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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】シャッタ装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20241111BHJP
   F16H 21/02 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
B60K11/04 J
B60K11/04 C
F16H21/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022512052
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2021012451
(87)【国際公開番号】W WO2021200522
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2024-02-29
(31)【優先権主張番号】P 2020066201
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】瀧田 宏康
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-223150(JP,A)
【文献】特表2016-501762(JP,A)
【文献】特開2015-91689(JP,A)
【文献】特開2016-55718(JP,A)
【文献】特開2014-189208(JP,A)
【文献】特開2016-147553(JP,A)
【文献】特開2013-136260(JP,A)
【文献】特表2019-503933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/04
F16H 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持フレーム(2)と、 第1回転軸線周りに回転できるように前記支持フレームに取り付けられた第1フラップ(10)と、 前記第1回転軸線と平行な第2回転軸線周りに回転できるように前記支持フレームに取り付けられた第2フラップ(20)と、 前記第1フラップおよび前記第2フラップを回転させる駆動力を発生する1つのアクチュエータ(50)と、 前記アクチュエータが発生した駆動力を前記第1フラップおよび前記第2フラップに伝達するリンク機構(30)であって、前記リンク機構が前記第1フラップおよび前記第2フラップが互いに同期して回転するように前記第1フラップおよび前記第2フラップを互いに連結するコネクティングロッド(31)を含み、前記コネクティングロッドの第1枢着部(32)が前記第1フラップに枢着され、前記コネクティングロッドの第2枢着部(34)が前記第2フラップに枢着されている、前記リンク機構とを備えた車両用のシャッタ装置であって、 前記シャッタ装置は、さらに、前記リンク機構(30)が正常な状態にあるときには、前記第1フラップ(10)および前記第2フラップ(20)の全開位置と全閉位置との間の通常開閉動作範囲を超えた変位を禁止するストッパ手段(4,16;6,29;6,28)を備え、 前記第2枢着部(34)における前記コネクティングロッド(31)と前記第2フラップ(20)との連結が維持された状態で前記第1枢着部(32)における前記コネクティングロッドと前記第1フラップ(10)との連結が解除されたときに、前記第1フラップ(10)および前記第2フラップ(20)の前記通常開閉動作範囲に対応する前記アクチュエータの通常回転範囲を超えた回転が許容されるように前記リンク機構(30)が構成されている、車両用のシャッタ装置。
【請求項2】
前記コネクティングロッド(31)は長穴(36)を有し、前記長穴に前記アクチュエータ(50)により駆動されて前記長穴内をスライドするスライダ(42)が係合しており、前記長穴の長さは、前記第2枢着部(34)における前記コネクティングロッドと前記第2フラップ(20)との連結が維持された状態で前記第1枢着部(32)における前記コネクティングロッドと前記第1フラップ(10)との連結が解除されたときに、前記通常回転範囲を超えた前記アクチュエータ(50)の回転が許容されるような長さに設定されている、請求項1記載のシャッタ装置。
【請求項3】
前記ストッパ手段として、前記支持フレーム(2)に設けられたフレームストッパ(6)と、前記フレームストッパ(6)と衝突することにより前記第2フラップ(20)が前記全開位置を超えて回転することを防止する、前記第2フラップ(20)に設けられたフラップストッパ(28,29)と、を具備し、 前記リンク機構(30)が正常な状態にあり、かつ前記第2フラップ(20)が前記全閉位置にあるときに、前記スライダ(42)は前記長穴(36)内の第1の位置に位置し、前記リンク機構が正常な状態にあり、かつ前記第2フラップ(20)が前記全開位置にあるときに、前記スライダ(42)は前記長穴(36)内の第2の位置に位置し、前記長穴は、前記第2の位置よりも前記第1の位置から遠い第3の位置に至るまで延びている、請求項2記載のシャッタ装置。
