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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】模擬切開可能組織
(51)【国際特許分類】
   G09B 23/30 20060101AFI20241111BHJP
   G09B 9/00 20060101ALI20241111BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
G09B23/30
G09B9/00 Z
G09B19/00 Z
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022160796
(22)【出願日】2022-10-05
(62)【分割の表示】P 2019212414の分割
【原出願日】2015-03-26
(65)【公開番号】P2023002594
(43)【公開日】2023-01-10
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】61/970,436
(32)【優先日】2014-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503000978
【氏名又は名称】アプライド メディカル リソーシーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】フェルジンガー ナターシャ
(72)【発明者】
【氏名】ブラック ケイティ
(72)【発明者】
【氏名】ブレスリン トレイシー
【審査官】白形 優依
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0207104(US,A1)
【文献】特開2004-209118(JP,A)
【文献】特開昭63-034578(JP,A)
【文献】特開2012-128109(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0041005(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 23/00-29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科的訓練に用いられる切開可能模擬組織を製造する方法であって、前記切開可能模擬組織は、内側層を包封する1つ又は2つ以上の外側層を有し、前記方法は、
前記1つ又は2つ以上の外側層のための材料を選択するステップを含み、前記1つ又は2つ以上の外側層のための材料を選択する前記ステップは、シリコーン及びシリコーンとデッドナの混合物のうちの一方を選択するステップを含み、
前記内側層のための材料を選択するステップを含み、前記内側層のための材料を選択する前記ステップは、
シリコーンゲル及びシリコーンゲルとデッドナの混合物のうちの一方を選択するステップと、
選択された前記内側層のための材料がシリコーンゲルであった場合に、前記シリコーンゲルとアルコールを容量で1:1の比をなして混合するステップと、
選択された前記内側層のための材料がシリコーンゲルとデッドナの混合物であった場合に、シリコーンゲルとデッドナとアルコールとが容量で1:1:1の比をなすように、前記シリコーンゲルとデッドナの混合物と、アルコールとを混合するステップと、
前記内側層を少なくとも60℃の温度で35分間硬化させて前記内側層を多孔質にするステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記内側層のための材料を選択するステップは、
シリコーンで作られた少なくとも1つの模擬解剖学的構造を用意するステップと、
前記少なくとも1つの模擬解剖学的構造を前記内側層内に包封するステップと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの模擬解剖学的構造は、血管、血管系、病理学的病変部、腫瘍、臓器、部分臓器、軟骨及び管の1つ又は2つ以上を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ又は2つ以上の外側層のための材料を選択するステップは、00~10ショア又は10Aショアのジュロメータシリコーンを選択するステップと、前記1つ又は2つ以上の外側層を作るステップと、を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ又は2つ以上の外側層のための材料を選択するステップは、比が1:1又は2:1重量部又は容量部であるシリコーンとデッドナの混合物を選択するステップと、前記1つ又は2つ以上の外側層を作るステップと、を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記シリコーンとデッドナの混合物に用いられるシリコーンは、00~10ショア又は10Aショアのジュロメータを有する、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ又は2つ以上の外側層は、前記内側層を包囲するよう構成された1つの層を構成する、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記内側層を前記1つ又は2つ以上の外側層内に包封するステップと、
圧力を加えて前記1つ又は2つ以上の外側層の間に存在する空気を実質的に除去するステップと、を更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記内側層を前記1つ又は2つ以上の外側層内に包封するステップは、前記1つ又は2つ以上の外側層の周囲を、それらの間に内側層が無い状態で互いに付着させるステップを含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
外科的訓練に用いられる切開可能模擬組織であって、
シリコーン、又は、シリコーンとデッドナの混合物、で作られた第1の外側層と、
シリコーン、又は、シリコーンとデッドナの混合物、で作られた第2の外側層と、
第3の内側層であって、アルコールを蒸発させることによって該第3の内側層を多孔質にする、シリコーンゲルとアルコールとの熱硬化した混合物、又は、シリコーンゲルとデッドナとアルコールとの熱硬化した混合物、を含む、前記第3の内側層と、を有する切開可能模擬組織。
【請求項11】
前記第1の外側層と前記第2の外側層との間に配置された1つ又は2つ以上の模擬解剖学的構造を更に含む、請求項10に記載の切開可能模擬組織。
【請求項12】
前記1つ又は2つ以上の模擬解剖学的構造は、血管、血管系、病理学的病変部、腫瘍、臓器、部分臓器、軟骨及び管の1つ又は2つ以上を含む、請求項11に記載の切開可能模擬組織。
【請求項13】
前記1つ又は2つ以上の模擬解剖学的構造は、前記第3の内側層内に埋め込まれた状態で、前記第1の外側層及び前記第2の外側層のうちの一方に付着されている、請求項11又は12に記載の切開可能模擬組織。
【請求項14】
前記第1及び第2の外側層は、前記第3の内側層を包囲した場所で互いに付着されている、請求項10~13のいずれか一項に記載の切開可能模擬組織。
【請求項15】
前記第3の内側層を包囲した場所は、前記第1及び第2の外側層の周囲を含む、請求項14に記載の切開可能模擬組織。
【請求項16】
前記第1及び第2の外側層は、前記第3の内側層を収容するよう密封されたポケットを形成している、請求項10~15のいずれか一項に記載の切開可能模擬組織。
