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特許7585317NIR光散乱コーティングおよびそれを製造するための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】NIR光散乱コーティングおよびそれを製造するための組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20241111BHJP
   C09D 5/33 20060101ALI20241111BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20241111BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/33
C09D7/61
C09D5/02
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022523185
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2020079154
(87)【国際公開番号】W WO2021074360
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】19203762.0
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】チェイス,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヒルダース,マシュー,イアン
(72)【発明者】
【氏名】クルトグル,ユヌス,エムレ
(72)【発明者】
【氏名】ムンドゥス,マルクス
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-104707(JP,A)
【文献】特開2009-28689(JP,A)
【文献】国際公開第2008/150011(WO,A1)
【文献】特表2006-516154(JP,A)
【文献】特表2003-515651(JP,A)
【文献】特開2003-132484(JP,A)
【文献】特開2003-272087(JP,A)
【文献】特表2015-535560(JP,A)
【文献】特開2016-97594(JP,A)
【文献】特開2013-80222(JP,A)
【文献】特開2013-83974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースコートまたはクリアコート組成物であるコーティング組成物であって、
(A)皮膜形成バインダーとしての、および成分(A)としての少なくとも1種のポリマー、
(B)少なくとも1種の貴金属および/またはその合金および/または酸化物を含む成分(B)としてのナノ粒子であって、前記貴金属が各場合に、金、銀、銅、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム、イリジウム、オスミウムおよびプラチナならびにこれらの混合物からなる群から独立して選択される、ナノ粒子、
(C)成分(C)としての水および/または少なくとも1種の有機溶媒であって、前記成分(C)が、前記コーティング組成物の総質量に対して少なくとも30質量%の量で前記コーティング組成物中に存在する水および/または少なくとも1種の有機溶媒、
を含み、
成分(B)として存在する前記ナノ粒子が、20nm~<500nmの範囲の平均粒径を有し、前記コーティング組成物の全固形分に対して、0.01質量%~10.0質量%の範囲の量でコーティング組成物中に存在し、LIDAR視認性用途のコーティングを製造するための、コーティング組成物。
【請求項2】
成分(B)として存在する前記ナノ粒子が、25nm~<300nmの範囲の平均粒径を有することを特徴とする、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
成分(B)として存在する前記ナノ粒子が、前記コーティング組成物の全固形分に対して、0.01質量%~6.0質量%の範囲の量で前記コーティング組成物中に存在することを特徴とする請求項1または2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
成分(B)として存在する前記ナノ粒子が、前記コーティング組成物の全固形分に対して、0.01質量%~2.0質量%の範囲の量で前記コーティング組成物中に存在することを特徴とする請求項1または2に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
成分(B)として存在する前記ナノ粒子が、前記コーティング組成物の全固形分に対して、0.01質量%~1.0質量%の範囲の量で前記コーティング組成物中に存在することを特徴とする請求項1または2に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
成分(B)として存在する前記ナノ粒子が、少なくとも1種の貴金属、少なくとも1種 の貴金属合金および/または少なくとも1種の貴金属酸化物を含み、前記貴金属が、金、 銀、銅およびそれらの混合物からなる群から各場合に独立して選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記コーティング組成物の固形分が、>5~50質量%の範囲であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
成分(B)として存在する前記ナノ粒子が、
(i)少なくとも1種の貴金属を含むまたは本質的にそれらからなるプレートの形態を有するナノ粒子であって、前記プレートが任意にシェルを有するナノ粒子、
(ii)コアと、少なくとも1種の貴金属からなるシェルとを有するコア/シェル配置を有するナノ粒子、ならびに
(iii)酸化銅および/または酸化銀(I)を含む、または本質的にそれらからなるナノ粒子、
からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
成分(B)として存在する前記ナノ粒子が、
(i)銀を含む、または本質的に銀からなるプレートの形態を有するナノ粒子であって、前記プレートが、20nm~<200nmの範囲の平均粒径および5nm~35nmの範囲の平均プレート厚を有し、前記プレートが、任意に10nm~50nmの範囲の平均シェル厚を有するシリカからなるシェルを有する、ナノ粒子、
(ii)シリカのコアと金からなるシェルとを有するコア/シェル配置を有するナノ粒子であって、前記コアが50nm~<250nmの範囲の平均粒径を有し、前記シェルが10nm~50nmの範囲の平均厚さを有するナノ粒子、
からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
700~1560nmの波長を有する近赤外線(NIR)光を散乱するが、350~<700nmの波長を有する可視スペクトルの光を実質的に散乱および吸収しないことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
顔料である成分をさらに含有しないことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的にコーティング膜を形成する方法であって、前記方法が、少なくとも工程(a)、すなわち
(a)任意にプレコートされた基材の少なくとも1つの表面上に、請求項1から11のいずれか一項に記載のコーティング組成物を少なくとも部分的に塗布して、前記基材の前記表面上にコーティング膜を形成する工程、
を含む、方法。
【請求項13】
基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的にコーティングを形成する方法であって、前記方法が、請求項12で定義される少なくとも工程(a)、および少なくとも工程(b)、すなわち
(b)工程(a)を行った後に得られた前記コーティング膜を硬化して、前記基材の前記表面上にコーティングを形成する工程、
を含む、方法。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか一項に記載のコーティング組成物から、もしくは請求項12に記載の方法によって得られるコーティング膜、または請求項1から11のいずれか一項に記載のコーティング組成物から、もしくは請求項13に記載の方法によって得られるコーティング。
【請求項15】
請求項13に記載の方法によって得られる、少なくとも部分的にコーティングされた基材。
【請求項16】
請求項13に記載のコーティング方法を行う前の基材それ自体が、NIR反射性でないか、または本質的にNIR反射性でない基材であることを特徴とする、請求項15に記載の少なくとも部分的にコーティングされた基材。
【請求項17】
請求項13に記載のコーティング方法を行う前の基材それ自体が、暗色のまたは透明な基材であることを特徴とする、請求項15に記載の少なくとも部分的にコーティングされた基材。
【請求項18】
LIDAR視認性用途で、請求項14に記載のコーティング、および/または請求項15に記載の少なくとも部分的にコーティングされた基材、および/または前記基材から製造される物体、を使用する方法。
【請求項19】
自動運転車を含む自律システムのために、請求項14に記載のコーティング、および/または請求項15に記載の少なくとも部分的にコーティングされた基材、および/または前記基材から製造される物体、を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースコートまたはクリアコート組成物であるコーティング組成物であって、皮膜形成バインダーとしての少なくとも1種のポリマー(A)、少なくとも1種の貴金属および/またはその少なくとも1種の合金および/または酸化物を含むナノ粒子(B)であって、貴金属が、各場合に、Au、Ag、Cu、Pd、Ru、Rh、Re、Ir、OsおよびPtならびにそれらの混合物からなる群から独立して選択され、これらのナノ粒子が20nm~<500nmの範囲の平均粒径を有し、組成物の全固形分に対して0.01質量%~10.0質量%の範囲の量でコーティング組成物中に存在する、ナノ粒子(B)、ならびに、組成物の総質量に対して、少なくとも30質量%の量でコーティング組成物中に存在する成分(C)としての水および/または少なくとも1種の有機溶媒を含む、コーティング組成物、コーティング組成物から得られるコーティング膜およびコーティング、コーティング膜およびコーティングを基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的に形成する方法、ならびに本発明の方法により得られる少なくとも部分的にコーティングされた基材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動運転(「自律走行」)車両や、自律走行車両に搭載されたセンサーによって検出可能なマーキングを含む車両周囲の他の物体に関する技術が進歩している。自律走行車は、センサー、カメラ、レーダー、超音波、レーザーなどの検出システムを組み合わせて使用して、自律走行車がそのような物体を安全に回避して移動できるように、障害物を検出して位置を特定する。一部の検出システムは、長距離で、または低照度条件、霧、雨、雪などの悪天候、もしくは大気中の光散乱粒子(スモッグや塵など)のある他の条件など、理想的でない環境での物体検出能力に制限がある。このような制限により、自律走行車が障害物を安全に回避して移動することができない場合がある。