【請求項4】
一端が前記アクチュエータ(50)の出力軸(52)に固定され、他端が前記スライダ(42)を担持する旋回アーム(40)を備え、前記リンク機構(30)が正常な状態にあるときには前記旋回アームの角度位置に応じて前記第1フラップおよび前記第2フラップの角度位置が決定される、請求項2または請求項3に記載のシャッタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロント室の前部に配置されて、フロント室に導入される外気の量を調整するためのシャッタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車両は、その前側に、乗員が搭乗する車室から隔離されたエンジンルームまたはモータールームなどと呼ばれる室(以下、本明細書において説明の便宜上「フロント室」と呼ぶ)を有している。フロント室内には、内燃エンジン、電気モータ等の原動機、バッテリー、エアコンの冷凍サイクル等が格納される。フロント室の前面に、外気をフロント室内に導入するための開口を有するフロントグリルが設けられている。
【0003】
近年、車両の空力特性の改善、効率的な暖気運転等のために、フロントグリルに開閉可能なシャッタ装置を設け、状況に応じてフロントグリルを閉じることが行われている。特許文献1には、そのようなシャッタ装置が記載されている。シャッタ装置は、上下方向に並べられた複数の閉鎖要素(フラップ、フィン等とも呼ばれる)を備えている。これらの閉鎖要素の各々は、フレームに回転自在に支持されるとともに、共通の1つのアームに枢着されている。このアームをアクチュエータにより駆動することにより、閉鎖要素が連動回転し、フロントグリルが開閉される。
【0004】
このような形式のシャッタ装置において、いずれか1つの閉鎖要素とアームとの連結が外れると、当該1つの閉鎖要素が動かなくなる。この外れた閉鎖要素が他の閉鎖要素の動きを妨害しないのであれば、当該1つの閉鎖要素が外れたという事象を認識することは難しい。この場合、フロントグリルを通過する空気の量が意図した量と異なるという状況が長期間にわたって続く可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-147552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アクチュエータからフラップに動力を伝達するリンク機構に異常が生じた場合に、異常の発生を容易に検出することができる機能を有する車両用のシャッタ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、支持フレームと、第1回転軸線周りに回転できるように支持フレームに取り付けられた第1フラップと、第1回転軸線と平行な第2回転軸線周りに回転できるように支持フレームに取り付けられた第2フラップと、第1フラップおよび第2フラップを回転させる駆動力を発生する1つのアクチュエータと、アクチュエータが発生した駆動力を第1フラップおよび第2フラップに伝達するリンク機構であって、リンク機構が第1フラップおよび第2フラップが互いに同期して回転するように第1フラップおよび第2フラップを互いに連結するコネクティングロッドを含み、コネクティングロッドの第1枢着部が第1フラップに枢着され、コネクティングロッドの第2枢着部が第2フラップに枢着されている、リンク機構とを備えた車両用のシャッタ装置であって、シャッタ装置は、さらに、リンク機構が正常な状態にあるときには、第1フラップおよび第2フラップの全開位置と全閉位置との間の通常開閉動作範囲を超えた変位を禁止するストッパ手段を備え、第2枢着部におけるコネクティングロッドと第2フラップとの連結が維持された状態で第1枢着部におけるコネクティングロッドと第1フラップとの連結が解除されたときに、第1フラップおよび第2フラップの通常開閉動作範囲に対応するアクチュエータの通常回転範囲を超えた回転が許容されるようにリンク機構が構成されている、車両用のシャッタ装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
上記実施形態によれば、フラップとリンク機構との連結が外れた場合にアクチュエータの通常回転範囲を超えた回転が許容されるようになっているため、アクチュエータの回転位置検出器の検出結果に基づいてリンク機構の異常を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両用のシャッタ装置の右半部を、フロント室の内側から見た概略斜視図である。
図2】一実施形態に係るリンク機構の構成および正常状態での動作を示す図であって、(A)はフラップが全閉状態にあるときのリンク機構の状態を示し、(B)はフラップが全開状態にあるときのリンク機構の状態を示している。
