(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】車載用ルーフボックス容量可変機構
(51)【国際特許分類】
B60R 9/055 20060101AFI20241111BHJP
【FI】
B60R9/055
(21)【出願番号】P 2022035296
(22)【出願日】2022-03-08
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390005304
【氏名又は名称】PIAA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】可児 玄
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-89329(JP,A)
【文献】特開2009-143408(JP,A)
【文献】特開平8-258630(JP,A)
【文献】国際公開第2011/159220(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 9/00- 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載用ルーフボックス容量可変機構であって、
ルーフボックスのボトムケースと前記ボトムケースの上部開口を塞ぐカバーとの間に設けられ、前記ボトムケースに対する前記カバーの閉状態を保持するキャッチ機構を備えており、
前記キャッチ機構は、前記閉状態における前記ルーフボックスの内部に設けられており、前記ボトムケースに取り付けられたラッチと、前記カバーに取り付けられたストライカーとを有しており、
前記ラッチが、前記ボトムケースに固定されたラッチブラケットと、前記ラッチブラケットに揺動可能に取り付けられた係止爪とを有しており、
前記ストライカーが、前記カバーに固定されたストライカーブラケットと、前記ストライカーブラケットに対して揺動可能かつ所定位置で固定可能な被係止部材とを有しており、
前記被係止部材が、その揺動軸から当該揺動軸に直角な第一方向に延出され、先端に前記係止爪に係止され得る第一被係止部を有する第一腕部と、前記揺動軸から前記第一方向とは異なる前記揺動軸に直角な第二方向に延出され、先端に前記係止爪に係止され得る第二被係止部を有する第二腕部とを有しており、
前記第一腕部の長さが前記第二腕部の長さより短い、車載用ルーフボックス容量可変機構。
【請求項2】
前記係止爪と前記第一被係止部との係止状態で前記第二腕部と前記ストライカーブラケットが当接し、前記係止爪と前記第二被係止部との係止状態で前記第一腕部と前記ストライカーブラケットとが当接する、請求項1に記載の車載用ルーフボックス容量可変機構。
【請求項3】
前記第一腕部と前記第二腕部とがなす角が鈍角であり、
前記鈍角が、前記第一被係止部と前記係止爪とが係止状態にあるときに前記第二腕部を前記カバーの内面に沿って延出させると共に、前記第二被係止部と前記係止爪とが係止状態にあるときに前記第一腕部を前記カバーの内面に向けて延出させる角度に設定されている、請求項1又は2に記載の車載用ルーフボックス容量可変機構。
【請求項4】
前記キャッチ機構が、前記ルーフボックスの一辺に沿って離間して二つ設けられており、
二つの前記キャッチ機構の二つの前記係止爪が、それらの揺動軸に沿って延在する連結ロッドで連結されている、請求項1~3の何れか一項に記載の車載用ルーフボックス容量可変機構。
【請求項5】
前記閉状態に前記カバーの周側壁が前記ボトムケースの周側壁の外側に位置し、
二つの前記キャッチ機構が、前記一辺の対辺にも対称に設けられており、
各辺の二組の係止状態の前記キャッチ機構が前記カバーのヒンジ機構としても機能する、請求項4に記載の車載用ルーフボックス容量可変機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載用ルーフボックス容量可変機構に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のルーフ上に固定されるルーフボックスが利用されている。より詳しくは、車両の屋根にルーフキャリアが固定され、ルーフボックスはルーフキャリアのクロスバーに固定される。駐車場の屋根が低い場合や機械式駐車場を利用する場合を考慮すると、ルーフボックスの高さは低い方がいい。その一方で、ルーフボックスにより多くの荷物を収納したい場合もある。
【0003】
