8.5x1012GC/g、約9.0x1012GC/g、約9.5x1012GC/g、約1.0x1013GC/g、約1.5x1013GC/g、約2.0x1013GC/g、約2.5x1013GC/g、約3.0x1013GC/g、約3.5x1013GC/g、約4.0x1013GC/g、約4.5x1013GC/g、約5.0x1013GC/g、約5.5x1013GC/g、約6.0x1013GC/g、約6.5x1013GC/g、約7.0x1013GC/g、約7.5x1013GC/g、約8.0x1013GC/g、約8.5x1013GC/g、約9.0x1013GC/g、約9.5x1013GC/g、または約1.0x1014GC/g脳質量である。
【0133】
一実施形態では、治療方法は、hGAA780I融合タンパク質の送達を酵素補充療法として含む。特定の実施形態では、hGAA780I融合タンパク質は、遺伝子療法(本明細書に提供される発現カセットまたはrAAVを含むが、これらに限定されない)と組み合わせてERTとして送達される。特定の実施形態では、本方法は、対象に、2つ以上のERT(例えば、hGAA780I融合タンパク質を、別の治療タンパク質、例えばLumizymeと組み合わせて含む組成物)を投与することを含む。本明細書に記載のhGAA780I融合タンパク質を含む組成物は、対象に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の日ごとに投与され得る。投与は、静脈内注入によって外来患者に、毎週、毎月、または毎月2回の投与が処方され得る。適切な治療有効量の化合物は、治療する臨床医によって選択され、約1μg/kg~約500mg/kg、約10mg/kg~約100mg/kg、約20mg/kg~約100mg/kg、および約20mg/kg~約50mg/kgを含む。いくつかの実施形態では、好適な治療用量は、
例えば、0.1、0.25、0.5、0.75、1、5、10、15、20、30、40、50、60、70、および100mg/kgから選択される。
【0134】
特定の実施形態では、本方法は、hGAA780I融合タンパク質を、患者に対して1週間当たり10mg/kg患者体重またはそれ以上の投薬量で対象に投与することを含む。多くの場合、投薬量は1週間当たり10mg/kgを超える。投薬量レジームは、1週間当たり10mg/kg~1週間当たり少なくとも1000mg/kgの範囲であることができる。典型的には、投薬量レジームは、1週間当たり10mg/kg、1週間当たり15mg/kg、1週間当たり20mg/kg、1週間当たり25mg/kg、1週間当たり30mg/kg、1週間当たり35mg/kg、1週間当たり40mg/kg、1週間当たり45mg/kg、1週間当たり60mg/kg、1週間当たり80mg/kg、および1週間当たり120mg/kgである。好ましいレジームでは、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、30mg/kg、または40mg/kgが、週に1回、2回、または3回投与される。治療は、典型的には、少なくとも4週間、時には24週間、時には患者の生涯にわたって継続される。任意選択的に、ヒトα-グルコシダーゼのレベルは、治療後に監視され(例えば、血漿または筋肉中)、検出されたレベルが、正常な人における値より実質的に低くになるとき(例えば、20%未満)、さらなる投薬量が投与される。一実施形態において、hGAA780Iは、最初に「高」用量(すなわち、「負荷用量」)で投与され、その後、より低い用量(すなわち、「維持用量」)で投与される。負荷用量の例は、週に1~3回(例えば、1、2、または3週間)、少なくとも約40mg/kg患者体重である。維持用量の例は、少なくとも約5~少なくとも約10mg/kg患者体重/週、またはそれ以上、例えば、20mg/kg/週、30mg/kg/週、40mg/kg/週である。特定の実施形態では、投薬量は、投薬期間中に速度を増加させて投与される。そのようなことは、静脈内注入の流速を増加させることによって、または一定の速度で投与されるhGAA780I融合タンパク質の濃度を増加させる勾配を使用することによって達成することができる。この手段での投与は、免疫原性反応のリスクを低減させ得る。特定の実施形態では、静脈内注入は、数時間(例えば、1~10時間、好ましくは2~8時間、より好ましくは3~6時間)にわたって行われ、注入速度は、投与期間中に時々増加させる。
【0135】
一実施形態では、本方法は、対象が免疫抑制併用療法を受けることをさらに含む。かかる併用療法のための免疫抑制剤は、グルココルチコイド、ステロイド、代謝拮抗剤、T細胞阻害剤、マクロライド(例えば、ラパマイシンもしくはラパログ)、およびアルキル化剤を含む細胞分裂阻害剤、代謝拮抗剤、細胞傷害性抗生物質、抗体、イムノフィリンに活性のある物質を含むが、これらに限定されない。免疫抑制剤には、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、白金化合物、メトトレキサート、アザチオプリン、メルカプトプリン、フルオロウラシル、ダクチノマイシン、アントラサイクリン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ミトラマイシン、IL-2受容体特異的抗体またはCD3特異的抗体、抗IL-2抗体、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス、IFN-β、IFN-γ、オピオイド、またはTNF-α(腫瘍壊死因子-α)結合剤を含み得る。特定の実施形態では、免疫抑制療法は、遺伝子療法投与の0、1、2、7日前、またはそれ以前に開始され得る。これらの薬物のうちの1つ以上が、遺伝子療法投与後に、同じ用量または調整された用量で継続され得る。かかる療法は、必要に応じて、約1週間(7日間)、約60日間、またはそれ以上であり得る。
