(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】車両用、特に電気車両又はハイブリッド車両用の加熱/冷却システム、この種の加熱/冷却システム用の保持部材
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20241111BHJP
【FI】
B60H1/22 651B
B60H1/22 671
(21)【出願番号】P 2022560162
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(86)【国際出願番号】 EP2021057571
(87)【国際公開番号】W WO2021197964
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】102020109006.4
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516382847
【氏名又は名称】オーエーテー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ブッシュ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シュメルツル
(72)【発明者】
【氏名】フランツ オブリスト
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ シュテーグミュラー
【審査官】塩田 匠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0039440(US,A1)
【文献】特開2016-205797(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0276328(US,A1)
【文献】特表2019-533797(JP,A)
【文献】特開2019-182036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用、特に電気車両又はハイブリッド車両用の加熱/冷却システムであって、
流体回路を形成するために互いに流体接続されている複数の構成部品、特に圧縮機(10)、凝縮器(11)、膨張装置(12)及び蒸発器(13)を有する加熱/冷却システムにおいて、
壁構造(15)を備えた保持部材(14)を有し、前記壁構造(15)は少なくとも1つの貫通開口(16)を有し、少なくとも2つの構成部品は前記壁構造(15)の対向する側に配置され、かつ前記壁構造(15)と機械的に結合され、
2つの構成部品は、流体を通過させるための前記貫通開口(16)によって互いに直接的に流体接続し
、それにより前記2つの構成部品は個々の構成部品間のパイプ状又はホース状の接続部を省く、ことを特徴とする、加熱/冷却システム。
【請求項2】
前記壁構造(15)は、複数の貫通開口(16)を有し、かつ複数の構成部品と機械的に結合され、前記壁構造(15)の対向する側に配置されている複数の構成部品は、複数の貫通開口(16)によって互いに直接的に流体接続し、前記壁構造(15)、前記複数の貫通開口(16)及び前記複数の構成部品は流体回路を形成する、ことを特徴とする請求項1に記載の加熱/冷却システム。
【請求項3】
前記壁構造(15)は、前記圧縮機(10)と前記凝縮器(11)との間に直接的な流体接続を形成する第1の貫通開口(17)、前記凝縮器(11)と前記膨張装置(12)との間に直接的な流体接続を形成する第2の貫通開口(18)、前記膨張装置(12)と前記蒸発器(13)の間に直接的な流体接続を形成する第3の貫通開口(19)、及び前記蒸発器(13)と前記圧縮機(10)の間に直接的な流体接続を形成する第4の貫通開口(20)、を有している、ことを特徴とする請求項2に記載の加熱/冷却システム。
【請求項4】
前記壁構造(15)は第1の側(21)と第2の側(22)とを有する、ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の加熱/冷却システム。
【請求項5】
前記圧縮機(10)と前記膨張装置(12)とは、前記壁構造(15)の前記第1の側(21)に配置され、かつ前記壁構造(15)と機械的に結合している、ことを特徴とする請求項4に記載の加熱/冷却システム。
【請求項6】
