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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】磁気センサ及び検出システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 24/00 20060101AFI20241111BHJP
   G01R 33/032 20060101ALI20241111BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20241111BHJP
   G01R 33/26 20060101ALI20241111BHJP
   G01N 24/10 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
G01N24/00 E
G01R33/032
G01N21/64 Z
G01R33/26
G01N24/10 510Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022559001
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 JP2021038101
(87)【国際公開番号】W WO2022091802
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2020180542
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 裕司
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0203080(US,A1)
【文献】国際公開第2020/054860(WO,A1)
【文献】特開2020-038086(JP,A)
【文献】特表2020-514709(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0062957(US,A1)
【文献】特開2013-002986(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0235031(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 24/00-24/14
G01R 33/00-33/64
G01N 27/72-27/9093
G01N 21/62-21/74
JSTPlus/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板と、前記基板の各々に当接する光電気混載基板と、を含み、
前記基板は、
前記光電気混載基板に当接しない面において、NVセンタが配置されるダイヤモンド結晶を含む第1層と、
前記光電気混載基板に当接する面において、電極パターンが配置される第2層と、を備え、
前記光電気混載基板は、
電子スピン共鳴を発生させるマイクロ波を前記基板の各々における前記電極パターンに対して伝送する線路と、
前記基板の前記第1層を照射する励起光と、前記励起光により発する蛍光であって、前記基板の前記第1層における電子スピン共鳴により光強度が変化する蛍光とを前記基板の各々に伝送する光導波路と、を備え、
前記電極パターンは、
前記マイクロ波の信号が伝送される第1電極パターンと、
接地される第2電極パターンと、
前記励起光と前記蛍光とを伝送する開口部と、備え、
前記光電気混載基板は、
前記基板の各々に当接する位置に、前記光導波路の先端部が露出する第1凹部と、前記線路が露出する第2凹部と、を備える、磁気センサ。
【請求項2】
請求項に記載の磁気センサと、
マイクロ波信号を発生して出力する信号発生器と、
励起光を発生させる発光素子と、
前記NVセンタの蛍光を受光する受光素子と、
前記信号発生器、前記発光素子及び前記受光素子の信号を処理して、結果を出力する信号処理制御部と、を備える、検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気センサ及び検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ダイヤモンド結晶に存在するNV(Nitrogen Vacancy)センタの量子効果を利用する磁気センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-121748号公報
【発明の概要】