【0136】
一実施形態では、本明細書に記載される発現カセットを含む組成物は、必要とする対象に1回投与される。特定の実施形態では、発現カセットは、rAAVを介して送達される。本明細書に記載の組成物および方法が、本明細書にわたって記載される他の組成物、レジメン、態様、実施形態および方法に適用されるように意図されることを理解されたい。
【0137】
本明細書に提供される組成物および方法は、乳児発症性ポンペ病もしくは遅発性ポンペ病および/またはそれらに関連する症状を治療するために使用され得る。特定の実施形態では、有効性は、疾患の1つ以上の症状の改善または疾患進行の遅延によって決定することができる。乳児発症性ポンペ病の症状には、低張、呼吸器/呼吸障害、肝腫大、肥大性心筋症、ならびに心臓、筋肉、CNS(特に運動ニューロン)におけるグリコーゲン貯蔵が含まれるが、これらに限定されない。遅発性ポンペ病の症状には、近位筋力低下、呼吸器/呼吸障害、ならびに筋肉および運動ニューロンにおけるグリコーゲン貯蔵が含まれるが、これらに限定されない。投与経路は、患者の状態および/または診断に基づいて決定され得る。特定の実施形態では、乳児発症性ポンペ病または遅発性ポンペ病を有すると診断された患者の治療のための方法が提供され、hGAA780I融合タンパク質の送達のために、IVおよびICM経路の組み合わせを介して本明細書に記載されるrAAVを投与することを含む。いくつかの実施形態では、遅発性ポンペ病を有すると特定された患者は、rAAVの全身送達のみ(例えば、IVのみ)を含む治療を投与される。本明細書に記載されるように、rAAVを含む組成物の送達は、酵素補充療法(ERT)との組み合わせであることができる。特定の実施形態では、ポンペ病を有すると診断された対象を治療するための方法が提供され、ERTと組み合わせた本明細書に記載されるrAAVのICM送達を含む。特定の実施形態では、乳児発症性ポンペ病を有すると特定された対象は、ICM注入を介して本明細書に記載のrAAVが投与され、また末梢疾患の態様の治療のためにERTを受ける。
【0138】
「核酸」は、本明細書に記載されるとき、RNA、DNA、またはその修飾であり得、一本鎖または二本鎖であり得、例えば、目的のタンパク質をコードする核酸、オリゴヌクレオチド、核酸類似体、例えば、ペプチド核酸(PNA)、偽相補的PNA(pc-PNA)、ロックド核酸(LNA)などを含む群から選択され得る。かかる核酸配列には、例えば、限定されないが、タンパク質をコードする核酸配列、例えば、転写リプレッサーとして作用するもの、アンチセンス分子、リボザイム、小阻害核酸配列、例えば、限定されないが、RNAi、shRNAi、siRNA、マイクロRNAi(mRNAi)、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどが含まれる。
【0139】
タンパク質、ペプチド、またはポリペプチドを「逆翻訳する」ための方法は、当業者に既知である。タンパク質の配列が分ると、ウェブベースおよび市販のコンピュータプログラム、ならびにアミノ酸配列を核酸コード配列に逆翻訳するサービスベースの企業が存在する。例えば、EMBOSSによるbacktranseq(ebi.ac.uk/Tools/stでオンライン入手可能)、Gene Infinity(geneinfinity.org/sms/sms_-backtranslation.htmlでオンライン入手可能)、ExPasy(オンライン入手可能なexpasy.org/tools/)を参照されたい。一実施形態では、RNAおよび/またはcDNAコード配列は、ヒト細胞における最適な発現のために設計される。
【0140】
核酸配列の文脈において、「同一性パーセント(%)」、「配列同一性」、「配列同一性パーセント」、または「同一パーセント」という用語は、対応のために整列させたときに同じである2つの配列中の残基を指す。配列同一性比較の長さは、ゲノムの全長、遺伝子コード配列の全長、または、所望される場合、少なくとも約500~5000ヌクレオチドの断片にわたるものであり得る。しかしながら、例えば、少なくとも約9ヌクレオチド、通常は少なくとも約20~24ヌクレオチド、少なくとも約28~32ヌクレオチド、少なくとも約36ヌクレオチド以上の、より小さい断片間の同一性も所望され得る。
【0141】
同一性パーセントは、タンパク質の全長、ポリペプチド、約32個のアミノ酸、約330個のアミノ酸、もしくはそのペプチドフラグメントにわたるアミノ酸配列、または配列をコードする対応する核酸配列について容易に決定することができる。好適なアミノ酸フ
