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特許7585310多目的RFIDトランスポンダとそれを読み取るためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】多目的RFIDトランスポンダとそれを読み取るためのシステム
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/07 20060101AFI20241111BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
G06K19/07 230
G06K19/07 090
G06K19/077 272
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022516118
(86)(22)【出願日】2020-08-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(86)【国際出願番号】 US2020046605
(87)【国際公開番号】W WO2021050205
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-08-16
(31)【優先権主張番号】16/567,853
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/885,085
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522096318
【氏名又は名称】ラディカルアイディー,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RADICALID,INC.
【住所又は居所原語表記】P.O.Box 4553,Rollingbay,Washington 98061(US)
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【弁理士】
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 洋之
(72)【発明者】
【氏名】ターナー,リー
(72)【発明者】
【氏名】グッドマン,アラン
【審査官】豊田 真弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-235595(JP,A)
【文献】特開2000-230978(JP,A)
【文献】特表平06-502249(JP,A)
【文献】米国特許第05317309(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0004996(US,A1)
【文献】特開2016-197405(JP,A)
【文献】特開2012-142732(JP,A)
【文献】特開2012-008750(JP,A)
【文献】特開2005-310131(JP,A)
【文献】特開2005-148820(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0123561(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3389316(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0255856(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0012589(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/07
G06K 19/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受動RFIDタグであって、
(a)質問器からの磁場の無線誘導結合を介して前記受動RFIDタグへの電源供給を可能にするアンテナと、
(b)集積回路とを備え、前記集積回路は、
i.固有のタグ識別子を格納するメモリと、
ii.前記アンテナに動作可能に結合された変調器と、
iii.前記アンテナに動作可能に結合された復調器と、
iv.前記復調器に動作可能に結合され、入力質問信号の通信プロトコルを判定するように構成された検出器と、
v.前記検出器に動作可能に結合され、前記受動RFIDタグを第一の動作モードおよび第二の動作モードで動作させるように構成されたコントローラとを備え、
前記第一の動作モードは、前記受動RFIDタグが、前記アンテナを介して、第一の周波数を有する第一のキャリア信号を利用して、第一の通信プロトコルを使用する第一の質問器と通信することを可能にし、
前記第二の動作モードは、前記受動RFIDタグが、前記アンテナを介して、第二の周波数を有する第二のキャリア信号を利用して、第二の通信プロトコルを使用する第二の質問器と通信することを可能にし、
前記第一の周波数は前記第二の周波数と実質的に同一であり、
前記第二の通信プロトコルは、前記第一の通信プロトコルの通信範囲よりも広い通信範囲を有するコマンドレス非同期プロトコルであり、
前記コントローラは、前記固有のタグ識別子を、ランダムホールドオフ・再送信スキームを介して、前記第二の質問器に送信することを可能にする、ことを特徴とする受動RFIDタグ。
【請求項2】
前記第一の周波数はHF周波数である、ことを特徴とする請求項1に記載の受動RFIDタグ。
【請求項3】
前記第一の周波数は約13.56 MHzである、ことを特徴とする請求項2に記載の受動RFIDタグ。
【請求項4】
前記第一の通信プロトコルはNFC型プロトコルである、ことを特徴とする請求項3に記載の受動RFIDタグ。
【請求項5】
前記第一の通信プロトコルは、短通信範囲コマンド制御型プロトコルである、ことを特徴とする請求項1に記載の受動RFIDタグ。
【請求項6】
前記第一の動作モードは、デフォルト動作モードであり、前記コントローラは、前記検出器が前記入力質問信号を検出した際に、前記デフォルト動作モードから前記第二の動作モードに切り替えるように構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の受動RFIDタグ。
【請求項7】
前記第二のキャリア信号は連続波キャリア信号であり、前記入力質問信号は、所定の閾値より大きい磁場励起のレベルである、ことを特徴とする請求項6に記載の受動RFIDタグ。
【請求項8】
前記アンテナは第一のアンテナ及び第二のアンテナを有し、
前記コントローラは、さらに第三の動作モードで前記受動RFIDタグを動作させるように構成され、
前記第一の動作モードは、前記受動RFIDタグが、前記第一のアンテナを介して通信することを可能にし、
前記第二の動作モードは、前記受動RFIDタグが、前記第一のアンテナを介して通信することを可能にし、
前記第三の動作モードは、前記受動RFIDタグが、第三の周波数を有する第三のキャリア信号を利用した第三の通信プロトコルを使用して、前記第二のアンテナを介して通信することを可能にし、
前記第三の周波数は、前記第一及び第二の周波数とは異なる周波数帯域にある、ことを特徴とする請求項1に記載の受動RFIDタグ。
【請求項9】
前記第三の周波数は、UHF周波数帯域にある、ことを特徴とする請求項8に記載の受動RFIDタグ。
【請求項10】
前記第三の通信プロトコルは、EPCクラス1ジェネレーション2の規格に準拠する、ことを特徴とする請求項9に記載の受動RFIDタグ。
【請求項11】
受動RFIDタグの使用方法であって、
(a)前記受動RFIDタグを提供するステップを備え、前記受動RFIDタグは、
(i)アンテナと、
(ii)集積回路とを備え、前記集積回路は、
固有のタグ識別子を格納するメモリと、
前記アンテナに動作可能に結合された変調器と、
前記アンテナに動作可能に結合された復調器と、
前記復調器に動作可能に結合された検出器と、
前記検出器に動作可能に結合され、前記受動RFIDタグを第一の動作モードおよび第二の動作モードで動作させるように構成されたコントローラとを備え、
前記第一の動作モードは、前記受動RFIDタグが、前記アンテナを介して、第一の周波数を有する第一のキャリア信号を利用して、第一の通信プロトコルを使用する第一の質問器と通信することを可能にし、
前記第二の動作モードは、前記受動RFIDタグが、前記アンテナを介して、第二の周波数を有する第二のキャリア信号を利用して、第二の通信プロトコルを使用する第二の質問器と通信することを可能にし、
前記第一の周波数は前記第二の周波数と実質的に同一であり、
前記第一の動作モードは、デフォルト動作モードであり、
前記コントローラは、前記検出器が入力質問信号を検出した際に、前記受動RFIDタグを前記デフォルト動作モードから前記第二の動作モードに切り替えるように構成され、
前記コントローラはさらに、前記受動RFIDタグを前記第二の動作モードに所定の期間維持するようにさらに構成され、前記所定の期間は、一時的な持続時間と恒久的な持続時間とを含む期間のグループから選択される、ステップと、
(b)前記受動RFIDタグに質問信号を送信するステップと、
(c)前記アンテナを用いて、前記質問信号の磁場を無線誘導結合して前記受動RFIDタグに電力を供給するステップと、
(d)前記検出器を用いて、前記質問信号の通信プロトコルを判定するステップであって、前記判定された通信プロトコルは、前記第一の通信プロトコルおよび前記第二の通信プロトコルのうちの1つである、ステップと、
(e)前記コントローラを用いて、前記判定された通信プロトコルに対応する動作モードで前記受動RFIDタグを動作させるステップであって、前記動作モードは、前記第一の動作モードおよび前記第二の動作モードのうちの1つである、ステップと、
(f)前記質問信号に応答して前記判定された通信プロトコルを使用して前記タグ識別子を前記アンテナを介して無線通信するステップとを備える、ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記判定された通信プロトコルは、HF周波数範囲の前記第一の周波数を有する前記第一の通信プロトコルである、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第一の周波数は約13.56MHzである、ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第一の通信プロトコルはNFC型プロトコルである、ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記判定された通信プロトコルは前記第二の通信プロトコルであり、前記第二の通信プロトコルは、前記第一の通信プロトコルの通信範囲よりも大きい通信範囲を有するコマンドレス非同期プロトコルであり、
前記質問信号に応答して前記タグ識別子を無線通信する前記ステップは、ランダムホールドオフ・再送信スキームを介して前記固有のタグ識別子を送信するステップを含む、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記ランダムホールドオフ・再送信スキームは、前記固有のタグ識別子を約0.2%~約4%の平均デューティ比で擬似ランダム方式で繰り返し送信することを含む、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ランダムホールドオフ・再送信スキームは、約64 Kbits/秒~256 Kbits/秒のデータレートで、擬似ランダム方式で前記固有のタグ識別子を繰り返し送信することを含む、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
パルス位置符号化技術を使用して前記固有のタグ識別子を符号化するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記アンテナは第一のアンテナ及び第二のアンテナを有し、
前記コントローラは、さらに第三の動作モードで前記受動RFIDタグを動作させるように構成され、
前記第一の動作モードは、前記受動RFIDタグが、前記第一のアンテナを介して通信することを可能にし、
前記第二の動作モードは、前記受動RFIDタグが、前記第一のアンテナを介して通信することを可能にし、
前記第三の動作モードは、前記受動RFIDタグが、第三の周波数を有する第三のキャリア信号を利用した第三の通信プロトコルを使用して、前記第二のアンテナを介して通信することを可能にし、
前記第三の周波数は、前記第一及び第二の周波数とは異なる周波数帯域にあり、
前記入力質問信号を検出すると、前記コントローラは、前記デフォルト動作モードから、前記第二の動作モードおよび前記第三の動作モードのうちの1つに切り替えるようにさらに構成され、
前記コントローラは、前記受動RFIDタグを、前記第二の動作モードおよび前記第三の動作モードのうちの切り替えられた一方に所定期間維持するようにさらに構成され、
前記アンテナを用いて、前記質問信号の磁場を無線誘導結合して前記受動RFIDタグに電力を供給するステップが、前記第一のアンテナ及び前記第二のアンテナのうちの一つの使用を含み、
前記検出器を使用するステップの間に決定された前記通信プロトコルは、前記第一の通信プロトコル、前記第二の通信プロトコル及び前記第三の通信プロトコルのうちの一つであり、
前記コントローラを用いて、前記判定された通信プロトコルに対応する動作モードで前記受動RFIDタグを動作させるステップの間、前記動作モードは、前記第一の動作モード、前記第二の動作モード、及び、前記第三の動作モードのうちの一つである、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記第三の周波数は、UHF周波数帯域にある、ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第三の通信プロトコルは、EPCクラス1ジェネレーション2の規格に準拠する、ことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、i) 2019年9月11日に出願された米国出願第16/567,853号および ii)米国特許出願第16/567,853号の一部継続出願である、2020年5月27日に出願された米国出願第16/885,085号の2つの出願に基づいて利益を主張するものであり、各出願の内容をここに参照により援用する。