【0004】
1つの態様に係る磁気センサは、基板と、前記基板に当接する導波体とを含み、前記基板は、前記導波体に当接しない面において、NVセンタが配置されるダイヤモンド結晶を含む第1層と、前記導波体に当接する面において、導体パターンが配置される第2層と、を備え、前記導波体は、電子スピン共鳴を発生させるマイクロ波を前記導体パターンに対して伝送する線路と、前記基板の前記第1層を照射する励起光と、前記励起光により発する蛍光であって、前記基板の前記第1層における電子スピン共鳴により光強度が変化する蛍光とを伝送する光導波路と、を備える。
【0005】
1つの態様に係る磁気センサは、複数の基板と、前記基板の各々に当接する光電気混載基板と、を含み、前記基板は、前記光電気混載基板に当接しない面において、NVセンタが配置されるダイヤモンド結晶を含む第1層と、前記光電気混載基板に当接する面において、電極パターンが配置される第2層と、を備え、前記光電気混載基板は、電子スピン共鳴を発生させるマイクロ波を前記基板の各々における前記電極パターンに対して伝送する線路と、前記基板の前記第1層を照射する励起光と、前記励起光により発する蛍光であって、前記基板の前記第1層における電子スピン共鳴により光強度が変化する蛍光とを前記基板の各々に伝送する光導波路と、を備える。
【0006】
1つの態様に係る検出ユニットは、第1基板と、前記第1基板に当接する第2基板と、を含み、前記第1基板に対して、電子スピン共鳴を発生させるマイクロ波と、励起光とを照射する検出ユニットであって、前記第1基板は、NVセンタが配置されるダイヤモンド結晶を含む層、を備え、前記第2基板は、前記第1基板に対向する面の一端に配置され、検体液の滴下によって他端方向に移動する、二次抗体が固定化された磁気ビーズと、前記第1基板に対する面の一部であって、前記磁気ビーズと結合した前記検体液に含まれる抗原と結合する一次抗体が配置された結合部と、を備える。
【0007】
1つの態様に係る検出システムは、上記の磁気センサ、または、上記の検出ユニット、と、マイクロ波信号を発生して出力する信号発生器と、励起光を発生させる発光素子と、前記NVセンタの蛍光を受光する受光素子と、前記信号発生器、前記発光素子及び前記受光素子の信号を処理して、結果を出力する信号処理制御部と、を備える。
【0008】
1つの態様に係る磁気センサ用基板は、導波体に当接しない面において、NVセンタが配置されるダイヤモンド結晶を含む第1層と、前記導波体に当接する面において、導体パターンが配置される第2層と、を備える。
【0009】
1つの態様に係る磁気センサ用導波体は、電子スピン共鳴を発生させるマイクロ波を基板の第2層に配置される導体パターンに対して伝送する線路と、前記基板においてNVセンタが配置されるダイヤモンド結晶を含む第1層を照射する励起光と、前記励起光により発する蛍光であって、前記基板の第1層における電子スピン共鳴により光強度が変化する蛍光とを伝送する光導波路と、を備える。
【0010】
1つの態様に係る磁気センサ用光電気混載基板は、基板の各々に当接する磁気センサ用光電気混載基板であって、電子スピン共鳴を発生させるマイクロ波を前記基板の各々における電極パターンに対して伝送する線路と、前記基板の第1層を照射する励起光と、前記励起光により発する蛍光であって、前記基板の第1層における電子スピン共鳴により光強度が変化する蛍光とを前記基板の各々に伝送する光導波路と、を備える。
【0011】
1つの態様に係る検出ユニット用検出基板は、NVセンタが配置されるダイヤモンド結晶を含む第1層を備えるプローブ基板に対向する面の一端に配置され、検体液の滴下によって他端方向に移動する、二次抗体が固定化された磁気ビーズと、前記プローブ基板に対する面の一部であって、前記磁気ビーズと結合した前記検体液に含まれる抗原と結合する一次抗体が配置された結合部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態に係る磁気センサの正面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る磁気センサの分解斜視図である。
図3図3は、第1実施形態に係る磁気センサを説明する模式図である。
図4図4は、第1実施形態に係る磁気センサの導波体の平面図である。
図5図5は、第1実施形態に係る磁気センサを使用した検出システムの概略ブロック図である。
図6図6は、第2実施形態に係る磁気センサの分解斜視図である。
図7図7は、第2実施形態に係る磁気センサの断面図である。
図8図8は、第3実施形態に係る検出ユニットの概略図である。
