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特許7585273アノード触媒材料および水素発生用の水電解装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】アノード触媒材料および水素発生用の水電解装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/091 20210101AFI20241111BHJP
   C25B 11/031 20210101ALI20241111BHJP
   C25B 11/054 20210101ALI20241111BHJP
   C25B 11/061 20210101ALI20241111BHJP
   C25B 11/063 20210101ALI20241111BHJP
   C25B 11/065 20210101ALI20241111BHJP
   C25B 11/077 20210101ALI20241111BHJP
【FI】
C25B11/091
C25B11/031
C25B11/054
C25B11/061
C25B11/063
C25B11/065
C25B11/077
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022173483
(22)【出願日】2022-10-28
(65)【公開番号】P2023098824
(43)【公開日】2023-07-11
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】110149302
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】趙文軒
(72)【発明者】
【氏名】林國興
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼筱君
(72)【発明者】
【氏名】陳世昌
(72)【発明者】
【氏名】李涵榮
(72)【発明者】
【氏名】蔡麗端
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-127664(JP,A)
【文献】特開2020-189265(JP,A)
【文献】特開平06-299388(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113718285(CN,A)
【文献】国際公開第2021/182385(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式FeaNibcdeを有する水素発生に用いる水電解装置のアノード用であるアノード触媒材料であって、式中、MがMoであり、a+b+c+d+e=1、a>0、b>0、c>0、d≧0、かつe≧0であり、
(a)d>0かつe>0であって、
(a1)MがMoであるとき、0.0121≦a≦0.0753、0.0366≦b≦0.2257、0.0544≦c≦0.2917、0.5059≦d≦0.5925、0.0521≦e≦0.1537である、
アノード触媒材料。
【請求項2】
担体上に担持される連続する層または不連続の粒子である請求項1に記載のアノード触媒材料。
【請求項3】
前記担体には金属、炭素材、導電酸化物、導電窒化物、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項2に記載のアノード触媒材料。
【請求項4】
前記金属にはチタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金、アルミニウム、アルミニウム合金、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項3に記載のアノード触媒材料。
【請求項5】
前記炭素材にはグラファイト、カーボンナノチューブ、炭素繊維、カーボンマイクロビーズ、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項3に記載のアノード触媒材料。
【請求項6】
前記担体は、メッシュ状、発泡状、多孔状、またはこれらの組み合わせを含む、請求項3に記載のアノード触媒材料。
【請求項7】
アルカリ性水溶液中に配置されたアノードおよびカソードを含む水素発生に用いる水電解装置であって、
前記アノードが、化学式FeaNibcdeを有するアノード触媒材料を含み、
式中、MはMoであり、a+b+c+d+e=1、a>0、b>0、c>0、d≧0、e≧0であり、
(a)d>0かつe>0であって、
(a1)MがMoであるとき、0.0121≦a≦0.0753、0.0366≦b≦0.2257、0.0544≦c≦0.2917、0.5059≦d≦0.5925、0.0521≦e≦0.1537である、
水素発生に用いる水電解装置。
【請求項8】
前記アルカリ性水溶液のpHが12より大きく、かつ15以下である、請求項7に記載の水素発生に用いる水電解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野は、アノード触媒材料に関し、より詳細には、これを用いる水素発生用の水電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー不足により、エネルギーの代替ソースを見つけることが現在急務となっているが、水素エネルギーは最良のチョイスである。燃料として用いられる水素ガスは環境保護の要求を満たしており、水の電解は水素および酸素を生成するための最も簡単な方法である。水を電解して水素を生成することにはたくさんの利点があるが、多くのエネルギーを消費するという重大な欠点もあり、結果としてコストがかかり過ぎてしまう。水の電解における過度に高いエネルギー消費は過度に高い過電圧に関連し、そして過電圧は電極、電解質、および電気化学反応の生成物に関連する。水電解の効率を高めるべく、活性化エネルギーを低減するとともに反応界面を増加させて、低反応の開始電位および高い電流活性にするために、電極は重要なものである。活性化エネルギーは電極表面の触媒により低減し得るが、これは電極材料固有の触媒特性による。
【0003】
アルカリ水電解のプロセスにおけるカソードおよびアノードの反応は以下の通りに示される。
【0004】
カソードの反応式:
2H2O+2e-→H2+2OH-(水素発生反応、HER)
【0005】
アノードの反応式:
2OH-→H2O+1/2O2+2e-(酸素発生反応、OER)
【0006】
アノードの反応は律速段階である。PtまたはIrO2のような貴金属は最も優れた触媒電極材料であるが、非常に高価である。IrO2を別の材料に置き換えて、コストを下げる必要がある
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第8487733B2号明細書
【文献】米国特許第7468899B1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電解により水素を生成するのに用いる酸素発生反応(OER)電極の活性を高めるために、低い過電圧および高い電流活性を有する新規な非貴金属触媒組成物が求められる。加えて、その新規触媒組成物は、触媒活性および低コストを同時に実現するものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一実施形態は、化学式FeaNibcdeを有するアノード触媒材料を提供する。式中、MはMo、W、Sn、Si、Nb、V、Cr、Taまたはこれらの組み合わせであり、a+b+c+d+e=1、a>0、b>0、c>0、d≧0、かつe≧0であり、(a)d>0かつe>0であって、(a1)MがMoであるとき、0.0121≦a≦0.0753、0.0366≦b≦0.2257、0.0544≦c≦0.2917、0.5059≦d≦0.5925、0.0521≦e≦0.1537であり;(a2)MがWであるとき、0.0138≦a≦0.0887、0.0417≦b≦0.2566、0.0365≦c≦0.3708、0.5035≦d≦0.5782、0.0403≦e≦0.0778であり;(a3)MがSnであるとき、0.0458≦a≦0.0836、0.1307≦b≦0.2519、0.0440≦c≦0.1979、0.5335≦d≦0.5853、0.035≦e≦0.0920であり;(a4)MがSiであるとき、0.0699≦a≦0.0951、0.2489≦b≦0.2824、0.0136≦c≦0.0712、0.5820≦d≦0.5983、0.0106≦e≦0.0280であり;(a5)MがNbであるとき、0.0590≦a≦0.1057、0.2089≦b≦0.3227、0.0052≦c≦0.1257、0.4804≦d≦0.5454、0.0314≦e≦0.1046であり;(a6)MがVであるとき、0.0082≦a≦0.0809、0.0277≦b≦0.2485、0.0092≦c≦0.1524、0.6150≦d≦0.6878、0.0367≦e≦0.1258であり;(a7)MがCrであるとき、0.0057≦a≦0.0664、0.0171≦b≦0.2055、0.0210≦c≦0.1694、0.5665≦d≦0.6904、0.0169≦e≦0.2117であり;(a8)MがTaであるとき、0.0710≦a≦0.0833、0.2053≦b≦0.2432、0.0319≦c≦0.0551、0.5614≦d≦0.5757、0.0410≦e≦0.0881である;または(b)d=0、かつe=0もしくはeが0よりやや大きく、(b1)MがMoであるとき、(b1-1)0.0548≦a≦0.2173、0.1367≦b≦0.6469、0.1358≦c≦0.7815である;もしくは(b1-2)0.4979≦a≦0.6376、0.2282≦b≦0.3188、0.0436≦c≦0.2772であり;(b2)MがWであるとき、(b2-1)0.1057≦a≦0.2350、0.3211≦b≦0.7092、0.0558≦c≦0.5732である;もしくは(b2-2)0.3295≦a≦0.6485、0.1573≦b≦0.2966、0.0549≦c≦0.5132であり;(b3)MがSnであるとき、(b3-1)0.1290≦a≦0.1832、0.4002≦b≦0.5962、0.2206≦c≦0.4708である;あるいは0.1990≦a≦0.2420、0.6566≦b≦0.7194、0.0386≦c≦0.1444である;もしくは(b3-2)0.5222≦a≦0.5647、0.2705≦b≦0.2926、0.1427≦c≦0.2073であり;(b4)MがSiであるとき、(b4-1)0.2080≦a≦0.2157、0.6500≦b≦0.6895、0.0998≦c≦0.1308である;もしくは(b4-2)0.3457≦a≦0.6348、0.1731≦b≦0.3318、0.0334≦c≦0.4812である。
【0010】
本開示の一実施形態は、アルカリ性水溶液中に配置されたアノードおよびカソードを含む水素発生に用いる水電解装置であって、アノードが、化学式FeaNibcdeを有するアノード触媒材料を含む、水電解装置を提供する。前式中、MはMo、W、Sn、Si、Nb、V、Cr、Taまたはこれらの組み合わせであり、a+b+c+d+e=1、a>0、b>0、c>0、d≧0、かつe≧0であり、(a)d>0かつe>0であって、(a1)MがMoであるとき、0.0121≦a≦0.0753、0.0366≦b≦0.2257、0.0544≦c≦0.2917、0.5059≦d≦0.5925、0.0521≦e≦0.1537であり;(a2)MがWであるとき、0.0138≦a≦0.0887、0.0417≦b≦0.2566、0.0365≦c≦0.3708、0.5035≦d≦0.5782、0.0403≦e≦0.0778であり(a3)MがSnであるとき、0.0458≦a≦0.0836、0.1307≦b≦0.2519、0.0440≦c≦0.1979、0.5335≦d≦0.5853、0.035≦e≦0.0920であり;(a4)MがSiであるとき、0.0699≦a≦0.0951、0.2489≦b≦0.2824、0.0136≦c≦0.0712、0.5820≦d≦0.5983、0.0106≦e≦0.0280であり;(a5)MがNbであるとき、0.0590≦a≦0.1057、0.2089≦b≦0.3227、0.0052≦c≦0.1257、0.4804≦d≦0.5454、0.0314≦e≦0.1046;(a6)MがVであるとき、0.0082≦a≦0.0809、0.0277≦b≦0.2485、0.0092≦c≦0.1524、0.6150≦d≦0.6878、0.0367≦e≦0.1258であり;(a7)MがCrであるとき、0.0057≦a≦0.0664、0.0171≦b≦0.2055、0.0210≦c≦0.1694、0.5665≦d≦0.6904、0.0169≦e≦0.2117であり;(a8)MがTaであるとき、0.0710≦a≦0.0833、0.2053≦b≦0.2432、0.0319≦c≦0.0551、0.5614≦d≦0.5757、0.0410≦e≦0.0881である;または(b)d=0、かつe=0もしくはeが0よりやや大きく、(b1)MがMoであるとき、(b1-1)0.0548≦a≦0.2173、0.1367≦b≦0.6469、0.1358≦c≦0.7815である;もしくは(b1-2)0.4979≦a≦0.6376、0.2282≦b≦0.3188、0.0436≦c≦0.2772であり;(b2)MがWであるとき、(b2-1)0.1057≦a≦0.2350、0.3211≦b≦0.7092、0.0558≦c≦0.5732である;もしくは(b2-2)0.3295≦a≦0.6485、0.1573≦b≦0.2966、0.0549≦c≦0.5132であり;(b3)MがSnであるとき、(b3-1)0.1290≦a≦0.1832、0.4002≦b≦0.5962、0.2206≦c≦0.4708である;あるいは0.1990≦a≦0.2420、0.6566≦b≦0.7194、0.0386≦c≦0.1444である;もしくは(b3-2)0.5222≦a≦0.5647、0.2705≦b≦0.2926、0.1427≦c≦0.2073であり;(b4)MがSiであるとき、(b4-1)0.2080≦a≦0.2157、0.6500≦b≦0.6895、0.0998≦c≦0.1308である;もしくは(b4-2)0.3457≦a≦0.6348、0.1731≦b≦0.3318、0.0334≦c≦0.4812である。
【発明の効果】
【0011】
本開示のいくつかの実施形態におけるアノード触媒は、アルカリ性水溶液の電解により水素を製造するという要求を満たすことができる。OERに関し、触媒は高い導電能および高いOERの電気化学活性を備えている。
【0012】
以下の実施形態において詳細な説明を行う。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の詳細な記載においては、説明の目的で、開示される実施形態が十分に理解されるよう、多数の特定の詳細が示される。ただし、これら特定の詳細がなくとも、1つまたはそれ以上の実施形態が実施可能であることは明らかであろう。
【0014】
本開示の一実施形態は、化学式FeaNibcdeを有するアノード触媒材料を提供する。式中、MはMo、W、Sn、Si、Nb、V、Cr、Taまたはこれらの組み合わせであり、a+b+c+d+e=1、a>0、b>0、c>0、d≧0、かつe≧0である。MがAl、Zn、Y、またはScのような別の元素であると、材料が、アノード触媒材料の効果が無い、またはアノード触媒材料の効果に劣るものとなってしまう。いくつかの実施形態において、(a)d>0かつe>0であって、(a1)MがMoであるとき、0.0121≦a≦0.0753、0.0366≦b≦0.2257、0.0544≦c≦0.2917、0.5059≦d≦0.5925、0.0521≦e≦0.1537である。いくつかの実施形態において、(a2)MがWであるとき、0.0138≦a≦0.0887、0.0417≦b≦0.2566、0.0365≦c≦0.3708、0.5035≦d≦0.5782、0.0403≦e≦0.0778である。いくつかの実施形態において、(a3)MがSnであるとき、0.0458≦a≦0.0836、0.1307≦b≦0.2519、0.0440≦c≦0.1979、0.5335≦d≦0.5853、0.035≦e≦0.0920である。いくつかの実施形態において、(a4)MがSiであるとき、0.0699≦a≦0.0951、0.2489≦b≦0.2824、0.0136≦c≦0.0712、0.5820≦d≦0.5983、0.0106≦e≦0.0280である。いくつかの実施形態において、(a5)MがNbであるとき、0.0590≦a≦0.1057、0.2089≦b≦0.3227、0.0052≦c≦0.1257、0.4804≦d≦0.5454、0.0314≦e≦0.1046である。いくつかの実施形態において、(a6)MがVであるとき、0.0082≦a≦0.0809、0.0277≦b≦0.2485、0.0092≦c≦0.1524、0.6150≦d≦0.6878、0.0367≦e≦0.1258である。いくつかの実施形態において、(a7)MがCrであるとき、0.0057≦a≦0.0664、0.0171≦b≦0.2055、0.0210≦c≦0.1694、0.5665≦d≦0.6904、かつ0.0169≦e≦0.2117である。いくつかの実施形態において、(a8)MがTaであるとき、0.0710≦a≦0.0833、0.2053≦b≦0.2432、0.0319≦c≦0.0551、0.5614≦d≦0.5757、0.0410≦e≦0.0881である。a、b、またはcが大きすぎるか、または小さすぎると、水電解による水素(および酸素)の製造時に、アノード触媒材料の開始電位が過度に高くなってしまうか、または電流密度が過度に低くなってしまう。dまたはeは大きすぎると、水電解による水素(および酸素)の製造時に、アノード触媒材料の開始電位が過度に高くなってしまうか、または電流密度が過度に低くなってしまう。dまたはeが小さすぎると、アノード触媒材料が合金状態に近くなり、電極触媒作用の触媒(electrocatalytic catalyst)が含む窒素および酸素の量が過度に低くなってしまう。このようであると、水電解による水素(および酸素)の製造時に、アノード触媒層上に形成されるNi(OH)2層(水をより容易に解離させる)が相対的に少なくなって、開始電位が相対的に高くなるか、または電流密度が相対的に低くなってしまう。
【0015】
いくつかの実施形態において、アノード触媒材料は化学式FeaNibcdeを有し、式中、d=0、かつe=0もしくは0よりやや大きい。言い換えると、アノード触媒材料は、合金(FeaNibc)または合金酸化物(FeaNibce)である。いくつかの実施形態において、(b1)MがMoであるとき、(b1-1)0.0548≦a≦0.2173、0.1367≦b≦0.6469、0.1358≦c≦0.7815である;または(b1-2)0.4979≦a≦0.6376、0.2282≦b≦0.3188、0.0436≦c≦0.2772である。いくつかの実施形態において、(b2)MがWであるとき、(b2-1)0.1057≦a≦0.2350、0.3211≦b≦0.7092、0.0558≦c≦0.5732である;または(b2-2)0.3295≦a≦0.6485、0.1573≦b≦0.2966、かつ0.0549≦c≦0.5132である。いくつかの実施形態において、(b3)MがSnであるとき、(b3-1)0.1290≦a≦0.1832、0.4002≦b≦0.5962、0.2206≦c≦0.4708である;または0.1990≦a≦0.2420、0.6566≦b≦0.7194、0.0386≦c≦0.1444である;または(b3-2)0.5222≦a≦0.5647、0.2705≦b≦0.2926、0.1427≦c≦0.2073である。いくつかの実施形態において、(b4)MがSiであるとき、(b4-1)0.2080≦a≦0.2157、0.6500≦b≦0.6895、0.0998≦c≦0.1308である;または(b4-2)0.3457≦a≦0.6348、0.1731≦b≦0.3318、0.0334≦c≦0.4812である。同様に、a、b、またはcが大きすぎるか、または小さすぎると、水電解による水素(および酸素)の製造時に、アノード触媒材料の開始電位が過度に高くなってしまうか、または電流密度が過度に低くなってしまう。なお、アノード触媒材料中の元素の比率は、エネルギー分散型X線分析(EDS)によって確認できるという点に留意されたい。EDSのステップを次に示す。1.SEMの動作電圧を15kV(必要であれば20kVとすることが可能)、作動距離(workingdistance、WD)を8.5mm、かつEDS有効計測時間(measuring live time)を60から120秒とする。2.正式なサンプルを分析する前に、銅含有サンプルを用い、スペクトルを収集してピークを補正する(Cu-Ka補正(correction))。3.定性分析操作を実行してx線信号スペクトルを取得し、測定された元素から、より精度の高い定性分析結果を出す。4.定性分析結果より、元素測定に基づいて半定量分析を実行する。
【0016】
いくつかの実施形態において、アノード触媒材料は、担体に担持された連続する層または不連続の粒子である。例えば、厚さ約50nmから1200nmのアノード触媒層が担体上に形成されてよい。アノード触媒層の厚さが薄すぎると、触媒の担持量が不足し、電流密度が低くなりすぎるとともに、触媒活性が悪くなってしまう。アノード触媒層の厚さが厚すぎると、担体に塗布されたアノード触媒層の応力が高くなりすぎてしまう。このようであると、触媒層と担体との間の付着力が十分でなくなる。そして反応が続くにつれ、電極からアノード触媒が次第に溶解して剥離し、触媒活性の減衰がより早まってしまう。あるいは、粒径3nmから25nmのアノード触媒粒子が担体上に形成されてもよい。アノード触媒粒子が小さすぎると、マクロ量子トンネル効果のために触媒効果が低下してしまう。アノード触媒粒子が大きすぎると、触媒の表面積が減ることにより、触媒活性が同様に低下してしまう。タイプにかかわらず、アノード触媒材料の担体表面における密度は約0.05mg/cm2から2mg/cm2とする。アノード触媒材料の密度が低すぎると、触媒の担持量が不足してしまい、電流密度が過度に低くなるとともに、触媒活性が悪くなってしまう。アノード触媒材料の密度が高すぎると、担体に塗布されたアノード触媒層の応力が高くなりすぎてしまう。このようであると、触媒層と担体との間の付着力が十分でなくなり、触媒活性が高まらないか、ひいては低下してしまう。
【0017】
いくつかの実施形態において、担体には金属、炭素材、導電酸化物、導電窒化物、またはこれらの組み合わせが含まれる。例えば、金属は、チタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金、アルミニウム、アルミニウム合金、別の適した金属もしくは合金、またはこれらの組み合わせであってよい。いくつかの実施形態において、炭素材は、グラファイト、カーボンナノチューブ、炭素繊維、カーボンマイクロビーズ、別の適した炭素材、またはこれらの組み合わせであってよい。いくつかの実施形態において、担体はメッシュ状、発泡状、多孔状、またはこれらの組み合わせを含む。
【0018】
本開示の1実施形態は、水素発生に用いる水電解装置であって、アルカリ性水溶液中に配置されたアノードおよびカソードを含み、該アノードがアノード触媒材料を含む、水電解装置を提供する。アノード触媒材料および触媒を担持するための担体については上述されているため、ここでは関連する説明を繰り返さない。いくつかの実施形態において、アルカリ性水溶液は、NaOH、KOH、別の適したアルカリ性の水溶液、またはこれらの組み合わせであってよい。いくつかの実施形態において、アルカリ性水溶液のpHは 12よりも大きく、かつ15以下である。アルカリ性水溶液のpHが低すぎると、溶液の導電性が悪くなる。アルカリ性水溶液のpHが高すぎると、溶液の粘度が高くなりすぎてしまう。アノードおよびカソードに電位を印加してアルカリ性水溶液を電解することで、カソードが水素を発生し、アノードが酸素を発生することができるようになる。
【0019】