【発明の分野】
【0002】
本発明は、全般的に無線通信システムに関し、より詳細には、受動トランスポンダベースの誘導磁場結合RFIDシステムを使用する無線周波数識別(RFID)技術の情報交換に関する。
【背景技術】
【0003】
RFID技術は、無線周波数(RF)無線通信リンクと、小さな埋め込み集積回路ベースのラベルまたは電子トランスポンダ(「タグ」)とを使用して、物理的なオブジェクトを一意的に識別、およびそれらの移動の追跡を可能にするシステムを作成する。タグは、項目レベルで固有の「RFバーコード」として機能し、このバーコードは、リーダ装置(「質問器」または「リーダ」とも呼ばれる)と通信し、物体の視線走査またはシンギュレーションを必要としない。タグを「読み取る」動作とは、RFIDリーダ電子装置が、近接配置されたタグに質問メッセージを送信し、応答信号を受信することである。
【0004】
埋め込まれたタグは一般的に「受動的」である。即ちタグは電池を持たず、代わりに、リーダ装置のRF質問フィールドによって全体に電力供給される。現在の受動タグの特徴の多くは、本発明者の1人によって米国特許第5523749号および第5793305号に記載されており、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0005】
RFIDシステムは、一般的にリーダ装置とタグの2つの主要タイプのコンポーネントを含む。タグは一般的に、集積回路(「IC」)チップと、可撓性のプラスチックまたは紙基板上に搭載されたアンテナとを含む小型のラベル状装置組立体であり、無線エアインターフェースチャネルを介して、リーダ装置が生成・送信するRF質問信号に応答することができる。タグは、リーダからのRF質問信号に対して戻される返信信号を生成するように構成されている。応答信号は、タグ内に、または(例えば、インターネット上の)クラウド内に遠隔的に保存された識別情報または他のデータを、リーダ装置に伝達するように変調されている。本明細書で使用される「クラウド」という用語は、すべてのリモートデータストレージの構成を広く包含する。RFIDシステムには、多くの異なるタイプがあり、多くの異なる様々な用途で使用され、異なるエアインターフェースおよびデータ通信プロトコルを実装している。
【0006】
用途によっては、単一の質問セッションで、(異なる製品に接続された)複数のタグを質問する(読み取る)ために、RFIDリーダが必要になる場合がある。例えば、在庫管理としての用途が挙げられ、この場合、タグ付けされた複数の製品からある程度離れた位置にリーダを配置し、リーダによって生成されブロードキャストされた質問信号が実質的に同時に複数のタグに到達する。このようなマルチタグ読取環境では、異なるタグが質問信号に同時に応答する可能性があるため、それら戻りの返信信号が衝突(互いに干渉)し、リーダがタグを正常に読み取ることができなくなる可能性がある。マルチタグ読取環境における前述の問題を克服するために、いわゆる衝突防止通信プロトコルを使用するRFIDシステムがある。前記プロトコルによって、衝突発生の可能性の最小化、または検出された衝突からの回復が可能となり、リーダがタグ群全体を正常に読み取ることができる。
【0007】
リーダがタグに非常に近く、本質的に単一タグ読取環境となる用途では、衝突または信号干渉の危険性は非常に低い。したがって、このような用途で利用される通信プロトコルは、衝突防止機能を有さないか、または非常に弱い衝突防止機能を有する。前記プロトコルの一例は、近距離無線通信(「NFC」)プロトコルであり、このプロトコルでは、リーダは、一般的に、タグから数センチメートル未満の距離に配置される。
【0008】
しかし、NFCプロトコルでは、タグ-リーダ間通信は、リーダによって発行されタグに送信されるコマンドに応答して行われる。このような通信プロトコルは、「コマンド制御型」プロトコルと呼ばれる。
【0009】
これに対して、リーダがコマンドを送信する必要がないプロトコルもある。代わりに、質問信号がタグに電力を供給し、タグの回路によってプロトコルが検出されると、タグは質問器のコマンドを待つことなく返信信号を返す。このようなプロトコルは、「コマンドレス」プロトコルと呼ばれる。
【0010】
RFIDシステムは一般的に、以下の3つの周波数依存カテゴリに分けることができる。(1)低周波数(「LF」)帯(125 kHz~134 kHz)で動作するシステム。(2)高周波数(「HF」)帯(3 MHz~30 MHz)で動作するシステム。(3)超高周波数(「UHF」)帯(860 MHz~960 MHz)で動作するシステム。各カテゴリはそれぞれ独自の特性を持ち、RFIDシステム設計者に異なる技術的課題を課している。しかし、現在、RFID技術の技術分野および使用事例のほとんどは、HFおよびUHFカテゴリにあり、それぞれ異なる設計上の制約を課している。例えば、HF周波数帯で動作するタグは一般的に、マルチターンループ型の磁気H場応答アンテナを必要とする一方、UHF帯で動作するタグは一般的には、電気E場応答ダイポール型アンテナを使用する。
【0011】
HFおよびUHF RFIDシステム間の別の顕著な特徴は、リーダと受動タグとの間のエネルギ伝達が行われる方法である。例えば、HF帯で動作するRFIDシステムでは、エネルギ伝達は全体的に、近接タグアンテナコイル[ループ]を通過する磁気H場及びそれに付随する磁束線によって、RFトランスの動作による誘導結合によって行われる。その結果、トランスポンダ給電とデータ交換の両方のエネルギ結合が、比較的短い距離で無線周波数信号が非常に急速に減衰する、高度に局所化された近傍界を介して発生する。H場技術の内在的な近傍界特性のため、HFシステムの質問およびタグ応答信号は、意図されたカバー・エリアを越えると非常に急速に消滅する。その結果、周囲の環境効果および変動がHFシステム性能に与える影響は、はるかに小さくなり、非常に堅牢なタグ読取特性が得られる。
【0012】
一方、UHF帯で動作するRFIDシステムは、RFIDリーダアンテナから輻射され、自由空間を長距離伝播する、電磁波の遠方界無線伝播のエネルギ伝達およびデータ通信機構により動作し、このようなRFIDシステムに長距離性能を与えている。ワット/m2 iの単位で測定される実際の電力は、E×Hポインティング・ベクトルと、輻射されたリーダ電力を調整して任意の読取ゾーンのサイズを確立・画定するという概念によって伝播波で伝達される。タグデータ応答通信は、入射するRF電力の少量を変調された後方散乱電波として反射することにより行われ、通信プロトコル制御信号および識別情報をタグから離れたリーダに伝達する。HFシステムとは異なり、UHFシステムは環境的なマルチパス伝播の問題を抱えている。
【0013】
UHFリーダアンテナから発せられる輻射電力を増加させると、広範囲にわたって様々な異なる物理的な物体に配置されたタグを含むより大きな3次元空間をより照らし出すことになる。アンテナからの輻射電力が大きいほど、リーダとタグとの間の到達可能な電力および通信距離は大きくなる。
【0014】
このような輻射されたUHF電磁波において、伝播されたエネルギは、緩やかな 1/R2 減衰則(ここで、Rは、リーダのアンテナからタグまでの距離である)で比較的ゆっくりと分散し、消散する。その結果、より均一に拡散されたUHFリーダのエネルギは、数メートルの距離にわたって、受動RFIDタグに電力を供給し、それらと通信することができる。到達可能な読取ゾーンの範囲およびカバレージはRF電力レベルに比例するため、輻射電力は高くなるほど読取ゾーンが大きくなり、タグの有効電力および通信距離が実質的に増加する。
【0015】
対照的に、本質的に短距離磁場(「H場」)誘導結合HF RFIDシステムでは、タグへの電力供給およびタグ-リーダ間通信は、結合RF(「RFトランス」)構成であると考えられ、この構成において概念的トランスの一次巻線はリーダアンテナ結合器コイルを含み、概念的トランスの二次巻線はタグのコイルを含む。磁束線結合のタグ負荷変調による「空気結合」RFトランスの二次巻線におけるインピーダンスの変化は、リーダアンテナ結合器コイル内でEMFを返す小さな情報およびデータに変換され、小信号の摂動がリーダ内のRF受信機回路によって適正に感知され、復号される。
【0016】
リーダのアンテナ結合器コイルを介してRF電流を駆動すると、非常に局所化された磁場が生じ、当該磁場の強度はアンペア/メートル(A/m)の単位で電流に直接比例する。その局所磁場に付随する磁束は、局所表面エリアにわたる磁場を統合し、近接タグコイルを通過する磁場の総量を考慮する際の適切な測定基準である。タグコイルに誘起される電圧は、(i)囲まれたエリアを通過する磁束線の数、及び(ii)タグコイルを構成するループの数に比例する。これは、相互インダクタンスおよび付随する結合係数を有する2つの近接コイル間の従来どおりのトランス動作である。
【0017】
このような磁気エネルギ交換構成の重要な特性の1つは、リーダによって提供される三次元場のカバレージの空間的広がりにある。これらの構成では、三次元場のカバレージは、主に、リーダのアンテナ結合器コイルの外形および寸法サイズによって決定される。物理的に囲まれたコイル境界内では、横方向の磁場と磁束は大きさが一定である。しかし、これらの囲まれたコイルエリアの境界を超えると、磁場の大きさは、非常に急峻な逆三乗則1/R3 の関係に従って、アンテナからの距離Rとともに急速に減衰する。その結果、アンテナコイルのRF電流を増加させることによってリーダのアンテナの磁場強度を徐々に変化させても、質問距離のカバレージは目に見えて変化せず、拡大しない。代わりに、質問距離のカバレージは、主にタグの活性化磁場強度閾値の大きさに依存する。
【0018】
HF磁場の別の顕著な特徴は、タグが取り付けられる多くのアイテムに付随する液体および損失誘電物質の有害な影響に対する耐性および免疫性である。これらの堅牢な環境耐性特性は、この点で読取性能が制約されたUHF RFIDシステムとは対照的である。
【0019】
従って、上述したように、輻射遠方界UHF RFIDシステムと誘導近傍界磁気H場結合HF RFIDシステムとの間には重要な動作上の差異が存在する。しかし、RFIDのHFシステムカテゴリ内には、さらなる下位技術として、超短距離NFC識別システムがこれまでに特定されている。この下位区分は、現在広く普及しているスマートフォンを中心としたもので、数センチ以内のタグしか読み取れない、消費者用電子ラベル読取装置である。これらのシステムは、HF帯にある単一の13.56 MHzキャリア周波数で動作する周知のNFC通信プロトコルを使用する。特に、今日のスマートフォンやその他のRFID対応の消費者向け装置は、UHFタグ用のUHFリーダを採用していない。
【0020】
HF帯の通信プロトコル、例えば超短距離NFCプロトコルを使用するモードと、UHF帯の第二の通信プロトコルを使用するモードの2つの動作モードを有する多周波数受動タグが知られている。しかしながら、非常に異なるキャリア周波数の使用を含む、HFおよびUHFシステムの要件における基本的な相違のため、このような従来技術のタグは、デュアルアンテナおよび複雑な特定用途向け集積回路(「ASIC」)を利用し、ASICおよびタグ全体の両方を大きく高価なものにする。その結果、そのようなタグは、超低コストの用途には有用ではなく、何千億もの、さらには世界中の何兆ものアイテムを一意的に識別する必要がある場合には有用ではない。
【0021】
既存の異なるRFIDシステムアーキテクチャおよびプロトコルにもかかわらず、2つの異なるモードでのエアインタフェースプロトコル動作を伴うデュアル特性を有する受動的な低コストタグが求められており、1つのモードでは、タグが1つの通信プロトコルを使用する質問器によって読取可能であり、あるいは 同一のゾーン(地理的/管轄区域または場所) において別のプロトコルで動作する別の質問器によって読取可能であり、両方のプロトコルが実質的に同じキャリア周波数で動作する、受動的な低コストタグが求められている。
【0022】
さらに、2つの異なるモードでのエアインタフェースプロトコル動作を伴うデュアル特性を有する受動的な低コストタグが求められており、1つのモードでは、タグが近接範囲の質問器によって読み取られることが可能であり、あるいは同一ゾーン(地理的/管轄区域または場所)において、非近接(広い)範囲のタグを読取可能な別のマルチタグ読取プロトコルによって動作する別の質問器によって読取可能であり、実質的に同じキャリア周波数を使用する、受動的な低コストタグが求められている。
【0023】
さらに、2つの異なるモードでのエアインタフェースプロトコル動作を伴うデュアル特性を有する受動的な低コストタグが求められており、1つのモードでは、タグが近接範囲の質問器によってコマンド制御型プロトコルで読取可能であり、あるいは同一ゾーン(地理的/管轄区域または場所)において別のマルチタグ読取プロトコルであって、堅牢な衝突防止機能を有し、非近接(広い)範囲でタグを読取可能な別のマルチタグ読取プロトコルによって動作する別の質問器によって読取可能であり、両方のプロトコルが実質的に同じキャリア周波数を利用する、受動的な低コストタグが求められている。
【0024】
さらに、2つの異なるモードでのエアインタフェースプロトコル動作を伴うデュアル特性を有する受動的な低コストタグが求められており、1つのモードでは、タグが近接範囲の質問器によってコマンド制御型プロトコルで読取可能であり、あるいは同一ゾーン(地理的/管轄区域または場所)において別のマルチタグ読取プロトコルであって、堅牢な衝突防止機能を有し、非近接(広い)範囲でタグを読取可能なコマンドレスマルチタグ読み出しプロトコルによって動作する別の質問器によって読取可能であり、両方のプロトコルが実質的に同じキャリア周波数を利用する、受動的な低コストタグが求められている。
【0025】
さらに、2つの異なるモードでのエアインタフェースプロトコル動作を伴うデュアル特性を有する受動的な低コストタグが求められており、1つのモードでは、タグが近接範囲の質問器によってNFC型プロトコルで読取可能であり、あるいは同一ゾーン(地理的/管轄区域または場所)において別のマルチタグ読取プロトコルであって、堅牢な衝突防止機能を有し、非近接(広い)範囲でタグを読取可能なコマンドレスマルチタグ読み出しプロトコルによって動作する別の質問器によって読取可能であり、両方のプロトコルが実質的に13.56 MHz等同じキャリア周波数を利用する、受動的な低コストタグが求められている。