【請求項17】
前記第1及び第2の外側層は切開可能であり、前記第3の内側層は、前記第1及び第2の外側層を互いに弾性的に付着させ、それにより、前記第1及び第2の外側層は、鈍的器械により分離可能である、請求項10~16のいずれか一項に記載の切開可能模擬組織。
【請求項18】
前記第1の外側層、前記第2の外側層、及び前記第3の内側層は、透明な層であり、それにより、前記1つまたは2つ以上の模擬解剖学的構造が前記第1及び前記第2の外側層越しに視認できる、請求項11~17のいずれか一項に記載の切開可能模擬組織。
【請求項19】
外科的切開を訓練するためのシステムであって、
ベースと、前記ベースに連結され前記ベースの上面から上方に延びる複数の直立したペグとを含む、模擬組織プラットホームと、
求項10~18のいずれか一項に記載の切開可能模擬組織と、
を含む、システム。
【請求項20】
前記切開可能模擬組織は、前記模擬組織プラットホームの前記複数の直立したペグに、吊り下げられかつ連結されるように構成されている、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科的訓練用ツール、特に外科的処置を教示すると共に練習するための模擬組織構造及びモデルに関する。
【0002】
〔関連出願の説明〕
本願は、2014年3月26日に出願された米国特許仮出願第61/970,436号(発明の名称:Right colon model)に係る優先権及び権益の主張出願であり、この米国特許仮出願を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
腹腔鏡下結腸切除術は、種々の場所での腸の切除を伴う。腸の存在場所に応じて、結腸切除術は、右半結腸切除術、左半結腸切除術、S状結腸造瘻術、全結腸摘除術と呼ばれる。右半結腸切除術は、横行結腸の一部分を含む上行結腸全体の除去であり、この右半結腸切除術は、結腸切除手技の中で最も一般的である。右半結腸切除手技の重要なステップは、適当な血管及び付着部を横切して(横方向に切開して)結腸の可動化を可能にするために重要な解剖学的ランドマーク(標識点)及び血管系を識別することができるということにある。この手技の外科医の最初のステップは、回結腸血管を識別してこれを横切することである。右側が上方に向けられて患者がトレンデレンブルグ体位にある状態で回結腸血管を引き下げる。この体位は、網(omentum)及び小腸をどけるのを助ける。回結腸血管は、典型的には、十二指腸に隣接して位置し、これら回結腸血管は、2つの腹膜層で構成された腸間膜内に包封されている。このステップの実施中、外科医は、回結腸血管の存在場所を突き止める際に十二指腸を構造的ランドマークとして用いる。回結腸血管の横切時、腸間膜層の内側-外側切開か外側-内側切開かのいずれかが実施される場合がある。この切開は、腸間膜層内に包み込まれている小さな血管系又は脈管系及びリンパ節を切断して密封することができる腹腔鏡的ツール又はエネルギー適合性器具を用いて鈍的切開により実施される。内側-外側切開に関し、盲腸及び回腸に取り付けられている腸間膜根に向かって十二指腸及びジェロタ筋膜の前方への運動が行われる。外科医が外側-内側に動いた場合、切開は、回盲部接合部のところで行われて内側に動き、この場合も又、十二指腸及びジェロタ筋膜の前方の状態のままであるようになる。盲腸及び回腸がいったん可動化されると、外科医は、結腸の右結腸曲に到達するためにトルトの白線を上げる。トルトの白線は、外側又は側方付着部を介して腹部側壁に連結されている無血管平面である。外科医は、典型的には、エネルギーと適合性のある腹腔鏡的はさみ又は他の腹腔鏡的器具を用いて付着部及びトルトの白線を解体する。トルトの白線の解体時、右結腸曲に沿う付着部を除去し、その目的は、腸の体外可動化及び横切を可能にすることにある。腸の横切時、外科医は、体外吻合を行い、それにより残りの腸を再びつなぐ。
【0004】
右半結腸切除術については幾つかの処置ステップが存在するので、外科医は、この外科的処置を学習したり練習したりする仕方を確保することが重要である。モデルは、解剖学的に正確である必要があり、そしてこのモデルは、右半結腸切除術手技で必要な重要なランドマーク及び/又は血管系を含む。モデルは、処置ステップのどのようなバリエーションとも適合性があるべきである。一例として、内側-外側切開か外側-内側切開かのいずれかがモデルに対して実施されることが可能になるべきである。さらに、モデルは、外科医が処置中に観察する手応えをシミュレートする必要がある。一例として、腸間膜層の切開が行われる場合、腸間膜層を進んで大きな血管に至る際の違いが明らかであるべきである。血管は、把持され、切断され、そしてクリップ留めされることが可能であるべきである。幾つかの処置ステップが存在しているが、この処置の大部分では、種々の切開技術により腸を可動化し、したがって、正確な切開モデルを開発することがシミュレーションにとって極めて重要である。モデル内の臓器は、臓器が体内に位置するように動かされて操作可能であるようシミュレートされるべきである。加うるに、モデル上の臓器は、モデルの位置決めをトレンデレンブルグ又は逆トレンデレンブルグ体位決定の際に行っているときにこれらモデル上の臓器を正確な方向に動かすことができるようモデルに取り付けられるべきである。これらの問題を解決する解剖学的モデルが要望されている。
【0005】
さらに、外科レジデント並びに開業外科医は、患者としての人間に対して手術を行う資格を得る前に多岐にわたる訓練を受ける。訓練では、手術の種々の観点が教示され、かかる観点としては、特定の技能を開発し、特定の外科的処置を練習し、又は或る特定の外科的器械を用いて練習する訓練が含まれる場合がある。外科医のための訓練を容易にする統合型模擬モデルが要望されている。具体的に言えば、切開されているヒト(人間)の組織の応答に酷似した模擬組織が要望されている。平面相互間の切開又は血管系を周りの解剖学的構造からスケルトン化するための切開を行う能力は、外科的処置で見受けられる技能である。特に、腹腔鏡下手技が行われる場合、切開を行うための器械の操作は、習得可能な技能であり、かかる技能は、外傷を最小限にする無外傷性手技を可能にする。本発明は、かかる模擬組織に関する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一観点によれば、外科的訓練用の切開可能な模擬組織が提供される。切開可能模擬組織は、シリコーンで作られると共に内面及び外面を備えた第1の層を有し、内面と外面との間には厚さが定められる。切開可能模擬組織は、シリコーンで作られていて内面及び外面を備えた第2の層を有し、内面と外面との間には厚さが定められる。切開可能模擬組織は、第1の層と第2の層との間に配置されたシリコーンゲルを含む第3の層を有する。シリコーンゲルは、第1の層及び第2の層によって密封される。第1及び第2の層は、切開可能であり、第3の層は、第1の層と第2の層を互いに弾性的に付着させ、その結果、第1及び第2の層は、鈍的(blunt)器械により分離可能である。
【0007】
本発明の別の観点によれば、外科的訓練用の切開可能な模擬組織が提供される。切開可能模擬組織は、シリコーンで作られていて内部キャビティを形成するよう構成された外側シェルを有する。充填物が内部キャビティ内に配置されて密封される。包封状態の充填物は、シリコーンゲルを含み、外側シェルは、外科的スケルトン化を真似るよう充填物の存在場所で分離可能である。
【0008】
