(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】ダンパ付き伝動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 45/02 20060101AFI20241111BHJP
F16F 15/134 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
F16H45/02 Y
F16F15/134 A
F16F15/134 B
(21)【出願番号】P 2022015933
(22)【出願日】2022-02-03
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000138521
【氏名又は名称】株式会社ユタカ技研
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】弁理士法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】薄井 友彦
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-052727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 45/02
F16F 15/134
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の軸線回りに相対回転可能に配置される入力回転体(60)、中間回転体(70)及び出力回転体(80)と、前記中間回転体(70)及び前記入力回転体(60)間を接続する一次ダンパばね(S1)と、前記中間回転体(70)及び前記出力回転体(80)間を接続する二次ダンパばね(S2)とを備え、前記一次ダンパばね(S1)及び前記二次ダンパばね(S2)が、前記入力回転体(60)と同心の同一仮想円上で交互に配列されるダンパ付き伝動装置であって、
前記出力回転体(80)は、前記一次ダンパばね(S1)及び前記二次ダンパばね(S2)のばね配列群を囲繞する第1円環状部(80c)を
、唯一の円環状部分として外周部に有すると共に、前記中間回転体(70)は、前記第1円環状部(80c)に前記ばね配列群を挟んで囲繞される第2円環状部(70c)を
、唯一の円環状部分として内周部に有しており、前記出力回転体(80)及び前記中間回転体(70)は軸方向で互いに重なり合うよう配置され、前記入力回転体(60)は、前記ばね配列群を相互間に保持して互いに連結される一対のばね保持板(61,62)で構成されることを特徴とするダンパ付き伝動装置。
【請求項2】
前記一次ダンパばね(S1)と前記二次ダンパばね(S2)とは相異なるばね剛性に設定されることを特徴とする、請求項1に記載のダンパ付き伝動装置。
【請求項3】
加速時において前記入力回転体(60)と前記中間回転体(70)との相対回転量を所定量以下に規制する第1ストッパ機構(ST1)と、減速時において前記出力回転体(80)と前記中間回転体(70)との相対回転量を所定量以下に規制する第2ストッパ機構(ST2)と、加速時及び減速時において前記入力回転体(60)と前記出力回転体(80)との相対回転量を所定量以下に規制する第3ストッパ機構(ST3)とを備え、
加速時には前記第1ストッパ機構(ST1)及び前記第3ストッパ機構(ST3)により前記一次ダンパばね(S1)及び前記二次ダンパばね(S2)の圧縮限界が規定される一方、減速時には前記第2ストッパ機構(ST2)及び前記第3ストッパ機構(ST3)により前記一次ダンパばね(S1)及び前記二次ダンパばね(S2)の圧縮限界が規定されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のダンパ付き伝動装置。
【請求項4】
前記第1ストッパ機構(ST1)は、前記軸方向で前記中間回転体(70)を挟む前記一対のばね保持板(61,62)の相互間を結合する連結ピン(63)と、前記第2円環状部(70c)に形成されて周方向に延び且つ前記連結ピン(63)が摺動可能に嵌合する長孔部(70ch)とを有し、
また前記第2ストッパ機構(ST2)は、前記第2円環状部(70c)の外周に突設したストッパ凸部(70t)と、前記第1円環状部(80c)の内周に凹設されて前記ストッパ凸部(70t)が係合可能なストッパ凹部(80co)とを有し、
更に前記第3ストッパ機構(ST3)は、前記第1円環状部(80c)の外周部に相対回転不能に係止させる爪部(90t)と、前記入力回転体(60)の外周に凹設されて前記爪部(90t)を周方向に相対摺動可能に係合させる切欠き溝部(61k,62k)とを有していることを特徴とする、請求項3に記載のダンパ付き伝動装置。
【請求項5】
前記一対のばね保持板(61,62)は、前記連結ピン(63)とは別部品であって該連結ピン(63)よりも径方向外方側に存する複数の連結部材(65)を介して、相互間が連結され、前記複数の連結部材(65)は、複数の前記ストッパ凸部(70t)の先端部と複数の前記ストッパ凹部(80co)の内底面との相対向面間に周方向摺動可能に挟持されることを特徴とする、請求項4に記載のダンパ付き伝動装置。
【請求項6】
ロックアップクラッチ(L)により流体伝動と機械伝動を切換え可能なトルクコンバータ(TC)に内蔵されて前記機械伝動のために用いられる、請求項1~5の何れか1項に記載のダンパ付き伝動装置であって、
前記トルクコンバータ(TC)のタービンランナ(12)と前記出力回転体(80)との締結部(53)と、前記ばね配列群とが径方向に重なり合うよう配置されることを特徴とするダンパ付き伝動装置。
【請求項7】
前記トルクコンバータ(TC)の出力ハブ(29)と前記出力回転体(80)の前記第1円環状部(80c)とが、前記入力回転体(60)の側方に配置した動力伝達プレート(90)を介して相互に接続され、前記動力伝達プレート(90)と前記タービンランナ(12)との結合部が前記締結部(53)となることを特徴とする、請求項6に記載のダンパ付き伝動装置。
【請求項8】
前記動力伝達プレート(90)は、前記トルクコンバータ(TC)の出力ハブ(29)とステータハブ(31)との間に介装されるベアリング(35)を支持するベアリング受け部(90mb)を有することを特徴とする、請求項7に記載のダンパ付き伝動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝動装置、特に同一の軸線回りに相対回転可能に配置される入力回転体、中間回転体および出力回転体と、中間回転体及び入力回転体間を接続する一次ダンパばねと、中間回転体及び出力回転体間を接続する二次ダンパばねとを備え、入力回転体と出力回転体間で一次・二次ダンパばねが中間回転体を介して直列配置されるダンパ付き伝動装置に関する。
【0002】
尚、本発明及び本明細書において、「軸方向」とは入力回転体、中間回転体及び出力回転体の回転軸線(換言すれば出力軸27の軸線Z)に沿う方向をいい、また「径方向」とは、前記回転軸線を中心とした円弧の半径方向をいい、さらに「周方向」とは、前記回転軸線を中心とした円弧の円周方向をいう。
【背景技術】
【0003】