【0026】
さらに、単一のマルチターンループアンテナを使用して、実質的に同じキャリア周波数で動作し、異なる通信プロトコルを利用する異なる質問器と通信を行う、デュアルモードの低コストな受動タグが求められている。
【0027】
さらに、本発明のデュアルモード受動タグを利用するRFIDシステムであって、軸方向に集束された磁場を有する指向性質問器アンテナを含む改良された質問器回路を使用して、質問器対タグ読取範囲が増加されたRFIDシステムが求められている。
【0028】
RFID業界は、非効率的な複合的なマージン、断片的なソリューション、同期されていないコストおよび価値の提案で溢れている。本発明の目的は、特定の技術および市場分野において、長きにわたり未解決のままとなり、他者が解決できなかったと認識される問題に対処し、先行技術の欠陥を克服することである。
【0029】
デュアル特性を有し、機能が改善され、低コストの本発明のRFIDタグ技術は、規模に関わらずすべてのブランドおよび小売業者を支援し、顧客の保持(オンラインおよびオフラインの両方)を可能にするとともに、直接的な双方向の消費者相互作用およびユーザ体験を促進し、製品認証、個人化された[プル]広告、マニュアル、クーポンなどの積極的な受信を可能にする。さらに、サプライチェーン、医薬品、物流、法執行、決済の各業界にわたって直接恩恵をもたらす。
【発明の概要】
【0030】
本発明は、RFIDタグまたはインレーラベル装置が取り付けられた、または埋め込まれた少なくとも1つの物体を走査および読み取るための単一周波数磁場誘導結合RFIDシステムを提供し、各物体に固有の識別情報を与える。本発明はさらに、2つの異なるモードのエアインタフェースプロトコル動作を有するRFIDタグを提供する。前記タグは、NFCプロトコル互換スマートフォンまたは同様に機能する装置などのコマンド制御型プロトコルを利用する装置によって近距離範囲で読取可能である。あるいは、小売店のアイテム、倉庫保管、税関および物流作業におけるアイテムレベルで、非常に大きな質問距離にわたって、高速の在庫管理を可能にする効率的な高速(速い)衝突防止機能をサポートすることが可能な異なるプロトコルを利用するRFIDリーダによって読取可能である。両方のプロトコルは、実質的に同一のキャリア周波数を利用する。
【0031】
好ましい一実施形態では、キャリア周波数は13.56 MHzである。
【0032】
一実施形態では、高速衝突防止プロトコルはコマンドレスプロトコルである。
【0033】
一実施形態では、本発明は、従来の高性能長距離HF RFIDシステムのこれまで分離されていた並列の分野を、主に現在のスマートフォンベースの密接に関連する超短距離NFC技術と統合して、これらの用途の両方で最適に動作可能な単一のASICチップを共有する単一のデュアルモードHFタグアーキテクチャに統合する。
【0034】
本発明の一実施形態では、受動単一キャリア周波数RFIDタグは、2つの異なる代替的な動作モードを有する。モード_1は、読取が数センチメートル未満の消費者または個人(携帯電話または同様のデバイスを使用)用の場合(近接タッチ読取または単一タグの読取と呼ばれる)。モード_2は、高速な衝突防止機能を必要とする長距離のマルチタグ読取用途に対応し、多くの在庫/サプライチェーン(物流)および小売店ベースのPOSへの応用/POIへの応用を実現する。好ましい一実施形態では、両方のプロトコルエンジンは、単一のASICチップ上に実装され、共通のメモリ、好ましくは読出し専用メモリ、およびチップ製造中に記録される単純な一意的に符号化されたIDを共有する。
【0035】
一実施形態では、タグは、ASICおよびマルチターンループアンテナを含む受動デュアルモードタグであり、2つの代替的な動作モードのそれぞれが、実質的に同じHFキャリア周波数を使用する両方のプロトコルで、異なる通信プロトコルを実装する。
【0036】
さらに、一実施形態では、モードのうちの1つは、スマートフォンおよび他のNFCリーダ装置との後方互換性のあるシームレス動作を保証するための既存のISO/IEC 14443Aスタイルプロトコルを使用するデフォルト動作モードであり、他のモードは、より長い読取距離アイテムの在庫管理または他のサプライチェーンまたはマルチ読取関連のデータ取り込みニーズのために予約された低電力消費高速衝突防止プロトコルを使用している。後者のモードは、より高い電力の店内(サプライチェーンリーダ)から発せられる特別なプロトコルモードスイッチ信号によって起動される。このように、サプライチェーンの連続性を消費者レベルまで拡大することで、広く普及しているスマートフォンやその他のNFCリーダ装置を介して製品と直接対話することが可能になる。
【0037】
一実施形態では、タグの高速衝突防止モードは、例えば、在庫管理用途、サプライチェーン用途、販売時点情報管理(POS)用途等、高速でタグを捕捉する能力が必要とされる場合、適切な固有の通信モード切替トリガイベントを発生させるリーダによって呼び出される。その他の場合では、タグは、そのネイティブNFCデータ交換フォーマットまたはNDEF準拠のNFC応答モードにデフォルト設定することができ、スマートフォン、PDA、または同様のNFC対応の可搬型消費者装置などのタグリーダによって使用される。その結果、可搬装置は、未知のタグや互換性のないタグ応答にさらされることはない。スマートフォン、PDA、または類似するNFC対応の可搬型消費者装置によって質問されると、タグは、標準化されたNFCフォーラムNDEF準拠メッセージで応答する。
【0038】
一実施形態では、必要最低限のモード_1において、タグは、スマートフォンなどの低エネルギハンドセットからの弱いRFフィールドによってタグが励起されたときに、従来のNFCタグの動作およびデータフィールドフォーマットをエミュレートする。また、タグに、従来のHFリーダからの質問フィールドが照射され、強く励起されたときに、同時に存在する大きなタグ群を高速でマルチ読取を行い在庫管理をすることが求められる用途において、タグは自動的に高性能高速衝突防止シグナリングモードに変化する。モード遷移トリガは、電力を供給するRFフィールド強度閾値であってもよいしリーダの連続波(「CW」)RF電力フィールドにおける一意的に定義されたブレーク(中断ディップまたはギャップ)であってもよいし、タグ回路が容易に感知し適切に応答することができる、他の特徴的で容易に実装可能なモード選択通信手段であってもよい。
【0039】
一実施形態では、タグは、在庫管理リーダから発せられる明示的かつ一意的な目的のモード切替トリガ信号に反応して、そのデフォルトNFCモードから一時的に高性能高速衝突防止モードに移行し、その後、ベースレベルのNFC機能に戻る。別の代替的な実施形態では、タグは、高性能高速衝突防止モードでロックされたままになってもよい。
【0040】
一実施形態では、本発明は、高性能高速衝突防止モードで動作している際に、比較的小さな寸法のタグを有するタグ付きアイテムの大きな集合体を読み出す効率的な在庫管理機能を得やすくするための、タグを照射し電力を供給する通信フィールドを非常に大きなカバレージ距離にわたって投射可能な指向性アンテナを有する手持ち式リーダを提供する。
【0041】
好ましい一実施形態では、タグのASICアーキテクチャは、工場でのプログラムでハードコードされ、フィールドプログラムできない固有のID番号(「UID」)に依存しており、これにより、UIDが安全となり、偽造が困難になる。このような使用状況において、UID番号はタグ製造者のデータベースにのみ検証用として関連付けられる。データベースは、製造業者の社内データベースであってもよいし、「クラウド」データベースであってもよい。ブランドオーナーが、灰色市場の商品メーカーや不正な並行市場チャネルにより厳しい競争と経済的損失に直面し、偽造防止の要件が高まるなかで、固有のUIDを製品認証や安全な支払いに使用することができる。
【0042】
さらに、タグの半導体集積回路部品の内部アーキテクチャおよび実装は、タグの回路面積が小さく、ASICチップが非常に低コスト(例えば、米国の1セントよりはるかに低価格)である、必要最低限のアプローチに則している。本発明の1つの目的は、前例のない超低単価で、NFC技術と高性能HF RFID技術との普遍的でシームレスな同時融合および統合を可能にすることである。
【0043】
開示された1つの実施形態では、最小限のエアインターフェースアーキテクチャおよびプロトコル概念により、小さなASICダイサイズが可能になり、超低コストの複合HF/NFC多目的タグが可能になる。一実施形態では、集積回路ダイは、250μm×250μm未満となるように設計される。
【0044】
本発明の一実施形態は、受動RFIDタグであって、
a.質問器からの磁場の無線誘導結合を介して前記受動RFIDタグへの電源供給を可能にする平面マルチターンループアンテナと、
b.集積回路とを備え、前記集積回路は、
i.固有のタグ識別子を格納するメモリと、
ii.前記平面マルチターンループアンテナに動作可能に結合された変調器と、
iii.前記平面マルチターンループアンテナに動作可能に結合された復調器と、
iv.前記復調器に動作可能に結合され、前記質問信号の通信プロトコルを判定するように構成された検出器と、
v.前記検出器に動作可能に結合され、前記受動RFIDタグを第一の動作モードおよび第二の動作モードで動作させるように構成されたコントローラとを備え、
前記第一の動作モードは、ある場所に配置された前記受動RFIDタグが、第一の周波数を有する第一のキャリア信号を利用する前記平面マルチターンループアンテナを介して、第一の通信プロトコルを使用する第一の質問器と通信することを可能にし、
前記第二の動作モードは、配置された前記受動RFIDタグが、前記平面マルチターンループアンテナを介して、第二の周波数を有する第二のキャリア信号を利用して、第二の通信プロトコルを使用する第二の質問器と通信することを可能にし、前記第一の周波数は前記第二の周波数と実質的に同一である。本明細書および本明細書全体を通して使用されるように、「実質的に同一」という用語は、その範囲内に、同一である第一および第二の周波数も含む。
【0045】
本発明の一実施形態では、前記受動RFIDタグの前記第一の周波数は、HF周波数であり、例えば13.56 MHzである。
【0046】
本発明の一実施形態では、前記受動RFIDタグの前記第一の通信プロトコルは、NFC型プロトコルである。
【0047】
本発明の一実施形態では、前記受動RFIDタグの前記第一の通信プロトコルは、短通信範囲コマンド制御型プロトコルである。
【0048】
本発明の一実施形態では、前記受動RFIDタグの前記第二の通信プロトコルは、前記第一の通信プロトコルの通信範囲よりも大きい通信範囲を有するコマンドレス非同期プロトコルであり、前記コントローラは、ランダムホールドオフ・再送信スキームを介して前記第二の質問器への前記固有のタグ識別子の送信を可能にする。
【0049】
本発明の一実施形態では、前記ランダムホールドオフ・再送信スキームは、前記固有タグ識別子を約0.2%~約4%の平均デューティ比で擬似ランダム方式で繰り返し送信することを含む。本発明の一実施形態では、前記ランダムホールドオフ・再送信スキームは、約64 Kbits/秒~256 Kbits/秒のデータレートで、擬似ランダム方式で前記固有タグ識別子を繰り返し送信することを含む。
【0050】
本発明の一実施形態では、前記固有のタグ識別子の前記送信は、パルス位置符号化技術を使用して符号化されたデータを含む。
【0051】
本発明の一実施形態では、前記受動RFIDタグの前記第一の動作モードは、デフォルト動作モードであり、前記コントローラは、前記タグのプロトコル検出器がトリガ(トリガイベント)を検出した際に、前記デフォルト動作モードから前記第二の動作モードに切り替えるように構成される。
【0052】
前記受動RFIDタグの一実施形態では、前記第二のキャリア信号は連続波キャリア信号であり、前記トリガは、所定の閾値より大きい前記磁場励起のレベルである。
【0053】
前記受動RFIDタグの一実施形態では、前記第二のキャリア信号は連続波キャリア信号であり、前記トリガは、(a)前記第二の連続波キャリア信号の短い中断、および(b)前記第二の連続波キャリア信号の変調ディップ、のうちの1つである。
【0054】
前記受動RFIDタグの一実施形態では、前記タグの前記コントローラは、前記タグが所定の期間にわたって前記第二の動作モードに留まることを可能にするように構成される。前記受動RFIDタグの一実施形態では、前記所定の期間は、一時的な持続時間と恒久的な持続時間とを含む期間のグループから選択される。
【0055】
前記受動RFIDタグの一実施形態では、前記固有のタグ識別子は、前記受動RFIDタグの製造中に前記タグの前記メモリ内にハードコードされる。前記受動RFIDタグの一実施形態では、前記メモリは、金属マスク、レーザヒューズ、およびワンタイムプログラマブルアンチヒューズ読み出し専用メモリ、または読み出し専用メモリ内のICチップをハードコーディングする当業者に公知のその他の方法のうちの少なくとも1つを含む。
【0056】
本発明の一実施形態は、受動RFIDタグを使用する方法であって、
(a)受動RFIDタグを提供するステップであって、前記受動RFIDタグは、
(i)平面マルチターンループアンテナと、
(ii)集積回路とを備え、前記集積回路は、
固有のタグ識別子を格納するメモリと、
前記平面マルチターンループアンテナに動作可能に結合された変調器と、
前記平面マルチターンループアンテナに動作可能に結合された復調器と、
前記復調器に動作可能に結合された検出器と、
前記検出器に動作可能に結合され、前記受動RFIDタグを第一の動作モードおよび第二の動作モードで動作させるように構成されたコントローラとを備え、前記第一の動作モードは、ある場所に配置された前記受動RFIDタグが、第一の周波数を有する第一のキャリア信号を利用する前記平面マルチターンループアンテナを介して、第一の通信プロトコルを使用する第一の質問器と通信することを可能にし、
前記第二の動作モードは、配置された前記受動RFIDタグが、前記平面マルチターンループアンテナを介して、第二の周波数を有する第二のキャリア信号を利用して、第二の通信プロトコルを使用する第二の質問器と通信することを可能にし、
前記第一の周波数は前記第二の周波数と実質的に同一であり、
(b)前記受動RFIDタグに 質問信号を送信するステップと、