本発明の別の観点によれば、外科的訓練用の切開可能な模擬組織を製造する方法が提供される。この方法は、シリコーンの第1の層を用意するステップと、第1の層を硬化させるステップと、中央キャビティを備えたモールドを用意するステップと、第1のシリコーン層をモールド上に配置して第1の層が中央キャビティを覆うようにするステップと、シリコーンゲルを調製するステップと、未硬化のシリコーンゲルを第1の層上に塗布するステップと、シリコーンの第2の層を用意するステップと、第2の層をシリコーンゲル及び第1の層上に配置するステップと、シリコーンゲルを硬化させるステップと、第2の層を硬化させるステップとを含む。
【0009】
本発明の別の観点によれば、内側層を包封した1つ又は2つ以上の外側層を有する切開可能な模擬組織を製造する方法が提供される。この方法は、外側層のための材料を選択するステップを含む。外側層のための材料を選択するステップは、シリコーン及びシリコーンとデッドナ(deadener)の混合物のうちの一方を選択するステップを含む。この方法は、内側層のための材料を選択するステップを含む。内側層のための材料を選択するステップは、シリコーンゲル及びシリコーンゲルとデッドナの混合物のうちの一方を選択するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】腹腔鏡下訓練装置の上から見た斜視図である。
図2】本発明の右結腸モデルの平面図である。
図3】本発明に従って網層を引き戻した状態の右結腸モデルの平面図である。
図4】本発明の右結腸モデルの大腸の平面図である。
図5】本発明の右結腸モデルの大動脈の平面図である。
図6】本発明の模擬組織構造、例えば腸間膜層の平面図である。
図7A】本発明の模擬組織構造、例えば腸間膜層の製造プロセスのステップを示す略図である。
図7B】本発明の模擬組織構造、例えば腸間膜層の製造プロセスのステップを示す略図である。
図7C】本発明の模擬組織構造、例えば腸間膜層の製造プロセスのステップを示す略図である。
図7D】本発明の模擬組織構造、例えば腸間膜層の製造プロセスのステップを示す略図である。
図7E】本発明の模擬組織構造、例えば腸間膜層の製造プロセスのステップを示す略図である。
図8A】本発明の模擬組織構造、例えば腸間膜層の外側層の組成上のバリエーションの一覧を示す図である。
図8B】本発明の模擬組織構造、例えば腸間膜層の中間又は内側層の組成上のバリエーションの一覧を示す図である。
図9A】本発明の模擬組織構造、例えば腸間膜層の組成上のバリエーションの流れ図である。
図9B】本発明の模擬組織構造、例えば腸間膜層の組成上のバリエーションの流れ図である。
図10A】本発明の切開可能模擬組織の第1の層の平面図である。
図10B】本発明の切開可能模擬組織を製造するためのモールド及びテンプレートの平面図である。
図10C】本発明のモールド及びテンプレートの頂部上の切開可能模擬組織の第1の層の平面図である。
図10D】本発明の第1の層、テンプレート及びモールドの頂部上の模擬血管系及び模擬腫瘍の平面図である。
図10E】本発明の模擬血管系、模擬腫瘍、第1の層、テンプレート及びモールドの頂部上のゲル製の第2の層の平面図である。
図10F】本発明のゲル製の第2の層、模擬血管系、模擬腫瘍、第1の層、テンプレート及びモールドの頂部上の第3の層の平面図である。
図10G】本発明の模擬組織プラットホームのペグに取り付けられた切開可能模擬組織のモデルの上から見た斜視図である。
図10H】本発明の模擬組織プラットホームのペグに取り付けられた切開可能模擬組織のモデルの平面図である。
図11】本発明に従って外側層に設けられた切開創が内側ゲル層を露出させた状態の切開可能模擬組織の上から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1つ又は2つ以上の模擬臓器及び組織の臓器トレーモデルは、カリフォルニア州所在のアプライド・メディカル・リソーシーズ・コーポレイション(Applied Medical Resources Corporation)により製造されているSIMSEI腹腔鏡下訓練システムのような模擬腹腔鏡下訓練装置の内部に配置されたときに腹腔鏡下手技及び技術を訓練したり練習したりするのに理想的である。腹腔鏡下訓練装置10が図1に示されている。腹腔鏡下訓練装置10は、プラボング等(Pravong et al.)により2011年9月29日に出願され、アプライド・メディカル・リソーシーズ・コーポレイションに譲渡され、そして米国特許出願公開第2012/0082970号明細書として公開された同時係属中の米国特許出願第13/248,449号明細書(発明の名称:Portable laparoscopic trainer)に記載されており、この米国特許出願公開を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。腹腔鏡下訓練装置10は、トップカバー12を有し、トップカバー12は、ベース14に、トップカバー12をベース14から隔てる1対のレッグ16によって連結されている。腹腔鏡下訓練装置10は、患者の胴、例えば腹部領域を真似るよう構成されている。トップカバー12は、患者の前方面を表し、トップカバー12とベース14との間に構成された空間は、臓器が位置する患者の内部又は体腔又はキャビティ18を表している。腹腔鏡下訓練装置10は、患者を真似た状態で種々の外科的処置及びこれらの関連の器械を教示し、練習すると共に実演する上で有用なツールである。外科用器械がトップカバー12にあらかじめ設けられている孔20を通ってキャビティ18中に挿入される。これらあらかじめ設けられた孔20は、トロカールをシミュレートしたシールを有するのが良く又は患者の皮膚及び腹壁部分をシミュレートした模擬組織を有するのが良い。種々のツール及び種々の方法を用いてトップカバー12を穿通することができ、それによりトップカバー12とベース14との間に配置されたモデル臓器、例えば本発明の右結腸モデルに対する実寸大の手技を実施することができる。訓練装置10のキャビティ18内に配置されると、臓器モデルは、一般に、ユーザの視界から覆い隠され、ユーザは、この場合、ビデオモニタ22上に表示されるビデオフィードにより手術部位を間接的に観察することによって術式を腹腔鏡下で練習することができる。
【0012】
トップカバー12にヒンジ留めされたビデオディスプレイモニタ22は、図1に開放配向状態で示されている。ビデオモニタ22は、イメージをモニタ22に送るための種々の視覚システムに連結可能である。例えば、あらかじめ形成された孔20のうちの1つ又はキャビティ内に設けられたウェブカムを通って挿入され、そして模擬手技を観察するために用いられる腹腔鏡をビデオモニタ22及び/又はモバイルコンピュータ計算装置に連結してイメージをユーザに提供するのが良い。別の変形例では、トップカバー12は、ビデオディスプレイ22を備えず、ラップトップ型コンピュータ、モバイルディジタル装置又はタブレットを支持し、そしてこれをワイヤで又はワイヤレスで訓練装置10に接続する手段を有する。
【0013】
