IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グドリン、ジョフィアの特許一覧

<>
  • 特許-射出成形品および射出成形品の製造方法 図1
  • 特許-射出成形品および射出成形品の製造方法 図2
  • 特許-射出成形品および射出成形品の製造方法 図3
  • 特許-射出成形品および射出成形品の製造方法 図4
  • 特許-射出成形品および射出成形品の製造方法 図5
  • 特許-射出成形品および射出成形品の製造方法 図6
  • 特許-射出成形品および射出成形品の製造方法 図7
  • 特許-射出成形品および射出成形品の製造方法 図8
  • 特許-射出成形品および射出成形品の製造方法 図9
  • 特許-射出成形品および射出成形品の製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】射出成形品および射出成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20241111BHJP
   B32B 37/24 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
B29C45/14
B32B37/24
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022516265
(86)(22)【出願日】2020-05-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-28
(86)【国際出願番号】 HU2020000018
(87)【国際公開番号】W WO2020240219
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】P1900182
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】HU
(73)【特許権者】
【識別番号】521511405
【氏名又は名称】グドリン、ジョフィア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グドリン、ジョフィア
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-025313(JP,A)
【文献】特開平06-041318(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0002138(US,A1)
【文献】特開昭63-114638(JP,A)
【文献】特開平02-025312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 37/00
B29C 45/00-45/24
B29C 45/46-45/63
B29C 45/70-45/72
B29C 45/74-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形部品を生産するための方法であって、
a)射出成形ツールの形状に従って予め形成されたキャリア層(5)を提供すること、
b)前記キャリア層(5)の一方の面に、硬化性の粘着性カバー層(2)を適用すること、
c)複数の個々の装飾要素(3)を前記カバー層(2)上に散布により適用し、これにより前記装飾要素(3)が前記カバー層(2)に少なくとも部分的に埋め込まれること、
d)前記カバー層(2)を硬化し、これにより前記装飾要素(3)が前記キャリア層(5)上に固定されること、
e)前記射出成形ツールにおいて、ベース層(4)を、前記カバー層(2)の前記キャリア層(5)とは反対側に適用すること、
f)前記ベース層(4)、前記装飾要素(3)、及び前記カバー層(2)からなる完成品から前記キャリア層(5)を除去し、それにより射出成形品のベース層(4)とは反対側の面に露出した装飾表面を生産すること、
を特徴とする、上記方法。
【請求項2】