このようなユーザの要望に答えて、容量可変式のルーフボックスも市販されている。下記特許文献1は、容量可変式ルーフボックスを開示している。このルーフボックスは、ボトムケースとこのボトムケースの上部開口を塞ぐカバーとで構成されている。車両搭載状態のルーフボックスの車両右側には複数のヒンジが設けられると共に、車両左側にはカバーの閉状態を維持するためのキャッチ機構が設けられている。これにより、キャッチ機構を解除しつつカバーの車両左側を持ち上げると、車両右側のヒンジを中心にカバーを開くことができる。
【0004】
キャッチ機構は、ボトムケース側の一対のラッチと、カバーの閉状態でラッチに係止されるカバー側の一対のストライカーとを有している。キャッチ機構は、ラッチとストライカーとの係止状態を固定するロック機構も備えている。ここで、複数のヒンジの位置はそのリンク機構によって上下にそれぞれ調整可能であり、かつ、カバーに対するストライカーの位置もそれぞれ上下に調整可能である。このようにヒンジ及びストライカーの調整によって閉状態のカバーの位置をボトムケースに対して上方に移動させることができ、その結果、ルーフボックスの容量を増加させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ルーフボックスの容量を変えるための複数のヒンジ及び一対のストライカーの調整作業をもっと簡便に行いたいという要望があった。
【0007】
従って、本開示の目的は、容量切り替え作業をより簡便に行うことのできる、車載用ルーフボックスの容量可変機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、車載用ルーフボックス容量可変機構であって、ルーフボックスのボトムケースと前記ボトムケースの上部開口を塞ぐカバーとの間に設けられ、前記ボトムケースに対する前記カバーの閉状態を保持するキャッチ機構を備えている。前記キャッチ機構は、前記閉状態における前記ルーフボックスの内部に設けられており、前記ボトムケースに取り付けられたラッチと、前記カバーに取り付けられたストライカーとを有している。前記ラッチは、前記ボトムケースに固定されたラッチブラケットと、前記ラッチブラケットに揺動可能に取り付けられた係止爪とを有している。前記ストライカーは、前記カバーに固定されたストライカーブラケットと、前記ストライカーブラケットに対して揺動可能かつ所定位置で固定可能な被係止部材とを有している。前記被係止部材は、その揺動軸から当該揺動軸に直角な第一方向に延出され、先端に前記係止爪に係止され得る第一被係止部を有する第一腕部と、前記揺動軸から前記第一方向とは異なる前記揺動軸に直角な第二方向に延出され、先端に前記係止爪に係止され得る第二被係止部を有する第二腕部とを有している。前記第一腕部の長さは、前記第二腕部の長さより短い。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、容量切り替え作業をより簡便に行える車載用ルーフボックス容量可変機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る容量可変機構を備えたルーフボックスの外観斜視図である(小容量状態)。
【
図2】上記ルーフボックスの内部を示す斜視図である(小容量状態)。
【
図3】上記容量可変機構(キャッチ機構)のラッチの拡大斜視図である。
【
図4】上記キャッチ機構のストライカーの拡大斜視図である(小容量状態)。
【
図5】上記ストライカーの拡大斜視図である(大容量状態)。
【
図6】上記キャッチ機構の拡大斜視図である(大容量状態)。
【
図7】上記ルーフボックスの外観斜視図である(大容量状態)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る車載用ルーフボックス容量可変機構について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、閉じられた状態のルーフボックス1の外観を示す斜視図である。
図1中の左方が車両の前方である。車両には図示されないルーフキャリアが固定されており、ルーフボックス1は、そのクランプ機構2によってルーフキャリアの二本のクロスバーに固定される。クロスバーは、車両の横方向に延在しており、一本はルーフの前方部に位置し、もう一本はルーフの後方部に位置している。
【0013】
ルーフボックス1は、ボトムケース1aと、ボトムケース1aの上部開口を塞ぐカバー1bとを備えている。本実施形態のルーフボックス1は、車両の右側からでも左側からでもカバー1bを上方に開くことができる。本実施形態のルーフボックス1は、追って詳しく説明する容量可変機構を備えており、その内部容量を二段階に設定できる。