前記凝縮器(11)と前記蒸発器(13)とは、前記壁構造(15)の前記第2の側(22)に配置され、かつ前記壁構造(15)と機械的に結合している、ことを特徴とする請求項4又は5に記載の加熱/冷却システム。
【請求項7】
前記保持部材(14)はT字形状であり、前記壁構造(15)は床構造(23)に対して垂直に配置されている、ことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の加熱/冷却システム。
【請求項8】
前記床構造(23)は第1の床部分(24)と第2の床部分(25)を有し、前記第1の床部分(24)は前記第2の床部分(25)よりも大きく、前記第1の床部分(24)は前記壁構造(15)の第1の側(21)に接し、前記第2の床部分(25)は前記壁構造(15)の第2の側(22)に接する、ことを特徴とする請求項7に記載の加熱/冷却システム。
【請求項9】
前記壁構造(15)は複数の凹所(26)を有し、該複数の凹所は複数の貫通開口(16)の間に配置されている、ことを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の加熱/冷却システム。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載の加熱/冷却システム用の保持部材において、
前記壁構造(15)は、少なくとも4つの貫通開口(17、18、19、20)と複数の機械的な結合手段(27)とを有し、圧縮機(10)、凝縮器(11)、膨張装置(12)及び蒸発器(13)は、流体回路を形成するために前記少なくとも4つの貫通開口(17、18、19、20)によって流体接続可能であり、かつ前記結合手段(27)によって前記壁構造(15)と機械的に結合可能である、ことを特徴とする保持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載された車両用の加熱/冷却システムに関する。更に本発明は、この種の加熱/冷却システム用の保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭で挙げた種類の加熱/冷却システムは、実用上知られているものである。この種の加熱/冷却システムは、車両のため、例えば車両空調設備を駆動するために、使用される。この種の加熱/冷却システムのメイン構成部品は、通常、圧縮機、凝縮器、膨張装置及び蒸発装置である。これらの構成部品は、車両内にしばしば分散して配置されており、導管、特に冷却液を案内するパイプ導管を介して互いに接続されている。代替的に、これらの構成部品の少なくともいくつかを一緒に保持プレート上に取り付けることが知られている。しかし、導管による流体接続は、従来知られている加熱/冷却システムにおいて存続し続けている。
【0003】
個々の構成部品を分散して配置することは、特に取り付けに関して、既知の加熱/冷却システムの複雑性を増大させる。しばしば、これらの構成部品を接続する流体導管は、加熱/冷却システムを種々の車両内に取り付ける場合に、個々に適合させなければならない。特に流体導管は、更に、これまで実際から知られている加熱/冷却システムのスペース需要を増大させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに関して、本発明の課題は、簡単な構造とコンパクトな組み立て形状を有する加熱/冷却システムを提案することである。更に本発明の課題は、この種の加熱/冷却システム用の保持部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、この課題は、加熱/冷却システムに関しては、請求項1の対象によって、そして保持部材に関しては、請求項10の対象によって、解決される。
【0006】
特に本発明は、流体回路を形成するために互いに流体接続されている構成部品を備えた、車両用、特に電気車両又はハイブリッド車両用の、冷却システムを提供する考えに基づいている。この種の構成部品は、例えば圧縮機、凝縮器、膨張装置及び蒸発器とすることができる。本発明によれば、加熱/冷却システムは、壁構造を備えた保持部材を有しており、その壁構造が少なくとも1つの貫通開口を有している。加熱/冷却システムの少なくとも2つの構成部品が、壁構造の対向する側に配置されており、かつ壁構造と機械的に結合されている。2つの構成部品は、流体を通過させるための貫通開口を通して直接互いに流体接続されている。
【0007】