前記予め形成されたキャリア層(5)が、金属シート又はプラスチックから作られることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カバー層(2)が、硬化性のプラスチック又は硬化性の接着剤からなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記カバー層(2)が、透明または半透明のプラスチックからなることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記完成品の前記装飾表面を研削または研磨する工程を更に含むことを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記装飾表面が、ラッカーの層によりカバーされることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記装飾要素(3)が、廃棄材料及び天然材料から作られることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記装飾要素(3)が、下記の材料群から選択されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法:木材チップ、金属削りくず、金属破片、プラスチック廃棄物、紙片、炭素、ガラスまたは玄武岩繊維、繊維屑、金属箔屑、塗装屑、砂利、巻貝殻、イガイ、フルーツボウル、木材、鉱物。
【請求項9】
ベース層(4)、装飾要素(3)を有する中間層、およびカバー層(2)を含む多層デザインと、同様にベース層(4’)、装飾要素(3’)を有する中間層、およびカバー層(2’)を含む第2の多層デザインとが形成され、前記外側ベース層(4’)が透明または半透明のプラスチックで作られることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
射出成形されたプラスチックベース層(4)、前記ベース層(4)の一面上に配置された透明カバー層(2)、及び前記ベース層(4)と前記カバー層(2)との間複数の装飾要素(3)からなる、装飾表面を有する射出成形品であって、前記装飾要素(3)は、前記透明カバー層(2)及び前記ベース層(4)の両層中に埋め込まれ
前記装飾要素(3)はランダムな配置で分布し、かつ
記装飾要素(3)と前記透明カバー層(2)とが一緒に装飾表面を形成することを特徴とする、射出成形品。
【請求項11】
前記装飾要素(3)が、廃棄材料及び天然材料から作られることを特徴とする、請求項10に記載の射出成形品。
【請求項12】
前記装飾要素(3)が、下記の材料群から選択されることを特徴とする、請求項10から11のいずれか一項に記載の射出成形品:木材チップ、金属削りくず、金属破片、プラスチック廃棄物、紙片、炭素、ガラスまたは玄武岩繊維、繊維屑、金属箔屑、塗装屑、砂利、巻貝殻、イガイ、フルーツボウル、木材、鉱物。
【請求項13】
ベース層(4)、装飾要素(3)を有する中間層、およびカバー層(2)を含む多層構造(5’)と、ベース層(4’)、装飾要素(3’)を有する中間層、およびカバー層(2’)を含む第2の構造とが形成され、前記外側ベース層(4)が透明または半透明のプラスチックで作られることを特徴とする、請求項10から12のいずれか一項に記載の射出成形品。
【請求項14】
前記装飾表面がラッカーの層によりカバーされることを特徴する、請求項10から13のいずれか一項に記載の射出成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形品およびその生産方法に関する。射出成形品は、プラスチックベース層、少なくとも1つの好ましくは透明または半透明のカバー層、およびカバー層とベース層との間に配置され、装飾要素を含む装飾層からなる。射出成形品の生産は、
-装飾要素がカバー層に適用され、
-ベース層が、プラスチック射出成形によって装飾要素に適用される
方法で実行され得る。
【0002】
プロセスは、自動車、航空機および家具産業用の装飾およびクラッド部品の生産、ならびに美術品のデザインに使用することができる。
【背景技術】
【0003】