上記アノード触媒が、複数の水素発生用の電解装置、例えば、膜電極接合体、従来の電解槽、またはアルカリ電解液電解槽(液体電解質および多孔質セパレーターのような構造的特徴を含む)のアノードに用いることができるという点に留意されたい。したがって、本開示のいくつかの実施形態におけるアノード触媒は、アルカリ性水溶液の電解により水素を製造するという要求を満たすことができる、OERに関し、触媒は高い導電能および高いOERの電気化学活性を備えている。
【0020】
以下に、当該分野において通常の知識を有する者が容易に理解できるよう、例示的な実施形態について詳細に説明する。ここに示される例示的な実施形態に限定されることなく、本発明概念は様々な形式で具体化され得る。
【実施例
【0021】
実施例1
【0022】
FeNiMoNO触媒材料を反応性マグネトロンスパッタによりガラス状カーボン(5mmOD×4mmH)上に堆積させた。FeNi3ターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)およびMoターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)を準備し、窒素およびアルゴン(例えば、窒素/(アルゴン+窒素)=50%)を導入し、Moターゲットのスパッタリング出力を調整して反応性スパッタリングを行い、ガラス状カーボンに堆積された、組成比の異なる(例えば、Mo/(Fe+Ni+Mo+N+O))、FeNiMoNOの電極触媒の触媒層(electrocatalytic catalyst layers)を得た。アルゴンおよび窒素の総流量を20sccmとし、スパッタリング圧力を20mTorrに制御し、プロセス温度を室温に制御し、スパッタリング時間を7分から8分とした。スパッタされた膜の厚さは約100nmであった。FeNiMoNO触媒材料の組成をエネルギー分散型X線分析(EDS)により分析したところ、Mo/(Fe+Ni+Mo+N+O)は5.44at%から29.17at%であった。異なる組成比のFeNiMoNO触媒材料のOER電気化学活性について試験した。0.1M KOH溶液中で、Hg/HgOを参照電極として用い、酸素発生反応(OER)機器のLSV測定を行った。LSV測定中、電極を1600rpmで回転させ、走査電圧の範囲を0.32Vから1Vとし、走査速度を10mV/sとし、かつ走査回数は3回とした。FeNiMoNO膜の電気化学特性を表1に示した。Mo/(Fe+Ni+Mo+N+O)は、5.44at%から29.17at%でより優れたOER活性を達成した。触媒のRHE電位1.878Vにおける最良の電流密度(mA/cm2)は42.99mA/cm2であり、その開始電位は1.487Vであった。
【0023】
【表1】
【0024】
実施例2
【0025】
FeNiWNO触媒材料を反応性マグネトロンスパッタによりガラス状カーボン(5mmOD×4mmH)上に堆積させた。FeNi3ターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)およびWターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)を準備し、窒素およびアルゴン(例えば、窒素/(アルゴン+窒素)=50%)を導入し、Wターゲットのスパッタリング出力を調整して反応性スパッタリングを行い、ガラス状カーボンに堆積された、組成比の異なる(例えば、W/(Fe+Ni+W+N+O))FeNiWNOの電極触媒の触媒層(electrocatalytic catalyst layers)を得た。アルゴンおよび窒素の総流量を20sccmとし、スパッタリング圧力を20mTorrに制御し、プロセス温度を室温に制御し、スパッタリング時間を7分から8分とした。スパッタされた膜の厚さは約100nmであった。FeNiWNO触媒材料の組成をEDSにより分析したところ、W/(Fe+Ni+W+N+O)は3.65at%から37.08at%であった。異なる組成比のFeNiWNO触媒材料のOER電気化学活性について試験した。0.1M KOH溶液中で、Hg/HgOを参照電極として用い、酸素発生反応(OER)機器のLSV測定を行った。LSV測定中、電極を1600rpmで回転させ、走査電圧の範囲を0.32Vから1Vとし、走査速度を10mV/sとし、かつ走査回数は3回とした。FeNiWNO膜の電気化学特性を表2に示した。W/(Fe+Ni+W+N+O)は、3.65at%から37.08at%でより優れたOER活性を達成した。触媒のRHE電位1.878Vにおける最良の電流密度(mA/cm2)は42.56mA/cm2であり、その開始電位は1.482Vであった。
【0026】
【表2】

