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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】近視のリスク指標を決定するための技術
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/113 20060101AFI20241111BHJP
   G02C 13/00 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
A61B3/113
G02C13/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022500133
(86)(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(86)【国際出願番号】 EP2020065946
(87)【国際公開番号】W WO2021001120
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】19184427.3
(32)【優先日】2019-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520251553
【氏名又は名称】ビビオール アーゲー
【氏名又は名称原語表記】VIVIOR AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100205833
【弁理士】
【氏名又は名称】宮谷 昂佑
(72)【発明者】
【氏名】パベル ザハロフ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル イアン フリットクロフト
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル ムロチェン
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0191989(US,A1)
【文献】特表2010-503876(JP,A)
【文献】特表2019-513519(JP,A)
【文献】特表2015-514233(JP,A)
【文献】特表2015-533430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近視のリスク指標を決定するためのシステムであって、
前記システムは、
ユーザの頭部に取り付けられるように構成されたウェアラブルデバイス(50)であって、少なくとも、前記ウェアラブルデバイス(50)と前記ユーザの中央視覚ゾーンに位置する物体との間の距離を示す第1の距離値と、前記ウェアラブルデバイス(50)と前記ユーザの周辺視覚ゾーンに位置する物体との間の距離を示す第2の距離値とを決定するように構成された少なくとも1つの距離センサ(54;54a、54b)を備える、ウェアラブルデバイス(50)と、
前記第1の距離値及び前記第2の距離値に基づいて、近視のリスク指標を決定するように構成された制御部(70)と、
を備える、システム。
【請求項2】
前記制御部(70)は、前記第1の距離値と前記第2の距離値との間のより高いミスマッチが近視のより高いリスクを示すリスク指標に繋がるように、前記リスク指標を決定するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ウェアラブルデバイス(50)は、前記ユーザの前記中央視覚ゾーンに向かう中心方向に向けられた第1の距離センサであって、前記第1の距離値を決定するように構成される、第1の距離センサと、前記ユーザの前記周辺視覚ゾーンに向かう周方向に向けられた第2の距離センサであって、前記第2の距離値を決定するように構成される、第2の距離センサと、を備える、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記距離センサは、前記中央視覚ゾーン及び前記周辺視覚ゾーンを含む視野を有するカメラを備え、前記距離センサは、前記カメラによって撮像される1つ又は複数の画像に基づいて、前記第1の距離値及び前記第2の距離値を決定するように構成される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御部(70)は、第2の所定の閾値を超える時間間隔中に前記距離センサ(54;54a)の距離測定値の変動が第1の所定の閾値未満であり、前記第2の距離値が凝視期間ではない期間中に識別される際に、前記凝視期間中に前記第1の距離値を識別するように構成される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項6】
前記ウェアラブルデバイス(50)は、動きセンサを備え、前記制御部(70)は、第2の所定の閾値を超える時間間隔中に、第1の所定の閾値未満の動きを有する期間として凝視期間を識別し、前記凝視期間のうち1つの間に前記第1の距離値を識別し、前記凝視期間外に前記第2の距離値を識別するように構成される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項7】
前記ウェアラブルデバイス(50)は、ちょうど1つの距離センサ(54)が前記第1の距離値及び前記第2の距離値を異なる時刻に決定するように構成されるように、所与の時刻にちょうど1つの距離値を決定するための前記ちょうど1つの距離センサ(54)を含む、請求項1、2、5、又は6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御部(70)は、前記第1の距離値と前記第2の距離値との間の前記ミスマッチが所定の期間内に所定の閾値を超える蓄積持続時間を決定し、且つより高い蓄積持続時間が近視のより高いリスクを示すリスク指標につながるように前記リスク指標を決定するように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項9】
前記ウェアラブルデバイス(50)は、追加のセンサデータを出力するように構成される少なくとも1つの追加のセンサを備え、
前記制御部(70)は、前記追加のセンサデータに基づいて、且つ前記少なくとも1つの距離センサ(54;54a、54b)の出力に基づいて、前記第1の距離値及び前記第2の距離値を決定するように構成され、
任意に、
前記追加のセンサは、前記ウェアラブルデバイス(50)の方位を決定するための方位センサと、前記ウェアラブルデバイス(50)の位置を決定するための位置センサと、前記ウェアラブルデバイス(50)の加速度を決定するための加速度センサとのうち少なくとも1つを備える、請求項1乃至8の何れか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記ウェアラブルデバイス(50)は、前記ユーザの目(2)の視線方向を決定するための目追跡デバイスを備え、任意に、
前記制御部(70)は、決定された前記視線方向に基づいて、且つ前記少なくとも1つの距離センサ(54;54a、54b)の出力に基づいて、前記目(2)の光軸に位置する物体までの距離を示す前記第1の距離値と、前記目(2)の光軸に対して0よりも大きい所定の角度を形成する周方向に位置する物体までの距離を示す前記第2の距離値とを決定するように構成される、請求項1乃至9の何れか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記ウェアラブルデバイス(50)は、光強度及び/又はスペクトルコンテンツを決定するための光センサを更に備え、
前記制御部(70)は、前記光強度及び/又はスペクトルコンテンツに基づいて、前記リスク指標を決定するように構成される、請求項1乃至10の何れか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記制御部(70)は、前記ウェアラブルデバイス(50)によって検出されたアクティビティのタイプに基づいて、前記リスク指標を決定するように更に構成される、請求項1乃至11の何れか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記ウェアラブルデバイス(50)は、前記制御部(70)を備える、請求項1乃至12の何れか一項に記載のシステム。
【請求項14】
近視のリスク指標を決定するためのシステムの作動方法であって、
前記システムは、少なくとも1つの距離センサ(54;54a、54b)を備えるウェアラブルデバイス(50)と、制御部(70)と、を備え、
前記システムの作動方法は、
前記少なくとも1つの距離センサ(54;54a、54b)が、少なくとも、ユーザの頭部に取り付けられるウェアラブルデバイス(50)と前記ユーザの中央視覚ゾーンに位置する物体との間の距離を示す第1の距離値と、前記ウェアラブルデバイス(50)と前記ユーザの周辺視覚ゾーンに位置する物体との間の距離を示す第2の距離値とを決定するステップと、
前記制御部(70)が、前記第1の距離値及び前記第2の距離値に基づいて、近視のリスク指標を決定するステップと、を含む、システムの作動方法。
【請求項15】
コンピュータプログラム製品が1つ又は複数の処理デバイスで実行される際に、請求項14に記載の前記ステップを実行するためのプログラムコード部分を備える、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科学の分野に関する。より正確には、本開示は、近視のリスク指標を決定するための技術に関する。特に、リスク指標は、近視の発症及び/又は進行のリスクを示し得る。本技術は、少なくとも1つのシステム及び/又は少なくとも1つの方法で実施され得る。
【背景技術】
【0002】
特に子供の近視は、目の成長によって起こり得ることが知られている。この場合、目の成長により目が大きくなりすぎて、像が(本来ならあるべき)網膜上ではなく、網膜の前、つまり目の中に形成される。
【0003】
更に、画像が目の網膜の後ろに形成される「遠視性デフォーカス(遠視的なピントのズレ)」と呼ばれる現象は、近視に繋がり得る目の成長を引き起こし得ることが知られている。一般的な近視及び上記現象に関する更なる詳細は例えば、Flitcroft、D.I(2012):「The complex interactions of retinal, optical and environmental factors in myopia aetiology」、Retinal and Eye Research、31(6)、622~660に記載されている。
【0004】
調節誤差又は調節遅れは、目の合焦状態(調節応答)と、視認される物体までの距離(調節要求)とのミスマッチである。典型的には、目は、近くの物体に対して調節不足であり、距離が近いほど、調節不足又は「調節遅れ」の度合いが大きくなる。この遅れは、目の後部(黄斑)の遠視性デフォーカスの原因となる。近視眼は、距離について視力が補正されて遠くの物体を見る際、周辺網膜が遠視性デフォーカスに曝されるように、相対的な周辺遠視をしばしば呈するので、遠視性デフォーカスは、目の後部の形状からも生じる可能性がある。これは、視覚環境の構造に起因することもあり、この場合、目の調節システムは、中央の視野内のフォーカス要求にのみ順応するので、周辺の視野内の物体は、中央から見ている物体とは異なる距離にある。
【0005】
これらの現象及びこれらの現象によって引き起こされる目の成長は、以下で詳細に説明される。
【0006】
現在、ヒトの目の内部における近視及び遠視のような屈折異常を矯正するための幾つかの技術が知られている。これらの技術には、例えば、処方眼鏡、コンタクトレンズ、及び光屈折角膜切除術(PRK)及びレーザ補助インサイチュ角膜切除術(LASIK)等の屈折矯正手術手法のような、目のレンズの光学特性を変化させる処置が含まれる。
【0007】