(c)前記平面マルチループアンテナを用いて、前記質問信号の磁場を無線誘導結合して前記受動RFIDタグに電力を供給するステップと、
(d)前記検出器を用いて、前記質問信号の通信プロトコルを判定するステップであって、前記判定された通信プロトコルは、前記第一の通信プロトコルおよび前記第二の通信プロトコルのうちの1つである、ステップと、
(e)前記コントローラを用いて、前記判定された通信プロトコルに対応する動作モードで前記受動RFIDタグを動作させるステップであって、前記動作モードは、前記第一の動作モードおよび前記第二の動作モードのうちの1つである、ステップと、
(f)前記質問信号に応答して前記判定された通信プロトコルを使用して前記タグ識別子を前記マルチターンループアンテナを介して無線通信するステップとを備える。
【0057】
本発明の方法の一実施形態では、前記判定された通信プロトコルは、HF周波数範囲、例えば約13.56 MHzの前記第一のキャリア周波数を有する前記第一の通信プロトコルである。
【0058】
本発明の方法の一実施形態では、前記第一の通信プロトコルは、NFC型プロトコルである。
【0059】
本発明の方法の一実施形態では、前記判定された通信プロトコルは前記第二の通信プロトコルであり、前記第二の通信プロトコルは、前記第一の通信プロトコルの通信範囲よりも大きい通信範囲を有するコマンドレス非同期プロトコルであり、前記質問信号に応答して前記タグ識別子を無線通信する前記ステップは、ランダムホールドオフ・再送信スキームを介して前記固有のタグ識別子を送信するステップを含む。
【0060】
本発明の方法の一実施形態では、前記ランダムホールドオフ・再送信スキームは、前記固有タグ識別子を約0.2%~約4%の平均デューティ比で擬似ランダム方式で繰り返し送信することを含む。本発明の方法の一実施形態では、前記ランダムホールドオフ・再送信スキームは、約64 Kbits/秒~256 Kbits/秒のデータレートで、擬似ランダム方式で前記固有タグ識別子を繰り返し送信することを含む。
【0061】
一実施形態では、本発明の方法は、パルス位置符号化技術を使用して前記固有のタグ識別子を符号化するステップを含む。
【0062】
本発明の方法の一実施形態では、前記第一の動作モードは、デフォルト動作モードであり、前記コントローラは、前記検出器がトリガを検出した際に、前記受動RFIDタグを、前記デフォルト動作モードから前記第二の動作モードに切り替える。
【0063】
本発明の方法の一実施形態では、前記第二のキャリア信号は連続波キャリア信号であり、前記検出器がトリガを検出する前記ステップは、所定の閾値より大きい前記質問信号の磁場レベルを検出することを含む。
【0064】
本発明の方法の一実施形態では、前記第二のキャリア信号は連続波キャリア信号であり、前記トリガは、(a)前記第二の連続波キャリア信号の短い中断、および(b)前記第二のキャリア信号の変調ディップ、のうちの1つである。
【0065】
本発明の一実施形態において、前記方法は、前記受動RFIDタグを前記第二の動作モードに所定の期間維持するステップをさらに含む。本発明の方法の一実施形態では、前記所定の期間は、一時的な持続時間と恒久的な持続時間とを含む期間のグループから選択される。
【0066】
本発明の方法の一実施形態では、前記固有のタグ識別子は、前記受動RFIDタグの製造中に前記メモリ内にハードコードされる。
【0067】
本発明の方法の一実施形態では、前記メモリは、金属マスク、レーザヒューズ、およびワンタイムプログラマブルアンチヒューズ読み出し専用メモリのうちの少なくとも1つを含む。
【0068】
本発明は、RFIDシステムを包含し、前記RFIDシステムは、
(a)受動RFIDタグを備え、前記受動RFIDタグは、
(i)磁場の無線誘導結合を介して前記受動RFIDタグへの電源供給を可能にする平面マルチターンループアンテナと、
(ii)集積回路とを備え、前記集積回路は、
固有のタグ識別子を格納するメモリと、
前記平面マルチターンループアンテナに動作可能に結合された変調器と、
前記平面マルチターンループアンテナに動作可能に結合された復調器と、
前記復調器に動作可能に結合され、前記質問信号の通信プロトコルを判定するように構成された検出器と、
前記検出器に動作可能に結合され、前記受動RFIDタグを第一の動作モードおよび第二の動作モードで動作させるように構成されたコントローラとを備え、
前記第一の動作モードは、ある場所に配置された前記受動RFIDタグが、前記平面マルチターンループアンテナを介して、第一の周波数を有する第一のキャリア信号を利用する第一の通信プロトコルを使用して通信することを可能にし、
前記第二の動作モードは、前記場所に配置された前記受動RFIDタグが、第二の周波数を有する第二のキャリア信号を利用する第二の通信プロトコルを使用して、前記平面マルチターンループアンテナを介して通信することを可能にし、
前記第一の周波数は前記第二の周波数と実質的に同一であり、
b.前記第一の通信プロトコルおよび前記第二の通信プロトコルのうちの1つである通信プロトコルを用いて前記受動RFIDタグと通信する第一の質問器と、を備える。
【0069】
本発明の前記RFIDシステムの一実施形態では、前記第一の質問器の前記通信プロトコルは、例えば13.56 MHz等のHF周波数範囲での通信を可能にする。
【0070】
本発明の前記RFIDシステムの一実施形態では、前記第一の質問器の前記通信プロトコルは前記第一の通信プロトコルであり、前記第一の通信プロトコルはNFC型プロトコルである。
【0071】
本発明の前記RFIDシステムの一実施形態では、前記第一の質問器の前記通信プロトコルは前記第一の通信プロトコルであり、前記第一の通信プロトコルは短通信範囲コマンド制御型プロトコルである。
【0072】
本発明の前記RFIDシステムの一実施形態では、前記第二の通信プロトコルは、前記第一の通信プロトコルの通信範囲よりも大きい通信範囲を有し、前記第一の質問器の前記通信プロトコルは前記第二の通信プロトコルである。
【0073】
本発明の前記RFIDシステムの一実施形態では、前記第一の質問器の前記通信プロトコルは、コマンドレス非同期プロトコルであり、前記受動RFIDタグの前記コントローラは、前記受動RFIDタグの前記コントローラは、前記固有のタグ識別子を、ランダムホールドオフ・再送信スキームを介して前記第一の質問器に送信することを可能にする。本発明の前記RFIDシステムの一実施形態では、前記ランダムホールドオフ・再送信スキームは、前記固有タグ識別子を約0.2%~約4%の平均デューティ比で擬似ランダム方式で繰り返し送信することを含む。本発明の前記RFIDシステムの一実施形態では、前記ランダムホールドオフ・再送信スキームは、約64 Kbits/秒~256 Kbits/秒のデータレートで、擬似ランダム方式で前記固有タグ識別子を繰り返し送信することを含む。
【0074】
本発明の前記RFIDシステムの一実施形態では、前記固有のタグ識別子の前記送信は、パルス位置符号化技術を使用して符号化されたデータを含む。
【0075】
本発明の前記RFIDシステムの一実施形態では、前記第一の質問器は、完全自動化の用途で使用するように構成される。
【0076】
本発明の前記RFIDシステムの一実施形態では、前記第一の動作モードは、デフォルト動作モードであり、前記コントローラは、前記検出器が前記第一の質問器からのトリガを検出した際に、前記デフォルト動作モードから前記第二の動作モードに切り替えるように構成されている。
【0077】
本発明の前記RFIDシステムの一実施形態では、前記第二のキャリア信号は連続波キャリア信号であり、前記トリガは、所定の閾値より大きい前記磁場励起のレベルである。
【0078】
本発明の前記RFIDシステムの一実施形態では、前記第二のキャリア信号は連続波キャリア信号であり、前記トリガは、(a)前記第二の連続波キャリア信号の短い中断、および(b)前記第二の連続波キャリア信号の変調ディップ、のうちの1つである。
【0079】
本発明の前記RFIDシステムの一実施形態では、前記タグコントローラは、前記受動RFIDタグが所定の期間にわたって前記第二の動作モードに留まることを可能にするように構成される。本発明の前記RFIDシステムの一実施形態では、前記所定の期間は、一時的な持続時間と恒久的な持続時間とを含む期間のグループから選択される。
【0080】
本発明の前記RFIDシステムの一実施形態では、前記固有のタグ識別子は、前記受動RFIDタグの製造中に前記タグの前記メモリ内にハードコードされる。
【0081】
本発明の前記RFIDシステムの一実施形態では、メモリは、金属マスク、レーザヒューズ、およびワンタイムプログラマブルアンチヒューズ読み出し専用メモリのうちの少なくとも1つを含む。
【0082】
本発明の前記RFIDシステムの一実施形態では、第一の質問器は、指向性アンテナを含む可搬手持ち式質問器であり、指向性アンテナは、約40~250の範囲の透磁率Muを有するフェライトロッドコアに巻かれたソレノイドコイルを含む。
【0083】
本発明の前記RFIDシステムの一実施形態では、前記フェライトロッドは、直径Dおよび長さLの円筒であり、前記直径Dおよび前記長さLのうちの少なくとも1つは、前記指向性アンテナが前記フェライトロッドから離れる方向に、少なくとも約0.15アンペア/メートルの磁場を生成できるように増加される。
【0084】
本発明の前記RFIDシステムの一実施形態では、前記第一の質問器は、(a)インダクタンス値Lを有する磁気コアソレノイドループアンテナと、(b)前記磁気コアソレノイドループアンテナと直列の整合ネットワークであって、実効キャパシタンス値Cを有する整合ネットワークと、を備え、前記第一の質問器の前記第二の通信プロトコルの前記第二のキャリア信号は、HF周波数範囲の連続波キャリア信号であり、前記整合ネットワークおよび前記磁気コアソレノイドループアンテナは、前記第二の周波数と実質的に等しい共振周波数を有する回路を形成する。
【0085】
本発明の一実施形態では、前記RFIDシステムはさらに、前記第一の通信プロトコルを使用して前記受動RFIDタグと通信する第二の質問器をさらに備え、前記第一の通信プロトコルは、コマンド制御型プロトコルである。
【0086】
本発明の前記RFIDシステムの一実施形態では、前記第一の通信プロトコルの前記第一のキャリア信号の前記第一の周波数は、約13.56 MHzである。
【0087】
本発明の前記RFIDシステムの一実施形態では、前記第一の通信プロトコルは、NFC型プロトコルである。
【0088】
前記受動RFIDタグはさらに、異なる(第二の)周波数帯で動作する第三のRFID通信プロトコルを使用して通信してもよい。本発明の受動RFIDタグは、第一のアンテナを使用して、実質的に同一のキャリア周波数または同一の周波数帯(「第一の周波数帯」)で動作する第一および第二のプロトコルで通信する一方、当該RFIDタグが、別の(第二の)アンテナを使用して第二の周波数帯で動作する第三のプロトコルで通信するということである。例えば、受動RFIDタグは、第一のアンテナを使用して、HF周波数帯において第一および第二のプロトコルで通信することができるが、タグはさらに、UHF帯内またはLF帯における第三のRFID通信プロトコルを介して通信するための回路および第二のアンテナを含んでもよい。例えば、第三のプロトコルは、参照により本明細書に組み込まれるEPCglobalクラス1ジェネレーション2通信規格のようなEPCglobalまたはISOの規格のいずれかに適合する任意のRFIDプロトコルであってもよく、または特に注目すべきは、UHF周波数帯での動作のために、周波数非依存モード2の単方向コマンドレス自走RFIDプロトコルが追加的に再展開されたことであり、HFシステムで使用されている速度よりも高速な読取速度で、非常に長い範囲にわたって複数のアイテムをマルチ読取する環境でRFIDタグを読み取るのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
添付の図面において、各図の同様の参照番号は同一のまたは機能的に類似する要素を指しており、当該添付の図面は以下の詳細な説明とともに、本明細書に組み込まれ、かつ本明細書の一部を形成し、請求項に記載の発明を含む概念の実施形態をさらに例示し、これら実施形態の様々な原理および利点を説明するものである。
【0090】
図1】本発明のいくつかの実施形態によるRFIDシステムを示す図である。
【0091】
図2】本発明のいくつかの実施形態による受動的なデュアルモードタグのブロック図である。
【0092】
図3】本発明のいくつかの実施形態によるRFIDタグの観点からのプロトコルのフロー図である。
【0093】
図4】本発明のいくつかの実施形態によるマルチタグ環境における非同期プロトコル動作を、リーダの観点から経時的に示す図である。
【0094】
図5】本発明のいくつかの実施形態によるパルス位置タグデータ符号化スキームを示す図である。
【0095】
図6】本発明のいくつかの実施形態によるHF RFIDシステムの例示的な回路モデルである。
【0096】
図7】本発明のいくつかの実施形態による複数のRFIDタグに向かって指向性をもって突出するソレノイドワンドアンテナから輻射される磁束線の概念図である。
【0097】
図8】本発明のいくつかの実施形態による磁気コアソレノイドループアンテナの概略図および回路図である。
【0098】
当業者であれば、図中の要素は簡略化および明瞭化のために図示されており、必ずしも縮尺通りに描かれていないことを理解するであろう。例えば、図中のいくつかの要素の寸法は、本発明の実施形態の理解を向上させるべく、他の要素に対して誇張されていることもある。
【0099】
装置および方法のコンポーネントは、従来の記号によって適宜図中に表されており、本明細書の記載から恩恵を受ける当業者であれば容易に明確となる詳細で、開示内容が不明瞭とならないように本発明の実施形態を理解するうえで関連する特定の詳細のみを示す。
【詳細な説明】
【0100】
本発明の受動デュアルモードRFIDタグおよびシステムのいくつかの実施形態を、以下の詳細な説明において開示する。
【0101】
RFIDシステムは ホスト(バックエンドコンピュータネットワーク、LANS、WANS、サーバ、データベース、インターネットクラウド等)と、様々なRFコンポーネントで構成されている。RFコンポーネントは、質問器(リーダ装置)と一つ以上の受動タグとを含む。
【0102】