【0027】
実施例3
【0028】
FeNiSnNO触媒材料を反応性マグネトロンスパッタによりガラス状カーボン(5mmOD×4mmH)上に堆積させた。FeNi3ターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)およびSnターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)を準備し、窒素およびアルゴン(例えば、窒素/(アルゴン+窒素)=50%)を導入し、Snターゲットのスパッタリング出力を調整して反応性スパッタリングを行い、ガラス状カーボンに堆積された、組成比の異なる(例えば、Sn/(Fe+Ni+Sn+N+O))FeNiSnNOの電極触媒の触媒層(electrocatalyticcatalyst layers)を得た。アルゴンおよび窒素の総流量を20sccmとし、スパッタリング圧力を20mTorrに制御し、プロセス温度を室温に制御し、スパッタリング時間を7分から8分とした。スパッタされた膜の厚さは約100nmであった。FeNiSnNO触媒材料の組成をEDSにより分析したところ、Sn/(Fe+Ni+Sn+N+O)は4.4at%から23.80at%であった。異なる組成比のFeNiSnNO触媒材料のOER電気化学活性について試験した。0.1M KOH溶液中で、Hg/HgOを参照電極として用い、酸素発生反応(OER)機器のLSV測定を行った。LSV測定中、電極を1600rpmで回転させ、走査電圧の範囲を0.32Vから1Vとし、走査速度を10mV/sとし、かつ走査回数は3回とした。FeNiSnNO膜の電気化学特性を表3に示した。Sn/(Fe+Ni+Sn+N+O))は、4.40at%から19.79at%でより優れたOER活性を達成した。触媒のRHE電位1.878Vにおける最良の電流密度(mA/cm2)は36.67mA/cm2であり、その開始電位は1.549Vであった。
【0029】
【表3】