したがって、本発明において設けられる保持部材は、二重機能を満たしている。まず、その保持部材が少なくとも2つの構成部品を機械的に保持し、かつ結合している。これに関して、保持部材は、加熱/冷却システム用の機械的なホルダを形成する。他方で、保持部材は、貫通開口を用いて少なくとも2つの構成部品の間の流体接続も形成している。したがって、個々の構成部品を流体接続するための付加的な導管は不要である。したがって全体として、特にコンパクトな加熱/冷却システムが得られ、それが更に特に簡単な構造を有している。
【0008】
本発明に係る加熱/冷却システムの好ましい実施形態において、壁構造は複数の貫通開口を有している。壁構造は、複数の構成部品と機械的に結合することができる。好ましくは、壁構造の対向する側に配置されている構成部品は、貫通開口を通して次のように、すなわち壁構造、複数の貫通開口及び複数の構成部品が流体回路を形成するように、直接的に互いに流体接続されている。
【0009】
具体的には、加熱/冷却システムのすべての流体接続は、壁構造内の複数の貫通開口を用いて形成されることができる。これが、加熱/冷却システムの特にコンパクトな組み立て方法に寄与する。更にそれによって、個々の構成部品を接続するために必要な、付加的な流体導管、堅固なパイプも、フレキシブルなホースも、何ら必要とされない。したがってコンパクトな加熱/冷却システムが、きわめて簡単に構築もされている。
【0010】
壁構造は、具体的に、第1の貫通開口と第2の貫通開口を有することができる。
【0011】
第1の貫通開口は、圧縮機と凝縮器の間に直接的な流体接続を形成することができる。
【0012】
第2の貫通開口は、凝縮器と膨張装置の間に直接的な流体接続を形成するために設けることができる。
【0013】
更に壁構造は、第3の貫通開口を有することができ、それが、膨張装置と蒸発器の間に直接的な流体接続を形成する。
【0014】
同様に第4の貫通開口を設けることができ、第4の貫通開口は蒸発器と圧縮機の間に直接的な流体接続を形成する。
【0015】
すなわち、加熱/冷却システムの駆動に重要な構成部品は、流体接続を介して結合されており、その流体接続は完全に保持部材によって提供される。したがって保持部材は、個々の構成部品の機械的な結合だけでなく、流体接続も形成する。すなわち冷却剤は、構成部品の間を最短距離で循環する。
【0016】
壁構造は、好ましくは第1の側と第2の側を有している。圧縮機と膨張装置を壁構造の第1の側に配置され、壁構造と機械的に結合することができる。
【0017】
凝縮器と蒸発器は、壁構造の第2の側に配置され、壁構造と機械的に結合することができる。凝縮器と蒸発器は、特に壁構造の第2の側に並べて配置されることができる。凝縮器と蒸発器は、好ましくは一緒になって、圧縮機の長さを実質的に越えない長さを占める。したがって、これに関して、圧縮機と膨張装置を壁構造の第1の側に配置し、かつ凝縮器と蒸発器を壁構造の第2の側に配置することによって、加熱/冷却システムの特にコンパクトな形状が可能である。
【0018】
好ましい実施形態において、保持部材はT字状に形成されており、壁構造は床構造に対して垂直に配置されている。床構造は、実質的に、車両内に加熱/冷却システムを固定するための固定プレートを形成することができる。
【0019】
床構造は、特に第1の床部分と第2の床部分を有することができ、第1の床部分は第2の床部分よりも大きく形成されている。第1の床部分は、好ましくは壁構造の第1の側に、そして第2の床部分が第2の側に添接する。したがって壁構造の、比較的重くて比較的大きい構成部品も配置される、第1の側に、比較的大きい第1の床部分も配置されている。
【0020】
これに関して、第1の床部分が第2の床部分よりも大きいスタンド面又は固定面を形成するので、加熱/冷却システムは良好な据え付け安定性を有する。すなわち個々の構成部品の重量は、保持部材を介して均一に床構造内へかかる。床構造はこれらの力を、同様に均一に、車両の支持する部材内へ導入することができる。
【0021】
好ましくは保持部材において、壁構造は複数の凹所を有しており、その凹所が複数の貫通開口の間に配置されている。これらの凹所は、特に重量の削減をもたらすことができる。したがって加熱/冷却システムのコンパクト性が改良されるだけでなく、特にその重量も削減され、それが最近の車両、特に電気車両において、到達距離を増大し、又はエネルギ消費を削減するために、特に重要である。
【0022】