図9図9は、第3実施形態に係る検出ユニットを使用した検出工程を説明する図である。
図10図10は、第3実施形態に係る検出ユニットを使用した検出工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
NVセンタは、ダイヤモンド結晶において、本来は炭素が存在するべきところが窒素で置換され、隣接する位置に空孔がある複合欠陥である。NVセンタは、縮退する共有電子対の一部が欠損する。NVセンタは、ゼロ磁場においてm=0とm=±1の2つの準位の軌道角運動量を持った電子を有する。m=±1の電子は磁気モーメントを持つため外部磁場の影響を受け、m=±1の縮退も解け、さらに2つのエネルギー準位を有する。これらに起因する電子スピン共鳴を光波およびマイクロ波を用いて検知することにより外部磁場の強度を検出可能である。
【0014】
NVセンタの電子は、532nmの波長の光で励起され、緩和の過程で638nmの波長の蛍光を放出する。この蛍光過程は電子スピン共鳴周波数においては起こりにくい。そのため、この性質を用いることにより、m=±1の電子の状態を観測することができる。ダイヤモンドNVセンタでは、ゼロ磁場における電子スピン共鳴周波数が約2.87GHzと知られている。この共鳴点の周波数(共鳴周波数)のマイクロ波が照射されたときに638nmの波長の蛍光が消光する。また、外部磁場の大きさ等に応じたm=±1の電子の状態の変化により、マイクロ波の共鳴周波数が変化する。そして、この変化を蛍光強度の周波数変化により捉えることで、磁場を検出可能である。
【0015】
特許文献1に記載の技術では、ダイヤモンド結晶のNVセンタへのマイクロ波及び光波の入出力は、空間伝搬により行われている。このため、ダイヤモンド結晶のNVセンタへの光波及びマイクロ波の入射効率には改善の余地がある。
【0016】
以下に第1実施形態に係る磁気センサ10について説明する。
【0017】
[第1実施形態]
(磁気センサ)
図1は、第1実施形態に係る磁気センサ10の正面図である。図2は、第1実施形態に係る磁気センサ10の分解斜視図である。図1図2に示すように、磁気センサ10は、ダイヤモンド基板(基板)11と、ダイヤモンド基板11に当接する導波体14とを含む。本実施形態では、ダイヤモンド基板11に当接するとは、後述するマッチング材17及び半田18を間に挟む状態を含む。本実施形態では、ダイヤモンド基板11と導波体14とは、マッチング材17及び半田18によって接合されている。
【0018】
ダイヤモンド基板11は、いわゆるダイヤモンドセンサである。ダイヤモンド基板11は、導波体14に当接しない表面11aと、導波体14に当接する表面11bとを有する。表面11aと表面11bとは向かい合って配置されている。ダイヤモンド基板11は、第1層11Laと、第2層11Lbとを備える。より詳しくは、ダイヤモンド基板11は、表面11aにおいて、NVセンタ12が配置されるダイヤモンド結晶を含む第1層11Laを有する。ダイヤモンド基板11は、表面11bにおいて、導体パターン13が配置される第2層11Lbを有する。
【0019】
NVセンタ12は、単一で配置されていても、複数を配列してもよい。本実施形態では、図1等においては、NVセンタ12が複数を配列されている状態を図示している。
【0020】
図3は、第1実施形態に係る磁気センサ10を説明する模式図である。図3に示すように、導体パターン13は、ダイヤモンド基板11の第2層11Lbに配置されている。導体パターン13は、マイクロ波の信号が伝送される導体パターン(第1導体パターン)13Sと、接地される導体パターン(第2導体パターン)13Gと、を含む。導体パターン13は、線路15によって伝送されるマイクロ波が伝送される。
【0021】
導体パターン13Sは、第2層11Lbの中央部に円環形状に形成されている。導体パターン13Sの中心部に円形状の開口部131が配置されている。開口部131からダイヤモンド基板11の表面11bが露出している。導体パターン13Gは、第2層11Lbの導体パターン13Sの周囲に配置されている。導体パターン13Sと導体パターン13Gとの間には円環状の開口部132が配置されている。開口部132は、ダイヤモンド基板11の表面11bが露出している。
【0022】
導体パターン13Sは、信号を伝送する信号ラインである導体15Sと半田18Sを介して接続される。導体パターン13Gは、グランドラインである導体15Gと半田18Gを介して接続される。半田18Gは、導体15Gの幅方向に複数配置されてもよい。軸方向視において、開口部131に光導波路16が位置する。開口部131を介して、ダイヤモンド基板11を照射する励起光と、ダイヤモンド基板11の第1層11Laにおける励起光により発する蛍光とが伝送される。開口部131と光導波路16との間には、マッチング材17が介在する。