上記したダンパ付き伝動装置は、例えば特許文献1,2にも示されるように従来公知である。そして、これらの特許文献には、ロックアップクラッチにより流体伝動と機械伝動を切換え可能なトルクコンバータに、機械伝動に用いるダンパ付き伝動装置が内蔵されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-114237号公報
【文献】特開平8-233066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のダンパ付き伝動装置では、一次ダンパばねと二次ダンパばねが、径方向にも軸方向にもそれぞれ異なる位置に配置されるため、装置の径方向・軸方向の各寸法が大きくなる。これに対し、特許文献2のダンパ付き伝動装置では、一次ダンパばね及び二次ダンパばねを、出力回転体と同心の同一仮想円上で交互に配列しているため、装置を径方向・軸方向に小型化する上で有利な構造となっている。
【0006】
しかしこの特許文献2の伝動装置では、特許文献1の伝動装置と同じく、出力回転体が中間回転体及び入力回転体よりも径方向内方寄りに配置されるため、装置中心部の出力取出部(例えばトルクコンバータの出力ハブ)に出力回転体の内周部を接続する場合には、その接続部よりも径方向外方側に十分に離して一次・二次ダンパばねを配置する必要がある。従って、ダンパばね設置径が大きくなって(即ちダンパばねの各回転体における設置位置が径方向外方寄りとなって)、装置の径方向寸法が大きくなる虞れがある。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、従来装置の上記課題を簡単な構造で解決可能なダンパ付き伝動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、同一の軸線回りに相対回転可能に配置される入力回転体、中間回転体及び出力回転体と、前記中間回転体及び前記入力回転体間を接続する一次ダンパばねと、前記中間回転体及び前記出力回転体間を接続する二次ダンパばねとを備え、前記一次ダンパばね及び前記二次ダンパばねが、前記入力回転体と同心の同一仮想円上で交互に配列されるダンパ付き伝動装置であって、前記出力回転体は、前記一次ダンパばね及び前記二次ダンパばねのばね配列群を囲繞する第1円環状部を、唯一の円環状部分として外周部に有すると共に、前記中間回転体は、前記第1円環状部に前記ばね配列群を挟んで囲繞される第2円環状部を、唯一の円環状部分として内周部に有しており、前記出力回転体及び前記中間回転体は、軸方向で互いに重なり合うよう配置され、前記入力回転体は、前記ばね配列群を相互間に保持して互いに連結される一対のばね保持板で構成されることを第1の特徴とする。
【0009】
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記一次ダンパばねと前記二次ダンパばねとは相異なるばね剛性に設定されることを第2の特徴とする。
【0010】
また本発明は、第1又は第2の特徴に加えて、加速時において前記入力回転体と前記中間回転体との相対回転量を所定量以下に規制する第1ストッパ機構と、減速時において前記出力回転体と前記中間回転体との相対回転量を所定量以下に規制する第2ストッパ機構と、加速時及び減速時において前記入力回転体と前記出力回転体との相対回転量を所定量以下に規制する第3ストッパ機構とを備え、加速時には前記第1ストッパ機構及び前記第3ストッパ機構により前記一次ダンパばね及び前記二次ダンパばねの圧縮限界が規定される一方、減速時には前記第2ストッパ機構及び前記第3ストッパ機構により前記一次ダンパばね及び前記二次ダンパばねの圧縮限界が規定されることを第3の特徴とする。
【0011】
また本発明は、第1~第3の何れかの特徴に加えて、前記第1ストッパ機構は、前記軸方向で前記中間回転体を挟む前記一対のばね保持板の相互間を結合する連結ピンと、前記第2円環状部に形成されて周方向に延び且つ前記連結ピンが摺動可能に嵌合する長孔部とを有し、また前記第2ストッパ機構は、前記第2円環状部の外周に突設したストッパ凸部と、前記第1円環状部の内周に凹設されて前記ストッパ凸部が係合可能なストッパ凹部とを有し、更に前記第3ストッパ機構は、前記第1円環状部の外周部に相対回転不能に係止させる爪部と、前記入力回転体の外周に凹設されて前記爪部を周方向に相対摺動可能に係合させる切欠き溝部とを有していることを第4の特徴とする。
【0012】
また本発明は、第4の特徴に加えて、前記一対のばね保持板は、前記連結ピンとは別部品であって該連結ピンよりも径方向外方側に存する複数の連結部材を介して、相互間が連結され、前記複数の連結部材は、複数の前記ストッパ凸部の先端部と複数の前記ストッパ凹部の内底面との相対向面間に周方向摺動可能に挟持されることを第5の特徴とする。
【0013】
また本発明は、ロックアップクラッチにより流体伝動と機械伝動を切換え可能なトルクコンバータに内蔵されて前記機械伝動のために用いられる、第1~第5の何れかの特徴を備えたダンパ付き伝動装置であって、前記トルクコンバータのタービンランナと前記出力回転体との締結部と、前記ばね配列群とが径方向に重なり合うよう配置されることを第6の特徴とする。
【0014】
また本発明は、第6の特徴に加えて、前記トルクコンバータの出力ハブと前記出力回転体とが、前記入力回転体の側方に配置した動力伝達プレートを介して相互に接続され、前記動力伝達プレートと前記タービンランナとの結合部が前記締結部となることを第7の特徴とする。
【0015】
また本発明は、第7の特徴に加えて、前記動力伝達プレートは、前記トルクコンバータの出力ハブとステータハブとの間に介装されるベアリングを支持するベアリング受け部を有することを第8の特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の特徴によれば、入力回転体と出力回転体との間で中間回転体を介して直列配置される一次ダンパばね及び二次ダンパばねを、各回転体と同心の同一仮想円上で交互に配列したので、ダンパ付き伝動装置を径方向・軸方向に小型化する上で有利である。
【0017】
また特に出力回転体は、一次・二次ダンパばねのばね配列群を囲繞する第1円環状部を、唯一の円環状部分として外周部に有し、中間回転体は、第1円環状部にばね配列群を挟んで囲繞される第2円環状部を、唯一の円環状部分として内周部に有し、出力回転体及び中間回転体は、軸方向で互いに重なり合うよう配置され、入力回転体は、ばね配列群を相互間に保持して互いに連結される一対のばね保持板で構成されるので、伝動装置の外周側(即ちばね配列群から見て径方向外方側)に偏在し且つ中間回転体と軸方向に重なり合う配置となる出力回転体は、これの内周側を出力取出部(例えば出力ハブ)に接続させる必要はなくなり、その接続部との関係でダンパばね設置径を大きくする必要もなくなる。従って、この観点からも、伝動装置の径方向小型化に更に寄与することができる。
【0018】
また第2の特徴によれば、一次ダンパばねと二次ダンパばねとは相異なるばね剛性に設定されるので、例えば低~中トルク領域では一次・二次ダンパばねを同時作用させることで低バネレート化による高減衰効果を達成し、また過大トルクの入力時には高剛性のダンパばねのみを作用させてトルク変動の緩和効果を達成することが可能となり、従って、ダンパ付き伝動装置は、これを前述のように小型化し得る効果を達成しながら、減衰性能を向上させることが可能となる。