【0003】
LIDAR(light imaging, detection and ranging)(光イメージング、検出、レンジング)は、このような自律走行車の中で、物体認識の主要なソースとして展開できるリモートセンシング技術である。LIDARは、周囲の環境をレーザー光で照射することにより、進路上にある物体との距離をリアルタイムにマッピングし、ソフトウェアと組み合わせることで、近傍にある物体に対して安全に反応することができる。例えば、物体が車両に接近しすぎた場合、ソフトウェアが物体を回避するような反応をすることができる。LIDARは、その照明源として近赤外光(近赤外光またはNIR光)を利用することが公知であるが、これは課題をもたらす。多くの明るい色の物体はこの種の光を比較的容易に反射するが、特に暗色で透明な物体は光を吸収または通過するため、分解能が低下し、物体がLIDARによって十分に観測されず、自律走行システムによって避けられないという、潜在的事例を生じる。米国特許出願公開第2016/0146926(A1)号は、このようなLIDAR装置とLIDARターゲット、およびLIDARターゲットに接触している再帰反射材を含むシステムに関する。
【0004】
物体が光を反射する能力は、そのバルクおよび表面の特性に依存し、鏡面反射または拡散として現れる。光の鏡面反射は、光源から一方向に入射した光が、入射波と同じ角度で一出射方向に反射される場合に起こる。拡散反射は、光源から一方向に入射した光が、多くの角度で反射する場合に起こる。理論的には、鏡面反射と拡散反射はどちらも自律走行車のLIDAR技術に利用できるが、実際にはかなり難しい。鏡面反射では、輝度の多くは、入射した角度で観測される。したがって、光源側に検出器を配置した移動車両では、このことが、入射角が縦列した光源と検出器の位置関係からずれる場合に、問題になり得る。対照的に、拡散反射は全方向から等価な輝度を示すため、この懸念を軽減することができ、すべての角度で検出することが可能となる。
【0005】
現在のコーティングのほとんどは、耐久性や美観を向上させるために車体などの基材に塗布されるが、通常は、LIDAR技術に対する視認性を高める目的で近赤外光を乱反射させる十分な機能を付与していない。
【0006】
国際公開第2018/034261(A1)号パンフレットは、赤外光反射特性および可視光透過特性、ならびに、低ヘイズを有するコーティング膜を開示する。このコーティング膜は、板状顔料粒子と樹脂成分とを含むコーティング材料組成物を用いて作製される。板状顔料粒子は、誘電層と金属薄膜層との積層体である。積層体では、誘電層と金属薄膜層とは交互に積層され、誘電層は積層体の最も外側に配置されている。したがって、少なくとも2個の誘電層が積層体に存在する必要がある。顔料粒子は、1.000nm以上の平均一次粒径を有する。国際公開第2018/034261(A1)号パンフレットに開示された顔料粒子の使用は、スプレー用途で使用される場合、コーティング中の粒子の配向をもたらし、これは、むしろ鏡面反射を生じ、これは、次に、コーティングされた物体がLIDARで検出されるべき角度を、制限するという前述の欠点を有することになる。さらに、1.000nm以上の比較的大きな粒径の顔料粒子を用いることにより、粒子が完全に配向していない場合は、コーティング膜から長さ方向に突出することが多い。これは、次に、コーティングの光沢の望ましくない減少および許容されない外観をもたらすことになる。
【0007】
さらに、米国特許出願公開第2016/0152834(A1)号は、光沢を向上させるために樹脂基材の表面に形成される装飾コーティングを開示する。コーティングは、コーティング中に分散している銀または銀合金からなる微粒子と、粒子を結合する光透過性バインダー樹脂とを含む。米国特許出願公開第2016/0152834(A1)号の基材は、レーダー装置の電磁波の経路上に配置される。粒子は、存在する粒子の「液体金属効果」によるコーティングの十分な金属光沢を確保するために、米国特許出願公開第2016/0152834(A1)号に開示されたコーティングの総質量に対して、少なくとも85~99質量%の量でコーティング中に存在する。任意の独立した光散乱は、粒子同士の相互作用のために可能ではない。したがって、米国特許出願公開第2016/0152834(A1)号のコーティングは、LIDAR技術に対する視認性を高める目的で近赤外光を乱反射させる十分な機能性を付与することができない。さらに、これらのコーティングは、色に実質的な影響を与える可能性があり、これは望ましくない。
【0008】
英国特許出願公開第2,455,991(A)号は、光で照らされたときに物品に着色した外観を与える方法を開示している。この方法は、例えばPVDまたはCVDプロセスによって物品の表面に透明無機コーティングを堆積させることと、プラズモン共鳴によって選択可能な色または色相を生成することができる複数の分散粒子をコーティング内に組み込むこととからなる。この文献に開示されたコーティングは、非常に鏡面的な粒子の反射を有する。したがって、LiDARの視認性は、(金属の配向に起因する)法線角度に近い非常に狭い範囲の角度においてのみ向上する。したがって、英国特許出願公開第2,455,991(A)号のコーティングは、LIDAR技術の視認性を高める目的で、近赤外光を乱反射させる十分な機能を付与することができない。
【0009】
米国特許出願公開第2018/0120435(A1)号は、近赤外電磁放射によって照射される車両などの物体の表面の検出距離を増加する方法、ならびに、例えばLIDAR用途で使用するための、車両の接近を検出するためのシステムなどの対応する検出システムに関する。前記物体は、NIR反射コーティングを有し、これは、第1(およびNIR-透明)層と第2(およびNIR-反射)コーティング層とを含んでもよく、第2コーティング層は第1コーティング層の下にある。NIR-反射層はNIR反射顔料を含み、一方、NIR-透明層はNIR-透明顔料を含む。前記第2層およびNIR反射層はプライマーサーフェイサーであってもよく、第2層上に塗布される第1層およびNIR透明層は、色付与ベースコートであってもよいし、クリアコート層であってもよい。任意に、クリアコート層は、その後、第1の層上にさらに塗布されてもよい。あるいは、第1層およびNIR透明層は、トップコート層であってもよい。しかし、NIR反射顔料をプライマーサーフェイサー層、すなわち米国特許出願公開第2018/0120435(A1)号に開示されたマルチコートの第2層に組み込むためには、積層を効果的にするために、その上に塗布されるベースコートまたはトップコートに比較的に高価なNIR透明(黒)顔料を存在させる必要があり、これは少なくとも経済的理由で不利である。さらに、この手法では、例えば、ベースコートまたはトップコートに従来のカーボンブラック顔料を使用することができない。さらに、従来のコーティング用途では、通常、コーティング全体の色と同様のプライマーの色を有することが好ましいので、プライマー層に対する欠けの不良は、あったとしても、それほど明白ではない。しかし、米国特許出願公開第2018/0120435(A1)号に開示された手法では、白色または淡色のプライマーが必要であり、欠けが生じた場合に明白な不良になる。最後に、再仕上げの場合、米国特許出願公開第2018/0120435(A1)号の手法では、プライマー(第2の層として)、ベースコート(第1の層として)およびクリアコートまたはプライマーおよびトップコート層をすべて再塗布すること、すなわち、使用する基材に少なくとも2層または3層を再塗布することが必要である。しかし、特に経済的および生態学的な理由から、再塗布される層の数をできるだけ減らすことが望ましいであろう。さらに、米国特許出願公開第2018/0120435(A1)号のコーティングは、色に実質的な影響を及ぼす可能性があり、これは望ましくない。
【0010】
したがって、特にLIDAR技術に対する視認性を高める目的で、可視光領域でヘイズおよび/または色をほとんどまたは全く付与せずに、すなわち可視スペクトルにおいて最小限の散乱および吸収を付与しながら、特に暗色で透明な物体から、特に拡散する性質を有する散乱でNIR光の反射を高めることができるコーティングに対する需要が存在する。また、良好な外観および/または良好な光沢をさらに有し、さらに、特に再仕上げ用途のために、効率的で環境に優しく、コストの低い方法によって製造することができる、このようなコーティングに対する需要も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許出願公開第2016/0146926(A1)号
【文献】国際公開第2018/034261(A1)号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第2016/0152834(A1)号
【文献】英国特許出願公開第2,455,991(A)号
【文献】米国特許出願公開第2018/0120435(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の基礎となる目的は、特にLIDAR技術に対する視認性を高める目的で、可視光領域においてヘイズおよび/または色をほとんどまたは全く付与せずに、すなわち可視スペクトルにおいて最小の散乱および吸収を付与しながら、特に暗色で透明な物体から、特に拡散する性質を有する散乱でNIR光の反射を高めることができるコーティングを提供することである。さらに、本発明の基礎となるさらなる目的は、良好な外観特性および/または良好な光沢を示し、さらに、効率的で環境に優しく、コストの低い再仕上げ方法によって製造することができる、このようなコーティングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、本願の請求項の主題、ならびに本明細書に開示されるその好ましい実施形態、すなわち本明細書に記載される主題によって解決された。
