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特許7585243加圧水型原子炉の管状部材およびこの部材の製造方法
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  • 特許-加圧水型原子炉の管状部材およびこの部材の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】加圧水型原子炉の管状部材およびこの部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 16/00 20060101AFI20241111BHJP
   C22F 1/18 20060101ALI20241111BHJP
   G21C 3/06 20060101ALI20241111BHJP
   G21C 3/07 20060101ALI20241111BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20241111BHJP
【FI】
C22C16/00
C22F1/18 E
G21C3/06 210
G21C3/07 100
C22F1/00 612
C22F1/00 626
C22F1/00 640A
C22F1/00 640B
C22F1/00 641C
C22F1/00 683
C22F1/00 685Z
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021577210
(86)(22)【出願日】2020-07-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(86)【国際出願番号】 EP2020068839
(87)【国際公開番号】W WO2021004943
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-04-12
(31)【優先権主張番号】1907524
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】391045831
【氏名又は名称】フラマトム
【氏名又は名称原語表記】FRAMATOME
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】バルベリ,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ルグラン,フィリップ
【審査官】宮脇 直也
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-509281(JP,A)
【文献】特表2003-510619(JP,A)
【文献】特開平07-333370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 16/00
C22F 1/18
G21C 3/06 - 3/14
C22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧水型原子炉の管状部材において、その重量組成が、
- 0.8%≦Nb≦2.8%、
≦Sn≦0.65%、
- 0.015%≦Fe≦0.40%、
≦C≦100ppm、
- 600ppm≦O≦2300ppm、
- 5ppm≦S≦100ppm、
≦Cr+V+Mo+Cu≦0.35%、
≦Hf≦100ppm、
- F≦1ppm、
を有し、残りがジルコニウムおよび製錬の結果としての不純物であり、その外部表面が最終的機械研磨の後に得られた0.5μm以下のRa粗さを有する加圧水型原子炉の管状部材であって、その外部表面が、絶対値で1以下のRsk粗さおよび10以下のRku粗さを有することを特徴とする、加圧水型原子炉の管状部材。
【請求項2】
その外部表面が、前記最終的機械研磨の後に得られた0.3μm以下のRa粗さを有することを特徴とする、請求項1に記載の加圧水型原子炉の管状部材。
【請求項3】
その外部表面が、絶対値で0.75以下のRsk粗さおよび9以下のRku粗さを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の加圧水型原子炉の管状部材。
【請求項4】
原子炉向け燃料被覆管の製造方法において、
- 0.8%≦Nb≦2.8%、
≦Sn≦0.65%、
0.015%≦Fe≦0.40%、
≦C≦100ppm、
600ppm≦O≦2300ppm、
5ppm≦S≦100ppm、
≦Cr+V+Mo+Cu≦0.35%、
≦Hf≦100ppm、
F≦1ppm、
という重量組成を有し、残りがジルコニウムおよび製錬の結果としての不純物である、ジルコニウム合金インゴットを調製し、
- インゴットに対して鍛造および任意にはそれに続く焼入れ、その後、押出し加工ならびに、中間焼鈍を間に伴う冷間圧延を含む熱力学処理を実施し、全ての中間焼鈍が、合金のα→α+βトランザス温度よりも低い温度で行なわれ、応力除去焼鈍、半再結晶化焼鈍または再結晶化焼鈍で終結し、管の獲得に至り、