射出成形は、装飾層(例えば、アルミニウム、木材単板、印刷装飾フィルム)がツールのキャビティ内にはめ込まれた自動車内装用装飾要素を生産するための既知の手順である。接着層は、ツールに面する装飾層の内面上に接着促進剤として積層される。次いで、射出成形品のベース層は、熱可塑性材料を鋳型キャビティ内に射出することによって形成される。射出プロセス中、装飾層は鋳型キャビティの内面に押し付けられ、装飾層は積層した接着層を介してベース層に接着する。射出成形プロセスの別の既知の変形例では、装飾層は、射出成形ツールにはめ込まれる前に予め形成される。この方法を使用すると、装飾層によって、例えば鋳造で可能であるよりもはるかに安価に審美的な構成要素を生産することができる。射出成形プロセスによって、連続する装飾面だけでなく、いくつかの個々の装飾要素からなる装飾面も固定することができる。別々になった装飾要素を使用する場合、流入するプラスチックが装飾要素を洗い流し、その結果、装飾要素が違って配置されるようになり、表面上のそれらの分布が変化するという問題がある。この問題に対する解決策は、例えば、公開された独国特許出願公開第102012016147A1号明細書に提供されており、この文献では、熱可塑性プラスチックベース層が、補強目的のために二層の表面装飾上に射出される。ここに記載の方法によれば、いくつかの個々の装飾要素からなる第2の装飾層は、第1の連続した全面装飾層上に接着される。次いで、プラスチックベース層を第1の連続した装飾層上に射出成形し、必要に応じて、第2の装飾層の表面上の保護層として機能するカバー層を適用する。しかしながら、この解決策は、装飾層のいずれもが射出されたプラスチックベース層に埋め込まれておらず、その結果、装飾層は機械的応力によってベース層から容易に剥離し得るという欠点を有する。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、従来技術の欠点を回避し、いくつかの個々の装飾要素からなる装飾層のパターンおよびデザインを射出成形プロセスの直前に所望に応じて形成することができ、このパターンおよび/またはこのデザインが射出成形プロセス中に不変のままであるように、射出成形プロセスを修正することである。
【0005】
本発明の別の目的は、より強い表面接着および個々の層の間のより高い結合力を確保し、それによって完成した射出成形品の耐荷重能力および寿命を増加させる射出成形品およびその生産方法を提供することである。
【0006】
本発明の基礎となる知識によれば、カバー層上に予め形成された装飾パターンは、装飾層を形成する個々の装飾要素とカバー層との間に十分な接着が達成される場合、射出成形プロセスの個々の工程の間、本質的に不変のままである。加えて、装飾層の装飾要素が隣接する層に少なくとも部分的に埋め込まれる場合、個々の層間の結合力を著しく増加させることができる。
【0007】
目的に従って、プラスチックベース層、好ましくは透明または半透明のカバー層、およびいくつかの個々の装飾要素からなり、かつカバー層とベース層との間に位置する装飾層も有する射出成形品から始める。本発明によれば、装飾層の装飾要素は、射出成形品のベース層およびカバー層の両方に埋め込まれる。個々の装飾要素の平均断面積のサイズに基づくカバー層への埋込み度は、好ましくは1~90%であり、装飾要素の残りの部分はベース層に埋め込まれる。射出成形品のこのような構造により、一方では、装飾層の装飾要素とカバー層との間に十分な接着がもたらされることを確実にすることができ、その結果、元々形成されたパターンおよびデザインは、射出成形プロセス中に本質的に不変のままである。一方、装飾層の装飾要素は、カバー層およびベース層に少なくとも部分的に埋め込まれ、これにより個々の層間の結合力が大幅に増加するため、機械的応力が発生した場合でも、製品の耐荷重能力および寿命がその使用中に保証される。
【0008】
本発明による射出成形品の好ましい実施形態では、カバー層は、硬化前に装飾要素の位置を確実にする接着面を有する熱硬化性プラスチックからなる。装飾要素は、所定のパターンに従って、またはランダムなパターンで(例えば、散布(sprinkling)によって)接着面を有するカバー層に適用することができる。カバー層の粘着性表面のために、装飾要素の配置は、射出成形プロセスの工程中に不変のままである。
【0009】
本発明に従って生産される射出成形品の別の可能な実施形態では、カバー層は、透明または半透明の外側の耐荷重性プラスチック層を含み、装飾要素に面するその内面上に、硬化前に装飾要素の位置を固定するための接着層として機能する熱硬化性プラスチック層が適用される。
【0010】
本発明に従って生産される射出成形品のさらに可能な実施形態では、ベース層、装飾要素を有する層、およびカバー層からなるユニットは、第2の同一の多層ユニットと組み合わされ、外側のベース層は透明または半透明のプラスチックから作られる。
【0011】
本発明に従って生産される射出成形品では、ベース層および接着層を形成するカバー層は、熱可塑性または熱硬化性プラスチックから形成される。外層を形成するカバー層の耐摩耗性を高めるために、熱硬化性プラスチックを使用することが好ましい。