図1は、容量が小さい状態を示している(以下、小容量状態と呼ぶ)。なお、容量が大きい状態のルーフボックス1は
図7に示されている(以下、大容量状態と呼ぶ)。
【0014】
小容量状態ではルーフボックス1の高さ、即ち、車高を低くできる。一方、大容量状態ではルーフボックス1の高さ、即ち、車高は高くなるが、多くの荷物をルーフボックス1の内部に収納することができる。ルーフボックス1の高さは、ボトムケース1aに対するカバー1bの上下位置を調整することで行われる。ボトムケース1aに対するカバー1bの上下位置の調整、すなわち、容量可変機構の動作については追って詳しく説明する。
【0015】
図2に示されるように、ボトムケース1a及びカバー1bの左右のサイドパネルの内面には、本実施形態の容量可変機構の要部となるキャッチ機構3がそれぞれ取り付けられている。各キャッチ機構3は、ボトムケース1aとカバー1bとの間に設けられており、ボトムケース1aに取り付けられたラッチ30と、カバー1bに取り付けられたストライカー31とを有している。各キャッチ機構3は、カバー1bが閉状態であるときのルーフボックス1の内部に設けられており、ルーフボックス1が閉状態だとアクセスできなくなっており、荷物の盗難に関して安全性が確保されている。
【0016】
なお、
図2には、カバー1bは示されておらず、カバー1bに固定されたストライカー31のみが示されている。また、
図2には、上述したクランプ機構2のレール20のみが示されており、レール20にスライド可能に取り付けられるクランプユニットは図示されていない。
図2に示されるように、ボトムケース1aの底板には、面剛性を向上させるためのビードがグリッド状に形成されている。なお、
図1に示されるように、ルーフボックス1が閉状態のときに、カバー1bの周側壁がボトムケース1aの周側壁の外側に位置するように、ボトムケース1a及びカバー1bが形成されている。このため、雨などがルーフボックス1の内部に入るのが防止され、かつ、カバー1bの上方への開動作が円滑に行える。
【0017】
キャッチ機構3は、カバー1bが不用意に開かないようにカバー1bの閉状態を維持するための機構である。カバー1bが閉じられると、ストライカー31がラッチ30に係止される。本実施形態では、ルーフボックス1の一辺(例えば、車両の右側の辺)に沿って離間して二つ設けられており、この二つは連結ロッド32によって連結されている。連結ロッド32によって、二つのキャッチ機構3は連動可能となっている。連結ロッド32で連結された一対のキャッチ機構3の間には、カバー1bの閉状態をロックするためのロック機構33や、ラッチ30とストライカー31との係止状態を解除するプッシュボタン34も設けられている。プッシュボタン34はロック機構33に組み込まれている。プッシュボタン34には、ロック機構33を動作させるための鍵35が挿入される鍵穴が設けられている。
【0018】
なお、本実施形態では、
図2に示されるように、ルーフボックス1の前部及び後部には、カバー1bの開状態を保持するリンク36がボトムケース1aとカバー1bとの間に取り付けられている。リンク36には、ダンパーが組み込まれてもよい。
【0019】
本実施形態では、上述した連結ロッド32で連結された二つのキャッチ機構3が、上記の一辺と対向する対辺(例えば、車両の左側の辺)にも対称に設けられている。本実施形態では、各辺の一対のキャッチ機構3は、カバー1bの開閉動作のヒンジとしても機能する。これにより、上述したように、本実施形態では、カバー1bは車両の右側からでも左側からでもカバー1bを開くことができる。カバー1bを車両の右側から開くときは車両左側の一対のキャッチ機構3がヒンジとして機能する。反対に、カバー1bを車両の左側から開くときは、車両右側の一対のキャッチ機構3がヒンジとして機能する。キャッチ機構3のヒンジ機能についても追って詳しく説明する。
【0020】
キャッチ機構3について詳しく説明する。本実施形態の四つのキャッチ機構3は、同じ構成を備えている。ただし、ラッチ30に関しては、その設置位置によって上述した連結ロッド32の延出方向は異なる。また、ストライカー31に関しては、カバー1bとの干渉を回避するために、その上部の形状が一部異なる。まず、
図3を参照しつつラッチ30について説明する。
図3中の右側にボトムケース1aの側壁が存在するが、ボトムケース1aは
図3には示されていない。
【0021】