- 任意には、前記管の外部表面の化学的酸洗いおよび/または電解研磨および/または初期機械研磨を行ない、
- 前記外部表面の最終的機械研磨を実施して、この表面に対し0.5μm以下のRa粗さ、絶対値で1以下のRsk粗さおよび10以下のRku粗さを付与する、
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
中間焼鈍が、600℃以下の温度で行なわれることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記最終的機械研磨が、仕上げ用ホイールを用いて実施されることを特徴とする、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記最終的機械研磨が、研摩ペーストを用いた研摩により実施されることを特徴とする、請求項4または5に記載の方法。
【請求項8】
前記最終的機械研磨が、擦り合せ加工、研摩ペーストの押出し加工、研摩ペーストを含浸させた研磨用フェルトまたは研磨布を用いた研摩、の中から選択された方法によって実施されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記最終的機械研磨が、ローラバニシング加工により実施されることを特徴とする、請求項4または5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧水型原子炉向けのジルコニウム合金製の要素、特に核燃料集合体用の棒のための被覆管および構造管の製造の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
構成する製品に高い耐食性特性を付与することのできる特定的熱力学処理および/または仕上げ方法に結合され得る組成を有するさまざまな3元または4元(すなわちZrに加えてそれぞれ2つまたは3つの主合金元素を含む)ジルコニウム合金が、加圧水型原子炉の部材を製造するためにユーザーに提案されている。これらの合金は、特に、核燃料集合体の燃料被覆とも呼ばれる、燃料ペレットの被覆管および構造部材(格子、ガイド管、そして場合によっては計装管)のために使用される。これらの合金は、原子炉の正常な作動中に起こり得るさまざまな形態の腐食に耐えなくてはならないだけでなく、特に冷却流体が喪失した場合(冷却材喪失事故「LOCA」)の、すなわち極めて高い温度(900℃超)および水蒸気雰囲気内での、偶発的条件下で優れた耐食性を有するものでなければならない。
【0003】
核燃料集合体用の管の表面粗さが高いと原子炉内での腐食耐性を劣化させる、ということが知られている。
【0004】
例えば国際公開第2006/027436号は、ジルコニウム、および製錬の結果としての不純物に加えて0.8~2.8%のNb、0.015~0.40%のFe、600~2300ppmのO、5~100ppmのSそして場合によってはわずかなSn、CrまたはVを含有するジルコニウム合金の定義済みの組成および管の調製方法と結合された場合に、0.5μm以下のRa粗さを課す被覆管の外部表面の最終的機械研磨が、管の高温での、詳細にはLOCAの際に遭遇し得る温度における腐食耐性の改善を可能にする、ということを示した。この合金のHfおよびFの含有量を可能なかぎり制限する必要性も明示されており、最終的機械研磨は、所望のRa粗さを獲得しながら、例えばフッ素化浴中での酸洗いなどの結果としてもたらされると考えられる、表面上に場合によって存在する痕跡量のFを除去することを可能にする。
【0005】
LOCAの際のジルコニウム合金の管の挙動は、例えば、1000℃の温度における前記管の試料の水蒸気下での酸化試験を用いて評価される。このような試験は、例えば「LWR Fuels with Enhanced Safety and Performance Meeting」(TopFuel 2016)に際して2016年9月に提示された論文「AREVA NP M5(登録商標)Cladding Benefits for Proposed U.S. NRC RIA and LOCA Requirements」中に記載されている。
【0006】
酸化の結果としての試料の質量増加により測定される腐食のキネティクスは、当初は放物線タイプである。(当業者が一般に「ブレークアウェイ」と呼ぶ)キネティクスの劣化は、一定の試験持続時間の終りに、腐食の加速によっておよび/または「水素化」と呼ばれる水素の多大な吸収(典型的には水素の吸収は200ppmを超える)によって起こる。
【0007】
ジルコニウム合金製部材の水素化は、その機械的および微細構造的特性を劣化させ、例えば、核燃料棒の被覆管の場合における亀裂とその後の局所的炸裂による、その変形さらにはその部分的なまたは完全な破砕をもたらす可能性がある。
【0008】
国際公開第2006/027436号の推奨に適合する管は、最も一般的な合金についての約1800秒に対して約5000秒後にブレークアウェイが起こり、偶発的条件下での優れた耐食性を無条件に有する。
【0009】