ラグメントは、長さが少なくとも約8個のアミノ酸であり得、最大で約700個であり得る。一般に、2つの異なる配列間の「同一性」、「相同性」、または「類似性」に言及する場合、「同一性」、「相同性」、または「類似性」は、「整列された」配列を参照して決定される。「整列した」配列または「整列」とは、複数の核酸配列またはタンパク質(アミノ酸)配列を指し、参照配列と比較して、多くの場合、欠損または追加の塩基またはアミノ酸について修正を含む。
【0142】
整列は、公共または市販の様々な多重配列整列プログラムのうちのいずれかを使用して実施される。配列整列プログラムは、アミノ酸配列に対して利用可能であり、例えば、「Clustal X」、「Clustal Omega」、「MAP」、「PIMA」、「MSA」、「BLOCKMAKER」、「MEME」、および「Match-Box」プログラムが挙げられる。一般に、これらのプログラムのうちのいずれかがデフォルト設定で使用されるが、当業者は、必要に応じて、これらの設定を変更することができる。あるいは、当業者は、別のアルゴリズムまたはコンピュータプログラムを利用することができ、参照されるアルゴリズムおよびプログラムによって提供されるように、少なくとも同一性のレベルまたは整列が提供される。例えば、J.D.Thompson et al,Nucl.Acids.Res.,27(13):2682-2690 (1999)を参照されたい。
【0143】
多重配列整列プログラムはまた、核酸配列についても利用可能である。かかるプログラムの例としては、「Clustal W」、「Clustal Omega」、「CAP
Sequence Assembly」、「BLAST」、「MAP」、および「MEME」が挙げられ、インターネット上のウェブサーバを通してアクセス可能である。かかるプログラムの他の資源は、当業者に既知である。あるいは、Vector NTIユーティリティもまた使用される。また、当該技術分野で既知のいくつかのアルゴリズムが存在し、上記のプログラムに含まれるものを含め、ヌクレオチド配列同一性を測定するために使用することができる。別の例として、ポリヌクレオチド配列は、GCGバージョン6.1のプログラムであるFasta(商標)を使用して比較することができる。Fasta(商標)は、照会配列と検索配列との間の最良の重複領域の整列および配列同一性パーセントを提供する。例えば、核酸配列間の配列同一性パーセントは、Fasta(商標)を、そのデフォルトパラメータ(ワードサイズ6およびスコアリングマトリックスについてNOPAM係数)を参照により本明細書に組み込まれるGCGバージョン6.1に提供されるように用いて使用して決定することができる。
【0144】
本明細書で使用される場合、「調節配列」または「発現制御配列」という用語は、イニシエーター配列、エンハンサー配列、およびプロモータ配列などの核酸配列を指し、それらが操作可能に連結されるタンパク質コード核酸配列の転写を誘導するか、抑制するか、さもなければ制御する。
【0145】
核酸配列またはタンパク質を説明するために使用される「外因性」という用語は、核酸またはタンパク質が、それが染色体もしくは宿主細胞に存在する位置に天然に存在しないことを意味する。外因性核酸配列はまた、同じ宿主細胞または対象から引き出されてそこに挿入される配列を指すが、非天然状態、例えば、異なるコピー数、または異なる調節エレメントの制御下で存在する。
【0146】
核酸配列またはタンパク質を説明するために使用される場合、「異種」という用語は、核酸またはタンパク質が、それが発現される宿主細胞もしくは対象とは異なる生物または同じ生物の異なる種に由来したことを意味する。「異種」という用語は、タンパク質、またはプラスミド、発現カセット、もしくはベクターにおける核酸と関連して使用される場合、タンパク質または核酸は、当該タンパク質または核酸が天然には互いに同じ関係で認
められない別の配列もしくはサブ配列で存在することを示す。
【0147】
「含む(comprising)」とは、他の構成要素または方法ステップを包含することを意味する用語である。「含む(comprising)」が使用される場合、関連する実施形態は、他の構成要素または方法ステップを除外する「からなる(consisting of)」という用語、および実施形態または発明の性質を実質的に変化させる任意の構成要素または方法ステップを除外する「本質的にからなる(consisting essentially of)」という用語を使用する記述を含むことを理解されたい。本明細書における様々な実施形態は、「含む」という言語を用いて示されるが、様々な状況下で、関連する実施形態はまた、「からなる」または「本質的にからなる」という言語を用いて記載されることも理解されたい。
【0148】
本明細書で使用される場合、「e」の後に数値(nn)が続く用語は、指数を指し、この用語は、「×10nn」と互換的に使用される。例えば、3e13は3×1013に相当する。
【0149】