【0014】
本発明の第1の主題は、ベースコートまたはクリアコート組成物であるコーティング組成物であって、
(A)皮膜形成バインダーとしての、および成分(A)としての少なくとも1種のポリマー、
(B)少なくとも1種の貴金属および/またはその合金および/または酸化物、すなわち、少なくとも1種の貴金属および/または少なくとも1種の貴金属合金および/または少なくとも1種の貴金属酸化物を含む成分(B)としてのナノ粒子であって、貴金属が各場合に、金、銀、銅、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム、イリジウム、オスミウムおよびプラチナならびにこれらの混合物からなる群から独立して選択される、ナノ粒子、
(C)成分(C)としての水および/または少なくとも1種の有機溶媒であって、前記成分(C)が、組成物の総質量に対して少なくとも30質量%の量でコーティング組成物中に存在する水および/または少なくとも1種の有機溶媒、
を含み、
成分(B)として存在するナノ粒子が、20nm~<500nmの範囲の平均粒径を有し、組成物の全固形分に対して、0.01質量%~10.0質量%の範囲の量でコーティング組成物中に存在する、コーティング組成物である。
【0015】
本発明のさらなる主題は、基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的にコーティング膜を形成する方法であって、前記方法が少なくとも工程(a)、すなわち
(a)本発明のコーティング組成物を、任意にプレコートされた基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的に塗布して、基材の表面上にコーティング膜を形成する工程
を含む、方法である。
【0016】
本発明のさらなる主題は、基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的にコーティングを形成する方法であって、前記方法が、上記で定義した少なくとも工程(a)、および少なくとも工程(b)、すなわち
(b)工程(a)を行った後に得られたコーティング膜を硬化して、基材の表面上にコーティング膜を形成する工程
を含む、方法である。
【0017】
本発明のさらなる主題は、コーティング膜またはコーティングであり、これらはいずれも、特に本発明のコーティング組成物を塗布することによって、本発明のコーティング組成物から得ることができる。
【0018】
本発明のさらなる主題は、本発明の方法によって得ることができる少なくとも部分的にコーティングされた基材である。好ましくは、本発明のコーティング方法を行う前のそのような基材は、NIR反射性でないかまたは本質的にNIR反射性でなく、好ましくは暗色のまたは透明な基材である。
【0019】
本発明のさらなる主題は、LIDAR視認性用途での、特に自動運転車などの自律システムのための、本発明のコーティング、および/または本発明の少なくとも部分的にコーティングされた基材、および/または前記基材から製造される物体、を使用する方法である。
【0020】
この目的は、その中の成分(B)の存在およびそのNIR光散乱特性により、700nm~1560nmの範囲の光などのNIR光を散乱する本発明のコーティング組成物によって特に解決されることが、驚くべきことに見出された。入射する光の波長に関する成分(B)のNIR光散乱特性が特に有利であり、その理由が、前記散乱が主に拡散性であり、鏡面性でない、または僅かな程度に鏡面性であるためであることが、驚くべきことに見出された。本発明のコーティング組成物から得られるコーティングの散乱および吸収特性は、特に成分(B)の特性により、細かく調整することができることがさらに見出された。したがって、これらのコーティングを製造するために使用されるコーティング組成物に散乱NIR粒子(B)を組み込むことによってコーティングを製造することが可能であり、コーティングは、この方法で、大部分がNIRを散乱し、最小限の可視光を散乱するように調整される。したがって、コーティングは可視光領域では透明であるが、NIR光領域では依然として反射性である。これは、本発明のコーティング組成物をクリアコート組成物として、特にガラスまたはプラスチックなどの透明基材のコーティング用に使用する場合に特に有用であり、これは、得られるクリアコーティングが可視光領域では透明であるが、NIRでは依然として反射性であるためである。
【0021】
さらに、本発明に使用される成分(B)を利用することによって達成される場合、本質的に拡散したNIR散乱のみが観察されることが、驚くべきことに見出された。このような拡散反射は、粒子(B)が入射光と相互作用する際に、前記光が前記粒子と相互作用し、あらゆる方向に放射されるので、あらゆる角度での検出を可能にする。それとは対照的に、本発明に使用される成分(B)を利用することによって観察されないか、または少なくとも本質的に観察されない鏡面反射の場合、限られた角度からの検出のみが可能となり、これは特にLIDAR用途に不利である。
【0022】
本発明のコーティングでコーティングされた表面には、全くまたは非常に低いヘイズしか付与されないことが、驚くべきことに見出されており、これは、低いヘイズを必要とする物体および/またはグレージングなどの美的効果に敏感な物体に対して特に有利であり、例えば、ポリカーボネート基材などのポリマー基材上またはガラス基材上に適用すべき本発明のクリアコート組成物の使用に対して特に有利である。
【0023】
さらに、本発明のコーティング組成物から得られるコーティングの屈折率を調節して、使用するナノ粒子(B)の散乱ピークを調整することができることが、驚くべきことに見出された。特に、ピーク-反射率波長を調整することが可能である。さらに、他の従来のコーティングと比較した場合、強化されたNIR反射特性が観察されることが見出された。
【0024】
さらに、本発明に使用されるナノ粒子(B)は、可視スペクトルにおける散乱および吸収を低く保つことができる十分に低い濃度で適用することができ、これにより高い透明性および最小限のまたは存在しないヘイズを可能にするが、同時にNIR光領域での所望の、特に拡散性の散乱をもたらすことがさらに驚くべきことに見出された。同時に、成分(B)を含むコーティング組成物はスプレー可能であり、そこに含まれる成分(B)の量により、粒子は、コーティング組成物およびそれから得られるコーティング中で、互いに相互作用せずに、独立してNIR光を散乱することができる。
【0025】
さらに、本発明のコーティング組成物およびそれから得られるコーティングは、可視スペクトルにおける散乱および吸収を最小限に抑えたNIR視認性用途で、これらに限定されないが、LIDAR、レーザー三角測量、構造化光、および変調光手法を含む強化NIR視認性用途で、特にLIDARで、特に有用であることが驚くべきことに見出された。
【0026】
最後に、本発明のコーティング組成物は、特にクリアコート組成物として使用できること、すなわち、マルチコート基材の最上層として、またはポリマー基材、特にポリカーボネートなどの基材の上部の、好ましくは唯一の層としてクリアコーティングを製造するために使用できることが見出された。驚くべきことに、本発明のコーティング組成物を、マルチコート基材の最上層としてクリアコーティングを製造するためにクリアコート組成物として使用する場合、ベースコート層などのクリアコート層の下の層のいずれにも、特別で高価なNIR透明(黒)顔料を使用する必要はない。その代わりに、従来のカーボンブラック顔料は、ベースコート層などのクリアコート層より下のいずれの層でも、その上に塗布される本発明のクリアコート組成物を利用することによって誘発されるNIR光散乱特性に悪影響を及ぼすことなく使用することができ、存在することができる。さらに、ベースコートまたはクリアコート組成物である本発明のコーティング組成物により、任意の種類のプライマー(サーフェサー)層は、特に、全体のコーティング色と同様の色を有するプライマー(サーフェサー)層は、マルチコート基材の製造のために、存在し、使用することができ、そのため、プライマー層の潜在的な欠けの不良がそれほど明白ではないことが見出された。特に、米国特許出願公開第2018/0120435(A1)号のように白色または淡色のプライマーのみを使用することは必要ない。さらに、本発明のコーティング組成物は、最初にNIR反射プライマーを、次に続いてベースコートおよびクリアコートを、すなわち3層を再塗布する必要がないため、従来の組成物、例えば米国特許出願公開第2018/0120435(A1)号に開示されているものに比べ、自動車再仕上げ方法においてより効率的に使用できることが見出された。むしろ、得られるコーティングのNIR反射特性に関与する成分(B)が、本発明のベースコートまたは本発明のクリアコート組成物のいずれかに存在し、プライマーには存在しないので、2個の層(本発明のベースコートおよびクリアコート)または1個の層(本発明のクリアコート)のみが再塗布されなければならない。
【発明を実施するための形態】
【0027】
コーティング組成物
本発明のコーティング組成物は、ベースコート組成物またはクリアコート組成物である。好ましくは、本発明のコーティング組成物は、好ましくは水性ベースコート組成物(以下、水性ベースコート組成物ともいう)、または水性または溶剤系、より好ましくは溶剤系のクリアコート組成物(以下、水性または溶剤性のクリアコート組成物ともいう)である。より好ましくは、コーティング組成物は、1K-水性ベースコート組成物として、または1K-もしくは2K-水性もしくは溶剤性、特に2K-溶剤性、クリアコート組成物として使用される。本発明のコーティング組成物は、OEMコーティング組成物としても、再仕上げ用途としても使用することができる。本発明のコーティング組成物は、特に、プライマー、プライマーサーフェイサーまたはシーラー組成物ではなく、したがって、プライマー、プライマーサーフェイサーまたはシーラー組成物として使用/適用されるものではない。
【0028】