【0019】
また第3の特徴によれば、加速時において入力回転体と中間回転体との相対回転量を所定量以下に規制する第1ストッパ機構と、減速時において出力回転体と中間回転体との相対回転量を所定量以下に規制する第2ストッパ機構と、加速時及び減速時において入力回転体と出力回転体との相対回転量を所定量以下に規制する第3ストッパ機構とを備え、加速時には第1・第3ストッパ機構により一次・二次ダンパばねの圧縮限界が規定される一方、減速時には第2・第3ストッパ機構により一次・二次ダンパばねの圧縮限界が規定される。これにより、加速時・減速時の何れにおいても各ダンパばねが過度に変形して破損するのを効果的に防止できる。
【0020】
また第4の特徴によれば、第1ストッパ機構は、軸方向で中間回転体を挟む一対のばね保持板の相互間を結合する連結ピンと、第2円環状部に形成されてその周方向に延び且つ連結ピンが摺動可能に嵌合する長孔部とを有するので、入力回転体及び中間回転体を、それらの板厚増大を抑えて軸方向にコンパクトな組立体とすることができて、伝動装置の更なる小型化が図られ、その上、第1,第2ばね保持板間の連結手段(連結ピン)が第1ストッパ機構の一部を兼ねるから、構造簡素化や部品点数の削減が図られる。また第2ストッパ機構は、第2円環状部の外周に突設したストッパ凸部と、第1円環状部の内周に凹設されてストッパ凸部が係合可能なストッパ凹部とを有するので、中間回転体外周のストッパ凸部の一部が出力回転体内周のストッパ凹部内に受容されることで、出力回転体と中間回転体とが径方向に一部重なり合う配置となって伝動装置を径方向に一層小型化できる。更に第3ストッパ機構は、第1円環状部の外周部に相対回転不能に係止させる爪部と、入力回転体の外周に凹設されて爪部を周方向に相対摺動可能に係合させる切欠き溝部とを有するので、加減速時の最大捩り角度規制を、入力回転体及び出力回転体の各外周部に配したストッパ手段(第3ストッパ機構)に効率よく担わせることができ、従って、比較的強度が弱くなり易い入力回転体の上記連結ピン(第1ストッパ機構の一部)や中間回転体の上記ストッパ凸部(第2ストッパ機構の一部)が、加減速時の最大捩り角変位の際に過大トルクを受けるのを回避できるため、伝動装置全体としての更なる耐久性向上に寄与することができる。
【0021】
また第5の特徴によれば、入力回転体を構成する一対のばね保持板は、前記連結ピンよりも径方向外方側に存する複数の連結部材を介して相互間が連結され、その複数の連結部材は、複数のストッパ凸部の先端部と複数のストッパ凹部の内底面との相対向面間に周方向摺動可能に挟持されるので、それら連結部材を利用して入力回転体、中間回転体及び出力回転体を相互に容易に同心配置可能となり、しかも、その連結部材が回転体相互の調心手段と、一対のばね保持板間の連結手段とを兼ねることになって、装置の構造簡素化が図られる。
【0022】
また第6の特徴によれば、上記したダンパ付き伝動装置がトルクコンバータに内蔵されてトルクコンバータの機械伝動に用いられ、タービンランナと出力回転体との締結部と、ばね配列群とが径方向に重なり合うよう配置されるので、トルクコンバータにおける機械伝動部分(即ちダンパ付き伝動装置)を径方向に効果的に小型化できる。
【0023】
また第7の特徴によれば、トルクコンバータの出力ハブと出力回転体の第1円環状部とが、入力回転体の側方に配置した動力伝達プレートを介して相互に接続され、この動力伝達プレートとタービンランナとの結合部が前記締結部となるので、出力ハブと出力回転体の外周部(第1円環状部)とが径方向に離間していても、その間が動力伝達プレートで無理なく接続でき、これにより、出力ハブは、これを大径化することなく出力回転体の外周部より出力トルクを動力伝達プレート経由で受け取ることができ、出力ハブの軽量小型化やコスト節減に寄与することができる。またダンパ付き伝動装置の周辺部材(例えばタービンランナ等)の形状等の設計変更に対して、動力伝達プレートの形状変更で容易に対応可能となり、設計・製造コスト上、有利となる。
【0024】
また第8の特徴によれば、動力伝達プレートは、トルクコンバータの出力ハブとステータハブとの間に介装されるベアリングを支持するベアリング受け部を有するので、出力ハブには、ステータハブに対向するベアリング受け部を設ける必要はなくなり、それだけ出力ハブを径方向に更に小型化でき、これにより、出力ハブの軽量化やコスト節減に一層有効である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係るダンパ付き伝動装置を内蔵したトルクコンバータの要部縦断面図(
図2の1X-1X線に沿う拡大断面図)
【
図2】ダンパ付き伝動装置の要部横断面図(
図1の2X-2X線に沿う断面図)
【
図3】
図2と同方向から見たダンパ付き伝動装置の主要部品の単品正面図であって、(A)は動力伝達プレートを示し、(B)は入力回転体の第2ばね保持板を示す
【
図4】
図3と同様のダンパ付き伝動装置の主要部品の単品正面図であって、(C)は出力回転体を示し、(D)は中間回転体を示す
【
図5】加速時における伝動装置各部の動作変化態様を示す要部側面図であって、(1)は中間回転体が入力回転体・出力回転体に対し中立位置にある状態を示し、また(2)は、入力回転体が中間回転体に対し相対回転限界に到達(即ち第1ストッパ機構がストッパ作動)して低剛性の一次ダンパばねが圧縮限界に達した状態を示し、また(3)は、入力回転体が出力回転体に対し加速方向で相対回転限界に到達(即ち第3ストッパ機構がストッパ作動)して高剛性の二次ダンパばねが圧縮限界に達した状態を示す
【
図6】減速時における伝動装置各部の動作変化態様を示す要部側面図であって、(1)は中間回転体が前記中立位置にある状態を示し(
図5(1)対応図)、また(2)は、中間回転体が出力回転体に対し相対回転限界に到達(即ち第2ストッパ機構がストッパ作動)して低剛性の一次ダンパばねが圧縮限界に達した状態を示し、(3)は、入力回転体が出力回転体に対し減速方向で相対回転限界に到達(即ち第3ストッパ機構がストッパ作動)して高剛性の二次ダンパばねが圧縮限界に達した状態を示す
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づき説明する。
【0027】
先ず、
図1及び
図2を参照しながら、本発明のダンパ付き伝動装置Tをロックアップ機構付きトルクコンバータTCに内蔵した一例を説明する。トルクコンバータTCは、ポンプインペラ11と、このポンプインペラ11に対向して配置されるタービンランナ12と、ポンプインペラ11およびタービンランナ12の内周部間に配置されるステータ13とを備え、ポンプインペラ11、タービンランナ12およびステータ13間には、矢印14で示すように作動オイルを循環させる循環回路15が形成される。
【0028】
トルクコンバータTCは、後述するように、ロックアップクラッチLの断・接切換えに基づいて流体伝動と機械伝動を切換可能に構成されており、特に機械伝動を本発明に係るダンパ付き伝動装置Tが担う構造となっている。本明細書では、先ず、流体伝動のための構造例について説明する。
【0029】