「A」または「an」という用語は、1つ以上を指し、例えば、「ベクター(a vector)」は、1つ以上のベクターを表すと理解されることに留意されたい。したがって、「a」(または「an」)、「1つ以上(one or more)」、および「少なくとも1つ(at least one)」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0150】
本明細書で使用される場合、「約(about)」という用語は、別途指定されない限り、与えられた参照からプラスまたはマイナス10%の可変性を意味する。
【実施例】
【0151】
ここで、以下の実施例を参照しながら、本発明が説明される。これらの実施例は例示のみを目的として提供され、本発明がこれらの実施例に限定されるものとして決して解釈されるべきではなく、本明細書に提供される教示の結果として明らかになるありとあらゆる変形を包含すると解釈されるべきである。
【0152】
実施例1:材料および方法:
ベクター産生
780位にVALを有する参照GAA配列およびV780I変異を有する配列を逆翻訳し、ヌクレオチド配列を操作して、CAGプロモータ下で発現カセットを有するAAV産生のためのシスプラスミドを生成した。さらに、天然のhGAAのcDNA配列(参照配列)を、非操作配列との比較のために同じAAV-シス骨格にクローニングした。AAVhu68ベクターを、以前に報告されているPenn Vector Coreによって作製して力価測定した。(Lock,et al.2010,Hum Gene Ther 21(10):1259-1271)簡単に説明すると、HEK293細胞を三重でトランスフェクトし、培養上清を収集して濃縮し、イオジキサノール勾配で精製した。精製したベクターを、既に報告されているように(Lock,et al.(2014).Hum Gene Ther Methods 25(2):115-125)、ウサギβグロビンポリA配列を標的とするプライマーを使用して、液滴デジタルPCRで力価測定した。
【0153】
動物
マウス
ポンペマウス(Gaaノックアウト(-/-)、C57BL/6/129バックグラウンド)ファウンダーは、Jackson Labs(ストック番号004154、また6
neoマウスとしても知られている)から購入した。育種コロニーを遺伝子療法プログラムAAALAC認定のバリアマウス施設で維持し、ヘテロ接合体を使用してヘテロ接合体交配させ、同腹子内でヌル対照およびWT対照を産生した。Gaaノックアウトマウスは、ポンペ病のために幅広く使用されるモデルである。これらは、心臓、中枢神経系、骨格筋、および横隔膜にリソソームグリコーゲンの進行性蓄積を示し、移動性が低下し、進行性筋力低下を有する。小サイズ、再現可能な表現型、および効率的な育種は、インビボでの前臨床候補スクリーニングに最適である迅速な試験を可能にする。
【0154】
動物収容室は、30~70%の湿度範囲で、64~79°F(18~26℃)の温度範囲に維持した。
【0155】
動物は、離乳するまで、親および同腹子とともに飼育され、次いで、Translational Research Laboratories(TRL)GTP動物施設において、1ケージ当たり2~5匹の標準的なケージ内で飼育された。すべてのケージサイズおよび飼育条件は、実験動物の管理および使用に関するガイド(the Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)に準拠している。ケージ、水ボトル、および床敷は、バリア施設までにオートクレーブ処理される。
【0156】
自動制御された12時間の明暗サイクルが維持された。各暗期間は、19時(±30分)に開始した。飼料は、自由摂食で提供された(Purina、LabDiet(登録商標)、5053、放射線処理済み、PicoLab(登録商標)、Rodent Diet 20、25lb)。水は、各飼育ケージ内に個別に配置された水ボトルを介して、すべての動物が自由にアクセスできた。最低限、水ボトルは、毎週のケージ交換の際、週に1回交換された。上水道はフィラデルフィア市から引かれ、Getinge浄水器を使用して塩素化された。塩素化レベルは、ULARによって毎日試験され、2~4百万分率(ppm)で維持される。
【0157】
Nestlets(商標)がエンリッチメントとして各飼育ケージに提供された。
【0158】
インビボ試験および組織学
マウスに、0.1mL中の5×10
11GC(約2.5×10
13GC/kg)の用量、または5×10
10GC(約2.5×10
12GC/kg)の用量のAAVhu68.CAG.hGAA(様々なhGAA構築物)を側部尾静脈(IV)を介して投与し、ベクター投与後7日目および21日目に血清単離のために採血し、注入28日後、最後に採血して(血漿単離のため)、失血によって安楽死させた。脳から開始して、組織を速やかに収集した。
【表5】
【0159】
組織学のための組織をホルマリン固定し、標準的な方法を使用してパラフィン包埋した。脳および脊髄切片を、ルクソールファストブルー染色キット(ルクソールファストブルー染色キット、Abcam ab150675)で染色し、末梢器官を、組織中のグリコーゲン等の多糖類を検出するための標準方法を使用して、PAS(過ヨウ素酸シッフ)で染色した。hGAAの免疫染色を、ホルマリン固定したパラフィン包埋試料について行った。切片を脱パラフィン化し、抗原回収のために10mMのクエン酸緩衝液(pH6.0)中で沸騰させ、PBS+0.2%トリトン中の1%ロバ血清で15分間ブロッキングし、次いで、ブロッキング緩衝液で希釈した一次抗体(Sigma HPA029126抗hGAA抗体)およびビオチン化二次抗体と連続的にインキュベートし、HRPベースの比色反応を使用してシグナルを検出した。