しかしながら、ブレークアウェイの発生を確実な方法でさらに大幅に延期させることは、事故の場合の原子炉の安全性にとっての根本的な利点であると思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2006/027436号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、LOCA条件といった偶発的条件において非常に高い温度に曝露された際に、現在公知の合金、特にM5タイプの合金のものに比べてさらに改善された腐食および水素化に対する耐性特性を有する加圧水型原子炉向けの核燃料集合体用の管を、高い信頼性で得ることを可能にする方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため本発明は、加圧水型原子炉の管状部材において、その重量組成が、
- 0.8%≦Nb≦2.8%;
- 痕跡量≦Sn≦0.65%;
- 0.015%≦Fe≦0.40%;好ましくは0.020%≦Fe≦0.35%;
- 痕跡量≦C≦100ppm;
- 600ppm≦O≦2300ppm;好ましくは900ppm≦O≦1800ppm;
- 5ppm≦S≦100ppm;好ましくは8ppm≦S≦35ppm;
- 痕跡量≦Cr+V+Mo+Cu≦0.35%;
- 痕跡量≦Hf≦100ppm;
- F≦1ppm;
を有し、残りがジルコニウムおよび製錬の結果としての不純物であり、その外部表面が最終的機械研磨の後に得られた0.5μm以下のRa粗さを有する加圧水型原子炉の管状部材であって、その外部表面が、絶対値で1以下のRsk粗さおよび10以下のRku粗さを有することを特徴とする、加圧水型原子炉の管状部材に関する。
【0013】
部材の外部表面は、前記最終的機械研磨の後に得られた0.3μm以下のRa粗さを有することができる。
【0014】
部材の外部表面は、絶対値で0.75以下のRsk粗さおよび9以下のRku粗さを有することができる。
【0015】
本発明はまた、原子炉向け燃料被覆管の製造方法において、
- 0.8%≦Nb≦2.8%;
痕跡量≦Sn≦0.65%;
0.015%≦Fe≦0.40%;好ましくは0.020%≦Fe≦0.35%;
痕跡量≦C≦100ppm;
600ppm≦O≦2300ppm;好ましくは900ppm≦O≦1800ppm;
5ppm≦S≦100ppm;好ましくは8ppm≦S≦35ppm;
痕跡量≦Cr+V+Mo+Cu≦0.35%;
痕跡量≦Hf≦100ppm;
F≦1ppm;
という重量組成を有し、残りがジルコニウムおよび製錬の結果としての不純物である、ジルコニウム合金インゴットを調製し;
- インゴットに対して鍛造および任意にはそれに続く焼入れ、その後、押出し加工ならびに、中間焼鈍を間に伴う冷間圧延を含む熱力学処理を実施し、全ての中間焼鈍が、合金のα→α+βトランザス温度よりも低い温度で行なわれ、応力除去焼鈍、半再結晶化焼鈍または再結晶化焼鈍で終結し、管の獲得に至り;
- 任意には、前記管の外部表面の化学的酸洗いおよび/または電解研磨および/または初期機械研磨を行ない;
- 前記外部表面の最終的機械研磨を実施して、この表面に対し0.5μm以下のRa粗さ、絶対値で1以下のRsk粗さおよび10以下のRku粗さを付与する、
ことを特徴とする方法にも関する。
【0016】
中間焼鈍は、600℃以下の温度で行なわれ得る。
【0017】
前記最終的機械研磨は、仕上げ用ホイールを用いて実施可能である。
【0018】
前記最終的機械研磨は、研摩ペーストを用いた研摩により実施可能である。
【0019】
前記最終的機械研磨は、擦り合せ加工、研摩ペーストの押出し加工、研摩ペーストを含浸させた研磨用フェルトまたは研磨布を用いた研摩の中から選択された方法によって実施可能である。
【0020】
前記最終的機械研磨は、ローラバニシング加工により実施可能である。
【0021】
後述の部分で明らかになるように、本発明は、Zr-Nb合金にとって厳密に必要ではない鍛造後の焼入れを除く可能性はあるものの、国際公開第2006/027436号に記載の方法にしたがって調製される、僅かなFeおよびS、さらにはSn、Cr、V、Moおよび/またはCuをも含有しかつ比較的高いものであり得るO含有量を有する、Nbが0.8~2.8%のZr-Nb合金で製造される管から、加圧水型原子炉の管状部材、特に構造管、つまりガイド管または計装管または核燃料集合体の燃料被覆を製造することにある。所望の機械的特性をそれに付与するのにそれに適切な熱処理、好ましくは化学的酸洗い(概して、最後の熱処理の前に行なわれる)を施した後、「最終的機械研磨」と呼ばれる機械研磨作業の結果として得られる、そのRaの大きさのみならずそのRskおよびRkuの大きさによっても定義される特別な表面仕上げを得ることを可能にする方法にしたがって、管の外部表面の研磨を実施する。これらの要件の目的は、管の外部表面が、偶発的状況下で、特にLOCAの場合において腐食および/または水素化に対するその感応性を可能なかぎり低くする形態を有するように保証することにある。
【0022】
本発明に係る粗さタイプををもたらす、したがって本発明に係る方法の主要なステップを構成する最終的機械研磨に先行して、必ずしも全て機械研磨ではない他の研磨作業を行うことができる。以下では、「初期研磨」とは、粗さの獲得の中間ステップにすぎない研磨を意味し、「最終研磨」とは、目標とした粗さの獲得をもたらす最後の研磨を意味する。