組み立てられると、トップカバー12は、レッグ16が実質的に周囲のところに配置されると共にトップカバー12とベース14との間に相互に連結された状態で、ベース14の真上に配置される。トップカバー12及びベース14は、実質的に同一の形状及びサイズのものであり、実質的に同一の周辺輪郭を有している。訓練装置10は、側壁を備えていないが、レッグ16は、端部開放型訓練装置10からの視界から内部キャビティを部分的に隠している。腹腔鏡下訓練装置10は、ベース14に対して角度をなしたトップカバー12を有している。レッグ16は、ベース14に対するトップカバー12の角度を調節することができるよう構成されている。図1は、ベース14に対して約30~45°の角度まで調節される訓練装置10を示している。訓練装置10の傾斜により、有利には、トレンデレンブルグ又は逆トレンデレンブルグ位置での患者がシミュレートされる。トレンデレンブルグ位置では、患者の体は、足が心臓よりも高い位置にある状態で又はこの反対の関係をなした状態でこの体が仰向けで平らになった状態になるよう傾けられる。トレンデレンブルグ位置により、重力が腸管を骨盤から引き離しているときに骨盤内臓器への良好な接近が可能になり、それにより骨盤内手術野上への腸管の侵入を阻止して外科医が臓器を容易に操作することができる腹腔内に広い作業空間を得ることができる。トップカバー12の選択された角度位置は、レッグ16に設けられている蝶ねじを示すことによってロックされる。ベース14に対する訓練装置10のトップカバー12の角度又は水平面、例えばテーブルトップに対するトップカバー12の角度は、本発明の結腸モデルが訓練装置10のキャビティ18内に挿入された状態で右半結腸切除術の訓練及び練習に関して特に有利である。
【0014】
次に図2を参照すると、本発明の右結腸モデル26が示されており、この右結腸モデルは、腹腔鏡下環境中での手技のうちでとりわけ右半結腸切除術手技、例えば図1を参照して上述した腹腔鏡下訓練装置10の訓練及び練習に特に適している。模擬臓器は、代表的には、シリコーン又は熱可塑性エラストマー(TPE)で作られ、トレー28に配置される。トレー28は、トレー28内に納められたモデル臓器を収容するよう構成されている。トレー28は、ベース及び代表的にはベースの周囲に沿ってぐるりと形成された少なくとも1つの側壁を有する。追加の側壁が解剖学的構造に特有な場所を定めるようこの周囲の内側に形成され、かかる追加の側壁は、模擬構造及び組織を収容する構成されている。これら追加の側壁は、モデル26がキャビティ18内に納められた状態で医師が訓練装置10のトップカバー12を通って挿入された器械を用いて模擬臓器を操作している間、医師により加えられる力に応答して側方支持体となる。図2は、トレー28の頂部に沿って配置されたシリコーンで作られているモデル肝臓30及び他の臓器の上に位置し、それぞれの血管系34を含む模擬網層32を示している。
【0015】
図3を参照すると、網層32は、下に位置する模擬臓器を露出させるよう引き戻された状態で示されており、かかる模擬臓器は、虫垂42及びS状結腸に取り付け可能な大腸36(図4に単独で示されている)の少なくとも一部分、小腸38の少なくとも一部分、胆嚢集成体を含む肝臓30、胃、十二指腸、腎臓、尿管、大動脈40(図5に単独で示されている)、動脈及び静脈を表す血管44、腹膜、ジェロタ筋膜及び腸間膜層46(図6に単独で示されている)を含む結合組織層を含む。臓器は、種々の腹腔鏡下器械を用いた外科的訓練のために人体内に存在する正確な解剖学的体位設定及び存在場所を表すよう組み立てられている。右腸モデル26とも呼ばれる場合のある右結腸モデル26は、右半結腸切除術の外科的訓練のために重要なランドマーク及び特徴を強調するための改造を施した状態でシリコーン模擬臓器を用いて組み立てられている。
【0016】
ベーストレー28が設けられている。ベーストレー28は、黄色又は赤色のフォームで作られ、このベーストレーは、訓練装置10のキャビティ18内に挿入可能であるような寸法形状になっている。変形例として、ベーストレー28は、ベーストレー28中に直接嵌まり込む黄色又は赤色のフォームで作られているライナを有しても良く、ベーストレー28は、このライナと一緒に腹腔鏡下訓練装置10内に挿入可能である。追加のフォーム部分をフォームベースの左側側部に追加するのが良く、その目的は、右側部側壁をシミュレートすることにある。模擬外科的処置の際の種々の体位置のシミュレーションを可能にするため、別のモデルベースが設けられる。例えば、右結腸モデルベース28又はライナは、モデル26の一端部のところに傾斜角を有するよう真空成形プラスチックで作られるのが良い。この角度は、外科的処置中における患者の逆トレンデレンブルグ体位設定をシミュレートすることができる。さらに、モデル26は、骨盤形状を真似るよう成形された湾曲形状を有するよう真空成形プラスチックベース上に作られるのが良く、骨盤形状は、腹部側壁の湾曲形状を形成するよう近位側に延びている。
【0017】
シリコーンで作られたシートが模擬臓器の取り付け及び組み立てを助けるようモデルのベース28の頂部にくっつけられる。シリコーンで作られた臓器模擬及びこれらの色の一覧が以下の表1に見える。大腸36、大動脈40及び腸間膜46は、実質的に、図2及び図3に示されているサイズのままであっても良く、或いは、これらは、腹腔鏡下訓練装置10のベースに良好に適合するために短くされても良く若しくは縮められても良い。これら解剖学的構造は、これらの正確な相対的解剖学的位置設定を厳密に表す仕方でフォームベーストレー28の頂部にくっつけられている。
【0018】
表1:臓器及びこれらの色
【0019】
腸間膜層46は、動脈及び静脈44を包封し、この腸間膜層は、腹腔鏡下切開用器を用いて把持されて切開されるよう構成されている。組織層相互間の切開は、シリコーンだけでシミュレートすることができない特性を備えている。したがって、この問題を解決するため、実際の解剖学的構造、例えば腸間膜46をシミュレートするに適した切開可能な模擬組織の幾つかの変形例を開発した。腸間膜46をシミュレートするのに適した切開可能模擬組織は、互いに頂部に積み重ねられた3つの層で構成されている。3つの層は、頂部層48、底部層50及び中間層54を含む。頂部層48及び底部層50は、腹膜層を表すのが良く、ゲルから成る中間層54は、切開可能なシリコーンで作られている血管44を包囲した結合組織を表すのが良い。
【0020】
次に図7A図7Eを参照して、腸間膜層46として例示的に使用できる本発明の切開可能模擬組織の構成について今説明する。注目されるように、本発明の切開可能模擬組織47は、腸間膜層46としての使用には限定されず、かかる切開可能模擬組織は、任意の模擬組織構造の少なくとも一部を形成することができる。切開可能模擬組織47の構成は、2枚の別々の薄いシリコーンシートを作る初期ステップを含み、1枚のシートは頂部層48のためであり、1枚のシートは、底部層50のためであり、これら2枚のシリコーン層は、図7Aに示されているように完全に硬化されている。シートを完全に硬化させると、薄いシリコーンゲル層58a,58bをスパチュラ又はこれに類似したツールを用いてそれぞれ図7Bに示されているようにシリコーンシート48,50の模様が付いていない側部上に広げる。シリコーン血管を含む模擬血管系44を未硬化ゲル層58a,58bのいずれか一方上に置く。図7Cは、頂部層48のシート上の未硬化ゲル層58a上に配置されている模擬血管系44を示している。次に、シリコーンシート48,50は、ゲル層58a,58bと共に、完全に硬化して模擬血管系44を頂部層48にくっつける。ゲル内張り層48,50を硬化させると、新たなシリコーンゲルから成る第3の又は中間の層54を調製して層48,50の一方上に流す。一変形例では、新たなシリコーンゲルをシリコーンシート48上に流してシリコーン血管44が配置されるようにする。ゲルを塗り広げて血管系44の模擬血管を完全に覆うようにする。次に、第2の層50を第1の層48の頂部上で中間層54を覆って配置し、その間、シリコーンは、依然として未硬化のゲルであり、空気ポケットがサンドイッチ状の構造を作るようエッジに押し出される。このプロセスの結果として、3層切開可能模擬組織47を用いると、これら層相互間に配置されている包封血管系44の腹腔鏡下切開及びスケルトン化に特に適すると共に適合性のある例えば図6に示されている腸間膜組立体46をシミュレートすることができる。多数の層を設けることにより、切開可能な模擬組織構造にとって正確で且つ真に迫った感触及び機能が得られる。さらに、切開可能模擬組織47は、有利には、種々の組織平面を作り、医師は、かかる組織平面を介して切開技能を磨くことができる。モデル26は、層を切開する能力を与えるだけでなく、モデル26により、医師は、組織平面又は層44,48,50,54,58a,58bを正しく識別することができ、これは、個々の各手技にとって学習すべき重要な技能である。一変形例では、切開可能模擬組織47は、血管系層44なしで構成され、かかる切開可能模擬組織も又、切開を実施するのに使用できる。