【0160】
スライドは、委員会認定の獣医病理学者によって盲検方式でレビューされた。半定量的スコアリングシステムを確立して、筋肉内のポンペ関連組織学的病変(グリコーゲン貯蔵およびオートファジービルドアップ)の重症度を測定し、貯蔵および/または空胞を提示する細胞の総パーセンテージによって決定した。
【表6】
【0161】
適用可能な場合、ベクター関連の組織病理学的病変も評価した。
【0162】
非ヒト霊長類
ベクター投与のために、アカゲザルを、筋肉内デクスメデトミジンおよびケタミンで鎮静させ、単回の大槽内(ICM)注入または静脈内注入を投与した。ICM注入のための針の配置は、既に報告されているように(Katz N,et al.Hum Gene
Ther Methods.2018 Oct;29(5):212-219)、蛍光透視装置(OEC9800 C-Arm、GE)を使用する脊髄造影法により確認した。動物は、バルビツール酸過剰投与により、安楽死させた。収集した組織を、即時にドライアイス上で凍結するか、または組織学のために10%ホルマリンで固定した。
【0163】
インビトロにおけるhGAA 780I酵素性能の特徴付け
GAA活性
血漿または均質化組織の上清を、5.6mMの4-MU-α-グルコピラノシド、pH4.0と混合し、37℃で3時間インキュベートする。反応を0.4Mの炭酸ナトリウム、pH11.5で停止させる。相対蛍光単位RFUは、Victor3蛍光計を355nmのexおよび460nmの発光で使用して測定する。nmol/mL/時間の単位での活性は、4-MUの標準曲線からの補間によって計算される。個々の組織試料中の活性レベルは、ホモジネート上清中の総タンパク質含有量に対して基準化される。等体積が血漿試料について使用される。
【0164】
LC/MSによるGAAシグネチャーペプチド
血漿を100 %メタノール中に沈殿させ、遠心分離する。上清は廃棄する。ペレットに、内部標準としてhGAAに特有の安定同位体標識ペプチドをスパイクし、トリプシンで再懸濁し、37℃で1時間インキュベートする。消化は、10%ギ酸で停止させる。ペプチドを、C-18逆相クロマトグラフィーによって分離し、ESI-質量分析によって同定および定量化する。血漿中の総GAA濃度は、シグネチャーペプチド濃度から計算される。
【0165】
細胞表面受容体結合アッセイ
96ウェルプレートを受容体でコーティングし、洗浄してBSAでブロッキングする。rhGAAまたは操作されたGAAのいずれかの等活性を含有するCHO培養条件化培地または血漿を、3倍に連続的に希釈して、9系列の減少させた濃度を得て、共結合した受容体とともにインキュベートする。インキュベーション後、プレートを洗浄して、非結合のGAAを除去し、4-MU-α-グルコピラノシドを37℃で1時間添加する。反応を1.0Mのグリシン、pH10.5で停止させ、RFUをSpectramax蛍光計を370のexおよび460の発光によって読み取った。各試料のRFUは、4-MUの標準曲線からの補間によってnmol/mL/時間に変換される。GraphPad Prismを使用して非線形回帰を行う。
【0166】
グリコーゲン-TFA加水分解
組織ホモジネートを、4NのTFAによって100℃で4時間加水分解し、乾燥させ、水で再構成する。加水分解された材料を、パルスアメロメトリック検出(HPAEC-PAD)を備えた高pHアニオン交換クロマトグラフィーによるグルコース決定のために、CarboPac PA-10 2×250mmカラムに注入する。各試料中の遊離グルコースの濃度は、グルコース標準曲線からの補間によって計算される。最終データは、μgグリコーゲン/mgタンパク質として報告される。
【0167】
実施例2:ポンペマウスにおけるrAAVhu68.hGAAベクターの評価
AAVベクターを、ポンペマウスへのIV送達のために無菌PBS中で希釈した。試験品には、AAVhu68.CAG.hGAAco.rBG、AAVhu68.CAG.hGAAcoV780I.rBG、AAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAco.rBG、AAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780I.rBG、およびAAVhu68.CAG.sp7co.Δ8.hGAAcoV780I.rBGが含まれた。野生型およびビヒクル対照を試験に含めた。
【0168】
hGAAタンパク質発現および活性は、処置したマウスから収集した様々な組織で測定し、肝臓(
図1A、
図1B)、心臓(
図2A、
図2B)、四頭筋(
図3A、
図3B)、脳(
図4A、
図4B)、血漿(
図9A)が含まれた。すべてのプロモータは、低および高用量の両方で、肝臓において等しく十分に役割を果たした。UbCプロモータの下で発現するベクターの投与は、両方の用量で骨格筋における低い活性をもたらし、CAGプロモータを有するベクターは、最高の全体的な活性を有した。UbCプロモータを有するベクターはまた、両方の用量で心臓における低い活性を有した。