図1は、本発明のRFIDシステムの一実施形態を示す。RFIDシステム100は、質問ゾーン12内に配置された受動デュアルモードタグ2を含む。図はさらに、タグ2に含まれる情報を読み取るための2つの質問器AおよびB(それぞれ参照番号4および8によって識別される)を示す。このようにして、タグは、異なる時間に交互に各質問器と通信することができる。図示される質問ゾーンは、両方の質問器が本発明のタグを読み取るように動作可能なエリア、地理的位置、または管轄境界であってもよい。質問器Aは、1つの通信プロトコルを使用して無線リンク6を介して受動デュアルモードタグ2と通信(質問)し、質問器Bは、異なる通信プロトコルを使用して無線リンク10を介して受動デュアルモードタグ2と通信(質問)する。2つの質問器は、異なる時間にタグ2と通信するが、それぞれの通信プロトコルは、同一または略同一のキャリア周波数を使用する。また、両方の通信リンクが双方向性のリンクとして示されているが、本発明は、コマンドレス質問プロトコルを使用することを企図し、タグに電力が供給されて質問信号が検出されると、残りの情報がタグから質問器に向かってのみ流れる。各質問器は、ホストシステムに通信可能に結合されてもよい。例えば、質問器Aは、ホストA(参照番号16)に結合されてもよく、質問器Bは、ホストB、(参照番号14)に結合されてもよい。図は、ホストシステムがゾーン12の外側に配置された場合を示しているが、例えば、ゾーンが管轄区域を指定する場合、一方または両方のホストシステムがゾーン内に配置されてもよい。さらに、2つのホストシステムを組み合わせて単一のホストシステムにすることも可能である。図1にはデュアルモードタグが1つのみ示されているが、これは単に個々のタグの観点からシステムを示すためのものである。実際のアプリケーションでは、タグ2は、他のタグの隣に配置したりできるため、マルチタグ環境で動作する。実際、本発明は、衝突防止機能を含む高性能高速通信プロトコルを使用して複数のタグに質問するリーダの1つを有することを企図する。
【0103】
質問器の目的は、局所化された磁場中に存在するタグと通信し、またRF信号を介して受動タグに電力を供給することである。質問器はホストシステムと通信し、次の処理を行う。1)プロトコル処理、2)受動タグへの電力(エネルギ)の供給、3)タグメモリ識別(ID)情報の読取、4)ホストシステムへのIDメッセージの配信と有効性の保証、5)デュアルモードタグに動作モードを変更するように指示、6)タグ情報の書き込み(任意)。
【0104】
タグは、識別・追跡が望まれる消費者製品などの製品上に配置されるか、または製品内に埋め込まれる。各タグは、工場でプログラムされた固有のID番号および/またはプログラムされたデータを保存する能力を有し、このID情報を質問器に伝達することができる。各タグは、ASICチップなどの集積回路(「IC」)と、アンテナとを含む。タグのASICチップおよびアンテナ設計、ならびに質問器のアンテナ設計では、到達可能な読取範囲および読取の堅牢性等、RFIDシステムの制限パラメータのいくつかが規定される。
【0105】
図2は、本発明の受動デュアルモードタグのブロック図の実施形態を示す図である。タグは、ICチップ202に結合されたアンテナ200を含み、好ましい実施形態では、ICチップ202はASICとして実装される。一実施形態では、タグはHF帯でのみ動作し、アンテナ200はHF帯で動作する平面マルチターンループアンテナである。アンテナは、質問器からの磁場の無線誘導結合を介して、受動RFIDタグへの電源供給を可能にする。
【0106】
ASICチップ202は、いくつかのサブ回路を含む。例えば、アンテナに接続された整流回路を有する電源214を含む。電源214は、質問器(リーダ)によって輻射された誘導結合磁場からエネルギを抽出し、入力信号を整流し、結果として生じるDC電圧を調整して、タグの回路の残りの部分に電力を供給する。図示されていないが、電源はASICチップ202の他のすべての回路に接続されている。ASICチップ202はまた、アンテナ200に動作可能に結合され、リーダから受信した質問信号を処理するための復調器およびデジタル復号器回路206を含む。プロトコル検出器208は、リーダからの入力質問信号の通信プロトコルを判定するために、復調器206に動作可能に接続される。コントローラ210は、検出器208、変調器204、復調器206、およびメモリ212に動作可能に接続されている。メモリ212は、固有タグ識別子(「UID」)、電子製品コード(EPC)番号、または他のデータを保存する。あるいは、UID、電子製品コード(EPC)番号、または他のデータは、ハードコードされた金属マスクまたはレーザヒューズ、またはワンタイムプログラマブル(「OTP」)アンチヒューズROMに含まれてもよく、これらはいずれも、実現に求められるダイエリアが非常に小さい。
【0107】
UID番号の構造は、リーダ、ローカルまたはリモートサーバ、またはクラウド内の関連ルックアップテーブルによって仮想EPCに変換される固有のIDを介してEPC番号スキームをサポートしてもよい。同様に、固有IDは、ウェブサイトURL、または携帯電話等のNFC対応装置内のアプリケーション識別子に関連付けて、ウェブ・ブラウザを起動して詳細な製品情報を潜在的な購入者などに配信することができる。
【0108】
コントローラ210は、モード_1およびモード_2の、2つの動作モードで交互に受動タグを動作させるように構成される。換言すれば、コントローラ210は、2つの異なるRFID通信プロトコルに従ってタグを動作させるように構成された2つのエンジンを備える。モード_1では、タグは、第一のキャリア周波数を利用する平面マルチターンループアンテナを介して、第一の通信プロトコルを使用する第一の質問器と通信することができ、モード_2では、タグは、平面マルチターンループアンテナを介して、第二の通信プロトコルを使用する第二の質問器と通信することができる。2つの通信プロトコルは異なるが、2つの通信プロトコルは同一または略同一のキャリア周波数を使用する。これにより、基礎となるタグ回路を大幅に簡素化でき、単一のアンテナを両動作モードで利用可能となる。
【0109】
本発明の一実施形態では、モード_1のプロトコルはコマンド制御型通信プロトコルであり、モード_2のプロトコルはコマンドレス通信プロトコルである。
【0110】
さらに、モード_1の通信プロトコルは、非常に短距離の通信プロトコルであってもよく、モード_2の通信プロトコルは、衝突防止機能を備えたより長距離(最大で約1メートルの自由フィールド)のマルチタグ通信プロトコルであってもよい。より具体的には、モード_1のプロトコルは、超短距離の同期型、コマンド制御型のプロトコルである簡易NFC規格準拠または互換プロトコルであってもよく、モード_2プロトコルは、衝突防止機能を備えた高性能、マルチタグ、コマンドレス非同期プロトコルであってもよい。
【0111】
1つの好ましい実施形態において、モード_1のプロトコルは、基本的なNFCスマートフォン超短距離プロトコルであり、タグは本質的に既存のNFCフォーラム規格の機能をエミュレートする。このような状況において、モード_1は、NFC対応のモバイルスマートフォンハンドセットまたは同様のPDAリーダ装置によって照射・活性化がおこなわれると、ISO/IEC 14443-Aプロトコルの簡素化された派生変形として動作する。 両方のプロトコルが同一のまたは略同一のキャリア周波数を使用する限り、2つのプロトコルの如何なる変形も可能であり、本発明のデュアルモードタグは、同一ゾーンまたは場所に配置された異なる質問器と交互に通信することができる。
【0112】
質問信号に基づいて、検出器208は、リーダで使用されるプロトコルのタイプを検出し、コントローラに通知することで、タグが正しいプロトコルで動作することを可能にする。図2は、復調器206および検出器を別個のブロックとして示すが、本発明はこれに限定されない。寧ろ、検出器208は、復調器206と結合されてもよく、信号フローにおいて復調器の前に配置されてもよく、または復調器と並列に配置されてもよい。他のブロックを組み合わせて、ハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェアに実装することもできる。本発明のICチップは、シリコン、ヒ化ガリウムなどの公知の半導体材料のいずれか1つを用いて実現することができる。さらに、設計には、ナノシート電界効果トランジスタ技術、薄膜エレクトロニクスASAプリントトランジスタ技術、Pragmatic FlexICプロセス、Nチャネル金属酸化膜半導体(「NMOS」)およびPチャネル金属酸化膜半導体(「PMOS」)の変種を含む相補形金属酸化膜半導体(「CMOS」)技術などの任意の既知の回路技術を使用することができる。回路実装技術は、単結晶CMOS、任意の種類のプリントエレクトロニクス(「PE」)、シリコンまたは他の半導体材料、NMOS、PMOS、CMOS、ナノシート、または任意の他の技術であってよい。好ましい実施形態では、ICダイは、CMOS技術を用いてシリコン内に実装される。
【0113】
1つの好ましい実施形態において、モード_2のプロトコルは、確率過程に基づく衝突防止プロトコルである。すなわち、IDコードの送信はランダムな間隔で行われる。タグは、リーダの磁気エネルギフィールドに入り、質問信号のプロトコルを検出すると、直ちに送信を開始する。プロトコルがモード_2のプロトコルであることを示す1つの指標は、リーダの連続波(「CW」)における電力RF電界強度閾値、リーダのCW電力フィールドにおける一意的に定義されたブレーク、中断ディップ、またはギャップ、あるいは、タグ回路が容易に感知して適切に応答することができる、特徴的で容易に実装できるモード識別通信手段であってもよい。このようなプロトコルでは、リーダの質問信号にはコマンドが含まれないため、プロトコルはコマンドレスと見なされる。このようなプロトコルによれば、タグが送信を開始すると、そのメッセージはタグが通電されている限り、ランダムな時間間隔で繰り返される。適切な平均デューティ比を選択することによって、衝突調停は、どの時点においても、質問器のフィールド内の予想されるタグ数に対して最適化できる。
【0114】
現在使用されているほとんどのRFIDプロトコルは、決定性および非決定性バイナリ検索またはスロットプロトコルアルゴリズムの変形である。これらの複雑なプロトコルでは、リーダは、様々な双方向性のシグナリング方式でタグに適切なコマンドを送信することによって、タグの衝突防止プロセスを開始し、ガイドする必要がある。対照的に、モード_2のプロトコルの必要最低限度の実施形態では、リーダからタグへのシグナリングコマンド通信は必要とされない。代わりに、タグは、モード_2のプロトコルの質問信号の通電フィールドが存在する場合は常に、IDを送信することによって自身をリーダに知らせる。
【0115】
リーダは、コマンド、データ、または確認応答を送信せず、無線通信の全通信時間は、リーダがタグ識別情報(データ)を収集するために費やされる。したがって、リーダは、タグIDが受信された際に、タグIDのレジスタログレコードをリッスンし、構築するだけである。リーダは、タグ群全体がエラーなしで捕捉されるまで、タグのデータに追加された巡回冗長性検査フィールド(「CRC」)の検査を含むいくつかの方法で確認可能なあらゆる応答衝突を検出して廃棄し続ける。タグは、その低デューティ比単一方向メッセージデータストリームを、タグが通電RFフィールドを離れるまで、ランダムに連続的に送信する。
【0116】
モード_2衝突調停は、ALOHAプロトコルのランダムホールドオフ・リピート (再送信) タグ伝送方法論と類似している。ALOHAプロトコルは、イーサネットシステムにおいて、 単一通信チャネルの複数の競合者間の調停に 広く使用されている。ALOHA プロトコルでは、データ送信機が送信を試みると、データ送信機がリスニングも行う。データの衝突が検出された場合は、ランダムな時間だけ待機してから再試行する(「ランダムなバックオフと待機」)。ただし、イーサネットシステムとは異なり、送信側のRFIDタグは衝突をリッスンして検出することができない。その結果、本発明の必要最低限のRFIDプロトコルは、衝突をリッスンする代わりに、ランダムなバックオフ時間の後にタグが継続的に再試行する一方で、リーダ(受信機)が衝突を検出して破棄するシステム要素であるという点で、ALOHAプロトコルとは1つの重要な側面で異なる。このような場合、タグが、他のタグが送信を行っていないときに送信を行うこともあるという統計的確率を生じさせる。これによって、リーダが最終的に質問ゾーン内の各タグから返信信号を正常に受信することを可能にする。ランダムな時間間隔でタグ送信をトリガするために、タグには、乱数発生器または擬似乱数発生器のいずれかが組み込まれている。
【0117】
タグプログラマブルパラメータを使用して、送信間の最大間隔を設定してもよく、送信間の間隔は、0と選択された最大値との間でランダムに分配されてもよい。反復タグ送信間の最大間隔は、送信の平均デューティ比によって決定される。いくつかの高速移動タグを有する用途と、多くの固定タグまたは低速移動タグを有する用途とで、異なる最大間隔を使用することができる。平均デューティ比は、合理的なタグスループット率を達成できるように十分に高速でありながら、タグを多く検出できるように十分に低く(例えば、約0.2%から約4%まで)設定されるべきである。在庫管理およびサプライチェーンにおけるアイテムのタグ付けといった用途では殆どの場合、低デューティ比1:400が適しており、このようにタグ間隔を、高いビットレートのタグ送信と組み合わせて展開することで、数百のタグを含む大きなタグ群の同時検出を可能にする。如何なる特定の値にも限定されないが、タグ伝送速度値は一般的に、64 Kbit/s~256 Kbit/sの範囲で選択されることが好ましく、値が高ければ読取セッションが急速に加速する。しかし、用途によっては、より低いビットレートおよびより高いビットレートが使用されることも、本発明によって企図される。より大きい(より長い)デューティ比の値は、より少ない数の急速に移動するタグに対応する。適切な平均デューティ比を選択することにより、どの時点においても、質問器のRFフィールド内の予想されるタグ数に対して最適なスループットを提供できるように、衝突調停を最適化することができる。従って、用途に基づいて、タグスループットは、間隔およびボーレートパラメータを適切に選択することにより最適化できる。その結果、帯域幅が小さく、スペクトル占有要件が小さくなり、無線スペクトル重複干渉が低減される。