【0023】
図4は、第1実施形態に係る磁気センサ10の導波体14の平面図である。図4に示すように、導波体14は、線路15と、光導波路16とを備える。導波体14は、例えばSiO、ガラス材料、ポリマなどの樹脂材料で形成されている。本実施形態では、導波体14は、軸方向の断面が矩形状の柱状に形成されている。導波体14は、側面14aと、側面14aと向かい合って配置された側面14bとを含む。
【0024】
線路15は、電子スピン共鳴を発生させるマイクロ波を導体パターン13に対して伝送するマイクロストリップ線路である。線路15は、特性インピーダンスが調整されている。線路15は、信号ラインである導体15Sと、グラウンドパターンである導体15Gとを含む。導体15Sは、側面14aに配置されている。導体15Gは、側面14bに配置されている。線路15は、導波体14の軸方向に沿って配置されている。線路15は、光導波路16のコア161と平行に配置されている。
【0025】
光導波路16は、シングルモード導波又はマルチモード導波する。光導波路16は、ダイヤモンド基板11を照射する励起光と、ダイヤモンド基板11の第1層11Laにおける励起光により発する蛍光とを伝送する。光導波路16は、中心部に配置されたコア161と、コア161の周囲に配置されたクラッド162とを含む。コア161は、屈折率がクラッド162より高い。コア161は、励起光及び蛍光に対し透明である。コア161は、導波体14の軸方向に沿って配置されている。本実施形態では、コア161及びクラッド162は、軸方向の断面が矩形状の柱状に形成されている。コア161は、導波体14の軸方向に沿って配置されている。コア161は、線路15と平行に配置されている。
【0026】
ダイヤモンド基板11と導波体14とは、マッチング材17を介して接続されている。より詳しくは、ダイヤモンド基板11の表面11bと導波体14の表面12cとは、マッチング材17を介して接続されている。マッチング材17は、ダイヤモンド基板11と光導波路16との屈折率を調整してマッチングさせる材料である。マッチング材17は、ダイヤモンド基板11の屈折率と同程度の屈折率を有する。マッチング材17としては、例えば、光導波路16のコア161と同様の屈折率を有する樹脂などの材料を用いてもよい。マッチング材17の屈折率は、例えば1.7以上2.5以下程度である。マッチング材17は、軸方向視において、導波体14の表面12cと同じ形状を有する。
【0027】
このように構成された磁気センサ10は、検出システムのプローブとして使用可能である。
【0028】
(制御装置)
図5は、第1実施形態に係る磁気センサ10を使用した検出システムの概略ブロック図である。検出システムは、磁気センサ10と、制御装置50とを備える。磁気センサ10は、制御装置50によって制御される。制御装置50は、信号発生器51と、発光素子52と、受光素子53と、光アイソレータ54と、信号処理制御部55とを有する。
【0029】
信号発生器51は、信号処理制御部55の制御に基づいて、マイクロ波信号を発生して線路15へ出力する。信号発生器51は、例えば2.7GHz以上2.9GHz以下のマイクロ波を発生する。発光素子52は、レーザダイオードである。発光素子52は、信号処理制御部55の制御に基づいて、例えば波長527nmのレーザ光を光導波路16へ発光する。発光素子52は、緑色の励起光を光導波路16へ発光する。受光素子53は、フォトダイオードである。受光素子53は、信号処理制御部55の制御に基づいて、ダイヤモンド基板11のNVセンタ12の蛍光を受光する。受光素子53は、光導波路16を介して蛍光を受光する。光アイソレータ54は、光導波路16と、発光素子52と、受光素子53との間に配置されている。光アイソレータ54は、発光素子52から出力された光波を光導波路16へ出力する。光アイソレータ54は、光波を光導波路16から入力された光波を受光素子53へ出力する。
【0030】
信号処理制御部55は、信号発生器51、発光素子52及び受光素子53の信号を処理して、結果を出力する。より詳しくは、信号処理制御部55は、信号発生器51における信号の発生を制御する。信号処理制御部55は、発光素子52における発光を制御する。信号処理制御部55は、受光素子53における受光を制御する。信号処理制御部55は、受光素子53が受光した赤色蛍光の信号を処理する。信号処理制御部55は、結果として磁場の強度を出力する。
【0031】
(効果)