【0023】
当然のことながら、製品表面の本発明に係る処理の際に、機械研磨作業のみが行なわれる場合、この作業は、すでに言及した最終的機械研磨を構成する。この最終的機械研磨の後には他の製造ステップ、特に検査、脱脂などが続く可能性があるが、後のステップのいずれも、特にハロゲンによる表面の汚染またはその粗さの劣化をもたらしてはならない。
【0024】
「M5」または「M5Framatome」の名称で知られているFramatome社製の合金は、その組成により、特に本発明の適用範囲に入る。
【0025】
本発明は、以下の添付図面を参考にしながら提供されている以下の説明を読むことでより良く理解できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】水蒸気環境内で1000℃の温度での滞留時間の平方根に応じた、国際公開第2006/027436号の組成およびRa要件に適合するZr-Nb合金(M5Framatomeタイプのもの)の基準試料質量増加を示す。
図2】水蒸気環境内で1000℃の温度での滞留時間の平方根に応じた、同じ基準試料の水素含有量の推移を示す。
図3】水蒸気環境内で1000℃の温度での滞留時間の平方根に応じた、同じ基準試料と本発明の試料の質量増加および水素含有量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
前述の通りのLOCA試験の際の管の挙動は、最も一般的には、NF EN ISO4287規格中で定義されている通りのパラメータRaによってのみ説明される外部表面の粗さによって左右される。このパラメータは、基準長さと呼ばれる所与の評価長さ上で、表面の粗さプロファイルの算術的平均偏差に対応し、ここでこの表面は粗さプロファイルの平均ラインとの関係において異なる高さの突出部と陥凹部を含んでいる。Raは、高さの絶対値の平均の評価を構成する。Raは、以下の式によって計算される:
【数1】
式中、lrは、粗さプロファイルの基準長さであり、Z(x)は、粗さプロファイルの平均ライン上の横座標xについての粗さプロファイルの縦座標(または高さ)である。ここで高さの原点は、粗さプロファイルの平均値であり、したがって、0からlrまでとったZ(x)の積分がゼロであるという点に留意すべきである。
【0028】
ただし、実際に、発明者らの経験から、管の重大な酸化および/または水素化をひき起こす可能性のある条件における合金の挙動を細かく理解し、特に、その外部表面が本発明にしたがって処理された場合に観察される非常に優れた挙動を説明するには、パラメータRaでは不十分であることが示された。
【0029】
発明者らは、NF EN ISO4287規格中に定義されている2つのパラメータも、提起された問題の解決にとって特に重要であることを確認した。すなわち、これらのパラメータは、「スキューネス(歪度)」と呼ばれるRsk、および「クルトシス(尖度)」と呼ばれるRkuである。
【0030】
パラメータRskは、評価された粗さプロファイルの非対称性を定義する。これは、基準長さlr上で定義された粗さプロファイルの平均ラインとの関係における高さの分布の非対称性を表現する。このパラメータは、表面状態の形態についての情報を提供する。Rsk値ゼロは、平均ラインの周りの高さの正規分布(ガウス分布)に対応する。Rskの正の値は、最も高い値に向かってずれた高さ分布を有する「ホロー(hollow)」プロファイルに対応する;例えば、突出部が優勢なプラトー表面の場合がそれである。Rskの負の値は、最低値に向かってずれた高さ分布を有する「フル(full)」プロファイルに対応し、例えば、陥凹部が優勢なプラトー表面の場合がそれである。Rskは、以下の式によって計算される:
【数2】
式中、Rqは、
【数3】
にしたがった基準長さlr上の評価対象のプロファイルの平均二乗偏差である。
【0031】
Rqは、その基準長さlr上の高さの二乗平均に対応する。
【0032】
パラメータRkuは、評価対象の粗さプロファイルの扁平度、すなわち基準長さlr上で定義された粗さプロファイルの平均ラインとの関係における高さ分布の幅を定義する。このパラメータは、表面状態の形態についての情報を提供する。3に等しいRsk値は、高さの正規分布(ガウス分布)に対応する。3超のRsk値は、正規分布に比べて「密な」プロファイル、すなわち粗さプロファイルの平均ラインとの関係における絶対値で小さい高さを優勢的に有するプロファイルに対応する。3未満のRku値は、正規分布に比べて「広がった」プロファイル、すなわちより多くの割合の高さが平均ラインから遠く離れている、例えば、範囲全体にわたって高さの等しく分布したプロファイルに対応する。Rkuは、以下の式によって計算される:
【数4】
【0033】
RskおよびRkuは、特に、測定される表面の接触および耐摩耗性特性ならびに潤滑適性を評価するために摩擦学において利用されるが、表面の耐食性を認識するためには利用されていない。
【0034】