しかしながら、特定の人が近視、特に目の成長によって引き起こされる近視を発症するリスクが増大しているか否かを決定するための技術が必要とされている。近視を発症するリスクを示す、このような「リスク指標」が決定され得る場合、近視の進行を防止するために初期の測定値が取られ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本開示の目的は、近視、特に、目の成長によって引き起こされる近視のリスク指標を決定するための技術を提供することにある。リスク指標は、近視の発症及び/又は進行のリスクを決定するために使用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様によれば、近視のリスク指標を決定するためのシステムが提供され、前記システムは、ユーザの身体(特に、前記ユーザの頭部)に取り付けられるように構成されたウェアラブルデバイスを備える。前記ウェアラブルデバイスは、少なくとも、前記ウェアラブルデバイスと前記ユーザの中央視覚ゾーンに位置する物体との間の距離を示す第1の距離値と、前記ウェアラブルデバイスと前記ユーザの周辺視覚ゾーンに位置する物体との間の距離を示す第2の距離値とを決定するように構成された少なくとも1つの距離センサを備える。前記システムは、前記第1の距離値及び前記第2の距離値に基づいて、近視のリスク指標を決定するように構成された制御部を更に備える。
【0010】
前記ウェアラブルデバイスは、可能な限り広い意味で前記ユーザの前記身体に着脱可能であってもよい。特に、前記ウェアラブルデバイスは、前記ユーザの前記頭部に着脱可能であってもよい。例えば、前記ウェアラブルデバイスを前記頭部又は前記身体の別の部分に取り付けるために、少なくとも1つの取付部材が提供されてもよい。例えば、前記取付部材は、眼鏡のサイドピースと同様に、及び/又はヘッドセットと同様に、前記ユーザの耳に載置するように構成された1つ以上のイヤピースの形態で提供されてもよい。前記ウェアラブルデバイスは、ユーザによって着用される眼鏡に永久的に組み込まれてもよい。また、前記取付部材は、前記ユーザによって着用される眼鏡のイヤピースにクリップ留めされるように構成された1つ以上のクリップ手段の形態で提供されてもよい。このようにして、前記「前記ユーザの頭部」は、前記ユーザによって着用される眼鏡(例えば、処方眼鏡又はサングラス)を含む、前記ユーザの頭部として理解されてもよい。前記ユーザの頭部に取り付けることが好ましいが、前記ウェアラブルデバイス又はその一部は、前記ユーザの前記身体上の任意の他の位置に取り付けられ得る。例えば、前記ウェアラブルデバイスは、前記ユーザの胸部に取り付けられ得る。この場合、前記デバイスの(1つ又は複数の)前記センサは、前方に向けられてもよい。
【0011】
前記距離センサは、距離を決定するための周知技術に従って動作してもよい。例えば、前記距離センサは、レーザ距離センサ、超音波距離センサ、赤外近接センサ、レーダ、撮像センサ、カメラ、又は前記ウェアラブルデバイスと前記ユーザの前記頭部の前に位置する前記物体との間の前記距離を示す前記距離値を決定するための任意の他の好適な手段を備えてもよい。カメラは、標準的な二次元(2D)撮像カメラ又はレンジ撮像カメラであってもよく、前記物体までの前記距離の画像を提供する。例えば、距離値は、既知の幾何学的寸法を有する物体を認識し、前記画像上の前記寸法から距離を計算することによって、2D画像から推定され得る。レンジ撮像カメラは、特に、ステレオ三角測量、光シート三角測量、構造化光照明の復号、飛行時間測定、干渉イメージング、又は符号化アパーチャを実施し得る。前記カメラは、強度と共に光の方向を検出できるライトフィールドカメラであり得る。前記距離値は、例えば、メートル、センチメートル、又はミリメートルの単位で提供される長さであってもよい。前記距離値は、例えば、前記ユーザの前記目と前記物体との間の距離を示してもよい。この場合、前記距離値は、前記ウェアラブルデバイスと前記ユーザの前記目との間の空間的関係が既知である場合に、前記ウェアラブルデバイスと前記物体との間の距離を示す。前記距離値は、例えば、前記ユーザの前記頭部の前に物体が存在しない場合に、又は前記ユーザの前記頭部の前の次の物体が所定の閾値よりも遠く離れている場合に、無限大の値を示してもよい。
【0012】
1つ又は複数の実施形態において、前記距離センサは、前記目の視力調節力(accommodation effort)に基づいて前記ユーザの視距離を測定するように構成されてもよい。前記距離センサは、前記瞳孔の動き(及び/又はサイズの変化)を検出することができる眼球運動センサとして更に適合され得る。ヒトの目が物体に焦点を合わせる際、前記ヒトの目は、彼らは輻輳で調和された調整を実行し、前記レンズの形状を調整して光学パワーを変更し、それに応じて焦点距離及び瞳孔サイズを調整する。例えば、両目の位置の監視は、両目の視力を取得又は維持する逆方向への両目の同時移動である両目離反運動(収束及び発散)の検出を可能にし得る。前記目は、近くの物体に焦点を合わせながら互いに向かって移動し、遠くの物体に焦点を合わせながら互いに離れるように移動する。前記レンズの前記形状の変化は、(例えば、プルキンエ画像P3及びP4を分析することによって)前記レンズの表面からのプローブ光の反射を追跡することによって監視され得る。近くの物体に焦点を合わせる際、瞳孔は、像のブレを最小限に抑えるために収縮する。瞳孔サイズは、撮像又は任意の他の適切な方法で測定され得る。前記システムは、瞳孔の大きさの変化を検出することによって、視力調節を検出し得る。視力調節の前記検出の間、前記システムは、周囲光センサで測定され得る輝度に起因する前記瞳孔の前記サイズへの影響を補償してもよい。
【0013】
追加的に、ユーザの周辺視野内の物体までの距離は、異なる方向に位置合わせされる異なるセンサ又は多方向を走査可能なデバイスで測定され得る。
【0014】
前記制御部は、少なくとも1つのプロセッサと、前記プロセッサによって実行される命令を記憶するための少なくとも1つのメモリと、を備えてもよい。前記制御部は、前記少なくとも1つの距離センサからの前記距離値を受信するように構成されてもよい。本開示において、第2の値が第1の値「に基づいて決定される」と称する場合、それは、前記第1の値を入力パラメータとして使用するアルゴリズム又は計算規則が提供されることを意味する。換言すれば、前記決定の結果、すなわち、前記第2の値は、前記第1の値によって影響される。前記リスク指標並びに前記第1及び第2の距離値の場合、それは、前記第1の距離値及び前記第2の距離値が前記リスク指標(例えば、前記リスク指標の値)に影響を及ぼすことを意味する。しかしながら、前記第1及び前記第2の距離値は、必ずしも、前記リスク指標に影響を及ぼす唯一の値又はパラメータではない。
【0015】
前記リスク指標は、例えば、数値であってもよく、より高い値は、近視のより高いリスクを示す。代替的に、前記リスク指標は、2進値(「0」又は「1」)であってもよく、「0」は、近視のリスク(例えば、1年、2年の所定の時間枠のうちに近視を発症するリスク)が所定の閾値未満であることを示し、「1」は、近視の前記リスクが所定の閾値を超えていることを示す。したがって、「1」は、近視を予防するための早期対策が考慮されるべきであることを示し得る。本開示の全体において、前記「近視のリスク」は、近視の進行のリスク及び/又は近視の発症のリスクを示し得る。例えば、1つ且つ同じ数値が、近視の発症のリスク及び近視の進行のリスクを決定するために使用されてもよい。他の実施形態によれば、近視の発症のリスクについての値が出力されてもよく、近視の進行のリスクについての異なる値が出力されてもよい。換言すると、前記リスク指標は、多次元(例えば、2次元)リスク指標であってもよい。
【0016】
前記少なくとも1つの距離センサは、時間的に分離/分解された距離値を決定するように構成されてもよい。換言すれば、前記システムの各距離センサは、距離値d(t)の時系列を記録するように構成されてもよい。前記時系列は、前記各距離値を記録する時間(例えば日時)が、例えばタイムスタンプの形態で、前記対応する距離値に割り当てられることができるように、記憶部に記録及び/又は記憶されてもよい。
【0017】
特に、単一の距離センサの構成の場合(すなわち、前記システムが1つの距離センサのみを含む場合)、前記距離センサは、距離測定のシーケンス(すなわち、距離値の時系列)を提供するために、時間的に分離された測定を提供する必要がある。前記距離測定の周波数は、データの統計的分析を容易にするために、視覚アクティビティの各エピソード(episode)中に複数の測定値を取得するのに十分であるべきである。現今、ヒトの注意持続時間は、モバイルデバイスの使用により大幅に低減されている。ユーザが1つのアクティビティから別のアクティビティに1分あたり数回切り替えることが通常のことである。従って、サブセカンド周波数で距離センサをサンプリングすることが推奨される。同時に、ヒトの頭部及び身体の運動の物理的な制限速度のために、100Hzを超える頻度でサンプリングすることはほとんど必要とされない。従って、距離センサのサンプリング周波数の最適範囲は、1~100Hzであってもよい。これは、前記システムの各距離センサに適用されてもよく、特に、前記システムが1つの距離センサのみを有する場合に適用されてもよい。
【0018】
パラメータの範囲が収集される場合、良好な行動パターン(すなわち、近視の危険を低減する)及び不良な行動パターン(すなわち、近視の危険を増大する)の周波数が分析されて、近視の進行又は発症の前記リスクを最小限に抑えるための行動の変化に関する特定の推奨を提供し得る。
【0019】
前記ウェアラブルデバイス及び前記システムの前記制御部は、必ずしも同じ物理的な位置及び/又は同じハウジング内に設けられる必要はない。例えば、前記制御部は、前記ウェアラブルデバイスの一部であってもよい。前記ウェアラブルデバイスは、眼鏡の形態で提供されてもよい。この場合、前記ウェアラブルデバイスは、前記リスク指標を出力するように構成された出力部(例えば、表示部の形態)を備えてもよい。
【0020】
代替的に、前記制御部は、前記ウェアラブルデバイスの出力値を受信するように構成され、特に、前記ウェアラブルデバイスによって決定され、且つ記録された前記距離値を受信するように構成された別個のデバイスの形態で提供されてもよい。例えば、前記ウェアラブルデバイスは、所定の期間にわたって前記距離値を記録し、且つ前記ウェアラブルデバイスの前記メモリに前記距離値を記憶するように構成されてもよい。前記ウェアラブルデバイスは、前記記録された距離値を前記制御部に出力するように構成されたインタフェースを備えてもよい。前記制御部は、前記制御部からの前記距離値を受信するための入力部を備えてもよい。そして、前記制御部は、前記リスク指標を決定し、任意に出力するように構成されてもよい。
【0021】
1つ又は複数の実施形態において、前記制御部は、クラウドの一部であってもよい。換言すれば、前記制御部は、前記ウェアラブルデバイスによってアクセス可能な1つ以上のネットワークサーバ上に配置されてもよい。1つ以上のネットワークサーバは、インターネットを介して、例えば暗号化された接続を介して、アクセス可能であってもよい。従って、前記測定された距離値の前記評価は、1つ又は複数のクラウドコンピューティングデバイス上に配置された中央制御部としての前記制御部によって実行されてもよい。一旦、前記制御部が前記リスク指標を決定すると、前記リスク指標は、前記ユーザ、例えば、前記ウェアラブルデバイスに信号で戻されてもよい。また、前記リスク指標は、前記ユーザ及び/又は医師が前記リスク指標にアクセスしてもよいように、ネットワークインタフェース(例えば、ログイン手順を介して保護されるインターネットページ)を介して、前記制御部から導出されてもよい。前記リスク指標は、また、専ら医師(例えば、前記ユーザを治療する医師)に対して信号化されてもよい。
【0022】
以下では、前記制御部によって前記リスク指標を決定するためのモデルに関する詳細について説明する。
【0023】
前記視力調節の誤差は、近視の発症及び/又は進行の前記リスクを反映するメトリックを生成するために積分され得る。一般に、視力調節の誤差のより高い有病率は、より高いリスクをもたらし、従って、最も単純なモデルは、視力調節の誤差分布の何らかの統計的メトリックを取り、それを前記リスクに関連付けることができる。前記必要なメトリックは、リアルタイムで前記視力調節の誤差から(すなわち、前記第1の距離値と前記第2の距離値との間のミスマッチから)計算され得、或いは、システムは、視力調節の誤差の履歴を記憶され得、従って、前記メトリックは、前記履歴データに基づいて計算され得る。例えば、時間ウィンドウが1時間、1日、1週間、1ヶ月、1年等であり得る、対象の時間ウィンドウにおける平均的な視力調節の誤差が使用され得る。関連パラメータの前記履歴を記憶することにより、前記ユーザ又はヘルスケア提供者が、例えば、日、曜日、又は季節の特定の時刻における統計を調べることによって、前記データ解析のための異なる間隔を選択し、前記データにおける周期性を探索することが可能となる。