前記ポンプインペラ11は、椀状のポンプシェル16と、ポンプシェル16の内面に設けられる複数のポンプブレード17と、それらのポンプブレード17を連結するポンプコアリング18と、ポンプシェル16の内周部に例えば溶接によって固定されるポンプハブ19とを有する。そのポンプハブ19には、トルクコンバータTCに作動オイルを供給するオイルポンプ(図示せず)が連動、連結される。
【0030】
またポンプシェル16の外周部には、有底且つ段付き円筒状に形成した伝動カバー20の外周部が液密に結合(例えば溶接)される。この伝動カバー20は、タービンランナ12の背面を径方向・軸方向外方側から覆う大径筒部20aと、この大径筒部20aの内周端に連設されてダンパ付き伝動装置Tを径方向・軸方向外方側から覆う有底の小径筒部20bとを備える。ダンパ付き伝動装置Tは、後述するようにタービンランナ12と比べ径方向サイズがコンパクト化されており、その径方向サイズの違いに対応した大きな環状段差部20sが、ダンパ付き伝動装置Tを囲繞する小径筒部20bとタービンランナ12を囲繞する大径筒部20aとの間に形成される。
【0031】
前記小径筒部20bの外周部にはボス21が固着(例えば溶接)され、ボス21には駆動板22が締結される。また駆動板22には、車両用エンジンEのクランクシャフト23が同軸に締結されており、従って、ポンプインペラ11には、伝動カバー20を介して車両用エンジンEから回転動力が入力される。
【0032】
前記タービンランナ12は、椀状のタービンシェル24と、タービンシェル24の内面に設けられる複数のタービンブレード25と、それらのタービンブレード25を連結するタービンコアリング26とを有する。タービンシェル24の内周部は、動力伝達プレート90を介して出力ハブ29に結合される。
【0033】
図3(A)も併せて参照して、動力伝達プレート90は、軸方向でタービンシェル24の外側(ダンパ付き伝動装置Tの内側方)に隣接配置される円板状のプレート本体90mと、そのプレート本体90mの外周部に一体に連設されて軸方向でタービンシェル24とは反対側に延び且つ周方向に等間隔置きに配置される複数の爪部90tとを有しており、そのプレート本体90mの内周部が出力ハブ29外周の環状段部に同心嵌合され、且つ固定(例えば溶接)される。またプレート本体90mの径方向中間部(後述する一次ダンパばねS1及び二次ダンパばねS2の配列群と径方向で重なり合う径方向部位)にはタービンシェル24の内周部が、締結部としての複数のリベット53を以て締結される。
【0034】
車両用エンジンEからの回転動力を図示しないミッションに伝達する出力軸27は、これの中心部を縦通する油路100を有しており、この油路100には、後述するロックアップクラッチLの作動油圧を油路100に対し給排制御可能な不図示の油圧制御回路が接続される。また出力軸27の先端部は、前記伝動カバー20(より具体的には小径筒部20bの底壁部)の中心部に連設した有底円筒状の支持筒部20bc内に環状空隙49を挟んで受容され、その環状空隙49は上記油路100に常時連通している。
【0035】
出力軸27の外周には、ポンプハブ19から離間し且つ動力伝達プレート90の内周部に固定した出力ハブ29がスプライン嵌合されると共に、出力ハブ29の側面にニードルスラストベアリング30を介して隣接する円環状のカバーハブ44が、軸受ブッシュ47を介して回転自在に嵌合、支持される。尚、軸受ブッシュ47は、カバーハブ44の内周に固定(例えば圧入)される。
【0036】
カバーハブ44は、放射状に延びる複数の油溝44aを外側面に有しており、その外側面の外周端が伝動カバー20の内周部内面に溶接される。したがって、出力軸27の先端部は、軸受ブッシュ47及びカバーハブ44を介して伝動カバー20に回転自在に支持される。
【0037】
前記ステータ13は、ポンプハブ19および出力ハブ29間に配置されるステータハブ31と、このステータハブ31の外周に設けられる複数のステータブレード32と、それらのステータブレード32の外周を連結するステータコアリング33とを有する。ポンプハブ19とステータハブ31との間にはスラストベアリング34が介装され、また、出力ハブ29とステータハブ31との間には、ベアリングとしてのスラストベアリング35が介装される。而して、上記スラストベアリング35を受けるベアリング受け面90mbが、動力伝達プレート90、特にプレート本体90mのステータハブ31との対向面(より具体的には前記締結部としての複数のリベット53よりも径方向内方側に位置する対向面)に形成される。
【0038】
ステータハブ31と、出力軸27を相対回転自在に囲繞するステータシャフト36との間には、一方向クラッチ37が介設され、ステータシャフト36は、ミッションケース(図示せず)に回転不能に支持される。伝動カバー20およびタービンシェル24間には、前記した循環回路15に連通するクラッチ室38が形成される。そのクラッチ室38には、伝動カバー20の回転動力を入力側に受けるロックアップクラッチLと、このロックアップクラッチLの出力側と出力軸27との間を機械的に伝動可能な動力伝達経路46を有するダンパ付き伝動装置Tとが配設される。
【0039】
ロックアップクラッチLは、前記したカバーハブ44に軸方向摺動可能且つ油密に嵌合、支持されて伝動カバー20(より具体的には小径筒部20bの底壁部)の内面に近接、対向するクラッチピストン43と、伝動カバー20の内面に固着(溶接)したクラッチアウタLoと、クラッチアウタLoに同心状に囲繞され且つ後述する入力回転体60に固定されるクラッチインナLiと、クラッチアウタLo及びクラッチインナLi間に介設される摩擦連結機構Lmとを備える。クラッチアウタLoの内周面には、クラッチピストン43の外周部が軸方向摺動可能且つ油密に嵌合される。
【0040】
摩擦連結機構Lmは、従来周知の多板式摩擦クラッチ機構と同様、クラッチアウタLoに相対回転不能に且つ所定の制限された範囲で軸方向摺動可能に支持される複数の摩擦板及び受圧板と、クラッチインナLiに相対回転不能に且つ軸方向摺動可能に支持される複数の摩擦板とを有する。そして、クラッチピストン43をクラッチオン側、即ち摩擦連結機構Lm側に移動(
図1で左動)させることで、上記摩擦板相互が圧接されてロックアップクラッチLが接続状態となり、またクラッチピストン43を上記と反対側、即ちクラッチオフ側に移動(
図1で右動)させることで摩擦板相互の圧接力が解放されて、ロックアップクラッチLが非接続状態となる。
【0041】
尚、ロックアップクラッチLは、実施形態のような多板式摩擦クラッチに限定されず、種々の摩擦クラッチ、例えば単板式摩擦クラッチも実施可能である。
【0042】
ところで前記クラッチ室38内は、クラッチピストン43によって、タービンランナ12側に在って循環油路15に連通する内側室38aと、伝動カバー20側に在って循環油路15には連通しない外側室38bとに区画される。その内側室38aには、前記した摩擦連結機構Lm及びダンパ付き伝動装置Tが収容される。
【0043】
一方、外側室38bは、クラッチピストン43の受圧室として機能し、そこに不図示の油圧制御装置から前記油路100、環状空隙49及び油溝44aを経てクラッチ作動油が導入されると、その作動油でクラッチピストン43を前記クラッチオン側に駆動、保持可能であり、また、クラッチ作動油が外側室38b(クラッチ受圧室)より排出されると、クラッチピストン43は、内側室38aの油圧に押されて前記クラッチオフ側に後退可能となる。