発明者らは、全てが等しいものとして、管の外部表面のパラメータRsk(スキューネス)およびRku(クルトシス)が一定の基準を満たす場合、偶発的条件、特にLOCAの場合における酸化動態は、試験の持続時間全体にわたって放物線にとどまる、ということを確認した。そうでない場合、試験中の酸化は加速する。
【0035】
酸化によって誘発される表面の巨視的な応力だけでは、試験の持続時間全体にわたる遅延したブレークアウェイを有するか、さらにはブレークアウェイの無い管試料について観察される挙動の差異を説明することはできない。この挙動の差異を説明するために発明者らが提唱する仮説は、応力が表面の凹凸のところで局所的に酸化に作用する可能性もあると考えられる、ということである。多くの目立った突出部を有する表面は、酸化物-金属の界面に直交して酸化物のひび割れを発生させる危険性の増加、および突出部のところでの酸化の局所的加速を示す可能性があると思われる。
【0036】
目標とした表面は、ほぼ対称的な粗さ分布すなわち絶対値でゼロに近いスキューネスRsk、つまり、|Rsk|≦1、好ましくは|Rsk|≦0.75、ならびに10以下、好ましくは9以下のクルトシスRkuで現われる過度に目立つことのない突出部と陥凹部、を有する研磨済み表面(Ra≦0.5μm、好ましくは≦0.3μm)である。
【0037】
観察された挙動改善は、管の外部表面に所望される粗さを得ることを可能にする入念な機械的表面仕上げを実施することによって、再現可能な形で得ることができる。
【0038】
この仕上げを得る手段はさまざまであり、ここでこれらの手段について網羅的に説明することはできない。
【0039】
この仕上げを得るための考えられる方法は、増大する粒子番手の炭化ケイ素SiC製ホイール(例えばISO 8486-2規格にしたがった240メッシュ以上の粒子番手まで)を用いた管の連続的研磨を行なうことからなり、これらの作業は初期機械研磨を構成し、例えばScotch Brite(商標)の仕上げ用ホイールなど、粒子番手の非常に細かいロールアップ式仕上げ用砥石、ラジアルブラシ、フラップディスクなどの仕上げ用ホイールを用いた最終的研磨により終結する。この仕上げ方法は、少なくともブレークアウェイの遅延を示す、すなわち、最終研磨前の組成および調製方法が国際公開第2006/027436号で述べられたものにほぼ適合している合金については、10000秒を超えてブレークアウェイを発生させる管を得ることを可能にする。
【0040】
初期研磨は、単独でまたは機械研磨と組合わせて使用される非機械的研磨(例えば化学的研磨または電解研磨)を含むこともできる。このとき、この初期研磨の後には、最終的機械研磨作業が続く。
【0041】
また経験から、一回のみの機械研磨で、処理対象の製品について目標とした粗さを得ることが可能であることが示される場合には、一回の機械研磨しか実施しないことも可能であり、それが製品の表面の最後の研磨作業を構成することから、この単一回の機械研磨を「最終的機械研磨」と呼ぶことになる。
【0042】
機械研磨ステップおよびこれらのステップ、特に最終的機械研磨のために使用される手段は、従来、所望の最終粗さおよびその検査様式を含めた仕様に基づいてこのタイプの手段の供給業者と共に定義することが可能である。また、有害であるまたは除去困難であることが判明し得るために回避すべきである研磨材料、特にAFCEN(原子力発電所の設計・建設基準に関するフランス協会)編のRCC-C(PWR原子力発電所の燃料集合体に適用可能な設計および建設規則)のような適用可能な文書中で定義されている材料も明示されるものとする。
【0043】
所望されるタイプの粗さに到達できるようにする、場合によっては初期の機械研磨そして最終的機械研磨のプロセスの正確なパラメータは、一連の通常の試験を用いて、当業者によって実験的に決定され得るものである。そのためには、使用すべき研磨手段ならびにそれらの利用パラメータを、管の組成および管が受けた熱力学的処理そして場合によっては単数または複数の機械研磨のステップに先行し得た化学的酸洗いおよび/または電解研磨と相関させることが必要である。これらの特性は、特に、単数または複数の機械研磨のステップ前の管の外部表面の硬度および状態を条件付け、また全てが等しいものであるものして、最終的機械研磨の結果に作用し得る。
【0044】
したがって、本発明に係る燃料被覆を得るためのこの管の表面の仕上げ方法は、国際公開第2006/027436号に引用された理由で、次のような重量組成および調製方法を有する、製錬の結果として場合によってはもたらされる不純物を含有するジルコニウム合金製の管に対して適用される。
【0045】
そのNb含有量は、0.8~2.8%である。
【0046】
そのSn含有量は、痕跡量(換言すると、考慮対象の元素を故意に添加することなく、合金の製錬の結果でしかない、ゼロに等しいかまたはわずかにゼロを上回る含有量)から0.65%の間である。この元素の通常の検出限界は、およそ30ppmであり、Snの含有量は上記で定義された通りの単なる痕跡量に対応する値(したがって厳密にゼロとなる値を含めた値)まで降下し得るということを理解すべきである。
【0047】