【0024】
前記メトリックは、中央値又は任意の他の百分位数であってもよい。より単純な尺度として、視力調節の誤差には、所定の(臨界)閾値を超える絶対又は相対時間が使用され得る。例えば、前記システムは、週当たりの正常範囲外の視力調節の誤差を有する時間数を報告するように構成され得る。別の例では、前記システムは、前記ウェアラブルデバイスを着用/使用する絶対時間の期間又は時刻に関連する時間を報告することができ、例えば、前記システムは、選択された間隔当たりの異常なデフォーカス/誤差を伴う時間のパーセンテージを報告するように構成され得る。
【0025】
次の近似レベルでは、周囲光、屋内/屋外で費やされる時間、視認/読書距離、様々な活動に費やされる時間、前記目の幾何学、家族の近視の人口統計学及び履歴等、リスクに影響を及ぼす追加の要因が前記モデルに含まれ得る。これらの要因は、独立してモデルに入力され、或いは周辺デフォーカス等の他の要因の寄与を減衰させ得る。例えば、高いレベルの周囲光への曝露は、眼球光学系の被写界深度の増加による視力調節の誤差の影響を減少させることが期待されており、一方、暗い光条件は、視力調節の誤差の影響を最大化させるであろう。
【0026】
同様に、別の方法で得られる前記目の幾何学に関する情報は、前記目の形状の差を考慮することを可能にする。例えば、周辺遠視性デフォーカスは、細長い目において増幅され、逆に、短い目においては、周辺におけるデフォーカスが低減される。
【0027】
周辺デフォーカスの影響は、約24時間周期のリズム、特に昼間のリズムによっても変化し得る。例えば、前記目の軸方向長さ及び脈絡膜の厚さの周期的な変動は、周辺デフォーカスの影響をより長い目の幾何学形状が増幅し、且つより短い目が減衰させる、周辺の遠視の効果に影響を及ぼす。その結果、前記目は、遠視性デフォーカスに対して、早朝にはより敏感であり、夜にはそれほど敏感ではない。約24時間周期のリズムは、リアルタイムクロックを前記デバイスに導入し、日時情報を前記モデルに導入することによって、前記モデルにおいて考慮され得る。
【0028】
近視リスクの累積効果の前記モデルは、リセットメカニズムを含んでもよい。動物実験では、遠視の視力調節の誤差(明視)が短期間存在しないと、遠視性デフォーカスの累積効果を中和することができることが示されている。この効果は、積分ウィンドウ(integration window)の導入によって、例えば、遠視性デフォーカスではゆっくり充電し、遠視性デフォーカスがない場合に比較的速い放電を行うリーク積分器の形態で考慮され得る。
【0029】
一実施形態において、リスクスコアは、第1の定義された閾値(D1)を超える持続遠視性デフォーカス(D)のそれぞれの完全な1分後に、第1の値(例えば1)だけ増分される非負整数値蓄積変数Rであり得る。同時に、第2の規定された閾値D2(第1の閾値D1>D2よりも低い)未満の遠視性デフォーカスの各分は、第1の値(例えば5)よりも絶対値だけ大きいと予想される第2の値だけ蓄積変数Rを減少させる。これは、デフォーカスが遠視性デフォーカスに対応する正の値で符号化され、近視性デフォーカスに対応する負の値で符号化されることを想定する。
【0030】
Rは非負であるので、減分は、それをゼロの最小値にすることしかできず、従って、明視又は近視性デフォーカスの持続期間は、蓄積変数Rを最小値に保つだけであり、これは、明視又は近視性デフォーカスの予防効果がないことを意味する。
【0031】
リスク積分器変数Rの実施において、Rは実数値であり、非負であり、次の規則に従って各時間ステップiで調整される。
R(i)=f(D(i))+R(i-1)(但し、R>0)
R(i)は、時間ステップiにおけるリスク蓄積変数であり、R(i-1)は、前の時間ステップにおける同じ変数であり、D(i)は、実数値の遠視性デフォーカスであり、f(D)は、応答関数である。
【0032】
応答関数は、ステップ関数の形態を有し得る。
D>D1(遠視性デフォーカス充電)の場合、f(D)=Aであり、
D<D2(明視及び近視性デフォーカス放電)の場合、f(D)=-Bであり、
D2≦D≦D1(不確定性/無感覚ゾーン)の場合、f(D)=0である。
D2<D1は、所定の閾値であり、A、B>0(所定値)である。
【0033】
前記応答関数は、線形依存性及び飽和を含むように、より精巧にされ得る。
D1’<D(遠視性デフォーカス充電の飽和)の場合、f(D)=Aであり、
D0<D<D1’(線形遠視性デフォーカス充電)の場合、f(D)=α(D-D0)であり、
D2’<D<D0(線形明視/近視性デフォーカス放電)の場合、f(x)=-β(D-D0)であり、
D<D2’(飽和明視/近視デフォーカス放電)の場合、f(x)=-Bである。
但し、D2’<D0<D1’は、所定の閾値であり、α、β、A、B>0であり、A=α(D1’-D0)であり、B=-β(D2’-D0)である。
【0034】
前記応答関数は、線形依存性、飽和、及び無感覚ゾーンを含み得る。
D1’<D(遠視性デフォーカス充電の飽和)の場合、f(D)=Aであり、
D1<D<D1’(線形遠視性デフォーカス充電)の場合、f(D)=α(D-D1)であり、
D1≦D≦D2(不確定性/無感覚ゾーン)の場合、f(D)=0であり、
D2’<D<D2(線形明視/近視性デフォーカス放電)の場合、f(x)=-β(D-D2)であり、
D<D2’(飽和明視/近視デフォーカス放電)の場合、f(x)=-Bである。
但し、D2’<D2<D1<D1’は、所定の閾値であり、α、β、A、B>0であり、A=α(D1’-D1)であり、B=-β(D2’-D2)である。
【0035】
応答関数は、S字形/ロジスティック関数、双曲線正接、直線化された線状ユニット等、又は任意の組合せの形態を有し得る。
【0036】
前記制御部は、前記第1の距離値と前記第2の距離値との間のより高いミスマッチが近視のより高いリスクを示すリスク指標に繋がるように、前記リスク指標を決定するように構成されてもよい。換言すると、前記制御部によって使用される数学的モデルは、前記第1の距離値と前記第2の距離値との間のミスマッチを考慮してもよく、このミスマッチが高い(例えば、所定の閾値を超える値を有する)場合、前記リスク指標は、近視の高いリスクを示す。前記ミスマッチが、最小回数及び/又は最小時間量についての、予め定義された閾値を上回るか否かが決定されてもよく、この場合、前記リスク指標は増加されてもよい。
【0037】
前記ウェアラブルデバイスは、前記ユーザの前記中央視覚ゾーンに向かう中心方向に向けられた第1の距離センサを含んでもよく、前記第1の距離センサは、前記第1の距離値を決定するように構成され、前記第2の距離センサは、前記ユーザの周辺視覚ゾーンに向かう周方向に向けられた第2の距離センサを含んでもよく、前記第2の距離値を決定するように構成される。
【0038】
例えば、上記の場合、前記システムは、デバイスの動きに依存することなく(すなわち、前記ウェアラブルデバイスの動きを示す1つ又は複数のセンサのセンサ出力に依存する必要なく)、複数の方向にサンプリングすることが可能であってもよい。これは、少なくとも1つの追加の距離センサ(すなわち、前記第2の距離センサ)が例えば下向きに前記第1の距離センサとは異なる方向を向くことによって達成され得る。これは、検出器のアレイとして、又はカメラとして、複数の空間又は角度分解検出ゾーンを有する単一のセンサによっても達成され得る(下記参照)。前記単一のセンサは、複数のプローブ信号源、例えば、飛行時間型センサの場合には複数の方向に向けられたレーザを有してもよい。前記センサは、異なる方向に距離をプローブするためにソース及び/又は検出器の方向を変えるように設計され得る(アクティブスキャナ)。異なる方向のサンプリングは、カメラ構成の場合と同様に、同時に実行することも、順次実行することもできる(スキャナ構成)。追加のセンサを用いて測定値を取得する能力は、特に頭部の動きの範囲外でサンプリングされた環境の密度を増加させることを可能にしてもよい。
【0039】
空間内の前記物体までの前記距離に加えて、前記システムは、同じ方位及び/又は位置に関連する他の測定パラメータを組み込んでもよい。例えば、物体及びアクティビティ分類の前記精度を高めるために、反射信号の振幅を含めることによって前記データを強化することが可能である。例えば、コンピュータスクリーンの表面は、机の表面と比較して、より高い反射率を有し、従って、分類アルゴリズムは、前記物体の反射率に対する要件を考慮に入れるように設計され得る。追加的に又は代替的に、前記ウェアラブルデバイスは、前記距離センサの一部としての光強度センサを、或いは、前記距離センサと同一方向に向けられ、且つ前記視線方向における光強度及びスペクトルコンテンツを検出するために使用される別個のセンサを備えてもよい。例えば、携帯電話又は手持ち型コンピュータ/タブレット、コンピュータ、端末、テレビセット等の手持ち型モバイルデバイスは、通常、能動的に照明されたディスプレイを使用する。前記光強度センサは、強度、スペクトルコンテンツ、ちらつきパターン(周波数及び強度)、又は他の光特性から、これらの物体によって放出される光を認識するように構成され得る。光強度センサ測定値は、前記ユーザによって実行されたアクティビティの分類及び環境(室内又は屋外等)の認識をサポートするために、方位及び/又は位置の測定値と位置合わせされてもよく、環境の表現にマッピングされてもよい。光特性測定と距離測定との組合せは、分類を更に改善し得る。一般に、光強度センサの出力が前記リスク指標を決定するために使用されてもよい(すなわち、前記リスク指標を決定することに影響を有する可能性がある)。
【0040】
前記距離センサは、中央視覚ゾーン及び周辺視覚ゾーンを含む視野を有するカメラを備えてもよく、前記距離センサは、前記カメラによって撮像される1つ又は複数の画像に基づいて前記第1の距離値及び前記第2の距離値を決定するように構成される。例えば、前記制御部は、前記カメラによって撮像された画像の時系列を分析し、前記時系列に基づいて、前記第1の距離値及び前記第2の距離値を決定するように構成されてもよい。前記カメラは、各々が副視野を有する複数のサブカメラを備えてもよく、組み合わせられた視野(すなわち、副視野の組合せ)は、中央視覚ゾーン及び周辺視覚ゾーンを含んでいる。
【0041】
前記距離センサは、とりわけ、例えば、輻輳眼球運動、瞳孔調節、及び/又はレンズ変化から、前記目の視力調節力からの視距離を測定することができる目アクティビティセンサを備えてもよい。この場合、前記第1の距離値及び前記第2の距離値は、視距離の前記時系列から決定されてもよい。例えば、凝視期間(period of fixation)中に決定される視距離は、前記中央視覚ゾーン(第1の距離値)に対応し、凝視期間外の期間中の視距離は、前記周辺視覚ゾーン(第2の距離値)に対応し得る。追加的に又は代替的に、前記視覚ゾーンは、前記目の方向から識別され得る。前記視線方向は、方位センサから推定される頭部の方位と目の方向とを組み合わせることにより導出され得る。視距離の測定値を前記視線方向と組み合わせることによって、ユーザの頭部に関する環境の幾何学を再構築することが可能であり、これにより、周辺デフォーカスを推定する。
【0042】
複数の距離センサが設けられている場合、各距離センサは、-同時に-、1つの距離値を提供してもよく、例えば、それぞれの距離センサと当該距離センサが向けられている物体との間の距離を示す。1つの距離センサが複数の距離値を決定する場合、この距離センサは、所定の角度範囲でレーザビームを走査するように構成されてもよく、或いは、この距離センサは、2次元画像を処理して前記複数の距離値を決定する能力を有する2次元画像を提供するカメラを備えてもよい。また、前記距離センサは、各カメラによって2次元画像を決定するための少なくとも2つのカメラを備えてもよく、前記2次元画像は、前記複数の距離値を決定するために処理される。前記周方向は、中心方向に対して、少なくとも5°、少なくとも10°、少なくとも20°、少なくとも30°、又は少なくとも45°の角度を有してもよい。例えば、前記周方向は、前記中心方向に対して下方及び/又は側方に向けられてもよい。
【0043】
1つよりも多い第2の距離値が決定される場合、より多くの方向が考慮されてもよく、これは、前記システムの精度を向上させ得る。例えば、少なくとも1つの垂直な第2の距離値は、前記第1の方向から垂直に外れる方向について決定されてもよく、少なくとも1つの水平な第2の距離値は、前記第1の方向から水平に外れる方向について決定されてもよい。
【0044】