図3】コネクティングロッドと第1フラップとの連結が外れたとき(第1異常状態)のリンク機構の動作を示す図であって、(A)はアクチュエータが、図2(B)と同じ回転角度位置にあるときのリンク機構の状態を示し、(B)は(A)における回転角度位置を超えてアクチュエータが変位したときのリンク機構の状態を示している。
図4】コネクティングロッドと第2フラップとの連結が外れたとき(第2異常状態)のリンク機構の動作を示す図であって、(A)はアクチュエータが、図2(B)と同じ回転角度位置にあるときのリンク機構の状態を示し、(B)は(A)における回転角度位置を超えてアクチュエータが変位したときのリンク機構の状態を示している。
図5】コネクティングロッドと旋回アームとの連結が外れたとき(第3異常状態)のリンク機構の動作を示す図であって、(A)はアクチュエータが、図2(B)と同じ回転角度位置にあるときのリンク機構の状態を示し、(B)は(A)における回転角度位置を超えてアクチュエータが変位したときのリンク機構の状態を示している。
図6】他の実施形態に係るリンク機構の構成および正常状態での動作を示す図であって、(A)はフラップが全閉状態にあるときのリンク機構の状態を示し、(B)はフラップが全開状態にあるときのリンク機構の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
【0011】
図1は、車両用のシャッタ装置の右半部を、フロント室(「フロント室」の定義については本明細書の冒頭の背景技術の項を参照されたい。)の内側から見た概略斜視図である。図1の奥側(左上)が車両の外部(フロント室の外側空間)であり、図1の手前側(右下)がフロント室の内部である。
【0012】
図1および図2に示すように、車両用のシャッタ装置は、支持フレーム2と、第1回転軸線周りに回転できるように支持フレーム2に取り付けられた第1フラップ10と、第1回転軸線と平行な第2回転軸線周りに回転できるように支持フレームに取り付けられた第2フラップ20と、第1フラップ10および第2フラップ20を回転させる駆動力を発生する1つのアクチュエータ50とを有している。通常、第1および第2回転軸線は、車両の車幅方向(左右方向)に水平に延びている。
【0013】
第1フラップ10は、フロントグリルを開閉する第1閉塞板10Aと、第1閉塞板の側面に設けられて第1回転軸線の径方向に拡がる第1円盤10Bとを有する。第2フラップ20は、フロントグリルを開閉する板状の第2閉塞板20Aと、第2閉塞板の側面に設けられて第2回転軸線の径方向に拡がる第2円盤20Bとを有する。
【0014】
図2に示すように、第1フラップ10および第2フラップ20の長手方向両端部(図2には一端側のみを図示する)には軸12,22が設けられている。これらの軸12,22は、支持フレーム2に設けられた軸受け(図示せず)により回転可能に支持されている。前述した第1回転軸線および第2回転軸線は軸12,22の中心をそれぞれ通過している。
【0015】
アクチュエータ50は、少なくとも電動回転モータを有している。アクチュエータ50は、さらに、減速機構(例えば減速歯車機構)を有していてもよい。アクチュエータ50の出力軸(回転軸)52は、例えば、電動回転モータの回転軸、あるいは電動回転モータの回転軸に動力伝達可能に取り付けられた減速機構の出力軸である。
【0016】
シャッタ装置は、アクチュエータ50が発生した駆動力を第1フラップ10および第2フラップ20に伝達するリンク機構30を有している。リンク機構30は、コネクティングロッド31と、旋回アーム40とを含む。
【0017】
コネクティングロッド31は、第1フラップ10および第2フラップ20が、互いに同期して(好ましくは互いに同位相で)回転するように第1フラップ10および第2フラップ20を互いに連結する。
【0018】
コネクティングロッド31は、第1フラップ10の第1円盤10Bに枢着された第1枢着部32と、第2フラップ20の第2円盤20Bに枢着された第2枢着部34とを有する。具体的には、第1円盤10Bに円筒型のピン14が設けられ、コネクティングロッド31の第1枢着部32のところに穴(「穴32」とも記す)が形成され、この穴32にピン14が回転可能に挿入されている。同様に第2円盤20Bに円筒型のピン24が設けられ、コネクティングロッド31の第2枢着部34のところに穴(「穴34」とも記す)が形成され、この穴34にピン24が回転可能に挿入されている。上記のピン14,24は対応する穴32,34に対して容易に外れない取付方法により取り付けられている。コネクティングロッド31にピンを設け、第1フラップ10および第2フラップ20に穴を設けてもよい。
【0019】
容易に外れない取付方法として、図示はしないが、(i)コネクティングロッド31の穴32,34よりもやや小さい直径を有するピン14,24に大径頭部を設け、大径頭部を穴32,34に強制的に通過させること、あるいは(ii)ピン14,24に雌ねじを形成し、ピン14,24を穴32,34に通した後に、穴32,34よりも大きな直径を有する雄ねじを雌ねじに螺合させること、などが考えられる。
【0020】