本発明の併置される視点は、上述した加熱/冷却システムのための保持部材に関する。本発明に係る保持部材は、好ましくは壁構造を有しており、その壁構造が、少なくとも4つの貫通開口と複数の機械的な結合手段を有し、圧縮機、凝縮器、膨張装置及び蒸発器は、流体回路を形成するための貫通開口によって流体接続され、かつ結合手段によって壁構造と機械的に結合可能である。
【0023】
加熱/冷却システムに関連して挙げた利点及び好ましい展開は、ここに併置して請求される保持部材にも、同様に該当する。具体的には、保持部材が、個々の構成部品の機械的保持の機能を、個々の構成部品の間の流体接続の機能と組み合わせる。それによって、特にコンパクトな加熱/冷却システムが形成される。
【0024】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は好ましい実施例に基づいて本発明に係る加熱/冷却システムの正面図を示している。
【
図2】
図2は
図1に示す加熱/冷却システムの側面図を示している。
【
図3】
図3は
図1に示す加熱/冷却システムの分解図を示している。
【
図4】
図4は、好ましい実施例に基づく、本発明に係る加熱/冷却システム用の保持部材の斜視図を示している。
【
図5】
図5は
図1に示す加熱/冷却システム用の本発明に係る保持部材の斜視図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
特にコンパクトで簡単に構築された加熱/冷却システムの好ましい実施例が、
図1に正面図で示されている。
【0027】
一般的に、加熱/冷却システムは複数の構成部品を有している。具体的に、加熱/冷却システムは圧縮機10、凝縮器11、膨張装置12及び蒸発器13を有している。これらの構成部品は、保持部材14を用いて機械的に互いに結合されている。
【0028】
保持部材14が壁構造15を有しており、その壁構造は床構造23と一体的に形成されている。床構造23と壁構造15は、
図1に示す正面図において実質的にT字形状の横断面プロフィールを形成している。
【0029】
床構造23は、第1の床部分24と第2の床部分25を有している。第1の床部分24は、第2の床部分25よりも大きい。具体的には、第1の床部分24が、第2の床部分25の幅よりも大きい幅を有していることが、認識できる。
【0030】
第1の床部分24は、保持部材14の壁構造15の第1の側21から出ている。この第1の側21には、圧縮機10が固定されている。更に、膨張装置12が設けられており、その膨張装置は同様に保持部材14、好ましくは壁構造15と、機械的に結合されている。
【0031】
機械的結合のために、保持部材14は複数の結合手段27を有している(
図4、5)。これら機械的な結合手段27は、好ましくは壁構造15内のねじ孔として形成されている。個々の構成部品の、特に圧縮機10と保持部材14との、結合は、ねじ30又はねじボルトを介して行われる。
【0032】
圧縮機10の下方、具体的には第1の床部分24と圧縮機10の間に、膨張装置12が配置されている、この膨張装置12は、同様にねじ30によって保持部材14と結合することができる。
【0033】
図1において更に認識できるように、壁構造15は、第2の側22上に2つの他の構成部品を有している。具体的には、壁構造5の第2の側22に凝縮器11と蒸発器13が固定されている。
【0034】
一般的に、加熱/冷却システムの構成部品は、機械的に保持部材14と結合されているだけでなく、付加的に保持部材14によって流体接続もされている。一般的に、加熱/冷却システムは、好ましくは冷却剤も有しており、その冷却剤が冷却剤回路内で個々の構成部品を通って流れている。そのために個々の構成部品は、流体接続によって互いに結合されている。本発明においては、この流体接続は、少なくとも部分的に保持部材14によって準備される。そのために、壁構造は、
図3~5において認識できるように、複数の貫通開口16を有しており、それらが個々の構成部品の間に流体接続を形成する。
【0035】
加熱/冷却システムの分解図である
図3は、保持部材14が壁構造15内に第1の貫通開口17を有していることを明らかにしており、その第1の貫通開口は圧縮機10と凝縮器11の間に直接的な流体接続を形成する。更に第4の貫通開口20が設けられており、それが蒸発器13と圧縮機10の間に直接的な流体接続を形成する。
【0036】
図3に示す保持部材14は、重量を削減するために複数の凹所26を有している。下方の凹所31は、凝縮器11と蒸発器13の流体接続部32が膨張装置12と直接的に流体接続可能であるように、寸法設計されている。したがって流体接続部32は、下方の凹所31を貫通し、それにより膨張装置12に直接結合することができる。