前記第1の距離値及び前記第2の距離値を分析することによって、周辺デフォーカスの出現機会及び/又は周辺デフォーカスの程度が決定されてもよい。
【0045】
前記制御部は、前記距離センサの距離測定値の可変性が第2の所定の閾値を超える時間隔中に第1の所定の閾値未満であり、前記第2の距離値が凝視期間外で識別される際、前記凝視期間中に前記第1の距離値を識別するように構成されてもよい。
【0046】
前記可変性は、前記測定された距離値が所定の期間内に第1の所定の閾値未満の値から第2の所定の閾値を超える値に変化する回数、前記測定された距離値の時間微分が所定の期間内にその符号を変化させる回数、所定の期間内の前記測定された距離値の最大値と前記測定された距離値の最小値との間の差、及び所定の期間内の前記測定された距離値の時間微分の最大値のうちの少なくとも1つを含んでもよく、又はそれに対応してもよい。
【0047】
しかしながら、前記時間的可変性は、前記時間的可変性を決定する数学的且つ明確に定義された方法のリストを表す上記の例に限定されるべきではない。前記時間的可変性を決定する他の方法が存在してもよく、本開示はこれも含む。
【0048】
上述したように、前記制御部は、凝視期間を識別するように、すなわち、前記ユーザが典型的には前記中央視覚ゾーンに位置合わせされた視覚アクティビティの主な物体に焦点を合わせている際に、前記周辺視覚ゾーンにそうでなければ位置する前記周囲の物体までの距離をもたらす主な視覚アクティビティからの逸脱を識別するように構成されてもよい。例えば、前記ユーザがTVを見ている際に、前記ユーザの凝視はTV上にあると予想され、前記距離センサは、前記TV画面までの距離を主に報告するであろう。しかしながら、本来の頭部の動き又は注意散漫のために、前記ユーザは、時折、周囲(すなわち、前記周辺視野ゾーン)における前記物体、例えば、スナック又はリモートコントロール等の前記ユーザの前記手の中の物体に向かって、自らの頭部を回すことになる。別の例では、デスクトップ・パーソナル・コンピュータで作業するユーザは、主にコンピュータ・ディスプレイに焦点を当て、時々、キーボード又はデスク上の他の物体に頭部を向けることになる。前記制御部によって実施される前記アルゴリズムは、例えば、予め定義された閾値未満の標準偏差によって識別される、距離の測定値の可変性が低い期間としての凝視期間を統計的に区別し、それに対応して、主な視覚アクティビティ外の物体(すなわち、前記周辺視覚ゾーン内の物体)に関連する、外れ値として前記範囲外にある測定値を関連付けるように構成され得る。
【0049】
前記距離センサは、前記距離信号に関連する追加のメトリックを、例えば前記信号の前記振幅及び/又は他の品質メトリックを提供することができる。この場合、前記追加のメトリックは、視覚アクティビティの前記主な物体(すなわち、前記中央視覚ゾーン内の物体)及び視覚環境内の物体(すなわち、前記周辺視覚ゾーン内の物体)から測定値を区別するためにも使用され得る。例えば、前記距離の測定は、物体に向けて送られ、且つ反射して戻ってくるパルス(超音波センサ及び飛行時間センサ等)の検出及び特徴付けに基づいてもよい。この場合、前記距離センサは、反射パルスの振幅の測定が可能であってもよい。上記の例では、前記コンピュータスクリーンからの反射は、環境からの反射の前記振幅とは異なるパルス振幅を生み出すことがあり、前記信号解析に含められ得る。
【0050】
また、前記ウェアラブルデバイスは、動きセンサを備えてもよく、前記制御部は、第2の所定の閾値を超える時間隔中に第1の所定の閾値未満の動きを有する期間として凝視期間を識別し、前記凝視期間のうちの1つの間に前記第1の距離値を識別し、前記凝視期間外の前記第2の距離値を識別するように構成されてもよい。従って、前記動きセンサの出力は、距離センサの前記測定された距離値(例えば、時系列d(t))のうちの何れかが第1の距離値であり、前記測定された距離値のうちの何れかが第2の距離値であるかを規定してもよい。
【0051】
前記ウェアラブルデバイスは、ちょうど1つの距離センサが異なる時刻に前記第1の距離値及び前記第2の距離値を決定するように構成されるように、所与の時間にちょうど1つの距離値を決定するためのちょうど1つの距離センサを含んでもよい。
【0052】
例えば、前記ちょうど1つの距離センサは、1つの方向のみに向けられてもよく、従って、前記ウェアラブルデバイスと当該方向に位置決めされる物体との間の距離のみを決定してもよい。「所与の時点におけるちょうど1つの距離値」という表現は、1つ以下の距離値が同時に決定されることを意味する。しかしながら、異なる時間に異なる距離値が決定されてもよい。例えば、ウェアラブルデバイスは、前記ウェアラブルデバイスの中心軸の方向を指す1つの距離センサのみを含んでもよい。代替的に、ちょうど1つの距離センサは、前記ウェアラブルデバイスの中心軸から離れた方向に、前記周辺視覚領域内に向いてもよい。
【0053】
前記制御部は、前記ちょうど1つの距離センサの出力に基づいて、前記第1の距離値及び少なくとも1つの第2の距離値を決定するように構成されてもよい。
【0054】
前記制御部は、前記第1の距離値と前記第2の距離値との間の前記ミスマッチが所定の期間内に所定の閾値を超える蓄積持続時間を決定し、より高い蓄積持続時間が近視のより高いリスクを示すリスク指標に繋がるように前記リスク指標を決定するように構成されてもよい。
【0055】
このようにして、周辺デフォーカスが存在する時間の一部が決定されてもよい。この時間分率が高いほど、近視の前記リスクが高くなり得る。
【0056】
前記ウェアラブルデバイスは、追加のセンサデータを出力するように構成された少なくとも1つの追加のセンサを備えてもよく、前記制御部は、前記追加のセンサデータに基づいて、且つ、前記少なくとも1つの距離センサの出力、前記第1の距離値、及び前記第2の距離値に基づいて決定するように構成される。前記付加的なセンサは、前記ウェアラブルデバイスの方位を決定するための方位センサ、前記ウェアラブルデバイスの位置を決定するための位置センサデバイス、及び前記ウェアラブルデバイスの加速度を決定するための加速度センサのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0057】
前記加速度センサは、前記ユーザの運動の量を検出するように構成されてもよい。従って、前記加速度センサは、運動測定センサと称されてもよい。凝視期間中、前記ユーザは、前記目によって知覚される画像の最適な品質を維持するために、身体及び頭部の動きの量を低減することが典型的である。別の手で気を散らすエピソードは、前記加速度センサの運動信号に反映される、本来の凝視方向からの前記偏差によって特徴付けられる。従って、前記追加のセンサデータ、特に、前記運動信号は、凝視及び偏差期間の識別のための追加の又は主な信号として役立ち得る。換言すれば、前記制御部は、前記追加のセンサデータに基づいて凝視期間を決定するように構成されてもよい。
【0058】
また、視標を移動させる場合、前記ユーザは、例えば通過する物体を見ながら、凝視中に前記頭部を移動させる傾向があることも理解される。これは、追跡距離並びに/又は頭部運動及び偏差信号を微分することによって、前記信号処理において説明され得る。
【0059】
追加的に又は代替的に、前記ウェアラブルデバイスは、方位センサ及び位置センサのうちの少なくとも1つを組み込んでもよい。このようなセンサと距離測定との組合せにより、前記測定された距離を前記環境の幾何学にマッピングすることができる。上記の例では、前記コンピュータスクリーン上の凝視中に、前記ユーザは、前記センサの第1の方向を維持し、机の表面又は他の周囲の物体への断続的な逸脱中、前記ユーザの前記頭部は、自然に下向き又は横向きに傾き、前記方位センサによって検出され得る。前記制御部は、前記システムの1次的な方位を検出し(例えば、コンピュータスクリーン上の凝視中に簡単に)、主な視覚アクティビティからの逸脱中に(例えば、下方を見ている間に)2次的な方位からそれを区別するように構成され得る。このような検出は、前記方位信号の統計的処理と、方位の統計的分散/変動が所定の閾値未満である場合の安定した方位の前記エピソードの検出と、によって行われ得る。統計的分散は、分散、標準偏差、四分位範囲、パーセンタイル間範囲、統計的範囲(最小値と最大値との間の広がり)、平均絶対差、又は分散の任意の他の統計的尺度を用いて定量化され得る。前記1次的な方位は、算術平均、メジアン、モード、又は他の尺度等の、方位分布の中心傾向の統計的尺度を用いて検出され得る。一次的な方位に対応するシステム方位で得られる距離測定値は、中央視覚ゾーンに関連し、主に視力調節応答の原因である。偏差のエピソードは、方位が分布の中心から著しく逸脱している際、例えば、現在の方位と一次的な方位との間の差の絶対値が所定の限界を超える際の期間として検出され得る。そのようなエピソードの間に測定される距離は、周辺視覚ゾーンに対応し、従って、典型的には、周辺視覚の視力調節要求に対応する。
【0060】
前記ユーザの前記本来の頭部及び身体の動きに起因する十分な量のサンプリングにより、前記頭部位置に対して異なる方向の範囲で取られた測定値から前記環境の距離のスキャンを取得することが可能であってもよい。例えば、前記加速度センサの測定は、前記デバイスの方位を重力場(ピッチ角)に関連付けることを可能にする。磁力計を使用することにより、正しい較正で関連付けられ得る磁場(ヨー及びピッチ角)と地球の磁場との方位を関連付けることができる。それらのセンサと、任意に、ジャイロスコープセンサとを組み合わせることにより、3次元空間におけるセンサの絶対的方位を推定することができる。このような3軸加速度計、3軸磁力計、及び3軸ジャイロスコープの組合せを絶対方位センサと称する。
【0061】
上述した前記方位検出と同様に、前記ウェアラブルデバイスは、凝視及び分散の期間を区別するために、前記ウェアラブルデバイスの横方向の変位を検出し、それらを距離の前記測定に関連付けるための少なくとも1つの位置センサを装備してもよい。距離測定と組み合わされた前記位置センサは、前記ユーザの前記本来の動きによる前記環境のスキャンを可能とする。前記位置センサは、相対変位を推定するために加速度計によって検出される加速度を測定することによって実装されてもよく、或いは、モバイル電話、インターネットアクセスポイント、又はBluetooth(登録商標)ビーコン等の無線周波数放射デバイス等の、既知の固定位置を有する近くのアンカノードまでの距離測定から実装されてもよい。位置センサは、ジオロケーションセンサであってもよい。
【0062】
前記位置センサは、方位センサと組み合わされて、点群として表される環境-すなわち、空間内のデータ点の集合-の走査を更に改善してもよい。前記点群は、空間内の物体を認識するため、及び/又は、前記中央視覚ゾーン内の前記物体までの距離を前記周辺視覚ゾーン内の前記物体までの距離から分離し、従って、前記周辺デフォーカス及びリスク指標を計算するために、ユーザのアクティビティを認識するために使用され得る。
【0063】
例えば、前記ユーザの頭部の動きは、例えば、動きセンサ(例えば、加速度計、ジャイロスコープ、及び/又は磁力計)の手段によって検出されてもよい。前記動きセンサの出力に基づいて、方向が導出されてもよく、その中に前記ユーザの前記頭部が向けられる。この方向に基づいて、現在検出された距離値が第1の距離値(例えば、前記ウェアラブルデバイスの中心方向を指す)又は第2の距離値(例えば、前記ウェアラブルデバイスの周方向を指す)に対応するか否かが決定されてもよい。前記動きセンサに基づいて、前記ユーザが回転しただけであり、前記頭部を別の位置に移動させなかったことを決定してもよい。
【0064】
前記制御部は、前記ユーザの目の形状を示すバイオメトリック情報を利用することによって前記リスク指標を決定するように構成されてもよく、前記バイオメトリック情報は、前記第2の方向から来る光ビームの周辺デフォーカスの量を決定するために使用される。
【0065】
例えば、前記中央と周辺ゾーンとの間の差(すなわち、距離)が、例えば、実質的に球状を有する目と比較して、より細長い目内でより大きいため、より細長い目は、より高い周辺デフォーカスを被る場合がある。この知識は、前記リスク指標を決定するプロセスにおいて適切に考慮され得る。
【0066】
前記第1の距離値は、前記ウェアラブルデバイスの中心軸に沿って測定されてもよく、前記第2の距離値は、前記中心軸に関して周方向に沿って測定されてもよい。
【0067】