コネクティングロッド31は、第2枢着部34の近傍に長穴36を有している。長穴36内にはスライダ42がスライド可能に係合している。旋回アーム40の一端は、アクチュエータ50の出力軸52に固定されている。旋回アーム40の他端に、スライダ42が固定されている。
【0021】
図2に示すようにリンク機構30が正常状態にある場合、アクチュエータ50により旋回アーム40を旋回させることにより、第1フラップ10および第2フラップ20が連動して、図2(A)に示す全閉位置と図2(B)に示す全開位置との間の回転角度範囲(以下、これを「通常開閉動作範囲」とも称する)で約90度回転する。つまりこのとき、旋回アーム40の回転角度位置に応じて第1フラップ10および第2フラップ20の回転角度位置が決定される。このときの旋回アーム40の旋回角度範囲(すなわち出力軸52の回転角度範囲)が、図2(B)において「θN」で示されている。
【0022】
旋回アーム40の回転軸線すなわち出力軸52の中心と第2フラップ20の回転軸線すなわち軸22の中心は一致していないため、(図2(A)および図2(B)からはやや分かり難いが)図2(A)の状態から図2(B)の状態へ(あるいはその逆に)移行するときに、旋回アーム40の旋回に伴いスライダ42は長穴36内を長手方向に(長穴36に対して相対的に)移動する。つまり、第2フラップ20が全閉位置にあるときに、スライダ42は長穴36内のある位置(第1の位置)に位置し、第2フラップ20が全開位置にあるときに、スライダ42は長穴36内の第2の位置に位置していることになる。
【0023】
なお、長穴36内でスライダ42がロックすることを防止するために、スライダ42は多少のクリアランスを持って長穴36内に配置されている。すなわち、長穴36の短径の寸法よりもスライダ42の直径が若干小さい寸法となっている。
【0024】
支持フレーム2にはフレームストッパ4,6が設けられている。第1フラップ10にはフレームストッパ4と当接して第1フラップ10の回転運動を制限するフラップストッパ16が設けられている。より詳しくは、フラップストッパ16は、図1に示されるように第1閉塞板10Aに設けられている。第2フラップ20にはフレームストッパ6と当接して第2フラップ20の回転運動を制限するフラップストッパ28,29が設けられている。より詳しくは、フラ
ップストッパ28,29は、第2円盤20Bに設けられている。なお、ここでは、「フレームストッパ」とは、支持フレーム2に設けられたストッパという意味であり、「フラップストッパ」とはフラップ(10または20)に設けられたストッパという意味である。フレームストッパ4,6およびフラップストッパ28,29は、第1フラップ10および第2フラップ20が全閉位置に向けて回転するときに全閉位置を超えて回転することを防止するとともに、第1フラップ10および第2フラップ20が全開位置に向けて回転するときに全開位置を超えて回転することを防止する。
【0025】
図2(B)に示すように、第2フラップ20にはフラップストッパ28が設けられている。なお、図2(A)ではフラップストッパ28がコネクティングロッド31の長穴36と一致する位置にあるため見難い。フラップストッパ28は、フレームストッパ6と衝突することにより、第2フラップ20が全開位置に向けて回転するときに、全開位置を超えて回転することを防止する。なお、図2に示すようにリンク機構30が正常な状態にあるならば、フラップストッパ28およびフレームストッパ6により、コネクティングロッド31を介して第2フラップ20に連結されている第1フラップ10が全開位置を超えて回転することも防止される。
【0026】
上述したストッパの配置から明らかなように、リンク機構30が正常状態にある場合、第1フラップ10および第2フラップ20は上述した「通常開閉動作範囲」を超えて回転することができず、このため、アクチュエータ50の出力軸52も上記の回転角度範囲θNを超えて回転することができないようになっている。
【0027】
リンク機構30の各要素間の連結部は容易に外れないように構成されているが、万一外れた場合には、外れたことが容易に検出できるようになっている。連結部が外れた状態(異常状態)を3つに場合分けして以下に説明する。
【0028】
図3は、リンク機構30の第1異常状態を示している。第1異常状態とは、コネクティングロッド31と第1フラップ10との連結が外れ(ピン14と穴32とが分離し)、リンク機構30の他の部分の連結および係合が維持されている状態を意味する。
【0029】
このとき、第1フラップ10および第2フラップ20を全開位置に向けて回転させることを意図してアクチュエータ50により旋回アーム40を旋回させると、第1フラップ10は回転しないが、第2フラップ20は正常状態時と同様に回転し、フラップストッパ28がフレームストッパ6に衝突する全開位置まで回転する(図3(A)を参照)。
【0030】