【0012】
本発明に従って生産される射出成形品では、装飾要素は、廃棄物および/または天然材料から形成される。
【0013】
本発明に従って、装飾要素はカバー層に適用され、ベース層は射出成形によって装飾要素に適用される、射出成形品の生産に適した方法から始める。
【0014】
本発明による方法では、
-粘着性表面を有するカバー層に個々の装飾要素が適用され、
-装飾要素は、個々の装飾要素の平均断面積のサイズに基づいて、好ましくは1~90%の埋込み度でカバー層に埋め込まれ、
-粘着性カバー層が乾燥するのを待ち、
-ベース層は、装飾要素の残りの部分を埋め込むように射出成形によって装飾要素に適用される。装飾要素のサイズに基づくベース層への埋込み度は、好ましくは99~10%である。
【0015】
本発明による方法では、廃棄物および/または天然材料が装飾要素として使用される。装飾要素は、接着層として使用されるカバー層に、所定のパターンに従って、または例えば散布によってランダムなパターンで適用される。この配置は、特にカバー層が硬化した後のカバー層の接着強度に起因して、射出成形プロセス中に実質的に不変のままである。
【0016】
本発明による方法の好ましい変形例では、粘着性表面を有するカバー層は、射出成形ツールの形状に従って予め形成されたキャリア層に適用される。この予め形成されたキャリア層は、完成した射出成形品の外面の形状を有する。プラスチックキャリア層の場合、装飾要素の視認性を確保するために、透明または半透明のプラスチックを使用することが好ましい。
【0017】
本発明による方法のさらに可能な変形例では、金属製のキャリア層が使用され、これは射出成形プロセス後に射出成形品から分離される。金属キャリア層としては、変形しやすいことから、好ましくはアルミニウムキャリア層が使用される。このキャリア層は、例えば冷間成形によって金属シートから形成されるが、他の任意の公知の形成プロセスを使用することができる。
【0018】
本発明による方法のさらに可能な変形例では、接着性カバー層は、射出成形ツールの好ましくは下側の内面に適用される。
【0019】
本発明による方法のさらに好ましい変形例では、プラスチック製の外側キャリア層が使用され、装飾要素に面するその内面上に、硬化前に装飾要素を固定するための粘着性表面として機能する熱硬化性プラスチックが適用される。
【0020】
本発明による方法のさらに可能な変形例では、ベース層、装飾要素を有する中間層、およびカバー層からなる多層構造体は、第2の同一に構成された多層構造体と組み合わされ、したがって多層デザインが形成され、その外側のベース層は透明または半透明のプラスチックから作られる。
なお、下記[1]から[15]及び<1>から<6>は、いずれも本発明の一形態又は一態様である。
[1]
プラスチックベース層(4)、好ましくは透明または半透明の材料のカバー層(2)、および前記ベース層(4)と前記カバー層(2)との間に配置され、かつ装飾要素(3)を有する装飾層を有する射出成形品であって、前記装飾要素(3)は、前記ベース層(4)および前記カバー層(2)の両方に少なくとも部分的に埋め込まれることを特徴とする、射出成形品。
[2]
前記カバー層(2)が熱硬化性プラスチックからなり、硬化前に前記装飾要素(3)を固定するための粘着性表面を有することを特徴とする、[1]に記載の射出成形品。
[3]
前記カバー層(2)が、外側の透明または半透明のプラスチックキャリア層(5)を含み、前記装飾要素(3)に面する内面上に、硬化前に前記装飾要素(3)を固定するための粘着性表面を有する熱硬化性プラスチック層が適用されることを特徴とする、[1]に記載の射出成形品。
[4]
ベース層(4)、装飾要素(3)を有する中間層、およびカバー層(2)を含む多層構造体、ならびにベース層(4’)、装飾要素(3’)を有する中間層、カバー層(2’)を含む第2の構造体が一緒になって多層デザインを形成し、前記外側のベース層(4’)が透明または半透明のプラスチックから作られることを特徴とする、[1]から[3]のいずれか一項に記載の射出成形品。
[5]
前記ベース層(4および4’)が熱可塑性材料から作られることを特徴とする、[1]から[4]のいずれか一項に記載の射出成形品。
[6]
前記粘着性カバー層(2および2’)が、熱によって硬化することができるプラスチックから作られることを特徴とする、[1]から[5]のいずれか一項に記載の射出成形品。