【0118】
本発明の一実施形態では、送信データ符号化は、当該技術分野で公知のマンチェスタ型、または好ましくはよりエネルギ効率の高いパルス位置符号化(「PPE」)のいずれかであり得る。図5に示すように、PPEでは、データ-1はシンボル期間の第1四半期のHIGHで表され、データ-0はシンボル期間の第3四半期のHIGHで表される。本発明のプロトコルを使用することにより、タグのASICチップの設計と質問器の設計の両方が大幅に簡略化され、ASICチップの設計では、ASICのサイズを大幅に低減し、タグを非常に低コストで製造することが可能になる。
【0119】
本発明のモード_2のプロトコルによる上記の動作は図3および図4に示される。図3は、RFIDタグの観点からのプロトコルのフロー図である。本明細書では、タグに実装可能な回路に関連して説明する。タグがリーダの磁場に入ると、電源が入ってリセットされる。これはステップ300によって示される。パワーオンリセット(POR)が実行された後、タグチップは、シードとなる読み出し専用メモリ(ROM)の内容を乱数発生回路にロードする。これはステップ310によって示される。さらに、タグの非同期オンチップR-Cマスタークロック発振器中心周波数におけるランダムな自然変動は、ランダム性をさらに増大させる。次に、チップはステップ320を実行し、タイマカウンタ(好ましくは16ビット)が乱数発生器内の数に達するまで、ビットレートクロックでクロッキングを行う。この時点で、タグのIDコードデータストリーム(ID ROMに保存されている)は、適切に符号化され正しいデータレートで、任意の所望のプリアンブルと共に送信される。これはステップ330によって示される。送信後、タグはステップ320に戻り、ランダムホールドオフ・再送信サイクルを開始する。乱数発生器は新しい擬似乱数を生成するようにクロッキングされ、16ビットカウンタはリセットされて新しいランダム遅延を開始する。16ビット乱数と16ビット遅延カウントの比較幅によって、送信間の最大可能遅延(繰返し率)が決まる。最大伝送遅延設定の範囲のいずれか1つ、例えば4~8は、所望の応答kbit/sボーデータレートの選択と共に、ROMビットをいくつか設定することによって選択することができる。リーダがフィールドの送信を停止するか、タグがフィールド外に移動したことで、通電フィールドが消えるまで、ステップ320および330を実行し続ける。
【0120】
あるいは、また好ましくは、IDまたはCRCの最下位16ビットを擬似乱数発生器のシードとして使用することができる。ランダム遅延を生成するために、擬似乱数発生器を線形フィードバックシフトレジスタ(LFSR)により実現する。LFSRは、電源投入時に、工場でプログラムされたシード値で初期化される。16ビットカウンタは、LFSR内の値と比較されるまでクロッキングされ、その時点で1つのIDストリームが送信される。ビットカウンタは、リセットされ、LFSRが次の擬似乱数を生成するようにクロッキングされる。この実装のシンプルさは、トランジスタの数が少ない回路およびデジタル論理状態マシンを利用し、結果として非常に小さいチップが得られる。
【0121】
図4は、マルチタグ環境における非同期プロトコル動作を、リーダの観点から経時的に示す図である。図は、それぞれランダムな間隔で固有のIDを送信する3つのRFIDタグがリーダのエネルギフィールド内にある場合を示している。タグは、正しいCRCによって、データストリームのペイロード全体が妨げられることなく正常に送信されたと証明されると、読み取られたと見なされる。図からわかるように、タグが正常に読み取られる前にいくつかの衝突が発生する可能性がある。この図では、タグ3の2回目のランダム送信が、最初の正常な読取になる。次に、タグ1の3回目のランダム送信が、次の正常な読取になる。しかし、各タグはエネルギフィールドが存在する限り、ランダムな送信を続けるため、図4には、タグ3が前回成功した2回目の送信の後もなお送信を続け、成功したもう一つの読取として、5回目のランダム送信が示されている。一方、タグ2が最初に成功した送信は、3回目のランダム送信の試みであるが、当該試みは質問サイクルの比較的後のほうになる。
【0122】
タグはそれぞれのIDコードを複数回繰り返し送信するするので、本発明の自走プロトコルは冗長性を内蔵している。このような簡素なプロトコルは、タグが固有のIDを有し、同様に符号化されたIDを有するタグがタグ群に存在しないため実行可能であり、各タグ付きアイテムおよび物体がそれに関連づけられた固有のIDを有するという本発明の前提と一致する。
【0123】
本発明の簡素な単方向コマンドレス自走プロトコルの実施に求められるASICが、複雑化することを最小限に抑え、ダイサイズを削減することで、衝突防止機能が求められるマルチタグ読取環境で使用されるタグを低コストで、大量生産するのに非常に適している。
【0124】
上述のような非同期型のコマンドレス自走プロトコルは、リーダが全てのタグ応答を調整し管理するNFCプロトコルのような同期型のコマンド制御型プロトコルとは非常に異なる。上述のような非同期型のコマンドレス自走プロトコルの別の重要な際立った特徴は、より長い読取範囲を達成できることであり、この特徴は、はるかに低いタグの電力消費によるものである。これにより、(i)在庫管理の用途等、長距離で複数のタグを読み取る用途、および(ii)NFC対応のモバイルスマートフォンまたは同様のPDA装置を使用するNFC関連の用途等、短距離または超短距離で、読み取る用途の両方で使用可能な、小型で安価なデュアルモードタグICが可能になる。
【0125】
本発明の一実施形態では、タグの動作モードの1つはデフォルトモードである。例えば、モード_1がデフォルトモードである場合、モード_2の動作に切り替えるには、タグは、モード_2のプロトコルの特性の質問信号を検出しなければならない。これには、任意のタイプの特性が含まれていてもよい。例えば、前記特性は、質問信号の特定の磁場強度レベル、RF励起フィールドにおける単一または二重の100%変調されたパルスまたは「ギャップ」(すなわち、リーダのRFキャリアがオフされる短い間隔)、または当業者に公知の任意の他の手段とすることができる。RF励起フィールド中の短い「ギャップ」(ディップ)をプロトコル指標として使用する場合、ギャップの持続時間は、タグの内部クロック周波数のビット期間をいくつか含んでいてもよい。さらに、キャリアにおける電力ディップの立上り及び立下り時間は、不要なスペクトルエネルギの如何なる偶発的な輻射をも最小化できるように整形されるべきである。これは、RF電力供給フィールドの急速かつ反復的な切り替えは、政府規制に違反し得る高調波および側波帯のスプリアス発射が発生するからである。
【0126】
非デフォルトモードのプロトコルの質問信号が検出されると(トリガイベントとみなす)、タグのコントローラは、タグの動作を非デフォルトモード、例えばモード_2に切り替える。モード_2のプロトコルに切り替えられると続いて、モード_2のプロトコルの質問器からのRF励起フィールドが終了すると、タグは、(a)直ちにデフォルトモードのモード_1に復帰してもよく、(b)所定の期間(例えば、ユーザがプログラム可能な期間)経過後にモード_1に復帰してもよく、または(c)モード_2動作において恒久的に、または何らかの定義されたシステムイベントが発生するまでロックされたままとなってもよい。上記の状況のいずれか1つが、本発明によって企図される。
【0127】
モード間の優先順位は、デフォルトとしてモード_2であってもよく、または本発明のデュアルモードまたはマルチモードの精神から逸脱することなく、他のいくつかの優先順位スキームまたは切り替え方法であってもよいことを、当業者は理解するであろう。
【0128】
代替的な実施形態では、デフォルトモードが存在しなくてもよいし、異なるプロトコルモード間に優先順位が存在しなくてもよい。タグがデフォルトのプロトコルモードを有していない場合、タグは、各モードの識別特性について入力質問信号を確認し、特定の動作プロトコルが識別された後にのみ、そのプロトコルモードに切り替えなければならない。例えば、入力質問信号がモード_1のプロトコル特性を含むと判定された場合、タグのコントローラは、モード_1のプロトコル動作に入る。一方、入力質問信号がモード_2のプロトコル特性を含むと判定された場合、タグのコントローラは、モード_2のプロトコル動作に入る。
【0129】
本発明の一実施形態では、タグのデフォルトプロトコルモードは、NFC互換プロトコルモード(モード_1)であり、非デフォルトプロトコルモードであるモード_2は、高性能マルチタグ非同期型の衝突検出プロトコルを使用して通信する上述の本発明のプロトコルモードである。タグが一時的にデフォルトモードから非デフォルトモードに切り替わるようにプログラムされている場合、以下のように動作してもよい。
【0130】
タグは、在庫管理用のリーダから発せられる切り替え信号(トリガイベント)、例えば、リーダの励起フィールドのギャップに反応して、タグを自身のデフォルトであるNFC互換プロトコルモードから高性能マルチタグ非同期型の衝突検出プロトコルモードに一時的にシフトする。所定の持続時間が経過すると、タグは自身のデフォルトであるNFC互換プロトコル機能に戻る。
【0131】
あるいは、トリガイベントは、現在のNFC互換スマートフォンリーダのようなモード_1のプロトコルのリーダの弱いRF電界励起レベルと比較して、より強いモード_2のプロトコルのリーダ(例えば、在庫管理用途のリーダ)のRF電力A/m磁場強度の閾値レベルであってもよい。例えば、タグにおけるより強いRF電力A/mの磁場強度の閾値は、少なくとも0.15A/mであってもよい。
【0132】
タグ回路に、「持続状態」の一時的な短期メモリを組み込み、プロトコルモードの切り替えが数秒間維持されるようにしてもよい。あるいは、タグがモード_2の状態でロックされたままであることが求められる限り、リーダの変調ディップの持続時間が反復して持続してもよい。リーダの変調が停止すると、タグが自身のネイティブNFC互換モードに復帰する。
【0133】
上述したような非同期型のコマンドレス衝突検出プロトコルを用いてRFIDシステムの動作範囲を拡大することに加え、以下に述べるように本発明のリーダアンテナを設計することによって、HF帯で動作するRFIDシステムの範囲をさらに改善できる。
【0134】
本明細書の背景技術で説明したように、誘導結合HF RFIDシステムでは、タグへの電力供給およびタグ-リーダ間通信は、RFトランス回路モデルに基づいており、このモデルでは、概念的トランスの一次巻線はリーダアンテナ結合器コイルを含み、概念的トランスの二次巻線はタグのマルチターンループアンテナコイルを含む。本発明の一実施形態によるHF RFID磁束結合システムの例示的な回路モデルを図6に示す。図において、参照番号602は、ICチップ606およびタグコイルアンテナ608を含む受動タグの回路モデルを示している。参照番号604は、信号源(信号電力増幅器)610と、整合ネットワーク612と、リーダアンテナ結合器コイル614との組合せを含むリーダの回路モデルを示している。リーダの信号源610は、ソース抵抗Rと直列の電流源としてモデル化されている。整合ネットワークは、コンデンサCがリーダコイルアンテナ614と並列であり、コンデンサCがリーダコイルアンテナ614と信号源610との間に直列に配置される、2キャパシタ回路として簡素にモデル化されている。図6はさらに、リーダアンテナコイルとタグマルチターンループアンテナコイルを結合する磁束線を示している。最後に、このモデルは、リーダのアンテナコイルを通過する電流Iがタグ側に電圧Vindを誘起し、タグのアンテナを通過する電流IRXがリーダ側に電圧Vindを誘起することを示している。
【0135】
タグアンテナコイルの自己インダクタンス LRXは、一般的に約90~110 pFのキャパシタンスを有するICチップの内部同調キャパシタンスCと共振するように設計される。インダクタアンテナコイル共振のQは、システム内で効率と機能性を両立するのに十分でなければならない。Qは読取範囲性能に直接関係するが、要求されるシステム帯域幅または製品の製造可能性を制限するほど高くすべきではない。タグアンテナとリーダアンテナのQファクタおよび関連する帯域幅の両方が、タグ送信のデータレートに関連する変調側波帯をサポートすべきである。タグコイルインダクタンスLは、ICチップの内部キャパシタンスに反比例するので、(例えば、13.56 MHzの定数foに対して)Cを増加させるとLが減少する。約100 pFの比較的大きなオンチップの同調キャパシタンスは、より小さなフォームファクタのタグを提供することを意図している。しかし、より小さな磁束収集エリアを有するより小さなタグマルチターンアンテナコイルは、その誘起電圧Vind(「VTAG」)がタグサイズの関数であり、磁場強度の大きさがシステムパラメータ間の以下の支配関係によって決定されるため、同じ読取範囲を達成しない。
【0136】
【0137】
ここで、
【0138】
N=タグコイルLRX内のループ巻線の数
【0139】
Q=タグ品質係数
【0140】
B=磁場強度
【0141】
S=タグコイルの面積
【0142】
α=タグの配向角
【0143】
磁場強度(B)は、近接する質問器アンテナ(AI)によって生成され、次式によって与えられる。
【0144】
【0145】
ここで、
【0146】
I=LTXにおけるAIコイル電流
【0147】
N=AIコイルLTX内の巻線の数
【0148】
a=IAコイルの半径
【0149】
μ=自由空間の透過率
【0150】
r=AIからの距離
【0151】
これらの式から、当業者であれば、読取範囲を2倍にするためには、リーダによって生成されるリーダアンテナコイルAI内の電流を三乗しなければならないことが分かる。ただし、電力は電流の2乗に比例するため、読取範囲を2倍にするには、リーダの電力に非常に大きく実用的でない64倍を掛ける必要がある(Pはrに比例する)。したがって、使用可能なRF電力は、タグ-リーダ距離の増加に伴って急速に減少(タグ-リーダ距離rの6乗の逆数に比例)する一方、利用可能な電圧は1/r(タグ-リーダ距離の3乗の逆数に比例)に減少する。
【0152】
平面タグの最大エネルギ結合は、タグの広い面がリーダアンテナコイルAIに平行に整列されたときに生じる。
【0153】