ラッチ30は、リベットでボトムケース1aに固定されたラッチブラケット30aと、ラッチブラケット30aに揺動可能に取り付けられた係止爪としてのフック30bとを有している。ラッチブラケット30aは、フック30bの先端以外の部分を覆う形状を有している。ラッチブラケット30aの各側板部には、後述するストライカー31の第一被係止部としての第一バー31c1又は第二被係止部としての第二バー31c2(
図4参照)を案内する、V字状の案内切欠部30a1が形成されている。
【0022】
フック30bは、上述した連結ロッド32を介して、ラッチブラケット30aに揺動可能に取り付けられている。即ち、フック30bは連結ロッド32と回転不能に固定されており、連結ロッド32が回転可能にラッチブラケット30aに支持されている。連結ロッド32は、対となるもう一方のキャッチ機構3に向けてラッチブラケット30aから延出されている。連結ロッド32の中心軸がフック30bの揺動軸に一致し、連結ロッド32はこの揺動軸に沿って延在している。フック30bの先端は、フック30bの揺動に応じて、上述した案内切欠部30a1内に突出されるか、案内切欠部30a1内から退避される。
【0023】
フック30bの内部には、その先端をボトムケース1aの側壁に向けて、即ち係止方向に揺動させる付勢部材としてのねじりコイルばね(図示せず)が内蔵されている。ねじりコイルばねのコイル部分には、連結ロッド32が挿通されている。このため、フック30bとバー31bとが係止しておらず、かつ、ねじりコイルばねの付勢力以外の力が作用していなければ、フック30bの先端はバー31bとの係止位置(
図3の位置)よりもさらにボトムケース1aの側壁寄りに位置する。
【0024】
フック30bの上面は湾曲凸面とされている。カバー1bを閉じる際には、ストライカー31の第一バー31c1又は第二バー31c2が上方から降りてきて案内切欠部30a1に案内される。案内された第一バー31c1又は第二バー31c2はフック30bの湾曲凸面を押すことになり、フック30bは上述したねじりコイルばねの付勢力に抗して
図3中で反時計回りに揺動される。第一バー31c1又は第二バー31c2が案内切欠部30a1の底に達すると、第一バー31c1又は第二バー31c2と湾曲凸面との当接が解消される。この結果、ねじりコイルばねの付勢力によってフック30bは再びその先端を案内切欠部30a1に突出させるように、即ち、
図3に示される状態に戻るように揺動する。このようにして、キャッチ機構3の係止状態が完了する。
【0025】
上述したプッシュボタン34が押されると、連結ロッド32がその中心軸回りに回転され、上述した係止状態が解除される。従って、プッシュボタン34を押している間は第一バー31c1又は第二バー31c2を上方に移動させることができるので、カバー1bを開くことができる。なお、揺動するフック30bは、ラッチブラケット30aに覆われている。ボトムケース1aには荷物が積載されるが、フック30bがラッチブラケット30aに覆われているので、フック30bの揺動が荷物によって阻害されることが防止されている。
【0026】
次に、
図4及び
図5を参照しつつストライカー31について説明する。
図4はルーフボックス1が小容量状態のときのストライカー31を示しており、
図5はルーフボックス1が大容量状態のときのストライカー31を示している。
図4及び
図5中の左側にカバー1bの側壁が存在するが、カバー1bは
図4及び
図5には示されていない。
【0027】
ストライカー31は、カバー1bにリベットで固定されたストライカーブラケット31aと、ストライカーブラケット31aに取り付けられた被係止部材としてのスイングアーム31bとを有している。スイングアーム31bは、ストライカーブラケット31aに対して揺動可能で、かつ、所定位置で固定可能である。ストライカーブラケット31aは、スワンネック形状を有しており、その先端は二股に分かれている。この二股部分の内部にスイングアーム31bの揺動軸部分が配置されている。
【0028】
ストライカーブラケット31aの二股部分とスイングアーム31bの揺動軸の位置にはボルト31dが通されている。ボルト31dの頭部は、ストライカーブラケット31aの二股部分の一方に固定、又は、回転不能に保持されている。ボルト31dの先端には、ナットが内蔵されたノブ31eが取り付けられている。ノブ31eを締めることで、スイングアーム31bを所定の揺動位置で固定することができる。ストライカーブラケット31aの内部には、強度を確保するために三つのリブ31fが形成されている。中央のリブ31fのみはストライカーブラケット31aのカバー1bへの取付部裏面まで達している。
【0029】