[7]
前記粘着性カバー層(2および2’)を担持する前記キャリア層(5および5’)が、熱可塑性材料から作られることを特徴とする、[1]から[6]のいずれか一項に記載の射出成形品。
[8]
前記装飾要素(3)が廃棄物から作製されることを特徴とする、[1]から[7]のいずれか一項に記載の射出成形品。
[9]
前記装飾要素(3)が天然材料から作製されることを特徴とする、[1]から[7]のいずれか一項に記載の射出成形品。
[10]
射出成形製品を生産するための方法であって、
-複数の個々の装飾要素(3)は粘着性カバー層(2)上に配置され、
-ベース層(4)は射出成形によって前記装飾要素(3)に適用される方法において、
-前記装飾要素(3)は前記カバー層(2)の粘着性表面に適用され、
-前記装飾要素(3)は前記粘着性カバー層に少なくとも部分的に埋め込まれ、
-前記カバー層(2)が乾燥するのを待ち、
-ベース層(4)は、前記ベース層が前記装飾要素の残りの部分を埋め込むように、射出成形によって前記装飾要素(3)に適用されることを特徴とする、方法。
[11]
接着面を有する前記カバー層(2)が、予め相応に形成されたキャリア層(5および5’)に適用されることを特徴とする、[10]に記載の方法。
[12]
予め形成された金属部品が前記キャリア層(5)として使用され、前記キャリア層(5)が射出成形後に製品から除去されることを特徴とする、[11]に記載の方法。
[13]
接着面を有する前記カバー層(2)が、射出成形ツール(1)の内面、好ましくはその下部の内面に適用されることを特徴とする、[10]に記載の方法。
[14]
外側の透明または半透明のプラスチックキャリア層(5)は前記カバー層(2)として使用され、前記装飾要素(3)に面するその内面上に、硬化前に前記装飾要素(3)を固定するための接着面を有する熱硬化性プラスチックが適用されることを特徴とする、[10]から[13]のいずれか一項に記載の方法。
[15]
ベース層(4)、装飾要素(3)を有する中間層、およびカバー層(2)を含む多層デザインと、ベース層(4’)、装飾要素(3’)を有する中間層、およびカバー層(2’)をさらに含む第2のデザインとから、多層構造体が形成され、前記外側ベース層(4’)が透明または半透明のプラスチックから作られることを特徴とする、[10]から[14]のいずれか一項に記載の方法。
<1>
装飾層が射出成形ツールにはめ込まれ、そこでバック射出される(back-injected)ことにより、該装飾層が射出されたプラスチック層に埋め込まれる、射出成形品を生産するための方法であって、
a.複数の個々の装飾要素(3)が用いられ、前記装飾要素(3)はランダムな方法で、好ましくは散布によって、適用され、
b.粘着性の表面を有する外側のキャリア層(5)が、射出成形プロセスの間前記個々の装飾要素(3)を支持しかつ固定するために使用され、
前記キャリア層は、完成した射出成形品の装飾表面の形状に従って形状が付与され、好ましくは金属シートで作られ、
ここで前記射出成形の前に前記粘着性の層が硬化されて、前記キャリア層(5)の形状に従った透明または半透明の装飾性のカバー層(2)を形成し、
c.前記キャリア層(5)が前記ベース層(4)の射出成形後に完成製品から除去されることを特徴とする、上記方法。
<2>
ベース層(4)、装飾要素(3)を有する中間層、およびカバー層(2)を含む多層デザインと、ベース層(4’)、装飾要素(3’)を有する中間層、およびカバー層(2’)を同じく含む第2のデザインとから、多層構造体が形成され、前記外側ベース層(4’)が透明または半透明のプラスチックで作られることを特徴とする、<1>に記載の方法。
<3>
プラスチックベース層(4)、透明または半透明のカバー層(2)、および前記ベース層(4)と前記カバー層(2)との間に配置される装飾層を有する射出成形品であって、
<1に従って製造される射出成形品の装飾性のカバー層(2)が、散布によってランダムに配置された複数の個々の装飾要素(3)から形成されることを特徴とする、射出成形品。
<4>
ベース層(4)、装飾要素(3)を有する中間層、およびカバー層(2)を含む多層構造体(5’)、ならびにベース層(4’)、装飾要素(3’)を有する中間層、およびカバー層(2’)を含む第2の構造体が一緒になって多層デザインを形成し、前記外側のベース層(4)が透明または半透明のプラスチックで作られることを特徴とする、<3>に記載の射出成形品。