【0037】
保持部材14の代替的な実施例において、壁構造15内に第2の貫通開口18と第3の貫通開口19を設けることもでき、それによって凝縮器11と膨張装置12の間、又は蒸発器13と膨張装置12との間に流体接続を形成することができる。
図4は、保持部材14のこの種の実施例を例示している。
【0038】
膨張装置12は、一般的に、膨張弁33と冷却剤用のリザーバ28を有している。膨張弁33は、好ましくは直接的に流体接続部32を介して、又は第3の貫通開口19を介して蒸発器13と流体接続されている。
図1から3に示す実施例において、膨張弁33は蒸発器13の流体接続部32と直接結合されている。
【0039】
リザーバ28は、
図1~3に示す実施例におけるように、別体の構成部品として保持部材14に取り付けることができる。代替的に、リザーバ28は、保持部材14内に一体化することもできる。特に保持部材14は、内部の中空室を有することができ、それが冷却剤用のリザーバ28として用いられる。リザーバ28は、2つの変形例において、好ましくは凝縮器11と流体接続されている。リザーバ28が別体である場合に、流体接続は、流体接続部32を介して、又は保持部材14内の第2の貫通開口18を介して、直接的に形成することができる。保持部材14内に統合されているリザーバ28は、好ましくは第2の貫通開口18と接続されている。
【0040】
図4及び5には、保持部材14の2つの異なる実施例が示されている。
図4に示す実施例において、保持部材14は、付加的に冷却剤用の統合されたリザーバ28を有している。特にリザーバ28は、壁構造15内に統合することができる。更にリザーバ28は、付加的に、床構造23内に統合することができる。いずれにしても、保持部材14は冷却剤を貯蔵する中空室を有している。この中空室は統合されたリザーバ28を形成する。
【0041】
図4に示す保持部材14は、基本構造を有しており、その基本構造は本発明のすべての実施例のために効果的である。これに関して、保持部材14が壁構造15を有しており、その壁構造が床構造23上に垂直に立ち上がっている。床構造23は第1の床部分24を有し、それは、対向して配置された第2の床部分25よりも大きい。壁構造15内には、重量を削減するための複数の凹所26が形成されている。更に壁構造は、複数の貫通開口16を有している。具体的には、4つの貫通開口17、18、19、20が設けられている。複数の貫通開口の少なくとも1つは、統合されたリザーバ28への付加的な横接続を有することができる。
【0042】
特に、圧縮機10と凝縮器11の間の直接的な流体接続を形成する、第1の貫通開口17が設けられている。床構造23の近傍に形成されている、第2の貫通開口18は、凝縮器11と膨張装置12の間に直接的な流体接続を形成することができる。更に、膨張装置12と蒸発器13の間を直接的に流体接続するための第3の貫通開口19を設けることができる。第3の貫通開口19は、同様に好ましくは床構造23の近傍に形成されている。第1の貫通開口17と同様に壁構造15の上方の端部に配置されている第4の貫通開口20は、蒸発器13と圧縮機10の間に直接的な流体接続を形成するために設けられている。
【0043】
図4には更に、ねじ孔の形状の複数の結合手段27が見られ、それらが個々の構成部品を保持部材14に機械的に取り付けることを許す。
【0044】
図5に示す保持部材14の実施例は、統合されたリザーバ28が設けられていないことにおいて、
図4に示す保持部材14とは異なる。むしろ、
図1-3に示す加熱/冷却システムの実施例においても使用されている、この保持部材14は、別体のリザーバ28と共に使用するために設けられている。
【0045】
図5に示す保持部材14は、下方の凹所31を有しているので、流体接続部32は壁構造15を直接に貫通することができる。壁構造15を安定させるために、更に、垂直の補強リブ29が設けられており、その補強リブは下方を床構造23の第2の床部分25上に支持されている。これに関して、保持部材14又は壁構造15は、第1の貫通開口17と第4の貫通開口20のみを有しており、それらが圧縮機10及び凝縮器11と蒸発器13との間に直接的な流体接続をもたらす。膨張装置12と凝縮器11又は蒸発器13との間の直接的な流体接続は、流体接続部
32を介して直接行われ、その流体接続部は下方の凹所31を貫通する。
【0046】