スイングアーム31bは、その揺動軸から当該揺動軸に直角な第一方向に延出された第一腕部としての第一アーム31b1と、その揺動軸から当該揺動軸に直角な第一方向とは異なる第二方向に延出された第二腕部としての第二アーム31b2とを有している。即ち、第一方向及び第二方向の両方を含む面は、揺動軸に垂直である。第一アーム31b1は、その先端にフック30bに係止され得る第一被係止部としての第一バー31c1を有している。同様に、第二アーム31b2も、その先端にフック30bに係止され得る第二被係止部としての第二バー31c2を有している。
【0030】
第一アーム31b1の先端は二股に分かれており、この二股部分を繋ぐように第一バー31c1が取り付けられている。第二アーム31b2の先端も二股に分かれており、この二股部分を繋ぐように第二バー31c2が取り付けられている。第一アーム31b1及び第二アーム31b2の二股部分の間の空間は、フック30bとの係止時にフック30bの揺動を許容するとともに、ラッチブラケット30aとの干渉を避けるために形成されている。
【0031】
第一アーム31b1の長さが、第二アーム31b2より短くされており、この長さの差によってルーフボックス1の容量を変えられる。
図4に示されるように、フック30bと第一バー31c1との係止状態で第二アーム31b2とストライカーブラケット31a(の二股分岐部)とが当接するように、ストライカーブラケット31aが形成されている。同様に、
図5に示されるように、フック30bと第二バー31c2との係止状態で第一アーム31b1とストライカーブラケット31aとが当接するように、ストライカーブラケット31aが形成されている。
【0032】
図5の状態では、ストライカーブラケット31aの中央のリブ31fが第一バー31c1と当接すると共に、第一アーム31b1の二股部分がそれぞれ両側のリブ31fと当接している。即ち、ルーフボックス1の小容量状態を実現する
図4に示される第一所定位置や、ルーフボックス1の大容量状態を実現する
図5に示される第二所定位置に、スイングアーム31bを素早く位置決めすることができる。スイングアーム31bをストライカーブラケット31aに当接させてノブ31eを締めるだけで、スイングアーム31bを所定位置に固定できる。
【0033】
なお、スイングアーム31bの揺動位置が所定位置(第一又は第二所定位置)あるときにクリック感を出すために、ストライカーブラケット31aには孔31gも形成されている。
図4及び
図5では見えないが、スイングアーム31bの側面には、孔31gと係合してクリック感を創出する二つの突起が形成されている。孔31g及び突起には、ノブ31eを締めるまでスイングアーム31bをある程度仮保持しておく効果もある。孔31g及び突起は、ストライカーブラケット31aの二股部分の一方のみに設けられてもよいし、両方に設けられてもよい。
【0034】
また、第一アーム31b1と第二アーム31b2とがなす角度θは鈍角(90°<θ<180°)である。そして、この鈍角は、次の[1]及び[2]を満たす角度に設定されている。[1]第一バー31c1とフック30bとが係止状態にあるとき(
図4参照)に第二アーム31b2をカバー1bの内面に沿って延出させる。[2]第二アーム31b2とフック30bとが係止状態にあるとき(
図5参照)に第一アーム31b1をカバー1bの内面に向けて延出させる。
【0035】
上記[1]に関して、カバー1bの形状は、
図1から分かるように、スイングアーム31bの揺動軸に垂直な断面ではアーチ形となる。上記[1]は、ルーフボックス1が小容量状態であるときに、フック30bと係止されない第二アーム31b2がアーチ形のカバー1bの内面に沿って延出されることを意味する。このため、第二アーム31b2とルーフボックス1内の荷物との干渉が最小限に抑えられる。言い換えれば、スイングアーム31bは荷物の搭載を極力阻害することがない。
【0036】
一方、上記[2]は、ルーフボックス1が大容量状態であるときに、フック30bと係止されない第一アーム31b1がルーフボックス1内の荷物とは逆方向に延出されることを意味する。
図5に示されるように、このとき、第一アーム31b1はストライカーブラケット31aの内部に位置する。即ち、荷物を多く積みたい大容量状態では、スイングアーム31bが荷物の積載を阻害することが全くない。このように上記[1]及び[2]の双方を満足するには、少なくとも上述した角度θが鈍角であることが必要になる。
【0037】