以上により、本実施形態では、光波及びマイクロ波は略同軸状に導波体14を伝搬する。本実施形態では、微小なNVセンタ12を有するダイヤモンド基板11が、導波体14の先端部にプローブ状に配置されている。本実施形態では、NVセンタ12を有するダイヤモンド基板11によって、光波及びマイクロ波を低損失で照射し、戻り光のほとんどを受光できる。本実施形態によれば、微小サイズの複数のNVセンタ12との信号アクセスが損失なくできる。このように、本実施形態によれば、ダイヤモンド基板11のNVセンタ12への光波及びマイクロ波の入射効率を向上できる。
【0032】
本実施形態では、ダイヤモンド基板11においてNVセンタ12が配置された領域に対して、光波及びマイクロ波を一度にアライメント調整、接続できる。本実施形態は、光波及びマイクロ波を損失なく安定して伝搬できる。
【0033】
本実施形態では、ダイヤモンド基板11の表面11a側には、カバーガラスなどの障害物を要しない。本実施形態によれば、磁気センサ10は、被測定物に近接させて測定できる。本実施形態によれば、磁気センサ10は、被測定物の磁荷を高感度に検出できる。
【0034】
本実施形態によれば、微小サイズのNVセンタ12を有するダイヤモンド基板11は、微小な磁荷に近接させて、微小な磁荷を高感度に検出できる。例えば、微小な磁荷をNVセンタ12から1μm以内に近接させた場合には、1×10-23Wb・m程度か、それ以下の磁気モーメントを検出できる。NVセンタ12が磁気モーメントを検出可能な領域は、例えば、1μmか、それよりも狭い領域である。
【0035】
本実施形態によれば、磁気センサ10は、光波およびマイクロ波の伝送路を堅牢かつ小型に構成できる。したがって、本実施形態は、再調整することなく光波及びマイクロ波の入射効率を安定にすることができる。また、本実施形態によれば、センサ、ユニット、システム等の小型化を有利にできる。さらに、本実施形態は、非常に狭い領域のセンシングに使用できる。
【0036】
これに対して、従来のセンサは、検出部が大きい。これにより、従来のセンサは、磁荷と検出部の距離が離れ、磁荷の空間分布変動を十分に捉えられないおそれがある。
【0037】
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態に係る磁気センサ20の分解斜視図である。図7は、第2実施形態に係る磁気センサ20の断面図である。本実施形態では、磁気センサ20は、複数のダイヤモンド基板21と、ダイヤモンド基板21の各々に当接する1枚の光電気混載基板24とを含む。本実施形態では、ダイヤモンド基板21の各々に当接するとは、後述する半田28S及び半田28G及び図示しないマッチング材等を間に挟む状態を含む。
【0038】
本実施形態では、磁気センサ20は、複数のダイヤモンド基板21が光電気混載基板24に配置されている。本実施形態では、4つのダイヤモンド基板21、ダイヤモンド基板21、ダイヤモンド基板21及びダイヤモンド基板21が、光電気混載基板24に配置されている。ダイヤモンド基板21、ダイヤモンド基板21、ダイヤモンド基板21及びダイヤモンド基板21の区別を要しない場合、4つのダイヤモンド基板21、ダイヤモンド基板21、ダイヤモンド基板21及びダイヤモンド基板21は、ダイヤモンド基板21と記載される。各ダイヤモンド基板21は、第1実施形態のダイヤモンド基板11と同様に構成されている。
【0039】
ダイヤモンド基板21は、光電気混載基板24に当接しない表面21aにおいて、NVセンタ22が配置されるダイヤモンド結晶を含む第1層21Laを有する。ダイヤモンド基板21は、光電気混載基板24に当接する表面21bにおいて、電極パターン23が配置される第2層21Lbを有する。電極パターン23は、マイクロ波の信号が伝送される電極パターン(第1電極パターン)23Sと、接地される電極パターン(第2電極パターン)23Gと、励起光により発する蛍光とを伝送する図示しない開口部と、を備える。
【0040】
光電気混載基板24は、線路として機能する線路層(線路)25と、光導波路として機能する光導波路層(光導波路)26とが積層されている。本実施形態では、光導波路層26の上側に線路層25が積層されている。光電気混載基板24は、線路層25がダイヤモンド基板21と向かい合って配置されている。光電気混載基板24とダイヤモンド基板21とは、半田28S及び半田28Gを介して接続されている。光電気混載基板24は、各ダイヤモンド基板21の配置位置に、第1凹部24aと、第2凹部24bとを有する。第1凹部24aと第2凹部24bとは、光電気混載基板24の表面、言い換えると、線路層25の第2基板252の面252aより凹状に形成されている。第1凹部24aは、第2凹部24bより深い凹状である。第1凹部24aの面241aは、ダイヤモンド基板21の表面21bと平行に配置されている。第1凹部24aにおいて、後述する光導波路層26の先端部に設けられたミラー面26aが露出している。第2凹部24bにおいて、後述する線路層25の導体25Gが露出している。