そのFe含有量は少なくとも0.015%、好ましくは少なくとも0.02%、そして多くとも0.40%、好ましくは多くとも0.35%である。
【0048】
Cr、V、CuまたはMoは任意には、それらの含有量の和が0.35%を超えないことを条件として、Feを補完するかまたはその一部に置換するために存在し得る。
【0049】
合金のC含有量は、100ppmを超えてはならない。
【0050】
合金は、600~2300ppm、好ましくは900~1800ppmのOを含有する。
【0051】
S含有量は、5~100ppm、好ましくは8~35ppmに維持されなければならない。
【0052】
合金の内部にHfが存在することは、回避すべきである。その含有量は、最終的合金中に100ppm超のHf、好ましくは75ppm超のHfが見い出されないように、非常に低いものでなければならない。したがって、合金製造の元となるZrスポンジの調製の際のHfの分離に、特別な注意が払われなければならない。
【0053】
合金の内部に存在するFは、最大1ppmに制限されなければならない。
【0054】
また非常に重要でもある要件は、合金の表面におけるフッ化物の不在である。
【0055】
国際公開第2006/027436号に示されているように、LOCAの際の腐食および水素化に対する改善された耐性を有する被覆管または構造管を得るためには、フッ化物の徹底的な除去に至る表面調製物を使用することが絶対に不可欠である。この観点から見て、化学的酸洗いの後の機械研磨の実施は、利用前に管の表面を調製するために最も適切な方法である。
【0056】
その上、Raの最大値に限定されない、最終的管状製品の外部表面の粗さ特性についての非常に厳密な要件は、化学的研磨を用いては容易に到達できるものではないおそれがある。したがって、機械的手段による、例えば以下でその実施例について詳述する前述の方法による研磨の形態で、管の表面の調製の少なくとも最終ステップを実施することが必要である。
【0057】
合金の製錬の結果として得たインゴットからの管の調製は、鍛造と任意にはそれに続く焼入れ、押出し加工、および中間焼鈍を間に伴う冷間圧延を含む方法にしたがって行なわれ、全ての焼鈍は、合金のα→α+βトランザス温度よりも低い温度、したがって概して600℃未満で行なわれる。比較的低温度でのこれらの熱処理は、通常の使用条件下で優れた腐食耐性を得ることを可能にし、最終的製品に所望される微細構造に応じて、最終的応力除去焼鈍、半再結晶化焼鈍または再結晶化焼鈍を含む。この微細構造は、本発明が関わる管のさまざまなカテゴリおよび異なる用途について異なるものであり得る。例えば、管のために優れたクリープ耐性を得たい場合には、再結晶化が推奨される。
【0058】
概して、工業的実践においては、各々500~580℃の温度で、例えば500℃で1時間そして580℃で12時間、さらには24時間行なわれる中間焼鈍を間に伴う、3回、4回または5回の冷間圧延パスを行なうことが推奨され得る。
【0059】
提起された問題の解決に必要な別の条件は、0.5μm以下、好ましくは0.3μm未満の非常に低いRa粗さを管の外部表面に課することである。
【0060】
これほどに低いRa粗さの獲得は、すでに国際公開第2006/027436号で推奨されていた。しかしながら、本発明によると、関係する合金のLOCA時の挙動の最適化をさらに高めるためには、以下の通りの他の2つの条件が必要である:
- 絶対値で1以下(したがって-1と+1の間に含まれる)、好ましくは絶対値で0.75以下(したがって-0.75と+0.75の間に含まれる)Rsk;
- および、10以下、好ましくは9未満のRku。
【0061】
本発明は、M5Framatome合金を含むZr-Nb合金管について、ブレークアウェイが観察されない期間を著しく延長することを目的としている。
【0062】
このために、特に、以下で詳述することになるさまざまなタイプの最終的研磨を用いて得られる、それらの外部表面の異なる組成および粗さ構成について、被覆管の試料(直径9.5mm、厚み0.57mm)を試験した。
【0063】
管の製造のために使用されるZrは、Hfが少ない(合金中100ppm未満)電解質結晶またはスポンジの形態で、従来の方法によって得られた。場合によって残留するフッ素の除去を可能にするのに十分な融合(仕上った管におけるFは1ppm未満)の後、加圧水型原子炉用の被覆管、ガイド管または計装管を得るための従来のインゴット加工方法、すなわち、鍛造、場合によっての焼入れ、押出し加工、α→α+βトランザス温度よりも低い温度での中間焼鈍を伴う3~5パスでのピルガー圧延が使用された。系統的には実施されなかった焼入れを除いて、この方法は、特に場合によっての酸洗いおよび内部研磨に関して、国際公開第2006/027436号で記載のものと同一である。
【0064】
表1は、M5Framatome合金製のこれらの管のうちの最初の8個の組成、使用された製造変形形態、ならびにそれらの質量増加およびそれらの水素含有量を、図1および図2および/または図3と結び付けて示している。全ての管は、再結晶化した状態にあり、最終熱処理の前に酸洗いされた。
【0065】