本実施形態の容量可変機構を実現するキャッチ機構3は、上述したラッチ30及びストライカー31によって構築されているが、上述したように、キャッチ機構3は、ルーフボックス1の一辺に沿って離間して二つ設けられている。そして、二つのキャッチ機構3の二つのフック30bが、それらの揺動軸に沿って延在する連結ロッド32で連結されている。このため、当該一辺側からカバー1bを開閉する際には、開放辺を確実にキャッチすることができると共に、連結ロッド32による二つのキャッチ機構3の連動によって簡単にカバー1bを開くことができる。
【0038】
このように一辺側からカバー1bを開閉する際には、この一辺の対辺側の二つのキャッチ機構3は係止状態(ロック状態を含む)にあり、係止状態にある二組のフック30b及び第一バー31c1(又は第二バー31c2)がヒンジ機構を構成する。逆に、対辺側からカバー1bを開閉する際には、一辺側の二組のフック30b及び第一バー31c1(又は第二バー31c2)がヒンジ機構を構成する。即ち、カバー1bの両開きが可能となる。
【0039】
また、キャッチ機構3以外にカバー1bの開状態を維持する上述したリンク36の解除も必要になるが、本実施形態では、四つのキャッチ機構3の係止状態を同時に解除することで、カバー1bをボトムケース1aから完全に分離することも可能である。カバー1bをボトムケース1aから完全に分離できると、ルーフボックス1の清掃が行いやすくなるし、ルーフボックス1のルーフキャリアへの固定及びルーフキャリアからの取り外しも行いやすくなる。
【0040】
ルーフボックス1を小容量状態から大容量状態に変更する際のキャッチ機構3の調整について簡単に説明する。
図1に示されるルーフボックス1の小容量状態では、キャッチ機構3のストライカー31は
図4に示される状態にある。ストライカー31がラッチ30と係止している状態は、
図2に示されている。この状態から、ルーフボックス1の一側(例えば、上述した一辺側)のプッシュボタン34を押してストライカー31とラッチ30との係止状態を解除しつつ、カバー1bを開く。
【0041】
二つのストライカー31のそれぞれで、ノブ31eを緩めた後に第二アーム31b2が下方に向けて延びるようにスイングアーム31bを揺動させる。その際の所定位置は、第一アーム31b1がストライカーブラケット31aと当接する位置である。その状態でノブ31eを締めて、スイングアーム31bを固定する。この状態が、
図5に示される状態である。カバー1bを閉じて、一辺側のキャッチ機構3の調整は完了する。なお、一辺側において、
図4の小容量状態の第一アーム31b1も
図5の高容量状態の第二アーム31b2も、対辺側のキャッチ機構3(低容量状態)によるヒンジ機構を中心とする円軌道上にほぼ位置しているので、カバー1bは閉じることができる。
【0042】
次いで、ルーフボックス1の他側(例えば、上述した対辺側)についても、二つのストライカー31を
図4の状態から
図5の状態へと同様に調整する。この場合も、対辺側において、
図4の小容量状態の第一アーム31b1も
図5の高容量状態の第二アーム31b2も、一辺側のキャッチ機構3(高容量状態)によるヒンジ機構を中心とする円軌道上にほぼ位置しているので、カバー1bは閉じることができる。この調整が完了すると、ルーフボックス1は
図7に示される高容量状態となり、ボトムケース1aとカバー1bとの距離が大きくなり、ルーフボックス1の積載可能量が増える。上述したリンク36は、この距離拡大に自動的に対応する。高容量状態でストライカー31がラッチ30と係止している状態は、
図6に示されている。
【0043】
本実施形態の容量可変機構は、ルーフボックス1のボトムケース1aとボトムケース1aの上部開口を塞ぐカバー1bとの間に設けられ、ボトムケース1aに対するカバー1bの閉状態を保持するキャッチ機構3を備えている。キャッチ機構3は、閉状態におけるルーフボックス1の内部に設けられており、ボトムケース1aに取り付けられたラッチ30と、カバー1bに取り付けられたストライカー31とを有している。ラッチ30は、ボトムケース1aに固定されたラッチブラケット30aと、ラッチブラケット30aに揺動可能に取り付けられた係止爪(フック)30bとを有している。ストライカー31は、カバー1bに固定されたストライカーブラケット31aと、ストライカーブラケット31aに対して揺動可能かつ所定位置で固定可能な被係止部材(スイングアーム)31bとを有している。被係止部材は、第一腕部(第一アーム)31b1と第二腕部(第二アーム)31b2とを有している。第一腕部(第一アーム)31b1は、揺動軸から当該揺動軸に直角な第一方向に延出され、先端に係止爪(フック)30bに係止され得る第一被係止部(第一バー)31c1を有している。第二腕部(第二アーム)31b2は、揺動軸から第一方向とは異なる揺動軸に直角な第二方向に延出され、先端に係止爪(フック)30bに係止され得る第二被係止部(第二バー)31c2を有している。第一腕部(第一アーム)31b1の長さは第二腕部(第二アーム)31b2の長さより短い。