前記ウェアラブルデバイスの前記中心軸は、前記ユーザが真っ直ぐ前を見る際に、前記ユーザの前記目の視線方向と位置合わせされてもよい。換言すると、前記ウェアラブルデバイスの前記中心軸は、前記ユーザが自らの正面に直接配置される水平線上の点を見る際に、前記ユーザの前記目の視線方向と位置合わせされてもよい。前記ウェアラブルデバイスがテンプルを含む場合、前記中心軸は、前記テンプルの延在方向に実質的に平行であってもよい。前記周方向は、前記中心軸に対して下方及び/又は側方に傾斜した方向であってもよい。
【0068】
前記ウェアラブルデバイスは、前記ユーザの目の視線方向を決定するための目追跡デバイス(アイトラッキングデバイス)を備えてもよい。前記制御部は、前記決定された視線方向に基づいて、且つ少なくとも1つの距離センサの出力に基づいて、前記目の光軸に位置する物体までの距離を示す前記第1の距離値と、前記目の前記光軸に対してゼロよりも大きい所定の角度を形成する周方向に位置する物体までの距離を示す前記第2の距離値と、を決定するように構成されてもよい。
【0069】
従って、目追跡デバイスが使用される場合、前記制御部は、前記ウェアラブルデバイスの前記第1の方向が前記ユーザの前記視線方向に対応するという想定に依存せず、むしろ、前記ユーザの前記実際の視線方向が前記第1の距離値及び前記第2の距離値を決定するために考慮されてもよい。
【0070】
前記ウェアラブルデバイスは、光強度及び/又はスペクトルコンテンツを決定するための光センサを更に備えてもよく、前記制御部は、前記光強度及び/又はスペクトルコンテンツに基づいて前記リスク指標を決定するように構成されてもよい。
【0071】
前記ウェアラブルデバイスは、前記距離センサと同一方向に向けられた前記光センサ及び/又は色センサを組み込んでもよい。光の測定は、物体及び/又はアクティビティの分類を改善するために使用され得る。例えば、一般に、モバイルデバイスのスクリーン、コンピュータスクリーン、及びディスプレイパネルのスクリーンは、能動的に覆われており、光源として作用する。これらのデバイスの光を検出する能力は、分類の感度及び特定を増加させることを可能にする。例えば、前記距離センサと同一方向に向けられる前記光センサを含むことは、タブレットは光源を含むが、書籍は光源を含まないので、タブレットで読書することと単に読書することとを区別するのに役立ち得る。光強度の周期的サンプリングを得る能力は、照明の時間的成分を検出するために前記システムを適応させることを可能にし、これは、ディスプレイ上に提示されるメディアのタイプを区別するために使用され得る。例えば、ビデオ又はゲームのような動的メディアは、色及び強度量の表示された視覚における頻繁な変化のために、可変的な強度及びスペクトルコンテンツを有し、このような量を認識するために使用され得る。反対に、電子書籍リーダ又は書籍アプリは、動的な変化が読書アクティビティを妨害するので、ページめくりの間に比較的安定した視覚的表現を有する。従って、前記制御部は、前記光センサの出力に基づいて、アクティビティを決定するように構成されてもよい。
【0072】
追加的に又は代替的に、前記ウェアラブルデバイスは、環境光の強度及び/又は色含有量を測定するように設計された周囲光センサを組み込んでもよい。それは、前記距離センサと同じ方向又は異なる方向に、例えば上向きに位置合わせされ得る。上向きに向けられた前記周囲光センサは、通常、太陽、空、セルライトニング、街灯等の前記ユーザの頭部の上に位置する光源からの光を測定することができるであろう。前記周囲光センサは、紫外光を検出するように設計されたチャネルを有してもよい。環境光の条件は、近視の進行のリスクに重要な影響を及ぼし得る。高照度の条件は、前記網膜上の像の前記被写界深度を増加させ、周辺デフォーカスの前記影響を減少させる前記ユーザの前記瞳孔収斂につながる。これに対して、低照度は、瞳孔を広げ、前記像の被写界深度を減少させ、従って、周辺デフォーカスの前記影響を最大化する。従って、照度条件は、前記リスク指標を決定する前記モデルに含まれ得、その結果、より少ない量の照度が前記光センサによって検出される場合に、前記リスク指標は、近視のより高いリスクを示す。
【0073】
前記光センサは、例えば、周囲光センサの形態で、室内及び屋外環境を区別するために使用され得る。屋外で過ごす時間は近視の進行に対する保護効果を有することが示されているので、このような区別は、近視のリスクにおいて重要な因子である。
【0074】
室内の前記照度レベルが日中に屋外光の前記レベルに達することは稀であるため、周囲光レベルを予め定義された閾値と比較し、周囲光が閾値を超えている場合に、屋外状況(context)を報告し、そうでない場合に屋内状況を報告することによって、最も単純な検出が行われ得る。紫外スペクトル領域で感度の高いセンサは、通常の屋内環境では人工UV光源が典型的に存在しないことに起因して、より特定的であると予想されるが、それは、日常の屋外環境では避けられない。また、予想される屋外の照度条件の変動を考慮するために、その日の時刻、季節、並びに、経度、緯度、及び高度といった測位に基づいて、前記閾値は調整され得る。例えば、夜間には、照度閾値に基づくロジックは、光源としての太陽が存在しないという理由で機能せず、これは、位置及び日時/時間から推定される太陽のフェーズに関する情報によって説明される。従って、前記光センサの出力が所定の閾値を上回っているか否かが判断され得、且つ、これに基づいて、前記ユーザが屋内又は屋外環境にいるか否かが判断され得る。
【0075】
別の実施形態は、光のちらつき検出を使用し得る。スクリーン及びいくつかの現代の人工光源からの光は変調されることが知られている。強度の周期的変動を検出し、これを用いて人工光源の存在を検出し、これによって屋内/屋外状況を認識することができる装置で可能である。
【0076】
従って、前記光センサは、前記ユーザのアクティビティのタイプ及び/又は前記ユーザが現在位置する環境を識別するために使用されてもよい。
【0077】
他のセンサは、屋外/屋内環境、例えば距離センサを区別するために使用され得る。典型的な屋内環境における視距離の前記範囲は、前記壁及び天井によって制限されるので、例えば閾値と比較することによって、視距離の前記統計から屋内環境を検出することが可能である。前記壁の間の距離は、変動性が高い可能性があり、一方、前記典型的な建物の前記天井までの距離は、より一貫性がある。従って、前記天井の存在及びシステムが上方に向けられる際のそれまでの距離を検出するために、方位センサを考慮することは有益である。ある実施形態において、前記ウェアラブルデバイスは、上方に傾斜した又は垂直上方に完全に向けられた距離センサを含んでもよい。このデバイスによれば、天井の存在が確実に検出され得、屋内環境に帰され得る。
【0078】
一実施形態では、中心及び周辺距離の偏差である周辺デフォーカスの前記特性が、屋内環境の前記検出に使用され得る。典型的な屋内環境は、屋外環境と比較してはるかに高い周辺デフォーカスを誘発し、従って、周辺デフォーカスの測定は、屋内/屋外環境の区別のための信号として、別々に又は他の信号と組み合わせて使用され得ることが知られている。
【0079】
上記を要約すると、例えば、より高い照度レベルは、前記ユーザの目の瞳孔サイズが低減されるという前記想定に繋がってもよく、これは、前記より小さい瞳孔サイズによって引き起こされる焦点深度の前記増大による前記周辺デフォーカスの程度を低減する。従って、より長時間にわたるより高照度レベルが近視のより小さいリスクを示すリスク指標に繋がるように、前記リスク指標が決定されてもよい。より精巧な実施形態は、測定されたシーン輝度又は全体的な照度レベルの関数として、前記瞳孔サイズのモデル化を含んでもよい。瞳孔サイズは、光線追跡を使用して前記目モデルにおける前記周辺デフォーカスの計算の前記モデルに含まれてもよい。
【0080】
前記制御部は、前記ウェアラブルデバイスによって検出されたアクティビティのタイプに基づいて、前記リスク指標を決定するように更に構成されてもよい。
【0081】
可能なタイプのアクティビティは、とりわけ、スポーツ、本又は新聞を読むこと、コンピュータディスプレイの視聴、スマートフォン等のディスプレイの視聴等を含んでもよい。これらのアクティビティは、1つ又は複数の適切なセンサ、例えば、前記少なくとも1つの距離センサによって決定されてもよい。追加的に又は代替的に、例えば、カメラ及び/又は動きセンサ(加速度計等)、或いは、複数のセンサの組合せ等、アクティビティの前記タイプを決定するために、1つ又は複数の追加のセンサが提供されてもよい。
【0082】
本開示のシステムで検出された視覚的アクティビティは、前記近視のリスク推定における要因として役立ち得る。例えば、電子ディスプレイデバイスを用いた作業に費やされる時間(「スクリーンタイム」)は、前記近視の進行リスクの前記増大に寄与する因子として前記モデルに直接入力し得る。別の実施形態として、前記アクティビティ中の周辺デフォーカス/視力調節の誤差の前記ライブラリ/データベースは、周辺デフォーカスの前記蓄積値を推定するために使用され得る。例えば、前記パーソナルコンピュータ上での作業期間を検出することによって、システムは、パーソナルコンピュータ用の視覚環境の典型的なモデルを使用し、間接的に周辺デフォーカスを推定し得る。これは、データを充実させるために、前記環境の実測と組み合わせて行われてもよい。前記距離センサで測定された前記視距離も、前記リスクの前記モデルに含まれ得る。例えば、小型電話の場合のような短いワーキングディスタンス又は接近した読書は、認識されているリスク因子である。従って、より長い時間にわたるより短いワーキングディスタンスに対応する、前記ユーザによって使用されるワーキングディスタンスの統計的メトリック(平均値、中央値、運動量、時間等)が近視の進行のより高いリスクを示すリスク指標に繋がるように、前記リスク指標が決定されてもよい。
【0083】
前記制御部は、現在サンプリングされている環境/状況/アクティビティの有効性を評価するように構成されてもよい。例えば、前記システムは、前記ユーザがコンピュータ上で作業している間に前記環境を十分にサンプリングすることができ、1次的及び2次的な方位及び/又は位置を区別することができる。前記ユーザが、例えば、同僚に向かってディスカッションに参加したり、立ち上がってコーヒーマシーンに歩いたりする等、別のアクティビティに切り替わっているとき、前記環境は完全に変化しており、アルゴリズム表現はリセットされる必要があってもよい。前記システムは、凝視中及び/又は逸脱中の測定値を比較することによって、有効性を評価するように構成され得る。例えば、上記のように、前記ユーザが前記コンピュータのスクリーンから前記同僚に向かって遠ざかると、前記1次的な距離は、前記標準的なコンピュータの画面距離(例えば0.6~0.8m)から、典型的には同僚間の社会的距離の範囲内にあり、1.2mから始まる前記相手方に向かう前記距離に変化する。1次的な距離の突然の切り替えを検出することによって、状況変化を検出し、前記収集された統計のリセットを開始することが可能である。また、前記ウェアラブルデバイスの前記方位又は位置の著しい変化を検出することによって、方位及び/又は位置センサ等の追加のセンサの助けを借りて、状況の切り替えも検出され得る。動きセンサは、例えば、前記ユーザが立ち上がって歩き去る際に、前記システムの突然の著しい移動を検出することによって、状況リセットのトリガとして機能することができ、著しい変化動作のシグネチャに関連付けられる。先に述べたように、視覚固定化(visual fixation)は、動きが視覚機能を歪めることがあるので、典型的には前記低減された頭部及び身体の動きに関連する。
【0084】
前記ウェアラブルデバイスは、前記制御部を備えてもよい。この場合、前記システムは、前記距離値の前記検出及び前記距離値の前記更なる処理の両方が1つの同じデバイス内で実行されるウェアラブルデバイスによって具現化されてもよい。この場合、前記ウェアラブルデバイスは、前記決定されたリスク指標を出力するための出力インタフェースを備えてもよい。前記リスク指標は、例えば、前記ユーザ及び/又は前記ユーザを治療する医師に出力されてもよい。前記出力されたリスク指標に基づいて、前記医師は、近視の発症/進行を防止するために特定の測定が必要か否かを決定することができる。
【0085】