【0021】
切開可能模擬組織47を作製するプロセス中に、結果的に切開可能模擬組織47の種々の所望の特性及び繰り返しが得られるようにする幾つかの添加剤が導入されている。切開可能な腸間膜層46の外側の第1及び第2の層48,50及び内側の又は中間の層54のための種々の成分の一覧が表2に示されており、かかる一覧は、図8A及び図8Bの流れ図にまとめられた状態で記載されている。図8A及び図8Bの所望の特性に基づいて最適な切開可能シートを決定する流れ図が図9A及び図9Bに示されている。図9A及び図9Bでは、腸間膜層は、本発明の切開可能模擬組織の例示の用途として用いられ、図9A及び図9Bの流れ図は、模擬腸間膜層だけを作るための用途には限定されず、任意の模擬組織構造における使用を含む。また、図9A及び図9Bに示されている血管は、模擬血管には限定されず、埋め込み状態の任意の模擬解剖学的構造又は組織を含むことができ、かかる解剖学的構造又は組織としては、腫瘍、病理学的病変部、臓器、管、軟骨等が挙げられるが、これらには限定されない。シリコーン外側層48,50は、従来の2つの部分が1:1の比の室温加硫(RTV)シリコーンで、若しくは1:1の比のRTVシリコーンとデッドナ添加剤で、又は2:1の比のRTVシリコーンとデッドナ添加剤で作られている。RTVは、白金硬化室温加硫シリコーン(PCRTVS)を含むが、これには限定されない。シリコーンデッドナは、シリコーン油を含む(これには限定されない)シリコーン流体化学系統群に属し、このシリコーンデッドナは、白金硬化シリコーン添加剤である。デッドナの一例は、ペンシルベニア州マカンジー所在のスムース-オン・インコーポレイテッド(Smooth-On, Inc.)により製造されているSLACKERと呼ばれる。添加剤としてのデッドニング剤(deadening agent)は、シリコーンを皮膚又は人間組織の感触に類似するように軟らかくし、しかも本物らしくする。シリコーンデッドナは、軟化することができると共に結果として生じる「感触」並びに硬化シリコーンのリバウンド特性を変更することができるシリコーン添加剤である。この添加剤は、シリコーン油を含むシリコーン流体の化学系統群に含まれる。シリコーン流体及びシリコーン油は、流体の粘度及び化学構造に依存する或る範囲の使用を有する。シリコーンデッドナは、白金硬化室温加硫シリコーンと混合可能な種類のシリコーン油である。
【0022】
臓器を成形するために用いられる従来型シリコーンのジュロメータは、00~10ショアから10Aショアまでの範囲にある。かくして、デッドナの添加の結果として、互いに異なるジュロメータのシリコーンに添加されたときに互いに異なる特性が得られる。ジュロメータの観点からは軟質のシリコーンへのデッドナの添加の結果として、完全硬化時に、ゲル状の組成物が得られる。しかしながら、ジュロメータ的に高いシリコーンへのデッドニング剤(deadening agent)の添加の結果として、軟らかい感触のシリコーンの所望の特徴が得られ、かかる軟らかい感触のシリコーンは、完全硬化時に、その変形破断点に容易に達する。かくして、シリコーンとデッドニング剤の組み合わせは、腸間膜46を構成する外側層48,50、例えば腹膜層の手触り上の特徴を提供することができる。
【0023】
中間層の変形例は、(1)デッドナ又はデッドニング剤を含むゲル、(2)アルコールを含むゲル、(3)アルコールを含み熱が加えられたゲル、又は(4)デッドナ又はデッドニング剤及びアルコールを含み熱が加えられたゲルを含む。イソプロピルアルコールが用いられる。包封ゲル層54への各添加剤の添加は、層を切開するために用いられて層の切開を容易にする圧力及び力の大きさを減少させる。ゲルは、腸間膜組立体46中に中間可能層54として使用できる白金硬化シリコーンゴムゲルである。中間層54の切開を容易にする別の変形例では、アルコールを添加してゲルを薄くし、かくしてゲルへの侵入を容易にする。ゲル層54のそれ以上の劣化は、中間層54を切開することができる容易さを一層高めることができる。アルコールとゲルの混合物を約70℃まで加熱して硬化時間を早めると共にアルコールの蒸発の結果として生じる多孔質中間層54を作る。ゲル、アルコール及び熱で構成された多孔質中間層54は、ゲルに固有の粘着性を減少させ、腸間膜層48,50,54中に侵入してこれを切開しやすくする。別の変形例では、デッドナをシリコーンゲルに添加し、その結果、低い弾力特性を有することになるが、完全硬化時に粘着性が高められた調合物が得られる。硬化ゲル混合物の粘着性を含む問題を軽減するため、アルコールを同じ比でシリコーンゲルとデッドナの混合物に添加する。その結果得られた特性は、完全硬化時に、ゲル混合物それ自体及びゲルとデッドナと比較して粘着性が減少するが、この特性は又、腹腔鏡下切開用器を用いた場合に所望の切開可能な手応えを示す。この場合も又、熱をこの混合物に加えると、切開可能層の別の変形例について上記において一覧表示した特徴を有する多孔質中間層54が作られる。ゲル及び種々の添加剤で構成される中間の切開可能層54の変形例は、有利には、組織を通って移動して腸間膜層46内で2つの外側層48,50相互間に納められている自由な血管を切開するという手応えを提供する。さらに、本明細書において与えられている調合されたゲル変形例は、キャビティが包囲されて腹腔鏡により照明される腹腔鏡下手技において特に有利である光沢又は艶を提供する本物のような濡れた見掛けを層54に与える。
【0024】

表2:層及び材料
【0025】
右結腸モデル26中に存在する血管系44は、テキサス州ヒューストン所在のクレートン・ポリマーズ(Kraton Polymers)製のシリコーン又はKRATONポリマー管で作られている。血管は、上述した模擬腸間膜層46内に納められている。血管系44は、解剖学的に配置されてゲル中間層54によって腹膜層48,50にくっつけられている。さらに、血管系44が納められた切開可能な組織を右半結腸切除術用モデルに関して説明したが、この製造方法を同様な手段により任意の組織模擬モデルに利用することができ又は模擬組織プラットホーム用のスタンドアロン型モデルとして利用することができる。
【0026】
右結腸トレーの別のコンポーネントは、網(omentum)32である。網32は、大腸36上にくっつけられ、この網は、モデル26の頂部上に掛かっている。網32の幾つかの変形例が開発されている。第1の変形例は、モデル26の頂部上に容易に掛かることができるテキスチャ付きシリコーン流延網32である。しかしながら、網32の重さ及び感触をシミュレートするため、この網も又、軟質シリコーンフォームを用いて流延により成形されるのが良い。フォームで作られた網32は、黄色に着色されており、これは腹腔内に広い空間を占めるように見えるが、モデル26の頂部上に掛かることができる。血管系34は、網32が体内で見えるようにその外観をシミュレートするために網32の両方の変形例上に存在している。