【0030】
実施例4
【0031】
FeNiSiNO触媒材料を反応性マグネトロンスパッタによりガラス状カーボン(5mmOD×4mmH)上に堆積させた。FeNi3ターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)およびSiターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)を準備し、窒素およびアルゴン(例えば、窒素/(アルゴン+窒素)=50%)を導入し、Siターゲットのスパッタリング出力を調整して反応性スパッタリングを行い、ガラス状カーボンに堆積された、組成比の異なる(例えば、Si/(Fe+Ni+Si+N+O))FeNiSiNOの電極触媒の触媒層(electrocatalytic catalyst layers)を得た。アルゴンおよび窒素の総流量を20sccmとし、スパッタリング圧力を20mTorrに制御し、プロセス温度を室温に制御し、スパッタリング時間を7分から8分とした。スパッタされた膜の厚さは約100nmであった。FeNiSiNO触媒材料の組成をEDSにより分析したところ、Si/(Fe+Ni+Si+N+O)は1.36at%から12.04at%であった。異なる組成比のFeNiSiNO触媒材料のOER電気化学活性について試験した。0.1M KOH溶液中で、Hg/HgOを参照電極として用い、酸素発生反応(OER)機器のLSV測定を行った。LSV測定中、電極を1600rpmで回転させ、走査電圧の範囲を0.32Vから1Vとし、走査速度を10mV/sとし、かつ走査回数は3回とした。FeNiSiNO膜の電気化学特性を表4に示した。Si/(Fe+Ni+Si+N+O)は1.36at%から7.12at%でより優れたOER活性を達成した。触媒のRHE電位1.878Vにおける最良の電流密度(mA/cm2)は36.75mA/cm2であり、その開始電位は1.545Vであった。
【0032】
【表4】