本発明によるコーティング組成物は、好ましくは、ベースコート膜の製造に適している。したがって、本発明によるコーティング組成物は、特に好ましくは、水性ベースコート材料である。ベースコートの用語は当技術分野で公知であり、例えば、Roempp Lexikon、paints and printing inks、Georg Thieme Verlag、1998年、第10版、57頁で定義されている。したがって、ベースコートは、特に自動車塗装および一般工業塗装において、中間コーティング組成物としてベースコートを使用することによって着色および/または光学効果を付与するために使用される。これは一般に、任意にプライマーおよび/またはフィラーで前処理された金属またはプラスチック基材に、時にはプラスチック基材の場合にはプラスチック基材にも直接に、金属基材の場合には金属基材にコーティングされた電着コーティング層に、または既にプライマーおよび/またはフィラーおよび/または電着コーティングを有する金属基材に、あるいは再仕上げ用途では既にあるコーティングに、適用され、これらは基材として機能することができる。特に環境影響からベースコート膜を保護するために、少なくとも1個の追加のクリアコート膜が塗布される。本発明のコーティング組成物を、ベースコート上に塗布されるそのようなクリアコート組成物として使用することも可能であり、好ましい。しかし、この場合、ベースコートは、好ましくは、また、本発明のコーティング組成物を使用することによって得られてはいない。
【0029】
本発明によるコーティング組成物に関連する本発明の文脈における用語「を含む」は、好ましくは「からなる」の意味を有する。この場合、成分(A)、(B)および(C)に加えて、本発明によるコーティング組成物に任意に含まれる、本明細書で以下に言及する1種または複数種の他の成分が、本発明によるコーティング組成物に含まれていてもよい。すべての成分は、各場合において、以下に述べるそれらの好ましい実施形態で存在することができる。
【0030】
本発明によるコーティング組成物中のすべての成分(A)、(B)および(C)ならびにさらに任意に存在する成分の質量%(質量%)の割合および量は、コーティング組成物の総質量に対して、100質量%まで加算する。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「近赤外線」または「近赤外線放射または光」または「NIR」は、電磁スペクトルの近赤外線範囲における電磁放射線を指す。そのような近赤外線電磁放射は、700nm~2500nm、例えば800~1600nm、または例えば900nm~1500nmの波長を有してよい。特に、使用されるNIR光は、700nm~1400nmの波長を有する。NIR光を生成するために本発明で使用され得る近赤外線電磁放射源は、制限なしに、700nm~2500nmの波長(近赤外領域)を有する電磁放射を放出することができる発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード、または任意の光源を含む。近赤外電磁放射源は、LIDAR(Light Imaging, Detection and Ranging)システムで使用されてもよい。LIDARシステムは、700nm~2500nmの波長を有する電磁放射を発生するためにレーザーを利用してもよい。
【0032】
好ましくは、コーティング組成物は、NIR光、好ましくは700~1560nmの波長を有するNIR光を散乱することができる/散乱するが、350~<700nmの波長を有する可視スペクトルの光を実質的に散乱および吸収しない。
【0033】
好ましくは、本発明のコーティング組成物は、顔料であるさらなる成分を含まない。したがって、本発明のコーティング組成物は、好ましくは、顔料フリーである。好ましくは、本発明のコーティング組成物は、フィラーであるさらなる成分を含まない。したがって、本発明のコーティング組成物は、好ましくは、フィラーフリーである。特に、本発明のコーティング組成物は、特に、それがクリアコート組成物を表す場合、顔料フリーかつフィラーフリーである。顔料および/またはフィラーである、任意の成分がコーティング組成物中に含まれる場合、これらの成分は、好ましくは、コーティング組成物中に存在する成分(B)によって散乱される、いかなる光も吸収しないか、または好ましくは、実質的に吸収しない。
【0034】
本発明によるコーティング組成物の固形分は、各場合にコーティング組成物の総質量に対して、好ましくは>5質量%または>10質量%または>15質量%または>20質量%である。固形分、すなわち不揮発性含有量の決定は、以下に記載する方法に従って実施される。好ましくは、本発明によるコーティング組成物の固形分は、>5~50質量%、より好ましくは>10~45質量%、最も好ましくは>12~40質量%、特に>15~37.5質量%の範囲にある。
【0035】
コーティング組成物の成分(A)
本発明のコーティング組成物は、コーティング組成物の成分(A)を表す皮膜形成バインダーとして、少なくとも1種のポリマーを含む。
【0036】
本発明の目的のために、「バインダー」という用語は、DIN EN ISO 4618(ドイツ語版、日付:2007年3月)に従って、コーティング組成物の不揮発性成分であり、膜形成に関与していると理解される。したがって、顔料および/またはフィラー、ならびにそれらに含まれる成分(B)は、「バインダー」という用語に包含されない。好ましくは、少なくとも1種のポリマー(A)は、コーティング組成物の主バインダーである。コーティング組成物中に他のバインダー成分が存在しない場合に、バインダー成分は、好ましくは、本発明における主バインダーを指し、これはコーティング組成物の総質量に対してより高い割合で存在する。
【0037】
「ポリマー」という用語は、当業者には公知であり、本発明の目的では、重付加物および重合物、ならびに重縮合物を包含する。「ポリマー」という用語は、ホモポリマーとコポリマーの両方を含む。
【0038】
成分(A)として使用される少なくとも1種のポリマーは、自己架橋性であっても非自己架橋性であってもよい。成分(A)として使用できる適切なポリマーは、例えば、欧州特許出願公開第0228003(A1)号、独国特許出願公開第4438504(A1)号、欧州特許出願公開第0593454(B1)号、独国特許出願公開第19948004(A1)号、欧州特許出願公開第0787159(B1)号、独国特許出願公開第4009858(A1)号、独国特許出願公開第4437535(A1)号、国際公開第92/15405(A1)号パンフレットおよび国際公開第2005/021168(A1)号パンフレットのものである。
【0039】
成分(A)として使用される少なくとも1種のポリマーは、好ましくは、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリ(メタ)アクリレートおよび/または前記ポリマーの構造単位のコポリマー、特にポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートおよび/またはポリウレタンポリウレアからなる群から選択される。成分(A)として使用される少なくとも1種のポリマーは、特に好ましくは、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレートおよび/または前記ポリマーの構造単位のコポリマーからなる群から選択される。本発明の文脈における「(メタ)アクリル」または「(メタ)アクリレート」という用語は、各場合に、「メタクリル」および/または「アクリル」または「メタクリレート」および/または「アクリレート」の意味を含む。
【0040】
好ましいポリウレタンは、例えば、独国特許出願公開第19948004(A1)号、4頁19行目~11頁29行目(ポリウレタンプレポリマーB1)、欧州特許出願公開第0228003(A1)号、3頁24行目~5頁40行目、欧州特許出願公開第0634431(A1)号、3頁38行目~8頁9行目および国際特許出願第92/15405号パンフレット、2頁35行目~10頁32行目に記載されている。
【0041】
好ましいポリエステルは、例えば、独国特許出願公開第4009858(A1)号の6欄53行目~7欄61行目および10欄24行目~13欄3行目、または国際公開第2014/033135(A2)号パンフレットの2頁24行目~7頁10行目および28頁13行目~29頁13行目に記載されている。同様に好ましいポリエステルは、例えば国際公開第2008/148555(A1)号パンフレットに記載するような、樹状構造を有するポリエステルである。これらは、クリアコートだけでなく、特に水性ベースコートにおいても使用することができる。
【0042】
好ましいポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートコポリマー(例えば、(メタ)アクリル化ポリウレタン))およびそれらの製造は、例えば、国際公開第91/15528(A1)号パンフレットの3頁21行目~20頁33行目、および独国特許出願公開第4437535(A1)号の2頁27行目~6頁22行目に記載されている。
【0043】
好ましいポリ(メタ)アクリレートは、水および/または有機溶媒中におけるオレフィン性不飽和モノマーの多段フリーラジカル乳化重合によって製造することができるものである。例えば、シード-コア-シェルポリマー(SCSポリマー)が特に好ましい。このようなポリマーまたはこのようなポリマーを含む水性分散液は、例えば、国際公開第2016/116299(A1)号パンフレットで公知である。特に好ましいシードコアシェルポリマーは、ポリマー、好ましくは100~500nmの平均粒径を有するポリマーであり、これは、水中のオレフィン性不飽和モノマーの3種の好ましくは異なるモノマー混合物(A1)、(B1)および(C1)の連続的なフリーラジカル乳化重合によって製造することができ、混合物(A1)は、25℃で0.5g/l未満の水への溶解度を有する少なくとも50質量%のモノマーを含み、混合物(A1)から製造されるポリマーは、10~65℃のガラス転移温度を有し、混合物(B1)は、少なくとも1種のポリ不飽和モノマーを含み、混合物(B1)から製造されるポリマーは、-35~15℃のガラス転移温度を有し、混合物(C1)から製造されるポリマーは、-50~15℃のガラス転移温度を有し、i.まず混合物(A1)が重合され、ii.次にi.の下で形成されたポリマーの存在下で混合物(B1)が重合され、iii.次にii.の下で形成されたポリマーの存在下で混合物(C1)が重合される。3種の混合物はすべて、好ましくは互いに異なる。
【0044】
好ましいポリウレタン-ポリウレアコポリマーは、ポリウレタン-ポリウレア粒子、好ましくは40~2000nmの平均粒径を有するものであり、ポリウレタン-ポリウレア粒子は、それぞれが反応した形態で、アニオン性基および/またはアニオン性基に変換し得る基を含む少なくとも1種のイソシアナート基含有ポリウレタンプレポリマーと、2種の1級アミノ基および1種または2種の2級アミノ基を含む少なくとも1種のポリアミンとを含む。好ましくは、このようなコポリマーは、水性分散液の形態で使用される。このようなポリマーは、原則として、例えば、ポリイソシアネートとポリオールおよびポリアミンとの従来の重付加によって製造することができる。