【0044】
従って、本実施形態の容量可変機構によれば、被係止部材(スイングアーム)31bを揺動させて、第一被係止部(第一バー)31c1を係止爪(フック)30bと係止するように固定すれば、ルーフボックス1の容量を小さくしてその高さを抑えることができる。一方で、被係止部材(スイングアーム)31bを揺動させて、第二被係止部(第二バー)31c2を係止爪(フック)30bと係止するように固定すれば、ルーフボックス1の容量を大きくできる。この容量の切り替え作業は、被係止部材(スイングアーム)31bの揺動位置を変えるだけであり、簡便に行うことができる。
【0045】
また、本実施形態の容量可変機構によれば、係止爪(フック)30bと第一被係止部(第一バー)31c1との係止状態(
図4参照)で第二腕部(第二アーム)31b2とストライカーブラケット31aが当接する。さらに、係止爪(フック)30bと第二被係止部(第二バー)31c2との係止状態(
図5参照)で第一腕部(第一アーム)31b1とストライカーブラケット31aとが当接する。従って、第一腕部(第一アーム)31b1又は第二腕部(第二アーム)31b2をストライカーブラケット31aに当接させるだけで、被係止部材(スイングアーム)31bを所定の揺動位置に位置決めすることができる。
【0046】
また、本実施形態の容量可変機構によれば、第一腕部(第一アーム)31b1と第二腕部(第二アーム)31b2とがなす角が鈍角である。そして、この鈍角は、下記[1]及び[2]を満たす角度に設定されている。[1]第一被係止部(第一バー)31c1と係止爪(フック)30bとが係止状態にあるとき(
図4参照)に第二腕部(第二アーム)31b2をカバー1bの内面に沿って延出させる。[2]第二被係止部(第二バー)31c2と係止爪(フック)30bとが係止状態にあるとき(
図5参照)に第一腕部(第一アーム)31b1をカバー1bの内面に向けて延出させる。従って、[1]の状態では第二腕部(第二アーム)31b2はカバー1bの内面に沿って延出されるので、被係止部材(スイングアーム)31bが荷物の搭載を極力阻害することがない。一方、[2]の状態では第一腕部(第一アーム)31b1はカバー1bの内面に向けて延出されて荷物が搭載される内方には延出されないので、被係止部材(スイングアーム)31bが荷物の積載を阻害することが全くない。
【0047】
また、本実施形態の容量可変機構によれば、キャッチ機構3が、ルーフボックス1の一辺に沿って離間して二つ設けられており、二つのキャッチ機構3の二つの係止爪(フック)30bが、それらの揺動軸に沿って延在する連結ロッド32で連結されている。このため、ルーフボックス1の一辺の閉状態を二つのキャッチ機構3で確実に保持することができる。その一方で、連結ロッド32によって二つのキャッチ機構3を連動させることができるので、ルーフボックス1の一辺を開く操作も行いやすい。
【0048】
ここで、本実施形態の容量可変機構によれば、閉状態にカバー1bの周側壁がボトムケース1aの周側壁の外側に位置している。このため、雨などがルーフボックス1の内部に入るのが防止され、かつ、カバー1bの上方への開動作が円滑に行える。さらに、二つのキャッチ機構3が、上述した一辺の対辺にも対称に設けられている。そして、各辺の二組の係止状態のキャッチ機構3が、カバーのヒンジ機構としても機能する。従って、ルーフボックス1は一辺側からでも対辺側からでも開くことができる。
【0049】
以上、実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正又は変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び、請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 ルーフボックス
1a ボトムケース
1b カバー
3 キャッチ機構
30 ラッチ
30a ラッチブラケット
30b フック(係止爪)
31 ストライカー
31a ストライカーブラケット
31b スイングアーム(被係止部材)
31b1 第一アーム(第一腕部)
31b2 第二アーム(第二腕部)
31c1 第一バー(第一被係止部)
31c2 第二バー(第二被係止部)
32 連結ロッド