【0033】
実施例5
【0034】
FeNiNbNO触媒材料を反応性マグネトロンスパッタによりガラス状カーボン(5mmOD×4mmH)上に堆積させた。FeNi3ターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)およびNbターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)を準備し、窒素およびアルゴン(例えば、窒素/(アルゴン+窒素)=50%)を導入し、Nbターゲットのスパッタリング出力を調整して反応性スパッタリングを行い、ガラス状カーボンに堆積された、組成比の異なる(例えば、Nb/(Fe+Ni+Nb+N+O))FeNiNbNOの電極触媒の触媒層(electrocatalytic catalyst layers)を得た。アルゴンおよび窒素の総流量を20sccmとし、スパッタリング圧力を20mTorrに制御し、プロセス温度を室温に制御し、スパッタリング時間を7分から8分とした。スパッタされた膜の厚さは約100nmであった。FeNiNbNO触媒材料の組成をEDSにより分析したところ、Nb/(Fe+Ni+Nb+N+O)は0.52at%から21.86at%であった。異なる組成比のFeNiNbNO触媒材料のOER電気化学活性について試験した。0.1M KOH溶液中で、Hg/HgOを参照電極として用い、酸素発生反応(OER)機器のLSV測定を行った。LSV測定中、電極を1600rpmで回転させ、走査電圧の範囲を0.32Vから1Vとし、走査速度を10mV/sとし、かつ走査回数は3回とした。FeNiNbNO膜の電気化学特性を表5に示した。Nb/(Fe+Ni+Nb+N+O)は0.52at%から12.57at%でより優れたOER活性を達成した。触媒のRHE電位1.878Vにおける最良の電流密度(mA/cm2)は42.55mA/cm2であり、その開始電位は1.529Vであった。
【0035】
【表5】