【0027】
図3に戻ってこれを参照すると、上行結腸60を腹壁62に連結しているモデル上の付着部64の存在は、右半結腸切除手技の訓練にとって重要な特徴である。腹壁62に取り組むため、数個の同じ模型が作製される。腹壁62の第1の模型は、高さが約2インチ(5.08cm)である長くて薄いフォーム片をこれ又フォームで作られるのが良いベース28の側部に取り付けることによって作られる。腹部側壁62も又、上述の成形されたベース及び側壁の曲率を通ってベース28中に組み込まれるのが良い。最後に、腹部側部62は、フォームベース28の長さに合わせて延びてフォームベース28にくっつけられる湾曲した剛性で硬質の流延材料で作られるのが良い。外側付着部64を上述の腹壁62のうちの任意のものに取り付けることができる。外側付着部64は、上述の腹壁62のちの任意のものの頂部にくっつく2枚のテキスチャ付きシリコーンシートを用いることによって作られる。腹壁62にくっつけられた2枚のシート相互間にはトルトの白線が存在する。トルトの白線については幾つかのモデルが存在する。第1の模型は、トルトの白線をロープファイバ(rope fiber)でシミュレートしている。白い綿ロープのストランドがトルトの白線の血管系平面の外観を真似るようモデル26内に用いられている。トルトの白線も又、解剖学的ランドマークを表すためにシリコーンで白いストライプ又は縞を作ることによってシミュレートできる。トルトの白線は、シリコーンシートの2つの層相互間にくっつけられ、次に、これらの層は、エッジに沿って互いにくっつけられ、次に上行結腸60にくっつけられる。その結果得られた構造は、腸36を含む側壁62に連結する外側付着部である。
【0028】
本発明の別の観点では、切開可能な模擬組織47は、少なくとも2つの互いに異なる層で構成されている。第1の層は、シリコーン層で構成され、第2の層は、シリコーンゲルで構成されている。切開可能な模擬組織47を用いると、解剖学的酷似を備えた合成組織及び臓器モデルを作ることができ、しかもかかる切開可能模擬組織47を切開及び他の外科的処置の訓練のために用いられる模擬訓練モデルとして使用することができる。本発明の切開可能模擬組織47は、少なくとも1つの外側シリコーン層及び1つ又は2つ以上の外側シリコーン層によって包封されたゲル層で構成されている組立体であり、その結果、外科医によって観察される切開に酷似する構造が得られる。切開可能模擬組織の1つ又は2つ以上のシリコーン層は、全重量の33%を占めるシリコーンデッドナと混合された2部品RTV10Aジュロメータシリコーンで作られ、それにより、用いられる全シリコーンとデッドナの比は2:1になる。デッドナは、これが添加される硬化シリコーンの特性を軟化するシリコーン油である。その結果、デッドナが添加される10Aジュロメータシリコーンは、硬化して10A未満のジュロメータシリコーンになる。デッドナの添加量は、これが添加されるジュロメータの特性の変化に比例する。シリコーン顔料がシリコーンとデッドナの混合物に添加され、それによりシリコーンが流延されてこれによって表される解剖学的構造に対応した顔料との粘性混合物がつくられる。シリコーン混合物をオプションとしてテキスチャを有するフォームのシート上に流延し又は石膏材料で作られたテキスチャを含むシート上に流延する。フォームが用いられる場合には室温で約45分間かけて又はフォームが用いられない場合にはオーブン内において約70℃の温度で約25分間かけて流延シリコーン混合物を硬化させる。シートサイズは、切開されている平面又は表面のサイズに応じて漸変する長さ及び幅を有するのが良い。
【0029】
シリコーンシートは、いったん硬化すると、長方形キャビティを有するモールド上に配置され、このキャビティは、シリコーンサイズよりも小さい。シリコーンシートは、このシートの中央領域がキャビティ内に配置されると共にシートの外周部がモールドの表面上に平らに置かれるようモールド上に配置される。このセットアップ構成を提供することにより、ゲルの漏れを最小限に抑えた状態でゲルの包封プロセスが容易になる。中央キャビティ内において、シリコーン血管系及び病理学的病変部、例えば腫瘍がシリコーン系接着剤を用いてキャビティ内に位置するシートの部分上にくっつけられる。血管系及び病理学的病変部の配置は、切開が代表的に実施される解剖学的組織に類似している。シリコーン系接着剤が硬化し、血管系及び病理学的病変部が無傷である場合、中間ゲル層が作られる。本発明は、血管系の埋め込みには限定されず、他の解剖学的ランドマーク及び構造をも含み、かかるランドマーク及び構造としては、血管系、腫瘍、病理学的病変部、臓器及び組織構造が挙げられるが、これらには限定されず、これらの構成材料としては、任意のポリマー材料、シリコーン、KRATON等が挙げられるが、これらには限定されない。
【0030】
一変形例では、切開可能模擬組織中に存在する包封ゲルは、シリコーンゲル、デッドナ、及びイソプロピルアルコールで構成されている。ゲルを作るため、2部分から成るシリコーンゲルを等しい重量部及び容量部で混合カップに入れる。デッドナを全シリコーン添加容量と等しい量で添加する。イソプロピルアルコールをデッドナの容量と等しい量で添加する。混合物を混合してついには、均質の溶液が得られるようにする。シリコーン顔料を必要に応じて添加して切開されるべき人間の組織に酷似する顔料を作るのが良い。溶液をいったん十分に混合すると、この溶液をモールドのキャビティ内に配置されている外側シリコーンシートの頂部上に流延してゲル層を作る。ゲルは、封入されてキャビティの頂部を通ることはなく、と言うのは、もしそうなると、ゲルの漏れが生じ、これは全体的組織モデルにとって有害だからである。シリコーンゲルは、シリコーンエラストマーである。しかし極めて軟質であるのは、白金硬化シリコーンゴムである。シリコーンゲルのジュロメータは、ショア00硬度スケールを下回り、それにより、ゲル状の軟質性、粘着性及び低い耐引き裂き性が生じる。切開可能な組織に用いられるゲルの一例は、スムース-オン社によって製造されて000-35の硬度を有するECOFLEXゲルである。
【0031】
この製造時点で、切開可能な模擬組織モデルを完了させる2つの別々の方法が存在する。例えば、切開可能模擬組織を図1図6を参照して説明したように外科的処置の訓練に的を絞った臓器トレー内のコンポーネントとして消費することができる。かかる場合、切開可能模擬組織がトレー内のコンポーネントとして消費される場合、第1のシリコーンシートと同一のサイズ及びシリコーン、デッドナ、及び顔料の蘇生を有する第2のシリコーンシートを用いてゲル層を包封する。第2のシリコーンシートをゲルを含む第1のシート上に載せる。層を押して空気ポケットがシートの側部に押し出されて大気中に放出されるようにする。シリコーン接着剤を用いて2枚のシリコーンシート相互間でキャビティの周囲を内張りし、それにより2つのシリコーン層相互間にシールを作ってゲルの漏れを阻止する。ゲルを2枚のシリコーンシート相互間で室温で硬化させる。いったん硬化すると、切開可能模擬組織を注型モールドから取り出すのが良い。シリコーンシートの周囲を用いて切開可能模擬組織を臓器トレー内で種々のシリコーン臓器に付着させるのが良い。切開可能模擬組織47は、特に図2図6に示されているような右半結腸切除手技について訓練する模擬臓器訓練トレーのために作られるのが良い。
【0032】