【0044】
また出力軸27及びステータシャフト36間には入口油路101が画成され、この入口油路101は、ステータシャフト36の横孔から、ステータシャフト36と一方向クラッチ37のインナ部とのスプライン嵌合部(特にスプラインの欠歯部分)を経て、前記した循環油路15及び内側室38aの各内周部に通じる。一方、ポンプハブ19およびステータシャフト36間には、循環回路15の内周部に通じる出口油路102が画成される。それら入口油路101及び出口油路102は、不図示の油循環装置に接続されており、これにより、トルクコンバータTCの作動中は、入口油路101から内側室38a及び循環回路15を経て出口油路102に戻る油の流動が継続され、内側室38a及び循環回路15内は常に油で満たされる。
【0045】
例えば、車両用エンジンEのアイドリング時や極低速運転域では、外側室38b(クラッチ受圧室)にはクラッチ作動油が供給されず、クラッチピストン43は前記クラッチオフ側にある。従って、摩擦連結機構Lmの摩擦板相互が相対回転可能な非圧接状態にあり、ロックアップクラッチLは非接続状態となっている。この状態では、ポンプインペラ11およびタービンランナ12の相対回転は許容されており、車両用エンジンEによってポンプインペラ11が回転駆動されることで、循環回路15内の作動油が、矢印14で示すように、ポンプインペラ11、タービンランナ12、ステータ13の順に循環回路15内を循環し、ポンプインペラ11の回転トルクがタービンランナ12、動力伝達プレート90及び出力ハブ29を介して出力軸27に伝達される。
【0046】
一方、ポンプインペラ11およびタービンランナ12間でトルクの増幅作用が生じている状態では、それに伴う反力がステータ13で負担され、ステータ13は、一方向クラッチ37のロック作用によって固定される。またトルク増幅作用を終えたときに、ステータ13は、ステータ13が受けるトルク方向の反転によって一方向クラッチ37を空転させながらポンプインペラ11およびタービンランナ12とともに同一方向に回転する。
【0047】
このようにしてトルクコンバータTCがカップリング状態となったとき、もしくはカップリング状態に近づいたときには、その状態を検出したセンサの出力に基づいて作動する不図示の油圧制御回路から、クラッチ作動油が出力軸27内の油路100等を経て外側室38b(クラッチ受圧室)に導入される。これにより、クラッチピストン43が伝動カバー20から離れる側(即ち前記クラッチオン側)に押圧されて、摩擦連結機構Lmを摩擦結合状態に切換え、ロックアップクラッチLが接続状態となる。
【0048】
そして、ロックアップクラッチLが接続状態となったときに車両用エンジンEから伝動カバー20に伝わる回転動力は、ロックアップクラッチLからクラッチ室38(内側室38a)内のダンパ付き伝動装置T、動力伝達プレート90及び出力ハブ29を順次経由して出力軸27に機械的に伝達される。
【0049】
ところでダンパ付き伝動装置Tは、これの前記小径筒部20b内に存する動力伝達経路46において、クラッチインナLiに固定される入力回転体60と、その入力回転体60に一次ダンパばねS1を介して接続される中間回転体70と、中間回転体70に二次ダンパばねS2を介して接続される出力回転体80とを備える。即ち、一次・二次ダンパばねS1,S2は、入力回転体60と出力回転体80との間で、中間回転体70を挟んで直列に配置される。尚、各回転体60,70,80の単品状態での形態は、
図3(B)、
図4(C)(D)にそれぞれ示される。
【0050】
而して、入力回転体60、中間回転体70及び出力回転体80は、出力軸27に対し同心状に配置され且つ互いに相対回転可能に構成される。また一次・二次ダンパばねS1,S2は、出力軸27の軸線Zを中心とした(従って各回転体60,70,80と同心の)同一仮想円上に交互に配列される。一次・二次ダンパばねS1,S2は、それらのばね剛性、従ってばね定数が互いに異なるコイルばねで構成される。特に本実施形態では一次ダンパばねS1よりも二次ダンパばねS2の方が、ばね剛性が高くなるよう設定されるが、一次・二次ダンパばねS1,S2のばね剛性の大小関係を逆にしたばね設定も、本発明の図示しない別の実施形態として実施可能である。
【0051】
尚、二次ダンパばねS2は、実施形態では同心状に並列配列した二重コイルばねS2a,S2bで構成されており、従って二次コイルばねS2のばね定数k2は、二重コイルばねS2a,S2bの各々のばね定数の和となる。
【0052】
入力回転体60は、各々がリング板状に形成される中間回転体70及び出力回転体80を回転摺動可能に挟む第1,第2ばね保持板61,62と、その両ばね保持板61,62を貫通し且つその相互間を連結する複数のリベットピン63とで構成されており、実施形態のリベットピン63は、両ばね保持板61,62にクラッチインナLiも固定している。各リベットピン63は、連結ピンの一例であって、これの中間軸部には、第1,第2ばね保持板61,62間のスペーサとして機能する円筒状カラー64が嵌合、固定され、そのカラー64は、これが入力回転体60と一体的に回転する際に、中間回転体70の後述する長孔部70ch内を周方向に相対摺動可能である。各リベットピン63の両端部は抜け止めのためにカシメ加工される。
【0053】
また第1,第2ばね保持板61,62は、リベットピン63とは別部品で且つそれも径方向外方側に配置した複数の帯板状リベットプレート65を介しても相互間が連結されている。このリベットプレート65は、連結部材の一例であって、第1,第2ばね保持板61,62を貫通しており、また両端部は抜け止めのためにカシメ加工される。リベットプレート65の径方向内向きの内側面と径方向外向きの外側面とは、側面視で入力回転体60と同心の円弧状に形成されていて、後述するように中間回転体70の第2ばね受け凸部70tの先端面と出力回転体80のストッパ凹部80coの内底面との相対向面間に周方向摺動可能に挟持される。
【0054】
更に第1,第2ばね保持板61,62の外周面には、周方向に延びる浅い複数の切欠き溝部61k,62kが、互いの周方向位置を同じくして周方向等間隔置きに形成される。それらの切欠き溝部61k,62kには、動力伝達プレート90の前記爪部90tがそれぞれ周方向摺動可能に嵌合しており、その爪部90tが切欠き溝部61k,62kの周方向内端と係合することで、入力回転体60と、動力伝達プレート90(従って同プレート90と一体的に回転する出力回転体80)との相対回転量が所定量以下に規制される。
【0055】
第1,第2ばね保持板61,62の内周端部、即ち円形の中心孔は、出力ハブ29の外周に同心状且つ相対回転可能に嵌合、支持される。また第1,第2ばね保持板61,62の径方向中間部は、周方向に延びる円弧状の開口61o,62oを各々有する。そして、その開口61o,62oの径方向内,外周縁部がそれぞれ軸方向外側に切り起こされており、その切り起こし部が、一次・二次ダンパばねS1,S2を軸方向両側より抱持するばねホルダ部61h,62hを構成する。そして、上記開口61o,62oの周方向一方側の内端縁部は一次ダンパばねS1の端部を受けるばね受け60s1として機能し、また周方向他方側の内端縁部は二次ダンパばねS2の端部を受けるばね受け60s2として機能する。