非同期プロトコルを介してタグと通信する最適な読取範囲のHFシステムを設計する場合、第一に、リーダのRF電力、タグの電力消費、タグの品質係数(Q)、タグコイルの同調、リーダのアンテナ開口のサイズ(大)、およびタグのアンテナ開口面積のサイズ(小)を主に考慮しなければならない。
【0154】
第二に、タグの変調度のパーセンテージ、リーダの信号対ノイズ比(「SNR」)、リーダのアンテナの同調、およびリーダのH場との整合に関するタグの配向の角度を考慮する。
【0155】
CMOS集積回路装置は、内部回路クロック周波数の増加に比例してより多くの電流を消費するので、タグの電力消費は、HFシステムによって大きく変動し得る。一例として、NFCスマートフォンリーダに求められるキャリア周波数の13.56 MHzで動作するNFCフォーラムNDEFエアインターフェース規格をエミュレートする同期HFプロトコルと、同じ13.56 MHzのキャリア周波数で動作する非同期プロトコルとを比較する。
【0156】
一般的に、同期エアインタフェースプロトコルは、入力キャリア信号からクロックを導出する。周波数依存の消費は、一般的に、LFで動作する同期タグにおける制限的な問題ではないが、13.56 MHzのキャリア信号からクロックを得るHFタグは、LFタグよりも100倍多くの電流を消費する少なくとも1つのゲートを有する。周波数分割器チェーン回路の残りの部分は、最速のフリップフロップ・ゲートと同等かそれ以上を引き出す。したがって、NFCフォーラムNDEFエアインターフェース規格をエミュレートする同期HFプロトコルは、非常に電力を必要とする。
【0157】
しかし、代替的な非同期プロトコルで動作するタグでは、その低電力オンチップに由来するマスタークロックR-C発振器は、13.56 MHzの代わりに106 kHz(13.56/128)というかなり低いベースバンド周波数でスイッチングすることができる。RFキャリア周波数の1/128thでのこのような低速切り替えは、少なくともいくつかのゲートが13.56 MHz発振器の電流の1/128thのみを消費することを意味する。さらに、非同期プロトコルでは、受動タグは、リーダRFキャリアエネルギを回路への電力供給のためだけに使用し、分割カウントダウンを介したクロックタイミングの抽出には使用しない。したがって、HF RFIDシステムにおいて非同期タグASICアーキテクチャを採用することで、タグの電力消費を低減し、小さなアンテナのフォームファクタタグからのより長い読取範囲に寄与する。
【0158】
また、RFIDリーダの設計者は、米国および外国のRF規制当局の偶発的な輻射エネルギに対する最大許容限度を考慮しなければならない。規制当局は一般的に、電源から数十メートル(例えば、30メートル)の測定距離での電力または電圧レベルの制限値を表示しており、HF周波数範囲の受動タグは、一般的に、1~2mの距離でしか読み取ることができず、これを超えるとリーダからの偶発的な輻射が問題となる。この読取距離が制限されるのは、義務付けられた規制エミッションの制限が電磁(「EM」)キャリア信号の電気E場成分に関するものであるのに対して、誘導結合タグには強い磁気H場が求められるからである。遠方界における漂遊輻射を最小化する一方で、磁気近傍界における読取範囲を最適化するために、リーダの製造業者には、独創的なアンテナ設計技術を使用して、リーダ近傍の局所磁場を最大化する一方で、遠方の不要な電気E場を実質的に相殺するものもいる。
【0159】
これらの支配的な制限内で、同調されたL-Cリーダアンテナ回路へのRF電流ドライブの増加が求められるリーダ電力の増加と、電力増幅器ドライバとアンテナとの間のインピーダンス整合の最適化によって、リーダの質問範囲を強化することができる。開口面積、またはリーダアンテナコイルの直径/長さおよびアンテナのQ品質係数は、リーダ電力レベルそのものの増加よりも、はるかに読取距離に影響するため、このアプローチによって達成可能な改善には上限がある。
【0160】
リーダアンテナサイズ(開口面積)は一般的に、タグアンテナの所与の(小さな)サイズに対して達成可能な読取距離を左右させる。開口面積が大きいほど、タグはリーダアンテナからより多くの磁束線を遮断することができ、遮断された磁束線はタグコイル内に電流を発生させてタグの集積回路またはASICに電力を供給し、タグアンテナの直径または矩形の囲まれた領域の増大により、読取範囲が増大する。
【0161】
同時に、リーダアンテナの直径が大きければ、磁束線が周囲をとり囲む前に空間内で距離をさらに延長でき、より小さなタグアンテナが遮断する距離およびより局所化された磁束密度を両立する。実用上の経験則として、HF誘導結合受動タグRFIDシステムの最大読取範囲は、リーダアンテナの直径の1~2倍である。
【0162】
本発明の一実施形態では、可搬手持ち式RFIDリーダに適用する場合に、小開口アンテナによるタグの読取範囲を増加させるには、約40~250、好ましくは約125以上の範囲のμ(Mu)を有するフェライトロッド等の高透過率材料の周りに、リーダアンテナコイルを軸方向に巻き付ける。このような設計により、リーダの磁場により指向性をもたせるだけでなく、輻射される磁束線を一方向に集中させることで、高Muフェライトロッドコアの軸に沿った投影範囲も拡大する。このことは図7に概念的に示されており、図において、ソレノイド巻線アンテナ704から輻射され、複数のRFIDタグ706に向かう方向に投射される磁束線702が示されている。
【0163】
このようなHF近傍界フェライトロッドソレノイドベース(磁気コアソレノイドループ)のアンテナは、アンテナコイルおよびロッドコアの線寸法にほぼ匹敵する距離だけ磁束場を投射することができる。アンテナコイルの面積が増加されるか、またはソレノイド形状ワンドアンテナスティックの長さが増加される場合、達成可能なエネルギ結合ボリュームは、選択された線寸法にほぼ等しい距離まで延びる。従って、本明細書に記載される高速で、非同期型のコマンドレスマルチタグ読取プロトコル等のHFマルチタグ読取質問プロトコルを使用する用途(例えば、在庫管理の用途)では、タグ-リーダ間距離は、リーダの最大許容リーダアンテナ面積またはそのロッド長によってのみ制限され、これを超えると手持ち式スティックの構造が非常に扱いにくく実用的でなくなる。
【0164】
例えば、13.56 MHzの連続波キャリアを輻射するHFリーダのアンテナのように、図6にモデル化されるリーダのアンテナからのH場投射を最大化するには、アンテナが直列共振され、13.56 MHzの共振周波数で最大コイル電流を達成する。これは、インピーダンスが共振時に0に向かう傾向があるリーダアンテナコイル用の直列L-C同調回路を使用すると、リーダアンテナコイル介してRF電流が最大化されるためである。図6に示すRFIDシステムの回路モデルにおいて、回路要素C1およびC2として簡略的に示されるインピーダンス整合ネットワークは、リーダのRF電力増幅器段610(上述では、信号源と称する)と関連するリーダアンテナコイルLTXとの間に挟持され、アンテナコイル内の最大電力伝達および電流を確保する。図8は、在庫管理用のリーダ、および他のマルチタグ読取用途等、本発明の可搬手持ち式リーダに適したフェライトロッドコア(磁気コア)ソレノイドループアンテナの例示的な実施形態の概略回路図である。具体的には、図8は、長さLおよび直径Dのフェライトロッドコア等の磁気ロッドコアに巻回されて形成される、磁気コアソレノイドループアンテナのコイル802を示す。コイル802は、L-C同調整合ネットワーク806に直列接続されており、リーダから輻射されるキャリア信号の共振周波数で最大電流を達成する。コイル802は、フェライトコア上に反対に巻回され、逆位相で供給される4極磁界を生成する2つの別個の巻線へのセグメント化を含む様々な空間構成を備えることができる。このような対になった磁気双極配置は、双極モーメントを相殺し、所望の局所化された磁束場成分によるタグ励起に寄与することのない、望ましくない遠方界輻射成分を有利に抑制する。これにより、規制要件を満たしつつ、小さいHFタグへの電力供給および通信範囲を増加させる。
【0165】
上述の可搬手持ち式リーダに使用される磁気コアソレノイドループアンテナの代わりに、在庫管理機能を有するリーダアンテナは、目立たない平面コイルのフォームファクタとすることができ、選択的にまたは追加的に、小売店の陳列棚構造に埋め込まれて一体化され、棚全体およびその上に置かれたタグ付きアイテムを包含する直列に多重化されたアンテナアレイを形成することができる。
【0166】
前述の実施形態は、2つの異なるモードのエアインタフェースプロトコル動作を有する受動RFIDタグを開示しており、1つのモードにおいて、タグは、1つのRFID通信プロトコルを使用する質問器によって読取可能であり、あるいは別のRFIDプロトコルによって読取可能であり、両方のRFIDプロトコルが実質的に同一のキャリア周波数または同一の周波数帯で動作する。これにより、受動RFIDタグは、同一のアンテナを使用して両方の質問器と通信することができる。
【0167】
しかしながら、上述の実施形態のいずれかによる受動RFIDタグはさらに、異なる(第二の)周波数帯で動作する第三のRFID通信プロトコルを使用して通信することができる。重要なことは、本発明の受動RFIDタグは、第一のアンテナを使用して、実質的に同一のキャリア周波数または同一の周波数帯(「第一の周波数帯」)で動作する第一および第二のプロトコルで通信する一方、当該RFIDタグが、別の(第二の)アンテナを使用して第二の周波数帯で動作する第三のプロトコルで通信するということである。例えば、受動RFIDタグは、第一のアンテナを使用して、HF周波数帯において第一および第二のプロトコルで通信することができるが、タグはさらに、UHF帯内またはLF帯における第三のRFID通信プロトコルを介して通信するための回路および第二のアンテナを含んでもよい。例えば、第三のプロトコルは、参照により本明細書に組み込まれるEPCglobalクラス1ジェネレーション2の通信規格等のEPCglobal、またはISO規格のいずれかに適合する任意のRFIDプロトコルであってもよい。特に注目すべきは、UHF周波数帯での動作するために、周波数非依存モード2の単方向コマンドレス自走RFIDプロトコルが追加的に再展開されたことであり、これにより、HFシステムにおける速度よりも高速な読取速度で、非常に長い範囲にわたって複数のアイテムをマルチ読取する環境でRFIDタグを読み取ることに有用である。
【0168】
その結果、受動RFIDタグは、第一および第二の動作モードで第一のアンテナを使用し、さらに第三の動作モードで第二のアンテナを使用する3つの動作モードを有することができる。例えば、第一の動作モードでは、受動RFIDタグは、NFC型のRFID通信プロトコル(読取範囲が数センチメートル未満)等の第一の通信プロトコルを介して通信することができ、第二の動作モードでは、タグは、上述の長距離単方向コマンドレス自走RFIDプロトコルなどの第二の通信プロトコルを介して通信することができ、両方のプロトコルがHF帯で動作する。一方、第三の動作モードでは、受動RFIDタグは、第二のアンテナを使用して、上述のようにUHF帯で動作するEPCクラス1ジェネレーション2のプロトコルまたはモード2の単方向コマンドレス自走RFIDプロトコル等の、異なる周波数帯の第三の通信プロトコルを介して通信する。
【0169】
上記のような三モードRFIDタグでは、いずれか1つのモードがデフォルトモードであってもよく、タグは、入力質問信号に基づいて、他の2つのモードのいずれかに切り替える。本発明は、RFIDタグがプログラム可能であることを想定しており、受動RFIDタグのデフォルトモードは、その動作シーケンス(例えば、最も頻繁に使用されるプロトコル、最後に使用されたプロトコル、位置ベース等)に基づいて変更されてもよく、ユーザによってワイヤレスで再プログラムされてもよい。換言すると、デュアルモードRFIDタグの実装に関して、上述した設計変形と機能順列のいずれかを、三モードRFIDタグの実装に拡張可能である。
【0170】
上述したように、1つの好ましい実施形態において、本発明のデュアルモード受動RFIDタグの回路は、ASIC内に実装されてもよい。デュアルモードRFIDタグが第三のモードを含むように拡張される場合、第三のモードの動作を可能にするための回路は、本出願の図2に示される回路とトポロジーが類似していてもよく、第一と第二のモードのための回路と同じASICチップに結合されてもよいし、第三のモードの回路が別個のASICに実装されてもよい。
【0171】
したがって、本発明の三モード受動RFIDタグは、2つの異なる周波数帯に位置する3つの異なるプロトコルを介して通信することができる。1つの好ましい実施形態では、2つのプロトコルはHF帯にあり、第三のプロトコルはUHF帯にある。さらに、1つの好ましい実施形態では、UHF帯プロトコルは、EPCglobalクラス1ジェネレーション2の通信規格のようなEPCglobal規格またはISO規格の1つ、あるいはモード2の単方向コマンドレス自走RFIDプロトコルに適合し、これらのいずれもが、物理的な小売店、倉庫または他の同様の環境のように、高速で複数のアイテムを非常に長距離からマルチ読取する機能が求められる用途において受動RFIDタグの使用を可能にする。
【0172】
さらに、1つの好ましい実施形態では、2つのHF帯プロトコルは、NFCプロトコルと、より長い範囲にわたって高速で複数のアイテムをマルチ読取するプロトコルである。前者は、消費者、セキュリティ担当者、その他の者が同一またはそれ以上を支払って、数センチメートル未満の距離にわたり、どこからでも個々のアイテムに関与して、それらの製造およびサプライチェーンの信頼性、ブランドとの1対1の関係、記録および追跡、製品の返品等を確認することが望まれる場合に有用である。同時に、後者のプロトコルは、据置型リーダ、トンネル型リーダおよび手持ち式リーダなどの低コストリーダ(質問器)を利用する用途において有用である。
【0173】
本発明の受動RFIDタグが、少なくとも3つのRFID通信プロトコルで通信することが可能であり、このうち2つのプロトコルが同一の周波数帯または実質的に同一のキャリア周波数を有し、第三のプロトコルが異なる周波数帯を有していれば、本発明は、特定のプロトコル、周波数帯、またはキャリア周波数に限定されない。
【0174】
前述の説明は特定の値を開示しているが、特に明記されていない限り、他の特定の値を使用して同様の結果を達成することができる。さらに、上述の実施形態の種々の特徴が選択され、組み合わされて、改良されたシステムの多くの変形を産出することができる。