【0169】
ポンペマウスビヒクル(PBS)対照(
図5D)は、心臓内で顕著なグリコーゲン貯蔵(PAS染色切片で暗染色)を示した。野生型マウスおよびベクター処理されたすべてのマウスは、貯蔵のほぼ完全から完全までのクリアランスを有した。しかしながら、hGAA参照配列(V780)をコードするベクターを受けた2つの群は、中等度から顕著な線維化リンパ球性心筋炎を示し(
図5Bおよび
図5C)、これは、hGAA天然導入遺伝子を受けた8匹の動物のうちの7匹、ならびにBiPおよびvIGF2改変を伴う操作されたhGAAを受けた8匹のうちの3匹に存在した。hGAAcoV780I酵素を受けたマウスはいずれも心筋炎を有しなかったため(
図5E、
図5F、および
図5G)、この病変はベクター関連であり、より具体的には、hGAA参照配列特異的であると考えられた。
【0170】
四頭筋組織の分析によって、野生型マウスおよびさらなる改変の有無にかかわらず、V780Iバリアントをコードするベクターで処置したすべてのマウスは、貯蔵およびオートファジービルドアップのほぼ完全から完全までのクリアランスを有することが明らかにされた(
図6A~
図6H)。しかしながら、hGAAV780の参照配列をコードするベクターを受けた2つの群は、最小から中程度の残存するグリコーゲン貯蔵およびオートファジービルドアップを示し(
図10)、ポンペ病の2つの主要な特徴の最適以下の矯正をともに示した。最良の転帰は、その天然形態またはBiP-vIGF2改変のいずれかで、V780Iバリアントをコードする2つのベクターの送達から観察された。sp7-デルタ8改変は、ポンペ病に起因する組織学的病変の一貫した修正を引き起こすように見えた。参照hGAAV780配列をコードする両方の構築物は、グリコーゲン貯蔵およびビルドアップを消失させる最適以下だった。
【0171】
高用量IV投与(5e11=2.5e13GC/kg)において、hGAAcoV780IおよびBiP-vIGF2.hGAAcoV780Iは、四頭筋において正常なグリコーゲンレベルに近いことを示し、細胞内へのhGAA取り込みが顕著に良好であった(
図7A~
図7H)。前脛骨筋(TA)および腓腹筋を含む他の骨格筋の評価は、同様の結果を示した(V780Iを有するバリアント、ならびにグリコーゲンおよび中心オートファジー空胞の両方をクリアした)。すべての構築物が心臓内のグリコーゲン貯蔵を減少させ、BiP-vIGF2.hGAAcoV780I投与が最小レベルをもたらした。四頭筋におけるグリコーゲンレベルは正常に近かったが、PAS染色はいくらかの差を示し、hGAAcoV780IおよびBiP-vIGF2.hGAAcoV780Iは最良の結果を示した。
【0172】
低用量IV投与(5e10=2.5e12GC/kg)において、BiP-vIGF2
.hGAAcoV780Iは、hGAAcoV780Iよりも優れた心臓および四頭筋におけるグリコーゲン低下を示した。脳および脊髄におけるグリコーゲンレベルは、BiP-vIGF2.hGAAcoV780Iでほぼ正常であり、組織レベルが約15%であるが、おそらくより優れた標的化によるものであった。CNSでは、操作された構築物とV780Iバリアントとの間の強力な相乗効果が観察された。BiP-vIGF2.hGAAcoV780IのみがCNSグリコーゲンをクリアした。
【0173】
図8に示されるように、脊髄組織学の評価は、AAVhu68.BiP-vIGF2.hGAAcoV780Iで処置されたマウスは、グリコーゲン貯蔵のほぼ完全なクリアランスを有するが、一方、参照hGAAV780酵素をコードするベクターで処置されたマウスは、残存するグリコーゲン貯蔵を有したことを示した。脳切片の染色もまた、BiP-vIGF2.hGAAcoV780Iによる矯正を示したが、天然hGAAV780酵素では示されなかった。結果は、V780I変異およびBiP-vIGF2改変の両方の寄与を実証する。
【0174】
実施例3:ポンペマウスのhGAA発現におけるDRG-非標的化の効果
BiP-vIGF2.hGAAcoV780Iは、AAVhu68カプシドにパッケージングされた4つのmir183標的部位(BiP-vIGF2.hGAAcoV780I.4xmir183、配列番号30)(
図11)を含むように改変した。
【0175】
ベクターゲノムは、以下の配列要素を含む。
【0176】
逆位末端反復(ITR):ITRは、ベクターゲノムのすべての構成要素に隣接するAAV2(130bp、GenBank:NC_001401)に由来する同一の逆相補配列である。ITRは、AAVおよびアデノウイルスヘルパー機能がトランスで提供される場合、ベクターDNA複製の起点およびベクターゲノムのパッケージングシグナルの両方として機能する。したがって、ITR配列は、ベクターゲノム複製およびパッケージングに必要とされる唯一のシス配列を表す。
【0177】
CAGプロモータ:サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサー、ニワトリβ-アクチン(CB)プロモータ(282bp、GenBank:X00182.1)、およびウサギβ-グロビンイントロンからなるハイブリッド構築物。