第2の態様によれば、近視のリスク指標を決定するための方法が提供される。前記方法は、少なくとも、ユーザの身体(特に、前記ユーザの頭部)に取り付けられたウェアラブルデバイスと、前記ユーザの中央視覚ゾーンに位置する物体との間の距離を示す第1の距離値と、前記ウェアラブルデバイスと前記ユーザの周辺視覚ゾーンに位置する物体との間の距離を示す第2の距離値と、を決定することを含む。前記方法は、前記第1の距離値及び前記第2の距離値に基づいて、近視のリスク指標を決定することを更に含む。
【0086】
前記第1の態様の前記システムに関して上述した前記詳細の各々は、前記第2の態様の前記方法にも適用することができる。より正確には、前記第2の態様の前記方法は、前記第1の態様の上述したシステムに関して説明された前記追加のステップ/性能のうちの1つ又は複数を含んでもよい。
【0087】
第3の態様によれば、コンピュータプログラム製品が提供される。前記コンピュータプログラム製品は、前記コンピュータプログラム製品が1つ又は複数の処理装置上で実行される際に、前記第2の態様の前記方法の前記ステップを実行するためのプログラムコード部分を含む。
【0088】
前記コンピュータプログラム製品は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されてもよい。換言すると、前記第3の態様の前記コンピュータプログラム製品を含むコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
図1】3つの焦点に関する近視の異なる潜在的な原因を説明するための、ユーザの目の概略的な断面図を示す。
図2】周辺デフォーカスの影響を説明するための目の概略的な断面図を示す。
図3】異なる形状を有する3つの目の概略的な断面図、及びこれらの目に対する周辺デフォーカスの影響を示す。
図4】減少された瞳孔サイズを有する目の概略的な断面図、及び瞳孔サイズの減少が周辺デフォーカスに及ぼす影響を示す。
図5】近視のリスク指標を決定するための1つの距離センサを有するウェアラブルデバイスの第1の実施形態を示す。
図6】近視のリスク指標を決定するための複数の距離センサを有するウェアラブルデバイスの第2の実施形態を示す。
図7】本開示の一実施形態の制御部の論理構造を示す。
図8図6に示す2つの距離センサの測定結果の一例、及び対応する計算されたミスマッチを示す。
図9】制御部によって使用され得るリスクインテグレータの概念を示す。
図10】リスク指標を決定するために制御部によって使用され得る応答関数の異なる実施例を示す。
図11】リスク指標を決定するために制御部によって使用され得る応答関数の異なる実施例を示す。
図12】リスク指標を決定するために制御部によって使用され得る応答関数の異なる実施例を示す。
図13】リスク指標を決定するために制御部によって使用され得る応答関数の異なる実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0090】
本明細書に提示される技術の実施形態は、添付の図面を参照して以下で説明される。
【0091】
以下では、これに限定されるものではないが、本開示の完全な理解を与えるために、特定の詳細が説明される。しかしながら、本発明は、以下に説明する詳細とは異なる他の実施形態で使用され得ることが当業者に明らかである。
【0092】
図1は、ユーザの目2の断面の概略図を示す。以下では、近視を引き起こす原因について、図1に示す目2を参照して説明する。図1の表現は、必ずしも1つの特定の時点を示しているわけではなく、むしろ、説明の目的のために、異なる状況が同一の図に示されていることに留意されたい。
【0093】
図1に示すように、光線4は、左側から目2に入射している。光線4は、目2の瞳孔を通過し、目2のレンズ(瞳孔及びレンズの両方は図1には示されていない)によって集束される。理想的な場合、すなわち鮮明な像を得るために、光線4は、目2の網膜6上に集束される。この場合、網膜6上に焦点8を形成する光線4aに関して、図1に示される。目2のレンズの焦点距離が短すぎる(又は目2のレンズが現在焦点から外れているか、或いは別の物体に合焦している)場合、光線4は、光線4bに関して図1の焦点9に示されるように、網膜6の前の領域に、従って、目2の内側に集束される。焦点9は、近視デフォーカスとも呼ばれるか、或いは目2の近視デフォーカスの結果として見えることがある。目2のレンズの焦点距離が長すぎる(又は目2のレンズが現在焦点から外れているか、或いは別の物体に合焦している)場合、光線4は、光線4cに関して図1の焦点10に示されるように、網膜6の後ろの領域、従って目2の外側に集束される。焦点10は、遠視デフォーカスとも呼ばれるか、或いは目2の遠視デフォーカスの結果として見えることがある。
【0094】
図1に関して、近視の原因が説明され得る。以下の説明は、子供及び目2の成長によって引き起こされる近視に特に関連する。目2が大きすぎる(すなわち、成長して大きくなりすぎた)場合、近視デフォーカス8に関して上述したように、網膜6の前に像が形成される。しかしながら、図1を参照して、目の成長は、遠視デフォーカス10の存在(すなわち、像が網膜6の後ろに形成される際)によって引き起こされる。
【0095】
以下に説明するように、目2が既に大きく成長しすぎており、従って、目2が既に近視であっても、進行中の目の成長が引き起こされる機構が存在する。この現象を引き起こし得る1つの効果は、本明細書では「空間成分」と呼ばれる。
【0096】
空間成分:視力調節の制御メカニズムは、網膜6の中心窩の周りの中央ゾーンに像の焦点を合わせるように設計される。明らかに、網膜6上の像は、中央ゾーンを囲む周辺ゾーンにも形成される。周辺デフォーカス10も目の成長を引き起こしていることを示すデータがある。現代の屋内環境では、人(特に子供)が遠くの物体、例えばテレビ画面を見ている場合、同時に、周方向に配置され、且つ遠視性デフォーカス10を形成する網膜6の後方に投影される近くに位置する他の物体(机、画面、本等)が存在する可能性が高い。というのも、目2がこれらの物体に関して視力調節されていないからである。また、この遠視性デフォーカス10は、近視を引き起こす可能性のある目の成長を引き起こすことがある。
【0097】
遠視性デフォーカス10は、近視の発症の主要なリスクの1つとして識別されている。上述したように、目2は中央ゾーンに像を合焦させるが、周辺ゾーン(中央ゾーンを取り囲む)は合焦されないことがある。この効果は、目2を伸長させる目の成長と共に誇張されることがある。この場合、周辺ゾーンは、中央ゾーンよりもレンズに更に近く、従って、像は、遠視性デフォーカス(又は「周辺デフォーカス」)にある。目2は、遠視性デフォーカスに応答してもよく、これは最初に脈絡膜の薄化をもたらし、続いて目の成長(伸び)をもたらし、これは、その期間に、中央ゾーンと周辺ゾーンとの間の像の更なるミスマッチをもたらす。これは、目の成長の悪循環を引き起こすことがある。一部の研究者は、周辺ゾーンが中央ゾーンよりも目の成長の強力な誘因でさえあることを示す。
【0098】
周辺デフォーカスに影響を及ぼす環境要因は、人の視覚の周辺に物体が不可避的に存在することである。人が遠距離又は中間距離の物体に焦点を合わせているかもしれないが、人の頭部により近くに位置する他の物体がしばしば存在する。これらの物体は、中央視覚ゾーンにはないが、網膜6の後方に焦点を合わせ、従って、遠視性デフォーカスを引き起こす。
【0099】
図1に示されるように、上記のメカニズムは、太い矢印12によって示される目の成長を誘発する。この目の成長の結果として、近視性の屈折異常は、図1の両側矢印14によって示されるように増大する。
【0100】
上記を要約すると、遠視性デフォーカス(すなわち、像が網膜6の後方に形成される)が(特に、子供の成長期の目において)目の成長を刺激する可能性がある。
【0101】
遠視性デフォーカスは、典型的には、目2の本来のレンズの不十分な視力調節によって引き起こされる。本来のメカニズムが目の成長を刺激し、これが網膜6を後方に移動させ、像を網膜6に焦点を合わせる。理想的な状況では、目2が既に近視である場合、デフォーカスは近視であり、従って、目の成長を引き起こさない。しかしながら、上述したように、このメカニズムが近視眼においてさえトリガされる場合、更なる目の成長の望ましくない効果に繋がる状況がある。上述したように、1つの影響は、目2の周辺ゾーンにおけるデフォーカス(空間不均一性又は空間成分)に向けられる。
【0102】
従って、周辺(遠視性)デフォーカスの要因に基づいて近視の発症及び進行のリスクを特徴付けるために、ユーザの作業及び生活環境を理解することが重要であり得る。本開示によれば、「周辺デフォーカス」は、目2の網膜6の周辺領域における遠視性デフォーカスを意味する。
【0103】
図2は、遠視性デフォーカス10の発生が示される、図1と同様の表現を示す。図2の表現は、垂直面を通る断面、従って、目2の側面図を示す。目2のレンズ16は、距離d(中央距離)で提供される物体(図示せず)に焦点が当てられ、例えば無限大であってもよい。図2に示すように、遠方の物体の像は、網膜上の正常な焦点8に形成される。しかしながら、更なる(近くの)物体18は、図2に示される実施例では蝋燭であり、距離d(周辺距離)でユーザの頭部の前に存在する。目2のレンズ16は、近くの物体18に視力調節されていないので、近くの物体18の像は、遠視性デフォーカス点10、すなわち、網膜の後方の領域に形成される。従って、目2の近くに配置された物体18は、遠くに配置された別の物体がレンズ16によって合焦されている間に、遠視性デフォーカス、それによって(この場合、この状況は、頻繁及び/又は長期間にわたって生じる)近視を引き起こし得る。
【0104】
図3は、目2の形状が遠視性デフォーカス10の出現にどのように影響を及ぼし得るかを示す。図3の左側には、光軸に沿って短縮された長さを有する目2aが示される。図3の中央には、通常の長さを有する目2bが示される。図3の右側には、強すぎる目の成長の結果であり得る細長い目2cが示される。目2cに関して示されるように、中央ゾーン20(すなわち、目2cの光軸が網膜と交差するゾーン)は、中心軸(図3のレンズ16の中間を通る水平軸)に対して所定の角度距離を有する網膜の周辺ゾーン22から比較的遠く離れている。例えば、目2cの周辺ゾーン22は、光線4cが網膜と交差する領域にあってもよい。目2a及び2cの比較から分かるように、細長い目2cでは中央ゾーン20及び周辺ゾーン22が互いに比較的遠く離れており、周辺デフォーカスの影響を増強する。
【0105】
図4には、周辺デフォーカスの発生に対して減少された瞳孔サイズの影響が示される。図4に示すように、大量の周囲光は、目2の虹彩24に瞳孔サイズを減少させる。焦点深度が増大することに起因して、周辺デフォーカスの程度が低減される。
【0106】
以下では、近視のリスク指標を決定するために、本開示の技術によって上述した観察がどのように使用されるかについての実施例を説明する。
【0107】
図5は、本開示の第1の実施形態によるウェアラブルデバイス50を示す。ウェアラブルデバイス50は、ユーザの頭部52に取り付けられる。より正確には、ウェアラブルデバイス50は、例えば、ウェアラブルデバイス50がフレーム58のテンプルにクリップ留めされるクリップ留め手段によって、ユーザによって装着される度付き眼鏡の眼鏡のフレーム58に取り付けられる。しかしながら、ウェアラブルデバイス50とフレーム58との組合せは、本開示によるウェアラブルデバイスとみなされてもよく、この観点によれば、ウェアラブルデバイス50、58は、フレーム58のテンプルによってユーザの頭部52に取り付けられる。度付き眼鏡の代わりに、フレーム58は、サングラスのフレーム、屈折力の無い平レンズを有するフレーム、又はレンズの無い「空の」フレームであってもよい。
【0108】
ウェアラブルデバイス50は、ウェアラブルデバイス50と物体56との間の距離を表す第1の距離値d(t)を時間依存的に測定するための距離センサ54を備える。本開示において、時間依存距離値が測定されると述べられている場合、これは、複数の個別の値が次々に測定され(d(t=t)、d(t=t)、d(t=t)等)、任意選択的にタイムスタンプと関連付けて記憶されることを意味する。従って、距離センサ54の適切なサンプリングが実施される。距離測定値のサンプリング周波数は、データの統計的分析を容易にするために、視覚アクティビティの各エピソード中に複数の測定値を取得するのに十分であるべきである。今日、人の注意スパンは、モバイルデバイスの使用により大幅に低減されている。ユーザが1つのアクティビティから別のアクティビティに1分毎に数回切り替えることは通常である。従って、距離センサ54をサブ秒周波数でサンプリングすることが望ましい。同時に、人の頭部及び身体の動きの物理的に制限された速度のために、100Hzを超える頻度でサンプリングすることはほとんど必要とされない。従って、距離センサのサンプリング周波数の最適範囲は、1~100Hzであってもよい。これは、本実施形態の距離センサ54に適用されてもよいが、ここで説明するウェアラブルデバイスの他の距離センサにも適用されてもよい。