【0036】
実施例6
【0037】
FeNiVNO触媒材料を反応性マグネトロンスパッタによりガラス状カーボン(5mmOD×4mmH)上に堆積させた。FeNi3ターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)およびVターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)を準備し、窒素およびアルゴン(例えば、窒素/(アルゴン+窒素)=50%)を導入し、Vターゲットのスパッタリング出力を調整して反応性スパッタリングを行い、ガラス状カーボンに堆積された、組成比の異なる(例えば、V/(Fe+Ni+V+N+O))FeNiVNOの電極触媒の触媒層(electrocatalytic catalyst layers)を得た。アルゴンおよび窒素の総流量を20sccmとし、スパッタリング圧力を20mTorrに制御し、プロセス温度を室温に制御し、スパッタリング時間を7分から8分とした。スパッタされた膜の厚さは約100nmであった。FeNiVNO触媒材料の組成をEDSにより分析したところ、V/(Fe+Ni+V+N+O)は0.92at%から15.24at%であった。異なる組成比のFeNiVNO触媒材料のOER電気化学活性について試験した。0.1M KOH溶液中で、Hg/HgOを参照電極として用い、酸素発生反応(OER)機器のLSV測定を行った。LSV測定中、電極を1600rpmで回転させ、走査電圧の範囲を0.32Vから1Vとし、走査速度を10mV/sとし、かつ走査回数は3回とした。FeNiVNO膜の電気化学特性を表6に示した。V/(Fe+Ni+V+N+O)は0.92at%から15.24at%でより優れたOER活性を達成した。触媒のRHE電位1.878Vにおける最良の電流密度(mA/cm2)は43.26mA/cm2であり、その開始電位は1.485Vであった。
【0038】
【表6】

【0039】
実施例7
【0040】
FeNiCrNO触媒材料を反応性マグネトロンスパッタによりガラス状カーボン(5mmOD×4mmH)上に堆積させた。FeNi3ターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)およびCrターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)を準備し、窒素およびアルゴン(例えば、窒素/(アルゴン+窒素)=50%)を導入し、Crターゲットのスパッタリング出力を調整して反応性スパッタリングを行い、ガラス状カーボンに堆積された、組成比の異なる(例えば、Cr/(Fe+Ni+Cr+N+O))FeNiCrNOの電極触媒の触媒層(electrocatalytic catalyst layers)を得た。アルゴンおよび窒素の総流量を20sccmとし、スパッタリング圧力を20mTorrに制御し、プロセス温度を室温に制御し、スパッタリング時間を7分から8分とした。スパッタされた膜の厚さは約100nmであった。FeNiCrNO触媒材料の組成をエネルギー分散型X線分析(EDS)により分析したところ、Cr/(Fe+Ni+Cr+N+O)は2.10at%から16.94at%であった。異なる組成比のFeNiCrNO触媒材料のOER電気化学活性について試験した。0.1M KOH溶液中で、Hg/HgOを参照電極として用い、酸素発生反応(OER)機器のLSV測定を行った。LSV測定中、電極を1600rpmで回転させ、走査電圧の範囲を0.32Vから1Vとし、走査速度を10mV/sとし、かつ走査回数は3回とした。FeNiCrNO膜の電気化学特性を表7に示した。Cr/(Fe+Ni+Cr+N+O)は2.10at%から16.94at%でより優れたOER活性を達成した。触媒のRHE電位1.878Vにおける最良の電流密度(mA/cm2)は43.87mA/cm2であり、その開始電位は1.478Vであった。
【0041】
【表7】

【0042】
実施例8
【0043】
FeNiTaNO触媒材料を反応性マグネトロンスパッタによりガラス状カーボン(5mmOD×4mmH)上に堆積させた。FeNi3ターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)およびTaターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)を準備し、窒素およびアルゴン(例えば、窒素/(アルゴン+窒素)=50%)を導入し、Taターゲットのスパッタリング出力を調整して反応性スパッタリングを行い、ガラス状カーボンに堆積された、組成比の異なる(例えば、Ta/(Fe+Ni+Ta+N+O))FeNiTaNOの電極触媒の触媒層(electrocatalytic catalyst layers)を得た。アルゴンおよび窒素の総流量を20sccmとし、スパッタリング圧力を20mTorrに制御し、プロセス温度を室温に制御し、スパッタリング時間を7分から8分とした。スパッタされた膜の厚さは約100nmであった。FeNiTaNO触媒材料の組成をEDSにより分析したところ、Ta/(Fe+Ni+Ta+N+O)は1.69at%から20.61at%であった。異なる組成比のFeNiTaNO触媒材料のOER電気化学活性について試験した。0.1M KOH溶液中で、Hg/HgOを参照電極として用い、酸素発生反応(OER)機器のLSV測定を行った。LSV測定中、電極を1600rpmで回転させ、走査電圧の範囲を0.32Vから1Vとし、走査速度を10mV/sとし、かつ走査回数は3回とした。FeNiTaNO膜の電気化学特性を表8に示した。Ta/(Fe+Ni+Ta+N+O)は3.19at%から5.51at%でより優れたOER活性を達成した。触媒のRHE電位1.878Vにおける最良の電流密度(mA/cm2)は42.12mA/cm2であり、その開始電位は1.529Vであった。
【0044】
【表8】

【0045】
実施例9
【0046】
FeNiMo触媒材料を反応性マグネトロンスパッタによりガラス状カーボン(5mmOD×4mmH)上に堆積させた。FeNi3ターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)およびMoターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)を準備し、アルゴンを導入し、Moターゲットのスパッタリング出力を調整して同時スパッタリングを行い、ガラス状カーボンに堆積された、組成比の異なる(例えば、Mo/(Fe+Ni+Mo))FeNiMoの電極触媒の触媒層(electrocatalyticcatalyst layers)を得た。アルゴンの流量を10sccmとし、スパッタリング圧力を5mTorrに制御し、プロセス温度を室温に制御し、スパッタリング時間を3分から4分とした。スパッタされた膜の厚さは約100nmであった。FeNiMo触媒材料の組成をEDSにより分析したところ、Mo/(Fe+Ni+Mo)は13.58at%から78.15at%であった。異なる組成比のFeNiMo触媒材料のOER電気化学活性について試験した。0.1M KOH溶液中で、Hg/HgOを参照電極として用い、酸素発生反応(OER)機器のLSV測定を行った。LSV測定中、電極を1600rpmで回転させ、走査電圧の範囲を0.32Vから1Vとし、走査速度を10mV/sとし、かつ走査回数は3回とした。FeNiMo膜の電気化学特性を表9に示した。Mo/(Fe+Ni+Mo)は13.58at%から78.15at%でより優れたOER活性を達成した。触媒のRHE電位1.878Vにおける最良の電流密度(mA/cm2)は39.52mA/cm2であり、その開始電位は1.512Vであった。
【0047】
【表9】