【0045】
成分(A)として使用されるポリマーは、好ましくは、架橋反応を可能にする反応性官能基を有する。当業者に公知である任意の一般的な架橋可能な反応性官能基は、存在することができる。好ましくは、成分(A)として用いられるポリマーは、1級アミノ基、2級アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基およびカルバメート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能反応性基を有する。好ましくは、成分(A)として用いられるポリマーは、官能性ヒドロキシル基を有する。
【0046】
好ましくは、成分(A)として用いられるポリマーはヒドロキシ官能性であり、より好ましくは15~200mgKOH/g、より好ましくは20~150mgKOH/gの範囲のOH価を有する。
【0047】
成分(A)として用いられるポリマーは、特に好ましくは、ヒドロキシ官能性ポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートコポリマー、ヒドロキシ官能性ポリエステルおよび/またはヒドロキシ官能性ポリウレタン-ポリウレアコポリマーである。
【0048】
さらに、本発明のコーティング組成物は、それ自体公知の少なくとも1種の典型的な架橋剤を含んでもよい。架橋剤は、コーティング組成物の皮膜形成不揮発性成分の中に含まれるべきものであり、したがって「バインダー」の一般的な定義に含まれる。したがって、架橋剤は成分(A)の下に含まれるべきものである。
【0049】
架橋剤が存在する場合、それは、好ましくは少なくとも1種のアミノプラスト樹脂および/または少なくとも1種のブロックされたまたは遊離のポリイソシアネートであり、好ましくはアミノプラスト樹脂である。アミノプラスト樹脂の中では、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂などのメラミン樹脂が特に好ましい。
【0050】
コーティング組成物の成分(B)
本発明のコーティング組成物は、成分(B)としてナノ粒子を含み、前記ナノ粒子は、少なくとも1種の貴金属および/または少なくとも1種の貴金属合金および/または少なくとも1種の貴金属酸化物を含み、貴金属は、各場合に、金、銀、銅、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム、イリジウム、オスミウムおよび白金(Au、Ag、Cu、Pd、Ru、Rh、Re、Ir、OsおよびPt)およびそれらの混合物からなる群から独立して選択され、成分(B)として存在するナノ粒子は、20nm~<500nmの範囲の平均粒径を有し、組成物の全固形分に対して、0.01質量%~10.0質量%の範囲の量でコーティング組成物中に存在する。平均粒径の測定方法を本明細書で以下に開示する。
【0051】
成分(B)は、貴金属および/または貴金属合金および/または貴金属酸化物から作ることができる。しかし、これに含まれる貴金属および/または貴金属合金および/または貴金属酸化物は、成分(B)の一部のみであってもよい。例えば、成分(B)はコアおよびシェルを含んでいてもよく、コアおよびシェルの一方または両方が貴金属および/または貴金属合金および/または貴金属酸化物を含むか、またはそれらからなる。コアおよびシェルの一方のみが貴金属および/または貴金属合金および/または貴金属酸化物を含むか、またはそれらからなる場合、残りの部分は、別の金属、半金属および/またはそれらの酸化物、例えばシリカおよび/または酸化ジルコニウムなどの異なる材料から作ることができる。また、残りの部分は、ポリマー性材料であってもよい。例えば、成分(B)がコアおよびシェルを含む場合、コアは、ポリスチレンおよび/またはハロゲン化ポリマーなどの少なくとも1種のポリマーで作ることができ、シェルは、Agなどの少なくとも1種の貴金属で作ることができる。
【0052】
好ましくは、本発明のコーティング組成物中の成分(B)として存在するナノ粒子は、プラズモニックナノ粒子であり、特に本発明のコーティング組成物に使用する場合、プラズモニック効果を示す。
【0053】
好ましくは、成分(B)として存在するナノ粒子は、25nm~450nmの範囲、より好ましくは25nm~400nmの範囲、さらにより好ましくは25nm~350nmの範囲、さらにより好ましくは30nm~300nmの範囲の平均粒径を有する。
【0054】
好ましくは、ナノ粒子(B)は、各場合に組成物の総質量に対して、0.01質量%~5.0質量%の範囲、より好ましくは0.02質量%~4.0質量%の範囲、さらにより好ましくは0.02質量%~3.5質量%の範囲、さらにより好ましくは0.02質量%~3.0質量%の範囲、さらにより好ましくは0.03質量%~2.5質量%の範囲、さらにより好ましくは0.03質量%~2.0質量%の範囲の量で、コーティング組成物中に存在する。特に、ナノ粒子(B)は、組成物の総質量に対して、0.03質量%~1.5質量%の範囲、または0.04質量%~1.0質量%の範囲の量で、コーティング組成物中に存在する。
【0055】
好ましくは、成分(B)として存在するナノ粒子は、各場合にコーティング組成物の全固形分に対して、0.05質量%~10.0質量%の範囲、より好ましくは0.075質量%~8.0質量%の範囲、さらにより好ましくは0.1質量%~6.0質量%の範囲、さらにより好ましく0.15質量~5.0質量%の範囲、さらにより好ましくは0.2質量%~4.0質量%の範囲、さらにより好ましくは0.25質量%~2.0質量%の範囲、最も好ましくは0.30~1.0質量%の範囲での量で、コーティング組成物中に存在する。全固形分の測定方法を以下に開示する。
【0056】
好ましくは、成分(B)として存在するナノ粒子は、少なくとも1種の貴金属、少なくとも1種の貴金属合金および/または少なくとも1種の貴金属酸化物、より好ましくは少なくとも1種の貴金属および/または少なくとも1種の貴金属酸化物を含み、ここで貴金属は、各場合に金、銀、銅、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム、イリジウム、オスミウムおよびプラチナならびにこれらの混合物からなる群から独立に選択され、より好ましくは金、銀、銅ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0057】
好ましくは、成分(B)として存在するナノ粒子は、特に以下に定義するナノ粒子(ii)および/または(iii)が使用される場合、球状である。
【0058】
本発明のコーティング組成物の成分(B)として使用するための適切な粒子およびその製造方法は、従来技術から公知である。例えば、コア/シェル配置を有する適切なナノ粒子は、国際公開第2007/103802(A2)号パンフレット、国際公開第2008/018707(A1)号パンフレット、米国特許出願公開第6,344,272(B2)号、米国特許出願公開第2012/217394(A1)号、米国特許出願公開第2010/0028680(A1)号、米国特許出願公開第2017/0226347(A1)号および国際公開第02/28551(A1)号パンフレットに開示されている。成分(B)として使用するためのさらなる適切な粒子は、例えば、米国特許出願公開第9,738,559(B2)で公知である。
【0059】
好ましくは、成分(B)として存在するナノ粒子は、
(i)銀および/または金、特に銀などの少なくとも1種の貴金属を含むまたは本質的にそれらからなるプレートの形態を有するナノ粒子であって、前記プレートが、任意にシェルを有し、前記シェルが好ましくはシリカからなるナノ粒子
(ii)好ましくはシリカおよび/または酸化ジルコニウムのコアと、銀および/または金、特に金などの少なくとも1種の貴金属からなるシェルとを有するコア/シェル配置を有するナノ粒子、ならびに
(iii)酸化銅および/または酸化銀(I)を含む、または本質的にそれらからなるナノ粒子
からなる群から選択される。
【0060】
「酸化銅」という用語は、好ましくは、酸化銅(I)(CuO、酸化第一銅)、酸化銅(II)(CuO、酸化第二銅)およびこれらの混合物を含む。
【0061】
より好ましくは、成分(B)として存在するナノ粒子は、
(i)銀を含む、または本質的に銀からなるプレートの形態を有するナノ粒子であって、前記プレートが任意にシリカからなるシェルを有するナノ粒子
(ii)シリカのコアと金からなるシェルとを有するコア/シェル配置を有するナノ粒子、および/または、酸化ジルコニウムのコアと銀からなるシェルとを有するコア/シェル配置を有するナノ粒子、ならびに
(iii)酸化銅および/または酸化銀(I)を含む、または本質的にそれらからなるナノ粒子
からなる群から選択される。
【0062】
さらにより好ましくは、成分(B)として存在するナノ粒子は、
(i)銀を含む、または本質的に銀からなるプレートの形態を有するナノ粒子であって、前記プレートが、20nm~<200nmの範囲の平均粒径および5nm~35nmの範囲の平均プレート厚を有し、プレートが、10nm~50nmの範囲の平均シェル厚を有するシリカからなるシェルを任意に有する、ナノ粒子
(ii)シリカのコアと金からなるシェルとを有するコア/シェル配置を有するナノ粒子であって、コアが50nm~<250nmの範囲の平均粒径を有し、シェルが10nm~50nmの範囲の平均厚さを有する、ナノ粒子
からなる群から選択される。
【0063】
平均粒子および平均プレート厚を決定する方法を以下に開示する。
【0064】
好ましくは、前述の選択肢(i)のナノ粒子は、その平均粒径(nm)よりも小さいプレート厚(nm)を有する。前述の選択肢(i)のナノ粒子がシェルを有する場合、前記シェル厚は、好ましくは、その平均粒径(nm)より小さい。しかし、前記シェル厚(nm)は、好ましくは、それらのプレートの厚さより大きい。好ましくは、前述の選択肢(i)のナノ粒子は、非球形の形状であり、特に三角形の形状を有する。好ましくは、前述の選択肢(i)のナノ粒子は、25nm~180nmの範囲の平均粒径、および5nm~20nmの範囲の平均プレート厚を有する。シェルが存在する場合、平均シェル厚は、好ましくは10nm~30nmの範囲である。
【0065】