<5>
前記装飾要素(3)が廃棄物から形成されることを特徴とする、<3>及び<4>のいずれか一項に記載の射出成形品。
<6>
前記装飾要素(3)が天然材料から形成されることを特徴とする、<3>及び<4>のいずれか一項に記載の射出成形品。
【0021】
以下、本発明の射出成形品および射出成形品を生産するための方法を、図面に示す例示的な実施形態を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】キャリア層5に適用された接着面(接着面上に装飾要素3が配置されている)を有するカバー層2を断面図で示す。
図2】2部品の射出成形ツール1の下半分にはめ込まれた、図1による配置を同様に断面図で示す。
図3】射出成形後の図2によるベース層4を有する配置を示す。
図4】ツールから取り外された後のキャリア層5を有する射出成形品を示す。
図5】キャリア層5が取り外された後の図4による射出成形品を示す。
図6】2部品射出成形ツール1の下半分に適用された粘着性表面(粘着性表面上に装飾要素3が配置されている)を有するカバー層2を断面図で示す。
図7】射出成形後の図6によるベース層4を有する配置を示す。
図8】ツールから取り外された後の、カバー層2、装飾要素3、およびベース層4を有する射出成形品を示す。
図9】ツールから取り外された後の、カバー層2、装飾要素3、さらなるカバー層2’用のキャリア層5’としての透明または半透明のベース層4、装飾要素を有するさらなる層3’、およびさらなるベース層4’を有する射出成形品を示す。
図10】透明または半透明のプラスチック製のキャリア層5、カバー層2、装飾要素3、別のカバー層2’用のキャリア層5’としての透明または半透明のベース層4、装飾要素3’を有するさらなる層、およびさらなるベース層4’を有する、ツールから取り外された射出成形品を示す。
【0023】
図1図5は、代表例として、キャリア層5を伴う本発明による方法の可能な変形例の必須の工程を示す。図6図8は、代表例として、装飾要素3が射出成形ツール1の下半分の内面に直接配置される、さらに可能な実施形態の必須の工程を示す。必要な接着を達成するために、ツールのこの内面に粘着性カバー層2が設けられる。
【0024】
図1は、キャリア層5に適用された接着性カバー層2、および接着性カバー層2によってキャリア層5上に固定された装飾要素3を示す。カバー層2は、例えば、熱硬化性プラスチック製でもよく、これは、キャリア層に適用される前は液体であり、よって加工が容易である。廃棄物、天然材料、または他の比較的小さい、規則的または不規則な形状の要素からなることができる装飾要素3を、所定のパターン、または例えば散布によってランダムにカバー層2に適用することができる。装飾要素3のサイズは、好ましくは1から10mmの間、好ましくは2から8mmの間、または好ましくは3から6mmの間である。装飾要素3は、カバー層2に埋め込まれ、カバー層2への埋込み度は、個々の装飾要素3の平均断面積のサイズに基づいて、好ましくは1~90%である。カバー層2の厚さは、好ましくは0.1mmから5mmの間、好ましくは0.2mmから3mmの間、および好ましくは0.5mmから2mmの間である。
【0025】
装飾要素3は本質的に液体または少なくとも塗り広げ可能な粘着性カバー層2上に配置され、必要に応じて、さらなる粘着性カバー層が適用された後、カバー層2の乾燥、すなわち装飾要素3とカバー層2との間の接着結合の形成が待たれる。
【0026】
次いで、カバー層2および装飾要素3を有するキャリア層5を、図2に示すように、射出成形ツール、好ましくはその下半分にはめ込む。2つの鋳型半体が閉じられた後、射出成形プロセスを使用して、鋳型1のキャビティをプラスチック製のベース層4で充填することが可能である。図3は、射出成形プロセス後の射出成形ツール1の状態を示す。ベース層4は、好ましくは透明でも半透明でもなく、むしろ着色プラスチックまたはそのベース材料で着色されたプラスチックである熱可塑性プラスチックから作られることが好ましい。装飾要素3およびベース層4の色は、好ましくは異なるが、得られる装飾面の外観により所望に応じて選択することができる。図4は、ツールから取り外された後の完成した射出成形品を示し、装飾要素3もベース層4に埋め込まれるという点で、図1に示す配置とは異なる。この図では、ベース層4は装飾要素3の上方に示されているが、ピースの組込み位置では、ベース層はピースの不可視な背面側にある。