別の例では、切開可能模擬組織46を小さなプラットホーム上で利用して切開の技術についてのみ訓練を行うことができる。この場合、ゲル層をキャビティ内にいったん流し込むと、ゲル層を約60℃においてオーブン内で約35分間かけて硬化させる。ゲルを硬化させると、10Aジュロメータシリコーン混合物を切開可能模擬組織の外側シリコーンシートと同一の顔料で調製する。第2のシリコーンシート層を形成するため、シリコーン混合物をゲル及び外側シリコーンシート層に流延し、次に、オーブン内において約60℃で約30分間かけて硬化させる。その結果得られた切開可能模擬組織モデルは、切開の技量を練習するために用いることができるスタンドアロン型モデルである。切開可能模擬組織のこの模型は、一方の側部を持つモデルであり、この場合、外側層の一方だけが人の組織と同様な特性を持つ軟質のシリコーンである。10Aジュロメータシリコーンで構成された外側層は、例えば2012年9月25日に出願された米国特許出願第14/037,005号明細書(発明の名称:Surgical training model for laparoscopic procedures)に記載されている形式の縫合プラットホーム内に配置された場合にモデルのためのぴんと張った支持体に役立ち、この米国特許出願を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0033】
外側シリコーン層の作製中に添加される添加剤としてのデッドニング剤により、硬化後のシリコーンが軟質になると共に皮膚又はヒトの組織の感触について本物のようになる。デッドナの添加の結果として、互いに異なるジュロメータを持つシリコーンに添加されると、互いに異なる特性が得られる。ジュロメータ的に軟質のシリコーンへのデッドニング剤の添加の結果として、完全硬化時にゲルのような組成物が得られる。しかしながら、ジュロメータ的に高いシリコーンへのデッドニング剤の添加の結果として、軟らかい感触のシリコーンの所望の特徴が得られ、かかる軟らかい感触のシリコーンは、完全硬化時に、その変形破断点に容易に達する。かくして、シリコーンとデッドニング剤の組み合わせは、腸間膜を構成するヒトの組織、例えば腹膜層の手触り上の特徴を提供することができる。
【0034】
中間ゲル層は、デッドナを含むと共にアルコールが追加され且つ熱の加えられたゲルを有する。包封ゲル層への各添加剤の添加により、切開のために用いられる圧力及び力の大きさが減少し、それにより切開が容易になる。ゲルは、切開可能模擬組織中の中間切開可能層として使用できる白金硬化シリコーンゴムゲルである。アルコールを添加してゲルを薄くし、それにより中間層を切開しやすくすると共にこれに侵入しやすくする。さらに、ゲル層の劣化は、中間層の切開可能特性を更に高めることができる。アルコールとゲルの混合物を加熱して硬化時間を早めると共にアルコールの蒸発により多孔質中間層を作る。ゲル及びアルコールで構成された多孔質中間層は、ゲルに固有の粘着性を減少させると共に包封ゲル層に侵入してこれを切開しやすくする。別の変形例では、デッドナをシリコーンゲルに添加し、その結果、完全硬化時に弾力特性が低いが、粘着性が増大した配合物が得られる。硬化ゲル混合物の粘着性を含む問題を軽減するため、アルコールを同じ比でシリコーンゲルとデッドナの混合物に添加する。その結果得られた特性は、完全硬化時に、ゲル混合物それ自体及びゲルとデッドナと比較して粘着性が減少するが、この特性は又、腹腔鏡下切開用器を用いた場合に所望の切開可能な手応えを示す。この場合も又、熱をこの混合物に加えると、切開可能層の別の変形例について上記において一覧表示した特徴を有する多孔質中間層が作られる。ゲル及び種々の添加剤で構成された中間切開可能層の構成により、組織を通って移動して腸間膜層又は他の組織構造若しくは臓器内の自由な血管を切開するという手応えを提供する。さらに、ゲルの光沢又は艶の使用により、本物の組織の場合と同様な本物のような濡れた見掛けが与えられ、かかる使用は、腹腔鏡下技能の訓練の際にビデオモニタで見て特に有用である。
【0035】
外側シリコーン層を作製する際の変形例は、シリコーンのジュロメータの変更を含む。模擬臓器モデルを作るために有用であるRTV白金硬化シリコーンは、00-10ジュロメータ及び10Aジュロメータを有し、シリコーン外側層は、いずれか一方のシリコーンを用いて作製できる。加うるに、デッドナをシリコーンに添加すると、シリコーンの硬化形態を軟化させることができる。シリコーンの軟らかさ及び弾性の変化は、添加されるデッドナの量に正比例する。図8Aは、切開可能模擬組織を形成する外側シリコーン層の流れ図を示している。
【0036】
中間ゲル層は、デッドナ、アルコールを含む添加剤が施されると共に硬化するために熱が加えられたベースシリコーンゲルから成る。添加剤の各々を別々になくすことにより、各ステップのところでの変形例が与えられ、その結果、各形態について特性が得られる。図8Bは、特定の比で添加剤を含むと共にこれら添加剤が示す特性を備えた各ゲル層組成物の変形例を示している。全ての実施形態についてこの本明細書全体にわたり、外側層に関する比は、容量に基づくか重量に基づくかのいずれかであるのが良く、その理由は、シリコーン及びデッドナの密度がほぼ等しいからある。ゲル層とデッドナとアルコールの比は、容量に基づくものである。
【0037】
切開可能な模擬腸間膜層の組み立てにおける変形例は、血管系をくっつけるシリコーンゲルの使用を含む場合がある。この組立体の構成は、デッドナを含むシリコーンの2枚の別々のシートを作り、そして図7Aに示されているようにこれらを完全に硬化させる初期ステップを含む。シートを完全に硬化させると、スパチュラ又は類似のツールを用いてシリコーンゲルの薄い層58a,58bを図7Bに示されているようにシリコーンシート48,50の各々の模様なしの側部上に広げる。シリコーン血管で作られた血管系44を図7Cに示されているようにシートのうちの1枚上の未硬化ゲル層58a上に載せる。ゲル層58a,58bを含むシリコーンシート48,50を完全に硬化させる。ゲル内張り層を硬化させると、新たなシリコーンゲル54を調製し、シリコーン血管44を配置させたシリコーンシート48上に流延する。ゲル54を塗り広げてこれが図7Dに示されているように血管44を完全に覆う。次に、第2のシリコーンシート50を未硬化ゲル上に載せ、空気ポケットをエッジまで押し出す。このプロセスの結果として、多層腸間膜は、図7Eに示されているような腹腔鏡下切開と適合性を持つことができる。
【0038】
本発明の切開可能模擬組織は、切開される代表的な組織の低い耐引き裂き性、弾性、靱性、色、及びテキスチャという機械的特性を有する。腹腔鏡下ツール、例えばマリーランド(Maryland)切開容器又は腹腔鏡下はさみをこの組織内で用いて組織をそれぞれ切開し又は切断するのが良い。ゲルの切開可能組織使用により、材料に対して独特の光沢が付与され、それによりこの材料は、本物のように濡れた外観を有することができる。この切開可能組織を構成するために用いられるゲルは、シリコーンを主成分としているので、ゲルを既に製造された種々の他のシリコーンモデル又は他の臓器、例えばシリコーン血管に結合することができる。さらに、ゲルの粘性により、他の熱可塑性エラストマー、例えばKRATONポリマーで作られた血管をシリコーンゲルで外側シリコーン層に付着させることができる。
【0039】