選択肢(i)によるナノ粒子の例は、例えば、nanoComposix社から市販されている銀ナノプレートであり(例えば、NanoXact銀ナノプレート)、これはシリカシェルを有してもよいが、有さなくてもよい。好ましくは、これらの粒子は、キャッピング剤としてPVP(ポリビニルピロリジン)を有するものが利用可能である。これらの銀ナノプレートは、30nm~150nmの範囲の平均粒径を有し、各場合に10nmの平均プレート厚を有するものが利用可能である。また、シリカシェルなどのシェルが存在する場合、シェルの平均厚さは20nmである。
【0066】
好ましくは、前記選択肢(ii)のナノ粒子は、粒子の平均粒径(nm)よりも小さいシェル厚(nm)を有する。好ましくは、前記選択肢(ii)のナノ粒子は、球状である。好ましくは、前記選択肢(ii)のナノ粒子は、50nm~220nmの範囲の平均粒径、および1nm~50nmの範囲の平均シェル厚を有するコアを有する。コアは、好ましくは、誘電体コアである。
【0067】
選択肢(ii)によるナノ粒子の例は、例えば、nanoComposix社から市販されている金シェルナノシェル(例えば、NanoXact金ナノシェル)であり、これは、金シェルを有する。好ましくは、これらの粒子は、キャッピング剤としてPVP(ポリビニルピロリジン)またはポリエチレングリコール(PEG)を有するものが利用可能である。これらの金ナノシェルは、コアの平均粒径が83nm~200nmの範囲にあり、各場合に金シェル平均厚さが10nm~30nmを有するものが利用可能である。
【0068】
コアの平均粒径とシェルの平均厚さの比を変えることにより、電磁スペクトルの近赤外(NIR)領域にわたってシェルが存在する場合、選択肢(ii)、また選択肢(i)のナノ粒子の吸収および散乱特性を調整することができる。シリカコアなどのコアの直径を増加させ、金シェルなどのシェルの厚さを減少させると、プラズモン共鳴をNIR領域に向かってシフトさせることができる。特に、ナノ粒子は、660nm~980nmで共鳴することができる。
【0069】
特に選択肢(i)および選択肢(ii)による、本発明に使用されるナノ粒子(B)は、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリビニルピロリドン(PVP)のキャッピング剤を有するものが利用可能であるか、または乾燥製剤で利用可能である。
【0070】
好ましくは、前記選択肢(iii)のナノ粒子は、球形状である。
【0071】
コーティング組成物の成分(C)
本発明のコーティング組成物は、成分(C)として水および/または少なくとも1種の有機溶媒を含み、前記成分(C)は、組成物の総質量に対して、少なくとも30質量%の量でコーティング組成物中に存在する。
【0072】
本発明のコーティング組成物が水を含む場合、それは水性または水性組成物である。この場合、それは好ましくは、各場合に本発明のコーティング組成物の総質量に対して、溶媒として主に水を、好ましくは少なくとも20質量%の量で、および有機溶媒を少ない割合で、好ましくは<20質量%の量で、含む系である。
【0073】
本発明によるコーティング組成物は、各場合に、本発明のコーティング組成物の総質量に対して、少なくとも20質量%、より好ましくは少なくとも25質量%、最も好ましくは少なくとも30質量%、特に少なくとも35質量%の水の割合を含むことができる。
【0074】
本発明によるコーティング組成物は、各場合に、本発明によるコーティング組成物の総質量に対して、20~65質量%の範囲、より好ましくは25~60質量%の範囲、非常に特に好ましくは30~55質量%の範囲である水の割合を含むことができる。
【0075】
本発明によるコーティング組成物-それが水性である場合-は、本発明によるコーティング組成物の総質量に対して、各場合に、<20質量%の範囲、より好ましくは0~<20質量%の範囲、最も好ましくは0.5~<20質量%または~15質量%の範囲である有機溶媒の割合を、さらに含むことができる。
【0076】
当業者に公知であるすべての従来の有機溶媒は、本発明のコーティング組成物の製造のための有機溶媒として使用することができる。用語「有機溶媒」は、特に1999年3月11日の理事会指令1999/13/ECから当業者に公知である。好ましくは、それらは、一価または多価アルコール、例えばメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、エチレングリコール、エチルグリコール、プロピルグリコール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、1,2-プロパンジオールおよび/または1,3-プロパンジオール、エーテル、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、例えばトルエンおよび/またはキシレン、ケトン、例えばアセトン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、エステル、例えば酢酸メトキシプロピル、酢酸エチルおよび/または酢酸ブチル、アミド、例えばジメチルホルムアミドおよびそれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒である。
【0077】
本発明のコーティング組成物は、それがベースコート組成物である場合、特に水性である。
【0078】
しかし、本発明のコーティング組成物は、あるいは、クリアコート組成物も好ましくは溶剤性(溶剤系)組成物として使用することができる。
【0079】
この場合、それは好ましくは、各場合に本発明のコーティング組成物の総質量に対して、主に少なくとも1種の有機溶媒を主溶媒として、好ましくは少なくとも20質量%の量で、および水を少ない割合で、好ましくは<20質量%の量で含む系である。本発明によるコーティング組成物は、各場合に本発明のコーティング組成物の総質量に対して、少なくとも20質量%、より好ましくは少なくとも25質量%、最も好ましくは少なくとも30質量%、特に少なくとも35質量%の少なくとも1種の有機溶媒の割合を含むことができる。本発明によるコーティング組成物は、各場合に本発明によるコーティング組成物の総質量に対して、20~65質量%の範囲、より好ましくは25~60質量%の範囲、非常に特に好ましくは30~55質量%の範囲である少なくとも1種の有機溶媒の割合を含むことができる。本発明によるコーティング組成物-それが溶剤性である場合-は、各場合に本発明によるコーティング組成物の総質量に対して、<20質量%の範囲、より好ましくは0~<20質量%の範囲、最も好ましくは0.5~<20質量%または~15質量%の範囲である水の割合をさらに含むことができる。
【0080】
コーティング組成物のさらなる任意成分
本発明のコーティング組成物は、成分(A)、(B)および(C)のそれぞれとは異なる、1種または複数種の成分を任意に含んでいてもよい。
【0081】
本発明のコーティング組成物は、所望の用途に応じて、一般的に用いられる添加剤を1種または複数種含有してもよい。例えば、コーティング組成物は、反応性希釈剤、光安定剤、酸化防止剤、脱気剤、乳化剤、滑り剤、重合禁止剤、可塑剤、フリーラジカル重合開始剤、接着促進剤、流れ調整剤、皮膜形成助剤、サグ制御剤(SCA)、難燃剤、腐食防止剤、シッカチーフ、殺生物剤および/または艶消し剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加物を含んでいてもよい。これらは、公知および慣用の割合で使用することができる。好ましくは、本発明によるコーティング組成物の総質量に対するそれらの含有量は、0.01~20.0質量%、より好ましくは0.05~15.0質量%、特に好ましくは0.1~10.0質量%、最も好ましくは0.1~7.5質量%、特に0.1~5.0質量%および最も好ましくは0.1~2.5質量%である。
【0082】
コーティング組成物はまた、または追加的に、ある量の少なくとも1種の顔料および/または少なくとも1種のフィラーを含んでもよい。しかし、本明細書で前述したように、本発明のコーティング組成物は、特にそれがクリアコート組成物である場合、好ましくは顔料であるさらなる成分を含まない。したがって、本発明のコーティング組成物は、好ましくは顔料フリーである。好ましくは、本発明のコーティング組成物は、フィラーであるさらなる成分を含まない。したがって、本発明のコーティング組成物は、好ましくは、フィラーフリーである。特に、本発明のコーティング組成物は、顔料フリーおよびフィラーフリーの両方である。しかし、顔料および/またはフィラーである、任意の成分がコーティング組成物中に含まれる場合、これらの成分は、コーティング組成物中に存在する成分(B)によって散乱される、いかなる光も好ましくは吸収しないか、または好ましくは実質的に吸収しない。このような顔料は、コーティング組成物がベースコート組成物である場合およびコーティング組成物が(着色された)クリアコート組成物である場合の両方で、着色の目的で使用することができる。
【0083】
「顔料」という用語は、着色顔料および効果顔料を含む。当業者であれば、効果顔料という用語に精通している。対応する定義は、例えば、Roempp Lexikon、Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag、1998年、第10版、176頁および471頁に見出すことができる。一般的な顔料の定義、およびそのさらなる仕様は、DIN 55943(日付:2001年10月)に開示されている。効果顔料は、好ましくは、光学的効果または色と光学的効果を有する顔料である。効果顔料の例には、板状アルミニウム顔料、ゴールドブロンズ、火炎色ブロンズおよび/または酸化鉄-アルミニウム顔料、パーグレイズ顔料および/または金属酸化物-雲母顔料(マイカ)などの板状メタリック効果顔料が挙げられる。当業者であれば、着色顔料の概念に精通している。「着色顔料(coloring pigment)」および「着色顔料(color pigment)」という用語は、交換可能である。着色顔料として、無機顔料および/または有機顔料を使用することができる。好ましくは、着色顔料は無機着色顔料である。使用される特に好ましい着色顔料は、白色顔料、着色顔料および/または黒色顔料である。白色顔料の例としては、二酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、およびリトポンが挙げられる。黒色顔料の例としては、カーボンブラック、鉄マンガンブラック、およびスピネルブラックが挙げられる。