図1および図2には、国際公開第2006/027436号の組成要件、すなわちZr;1.02%のNb;200~1000ppmのFe;1000~1500ppmのO;5~35ppmのSそして1ppm未満のF、および0.5未満のRa粗さの要件には適合しているM5Framatome合金製の、ただしRsk粗さに関してはそのうちの一部について[-1.65;-1]または[+1;+1.48]の範囲内の値で、かつ/またはRku粗さに関してはそのうちの一部について[10;15.55]の範囲内の値で、本発明には適合していない、管の基準試料の、1000℃の水蒸気環境内での挙動(上記で引用したTopFuel 2016の論文中に記載されている通りの酸化試験)が表わされている。
【0066】
図1は、関係する環境内での滞留時間の平方根に応じた(酸化に起因する)質量増加を示し、図2は、関係する環境内での滞留時間の平方根に応じた水素含有量の推移を示している(注記:横座標軸については滞留時間の平方根を考慮しているため、曲線は、横座標軸が滞留時間を表わしている場合の曲線よりも著しく扁平になっている)。
【0067】
基準試料は、通常の判定基準にしたがった場合、偶発的条件における腐食および水素化に対する優れた耐性を有しており、約5000秒の後に介入するブレークアウェイは、ブレークアウェイが到来する前の質量増加(図1)およびH含有量(図2)の推移を表わす回帰直線の延長(点線で表わされている)より一貫して上にある実験点の位置によって例示されているように、酸化(図1)および水素化(図2)の現象の急激な加速として現われる。典型的には、図1および図2に表示されているように、燃料被覆がLOCAに付されている持続時間は1800秒であるが、燃料被覆はより長い曝露に耐えることができなければならない。
【0068】
説明を簡潔にするために、試験対象のもののうち4つの基準試料だけが表1に示されている:すなわち試料1、4、5および7である。
【0069】
表1の全ての試料について、公称組成は、合金の主要元素に関して表示されている。これらの試料は全て、1.0%のNbおよび、0.02~0.07%の含有量のFeを含有している。試験された全ての管は、100ppm未満のCおよびHf、そして1ppm未満のフッ素を含んでいた。言及されていない元素は多くても痕跡量の状態で存在する。
【0070】
試料1~8の管は全て、580℃で2時間、中間焼鈍を伴う4回の圧延パスを受けた。
【0071】
表1は、これらの被覆管に対してミツトヨSV2000粗さ計を用いて行なったRa、RkuおよびRsk粗さの測定結果も提供している。これらの粗さは、さまざまな仕上げ手段を用いて得られたものである。測定は、適用可能な規格に準拠して実施された。例えば被覆管との関係において、接線方向の研磨目については、測定は、0.8mmのカットオフで4mmの長さにわたり管の母線上で行なわれた。各管について3回の測定を行ない、これらの測定値の平均および標準偏差が表1中で示されている。
【0072】
【表1】
【0073】
管1は、増大する粒子番手の炭化ケイ素製ホイールでの研磨(初期機械研磨)の後、粒子番手240(最終的機械研磨)まで粗さが測定された基準管(そのRskの絶対値は過度に高いものである)である。この管は、粒子番手240まで増大する粒子番手の炭化ケイ素製ホイールでの同じ研磨ステップ(初期機械研磨)そしてその後仕上げホイールでの最終的機械研磨を受けた同じロットに由来する管2(この管は、全ての点において本発明に適合している)のものとほぼ等しいRa粗さを有する。
【0074】
Fe含有量がわずかに増大した、管1および2とは別のロットに由来する管3(本発明に適合したもの)は、増大する粒子番手の炭化ケイ素製ホイールを用いた研磨の代りに、増大する粒子番手(粒子番手240まで)のSiCバンドを用いて初期機械研磨が実施されたという点を除いて、管2と同じ研磨ステップを受けた。同じロットに由来する管4は、粒子番手240(最終的機械研磨)までの管3と同じ増大する粒子番手のSiCバンドでの研磨ステップ(初期研磨)を受けた。この管は、管3とは異なり、仕上げホイールでの最終的研磨を受けず、そのRskはやや高過ぎることから、本発明に適合していない。
【0075】
鉄含有量がさらに増大している別のロットに由来する管5は、ホイールまたはバンドによる初期機械研磨ステップを受けず、寸法が減少するSiC粒子番手でのサンドブラストによる研磨ステップを受けた。この管は、240のSiC粒子番手でのサンドブラストによる最終機械研磨を受けた。同じロットに由来する管6は、さらに、最後に、研摩用ペースト(この例においてはコロイドシリカ)が含浸された研磨布を用いてこすることによって研磨された。管5は、過度に高いRkuを有し、一方管6は本発明に適合している。
【0076】
初期研磨の影響を確認するために、中程度の鉄含有量を有するロットに由来する管7および8の、増大する粒子番手の炭化ケイ素製ホイールを用いた初期研磨は、粒子番手120で停止した。予期された通り、管8の仕上げホイールでの最終的研磨の持続時間は、本発明に適合した管の粗さを得るために延長されなくてはならなかったが、それは可能であった。したがって、本発明に係る粗さの獲得は初期研磨にも、最終的機械研磨のために使用される器具の特性にも、完全には左右されない。当業者であれば、経験的に、本発明に係る粗さを得ることを可能にする最終的機械研磨の条件(研磨の持続時間と結び付けられた、研磨ツールの特性およびその使用パラメータ)を決定できるものである。