【0041】
線路層25は、電子スピン共鳴を発生させるマイクロ波をダイヤモンド基板21の各々における電極パターン23に対して伝送するマイクロストリップ線路を含む。線路層25は、第1基板251と、第2基板252とを含む。第1基板251の上側に第2基板252が積層されている。線路層25は、信号ラインである導体(線路)25Sと、グラウンドパターンである導体(線路)25Gと、を含む。導体25Sは、第2基板252の面252a上に配置されている。導体25Sは、導体25S、導体25S2、導体25S3及び導体25S4を有する。導体25Sは、ダイヤモンド基板21の電極パターン23Sに対してマイクロ波を伝送する。導体25Sは、ダイヤモンド基板21の電極パターン23Sに対してマイクロ波を伝送する。導体25Sは、ダイヤモンド基板21の電極パターン23Sに対してマイクロ波を伝送する。導体25Sは、ダイヤモンド基板21の電極パターン23Sに対してマイクロ波を伝送する。導体25S、導体25S2、導体25S3及び導体25S4の区別を要しない場合、導体25S、導体25S2、導体25S3及び導体25S4は、導体25Sと記載される。導体25Gは、第1基板251の下面と光導波路層26との間に配置されている。導体25Gは、ダイヤモンド基板21、ダイヤモンド基板21、ダイヤモンド基板21及びダイヤモンド基板21の電極パターン23Gに対してマイクロ波を伝送する。
【0042】
導体25Sは、マイクロ波の伝送方向と直交する方向の幅w1が例えば30μm以上60μm以下である。導体25Sと導体25Gとの間の積層方向の幅w2は、例えば30μm以上60μm以下である。
【0043】
光導波路層26は、シングルモード導波又はマルチモード導波する。光導波路層26は、光導波路26、光導波路26、光導波路26及び光導波路26を有する。光導波路層26は、ダイヤモンド基板21を照射する励起光と、ダイヤモンド基板21の第1層21Laにおける励起光により発する蛍光とをダイヤモンド基板21の各々に伝送する。より詳しくは、光導波路26は、ダイヤモンド基板21を照射する励起光と、ダイヤモンド基板21の第1層21Laにおける励起光による蛍光とを伝送する。光導波路26は、ダイヤモンド基板21を照射する励起光と、ダイヤモンド基板21の第1層21Laにおける励起光による蛍光とを伝送する。光導波路26は、ダイヤモンド基板21を照射する励起光と、ダイヤモンド基板21の第1層21Laにおける励起光による蛍光とを伝送する。光導波路26は、ダイヤモンド基板21を照射する励起光と、ダイヤモンド基板21の第1層21Laにおける励起光による蛍光とを伝送する。
【0044】
光導波路層26は、下部クラッド261、コア262、上部及び側面クラッド263によって同軸構造に構成されている。コア262の屈折率が下部クラッド261及び上部及び側面クラッド263よりも数%以上高いため、コアに光信号を閉じ込めて低損失で伝送できる。
【0045】
下部クラッド261は、積層方向の幅w3が例えば15μm以上25μm以下である。コア262は、積層方向の幅w4が例えば35μm以上100μm以下である。上部及び側面クラッド263は、積層方向の幅w5が例えば15μm以上25μm以下である。
【0046】
ミラー面26aは、コア262の光軸方向に対して傾斜した光路変換面を有する。ミラー面26aは、例えば光軸方向に対して45°に傾斜する光路変換面である。この光路変換面は、コア262を進む光の光路方向を90°変換し、第1基板251の面251aに垂直な法線方向へと光路を変更させる。第2凹部24bにおいて、導体25Gの一部が露出している。
【0047】
光の伝送損失の発生をさらに低減するために、ミラー面26aが露出している空間Aに、樹脂等のマッチング材が充填されてもよい。光導波路層26と、ダイヤモンド基板11との間の光の伝送損失を低減できる。マッチング材としては、例えば、光導波路層26のコア262と同様の屈折率を有する樹脂を用いてもよい。
【0048】
光導波路層26のミラー面26aは、第1凹部24aの面241aに対して傾斜している。傾斜角θは、例えば45°である。光導波路層26のミラー面26aが傾斜していることにより、光導波路層26とダイヤモンド基板21との間における光の伝播を効率的に行うことができる。