【0178】
コード配列:BiP-vIGF2.hGAAcoV780I(配列番号31)をコードする、操作されたcDNA(配列番号30のnt1141~4092)。
【0179】
miR標的配列:4つのタンデムmiR-183標的配列(配列番号26)
【0180】
ウサギβ-グロビンポリアデニル化シグナル(rBGポリA):rBGポリAシグナル(127bp、GenBank:V00882.1)は、シスでの導入遺伝子mRNAの効率的なポリアデニル化を促進する。この要素は、転写終結、新生転写物の3’での特異的切断事象、および長いポリアデニルテイルの付加のためのシグナルとして機能する。
【0181】
BiP-vIGF2-hGAAcoV780IベクターゲノムにmiR183標的部位を導入する効果を、ポンペマウスへのAAVhu68のIV送達後に評価した。BiP-vIGF2.hGAAcoV780I構築物(miR183標的を有しない)で観察されるように、グリコーゲン貯蔵が、mir183標的配列を含むベクターを高用量静脈内投与後にCNSにおいて矯正された(
図12および
図13)。四頭筋におけるグリコーゲン貯蔵およびオートファジービルドアップは、高用量静脈内投与後に完全に矯正されたが、一方、グリコーゲン貯蔵矯正およびオートファジービルドアップの部分矯正が、低用量投
与後に観察された(
図14)。グリコーゲン貯蔵の矯正は、低および高用量の両方で心臓でも観察された(
図15)。CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780Iの投与で観察されたのと同様に、オートファジービルドアップは、高用量で完全に解消され、低用量で顕著に低下した(
図16)。結果は、miR183標的の付加が、miR標的配列を欠く対応するベクターと比較して、治療的導入遺伝子の有効性を変更しなかったことを確認した。
【0182】
実施例4:症候後加齢ポンペマウスにおける投与経路および用量試験
投与経路および用量の効果を、hGAAをコードするAAVhu68ベクター(例えば、AAVhu68.CAG.BiP-vIGF2.hGAAcoV780I.rBG)が静脈内(IV)および/または脳室内(ICV)注入によって投与されたポンペマウス(ならびに野生型およびビヒクル対照)において評価した。同じベクターを使用した二重投与経路アプローチ(静脈内および脳脊髄液への注入)は、疾患の末梢および神経学的徴候を矯正するであろう。遺伝子療法に適格であるかなりの割合の患者は既に進行した病状を有するため、症候後ポンペマウス(7ヶ月齢)を治療し、治療後少なくとも6ヶ月間追跡することを選択した。マウスは、静脈内(IV)、脳室内(ICV)、または二重経路のいずれかの投与を使用して、2つの用量レベル(低用量または高用量)のベクターを受けた。この試験で使用される用量(1×1011または5×1010GC ICVおよび1×1013GC/kgまたは5×1013GC/kg IV)は、実施例6に記載のNHP試験で使用される低および高用量、ならびにヒトへの投与に好適な用量(1×1013GC/kgおよび5×1013GC/kg)に対応する。
【0183】
試験の経過において、ロータロッド、ワイヤーハング、および握力評価を使用して、マウスの運動活性を試験し、プレチスモグラフィーを行った。hGAAタンパク質発現/活性およびグリコーゲン貯蔵を、血漿、四頭筋、腓腹筋、横隔膜、および脳を含む、処置したマウスから収集した様々な組織で測定した。組織学を実施して、例えば、PAS(ルクソールファーストブルー染色を介して)、hGAA発現、および神経炎症(星細胞増加)を評価した。組織切片を染色して、オートファジービルドアップまたはクリアランスを評価した(例えば、LC3Bを標識する抗体を使用して)。
【0184】
【0185】
結果は、全身プレチスモグラフィーによって評価された呼吸機能が、中枢神経系指向性(ICV)ベクターを受けるマウスにおける処置によって有意に改善されたことを示す。ポンペマウス(および患者)における呼吸機能障害は、呼吸筋を支配する運動ニューロンの貯蔵病変に直接関係すると考えられている。呼吸機能の改善は、高用量ICV処置ポンペマウスにおいて観察されたが、IV処置マウスでは観察されなかった(
図27Aおよび
図27B)。
【0186】
組織学的試験を、高用量および低用量ICV処置マウス(
図28)、ならびに高用量および低用量IV処置マウス(
図29)の四頭筋、心臓、および脊髄試料について行った。グリコーゲン貯蔵は、ICV経路を介して低または高ベクター用量を受けたマウスの脊髄において矯正された。高用量のIV投与は、四頭筋、心臓、および脊髄におけるグリコーゲン貯蔵を矯正するのに有効だった。
【0187】
体重は、ICVおよびIVベクター(二重投与経路)の組み合わせで処置された雄において、低用量および高用量の両方で有意に矯正された(
図25A)。単一経路(IV単独またはICV単独)は、体重を有意に矯正しなかった。体重は、雌ポンペとWTマウスとの間で差はなかった(
図25B)。
【0188】
高用量IVを受けたマウスの握力は、(ベースラインと比較して、かつPBS対照と比較して)有意に改善された(