図5に示す保持部材14は、付加的に、他の凹所26を有しており、その凹所は実質的に重量削減に用いられる。更にねじ孔の形式の結合手段27が見られ、その結合手段は個々の構成部品を保持部材14に固定するために用いられる。
【0047】
加熱/冷却システム全体は、他の構成部品を有することができ、それらは
図3において認識可能である。特に圧縮機10の上側に、電気接続端34を設けることができる。これに関して、圧縮機10が電気的な圧縮機、特に電気的なストロークピストン圧縮機又は電気的なスクロール圧縮機であると、効果的である。そして、圧力及び温度センサ35も圧縮機10と接続することができる。
【0048】
加熱/冷却システム全体は、好ましくは特にコンパクトに構築されている。特に唯一の保持部材14によって、機械的な結合と流体接続を組み合わせることによって、加熱/冷却システム全体は特にコンパクトな設計寸法を有し、又は車両内できわめて小さい組み込み空間を占める。
【0049】
具体的には、本発明に係る加熱/冷却システムの長さLは、圧縮機10の長手軸方向に見て、最大で290mm、特に最大で270mm、好ましくは約250mmとすることができる。実質的に壁構造15に対して垂直かつ床構造23に沿って求められる、加熱/冷却システムの幅Bは、好ましくは最大280mm、特に最大260mm、特に約240mmである。加熱/冷却システムの、好ましくは壁構造15に沿って、かつ床構造23対して垂直に求められる高さHは、最大で290mm、特に最大で270mm、特に約250mmとすることができる。
【0050】
個々の構成部品の間の特に堅固なパイプ導管を省くことによって、加熱/冷却システムの質量が減少されることも、効果的である。すなわち本発明に係る加熱/冷却システムの質量は、好ましい実施形態において、最大で15kg、特に最大で14kb、特に最大で13.8kg、特に最大で13.7kg、特に最大で13.5kg、特に最大で13.3kg、特に最大で13.2kg、特に最大で13.1kg、特に最大で13.05kg、特に最大で13.02kg、特に最大で13.0kg、特に最大で12.9kg、特に最大で12.8kg、特に最大で12.7kg、特に最大で12.6kg、特に最大で12.5kgである。
【0051】
個々の構成部品の間のパイプ形状又はホース形状の接続を省くことによって、冷却剤回路の内部容積も減少される。その結果、必要な冷却剤の量も著しく削減することができる。すなわち本発明に係る加熱/冷却システムは、特に、最大160g、特に最大150g、特に最大140g、特に最大130gの冷却剤で駆動されることを、特徴としている。
【0052】
付加的に、個々の構成部品間のパイプ形状又はホース形状の接続部を省くことは、漏れの危険を低減することにも寄与する。冷却剤回路は、車両内の定められた領域内に限定される。熱交換器を介して、冷却剤の熱又は冷熱は、水回路へ引き渡すことができる。すなわち、車両を通して水導管のみが案内されることになる。
【0053】
本発明に係る加熱/冷却システムが提供する他の利点は、加熱/冷却システムの駆動が冷却駆動から加熱駆動へ簡単に切り替えられることにある。したがって、この加熱/冷却システムは、空調設備のための冷却ユニットとしても、加熱設備のためのヒートポンプとしても利用することができる。特にこれら2つの駆動モードの間で簡単に切り替えることができ、それがこの加熱/冷却システムを特に電気的に駆動される車両にとって興味深いものとする。電気的に駆動される車両においては、問題があって、駆動システムは内燃機関とは異なり、車両室内を加熱するために利用することができる著しい排熱を発生しない。これに関して、電気的に駆動される加熱システムが目的に合致する。本発明は、この種の電気的に駆動される加熱システムを提供し、その加熱システムは外部温度が高い場合には交互に、室内を冷却するための冷却設備としても利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 圧縮機
11 凝縮器
12 膨張装置
13 蒸発器
14 保持部材
15 壁構造
16 貫通開口
17 第1の貫通開口
18 第2の貫通開口
19 第3の貫通開口
20 第4の貫通開口
21 第1の側
22 第2の側
23 床構造
24 第1の床部分
25 第2の床部分
26 凹所
27 結合手段
28 リザーバ
29 補強リブ
30 ねじ
31 下方の凹所
32 流体接続部
33 膨張弁
34 電気接続端
35 圧力及び温度センサ
L 長さ
B 幅
H 高さ