【0048】
実施例10
【0049】
FeNiW触媒材料を反応性マグネトロンスパッタによりガラス状カーボン(5mmOD×4mmH)上に堆積させた。FeNi3ターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)およびWターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)を準備し、アルゴンを導入し、Wターゲットのスパッタリング出力を調整して同時スパッタリングを行い、ガラス状カーボンに堆積された、組成比の異なる(例えば、W/(Fe+Ni+W))FeNiWの電極触媒の触媒層(electrocatalytic catalyst layers)を得た。アルゴンの流量を10sccmとし、スパッタリング圧力を5mTorrに制御し、プロセス温度を室温に制御し、スパッタリング時間を3分から4分とした。スパッタされた膜の厚さは約100nmであった。FeNiW触媒材料の組成をEDSにより分析したところ、W/(Fe+Ni+W)は5.58at%から57.32at%であった。異なる組成比のFeNiW触媒材料のOER電気化学活性について試験した。0.1M KOH溶液中で、Hg/HgOを参照電極として用い、酸素発生反応(OER)機器のLSV測定を行った。LSV測定中、電極を1600rpmで回転させ、走査電圧の範囲を0.32Vから1Vとし、走査速度を10mV/sとし、かつ走査回数は3回とした。FeNiW膜の電気化学特性を表10に示した。W/(Fe+Ni+W)は5.58at%から57.32at%でより優れたOER活性を達成した。触媒のRHE電位1.878Vにおける最良の電流密度(mA/cm2)は41.21mA/cm2であり、その開始電位は1.505Vであった。
【0050】
【表10】

【0051】
実施例11
【0052】
FeNiSn触媒材料を反応性マグネトロンスパッタによりガラス状カーボン(5mmOD×4mmH)上に堆積させた。FeNi3ターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)およびSnターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)を準備し、アルゴンを導入し、Snターゲットのスパッタリング出力を調整して同時スパッタリングを行い、ガラス状カーボンに堆積された、組成比の異なる(例えば、Sn/(Fe+Ni+Sn))FeNiSnの電極触媒の触媒層(electrocatalytic catalyst layers)を得た。アルゴンの流量を10sccmとし、スパッタリング圧力を5mTorrに制御し、プロセス温度を室温に制御し、スパッタリング時間を3分から4分とした。スパッタされた膜の厚さは約100nmであった。FeNiSn触媒材料の組成をEDSにより分析したところ、Sn/(Fe+Ni+Sn)は3.86at%から47.08at%であった。異なる組成比のFeNiSn触媒材料のOER電気化学活性について試験した。0.1M KOH溶液中で、Hg/HgOを参照電極として用い、酸素発生反応(OER)機器のLSV測定を行った。LSV測定中、電極を1600rpmで回転させ、走査電圧の範囲を0.32Vから1Vとし、走査速度を10mV/sとし、かつ走査回数は3回とした。FeNiSn膜の電気化学特性を表11に示した。Sn/(Fe+Ni+Sn)は3.86at%から14.44at%または22.06at%から47.08at%でより優れたOER活性を達成した。触媒のRHE電位1.878Vにおける最良の電流密度(mA/cm2)は35.12mA/cm2であり、その開始電位は1.556Vであった。
【0053】
【表11】

【0054】
実施例12
【0055】
FeNiSi触媒材料を反応性マグネトロンスパッタによりガラス状カーボン(5mmOD×4mmH)上に堆積させた。FeNi3ターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)およびSiターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)を準備し、アルゴンを導入し、Siターゲットのスパッタリング出力を調整して同時スパッタリングを行い、ガラス状カーボンに堆積された、組成比の異なる(例えば、Si/(Fe+Ni+Si))FeNiSiの電極触媒の触媒層(electrocatalyticcatalystlayers)を得た。アルゴンの流量を10sccmとし、スパッタリング圧力を5mTorrに制御し、プロセス温度を室温に制御し、スパッタリング時間を3分から4分とした。スパッタされた膜の厚さは約100nmであった。FeNiSi触媒材料の組成をEDSにより分析したところ、Si/(Fe+Ni+Si)は5.93at%から32.15at%であった。異なる組成比のFeNiSi触媒材料のOER電気化学活性について試験した。0.1M KOH溶液中で、Hg/HgOを参照電極として用い、酸素発生反応(OER)機器のLSV測定を行った。LSV測定中、電極を1600rpmで回転させ、走査電圧の範囲を0.32Vから1Vとし、走査速度を10mV/sとし、かつ走査回数は3回とした。FeNiSi膜の電気化学特性を表12に示した。Si/(Fe+Ni+Si)は9.98at%から13.08at%でより優れたOER活性を達成した。触媒のRHE電位1.878Vにおける最良の電流密度(mA/cm2)は33.07mA/cm2であり、その開始電位は1.550Vであった。
【0056】
【表12】
【0057】
実施例13
【0058】
FeNiMo触媒材料を反応性マグネトロンスパッタによりガラス状カーボン(5mmOD×4mmH)上に堆積させた。Fe2Niターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)およびMoターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)を準備し、アルゴンを導入し、Moターゲットのスパッタリング出力を調整して同時スパッタリングを行い、ガラス状カーボンに堆積された、組成比の異なる(例えば、Mo/(Fe+Ni+Mo))FeNiMoの電極触媒の触媒層(electrocatalytic catalyst layers)を得た。アルゴンの流量を10sccmとし、スパッタリング圧力を5mTorrに制御し、プロセス温度を室温に制御し、スパッタリング時間を3分から4分とした。スパッタされた膜の厚さは約100nmであった。FeNiMo触媒材料の組成をEDSにより分析したところ、Mo/(Fe+Ni+Mo)は4.36at%から45.98at%.であった。異なる組成比のFeNiMo触媒材料のOER電気化学活性について試験した。0.1M KOH溶液中で、Hg/HgOを参照電極として用い、酸素発生反応(OER)機器のLSV測定を行った。LSV測定中、電極を1600rpmで回転させ、走査電圧の範囲を0.32Vから1Vとし、走査速度を10mV/sとし、かつ走査回数は3回とした。FeNiMo膜の電気化学特性を表13に示した。Mo/(Fe+Ni+Mo)は4.36at%から27.72at%でより優れたOER活性を達成した。触媒のRHE電位1.878Vにおける最良の電流密度(mA/cm2)は36.26mA/cm2であり、その開始電位は1.530Vであった。
【0059】
【表13】