【0109】
距離値d(t)を測定するために、ウェアラブルデバイス50は、レーザ距離計、超音波距離計等の周知技術を使用してもよい。図5に示されるように、距離センサ54は、第1の方向を指し、すなわち、それは第1の方向に向けられる。換言すれば、距離センサ54は、第1の方向に沿って位置する物体56に対して、第1の方向(図5の線で示される)に沿った距離値d(t)を測定するように構成される。距離値d(t)は、ウェアラブルデバイス50と物体56との間の距離を示すように測定され、物体56とウェアラブルデバイス50との固定された空間関係を有する任意の基準点(例えば、ユーザの目2のうちの1つが通常位置する基準点)との間の距離値を測定することも可能である。
【0110】
図5に示されるように、距離値d(t)が測定される第1の方向は、ウェアラブルデバイス50の中心軸に沿った中心方向に対応する。中心軸は、ウェアラブルデバイス50がユーザの頭部52に装着され、ユーザが真っ直ぐ前(例えば、水平線上の点)を見る際の、ユーザの目2の視線方向に沿った方向として定義されてもよい。中心方向は、フレーム58のテンプルの延長方向に実質的に対応する。
【0111】
図5の実施形態では、第1の方向がユーザの視線方向に対応すると仮定される。この仮定は、ユーザが、通常視線方向と目の中心軸とが互いに対応するように、視線方向に頭部52を回転させることが示されているので、良好な近似である。
【0112】
距離センサ54は、時間依存距離値d(t)を測定する。距離値d(t)は、ユーザの目2の中心軸に沿った物体56までの距離を表す。ユーザが測定中に自分の頭部を回転させると、距離センサ54によってより多くの距離値が測定され、これは、ユーザが自らの頭部を物体60の方向に向ける場合に、ユーザの頭部52の前に位置する物体60等の異なる物体までの距離を示し得る。
【0113】
ウェアラブルデバイス50は、測定された距離値を記憶するためのメモリを備える。図5の実施形態では、ウェアラブルデバイス50は、測定された距離値を更に処理するための制御部を更に備える。しかしながら、ウェアラブルデバイス50は、単に距離値を測定及び記録するだけであり、距離値の更なる処理は外部の制御部で行われることも可能である。例えば、この外部の制御部は、汎用コンピュータ、又は距離値を受信するように構成された任意の他の適切な制御部であってもよい。外部の制御部は、クラウド、すなわち、ネットワーク接続を介してアクセス可能な1つ以上のネットワークサーバに配置されてもよい。例えば、ウェアラブルデバイス50は、測定された距離値d(t)を出力するためのインタフェース(例えば、有線インタフェースま又は無線インタフェース)を備えてもよい。(外部の)制御部は、ウェアラブルデバイス50のインタフェースを介して出力される測定された距離値を入力するためのインタフェース(例えば、有線インタフェース又は無線インタフェース)を備えてもよい。
【0114】
図5の実施形態では、ウェアラブルデバイスは、統合制御部を備えた独立型のデバイスである。しかしながら、上述のように、制御部は、外部デバイスとして提供される更なる実施形態が可能であり、本開示によってカバーされる。ウェアラブルデバイス50と制御部との組み合わせは、近視のリスク指標を決定するためのシステムとも称される。
【0115】
制御部は、測定された距離値を受信し、近視のリスク指標を決定するために、距離値の更なる処理を実行する。
【0116】
より正確には、制御部は、距離値d(t)の測定された時系列から、少なくともウェアラブルデバイス(50)とユーザの中央視覚領域に位置する物体(例えば、図5に示す物体56)との間の距離を示す第1の距離値と、ウェアラブルデバイス(50)とユーザの周辺視覚領域に位置する物体(例えば、図5に示す物体60)との間の距離を示す第2の距離値とを導出する。
【0117】
第1の距離値と第2の距離値とを区別する1つの方法は、距離値d(t)の時間的変動性を決定することである。
【0118】
この場合、制御部は、測定された時間依存距離値d(t)に基づいて、距離値の時間変動を決定する。時間的変動性は、距離値が所定の期間内に第1の所定の閾値未満の値から第2の所定の閾値超えの値に変化する回数、距離値の時間微分が所定の期間内にその符号を変える回数、所定の期間内の距離値の最大値と距離値の最小値との間の差、及び所定の期間内の距離値の時間微分の最大値のうちの少なくとも1つを含んでもよく、又はそれに対応してもよい。時間的変動は、ユーザの目2の焦点長さ変化の程度及び/又は焦点長さの変化の頻度を示す。
【0119】
制御部は、時間的変動性に基づいて、凝視期間が存在するか否かを決定する。測定された距離値の時間的変動性が、第2の所定の閾値を超える時間間隔中に、第1の所定の閾値未満である場合に、凝視期間が存在し、この期間内の距離値は、第1の距離値として識別される。凝視期間外の距離値は、第2の距離値である。次に、これらの第1及び第2の距離値が分析され、近視のリスク指標を決定する。本実施形態によれば、リスク指標は、第1の距離値と第2の距離値との間のより高いミスマッチが近視のより高いリスクを示すリスク指標に繋がるように決定される。この場合、周辺デフォーカスの状況が発生すると仮定され得る。
【0120】
例えば、図5に示すように、ユーザは、物体60を見るために、遠くの物体56から近くの物体60まで頭部52を回転させてもよい。従って、ユーザの目2のレンズ16は、物体60を焦点に合わせるために、焦点距離をより短い焦点距離に変更しなければならない。ユーザが頭部52を物体56に戻す場合、焦点距離は、より長い焦点距離に戻すように変更されなければならない。この場合、凝視期間は、ユーザが目2を中央ゾーン(中心方向に沿って)、すなわち物体56に向ける期間であると仮定される。凝視期間外では、ユーザの目2は、周辺ゾーン内に、例えば、物体60に向かって動き回る。
【0121】
1つ又は複数の実施形態によれば、ウェアラブルデバイス50は、ユーザの頭部の動きを検出するための動きセンサ(例えば、加速度計及び/又はジャイロスコープ)を備えてもよい。動きセンサの出力に基づいて、方向が導出され、その中にユーザの頭部52が指向される。この方向に基づいて、且つ測定された距離値d(t)に基づいて、(ユーザの頭部52が回転する方向における)第1の距離値及び第2(周辺)の距離値が決定されてもよい。そして、第1の距離値及び第2の距離値は、第2の実施形態に関して後述する第1の距離値d(t)及び第2の距離値d(t)の処理と同様の制御部によって処理されてもよい。
【0122】
図6は、本開示の第2の実施形態によるウェアラブルデバイス50を示す。第2の実施形態のウェアラブルデバイス50は、第1の実施形態のウェアラブルデバイス50と同様である。従って、同じ特徴を示すために、図5及び図6において同じ参照符号が使用される。以下では、第2の実施形態の相違点及び追加の特徴のみを説明し、他の特徴は、第1の実施形態に関して上述したものと同じである。
【0123】
第2の実施形態のウェアラブルデバイス50は、2つの距離センサ54a及び54bを備える。第1の距離センサ54aは、上述した第1の実施形態の距離センサ54と同様に、中心軸に沿って方向付けられる。第1の距離センサ54aは、ウェアラブルデバイス50と中心軸に沿って位置する物体56との間の距離を示す第1の距離値d(t)(中心距離)を時間依存的に測定する。第2の距離センサ54bは、中心軸と同一ではない方向に沿って第2の距離値d(t)(周距離)を時間依存的に測定する。換言すれば、第2の距離値d(t)が測定される方向は、第1の方向に関して所定の角度を形成する。図6の実施形態では、第2の距離値d(t)が測定される方向(「周方向」とも称される)は、両方向が実質的に水平面内にあるように、中心軸に対して側方に向けられる。他の実施形態によれば、第2の距離値d(t)は、中心軸に関して(すなわち、第1の方向dに関して)下向きの方向、又は第1の方向dに関して下向き及び側面の両方を指す方向においても測定され得る。それぞれの場合において、第2の周方向は、第1の中心方向とは異なる。従って、2つの異なる距離値、すなわち、第1の方向に関する第1の距離値d(t)(中心距離)、及び第2の方向に関する第2の距離値d(t)(周辺距離)が測定され、記録(記憶)される。
【0124】
より正確には、ウェアラブルデバイス50は、距離値d(t)及びd(t)の時間依存計測を実行する。ウェアラブルデバイス50の制御部は、第1の距離値d(t)及び第2の距離値d(t)を受信して処理し、第1の距離値d(t)及び第2の距離値d(t)に基づいて、近視に対するリスク指標を決定する。
【0125】
ウェアラブルデバイス50の制御部は、第1の距離値d(t)と第2の距離値d(t)(より正確には時間依存不均衡値)との間の不均衡(すなわちミスマッチ)を計算する。制御部は、差(すなわち、時間依存差)が所定の期間内に所定の閾値を上回る蓄積持続時間を決定する。制御部は、より高い蓄積持続時間がより高い近視のリスクを示すリスク指標につながるように、リスク指標を更に決定する。
【0126】
目の幾何学(寸法)が与えられた場合、目が距離d(t)に位置する物体の方を向いて合焦されると仮定して、距離d(t)に位置する物体の像の誘導周辺デフォーカスの量を直接的に計算することができる。これは、目の光学素子を通して光線をトレースすることによって行われ得る。目の幾何学形状が提供されない場合、計算は、標準/デフォルトの目の形状を仮定することができる。デフォルトの目の幾何学の選択は、年齢、性別、民族性、又は、処方箋、身長、目の長さ、角膜の曲率、瞳孔の大きさ等の他の生理学的/解剖学的測定値等のユーザの人口統計学に基づくことができる。患者/ユーザが眼鏡、コンタクトレンズ等の屈折矯正を使用している場合、この光学素子は、周辺遠視性デフォーカスの計算においても考慮され得る。
【0127】
別の実施形態では、時間依存距離d(t)及びd(t)を遠視性デフォーカスに結び付ける数学的モデルが導出され得る。デフォーカス量の近似モデルは、目の光学系の明示的計算の有無にかかわらず、機械学習法に基づいて導出され得る。
【0128】
更なる別の実施形態では、時間依存信号d(t)及び/又はd(t)から、近視の進行リスクに対する数学的モデルが導出され得る。モデルは、周辺デフォーカスの明示的物理的計算を使用してもよい。モデルは、時間依存の周囲光強度及びスペクトルコンテンツ(spectral content)、移動量、ユーザの姿勢等、ウェアラブルデバイスと共に収集される他の信号を使用してもよい。モデルは、ユーザの目の幾何学/形状/寸法の情報を使用してもよい。モデルは、ユーザの人口統計学及び生理学的/解剖学的測定値を使用してもよい。モデルは、目の疾患の遺伝学的履歴(家庭における近視の既往)を使用してもよい。モデルは、予測を改善するために、近視の進行の他の既知のリスク因子を含んでもよい。
【0129】
モデルは、近視の進行の履歴/フォローアップデータと、時間依存信号d(t)及び/又はd(t)の測定とに基づいて導出され得る。例えば、モデルは、d(t)及び/又はd(t)、或いは典型的には近視の進行に繋がる導出されたデフォーカス信号の統計量を識別することが可能であってもよい。
【0130】
モデルは、近視のメカニズムの理論的理解、他の手段によって収集される観測データの統計、(本開示の)ウェアラブルデバイスによって収集される観測データの統計、又は任意の組み合わせに基づいて導出され得る。
【0131】
蓄積継続時間が長いほど、所定の期間内に長い期間が存在することを意味し、第1の距離値d(t)と第2の距離値d(t)との差が、予め定義された閾値よりも大きくなる。これらの期間において、ユーザは、より長い距離にある物体(図6に示される物体56等)を見る可能性があり、同時に、ユーザの目に対してより短い距離を有する異なる物体(図6に示される物体60等)は、上で説明したように、周辺デフォーカスを引き起こす。上記で更に説明したように、これらの状況は、近視の出現に影響を及ぼす要因であり得る。従って、リスク指標は、そのような状況がより頻繁に及び/又はより長い期間にわたって発生する場合に、より高くなる。
【0132】