【0056】
ところで出力回転体80は、一次ダンパばねS1及び二次ダンパばねS2のばね配列群を囲繞する第1円環状部80cを、唯一の円環状部分として外周部に有する。その第1円環状部80cの内周には、周方向に等間隔置きに複数の第1ばね受け凸部80tが突設され、この第1ばね受け凸部80tの周方向一方側の側縁部は一次ダンパばねS1の端部を受けるばね受け80s1として機能し、また周方向他方側の側縁部は二次ダンパばねS2の端部を受けるばね受け80s2として機能する。
【0057】
また第1円環状部80cの外周部には、動力伝達プレート90の前記爪部90tを相対回転不能に係止させる複数の係止溝80chが周方向等間隔置きに形成される。それら爪部90tと係止溝80chとの係止により、出力回転体80は動力伝達プレート90と一体的に回転するよう連結される。
【0058】
更に第1円環状部80cは、これの内周面、特に周方向で相隣なる第1ばね受け凸部80tの相互間にストッパ凹部80coが凹設されており、そのストッパ凹部80coの内底面は、側面視で出力回転体80と同心の円弧状凹曲面に形成される。
【0059】
一方、中間回転体70は、第1円環状部80cに一次・二次ダンパばねS1,S2のばね配列群を挟んで囲繞される第2円環状部70cを、唯一の円環状部分として内周部に有している。その第2円環状部70cの外周には、周方向に等間隔置きに複数の第2ばね受け凸部70tが突設され、この第2ばね受け凸部70tの周方向一方側の側縁部は一次ダンパばねS1の端部を受けるばね受け70s1として機能し、また周方向他方側の側縁部は二次ダンパばねS2の端部を受けるばね受け70s2として機能する。そして、出力回転体80及び中間回転体70は、ほぼ同一厚さの平板より各々形成されていて、軸方向で互いに重なり合うよう配置される。
【0060】
また中間回転体70の内周部、即ち第2円環状部70cには、前記リベットピン63の中間軸部をカラー64を介して周方向に相対摺動させる長孔部70chが円弧孔状に形成されている。そして、その長孔部70chの周方向内端部にカラー64を介してリベットピン63の中間軸部を係合させることで、
図5(2)で明らかなように、ダンパ付き伝動装置Tの加速時において入力回転体60と中間回転体70との相対回転角を所定の制限された範囲内に規制可能である。
【0061】
而して、長孔部70ch及びリベットピン63は、加速時に互いに協働して入力回転体60と中間回転体70との相対回転量を規定値以下に規制(即ち相対回転限界を規定)する第1ストッパ機構ST1を構成し、この第1ストッパ機構ST1によれば、加速時に一次・二次ダンパばねS1,S2のうちばね剛性が低いダンパばね(実施形態では一次ダンパばねS1)の過度の変形が抑制される。
【0062】
尚、実施形態では、リベットピン63の中間軸部にスペーサとして機能するカラー64を嵌合、固定して、カラー64を介して中間軸部を長孔部70chに係合させるものを例示したが、カラー64を省略して、リベットピン63の拡径した中間軸部を長孔部70chの内端部に直接係合させてもよい。或いはまた、カラー64に代えて、ローラをリベットピン63の中間軸部に回転可能に嵌合、支持させてローラを介して長孔部70chの内端部に係合させるようにしてもよい。
【0063】
また、中間回転体70の第2ばね受け凸部70tの先端部は、前記ばね受け70s1,70s2よりも周方向外方に延出しており且つその先端部の、径方向外方側の先端面が側面視で中間回転体70と同心の円弧状凸曲面に形成されている。そして、その第2ばね受け凸部70tの先端部の周方向一端部は、ダンパ付き伝動装置Tの減速時において、
図6(2)で明らかなように、出力回転体80の前記ストッパ凹部80coの周方向内端部に係合して出力回転体80と中間回転体70との相対回転量を所定量以下に規制する。この規制により、一次・二次ダンパばねS1,S2のうちばね剛性が低いダンパばね(実施形態では一次ダンパばねS1)の圧縮限界が規定される。即ち、第2ばね受け凸部70tは、ストッパ凸部として機能するものであり、これとストッパ凹部80coとは互いに協働して第2ストッパ機構ST2を構成する。
【0064】
ところでダンパ付き伝動装置Tの加速時・減速時においては、
図5(3)及び
図6(3)で明らかなように、入力回転体60と出力回転体80との相対回転量が、出力回転体80の第1円環状部80c外周部に係止させた、動力伝達プレート90の爪部90tと、入力回転体60外周の前記切欠き溝部61k,62kの周方向内端部との係合により所定量以下に規制される。これにより、一次・二次ダンパばねS1,S2のうちばね剛性が高いダンパばね(実施形態では二次ダンパばねS2)の圧縮限界が規定される。即ち、爪部90tと切欠き溝部61k,62kとは互いに協働して第3ストッパ機構ST3を構成している。
【0065】
次に前記実施形態の作用について、
図5、
図6も併せて参照して、説明する。
【0066】
トルクコンバータTCにおいて、ロックアップクラッチLが接続状態となった場合には、前述のようにエンジンEから伝動カバー20に伝わる回転動力が、ロックアップクラッチLからダンパ付き伝動装置T、動力伝達プレート90及び出力ハブ29を順次経て出力軸27に機械的に伝達される。このとき、エンジンEの加速又は減速運転に伴い生じる回転変動や振動は、伝動装置Tが具備する一次ダンパばねS1及び二次ダンパばねS2で減衰、抑制される。
【0067】
ところで
図5は、加速時における伝動装置Tの各部(即ち入力回転体60、中間回転体70及び出力回転体80、並びに一次・二次ダンパばねS1,S2、及び第1~第3ストッパ機構ST1~ST3)の動作変化態様を示しており、また
図6は、減速時における対応する伝動装置Tの各部の動作変化態様を示す。この場合、
図5,
図6において入力回転体60は出力回転体80に対し、白抜き矢印で明らかなように、加速時には相対的に右回りに、また減速時には相対的に左回りにそれぞれ回転しようとする。
【0068】
尚、
図5,
図6では、入力回転体60全体を中間回転体70及び出力回転体80と重ねて描いてしまうと、各部の相対的な動きが分かりにくくなるため、入力回転体60については、特にばねホルダ部61h,62h及びカラー64に対応する部分を太字実線で描き、また切欠き溝部61k,62kに対応する部分を太字点線で描くに留めて、入力回転体60の動きを簡略的に表示している。
【0069】
而して、
図5(1)及び
図6(1)は、入力回転体60が加速側にも減速側にも相対トルクを受けず、即ち中間回転体70が入力回転体60・出力回転体80に対し中立位置にある状態を示しており、この中立位置は、一次ダンパばねS1及び二次ダンパばねS2相互のバランス作用で規定される。
【0070】
そして、この
図5(1)の中立状態で入力回転体60が加速トルクを受けると、入力回転体60は、一次・二次ダンパばねS1,S2を撓ませつつ出力回転体80に対し右回りに相対回転しようとするが、その際に低剛性の一次ダンパばねS1は、高剛性の二次ダンパばねS2よりも大きく圧縮変形する。次いで、
図5(2)で明らかなように、入力回転体60の中間回転体70に対する相対回転量が限界に到達(即ち第1ストッパ機構ST1がストッパ作動、より具体的にはリベットピン63がカラー64を介して長孔部70chの内端に係合)すると、それ以降は、一次ダンパばねS1の圧縮変形が終了して中間回転体70が入力回転体60と一体的に回転し、それと共に二次コイルばねS2のみが弾性変形する。