【0049】
このように構成された光電気混載基板24とダイヤモンド基板21とは、半田28S及び半田28Gを介して接続されている。より詳しくは、半田28Sは、ダイヤモンド基板21の電極パターン23Sと、線路層25の導体25Sとを接続する。半田28Gは、ダイヤモンド基板21の電極パターン23Gと、線路層25の導体25Gとを接続する。
【0050】
このように構成された磁気センサ20は、制御装置50を備えることにより、第一実施形態と同様に検出システムのプローブとして使用可能である。
【0051】
以上により、本実施形態は、光電気混載基板24上にダイヤモンド基板21を複数配置することにより、微小サイズのNVセンタ12を複数配列できる。本実施形態によれば、磁気センサ20を磁気センサ10に比べて高集積化できる。本実施形態によれば、磁気センサ20は、微小サイズの磁荷の空間分布変動を高分解能に捉えることができる。本実施形態によれば、磁気センサ20は、例えば核磁気共鳴現象などと組み合わせることにより、特定のタンパク質や生体物質などの動きを動的にイメージングできる。
【0052】
[第3実施形態]
図8は、第3実施形態に係る検出ユニット40の概略図である。図9は、第3実施形態に係る検出ユニット40を使用した検出工程を説明する図である。図10は、第3実施形態に係る検出ユニット40を使用した検出工程を説明する図である。検出ユニット40は、検体液Xに含まれる抗原Yを検出する。図8に示すように、検出ユニット40は、磁気センサ10と、基板(第2基板、検出ユニット用検出基板)30とを備える。本実施形態では、一例として、磁気センサ10は、第1実施形態と同様に構成されているものとして説明する。本実施形態では、第1基板は、磁気センサ10のダイヤモンド基板11である。
【0053】
基板30は、ストリップ基板31と、ストリップ基板31に設けられたテストライン311上に固定された一次抗体32と、ストリップ基板31の表面31aに移動可能に配置された磁気ビーズ33と、磁気ビーズ33に固定化された二次抗体34とを含む。
【0054】
ストリップ基板31は、検出ユニット40においてプレパラートとして機能する。ストリップ基板31は、板状に形成されている。テストライン311は、ストリップ基板31の表面31aの中央部に配置されている。
【0055】
一次抗体32は、抗原Yの一次抗体である。磁気ビーズ33は、ダイヤモンド基板11に対向するストリップ基板31の表面31aの一端に配置されている。磁気ビーズ33は、検体液Xの滴下によって他端方向に移動する、二次抗体34が固定化されている。二次抗体34は、抗原Yの二次抗体である。一次抗体32は、磁気ビーズ33及び二次抗体34とは離れて配置されている。
【0056】
基板30は、さらに、ダイヤモンド基板11に対するストリップ基板31の表面31aの一部であって、磁気ビーズ33と結合した検体液Xに含まれる抗原Yと結合する一次抗体32が配置された結合部35を備える。
【0057】
検出ユニット40を使用した、ウィルス等の抗原Yの検出方法について説明する。図9に示すように、磁気ビーズ33及び二次抗体34に、ウィルス等の抗原Yの検体液Xを滴下する。滴下された検体液Xは、抗原Yの一部が二次抗体34と結合しながら、ストリップ基板31上で拡散する。
【0058】
図10に示すように、二次抗体34と結合した抗原Yは、一次抗体32とサンドイッチ状に結合して、結合部35が形成される。結合部35は、抗原Yが一次抗体32と二次抗体34とによって挟まれる。結合部35は、ストリップ基板31に近い順に、一次抗体32、抗原Y、二次抗体34、磁気ビーズ33の順番で配置されている。結合部35では、検体液Xにおける抗原Yの濃度に応じた数の磁気ビーズ33が結合する。結合部35は、ストリップ基板31から最も離れた位置に磁気ビーズ33が位置する。
【0059】
結合部35の幅w6の1/2が、結合部35の中心から未結合の磁気ビーズ33が分布しない領域までの幅w7よりも狭い。w6とw7とは、w6/2<w7の関係が成り立つ。w6は、例えば0.5mm以上1.5mm以下である。w7は、例えば0.3mm以上、好ましくは3mm以上15mm以下程度である。
【0060】
磁気センサ10において、NVセンタ12の幅w8は、結合部35の幅w6よりも狭い。w6とw8とは、w6>w8の関係が成立する。
【0061】
抗原Yと結合しなかった磁気ビーズ33は、ストリップ基板31において、テストライン311に留まらず、検体液Xを滴下した位置とは反対側の端部へ移動する。
【0062】