第1異常状態では、コネクティングロッド31の第1枢着部32と第1フラップ10のピン14との連結が外れているため、コネクティングロッド31は第2フラップ20のピン24を中心として自由に回転することができる。このため、旋回アーム40に取り付けられたスライダ42が長穴36の端(つまり前述した第2の位置よりも第1の位置から遠い第3の位置)に到達するまで、アクチュエータ50の出力軸52を回転させることができる。旋回アーム40の旋回角度範囲(すなわち出力軸52の回転角度範囲)が、図3(B)において「θA」で示されている。
【0031】
前述した回転角度範囲θNを超えてアクチュエータ50の出力軸52が回転したことは、アクチュエータ50に設けられた回転角度検出手段54(図1のみに概略的に示す)により検出される。回転角度検出手段は、例えばアクチュエータ50の電動回転モータに付設されたロータリーエンコーダとすることができる。回転角度範囲θNを超えてアクチュエータ50の出力軸52が回転するということは、リンク機構30に何らかの異常があることを意味している。そのような異常があるということを、例えば報知手段により乗員に報知することができる。報知手段としては、例えばインストルメントパネルのメーター部に設けられた警告灯、及び/又はチャイム若しくはブザーとすることができる。なお、回転角度範囲θNを超えてアクチュエータ50の出力軸52が回転したことが検出されたときには、リンク機構30およびアクチュエータ50の破損を防止するために、アクチュエータ50を停止(非常停止)させてもよい。上述した検出に基づく上記の報知及び/又はアクチュエータ50の停止は、図示しない制御ユニットを介して行うことができる。
【0032】
図4は、リンク機構30の第2異常状態を示している。第2異常状態とは、コネクティングロッド31と第2フラップ20との連結が外れ(ピン24と穴34とが分離)、リンク機構30の他の部分の連結および係合が維持されている状態を意味する。
【0033】
この場合、第1フラップ10および第2フラップ20を全開位置に向けて回転させることを意図してアクチュエータ50により旋回アーム40を旋回させると、第2フラップ20は回転しないが、第1フラップ10は正常状態時と同様に回転し、全開位置に達する(図4(A))。引き続き旋回アーム40を旋回させようとした場合、第1フラップ20が全開位置を超えて回転することを防止するストッパは無いため、アクチュエータ50の出力軸52は上記の回転角度範囲θNを超えて回転することができる。このときのアクチュエータ50の出力軸52の回転角度範囲が、図4(B)において「θB」で示されている。この場合も、回転角度範囲θNを超えてアクチュエータ50の出力軸52が回転したことが回転角度検出手段により検出され、リンク機構30に異常があることが報知手段により乗員に報知される。
【0034】
図5は、リンク機構30の第3異常状態を示している。第3異常状態とは、コネクティングロッド31と旋回アーム40の連結が外れ(長穴36とスライダ42とが分離)、リンク機構30の他の部分の連結および係合が維持されている状態を意味する。
【0035】
この場合、第1フラップ10および第2フラップ20を全開位置に向けて回転させることを意図してアクチュエータ50により旋回アーム40を旋回させても、第1フラップ10および第2フラップ20の両方は回転せずに元の回転角度位置に留まる。旋回アーム40の動きは全く制限されていないため、アクチュエータ50の出力軸52は上記の回転角度範囲θNを超えて回転することができる。図5(B)には、第3異常状態でのアクチュエータ50の出力軸52の回転角度範囲「θC」を示した。なお、リンク機構30の構造上からは出力軸52が回転角度範囲θCを超えて例えばコネクティングロッド31に衝突するまで自由に回転することができることは明らかであるが、実際の運用では回転角度範囲θCを超えそうになったら、アクチュエータ50の動作が停止する。この場合も、回転角度範囲θNを超えてアクチュエータ50の出力軸52が回転したことが回転角度検出手段により検出され、リンク機構30に異常があることが報知手段により乗員に報知される。
【0036】
上記の実施形態によれば、リンク機構30に含まれる要素間の連結または係合が外れたことを容易に判定することができる。多くの場合、第1フラップ10および第2フラップ20の開度制御を行うために、アクチュエータ50の出力軸52の回転角度を検出するための回転角度検出手段(54)が設けられているため、新たに回転角度検出手段を設ける必要はない。このため、上記機能を実現するためにシャッタ装置のコストが増大することが防止ないし抑制される。
【0037】
アクチュエータ50およびリンク機構30を、図1図5に示した実施形態に対して上下を逆転させて図6に示すように配置してもよい。図6に示すシャッタ装置も、図1図5に示したシャッタ装置と同様に動作する。
【符号の説明】
【0038】
2 支持フレーム 4,16;6,29;6,28 ストッパ手段 10 第1フラップ 20 第2フラップ 30 リンク機構 31 コネクティングロッド 32 第1枢着部 34 第2枢着部 40 旋回アーム 50 アクチュエータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6