【0027】
装飾要素3の残りの部分は、その層の厚さが少なくとも装飾要素3の最大厚さに相当するため、ベース層4に埋め込まれる。装飾要素はまた、装飾要素3の最大寸法に基づく埋込み度が好ましくは99%から10%の間であるように、ベース層4に埋め込まれる。
【0028】
キャリア層5が金属シート(例えばアルミニウム)からなる場合、キャリア層5は、好ましくは、射出成形品がツール1から取り外された後に除去され、その結果、キャリア層5は射出成形品の構成要素に残らない。キャリア層5が除去された後、図5に示すように、透明または半透明の材料から作られたカバー層、下にある装飾要素3の装飾層、およびその後ろのベース層4が視認されるようになる。触覚および審美的効果を最適化するために、その後、カバー層2の表面を研削および/または研磨し、必要に応じてそれを塗装することが可能である。研削により、カバー層2を少なくとも部分的に除去することができる。カバー層2を完全に除去すると、装飾要素3が露出し、直接的な触感があり視認可能である。カバー層が完全に除去された後、装飾要素3を審美的または保護的なラッカー層で覆うことが望ましい。
【0029】
キャリア層5が、好ましくは透明または半透明の材料からなる予め形成されたプラスチックキャリア層である場合、ツール1から取り外された後の射出成形品からキャリア層5を除去する必要はない。この場合、キャリア層5は、装飾要素3を固定するカバー層2、および装飾要素3を裏面で埋め込むベース層4と共に、射出成形製品の構成要素を形成する。そのようなキャリア層はまた、任意に、図4および図5に示す射出成形品のデザインと同一であってもよく、その場合、図9および図10に示すように、多層射出成形製品が得られる。
【0030】
本発明による方法の別の変形例では、図6に示すように、カバー層2はキャリア層5に適用されず、むしろ射出成形ツール1の下半分の内面に直接適用される。装飾要素3は、図1に示すのと同じ方法でカバー層2上に配置することができるので、詳細には再度説明しない。図7は、接着面または物質を有するカバー層2、装飾要素3を有する装飾層、および射出成形によってツール1のキャビティ内に形成されたベース層4からなる完成品を有する射出成形ツール1を示す。図8は、射出成形ツール1から取り外された後の完成した射出成形品を示す。このプロセス変形例ではキャリア層5が使用されないため、キャリア層5を除去する必要はない、つまりキャリア層5は射出成形製品の一部ではない。
【0031】
図4または図5による射出成形製品が図8による射出成形製品と組み合わされた射出成形品を、射出成形によって一方を他方に重ね合わせることによって形成することも可能である。このような多層射出成形品のデザインでは、視認できる側に面するベース層も、好ましくは透明または半透明の材料からなる。このような配置および適切な材料の選択により、図9および図10に示すように、装飾要素3を有する2つ以上の層が前後に見える。
【0032】
図5に示す射出成形品は、プラスチックベース層4、好ましくは透明または半透明のカバー層2、およびベース層4とカバー層2との間に配置された装飾要素3からなる装飾層を有し、装飾要素3を有する中間層は、ベース層4およびカバー層2に少なくとも部分的に埋め込まれる。装飾要素の厚さに基づくベース層への埋込み度は、好ましくは10~99%であり、装飾要素3の残りの部分はベース層に埋め込まれる。したがって、装飾要素の最大寸法に基づくカバー層への埋込み度は、好ましくは90~1%である。
【0033】
カバー層2は、例えば、硬化前に装飾要素3の位置を固定する粘着性表面を有する熱硬化性プラスチック製の層であるか、または、全体が接着剤などの接着材料から作られる。
【0034】
図4に示す射出成形品では、カバー層2は、透明または半透明の外側プラスチックキャリア層5を含み、装飾要素3に面するその内面上に、熱硬化性プラスチックが適用され、熱硬化性プラスチックは、硬化前に装飾要素3の位置を固定する粘着性表面を有するか、または全体が接着剤などの接着材料から作られる。
【0035】
図5の射出成形品は、多層射出成形品を生産するために、それ自体または図4に示す射出成形品と組み合わせることができる。これは、少なくとも2つのユニットからなり、各ユニットは、少なくとも1つのベース層4または4’、装飾要素3または3’を有する装飾層、およびカバー層4または4’を含み、外側のベース層4は、透明または半透明のプラスチックから作られる(図9および図10を参照されたい)。