【0060】
実施例14
【0061】
FeNiW触媒材料を反応性マグネトロンスパッタによりガラス状カーボン(5mmOD×4mmH)上に堆積させた。Fe2Niターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)およびWターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)を準備し、アルゴンを導入し、Wターゲットのスパッタリング出力を調整して同時スパッタリングを行い、ガラス状カーボンに堆積された、組成比の異なる(例えば、W/(Fe+Ni+W))FeNiWの電極触媒の触媒層(electrocatalytic catalyst layers)を得た。アルゴンの流量を10sccmとし、スパッタリング圧力を5mTorrに制御し、プロセス温度を室温に制御し、スパッタリング時間を3分から4分とした。スパッタされた膜の厚さは約100nmであった。FeNiW触媒材料の組成をEDSにより分析したところ、W/(Fe+Ni+W)は1.49at%から51.32at%であった。異なる組成比のFeNiW触媒材料のOER電気化学活性について試験した。0.1M KOH溶液中で、Hg/HgOを参照電極として用い、酸素発生反応(OER)機器のLSV測定を行った。LSV測定中、電極を1600rpmで回転させ、走査電圧の範囲を0.32Vから1Vとし、走査速度を10mV/sとし、かつ走査回数は3回とした。FeNiW膜の電気化学特性を表14に示した。W/(Fe+Ni+W)は5.49at%から51.32at%でより優れたOER活性を達成した。触媒のRHE電位1.878Vにおける最良の電流密度(mA/cm2)は34.98mA/cm2であり、その開始電位は1.550Vであった。
【0062】
【表14】

【0063】
実施例15
【0064】
FeNiSn触媒材料を反応性マグネトロンスパッタによりガラス状カーボン(5mmOD×4mmH)上に堆積させた。Fe2Niターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)およびSnターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)を準備し、アルゴンを導入し、Snターゲットのスパッタリング出力を調整して同時スパッタリングを行い、ガラス状カーボンに堆積された、組成比の異なる(例えば、Sn/(Fe+Ni+Sn))FeNiSnの電極触媒の触媒層(electrocatalytic catalyst layers)を得た。アルゴンの流量を10sccmとし、スパッタリング圧力を5mTorrに制御し、プロセス温度を室温に制御し、スパッタリング時間を3分から4分とした。スパッタされた膜の厚さは約100nmであった。FeNiSn触媒材料の組成をEDSにより分析したところ、Sn/(Fe+Ni+Sn)は14.27at%から41.39at%であった。異なる組成比のFeNiSn触媒材料のOER電気化学活性について試験した。0.1M KOH溶液中で、Hg/HgOを参照電極として用い、酸素発生反応(OER)機器のLSV測定を行った。LSV測定中、電極を1600rpmで回転させ、走査電圧の範囲を0.32Vから1Vとし、走査速度を10mV/sとし、かつ走査回数は3回とした。FeNiSn膜の電気化学特性を表15に示した。Sn/(Fe+Ni+Sn)は14.27at%から20.73at%でより優れたOER活性を達成した。触媒のRHE電位1.878Vにおける最良の電流密度(mA/cm2)は32.44mA/cm2であり、その開始電位は1.557Vであった。
【0065】
【表15】

【0066】
実施例16
【0067】
FeNiSi触媒材料を反応性マグネトロンスパッタによりガラス状カーボン(5mmOD×4mmH)上に堆積させた。Fe2Niターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)およびSiターゲット(Ultimate Materials Technology Co.,Ltd.より入手可能)を準備し、アルゴンを導入し、Siターゲットのスパッタリング出力を調整して同時スパッタリングを行い、ガラス状カーボンに堆積された、組成比の異なる(例えば、Si/(Fe+Ni+Si))FeNiSiの電極触媒の触媒層(electrocatalytic catalyst layers)を得た。アルゴンの流量を10sccmとし、スパッタリング圧力を5mTorrに制御し、プロセス温度を室温に制御し、スパッタリング時間を3分から4分とした。スパッタされた膜の厚さは約100nmであった。FeNiSi触媒材料の組成をEDSにより分析したところ、Si/(Fe+Ni+Si)は1.54at%から48.12at%であった。異なる組成比のFeNiSi触媒材料のOER電気化学活性について試験した。0.1M KOH溶液中で、Hg/HgOを参照電極として用い、酸素発生反応(OER)機器のLSV測定を行った。LSV測定中、電極を1600rpmで回転させ、走査電圧の範囲を0.32Vから1Vとし、走査速度を10mV/sとし、かつ走査回数は3回とした。FeNiSi膜の電気化学特性を表16に示した。Si/(Fe+Ni+Si)は3.34at%から48.12at%でより優れたOER活性を達成した。触媒のRHE電位1.878Vにおける最良の電流密度(mA/cm2)は36.4mA/cm2であり、その開始電位は1.549Vであった。
【0068】
【表16】

【0069】
比較例
【0070】
Pt触媒材料を反応性マグネトロンスパッタによりガラス状カーボン(5mmOD×4mmH)上に堆積させた。Ptターゲットを準備し、アルゴンを導入して反応性スパッタリングを行うことにより、Pt層を堆積させた。アルゴンの流量を20sccmとし、スパッタリング圧力を20mTorrに制御し、プロセス温度を室温に制御し、スパッタリング時間を5分から6分とした。スパッタされた膜の厚さは約100nmであった。Pt触媒材料およびIrOx触媒材料(TKKより入手可能)のOER電気化学活性をそれぞれ試験した。0.1M KOH溶液中で、Hg/HgOを参照電極として用い、酸素発生反応(OER)機器のLSV測定を行った。LSV測定中、電極を1600rpmで回転させ、走査電圧の範囲を0.32Vから1Vとし、走査速度を10mV/sとし、かつ走査回数は3回とした。Pt膜およびIrOxの電気化学特性を表17に示した。
【0071】
【表17】

【0072】
開示された方法および物質に様々な変更や変化を加え得るということは、当業者には明らかであろう。本明細書および実施例は単に例示として認められるということが意図されており、本開示の真の範囲は以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって示される。