【0071】
そして、入力回転体60が更に加速トルクを受けると、入力回転体60は、高剛性の二次ダンパばねS2を撓ませつつ、出力回転体80に対する相対回転限界に到達(即ち第3ストッパ機構ST3がストッパ作動、より具体的には爪部90tが切欠き溝部61k,62kの周方向一端部に係合)し、これにより、二次ダンパばねS2が圧縮限界に達して、
図5(3)に示す状態となる。
【0072】
一方、
図6(1)の中立状態で入力回転体60が減速トルクを受けると、入力回転体60は、一次・二次ダンパばねS1,S2を撓ませつつ出力回転体80に対し左回りに相対回転しようとするが、その際に低剛性の一次ダンパばねS1が高剛性の二次ダンパばねS2よりも大きく圧縮変形する。次いで、
図6(2)で明らかなように、中間回転体70の出力回転体80に対する相対回転量が限界に到達(即ち第2ストッパ機構ST2がストッパ作動、より具体的にはストッパ凸部としての第2ばね受け凸部70tの先端部の周方向一端部がストッパ凹部80coの周方向内端部に係合)すると、それ以降は、一次ダンパばねS1の圧縮変形が終了して中間回転体70が出力回転体80と一体的に回転し、それと共に二次コイルばねS2のみが弾性変形する。
【0073】
そして、入力回転体60が更に減速トルクを受けると、入力回転体60は、高剛性の二次ダンパばねS2を撓ませつつ、出力回転体80に対する相対回転限界に到達(即ち第3ストッパ機構ST3がストッパ作動、より具体的には爪部90tが切欠き溝部61k,62kの周方向他端部に係合)し、これにより、二次ダンパばねS2が圧縮限界に達して、
図6(3)に示す状態となる。
【0074】
尚、
図6(3)では、第3ストッパ機構ST3の作動状態で第1ストッパ機構ST1も作動しているように見えるが、その両ストッパ機構ST3,ST1に関わる寸法公差の配分は、減速時において入力回転体60と出力回転体80の相対回転量が所定限界になった際には、第3ストッパ機構ST3が必ず第1ストッパ機構ST1よりも先行してストッパ作動するように設定される。
【0075】
以上説明した実施形態の加速時および減速時における入力回転体の出力回転体に対する相対回転角度(横軸)と、入力回転体60が受けるトルクとの関係は、
図5及び
図6のグラフで表される。
【0076】
ここで、低剛性の一次ダンパばねS1のばね定数をk1、高剛性の二次ダンパばねS2のばね定数をk2とした場合に、入,出力回転体60,80間の伝動系全体のばね定数Kは、加速時に入力回転体60が中立状態より第1ストッパ機構ST1が作動するまでの前半領域、即ち低~中トルク領域では、K=k1・k2/(k1+k2)となり、また第1ストッパ機構ST1が作動した以後の後半領域、即ち高トルク領域では、K=k2となる。従って、
図5(2)(3)で明らかなように、第1ストッパ機構ST1が作動するまでの前半領域のばね定数Kの方が、同機構ST1が作動した後の後半領域のばね定数Kよりも低く(即ち緩勾配)なる。
【0077】
一方、減速時においても、入力回転体60が中立状態より第2ストッパ機構ST2が作動するまでの前半領域、即ち低~中トルク領域では、K=-k1・k2/(k1+k2)となり、また第1ストッパ機構ST1が作動した以後の後半領域、高トルク領域では、
K=-k2となる。従って、
図6(2)(3)で明らかなように、第2ストッパ機構ST2が作動するまでの前半領域のばね定数Kの方が、同機構ST1が作動した後の後半領域のばね定数Kよりも高く(即ち緩勾配)なる。
【0078】
かくして、エンジンEの常用域(概ね低~中トルク域)では、直列関係にある一次・二次ダンパばねS1,S2が同時に作用することで入,出力回転体60,80間の伝動系全体のばね定数Kが低めとなって高減衰効果を達成可能である。また、エンジンEから過大トルク入力が入力された場合には、高剛性のダンパばね(実施形態では二次ダンパばねS2)の弾発作用によりトルク変動を効果的に緩和できて、トルクコンバータTCに連なる変速装置の破損防止に有効となる等の効果を期待できる。
【0079】
尚、斯かる効果は、上記実施形態とは逆に二次ダンパばねS2よりも一次ダンパばねS1の方をばね剛性が高くなるよう設定した別の実施形態(図示せず)においても同等に達成可能である。
【0080】
以上説明したように、実施形態のトルクコンバータTC、特にこれのロックアップクラッチLの接続状態で機械伝動を担うダンパ付き伝動装置Tは、入力回転体60及び出力回転体80間に介装された中間回転体70と、中間回転体70及び入力回転体60間を接続する一次ダンパばねS1と、中間回転体70及び出力回転体80間を接続する二次ダンパばねS2とを備える。そして、一次ダンパばねS1及び二次ダンパばねS2が、各回転体60,70,80と同心の同一仮想円上に交互に配列されるため、その両ダンパばねS1,S2の配列スペースの軸方向・径方向の小型化が図られ、延いては、トルクコンバータTCにおける機械伝動部分(即ちダンパ付き伝動装置T)を軸方向・径方向に小型化する上で有利となる。
【0081】
かくして、このようなダンパ付き伝動装置Tの小型化によって、トルクコンバータTCの伝動カバー20は、これが特にダンパ付き伝動装置Tを覆う部位(前述の小径筒部20b)の径方向外方側に比較的大きな余剰のスペースを創出可能となる。これにより、その創出されたスペースに追加のデバイス(例えばモータ等)を配備可能となるため、全体として設計自由度が高められる。
【0082】
また特に実施形態の出力回転体80は、一次・二次ダンパばねS1,S2のばね配列群を囲繞する第1円環状部80cを、唯一の円環状部分として外周部に、また中間回転体70は、第1円環状部80cに上記ばね配列群を挟んで囲繞される第2円環状部70cを、唯一の円環状部分として内周部にそれぞれ有しており、出力回転体80及び中間回転体70は、軸方向で互いに重なり合うよう配置され、入力回転体60は、上記ばね配列群を相互間に保持して互いに連結される一対のばね保持板61,62で構成される。これにより、伝動装置Tの外周側(即ち上記ばね配列群から見て径方向外方側)に偏在し且つ中間回転体70と軸方向に重なり合う配置となる出力回転体80は、これの内周側を出力取出部(実施形態では出力ハブ29)に直接、接続させる必要はなくなり、その接続部との関係でダンパばね設置径を大きくする必要もなくなる。従って、この観点からも、伝動装置Tの更なる径方向小型化が達成可能となる。
【0083】
その上、実施形態では、加速時において入力回転体60と中間回転体70との相対回転量を所定量以下に規制する第1ストッパ機構ST1と、減速時において出力回転体80と中間回転体70との相対回転量を所定量以下に規制する第2ストッパ機構ST2と、加速時及び減速時において入力回転体60と出力回転体80との相対回転量を所定量以下に規制する第3ストッパ機構ST3とを備えていて、加速時には第1・第3ストッパ機構ST1,ST3により一次・二次ダンパばねS1,S2の圧縮限界がそれぞれ規定される一方、減速時には第2・第3ストッパ機構ST2,ST3により一次・二次ダンパばねS1,S2の圧縮限界がそれぞれ規定される。これにより、加速時・減速時の何れにおいても各ダンパばねS1,S2が過度に変形して破損するのを効果的に防止可能となる。