【0036】
ベース層は、例えば熱可塑性材料からなり、接着層を形成するカバー層2は、好ましくは熱硬化性プラスチックから作られる。
【0037】
装飾要素3は、廃棄材料または天然材料であり得る。使用され得る廃棄材料としては、以下に限定されないが、製造プロセスからの廃棄物:木材チップ、金属削りくず、金属破片、プラスチック廃棄物、紙片、炭素、ガラスまたは玄武岩繊維、繊維屑、金属箔屑、塗装屑が挙げられる。使用可能な天然材料は、例えば、砂利、巻貝殻、イガイ、フルーツボウル、木材、鉱物であってもよいが、これらに限定されない。装飾要素3の配置は、達成される装飾的外観に応じて自由にデザインされてもよい。
【0038】
射出成形品を生産するための本発明による方法の可能な変形例では、方法の工程は以下の通りである:
a)キャリア層5を冷間成形によって金属シートから生産する工程、
b)キャリア層5を射出成形ツール1の下部にはめ込む工程、
c)カバー層2をキャリア層5に適用する工程、
d)装飾要素3をカバー層2上に散布する工程、
e)粘着性カバー層2が乾燥するのを待つ工程、
f)射出成形ツール1の半体を互いに接合し、射出成形ツール1を閉じる工程、
g)ベース層4を射出成形によって鋳型キャビティ内に形成する工程、
h)鋳型1を開き、射出成形品を取り外す工程、
i)キャリア層5を射出成形品から分離する工程。
【0039】
追加の工程として、露出したカバー層2の表面を必要に応じて加工することができる。例で指定されるプロセス工程b)は、プロセス工程d)の後にもまた使用されてもよい。プロセス工程c)は、工程d)の後に装飾要素3の十分な接着のために必要に応じて繰り返されてもよい。
【0040】
射出成形品を生産するための本発明によるプロセスのさらに可能な変形例では、プロセス工程は以下の通りである:
a)キャリア層5を透明または半透明のプラスチックから生産する工程、
b)キャリア層5を射出成形ツール1の下部にはめ込む工程、
c)カバー層2をキャリア層5に適用する工程、
d)装飾要素3をカバー層2上に散布する工程、
e)粘着性カバー層2が乾燥するのを待つ工程、
f)射出成形ツール1の半体を互いに接合し、射出成形ツール1を閉じる工程、
g)ベース層4を射出成形によって鋳型キャビティ内に形成する工程、
h)鋳型1を開き、射出成形品を取り外す工程。
【0041】
この変形例では、キャリア層5は、製品の一部を形成するため、完成した射出成形品から分離されない。例で指定されるプロセス工程b)は、プロセス工程d)の後にもまた任意に実施されてもよい。プロセス工程c)は、工程d)の後に装飾要素3の十分な接着のために必要に応じて繰り返されてもよい。
【0042】
射出成形品を生産するための本発明による方法のさらに好ましい変形例では、方法の工程は以下の通りである:
a)カバー層2を射出成形ツール1の下部の内面に適用する工程、
b)装飾要素3をカバー層2上に散布する工程、
c)粘着性カバー層2が乾燥するのを待つ工程、
d)射出成形ツール1の半体を互いに接合し、射出成形ツール1を閉じる工程、
e)ベース層4をツールキャビティ内に射出成形によって形成する工程、
f)ツール1を開き、射出成形品を取り外す工程。
【0043】
追加の工程として、露出したカバー層2の表面を必要に応じて加工してもよい。プロセス工程a)は、工程b)の後に装飾要素3の十分な接着のために必要に応じて繰り返されてもよい。
【0044】
方法の各例では、カバー層2は、接着面を有する透明または半透明の熱硬化性プラスチックを含む。
【0045】
本発明による射出成形品の利点は、カバー層2およびベース層4に埋め込まれた装飾要素3を高い強度で互いに接続することができ、それにより、射出成形中に装飾要素3が移動または再配置されるのを防止し、完成品については、構成要素の組立ておよび/または使用中に高い耐荷重能力が保証されることである。
【0046】
プロセスは、多くの変形形態で実施することができ、可能な製品変形形態の数を大幅に増加させる。1構成要素だけでなく、2構成要素または多構成要素の射出成形プロセスを使用することも可能である。
【0047】
使用される用語:
1 射出鋳型
2、2’ カバー層(粘着性表面を有する)
3、3’ 装飾要素
4、4’ ベース層
5、5’ キャリア層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10