【0077】
管1は、そのRkuが本発明に適合しそのRaが本発明に適合しかつ管2のものにほぼ等しいにもかかわらず、過度に高いRskを示す。管7は、そのRaが本発明に適合し管8のものに等しいにも関わらず、過度に高いRskおよびRkuを示す。これは、管の粗さを表わす3つの大きさには強い相関関係が無いこと、そして本発明に係る精確な粗さ構成を得るためには、最終的機械研磨が極めて高い重要性をもつことを明らかに示している。
【0078】
表1の管2、3、6および8のLOCA試験における挙動は、図3に表わされている。比較を容易にするため、図1および図2の試料の結果もまた、図3に灰色で示されている。
【0079】
試料2と同じ管に由来する2つの試料については、試験をそれぞれ30000秒および35000秒まで延長したが、ブレークアウェイは出現しなかった。対応する点は図3に示されている。
【0080】
図3はまた、組成および粗さが説明されている下表2の管11~19について得られた結果も含んでいる。これらの管は、合金元素がより強く存在するという点において、表1の管と異なっているが、それらの組成は本発明が求めるものに適合したままである。試験対象の管は全て、100ppm未満のCおよびHf、そして1ppm未満のフッ素を含んでいた。言及されていない要素は、多くても痕跡量の状態で存在する。
【0081】
【表2】
【0082】
管11、13および17は全て、粒子番手240までのSiCホイールでの従来の一連の初期機械研磨を受け、管14および15は、粒子番手240に至るまでのSiCバンドによる一連の初期機械研磨を受け、管12、16および19は初期化学研磨を受け、管18は、初期研磨ステップを全く受けなかった。最終的研磨ステップは表2に示されている通り、異なるものである:化学研磨またはさまざまな手段による機械研磨:仕上げホイール、研摩ペースト(コロイドシリカ、人工ダイヤモンド、TiまたはZrの金属酸化物)による研摩、ローラバニシング加工である。管19については、最終的機械研磨は、粒子番手240のSiCホイールでの研磨に対応し、そのRkuは、本発明に適合するには過度に高いものである。後続する最終的機械研磨の無い管17の最終的化学研磨によって、本発明に適合するRkuを得ることはできなかった。試験された研摩ペーストによる研摩方法は、管13については合成ダイヤモンドを含有する研摩ペーストを用いた擦り合せ加工、そして管16については、金属酸化物(TiおよびZr)の混合物が含浸されたフェルトである。研摩ペーストを用いた他の研摩方法、例えば研摩ペーストの押出し加工による、さらには管14の場合のように研摩ペーストの使用(ローラバニシング加工)無しの機械加工を利用することが可能であると思われる。管8は、最後の熱処理の後、仕上げホイールによる研磨を直接受けた。予期された通り、仕上げホイールによる最終的機械研磨の持続時間は、Ra、RskおよびRkuについて本発明が求める特性を得るために大幅に延長されなければならず、このため該方法は工業的でないものとなっていた。表3の例は、本発明に係る粗さの獲得が、初期研磨の存在にも、また機械的または非機械的というその性質にも左右されないこと、そして、最終的機械研磨がさまざまな手段を用いて実施可能であることを示している。
【0083】
図3は、本発明にしたがって製造された管が、組成および表面粗さの観点から見て、あらゆる場合において類似の合金について先行技術において確認された5000秒をはるかに上回る1000℃の水蒸気に対する曝露時間より前にブレークアウェイを受けないということを示している。それぞれ図1および図2の基準試料および表2の試料17および19に対応する図3上の回帰直線の上方にある、灰色の点および黒色の点を参照のこと。詳細には、質量増加の勾配変化(腐食の加速に対応する)および水素化(200ppmを超える水素の取込み)は、10000秒を超えると著しく異なっている。最終的研磨のさまざまな実施方法の間で、結果の非常に明白な相違は見られない。
【0084】
高温での酸化耐性が表面状態、特にフッ素汚染(例えばフッ素-窒素浴での酸洗いに由来すると考えられる汚染)の不在および制御されているRa粗さによって左右されることが公知であったにせよ、ピークの形態に関係付けされかつ閾値の下方に含まれる他の粗さパラメータ、つまりRskおよびRkuが、適切に選択された場合にはLOCAの状況における管の酸化および水素化の反応速度論的加速をさらに遅延させることを可能にし得るということは知られていなかった。
【0085】
パラメータRskおよびRkuは、2Dプロフィロメトリで実施された粗さ測定値の分析、すなわち、平均ラインとの関係における表面状態の幾何学的偏差の分析に対応する。3Dプロフィロメトリでの測定の場合、等価のパラメータSskおよびSkuを使用することか、または、表面全体ではなく単数または複数の母線上で分析を実施することが可能である。

図1
図2
図3