【0084】
また実施形態の第1ストッパ機構ST1は、軸方向で中間回転体70を挟む一対のばね保持板61,62の相互間を結合するリベットピン63と、第2円環状部70cに形成されてその周方向に延び且つリベットピン63がカラー64を介して摺動可能に嵌合する長孔部70chとを有するので、入力回転体60及び中間回転体70を、それらの板厚増大を抑えて軸方向にコンパクトな組立体とすることができて、伝動装置Tの更なる小型化が図られ、その上、第1,第2ばね保持板61,62間の連結手段(連結ピンとしてのリベットピン63)が第1ストッパ機構ST1の一部を兼ねるから、構造簡素化や部品点数の削減が図られる。
【0085】
また実施形態の第2ストッパ機構ST2は、第2円環状部70cの外周に突設したストッパ凸部としての第2ばね受け凸部70tと、第1円環状部80cの内周に凹設されて第2ばね受け凸部70tが係合可能なストッパ凹部80coとを有する。これにより、中間回転体70外周の第2ばね受け凸部70t(ストッパ凸部)の一部が出力回転体80内周のストッパ凹部80co内に受容されるため、出力回転体80と中間回転体70とが径方向に一部重なり合う配置となって伝動装置Tを径方向に一層小型化できる。
【0086】
更に実施形態の第3ストッパ機構ST3は、第1円環状部80cの外周部に相対回転不能に係止させる動力伝達プレート90外周の爪部90tと、入力回転体60の外周に凹設されて爪部90tを周方向に相対摺動可能に係合させる切欠き溝部61k,62kとを有するので、加減速時の最大捩り角度規制を、入力回転体60及び出力回転体80の各外周部に配したストッパ手段(第3ストッパ機構ST3)に効率よく担わせることができる。これにより、比較的強度が弱くなり易い入力回転体60の上記連結ピン(第1ストッパ機構ST1の一部)や中間回転体70の上記第2ばね受け凸部70t(第2ストッパ機構ST2の一部)が、加減速時の最大捩り角変位の際に過大トルクを受けるのを回避できるため、伝動装置T全体として耐久性向上に寄与することができる。
【0087】
また実施形態の入力回転体60を構成する一対のばね保持板61,62は、その両者を連結するリベットピン63よりも径方向外方側に存する複数の連結部材としてのリベットプレート65を介して相互間が連結され、その複数のリベットプレート65は、中間回転体70における複数の第2ばね受け凸部70tの先端面と、出力回転体80における複数のストッパ凹部80coの内底面との相対向面間に周方向摺動可能に挟持されている。これにより、両ばね保持板61,62間の連結部材としてのリベットプレート65を利用して、入力回転体60、中間回転体70及び出力回転体80を相互に容易に同心配置可能となり、しかも、そのリベットプレート65が回転体60,70,80相互の調心手段と、両ばね保持板61,62間の連結手段とを兼ねることになって、伝動装置Tの構造簡素化が図られる。
【0088】
また実施形態のトルクコンバータTCにおいて、出力ハブ29と出力回転体80の外周部とが、入力回転体60の側方に配置した動力伝達プレート90を介して相互に接続され、この動力伝達プレート90の径方向中間部とタービンランナ12とがリベット53により締結されるので、出力ハブ29と、出力回転体80の外周部(第1円環状部80c)とが径方向に離間していても、その間が動力伝達プレート90で無理なく接続できる。従って、出力ハブ29は、これを大径化することなく出力回転体80の外周部より出力トルクを動力伝達プレート90経由で受け取ることができるため、出力ハブ29の軽量小型化やコスト節減に寄与することができる。しかもダンパ付き伝動装置Tの周辺部材(例えばタービンランナ12等)の形状等の設計変更に対しては、動力伝達プレート90の形状変更で容易に対応可能となり、設計・製造コスト上も有利となる。
【0089】
また実施形態では、前述のように動力伝達プレート90とタービンランナ12との結合部となるリベット53が、タービンランナ12と出力回転体80との締結部としても機能しており、且つその締結部(リベット53)が一次・二次ダンパばねS1,S2のばね配列群とが径方向に重なり合うよう配置されている。これにより、トルクコンバータTCにおける機械伝動部分(即ちダンパ付き伝動装置T)の径方向小型化をより効果的に達成可能となる。
【0090】
その上、動力伝達プレート90は、トルクコンバータTCの出力ハブ29とステータハブ31との間に介装されるスラストベアリング35を支持するベアリング受け部90mbを有している。これにより、出力ハブ29には、ステータハブ31に対向するベアリング受け部を特設する必要はなくなるため、出力ハブ29を径方向に更に小型化できて、出力ハブ29の軽量化やコスト節減に一層有効である。
【0091】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0092】
例えば、前記実施形態では、本発明のダンパ付き伝動装置として、自動車用のロックアップ機構付きトルクコンバータTCに内蔵されてロックアップクラッチLの接続状態でエンジンEから出力軸27側への機械伝動を担う伝動装置Tを例示したが、本発明のダンパ付き伝動装置は、トルクコンバータTC以外の種々の機械装置の動力伝達装置に適用してもよい。
【0093】
また前記実施形態では、一次ダンパばねS1を単一のコイルばねで、また二次ダンパばねS2を同心状に配列した2個のコイルばねS2a,S2bで構成したものを例示したが、ダンパばねの数及び配列は、実施形態に限定されず、例えば、一次ダンパばねS1を同心状に配列した2個のコイルばねで、また二次ダンパばねS2を単一のコイルばねで構成してもよい。或いは、一次ダンパばねS1及び二次ダンパばねS2を各々単一のコイルばねで構成してもよいし、各々2個のコイルばねで構成してもよい。
【0094】
また前記実施形態では、動力伝達プレート90外周の爪部90tを、出力回転体80の外周部(即ち第1円環状部80c)の外周面に凹設した係止溝80chに相対回転不能に嵌合したものを示したが、その爪部90tを、出力回転体80の外周部(即ち第1円環状部80c)に穿設した係止孔に相対回転不能に嵌合してもよい。
【符号の説明】
【0095】
L・・・・・・ロックアップクラッチ
S1,S2・・一次ダンパばね,二次ダンパばね
ST1,ST2,ST3・・第1ストッパ機構,第2ストッパ機構,第3ストッパ機構
T・・・・・・ダンパ付き伝動装置
TC・・・・・トルクコンバータ
Z・・・・・・軸線としての出力軸の軸線
12・・・・・タービンランナ
29・・・・・出力ハブ
31・・・・・ステータハブ
35・・・・・ベアリングとしてのスラストベアリング
53・・・・・締結部としてのリベット
60・・・・・入力回転体
61,62・・第1,第2ばね保持板
61k,62k・・切欠き溝部としての第1,第2ばね保持板の切欠き溝部
63・・・・・連結ピンとしてのリベットピン
65・・・・・連結部材としてのリベットプレート
70・・・・・中間回転体
70c・・・・第2円環状部
70ch・・・長孔部
70t・・・・ストッパ凸部としての第2ばね受け凸部
80・・・・・出力回転体
80c・・・・第1円環状部
80co・・・ストッパ凹部
90・・・・・動力伝達プレート
90mb・・・ベアリング受け部
90t・・・・爪部