【0175】
以上、本明細書において例示的な実施形態について説明した。しかしながら、当業者であれば、以下の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更が可能であることを理解するであろう。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく例示的な意味で考慮されるべきであり、そのようなすべての修正は、本教示の範囲内に含まれることが意図される。例えば、ASICは、単結晶CMOS若しくは印刷電子CMOS、又は印刷MOS半導体形態、または既知の若しくは開発途中の任意の他の形態で実施することができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0176】
さらに、本明細書において、第一のおよび第二の、上および下等の関係を示す用語は、1つの実体または行為を別の実体または行為から区別するためにのみ使用されている場合があるが、これら実体または行為間の実際の関係または順序を必ずしも要求または暗示するものではない。「comprises」、「comprising」、「has」、「having」、「includes」、「including」、「contains」、「containing」等の用語、またはこれらの任意の他の変形は、非排他的包含をカバーすることを意図している。したがって要素のリストをcompriseする、hasする、includeするプロセス、方法、物品、または装置は、これらの要素のみを含むのではなく、明示的に列挙されていない、またはこのようなプロセス、方法、物品、または装置に固有ではない他の要素を含むこともある。「comprises…a」、「has…a」、「includes…a」、または「contains…a」で始まる要素は、さらなる制約なしには、当該要素をcompriseする、hasする、includeする、containするプロセス、方法、物品、または装置における追加の同一要素の存在を妨げない。用語「a」および「an」は、本明細書において明示的に別段の記載がない限り、一つ以上として定義される。用語「実質的に」、「本質的に」、「ほぼ」、「およそ」、「約」、またはその他の任意のバージョンは、当業者に理解されるように近いものとして定義される。本明細書で使用される「結合される」という用語は、必ずしも直接的ではなく、必ずしも機械的でもないが、接続されたものとして定義される。特定の方法で「構成される」装置または構造は、少なくともその方法で構成されるが、示されていない方法でも構成することができる。
【0177】
本開示の要約書は、技術開示の性質を読者が迅速に確認することができるように提供される。特許請求の範囲または意味を解釈または制限するために使用されないことを理解した上で提出される。さらに、前述の詳細な説明では、開示を簡素化するために、様々な実施形態において、様々な特徴がまとめられている。この開示方法は、請求された実施形態が、各請求項において明示的に述べられているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映しているように、発明の主題は、本開示の一実施形態のすべての特徴よりも少ない。したがって、以下の請求項は前述の詳細な説明に組み込まれ、各請求項は別途請求される主題として独立している。
【0178】
追加開示
【0179】
[請求項1]
受動RFIDタグであって、
(a)質問器からの磁場の無線誘導結合を介して前記受動RFIDタグへの電力供給を可能にする第一のアンテナと、
(b)集積回路とを備え、前記集積回路は、
i.固有のタグ識別子を格納するメモリと、
ii.前記第一のアンテナに動作可能に結合された変調器と、
iii.前記第一のアンテナに動作可能に結合された復調器と、
iv.前記復調器に動作可能に結合され、質問信号のRFID通信プロトコルを判定するように構成されたプロトコル検出回路と、
v.前記メモリおよび前記プロトコル検出回路に動作可能に結合され、前記受動RFIDタグを第一の動作モードおよび第二の動作モードで動作させるように構成されたコントローラとを備え、
前記第一の動作モードは、前記受動RFIDタグが、第一の周波数を有する第一のキャリア信号を利用して、第一のRFID通信プロトコルを使用する第一の質問器と通信することを可能にし、
前記第二の動作モードは、前記受動RFIDタグが、第二の周波数を有する第二のキャリア信号を利用して、第二のRFID通信プロトコルを使用する第二の質問器と通信することを可能にし、
前記第一の周波数は、前記第二の周波数と実質的に等しく、
前記受動RFIDタグは、前記固有のタグ識別子を前記第一の質問器および前記第二の質問器に送信するために前記第一のアンテナを使用可能である、ことを特徴とする受動RFIDタグ。
【0180】
[請求項2]
前記第一の周波数はHF周波数である、ことを特徴とする請求項1に記載の受動RFIDタグ。
【0181】
[請求項3]
前記第一のRFID通信プロトコルは、短通信範囲コマンド制御型プロトコルである、ことを特徴とする請求項1に記載の受動RFIDタグ。
【0182】
[請求項4]
前記第二のRFID通信プロトコルは、前記第一のRFID通信プロトコルの通信範囲よりも大きい通信範囲を有するコマンドレス非同期プロトコルであり、前記コントローラは、ランダムホールドオフ・再送信スキームを介して前記第二の質問器への前記固有のタグ識別子の送信を可能にする、ことを特徴とする請求項1の受動RFIDタグ。
【0183】
[請求項5]
前記第一の動作モードは、デフォルト動作モードであり、前記コントローラは、前記プロトコル検出回路がトリガを検出した際に、前記デフォルト動作モードから前記第二の動作モードに切り替えるように構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の受動RFIDタグ。
【0184】
[請求項6]
前記第二のキャリア信号は連続波キャリア信号であり、前記トリガは、(a)前記第二のキャリア信号の短い中断、(b)前記第二のキャリア信号の変調ディップ、および(c)所定の閾値より大きい前記磁場励起のレベル、のうちの1つである、ことを特徴とする請求項5に記載の受動RFIDタグ。
【0185】
[請求項7]
前記コントローラは、前記受動RFIDタグが前記第二の動作モードに所定の期間留まることを可能にするように構成され、前記所定の期間は、一時的な持続時間と恒久的な持続時間とを含む期間のグループから選択される、ことを特徴とする請求項5に記載の受動RFIDタグ。
【0186】
[請求項8]
受動RFIDタグの使用方法であって、
(a)前記受動RFIDタグを提供するステップを備え、前記受動RFIDタグは、
(i)第一のアンテナと、
(ii)集積回路とを備え、前記集積回路は、
固有のタグ識別子を格納するメモリと、
前記第一のアンテナに動作可能に結合された変調器と、
前記第一のアンテナに動作可能に結合された復調器と、
前記復調器に動作可能に結合されたプロトコル検出回路と、
前記メモリおよび前記プロトコル検出回路に動作可能に結合され、前記受動RFIDタグを第一の動作モードおよび第二の動作モードで動作させるように構成されたコントローラとを備え、
前記第一の動作モードは、前記受動RFIDタグが、第一の周波数を有する第一のキャリア信号を利用して、第一のRFID通信プロトコルを使用する第一の質問器と通信することを可能にし、
前記第二の動作モードは、前記受動RFIDタグが、第二の周波数を有する第二のキャリア信号を利用して、第二のRFID通信プロトコルを使用する第二の質問器と通信することを可能にし、
前記第一の周波数は、前記第二の周波数と実質的に等しく、
前記受動RFIDタグは、前記固有のタグ識別子を前記第一の質問器および前記第二の質問器に送信するために前記第一のアンテナを使用可能であり、
(b)前記受動RFIDタグに質問信号を送信するステップと、
(c)前記第一のアンテナを用いて、前記質問信号の磁場を無線誘導結合して前記受動RFIDタグに電力を供給するステップと、
(d)前記プロトコル検出回路を用いて、前記質問信号の通信プロトコルを判定するステップであって、前記判定された通信プロトコルは、前記第一のRFID通信プロトコルおよび前記第二のRFID通信プロトコルのうちの1つである、ステップと、
(e)前記コントローラを用いて、前記判定された通信プロトコルに対応する動作モードで前記受動RFIDタグを動作させるステップであって、前記動作モードは、前記第一の動作モードおよび前記第二の動作モードのうちの1つである、ステップと、
(f)前記質問信号に応答して前記判定された通信プロトコルを使用して前記固有のタグ識別子を前記第一のアンテナを介して無線通信するステップと、を備える、ことを特徴とする方法。
【0187】
[請求項9]
前記判定されたRFID通信プロトコルは、HF周波数帯の前記第一のキャリア周波数を有する前記第一のRFID通信プロトコルである、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【0188】
[請求項10]
前記第一のRFID通信プロトコルは、短通信範囲コマンド制御型プロトコルである、ことを特徴とする請求項8に記載の受動RFIDタグ。
【0189】
[請求項11]
前記判定された通信プロトコルは前記第二のRFID通信プロトコルであり、前記第二のRFID通信プロトコルは、前記第一のRFID通信プロトコルの通信範囲よりも大きい通信範囲を有するコマンドレス非同期プロトコルであり、
前記質問信号に応答して前記タグ識別子を無線通信する前記ステップは、ランダムホールドオフ・再送信スキームを介して前記固有のタグ識別子を送信するステップを含む、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【0190】
[請求項12]
前記第一の動作モードは、デフォルト動作モードであり、前記コントローラは、前記プロトコル検出回路がトリガを検出した際に、前記受動RFIDタグを前記デフォルト動作モードから前記第二の動作モードに切り替える、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【0191】
[請求項13]
前記第二のキャリア信号は連続波キャリア信号であり、前記トリガは、(a)前記第二のキャリア信号の短い中断、(b)前記第二のキャリア信号の変調ディップ、および(c)所定の閾値よりも大きい前記質問信号の磁場レベルのうちの1つである、ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【0192】
[請求項14]
前記受動RFIDタグを前記第二の動作モードに所定の期間維持するステップをさらに含み、前記所定の期間は、一時的な持続時間および恒久的な持続時間を含む期間のグループから選択される、ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【0193】
[請求項15]
RFIDシステムであって、
(a)受動RFIDタグを備え、前記受動RFIDタグは、
(i)磁場の無線誘導結合によって前記受動RFIDタグへの電力供給を可能にする第一のアンテナと、
(ii)集積回路とを備え、前記集積回路は、
固有のタグ識別子を格納するメモリと、
前記第一のアンテナに動作可能に結合された変調器と、
前記第一のアンテナに動作可能に結合された復調器と、
前記復調器に動作可能に結合され、質問信号のRFID通信プロトコルを判定するように構成されたプロトコル検出回路と、
前記プロトコル検出回路に動作可能に結合され、前記受動RFIDタグを第一の動作モードおよび第二の動作モードで動作させるように構成されたコントローラとを備え、
前記第一の動作モードは、前記受動RFIDタグが、第一の周波数を有する第一のキャリア信号を利用する第一のRFID通信プロトコルを使用して通信することを可能にし、
前記第二の動作モードは、前記受動RFIDタグが、第二の周波数を有する第二のキャリア信号を利用する第二のRFID通信プロトコルを使用して通信することを可能にし、
前記第一の周波数は、前記第二の周波数と実質的に等しく、
前記受動RFIDタグは、前記第一のアンテナを用いて前記第一のRFID通信プロトコルおよび前記第二のRFID通信プロトコルにおいて送信可能であり、
(b)前記第一のRFID通信プロトコルおよび前記第二のRFID通信プロトコルのうちの1つである通信プロトコルを用いて前記受動RFIDタグと通信する第一の質問器とを備える、ことを特徴とするRFIDシステム。
【0194】
[請求項16]
前記第一の質問器の前記RFID通信プロトコルはHF周波数 帯での通信を可能にする、ことを特徴とする請求項15に記載のRFIDシステム。
【0195】
[請求項17]
前記第一の質問器の前記RFID通信プロトコルは前記第一のRFID通信プロトコルであり、前記第一のRFID通信プロトコルは短通信範囲コマンド制御型プロトコルである、ことを特徴とする請求項15に記載のRFIDシステム。
【0196】
[請求項18]
前記第二のRFID通信プロトコルは、前記第一のRFID通信プロトコルの通信範囲よりも大きい通信範囲を有し、
前記第一の質問器の前記通信プロトコルは、前記第二のRFID通信プロトコルであり、
前記第二のRFID通信プロトコルは、コマンドレス非同期プロトコルであり、
前記受動RFIDタグの前記コントローラは、前記固有のタグ識別子を、ランダムホールドオフ・再送信スキームを介して前記第一の質問器に送信することを可能にする、ことを特徴とする請求項15に記載のRFIDシステム。
【0197】
[請求項19]
前記第一の動作モードは、デフォルト動作モードであり、前記コントローラは、前記プロトコル検出回路が前記第一の質問器からのトリガを検出した際に、前記デフォルト動作モードから前記第二の動作モードに切り替えるように構成される、ことを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【0198】
[請求項20]
前記コントローラは、前記受動RFIDタグが前記第二の動作モードに所定の期間留まることを可能にするように構成され、前記所定の期間は、一時的な持続時間と恒久的な持続時間とを含む期間のグループから選択される、ことを特徴とする請求項19に記載のRFIDシステム。
【0199】
追加的開示の終了

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8