ストリップ基板31は、テストライン311の下流側にコントロールラインを設け、未結合の磁気ビーズ33を特異的に吸着するようにしてもよい。その場合、w7は結合部35の中央からコントロールラインの上流側の端までの幅とする。
【0063】
一次抗体32が固定されていた位置に、検出用プローブである磁気センサ10を近接または当接させる。それ以前に磁気ビーズ33は磁場を印加し磁気を帯びさせている。これにより、磁気センサ10は、被測定物である結合部35の磁気ビーズ33の磁荷を強く検出する。磁気センサ10によって、磁気ビーズ33の数に応じて濃度が検出される。制御装置50の信号処理制御部55は、磁気センサ10の検出結果である信号から、磁場の強度を算出し結果として出力する。
【0064】
このように構成された検出ユニット40は、制御装置50を備えることにより、検出システムとして使用可能である。
【0065】
以上により、本実施形態は、未結合の磁気ビーズ33と離れた位置で、磁気センサ10によって磁気ビーズ33を検出できる。磁気センサ10は、距離の3乗に反比例して、未結合の磁気ビーズ33の磁荷の影響が減少する。本実施形態によれば、抗原抗体結合による信号のS/N(Signal-Noise)比を向上できる。
【0066】
上記では、第1基板は、磁気センサ10のダイヤモンド基板11であるものとして説明したが、これに限定されない。第1基板は、ダイヤモンド基板11を使用したものと同程度の検出精度を有する層(磁気検出層)を備えるものであればよい。第1基板の磁気検出層は、例えば、微小な磁荷を磁気センサ10の検出部から1μm以内に近接させた場合には、1×10-23Wb・m程度か、それ以下の磁気モーメントを検出可能であればよい。また、第1基板の磁気検出層は、例えば、1μmか、それよりも狭い領域に存在する磁荷が検出可能であればよい。第1基板は、例えば、表層に磁気抵抗素子、磁気インピーダンス素子または超伝導量子干渉素子が配置された基板でもよい。
【0067】
従来の検出ユニットは、感度が低く不十分であったり、検出部が数mm以上の大きさで、かつ、検出部の表面を覆う封止層等の厚さが数100μm以上であったりする。このため、検出部を被測定物である結合部35に近づけた際に、検出部と結合部35との距離に対して検出部と未結合の磁気ビーズ33との距離が十分に離れるようにするためには、基板30を大型化して、結合部35と未結合の磁気ビーズ33が分布する領域との距離を広くする必要がある。このため、検出部が大型であることに加えて、基板30のサイズが大型化し、検出ユニットが大型化する。また、基板30を大型化せずに検出を行う場合、未結合の磁気ビーズ33の磁荷の影響を受け、抗原抗体結合による信号のS/N比の検出精度が低下する。
【0068】
本実施形態は、上記のような従来の検出ユニットにおける課題を解決して、全体を小型化できるとともに、検出精度を向上できる。
【0069】
本出願の開示する実施形態は、発明の要旨及び範囲を逸脱しない範囲で変更できる。さらに、本出願の開示する実施形態及びその変形例は、適宜組み合わせることができる。
【0070】
添付の請求項に係る技術を完全かつ明瞭に開示するために特徴的な実施形態に関し記載してきた。しかし、添付の請求項は、上記実施形態に限定されるべきものでなく、本明細書に示した基礎的事項の範囲内で当該技術分野の当業者が創作しうるすべての変形例及び代替可能な構成を具現化するように構成されるべきである。
【符号の説明】
【0071】
10 磁気センサ
11 ダイヤモンド基板(基板、第1基板)
11a 表面(導波体に当接しない面)
11b 表面(導波体に当接する面)
11La 第1層
11Lb 第2層
12 NVセンタ
13、13S、13G 導体パターン
14 導波体
15 線路
15S、15G 導体
16 光導波路
17 マッチング材
18S、18G 半田
20 磁気センサ
21 ダイヤモンド基板(基板)
21a 表面(光電気混載基板に当接しない面)
21b 表面(光電気混載基板に当接する面)
21La 第1層
21Lb 第2層
22 NVセンタ
23、23S、23G 電極パターン
24 光電気混載基板
25 線路層(線路)
25S、25G 導体
26 光導波路層(光導波路)
28S、28G 半田
30 基板(第2基板、検出ユニット用検出基板)
31 ストリップ基板
311 テストライン
32 一次抗体
33 磁気ビーズ
34 二次抗体
35 結合部
40 検出ユニット
50 制御装置
51 信号発生器
52 発光素子
53 受光素子
54 光アイソレータ
55 信号処理制御部
X 検体液
Y 抗原
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10