本発明の切開可能模擬組織は、切開可能であり、しかもヒトの組織に酷似した幾つかの有利な特性を有する。模擬組織は、ヒトの組織の機械的特性、例えば弾性、靱性、色、及びテキスチャを真似ている。また、模擬組織の耐引き裂き性又は引き裂き強度は低く、有利には、組織分離の伝搬を可能にする。模擬組織の耐引き裂き性が低いことにより、腹腔鏡下マリーランド(Maryland)切開容器又は腹腔鏡下はさみを最小限の力で用いて鈍切開が容易になる。模擬組織は又、切開を必要とする代表的な解剖学的構造の解剖学的ランドマーク又は解剖学的構造を含むことができる。これら解剖学的ランドマーク又は構造としては、臓器、腸間膜層相互間に埋め込まれた血管系、又は切除される必要のある病理学的病変部、例えば腫瘍を包囲した腹膜シートが挙げられるが、これには限定されない。解剖学的ランドマーク又は構造は、非外傷性腹腔鏡下把持器又はマリーランド切開用器を用いて把持でき又は腹腔鏡下はさみを用いて切断できる。加うるに、本発明の切開可能模擬組織は、切開の完了時に解剖学的構造の操作及び手技を可能にする。これら構造の運動は、切開の完了時にヒトの組織の解剖学的構造の運動に酷似している。加うるに、切開可能模擬組織は、一貫して製造可能である。模擬組織は、ヒトの臓器又は膜の形状を取るよう成形可能である。切開可能模擬組織は又、種々のシリコーン及び熱可塑性樹脂と結合可能である。本発明は、シリコーン層の任意のもの及び全ては、下に位置する埋め込み状態の病理学的病変部、腫瘍、血管系等が層のうちの1つ又は2つ以上越しに僅かに視認できるよう半透明又は透明であるのが良い。
【0040】
実施例
【0041】
10A~図10Hを参照して、切開可能な模擬組織の組成物を有する付勢を有する模擬組織モデルを製造する実施例を今説明する。2つの部分、即ち部分A及び部分Bを含む10Aジュロメータシリコーンを用意する。10Aジュロメータシリコーンの約5グラムの部分Aを10Aジュロメータシリコーンの約5グラムの部分Bと混合する。約5グラムのシリコーンデッドナを添加する。黄色のシリコーン顔料を添加する。シリコーンとデッドナと顔料を十分に混合する。混合物をテキスチャ付きモールド上に流延し、そして硬化させて図10Aに示されているように第1の層シート66を形成する。深さ約0.125インチ(3.175mm)の中央キャビティ70を備えた長方形のモールド68を図10Bに示されているように用意する。中央キャビティ70の深さを所望の切開可能な厚さに応じて変更することができる。血管系テンプレート72を図10Bに示されているよう長方形のモールドの中央キャビティ内に配置する。テンプレート72は、シリコーン血管が正確な解剖学的構造のために配置されるべき線74を示している。テンプレート72は、或る特定の病理学的病変部が配置されるべき解剖学的存在的場所76の表示を更に含む。血管系テンプレート72を開示するが、本発明は、これには限定されず、任意の解剖学的特徴のテンプレート72を或る特定の構造、病理学的病変部、臓器、腫瘍及び他の組織並びに解剖学的ランドマークが配置されるべき場所に差し向けた状態で用いることができる。次に、第1の層シート66をこれが図10Cに示されているようにモールド68の外縁部と整列するようモールド68上に配置する。第1の層シート66は、テンプレート72が第1の層シート66越しに視認できるように透明である。次に、図10Dに示されているように、シリコーン系接着剤を用いて模擬血管系78及び模擬腫瘍80を第1のシリコーンシート層66にくっつけると共に下に配置されているテンプレート72上に示されている場所に配置する。模擬血管系78をテンプレート72の線74上に配置する。テンプレート72上の線74又は他の形状を更に色付けしてこれと対応して色付けされた血管及び/又は臓器を正確な解剖学的存在場所に配置するのが良い。約3.3グラムの部分Aシリコーンゲルを約3.3グラムの部分Bシリコーンゲルと混合する。約6.67ミリメートルのシリコーンデッドナ及び5.27グラムのイソプロピルアルコールをシリコーンゲルに添加して一緒に混ぜる。体積又は容量測定により、これらは、量的に約3.3ミリリットルの部分Aシリコーンゲル、約3.3ミリリットルの部分Bシリコーンゲル、6.67ミリリットルのシリコーンデッドナ及び6.67ミリリットルのイソプロピルアルコールを混ぜたものになる。黄色及び白色のシリコーン含量を添加して混合する。混合物を中央キャビティ内に流し込んで模擬血管系78を包囲するが、キャビティを越えて漏れることがないようにし、それにより図10Eに示されているような中間ゲル層82を形成する。コンポーネントの全てをオーブン内において約60℃で約35分間かけて硬化させる。中間ゲル層82も又、硬化時には透明であり、したがって、模擬血管78及び模擬腫瘍80が中間ゲル層82越しに視認できるようになる。10Aジュロメータシリコーンの約35グラムの部分Aと35グラムの部分Bを混合する。シリコーンを硬化済みのゲル及びモデルの側面上に流延して第2の外側層84を形成する。次に、モデルをオーブン内において約60℃で約25分間かけて硬化させる。第2の外側層84も又、透明であり、ゲル層82と外側層84の組み合わせ中の埋め込み状態のランドマーク、例えば模擬腫瘍80及び模擬血管78が層66,82,84越しに視認できるようにする。シリコーンシートサンドイッチの過剰の周囲を切り落としてモデルの寸法が縦横約4インチ×5インチ(10.16cm×12.7cm)になるようにし、中間ゲル層82が2つの包囲している外側層66,84で包封されるようにする。モデルの周囲を2つの外側層66,84相互間に中間ゲル層82がない状態で互いにくっつけられた2つの外側層66,84で作ってモデルからのゲル層82の漏れを阻止するようにする。外側層66,84は、ゲル中間層82を密封すると共にこれを包囲するのに役立つ。図10G及び図10Hを参照すると、長方形のモデルのコーナー部に4つの穴86をあけ、モデルを模擬組織プラットホーム90の直立したペグ88上に配置してトランポリンのように浮かせ、切開を練習することができるようにする。図10A~図10Hの模擬組織モデルは、胆嚢の付近の血管系のモデルであり、部分胆嚢モデルと見なすことができ、これは、模擬胆嚢を含んでも良く又は含まなくても良い。使用にあたり、モデルをプラットホーム90上に浮かせ又は大きな臓器モデル又は臓器トレーの一部を形成し、そして医師がモデルに対して外科的処置を訓練するための外科的模擬装置及び/又は訓練装置内に配置する。モデルを模擬装置及び/又は訓練装置の外側で用いても良い。さらに図11を参照すると、医師は、第2の外側層84に切り込んで中間ゲル層82に入る。医師は、第2の外側層84を第1の外側層66から離して広げ、それにより埋め込み状態の構造、模擬血管78及び模擬腫瘍80に接近する。このようにする際、医師は、中間ゲル層82を分離し又は切開する必要があろう。中間ゲル層82は、軟らかくて光沢があり、しかも弾性である。第2の外側層84を持ち上げると、中間層82の軟質弾性ゲルは、有利には、第2の外側層84を第1の外側層66から遠ざけたときにこのゲルが延びているときに線維膜に似ている。中間ゲル層82が延びているとき、この中間ゲル層は、有利には、ゲルのストランド92が、外科医がゲルのこれらストランドを切り開くよう練習する2つの層相互間に相互結合状態のままで深いポケット内に開く。軟質シリコーンゲルの鈍又は鋭(sharp)切開が続いて空間をあけ、それにより中間ゲル層82を通り且つ第1の外側層66と第2の外側層84との間の切開平面を作る。前方の層も又、切り込んでこれを分割するのが良く、それにより例えば中間ゲル層82内に埋め込まれている模擬血管系78のような構造の視認性を更に得るのが良く、それによりスケルトン化を真似る。
【0042】
本明細書において開示した切開可能な模擬組織の実施形態に対して種々の改造を行うことができることは言うまでもない。したがって、上述の説明は、本発明を限定するものと解されてはならず、単に好ましい実施形態の例示として考えるべきである。当業者であれば、本発明の範囲及び精神に含まれる他の改造例を想到するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図10H
図11