着色顔料の例としては、酸化クロム、酸化クロム水和物グリーン、コバルトグリーン、ウルトラマリングリーン、コバルトブルー、ウルトラマリンブルー、マンガンブルー、ウルトラマリンバイオレット、コバルトとマンガンバイオレット、酸化鉄レッド、モリブデン酸レッドとウルトラマリンレッド、酸化鉄ブラウン、混合ブラウン、スピネルとコランダム相とクロムオレンジ、酸化鉄イエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、硫化カドミウム、硫化カドミウム亜鉛、クロムイエロー、およびバナジウム酸ビスマスが挙げられる。「フィラー」という用語は、例えばDIN 55943(日付:2001年10月)から当業者には公知である。本発明の目的のために、「フィラー」は、適用媒体、例えば本発明によるコーティング組成物に本質的に不溶性であり、特に体積を増加させるために使用される物質を意味すると理解される。本発明の文脈において、「フィラー」は、好ましくは、その屈折率によって「顔料」と異なり、フィラーの場合は<1.7であるが、顔料の場合は≧1.7である。適切なフィラーの例には、カオリン、ドロマイト、カルサイト、チョーク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、ケイ酸、特に発熱ケイ酸、水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムなどの水酸化物、または紡織繊維、セルロース繊維および/またはポリエチレン繊維などの有機フィラーが挙げられる。さらに、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag、1998年、250頁以降、「Fillers」を参照されたい。
【0084】
コーティング組成物中に1種または複数種の顔料および/またはフィラーが存在する場合、コーティング組成物中のその割合は、各場合にコーティング組成物の総質量に対して、好ましくは1.0~40.0質量%、好ましくは2.0~35.0質量%、特に好ましくは5.0~30.0質量%の範囲内である。
【0085】
本発明によるコーティング組成物は、任意に少なくとも1種の増粘剤を含むことができる。そのような増粘剤の例には、無機増粘剤、例えば層状ケイ酸塩などの金属ケイ酸塩、および有機増粘剤、例えばポリ(メタ)アクリル酸増粘剤および/または(メタ)アクリル酸(メタ)アクリレートコポリマー増粘剤、ポリウレタン増粘剤および高分子ワックスが挙げられる。このような有機増粘剤は、バインダーとして使用されるポリマー(A)に包含される。無機増粘剤は、成分(A)、(B)および(C)のいずれとも異なる。金属ケイ酸塩は、好ましくはスメクタイトの群から選択される。スメクタイトは、特に好ましくは、モンモリロナイトおよびヘクトライトの群から選択される。特に、モンモリロナイトおよびヘクトライトは、アルミニウム-マグネシウムシリケートおよびナトリウム-マグネシウムおよびナトリウム-マグネシウムフルオロリチウムフィロシリケートからなる群から選択される。これらの無機フィロシリケートは、例えば、Laponite(登録商標)という商標で販売されている。ポリ(メタ)アクリル酸をベースとする増粘剤および(メタ)アクリル酸(メタ)アクリレートコポリマー増粘剤は、任意に架橋され、または適切な塩基で中和されている。このような増粘剤の例としては、「アルカリ膨潤性エマルション」(ASE)、およびその疎水性修飾変種である「親水性修飾アルカリ膨潤性エマルション」(HASE)がある。好ましくは、これらの増粘剤はアニオン性である。Rheovis(登録商標)AS1130などの対応する製品が市販されている。ポリウレタン系の増粘剤(例えば、ポリウレタン会合性増粘剤)は、任意に、適切な塩基で架橋および/または中和されている。Rheovis(登録商標)PU 1250などの対応する製品が市販されている。適切なポリマーワックスの例は、エチレン-酢酸ビニルコポリマーをベースとする任意に変性されたポリマーワックスである。対応する製品は、例えばAquatix(登録商標)8421の名で市販されている。
【0086】
本発明によるコーティング組成物中の少なくとも1種の増粘剤は、各場合にコーティング組成物の総質量に対して、好ましくは多くて10質量%、より好ましくは多くて7.5質量%、最も好ましくは多くて5質量%、特に多くて3質量%、最も好ましくは2質量%以下の量で存在する。増粘剤の最低量は、各場合にコーティング組成物の総質量に対して、好ましくは、0.1質量%である。
【0087】
コーティング組成物の製造は、慣用的および公知の製造・混合方法および混合ユニットを使用して、または従来の溶解槽および/またはスターラーを使用して実施することができる。
【0088】
コーティング膜およびコーティング剤
本発明のさらなる主題は、コーティング膜またはコーティングであり、これらはいずれも本発明のコーティング組成物から、特に本発明のコーティング組成物を塗布することにより得ることができる。
【0089】
本発明のコーティング組成物およびその好ましい実施形態に関連して本明細書で上述したすべての好ましい実施形態は、本発明のコーティング膜および本発明のコーティングの好ましい実施形態でもある。
【0090】
好ましくは、本発明のコーティング膜および本発明のコーティングは、基材の表面上に少なくとも部分的に存在し、前記基材はNIR反射性ではないか、または本質的にNIR反射性ではなく、前記基材は好ましくは暗色のまたは透明な基材である。暗色基材は、特に暗色着色多層膜を有する基材である。特にこの場合、暗色は、ベースコート層などのマルチコート膜のコーティング層におけるカーボンブラック顔料の使用の結果とすることができる。
【0091】
好ましくは、本発明のコーティング膜および本発明のコーティングは、700~1560nmの波長を有する近赤外線(NIR)光を散乱/散乱することができるが、350~<700nmの波長を有する可視スペクトルの光を実質的に散乱および吸収することはない。NIR光の散乱挙動を測定・調査する方法を本明細書で以下に開示する。
【0092】
発明の方法
本発明のさらなる主題は、基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的にコーティング膜を形成する方法であって、前記方法が、少なくとも工程(a)、すなわち
(a)本発明のコーティング組成物を、任意にプレコートされた基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的に塗布して、基材の表面にコーティング膜を形成する工程
を含む、方法である。
【0093】
本発明のさらなる主題は、基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的にコーティングを形成する方法であって、前記方法は、上記で定義した少なくとも工程(a)、および少なくとも工程(b)、すなわち
(b)工程(a)を行った後に得られたコーティング膜を硬化させて、基材の表面にコーティングを形成する工程
を含む、方法である。
【0094】
本発明のコーティング組成物、本発明のコーティング膜および本発明のコーティングならびにそれらの好ましい実施形態に関連して本明細書で上述したすべての好ましい実施形態は、コーティング膜およびコーティングを形成する本発明の方法の好ましい実施形態でもある。
【0095】
本発明のコーティング組成物が、-好ましくは水性-ベースコートコーティング組成物である場合、工程(a)、または工程(a)および(b)は、基材が金属基材であれば、好ましくは、プレコート基材の少なくとも1つの表面上に実施される。前記金属基材は、次に、好ましくはプレコーティングとしてプライマーおよび/またはフィラーおよび/または電着コーティングを有する。基材がプラスチック(ポリマー)基材である場合、それはプレコート基材であってもよく、例えば、プライマーコーティングを有するが、必ずしもそうである必要はない。使用する基材とは無関係に、工程(a)または工程(a)および(b)を行った後、好ましくは、クリアコート組成物は、本発明のコーティング組成物を利用することによって形成されたベースコートコーティング上に塗布される。好ましくは、前記クリアコート組成物は、本発明のベースコート組成物とは異なり、特に成分(B)を含有しない。
【0096】
本発明のコーティング組成物が、-好ましくは溶剤性-クリアコートコーティング組成物である場合、工程(a)、または工程(a)および(b)は、基材が金属基材であれば、好ましくは、プレコート基材の少なくとも1つの表面上に実施される。前記金属基材は、好ましくは、プレコーティングとして、プライマーおよび/またはフィラーおよび/または電着および/またはベースコートコーティングを有する。ベースコートコーティングは、この場合、好ましくは、本発明のコーティング組成物を利用することによって得られない。基材がプラスチック(ポリマー)基材である場合、それは、例えば、プライマーコーティングを有するプレコート基材であってもよいが、その必要はなく、すなわち、本発明のクリアコート組成物は基材に直接塗布されてもよい。基材は、特に本発明のコーティング組成物がクリアコート組成物である場合、ガラス基材であってもよい。
【0097】
本発明のコーティング組成物がクリアコート組成物である場合、本発明の方法において、外側(最も)コーティング(膜)層として塗布されることが好ましい。
【0098】
本発明のコーティング組成物は、スプレーコーティング、ドロップコーティング、ディップコーティング、ロールコーティング、カーテンコーティングや他の技術など、当技術分野で周知の多数の技術によって物体にコーティングすることができる。ウェットオンウェットで塗布することもできるが、必ずしもそうである必要はない。
【0099】
使用する基材は、プラスチック基材、すなわち、ポリマー基材とすることができる。好ましくは、このような基材として熱可塑性ポリマーを用いる。適切なポリマーは、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレートを含めたポリ(メタ)アクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネートおよびポリ酢酸ビニルを含めたポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどのポリオレフィン、またポリブタジエン、ポリアクリルニトリル、ポリアセタール、ポリアクリロニトリル-エチレン-プロピレン-ジエン-スチレンコポリマー(A-EPDM)、ASA(アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステルコポリマー)およびABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー)、ポリエーテルイミド、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、TPUを含めたポリウレタン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、およびこれらの混合物である。ポリカーボネートおよびポリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0100】