覚醒状態の通常条件下で、人体及び頭部は、恒久的な動きの状態にある。全ての動きが視覚アクティビティに関連するわけではなく、例えば、歩行中、頭部の動きは、視線を物体と整列させる目的に役立つ必要はない。焦点シフトをより正確に調査できるようにするためには、起点の解釈及び頭部の動きの目的を含む処理が必要となることがある。この処理は、距離信号d(t)及びd(t)に基づくことができ、動きセンサ(加速度計、ジャイロスコープ、磁力計等)、位置センサ(ジオポジショニングGPS、GLONASS等)、及び他の環境センサ等の他のセンサからの信号に基づくか、或いはそれらからの信号と組み合わせることもできる。このような環境センサは、ウェアラブルデバイスの一部であり得る。
【0133】
例えば、歩行は、明確に定義された加速パターンを有し、加速度センサ/ジャイロスコープによって認識され、結果的にd(t)及びd(t)信号で補正され、実際の焦点シフトを推定することができる。
【0134】
代替的に、注意及び視覚を必要とするタスクの間、人は、身体及び頭部の不必要な動きを抑制しようと試みている。従って、注意/焦点を当てる期間は、例えば、所定時間隔における距離の変動を減少させるように、d(t)及びd(t)の統計から識別され得る。焦点合わせの周期は、付加的なセンサ(運動、回転、位置等)からも識別され得る。例えば、加速度センサは、減少した運動/加速度の周期として焦点の周期を検出するために使用され得る。
【0135】
なお、本開示は、上述した実施形態に限定されるものではない。1つ又は2つの距離センサの代わりに、カメラ又は3次元距離スキャナが、第1(中心)距離値と、異なる周方向を指す複数の異なる第2の距離値とを時間依存的に決定するために設けられてもよい。更に、空間分解サンプリングを使用することによって、走査することなく、異なる方向に複数の距離センサを同時に検出する1つ又は複数のセンサが設けられてもよい。更に、1つ又は複数の実施形態によれば、ユーザの目の視線方向を決定する目追跡デバイスが提供される。3次元距離スキャナと組み合わされて、複数の測定された距離値のうち、どの距離値が視線方向に関する中心距離値であり、どの距離値が視線方向に関する周辺距離値であるのかが、目追跡デバイスの出力に基づいて決定され得る。次いで、制御部は、リスク指標の判定のために、中心方向を第1の方向として使用し、周方向のうちの1つ又は複数を第2の方向として使用してもよい。目追跡デバイスを使用する利点は、ユーザの実際の視線方向が考慮され得るので、リスク指標の結果がより正確であることである。
【0136】
本実施形態の上記説明からわかるように、本実施形態のウェアラブルデバイス50は、ユーザの周りの1つ又は複数の距離をサンプリングすることによって、周辺デフォーカスの測定を可能にしてもよい。ウェアラブルデバイス50は、中央ゾーン(第1の距離値)及び周辺ゾーン(第2の距離値)における距離を測定することを意図してもよい。ユーザにアイトラッカ(目追跡デバイス)を装備し、3次元測定デバイス(カメラ又は3Dスキャナ等)からアイトラッカからの視線方向への距離をマッピングすることは、上述したように比較的簡単であり得るが、図5及び6の実施形態に示すように、固定方向(凝視方向)を指す1つ又は複数の距離センサを提供することがより容易且つ安価であり得る。
【0137】
従って、1つのアプローチは、ウェアラブルデバイスに関連して、従って、ユーザの頭部に関連して、センサの凝視方向に依存する。長期間の視覚アクティビティのために又は困難な視覚タスクのために、人々は、頭部を視線方向に整列させる傾向があることが知られている。従って、このアプローチは、このようなアラインメントに依存し、アラインメントの期間及びミスアラインメントの期間を識別することができるアルゴリズムを使用してもよい。
【0138】
これは、例えばウェアラブルデバイス内に設けられた慣性センサからの、複数のセンサからの信号を解析することによって行われてもよい。中央視覚ゾーン内の距離(第1の距離値)は、中央指向センサ(第1の距離センサ)で測定され、一方、周辺ゾーンは、横向きに指向された1つ又は複数のセンサ(第2の距離値)でプローブされ得る。別の実施形態では、周辺ゾーンは、ユーザの本来の頭部の動きを利用することによって、同じセンサでサンプリングされてもよい。
【0139】
1つ又は複数の実施形態のウェアラブルデバイス50は、異なる方向(網膜の一部)でユーザ(着用者)が経験する近距離及び遠距離の不均衡を測定する。
【0140】
処理は、中央ゾーン内の光パワー及び周辺上の光パワーを推定し、次いで、差を決定することを含んでもよい。ウェアラブルデバイス50は、ユーザの環境における距離の変動性を特徴付けてもよい。
【0141】
図7は、本開示の一実施形態による制御部70の論理構造を示す。例えば、制御部70は、図5又は図6の実施形態のウェアラブルデバイス50の一部として設けられてもよい。図7は、複数の構成要素72、74、76、78を示す。これらの各構成要素は、ハードウェア又はソフトウェアの形成で提供されてもよい。
【0142】
第1の構成要素72は、デフォーカスの幾何学的計算を実行するように構成される。第1の構成要素72に対する入力パラメータは、時間依存の第1の距離値t(t)及び時間依存の第2の距離値t(t)である。第1の構成要素72に対する任意選択の入力パラメータは、目の幾何学(目2の形状等)を規定するパラメータと、ウェアラブルデバイス50の状況センサによって出力されるパラメータである。これらのパラメータは、ウェアラブルデバイス50の周囲光センサによって測定される周囲光l(t)に関するものであってもよい。第1部72は、上述の入力パラメータに基づいて、時間依存性デフォーカスを決定する。
【0143】
時間依存性デフォーカスは、デフォーカス統計を実行する第2の構成要素74に出力される。換言すれば、第2の構成要素74は、時間依存性デフォーカスを観察し、デフォーカスを統計的に分析する。第2の構成要素74の出力パラメータは、デフォーカス統計を示す。
【0144】
デフォーカス統計を受信し、モデルを当該デフォーカス統計に適用する第3の構成要素76が提供される。第3の構成要素73のための任意選択の入力パラメータは、周囲光、ワーキングディスタンス、遺伝学等の追加の要因である。これらの因子は、近視のリスクに影響を及ぼす可能性がある。例えば、遺伝的要因は、特定のユーザが近視のリスクが増大していることを示し得る。これは、より高いリスク指標につながる可能性がある。
【0145】
第4の構成要素78では、リスク指標は、第3の構成要素76の出力に基づいて決定される。図7に示すように、リスク指標は、第1の距離値t(t)及び第2の距離値d(t)に基づいて決定される。更に、上述の任意のパラメータは、目の幾何学、状況センサの出力パラメータ、及び/又は追加の要因等のリスク指標の判定に影響を有し得る。リスク指標の決定に関する詳細は、他の実施形態に関して上述されている。
【0146】
以下では、図8乃至図13を参照して、制御部で使用されるモデルの例及び詳細を説明する。
【0147】
図8は、図6の実施形態に関して説明した2重距離センサシステムによる視力調節のミスマッチのモニタリングを示す図である。第1の距離センサ54aは、前方に向けられ、中心視と位置合わせされ、第2の距離センサ54bは、下方に30度向けられ、周辺視の需要を監視する。換言すると、第1の距離値d(t)は「視力調節応答」とも称され、第2の距離値d(t)は「視力調節要求」とも称される。図8の例は、約0.8~1.0メートルを監視するための距離を有するデスクトップPC作業のエピソードを示す。第2の距離センサ54bは、典型的には同じモニタまでの距離を測定し、これは0.2~0.3Dのベースラインの視力調節誤差をもたらすが、ユーザの手又は机における物体までの距離も検出し、これは10ジオプトリに達する誤差をもたらし、これは近視の進行リスクの推定値を生成するために統合される。なお、本例では、視力調節誤差(又は第1の距離値と第2の距離値とのミスマッチ)がジオプトリ(1/m)で示される。
【0148】
図9は、本明細書に記載される制御部の何れかによって(特に、図5及び/又は図6に示されるデバイスの制御部によって)使用され得るリスク積分器(integrator)の概念を記載する。図9によれば、近視のリスクの累積効果のモデルは、リセット機構を含む。動物実験では、遠視性の視力調節誤差(明視)が短期間存在しないと、遠視性デフォーカスの蓄積効果を中和し得ることが示されている。この効果は、積分ウィンドウの導入によって、例えば、遠視性デフォーカスでゆっくり充電し、遠視性デフォーカスがない場合に比較的速い放電を行う漏洩積分器の形態で考慮され得る。
【0149】
一実施形態では、リスクスコアが第1の定義された閾値(D1)を超える持続遠視性デフォーカス(D)の各完全な1分間後に第1の値(例えば1)だけ増分される非負整数値蓄積変数Rとすることができる。同時に、第2の定義された閾値D2(第1の閾値D1よりも低い)未満の遠視性デフォーカスの各分は、第1の値(例えば5)よりも絶対値だけ大きいと予想される第2の値だけ蓄積変数Rを減少させる。これは、デフォーカスが遠視性デフォーカスに対応する正の値で符号付けされ、近視性デフォーカスには負の値で符号付けされることを仮定する。
【0150】
Rは非負であるので、減分はそれをゼロの最小値にすることしかできず、従って、明視又は近視性デフォーカスの持続期間は、蓄積変数Rを最小に保つだけであり、これは、明視又は近視のデフォーカスの予防効果がないことを意味する。
【0151】
リスク積分器変数Rの別の実施形態において、Rは実数値であり、非負であり、次の規則に従って各時間ステップiで調整される。
R(i)=f(D(i))+R(i-1)(但し、R>0)
R(i)は、時間ステップiにおけるリスク蓄積変数であり、R(i-1)は、前の時間ステップにおける同じ変数であり、D(i)は、実数値の遠視性デフォーカスであり、f(D)は、応答関数である。
【0152】
応答関数は、図10に示されるようなステップ関数の形態を有し得る。
D>D1(遠視性デフォーカス充電)の場合、f(D)=Aであり、
D<D2(明視及び近視性デフォーカス放電)の場合、f(D)=-Bであり、
D2≦D≦D1(不確定性/無感覚ゾーン)の場合、f(D)=0である。
D2<D1は、所定の閾値であり、A、B>0(所定値)である。
【0153】
前記応答関数は、図11に示されるように、線形依存性及び飽和を含むように、より精巧にされ得る。
D1’<D(遠視性デフォーカス充電の飽和)の場合、f(D)=Aであり、
D0<D<D1’(線形遠視性デフォーカス充電)の場合、f(D)=α(D-D0)であり、
D2’<D<D0(線形明視/近視性デフォーカス放電)の場合、f(x)=-β(D-D0)であり、
D<D2’(飽和明視/近視デフォーカス放電)の場合、f(x)=-Bである。
但し、D2’<D0<D1’は、所定の閾値であり、α、β、A、B>0であり、A=α(D1’-D0)であり、B=-β(D2’-D0)である。
【0154】
前記応答関数は、図13に示されるように、線形依存性、飽和、及び無感覚ゾーンを含み得る。
D1’<D(遠視性デフォーカス充電の飽和)の場合、f(D)=Aであり、
D1<D<D1’(線形遠視性デフォーカス充電)の場合、f(D)=α(D-D1)であり、
D1≦D≦D2(不確定性/無感覚ゾーン)の場合、f(D)=0であり、
D2’<D<D2(線形明視/近視性デフォーカス放電)の場合、f(x)=-β(D-D2)であり、
D<D2’(飽和明視/近視デフォーカス放電)の場合、f(x)=-Bである。
但し、D2’<D2<D1<D1’は、所定の閾値であり、α、β、A、B>0であり、A=α(D1’-D1)であり、B=-β(D2’-D2)である。
【0155】
応答関数は、シグモイド/ロジスティック関数、双曲線正接、直線化された線状ユニット等、又は任意の組合せの形態を有し得る。シグモイド関数の一例を、例えば図13に示す。
【0156】
上記の説明及び図面において、異なる実施形態の対応する特徴又は各部には同じ参照番号が使用される。しかしながら、これらの特徴又は各部の1つに関して説明した詳細は、同じ参照符号を有する他の実施形態の特徴についても同様に当てはまる。更に、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、単に本発明をどのように実施することができるかを例示するものである。本開示の技術、特に、制御部70の構成要素は、コンピュータプログラム製品の形態で具現化されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13