図26A)。ICVおよびIV、または二重経路投与(ICV LD+IV LC)で投与された低用量ベクターについて有意な効果はなかった。しかしながら、高用量のIVおよびICVの組み合わせの投与は、注入後30日目に早くも野生型レベルまで強度を回復させ、180日目には組み合わせの増加効果があった(
図26B)。
【0189】
所見は、二重投与経路は、疾患のすべての局面を標的とするのに好ましいことを支持する。
【0190】
実施例5:非ヒト霊長類へのDRG標的化遺伝子療法ベクターの投与
NHP霊長類試験を、毒性を評価し、AAVhu68カプシド中のCAG.BiP-IGF2-hGAAcoV780IまたはCAG.BiP-IGF2-hGAAcoV780I-4xmir183のICM送達を評価するために行った。ベクターを3×1013GC/kgでICM注入し、35日目に動物を犠牲にした。
【0191】
miR183の4つのタンデム反復の付加は、頸部DRGの感覚ニューロンにおけるhGAA導入遺伝子の発現を抑制した(
図17)。hGAA導入遺伝子の顕著に減少した発現は、mir183ベクターについて腰部DRGの感覚ニューロンでも観察されたが、いくつかの発現は残存した(
図18)。驚くべきことに、miR183の存在は、運動ニューロンにおける導入遺伝子の発現を変更せず(
図19)、これは、ベクターの投与がポンペ病患者の運動ニューロンにおけるグリコーゲン貯蔵を減少させるのに有益であることを示唆する。加えて、miR183含有構築物の送達後の心臓における導入遺伝子発現に減少はなかった(
図20)。実際、心臓での発現が増加しているように見え、有効性がポンペ病患者の心臓疾患治療で高められることが示唆された。特に、miR183のタンデム反復は、頸部および胸部セグメントからのDRGの感覚ニューロンにおける毒性を低下させた(
図21Aおよび
図21B)。この用量レベルでは、腰部セグメントにおける毒性の低下は存在せず(
図21C)、これは、
図18に示されるように、腰部レベルでの残存タンパク質発現に起因する可能性がある。
【0192】
実施例6:非ヒト霊長類における投与経路試験
NHP霊長類試験は、毒性を評価し、ベクター投与の代替的または組み合わされた経路を評価するために実施される。例えば、AAVhu68.CAG.BiP-IGF2-hGAAcoV780IまたはAAVhu68.CAG.BiP-IGF2-hGAAcoV780I-4xmir183は、5×1013GC/kg(高用量)もしくは1×1013GC/kg(低用量)でIV注入、または3×1013GC(高用量)もしくは1×1013GC(低用量)でICM注入される。二重投与経路の実現可能性および毒性は、例えば、示されるIV高用量およびICM高用量、またはIV低用量およびICM低用量を投与することによって評価される。IV低用量とICM低用量の組み合わせは、ポンペ患者の治療に有益である相乗効果を明らかにすることができる。
【0193】
試験全体を通して、様々な読み出しを使用して、hGAAシグネチャーペプチド(血漿およびCSF)を検出し、hGAA酵素活性(血清および標的組織)を評価し、抗hGAA抗体力価(血液およびCSF)を測定する。組織病理学を実施して、標的組織をhGAA発現および毒性について評価する(例えば、CNS、心臓、および筋肉のH&E染色)。投与経路および投薬量を示す試験設計が、
図31に提供される。
【0194】
単一の投与経路を評価する予備的試験は、低用量IV注入された動物が、hGAAの発現を四頭筋および心臓に有していたことを明らかにした(
図34)。IV注入された動物はまた、ICM注入された動物よりも低い程度ドの脊髄軸索症を示した(
図33D~
図33F)。hGAAの発現はまた、低用量ICM注入した動物の脊髄における組織学によっても観察された(
図34)。ICM注入された動物におけるDRG変性および脊髄軸索症は、用量依存的ではなかった(
図33A~
図33F)。加えて、1例のIV低用量動物(RA3607:1e13GC/Kg)は、IV高用量注入された動物よりも高いDRG変性、脊髄軸索症、および高い心臓炎症反応を有した。
【0195】
(配列表フリーテキスト)
以下の情報は、識別数字<223>の下でフリーテキストを含む配列を提供する。
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【表8-4】
【表8-5】
【表8-6】
【表8-7】
【表8-8】
【表8-9】
【表8-10】
【0196】
本明細書に引用されるすべての文書は、参照により本明細書に組み込まれる。2019年10月10日に出願された米国仮特許出願第62/913,401号、および2019年4月30日に出願された米国仮特許出願第62/840,911号は、それらの配列表とともに、それらの全体が参照により組み込まれる。「19-8856PCT_ST25.txt」という名前で本明細書とともに提出された配列表、ならびにその中の配列およびテキストは、参照により組み込まれる。本発明は、特定の実施形態を参照して記載されているが、本発明の趣旨から逸脱することなく修正を行うことができることが理解されよう。かかる修正は、添付の特許請求の範囲内であることが意図される。
【配列表】