使用する基材は、鋼および/またはアルミニウムなどの金属とすることもできる。さらに、使用する基材は、ガラスまたは織物、特にガラスとすることができる。
【0101】
好ましくは、使用する基材は、近赤外線反射性でない、または本質的に近赤外線反射性でない。より好ましくは、基材は、暗色のまたは透明な基材である。暗色基材は、特に、黒色着色膜などの暗色着色多層膜を有する、金属またはプラスチック、例えばポリカーボネートなどの基材である。透明基材は、例えば、ガラスまたはポリカーボネート基材である。
【0102】
基材
本発明のさらなる主題は、本発明の方法によって得ることができる少なくとも部分的にコーティングされた基材である。好ましくは、本発明のコーティング方法を行う前の基材それ自体は、NIR反射性でないか、本質的にNIR反射性でなく、好ましくは暗色のまたは透明な基材である。暗色基材は、特に、黒色着色膜などの暗色着色多層膜を有する基材である。透明基材は、例えば、ガラスまたはポリカーボネート基材である。
【0103】
本発明のコーティング組成物、本発明のコーティング膜、本発明のコーティング、ならびにコーティング膜およびコーティングを形成する本発明の方法、およびその好ましい実施形態に関連して、本明細書で上述したすべての好ましい実施形態は、本発明の基材の好ましい実施形態でもある。
【0104】
コーティング基材は、例えば、レーンマーカー、道路バリア、および標識、ならびに自動車部品の製造に使用することができる。
【0105】
使用方法
本発明のさらなる主題は、LIDAR視認性用途、特に自動運転車などの自律システムのための、本発明のコーティングおよび/または本発明の少なくとも部分的にコーティングされた基材および/または前記基材から製造される物体を使用する方法である。
【0106】
本発明のコーティング組成物、本発明のコーティング膜、本発明のコーティング、ならびにコーティング膜およびコーティングを形成する本発明の方法、および本発明の部分的にコーティングされた基材、ならびにそれらの好ましい実施形態に関連して本明細書で上述したすべての好ましい実施形態は、本発明の使用の好ましい実施形態でもある。
【0107】
特に、本発明のコーティング/コーティング膜および本発明の基材/物体は、好ましくは可視光領域で実質的に無色透明であるので、本発明の使用により、特に自動運転車などの自律システムにおいて、より良い赤外線およびLIDAR可視性からの利益を得ることが可能である。
【0108】
方法
1.固形分
全固形分を含む固形分(不揮発分)の量は、DIN EN ISO 3251:2008-06により、110℃、60分間で測定する。
【0109】
2.平均粒径
平均粒径は、ISO/DIS 21363:2018-09に従い、透過型電子顕微鏡(TEM)により測定する。
【0110】
3.平均プレート厚および平均シェル厚
平均プレート厚と平均シェル厚もISO/DIS 21363:2018-09に従い、透過型電子顕微鏡(TEM)により測定する。
【0111】
4.近赤外線(NIR)光散乱特性の測定
測定は、双方向の分光反射率分布の測定により、またはシミュレーション手法が測定と完全に一致するため、シミュレーション手法により実施する。
【0112】
測定される量は、双方向の分光反射率分布である。以下の設定をこの測定で使用する。基材上のコーティング層などの試料を白色光ハロゲンランプで入射角0°から80°まで5°刻みで照射する(入射角は試料の法線に対して定める)。次に、分光器を用いて、観測角度を-85°から85°まで5°刻みで変化させながら、380nmから995nmまで5nm刻みで試料の分光反射率を測定する(観測角度は試料の法線に対して定める)。次に、入射光をほぼランバート反射するPTFE標準を用いて分光反射率の校正を行う。コーティング層は20μmの乾燥膜厚を有する。基材は、吸収性/黒色基材である。
【0113】
このシミュレーション手法は、波動光学シミュレーションによって、成分(B)として使用されるナノ粒子の散乱特性(散乱・吸収断面積、角散乱強度)をシミュレーションするために使用される。あるいは、同じナノ粒子の散乱特性の数値計算には、Mie理論を用いることもできる。次に、得られた散乱特性をレイトレーシングソフトウェアでコーティング層ボリュームに適用し、レイトレーシングシミュレーションによるそのようなコーティング層(任意に、より多くの層)の反射率特性をシミュレートする。
【0114】
レイオプティカルシミュレーション(市販のレイトレーシングソフトウェアLightToolsを用いる)は以下のように行われる。コーティングのCADモデルは、以前の波動光学ナノ粒子散乱シミュレーション(ナノ粒子の散乱および吸収断面積から計算した透過率、散乱および吸収断面積と粒子密度から計算した自由平均経路、以前のシミュレーションから直接得た角散乱分布)に従って、完全吸収基材である少なくとも最下層と、体積散乱特性を有する20μm厚の均一媒体である最上層(n=1.6、k=0)を用いて作成する。色のシミュレーションでは、コーティングの表面法線に対して45°の入射角で2億本の光線をコーティングに照射し、光線のスペクトル分布は400nm~1600nmで一様であった。コーティングの分光反射率は、入射角に関して-60°、-30°、-20°、0°、30°、65°のスペクトル受信器によって評価される。
【実施例
【0115】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するものであるが、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。以下において、表中に示されるすべての量は、特に明記されていない場合、質量部である。
【0116】
1.コーティング組成物の製造
比較用のコーティング組成物C1は、表1に示す成分をこの順に混合することにより製造した。同様の方法で、本発明のコーティング組成物I1を製造した。I1は、本発明で使用する添加剤(成分L)を含有する点でC1と異なる。
【0117】
【表1】
【0118】
成分Aは、92.7質量部の脱イオン水、3.5質量部の商品名Laponite(登録商標)RDで市販されているコロイド状層状ケイ酸塩、および3.5質量部の市販品Pluracol(登録商標)P1010を含むコロイド状層状ケイ酸塩溶液である。
【0119】
成分Cは、23の酸価および28質量%の固形分を有する15kダルトンの質量平均分子量を有するダイマー脂肪酸ベースのポリウレタン樹脂の分散液であり、米国特許第4,791,168号でさらに記載されている。
【0120】
成分Dは、米国特許第6,001,915号の実施例Dに記載されているようなポリウレタンアクリル樹脂分散液である。
【0121】
成分Eは、Allnexから市販されているDaotan(登録商標)VTW6462である。成分Fはメラミン樹脂であり、AllnexからCymel(登録商標)327の商品名で入手できる。成分Gはエチレングリコールモノアルキルエーテル溶剤で、Dow Chemical CompanyからButyl Cellosolve(登録商標)の商品名で入手できる。成分Hは、市販の界面活性剤である。成分Iは、市販の湿潤添加剤である。成分Kは、Dow Chemical CompanyからDowanol(商標)PnB Glycol Etherの商品名で入手できるプロピレングリコールモノアルキルエーテル溶剤である。
【0122】
成分Jは、(i)2.75質量部のポリエステル樹脂分散液(前記ポリエステルは、ダイマー脂肪酸、ヘキサンジオール、イソフタル酸および無水トリメリット酸からなり、30mgKOH/gの酸価を有し、分散液は73質量%の固形分を有し、残りの分散液はブタノールとDowanol(商標)PnPのブレンドである)、(ii)3.5質量部の成分G、および(iii)0.05質量部のN,N-ジメチルエタノールアミンのブレンドである。
【0123】
成分Lは、約120nmのコア直径のシリカコア、約20nmの厚さを有するコアを囲む金シェル、および粒子表面に共有結合している、ポリエチレングリコールキャッピング剤を含む金ナノシェルを含有するnanoComposix社から市販の金ナノシェル溶液である。溶液中のナノシェルの含有量は約0.1質量%である。残りは脱イオン水である。
【0124】
2.コーティングされた基材とその特性
2.1 基材(S)は、比較用のコーティング組成物C1でコーティングされている。別の基材(S)は、本発明のコーティング組成物I1でコーティングされている。基材(S)は、いずれの場合も金属基材であり、市販されている黒色着色ベースコート(Leneta社製T12M Metopac(登録商標)金属パネル)を有する。基材(S)に(C1)または(I1)のいずれかをコーティングし、フラッシュオフ期間を経た後、各場合に、基材上のコーティングを、100℃の温度で2時間物理的に乾燥する。(C1)または(I1)から得られたコーティング層の乾燥膜厚は、それぞれ20μmであった。(I1)の場合、コーティング層は、コーティング層の総質量に対して、成分Lに由来するナノ粒子(B)を0.38質量%含有する。
【図面の簡単な説明】
【0125】
2.2 得られたコーティングの双方向分光反射率分布は、測定し、また、前述の測定方法によりシミュレーションして得た。
【0126】
その結果を図1および図2に示す。これらの図から明らかなように、シミュレーションは実測とよく一致している。
【0127】
図1図1に、照射の入射角が45°、観察角が0°の場合の分光反射率の実測値とシミュレーション値を示す。測定データは、第2の試料(ナノ粒子を含まないC1でコーティングされた基材S)の参照データを用いて、黒色基材(S)による不完全吸収を補正した。黒色基材の不完全吸収は約0.4%絶対値である。
【0128】
図2図2に、波長905nmにおける反射率のシミュレーションと実測の角度分布を示す。試料は再び45°の入射角で照射されている。測定データにおける-45°での広帯域反射の増加は、空気/コーティング界面での鏡面反射および適用した分光器の飽和に起因する。測定データは、図1について前述したのと同様の方法で補正されている。
図1
図2